説明

光ディスク装置及び半導体装置

【課題】光エンコーダを用いることなくレーベル面の描画を行うための技術を提供する。
【解決手段】光ディスク装置(1、2、3)は、レーベル面に描画するとき、光ディスク(100)を回転させるためのモータ部(20、30)によって生成された回転速度に応じた周波数のパルスを有する回転速度信号(SFG)に基づいて前記光ディスクが目標とする回転速度になるように前記モータ部を制御するとともに、レーベル面上のアドレスに応じたエッジ間隔を擬似的に示す擬似エンコード信号(擬似EFG信号)を生成し、前記擬似エンコード信号に基づいてレーベル面に対する描画を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスク装置及び前記光ディスク装置を制御するための半導体装置に係り、特に光ピックアップを用いて光ディスクのレーベル面に描画を行う光ディスク装置に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
光ディスクの情報記録層にデータを記録・再生するための光ピックアップを用いて光ディスクのレーベル面に画像や文字情報を描画する機能を備える光ディスク装置が開発されている。このような描画機能に対応した光ディスクとして、例えばライトスクライブ(LightScribe、登録商標)対応光ディスクがある。このような光ディスクのレーベル面の最内周部には、レーベル面上の位置を基準位置に対する角度で表したアドレス情報等が所定のパターンで記録された領域(以下、スポーク領域、と称する。)があり、描画機能に対応した光ディスク装置は、例えば前記スポーク領域を光エンコーダで読み取ることで光ディスクの回転数および描画位置を検出し、描画中の光ディスクの回転制御と描画制御を行う。特許文献1には、光ディスクのレーベル面に描画中に、前記領域に光ピックアップとは別個に設けた回転エンコーダによってレーザ光を照射し、その反射光の光強度から検出した回転位置に基づいて、レーベル面の描画制御と光ディスクの回転制御を行う光ディスク装置が開示されている。また、特許文献2には、スピンドルモータの回転の状況に対応したパルス信号を用いて光ディスクの回転を制御する技術として、光ディスク1回転につき3つのパルスを含む回転周期信号(特許文献2ではパルス信号sfgと記載されている。)の全てのパルスのタイミングを起算点として位相エラー信号を生成し、前記位相エラー信号を用いて描画中の光ディスクの回転制御を行う方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−1028552号公報
【特許文献2】特開2009−93683号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、DVD等に対応した光ディスクドライブの市場は成熟しており、価格競争が激化している。そこで、本願発明者はコスト削減のため部品点数の削減の検討を行った。
【0005】
図23は、本願発明者が先立って検討した、レーベル面に対する描画機能を備える光ディスク装置の一例を示すブロック図である。同図に示される光ディスク装置50において、光ピックアップ51によって光ディスク100のレーベル面に描画を行うとき、光エンコーダ52は光ディスク100のレーベル面の最内周部に設けられたスポーク領域101にレーザ光を照射し、その反射光量に応じた信号に基づいて光エンコード出力信号(以下、EFG(Encoder Frequency Generator)信号とも称する。)を生成する。これにより、レーベル面の描画中における光ディスクの回転数および描画位置を検出する。例えば、EFG信号は光ディスクが1回転する間に400個のパルスが出力される信号であり、これらのパルスの立ち上がりエッジ又は立ち下がりエッジを描画制御回路53がカウントすることでレーベル面上の描画位置を把握する。半径方向の距離はファームウェア(F/W)で指定したモータの移動量に基づいて把握される。描画制御回路53は把握した位置情報に基づいて光ピックアップ51を制御することによりレーベル面の描画を実現する。また、モータ制御回路54は、EFG信号に基づいて光ディスクの回転数を検出し、モータドライバ55を介してスピンドルモータ56を制御することで、描画中の光ディスク100の回転速度を制御する。
【0006】
このように光ディスク装置50によれば、光ピックアップ51を用いたレーベル面の描画を実現することができるが、描画中の光ディスクの回転制御と描画位置の制御を行うために、一般的な光ディスク装置の構成部品に加え光エンコーダ52を別途設ける必要があり、コストの増加を招く。そこで、本願発明者は光エンコーダ52を用いずにレーベル面の描画を実現する方法を検討した。しかしながら、光エンコーダ52を用いないと、描画中にスポーク領域110を読み出すことができず、光ディスク100の回転数および描画位置を検出することができないため、光ディスクの回転制御と描画制御を精度よく行うことができないという問題がある。光ピックアップを用いてスポーク領域を読み出すことは光ディスク装置の構造上可能であるが、仮にそのようにしたとしても、光ピックアップによって描画を行っている間はスポーク領域を読み出すことはできない。
【0007】
光エンコーダを用いずに描画制御を行う方法として、スピンドルモータの回転速度に応じた周波数のパルスを有する回転速度信号(SFG:Spindle Frequency Generator)を逓倍した信号をEFG信号の替わりに用いる方法も考えられる。しかしながら、EFG信号が1回転あたり400パルス出力されるのに対し、回転速度信号は例えば18パルスしか出力されないため、回転速度信号の分解能は粗い。また回転速度信号は一般にジッタが大きい。そのため、回転速度信号からEFG信号相当の精度を持つ信号を生成することは容易ではない。前述の特許文献1及び2では、光エンコーダからのEFG信号を用いずに描画制御を行うことについて特に考慮されていない。
【0008】
また、EFG信号を用いずに回転制御を行う方法として前述の特許文献2に開示があるが、当該方法では、光ディスク1回転における回転速度信号のパルス数が多い場合にはその数に応じて回路規模が大きくなる虞がある。また、特許文献2の段落0072に、光ディスク1回転における回転速度信号のパルス数が多数に上る場合は、その一部(例えば半数や三分の一の数)のパルス夫々を起算点として位相エラー信号を生成するように構成する方法が開示されているが、この方法ではパルス数に対して位相エラー信号を生成する頻度が低くなるため、回転制御の精度低下を招く。すなわち、特許文献2の構成では、回転制御の精度と回路規模がトレードオフの関係となる。
【0009】
本発明の目的は、光ディスク装置において、光エンコーダを用いることなく、レーベル面の描画を行うための技術を提供することにある。
【0010】
本発明の前記並びにその他の目的と新規な特徴は本明細書の記述及び添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願において開示される発明のうち代表的なものの概要を簡単に説明すれば下記の通りである。
【0012】
すなわち、本光ディスク装置は、レーベル面に描画するとき、光ディスクを回転させるためのモータ部によって生成された回転速度に応じた周波数のパルスを有する回転速度信号に基づいて前記光ディスクが目標とする回転速度になるように前記モータ部を制御するとともに、レーベル面上のアドレスに応じたエッジ間隔を擬似的に示す擬似エンコード信号を生成し、前記擬似エンコード信号に基づいてレーベル面に対する描画を制御する。
【発明の効果】
【0013】
本願において開示される発明のうち代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば下記のとおりである。
【0014】
すなわち、本光ディスク装置によれば、光エンコーダを用いることなく、レーベル面の描画を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、実施の形態1に係る光ディスク装置の一例を示すブロック図である。
【図2】図2は、スポーク領域101の一例を示す説明図である。
【図3】図3は、回転速度信号SFGの一例を示す説明図である。
【図4】図4は、回転制御部110の回路構成の一例を示すブロック図である。
【図5】図5は、回転速度信号SFGを用いた速度制御の一例を示す説明図である。
【図6】図6は、回転速度信号SFGを用いた位相制御の一例を示す説明図である。
【図7】図7は、光エンコーダで生成したEFG信号を用いて回転制御を行った場合の駆動電圧の一例を示す説明図である。
【図8】図8は、駆動電圧の出力パターンを学習する方法の一例を示す説明図である。
【図9】図9は、駆動電圧情報の格納方法の一例を示す説明図である。
【図10】図10は、擬似EFG信号生成回路12の回路構成の一例を示す説明図である。
【図11】図11は、スポーク信号SPのエッジ間隔を学習する方法の一例を示す説明図である。
【図12】図12は、擬似EFG信号のエッジ間隔を調整する方法の一例を示す説明図である。
【図13】図13は、光ディスク装置1によるレーベル面に対する描画処理の流れの一例を示すフロー図である。
【図14】図14は、図13の比較例としての描画処理の流れを示すフロー図である。
【図15】図15は、実施の形態2に係る光ディスク装置の一例を示すブロック図である。
【図16】図16は、擬似EFG信号生成回路22による擬似EFG信号の生成方法の一例を示す説明図である。
【図17】図17は、実施の形態3に係る光ディスク装置の一例を示すブロック図である。
【図18】図18は、1パルス分の回転速度信号SFGのパルス幅を測定した結果を示す説明図である。
【図19】図19は、3パルス分の回転速度信号SFGのパルス幅を測定した結果を示す説明図である。
【図20】図20は、実施の形態3に係る回転制御部210の一例を示すブロック図である。
【図21】図21は、3パルス毎の速度エラー情報の生成方法を示す説明図である。
【図22】図22は、3パルス毎の位相エラー情報の生成方法を示す説明図である。
【図23】図23は、本願発明者が先立って検討した、レーベル面に対する描画機能を備える光ディスク装置の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
1.実施の形態の概要
先ず、本願において開示される発明の代表的な実施の形態について概要を説明する。代表的な実施の形態についての概要説明で括弧を付して参照する図面中の参照符号はそれが付された構成要素の概念に含まれるものを例示するに過ぎない。
【0017】
〔1〕(擬似EFG信号を用いてレーベル面の描画制御を行う光ディスク装置)
本発明の代表的な実施の形態に係る光ディスク装置(1、2、3)は、光ディスク(100)の情報記録層に対するアクセスを行うとともに、前記光ディスクのレーベル面に対する描画を行うことが可能な光ディスク装置である。前記光ディスク装置は、装填された光ディスクを回転させるとともに回転速度に応じた周波数のパルスを有する回転速度信号(SFG)を生成するモータ部(20、30)と、前記装填された光ディスクの前記情報記録層が形成された情報記録面及び前記レーベル面にレーザ光を照射可能とし、その反射光量に応じた信号を生成可能な光ピックアップ(40)とを有する。更に、前記光ディスク装置は、前記モータ部及び前記光ピックアップを制御することにより、前記情報記録層にアクセスするための処理と前記レーベル面に描画するための処理とを行うデータ処理制御部(10)と、を有する。前記データ処理制御部は、前記レーベル面に描画するとき、前記モータ部によって生成された前記回転速度信号に基づいて前記光ディスクが目標とする回転速度になるように前記モータ部を制御するとともに、前記レーベル面上のアドレスに応じたエッジ間隔を擬似的に示す擬似エンコード信号(擬似EFG信号)を生成し、前記擬似エンコード信号に基づいて前記レーベル面に対する描画を制御する。
【0018】
項1の光ディスク装置は、前記擬似エンコード信号を生成するとともに、前記擬似エンコード信号に基づいて描画位置を検出して描画制御を行う。また、描画中は前記回転速度信号に基づいて回転制御を行う。これにより、レーベル面の描画中に前記スポーク領域を読み出す必要がないから、光エンコーダを用いることなくレーベル面の描画を行うことが可能となり、部品のコストの低減が見込める。
【0019】
〔2〕(擬似エンコード信号の生成方法:学習したエンコード信号に基づいて生成)
項1の光ディスク装置(1、3)は、データを格納するための記憶部(10)を更に有する。前記データ処理制御部(10、32)は、前記レーベル面に描画を行う前に、目標とする回転速度で前記光ディスクを回転させた状態で前記光ピックアップにより前記レーベル面におけるレーベル面上の位置情報を示すパターンが形成された所定の領域(スポーク領域101)にレーザ光を照射し、その反射光量に応じた信号に基づいて前記パターンをエンコードしたエンコード信号(スポーク信号SP)を生成するとともに、前記光ディスクが1回転する間に生成した前記エンコード信号の各エッジ間隔を示す情報(152)を生成して前記記憶部に格納する。更に、前記データ処理制御部は、前記レーベル面に描画するとき、前記記憶部に格納された前記各エッジ間隔を示す情報に基づいて、前記擬似エンコード信号を生成する。
【0020】
項2の光ディスク装置は、前記レーベル面に描画を行う前に、目標とする回転速度で光ディスクを回転させたときに光ピックアップによって読み取った前記スポーク領域のパターンに基づくエンコード信号を生成し、前記エンコード信号の各エッジ間隔を示す情報を学習する。これにより、事前に光ピックアップで読み取った前記エンコード信号に基づいた擬似エンコード信号を生成することができるから、擬似エンコード信号の精度を高めることができる。例えば、前記エンコード信号は、理論的には、前記光ディスクを目標とする回転速度で1回転させたときに要する時間内に前記レーベル面のアドレス数に応じた数のパルスが均等に出力される信号となるが、モータのトルクリップル等により回転速度が多少変動することにより各エッジ間隔が変動する虞がある。そこで、項2の光ディスク装置によれば、実際に光ディスクを回転速度で回転させてスポーク領域を読み取ったときの前記エンコード信号のエッジ間隔を記録し、記録したエッジ間隔に基づいて擬似エンコード信号を生成するから、回転速度の変動を考慮した、より精度の高い擬似エンコード信号の生成が可能となる。
【0021】
〔3〕(ディフェクト検出機能)
項2の光ディスク装置(1、3)において、前記エンコード信号は光ディスク装置のディフェクト検出機能によって生成される。
【0022】
これによれば、光ピックアップを用いて前記スポーク領域のエンコードを容易に行うことができる。
【0023】
〔4〕(擬似エンコード信号の生成方法:パルスを均等分割して生成)
項1の光ディスク装置(2)において、前記データ処理制御部(31)は、前記擬似エンコード信号として、前記光ディスクを目標とする回転速度で1回転させたときに要する時間(r/v)内に前記レーベル面のアドレス数に応じた数(400個)のパルスが均等に出力されるようにエッジ間隔を調整した信号を生成する。
【0024】
これによれば、事前にスポーク領域のエンコードを行ことなく、容易に前記擬似エンコード信号を生成することができる。
【0025】
〔5〕(モータ部の制御方法:目標とする回転速度に対するずれ量を用いて回転制御)
項1乃至4の何れかの光ディスク装置において、前記データ処理制御部は、前記レーベル面に描画するとき、前記回転速度信号に基づいて目標とする回転速度に対するずれを表すずれ量を算出するとともに、算出したずれ量がゼロになるように駆動電圧(1104)を生成し、前記駆動電圧に基づいて前記モータ部を制御する。
【0026】
これによれば、描画中の光ディスクが目標とする回転速度となるように容易に制御することができる。
【0027】
〔6〕(モータ部の制御方法:駆動電圧を補正して回転制御)
項5の光ディスク装置において、前記データ処理制御部は、前記レーベル面に描画を行う前に、前記光ピックアップにより前記レーベル面におけるレーベル面上の位置情報を示すパターンが形成された所定の領域(101)にレーザ光を照射し、その反射光量に応じた信号に基づいて前記パターンをエンコードしたエンコード信号(スポーク信号SP)を生成するとともに、前記エンコード信号に基づいて目標とする回転速度で前記光ディスクを回転させ、前記光ディスクが1回転する間に生成した前記エンコード信号の各エッジに応じたタイミングでの前記駆動電圧の値(1104)を、エッジ毎に対応させて前記記憶部(15)に格納する。前記データ処理制御部は、更に、前記レーベル面に描画するとき、光ディスク回転中に生成した前記駆動電圧(1104)に、前記記憶部に格納された前記駆動電圧の値(1112(151))を加算することで補正し、補正した駆動電圧に応じて前記モータ部を制御する。
【0028】
前述したように、回転速度信号(SFG)は分解能が低く、またジッタが大きい可能性がある。回転速度信号の精度が悪いと、回転中にトルクリップルが発生した場合にトルクリップル分を抑えた回転制御ができず、回転速度が変動する虞がある。一方、光ピックアップによってスポーク領域をエンコードした前記エンコード信号を用いて回転制御を行う場合、前記エンコード信号は分解能が高く且つジッタが小さいため、トルクリップル分を抑えた回転制御が可能となる。そこで、項5の光ディスク装置では、事前に光ピックアップによって前記スポーク領域を読み出してエンコードし、そのエンコード信号を用いて回転制御を行ったときの前記駆動電圧を前記記憶部に格納する。そして、描画中に前記回転速度信号に基づいて生成した前記駆動電圧を前記記憶部に格納された駆動電圧に基づいて補正する。これにより、回転中のトルクリップルの影響を抑えることができる。
【0029】
〔7〕(回転速度のずれ量:速度エラー)
項5又は6の光ディスク装置において、前記ずれ量は、前記回転速度信号の周期と目標とする回転速度に応じた周期との差分を表す速度エラー情報(1102)を含む。
【0030】
光ディスクが1回転する間に前記回転速度信号に含まれるパルス数はモータ部の仕様に応じた固定値となるため、目標とする回転速度に応じた前記回転速度信号の1周期あたりの時間を算出することができる。また前記回転速度信号は回転速度に応じて1周期の時間が変化する。したがって、前記速度エラー情報を容易に算出することができ、前記速度エラー情報の値がゼロになるように制御することで、容易に光ディスクを目標とする回転速度で回転させることができる。
【0031】
〔8〕(回転速度のずれ量:速度エラーの累積分)
項7の光ディスク装置において、前記ずれ量は、前記回転速度信号の周期と目標とする回転速度に応じた周期との差分を累積した累積速度エラー情報(1110)を更に含む。
【0032】
実際にモータ制御を行う際、速度エラー情報のみでの制御だけでは目標速度付近まで到達することはできるが、目標速度との僅かなエラーが残り、目標速度に到達できない場合がある。そこで累積速度エラー情報を制御に反映させることで、僅かなエラーをゼロにすることができる。位相エラー情報を用いることでエラーをゼロにすることも可能であるが、ジッタの多い状態では位相エラー情報の信頼度が低くなる虞があり、安定制御が見込めない。累積速度エラー情報を用いることで、直接不確かなエッジに制御を合わせる必要はなく、安定制御が見込める。
【0033】
〔9〕(回転速度のずれ量:位相エラー)
項7の光ディスク装置において、前記ずれ量は、前記回転速度信号の位相ずれを表す位相エラー情報(1109)を更に含む。
【0034】
実際にモータ制御を行う際、速度エラー情報のみでの制御だけでは目標速度付近まで到達することはできるが、目標速度との僅かなエラーが残り、目標速度に到達できない場合がある。そこで、速度エラーがある程度小さくなったところで位相エラー情報を制御に反映させることで、僅かなエラーをゼロにすることが可能である。
【0035】
〔10〕(ステッピングモータの巻き線に流れる電流の周期毎にずれ量を把握)
項5又は6の光ディスク装置において、前記モータ部は、前記光ディスクを回転させるスピンドルモータ(30)と、前記データ処理制御部による制御に基づいて前記スピンドルモータを回転させるとともに、前記スピンドルモータの固定子における複数の巻き線に流れる電流(U相電流、V相電流、W相電流)に基づいて前記回転速度信号を生成するモータドライバ(20)と、を有する。前記データ処理制御部は、前記複数の巻き線のうち少なくとも1つの巻き線に流れる電流の周期毎に前記ずれ量を算出する。
【0036】
描画中の光ディスクがより低速で回転する場合、前記回転速度信号のジッタがより多い状態となる。この場合に、項6のように、光ディスク回転中に生成した前記駆動電圧を前記記憶部に格納された前記駆動電圧の値で補正して前記モータ部を制御したとしても、精度よく描画できない虞がある。これは前記回転速度信号のジッタが大きくなると、前記回転速度信号を用いて目標速度に対するエラー成分を正確に算出することができなくなる虞があるからである。
【0037】
一方、スピンドルモータが、例えば2相、3相、又は5相モータで構成される場合、前記回転速度信号のエッジは、夫々の相数に対応する複数の巻き線に流れる電流のゼロクロス点に応じたタイミングで決定される。例えば、3相モータの場合、前記回転速度信号の1.5×nパルス毎に同一相の電流のゼロクロス点に対応するエッジが現れる。前記回転速度信号における同一相の電流のゼロクロス点に対応するエッジ毎(例えば3パルス毎)のジッタは、1パルス毎のジッタに比べて小さい傾向がある。そこで、同一相の電流のゼロクロス点に対応するエッジ(電流波形の1周期)毎に前記ずれ量を算出することで、前記回転速度信号のジッタの影響を小さくすることができ、光ディスクをより安定して回転させることができる。これによれば、特許文献2に記載の方法のように、回転制御の精度を上げるために光ディスク1回転における前記回転制御信号の全てのパルスのタイミングでエラー成分を算出しなくとも、ジッタの影響を抑えたエラー成分を効率よく生成することができる。
【0038】
〔11〕(3相モータの速度エラー情報)
項10の光ディスク装置において、前記スピンドルモータは3相モータである。前記ずれ量は、前記スピンドルモータにおけるU相の出力電流のゼロクロス点に対応する前記回転速度信号のエッジ(tA1)から1周期後の次のゼロクロス点に対応する前記回転速度信号のエッジ(tA2)までの時間と、前記レーベル面に対する描画時における目標とされる回転速度に応じた前記両エッジ間の理想とされる時間(目標周期の3周期分の時間)との差分を表す第1速度エラー情報(A2(A0、A1))を含む。また、前記ずれ量は、前記スピンドルモータにおけるV相の出力電流のゼロクロス点に対応する前記回転速度信号のエッジ(tB1)から1周期後の次のゼロクロス点に対応する前記回転速度信号のエッジ(tB2)までの時間と、前記レーベル面に対する描画時における目標とされる回転速度に応じた前記両エッジ間の理想とされる時間(目標周期の3周期分の時間)との差分を表す第2速度エラー情報(B2(B0、B1))を含む。更に、前記ずれ量は、前記スピンドルモータにおけるW相の出力電流のゼロクロス点に対応する前記回転速度信号のエッジ(tC1)から1周期後の次のゼロクロス点に対応する前記回転速度信号のエッジ(tC2)までの時間と、前記レーベル面に対する描画時における目標とされる回転速度に応じた前記両エッジ間の理想とされる時間(目標周期の3周期分の時間)との差分を表す第3速度エラー情報(C2(C0、C1))を含む。
【0039】
項11の光ディスク装置は、各相(U相、V相、W相)の電流の3系統について1周期毎に速度エラーを生成する。これによれば、前記スピンドルモータが3相モータである場合に、3系統の夫々についてジッタの影響を抑えた速度エラー情報をより効率よく生成することができるから、より安定した回転制御が可能となる。
【0040】
〔12〕(3相モータの位相エラー情報)
項11の光ディスク装置において、前記ずれ量は、前記スピンドルモータにおけるU相の出力電流のゼロクロス点に対応する前記回転速度信号のエッジのタイミング(tXA2)で算出した第1位相エラー情報(XA2(XA0、XA1))と、前記スピンドルモータにおけるV相の出力電流のゼロクロス点に対応する前記回転速度信号のエッジ(tXB2)のタイミングで算出した第2位相エラー情報(XB2(XB0、XB1))と、前記スピンドルモータにおけるW相の出力電流のゼロクロス点に対応する前記回転速度信号のエッジのタイミング(tXC2)で算出した第3位相エラー情報(XC2(XC0、XC1))と、を更に含む。
【0041】
これによれば、前記スピンドルモータが3相モータである場合に、前記第1速度エラー情報、前記第2速度エラー情報、及び前記第3速度エラー情報に加え、3系統の夫々についてジッタの影響を抑えた位相エラー情報をより効率よく生成することができるから、更に安定した回転制御が可能となる。
【0042】
〔13〕(線速度一定動作時の擬似エンコード信号の調整(図12))
項1乃至12のいずれかの光ディスク装置において、前記データ処理制御部は、前記レーベル面に描画するとき、前記光ディスクが線速度一定となるように前記モータ部を制御するとともに、前記レーベル面における描画位置の径方向の移動に応じて、前記擬似エンコード信号のエッジ間隔を調整する。
【0043】
光ディスク装置を線速度一定で動作させたとき、描画位置が光ディスクの外周方向に移動するにつれて回転速度が遅くなる。そのため、仮に描画中に前記スポーク領域をエンコードしたとすると、生成されるエンコード信号のエッジ間隔も描画位置が光ディスクの外周方向にいくほど広くなる。そこで、項13の光ディスク装置は、描画位置の径方向の移動に応じて、前記擬似エンコード信号のエッジ間隔を調整する。これにより、前記擬似エンコード信号の精度を高めることができ、より精度の高い描画制御が可能となる。
【0044】
〔14〕(擬似エンコード信号の具体的補正方法)
項13の光ディスク装置において、前記データ処理制御部は、前記回転速度信号に基づいて前記光ディスクが1回転するのに要する時間を算出し、算出した時間が長いほど前記擬似エンコード信号のエッジ間隔が長くなるように調整する。
【0045】
これによれば、線速度一定の回転制御に対応した前記擬似エンコード信号を容易に生成することができる。
【0046】
〔15〕(エッジ間隔の学習を行うタイミング(図13))
項2又は3の光ディスク装置において、前記データ処理制御部は、外部から前記レーベル面に対する描画開始の指示(S103)に応じて、前記各エッジ間隔を示す情報を生成して前記記憶部に格納する処理(S105)を行う。
【0047】
前記各エッジ間隔を示す情報を生成して前記記憶部に格納する処理に多くの時間を要する場合、光ディスク装置に光ディスクを装填した直後のタイミングに行うセットアップの処理の一環として当該処理を行うと、セットアップに要する時間が長くなり、光ディスク装置を利用するユーザにとってストレスを感じさせるおそれがある。そこで、項15の光ディスク装置では、例えば外部ホストPC等を介したユーザからの描画開始の指示を待ってから、前記記憶部に格納する処理を実行する。これによれば、ユーザが光ディスクを装填してから描画開始の指示を行うまでに要するセットアップの時間を短くすることができるので、ユーザの心理的負担を軽減させることができる。
【0048】
〔16〕(駆動電圧の学習を行うタイミング)
項5乃至14の何れかの光ディスク装置において、前記データ処理制御部は、外部から前記レーベル面に対する描画開始の指示(S103)に応じて、前記各エッジに応じたタイミングでの前記駆動電圧の値をエッジ毎に対応させて前記記憶部に格納する処理(S104)を行う。
【0049】
これによれば、項15と同様に、ユーザが光ディスクを装填してから描画開始の指示を行うまでに要するセットアップの時間を短くすることができるので、ユーザの心理的負担を軽減させることができる。
【0050】
〔17〕(半導体装置)
本発明の代表的な別の実施の形態に係る半導体装置(10、31、32)は、光ディスク装置(1、2、3)における光ディスク(100)を回転させるモータ部(20、30)、及び光ピックアップ(40)を制御するための半導体装置である。前記半導体装置は、光ディスクの情報記録層にアクセスするための処理と前記情報記録層が形成されていないレーベル面に描画するための処理とを行うデータ処理制御部(13、11(21)、14、12(22)、17、16、15)を有する。前記データ処理制御部は、前記レーベル面に描画を行うために、光ディスクの回転速度に応じた周波数のパルスを有する回転速度信号(SFG)を入力し、入力した前記回転速度信号に基づいて前記光ディスクが目標とする回転速度になるように前記モータ部を制御するとともに、前記レーベル面上のアドレスに応じたエッジ間隔を擬似的に示す擬似エンコード信号(擬似EFG信号)を生成し、前記擬似エンコード信号に基づいて前記レーベル面に対する描画位置の制御を行う。
【0051】
これによれば、項1と同様に、レーベル面の描画中に前記スポーク領域を読み出す必要がないから、光エンコーダを用いることなくレーベル面の描画を行うことが可能となる。
【0052】
〔18〕(擬似エンコード信号の生成方法:学習した反射信号に基づいて生成)
項17の半導体装置(10、32)は、データを格納するための記憶部(15)を更に有する。前記データ処理制御部は、前記レーベル面に描画を行うために、目標とする回転速度で前記光ディスクを回転させた状態で前記光ピックアップにより前記レーベル面におけるレーベル面上の位置情報を示すパターンが形成された所定の領域(スポーク領域101)にレーザ光を照射し、その反射光量に応じた信号に基づいて前記パターンをエンコードしたエンコード信号(スポーク信号SP)を生成するとともに、前記光ディスクが1回転する間に生成した前記エンコード信号の各エッジ間隔を示す情報(152)を生成して前記記憶部に格納する。更に前記データ処理制御部は、前記記憶部に格納された前記各エッジ間隔を示す情報に基づいて、前記擬似エンコード信号を生成する。
【0053】
これによれば、項2と同様に、擬似エンコード信号の精度を高めることができる。
【0054】
〔19〕(擬似エンコード信号の生成方法:パルスを均等分割して生成)
項17の半導体装置(31)において、前記データ処理制御部は、前記擬似エンコード信号として、前記光ディスクを目標とする回転速度で1回転させたときに要する時間(r/v)内に前記レーベル面のアドレス数に応じた数(400個)のパルスが均等に出力されるようにエッジ間隔を調整した信号を生成する。
【0055】
これによれば、事前にスポーク領域のエンコードを行うことなく、容易に擬似エンコード信号を生成することができる。
【0056】
〔20〕(モータ部の制御方法:目標とする回転速度に対するずれ量を用いて回転制御)
項17乃至19の何れかの半導体装置において、前記データ処理制御部は、前記レーベル面に描画を行うために、前記回転速度信号に基づいて目標とする回転速度に対するずれを表すずれ量を算出するとともに、算出したずれ量がゼロになるように、前記モータ部を駆動させるための駆動電圧(1104)を生成し、前記駆動電圧に基づいて前記モータ部を制御する。
【0057】
これによれば、描画中の光ディスクが目標とする回転速度となるように容易に制御することができる。
【0058】
〔21〕(モータ部の制御方法:駆動電圧を補正して回転制御)
項20の半導体装置において、前記データ処理制御部は、前記レーベル面に描画を行う前に、前記光ピックアップを制御することにより前記レーベル面におけるレーベル面上の位置情報を示すパターンが形成された所定の領域(101)にレーザ光を照射し、その反射光量に応じた信号に基づいて前記パターンをエンコードしたエンコード信号(スポーク信号SP)を生成するとともに、前記エンコード信号に基づいて目標とする回転速度で前記光ディスクを回転させ、前記光ディスクが1回転する間に生成した前記エンコード信号の各エッジに応じたタイミングでの前記駆動電圧の値(1104)を、エッジ毎に対応させて前記記憶部(151)に格納する。更に前記データ処理制御部は、光ディスク回転中に生成した前記駆動電圧(1104)に、前記記憶部に格納された前記駆動電圧の値(1112(151))を加算することで補正し、補正した駆動電圧に応じて前記モータ部を制御する。
【0059】
これによれば、項6と同様に、回転中のトルクリップルの影響を抑えることができる。
【0060】
2.実施の形態の詳細
実施の形態について更に詳述する。
【0061】
≪実施の形態1≫
図1は、本実施の形態に係る光ディスク装置の一例を示すブロック図である。同図に示される光ディスク装置1は、光ディスク100の情報記録層が形成された情報記録面にアクセスしてデータの記録及び再生を行う機能に加え、光ディスク100のレーベル面に画像や文字情報を描画する機能を備える。光ディスク装置1は、光エンコーダを用いずにレーベル面に対する描画を実現するため、回転速度信号SFGを用いた光ディスクの回転制御と、擬似エンコード信号(以下、擬似EFG信号とも称する。)を用いた描画制御と、を行う。
【0062】
描画対象の光ディスク100は、例えば、ライトスクライブ対応光ディスクである。光ディスク100のレーベル面の最内周部には、スポーク領域101が形成される。図2にスポーク領域の一例を示す。同図に示されるように、スポーク領域101は、レーベル面上の描画位置を基準位置に対する角度で表したアドレス情報等が記録された領域であり、例えば、光を透過させる透過部と光を反射する反射部とが交互に並んで配置されたパターンとして形成される。前記パターンにより、光ディスク100のレーベル面上の描画位置が0度から360度までの角度によって表される。同図では、一例として、基準となる角度を0度とし、基準角度から360度までを400分割した角度毎にレーベル面上の描画位置を表す場合が示されている。なお、図示されないが、スポーク領域101にはその他の情報として、プリント時の基準角度を決定するための情報やメディアIDを示す情報等も所定のパターンで記録される。
【0063】
光ディスク装置1は、装填された光ディスク100を回転させるためのモータ部としてのスピンドルモータ30及びモータドライバ20と、光ピックアップ40と、データ処理制御部10と、を備える。スピンドルモータ30は、モータドライバ20からの制御に基づいて装填された光ディスク100を回転させるモータであり、例えば3相モータである。モータドライバ20は、データ処理制御部10によって生成された回転速度を制御するためのPWM信号に基づいてスピンドルモータ30を駆動する。また、モータドライバ20は、スピンドルモータ30の固定子における複数の巻き線に流れる電流に基づいて回転速度信号SFGを生成する。
【0064】
図3に回転速度信号SFGの一例を示す。同図にはスピンドルモータ30が3相モータである場合が示される。同図に示されるように、モータドライバ20は、スピンドルモータ30の固定子における3つの巻き線(U相、V相、及びW相)に流れる出力電流(以下、夫々の電流を、U相電流、V相電流、及びW相電流と称する。)に基づいて回転速度信号SFGを生成する。具体的には、回転制御信号SFGは、U相電流、V相電流、及びW相電流のゼロクロス点のタイミングで信号レベルが切り替わる(例えばハイレベルとローレベルが切り替わる。)ように生成される。光ディスク100が1回転する間に発生するパルスの数は固定値であり、3相モータの構成に依存する。本実施の形態では、例えば、光ディスク100が1回転する間に18個のパルスが出力されるものとする。また、3相モータでは、U相電流、V相電流、及びW相電流の周波数を変えることで回転速度が変化するため、回転速度信号SFGはスピンドルモータ30の回転速度に応じてエッジ間隔が変化する。例えば、光ディスク100を低速で回転させると回転速度信号SFGの各エッジ間隔は長くなり、光ディスク100を高速で回転させると回転速度信号SFGの各エッジ間隔は短くなる。すなわち、回転速度信号SFGは、スピンドルモータ30の回転速度に応じた周波数のパルスを有する信号となる。なお、スピンドルモータ30のU相電流、V相電流、及びW相電流に対する回転速度信号SFGの出力論理は、起動時に最初に検出したロータの位置によって決定されるため、図3に示される回転速度信号SFGの出力論理に限定されない。
【0065】
光ピックアップ40は、装填された光ディスク100の情報記録面及びレーベル面にレーザ光を照射し、その反射光量に応じた信号を生成する。具体的には、光ピックアップ40は、データ処理制御部10からの制御信号にしたがってレーザ光を照射することで光ディスク100の情報記録層に対するデータの記録及び記録データの再生を実現する。また、光ピックアップ40は、データ処理制御部10からの描画制御信号にしたがってレーザ光を照射することで、光ディスク100のレーベル面に描画を行う。更に、光ピックアップ40は、レーベル面に対する描画を行う前に、光ディスク100のスポーク領域101にレーザ光を照射し、その反射光量に応じた信号を生成してデータ処理制御部10に与えることで、後述するスポーク信号の学習を実現する。
【0066】
データ処理制御部10は、光ディスク装置1を構成する各機能部(光ピックアップ40、モータドライバ20等)の制御を行うとともに、各種データ処理を行うことで、光ディスク装置1によるデータの記録・再生とレーベル面に対する描画とを実現する。データ処理制御部10は、特に制限されないが、公知のCMOS集積回路の製造技術によって1個の単結晶シリコンのような半導体基板に形成されている。なお、データ処理制御部10は、1つの半導体集積回路で形成されたものではなく、マルチチップで形成されたものでもよい。
【0067】
データ処理制御部10は、サーボ制御部11、擬似EFG信号生成回路12、CPU13、インターフェース(I/F)部14、記憶部15、信号処理部16、及び演算部17等から構成される。CPU13は、外部ホストPC102からの指示に応じて光ディスク装置1の統括的な制御を行う。I/F部14は、外部ホストPC102とデータ処理制御部10との間の通信を行うため機能と、データ処理制御部10における各機能部間の通信を行うための機能を備えるインターフェース回路であり、例えば、バスやバスインターフェース回路等を含む。記憶部15は、CPU13によって実行されるプログラムが格納される領域と、サーボ制御パラメータ、ストラテジパラメータ、及び、後述するレーベル面の描画を行う前に学習したデータ(駆動電圧情報151、エッジ間隔情報152)やその他の各種情報153が格納される領域と、から構成され、必要に応じてCPU13からの制御命令によりアクセス制御される。前記プログラムが格納される領域は光ディスク装置1の動作中は書き換えが行われないが、前記各種データが格納される領域は、パラメータ値の更新等により書き換えが可能とされる。同図では、代表的に、レーベル面の描画を行う前に学習したデータ(駆動電圧情報151、エッジ間隔情報152)と、その他の各種情報153とが格納される領域が図示されている。
【0068】
演算部17は、光ピックアップ40によって生成された反射光量に基づく信号に基づいて、フォーカスサーボ制御のためのフォーカスエラー信号及び総和信号と、トラッキングサーボ制御のためのトラッキングエラー信号と、を生成する。更に演算部17は、光ピックアップ40によってスポーク領域101にレーザを照射したときの反射光量に応じた信号に基づいて、前記アドレス情報をエンコードした信号(以下、スポーク信号、と称する。)SPの生成が可能とされる。なお、図1では代表的にスポーク信号SPのみが図示されている。
【0069】
スポーク信号SPは、詳細は後述するが、レーベル面の描画を行う前の段階において、後述する駆動電圧を補正するための駆動電圧情報151を学習する際に生成される。スポーク信号SPは、例えば光ディスク装置1のディフェクト検出機能を用いて生成される。例えば、図2に示されるように、光ディスクを回転させてスポーク領域にレーザ光を照射したときの反射光量に応じた信号に基づいて生成した総和信号(PE信号)を2値化することで生成される。スポーク信号のパルス数は、スポーク領域101の透過部と反射部の数に応じて決定される。本実施の形態では、その数は例えば400個であり、光ディスク1回転におけるスポーク信号SPのエッジ数は800個となる。以降の説明では、基準角度0度に対応するエッジを0番とし、360度に対応するエッジを799番として、各エッジを0番から799番までの番号(以下、スポーク番号とも称する。)で表すものとする。
【0070】
サーボ制御部11は、CPU13からの指示に基づいて各種サーボ制御を行う。サーボ制御部11は、例えば、回転制御部110、トラッキング制御部112、フォーカス制御部113、チルト制御部114、スレッド制御部115、及びレジスタ制御部111から構成される。これらの各種サーボ制御は、例えば、DSP(Digital Signal Processor)によって実現される。
【0071】
回転制御部110は、スピンドルモータ30を制御して光ディスクの回転速度を制御する。回転制御部110の詳細は後述する。トラッキング制御部112は、情報記録層に対するデータの記録及び再生時にレーザ光が目的とするトラックをトレースするように制御する。フォーカス制御部113は、情報記録層に対するデータの記録及び再生時に光ディスクに照射したレーザ光が目的とする情報記録層に合焦するように制御する。スレッド制御部115は、光ピックアップ40が搭載されている機構(光ヘッド)を、径方向に移動させるモータを制御する。チルト制御部114は光ディスク100の傾き(チルト)に対し、光ピックアップ40のレンズを傾きが垂直になるように制御する。レジスタ制御部111は、回転制御部110、トラッキング制御部112、フォーカス制御部113、チルト制御部114、及びスレッド制御部115等の各機能部に設けられた夫々のレジスタ(以下、サーボ関連レジスタ群、とも称する。)を統括的に管理する。レジスタ制御部111の詳細は後述する。
【0072】
ここで、回転速度信号SFGを用いた光ディスク100の回転制御について説明する。
【0073】
前述したように、従来技術では、光ピックアップ40を用いてレーベル面に描画を行う際、スポーク領域101をエンコードしたEFG信号を、別途設けた光エンコーダによって生成し、生成したEFG信号に基づいて光ディスク100の回転制御を行う。一方、光ディスク装置1は、光エンコーダによってEFG信号を生成する代わりに、モータドライバ20によって生成された回転速度信号SFGに基づいて回転制御を行う。
【0074】
図4は、回転制御部110の回路構成の一例を示すブロック図である。同図に示される回転制御部110は、速度制御部1101、速度エラーレジスタ1102、駆動電圧生成部1103、駆動電圧レジスタ1104、オフセット補正部1105、PWM信号生成部1106、目標速度設定レジスタ1107、位相制御部1108、位相エラーレジスタ1109、速度エラー累積部1110、セレクタ1111、及びオフセットレジスタ1102を備える。
【0075】
目標速度設定レジスタ1107には、目標とする回転速度に応じた回転速度信号SFGの目標周期を示すカウント値が設定される。レーベル面に対する描画は線速度一定となる回転制御で行われるため、例えば、ファームウェア(F/W)によって前記スレッド制御部115のレジスタに設定された径方向のモータの移動量に応じて、目標周期を示すカウント値が更新される。例えば、描画位置が光ディスクの外周方向に移動する場合には、回転速度を低速にするため、目標周期を示すカウント値はより大きな値に更新される。目標周期を示すカウント値は、例えば描画位置が径方向に1トラック移動する毎に変更される。
【0076】
モータドライバ20によって生成された回転速度信号SFGは速度制御部1101に入力される。速度制御部1101は、回転速度信号SFGの周期と目標とする回転速度に応じた周期との差分を表す速度エラー情報を生成する。具体的には、速度制御部1101は、内部に設けられた速度検出用のカウンタを用いて回転速度信号SFGの1周期の時間をカウントし、そのカウント値と目標速度設定レジスタ1107に設定された目標周期を示すカウント値との差分を算出する。そして、速度制御部1101は、算出した差分を示す情報を速度エラー情報として速度エラーレジスタ1102に格納する。なお、算出された差分は、必要に応じてゲイン倍され、後述する位相エラー情報等の他のエラー情報と間で重みづけを行うことが可能となる。また、ゲインをゼロとすることで速度エラー情報をゼロとし、回転制御に用いないようにすることも可能である。
【0077】
図5は、回転速度信号SFGを用いた速度制御の一例を示す説明図である。同図に示されるように、速度制御部1101は、速度検出用のカウンタを用いて回転速度信号SFGの1周期の時間をダウンカウントし、目標周期を示すカウント値との差分を速度エラーとする。そして、後段の駆動電圧生成部1103やPWM信号生成部1106等によって、速度エラーの値がゼロになるように回転速度が調整されることで、回転速度信号SFGの周期が目標周期と一致し、光ディスクが目標とする回転速度で回転するようになる。
【0078】
速度エラー累積部1110は、速度エラーレジスタ1102が更新される毎に、速度エラーレジスタ1102に設定された値を累積し、累積速度エラー情報として出力する。累積速度エラー情報も必要に応じて源に倍され、ゲインをゼロとすることで累積速度エラー情報をゼロとし、回転制御に用いないようにすることも可能である。
【0079】
また、回転速度信号SFGは位相制御部1108にも入力される。位相制御部1108は、回転速度信号SFGの位相ずれを表す位相エラー情報を生成する。具体的には、位相制御部1108は、内部に設けられた位相検出用のカウンタを用いて回転速度信号SFGの1周期の時間をカウントし、回転速度信号SFGの立ち上がりエッジのタイミングでのカウント値と、目標速度設定レジスタ1107に設定された目標周期の半分の時間となるカウント値との差分を算出する。そして、位相制御部1108は、算出した差分を示す情報を位相エラー情報として位相エラーレジスタ1109に格納する。なお、算出された差分は、必要に応じてゲイン倍され、前述の速度エラー情報等の他のエラー情報と間で重みづけを行うことが可能となる。また、ゲインをゼロとすることで位相エラー情報をゼロとし、回転制御に用いないようにすることも可能である。
【0080】
図6は、回転速度信号SFGを用いた位相制御の一例を示す説明図である。同図に示されるように、速度制御部1101は、速度検出用のカウンタを用いて回転速度信号SFGの1周期の時間をダウンカウントし、回転速度信号SFGの立ち上がりエッジのタイミングでのカウント値と、目標周期の半分の時間となるカウント値との差分を位相エラーとする。そして、後段の駆動電圧生成部1103やPWM信号生成部1106等によって、位相エラーの値がゼロになるように回転速度が調整されることで、回転速度信号SFGの立ち上がりエッジの検出位置を揃えることができる。
【0081】
セレクタ1111は、位相エラーレジスタ1109に格納された位相エラー情報と速度エラー累積部1110によって生成された累積速度エラー情報のいずれかを選択して出力する。実際にモータ制御を行う際、速度エラー情報のみでの制御だけでは目標速度付近まで到達することはできるが、目標速度との僅かなエラーが残り、目標速度に到達できない場合がある。そこで累積速度エラー情報又は位相エラー情報を制御に反映させることで、僅かなエラーをゼロにすることができる。位相エラー情報と累積速度エラー情報は共に回転速度信号SFGのエッジの検出位置のずれを示すため、どちらを選択して出力するかは、特に制限はないが、ジッタの多い状態では位相エラー情報の信頼度が低くなる虞がある。そこで、本実施の形態では、回転速度信号SFGのジッタが大きい場合を考慮し、累積速度エラー情報を出力するものとして説明する。
【0082】
速度エラーレジスタ1102に格納された速度エラー情報と、セレクタ1111によって選択された累積速度エラー情報は駆動電圧生成部1103に入力される。駆動電圧生成部1103は、速度エラー情報の値と累積速度エラー情報の値とを加算し、加算したエラー情報の値に応じた駆動電圧を算出する。前記駆動電圧はスピンドルモータ30の回転速度を指示する電圧であり、例えば駆動電圧が大きくなるほどスピンドルモータの回転速度が高くなるように制御される。具体的には、駆動電圧生成部1103は、加算したエラー情報の値がゼロになるように前記駆動電圧を算出する。例えば、加算したエラー情報の値が、回転速度信号SFGの周期が目標周期よりも長い(目標速度よりも遅い)ことを示している場合には、回転速度がより高速になるように、より大きな駆動電圧を算出する。一方、加算したエラー情報の値が、回転速度信号SFGの周期が目標周期よりも短い(目標速度よりも速い)ことを示している場合には、回転速度がより低速になるように、より小さな駆動電圧を算出する。算出された駆動電圧の値は、駆動電圧レジスタ1104に格納される。駆動電圧レジスタ1104に格納された駆動電圧は、後述するオフセット補正部1105によって補正され、PWM信号生成部1106に入力される。なお、参照符号1104は、前記駆動電圧レジスタのみならず、当該レジスタに格納される値をも表すものとする。PWM信号生成部1106は、入力された駆動電圧の値に応じたデューティ比のPWM信号を生成し、モータドライバ20に出力する。モータドライバ20は、供給されたPWM信号に基づいてスピンドルモータを回転させる。以上のように、速度エラーがゼロになるように回転速度を制御することにより、光ディスク100を目標とする回転速度で回転させることができる。
【0083】
しかしながら、前述したように、回転速度信号SFGは分解能が低く(例えば、1回転あたり18パルス)、またジッタが大きいため、回転中にトルクリップが発生するとトルクリップル分を抑えた回転制御ができず、回転速度が変動する虞がある。このことについて、図7を用いて説明する。
【0084】
図7は、光エンコーダで生成したEFG信号を用いて回転制御を行った場合の駆動電圧の一例を示す説明図である。前述したように、EFG信号は1回転あたり例えば400個のパルスを発生させる。したがって、EFG信号を用いて回転制御を行う場合には、1回転あたり400回の速度エラーの算出が可能となる。このため、同図のように短い時間間隔でトルクリップルが発生した場合であっても、トルクリップルによる回転速度の変動を速度エラーとして検出し、その変動分をフィードバックして回転制御を行うことが可能となる。すなわち、トルクリップルを打ち消すように駆動電圧を調整することができ、安定した回転制御が見込める。一方、回転速度信号SFGは、前述のように1回転あたり18個のパルスしか発生しないため、1回転あたり18回の速度エラーの算出しかできない。そのため、同図にように短い時間間隔でトルクリップルが発生すると、トルクリップルによる回転速度の変動を速度エラーとしてフィードバックできない可能性が高い。そこで、光ディスク装置1では、事前に、光ピックアップ40によってスポーク領域101をエンコードしたスポーク信号SPを用いて、目標とする回転速度で光ディスク100を回転させ、光ディスクが1回転する間に発生した前記スポーク信号SPの各エッジのタイミングにおける駆動電圧の値を、駆動電圧情報151として学習し、記憶部15に格納する。そして、描画中に回転速度信号SFGに基づいて算出した駆動電圧を前記駆動電圧情報151に基づいて補正することで、トルクリップルによる回転速度の変動を緩和させる。
【0085】
図8は、駆動電圧の出力パターンを学習する方法の一例を示す説明図である。
【0086】
同図に示されるように、レーベル面に対する描画を行う前段階で、スポーク信号SPを用いて光ディスク100を目標とする回転速度で回転させる。具体的には、光ピックアップ40を用いてスポーク領域101をエンコードし、スポーク信号SPを生成する。このとき、回転制御部110は、回転制御信号SFGの代わりにスポーク信号SPを入力し、スポーク信号SPに基づいて回転制御を行う。すなわち、回転制御部110は、スポーク信号SPのエッジを検出し、エッジを検出する毎に前述した方法で速度エラー情報及び累積速度エラー情報(又は位相エラー情報)を生成し、生成したエラー情報に基づいて、光ディスク100が目標とする回転速度になるように制御する。このように、回転速度信号SFGのパルス数(18パルス)よりもパルス数の多いスポーク信号SP(400パルス)を用いて回転制御を行うことで、トルクリップルによる影響を抑えた回転制御を行う。その後、回転速度が安定したら、光ディスク100が1回転する間に生成されたスポーク信号SPの各エッジのタイミングにおける駆動電圧レジスタ1104の値を学習する。すなわち、トルクリップルによる影響を抑えた回転制御を行っているときの駆動電圧の値を、スポーク信号SPのエッジ毎に学習する。
【0087】
図9は、駆動電圧情報の格納方法の一例を示す説明図である。レジスタ制御部111は、I/F部14を介してCPU13内のレジスタ131と接続される。CPU13からサーボ関連レジスタ群の特定のレジスタを読み出す命令が発行されると、レジスタ制御部111は当該レジスタの値をCPU13内のレジスタ131に格納する。そして、CPU13がCPU13内のレジスタ131に設定された値を記憶部15に格納する。例えば、上記のようにスポーク信号SPに基づく回転制御によって回転速度が安定したら、CPU13がレジスタ制御部111に対して駆動電圧レジスタ1104にアクセスする命令を発行する。命令を受けたレジスタ制御部111は、スポーク信号SPのエッジ毎に駆動電圧レジスタ1104の値を取得し、CPU13内のレジスタ131に格納する。例えば、図8に示されるように、レーベル面の角度毎(スポーク信号SPの0番から799番までのエッジ毎)に駆動電圧レジスタ1104の値を取得する。CPU13は、レジスタ131に格納された値を順次、駆動電圧情報151として記憶部15に格納する。駆動電圧情報151は、例えば、スポーク信号SPのレーベル面の位置を示す角度毎(0番から799番までのエッジ毎)の駆動電圧の値を含む情報である。これにより、光ディスク1回転する間の各角度(各エッジ)における駆動電圧を記憶することができる。
【0088】
その後描画を行う際には、回転制御部110におけるオフセット補正部1105が、回転速度信号SFGに基づいて算出された駆動電圧に対して、学習した駆動電圧情報151の値を加算することで補正する。具体的には、先ず、CPU13がレジスタ制御部111に対してオフセットレジスタ1112にアクセスする命令を発行するとともに記憶部15にアクセスし、スポーク信号SPの0番から799番までのエッジ毎(レーベル面の位置を示す角度毎)に駆動電圧情報151を読み出して、前記レジスタ131に順次格納する。前記命令を受けたレジスタ制御部111は、前記レジスタ131の値を読み出し、オフセット補正量としてオフセットレジスタ1112に設定する。例えば、レジスタ制御部111は、後述する擬似EFG信号の0番から799番までのエッジを検出する毎に、検出したエッジ番号に対応した駆動電圧情報151を読み出して、前記オフセットレジスタ1112に設定する。オフセット補正部1105は、回転速度信号SFGに基づいて算出された駆動電圧とオフセットレジスタ1112の値とを加算し、加算した駆動電圧をPWM信号生成部1106に出力する。これにより、回転速度信号SFGに基づいて算出された駆動電圧を、トルクリップルによる影響を抑えた回転制御を行ったときの駆動電圧を用いて、擬似EFG信号のスポーク番号(0番から799番までのエッジ)に合わせてフィードフォワードで補正することができるから、トルクリップルによる回転速度の変動を緩和させることができる。なお、光ディスク100を回転させている間はトルクリップルが発生する位置は一定であるが、回転を一旦停止させた場合にはトルクリップルが発生する位置が変化する可能性が高いので、その場合には、再度、駆動電圧情報151を学習する必要がある。
【0089】
次に、擬似EFG信号を用いた描画制御について説明する。
【0090】
前述したように、従来技術では、光ピックアップ40を用いてスポーク領域101をエンコードしたEFG信号を生成し、EFG信号を用いて描画位置を把握する。光ディスク装置1では、光エンコーダによるEFG信号を用いる代わりに、描画を行う前段階において、光ピックアップ40でスポーク領域101をエンコードしたスポーク信号SPの各エッジ間隔を示す情報を学習して記憶部15に記憶するとともに、記憶したエッジ間隔を示す情報に基づいてレーベル面上のアドレスに応じたエッジ間隔を擬似的に示す擬似エンコード信号(擬似EFG信号)を生成し、前記擬似エンコード信号に基づいてレーベル面に対する描画を制御する。
【0091】
図10は、擬似EFG信号生成回路12の回路構成の一例を示す説明図である。擬似EFG信号生成回路12は、エッジ検出部120、エッジ検出時刻格納レジスタ121、タイマ122、タイマ設定レジスタ123、信号出力時刻格納レジスタ124、及びフリップフロップ回路(FF)125、エッジ検出時刻格納レジスタ126、及びエッジ検出部127から構成される。
【0092】
エッジ検出部120は、スポーク信号SPのエッジを検出し、エッジを検出したことを示す信号を出力する。タイマ122は、フリーランカウンタであり、タイマ設定レジスタ123の設定値に基づいて動作する。タイマ設定レジスタ123は、タイマ122によってカウントするタイマ値が設定される。タイマ設定レジスタ123は、読み出しと書き換えが可能なレジスタであり、例えば、CPU13によって実行されるファームウェア(F/W)によってI/F部14を介して値が設定される。エッジ検出時刻格納レジスタ121は、エッジ検出部120による前記エッジを検出したことを示す信号に応じてタイマ122の値を保持する。エッジ検出時刻格納レジスタ121は、例えば読み出し専用のレジスタである。
【0093】
擬似EFG信号生成回路12によるスポーク信号SPのエッジ間隔を学習する方法について説明する。
【0094】
レーベル面に対する描画を行う前段階において、前述の駆動電圧の学習が完了したら、回転制御部110は、回転速度信号SFGと事前に記憶した駆動電圧情報151を用いて、光ディスク100を目標とする回転速度で回転させる。その後、回転速度が安定したら、光ピックアップ40によりスポーク領域にレーザ光を照射し、その反射光量に応じた信号に基づいて演算部17がスポーク信号SPを生成する。生成されたスポーク信号SPは擬似EFG信号生成回路12のエッジ検出部120に入力される。エッジ検出部120はスポーク信号SPのエッジを検出し、エッジ検出時刻格納レジスタ121は、前記エッジが検出される毎にタイマ122の値を保持する。CPU13は、I/F部14を介してエッジ検出時刻格納レジスタ121に設定された値を順次読み出し、光ディスク100が1回転する間に生成されたスポーク信号SPの各エッジ間隔を算出し記憶部15に格納する。
【0095】
図11にスポーク信号SPのエッジ間隔を学習する方法の一例を示す。エッジ間隔情報152の算出は、同図に示されるように、スポーク信号SPのエッジの検出、タイマによる計時、及びエッジ間隔の算出、の順で行われる。具体的には、検出時のエッジ検出部120によってスポーク信号SPの1つのエッジが検出されると、そのときのタイマの値がエッジ検出時刻格納レジスタ121に格納される。CPU13は、エッジ検出時刻格納レジスタ121の値を読み出して、CPU13内のレジスタに格納する。そして、エッジ検出部120が次のエッジを検出したら、1つ前のエッジ検出時のエッジ検出時刻格納レジスタ121の値と当該エッジ検出時のエッジ検出時刻格納レジスタ121の値との差分を算出し、その差分をエッジ間隔情報152として記憶部15に格納する。エッジ間隔情報152は、例えば、スポーク信号SPの0番から799番までのエッジ間隔の値と、エッジの向き(立ち上がり又は立ち下がり)を示す情報とが含まれる。以上の処理により、目標とする回転速度で光ディスク100を回転させたときのスポーク信号SPのエッジ間隔を学習することができる。
【0096】
次に、学習したスポーク信号SPのエッジ間隔情報152に基づいて、擬似EFG信号を生成する方法について説明する。
【0097】
描画を行う際、CPU13は回転制御部110を制御し、回転速度信号SFGと事前に記憶した駆動電圧情報151を用いて、光ディスク100を目標とする回転速度で回転させる。その後、回転速度が安定したら、CPU13は、記憶部15に格納された0番から799番までのエッジ間隔情報152を読み出し、擬似EFG信号生成回路12の信号出力時刻格納レジスタ124に順次格納する。信号出力時刻格納レジスタ124は、読み出しと書き換えが可能なレジスタである。フリッププロップ回路125は、信号出力時刻格納レジスタ124に設定された情報に応じたパルス幅の信号を発生させ、擬似EFG信号として出力する。これにより、描画中に光ピックアップ40や光エンコーダによってスポーク領域101を読み取らなくても、学習したスポーク信号SPを再現した擬似EFG信号を生成することができる。
【0098】
また、擬似EFG信号は描画位置の半径方向の移動に応じて、各エッジ間隔が調整される。
【0099】
図12に擬似EFG信号のエッジ間隔を調整する方法の一例を示す。前述したように、レーベル面の描画中では線速度一定で回転制御が行われるため、描画位置の半径方向の移動にともない光ディスクの回転速度が変化する。例えば、レーベル面の最内周部を描画するときに光ディスクを100rpmの回転速度で回転させる場合、外周部を描画する際には例えば40rpmの回転速度で回転させる。これにより、仮に描画中にスポーク領域101を読み出してEFG信号を生成すると、EFG信号のエッジ間隔も描画位置が外周方向に移動するにつれて広がることになる。そこで、光ディスク装置1では、描画位置の半径方向の移動に応じて、擬似EFG信号のエッジ間隔を調整する制御を行う。具体的には、CPU13が、光ディスク1回転に要する時間の平均値を算出し、前記平均値に応じてエッジ間隔を調整する。例えば、図10において、エッジ検出部127が回転制御信号SFGのエッジを検出する毎に、そのときのタイマ122の値がエッジ検出時刻格納レジスタ126に格納され、CPU13はエッジ検出時刻格納レジスタ126の値を順次読み出して、光ディスク1回転分にあたる回転速度信号SFGの18パルス分の時間を算出し、その時間を1回転あたりの時間とする。そして、CPU13は、算出した前記1回転あたりの時間の平均をとり、1回転あたりの平均時間を算出する。CPU13は、算出した前記平均時間に基づいてエッジ間隔の伸長率を決定する。例えば、前記伸長率は、前記平均時間が大きくなるほど大きくなるように決定される。そして、CPU13は、学習したスポーク信号SPのエッジ間隔情報152に含まれる0番から799番までのエッジ間隔を示す値に前記伸長率を乗算することで補正し、補正後の値を信号出力時刻格納レジスタ124に設定する。これにより、描画位置の半径方向の移動に応じて擬似EFG信号の各エッジ間隔が調整されるので、より精度の高い擬似EFG信号を生成することができる。
【0100】
以上のように、光ディスク装置1は、レーベル面の描画中に、回転速度信号SFGと学習した駆動電圧情報151に基づいて回転速度制御を行うとともに、学習したスポーク信号SPのエッジ間隔情報152に基づいて擬似EFG信号を生成し、生成した擬似EFG信号に基づいて描画位置(レーベル面上の角度)を把握して描画制御を行う。これにより、光エンコーダを用いることなくレーベル面の描画を精度よく行うことが可能となり、光ディスク装置1の部品コストの低減を図ることができる。
【0101】
次に、レーベル面に対する描画処理の流れについて説明する。
【0102】
前述した駆動電圧情報151の学習には例えば約1秒の処理時間を要し、スポーク信号SPのエッジ間隔情報152の学習には例えば約6秒の処理時間を要する。そこで、光ディスク装置1は、ホストPC102を介したユーザからのレーベル面に対する描画開始の指示を受けとってから、駆動電圧情報151及びエッジ間隔情報152の学習に係る処理を実行することで、ユーザの心理的負担を軽減させる。
【0103】
図13は、光ディスク装置1によるレーベル面に対する描画処理の流れの一例を示すフロー図である。
【0104】
先ず、光ディスク100が光ディスク装置1に装填されると、光ディスク装置1は、装填された光ディスク100がレーベル面の描画機能に対応した光ディスク(例えばライトスクライブ対応光ディスク)であるか否かを判別する(S101)。レーベル面の描画機能に対応した光ディスクと判別したら、光ディスク装置1はレーベル面の描画のための初期セットアップを開始する(S102)。初期セットアップでは、例えば、スピンドルモータ20を制御するための信号のSFG信号への切り替え、スピンドルモータ20の制御ゲイン等の各種レジスタの設定、及びトラッキング感度等の学習等が行われる。初期セットアップの完了後、ホストPC102から描画処理の開始の指示を受けると、光ディスク装置1は描画のための処理を開始する(S103)。先ず、光ディスク装置1は、前述した方法により駆動電圧情報151の学習を行う(S104)。次に、前述した方法によりスポーク信号SPのエッジ間隔情報152の学習を行う(S105)。その後、光ディスク装置1は、駆動電圧情報151及びエッジ間隔情報152を用いて、前述の制御を行うことにより、レーベル面に描画を行う(S106)。以上のように図13の処理フローによれば、ユーザからの描画指示を受けてから駆動電圧情報151及びエッジ間隔情報152の学習に係る処理を実行するので、ユーザが光ディスク100を装填してから描画指示を出すまでの時間を短くすることができる。
【0105】
ここで、仮に、光ディスク装置1が図14の処理フローにしたがって描画処理を行う場合を考える。
【0106】
図14は、前記図13に示した描画処理フローに対する比較例としてのフロー図である。同図において、先ず、ステップ101でレーベル面の描画機能に対応した光ディスクと判別したら、光ディスク装置1は各種のセットアップを行う(S201)。当該セットアップでは、前述したステップ102の初期セットアップと、ステップ104の駆動電圧情報151の学習に係る処理と、ステップ105のスポーク信号SPのエッジ間隔情報152の学習に係る処理とが実行される。その後、セットアップ処理が完了したら、光ディスク装置1はホストPC102から描画処理の開始の指示を受けとり(S103)、レーベル面の描画を開始する(S106)。以上のように、図14の処理フローでは、ホストPC102からの描画開始の指示を受け取る前に、駆動電圧情報151及びエッジ間隔情報152の学習に係る処理を行うため、ユーザが光ディスク100を装填してから描画指示を出すことができるようになるまでの時間が長くなり、ユーザの心理的負担が増す虞がある。一方、図13に示される本実施の形態に係る描画処理フローによれば、光ディスク装置1は、ホストPC102からの描画開始の指示を受けとる前の段階では前記初期セットアップを実行し、前記指示を受け取った後に駆動電圧情報151及びエッジ間隔情報152の学習に係る処理を実行する。これにより、光ディスク100を装填してからユーザが描画指示を出すことができるようになるまでの時間を短くすることができるので、ユーザの心理的負担を軽減させることが可能となる。
【0107】
≪実施の形態2≫
図15は、実施の形態2に係る光ディスク装置の一例を示すブロック図である。同図に示される光ディスク装置2において、実施の形態1に係る光ディスク装置1の構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0108】
光ディスク装置2と光ディスク装置1とは、擬似EFG信号の生成方法が相違する。具体的には、光ディスク装置2は、学習したスポーク信号SPのエッジ間隔情報152に基づいて擬似EFG信号を生成するのではなく、光ディスク100を目標とする回転速度で1回転させたときに要する時間内にレーベル面のアドレス数に応じた数のパルスが均等に出力されるようにエッジ間隔を調整して擬似EFG信号を生成する。
【0109】
図16は、擬似EFG信号生成回路22による擬似EFG信号の生成方法の一例を示す説明図である。同図に示されるように、擬似EFG信号は、光ディスクが1回転する間の時間に400個のパルスが均等に出力されるように生成される。例えば、擬似EFG信号生成回路22は、ファームウェアによって設定されたスピンドルモータの目標とする回転速度の情報(例えば、回転制御部110の目標速度設定レジスタ1107に設定されたカウント値)から、光ディスクが1回転するのに要する理想の回転時間を算出する。例えば、目標とする回転速度をvとし、描画するトラックの円周をrとすると、理想の回転時間はr/vとなる。なお、目標とする回転速度は、例えば描画位置が径方向に1トラック移動する毎に変更される。次に擬似EFG信号生成回路22は、算出した理想の回転時間r/vを所望の擬似EFG信号のエッジの数で除算することで当該トラック描画中に出力する擬似EFG信号のエッジ間隔を算出する。例えば、光ディスク1回転で400パルス出力する擬似EFG信号を生成する場合、エッジの数は800となり、擬似EFG信号のエッジ間隔はr/800vとなる。擬似EFG信号生成回路22は、算出したエッジ間隔ごとに信号を反転して出力することで擬似EFG信号を生成する。なお、前記理想の回転時間の算出やエッジ間隔の算出はCPU13が行ってもよい。この場合、CPU13が算出したエッジ間隔の値を擬似EFG信号生成回路22内のレジスタ等に設定し、擬似EFG信号生成回路22が当該レジスタ等の値に応じて擬似EFG信号を生成する。
【0110】
以上実施の形態2に係る光ディスク装置2によれば、光ディスク装置1と同様に、光エンコーダを用いることなくレーベル面の描画を精度よく行うことができ、且つ、事前にスポーク領域101をエンコードしてスポーク信号SPのエッジ間隔情報を学習することなく、容易に擬似エンコード信号を生成することができる。
【0111】
≪実施の形態3≫
図17は、実施の形態3に係る光ディスク装置の一例を示すブロック図である。同図に示される光ディスク装置3において、光ディスク装置1、2の構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0112】
光ディスク装置3と前記光ディスク装置1、2とは、回転制御における速度エラー情報及び位相エラー情報の生成方法が相違する。具体的には、光ディスク装置3は、光ディスク装置1、2のように回転制御信号SFGの1パルス毎に速度エラー情報等を生成するのではなく、スピンドルモータ30における固定子の巻き線に流れる電流の周期毎に速度エラー情報等を生成する。その他の構成は前記光ディスク装置1、2と同様であり、図17では代表的に光ディスク装置1をベースとした光ディスク装置3を示している。
【0113】
前記図3に示したように、スピンドルモータ30が3相モータである場合、回転速度信号SFGはスピンドルモータ30の固定子における3つの巻き線(U相、V相、及びW相)に流れるU相電流、V相電流、及びW相電流に基づいて生成され、回転制御信号SFGのエッジは、U相電流、V相電流、及びW相電流の夫々のゼロクロス点のタイミングで決定される。例えば3相モータの場合、回転速度信号SFGの1.5×nパルス毎に同一相の電流のゼロクロス点に対応するエッジが現れる。例えば、図3では、タイミングt0でV相電流がゼロになり、その後タイミングt1及びタイミングt2で再度V相電流がゼロになるため、回転速度信号SFGは、タイミングt0からタイミングt1までの期間に1.5パルスが出力され、V相電流の1周期となるタイミングt0からタイミングt2までの期間に3パルスが出力される。
【0114】
図18及び図19に3相モータを駆動するモータドライバによって生成した回転速度信号SFGのジッタの計測結果の一例を示す。図18は1パルス分の回転速度信号SFGのパルス幅を測定した結果であり、図19は3パルス分の回転速度信号SFGのパルス幅を測定した結果である。図18及び図19に示されるように、1パルス分のパルス幅のばらつき(ジッタ)を示す標準偏差は4.39msであるが、3パルス分のパルス幅のばらつきを示す標準偏差は1.35msである。すなわち、同一相の電流のゼロクロス点に応じたタイミングで決定されるパルス幅の方が、ばらつきが小さいことが理解される。そこで、実施の形態3では、同一相の電流のゼロクロス点に対応する回転速度信号SFGのエッジ毎に速度エラー情報等を生成する。ここでは、一例として、3相モータのU相電流、V相電流、及びW相電流の夫々の周期毎に速度エラー情報等を生成する方法を説明する。
【0115】
図20は、実施の形態3に係る回転制御部210の一例を示すブロック図である。同図に示される回転制御部210は前述の図4に示した速度制御部1101及び位相制御部1108に代えて、3系統(U相、V相、及びW相)の電流夫々に対応したパルスについて3パルス通過毎に速度誤差および位相誤差を検出するための機能部を備える。具体的には、前記機能部として、エッジ検出部2101、制御方式選択レジスタ2102、速度制御部2103、及び位相制御部2104を備える。
【0116】
エッジ検出回路2101は、入力された回転速度信号SFGの立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジを検出する。制御方式選択レジスタ2102は、回転速度信号SFGの速度誤差及び位相誤差を1パルス毎に検出するか、又は3パルス毎に検出するかを決定するためのレジスタであり、例えば、ファームウェアによって設定される。例えば、3パルス毎の制御方式が設定された場合、前記目標速度設定レジスタ1107には、目標とする回転速度に応じた回転速度信号SFGの目標周期を示すカウント値として目標周期の3周期分のカウント値が設定される。また、1パルス毎の制御方式が設定された場合、前記目標速度設定レジスタ1107には、目標とする回転速度に応じた回転速度信号SFGの目標周期を示すカウント値として目標周期の1周期分のカウント値が設定される。
【0117】
速度制御部2103は、速度検出カウンタ2105_A〜2105_C(総称する場合は、単に、速度検出カウンタ2105と記す。)、及び速度エラーセレクタ2106を備える。速度検出カウンタ2105は、制御方式選択レジスタ2102に設定された制御方式にしたがって、回転速度信号SFGの目標とする回転速度に対する速度誤差を検出し、速度エラー情報を生成する。例えば、制御方式選択レジスタ2102に1パルス毎の制御方式を指示する値が設定された場合には、速度検出カウンタ2105_Aが、前述の図5に示した方法により、1パルス毎に回転速度信号SFGの速度エラー情報を生成する。一方、制御方式選択レジスタ2102に3パルス毎の制御方式を指示する値が設定された場合には、速度検出カウンタ2105_A〜2105_Cの夫々が、3パルス毎に回転速度信号SFGの速度エラー情報を生成する。例えば、速度検出カウンタ2105_AはU相電流の周期に対応するタイミングで速度誤差を検出し、速度検出カウンタ2105_BはV相電流の周期に対応するタイミングで速度誤差を検出し、速度検出カウンタ2105_CはW相電流の周期に対応するタイミングで速度誤差を検出する。
【0118】
3パルス毎の速度エラー情報の生成方法を図21に例示する。同図に示されるように、速度検出カウンタ2105_A〜2105_Cは、回転速度信号SFGが3パルス通過する毎(回転速度信号SFGのエッジを4つ検出する毎)に速度エラー情報を生成する。例えば、速度検出カウンタ2105_Aは、タイミングtA1からカウントを開始し、回転速度信号SFGが3周期経過したタイミングtA2において、当該カウントした値と前記目標速度設定レジスタ1107に設定された目標周期の3周期分のカウント値との差分を示す速度エラー情報A2を生成して出力する。また、速度検出カウンタ2105_Bは、タイミングtB1からカウントを開始し、回転速度信号SFGが3周期経過したタイミングtB2において、当該カウントした値と前記目標速度設定レジスタ1107に設定された目標周期の3周期分のカウント値との差分を示す速度エラー情報B2を生成して出力する。更に、速度検出カウンタ2105_Cは、タイミングtC1からカウントを開始し、回転速度信号SFGが3周期経過したタイミングtC2において、当該カウントした値と前記目標速度設定レジスタ1107に設定された目標周期の3周期分のカウント値との差分を示す速度エラー情報C2を生成して出力する。生成された速度エラー情報は、速度エラーセレクタ2106に入力される。速度エラーセレクタ2106は、速度検出カウンタ2105_A〜2105_Cによって生成された速度エラー情報を順次選択して速度エラーレジスタ1102に設定する。例えば、図21に示されるように、生成された順に速度エラー情報を選択して速度エラーレジスタ1102に設定する。速度エラーレジスタ1102に速度エラー情報が設定された後の処理は、前述した回転制御部110の処理と同様である。
【0119】
位相制御部2104は、位相検出カウンタ2107_A〜2107_C(総称する場合は、単に、位相検出カウンタ2107と記す。)、及び位相エラーセレクタ2108から構成される。位相検出カウンタ2107は、制御方式選択レジスタ2102に設定された制御方式にしたがって、回転速度信号SFGの位相誤差を検出し、位相エラー情報を生成する。例えば、制御方式選択レジスタ2102に1パルス毎の制御方式を指示する値が設定された場合には、位相検出カウンタ2107_Aが、前述の図6に示した方法により、1パルス毎に回転速度信号SFGの位相エラー情報を生成する。一方、制御方式選択レジスタ2102に3パルス毎の制御方式を指示する値が設定された場合には、位相検出カウンタ2107_A〜2107_Cの夫々が、3パルス毎に回転速度信号SFGの位相エラー情報を生成する。例えば、位相検出カウンタ2107_AはU相電流の周期に対応するタイミングで位相誤差を検出し、位相検出カウンタ2107_BはV相電流の周期に対応するタイミングで位相誤差を検出し、位相検出カウンタ2107_CはW相電流の周期に対応するタイミングで位相誤差を検出する。
【0120】
3パルス毎の位相エラー情報の生成方法を図22に例示する。同図に示されるように、位相検出カウンタ2107_A〜2107_Cは、回転速度信号SFGが3パルス通過する毎(回転速度信号SFGのエッジを4つ検出する毎)に位相エラー情報を生成する。例えば、位相検出カウンタ2107_Aは、タイミングtXA1からカウントを開始し、回転速度信号SFGが1.5周期(3周期の半分)経過したタイミングtXA2において、当該カウントした値と前記目標速度設定レジスタ1107に設定されたカウント値の半分の値との差分を示す位相エラー情報XA2を生成して出力する。また、位相検出カウンタ2107_Bは、タイミングtXB1からカウントを開始し、回転速度信号SFGが1.5周期(3周期の半分)経過したタイミングtXB2において、当該カウントした値と前記目標速度設定レジスタ1107に設定されたカウント値の半分の値との差分を示す位相エラー情報XB2を生成して出力する。更に、位相検出カウンタ2107_Cは、タイミングtXC1からカウントを開始し、回転速度信号SFGが1.5周期(3周期の半分)経過したタイミングtXC2において、当該カウントした値と前記目標速度設定レジスタ1107に設定されたカウント値の半分の値との差分を示す位相エラー情報XC2を生成して出力する。生成された位相エラー情報は、位相エラーセレクタ2108に入力される。位相エラーセレクタ2108は、位相検出カウンタ2107_A〜2107_Cによって生成された位相エラー情報を順次選択して位相エラーレジスタ1109に設定する。例えば、図22に示されるように、生成された順に位相エラー情報を選択して位相エラーレジスタ1109に設定する。位相エラーレジスタ1109に位相エラー情報が設定された後の処理は、前述した回転制御部110の処理と同様である。
【0121】
以上、実施の形態3に係る光ディスク装置3によれば、スピンドルモータの同一相の電流のゼロクロス点に対応するエッジ毎に速度誤差及び位相誤差を検出することで、速度エラー情報及び位相エラー情報に対する回転速度信号SFGのジッタの影響を小さくすることができ、描画中に光ディスク100をより安定して回転させることができる。また、光ディスク装置3は、特許文献2に記載された方法のように、回転制御の精度を上げるために光ディスク1回転における前記回転制御信号の全てのパルスのタイミングでエラー成分を算出しないので、回路規模の増大を抑えつつ、精度の良い速度エラー情報及び位相エラー情報の生成を効率よく行うことができる。
【0122】
以上本発明者によってなされた発明を実施形態に基づいて具体的に説明したが、本発明はそれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは言うまでもない。
【0123】
例えば、実施の形態3において、図17では光ディスク装置1の回転制御部110の代わりに回転制御部210を適用する場合を一例として示したが、これに限られず、光ディスク装置2の回転制御部110の代わりに回転制御部210を適用してもよい。また、速度誤差及び位相誤差を3系統(U相、V相、W相)毎に検出する方法を示したが、これに限られず、U相、V相、及びW相のうちいずれか1系統又は2系統に対応する周期(ゼロクロス点に対応するエッジ)毎に検出する方法でもよい。更に、スピンドルモータは3相モータに限られず、例えば2相又は5相モータであってもよく、この場合も同一相の電流の周期(ゼロクロス点に対応するエッジ)毎に速度誤差及び位相誤差を検出することで、実施の形態3と同様に、速度エラー情報及び位相エラー情報に対する回転速度信号SFGのジッタの影響を小さくすることができる。
【0124】
また、実施の形態1乃至3では、描画中の回転制御において、速度エラー情報に基づいて生成された駆動電圧をオフセット補正部1105によって補正する方法を例示したが、高精度の回転速度信号SFGが生成可能である場合には、前記速度エラー情報に基づいて生成された駆動電圧を補正することなく、PWM信号生成部1106に入力してもよい。
【符号の説明】
【0125】
1、2、3 光ディスク装置
102 ホストPC
100 光ディスク
101 スポーク領域
20 モータドライバ
30 スピンドルモータ
40 光ピックアップ
10 データ処理制御部
12 擬似EFG信号生成回路
13 CPU
14 インターフェース(I/F)部
15 記憶部
151 駆動電圧情報
152 エッジ間隔情報
153 その他の各種情報
16 信号処理部
161 ディスク再生部
162 描画制御部
17 演算部
11 サーボ制御部
110 回転制御部
111 レジスタ制御部
112 トラッキング制御部
113 フォーカス制御部
114 チルト制御部
115 スレッド制御部
1101 速度制御部
1102 速度エラーレジスタ
1103 駆動電圧生成部
1104 駆動電圧レジスタ
1105 オフセット補正部
1106 PWM信号生成部
1107 目標速度設定レジスタ
1108 位相制御部
1109 位相エラーレジスタ
1110 速度エラー累積部
1111 セレクタ
1112 オフセットレジスタ
120 エッジ検出部
121 エッジ検出時刻格納レジスタ
122 タイマ
123 タイマ設定レジスタ
124 信号出力時刻格納レジスタ
125 フリップフロップ回路(FF)
126 エッジ検出時刻格納レジスタ
127 エッジ検出部
31、32 データ処理制御部
22 擬似EFG信号生成回路
21 サーボ制御部
210 回転制御部
2101 エッジ検出部
2102 制御方式選択レジスタ
2103 速度制御部
2105_A〜2105_C 速度検出カウンタ
2106 速度エラーセレクタ
2104 位相制御部
2107_A〜2107_C 位相検出カウンタ
2108 位相エラーセレクタ
tA1、tA2、tB1、tB2、tC1、tC2 タイミング
tXA1、tXA2、tB1、tB2、tC1、tC2 タイミング
A0〜A2、B0〜B2、C0〜C2 速度エラー情報
XA0〜XA2、XB0〜XB2、XC0〜XC2 位相エラー情報
50 光ディスク装置
51 光ピックアップ
52 光エンコーダ
53 描画制御回路
54 モータ制御回路
55 モータドライバ
56 スピンドルモータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ディスクの情報記録層に対するアクセスを行うとともに、前記光ディスクのレーベル面に対する描画を行うことが可能な光ディスク装置であって、
装填された光ディスクを回転させるとともに、回転速度に応じた周波数のパルスを有する回転速度信号を生成するモータ部と、
前記装填された光ディスクの前記情報記録層が形成された情報記録面及び前記レーベル面にレーザ光を照射可能とし、その反射光量に応じた信号を生成可能な光ピックアップと、
前記モータ部及び前記光ピックアップを制御することにより、前記情報記録層にアクセスするための処理と前記レーベル面に描画するための処理とを行うデータ処理制御部と、を有し、
前記データ処理制御部は、前記レーベル面に描画するとき、前記モータ部によって生成された前記回転速度信号に基づいて前記光ディスクが目標とする回転速度になるように前記モータ部を制御するとともに、前記レーベル面上のアドレスに応じたエッジ間隔を擬似的に示す擬似エンコード信号を生成し、前記擬似エンコード信号に基づいて前記レーベル面に対する描画を制御する光ディスク装置。
【請求項2】
データを格納するための記憶部を更に有し、
前記データ処理制御部は、前記レーベル面に描画を行う前に、目標とする回転速度で前記光ディスクを回転させた状態で前記光ピックアップにより前記レーベル面におけるレーベル面上の位置情報を示すパターンが形成された所定の領域にレーザ光を照射し、その反射光量に応じた信号に基づいて前記パターンをエンコードしたエンコード信号を生成するとともに、前記光ディスクが1回転する間に生成した前記エンコード信号の各エッジ間隔を示す情報を生成して前記記憶部に格納し、
前記レーベル面に描画するとき、前記記憶部に格納された前記各エッジ間隔を示す情報に基づいて、前記擬似エンコード信号を生成する請求項1記載の光ディスク装置。
【請求項3】
前記エンコード信号は、光ディスク装置のディフェクト検出機能によって生成される請求項2記載の光ディスク装置。
【請求項4】
前記データ処理制御部は、前記擬似エンコード信号として、前記光ディスクを目標とする回転速度で1回転させたときに要する時間内に前記レーベル面のアドレス数に応じた数のパルスが均等に出力されるようにエッジ間隔を調整した信号を生成する請求項1記載の光ディスク装置。
【請求項5】
前記データ処理制御部は、前記レーベル面に描画するとき、前記回転速度信号に基づいて目標とする回転速度に対するずれを表すずれ量を算出するとともに、算出したずれ量がゼロになるように駆動電圧を生成し、前記駆動電圧に基づいて前記モータ部を制御する請求項1記載の光ディスク装置。
【請求項6】
前記データ処理制御部は、前記レーベル面に描画を行う前に、前記光ピックアップにより前記レーベル面におけるレーベル面上の位置情報を示すパターンが形成された所定の領域にレーザ光を照射し、その反射光量に応じた信号に基づいて前記パターンをエンコードしたエンコード信号を生成するとともに、前記エンコード信号に基づいて目標とする回転速度で前記光ディスクを回転させ、前記光ディスクが1回転する間に生成した前記エンコード信号の各エッジに応じたタイミングでの前記駆動電圧の値を、エッジ毎に対応させて前記記憶部に格納し、
前記レーベル面に描画するとき、光ディスク回転中に生成した前記駆動電圧に、前記記憶部に格納された前記駆動電圧の値を加算することで補正し、補正した駆動電圧に応じて前記モータ部を制御する請求項5記載の光ディスク装置。
【請求項7】
前記ずれ量は、前記回転速度信号の周期と目標とする回転速度に応じた周期との差分を表す速度エラー情報を含む請求項5記載の光ディスク装置。
【請求項8】
前記ずれ量は、前記回転速度信号の周期と目標とする回転速度に応じた周期との差分を累積した累積速度エラー情報を更に含む請求項7記載の光ディスク装置。
【請求項9】
前記ずれ量は、前記回転速度信号の位相ずれを表す位相エラー情報を更に含む請求項7記載の光ディスク装置。
【請求項10】
前記モータ部は、
前記光ディスクを回転させるスピンドルモータと、
前記データ処理制御部による制御に基づいて前記スピンドルモータを回転させるとともに、前記スピンドルモータの固定子における複数の巻き線に流れる電流に基づいて前記回転速度信号を生成するモータドライバと、を有し、
前記データ処理制御部は、前記複数の巻き線のうち少なくとも1つの巻き線に流れる電流の周期毎に前記ずれ量を算出する請求項5記載の光ディスク装置。
【請求項11】
前記スピンドルモータは3相モータであり、
前記ずれ量は、前記スピンドルモータにおけるU相の出力電流のゼロクロス点に対応する前記回転速度信号のエッジから1周期後の次のゼロクロス点に対応する前記回転速度信号のエッジまでの時間と、前記レーベル面に対する描画時における目標とされる回転速度に応じた前記両エッジ間の理想とされる時間との差分を表す第1速度エラー情報と、
前記スピンドルモータにおけるV相の出力電流のゼロクロス点に対応する前記回転速度信号のエッジから1周期後の次のゼロクロス点に対応する前記回転速度信号のエッジまでの時間と、前記レーベル面に対する描画時における目標とされる回転速度に応じた前記両エッジ間の理想とされる時間との差分を表す第2速度エラー情報と、
前記スピンドルモータにおけるW相の出力電流のゼロクロス点に対応する前記回転速度信号のエッジから1周期後の次のゼロクロス点に対応する前記回転速度信号のエッジまでの時間と、前記レーベル面に対する描画時における目標とされる回転速度に応じた前記両エッジ間の理想とされる時間との差分を表す第3速度エラー情報と、を含む請求項10記載の光ディスク装置。
【請求項12】
前記ずれ量は、前記スピンドルモータにおけるU相の出力電流のゼロクロス点に対応する前記回転速度信号のエッジのタイミングで算出した第1位相エラー情報と、
前記スピンドルモータにおけるV相の出力電流のゼロクロス点に対応する前記回転速度信号のエッジのタイミングで算出した第2位相エラー情報と、
前記スピンドルモータにおけるW相の出力電流のゼロクロス点に対応する前記回転速度信号のエッジのタイミングで算出した第3位相エラー情報と、を更に含む請求項11記載の光ディスク装置。
【請求項13】
前記データ処理制御部は、前記レーベル面に描画するとき、前記光ディスクが線速度一定となるように前記モータ部を制御するとともに、前記レーベル面における描画位置の径方向の移動に応じて、前記擬似エンコード信号のエッジ間隔を調整する請求項1記載の光ディスク装置。
【請求項14】
前記データ処理制御部は、前記回転速度信号に基づいて前記光ディスクが1回転するのに要する時間を算出し、算出した時間が長いほど前記擬似エンコード信号のエッジ間隔が長くなるように調整する請求項13記載の光ディスク装置。
【請求項15】
前記データ処理制御部は、外部から前記レーベル面に対する描画開始の指示に応じて、前記各エッジ間隔を示す情報を生成して前記記憶部に格納する処理を行う請求項2記載の光ディスク装置。
【請求項16】
前記データ処理制御部は、外部から前記レーベル面に対する描画開始の指示に応じて、前記各エッジに応じたタイミングでの前記駆動電圧の値をエッジ毎に対応させて前記記憶部に格納する処理を行う請求項6記載の光ディスク装置。
【請求項17】
光ディスク装置における光ディスクを回転させるモータ部及び光ピックアップを制御するための半導体装置であって、
光ディスクの情報記録層にアクセスするための処理と前記情報記録層が形成されていないレーベル面に描画するための処理とを行うデータ処理制御部を有し、
前記データ処理制御部は、前記レーベル面に描画を行うために、光ディスクの回転速度に応じた周波数のパルスを有する回転速度信号を入力し、入力した前記回転速度信号に基づいて前記光ディスクが目標とする回転速度になるように前記モータ部を制御するとともに、前記レーベル面上のアドレスに応じたエッジ間隔を擬似的に示す擬似エンコード信号を生成し、前記擬似エンコード信号に基づいて前記レーベル面に対する描画位置の制御を行う半導体装置。
【請求項18】
データを格納するための記憶部を更に有し、
前記データ処理制御部は、前記レーベル面に描画を行うために、目標とする回転速度で前記光ディスクを回転させた状態で前記光ピックアップにより前記レーベル面におけるレーベル面上の位置情報を示すパターンが形成された所定の領域にレーザ光を照射し、その反射光量に応じた信号に基づいて前記パターンをエンコードしたエンコード信号を生成するとともに、前記光ディスクが1回転する間に生成した前記エンコード信号の各エッジ間隔を示す情報を生成して前記記憶部に格納し、
前記記憶部に格納された前記各エッジ間隔を示す情報に基づいて、前記擬似エンコード信号を生成する請求項17記載の半導体装置。
【請求項19】
前記データ処理制御部は、前記擬似エンコード信号として、前記光ディスクを目標とする回転速度で1回転させたときに要する時間内に前記レーベル面のアドレス数に応じた数のパルスが均等に出力されるようにエッジ間隔を調整した信号を生成する請求項17記載の半導体装置。
【請求項20】
前記データ処理制御部は、前記レーベル面に描画を行うために、前記回転速度信号に基づいて目標とする回転速度に対するずれを表すずれ量を算出するとともに、算出したずれ量がゼロになるように、前記モータ部を駆動させるための駆動電圧を生成し、前記駆動電圧に基づいて前記モータ部を制御する請求項17記載の半導体装置。
【請求項21】
前記データ処理制御部は、前記レーベル面に描画を行う前に、前記光ピックアップを制御することにより前記レーベル面におけるレーベル面上の位置情報を示すパターンが形成された所定の領域にレーザ光を照射し、その反射光量に応じた信号に基づいて前記パターンをエンコードしたエンコード信号を生成するとともに、前記エンコード信号に基づいて目標とする回転速度で前記光ディスクを回転させ、前記光ディスクが1回転する間に生成した前記エンコード信号の各エッジに応じたタイミングでの前記駆動電圧の値を、エッジ毎に対応させて前記記憶部に格納し、
光ディスク回転中に生成した前記駆動電圧に、前記記憶部に格納された前記駆動電圧の値を加算することで補正し、補正した駆動電圧に応じて前記モータ部を制御する請求項20記載の半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2013−51014(P2013−51014A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−188659(P2011−188659)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】