説明

光パッケージ及び光電センサ

【課題】低コストで容易に迷光を低減した光パッケージ及び光電センサを提供する。
【解決手段】光パッケージは、マウント基板2の上に設置されて通電により発光する投光素子1と、マウント基板2の上に設置されて内部に投光素子1を収容するメタルパッケージ3と、投光素子1が発光する光を外部へ放出する開口部4と、メタルパッケージ3の内周面が黒塗装されて迷光を吸収する塗装面9とを備える。光電センサは、この光パッケージの開口部4から放出される投光素子1の光を投光ビームに用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、迷光を低減した光パッケージ、及びその光パッケージを用いた光電センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
図7は、従来の光パッケージの構成を示し、図7(a)は平面図、図7(b)は正面図(部分断面図)である。図7において、発光ダイオード等の投光素子1は、マウント基板2の上に実装され、メタルパッケージ3に収容されている。メタルパッケージ3と投光素子1の隙間が透光性の樹脂で封止される場合もある。円筒形状のメタルパッケージ3の上面には開口部4が形成され、マウント基板2の下面には回路基板に実装するためのリード線5が接続されている。投光素子1とリード線5の間は、電極6,7と電極線8によって接続され、投光素子1は通電により発光する。投光素子1が発する光は開口部4から図7(b)上方へ投光されるが、一部の光はメタルパッケージ3の外壁内面で内面反射して、図中に矢印で示すような迷光となる。
【0003】
また、図8は、図7に示す従来の光パッケージを用いた光電センサのビームパターンを示す図である。光電センサは、開口部4から放出される投光素子1の光を、開口部4の上に設置された投光レンズを通して投光ビームにして、検出領域に投光する。図8の例では、光電センサのビームパターンのうち、投光素子1の投光ビームA(正方形面状)が最も明るい領域となる。その周囲に内面反射光が円環状の迷光Bとして現れる。すると、検出領域内に発生する迷光Bが原因となって、光電センサの出力動作が不安定になることがある。なお、投光ビームAの中心には、投光素子1の発光が電極6によって遮られることによって、投光ビームAより暗い円板状の不感度帯Cが現れている。電極6だけでなく電極線8の影が現れることもある。
【0004】
なお、このような迷光Bは、メタルパッケージ3に限らず、例えば樹脂モールドパッケージであっても同様に発生する。図9は、投光素子1を樹脂モールドパッケージ10で封止した光パッケージの構成を示す正面図である。この構成の場合にも空気と樹脂との屈折率の差によって樹脂モールドパッケージ10の内周面である程度は光が反射するので、光電センサのビームパターンに迷光が現れる。
【0005】
図10は、従来の直方体状の光パッケージのビームパターンを示す図である。図10(a)において、直方体状の光パッケージ11の内部に設置された投光素子(不図示)の光は、距離d[mm]離れた位置に設置された投光レンズ12を通して投光ビームになり、200mm離れた位置に設置された検出領域13に投光される。この構成において、光パッケージ11と投光レンズ12の距離dを7.0〜7.7mmで可変とした場合に検出領域13に現れるビームパターンを、図10(b)〜(i)に示す。図10(b)〜(i)において、投光ビームAが最も明るい領域となり、その周囲に迷光Bが現れる。さらに、図10(h)では、投光ビームAの中心に不感帯Cが現れている。このように、ビームパターンの形状は距離dによって変化するが、いずれの場合でも投光素子の結像以外の迷光が発生している。また、図示は省略するが、ビームパターンの形状は、距離dの他、投光レンズ12の形状等によっても変化する。その場合にも迷光は発生する。
【0006】
そこで、例えば特許文献1に開示の光電変換装置では、投光素子とメタルパッケージの内周面との隙間を覆うように遮光板を取り付けて内面反射光を遮断して、迷光の発生を防止していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−31560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の光パッケージは以上のように構成されているので、迷光を防止するためには遮光板のように構造的に迷光を遮断する部材を設けなければならず、コストが増加するという課題があった。
【0009】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、低コストで容易に迷光を低減する光パッケージ及び光電センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の発明に係る光パッケージは、基板上に設置され、通電により発光する投光素子と、基板上に設置され、内部に投光素子を収容するパッケージと、投光素子が発光する光を外部へ放出する、パッケージの開口部と、パッケージの内面が塗装された塗装面とを備えるものである。
【0011】
請求項2の発明に係る光パッケージは、基板上に設置され、通電により発光する投光素子と、基板上の投光素子を内部に封止する樹脂モールドパッケージと、投光素子が発光する光を外部へ放出する、樹脂モールドパッケージの開口部と、樹脂モールドパッケージの外面が塗装された塗装面とを備えるものである。
【0012】
請求項3の発明に係る光パッケージは、基板上に設置され、通電により発光する投光素子と、基板上に設置され、内部に投光素子を収容するパッケージと、投光素子が発光する光を外部へ放出する、パッケージの開口部と、パッケージの内面が粗面化された粗面とを備えるものである。
【0013】
請求項4の発明に係る光パッケージは、基板上に設置され、通電により発光する投光素子と、基板上の投光素子を内部に封止する樹脂モールドパッケージと、投光素子が発光する光を外部へ放出する、樹脂モールドパッケージの開口部と、樹脂モールドパッケージの外面が粗面化された粗面とを備えるものである。
【0014】
請求項5の発明に係る光電センサは、上記光パッケージを備え、当該光パッケージの開口部から放出される光を投光ビームに用いるものである。
【発明の効果】
【0015】
請求項1又は請求項2の発明によれば、パッケージの内面又は樹脂モールドパッケージの外面が塗装された塗装面を備えるようにしたので、投光素子の迷光を塗装面で吸収できるようになり、低コストで容易に迷光を低減した光パッケージを提供することができる。
【0016】
請求項3又は請求項4の発明によれば、パッケージの内面又は樹脂モールドパッケージの外面が粗面化された粗面を備えるようにしたので、投光素子の迷光を粗面で拡散反射するようになり、低コストで容易に迷光を低減した光パッケージを提供することができる。
【0017】
請求項5の発明によれば、上記光パッケージを備える光電センサにしたので、低コストで容易に迷光を低減した光電センサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】この発明の実施の形態1に係る光パッケージの構成を示し、図1(a)は平面図、図1(b)は正面図である。
【図2】図1に示す光パッケージを用いた光電センサのビームパターンを示す図である。
【図3】この発明の実施の形態1に係る樹脂モールドパッケージ10の光パッケージを示し、図3(a)は平面図、図3(b)は正面図である。
【図4】この発明の実施の形態1に係る光パッケージの変形例を示す正面図であり、電極6を対角線上に2箇所設ける。
【図5】図4に示す光パッケージを用いた光電センサのビームパターンを示す図である。
【図6】この発明の実施の形態1に係る光パッケージのその他の構成例を示す正面図であり、図6(a)は樹脂モールドパッケージ10が台形状の場合、図6(b)は半球形状の場合、図6(c)は山形状の場合である。
【図7】従来の光パッケージの構成を示し、図7(a)は平面図、図7(b)は正面図である。
【図8】図7に示す従来の光パッケージを用いた光電センサのビームパターンを示す図である。
【図9】従来の光パッケージの構成を示す正面図であり、樹脂モールドパッケージ10の場合を示す。
【図10】従来の直方体状の光パッケージのビームパターンを示す図であり、図10(a)にビームパターン観察のための構成を示し、図10(b)〜(i)に検出領域13におけるビームパターンを示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1に係る光パッケージの構成を示し、図1(a)は平面図、図1(b)は正面図である。なお、図1に示す光パッケージにおいて、先立って説明した図7に示す従来の光パッケージと同一又は相当の部分については同一の符号を付し説明を省略する。
図1に示す光パッケージには、新たに、メタルパッケージ3の内周面に黒い塗料を塗装した塗装面9を設ける。この塗装面9が、投光素子1の発する光のうち、メタルパッケージ3の外壁内面の方向に発せられた光を吸収するため、内面反射が起こらない。従って、迷光も発生しない。また、迷光を遮断するための部材を別途設ける必要がないので、低コストでかつ容易に迷光を防止できる。また、塗装面9を設けた後に、メタルパッケージ3を透過性の樹脂で封止してもよい。
【0020】
図2は、図1に示す光パッケージを用いた光電センサのビームパターンの一例を示す図であり、図8と同一又は相当の部分については同一の符号を付し説明を省略する。図1に示す光パッケージの開口部4から投光される光を光電センサの投光ビームに用いれば、図2に示すようにビームパターンには投光ビームAと不感度帯Cが現れ、迷光(即ち内面反射光)は現れない。
ただし、先立って図10を用いて説明したとおり、本実施の形態1に係る光電センサの場合にも、ビームパターンの形状は、投光素子1と投光レンズ(不図示)の距離、投光レンズの形状等によって変化する。また、ビームパターンに電極線8の影が現れることもある。様々に変化するビームパターンの一例を図2に示したが、たとえビームパターンの形状が変化しても、塗装面9を設けることにより迷光を防止することができる。
【0021】
なお、金属製のメタルパッケージ3と同形のパッケージを、金属以外の、例えば樹脂を用いて成形してもよい。この構成の場合にも、樹脂パッケージの内周面に黒い塗料を塗装して、塗装面9を設ける。さらに、樹脂パッケージを透光性の樹脂で封止してもよい。
【0022】
あるいは、内部に投光素子1を封止した樹脂モールドパッケージに塗装面9を設けることもできる。図3は、樹脂モールドパッケージ10の光パッケージの構成を示し、図3(a)は平面図、図3(b)は正面図(部分断面図)である。樹脂モールドパッケージ10の場合、円筒形状の樹脂モールドパッケージ10の外周面を黒い塗料で塗装して塗装面9を設け、塗装せずに残した上面を開口部4とする。この構成の場合にも樹脂モールドパッケージ10の内面反射が起こらないので、迷光が発生しない。
【0023】
なお、メタルパッケージ3の例としてスルーホール実装タイプを図示し、樹脂モールドパッケージ10の例として表面実装タイプを図示したが、メタルパッケージ3を表面実装タイプで構成してもよく、又は樹脂モールドパッケージ10をスルーホール実装タイプで構成してもよいことは言うまでもない。
好ましくは、表面実装タイプの樹脂モールドパッケージ10であって、パッケージの内周面がマウント基板2に対して垂直になっている構成の光パッケージがよい。この構成の場合、塗装面9の塗装がしやすく内面反射光がより発生しにくい。
【0024】
さらに、光電センサに用いる光パッケージとして、好ましくは、図4に示すような表面実装タイプの樹脂モールドパッケージ10であって、電極6を投光素子1の中央部ではなく端部に設ける構成の光パッケージがよい。図4に、投光素子1の上面対角線上に電極6を2箇所設けた構成の光パッケージを示し、図5に、この光パッケージを用いた光電センサのビームパターンの一例を示す。この構成の場合、投光ビームAの中央に不感度帯Cが発生しなくなるため、光電センサの出力動作がより安定する。なお、図5に示すビームパターンの形状も、図2及び図8と同様、投光レンズの形状等によって変化するが、いずれの場合にも迷光を防止することができる。
【0025】
以上より、実施の形態1によれば、光パッケージが、マウント基板2の上に設置されて通電により発光する投光素子1と、マウント基板2の上に設置されて内部に投光素子1を収容するメタルパッケージ3と、投光素子1が発光する光を外部へ放出する開口部4と、メタルパッケージ3の内周面が黒く塗装された塗装面9とを備えるように構成した。このため、メタルパッケージ3の内面で反射する内面反射光を塗装面9で吸収することにより迷光を防止できる。よって、低コストで容易に迷光を低減することのできる光パッケージを提供することができる。
また、この光パッケージを光電センサに適用し、当該光パッケージの開口部4から放出される投光素子1の光を投光ビームに用いることにより、低コストで容易に迷光を低減することのできる光電センサを提供することができる。
【0026】
なお、上記実施の形態1では、円筒形状のメタルパッケージ3及び樹脂モールドパッケージ10を例に説明したが、パッケージの形状は円筒形状に限定されるものではない。図6は、光パッケージのその他の構成例を示す正面図である。樹脂モールドパッケージ10が図6(a)に示すような台形状の場合、例えば台形側面を塗装面9にし、上面を開口部4にする。また、樹脂モールドパッケージ10が図6(b)に示すような半球形状の場合、半球形状の表面のうち、マウント基板2側を塗装面9にし、投光素子1の真上を開口部4にする。さらに、樹脂モールドパッケージ10が図6(c)に示すような山形状の場合、山形状の表面のうち、マウント基板2側を塗装面9にし、投光素子1の真上を開口部4にする。なお、塗装面9と開口部4の位置関係及び面積割合は、樹脂モールドパッケージ10の形状等に合わせて適宜決定すればよい。
【0027】
また、上記実施の形態1では、メタルパッケージ3の内周面又は樹脂モールドパッケージ10の外周面に黒い塗料を塗装して塗装面9を形成したが、塗料の色は黒色に限定されるものではなく、投光素子1の発光色に応じて吸収しやすい色の塗料を塗装すればよい。
【0028】
また、上記実施の形態1では、メタルパッケージ3(又は樹脂パッケージ)の内周面又は樹脂モールドパッケージ10の外周面に塗装面9を形成して迷光を吸収する構成にしたが、これに限定されるものではなく、例えば塗装面9の代わりに、その表面を粗面化して迷光を拡散反射させて散乱光にする構成にしてもよい。この構成の場合には、光電センサのビームパターン上の迷光を完全に防止することはできないが、輪郭をぼやけさせて全体的に暗くできるので、検出領域の投光ビームと迷光の光量の差が大きくなり、出力動作を安定させることが可能となる。
さらに、塗装面9を粗面化して迷光を吸収及び拡散反射させる構成にしてもよい。
【0029】
本発明の実施の形態を図面を参照して詳述してきたが、具体的なパッケージの形状や構造は、上述した実施の形態の構成に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0030】
1 投光素子
2 マウント基板
3 メタルパッケージ
4 開口部
5 リード線
6,7 電極
8 電極線
9 塗装面
10 樹脂モールドパッケージ
11 直方体状の光パッケージ
12 投光レンズ
13 検出領域
A 投光ビーム
B 迷光
C 不感度帯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に設置され、通電により発光する投光素子と、
前記基板上に設置され、内部に前記投光素子を収容するパッケージと、
前記投光素子が発光する光を外部へ放出する、前記パッケージの開口部と、
前記パッケージの内面が塗装された塗装面とを備える光パッケージ。
【請求項2】
基板上に設置され、通電により発光する投光素子と、
前記基板上の前記投光素子を内部に封止する樹脂モールドパッケージと、
前記投光素子が発光する光を外部へ放出する、前記樹脂モールドパッケージの開口部と、
前記樹脂モールドパッケージの外面が塗装された塗装面とを備える光パッケージ。
【請求項3】
基板上に設置され、通電により発光する投光素子と、
前記基板上に設置され、内部に前記投光素子を収容するパッケージと、
前記投光素子が発光する光を外部へ放出する、前記パッケージの開口部と、
前記パッケージの内面が粗面化された粗面とを備える光パッケージ。
【請求項4】
基板上に設置され、通電により発光する投光素子と、
前記基板上の前記投光素子を内部に封止する樹脂モールドパッケージと、
前記投光素子が発光する光を外部へ放出する、前記樹脂モールドパッケージの開口部と、
前記樹脂モールドパッケージの外面が粗面化された粗面とを備える光パッケージ。
【請求項5】
請求項1から請求項4のうちのいずれか1項記載の光パッケージを備え、当該光パッケージの開口部から放出される光を投光ビームに用いることを特徴とする光電センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−124492(P2011−124492A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−282939(P2009−282939)
【出願日】平成21年12月14日(2009.12.14)
【出願人】(000006666)株式会社山武 (1,808)
【Fターム(参考)】