説明

光パワー調整方法、光送信装置、及び光受信装置

【課題】従来は光伝送路からの反射光パワーの絶対値を測定して光ファイバの種別を推定していたが、反射光に含まれているフレネル反射光やレイリー散乱光などの影響でSBS戻り光のみの光パワーの正確な算定が難しく、ファイバ種の正確な特定が困難だった。そのため、SBS戻り光が急増する光パワーしきい値が正確に算定できず、入射光パワーの不適切な設定によりSBS戻り光の急激な増加を引き起こし、データ伝送品質を劣化させる要因の一つになっていた。
【解決手段】入射光パワーを所定の増分で加算しながら対応する反射光パワーを測定してその増分の加算後と加算前の反射光パワーの差分値を求め、その差分値の変化量が所定の量を越える時点の入射光パワーをSBS戻り光が急増する光パワーしきい値と算定し、入射光のパワーをそのしきい値より小さい値に設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光伝送路に入射する光パワーの調整技術に関し、特に光パワーがある値を越えた時点で起きるSBS(Stimulated Brillouin Scattering:誘導ブリルアン散乱)の急激な増加を回避してデータ伝送の品質を確保するのに最適な光パワーの調整方法、光送信装置、及び光受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光伝送路を構成する光ファイバの一つであるSMF(Single Mode Fiber)には波長分散係数やコアの実効断面積Aeffの違いによって、SSMF(Standard SMF)、DSF(Dispersion Shifted Fiber)、NZ−DSF(Non Zero DSF)などの種類がある。これらの光ファイバ種と光ファイバに入射できる光パワーには密接な関係があり、あるファイバ種では問題ない入射光のパワーでも、他のファイバ種では非線形現象のひとつであるSBSの急激な増加を起こしてデータ伝送の品質を著しく劣化させてしまうことがある。このSBS急増が起きる入射光パワーの値をSBS急増の光パワーしきい値という。
【0003】
図1はSBSの発生の概要を示している。
【0004】
SBSは光ファイバの素材となるガラス中に発生する音波(フォノン)と光との相互作用が原因となって発生するもので、光ファイバに入射される光のパワーがある値より大きくなるとその発生の度合いが急激に増大する非線形散乱現象である。図1に示すように、SBSが発生すると、光送信装置100より光伝送路300aへ入射された光10とは逆の方向にSBS戻り光23を発生する。このため、光伝送路に入射された光10は、その一部がSBS戻り光23として失われた状態で光受信装置200に到達するため、SBS戻り光23が急増すると光受信装置200におけるデータ受信の誤り率が大となりデータ伝送の品質が低下する。
【0005】
SBS発生の度合いは光ファイバのAeff値と光ファイバに入射する光のパワーの大きさによって変わるが、入射光10のパワーを下げることや、入射光10に低周波の振幅変調を印加して波長当たりのエネルギー密度を下げることによってその現象を抑圧できる。また、SBS急増の光パワーしきい値は光ファイバのAeff値に依存して変化するが、光ファイバのAeff値は光ファイバの種別に依存している。つまり、事前に光ファイバの種類を知っておき、光ファイバの種類に対応したSBS急増の光パワーしきい値より小さい最適な光パワーになるように入射光10を設定すれば、SBS反射光の増大する現象を抑えることができ、データ伝送の品質を確保できる。
【0006】
従来は事前に光通信システムを運用するユーザにファイバ種を問い合せて、その情報を元に光送信装置の出力レベルを設定していた。しかし、この場合は顧客に確認をとるまでに手間がかかる上、情報が得られない場合もある。
【0007】
また、光送信装置100の起動時に光伝送路300aからのSBS戻り光のパワーを測定することでファイバ種を推定して光送信装置100から伝送路300aへの光の出力パワーを自動設定する方法なども試みられてきた。
【0008】
図2は、この反射光を光送信装置で測定する場合の構成例を示しており、光伝送路300aからの反射光20は光カプラ130を経由して反射光測定部140で受信し、その光パワーを測定する。
【0009】
この場合は光伝送路300aから戻って来る反射光20の微弱な光パワーの絶対値でファイバ種別の判定を行うが、光ファイバからの反射光20の中には、SBS戻り光23以外のフレネル反射光22やレイリー散乱光21なども含まれており、それらの影響を受けてSBS戻り光23自体の光パワー値を正確に認識することがむずかしく、光ファイバの種別誤認識する可能性が高かった。
【0010】
つまり、光伝送路300aからの反射光20の主要な成分は、レイリー散乱光21、フレネル反射光22、SBS戻り光23から成る。従って測定する反射光20のパワーは、レイリー散乱光21、フレネル反射光22、SBS戻り光23を合わせた光パワーの絶対値となるため、SBS戻り光23のみの光パワー値を正確に算定できず、光伝送路300aを構成する光ファイバの種別を正確に特定することも困難であった。このように光ファイバの種別を誤認識して光送信装置100の出力光のパワーを不適切に(SBSが急激に増大するしきい値以上の値を)設定してしまうと、その不適切な光パワーが原因となって光伝送路300aでSBSの増大急増を引き起こしデータ伝送品質を著しく劣化させてしまうことになる。
【0011】
SBSが急激な増大の検出と回避に関する技術として、特許文献1にはSBSによる散乱光を検出することにより光ファイバの劣化を検出する技術が開示されている。また、特許文献2には光信号に加える周波数変調量を調整してSBSが急激に増大するのを回避する技術が開示されている。
【特許文献1】特開平9−33389号公報(第3−4頁、第7図)
【特許文献2】特開平10−200483号公報(第3−4頁、第1、3図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従来は光伝送路からの反射光パワーの絶対値を測定して光ファイバの種別を推定していたが、反射光に含まれているフレネル反射光やレイリー散乱光などの影響でSBS戻り光のみの光パワーの正確な算定が難しく、ファイバ種の正確な特定が困難だった。そのため、ファイバ種によって定まるSBSが急激に増大する光パワーしきい値を越えた値に入射光パワーが設定される場合があり、大量のSBS戻り光の発生を引き起こしてデータ伝送品質を劣化させる要因の一つになっていた。
【0013】
本発明は、光パワーがある値を越えた時点で起きるSBSの急激な増加を回避してデータ伝送の品質を確保するのに最適な光パワーの調整方法、光送信装置、及び光受信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、光伝送路に第1の値で入射した光パワーに対する前記光伝送路からの反射光パワーを測定し、前記第1の値に所定の値を加えた第2の値の光パワーに対する前記光伝送路からの反射光パワーを測定し、前記第1と第2の値の光パワーに対する前記反射光パワーの測定値の差分値を算出し、前記算出した差分値の変化量が所定の量を越えた場合の前記第1の値を光パワーしきい値と算定し、前記算定した光パワーしきい値より小さいパワーの光を前記光伝送路へ入射する、ように構成している。
【0015】
これにより、光伝送路からの反射光に含まれるSBS戻り光が急激に増大する際の入射光パワー、つまり、光パワーしきい値を算定することが可能となる。光伝送路に入射する光パワーをその算定した光パワーしきい値より小さい値に設定することにより、光ファイバの非線形現象の一つであるSBS戻り光の急激な増大を回避することができ、データ伝送の品質を確保ができる。
【0016】
上記の本発明において、前記測定した反射光パワーに基づいて前記第1の値に加える所定の値を変化させる、ように構成することができる。
【0017】
これによれば、光伝送路からの反射光パワーの大きさに応じて、反射光パワーを測定するための入射光パワーの増加幅を変更することができ、より正確な光パワーしきい値を求めることができる。
【0018】
さらに、上記の本発明において、前記第2の値に前記所定の値を加えた第3の値の光パワーに対する前記光伝送路からの反射光パワーを測定し、前記第1と第3の値の光パワーに対する前記反射光パワーの測定値の差分値を算出し、前記第1と第2の値の光パワーに対する前記反射光パワーの測定値の差分値の変化量と、前記第1と第3の値の光パワーに対する前記反射光パワーの測定値の差分値の変化量との双方が所定の量を越えた場合の前記第1の値を光パワーしきい値と算定する、ように構成することもできる。
【0019】
これにより、何らかの要因でたまたまある測定点における反射光パワーのみ前後の測定点の反射光パワーに比べて高くなった場合でも、それに影響されることなく、適切な光パワーしきい値を算定することができる。
本発明の別な態様では、上記の発明において、前記光伝送路への入射光に低周波変調信号を印加し、前記印加する低周波変調信号の周波数を変化させて前記光パワーしきい値を調整する、ように構成することもできる。
【0020】
これにより、低周波変調信号を入射光に印加して光パワーしきい値を上昇させることができ、従って、SBS戻り光の急激な増大がない状態で入射光パワー自体を増大させることができるようになる。
【0021】
さらに、上記の本発明の別な態様においては、光受信側は光の受信パワーレベルが不足している旨を光送信側に通知し、前記光送信側は前記光伝送路への入射光に低周波変調信号を印加して前記光パワーしきい値を上昇させ、前記受信側の受信レベル不足が発生せず、かつ、前記光パワーしきい値より小さいパワーの光を前記光伝送路へ入射する、ようにすることができる。
【0022】
これによれば、光伝送路の距離が長い場合などで、光受信側での受信レベルが規定値より小さくて正常にデータを受信できない場合でも、光送信側は光受信側の受信レベルが規定値以上になるまで光パワーしきい値を上げると同時に光伝送路への入射光のパワーも上げて、光受信側で正常にデータ受信ができる。
【0023】
また別な方法として、上記の本発明の別な態様において、光受信側は光の受信レベルの不足量を光送信側に通知し、前記光送信側は前記光伝送路への入射光に低周波変調信号を印加して前記光パワーしきい値を上昇させ、前記通知された不足量に相当する量を加えたパワーで、かつ、前記光パワーしきい値より小さいパワーの光を前記光伝送路へ入射する、ようにすることもできる。
【0024】
これにより、光受信側から受信レベルの不足量を1回送信側へ通知すれば、光送信側では光パワーしきい値を必要なだけ上昇させると同時に、その不足量に相当するパワーだけ増大させ、しかも、しきい値より小さい値のパワーの光を光伝送路へ入射することができ、光受信側で正常にデータを受信できるようになる。
【0025】
上記の本発明においては、さらに、前記算定した光パワーしきい値を予めファイバ種別毎に保持されている光パワーしき値の範囲情報と比較して、前記光伝送路のファイバ種別を特定する、ように構成することもできる。
【0026】
この構成においては、光伝送路を構成する光ファイバの種別を自動的に特定することができる。
【0027】
上記のファイバ種別を自動的に特定する構成において、さらに、前記特定した前記光伝送路のファイバ種別情報を光受信側に通知し、前記光受信側は前記通知されたファイバ種別情報を基に各波長別の分散補償量の調整を行う、ようにすることができる。
【0028】
これにより、光受信側において、使用しているファイバ種別に適合した適切な分散補償を各波長に対して行うことができる。
【発明の効果】
【0029】
事前に光伝送路のファイバ種別の情報がない状態であっても、レイリー散乱光やフレネル反射の影響を受けることなく、光ファイバ種別に適合したSBSが急激に増大しないように光伝送路への入射光のパワーを設定することができ、データ伝送の品質を確保できる。
【0030】
また、光伝送路が長距離の場合であっても、光受信側が適切な受信レベルで受信するように光送信側の出力光パワーを制御することができる。
【0031】
さらに、光伝送路のファイバ種別を自動的に特定して光受信側にてその特定した光ファイバ種に適合した各波長の分散補償を行うことができ、データ伝送の品質向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
(実施例)
図3は、光伝送路への入射光パワーと反射光パワーの間の関係を示している。
【0033】
横軸80は入射光パワーを示し、縦軸90は反射光パワーを示している。
【0034】
上記図2で説明したように、反射光20にはレイリー散乱光21、フレネル反射光22、SBS戻り光23が含まれており、図3では、レイリー散乱光21に対応する特性曲線を21a、フレネル反射光22に対応する特性曲線を22a、SBS戻り光23に対応する特性曲線を23aで示している。
【0035】
SBSは光ファイバの非線形現象の一種であるため、特性曲線23aが示すようにSBS戻り光23のパワーは光ファイバへの入射光パワーが光パワーしきい値30を超えると急激に増加する。これに対して、レイリー散乱光21やフレネル反射光22のパワーは、それぞれの特性曲線21a、22aが示すように光ファイバの入射光パワーに対して線形性があり、入射光パワーに比例した値となる。
【0036】
反射光20のパワーはフレネル反射光、レイリー散乱光、SBS戻り光のパワーを合わせたものになるため、SBS戻り光23の非線形性の特性に影響を受け、その実際のパワーの測定値は曲線20aのようになり、入射光パワーが上記のしきい値30を超えるとその線形性が崩れ、反射光20のパワーが急激に増大する。
【0037】
本発明では、光伝送路300aへの入射光パワーを所定の条件で変動させ、変動させたそれぞれの入射光パワーに対する反射光パワーを測定して入射光パワーに対する反射光パワーの関係を求め、その関係の線形性つまり直線性が崩れる時の入射光パワーを特定し、この特定した入射光パワーをSBSの急激な増大の光パワーしきい値と算定する。
【0038】
反射光パワーの絶対量は微弱な量であるために読み取り誤差が大きく、従来の反射光パワーの絶対量の測定値を基にした方法ではファイバ種の誤認識の可能性が大きかったが、光伝送路への入射光パワーは、光伝送路に接続される光送信装置が設定する出力光パワーに相当するため光伝送装置自身が正確に把握することができる。従って、入射光パワーと反射光パワーの線形性が崩れ始める時点の入射光パワー、つまり、SBSの急激な増大の光パワーしきい値を正確に特定できるようになる。そして、その特定した光パワーしきい値を基にファイバの種別を判定し、ファイバ種別に応じた適切な入射光パワー(光パワーしきい値より小さいパワー)に設定することにより、SBSの急激な増大を引き起こすことなくデータ伝送の品質を確保できる。
【0039】
図4は、本発明の光パワーしきい値算定の方法を示している。
【0040】
20aは入射光パワーに対する反射光パワーの特性曲線で、20bは反射光の特性曲線20aの線形性のある部分の直線を延長した仮想的な直線を示している。入射光パワーの軸80には測定点ごとの入射光パワー値をmW(ミリワット)単位で縦の点線に並べて示し、反射光パワーの軸90には各測定点における反射光パワー値をアルファベットのaからkを用いて点線の横軸に並べて示し、入射光パワーと反射光パワーとの間の関係が分かるようにしている。
【0041】
光伝送路への入射光パワーを段階的に上げ、それぞれの入射光パワーに対応する反射光パワーを測定する。入射光パワーは様々な方法で変えることができるが、図4では0.5mWの等間隔の値で段階的に変える場合の例を示している。入射光パワーを等間隔に変化させることで、測定される反射光パワーの変化量(差分)そのものを変化率として扱うことができ、効率的に光パワーしきい値の算定を行うことができる。
【0042】
図4の例では、入射光のパワー値を0.5mWを初期値として順次所定の増分である0.5mWを加算しながらその時点の反射光パワーを測定している。4.0mW以下の入射光パワー0.5mW、1.0mW、1.5mW、2.0mW、2.5mW、3.0mW、3.5mW、4.0mWでは、対応する測定された反射光のパワーはそれぞれa、b、c、d、e、f、g、hとなり、反射光パワーの差分値はb−a、c−b、d−c、e−d、f−e、g−f、h−gとなる。ここでは、これらの差分値
b−a、c−b、d−c、e−d、f−e、g−f、h−gは全て同じ値で、入射光パワーに対して反射光パワーは線形性を有している状況を示している。
【0043】
ところが、入射光パワーが4.5mWになった時点で、反射光パワーがiとなり、反射光パワーの差分値i−hが直前の差分値h−gより大きくなり、入射光パワーに対して反射光パワーが非線形的に増大することから、SBS急増の光パワーしきい値は所定の増分0.5mW を加算する前の4.0mWであると算定する。ここで、実際の算定処理では測定誤差を考慮して、前後の差分値の変化量が所定の量以内の場合は変化がなかったものとして判定する。
【0044】
このように、入射光パワーを所定の等間隔で増加方向へ変動させ、その各変動値に対応した反射光パワーを測定し、測定した各反射光パワーの前後の差分値を算出する。そして、その差分値が直前に求めた差分値に比較して所定の量より増大するときの入射光パワーを、SBS戻り光が非線形的に発生し始める(つまりSBS急増)光パワーしきい値として算定する。
【0045】
ここで、何らかの要因により1個の測定点のみがたまたま所定の変化量を越えるように反射光パワーを高く読んでしまった場合に、その時点の入射光パワーを光パワーしきい値と誤認識しないようにするために、現在の測定点と直前の測定点との間の反射光パワーの差分だけでなく、現在の測定点と2つ前の測定点との間の差分も計算して、双方の差分が所定の量より増大した場合にのみ光パワーしきい値と判定することにより、測定誤りによるバラツキに影響されずに確実に光パワーしきい値を算定できる。
【0046】
また、例えば0.5mW間隔で入射光のパワーを変動させようとした場合、最初の0.5mWの入射光パワーでの測定において反射光パワーの測定値が大きい場合、ファイバ種が非線形を起こしやすい種類(例えばDSFなど)である可能性がある。その状態で0.5mW刻みで測定を行うと、SBS戻り光が急激に増大するポイントを通り越してしまう(つまり、測定間隔が粗すぎることも考えられ、その際は測定間隔を細かくする方が好ましい。このような場合は最初の測定ポイントでの反射光のパワーレベルに基づいて、適切な測定間隔を自動的に選択するようにすることもできる。例えば、最初の測定ポイントでの反射光のパワー測定値が”-30dBm”であれば”0.5mW”間隔とし、”-20dBm”であれば”0.2mW”間隔とし、”-10dBm”であれば”0.1mW”間隔とする、などの方法をとることができる。
【0047】
さらに、最初の測定ポイントでの反射光パワーレベルだけでなく、測定途中の反射光のパワーレベルをチェックし、所定の値を超えた場合はその時点で適切な測定間隔に調整するようにすることもできる。
【0048】
上記図4の実施例では、入射光パワー(光送信側からみると出力光パワー)の単位はmWで所定の増分が0.5mWの例を代表的に示したが、この単位及び所定の増分はこれに限定されず任意である。
【0049】
図5は、本発明の光送信装置の1実施例である。
【0050】
光送信部110から出力された光は光増幅器120で増幅され出力光10として光伝送路300aへ入射される。出力光10に対して光伝送路300aから反射光20が反射され、光カプラ101を介して反射光測定部130へ入力される。
【0051】
反射光測定部130は入力された反射光20をフォトダイオードで検出し、電気信号に変換してA/D変換部140へ渡す。
【0052】
A/D変換部140は反射光測定部130から渡されたアナログ形式の電気信号をデジタル値へ変換して演算部150へ渡す。
【0053】
演算部150はA/D変換部140から渡された反射光20のパワーを示すデジタル値を記憶する。そして、現在の出力光パワーに所定の増分を加算した値に出力光パワーを設定するように出力レベル設定部160へ指示する。出力レベル設定部160は演算部150から渡された増分値を現在の出力光パワーに加算した出力光パワーを光増幅器120に対して設定し、光増幅器120はその所定の増分値だけ加算されたパワーの出力光を光伝送路300へ出力する。そして、光伝送路300aからの反射光パワーの測定値を、反射光測定部130及びA/D変換部140を介して受取って記憶する。上記の反射光パワーの測定値の獲得記憶と出力光パワーへの所定の増分値の加算を所定の上限値に達するまで繰り返す。その後、上記の所定の増分値による加算に対応する反射光パワーと加算する前の反射光パワーとの差分値を測定順に順次計算していき、その差分値の変化量が所定の量以上になったときの測定点の出力光パワーを、SBS急増の光パワーしきい値と算定する。
【0054】
演算部150は、上記の光パワーしきい値の算定後、その光パワーしきい値より小さいパワーの出力光となるように調整した値を出力設定部160へ引き渡し、出力レベル設定部160はその引き渡されたパワー値を光増幅器120に設定する。これにより、光送信装置100から出力され光伝送路300aへ入射される光パワーは上記で算定した光パワーしきい値以下に抑制され、反射光20に含まれるSBS戻り光が非線形的に増大してデータ伝送の品質が劣化するのを防止できる。
【0055】
また、演算部150は、監視制御信号受信部180から光受信側の光受信レベル不足情報を渡された場合は、低周波変調印加部170に対して指定した周波数の低周波変調印加を行うように指示する。これにより、後述するように、出力光10の光パワーしきい値が上昇する。演算部150は、上記の光パワーのしきい値算定処理を行って光パワーしきい値を算定し、その算定したしきい値以下の範囲で出力光パワー20のパワーの設定値を高くする。これを監視制御信号受信部180から光受信側の光受信レベル不足情報の通知がなくなるまで繰り返す。これにより、伝送距離が長く光送信装置100から出力された光が光受信側へ到達した際の光受信レベルが低くなりデータ伝送自体が困難になった場合でも、光送信装置100にて出力光10に周波数変調を印加することによりSBS急増のしきい値が高くなり、より大きなパワーの光を出力してもSBSの急激な増大を引き起こさずにデータ伝送が行えることになり、長距離伝送の場合でもSBSの急激な増大を回避しながらデータ伝送を行うことができる。
【0056】
さらに、演算部150は、算定した光パワーしきい値を、予め記憶してあるファイバ種毎の光パワーしきい値の許容範囲と比較することにより、伝送路300aのファイバ種別を特定することが可能となる。この特定したファイバ種別情報を監視制御信号送信部181を介して光受信側へ送信することにより、光受信側は送信されてきたファイバ種別に適合した波長別の分散補償を行うことができる。
【0057】
演算部150に関する動作フローについては、図6、図7、図10、図11に関連して後述する。
【0058】
出力レベル設定部160は演算部150から渡された出力光のパワー値を光増幅器120へ設定して、出力光10のパワーを制御する。
【0059】
低周波変調印加部170は、演算部150から渡された周波数情報を基に、低周波振幅変調を出力光10に印加するように光送信部110を制御する。
【0060】
監視制御信号受信部180は、光受信側から光伝送路300bを通して送信されてきた光受信レベル不足情報を分波器102を介して受信する。
【0061】
監視制御信号送信部181は、演算部150が特定した光伝送路300aのファイバ種別情報を合波器103を介して光伝送路300aに送信し光受信側へ届ける。
【0062】
光受信部183は光受信側から光伝送路300bを通して送信されてきた主信号光を分波器102を介して受信する。
【0063】
上記図4の演算部150の説明に示されるように、本発明の光パワー調整方法では、所定の出力光パワーの増加に対応する反射光パワーの差分値を求め、その差分値の変化量を基に出力光パワー値と反射光のパワー値との間の直線性の関係が崩れる現象を検出してその時点の出力光パワーをSBSの急激な増大を回避する光パワーしきい値と算定する。この方法では、出力光のパワーに比例して直線的にそのパワーが増えるレイリー散乱光やフレネル反射光の影響を受けることがなく、また、光伝送路への出力光のパワーという正確かつ大きな値を基に判別を行うことができ、SBS急増を回避するための光パワーしきい値を正確に把握することができる。そして、光の出力パワーを算定した光パワーしきい値より小さい適切な値に設定することにより、確実にSBSの急激な増大を回避した形での信号光の送信が可能となる。
【0064】
図6は、光パワーしきい値算定処理(1)の動作フローである。
【0065】
ここでは、光送信側においてSBSの急激な増大回避のための光パワーしきい値算定処理を行う場合の実施例を示している。従って、光伝送路への入射光をここでは光送信側からみた出力光として表現している。処理ステップは以下の通り。
【0066】
S01.光送信側の出力光パワーを初期値P0に設定して、光を光伝送路へ出力する。
【0067】
S02.光伝送路からの反射光パワーを測定して記憶し、その記憶した測定値をR0と表記する。
【0068】
S03.記憶された反射光パワーの測定値に適合する予め定められた出力光パワーの増分値”ΔP”を決定する。
【0069】
S04.反射光測定のためのループカウンタiに初期値”1”を設定する。
【0070】
S05.現在の出力光パワーの設定値をΔPだけ増加させた値を新たな出力光パワーとして設定し、この設定値をカウンタiの値に対応付けてPiと表記する。
【0071】
S06.上記ステップS05で設定したパワーPiの出力光に対する光伝送路からの反射光のパワーを測定して記憶し、その記憶した測定値をRiと表記する。
【0072】
S07.出力光パワーPiが所定の上限値より小さいか否か判定し、上限値より小さいならば(YES)ステップS08へ移行し、上限値に達している場合は(NO)反射光パワーの測定が終了したのでステップS09へ移行する。
【0073】
S08.カウンタiの内容に”1”を加算して、ステップS05へ戻り次の測定に移る。
【0074】
S09.反射光パワーの測定開始段階での測定値の差分値R2−R1、R3−R1を計算する。
【0075】
S10.光パワーしきい値算定のための処理カウンタnに初期値”2”をセットする。
【0076】
S11.現在の処理カウンタnの値に対応する反射光パワーの測定値の差分値Rn+1-Rn、Rn+2-Rnを計算する。
【0077】
S12.現在の処理カウンタnの値に対応する反射光パワーの測定値の差分値と、反射光パワーの測定開始段階での測定値の差分値を比較する。つまり、反射光パワーの差分値の変化量を検出する。そして差分値の変化量が所定の量より大ならば、SBS戻り光が非線形的に発生していると見なす。このとき、ある測定点の反射光パワーだけがたまたま何らかの理由で前後の測定点の反射光パワーより大となり、その測定点の出力光パワーを誤ってしきい値と判定するのを回避するため、1測定区間のみの差分値だけでなく、連続する2測定区間の差分値の変化も合わせてチェックし、両方の差分値の変化量が所定の量より大となったときのみSBS戻り光の非線形的な発生と判定する。
【0078】
図6の動作フローでは、(Rn+1-Rn ) > (R2-R1)、かつ、(Rn+2-Rn) > (R3-R1)か否かを判定し、YESならばSBS戻り光の非線形的な発生とみなしてステップ14に移行し、NOならばまだ線形的な反射光パワーの増加状態とみなしてステップS13へ移行する。ただし、ここでの不等号”>”は、所定の量より大の違いがある場合を意味する(所定の量以内の違いの場合は値が等しいと見なす)。
【0079】
S13.処理カウンタ値nの内容に”1”を加算してステップS11へ戻り、次の測定値の差分値の比較処理へ移行する。
【0080】
S14.現在の処理カウンタnの値に対応する反射光パワーの測定値Rnが測定された時点の出力パワー値Pnを、光パワーしきい値と算定し、処理を終了する。
【0081】
上記のフローで、反射光測定の初期段階、つまり上記のステップS02において、光伝送路からの反射光のパワーを測定し、その測定値を基に以降の測定を行う際の出力光パワーの増分値”ΔP”を決定している。
【0082】
これは、例えば0.5mW間隔で出力光のパワーを変動させようとした場合、最初の0.5mWの測定において反射光の値が大きい場合、ファイバ種が非線形を起こしやすい種類(例えばDSFなど)である可能性がある。その状態で0.5mW刻みで測定を行うと、SBS戻り光が急激に増大するポイントを通り越してしまう(つまり、測定間隔が粗すぎる)ことも考えられるため、その際は測定間隔を細かくする方が好ましい。このような場合は上記のステップS02に示すように、最初の測定ポイントでの反射光のパワーレベルに応じた適切な測定間隔を自動的に選択することができる。
【0083】
上記図6の光パワーしきい値の算定処理では出力光の種類は特に限定しないが、直流光を出力光として用いることにより、出力光の種類の中で一番低い光パワーしきい値を算定することができ、どのような出力光に対しても確実にSBSの急激な増大を回避できる光パワーしきい値とすることができる。
【0084】
図7は、光パワーしきい値算定処理(2)の動作フローである。
【0085】
上記図6の光パワーしきい値算定処理(1)の動作フローに対して、反射光パワーが所定値を超えた場合に出力光パワーの増分値ΔPを変更するための処理ステップをステップS06の直後に追加している。
【0086】
S01.光送信側の出力光パワーを初期値P0に設定して、光を光伝送路へ出力する。
【0087】
S02.光伝送路からの反射光パワーを測定して記憶し、その記憶した測定値をR0と表記する。
【0088】
S03.記憶された反射光パワーの測定値に適合する予め定められた出力光パワーの増分値ΔPを決定する。
【0089】
S04.反射光測定のためのループカウンタiに初期値”1”を設定する。
【0090】
S05.現在の出力光パワーの設定値をΔPだけ増加させた値を新たな出力光パワーとして設定し、この設定値をカウンタiの値に対応付けてPiとする。
【0091】
S06.上記ステップS05で設定したパワー値Piの出力光に対する光伝送路からの反射光のパワーを測定して記憶し、その記憶した測定値をRiと表記する。
【0092】
S06−1.記憶された反射光パワーが所定値を超えているか否かを判定し、超えている場合(YES)は出力光パワーの増分値ΔPを変更するためにステップS03に戻り、超えていない場合(NO)はステップS07へ移行する。
【0093】
S07.出力光パワーPiが所定の上限値より小さいか否か判定し、上限値より小さいならば(YES)ステップS08へ移行し、上限値に達している場合は(NO)反射光パワーの測定が終了したのでステップS09へ移行する。
【0094】
S08.処理カウンタiの内容に”1”を加算して、ステップS05へ戻り次の測定に移る。
【0095】
S09.反射光パワーの測定開始段階での測定値の差分値”R2−R1”、”R3−R1”を計算する。
【0096】
S10.光パワーしきい値算定のためのカウンタnに初期値”2”をセットする。
【0097】
S11.現在の処理カウンタnの値に対応する反射光パワーの測定値の差分値Rn+1-Rn、Rn+2-Rnを計算する。
【0098】
S12.現在の処理カウンタnの値に対応する反射光パワーの測定値の差分値と、反射光パワーの測定開始段階での測定値の差分値を比較する。つまり、反射光パワーの差分値の変化量を検出する。そして検出した変化量が所定の量より増大していれば、SBS戻り光の非線形的な発生と見なす。このとき、ある測定点の反射光パワーだけがたまたま何らかの理由で前後の測定点の反射光パワーより大となり、その測定点の出力光パワーを誤ってしきい値と判定するのを回避するため、1測定区間のみの差分値だけでなく、連続する2測定区間の差分値の変化量も合わせてチェックし、両方の差分値の変化量が所定の量より増大したときのみSBS戻り光の非線形的な発生と見なす。
【0099】
具体的には、(Rn+1-Rn ) > (R2-R1)、かつ、(Rn+2-Rn) > (R3-R1)か否かを判定し、YESならばSBS戻り光の非線形的な発生とみなしてステップ14に移行し、NOならばまだ線形的な反射光パワーの増加状態とみなしてステップS13へ移行する。ただし、ここでの不等号”>”は、所定の量より大の違いがある場合を意味する(所定の量以内の違いの場合は値が等しいと見なす)。
【0100】
S13.処理カウンタ値nの内容に”1”を加算してステップS11へ戻り、次の差分値の比較処理へ移行する。
【0101】
S14.現在の処理カウンタnの値に対応する反射光パワーの測定値Rnが測定された時点の出力パワー値Pnを、光パワーしきい値と決定し、処理を終了する。
【0102】
上記のように、ステップS06−1の処理を追加することにより、測定間隔の調整を最初の測定ポイントで行うだけではなく、測定途中においても反射光パワーがある値(例えば-20dBm以上)になった時点で測定間隔ΔPを調整して、再度光パワーのしきい値算定処理を行っている。これにより、光パワーしきい値の算定をより正確に行える。
【0103】
上記の図6及び図7で示した光パワーのしきい値算定処理により、光伝送路のファイバ種が不明であってもSBSが急激に増大し始める出力光パワー、つまり、光パワーしきい値を自動的に求めることができる。そして、光送信装置の出力光のパワーを算定したしきい値以下の値に設定することにより、非線形的なSBS戻り光の増加を回避し、データ伝送の品質を確保することができる。
【0104】
図8は、光に低周波振幅変調を印加した際の影響の概要を示している。
【0105】
ここでは説明の便宜上、直流光に低周波振幅変調を印加した場合を例に示すが、ここで説明する概念は他の直流光でない場合でも同様に適用できる。
【0106】
時間成分を横軸、光パワーを縦軸にして表現すると、パワーが一定の直流光はグラフA1の直線12aで表わされるが、これを波長成分を横軸、光パワー密度を縦軸にして表現するとA2の曲線12bのようになる。
【0107】
いま、グラフA1の直流光12aに対して例えば数kHz〜数MHz程度の低周波振幅変調を印加すると、時間に対する光パワーの関係はグラフB1に示す曲線13aのようになる。これを波長成分を横軸、光パワー密度を縦軸にして表現するとグラフB2の曲線13bのようになる。グラフB2の曲線13bでは、グラフA2の曲線12bに比較して光パワー密度のピーク値が抑圧されて横軸方向の波長成分が広がった形になっている。これは、グラフA2の曲線12bとグラフB2の曲線13bとが示す光のパワー(つまり、曲線の波長成分に関しての積分値)は同じであることから、曲線13bにおいては波長成分当たりのパワー密度が曲線12bに比較して小となることを意味している。この曲線13bのピーク値の抑圧と波長成分方向への広がりの度合いは、印加する低周波変調の周波数が大になるにつれて大となり、従って、波長成分当たりの光パワー密度も小となる。
【0108】
光ファイバの非線形現象の度合いは波長成分当たりの光パワー密度に依存しており、波長成分当たりの光パワー密度が大きいときは非線形現象の影響が大となり、波長成分当たりの光パワー密度が小さいときは非線形現象の影響も小さくなることが知られている。
【0109】
従って、波長成分当たりの光パワー密度が小さくなると非線形現象が起きにくくなり、非線形現象の一種であるSBSが急激に増加する開始点となる光パワーしきい値も大きくなる。
【0110】
図9は、低周波振幅変調印加による光パワーしきい値の変化傾向を模式的に示すグラフである。
【0111】
上記図8の説明で示したように、光伝送路の入射光に低周波振幅変調を印加すると、波長成分当たりの入射光のパワー密度が減少し、光ファイバの非線形現象の一つであるSBSが急激に増加するの開始点となる光パワーしきい値が大となるが、図9はその状況を示している。
【0112】
低周波振幅変調がなしの場合の曲線40では光パワーしきい値は点線50に対応する値P0であるのに対して、印加する変調周波数をA(Hz)、B(Hz)、C(Hz)の順に(A<B<C)増大させた場合の特性曲線はそれぞれ41、42、43となり、印加する周波数が増大するに伴い、特性曲線が直線から非線形的に増大する点(つまり光パワーしきい値)を示す点線が点線51、52、53の順に右側へシフトする。つまり、SBS戻り光が非線形的に増大する光パワーしきい値は、P1、P2、P3の順に増大していくことになる。このように、入射光パワーのしきい値は、入射光に印加する低周波振幅変調の周波数が大になるにつれて大きくなる。
【0113】
この特性を用いれば、入射光に適切な周波数の低周波振幅変調を印加することにより、SBSの急増を回避した状態で入射光のパワーを増大させることができる。つまり、光伝送路に接続される光送信装置において、その出力光に印加する低周波振幅変調の周波数を適切に制御すれば、信号光を遠距離までSBS急増を引き起こすことなく送信することができるようになる。
【0114】
図10は、低周波振幅変調の印加による光パワー調整の動作フロー(1)である。
【0115】
光伝送路に接続された光送信装置が、同じ光伝送路に接続された光受信装置と連携して出力光のパワーを調整する際の第1の実施形態で、光受信装置は光受信レベルが不足している旨の通知情報のみを光送信装置に送信し、受信レベルの不足量に関する情報は送信しない場合の実施例を示している。処理ステップは以下の通り。
【0116】
S01.光送信側は印加する低周波振幅変調の周波数fの初期値を”0”Hz、つまり、印加無しに設定する。
【0117】
S02.光送信側は、上記図6、7に示した光パワーしきい値算定処理(1)または(2)を実行して、光パワーしきい値Pを求める。
【0118】
S03.光送信側は、上記ステップS02で求めた光パワーしきい値Pn以下の適正値に出力光パワーを設定する。
【0119】
S04.光受信側は、受信した光の受信レベルが規定値以上になっているか否かを判定し、規定値に達していない場合は(NO)印加している周波数が不足しているためステップS05へ移行し、規定値に達した場合は(YES)処理を終了する。
【0120】
S05.光受信側は、光受信レベル不足情報を監視制御信号として光送信側へ送信し、ステップS06へ移行する。この光受信レベル不足情報は受信レベルが不足している旨の通知情報のみで、不足量に関する情報は含んでいない。
【0121】
S06.光送信側は、現在印加中の低周波振幅変調の周波数fに、所定の値Δfを加算した値を新たな印加する低周波振幅変調の周波数fとして設定し、ステップS02へ戻って、再度光パワーしきい値算定処理を行う。
【0122】
上記の動作フローに示したように、光送信側は光パワーしきい値算定処理により光送信装置の出力光パワー(光伝送路の入射光パワーとなる)を算定しそれより小さい適正な値に出力光パワーを設定したあと、光受信側は光受信レベルが規定値より低い場合は光受信レベル不足情報を監視制御信号により光送信装置へ伝える。そして、その光受信レベル不足情報を受け取った光送信装置は印加する低周波振幅変調の周波数を所定の値だけ増加させた状態にて再度出力光パワーのしきい値決定の動作を行い、これを、光受信側の光受信レベルが規定値以上になるまで繰り返す。
【0123】
これにより、光送信装置と光受信装置間の伝送距離が長く、光送信装置から出力した現状の出力光パワーでは光受信装置に到達した光の受信レベルが規定値以下となりデータ伝送が正常にできない場合でも、SBSの急増を回避しながら、光受信装置で正常にデータ受信可能なレベルまで光送信装置の出力光パワーを増加させることができる。
【0124】
図11は、低周波振幅変調の印加による光パワー調整の動作フロー(2)である。
【0125】
光伝送路に接続された光送信装置が、同じ光伝送路に接続された光受信装置と連携して出力光のパワーを調整する際の第2の実施形態で、光送信側は光受信レベルの不足量に関する情報を光受信側から受け取り、その不足量に見合ったパワーを加算して光受信側で正常にデータを受信できるようにする場合の実施例を示している。処理ステップは以下の通り。
【0126】
S01.光送信側は、印加する低周波振幅変調の周波数fの初期値を”0”Hz、つまり、印加無しに設定する。
【0127】
S02.光送信側は、上記図6、7に示したしきい値算定処理(1)または(2)を実行して、光パワーしきい値Pを求める。
【0128】
S03.光送信側は、上記ステップS02で求めた光パワーしきい値Pn以下の適正値Pに出力光パワーを設定する。
【0129】
S04.光受信側は、光受信レベルを測定する。
【0130】
S05.光受信側は、測定した光受信レベルが規定値以上かを判定し、そうでない場合、つまり規定値より低い場合(NO)は、ステップS06へ移行し、規定値以上ならば(YES)処理を終了する。
【0131】
S06.光受信側は、規定値に対する実際の受信レベルの不足量を算定する。
【0132】
S07.光受信側は、算定した受信レベルの不足量を含んだ受信レベル不足情報を監視視制御信号として光送信側へ送信する。
【0133】
S08.光送信側は、光受信側から送られてきた受信レベル不足情報に含まれている不足量を現在の出力パワー設定値Pに加算した値を求めPとする。
【0134】
S09.光送信側は、周波数fの低周波変調をその出力光に印加する。
【0135】
S10.光送信側は、上記図6、図7で示した光パワーしきい値算定処理(1)または(2)を実行して、光パワーしきい値Pを算定する。
【0136】
S11.光送信側は、上記ステップS08で求めた不足量加算後の光パワー値Pが上記ステップS09で算定した光パワーしきい値より小さいか否か判定し、小さいならば(YES)ステップS13へ移行し、しきい値より大きいならば(NO)、ステップS12へ移行する。
【0137】
S12.光送信側は、現在印加している低周波変調の周波数fに所定の周波数Δfを加算した周波数を新たに印加する周波数fとし、ステップS09へ移行する。
【0138】
S13.光送信側は、上記ステップS08で求めた不足量加算後の光パワー値Pを出力光パワーとして設定し、処理を終了する。
【0139】
上記図11の動作フローで示した方法により、光受信側の受信レベルが適切な値になるような光送信側の出力光パワーの調整が、光送信側と光受信側と間の監視制御信号の受け渡しを1回行うだけで効率よく行うことができる。
【0140】
図12は、光伝送路のファイバ種ごとの入射光パワーに対する反射光パワーの関係を示すグラフである。
【0141】
代表的なファイバ種DSF、NZ−DSF、SSMFについての特性の概要を示している。
【0142】
ファイバ種DSFの特性曲線は710、ファイバ種NZ−DSFの特性曲線は720、ファイバ種SSMFの特性曲線は730で示している。
【0143】
SBS戻り光が非線形的に増え始める入射光パワー、つまり、光パワーしきい値は、DSFについては点線521で、NZ−DSFについては点線522で、SSMFについては点線523で示されている。
【0144】
この光ファイバの光パワーしきい値はコアの実効断面積Aeffの逆数に比例することが知られている。Aeffの値はおおよそSSMFで約85[μm2]、DSFで約50[μm2]、NZ−DSFで約55[μm2]であるため、DSFとNZ−DSFとは1.1倍(=0.4dB)程度の差、SSMFとDSF、NZ−DSFは1.5〜1.7倍(=1.9〜2.3dB)程度の差となる。
【0145】
従って、DSFとNZ−DSFの差は小さく判別はやや困難であるが、SSMFとDSF/NZ−DSFの差は大きく判別が容易に行える。
【0146】
光の分散特性はそれが伝搬するファイバの種別によりが決まるため、後述するように、光受信側ではこのファイバ種別情報を基にファイバ種別に適した分散補償を行うことができる。
【0147】
DSFとNZ−DSFの差は小さく判別はやや困難であるが、DSFとNZ−DSFの分散量は近く、例えば、1550nmではDSFの分散値は約0ps/nm/kmであり、NZ−DSFの分散値は約2ps/nm/kmである。このため、分散補償の粗調整をする目的からすればDSFとNZ−DSFの識別を特に必要ではなく、DSFとNZ−DSFを合わせて同一のファイバ種別DSF/NZ−DSFとして扱っても問題はない。
【0148】
また、本発明の光パワーしきい値の算定方法はファイバ種別に依存することなくどのファイバ種別に対しても適用できるため、SBSの非線形的な増加を起こさない光パワーに設定するという目的のためには、ファイバ種別の区別は特に必要ない。
【0149】
図13は、光伝送路のファイバ種別を特定するための動作フローである。
【0150】
ここでは、予めファイバ種別情報とそのファイバ種別での光パワーしきい値が取りえる範囲情報とを対応付けて記憶しておく。処理ステップは以下の通り。
【0151】
S01.上記図6、図7で説明した光パワーしきい値算定処理(1)または(2)を実行し、現在接続されている光ファイバ種の光パワーしきい値Pを算定する。
【0152】
S02.予め記憶してあるファイバ種別ごとの光パワーしきい値の範囲情報と、上記ステップS01で算定した光パワーしきい値Pを比較照合して、そのPを含むしきい値の範囲情報に対応するファイバ種別を特定し、処理を終了する。
【0153】
これにより、使用されている光伝送路のファイバ種別が予めわかっていない場合でも、自動的に光伝送路のファイバ種別を特定でき、例えば、使用されているファイバ種別がSSMFかDSF/NZ−DSFかを特定できるようになる。
【0154】
図14は本発明の光受信装置の構成例である。
【0155】
光伝送路300aから入力した光10は分波器201により主信号と監視制御信号に分離される。主信号は可変分散補償器210により分散補償された後、主信号受信部220へ渡される。
【0156】
監視制御信号受信部230は分波器201より渡された光の受信レベルを検出し比較演算部240に渡す。
【0157】
比較演算部240は、渡された受信レベルを規定の受信レベルと比較し、規定の受信レベルに達していない場合は、受信レベル不足情報を監視制御信号生成部280へ渡し、受信レベル情報を光送信側へ送信する旨の指示を行う。
【0158】
監視制御信号生成部280は比較演算部240から渡された受信レベル不足情報を含んだ監視制御信号を生成し、監視制御信号送信部281へその生成した監視制御信号の光送信側への送信を依頼する。
【0159】
監視制御信号送信部281は監視制御信号生成部280から渡された受信レベル不足情報を含んだ監視制御信号10aを合波器202を介して光伝送路300bへ送信する。
【0160】
上記の受信レベル不足情報は、単に受信レベルが不足している旨の通知情報とする場合と、規定の受信レベルに対する不足量を含んだ情報とする場合の二通りの構成方法がある。
【0161】
単に受信レベルが不足している旨の通知情報を光送信側へ通知する場合は、光送信側では、低周波変調を出力光に印加しながらその出力光のパワーを光受信装置200での受信レベルが規定値を越えるレベルまで上げる。このときは、光受信装置200は受信レベルが規定値を越えるまで受信レベル不足情報の送信を行うことになる。
【0162】
また、規定の受信レベルに対する不足量を光送信側へ送信する場合は、光送信側では、受信レベル不足量に相当する光パワーを現在の出力光パワーに加算すると同時に、その加算された出力光パワーよりも光パワーしきい値が大となるように低周波変調を出力光に印加して出力光パワーを調整し、光受信装置での受信レベルが規定値を越えるようにする。このときは、光受信装置200は受信レベル不足情報の送信を1度行えばよい。
【0163】
メモリ260には、各ファイバ種別毎の分散情報が格納されている。分散情報の格納方法としては、ファイバ種別情報とそのファイバ種別に対応する各波長ごとの波長分散値を格納しておくことができる。また、別な方法としては、ファイバ種別情報とそのファイバ種別に対応する所定の基準となる波長の波長分散値と分散スロープ量を格納しておき、その分散スロープ量を基に各波長の波長分散値を算出してもよい。この分散スロープ量を基に各波長の波長分散値を算出する方法については、図15を用いて後述する。
【0164】
監視制御信号受信部230は、光送信側から監視制御信号としてファイバ種別情報が送信されてきた場合は、そのファイバ種別情報を比較演算部240へ渡す。
【0165】
比較演算部240は渡されたファイバ種別情報を基に、メモリ260に記憶されている該ファイバ種別に対応する分散情報を抽出し、その抽出した分散情報を基に各波長の波長分散値を求め、それに予めわかっている光伝送路300aの距離を乗算して各波長毎の総分散量を求める。
【0166】
制御部250は、比較演算部240が求めた各波長毎の総分散量を可変分散補償器210に渡す。
【0167】
可変分散補償器210は制御部250はから渡された各波長毎の総分散量を基に光伝送路300から受信する主信号の各波長の分散補償を行い、分散補償した信号を主信号受信部220へ渡す。
【0168】
これにより、実際に使用されている光伝送路300aのファイバ種別を光送信側と連携して自動判別し、その自動判別したファイバ種別に適合した各波長の分散補償を行うことができる。
【0169】
図15は、分散スロープの概念を説明する図である。
【0170】
G1は波長多重技術により1本の光ファイバに複数の異なる波長の光を伝搬させる際の、光波長と光パワーとの関係の概要を示すグラフで、光波長を横軸81とし、光パワー密度を縦軸91とし、曲線14はλ1からλnまでのn個の異なる波長の光スペクトラムを示している。
【0171】
G2は上記のG1のグラフと同じスケールの横軸81(光波長の軸)とし、ファイバの分散値を縦軸92とし、波長λ1からλnまでの各波長に対する分散値を直線15で表したグラフである。波長λ1の分散値d1と、波長λnの分散値dnが代表的に示されている。この各波長の分散値を示す直線15の傾き、つまり、分散値の波長に対する傾きが分散スロープである。この分散スロープはファイバ種別により定まるため、予めファイバ種別情報とそれに対応する分散スロープ、及び、使用する波長の中の基準となる波長の分散値を記憶しておくことにより、ファイバ種別情報が与えられれば、使用している各波長の分散値を求めることができる。
【0172】
以上詳述した本発明の実施例において、本発明を実現するための光送信装置、光受信装置の構成は1つの例にすぎず、様々な態様への変形が可能であるが、図4にしめした本発明の方法は同様に適用される。
【0173】
光伝送路を構成するファイバ種別としては、代表例としてDSF,NZ−DSF,SSMFを示したが、他のファイバ種についても本発明の方法は同様に適用される。
【0174】
以上述べた本発明の実施の態様は、以下の付記の通りである。
(付記1)光伝送路に第1の値で入射した光パワーに対する前記光伝送路からの反射光パワーを測定し、
前記第1の値に所定の値を加えた第2の値の光パワーに対する前記光伝送路からの反射光パワーを測定し、
前記第1と第2の値の光パワーに対する前記反射光パワーの測定値の差分値を算出し、
前記算出した差分値の変化量が所定の量を越えた場合の前記第1の値を光パワーしきい値と算定し、
前記算定した光パワーしきい値より小さいパワーの光を前記光伝送路へ入射する
ことを特徴とする光パワー調整方法。
(付記2)付記1に記載の光パワー調整方法において、
前記測定した反射光パワーに基づいて前記第1の値に加える所定の値を変化させる
ことを特徴とする光パワー調整方法。
(付記3)付記1に記載の光パワー調整方法において、
前記第2の値に前記所定の値を加えた第3の値の光パワーに対する前記光伝送路からの反射光パワーを測定し、
前記第1と第3の値の光パワーに対する前記反射光パワーの測定値の差分値を算出し、
前記第1と第2の値の光パワーに対する前記反射光パワーの測定値の差分値の変化量と、前記第1と第3の値の光パワーに対する前記反射光パワーの測定値の差分値の変化量との双方が所定の量を越えた場合の前記第1の値を光パワーしきい値と算定する、
ことを特徴とする光パワー調整方法。
(付記4)付記1に記載の光パワー調整方法において
前記光伝送路への入射光に低周波変調信号を印加し、
前記印加する低周波変調信号の周波数を変化させて前記光パワーしきい値を調整する、
ことを特徴とする光パワー調整方法。
(付記5)付記4に記載の光パワー調整方法において、
光受信側は光の受信パワーレベルが不足している旨を光送信側に通知し、
前記光送信側は前記光伝送路への入射光に低周波変調信号を印加して前記光パワーしきい値を上昇させ、
前記受信側の受信レベル不足が発生せず、かつ、前記光パワーしきい値より小さいパワーの光を前記光伝送路へ入射する、
ことを特徴とする光パワー調整方法。
(付記6)付記4に記載の光パワー調整方法において、
光受信側は光の受信レベルの不足量を光送信側に通知し、
前記光送信側は前記光伝送路への入射光に低周波変調信号を印加して前記光パワーしきい値を上昇させ、
前記通知された不足量に相当する量を加えたパワーで、かつ、前記光パワーしきい値より小さいパワーの光を前記光伝送路へ入射する、
ことを特徴とする光パワー調整方法。
(付記7)付記1に記載の光パワー調整方法において、
前記算定した光パワーしきい値を予めファイバ種別毎に保持されている光パワーしき値の範囲情報と比較して、前記光伝送路のファイバ種別を特定する
ことを特徴とする光パワー調整方法。
(付記8)付記7に記載の光パワー調整方法において、
前記特定した前記光伝送路のファイバ種別情報を光受信側に通知し、
前記光受信側は前記通知されたファイバ種別情報を基に各波長別の分散補償量の調整を行う
ことを特徴とする光パワー調整方法。
(付記9)光伝送路へ入射する光のパワーを設定する手段と
前記光伝送路へ入射する第1の値の光パワーと前記第1の値の光パワーに所定の値を加えた第2の値の光パワーを発生させる手段と、
前記光伝送路へ入射した光に対する前記光伝送路からの反射光パワーを測定する手段と、
前記第1の値の光パワーと第2の値の光パワーに対する前記反射光パワーの測定値の差分値を算出する手段と、
前記算出した差分値の変化量が所定の量を越えた場合の前記第1の値を光パワーしきい値として算定する手段と、
前記算定した光パワーしきい値より小さい値を前記光伝送路へ入射する光のパワーとして設定する手段を備える
ことを特徴とする光送信装置。
(付記10)付記9に記載の光送信装置において、
前記測定した反射光パワーに基づいて前記第1の値の光パワーに加える所定の値を変化させる手段を備える
ことを特徴とする光送信装置。
(付記11)付記9に記載の光送信装置において、
前記第2の値に所定の値を加えた第3の値の光パワーを発生させる手段と、
前記第1と第3の値の光パワーに対する前記反射光パワーの測定値の差分値を算出する手段と、
前記第1と第2の値の光パワーに対する前記反射光パワーの測定値の差分値の変化量と、前記第1と第3の値の光パワーに対する前記反射光パワーの測定値の差分値の変化量との双方が所定の量を越えた場合の前記第1の値を光パワーしきい値と算定する手段を備える、
ことを特徴とする光送信装置。
(付記12)付記9に記載の光送信装置において、
前記光伝送路へ入射する光に低周波変調信号を印加する手段と、
前記印加する低周波変調信号の周波数を変化させて前記光パワーしきい値を調整する手段を備える、
ことを特徴とする光送信装置。
(付記13)付記12に記載の光送信装置において、
光受信側から送信されてくる光受信レベルが不足している旨の情報を受信する手段と、
前記光伝送路へ入射する光に低周波変調信号を印加して前記光パワーしきい値を上昇させ、前記光受信側の受信レベル不足が発生せず、かつ、前記光パワーしきい値より小さい値のパワーを前記光伝送路へ入射する光のパワーとして設定する手段を備える、
ことを特徴とする光送信装置。
(付記14)付記12に記載の光送信装置において
光受信側から送信されてくる光受信レベルの不足量の情報を受信する手段と、
前記光伝送路へ入射する光に低周波変調信号を印加して前記光パワーしきい値を上昇させ、前記通知された光受信レベルの不足量に相当する量を増加させた値で、かつ、前記光パワーしきい値より小さい値のパワーを前記光伝送路へ入射する光のパワーとして設定する手段を備える、
ことを特徴とする光送信装置。
(付記15)付記9に記載の光送信装置において、
前記算定した光パワーしきい値を予めファイバ種別毎に記憶されている光パワーしきい値の範囲情報と比較して、前記光伝送路のファイバ種別を特定する手段と、
前記特定した前記光伝送路のファイバ種別情報を光受信側に通知する手段を備える、
ことを特徴とする光送信装置。
(付記16)光の受信レベルの不足情報を光送信側に通知する手段と、
ファイバ種別毎の分散補償情報を記憶する手段と
前記光送信側から光伝送路のファイバ種別情報を受信する手段と、
前記受信したファイバ種別情報を基に光波長別の分散補償量の調整を行う手段を備える
ことを特徴とする光受信装置。
(付記17)付記16に記載の光受信装置において、
前記記憶されているファイバ種別毎の分散補償情報は、各光波長の分散値を含む
ことを特徴とする光受信装置。
(付記18)付記16に記載の光受信装置において、
前記記憶されているファイバ種別毎の分散補償情報は、予め定められた光波長に対する分散値と分散スロープ情報を含む
ことを特徴とする光受信装置。
【図面の簡単な説明】
【0175】
【図1】SBSの発生の概要を示す図である。
【図2】反射光を光送信装置で測定する場合の構成例である。
【図3】光伝送路への入射光パワーと反射光パワーの間の関係を示す図である。
【図4】本発明の光パワーしきい値算定の方法を示す図である。
【図5】本発明の光送信装置の1実施例を示す図である。
【図6】光パワーしきい値算定処理(1)の動作フローである。
【図7】光パワーしきい値算定処理(2)の動作フローである。
【図8】光に低周波振幅変調を印加した際の影響の概要を示す図である。
【図9】低周波振幅変調印加による光パワーしきい値の変化傾向を模式的に示すグラフである。
【図10】低周波振幅変調の印加による光パワー調整の動作フロー(1)である。
【図11】低周波振幅変調の印加による光パワー調整の動作フロー(2)である。
【図12】光伝送路のファイバ種ごとの入射光パワーに対する反射光パワーの関係を示すグラフである。
【図13】光伝送路のファイバ種別を特定するための動作フローである。
【図14】本発明の光受信装置の構成例である。
【図15】分散スロープの概念を説明する図である。
【符号の説明】
【0176】
10 入射光、出力光
10a 監視制御信号
12a 直流光の波形
12b 直流光のパワーを示す曲線
13a 低周波変調後の波形
13b 低周波変調後の光パワーを示す曲線
14 光スペクトラムを示す曲線
15 各波長の分散値を示す直線
20 反射光
20a 反射光の特性曲線
20b 反射光の直線部
21 レイリー散乱光
21a レイリー散乱光の特性曲線
22 フレネル反射光
22a フレネル反射光の特性曲線
23 SBS戻り光
23a SBS戻り光の特性曲線
30 光パワーしきい値
40 低周波変調なしの特性曲線
41 “A”Hzの低周波変調印加時の特性曲線
42 “B”Hzの低周波変調印加時の特性曲線
43 “C”Hzの低周波変調印加時の特性曲線
50、51、52、53 低周波印加時の光パワーしきい値
60 反射光の特性曲線
61 反射光の直線近似
80 入射光パワーを示す軸
90 反射光パワーを示す軸
91 光パワー密度
92 ファイバの分散値
100 光送信装置
101 光カプラ
102 分波器
103 合波器
110 光送信部
120 光増幅器
130 光カプラ
140 反射光測定部
150 演算部
160 出力レベル設定部
170 低周波変調印加部
180 監視制御信号受信部
181 監視制御信号送信部
183 光受信部
200 光受信装置
201 分波器
202 合波器
210 可変分散補償器
220 主信号受信部
230 監視制御信号受信部
240 比較演算部
250 制御部
260 メモリ
270 主信号送信部
280 監視制御信号生成部
281 監視制御信号送信部
300a、300b 光伝送路
521、522、523 ファイバ種別毎の光パワーしきい値
710 DSFの特性曲線
720 NZ−DSFの特性曲線
730 SSMFの特性曲線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光伝送路に第1の値で入射した光パワーに対する前記光伝送路からの反射光パワーを測定し、
前記第1の値に所定のパワーを増加した第2の値の光パワーに対する前記光伝送路からの反射光パワーを測定し、
前記第1と第2の値の光パワーに対する前記反射光パワーの測定値の差分値を算出し、
前記算出した差分値の変化量が所定の量を越えた場合の前記第1の値を光パワーしきい値と算定し、
前記算定した光パワーしきい値より小さいパワーの光を前記光伝送路へ入射する
ことを特徴とする光パワー調整方法。
【請求項2】
請求項1に記載の光パワー調整方法において、
前記第2の値に所定のパワーを増加した第3の値の光パワーに対する前記光伝送路からの反射光パワーを測定し、
前記第1と第3の値の光パワーに対する前記反射光パワーの測定値の差分値を算出し、
前記第1と第2の値の光パワーに対する前記反射光パワーの測定値の差分値の変化量と、前記第1と第3の値の光パワーに対する前記反射光パワーの測定値の差分値の変化量との双方が所定の量を越えた場合の前記第1の値を光パワーしきい値と算定する、
ことを特徴とする光パワー調整方法。
【請求項3】
請求項1に記載の光パワー調整方法において、
前記算定した光パワーしきい値を予めファイバ種別毎に保持されている光パワーしきい値の範囲情報と比較して、前記光伝送路のファイバ種別を特定する
ことを特徴とする光パワー調整方法。
【請求項4】
光伝送路へ入射する光のパワーを設定する手段と
前記光伝送路へ入射する第1の値の光パワーと前記第1の値の光パワーに所定の値を加えた第2の値の光パワーを発生させる手段と、
前記光伝送路に入射した光に対する前記光伝送路からの反射光パワーを測定する手段と、
前記第1の値の光パワーと第2の値の光パワーに対する前記反射光パワーの測定値の差分値を算出する手段と、
前記算出した差分値の変化量が所定の量を越えた場合の前記第1の値を光パワーしきい値として算定する手段と、
前記算定した光パワーしきい値より小さい値を前記光伝送路へ入射する光のパワーとして設定する手段を備える
ことを特徴とする光送信装置。
【請求項5】
光の受信レベルの不足情報を光送信側に通知する手段と、
ファイバ種別毎の分散補償情報を記憶する手段と
前記光送信側から光伝送路のファイバ種別情報を受信する手段と、
前記受信したファイバ種別情報を基に光波長別の分散補償量の調整を行う手段を備える
ことを特徴とする光受信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2007−173969(P2007−173969A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−365246(P2005−365246)
【出願日】平成17年12月19日(2005.12.19)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】