説明

光ピックアップ装置

【課題】低コストで位相段差による収差発生のなく、所望のスポット品質を得ることができる光ピックアップ装置を提供する。
【解決手段】光ピックアップ装置は、レーザ光を出射するレーザ光源1,2と、レーザ光源1,2から出射されるレーザ光を光ディスクの記録層に集光させる対物レンズ9,13と、レーザ光源1,2と対物レンズ9,13との間の光路上に配置された回折素子4とを備え、回折素子4は、遮蔽物で構成される回折格子のデューティを中心部から外側に向かって階段状に小さくすることで、0次光透過率を変化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はBDやDVD、CDのように、記録密度の異なる複数の光ディスクに対応した記録再生用光ピックアップ装置、並びに該光ピックアップ装置を搭載した光ディスク装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
DVD、CDに比べて、BDは極めて高密度に信号を記録するため、良好な記録・再生特性を得るためには、光ディスク上の光スポットサイズを十分に小さく絞る必要がある。ここで光スポットのサイズを小さく絞るためには対物レンズの開口数を大きくするか、BD光学系の倍率を高く設定する必要がある。なお、ここにいう倍率とは図10に示すように、符号30に示す集光光学系における焦点距離に対する、符号31に示すコリメート光学系における焦点距離の比である。以降、集光光学系の焦点距離に対するコリメート光学系の焦点距離の比を単に倍率と述べる事にする。また図10には図示しないが、コリメート光学系は単一のレンズだけに限定されず、複数のレンズを用いて構成しても良い。この場合は、これら複数のレンズによる合成焦点距離がコリメート光学系の焦点距離となる。
従来、BD光学系の倍率は略14.0倍、DVD光学系の倍率は略6.0倍が最適な設計値とされており、BD/DVDでコリメートレンズを共有化する場合、少なくともどちらか一方に合成焦点距離を補正するレンズを用いることで異なる倍率を実現していた。
前記合成焦点距離を補正するレンズを搭載した光学構成に対して、誘電体多層膜フィルタもしくは矩形断面回折格子の採用により、焦点距離補正レンズを必要としないコリメート光学系が提案されている。例えば特許文献1等参照。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−295954号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら,誘電体多層膜フィルタの場合,素子内部で領域を分割して多層膜を形成する必要があり,非常に高コストになる。また,矩形断面回折格子の場合には格子幅を変化させることによって位相段差が生じ,収差が発生してしまう。従来のDVD/CDであれば位相段差によって発生する収差量についても許容できたが、より高精度が要求されるBDにおいては性能を満足できるレベルに収まらない。
【0005】
そこで、本発明は、上記の問題を解決すべく、低コストで位相段差による収差発生のなく、所望のスポット品質を得ることができる光ピックアップ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の光ピックアップ装置は、レーザ光を出射するレーザ光源と、前記レーザ光源から出射されるレーザ光を光ディスクの記録層に集光させる対物レンズと、前記レーザ光源と前記対物レンズとの間の光路上に配置された回折素子とを備え、前記回折素子は、遮蔽物で構成される回折格子のデューティを中心部から外側に向かって階段状に小さくすることで、0次光透過率を変化させる、ことを特徴とする光ピックアップ装置である。また、前記回折素子の格子方向θは、30deg≦|θ|≦90degであることが望ましい。
本発明の光ピックアップ装置は、互いに発振波長の異なる第1のレーザ光源および第2のレーザ光源と、第1のレーザ光源から出射した第1の光ビームまたは第2のレーザ光源から出射した第2の光ビームを光ディスクに集光させる対物レンズとを搭載した光ピックアップ装置において、第1のレーザ光源を出射した第1の光ビームが光ディスクに向かう光路中に、前記光ビームの中心部近傍が通過する領域に比べて前記光ビームの外縁部近傍が通過する領域の0次光の透過率が高くなるよう、中心部から外縁部に向けて回折格子のデューティを小さくし、かつ前記回折格子は金属膜のような遮光体で形成された回折素子を搭載する。
【発明の効果】
【0007】
上記の構成によれば、低コストで位相段差による収差発生なく所望のスポット品質を得ることができる光ピックアップ装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】光ピックアップ装置の概略図
【図2】遮光型回折素子4の通過前後に於ける光ビームの強度分布を示す特性図
【図3】遮光型回折素子4の通過有無に於ける光スポットの光強度分布を示す特性図
【図4】遮光型回折格子の一パターンとして階段状の遮光型回折格子を示す図
【図5】検出器20における受光パターンを示す図
【図6】APP(Advanced Push-Pull)方式の場合の光学構成図
【図7】検出器のレイアウト例を示す図
【図8】遮光型回折格子の他パターンとして2次元セルパターンを示す図
【図9】遮光型回折格子の他パターンとして遮光格子を途中で間引いたパターンを示す図
【図10】集光光学系の焦点距離に対するコリメート光学系の焦点距離の比を説明ずる図
【発明を実施するための形態】
【0009】
[1.光ピックアップの構成]
図1は光ピックアップ装置の概略図である。符号1は発振波長が405nm帯の半導体レーザ光源、符号2は発振波長650nm帯の半導体レーザ光源を表している。
半導体レーザ光源1を出射した光ビームは、3スポット用回折格子3を通過した後、本発明の遮光型回折格子4に入射する。この遮光型回折格子4は、光ビームの中心部近傍が通過する領域に比べて光ビームの外縁部近傍が通過する領域の0次光の透過率が高くなるよう、中心部から外縁部に向けて回折格子のデューティを小さくし、かつ回折格子はCrなどの金属膜のような遮光体で形成された回折素子である。
遮光型回折格子4によって光強度分布を補正された光ビームはビームスプリッタ5を反射して、コリメートレンズ6に入射する。コリメートレンズ6によって略平行光となった光ビームは立ち上げミラー7を透過した後、立ち上げミラー8 を反射して、405nm用対物レンズ9に入射する。対物レンズ9によってディスク14に集光された光ビームは、ディスク14の情報面で反射され往路で反射したビームスプリッタ5を透過した後、ビームスプリッタ10、検出レンズ11を透過して、検出器20に入射する。
半導体レーザ光源2を出射した光ビームは3スポット用回折格子12を通過した後、ビームスプリッタ10を反射、ビームスプリッタ5を透過してコリメートレンズ6に入射する。コリメートレンズによって略平行光となった光ビームは立ち上げミラー7で反射して、650nm用対物レンズ13に入射する。対物レンズ13によってディスク15に集光された光ビームはディスク15の情報面で反射され往路で反射したビームスプリッタ10を透過した後、検出レンズ11を透過して、検出器20に入射する。
【0010】
[2.遮光型回折格子の機能]
ここで図2(a)に示すように、例えば半導体レーザ光源1を出射する光ビームの強度分布はガウス分布であるため、光学フィルタ素子4(遮光型回折格子4)に入射する光ビームの強度分布もガウス分布となり、その模式図を符号50で示す。本実施例において遮光型回折素子4は、光ビームが通過する中心部から外縁部にむけて段階的に格子幅を小さくしており、中心部付近に比べて外縁部付近の0次光透過率を高く設定している。そのため遮光型回折素子4を通過した光ビームの強度分布は、図2(c)の符号51に示すように中心部付近の光強度が低くなる。なお中心部付近の光強度を低くする事で、遮光型回折素子4を通過した後の光ビームの光強度分布は、通過する前に比べてフラットな状態に近づく。なお遮光型回折素子4の0次光透過率の領域分割は図2(b)に示すように、多段階的に透過率を変えるものであっても構わないし、または連続的に変化しても構わない。
【0011】
図2(c)に示すように、対物レンズに入射する光ビームの光強度分布をフラットな状態にすると、対物レンズのRIM強度(対物レンズ中心部における光強度に対する、対物レンズ外縁部における光強度の比)が高くなる。RIM強度が高いほど対物レンズによって絞られた光スポット径は小さくなることから、図2の符号50で示す光強度分布のとき図3の符号60で示す光スポットの光強度分布であったものが、遮光型回折素子4を通過させ符号51で示すフラットな光強度分布にすることで、符号61で示すように光スポットの光強度分布を小さく絞ることができる。
本実施例では例えば図2に示したように、遮光型回折素子4の格子幅を中心部から外縁部にむけて段階的に小さくする事で、中心部付近に比べて外縁部付近の0次光透過率を高く設定することで、位相段差を発生させることなく、対物レンズに入射する光ビームの光強度分布をフラットに近づけ、BD側における光ディスク上の光スポットを小さく絞る事を特徴としている。これによって光学系の倍率が低くても、位相段差による収差発生なく、BD側における光ディスク上の光スポットサイズを十分に小さく絞る事ができる。
【0012】
[3.遮光型回折格子の構成]
図4に遮光型回折格子4のパターン例を示している。光ピックアップのトラッキングサーボ方式が3スポットによるDPP(Differential Push-Pull)方式の場合、透過型の矩形断面形状を有する3スポット用回折格子によって3スポットが生成されるため、検出器20における受光パターンは図5のようになる。このとき、遮光型回折格子4の格子角度θを0degとすると、遮光型回折格子4によって回折した回折迷光の発生角度φは0degと180deg方向になり、Tan方向に配置したDPP検出器に回折迷光が入り光ピックアップの特性上望ましくない。このとき、遮光型回折素子4の格子ピッチを非常に狭くする(≦3μm)ことで理論的には回折迷光を検出器の外側に飛ばすことが可能だが、形成できる遮光型格子の幅の限度が1μmであることを考慮すると、与えられる透過率分布に適切な設計解が無く現実的ではない。このため回折迷光の検出器への混入を避けるため、3スポットによるDPP方式を採用する場合には、遮光型回折格子の格子方向θは、
30deg≦|θ|≦90deg
でなければならない。
【0013】
また、図4に示す格子パターンでは光強度分布の補正がTan方向のみで、Rad方向には透過率分布が変化しない構成になっている。これはレーザの光強度分布を考慮したものである。一般的に半導体レーザの光強度分布は楕円であり、今回の設計例ではレーザ強度分布の短手方向をTan方向に向けた場合の設計例を示している。つまり、レーザ強度分布の長手になるRad方向は十分なRIM強度が確保できるため透過率分布の補正無しに所望のスポット径にまで絞ることができるが、短手になるTan方向はRIM強度が低いためにそのままでは所望のスポット径が得られない。このため、レーザ強度分布の短手になるTan方向にのみ透過率分布を付与することで、Tan方向の光強度分布の補正を行っている。
【0014】
[4.まとめ]
本実施の形態の光ピックアップは、互いに発振波長の異なる第1のレーザ光源1および第2にレーザ光源2と、レーザ光源1から出射したレーザ光を3スポットにするための3スポット用回折格子3と、位相段差の発生なしに外縁部に比べて中心部の0次光透過率を低下させられる遮光型回折格子4と、遮光型回折格子4を透過した透過光を反射させるビームスプリッタ5と、レーザ光を略平行光に変換するコリメートレンズ6と、コリメートレンズ6によって略平行光になった光ビームを反射させる立ち上げミラー8と、光ディスク上に光ビームを集光させる対物レンズ9と、光ディスクから反射した信号光を受光する検出器20からなる。
これにより、位相段差の発生なしに低コストで所望のスポット品質を得ることができる。
【0015】
(他の実施の形態)
本発明の実施の形態として、実施の形態1を例示した。しかし、本発明はこれには限らない。そこで、本発明の他の実施の形態を以下まとめて説明する。なお、本発明は、これらには限定されず、適宜修正された実施の形態に対しても適用可能である。
【0016】
実施の形態1において、トラッキングサーボ方式として3スポットによるDPP方式に対する最適な格子パターンを示したが、これには限らない。例えば、1ビームでホログラムを用いたAPP(Advanced Push-Pull)方式の場合の光学構成図を図6に、検出器のレイアウト例を図7(a)(b)に示す。APP方式の場合では3スポット用回折格子3を用いず、例えば図6で示すようにAPP用ホログラム16を配置する。このときの検出器レイアウトは自由度が高く、例えば図7(a)や(b)で示すようなAPP検出器20のレイアウトがあり、それぞれで最適な遮光型回折格子の角度が異なる。
【0017】
図7(a) |θ|≦15deg
図7(b) 20deg≦|θ|≦70deg
このことから、遮光形回折格子の角度θは検出器のレイアウトも鑑みて最適化すべきであり、その制約は特に設けない。
【0018】
また、実施の形態1では階段状の回折格子としたが、これに限らない。図8で示すような2次元セルパターンや、図9で示すような遮光格子を途中で間引いたようなパターンであっても構わない。要するに、遮光部の面積比をSとしたとき0次光透過率Tは、
T=(1−S)^2×100 [%]
で表され、所望の0次光透過率が得られ、検出器上の迷光が考慮されていれば格子パターンに特に制約はない。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明は光ピックアップ装置に関し、特に、互いに発振波長の異なる光源を有する光ピックアップにおいて、位相段差による収差の発生なく低コストで所望のスポット品質を得ることができる。
【符号の説明】
【0020】
1,2 半導体レーザ光源
4 遮光型回折格子
9,13 対物レンズ
14,15 ディスク
16 APP用ホログラム
20 検出器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を出射するレーザ光源と、
前記レーザ光源から出射されるレーザ光を光ディスクの記録層に集光させる対物レンズと、
前記レーザ光源と前記対物レンズとの間の光路上に配置された回折素子とを備え、
前記回折素子は、遮蔽物で構成される回折格子のデューティを中心部から外側に向かって階段状に小さくすることで、0次光透過率を変化させる、
ことを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項2】
前記回折素子の格子方向θは、30deg≦|θ|≦90degである、請求項1に記載の光ピックアップ装置。
【請求項3】
前記レーザ光源は、複数のレーザ波長を有するレーザ光を出射する、請求項1に記載の光ピックアップ装置。
【請求項4】
互いに発振波長の異なる第1のレーザ光源および第2のレーザ光源と、第1のレーザ光源から出射した第1の光ビームまたは第2のレーザ光源から出射した第2の光ビームを光ディスクに集光させる対物レンズとを搭載した光ピックアップ装置において、第1のレーザ光源を出射した第1の光ビームが光ディスクに向かう光路中に、前記光ビームの中心部近傍が通過する領域に比べて前記光ビームの外縁部近傍が通過する領域の0次光の透過率が高くなるよう、中心部から外縁部に向けて回折格子のデューティを小さくし、かつ前記回折格子は金属膜のような遮光体で形成された回折素子を搭載する光ピックアップ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−226816(P2012−226816A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−95771(P2011−95771)
【出願日】平成23年4月22日(2011.4.22)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】