説明

光ファイバケーブル及び光ファイバケーブルの製造方法

【課題】スロット溝からの光ファイバの飛び出しを防止し、光ファイバの伝送損失及び断線を防ぐ。
【解決手段】C型形状のスロットコア4を持つ光ファイバケーブル1において、スロットコア4に形成されたスロット溝3に収納する光ファイバユニット2を、被覆テープ8により複数本の光ファイバ7を覆うようにして被覆した構造とする。この被覆テープ8は、テープ幅方向両端部8a、8b同士が重ならずにスロット溝3の内面3aにそれぞれのテープ幅方向端部8a、8bが接しており、且つ、スロット溝3と被覆テープ8を繋いだ軌跡が、前記スロット溝3の開口部5を塞ぐようにして前記光ファイバ7の全周を覆った構造としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スロットコアに形成したスロット溝に複数本の光ファイバを収納しシースで被覆した光ファイバケーブル及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光ファイバケーブルの多心化、細径化、接続作業時間短縮化などが望まれている。これらを考慮した光ファイバケーブルとして、断面形状をC型形状としたスロットコアのスロット溝内に光ファイバを複数本収納し、そのスロット溝の開口部を縦添えテープで覆い、スロットコア全体をシースで被覆したケーブル構造を本願出願人が提案している(例えば、特許文献1などに記載)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−216834号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記構造の光ファイバケーブルにおいて、光ファイバの実装密度を上げるために、スロット溝への光ファイバの実装本数を増やすと、複数本を集合させた光ファイバをスロット溝に収納する際に、光ファイバがスロット溝から脱落することが起こり得る。また、この光ファイバケーブルでは、縦添えテープはスロットコアに対して接着されていないため、スロット溝内の光ファイバがそれら縦添えテープとスロットコアの開口周縁に形成されたスロットリブとの間に挟み込まれる可能性もある。
【0005】
この他、光ファイバケーブルには衝撃試験が課せられるが、その衝撃試験時にスロット溝内の光ファイバが縦添えテープとスロットリブ間に入り込み、光ファイバが挟み込まれて伝送損失や断線などを招く可能性がある。
【0006】
そこで、本発明は、スロット溝からの光ファイバの飛び出しを防止し、光ファイバの伝送損失及び断線を防ぐことのできる光ファイバケーブルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の本発明は、少なくとも1つ以上有するスロット溝に光ファイバユニットを収納して保持するスロットコアと、前記スロット溝の開口部を含めてスロットコア全体を被覆するシースとを備えた光ファイバケーブルであって、前記光ファイバユニットは、複数本の光ファイバと、これら光ファイバを覆う被覆テープとからなり、前記被覆テープは、テープ幅方向両端部同士が重ならずに前記スロット溝の内面にそれぞれのテープ幅方向両端部が接しており、且つ、前記スロット溝と前記被覆テープを繋いだ軌跡が、前記スロット溝の開口部を塞ぐようにして前記光ファイバの全周を覆った構造であることを特徴としている。
【0008】
第2の発明は、少なくとも1つ以上有するスロット溝に光ファイバユニットを収納して保持するスロットコアと、該スロット溝の開口部を含めてスロットコア全体を被覆するシースとを備えた光ファイバケーブルであって、前記光ファイバユニットは、複数本の光ファイバと、これら光ファイバを覆う被覆テープとからなり、前記被覆テープは、テープ幅方向両端部同士が重なった状態でその重なり部を前記スロット溝の内面に接して該スロット溝内に収納されており、且つ、前記スロット溝の開口部を塞ぐようにして前記光ファイバの全周を覆った構造であることを特徴としている。
【0009】
第3の発明は、少なくとも1つ以上有するスロット溝に光ファイバユニットを収納して保持するスロットコアと、前記スロット溝の開口部を含めてスロットコア全体を被覆するシースとを備えた光ファイバケーブルであって、前記光ファイバユニットは、複数本の光ファイバと、これら光ファイバを覆う2枚の被覆テープとからなり、前記被覆テープは、何れもテープ幅方向両端部同士が重ならない円筒形状とされ、且つ、前記光ファイバを内部に収容するようにして被覆テープで覆い、更にその外側を別の被覆テープで覆って、前記スロット溝の開口部を塞ぐようにして前記光ファイバの全周を覆った構造であることを特徴としている。
【0010】
第4の発明は、第3の発明において、内側の前記被覆テープは、テープ幅方向両端部が前記スロット溝の底側に向けて設けられ、外側の前記被覆テープは、テープ幅方向両端部が前記スロット溝の前記開口部に向けて設けられたことを特徴としている。
【0011】
第5の発明は、第1から第4の何れかの発明において、前記被覆テープは、プラスチックテープからなることを特徴としている。
【0012】
第6の発明は、第1から第4の何れかの発明において、前記被覆テープは、厚みが0.012mm〜0.100mmであることを特徴としている。
【0013】
第7の発明は、第1から第5の何れかの発明において、前記光ファイバは、ファイバ周方向に撚られていることを特徴としている。
【0014】
第8の発明は、複数本の光ファイバを集合させた集合部位置で、ファイバ周方向に撚った光ファイバを被覆テープで覆った後、前記被覆テープのテープ幅方向両端部がスロット溝に向くようにしてスロットコアに形成したスロット溝内に前記光ファイバを収納して当該スロット溝の開口部を前記被覆テープで覆い、その後、前記スロットコア全体を被覆するようにシースを施すことを特徴とする光ファイバケーブルの製造方法である。
【0015】
第9の発明は、第8の発明において、前記被覆テープの更に外側に、別の被覆テープを、テープ幅方向両端部が前記スロット溝の開口部側を上向きとして被覆することを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、被覆テープによりスロット溝の開口部を塞ぐようにして光ファイバの全周を覆っているので、スロット溝からの光ファイバの飛び出しを防止することができる。そのため、縦添えテープとスロットリブとの間に光ファイバが挟み込まれるのを防止することができ、光ファイバの断線及び伝送損失を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は第1実施形態の光ファイバケーブルを示し、(A)は半円筒形状の被覆テープを使用した光ファイバケーブルの横断面図、(B)は円筒形状の被覆テープを使用した光ファイバケーブルの横断面図である。
【図2】図2は本発明の被覆テープを使用しない光ファイバケーブルにおもりを落として衝撃試験を行った場合の光ファイバケーブルの各状態を示す横断面図である。
【図3】図3はテープ幅方向両端部をスロット溝の開口部に向けてスロット溝内に被覆テープを設けた比較例としての光ファイバケーブルの横断面図である。
【図4】図4は図1の光ファイバケーブルの製造工程を簡略化して示す製造工程図である。
【図5】図5は第1実施形態の実施例1の結果を示す伝送損失温度特性図である。
【図6】図6は第1実施形態の実施例1で使用したプラスチックテープの製造工程図である。
【図7】図7は第2実施形態の光ファイバケーブルの横断面図である。
【図8】図8は第2実施形態の光ファイバケーブルの製造工程のうちスロット溝への光ファイバユニットの収納工程を示す横断面図である。
【図9】図9は図8のスロット溝への光ファイバユニットの収納工程を示す斜視図である。
【図10】図10は第2実施形態の実施例2の結果を示す伝送損失温度特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を適用した具体的な実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0019】
[第1実施形態]
図1は第1実施形態の光ファイバケーブルを示し、(A)は半円筒形状の被覆テープを使用した光ファイバケーブルの横断面図、(B)は円筒形状の被覆テープを使用した光ファイバケーブルの横断面図である。
【0020】
図1(A)の光ファイバケーブル1は、光ファイバユニット2をスロット溝3内に収納して保持するスロットコア4と、該スロット溝3の開口部5を含めてスロットコア4全体を被覆するシース6とからなる。
【0021】
光ファイバユニット2は、複数本の光ファイバ7と、これら光ファイバ7を覆う被覆テープ8とからなる。
【0022】
光ファイバ7は、単心ファイバを集合したもの、単心光ファイバ心線(250ミクロン光ファイバ素線の上に補強用としてナイロンやポリエステルエラストマー、UV等を被覆(タイトバッファ)した、500ミクロンや900ミクロンの光ファイバ心線)を集合したもの、テープ心線を集合したもの、間欠的に光ファイバ素線を固定したテープ心線等である。
【0023】
被覆テープ8は、円筒を略半分にした半円筒形状とされ、光ファイバケーブル1の長手方向に延びる帯状テープとされている。この被覆テープ8は、加熱成型炉で半円筒形状に成形されることにより形成された熱可塑性のプラスチックテープからなる。かかる被覆テープ8は、テープ幅方向両端部8a、8b同士が重ならずに前記スロット溝3の内面3aにそれぞれのテープ幅方向両端部8a、8bが接しており、且つ、スロット溝3と被覆テープ8を繋いだ軌跡が、前記スロット溝3の開口部5を塞ぐようにして前記光ファイバ7の全周を覆っている。
【0024】
別の見方をすると、半円筒形状の被覆テープ8は、複数の光ファイバ7を収納したスロット溝3の開口部5を覆うようにして前記スロット溝3の内面3aに接し、そのテープ幅方向両端部8a、8bをスロット溝3の底側に向けて配置されている。このため、光ファイバ7は、スロット溝3とそのスロット溝3の開口部5を完全に覆った被覆テープ8とにより全周が覆われた構造となっている。
【0025】
被覆テープ8の厚みは、例えば0.012mm〜0.100mmであることが望ましい。これらの範囲については、後述する実験で述べるものとする。
【0026】
スロットコア4は、光ファイバ7を内部に収納して保持する保持部材であり、光ファイバケーブル1の中心点Cからずれた位置に中心点を持つC断面形状とされたスロット溝3を有している。このスロットコア4は、押出成形にて形成され、その長手方向に垂直な断面をC形断面形状としている。このスロットコア4は、肉厚が均一ではなく、開口部5が形成される部位から該開口部5とは反対側の部位へ行くに従って徐々にその肉厚を厚くしている。逆の見方をすれば、スロットコア4は、スロット溝3の底と対応する部位から開口部5が形成される部位に行くに従って徐々にその肉厚を薄くしている。その肉厚を薄くした部位を、スロットリブ4aとする。
【0027】
また、スロットコア4には、光ファイバケーブル1を布設した場所で受ける熱等の影響でシース6が熱収縮して該光ファイバケーブル自体が変形するのを抑制するために、テンションメンバーである2本の抗張力体9が埋め込まれている。抗張力体9は、例えば鋼線やFRP等の線材からなる。本実施形態では、この2本の抗張力体9は、同一寸法且つ同一断面形状のものを使用している。ここで定義する同一寸法とは、誤差の全くない完全なる同一の他に、多少の誤差(±0.03mm程度の誤差)を含むとする。同じく同一断面形状とは、完全なる同一の他に、多少の誤差を含むものとする。図1(A)では、円形断面形状とした同一直径の鋼線を抗張力体9とした。なお、本実施形態では、抗張力体9を2本としているが、必要に応じて3本以上でも構わない。
【0028】
一方の抗張力体9は、光ファイバケーブル1の中心点Cを通るスロットコア4に設けられている。他方の抗張力体9は、光ファイバケーブル1の中心点Cと一方の抗張力体9の中心点を結ぶ線上に、前記中心点Cを挟んで一方の抗張力体9と反対位置のシース6に設けられている。
【0029】
シース6は、スロット溝3の開口部5側と対向するシース厚を、該開口部5側と反対側のシース厚よりも厚くした偏肉シース構造とされている。かかるシース6は、光ファイバ7を収納したスロットコア4の周囲全体を、例えばポリエチレン樹脂で被覆するようにして形成する押出成形により形成される。成形時には、スロット溝3内にポリエチレン樹脂が入り込まないようにするための縦添えテープ10が、前記開口部5を塞ぐように添えられる。
【0030】
縦添えテープ10は、開口部5を覆う被覆テープ8の上に重なるようにしてスロットコア4の略半周部位を覆うようにして設けられている。この縦添えテープ10は、スロットコア4にシース6を押し出し成形する際に縦添えされるだけであるので、スロットコア4に対して非接着状態とされる。そのため、シース6を剥いて光ファイバ7を取り出す場合に、縦添えテープ10が簡単に剥がれることから容易にスロット溝3から光ファイバ7を取り出すことが可能となる。
【0031】
この一方、図1(B)の光ファイバケーブル1では、被覆テープ8を円筒形状としている。被覆テープ8は、テープ幅方向両端部8a、8b同士が重なった状態でその重なり部を前記スロット溝3の内面3aに接して該スロット溝3内に収納されており、且つ、スロット溝3の開口部5を塞ぐようにして光ファイバ7の全周を覆った構造となっている。
【0032】
被覆テープ8のテープ幅方向両端部8a、8bの重なり部は、開口部5とは反対側のスロット溝3の底部に接して設けられている。また、被覆テープ8は、スロット溝3内では、スロット溝3の内面3aに接して設けられており、円筒形状を保持している。これにより、光ファイバ7は、被覆テープ8によってその内部に包まれた状態にあり、スロット溝3の開口部5から飛び出さないようになっている。
【0033】
図1(A)及び(B)の光ファイバケーブル1によれば、何れも半円筒形状または円筒形状のプラスチックテープからなる被覆テープ8によって、スロット溝3の開口部5を塞ぐようにして光ファイバ7の全周を覆った構造としていることから、光ファイバ7が開口部5から外に飛び出るのを防止することができる。
【0034】
ところで、光ファイバケーブル1には、図2(A)〜(C)に示す衝撃試験が課せられる。図2の光ファイバケーブル1は、本発明の被覆テープ8を有していないケーブル構造である。光ファイバケーブル1におもり11を落下させて衝撃試験を行うと、スロット溝3内の光ファイバ7が、その衝撃により開口部5へと移動し、この開口部5近傍のスロットコア4のスロットリブ4aと縦添えテープ10との間に入り込みむ。そのため、荷重解除後の光ファイバケーブル1では、スロット溝3から飛び出した光ファイバ7がシース6とスロットコア4で挟まれて断線したり伝送損失が生じる。光ファイバ7が挟まれた状態を図2(C)に示す。
【0035】
しかしながら、図1(A)及び(B)の光ファイバケーブル1では、何れも被覆テープ8でスロット溝3の開口部5を塞ぐようにして光ファイバ7の全周を覆った構造であるので、衝撃試験を行っても光ファイバ7の飛び出しが被覆テープ8で防止される。
【0036】
また、図3の光ファイバケーブル1のように円筒形状の被覆テープ8で光ファイバ7を覆っていても、テープ幅方向両端部8a、8bが開口部5に向いている場合には、複数本の光ファイバ7を集合してスロット溝5内に収納する際に、光ファイバ7が被覆テープ8のテープ幅方向端部8a、8bから飛び出し、シース6でスロットコア4を被覆した際に光ファイバ7が挟みこまれる可能がある。これに対して、図1(A)及び(B)の光ファイバケーブル1は、何れも被覆テープ8のテープ幅方向両端部8a、8bが開口部5とは反対側のスロット溝3の底に向いているので、光ファイバ7の飛び出しが前記被覆テープ8にて防止される。
【0037】
図4には、図1(A)及び(B)の光ファイバケーブル1の製造工程を簡略化して示している。複数本の光ファイバ7は、ファイバ送出装置12から集合機13へと送り出されて集合される。集合された光ファイバ7は、その出口前方に設けられた集合口金14で、テープ送出装置15から繰り出されて加熱成型炉16で円筒形状または半円筒形状に成形された被覆テープ8によって被覆される。被覆テープ8は、集合口金14の手前でテープ幅方向端部8a、8bを開いて光ファイバ7を覆い易くしている。
【0038】
そして、被覆テープ8で被覆された光ファイバ7は、スロット送出装置17から送り出されたスロットコア4のスロット溝3内に収納された後、縦添えテープ送出装置18及び抗張力体送出装置19からそれぞれ供給される縦添えテープ10と抗張力体9と共にシース被覆装置20でスロットコア4全体がシース6で被覆される。
【0039】
この製造工程のうち光ファイバ7のスロット溝3への集合時には、半円筒形状または円筒形状の被覆テープ8が光ファイバ7を包んだ状態にあるので、スロット溝3からの光ファイバ7の脱落が防止される。また、集合した光ファイバ7をケーブル長手方向にファイバ周方向(左右方向)に撚った場合には、その撚り状態が被覆テープ8で保持されて撚り戻りが生じない。このため、光ファイバ7の撚り戻りを防ぐことができることから集合口金14の直ぐ前方でスロット溝3に光ファイバ7を収納させる必要が無くなり、無理にスロットコア4を屈曲させるなどの製造ラインを取らなくても良くなる。これにより、製造ラインの自由度を上げることができる。
【実施例1】
【0040】
実施例1として、複数本の光ファイバを集合して直径を4mmとし、その光ファイバの集合体に、円筒形状に成形した直径4.2mm、円周長10mm、厚さ0.025mmの熱可塑性プラスチックテープ(ポリエステルテープ)を覆った。プラスチックテープは、テープ幅方向両端部を非接触とした。そして、このプラスチックテープで被覆した光ファイバの集合体を、スロットコアのスロット溝に収納し、そのスロットコア全周を覆ってシースを施すことで、外径7mmの光ファイバケーブルを製造した。製造した光ファイバケーブルについて、伝送損失温度特性を調べた。その結果を図5及び表1に示す。
【表1】

【0041】
表1中、ドラム巻きとは光ファイバをドラムに巻いた状態、延線状態とは光ファイバを延ばした状態である。図5中、A線は1.55μm最大値、B線は1.55μm全心平均値、C線は1.55μm最小値を示す。これらの結果から良好な伝送特性が確認された。通常の伝送損失は、0.2dB/km±0.2であることから、実験結果は全てこれらの範囲に入っていることが確認された。
【0042】
また、製造した光ファイバケーブルについて、衝撃試験の他、側圧試験、捻回試験、引張試験を行った。表2には、衝撃試験結果を示す。表3には、側圧試験、捻回試験、引張試験の各試験結果を示す。衝撃試験は、IEC規格で定めるIEC60794-1 impactに基づいておもり1kgを1mの高さから光ファイバケーブルに落下させた。側圧試験は、IEC60794-1 Crushuに基づいて試験した。捻回試験は、IEC60794-1 Torsionに基づいて試験した。衝撃試験では、光ファイバのスロットコアとシース間への挟み込まれが無く、伝送損失及び断線も見られなかった。また、側圧試験、捻回試験、引張試験の何れも良好な結果が得られた。
【表2】

【表3】

【0043】
また、被覆テープであるプラスチックテープの厚みとその製造性について検討した。図6にはプラスチックテープの製造工程を示す。表4には、プラスチックテープの厚みを変えたときの製造性の善し悪しを示す。製造性が良い場合を○、悪い場合を×とした。プラスチックテープ8を製造するには、図6に示すように、加熱成型炉16内に配置した半円筒形状または円筒形状とした金属管21を通過させる。
【表4】

【0044】
プラスチックテープは、その厚さが0.1mmを超えると、成型時の反発力が高く、加熱成型炉16中の金属管21の壁面とのバックテンションが増大し、断線してしまう現象が確認された(表4中の×)。また、成形時に厚みが薄いものよりも多く熱量を与える必要があることからコスト面でも不利となった。逆に、厚みが薄すぎるとシース時の熱、樹脂被覆時の圧力によりプラスチックテープの断線が発生した。これらにより、プラスチックテープの厚みは、0.012〜0.100mmの範囲が適当である。
【0045】
[第2実施形態]
図7は、第2実施形態の光ファイバケーブルの横断面図である。図8は、第2実施形態の光ファイバケーブルの製造工程のうちスロット溝への光ファイバユニットの収納工程を示す横断面図である。図9は、図8のスロット溝への光ファイバユニットの収納工程を簡略化して示す製造工程図である。
【0046】
第1実施形態では被覆テープ8を1枚としたが、第2実施形態では被覆テープ8を更にもう1枚使用し、先の被覆テープ8をもう1枚の被覆テープ22でくるんだ状態としている。この被覆テープ8、22の構成以外は、第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と同一構成についてはその説明を省略すると共に同一の符号を付するものとする。
【0047】
2枚の被覆テープ8、22は、何れもテープ幅方向両端部8a、8b、22a、22b同士が重ならない円筒形状とされている。内側の被覆テープ8は、テープ幅方向両端部8a、8bを接触させることなく接近させ、そのテープ幅方向両端部8a、8bをスロット溝3の底側に向けて設けられている。外側の被覆テープ22は、同じくテープ幅方向両端部22a、22bを接触させることのない円筒形状とされている。そして、外側の被覆テープ22は、テープ幅方向両端部22a、22bをスロット溝3の開口部5に向けて設けられ、そのテープ幅方向両端部22a、22bがそれぞれスロットリブ4a、4aの先端位置とほぼ同じ位置となるようにされている。
【0048】
このように、内側の被覆テープ8の外側に更に別の被覆テープ22で光ファイバ7を覆うことで、2枚の被覆テープ8、22によってスロット溝3からの光ファイバ7の飛び出しを確実に防止することが可能となる。特に、光ファイバ7がファイバ周方向に撚られている場合は、内側の被覆テープ8と外側の被覆テープ22によって撚り戻しが防止される。なお、この例では、2枚の被覆テープ8、22で光ファイバ7をその内部に被覆するようにしたが、3枚以上の被覆テープで光ファイバ7を被覆することもできる。
【0049】
2枚の被覆テープ8、22で光ファイバ7の全周を覆った光ファイバユニット2をスロット溝3に収納するには、図8及び図9に示すように、集合した複数本の光ファイバ7をその内部に収納するようにして内側の被覆テープ8で被覆する。内側の被覆テープ8は、テープ幅方向両端部8a、8bがスロット溝3を向くようにする。続いて、外側の被覆テープ22を、内側の被覆テープ8の更に外側に、そのテープ幅方向両端部22a、22bがスロット溝3の開口部5を上向きとして被覆する。外側の被覆テープ22を被覆するには、内側の被覆テープ8を被覆するのに使用した別の集合口金23を使用する。
【0050】
そして、集合した光ファイバ7を2枚の被覆テープ8、22で被覆した光ファイバユニット2は、スロットコア4のスロット溝3内に収納された後、シース被覆装置20でスロットコア4全体がシース6で被覆される。このようにして製造された光ファイバケーブル1によれば、2枚の被覆テープ8、22によりスロット溝3の開口部5を塞ぐようにして光ファイバ7の全周を覆っているので、スロット溝3からの光ファイバ7の飛び出しを防止することができる。そのため、縦添えテープ10とスロットリブ4aとの間に光ファイバ7が挟み込まれるのを防止することができ、光ファイバ7の断線及び伝送損失を防止することができる。
【実施例2】
【0051】
実施例2として、複数本の光ファイバを集合して直径を5mmとし、その光ファイバの集合体に、円筒形状に成形した直径5.2mm、円周長10mmの熱可塑性プラスチックテープ(ポリエステルテープ)を覆った。そして、更にその外側に円筒形状に成形した直径5.5mm、円周長12.5mmの熱可塑性プラスチックテープ(ポリエステルテープ)を覆った。プラスチックテープは、2枚共にテープ幅方向両端部を非接触とした。そして、このプラスチックテープで被覆した光ファイバの集合体を、開口部の幅を5.5mmとしたスロット溝を有したスロットコアに収納し、そのスロットコア全周を覆ってシースを施すことで、外径10mmの光ファイバケーブルを製造した。製造した光ファイバケーブルについて、伝送損失温度特性を調べた。その結果を図10及び表5に示す。
【表5】

【0052】
表5中、ドラム巻きとは光ファイバをドラムに巻いた状態、延線状態とは光ファイバを延ばした状態である。図10中、D線は1.55μm最大値、E線は1.55μm全心平均値、F線は1.55μm最小値を示す。これらの結果から良好な伝送特性が確認された。通常の伝送損失は、0.2dB/km±0.2であることから、実験結果は全てこれらの範囲に入っていることが確認された。
【0053】
また、製造した光ファイバケーブルについて、衝撃試験の他、側圧試験、捻回試験、引張試験を行った。表6には、衝撃試験結果を示す。表7には、側圧試験、捻回試験、引張試験の各試験結果を示す。衝撃試験は、IEC規格で定めるIEC60794-1 impactに基づいておもり1kgを1mの高さから光ファイバケーブルに落下させた。側圧試験は、IEC60794-1 Crushuに基づいて試験した。捻回試験は、IEC60794-1 Torsionに基づいて試験した。衝撃試験では、光ファイバのスロットコアとシース間への挟み込まれが無く、伝送損失及び断線も見られなかった。また、側圧試験、捻回試験、引張試験の何れも良好な結果が得られた。
【表6】

【表7】

【0054】
以上、本発明を適用した具体的な実施形態について説明したが、本発明は、上述した実施形態に制限されることはない。例えば、上述の第1、2実施形態では、何れもスロット溝3を1つ有したC型形状のスロットコア4を持つ光ファイバケーブル1としたが、複数のスロット溝3を有したSZ光ファイバケーブルや一方向撚りの光ファイバケーブルにも本発明を適用することができる。SZ光ファイバケーブルは、スロットコアにS方向(一方向)の螺旋溝とZ方向(他方向)の螺旋溝が交互にある一定の周期で繰り返されて形成された光ファイバケーブルである。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、スロットコアに形成したスロット溝に複数本の光ファイバを収納しシースで被覆した光ファイバケーブルに利用することができる。
【符号の説明】
【0056】
1…光ファイバケーブル
2…光ファイバユニット
3…スロット溝
4…スロットコア
4a…スロットリップ
5…開口部(スロット溝の開口部)
6…シース
7…光ファイバ
8、22…被覆テープ
9…抗張力体
10…縦添えテープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つ以上有するスロット溝に光ファイバユニットを収納して保持するスロットコアと、前記スロット溝の開口部を含めてスロットコア全体を被覆するシースとを備えた光ファイバケーブルであって、
前記光ファイバユニットは、複数本の光ファイバと、これら光ファイバを覆う被覆テープとからなり、
前記被覆テープは、テープ幅方向両端部同士が重ならずに前記スロット溝の内面にそれぞれのテープ幅方向両端部が接しており、且つ、前記スロット溝と前記被覆テープを繋いだ軌跡が、前記スロット溝の開口部を塞ぐようにして前記光ファイバの全周を覆った構造である
ことを特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項2】
少なくとも1つ以上有するスロット溝に光ファイバユニットを収納して保持するスロットコアと、該スロット溝の開口部を含めてスロットコア全体を被覆するシースとを備えた光ファイバケーブルであって、
前記光ファイバユニットは、複数本の光ファイバと、これら光ファイバを覆う被覆テープとからなり、
前記被覆テープは、テープ幅方向両端部同士が重なった状態でその重なり部を前記スロット溝の内面に接して該スロット溝内に収納されており、且つ、前記スロット溝の開口部を塞ぐようにして前記光ファイバの全周を覆った構造である
ことを特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項3】
少なくとも1つ以上有するスロット溝に光ファイバユニットを収納して保持するスロットコアと、前記スロット溝の開口部を含めてスロットコア全体を被覆するシースとを備えた光ファイバケーブルであって、
前記光ファイバユニットは、複数本の光ファイバと、これら光ファイバを覆う2枚の被覆テープとからなり、
前記被覆テープは、何れもテープ幅方向両端部同士が重ならない円筒形状とされ、且つ、前記光ファイバを内部に収容するようにして被覆テープで覆い、更にその外側を別の被覆テープで覆って、前記スロット溝の開口部を塞ぐようにして前記光ファイバの全周を覆った構造である
ことを特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項4】
請求項3に記載の光ファイバケーブルであって、
内側の前記被覆テープは、テープ幅方向両端部が前記スロット溝の底側に向けて設けられ、外側の前記被覆テープは、テープ幅方向両端部が前記スロット溝の前記開口部に向けて設けられた
ことを特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項5】
請求項1から請求項4の何れか1項に記載の光ファイバケーブルであって、
前記被覆テープは、プラスチックテープからなる
ことを特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項6】
請求項1から請求項4の何れか1項に記載の光ファイバケーブルであって、
前記被覆テープは、厚みが0.012mm〜0.100mmである
ことを特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項7】
請求項1から請求項5の何れか1項に記載の光ファイバケーブルであって、
前記光ファイバは、ファイバ周方向に撚られている
ことを特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項8】
複数本の光ファイバを集合させた集合部位置で、ファイバ周方向に撚った光ファイバを被覆テープで覆った後、前記被覆テープのテープ幅方向両端部がスロット溝に向くようにしてスロットコアに形成したスロット溝内に前記光ファイバを収納して当該スロット溝の開口部を前記被覆テープで覆い、その後、前記スロットコア全体を被覆するようにシースを施す
ことを特徴とする光ファイバケーブルの製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載の光ファイバケーブルの製造方法であって、
前記被覆テープの更に外側に、別の被覆テープを、テープ幅方向両端部が前記スロット溝の開口部側を上向きとして被覆する
ことを特徴とする光ファイバケーブルの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2013−44906(P2013−44906A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−182271(P2011−182271)
【出願日】平成23年8月24日(2011.8.24)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】