説明

光ファイバセンサとそのセンサを用いる監視装置

【課題】 本発明は、高感度の可燃性ガスを検知するセンサを提供する。
【解決手段】 屈折率n1のコアと屈折率n2のクラッドを備え、コアの口径を1.0mm以下にするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可燃性ガスを検知する光ファイバセンサとそのセンサを用いる監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、都市ガスやプロパンボンベ配管のガス漏れを検知するために、光ファイバセンサが用いられている。この光ファイバセンサには、例えば、特開平11−44640号公報に開示の光ファイバの一部に屈折率n1のコアと、屈折率n2のクラッドを構成し、検出物質の存在の有無によって、前記屈折率n1と屈折率n2の大小を異にすることを利用するものがある。
そして、この特許文献によると、炭化水素類を検出するクラッド材には、架橋天然ゴム、ポリプロピレン、ポリイソブテン等、水やアルコールを検出するためのクラッド材にはポリビニールアルコール、アセチル化度が12%以下の鹸化ポリビニールアルコール、ポリアクリル酸等がある。又、ケトン類を検出するためのクラッド材にはポリブタジエン、ポリ酢酸ビニル等が、ハロゲン類や酸類を検出するためにはインジゴ系色素等が開示してある。
【0003】
又、実施例として、アルカン検出に関する記載があり、コア材にはプラスチック系光ファイバを用い、クラッド材には分子量が410000のポリイソプレンを用いて、厚みが4〜8μmの膜としてコア材の表面に貼り付けてセンサを作成する。そして、このセンサをアルカン雰囲気におくと、クラッドの屈折率が変化して、ファイバ内の光の漏洩量が変化して検知する旨が記載してある。
【0004】
【特許文献1】特開平11−44640号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願の発明は、前記アルカン検出のセンサを改良し、都市ガスやプロパンガス等の可燃性ガスにおける爆発下限界の濃度を検知可能なセンサを提供すると共に、そのセンサを用いる監視装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1のセンサは、屈折率n1のコアと、このコアの周囲に形成の屈折率n2のクラッドを備え、センサを可燃性ガスが存在しない雰囲気下におくと、(コアの屈折率n1)≦(クラッドの屈折率n2)であり、前記センサを可燃性ガスが存在する雰囲気におくと、(コアの屈折率n1)>(クラッドの屈折率n2)である。そして、コアの口径を1.0mm以下にすることによって、可燃ガスを高感度で検知することができる。
又、請求項2のセンサに用いるコアは、トランス型ポリイソプレンとポリフッ化ビニリデンを3:1(重量比)の混合物で作成する。
請求項3の監視装置は、発光素子で請求項1又は請求項2のセンサの端部を発光し、センサの他端部で受光素子で受光し、発光素子は光をパルスで発光するものであり、このパルスによって消費電力を軽減できる。
又、請求項4の監視装置は、主光ファイバに複数台の波長混合器と波長分配器を設け、請求項1又は請求項2のセンサと発光素子を監視室に設置する。そして、これらのセンサを副光ファイバで前記波長混合器に接合し、各監視室に設置の発光素子の周波数を異にするものである。
【発明の効果】
【0007】
請求項1のセンサは、コアの口径を1.0mm以下にすることによって、可燃ガスを高感度で検知することができる。
又、請求項2のセンサに用いるコアを、トランス型ポリイソプレンとポリフッ化ビニリデンを3:1(重量比)の混合物で作成することによって、高感度のものを作ることができる。
請求項3の監視装置は、発光素子をパルスでおこなうので消費電力を軽減できる。
又、請求項4の監視装置は、主光ファイバと副光ファイバで構成すると共に、各監視室に設置の発光素子の周波数を異にすることによって、簡便に構築することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1(A)は、プラスチック光ファイバーセンサ(以下、センサという)を用いて可燃性ガスを検知する概念図である。
センサ1は、後記で作成方法について詳述するが、良く知られた光ファイバ10を使用し、その光ファイバ10の被覆4の一部を削除し、コア2と、そのコア2の外周に膜(クラッド3)を形成して構成する。尚、コア2の屈折率はn1、クラッドの屈折率をn2とする。
【0009】
そして、図1(A)に示すように、発光素子5を光ファイバ10の左端部から発光(発光量S)し、その光ファイバの他端部から出光する光を受光素子6で受光する。
そして、このセンサ1を検出物質(可燃性ガス)が存在しない雰囲気下におくと、(コアの屈折率n1)≦(クラッドの屈折率n2)となり、図1(B1)に示すように、前記光(L)はクラッド3から漏洩し、受光素子6の受光量(Sa)は減少する(図1(C))。
一方、検出物質(可燃性ガス)が存在する雰囲気にクラッド3をおくと、(コアの屈折率n1)>(クラッドの屈折率n2)に変わって、光(L)はクラッド3で、前記検出物質の不存在下に比して、反射率が向上する。
その結果、受光素子6での受光量はSbになり、前記受光量(Sa)より増加する(図1(C))。
このように、クラッド3が検出物質(可燃性ガス)の存在の有無によって屈折率が変化することを利用して、検出物質(可燃性ガス)の爆発限界濃度の検知を行うことができる。
【0010】
図2(A〜D)は、光ファイバの一部を使用してセンサの製作過程を示す図であり、センサ動作に寄与しない高次モード成分を減少させるためにコア径を小さくすることを目的とするものである。
先ず、良く知られた光ファイバーの被覆4を、長さ3〜5cmにわたって剥ぐ(A)。次に、温度20℃、10分間、1-4ジオキサンに浸漬して、既存の光ファイバーのクラッド層(3’)をエッチングして、コア2(ポリメタクリル酸メチル(PMMA))の径を1mm以下にする(B)。
尚、このエッチングの温度は、図3に示すように、20℃の時の方が温度10℃に比してエッチング速度が早く、温度20℃ではコア径0.5mmにするのに約80分、コア径0.25mmにするには約120分である。
【0011】
次に、クロロフォルムと1-4ジオキサンを3:1(重量比)の混合物を作成し、前記センサ部を、この混合液に浸漬して、コア2を口径0.25〜1mmになるまでエッチングする(C)。
次に、トランス型ポリイソプレンとポリフッ化ビニリデンを3:1(重量比)の混合物を作成し、この混合物を前記コア2の表面に約1μmの厚みのクラッド3を形成して、センサ1を形成する(D)。
以上によって、光ファイバの一部に、コア2の口径が0.25〜1.0mm、クラッド3の厚みが約1μmであるセンサが製作できる。
【0012】
尚、クラッド3として、ポリプロピレン、ポリイソブテン、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリエチルビニルエーテル、ポリスチレン等が使用できる。
又、前記トランス型ポリイソプレンとポリフッ化ビニリデンを3:1(重量比)の混合物のように、単体物質ではなく、2種類以上の混合物も使用できるし、それらの混合比は適宜、検知物質によって選定する。
尚、前記、トランス型ポリイソプレンとポリフッ化ビニリデンの混合比が、3:1(重量比)であるのは、最も良好な性質を示したものであり、この比を多少変更しても、ほぼ、満足できる結果を得ている。
【0013】
図4は、センサの実験設備を示す。
容器11内に前記光ファイバ10の一部に形成のセンサ1が中央になるように設置する。この容器11には、注入するガスのガス入口12とガス出口13が設けてあると共に、ガス濃度計14が設置してある。そして、前記容器11内に所定濃度のガスを注入し、光ファイバ10の左端子から発光素子5で照射し、光ファイバ10の他端部で受光素子6によって受光する。そして、この受光量(受光強度)を測定し、解析するためにディジタルマルチメータとパーソナルコンピュータが設置してある。
【0014】
次に、前記実験設備を使用しての結果について説明する。
図5は、コア2の口径に対する受光強度の変化についての結果である。
コア2にポリメタクリル酸メチル(PMMA)、クラッド3にトランス型ポリイソプレンとポリフッ化ビニリデンを3:1(重量比)の混合物を1μmの膜で形成のセンサを用いる。
そして、5%濃度のプロパンガス中における、センサのコア2の口径(1.0mm、0.75mm、0.5mm、0.25mm)に対し、受光量の時間変化を示す図である。
5%濃度のプロパンガスを容器11内に供給すると、当初は空気のみの透過強度変化を生じているが、これは窒素ガスによるものである。そして、時間が経過するに連れて、受光強度は上昇し、約30秒後から一定になる。
コア2の口径が、1.0mmを基準にすると、口径0.75mmでは1.6倍、口径0.5mmでは3.6倍、口径0.25mmでは8.7であり、受光強度はコア2の径が小さいほど、高感度である。又、前記結果から、コア2の口径が1.0mm以下であると、良好に検知できるし、特に、0.25mm以下にすると、ガス検知に寄与しない光の高次モードを除去することができる。
【0015】
図6はプロパンガス濃度に対する受光強度の変化についての結果である。
コア材にポリメタクリル酸メチル(PMMA)、クラッドにトランス型ポリイソプレンとポリフッ化ビニリデンを3:1(重量比)の混合物を1μmの膜で形成のセンサを用いる。そして、センサのコア2の口径(0.2mm)に対し、プロパンガス濃度をパラメータとして受光量の時間変化を示す図である。
この結果から、空気を基準にすると、プロパンガス濃度が1.25%のときには2.0倍、2.5%のときには2.3倍、5%のときには4.0倍であり、プロパンガス濃度が1.25%であっても検知することができる。
【0016】
図7(A)は、前記センサ1の構造であり、(B)は防曝室内にセンサ1を設置しての可燃性ガスの漏洩監視装置である。
図7(A)に示すセンサ1の構成は、前記図2で作成したものであり、コア2にポリメタクリル酸メチル(PMMA)、クラッド3にトランス型ポリイソプレンとポリフッ化ビニリデンを3:1(重量比)の混合物を1μmの膜で形成のセンサを用いる。
又、漏洩監視装置は、防曝室20内における可燃性ガスに対するものであるので、センサ1は防曝室20内に設置する。しかし、電気を扱う発光素子5と受光素子6は、防曝室外に設置し、前記センサ1と発光素子5及び受光素子6とは光ファイバ11で連結する。
【0017】
そして、発光素子5は、特定周波数(λ)の連続信号ではなく、予め決められた間隔で発光するパルス信号を用いる。このパルス信号によっては、連続信号に比して、発光素子5に要する電力の軽減により、電池の使用が可能になる。尚、前記パルス間隔は、保安上、問題のない時間間隔である。
そして、防曝室に可燃性ガスがないときには、前記受光素子6の受光量(Sa)は図1(C))に示すように小さい。しかし、可燃性ガスの漏洩があると、クラッド3で反射して、受光素子6の受光量(Sb)は、Saに比して大きくなるので、漏洩の有無を監視できる。
【0018】
図8は、多点監視装置の図であり、監視点にはセンサ1(1a、1b、1c…1n)が設置してある。
主光ファイバ100には、後述する監視点からの副光ファイバ101a、101b、…101nを接合するための波長混合器105a、105b、…105nが設置してある。
又、監視する場所A、B、…Nには、該設置箇所を区別をするために異なる周波数(λ1、λ2、…λn)で発光する発光素子5a、5b、…5nと前記構成のセンサ1a、1b、…1nが設置してあり、これらのセンサ1a、1b、…1nは前記波長混合器105a、105b、…105nに副光ファイバ101a、101b、…101nによって接続してある。
【0019】
基本周波数(λ0)を発光する発光素子5からの光は、主光ファイバ100で伝送され、途中、波長混合器105a、105b、…105nを経て、波長分配器108で分離され、受光した波長が基本周波数(λ0)であることから、前記発光素子5からであることを検知する。
尚、前記監視場所A、B、…Nに設置のセンサ1a、1b、…1nは、検知ガスがないときには、発光素子5a、5b、…5nからの光は弱い状態で波長混合器105、105b、…105nに伝送し、検知ガスがあるときには発光素子5a、5b、…5nからの光は強い状態で波長混合器105、105b、…105nに伝送する。
【0020】
例えば、監視場所A、Cで漏洩があるときには、波長分配器108には、基本周波数(λ0)と波長(λa)及び波長(λc)の光を強く受光する。
このように、波長分配器108で受光する光の周波数を知ることによって、何れの場所で漏洩が発生したか判る。
尚、各発光素子5(5a、5b、…5n)は、所定間隔のパルスであると、消費電力を軽減することができる。又、各発光素子5(5a、5b、…5n)が発生するパルスは、同期させる必要がないことはいうまでもない。
以上のように、主光ファイバ100を施設し、各監視場所からの信号を副光ファイバ101を介して波長混合器105に接続し、主光ファイバ100に波長分配器108を用いることによって、各監視場所から各々単独に光ファイバを施設することなく、多点監視装置を構築することができる。尚、前記基本周波数(λ0)を発生する発光素子は必ずしも必要でない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】(A)はセンサを用いて可燃性ガスを検知する概念図、(B1、B2)はセンサの光特性図、(C)は発光量に対する受光量の比較図である。
【図2】(A〜D)は、光ファイバの一部を使用してのセンサの製作過程図である。
【図3】温度に対するエッチング状態を示す図である。
【図4】センサの実験設備を示す図である。
【図5】コアの口径に対する受光強度の変化についての図である。
【図6】プロパンガス濃度に対する受光強度の変化図である。
【図7】(A)はセンサの構造であり、(B)は防曝室内にセンサを設置しての監視装置図である。
【図8】多点監視装置の図である。
【符号の説明】
【0022】
1 センサ
2 コア
3 クラッド
5 発光素子
6 受光素子



【特許請求の範囲】
【請求項1】
屈折率n1のコアと、このコアの周囲に形成の屈折率n2のクラッドを備えるセンサであり、
前記センサを可燃性ガスが存在しない雰囲気下におくと、(コアの屈折率n1)≦(クラッドの屈折率n2)であり、
前記センサを可燃性ガスが存在する雰囲気におくと、(コアの屈折率n1)>(クラッドの屈折率n2)であり、
前記コアの口径を1.0mm以下であることを特徴とするセンサ。
【請求項2】
コアを、トランス型ポリイソプレンとポリフッ化ビニリデンを3:1(重量比)の混合物で作成することを特徴とする請求項1のセンサ。
【請求項3】
発光素子を請求項1又は請求項2のセンサの端部に発光し前記、センサの他端部で受光素子で受光する監視装置であって、
前記発光素子はパルスで光を発光することを特徴とする監視装置。
【請求項4】
主光ファイバに複数台の波長混合器と波長分配器を設け、
請求項1又は請求項2のセンサと発光素子を監視室に設置し、これらのセンサを副光ファイバで前記波長混合器に接合し、
前記各監視室に設置の発光素子の周波数を異にすることを特徴とする監視装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−71544(P2007−71544A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−255450(P2005−255450)
【出願日】平成17年9月2日(2005.9.2)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2005年3月29日 社団法人応用物理学会発行の「2005年(平成17年)春季 第52回 応用物理学関係連合講演会講演予稿集 第3分冊」に発表
【出願人】(000221834)東邦瓦斯株式会社 (440)
【出願人】(505332989)日光技研有限会社 (1)
【Fターム(参考)】