光ファイバセンシングシステム
【課題】ひとつのセンシングシステムで、多様な物理量のセンサがサポートでき、且つ、複数地点での多様な物理量が同時に観測できるシステムを提供すること。
【解決手段】本発明では、PN符号で変調された出射光を、光源部から異なる光路長の地点にそれぞれ配設された複数の光ファイバセンサから構成されたセンサ群に出射し、反射応答光とPN符号との相互相関処理によって複数の光ファイバセンサ毎の反射応答信号を得るように構成される光ファイバセンシングシステムにおいて、センサ群は、異なる物理量を検出し得る少なくとも1つ以上の方式に対応した光ファイバセンサを含み、光源部は、異なる遅延時間の遅延PN符号で変調され、光ファイバセンサに適合した複数種類の出射光を送出する複数の光源を備え、処理部は、センサ群からの反射応答光のデジタル信号と遅延PN符号との相互相関処理によってセンサ群の反射応答信号を得るように構成した。
【解決手段】本発明では、PN符号で変調された出射光を、光源部から異なる光路長の地点にそれぞれ配設された複数の光ファイバセンサから構成されたセンサ群に出射し、反射応答光とPN符号との相互相関処理によって複数の光ファイバセンサ毎の反射応答信号を得るように構成される光ファイバセンシングシステムにおいて、センサ群は、異なる物理量を検出し得る少なくとも1つ以上の方式に対応した光ファイバセンサを含み、光源部は、異なる遅延時間の遅延PN符号で変調され、光ファイバセンサに適合した複数種類の出射光を送出する複数の光源を備え、処理部は、センサ群からの反射応答光のデジタル信号と遅延PN符号との相互相関処理によってセンサ群の反射応答信号を得るように構成した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の異なる地点で発生する複数の異なる物理量の変化を同時に観測することの可能な光ファイバによるセンシングシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
個別の物理量の観測に関しては、複数の異なる地点での変化を同時に観測することが可能な光ファイバによるセンシングシステムが、本願発明者等によって既に提案されている。(特許文献1、2参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】PCT/JP2009/64582
【特許文献2】特許第4308868号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一定以上の距離差を付与したセンサ群からなるネットワークの反射インパルス応答を擬似ランダム符号(以下、「PN符号」という。)による相互相関処理にて求め、各センサに対応した反射波形によりセンシングする技術は既に提案されているが、それは、特定の物理量、例えば温度に関して、複数の異なる地点における観測を同時に可能とするものである。
例えば、BOFセンサを用いて、温度もしくは圧力の変化を観測することが可能であり、FBGセンサを用いて、温度もしくは歪みの変化を観測することが可能であり、ファイバプローブを用いて、TRSセンサユニットを用いて、ビームカッタによる変位もしくはフィルタによる温度の変化を観測することが可能である。
しかし、特許文献1、特許文献2のシステムでは、上述したようなFBGセンサを含んだ異なる形式の複数のセンサからの反射応答を、同時に分離・抽出して相互相関処理することは容易ではなかった。
【0005】
そこで、本発明は、ひとつのシステムで、多様なセンサがサポートでき、且つ、複数地点での多様な物理量が同時に観測できるシステム(この方式を「多元多点同時観測方式」という。)の実現を目的としてなされたものである。
本発明に係るシステムによって以下の目的が実現されている。
・センサ、装置とも、原理と構成が簡単明瞭であること。
・従来方式にくらべて小型、軽量、安価であること。
・扱いが容易で、外乱に対して高い耐性をもつこと。
・応答が速く、実時間計測ができること。
・センサの活線挿抜ができ、故障が他に影響しないこと。
・応用展開性に富むこと。
・我国オリジナルの技術であること。
【0006】
なお、「多元多点同時観測方式」における、多元とは、複数の異なる物理量を検出し得ることを示し、多点とは、光ファイバ上における光路長が異なる複数の地点における物理量を検出し得ることを示している。
また、同時観測とは、異なる距離における複数の異なる物理量を、実質的に同時(光ファイバ中の光の伝播時間と、電子回路の演算時間等の合計に規定される時間程度の短時間)に検出し得ることを示している。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る光ファイバセンシングシステムの請求項1では、
擬似ランダム符号で変調された出射光を、光ファイバ路に送出する光源部と、
前記光ファイバ路上における前記光源部から異なる光路長の地点にそれぞれ配設された複数の光ファイバセンサから構成されたセンサ群と、
前記センサ群からの反射応答光を前記光ファイバ路から取り出して、前記PN符号との相互相関処理によって前記複数の光ファイバセンサ毎の反射応答信号を得るように構成された処理部と、
から構成され、
前記複数の光ファイバセンサによって、前記光ファイバ路上の異なる地点における物理量を同時に観測し得るように構成される光ファイバセンシングシステムにおいて、
前記センサ群を構成する光ファイバセンサは、それぞれが異なる物理量を検出し得る少なくとも1つ以上の方式に対応した光ファイバセンサを含み、
前記光源部は、前記PN符号で変調され、前記少なくとも1つ以上の方式に対応した光ファイバセンサに適合した少なくとも1つ以上の出射光を前記光ファイバ路へ送出するように構成され、
前記処理部は、
前記センサ群からの反射応答光を受光してデジタル信号に変換する受光手段と、
前記デジタル信号と前記PN符号との相互相関処理によって前記センサ群の反射応答信号 を出力する相関手段と、
を備えることによって、
前記光ファイバセンサと前記出射光を用いて、異なる物理量を同時に観測し得るように構成したことを特徴としている。
請求項2では、
前記センサ群は、
光ファイバ先端に多層膜BPFを形成して前記多層膜BPFにおける反射スペクトルの変化を検出するBOFセンサと、
光ファイバ先端の端面における反射率の変化を検出するファイバプローブセンサと、
を含み、
前記光源部は、
前記PN符号で変調され、前記BOFセンサに適合した波長安定化狭スペクトルで、前記BOFの帯域内で異なる波長の一対の出射光を出射する光源を含み、
前記BOFセンサと前記ファイバプローブセンサとによって、反射スペクトルの変化に基づく温度と、反射率の変化に基づく水分濃度とを含んで、少なくとも2つの物理量を同時に観測し得るように構成した。
請求項3では、
前記光源部は、それぞれ異なる遅延時間で遅延させた複数の遅延PN符号で変調され、前記センサ群に適合した出射光を前記光ファイバ路へ送出するように構成され、
前記相関手段は、
前記デジタル信号と前記遅延PN符号との相互相関処理によって前記センサ群の反射応答信号を出力するように構成した。
請求項4では、
前記光源部は、
PN符号を発生するPN符号発生手段と、
前記PN符号をそれぞれ異なる遅延時間で遅延させて複数の遅延PN符号を生成する遅延手段と、
前記複数の遅延PN符号でそれぞれデジタル変調された出射光を送出する複数の光源と、
前記複数の光源から送出された出射光を合流させて前記光ファイバ路へ導入する結合手段と、
を備えている。
請求項5では、
前記光源部は、
PN符号を発生するPN符号発生手段と、
前記PN符号でそれぞれデジタル変調されて前記センサ群に適合した出射光を送出する複数の光源と、
前記複数の光源から出射された出射光を、それぞれ異なる光路長を持って異なる遅延時間で遅延させて出力する光学的遅延手段と、
前記光学的遅延手段から出力された出射光を合流させて前記光ファイバ路へ導入する結合手段と、
を備え、
前記相関手段は、
前記デジタル信号と、前記光学的遅延手段における遅延時間情報を加味した前記PN符号との相互相関処理によって前記センサ群の反射応答信号を出力する相関手段と、
を備えている。
請求項6では、
前記光源部は、
波長安定化狭スペクトル特性の出射光を出射する光源と、
連続スペクトル特性の出射光を出射する光源と、
の少なくとも何れか一方の光源を含んで前記センサ群に適合した出射光として出射するように構成されている。
請求項7では、
前記結合手段は、前記光源部を構成する光源および前記センサ群を構成する光ファイバに適合した選択的通過特性を備えたフィルタを備えている。
請求項8では、
前記光ファイバ路は、1本の光ファイバから構成され、
前記光源部から出射される出射光を前記光ファイバを介して前記センサ群へ導き、
前記センサ群からの反射応答光を前記光ファイバから取り出すサーキュレータを備えている。
請求項9では、
前記受光手段は、反射光に含まれる波長を分析する波長分析手段を含み、
前記センサ群に、物理量に応じて反射光の波長が変化するFBGセンサが含まれている場合に、前記物理量を観測し得るように構成されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ひとつのシステムで、多様なセンサがサポートでき、複数の地点における多様な物理量が同時に観測できることが可能となった。
また、センサ、装置とも、原理と構成が簡単明瞭であり、従来方式にくらべて小型、軽量、安価であり、扱いが容易で、電気的なセンシング技術に比較しても外乱に対して高い耐性を持っている。
また、本発明では、各光源に時間差を付与し、同一のPN符号でデジタル変調するだけで、光源ごとの反射応答が、最低1チップ周期分という極めて短時間の時間差をもって一挙に得られるから、特許文献2において提案した2波長プッシュプル比反射計測方式(以下、「DWPR」という。)のように、変調モードをPN符号のフレームごとに切り替えたりする必要がない。
【0009】
従って信号処理時間が半分ですむ。ということは、計測応答が2倍速くなるということで、振動センシングのように、高速化が求められる用途には大きなメリットとなる。
したがって、各物理量の変化に対して応答が速く、実時間計測ができることが可能となる。
また、光ファイバによるセンシングシステムであるので、センサの活線挿抜ができ、部分的に発生した故障が他には影響しない。
また、本発明は、各種の応用展開性に富むことと、我国オリジナルの技術であることも顕著な特徴である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る光ファイバセンシングシステムのセンサ群を構成し得る光ファイバセンサの例。
【図2】前記センサ群を構成するセンサ種別と、対応する光源とを示す説明図。
【図3】前記センサ群のトポロジー例。
【図4】本発明の実施例1の構成図。
【図5】本発明の実施例2の構成図。
【図6】本発明の実施例3の構成図。
【図7】本発明の実施例3における光源と各部の波長特性。
【図8】本発明の実施例4の構成図。
【0011】
【図9】反射応答の実験結果のグラフ。
【図10】反射応答の実験結果のグラフ。
【図11】反射応答の実験結果のグラフ。
【図12】本発明による実験結果のグラフ。
【図13】従来方式による実験結果のグラフ。
【図14】図12に基づいた反射パワ比のグラフ。
【図15】電気的遅延手段を用いた例と、光学的遅延手段を用いた例のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係る光ファイバセンシングシステムを実施するための形態としては、
基本的には、一定以上の距離差を付与したセンサ群からなるネットワークの反射インパルス応答をPN符号を用いた反射応答の相互相関処理により求め、各センサに対応した反射波形によりセンシングする。そこまでは従来の時間領域反射計測方式(OTDR:Optical Time Domain Reflectometry)と同じ考えである。
本発明では、異なる物理量を共通のシステムで観測する(多元化の)ために、まず、図1に示したように、センサネットワークを異種のセンサで構成し、それぞれに適した光源を当てたときのセンサごとの反射応答を求める。
図1の(A)に示したBOFセンサaは、
光ファイバ先端に多層膜BPFを形成して前記多層膜BOFにおける反射スペクトルの変化を検出するように構成されたものである。
図1の(B)に示したFBG(Fiber Bragg Grating) センサbは、
ファイバ長手方向に周期的な屈折率変調を作り、周期に合致した特定の波長の光のみが反射し、他の波長の光は通過す特性を利用したものである。
図1の(C)に示したファイバプローブセンサcは、
光ファイバ先端の端面における反射率の変化を検出するものである。
図1の(D)に示したTRセンサユニットdは、
アイソレータ、ダミーファイバと、TRセンサとを備え、前記TRセンサに配設されたビームカッタやフィルタによって、各種の変位や温度を検出し得るように構成されたものである。
前記各光ファイバセンサのそれぞれに適した光源としては、図2に示したように、波長安定化狭スペクトル特性を備えた光源対や、連続スペクトル特性を持った光源など、センサ群を構成する光ファイバセンサに応じて適宜選択して組み合わせる。光源に用いる素子としては、波長安定化狭スペクトル特性を備えた光源対としてはDFBレーザ発光素子、連続スペクトル特性を持った光源としては広帯域の特性を持ったSLD、特別の条件がない場合の光源としては安価なFPレーザ発光素子、などから選択することができる。
【0013】
以上のような光源を用い、共通のPN符号に一定以上の異なる時間遅延をあたえた信号で前記各光源からの出射光をデジタル変調し、各光源からの出射を結合させてセンサ群に送出する。
【0014】
センサ群のトポロジー例としては、図3に示したように、バス型でもスター型でもツリー型でも、あるいはそれらの組合せでもよいが、各センサを識別するために、すべてのセンサにおける光源からの光路長が、一定値(2L)以上の差があたえられていることが条件である。
ただし、Lはチップ距離であり、cを光速、nを光ファイバの群屈折率、fcをPN符号のチップ周波数としたとき、L=c/2nfc と定義される。
【0015】
各光源に対応したセンサ群の反射応答を、上記遅延PN符号との相互相関を取ることによって得る。遅延をあたえられたPN符号と元のPN符号の相互相関は実質的にゼロにできるから、前記相互相関処理により、光源ごとの反射応答が容易に得られるわけである。
【実施例1】
【0016】
図4に示したブロック図は、本発明に係る光ファイバセンシングシステムの実施例1の構成を示したものである。
図において、
1Aはセンサ群にFBGを含んでいない場合の光ファイバセンシングシステムであり、以下の要素を含んで構成されている。
2Aはセンサ群であり、複数の光ファイバセンサを含んだセンサネットワークである。この場合のセンサ群2Aには、FBGを含んでいない。なお、前記センサ群2Aの各光ファイバセンサは、前述したように、光源からの光路長に互いに一定値(2L)以上の差があたえられている。
3はPN符号発生器であり、PN符号を発生させて出力する。
4は遅延部であり、前記PN符号にそれぞれ異なる遅延時間を与えて、複数の遅延PN符号を出力する。互いに異なる遅延時間であればよいので、複数の遅延PN符号のうちの1つの信号は、遅延を与えなくてもよい。このように遅延が与えられていないPN符号も含んで遅延PN符号という。
【0017】
5は光源部であり、前記複数の遅延PN符号がそれぞれドライブアンプを介して電力増幅されて供給されて、前記センサ群に適合した特性のレーザ光を発光するレーザ発光ダイオードからなる光源を含んでいる。
6は結合部であり、前記光源部5の各レーザ発光ダイオードから出射されるレーザ光を、光カプラ61とBPF62を用いて結合させて1本の送出ファイバ63に供給するように構成されている。
7はサーキュレータであり、前記送出ファイバ63から供給される変調光を、光ファイバ8を介して前記センサ群2Aへ供給するとともに、前記光ファイバ8を介して戻ってくる前記センサ群2Aからの反射光を受光ファイバ71へ供給するように構成されている。
【0018】
10は受光部であり、前記受光ファイバ71を介して供給される反射光を受光して電気信号に変換する受光素子101と、前記受光素子101にて得られる電気信号を増幅する増幅器102と、前記増幅器102から出力される電気信号をデジタル信号に変換して出力するA/D変換器103とを含んでいる。
11は相関器であり、前記遅延PN符号と、前記受光部10から出力される前記信号との相互相関をとって、各光源に対応する前記センサ群全体の相関出力として出力するように構成されている。
12は計測処理部であり、前記各光源に対応する前記センサ群全体の相関出力を、それぞれの目的とする物理量との変換テーブルもしくは変換関数等を利用して、それぞれの光源が計測目標とする物理量に変換して、出力端子もしくは画面等の希望する出力形態で出力するように構成されている。
【0019】
センサ群の構成例
<BOFの場合>
光源としては、前記PN符号で変調され、前記BOFセンサに適合した波長安定化狭スペクトルで、前記BOFの帯域内で異なる波長の一対の出射光として、例えば、BOFの中心波長を挟む発振波長をもつ2つの光源を割り当てる。波長安定化された狭スペクトル光源(例えばDFBレーザ)が望ましい。
反射光の特性としては、2波長に対応した各センサの反射応答が、光源からの光路長に応じて時間軸上にピーク対として配列される。
計測処理部12においては、着目するBOFに対応した2波長反射ピーク対の比から、当該BOFに印加された温度もしくは膜厚方向の圧力等の物理量が割り出される。
【0020】
<ファイバプローブの場合>
光源としては、BOF対応の1つを用いてもよいし、FPレーザのような別の光源でもよいが、実施例1では、BOF対応の1つを利用する。
反射光の特性としては、着目する光源に対応した反射応答の中から、当該ファイバプローブに対応する反射ピーク値が、プローブ端面と光学的に接する液体などの媒体間のフレネル反射率に対応してあらわれる。
計測処理部12では、成分比が一定の媒体で覆われ、温度条件が共通なもう1つのファイバプローブを用い、このファイバプローブからの反射レベルを参照値として、前記反射ピーク値との差もしくは比を取ることによって、より正確にフレネル反射率を求めることができる。
これにより媒体の屈折率が求まり、屈折率と対応する成分比(例えば海水の塩分濃度やアルコール水溶液の水分濃度)を特定して、必要な形態の成分比データ等として出力させることができる。
【0021】
<TRセンサユニットの場合>
光源の条件としては、TRセンサが温度などによってスペクトル特性を変えるフィルタなどの場合は、BOFの場合と同じだが、ビームカッタのような遮光板位置によって透過率が変わる場合は、上記ファイバプローブの場合と同じ条件である。
計測処理部12では、当該光源とTRセンサユニットに対応する反射応答は、TRセンサの反射ピークと透過ピークがTRセンサユニット内のダミーファイバの光路長だけ時間的に分離したピーク対として現れるから、両者の比を予め得られている変換テーブルなどを参照することよりセンサに印加された物理量を割り出すことができる。
【実施例2】
【0022】
図5は、エタノール中の水分濃度を検出するための実施例2の構成を示したものである。
実施例2では、センサ群として、温度計測用のBOFセンサa2と、反射率計測用のファイバプローブセンサc2と、レファレンス用のファイバプローブセンサeとを用いたものであり、前記レファレンス用のファイバプローブセンサeは、無水エタノールで封止されたファイバを計測対象のエタノール中に浸したものである。
前記ファイバプローブセンサc2では、エタノール中に浸したファイバ端面プローブにおけるフレネル反射率の変化によって、前記エタノール中の水分濃度を検出することができる。ただし、前記ファイバ端面プローブにおけるフレネル反射率の変化特性は、温度変化に大きく依存するため、前記エタノールの温度を前記BOFセンサa2で計測して、温度変化の影響を補正し、さらに、同じ温度条件下の前記レファレンス用のファイバプローブセンサeにおけるフレネル反射率を水分濃度0%の状態のレファレンスとする。
【0023】
実施例2では、光源部32と相関器112には、2波長反射応答を同時に求めるDWPRをベースとしたシステム構成を採用し、BOFセンサa2による温度計測は光源LD1と光源LD2による2波長反射率差rから求め、ファイバプローブセンサc2によるフレネル反射率の計測には、光源LD2による時間分離された変調光に対する両プローブc2,eの反射ピーク差sから求める。
【実施例3】
【0024】
<FBGを含む場合>
図6に示したブロック図は、本発明に係る光ファイバセンシングシステムの実施例3の構成を示したものである。
図において、
1Bはセンサ群にFBGを含んだ場合の光ファイバセンシングシステムであり、以下の要素を含んで構成されている。
2Bはセンサ群であり、複数の光ファイバセンサを含んだセンサネットワークである。この場合のセンサ群2Bには、少なくとも1つのFBGを含んでいる場合でも対応可能である。
なお、PN符号発生器3、遅延部4、光源部5、合流部6、サーキュレータ7、光ファイバ8、受光部10、相関器11、変換部12に関しては、各部の光の波長帯域以外に関しては、図4における実施例1についての説明とほぼ同様であるので、その説明は省略する。
【0025】
図6においては、
まず、前記PN符号発生器3で発生させたPN符号に、遅延部4で、実施例1同様に前記PN符号にそれぞれ異なる遅延時間をあたえ、光源部5で、前記各遅延PN符号によって任意の複数の光源をデジタル変調し、結合手段6で複数の光源からの出射光を結合させ、送出ファイバ63とサーキュレータ7を介して光ファイバ8に出射し、前記光ファイバ8を介して、互いに一定以上の光路長の差が付与された光ファイバセンサを備えたセンサ群2Bに送出する。
センサ群2Bからの反射光は、サーキュレータ7によって分離されて、後述する波長分析部9を通って受光部10に戻りよってデジタル信号に変換された後、相関器11において、遅延時間の異なるそれぞれの遅延PN信号との相互相関処理が行われる。
各相関出力は上記光源ごとの反射応答であるから、これにより、センサごとの反射応答が時間軸上に配列されて得られる。
【0026】
図6の構成は、図4の構成と比較して、波長分析部9を備えている点が大きく異なるので、波長分析部9の構成と機能について以下に説明する。
図に示した波長分析部9は、前記センサ群2BがFBGセンサを含んでいるときには、反射光に含まれるFBGセンサに起因する波長変移成分を分離検出するための波長分析光回路93と、FGB対応の光源波長を通過させ、FGB対応以外の光源波長の通過を阻止して反射するBPF91と、前記波長分析光回路93から出力されるFGB対応の光源波長を通過させ、前記BPF91における反射光に含まれるFGB対応以外の光源波長を反射させて受光部ファイバ94へ出力するフィルタF92とを含んでいる。
【0027】
前記波長分析光回路93は、サーキュレータ97、傾斜フィルタ96、ダミーファイバ95、光カプラ98を含んでいる。
なお、センサ群ごとの反射光の相互干渉を防ぐためや、挿入損失の増加を防ぐために、波長分析光回路93には、BPF91とフィルタF92とを用いている。
【0028】
FBGセンサに適合した光源としては、SLDのように、FBGの波長変化幅をカバーする連続スペクトルをもつものとする。
受光部10の前に、図のようなサーキュレータ97、傾斜フィルタ96、ダミーファイバ95、光カプラ98などから成る「波長分析光回路93」を挿入している。この波長分析光回路93では前記傾斜フィルタ96の透過光と反射光を時間的に分離する機能を実現するために、例えば反射光の光路にダミーファイバ95を備えている。
【0029】
センサ群を多元化した場合には、それぞれのセンサに適合した光源を用いることになるが、無用な光学的干渉を避けるためや、結合する場合における挿入損失損の増加を防ぐために、各光源は、図7に示したように、互いに波長域が重ならないようにすることが好ましい。
図7において、F1はSLD等から出射される広帯域の連続スペクトル光の帯域を示しており、F2はBPF91の透過特性を示しており、F3はBPF91の反射特性を示しており、F4は傾斜フィルタ96の透過特性を示しており、F5は傾斜フィルタ96の透過特性を示している。FBGのブラッグ波長の変化域は前記BPF91の帯域内に収まり、FBG以外のセンサは前記BPF91の帯域外を利用する。
【0030】
実施例3におけるFBGに対応する相関器11からの相関出力、すなわちFBGの反射応答波形においては、傾斜フィルタの透過強度と反射強度はFBGの反射波長に応じてプッシュプル変化をなすピーク対としてあらわれる。
【0031】
計測処理部12では、前記ピーク対としてあらわれる両光の強度比から、FBGに印加された温度ないし歪等の物理量に相当する波長変化を割り出すことができる。
他のセンサの反射応答は、実施例1の場合と同様に計測処理される。
【0032】
実施例3(FBGありの場合)においては、センサ群にFBGが含まれるので、光源にFBGのブラッグ反射波長の変化範囲をカバーする連続スペクトルの光源(SLD等)を用いる。
さらに、受光部10の前に波長分析光回路93を挿入し、傾斜フィルタ96の透過光と反射光をサーキュレータ97とダミーファイバ95と光カプラ98により、両者を時間的に分離する。
前記両光の応答波形を前記相関出力より求め、両ピーク値の比を取れば、FBGのブラッグ反射波長を割り出すことができる。これによりFBGに印加された温度もしくは歪等の物理量を知ることができる。
他の光源とセンサにいついてはFBGなしの場合(実施例1)と同前である。
【実施例4】
【0033】
図8は、実施例4の光ファイバセンシングシステム1Cの構成図であり、センサ群2CにはTRS,FBG,BOFが組み合わせられている。光源部5Cからは異なる時間遅延の与えられた出射光が前記センサ群2Cに出射され、前記光源部5CからTRSまでの光路長は104m,TRSからFBGまでの光路長は344m,FBGからBOFまでの光路長は288mに設定されており、光源から各センサまでの光路長が異なるように設定されている。
なお、チップ距離L=8mとした場合、前記BOFまでの光路長288mは36Lとなる。
【0034】
上記構成の光ファイバセンシングシステム1Cの反射応答の実験結果を図9、10、11に示した。なお、図9の実験条件は、TRSに与えられた相対変位=+50μm、FBGに与えられた歪み=500μS、BOFに与えられた温度=50℃であり、
図10の実験条件は、TRSに与えられた相対変位=0μm、FBGに与えられた歪み=250μS、BOFに与えられた温度=20℃であり、
図11の実験条件は、TRSに与えられた相対変位=-50μm、FBGに与えられた歪み=0μS、BOFに与えられた温度=-10℃である。
【0035】
図9の(A)には、波長λ1に対する反射パワ(dB)のグラフG1(細線)と、波長λ2に対する反射パワ(dB)のグラフG2(破線)と、広帯域連続スペクトル光に対する反射パワ(dB)のグラフG3(太線)とを示し、図9の(B)には前記各応答の合成光に対する反射パワ(dB)のグラフG4を示している。
【0036】
図9の(A)には、TRSによる、波長λ1に対する反射波と透過波の2つのピークP11,P13からなるピーク対と、波長λ2に対する反射波と透過波の2つのピークP12,P14からなるピーク対と、FBGによる、連続スペクトル波に対する2つのピークP15,P16からなるピーク対と、BOFによる、波長λ1と波長λ2に対する2つのピークP17,P18からなるピーク対があらわれている。
前記ピークP11,P13のピーク差もしくはピーク比からTRSに与えられた相対変位を得ることができ、前記ピークP15,P16のピーク差もしくはピーク比からFBGに与えられた歪みを得ることができ、前記ピークP17,P18のピーク差もしくはピーク比からBOFに与えられた温度を得ることができる。なお、TRSにおいては波長λ1と波長λ2に対する反射パワは同じレベルであらわれている。(ピークP11=P12、ピークP13=P14)ので、いずれか一方のピーク対を採用して相対変位を求める。
【0037】
図10の(A)には、波長λ1に対する反射パワ(dB)のグラフG5(細線)と、波長λ2に対する反射パワ(dB)のグラフG6(破線)と、広帯域連続スペクトル光に対する反射パワ(dB)のグラフG7(太線)とを示し、図10の(B)には前記各応答の合成光に対する反射パワ(dB)のグラフG8を示している。
【0038】
図10の(A)には、TRSによる、波長λ1に対する反射波と透過波の2つのピークP21,P23からなるピーク対と、波長λ2に対する反射波と透過波の2つのピークP22,P24からなるピーク対と、FBGによる、連続スペクトル波に対する2つのピークP25,P26からなるピーク対と、BOFによる、波長λ1と波長λ2に対する2つのピークP27,P28からなるピーク対があらわれている。
前記同様に、TRSに与えられた相対変位、FBGに与えられた歪み、およびBOFに与えられた温度を得ることができる。
【0039】
図11においても同様であるので、その説明は省略する。
【0040】
図12は、DWPRで波長の異なる2光源(DFBレーザ)を同一のPN符号でデジタル変調する際に、 一方に遅延時間を付与した。前記遅延時間は、チップ距離をLとした場合3Lとした。(チップ距離=8mの場合にはファイバ距離にして24m分である)。
センサ群としては、8分岐のシングルスター(1階層の8分割)とし、各光源の出射ポートにダミーファイバによる前記遅延時間に相当する光路長の差をあたえた。
図12においては、波長λ2の応答が遅延時間(3L)だけずれて交互に現れているのが分かる。波長λ2に対する応答波形のピークの反射パワの変化が、図13に示した、遅延時間を与えない従来方式で得られたグラフG13,G14に一致していることを確認できたので、本発明の方式が正しいことが確認できた。
【0041】
図14は、図12にあらわれた8組のピーク対(P41とP42、P43とP44、P45とP46、P47とP48、P49とP50、P51とP52、P53とP54、P55とP56)における各ピークどうしの比を、ピークP61、P62、P63、P64、P65、P66、P67、P68)として示したものである。
これらのピークP61〜P68は、前記8つのセンサにおける物理量に対応しているので、予め得ておいた変換テーブル等を参照して、対応する物理量の数値に変換して出力することができる。
【0042】
なお、図15の(A)に示したように、前記センサ群へ送出される出射光は、電気的な遅延手段4Dによって、異なる遅延時間の遅延PN符号を得て、それらの遅延PN符号で光源からの出射光を変調して、複数の光源からの出射光を結合したものでもよいが、図15の(B)に示したように、共通のPN符号で複数の光源からの出射光を変調して、それらの出射光を、ダミーファイバ等の光学的な遅延手段4Eで互いに異なる遅延時間だけ遅延させたものを結合したものでもよい。
図15の(B)の場合には、前記光学的な遅延手段4Eにおける遅延時間に相当する情報を相関器11Eに与えておく必要がある。
【符号の説明】
【0043】
1A 光ファイバセンシングシステム
2A センサ群
3 PN符号発生器
4 遅延手段、遅延部
5 光源部
6 結合部
7 サーキュレータ
8 光ファイバ路、光ファイバ
10 受光手段、受光部
11 相関手段、相関器
12 計測処理部
1B 光ファイバセンシングシステム
2B センサ群
9 波長分析部
91 BPF
92 フィルタF
93 波長分析光回路
95 ダミーファイバ
96 傾斜フィルタ
97 サーキュレータ
98 光カプラ
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の異なる地点で発生する複数の異なる物理量の変化を同時に観測することの可能な光ファイバによるセンシングシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
個別の物理量の観測に関しては、複数の異なる地点での変化を同時に観測することが可能な光ファイバによるセンシングシステムが、本願発明者等によって既に提案されている。(特許文献1、2参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】PCT/JP2009/64582
【特許文献2】特許第4308868号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一定以上の距離差を付与したセンサ群からなるネットワークの反射インパルス応答を擬似ランダム符号(以下、「PN符号」という。)による相互相関処理にて求め、各センサに対応した反射波形によりセンシングする技術は既に提案されているが、それは、特定の物理量、例えば温度に関して、複数の異なる地点における観測を同時に可能とするものである。
例えば、BOFセンサを用いて、温度もしくは圧力の変化を観測することが可能であり、FBGセンサを用いて、温度もしくは歪みの変化を観測することが可能であり、ファイバプローブを用いて、TRSセンサユニットを用いて、ビームカッタによる変位もしくはフィルタによる温度の変化を観測することが可能である。
しかし、特許文献1、特許文献2のシステムでは、上述したようなFBGセンサを含んだ異なる形式の複数のセンサからの反射応答を、同時に分離・抽出して相互相関処理することは容易ではなかった。
【0005】
そこで、本発明は、ひとつのシステムで、多様なセンサがサポートでき、且つ、複数地点での多様な物理量が同時に観測できるシステム(この方式を「多元多点同時観測方式」という。)の実現を目的としてなされたものである。
本発明に係るシステムによって以下の目的が実現されている。
・センサ、装置とも、原理と構成が簡単明瞭であること。
・従来方式にくらべて小型、軽量、安価であること。
・扱いが容易で、外乱に対して高い耐性をもつこと。
・応答が速く、実時間計測ができること。
・センサの活線挿抜ができ、故障が他に影響しないこと。
・応用展開性に富むこと。
・我国オリジナルの技術であること。
【0006】
なお、「多元多点同時観測方式」における、多元とは、複数の異なる物理量を検出し得ることを示し、多点とは、光ファイバ上における光路長が異なる複数の地点における物理量を検出し得ることを示している。
また、同時観測とは、異なる距離における複数の異なる物理量を、実質的に同時(光ファイバ中の光の伝播時間と、電子回路の演算時間等の合計に規定される時間程度の短時間)に検出し得ることを示している。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る光ファイバセンシングシステムの請求項1では、
擬似ランダム符号で変調された出射光を、光ファイバ路に送出する光源部と、
前記光ファイバ路上における前記光源部から異なる光路長の地点にそれぞれ配設された複数の光ファイバセンサから構成されたセンサ群と、
前記センサ群からの反射応答光を前記光ファイバ路から取り出して、前記PN符号との相互相関処理によって前記複数の光ファイバセンサ毎の反射応答信号を得るように構成された処理部と、
から構成され、
前記複数の光ファイバセンサによって、前記光ファイバ路上の異なる地点における物理量を同時に観測し得るように構成される光ファイバセンシングシステムにおいて、
前記センサ群を構成する光ファイバセンサは、それぞれが異なる物理量を検出し得る少なくとも1つ以上の方式に対応した光ファイバセンサを含み、
前記光源部は、前記PN符号で変調され、前記少なくとも1つ以上の方式に対応した光ファイバセンサに適合した少なくとも1つ以上の出射光を前記光ファイバ路へ送出するように構成され、
前記処理部は、
前記センサ群からの反射応答光を受光してデジタル信号に変換する受光手段と、
前記デジタル信号と前記PN符号との相互相関処理によって前記センサ群の反射応答信号 を出力する相関手段と、
を備えることによって、
前記光ファイバセンサと前記出射光を用いて、異なる物理量を同時に観測し得るように構成したことを特徴としている。
請求項2では、
前記センサ群は、
光ファイバ先端に多層膜BPFを形成して前記多層膜BPFにおける反射スペクトルの変化を検出するBOFセンサと、
光ファイバ先端の端面における反射率の変化を検出するファイバプローブセンサと、
を含み、
前記光源部は、
前記PN符号で変調され、前記BOFセンサに適合した波長安定化狭スペクトルで、前記BOFの帯域内で異なる波長の一対の出射光を出射する光源を含み、
前記BOFセンサと前記ファイバプローブセンサとによって、反射スペクトルの変化に基づく温度と、反射率の変化に基づく水分濃度とを含んで、少なくとも2つの物理量を同時に観測し得るように構成した。
請求項3では、
前記光源部は、それぞれ異なる遅延時間で遅延させた複数の遅延PN符号で変調され、前記センサ群に適合した出射光を前記光ファイバ路へ送出するように構成され、
前記相関手段は、
前記デジタル信号と前記遅延PN符号との相互相関処理によって前記センサ群の反射応答信号を出力するように構成した。
請求項4では、
前記光源部は、
PN符号を発生するPN符号発生手段と、
前記PN符号をそれぞれ異なる遅延時間で遅延させて複数の遅延PN符号を生成する遅延手段と、
前記複数の遅延PN符号でそれぞれデジタル変調された出射光を送出する複数の光源と、
前記複数の光源から送出された出射光を合流させて前記光ファイバ路へ導入する結合手段と、
を備えている。
請求項5では、
前記光源部は、
PN符号を発生するPN符号発生手段と、
前記PN符号でそれぞれデジタル変調されて前記センサ群に適合した出射光を送出する複数の光源と、
前記複数の光源から出射された出射光を、それぞれ異なる光路長を持って異なる遅延時間で遅延させて出力する光学的遅延手段と、
前記光学的遅延手段から出力された出射光を合流させて前記光ファイバ路へ導入する結合手段と、
を備え、
前記相関手段は、
前記デジタル信号と、前記光学的遅延手段における遅延時間情報を加味した前記PN符号との相互相関処理によって前記センサ群の反射応答信号を出力する相関手段と、
を備えている。
請求項6では、
前記光源部は、
波長安定化狭スペクトル特性の出射光を出射する光源と、
連続スペクトル特性の出射光を出射する光源と、
の少なくとも何れか一方の光源を含んで前記センサ群に適合した出射光として出射するように構成されている。
請求項7では、
前記結合手段は、前記光源部を構成する光源および前記センサ群を構成する光ファイバに適合した選択的通過特性を備えたフィルタを備えている。
請求項8では、
前記光ファイバ路は、1本の光ファイバから構成され、
前記光源部から出射される出射光を前記光ファイバを介して前記センサ群へ導き、
前記センサ群からの反射応答光を前記光ファイバから取り出すサーキュレータを備えている。
請求項9では、
前記受光手段は、反射光に含まれる波長を分析する波長分析手段を含み、
前記センサ群に、物理量に応じて反射光の波長が変化するFBGセンサが含まれている場合に、前記物理量を観測し得るように構成されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ひとつのシステムで、多様なセンサがサポートでき、複数の地点における多様な物理量が同時に観測できることが可能となった。
また、センサ、装置とも、原理と構成が簡単明瞭であり、従来方式にくらべて小型、軽量、安価であり、扱いが容易で、電気的なセンシング技術に比較しても外乱に対して高い耐性を持っている。
また、本発明では、各光源に時間差を付与し、同一のPN符号でデジタル変調するだけで、光源ごとの反射応答が、最低1チップ周期分という極めて短時間の時間差をもって一挙に得られるから、特許文献2において提案した2波長プッシュプル比反射計測方式(以下、「DWPR」という。)のように、変調モードをPN符号のフレームごとに切り替えたりする必要がない。
【0009】
従って信号処理時間が半分ですむ。ということは、計測応答が2倍速くなるということで、振動センシングのように、高速化が求められる用途には大きなメリットとなる。
したがって、各物理量の変化に対して応答が速く、実時間計測ができることが可能となる。
また、光ファイバによるセンシングシステムであるので、センサの活線挿抜ができ、部分的に発生した故障が他には影響しない。
また、本発明は、各種の応用展開性に富むことと、我国オリジナルの技術であることも顕著な特徴である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る光ファイバセンシングシステムのセンサ群を構成し得る光ファイバセンサの例。
【図2】前記センサ群を構成するセンサ種別と、対応する光源とを示す説明図。
【図3】前記センサ群のトポロジー例。
【図4】本発明の実施例1の構成図。
【図5】本発明の実施例2の構成図。
【図6】本発明の実施例3の構成図。
【図7】本発明の実施例3における光源と各部の波長特性。
【図8】本発明の実施例4の構成図。
【0011】
【図9】反射応答の実験結果のグラフ。
【図10】反射応答の実験結果のグラフ。
【図11】反射応答の実験結果のグラフ。
【図12】本発明による実験結果のグラフ。
【図13】従来方式による実験結果のグラフ。
【図14】図12に基づいた反射パワ比のグラフ。
【図15】電気的遅延手段を用いた例と、光学的遅延手段を用いた例のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係る光ファイバセンシングシステムを実施するための形態としては、
基本的には、一定以上の距離差を付与したセンサ群からなるネットワークの反射インパルス応答をPN符号を用いた反射応答の相互相関処理により求め、各センサに対応した反射波形によりセンシングする。そこまでは従来の時間領域反射計測方式(OTDR:Optical Time Domain Reflectometry)と同じ考えである。
本発明では、異なる物理量を共通のシステムで観測する(多元化の)ために、まず、図1に示したように、センサネットワークを異種のセンサで構成し、それぞれに適した光源を当てたときのセンサごとの反射応答を求める。
図1の(A)に示したBOFセンサaは、
光ファイバ先端に多層膜BPFを形成して前記多層膜BOFにおける反射スペクトルの変化を検出するように構成されたものである。
図1の(B)に示したFBG(Fiber Bragg Grating) センサbは、
ファイバ長手方向に周期的な屈折率変調を作り、周期に合致した特定の波長の光のみが反射し、他の波長の光は通過す特性を利用したものである。
図1の(C)に示したファイバプローブセンサcは、
光ファイバ先端の端面における反射率の変化を検出するものである。
図1の(D)に示したTRセンサユニットdは、
アイソレータ、ダミーファイバと、TRセンサとを備え、前記TRセンサに配設されたビームカッタやフィルタによって、各種の変位や温度を検出し得るように構成されたものである。
前記各光ファイバセンサのそれぞれに適した光源としては、図2に示したように、波長安定化狭スペクトル特性を備えた光源対や、連続スペクトル特性を持った光源など、センサ群を構成する光ファイバセンサに応じて適宜選択して組み合わせる。光源に用いる素子としては、波長安定化狭スペクトル特性を備えた光源対としてはDFBレーザ発光素子、連続スペクトル特性を持った光源としては広帯域の特性を持ったSLD、特別の条件がない場合の光源としては安価なFPレーザ発光素子、などから選択することができる。
【0013】
以上のような光源を用い、共通のPN符号に一定以上の異なる時間遅延をあたえた信号で前記各光源からの出射光をデジタル変調し、各光源からの出射を結合させてセンサ群に送出する。
【0014】
センサ群のトポロジー例としては、図3に示したように、バス型でもスター型でもツリー型でも、あるいはそれらの組合せでもよいが、各センサを識別するために、すべてのセンサにおける光源からの光路長が、一定値(2L)以上の差があたえられていることが条件である。
ただし、Lはチップ距離であり、cを光速、nを光ファイバの群屈折率、fcをPN符号のチップ周波数としたとき、L=c/2nfc と定義される。
【0015】
各光源に対応したセンサ群の反射応答を、上記遅延PN符号との相互相関を取ることによって得る。遅延をあたえられたPN符号と元のPN符号の相互相関は実質的にゼロにできるから、前記相互相関処理により、光源ごとの反射応答が容易に得られるわけである。
【実施例1】
【0016】
図4に示したブロック図は、本発明に係る光ファイバセンシングシステムの実施例1の構成を示したものである。
図において、
1Aはセンサ群にFBGを含んでいない場合の光ファイバセンシングシステムであり、以下の要素を含んで構成されている。
2Aはセンサ群であり、複数の光ファイバセンサを含んだセンサネットワークである。この場合のセンサ群2Aには、FBGを含んでいない。なお、前記センサ群2Aの各光ファイバセンサは、前述したように、光源からの光路長に互いに一定値(2L)以上の差があたえられている。
3はPN符号発生器であり、PN符号を発生させて出力する。
4は遅延部であり、前記PN符号にそれぞれ異なる遅延時間を与えて、複数の遅延PN符号を出力する。互いに異なる遅延時間であればよいので、複数の遅延PN符号のうちの1つの信号は、遅延を与えなくてもよい。このように遅延が与えられていないPN符号も含んで遅延PN符号という。
【0017】
5は光源部であり、前記複数の遅延PN符号がそれぞれドライブアンプを介して電力増幅されて供給されて、前記センサ群に適合した特性のレーザ光を発光するレーザ発光ダイオードからなる光源を含んでいる。
6は結合部であり、前記光源部5の各レーザ発光ダイオードから出射されるレーザ光を、光カプラ61とBPF62を用いて結合させて1本の送出ファイバ63に供給するように構成されている。
7はサーキュレータであり、前記送出ファイバ63から供給される変調光を、光ファイバ8を介して前記センサ群2Aへ供給するとともに、前記光ファイバ8を介して戻ってくる前記センサ群2Aからの反射光を受光ファイバ71へ供給するように構成されている。
【0018】
10は受光部であり、前記受光ファイバ71を介して供給される反射光を受光して電気信号に変換する受光素子101と、前記受光素子101にて得られる電気信号を増幅する増幅器102と、前記増幅器102から出力される電気信号をデジタル信号に変換して出力するA/D変換器103とを含んでいる。
11は相関器であり、前記遅延PN符号と、前記受光部10から出力される前記信号との相互相関をとって、各光源に対応する前記センサ群全体の相関出力として出力するように構成されている。
12は計測処理部であり、前記各光源に対応する前記センサ群全体の相関出力を、それぞれの目的とする物理量との変換テーブルもしくは変換関数等を利用して、それぞれの光源が計測目標とする物理量に変換して、出力端子もしくは画面等の希望する出力形態で出力するように構成されている。
【0019】
センサ群の構成例
<BOFの場合>
光源としては、前記PN符号で変調され、前記BOFセンサに適合した波長安定化狭スペクトルで、前記BOFの帯域内で異なる波長の一対の出射光として、例えば、BOFの中心波長を挟む発振波長をもつ2つの光源を割り当てる。波長安定化された狭スペクトル光源(例えばDFBレーザ)が望ましい。
反射光の特性としては、2波長に対応した各センサの反射応答が、光源からの光路長に応じて時間軸上にピーク対として配列される。
計測処理部12においては、着目するBOFに対応した2波長反射ピーク対の比から、当該BOFに印加された温度もしくは膜厚方向の圧力等の物理量が割り出される。
【0020】
<ファイバプローブの場合>
光源としては、BOF対応の1つを用いてもよいし、FPレーザのような別の光源でもよいが、実施例1では、BOF対応の1つを利用する。
反射光の特性としては、着目する光源に対応した反射応答の中から、当該ファイバプローブに対応する反射ピーク値が、プローブ端面と光学的に接する液体などの媒体間のフレネル反射率に対応してあらわれる。
計測処理部12では、成分比が一定の媒体で覆われ、温度条件が共通なもう1つのファイバプローブを用い、このファイバプローブからの反射レベルを参照値として、前記反射ピーク値との差もしくは比を取ることによって、より正確にフレネル反射率を求めることができる。
これにより媒体の屈折率が求まり、屈折率と対応する成分比(例えば海水の塩分濃度やアルコール水溶液の水分濃度)を特定して、必要な形態の成分比データ等として出力させることができる。
【0021】
<TRセンサユニットの場合>
光源の条件としては、TRセンサが温度などによってスペクトル特性を変えるフィルタなどの場合は、BOFの場合と同じだが、ビームカッタのような遮光板位置によって透過率が変わる場合は、上記ファイバプローブの場合と同じ条件である。
計測処理部12では、当該光源とTRセンサユニットに対応する反射応答は、TRセンサの反射ピークと透過ピークがTRセンサユニット内のダミーファイバの光路長だけ時間的に分離したピーク対として現れるから、両者の比を予め得られている変換テーブルなどを参照することよりセンサに印加された物理量を割り出すことができる。
【実施例2】
【0022】
図5は、エタノール中の水分濃度を検出するための実施例2の構成を示したものである。
実施例2では、センサ群として、温度計測用のBOFセンサa2と、反射率計測用のファイバプローブセンサc2と、レファレンス用のファイバプローブセンサeとを用いたものであり、前記レファレンス用のファイバプローブセンサeは、無水エタノールで封止されたファイバを計測対象のエタノール中に浸したものである。
前記ファイバプローブセンサc2では、エタノール中に浸したファイバ端面プローブにおけるフレネル反射率の変化によって、前記エタノール中の水分濃度を検出することができる。ただし、前記ファイバ端面プローブにおけるフレネル反射率の変化特性は、温度変化に大きく依存するため、前記エタノールの温度を前記BOFセンサa2で計測して、温度変化の影響を補正し、さらに、同じ温度条件下の前記レファレンス用のファイバプローブセンサeにおけるフレネル反射率を水分濃度0%の状態のレファレンスとする。
【0023】
実施例2では、光源部32と相関器112には、2波長反射応答を同時に求めるDWPRをベースとしたシステム構成を採用し、BOFセンサa2による温度計測は光源LD1と光源LD2による2波長反射率差rから求め、ファイバプローブセンサc2によるフレネル反射率の計測には、光源LD2による時間分離された変調光に対する両プローブc2,eの反射ピーク差sから求める。
【実施例3】
【0024】
<FBGを含む場合>
図6に示したブロック図は、本発明に係る光ファイバセンシングシステムの実施例3の構成を示したものである。
図において、
1Bはセンサ群にFBGを含んだ場合の光ファイバセンシングシステムであり、以下の要素を含んで構成されている。
2Bはセンサ群であり、複数の光ファイバセンサを含んだセンサネットワークである。この場合のセンサ群2Bには、少なくとも1つのFBGを含んでいる場合でも対応可能である。
なお、PN符号発生器3、遅延部4、光源部5、合流部6、サーキュレータ7、光ファイバ8、受光部10、相関器11、変換部12に関しては、各部の光の波長帯域以外に関しては、図4における実施例1についての説明とほぼ同様であるので、その説明は省略する。
【0025】
図6においては、
まず、前記PN符号発生器3で発生させたPN符号に、遅延部4で、実施例1同様に前記PN符号にそれぞれ異なる遅延時間をあたえ、光源部5で、前記各遅延PN符号によって任意の複数の光源をデジタル変調し、結合手段6で複数の光源からの出射光を結合させ、送出ファイバ63とサーキュレータ7を介して光ファイバ8に出射し、前記光ファイバ8を介して、互いに一定以上の光路長の差が付与された光ファイバセンサを備えたセンサ群2Bに送出する。
センサ群2Bからの反射光は、サーキュレータ7によって分離されて、後述する波長分析部9を通って受光部10に戻りよってデジタル信号に変換された後、相関器11において、遅延時間の異なるそれぞれの遅延PN信号との相互相関処理が行われる。
各相関出力は上記光源ごとの反射応答であるから、これにより、センサごとの反射応答が時間軸上に配列されて得られる。
【0026】
図6の構成は、図4の構成と比較して、波長分析部9を備えている点が大きく異なるので、波長分析部9の構成と機能について以下に説明する。
図に示した波長分析部9は、前記センサ群2BがFBGセンサを含んでいるときには、反射光に含まれるFBGセンサに起因する波長変移成分を分離検出するための波長分析光回路93と、FGB対応の光源波長を通過させ、FGB対応以外の光源波長の通過を阻止して反射するBPF91と、前記波長分析光回路93から出力されるFGB対応の光源波長を通過させ、前記BPF91における反射光に含まれるFGB対応以外の光源波長を反射させて受光部ファイバ94へ出力するフィルタF92とを含んでいる。
【0027】
前記波長分析光回路93は、サーキュレータ97、傾斜フィルタ96、ダミーファイバ95、光カプラ98を含んでいる。
なお、センサ群ごとの反射光の相互干渉を防ぐためや、挿入損失の増加を防ぐために、波長分析光回路93には、BPF91とフィルタF92とを用いている。
【0028】
FBGセンサに適合した光源としては、SLDのように、FBGの波長変化幅をカバーする連続スペクトルをもつものとする。
受光部10の前に、図のようなサーキュレータ97、傾斜フィルタ96、ダミーファイバ95、光カプラ98などから成る「波長分析光回路93」を挿入している。この波長分析光回路93では前記傾斜フィルタ96の透過光と反射光を時間的に分離する機能を実現するために、例えば反射光の光路にダミーファイバ95を備えている。
【0029】
センサ群を多元化した場合には、それぞれのセンサに適合した光源を用いることになるが、無用な光学的干渉を避けるためや、結合する場合における挿入損失損の増加を防ぐために、各光源は、図7に示したように、互いに波長域が重ならないようにすることが好ましい。
図7において、F1はSLD等から出射される広帯域の連続スペクトル光の帯域を示しており、F2はBPF91の透過特性を示しており、F3はBPF91の反射特性を示しており、F4は傾斜フィルタ96の透過特性を示しており、F5は傾斜フィルタ96の透過特性を示している。FBGのブラッグ波長の変化域は前記BPF91の帯域内に収まり、FBG以外のセンサは前記BPF91の帯域外を利用する。
【0030】
実施例3におけるFBGに対応する相関器11からの相関出力、すなわちFBGの反射応答波形においては、傾斜フィルタの透過強度と反射強度はFBGの反射波長に応じてプッシュプル変化をなすピーク対としてあらわれる。
【0031】
計測処理部12では、前記ピーク対としてあらわれる両光の強度比から、FBGに印加された温度ないし歪等の物理量に相当する波長変化を割り出すことができる。
他のセンサの反射応答は、実施例1の場合と同様に計測処理される。
【0032】
実施例3(FBGありの場合)においては、センサ群にFBGが含まれるので、光源にFBGのブラッグ反射波長の変化範囲をカバーする連続スペクトルの光源(SLD等)を用いる。
さらに、受光部10の前に波長分析光回路93を挿入し、傾斜フィルタ96の透過光と反射光をサーキュレータ97とダミーファイバ95と光カプラ98により、両者を時間的に分離する。
前記両光の応答波形を前記相関出力より求め、両ピーク値の比を取れば、FBGのブラッグ反射波長を割り出すことができる。これによりFBGに印加された温度もしくは歪等の物理量を知ることができる。
他の光源とセンサにいついてはFBGなしの場合(実施例1)と同前である。
【実施例4】
【0033】
図8は、実施例4の光ファイバセンシングシステム1Cの構成図であり、センサ群2CにはTRS,FBG,BOFが組み合わせられている。光源部5Cからは異なる時間遅延の与えられた出射光が前記センサ群2Cに出射され、前記光源部5CからTRSまでの光路長は104m,TRSからFBGまでの光路長は344m,FBGからBOFまでの光路長は288mに設定されており、光源から各センサまでの光路長が異なるように設定されている。
なお、チップ距離L=8mとした場合、前記BOFまでの光路長288mは36Lとなる。
【0034】
上記構成の光ファイバセンシングシステム1Cの反射応答の実験結果を図9、10、11に示した。なお、図9の実験条件は、TRSに与えられた相対変位=+50μm、FBGに与えられた歪み=500μS、BOFに与えられた温度=50℃であり、
図10の実験条件は、TRSに与えられた相対変位=0μm、FBGに与えられた歪み=250μS、BOFに与えられた温度=20℃であり、
図11の実験条件は、TRSに与えられた相対変位=-50μm、FBGに与えられた歪み=0μS、BOFに与えられた温度=-10℃である。
【0035】
図9の(A)には、波長λ1に対する反射パワ(dB)のグラフG1(細線)と、波長λ2に対する反射パワ(dB)のグラフG2(破線)と、広帯域連続スペクトル光に対する反射パワ(dB)のグラフG3(太線)とを示し、図9の(B)には前記各応答の合成光に対する反射パワ(dB)のグラフG4を示している。
【0036】
図9の(A)には、TRSによる、波長λ1に対する反射波と透過波の2つのピークP11,P13からなるピーク対と、波長λ2に対する反射波と透過波の2つのピークP12,P14からなるピーク対と、FBGによる、連続スペクトル波に対する2つのピークP15,P16からなるピーク対と、BOFによる、波長λ1と波長λ2に対する2つのピークP17,P18からなるピーク対があらわれている。
前記ピークP11,P13のピーク差もしくはピーク比からTRSに与えられた相対変位を得ることができ、前記ピークP15,P16のピーク差もしくはピーク比からFBGに与えられた歪みを得ることができ、前記ピークP17,P18のピーク差もしくはピーク比からBOFに与えられた温度を得ることができる。なお、TRSにおいては波長λ1と波長λ2に対する反射パワは同じレベルであらわれている。(ピークP11=P12、ピークP13=P14)ので、いずれか一方のピーク対を採用して相対変位を求める。
【0037】
図10の(A)には、波長λ1に対する反射パワ(dB)のグラフG5(細線)と、波長λ2に対する反射パワ(dB)のグラフG6(破線)と、広帯域連続スペクトル光に対する反射パワ(dB)のグラフG7(太線)とを示し、図10の(B)には前記各応答の合成光に対する反射パワ(dB)のグラフG8を示している。
【0038】
図10の(A)には、TRSによる、波長λ1に対する反射波と透過波の2つのピークP21,P23からなるピーク対と、波長λ2に対する反射波と透過波の2つのピークP22,P24からなるピーク対と、FBGによる、連続スペクトル波に対する2つのピークP25,P26からなるピーク対と、BOFによる、波長λ1と波長λ2に対する2つのピークP27,P28からなるピーク対があらわれている。
前記同様に、TRSに与えられた相対変位、FBGに与えられた歪み、およびBOFに与えられた温度を得ることができる。
【0039】
図11においても同様であるので、その説明は省略する。
【0040】
図12は、DWPRで波長の異なる2光源(DFBレーザ)を同一のPN符号でデジタル変調する際に、 一方に遅延時間を付与した。前記遅延時間は、チップ距離をLとした場合3Lとした。(チップ距離=8mの場合にはファイバ距離にして24m分である)。
センサ群としては、8分岐のシングルスター(1階層の8分割)とし、各光源の出射ポートにダミーファイバによる前記遅延時間に相当する光路長の差をあたえた。
図12においては、波長λ2の応答が遅延時間(3L)だけずれて交互に現れているのが分かる。波長λ2に対する応答波形のピークの反射パワの変化が、図13に示した、遅延時間を与えない従来方式で得られたグラフG13,G14に一致していることを確認できたので、本発明の方式が正しいことが確認できた。
【0041】
図14は、図12にあらわれた8組のピーク対(P41とP42、P43とP44、P45とP46、P47とP48、P49とP50、P51とP52、P53とP54、P55とP56)における各ピークどうしの比を、ピークP61、P62、P63、P64、P65、P66、P67、P68)として示したものである。
これらのピークP61〜P68は、前記8つのセンサにおける物理量に対応しているので、予め得ておいた変換テーブル等を参照して、対応する物理量の数値に変換して出力することができる。
【0042】
なお、図15の(A)に示したように、前記センサ群へ送出される出射光は、電気的な遅延手段4Dによって、異なる遅延時間の遅延PN符号を得て、それらの遅延PN符号で光源からの出射光を変調して、複数の光源からの出射光を結合したものでもよいが、図15の(B)に示したように、共通のPN符号で複数の光源からの出射光を変調して、それらの出射光を、ダミーファイバ等の光学的な遅延手段4Eで互いに異なる遅延時間だけ遅延させたものを結合したものでもよい。
図15の(B)の場合には、前記光学的な遅延手段4Eにおける遅延時間に相当する情報を相関器11Eに与えておく必要がある。
【符号の説明】
【0043】
1A 光ファイバセンシングシステム
2A センサ群
3 PN符号発生器
4 遅延手段、遅延部
5 光源部
6 結合部
7 サーキュレータ
8 光ファイバ路、光ファイバ
10 受光手段、受光部
11 相関手段、相関器
12 計測処理部
1B 光ファイバセンシングシステム
2B センサ群
9 波長分析部
91 BPF
92 フィルタF
93 波長分析光回路
95 ダミーファイバ
96 傾斜フィルタ
97 サーキュレータ
98 光カプラ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
擬似ランダム符号(以下、単に「PN符号」という。)で変調された出射光を、光ファイバ路に送出する光源部と、
前記光ファイバ路上における前記光源部から異なる光路長の地点にそれぞれ配設された複数の光ファイバセンサから構成されたセンサ群と、
前記センサ群からの反射応答光を前記光ファイバ路から取り出して、前記PN符号との相互相関処理によって前記複数の光ファイバセンサ毎の反射応答信号を得るように構成された処理部と、
から構成され、
前記複数の光ファイバセンサによって、前記光ファイバ路上の異なる地点における物理量を同時に観測し得るように構成される光ファイバセンシングシステムにおいて、
前記センサ群を構成する光ファイバセンサは、それぞれが異なる物理量を検出し得る少なくとも1つ以上の方式に対応した光ファイバセンサを含み、
前記光源部は、前記PN符号で変調され、前記少なくとも1つ以上の方式に対応した光ファイバセンサに適合した少なくとも1つ以上の出射光を前記光ファイバ路へ送出するように構成され、
前記処理部は、
前記センサ群からの反射応答光を受光してデジタル信号に変換する受光手段と、
前記デジタル信号と前記PN符号との相互相関処理によって前記センサ群の反射応答信号 を出力する相関手段と、
を備えることによって、
前記光ファイバセンサと前記出射光を用いて、異なる物理量を同時に観測し得るように構成したことを特徴とする光ファイバセンシングシステム。
【請求項2】
前記センサ群は、
光ファイバ先端に多層膜BPFを形成して前記多層膜BPFにおける反射スペクトルの変化を検出するBOFセンサと、
光ファイバ先端の端面における反射率の変化を検出するファイバプローブセンサと、
を含み、
前記光源部は、
前記PN符号で変調され、前記BOFセンサに適合した波長安定化狭スペクトルで、前記BOFの帯域内で異なる波長の一対の出射光を出射する光源を含み、
前記BOFセンサと前記ファイバプローブセンサとによって、反射スペクトルの変化に基づく温度と、反射率の変化に基づく水分濃度とを含んで、少なくとも2つの物理量を同時に観測し得るように構成した
ことを特徴とする請求項1に記載の光ファイバセンシングシステム。
【請求項3】
前記光源部は、それぞれ異なる遅延時間で遅延させた複数の遅延PN符号で変調され、前記センサ群に適合した出射光を前記光ファイバ路へ送出するように構成され、
前記相関手段は、
前記デジタル信号と前記遅延PN符号との相互相関処理によって前記センサ群の反射応答信号を出力するように構成した
ことを特徴とする請求項1に記載の光ファイバセンシングシステム。
【請求項4】
前記光源部は、
PN符号を発生するPN符号発生手段と、
前記PN符号をそれぞれ異なる遅延時間で遅延させて複数の遅延PN符号を生成する遅延手段と、
前記複数の遅延PN符号でそれぞれデジタル変調された出射光を送出する複数の光源と、
前記複数の光源から送出された出射光を合流させて前記光ファイバ路へ導入する結合手段と、
を備えていることを特徴とする請求項3に記載の光ファイバセンシングシステム。
【請求項5】
前記光源部は、
PN符号を発生するPN符号発生手段と、
前記PN符号でそれぞれデジタル変調されて前記センサ群に適合した出射光を送出する複数の光源と、
前記複数の光源から出射された出射光を、それぞれ異なる光路長を持って異なる遅延時間で遅延させて出力する光学的遅延手段と、
前記光学的遅延手段から出力された出射光を合流させて前記光ファイバ路へ導入する結合手段と、
を備え、
前記相関手段は、
前記デジタル信号と、前記光学的遅延手段における遅延時間情報を加味した前記PN符号との相互相関処理によって前記センサ群の反射応答信号を出力する相関手段と、
を備えていることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバセンシングシステム。
【請求項6】
前記光源部は、
波長安定化狭スペクトル特性の出射光を出射する光源と、
連続スペクトル特性の出射光を出射する光源と、
の少なくとも何れか一方の光源を含んで前記センサ群に適合した出射光として出射するように構成されていることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の光ファイバセンシングシステム。
【請求項7】
前記結合手段は、前記光源部を構成する光源および前記センサ群を構成する光ファイバに適合した選択的通過特性を備えたフィルタを備えていることを特徴とする請求項4乃至6の何れか1項に記載の光ファイバセンシングシステム。
【請求項8】
前記光ファイバ路は、1本の光ファイバから構成され、
前記光源部から出射される出射光を前記光ファイバを介して前記センサ群へ導き、
前記センサ群からの反射応答光を前記光ファイバから取り出すサーキュレータを備えていることを特徴とする請求項1乃至7の何れか1項に記載の光ファイバセンシングシステム。
【請求項9】
前記受光手段は、反射光に含まれる波長を分析する波長分析手段を含み、
前記センサ群に、物理量に応じて反射光の波長が変化するFBGセンサが含まれている場合に、前記物理量を観測し得るように構成されていることを特徴とする請求項1乃至8の何れか1項に記載の光ファイバセンシングシステム。
【請求項1】
擬似ランダム符号(以下、単に「PN符号」という。)で変調された出射光を、光ファイバ路に送出する光源部と、
前記光ファイバ路上における前記光源部から異なる光路長の地点にそれぞれ配設された複数の光ファイバセンサから構成されたセンサ群と、
前記センサ群からの反射応答光を前記光ファイバ路から取り出して、前記PN符号との相互相関処理によって前記複数の光ファイバセンサ毎の反射応答信号を得るように構成された処理部と、
から構成され、
前記複数の光ファイバセンサによって、前記光ファイバ路上の異なる地点における物理量を同時に観測し得るように構成される光ファイバセンシングシステムにおいて、
前記センサ群を構成する光ファイバセンサは、それぞれが異なる物理量を検出し得る少なくとも1つ以上の方式に対応した光ファイバセンサを含み、
前記光源部は、前記PN符号で変調され、前記少なくとも1つ以上の方式に対応した光ファイバセンサに適合した少なくとも1つ以上の出射光を前記光ファイバ路へ送出するように構成され、
前記処理部は、
前記センサ群からの反射応答光を受光してデジタル信号に変換する受光手段と、
前記デジタル信号と前記PN符号との相互相関処理によって前記センサ群の反射応答信号 を出力する相関手段と、
を備えることによって、
前記光ファイバセンサと前記出射光を用いて、異なる物理量を同時に観測し得るように構成したことを特徴とする光ファイバセンシングシステム。
【請求項2】
前記センサ群は、
光ファイバ先端に多層膜BPFを形成して前記多層膜BPFにおける反射スペクトルの変化を検出するBOFセンサと、
光ファイバ先端の端面における反射率の変化を検出するファイバプローブセンサと、
を含み、
前記光源部は、
前記PN符号で変調され、前記BOFセンサに適合した波長安定化狭スペクトルで、前記BOFの帯域内で異なる波長の一対の出射光を出射する光源を含み、
前記BOFセンサと前記ファイバプローブセンサとによって、反射スペクトルの変化に基づく温度と、反射率の変化に基づく水分濃度とを含んで、少なくとも2つの物理量を同時に観測し得るように構成した
ことを特徴とする請求項1に記載の光ファイバセンシングシステム。
【請求項3】
前記光源部は、それぞれ異なる遅延時間で遅延させた複数の遅延PN符号で変調され、前記センサ群に適合した出射光を前記光ファイバ路へ送出するように構成され、
前記相関手段は、
前記デジタル信号と前記遅延PN符号との相互相関処理によって前記センサ群の反射応答信号を出力するように構成した
ことを特徴とする請求項1に記載の光ファイバセンシングシステム。
【請求項4】
前記光源部は、
PN符号を発生するPN符号発生手段と、
前記PN符号をそれぞれ異なる遅延時間で遅延させて複数の遅延PN符号を生成する遅延手段と、
前記複数の遅延PN符号でそれぞれデジタル変調された出射光を送出する複数の光源と、
前記複数の光源から送出された出射光を合流させて前記光ファイバ路へ導入する結合手段と、
を備えていることを特徴とする請求項3に記載の光ファイバセンシングシステム。
【請求項5】
前記光源部は、
PN符号を発生するPN符号発生手段と、
前記PN符号でそれぞれデジタル変調されて前記センサ群に適合した出射光を送出する複数の光源と、
前記複数の光源から出射された出射光を、それぞれ異なる光路長を持って異なる遅延時間で遅延させて出力する光学的遅延手段と、
前記光学的遅延手段から出力された出射光を合流させて前記光ファイバ路へ導入する結合手段と、
を備え、
前記相関手段は、
前記デジタル信号と、前記光学的遅延手段における遅延時間情報を加味した前記PN符号との相互相関処理によって前記センサ群の反射応答信号を出力する相関手段と、
を備えていることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバセンシングシステム。
【請求項6】
前記光源部は、
波長安定化狭スペクトル特性の出射光を出射する光源と、
連続スペクトル特性の出射光を出射する光源と、
の少なくとも何れか一方の光源を含んで前記センサ群に適合した出射光として出射するように構成されていることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の光ファイバセンシングシステム。
【請求項7】
前記結合手段は、前記光源部を構成する光源および前記センサ群を構成する光ファイバに適合した選択的通過特性を備えたフィルタを備えていることを特徴とする請求項4乃至6の何れか1項に記載の光ファイバセンシングシステム。
【請求項8】
前記光ファイバ路は、1本の光ファイバから構成され、
前記光源部から出射される出射光を前記光ファイバを介して前記センサ群へ導き、
前記センサ群からの反射応答光を前記光ファイバから取り出すサーキュレータを備えていることを特徴とする請求項1乃至7の何れか1項に記載の光ファイバセンシングシステム。
【請求項9】
前記受光手段は、反射光に含まれる波長を分析する波長分析手段を含み、
前記センサ群に、物理量に応じて反射光の波長が変化するFBGセンサが含まれている場合に、前記物理量を観測し得るように構成されていることを特徴とする請求項1乃至8の何れか1項に記載の光ファイバセンシングシステム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−47709(P2012−47709A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−192863(P2010−192863)
【出願日】平成22年8月30日(2010.8.30)
【出願人】(392026497)株式会社渡辺製作所 (9)
【出願人】(506271360)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月30日(2010.8.30)
【出願人】(392026497)株式会社渡辺製作所 (9)
【出願人】(506271360)
【Fターム(参考)】
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