説明

光ファイバテープ及び光ケーブル

【課題】光ファイバのPMDを低減する。
【解決手段】光ファイバ単心線12を複数本並列させ、その周囲を1次テープ層14で被覆した光ファイバテープユニット15を、光ファイバ単心線12の配列方向とほぼ同一方向に複数枚並列させるとともに、これらの光ファイバテープユニット15の周囲を2次テープ層16で被覆してなる光ファイバテープ10において、1次テープ層14及び2次テープ層16を、t1+t2×t1/(t1+t2)<40(ここで、t1は1次テープ層14の厚さ方向の被覆厚、t2は2次テープ層16の厚さ方向の被覆厚である。)を満足するものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバ単心線を複数本並列させ一体化して光ファイバテ−プユニットとし、さらにこの光ファイバテ−プユニットを複数枚並列させ一体化した光ファイバテープ、及び、そのような光ファイバテープを用いた光ケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の光通信網(FTTH)の急速な拡大に伴い、DWDM(高密度波長分割多重方式)光伝送システムや光増幅中継海底ケーブルシステムなどの長距離伝送システムにおける高速化が求められている。かかる長距離伝送システムの高速化にあたっては、光ファイバ内を伝送する光パルス信号の広がり(分散特性)の制御が重要な課題となる。光ファイバの分散特性が不良であると、ノイズの発生による光パルス信号の劣化を招き、その結果、伝送距離が制限されるからである。
【0003】
このような伝送距離や伝送速度に大きく影響を与える分散特性の1つに、光ファイバ内の複屈折に起因するPMD(Polarization Mode Dispersion:偏波モード分散)がある。すなわち、このPMDは、光ファイバのコアがわずかに楕円化していることや、光ファイバコアの断面方向に非等方的な応力(例えば、光ファイバを被覆する樹脂の硬化収縮などによる)が作用することによって、光ファイバ中の2つの直交偏波モード成分間に伝播時間差を生じる現象をいい、PMDがある程度以上に大きくなると、光ファイバ中を伝播する信号光に波形劣化が生じ、隣り合うパルスの分離ができなくなり、デジタル伝送では、符号誤りの原因となる。PMDは、伝送距離が長いほど、また伝送速度が速いほど、低い値が要求される。そこで、かかるPMDを低減し得るテープ型光ファイバ心線が提案されてきている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
このテープ型光ファイバ心線は、2本の光ファイバを第1樹脂で被覆した光ファイバユニットを、複数個第2樹脂により連結した光ファイバ心線において、第1樹脂の幅方向の被覆厚を、第1樹脂の厚さ方向の被覆厚よりも小さくすることにより、第1樹脂の幅方向の硬化収縮を減少させ、これにより、特に内側に位置する光ファイバの縦方向の変形を抑制し、かかる変形に起因するPMDの低減を図ったものである
【0005】
しかしながら、今日では、40Gbpsオーダの光伝送が実用レベルに達しており、このような超高速の長距離伝送を可能にするPMD特性を得るためには、上述した構造では必ずしも十分であるとはいえず、さらなる改善が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−321645号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、各光ファイバのPMDを十分に低減することができる光ファイバテープ、及びこのような光ファイバテープを備えた光ケーブルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1に記載された発明は、光ファイバ単心線を複数本並列させ、その周囲を1次テープ層で被覆した光ファイバテープユニットを、前記光ファイバ単心線の配列方向とほぼ同一方向に複数枚並列させるとともに、これらの光ファイバテープユニットの周囲を2次テープ層で被覆してなる光ファイバテープであって、前記1次テープ層及び前記2次テープ層は、前記1次テープ層の厚さ方向の被覆厚をt1とし、前記2次テープ層の厚さ方向の被覆厚をt2としたとき、下記の式
1+t2×t1/(t1+t2)<40
を満足するものであることを特徴とするものである。
【0009】
請求項2に記載された発明は、請求項1記載の光ファイバテープにおいて、前記1次テープ層及び前記2次テープ層は、下記の式 t1+t2×t1/(t1+t2)≦20を満足するものであることを特徴とするものである。
【0010】
請求項3に記載された発明は、請求項1または2記載の光ファイバテープにおいて、
ITU‐T G.650.2 Appendix IVにおけるモンテカルロ法によって求められるPMDが、0.2ps/km1/2以下であることを特徴とするものである。
【0011】
請求項4に記載された発明は、請求項1または2記載の光ファイバテープにおいて、
ITU‐T G.650.2 Appendix IVにおけるモンテカルロ法によって求められるPMDが、0.1ps/km1/2以下であることを特徴とするものである。
【0012】
請求項5に記載された発明は、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の光ファイバテープにおいて、前記1次テープ層の厚さ方向の被覆厚tは、5μm以上25μm以下であり、かつ前記2次テープ層の厚さ方向の被覆厚tは、5μm以上30μm以下であることを特徴とするものである。
【0013】
請求項6に記載された発明は、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の光ファイバテープにおいて、前記1次テープ層の幅方向の被覆厚wは、5μm以上15μm以下であり、かつ前記2次テープ層の幅方向の被覆厚wは、5μm以上25μm以下であることを特徴とするものである。
【0014】
請求項7に記載された発明は、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の光ファイバテープにおいて、前記1次テープ層の厚さ方向の被覆厚tと前記2次テープ層の厚さ方向の被覆厚tとの和と、前記1次テープ層の幅方向の被覆厚wと前記2次テープ層の幅方向の被覆厚wとの和との比が、1:0.95〜1:0.75であることを特徴とするものである。
【0015】
請求項8に記載された発明は、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の光ファイバテープにおいて、前記1次テープ層は、23℃におけるヤング率が700MPa以上2000MPa以下の樹脂からなり、かつ前記2次テープ層は、23℃におけるヤング率が50MPa以上1200MPa以下の樹脂からなることを特徴とするものである。
【0016】
請求項9に記載された発明は、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の光ファイバテープにおいて、前記光ファイバ単心線は、外径が240μm以上260μm以下であることを特徴とするとするものである。
【0017】
また、請求項10に記載された発明は、請求項1乃至9のいずれか1項に記載の光ファイバテープを備えたことを特徴とする光ケーブルである。
【0018】
なお、本願明細書中、PMDは、ITU‐T G.650.2 Appendix IVにおけるモンテカルロ法によって求めた値である。
また、本願明細書中、ヤング率は、JIS K 7113に準拠して測定した値であり、より具体的には、樹脂シートを作成し、JIS2号ダンベルに成形した試験片を、試験温度23℃、標線間距離25mm、引張速度1mm/分の条件で、引張って求めた値である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、各光ファイバのPMDを十分に低減することが可能な光ファイバテープ、及びそのような光ファイバテープを備えた光ケーブルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態に係る光ファイバテープを示す断面図である。
【図2】図1に示す光ファイバテープの一変形例を示す断面図である。
【図3】図1に示す光ファイバテープの他の変形例を示す断面図である。
【図4】図1に示す光ファイバテープの他の変形例を示す断面図である。
【図5】本発明の光ファイバテープを用いた光ケーブルを示す断面図である。
【図6】光ファイバテープにおける1次及び2次テープ層の各被覆厚とPMDとの関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。
【0022】
図1は本発明の光ファイバテープの一実施形態を示す断面図である。
【0023】
図1に示すように、本実施形態の光ファイバテープ10は、光ファイバ単心線12を2本、同一平面上に密着させて並列させ、その外側にテープ層14を被覆して光ファイバテープユニット15を形成し、さらにこの光ファイバテープユニット15を2枚、ほぼ同一平面上に、つまり、光ファイバ単心線12の配列方向とほぼ同一方向に、密着させて並列させるとともに、これらの光ファイバテープユニット15の外周にテープ層16を一括被覆した構造を有する。以下、光ファイバ単心線12上に被覆したテープ層14を1次テープ層、光ファイバテープユニット15上に被覆したテープ層16を2次テープ層と称する。1次テープ層14及び2次テープ層16の各表面には実質的に凹凸が形成されておらず、光ファイバテープユニット15及び光ファイバテープ10はいずれも幅方向にほぼ均一な厚さを有している。
【0024】
光ファイバ単心線12としては、光ファイバ上に紫外線硬化型樹脂などにより一層または複数層の保護被覆を設けたものや、このような保護被覆上にさらに着色層を設けたものが使用される。この光ファイバ単心線12の外径は、通常、240μm以上260μm以下である。
【0025】
1次テープ層14及び2次テープ層16は、1次テープ層14の厚さ方向の被覆厚をt1とし、2次テープ層16の厚さ方向の被覆厚をt2としたとき、t1+t2×t1/(t1+t2)<40、好ましくはt1+t2×t1/(t1+t2)≦20となるように被覆されている。
【0026】
ここで、1次テープ層14の厚さ方向の被覆厚t1とは、図1に示すように、光ファイバ単心線12の共通接線Sと1次テープ層14の光ファイバ単心線12の並列方向に平行な表面との距離であり、t1=(A−d)/2で求めることができる。また、2次テープ層16の厚さ方向の被覆厚tとは、光ファイバテープユニット15の共通接線Sと2次テープ層16の光ファイバ単心線12の並列方向に平行な表面との距離であり、t=(A−d)/2で求めることができる。なお、前記式中、Aは光ファイバテープユニット15の最大厚さ、dは光ファイバ単心線12の外径、Aは光ファイバテープ10の最大厚さである。
【0027】
1次テープ層14及び2次テープ層16を上記の式を満足するように構成することによって、後述する実験例から明らかなように、光ファイバテープ10における各光ファイバのPMDを低減(例えばPMDq値で、0.2ps/km1/2以下)することができる。
【0028】
1次テープ層14及び2次テープ層16は、さらに以下の要件を満足するように構成されていることが好ましい。
【0029】
(1)1次テープ層14の厚さ方向の被覆厚tが、5μm以上25μm以下であり、かつ2次テープ層の厚さ方向の被覆厚tが、5μm以上30μm以下である。1次テープ層14の厚さ方向の被覆厚tが5μm未満であるか、または2次テープ層の厚さ方向の被覆厚tが5μm未満であると、光ファイバ単心線12に対する保護効果が不十分になるばかりでなく、光ファイバテープユニット15または光ファイバテープ10としての取り扱いが困難になるおそれがある。また、1次テープ層14の厚さ方向の被覆厚tが25μmを超えるか、または2次テープ層の厚さ方向の被覆厚tが30μmを超えると、テープ被覆層の硬化収縮による複屈折が増大し、各光ファイバのPMDが増大してしまう。1次テープ層14の厚さ方向の被覆厚tが、5μm以上15μm以下であり、かつ2次テープ層の厚さ方向の被覆厚tが、5μm以上25μm以下であるとより好ましい。
【0030】
(2)1次テープ層14の幅方向の被覆厚wが、5μm以上15μm以下であり、かつ2次テープ層の幅方向の被覆厚wが、5μm以上25μm以下である。1次テープ層14の幅方向の被覆厚wが5μm未満であるか、または2次テープ層の幅方向の被覆厚wが5μm未満であると、光ファイバ単心線12に対する保護効果が不十分になる。また、1次テープ層14の幅方向の被覆厚wが15μmを超えるか、または2次テープ層の幅方向の被覆厚wが25μmを超えると、テープ被覆層の硬化収縮による複屈折が増大し、各光ファイバのPMDが増大してしまう。1次テープ層14の幅方向の被覆厚wが、5μm以上10μm以下であり、かつ2次テープ層の幅方向の被覆厚wが、5μm以上20μm以下であるとより好ましい。
【0031】
ここで、1次テープ層14の幅方向の被覆厚w1とは、光ファイバテープユニット15内の2本の光ファイバ単心線12の中心を結ぶ直線m上における光ファイバ単心線12の表面と光ファイバテープユニット15の表面との距離であり、w1=(B−2d)/2で求めることができる。また、2次テープ層16の幅方向の被覆厚wとは、直線m上における光ファイバテープユニット15の表面と光ファイバテープ10の表面との距離であり、w=(B−2B)/2で求めることができる。前記式中、Bは光ファイバテープユニット15の最大幅、dは光ファイバ単心線12の外径、Bは光ファイバテープ10の最大幅である。
【0032】
(3)1次テープ層の厚さ方向の被覆厚tと2次テープ層の厚さ方向の被覆厚tとの和と、1次テープ層の幅方向の被覆厚wと2次テープ層の幅方向の被覆厚wとの和との比[(t+t):(w+w)]が、1:0.95〜1:0.75である。[(t+t):(w+w)]が前記範囲を外れると、PMDを十分に低減することができないおそれがある。[(t+t):(w+w)]は、1:0.90〜1:0.80であるとより好ましい。
【0033】
(4)1次テープ層14が、23℃におけるヤング率が700MPa以上2000MPa以下の樹脂により形成され、かつ2次テープ層16が、23℃におけるヤング率が50MPa以上1200MPa以下の樹脂により形成されている。1次テープ層14を形成する樹脂の23℃におけるヤング率、及び2次テープ層16を形成する樹脂の23℃におけるヤング率のいずれか一方でも、前記範囲を外れると、PMDを十分に低減することができないおそれがある。1次テープ層14が、23℃におけるヤング率が800MPa以上1500MPa以下の樹脂により形成され、かつ2次テープ層16が、23℃におけるヤング率が100MPa以上1000MPa以下の樹脂により形成されていることがより好ましい
【0034】
なお、前述した光ファイバ単心線12の保護被覆及び着色層、並びに上記1次テープ層14及び2次テープ層16を構成する樹脂の種類としては、ウレタンアクリレート系樹脂やエポキシアクリレート系樹脂といった紫外線硬化型樹脂を例示することができるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0035】
本実施形態の光ファイバテープ10によれば、光ファイバ単心線12に各方向から加わる応力を適切にバランスさせることができるため、光ファイバ単心線12の変形を抑制することができ、これにより、光ファイバテープ10における光ファイバのPMDを低減することができる。
【0036】
以上、本発明を、光ファイバ単心線数が2本の2心光ファイバテープユニットを2枚並列させた4心光ファイバテープに適用した例について説明したが、本発明はこのような例に限定されるものではなく、例えば図2乃至図4に示すように、4心光ファイバテープユニットを2枚並列させた8心光ファイバテープ、2心光ファイバテープユニットを4枚並列させた8心光ファイバテープ、2心光ファイバテープユニット2枚と4心光ファイバテープユニット1枚とを並列させた8心光ファイバテープなどにも広く適用することができる。
【0037】
すなわち、図2に示す光ファイバテープ20は、2心の光ファイバテープユニット15に代えて、光ファイバ単心線12を4本、同一平面上に密着させて並列させ、その外側に一次テープ層14を被覆した4心の光ファイバテープユニット25を2枚並列させた例である。また、図3に示す光ファイバテープ30は、図1に示す実施形態において、2心の光ファイバテープユニット15を4枚並列させた例である。さらに、図4に示す光ファイバテープ40は、図1に示す実施形態において、2心の光ファイバテープユニット15を2枚と4心の光ファイバテープユニット25を1枚並列させた例である。
【0038】
このような光ファイバテープ20、30、40においても、光ファイバ単心線12に各方向から加わる応力を適切にバランスさせることができるため、光ファイバ単心線12の変形を抑制することができ、これにより、光ファイバテープ10における光ファイバのPMDを低減することができる。
【0039】
次に本発明の光ファイバテープを用いた光ケーブルについて説明する。
【0040】
図5は、本発明の光ファイバテープを用いた光ケーブルの一例を示す断面図である。
【0041】
この光ケーブル50は、いわゆるスロット型光ケーブルと称するものであり、同図に示すように、中心に鋼線、FRP(繊維強化プラスチック)などからなる抗張力体51が埋設され、外周に長さ方向に延びる複数本(図面の例では、5本)のSZ撚りの溝(SZ溝)52が周方向にほぼ等間隔で設けられたポリエチレンなどからなるスロットロッド53を備えている。このスロットロッド53の各SZ溝52には、光ファイバテープ54が複数枚、例えば5枚ずつ積層されて収納されており、また、これらの外周には、押え巻層55を介して、ポリエチレンなどからなる外被56が設けられている。そして、光ファイバテープ54には、上述したような本発明の光ファイバテープが使用されている。図5において、57は、光ファイバテープ54の取り出しを容易にするために外被56下に縦添えされた引き裂き紐である。
【0042】
このような光ケーブル50においては、スロットロッド53の各SZ溝52に収納する光ファイバテープ54として、PMD特性を向上させた光ファイバテープが使用されているので、PMDを低く保つことができ、長距離、高速での伝送が可能である。
【0043】
次に、本発明の効果を調べるために行った実験おびその結果について記載する。
本実験では、まず、図1に示す光ファイバテープ10、すなわち1次テープ層14の厚さ方向の被覆厚をt1と2次テープ層16の厚さ方向の被覆厚t2が、t1+t2×t1/(t1+t2)<40、の関係を満たす光ファイバテープと、このような関係を満たさない、つまり、t1+t2×t1/(t1+t2)≧40である光ファイバテープを製造した。光ファイバ単心線には、外径125μmの石英ガラス系SM光ファイバ上に、ウレタンアクリレート系紫外線硬化型樹脂を被覆し、さらにその上に着色層を被覆した、外径(d)250μmの光ファイバ単心線を用いた。また、1次テープ層及び2次テープ層の材料には、ヤング率(23℃)が1200MPaのウレタンアクリレート系紫外線硬化型樹脂、及びヤング率(23℃)が800MPaのウレタンアクリレート系紫外線硬化型樹脂をそれぞれ用いた。
【0044】
次に、上記光ファイバテープを用いてスロット型光ケーブルを製造した。すなわち、外周面に深さ2mmの5本のSZ溝が設けられ、中心に直径2.0mmの単鋼線からなる抗張力体が埋設された外径7.7mmのポリエチレン製のスロットロッドの各SZ溝に、上記光ファイバテープを5枚ずつ積層して収容し、その外側に押えテープを巻き付けるとともに、その上に引き裂き紐を縦添えしつつ押出し機に導入し、その外周にポリエチレンを押出被覆して、外径約12.5mmのスロット型光ケーブルを製造した。
【0045】
この後、上記各スロット型光ケーブルについて、ITU‐T G.650.2 Appendix IVにおけるモンテカルロ法によって求められるPMDを測定し、[t1+t2×t1/(t1+t2)]値とPMDとの関係を調べた。これらの結果を、表1及び図6に示す。なお、表1には光ファイバテープにおける1次テープ層及び2次テープ層の被覆厚(t、t2、w、w2)及び樹脂のヤング率を併せ示した。
【0046】
【表1】

【0047】
上記の結果から明らかなように、図1に示す光ファイバテープ10を備えたスロット型光ケーブルは、PMDが0.2ps/km1/2以下と低く、特に、t1+t2×t1/(t1+t2)≦20であったNo.1〜13の光ファイバケーブルでは、PMDが0.1ps/km1/2以下と、より良好なPMD特性を有していた。
【符号の説明】
【0048】
10,20,30,40…光ファイバテープ、12…光ファイバ単心線、14…1次テープ層、15,25…光ファイバテープユニット、16…2次テープ層、50…光ケーブル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバ単心線を複数本並列させ、その周囲を1次テープ層で被覆した光ファイバテープユニットを、前記光ファイバ単心線の配列方向とほぼ同一方向に複数枚並列させるとともに、これらの光ファイバテープユニットの周囲を2次テープ層で被覆してなる光ファイバテープであって、
前記1次テープ層及び前記2次テープ層は、前記1次テープ層の厚さ方向の被覆厚をt1とし、前記2次テープ層の厚さ方向の被覆厚をt2としたとき、下記の式
1+t2×t1/(t1+t2)<40
を満足するものであることを特徴とする光ファイバテープ。
【請求項2】
前記1次テープ層及び前記2次テープ層は、下記の式 t1+t2×t1/(t1+t2)≦20を満足するものであることを特徴とする請求項1記載の光ファイバテープ。
【請求項3】
ITU‐T G.650.2 Appendix IVにおけるモンテカルロ法によって求められるPMDが、0.2ps/km1/2以下であることを特徴とする請求項1または2記載の光ファイバテープ。
【請求項4】
ITU‐T G.650.2 Appendix IVにおけるモンテカルロ法によって求められるPMDが、0.1ps/km1/2以下であることを特徴とする請求項1または2記載の光ファイバテープ。
【請求項5】
前記1次テープ層の厚さ方向の被覆厚tは、5μm以上25μm以下であり、かつ前記2次テープ層の厚さ方向の被覆厚tは、5μm以上30μm以下であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の光ファイバテープ。
【請求項6】
前記1次テープ層の幅方向の被覆厚wは、5μm以上15μm以下であり、かつ前記2次テープ層の幅方向の被覆厚wは、5μm以上25μm以下であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の光ファイバテープ。
【請求項7】
前記1次テープ層の厚さ方向の被覆厚tと前記2次テープ層の厚さ方向の被覆厚tとの和と、前記1次テープ層の幅方向の被覆厚wと前記2次テープ層の幅方向の被覆厚wとの和との比が、1:0.95〜1:0.75であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の光ファイバテープ。
【請求項8】
前記1次テープ層は、23℃におけるヤング率が700MPa以上2000MPa以下の樹脂からなり、かつ前記2次テープ層は、23℃におけるヤング率が50MPa以上1200MPa以下の樹脂からなることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の光ファイバテープ。
【請求項9】
前記光ファイバ単心線は、外径が240μm以上260μm以下であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の光ファイバテープ。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか1項に記載の光ファイバテープを備えたことを特徴とする光ケーブル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−282075(P2010−282075A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−136179(P2009−136179)
【出願日】平成21年6月5日(2009.6.5)
【出願人】(306013120)昭和電線ケーブルシステム株式会社 (218)
【Fターム(参考)】