説明

光ファイバ用ソケット

【課題】光ファイバ用ソケットにおいて、光ファイバと光電変換素子の光軸合わせ作業を簡単化し、その光軸合わせの精度を向上させる。
【解決手段】光ファイバ用ソケット1は、回路基板31及びそれと同時成形された樹脂製スリーブブロック受け部材32を有する回路ブロック3とスリーブブロック4とを備える。スリーブブロック受け部材32は複数の嵌合穴32aを有し、スリーブブロック4は複数の嵌合突起43を有する。嵌合突起43が嵌合穴32aに嵌合された状態で、スリーブブロック4に挿入される光ファイバ5と、回路基板31上の光電変換素子2の光軸が合うように、嵌合穴32a及び嵌合突起43が位置決めされている。これにより、嵌合、挿入作業だけで光軸合わせができる。また、成形技術による最高成形精度は寸法誤差が1μm以下の精度であるので、嵌合穴32aの寸法及び位置の各精度を同程度にすることで光軸合わせ精度の向上が図れる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバの先端部に嵌装されたフェルールが嵌合され、光ファイバと光電変換素子とを光学的に結合する光ファイバ用ソケットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、光電変換素子が実装された基板と、その基板に嵌合され位置決めされたスリーブとを備え、使用時にはスリーブにフェルールが嵌挿され、光ファイバと光電変換素子とが光結合される光ファイバ用ソケットが知られている(例えば、特許文献1参照)。このソケットにおいては、基板に2つの嵌合穴が穿設され、スリーブの基板と対向する面には2本の嵌合軸が設けられ、2本の嵌合軸がそれぞれ2つの嵌合穴に嵌め込まれている。嵌合穴は、嵌合突起が嵌め込まれたときに光ファイバと光電変換素子の光軸が一致するように、位置決めされている。このソケットによれば、嵌合軸を嵌合穴に合わせてスリーブを基板に嵌合するだけで、光ファイバと光電変換素子の光軸を合わせることができ、光軸合わせの作業が簡単になる。
【0003】
ところで、基板に嵌合穴を穿設する方法としては各種の方法があるが、例えば、パンチングにより基板の一部を抜いて嵌合穴を形成する場合、その加工精度は40μm程度である。従って、その加工誤差に、光電変換素子の位置決め誤差が重なると、たとえスリーブが光学部品に要求される寸法精度を有していたとしても、光ファイバと光電変換素子の光軸合わせの精度が50μm程度になってしまう。そのため、光軸合わせの精度向上が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−5872号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の従来の問題を解決するためになされたものであり、光ファイバと光電変換素子の光軸合わせ作業を簡単化することができ、しかも、その光軸合わせの精度向上を図ることができる光ファイバ用ソケットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために本発明は、光電変換素子と、前記光電変換素子が実装された回路基板、及び前記回路基板と同時成形され複数の嵌合穴が設けられた樹脂製のスリーブブロック受け部材を有する回路ブロックと、前記スリーブブロック受け部材と対向する面に設けられ前記複数の嵌合穴にそれぞれ嵌合される複数の嵌合突起と、光ファイバの先端部に嵌装されたフェルールが嵌挿されるスリーブと、前記スリーブに前記フェルールが嵌挿された状態で前記光ファイバと前記光電変換素子とを光学的に結合させる集光機能を有したレンズとが一体的に形成されたスリーブブロックと、を備え、前記複数の嵌合突起が前記複数の嵌合穴に嵌合された状態で、前記スリーブブロックと前記回路ブロックとが接して前記光電変換素子が該スリーブブロックにより中空封止され、かつ、前記光ファイバの光軸と該光電変換素子の光軸とが一致するように、各嵌合穴及び各嵌合突起の位置決めがなされていることを特徴とする。
【0007】
この発明において、前記複数の嵌合穴の各々の周縁形状と位置とを測定し、前記測定された各嵌合穴の周縁形状に応じた方法により、前記測定された複数の嵌合穴の位置のうちの少なくとも2つを基準として、前記光電変換素子の位置決めがなされることが好ましい。
【0008】
この発明において、前記基準とされる嵌合穴の周縁部の表面は、前記回路基板において前記光電変換素子が実装される部位の表面と同じ高さであることが好ましい。
【0009】
この発明において、前記回路基板は、両面基板であることが好ましい。
【0010】
この発明において、前記回路基板は、多層基板であることが好ましい。
【0011】
この発明において、前記スリーブブロック受け部材は、前記嵌合穴が前記回路基板の厚さよりも深くなるように、前記スリーブブロックとは反対側の方向に突出していることが好ましい。
【0012】
この発明において、前記スリーブブロック受け部材は、前記回路基板の少なくとも一部の領域の両面を挟むように形成されていることが好ましい。
【0013】
この発明において、前記スリーブブロックと前記回路ブロックとの隙間を封止し、前記光電変換素子を気密封止するためのシール材をさらに備えることが好ましい。
【0014】
この発明において、前記スリーブブロック受け部材は、前記スリーブブロックにおける前記回路ブロックと接する端部が嵌まり込む枠部を有することが好ましい。
【0015】
この発明において、前記回路基板において前記スリーブブロックにより前記光電変換素子を包含するように封止された空間内の領域に、該光電変換素子の制御に用いられるICが実装されていることが好ましい。
【0016】
この発明において、前記スリーブブロック受け部材は、前記回路基板に実装された前記IC以外の電子部品、及び前記回路基板に形成された配線パターンの少なくとも一部を同時成形により封止していることが好ましい。
【0017】
この発明において、前記回路基板に形成された配線パターンに電気的に接続された外部接続用端子をさらに備え、前記外部接続用端子と前記回路基板との接合部を、前記スリーブブロック受け部材と同時成形したことが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、スリーブブロックの嵌合突起をスリーブブロック受け部材の嵌合穴に嵌合させ、フェルールをスリーブブロックに嵌合するだけで、回路基板上の光電変換素子とフェルール内の光ファイバの光軸合わせを行うことができる。従って、光軸合わせ作業が簡単になる。
また、スリーブブロック受け部材の嵌合穴は、当該部材と回路基板との同時成形時に形成することができ、成形技術で実現可能な最高成形精度は、寸法誤差が1μm以下の精度であることから、嵌合穴の寸法及び位置の各精度を同程度とすることができる。従って、従来のように回路基板をパンチング加工して嵌合穴を形成する場合と比べ、嵌合穴の寸法及び位置精度を高くすることができ、それにより、嵌合穴と嵌合突起との嵌合精度を向上することができ、結果として、光軸合わせの精度向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】(a)は本発明の第1の実施形態に係る光ファイバ用ソケットの分解斜視図、(b)はその分解断面図。
【図2】(a)は上記ソケットの回路ブロックの平面図、(b)は(a)のA−A’線断面図。
【図3】(a)は上記ソケットの組立てが完了しフェルールが嵌装された状態を示す斜視図、(b)はその断面図。
【図4】上記実施形態の第1の変形例に係る光ファイバ用ソケットの分解斜視図。
【図5】(a)は上記実施形態の第2の変形例に係る光ファイバ用ソケットの回路ブロックの平面図、(b)は(a)のB−B’線断面図。
【図6】上記ソケットの断面図。
【図7】上記実施形態の第3の変形例に係る光ファイバ用ソケットの回路ブロックの断面図。
【図8】(a)は上記実施形態の第4の変形例に係る光ファイバ用ソケットの回路ブロックの斜視図、(b)はその断面図。
【図9】(a)は上記実施形態の第5の変形例に係る光ファイバ用ソケットの回路ブロックの斜視図、(b)はその断面図。
【図10】上記実施形態の第6の変形例に係る光ファイバ用ソケットの斜視図。
【図11】(a)は上記実施形態の第7の変形例に係る光ファイバ用ソケットの分解斜視図、(b)はその斜視図。
【図12】(a)は上記実施形態の第8の変形例に係る光ファイバ用ソケットの斜視図、(b)は上記ソケットの回路ブロックの断面図。
【図13】上記実施形態の第9の変形例に係る光ファイバ用ソケットの回路ブロックの断面図。
【図14】上記実施形態の第10の変形例に係る光ファイバ用ソケットの回路ブロックの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の第1の実施形態に係る光ファイバ用ソケット(以下、単にソケットという)について図面を参照して説明する。図1(a)(b)は、本実施形態のソケットの構成を示す。ソケット1は、光電変換素子2と、光電変換素子2が実装された回路ブロック3と、回路ブロック3に嵌合されるスリーブブロック4とを備え、スリーブブロック4には、光ファイバ5の先端部に嵌装されたフェルール6が挿入され、嵌合される。
【0021】
光電変換素子2は、発光素子と受光素子のいずれであってもよい。回路ブロック3は、光電変換素子2が実装された回路基板31と、回路基板31と同時成形された樹脂製で板状のスリーブブロック受け部材(以下、受け部材という)32とを有した平板状ブロックである。
【0022】
回路基板31は、片面の表面に配線パターン31aが形成された基板であり、その基板は、配線パターン31aを表面に形成しても配線パターンが剥離し難い材料から成る。配線パターン31aは、光電変換素子2への信号送信又は光電変換素子2からの信号受信のための信号ライン等を含む。回路基板31は、平面視で、四角形の一辺が突出した形状であり、その突出部分において配線パターン31aが形成された面に光電変換素子2が実装されている。以下、回路基板31において光電変換素子2が実装された面を素子実装面31bという。
【0023】
受け部材32は、例えばインサート成形により回路基板31と同時成形される。受け部材32における素子実装面31bと同じ側の表面には、2個の円柱状の嵌合穴32aが設けられている。嵌合穴32aは、上記の数に限定されず、複数であればよい。嵌合穴32aは貫通孔であるが、一端が閉塞された穴であってもよい。
【0024】
受け部材32は、平面視で、四角形の一辺が窪んだ板状部材であり、その窪み部分は、回路基板31の上記突出部分に対応した形状である。受け部材32の基材は、例えばアクリル等の熱可塑性樹脂又はエポキシ等の熱硬化性樹脂である。受け部材32は、嵌合穴32aの寸法精度及び位置精度の向上のため、例えばガラス繊維を含むことが望ましい。このような光学材料による光学部品は、非常に高精度に成形することができ、最も高精度なものは、いわゆるサブミクロンの精度、すなわち寸法誤差が1μm以下の精度であり、受け部材32はその成形精度で形成されている。
【0025】
スリーブブロック4は、スリーブ41と、レンズ42と、嵌合突起43とが一体的に形成されている。スリーブ41は、フェルール6が挿入、嵌装される。レンズ42は、スリーブブロック4が回路ブロック3に嵌合され、かつ、フェルール6がスリーブ41に嵌挿された状態で、光ファイバ5と光電変換素子2とを光学的に結合させる集光機能を有する。
【0026】
嵌合突起43は、嵌合穴32aと同数であり、これら嵌合突起43は、スリーブブロック4における受け部材32と対向する面4aに設けられている。嵌合突起43は、嵌合穴32aに嵌合可能な形状であり、例えば円柱状のピンである。2個の嵌合突起43は、2個の嵌合穴32aにそれぞれ嵌合される。嵌合突起43は嵌合穴32aの深さ以上に長い。嵌合穴32aが、一端が閉塞された穴である場合には、嵌合突起43の長さは嵌合穴32aの深さ以下とする。
【0027】
スリーブブロック4は、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂を材料に含み、かつ、特定波長、例えば850nmのレーザ光を透過させる光学材料により形成されている。スリーブブロック4の成形精度は受け部材32と同程度とする。
【0028】
図2(a)(b)は、回路ブロック3の構成を示す。図2(a)に示されるように、光電変換素子2が実装される位置は、各嵌合穴32aの中心を結ぶ線分Lの中点Cである。図2(b)に示されるように、受け部材32における各嵌合穴32aの周縁部の表面32bは、回路基板31において光電変換素子2が実装される部位の表面31cと同じ高さである。表面32bと表面31cの高低差は、1mm以内であることが好ましく、0.5mm以内であることが特に望ましい。本実施形態においては、表面32bと表面31cとの高さ関係が、受け部材32における嵌合穴32aの形成面全体の高さと、回路基板31の素子実装面31b全体の高さとを同じとすることにより実現される。
【0029】
図3(a)(b)は、ソケット1が組み立てられ、かつ、スリーブブロック4にフェルール6が嵌合された状態を示す。組立て完成状態においては、嵌合突起43が嵌合穴32aに嵌合されており、この嵌合により、スリーブブロック4は回路ブロック3と接し、それにより、光電変換素子2がスリーブブロック4により中空封止されている。また、フェルール6の嵌合により、光ファイバ5と光電変換素子2の光軸合わせが行われ、それにより、いわゆるパッシブアライメントが実行され、結果として、両者の光軸が一致し、光ファイバ5が光電変換素子2と光学的に結合される。各嵌合穴32a及び各嵌合突起43は、嵌合時に、上記中空封止及び光軸調整が可能となるように、位置決めがなされている。
【0030】
次に、ソケット1の組立て方法を説明する。本実施形態では、測定装置で光信号のレベルをモニタしながら光ファイバと光電変換素子の光軸合わせを行うアクティブアラインメントを実行せず、各部品の寸法精度と位置決め精度だけで所定の組立て精度を確保する。
【0031】
まず、2つの嵌合穴32aの各々の周縁形状と位置とが測定される。この測定は、例えばチップマウンタの撮像装置を用いて、回路ブロック3の嵌合穴32aを含む領域を撮像することにより行われる。ここで、各部の寸法を例示する。光電変換素子2の平面寸法は□0.3(0.3mm×0.3mm)程度であり、また、2つの嵌合穴32aの間隔は4mm程度である。従って、チップマウンタの撮像装置は微小領域を撮像すればよいので、レンズの撮像倍率を高くすることにより、周縁形状及び位置の測定精度を高くすることができる。例えば、10μm程度の精度まで位置決め精度を上げることができ、本実施形態ではそのようにする。
【0032】
各嵌合穴32aの周縁形状及び位置の測定後、その測定された各嵌合穴32aの周縁形状に応じた方法により、上記測定された各嵌合穴32aの位置を基準として、光電変換素子2の位置決めがなされ、光電変換素子2は回路基板31に実装される。上記位置決めにおいては、各嵌合穴32aの外周が複数に分割され、各円弧の両端を結ぶ線分を底辺とした二等辺三角形が求められ、それら二等辺三角形の頂点の位置から嵌合穴32aの中心が検出される。そして、その検出された各嵌合穴32aの中心を結ぶ線分が求められ、その線分の中心が光電変換素子2の実装位置に決められる。この方法によれば位置決め精度を高精度なものとすることが可能である。
【0033】
光電変換素子2の実装後、嵌合突起43が嵌合穴32aに嵌合され、それにより、スリーブブロック4は受け部材32に嵌合される。そして、使用時には、フェルール6がスリーブブロック4に嵌合される。なお、スリーブブロック4及びフェルール6は、光学部品として要求されるレベルの嵌合精度を満たしている。
【0034】
本実施形態においては、スリーブブロック4の嵌合突起43を受け部材32の嵌合穴32aに嵌合させ、フェルール6をスリーブブロック4に嵌合するだけで、光電変換素子2と光ファイバ5の光軸合わせを行うことができ、光軸合わせ作業が簡単になる。
【0035】
また、受け部材32の嵌合穴32aは、受け部材32と回路基板31との同時成形時に形成することができ、成形技術で実現可能な最高成形精度は、寸法誤差が1μm以下の精度であることから、嵌合穴32aの寸法及び位置の各精度を同程度とすることができる。従って、従来のように回路基板をパンチング加工して嵌合穴を形成する場合と比べ、嵌合穴32aの寸法及び位置精度を高くすることができ、それにより、嵌合穴32aと嵌合突起43との嵌合精度を向上することができる。その結果、光軸合わせの精度向上を図ることができる。
【0036】
また、光電変換素子2の実装位置を決めるのに、撮像装置が用いられ、その撮像装置による撮像範囲は回路基板31全体ではなく、位置決めの基準となる各嵌合穴32aを含む微小範囲で済む。そのため、撮像装置のレンズの撮像倍率を高くすることにより、各嵌合穴32aの測定精度を高くすることができ、従って、位置決め精度は、寸法誤差が10μm程度の精度にまで上げることができる。さらに、スリーブブロック4は光学部品に要求される成形精度を有することから、嵌合突起43と嵌合穴32aとの嵌合精度を数μm程度にすることができる。従って、スリーブブロック4とフェルール6とが、光学部品として要求されるレベルの嵌合精度を有していれば、上記各種精度から、光電変換素子2と光ファイバ5を十数μm程度の精度で光結合させることができる。そのため、光軸合わせの精度をさらに向上することができる。
【0037】
また、光軸合わせにおいて、光信号の測定装置の接続及びスリーブブロックの位置の微調整が必要なアクティブアライメントと比べ、それらが不要なので、光軸合わせに要する時間を大幅に短縮することができる。
【0038】
また、光電変換素子2は、中空封止されるので、外部からの異物から保護することができる。また、嵌合穴32aの周縁形状に応じた方法により光電変換素子2の位置決めがなされるので、嵌合穴32aの周縁形状に係わらず、高精度な位置決めが可能になる。また、嵌合穴32aの周縁部の表面32bと、光電変換素子2が実装される部位の表面31cとの高さが同じなので、撮像装置によるそれらの平面視撮像画像を基に各嵌合穴32a間及び各嵌合穴32aと上記実装位置との間の距離を正確に測定することができる。従って、光電変換素子2の位置決め精度がさらに高まる。
【0039】
以下、上記実施形態の各種変形例を示す。
(第1の変形例)
図4は、第1の変形例のソケット1を示す。そのソケット1においては、嵌合穴32aの形状が四角柱状であり、これに対応して、嵌合突起43が四角柱状のピンである。嵌合穴32aは平面視で向きが同じである。光電変換素子2の位置決めにおいて、平面視で各嵌合穴32aの中心又は所定の1点の頂点を基準として位置決めがなされる。頂点を用いる場合、各嵌合穴32aにおいて他方の嵌合穴32aに対向する辺が選ばれ、その選ばれた各辺につき、その辺の一端を他方の辺の他端と結ぶ対角線が求められ、求められた2本の対角線の交点が光電変換素子2の位置とされる。
【0040】
(第2の変形例)
図5(a)(b)は、第2の変形例に係るソケットの回路ブロック3の構成を示す。その回路ブロック3の回路基板31は、両面に配線パターン31aが形成された両面基板である。素子実装面31bの配線パターン31aは、信号を伝送する信号ラインとし、素子実装面31bの裏面31dの配線パターン31aはグランドラインとする。素子実装面31bには、光電変換素子2の制御に用いられる制御IC7、及びその制御に必要なチップコンデンサ8が実装されている。
【0041】
図6は、本変形例のソケット1の組立て完成状態を示す。この状態で、制御IC7及びチップコンデンサ8は、回路基板31においてスリーブブロック4により光電変換素子2を包含するように封止された空間4bの外側に在る。
【0042】
本変形例においては、配線が増えるので、高周波インピーダンス整合の設計自由度が高くなり、高周波インピーダンス整合を高精度に行うことができ、高周波信号を高精度に処理することができる。しかも、高精度な信号処理に必要とされる配線は、別途用意しなくて済むので、ソケット1の小型化を図ることができる。
【0043】
(第3の変形例)
図7は、第3の変形例に係るソケットの回路ブロック3の構成を示す。その回路ブロック3の回路基板31は、配線パターン31aが積層された多層基板である。この多層基板は、両面に配線パターン31aが形成され、さらに、それら配線パターン31aの間に2層の配線パターン31aが形成されている。両面(素子実装面31b、裏面31d)の配線パターン31aは信号ラインであり、内層の配線パターン31aはグランドラインである。制御IC7は、回路基板31の素子実装面31bに実装され、チップコンデンサ8は、回路基板31の裏面31dに実装され、制御IC7及びチップコンデンサ8はスリーブブロック4により封止された空間4b(図6参照)の外に配置されている。制御IC7及びチップコンデンサ8の実装位置はこれに限定されない。
【0044】
本変形例においては、上記第2の変形例と比べ、高周波インピーダンス整合の高精度化及びソケットの小型化の向上を図ることができる。また、各種電子部品は回路基板31に両面実装されるので、回路基板を別途設ける必要がなく、ソケットをさらに小型化することができる。
【0045】
(第4の変形例)
図8(a)(b)は、第4の変形例に係るソケットの回路ブロック3の構成を示す。その回路ブロック3の受け部材32は、嵌合穴32aが回路基板31の厚さよりも深くなるように、スリーブブロック4(図1参照)とは反対側の方向に突出している。本変形例の回路ブロック3は、回路基板31に嵌合穴32aと同数(例えば2個)の孔31eが形成され、それらの孔31eの各々に受け部材32の一部が入り込み、そこに嵌合穴32aが形成されている。
【0046】
本変形例においては、嵌合穴32aが深くなるので、嵌合突起43を長くすることができ、それにより、スリーブブロック4の安定化を図ることができる。従って、スリーブブロック4に保持された光ファイバ5の光軸が傾くことを防ぐことができる。そのため、光ファイバ5の光軸の傾きに起因する光信号伝達特性の悪化を防ぐことができる(図3(b)参照)。
【0047】
(第5の変形例)
図9(a)(b)は、第5の変形例に係るソケットの回路ブロック3の構成を示す。その回路ブロック3の受け部材32は、回路基板31の少なくとも一部の領域の両面を挟むように形成されている。この回路基板31を挟む挟持部32cは、回路基板31の少なくとも1辺から、その辺に対向する辺にまで連なっており、帯状に、かつ、対辺につき少なくとも1つ(図示例では2つ)形成されている。そして、挟持部32cの両端は上下で一体化されている。
【0048】
本変形例においては、回路基板31の両面が挟持部32cにより挟まれるので、回路基板31の反り、及びその反りに起因する回路基板31上の配線パターン31aの剥離を防ぐことができる。
【0049】
(第6の変形例)
図10は、第6の変形例に係るソケット1の構成を示す。そのソケット1は、スリーブブロック4と回路ブロック3との隙間を封止し、光電変換素子2を気密封止するためのシール材9をさらに備える。シール材9は、スリーブブロック4において回路ブロック3と接する端部4cの外周縁に沿って塗布され、その外周縁と回路ブロック3とを接着する。
【0050】
本変形例においては、光電変換素子2(図3(b)参照)を気密封止することができるので、光電変換素子2を外部からの腐食ガス及び結露等から保護することができる。従って、ガス等による光電変換素子2への悪影響を抑えることができ、信頼性の向上を図ることができる。
【0051】
(第7の変形例)
図11(a)(b)は、第7の変形例に係るソケット1の構成を示す。そのソケット1の受け部材32は、上記第6の変形例の構成に枠部32dをさらに設けたものであり、枠部32dにはスリーブブロック4の端部4cが嵌まり込む。枠部32dの内周部分の形状は、端部4cの外周形状に対応しており、枠部32dは端部4cが嵌まり込んだ状態で端部4cと接触し、密着する。スリーブブロック4において枠部32dと接する端部4cの外周縁には、シール材9が塗布され、その外周縁と枠部32dとを接着する。
【0052】
本変形例においては、端部4cは枠部32dに嵌まり込み、さらに端部4cの外周縁にはシール材9が塗布されるので、光電変換素子2を確実に気密封止することができる。また、上記第6の変形例と比べ、気密封止に必要なシール材9の塗布量を減らすことができ、コスト低減を図ることができる。また、気密性向上のため必要な作業は、端部4cを枠部32dに嵌め込むだけなので、作業が簡単になる。
【0053】
(第8の変形例)
図12(a)(b)は、第8の変形例に係るソケットの回路ブロック3の構成を示す。その回路ブロック3では、制御IC7が、回路基板31においてスリーブブロック4により封止された空間4b内の領域31fに実装されている。本変形例の回路ブロック3の他の構成は、上記第7の変形例と同じとする。
【0054】
本変形例においては、制御IC7を封止するのに、別途、封止部材及び封止工程を設ける必要はないので、部品点数及び組立て工程数の削減によりコスト低減を図ることができ、また、組立て工程数の削減により製造に必要な期間を短縮することができる。
【0055】
(第9の変形例)
図13は、第9の変形例に係るソケットの回路ブロック3の構成を示す。その回路ブロック3の受け部材32は、回路基板31に実装された制御IC7以外の電子部品、例えばチップ部品10等と、その電子部品が接続された配線パターン31aとを、回路基板31との同時成形により封止している。
【0056】
回路基板31は、上記第3の変形例の構成を有した多層基板であり、素子実装面31bの裏面31dにチップ部品10等が実装されている。受け部材32は、配線パターン31aの少なくとも一部を封止していればよい。チップ部品10は、制御IC7による制御に必要な部品であり、上記チップコンデンサ8を含む。
【0057】
本変形例においては、チップ部品10等の電子部品と配線との間、電子部品間、及び配線間が異物及び結露等により短絡することを防ぐことができ、回路の故障を防止することができる。
【0058】
(第10の変形例)
図14は、第9の変形例に係るソケットの回路ブロック3の構成を示す。その回路ブロック3は、上記第8の変形例の構成に加えて、配線パターン31aに電気的に接続された外部接続用端子(以下、端子という)33をさらに備え、端子33と回路基板31との接合部34を、受け部材32と同時成形している。
【0059】
端子33の端部は、回路基板31に形成された貫通孔31gに挿入され、配線パターン31aに半田付けすることにより、回路基板31に固定されている。接合部34は、その固定強度の向上のためのものであり、端子33の上記端部と回路基板31と接着される。接合部34は、受け部材32と同一の材料から成る。
【0060】
本変形例においては、接合部34に加えて受け部材32全体で端子33を支えることができ、従って、端子33の回路基板31への接合強度を高めることができる。しかも、高い接合強度を得るためには、接合部34だけを用いる場合、接合部34を大きくする必要が生じるが、接合部34は受け部材32と同時成形されているので、接合部34を大きくしなくて済み、ソケット1の小型化を図ることができる。
【0061】
なお、本発明は、上記実施形態及び各種変形例の構成に限定されるものでなく、使用目的に応じ、様々な変形が可能である。例えば、上記各種変形例のいずれかが他のいずれかと組み合わされていてもよい。また、スリーブブロック4の端部4cがレーザ又は超音波等の照射により回路ブロック3に溶着され、これにより、光電変換素子2が気密封止されていてもよい。
【符号の説明】
【0062】
1 光ファイバ用ソケット
2 光電変換素子
3 回路ブロック
31 回路基板
31c 光電変換素子が実装される部位の表面
31f スリーブブロックにより光電変換素子を包含するように封止された空間内の領域
32 スリーブブロック受け部材
32a 嵌合穴
32b 嵌合穴の周縁部の表面
32d 枠部
33 外部接続用端子
34 接合部
4 スリーブブロック
4a スリーブブロック受け部材と対向する面
4b スリーブブロックにより光電変換素子を包含するように封止された空間
4c 端部
41 スリーブ
42 レンズ
43 嵌合突起
5 光ファイバ
6 フェルール
7 制御IC(IC)
9 シール材
10 チップ部品(他の電子部品)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光電変換素子と、
前記光電変換素子が実装された回路基板、及び前記回路基板と同時成形され複数の嵌合穴が設けられた樹脂製のスリーブブロック受け部材を有する回路ブロックと、
前記スリーブブロック受け部材と対向する面に設けられ前記複数の嵌合穴にそれぞれ嵌合される複数の嵌合突起と、光ファイバの先端部に嵌装されたフェルールが嵌挿されるスリーブと、前記スリーブに前記フェルールが嵌挿された状態で前記光ファイバと前記光電変換素子とを光学的に結合させる集光機能を有したレンズとが一体的に形成されたスリーブブロックと、を備え、
前記複数の嵌合突起が前記複数の嵌合穴に嵌合された状態で、前記スリーブブロックと前記回路ブロックとが接して前記光電変換素子が該スリーブブロックにより中空封止され、かつ、前記光ファイバの光軸と該光電変換素子の光軸とが一致するように、各嵌合穴及び各嵌合突起の位置決めがなされていることを特徴とする光ファイバ用ソケット。
【請求項2】
前記複数の嵌合穴の各々の周縁形状と位置とを測定し、前記測定された各嵌合穴の周縁形状に応じた方法により、前記測定された複数の嵌合穴の位置のうちの少なくとも2つを基準として、前記光電変換素子の位置決めがなされることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ用ソケット。
【請求項3】
前記基準とされる嵌合穴の周縁部の表面は、前記回路基板において前記光電変換素子が実装される部位の表面と同じ高さであることを特徴とする請求項2に記載の光ファイバ用ソケット。
【請求項4】
前記回路基板は、両面基板であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の光ファイバ用ソケット。
【請求項5】
前記回路基板は、多層基板であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の光ファイバ用ソケット。
【請求項6】
前記スリーブブロック受け部材は、前記嵌合穴が前記回路基板の厚さよりも深くなるように、前記スリーブブロックとは反対側の方向に突出していることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の光ファイバ用ソケット。
【請求項7】
前記スリーブブロック受け部材は、前記回路基板の少なくとも一部の領域の両面を挟むように形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の光ファイバ用ソケット。
【請求項8】
前記スリーブブロックと前記回路ブロックとの隙間を封止し、前記光電変換素子を気密封止するためのシール材をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載の光ファイバ用ソケット。
【請求項9】
前記スリーブブロック受け部材は、前記スリーブブロックにおける前記回路ブロックと接する端部が嵌まり込む枠部を有することを特徴とする請求項8に記載の光ファイバ用ソケット。
【請求項10】
前記回路基板において前記スリーブブロックにより前記光電変換素子を包含するように封止された空間内の領域に、該光電変換素子の制御に用いられるICが実装されていることを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれか一項に記載の光ファイバ用ソケット。
【請求項11】
前記スリーブブロック受け部材は、前記回路基板に実装された前記IC以外の電子部品、及び前記回路基板に形成された配線パターンの少なくとも一部を同時成形により封止していることを特徴とする請求項10に記載の光ファイバ用ソケット。
【請求項12】
前記回路基板に形成された配線パターンに電気的に接続された外部接続用端子をさらに備え、
前記外部接続用端子と前記回路基板との接合部を、前記スリーブブロック受け部材と同時成形したことを特徴とする請求項1乃至請求項11のいずれか一項に記載の光ファイバ用ソケット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−47973(P2012−47973A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−189943(P2010−189943)
【出願日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】