説明

光モジュール及びその製造方法

【課題】スリーブ、リジッド配線基板及びフレキシブル配線基板を備える光モジュールにおいて、これらの結合部分の信頼性が高く、電子部品の実装面積を狭めることを回避でき、且つ光通信装置の小型化を可能とする。
【解決手段】光モジュール20は、半導体光素子21を搭載するリジッド配線基板30と、樹脂製のスリーブ40と、フレキシブル配線基板50とを備える。更に、光モジュール20は、リジッド配線基板30及びフレキシブル配線基板50に形成された各スルーホールに挿通され、リジッド配線基板30及びフレキシブル配線基板50の各信号配線に電気的に接続されたリードピン26を備える。スリーブ40は、半導体光素子21を収容する素子収容孔42を所定方向A1の一端に有している。リードピン26は、所定方向A1に沿った素子収容孔42の側壁43,45に埋め込まれている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光モジュール及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、光トランシーバの製造方法が記載されている。この製造方法では、ガラス基板の一方の面上に半導体光素子を実装する。そして、光ファイバの一端を保持する光プラグを装着するための孔を有する光ソケット(スリーブ)と、ガラス基板の他方の面とを、接着剤を用いて相互に接合する。
【0003】
特許文献2には、光通信装置に用いられる光モジュールの製造方法が記載されている。この製造方法では、透光性樹脂膜の一方の面上に半導体光素子を実装する。そして、光ファイバの一端が挿入される貫通孔を有するスリーブと、透光性樹脂膜の他方の面との間に熱硬化性の接着シートを挟んで熱圧着することにより、スリーブと透光性樹脂膜とを相互に接合する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−86136号公報
【特許文献2】特開2005−208107号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
光通信装置に用いられる光モジュールには、光通信装置における他の配線基板との電気的な接続を確保するために、フレキシブル配線基板を備えるものがある。図6〜図9は、そのような光モジュールにおいて本発明者が新たに考えた構成例を示す断面図である。
【0006】
例えば、図6に示された光トランシーバ100Aは、スリーブ101と、リジッドフレキシブル配線基板102とを備えている。スリーブ101は、光ファイバの一端に設けられたフェルールが挿入される挿入孔101aと、半導体光素子104を収容する素子収容孔101bとを有する。リジッドフレキシブル配線基板102は、リジッド部分102aとフレキシブル部分102bとを有しており、リジッド部分102aの主面102c上には、半導体光素子104、並びに半導体光素子104に接続されるICチップ105及びキャパシタ112が実装されている。スリーブ101の素子収容孔101b側の端面と、リジッドフレキシブル配線基板102のリジッド部分102aとは、例えば樹脂接着剤を介して相互に接合される。
【0007】
また、図7に示された光トランシーバ100Bは、スリーブ101と、リジッド配線基板106と、フレキシブル配線基板107とを備えている。リジッド配線基板106の主面106a上には、半導体光素子104、ICチップ105及びキャパシタ112が実装されている。リジッド配線基板106とフレキシブル配線基板107とは、例えば半田108を用いて相互に固定される。また、スリーブ101の素子収容孔101b側の端面と、リジッド配線基板106とは、例えば樹脂接着剤を介して相互に接合される。
【0008】
また、図8に示された光トランシーバ100Cは、スリーブ101と、リジッド配線基板106と、フレキシブル配線基板107とを備えている。リジッド配線基板106の主面106a上には、半導体光素子104、ICチップ105及びキャパシタ112が実装されている。リジッド配線基板106とフレキシブル配線基板107とは、リジッド配線基板106上に実装されたソケット116にフレキシブル配線基板107の一端が差し込まれることによって相互に固定される。また、スリーブ101の素子収容孔101b側の端面と、リジッド配線基板106とは、例えば樹脂接着剤を介して相互に接合される。
【0009】
また、図9に示された光トランシーバ100Dは、スリーブ101と、リジッド配線基板109と、フレキシブル配線基板110とを備えている。リジッド配線基板109の主面109a上には、半導体光素子104、ICチップ105及びキャパシタ112が実装されている。リジッド配線基板109とフレキシブル配線基板110とは、複数本のリードピン114を介して相互に固定される。すなわち、複数本のリードピン114は、リジッド配線基板109を貫通して固定されており、フレキシブル配線基板110に形成されたスルーホールを貫通し、半田118によってフレキシブル配線基板110に接合される。これにより、リジッド配線基板109の配線とフレキシブル配線基板110の配線とが電気的に接続されるとともに、リジッド配線基板109とフレキシブル配線基板110とが機械的に固定される。また、スリーブ101の素子収容孔101b側の端面と、リジッド配線基板109とは、例えば樹脂接着剤を介して相互に接合される。
【0010】
上述した光トランシーバ100A〜100Dでは、スリーブとリジッド配線基板とが樹脂等によって接着されている。また、前述した特許文献1,2に記載された方法においては、スリーブと基板との間に樹脂を介在させて、これらを接着(若しくは熱圧着)している。しかしながら、これらのようにスリーブと基板とを接着により固定した場合、光モジュールの使用時に接着部分が剥離するおそれがある。したがって、スリーブと基板とを接着する方法は、高い信頼性が要求される用途の光モジュールには適用し難い。
【0011】
また、図6に示された光トランシーバ100Aは、リジッドフレキシブル配線基板102を備えている。リジッドフレキシブル配線基板102は、個別のリジッド配線基板及びフレキシブル配線基板を使用する場合と比較して製造工数が多く、高コストとなる。また、リジッド部分102aとフレキシブル部分102bとの境界部分においてこれらを貼り合わせるための接着層がはみ出してしまい(図中のB部分)、その部分ではフレキシブル部分102bの屈曲が抑えられるので、光通信装置の小型化を妨げる場合がある。
【0012】
また、図7に示された光トランシーバ100Bや図8に示された光トランシーバ100Cでは、例えば自動車のような振動環境下において当該光モジュールが使用される場合に、リジッド配線基板106とフレキシブル配線基板107との接合部分(半田108またはソケット116)の接合強度に関する信頼性が低くなるおそれがある。
【0013】
また、図9に示された光トランシーバ100Dでは、リードピン114とフレキシブル配線基板110との半田による接合状態を容易に確認でき、またフレキシブル配線基板110の剥離がリードピン114によって防止されるので、接合強度に関する信頼性は優れている。しかしながら、リジッド配線基板109の主面109aのうちリードピン114が配置される領域には、電子部品を配置することができない。したがって、主面109a上における電子部品の配置領域が狭くなってしまう(或いは、リジッド配線基板109の大型化を招く)という問題点がある。
【0014】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、スリーブ、リジッド配線基板及びフレキシブル配線基板を備える光モジュールにおいて、これらの結合部分の信頼性が高く、電子部品の実装面積を狭めることを回避でき、且つ光通信装置の小型化が可能な光モジュール及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上述した課題を解決するために、本発明に係る光モジュールは、半導体光素子と光ファイバとを光結合する光モジュールであって、(1)主面上に半導体光素子を搭載するリジッド配線基板と、(2)光ファイバの光軸方向に沿った所定方向に延在し、該所定方向における一端がリジッド配線基板の主面上に固定された樹脂製のスリーブと、(3)リジッド配線基板の裏面に沿って設けられたフレキシブル配線基板と、(4)リジッド配線基板に形成されたスルーホール、及びフレキシブル配線基板に形成されたスルーホールに挿通され、リジッド配線基板の信号配線とフレキシブル配線基板の信号配線とに電気的に接続された信号伝達用の一又は複数のリードピンと、を備えており、スリーブが、光ファイバが挿入される光ファイバ挿入孔を所定方向における他端に有しており、半導体光素子を収容する素子収容孔を所定方向の一端に有しており、リードピンが、所定方向に沿った素子収容孔の側壁に埋め込まれていることを特徴とする。
【0016】
この光モジュールでは、リードピンが、樹脂製のスリーブに形成された素子収容孔の側壁に埋め込まれている。リジッド配線基板の主面において、スリーブの素子収容孔の側壁が配置される領域には、そもそも電子部品の配置は不可能である。そこで、上記光モジュールでは、このように電子部品の配置が不可能な領域へのリードピンの配置が、リードピンがスリーブに埋め込まれることによって可能とされている。このような構成によれば、リジッド配線基板の主面において電子部品の実装面積を狭めることを好適に回避できる。また、スリーブ、リジッド配線基板、及びフレキシブル配線基板が、リードピンを介して相互に固定されるので、これらが分離することを強固に防ぎ、結合部分の信頼性を高めることができる。更に、図6に示された光トランシーバ100Aのように接着層Bがはみ出すこともなく、フレキシブル配線基板が好適に屈曲できるので、光通信装置の小型化を可能にできる。
【0017】
また、光モジュールは、リードピンが、素子収容孔の側壁に埋め込まれたのち、リジッド配線基板及びフレキシブル配線基板の各スルーホールに挿通されたことを特徴としてもよい。これにより、上述した光モジュールを容易に構成することができる。
【0018】
また、上述した光モジュールは、リードピンと素子収容孔の側壁とがインサートモールドにより一体成型されていることを特徴としてもよい。或いは、光モジュールは、リードピンが、素子収容孔の側壁に圧入されていることを特徴としてもよい。これらのうち何れかによって、リードピンが素子収容孔の側壁に埋め込まれた構成を好適に実現できる。
【0019】
また、上述した光モジュールは、素子収容孔の側壁が、所定方向から見て四角形状を呈しており、複数のリードピンが、四角形における対向する一対の辺に沿って配置されていることを特徴としてもよい。このように、所定方向から見た素子収容孔の側壁が四角形状を呈していることにより、リジッド配線基板の主面上における電子部品の配置領域が四角形状となり、電子部品の配置効率を高めることができる。
【0020】
また、本発明に係る光モジュールの製造方法は、半導体光素子と光ファイバとを光結合する光モジュールを製造する方法であって、(1)光ファイバの光軸方向に沿った所定方向に延在し、半導体光素子を収容する素子収容孔を所定方向の一端に有し、光ファイバが挿入される光ファイバ挿入孔を所定方向の他端に有する樹脂製のスリーブを作製する第1工程と、(2)所定方向におけるスリーブの一端を、主面上に半導体光素子を搭載するリジッド配線基板の主面上に配置するとともに、リジッド配線基板の裏面に沿ってフレキシブル配線基板を配置し、リジッド配線基板に形成されたスルーホール、及びフレキシブル配線基板に形成されたスルーホールに一又は複数のリードピンを挿通し、リジッド配線基板の信号配線とフレキシブル配線基板の信号配線とを電気的に接続する第2工程とを備え、第1工程において、リードピンを、所定方向に沿った素子収容孔の側壁に埋め込まれた状態で固定し、第2工程において、リードピンをリジッド配線基板及びフレキシブル配線基板の各スルーホールに挿通して半田等により導電接着することにより、スリーブ、リジッド配線基板およびフレキシブル配線基板を相互に固定することを特徴とする。
【0021】
この光モジュールの製造方法では、第1工程において、リードピンを、樹脂製のスリーブに形成された素子収容孔の側壁に埋め込まれた状態で固定する。そして、第2工程において、リードピンをリジッド配線基板及びフレキシブル配線基板の各スルーホールに挿通して導電接着を行う。リジッド配線基板の主面において、スリーブの素子収容孔の側壁が配置される領域には、電子部品の配置は不可能である。そこで、上記製造方法では、このように電子部品の配置が不可能な領域へのリードピンの配置が、リードピンがスリーブに埋め込まれることによって可能とされている。このような方法によれば、リジッド配線基板の主面において電子部品の実装面積を狭めることを好適に回避できる。また、スリーブ、リジッド配線基板、及びフレキシブル配線基板が、リードピンを介して相互に固定されるので、これらが分離することを強固に防ぎ、結合部分の信頼性を高めることができる。更に、図6に示された光トランシーバ100Aのように接着層Bがはみ出すこともなく、フレキシブル配線基板が好適に屈曲できるので、光通信装置の小型化を可能にできる。
【0022】
また、上述した光モジュールの製造方法は、第1工程において、リードピンと素子収容孔の側壁とをインサートモールドにより一体成型することを特徴としてもよい。或いは、光モジュールの製造方法は、第1工程において、リードピンを素子収容孔の側壁に圧入することを特徴としてもよい。これらのうち何れかによって、リードピンを、素子収容孔の側壁に埋め込まれた状態で容易に固定することができる。
【0023】
また、上述した光モジュールの製造方法は、第2工程において、リードピンをリジッド配線基板及びフレキシブル配線基板の各スルーホールに挿通した状態で光ファイバ挿入孔と半導体光素子とを光軸調整したのち、リードピンをリジッド配線基板に半田等により導電接着することが好ましい。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、スリーブ、リジッド配線基板及びフレキシブル配線基板を備える光モジュールにおいて、これらの結合部分の信頼性が高く、電子部品の実装面積を狭めることを回避でき、且つ光通信装置の小型化が可能な光モジュール及びその製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る光モジュールを備える光通信装置として、光トランシーバの構成を示す部分断面図である。
【図2】図2は、一実施形態における光モジュールの構成を詳細に示す図であって、光モジュールの斜視図を示しており、
【図3】図3は、一実施形態における光モジュールの構成を詳細に示す図であって、図2に示されたI−I線に沿った断面を示している。
【図4】図4は、一実施形態における光モジュールの構成を詳細に示す図であって、図2に示されたII−II線に沿った断面を示している。
【図5】図5は、一実施形態に係る光モジュールの製造方法の各工程を示すフローチャートである。
【図6】図6は、光モジュールの構成例を示す断面図である。
【図7】図7は、光モジュールの構成例を示す断面図である。
【図8】図8は、光モジュールの構成例を示す断面図である。
【図9】図9は、光モジュールの構成例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付図面を参照しながら本発明による光モジュール及びその製造方法の実施の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0027】
図1は、本発明の一実施形態に係る光モジュールを備える光通信装置として、光トランシーバ10の構成を示す部分断面図である。本実施形態の光トランシーバ10は、光通信装置の一部を成す。図1を参照すると、光トランシーバ10は、或る所定方向A1を長手方向とする略直方体状を呈しており、光モジュール20、配線基板60、及びこれらを収容する筐体70を備えている。
【0028】
筐体70は、所定方向A1に沿って延びる内部空間71を有しており、内部空間71は、光モジュール収容部73を所定方向A1における一端に含む。また、筐体70は、所定方向A1における内部空間71の前方に、レセプタクル部75を有している。レセプタクル部75は、光ファイバと接続された光コネクタが収容される収容穴75aを有している。筐体70は、例えば成型された樹脂から成ることができる。
【0029】
光モジュール20は、例えば電気的な送信信号を光信号に変換して光トランシーバ10の外部へ送信する光送信器、或いは、光トランシーバ10へ送られてきた光信号を電気的な受信信号に変換する光受信器のいずれか、もしくは双方を含んでいる。光モジュール20の主要部分は、筐体70の光モジュール収容部73に配置される。
【0030】
光モジュール20は、リジッド配線基板30、スリーブ40、及びフレキシブル配線基板50を備えている。リジッド配線基板30は、外形が略長方形状をなす樹脂多層プリント配線基板である。リジッド配線基板30は、レーザダイオード(好ましくは面発光レーザ(Vertical Cavity Surface Emitting LASER;VECSEL))等の発光素子、若しくはフォトダイオード等の受光素子といった半導体光素子を主面30a上に搭載し、その主面30aは、所定方向A1に垂直な平面に沿って配置されている。
【0031】
スリーブ40は、光を案内するための略円筒状の樹脂製の部材である。スリーブ40は、所定方向A1に沿って延在しており、所定方向A1におけるその一端が、リジッド配線基板30の主面30a上に固定されている。スリーブ40は、光ファイバ挿入孔41を所定方向A1における他端側に有している。スリーブ40のうち光ファイバ挿入孔41を含む部分は光モジュール収容部73から収容穴75aの内部へ突出しており、光ファイバ挿入孔41には、光ファイバの先端に取り付けられたフェルールが挿入される。また、スリーブ40は、素子収容孔42を所定方向A1の一端側に有している。素子収容孔42は、半導体光素子を収容するための空間をリジッド配線基板30との間に画成する。
【0032】
フレキシブル配線基板50は、可撓性を有する配線基板である。フレキシブル配線基板50の一端部は、リジッド配線基板30の裏面30bに沿って配置されており、リジッド配線基板30が有する信号配線等と電気的に接続されている。また、フレキシブル配線基板50の他端部は、配線基板60の裏面60bに沿って配置されており、配線基板60が有する信号配線等と電気的に接続されている。配線基板60の裏面60bがリジッド配線基板30の裏面30bに対して垂直に設けられているので、フレキシブル配線基板50の一端部と他端部との間の部分は湾曲している。
【0033】
配線基板60は、樹脂多層プリント配線基板であり、所定方向A1を長手方向として筐体70の上部に配置されている。この配線基板60の主面60a上には、光送信器としての光モジュール20が有する発光素子の駆動制御を行うドライバICや、光受信器としての光モジュール20が有する受光素子から受け取った信号の処理を行うICなどを含む複数の電子部品が搭載される。配線基板60は、筐体70を貫通するように固定されたリードピン77が挿通されるためのスルーホールを有している。配線基板60は、このスルーホールに挿通されて導電接着されたリードピン77を介して、光トランシーバ10の外部回路と電気的に接続される。また、配線基板60は、このリードピン77を介して筐体70に機械的に支持される。
【0034】
ここで、図2〜図4は、本実施形態における光モジュール20の構成を詳細に示す図である。図2は、光モジュール20の斜視図を示しており、図3は、図2に示されたI−I線に沿った断面(すなわち所定方向A1と平行な断面)を示しており、図4は、図2に示されたII−II線に沿った断面(すなわち所定方向A1に垂直な断面)を示している。
【0035】
前述したように、光モジュール20は、リジッド配線基板30、スリーブ40、及びフレキシブル配線基板50を備えている。図3に示されるように、リジッド配線基板30の主面30a上には、発光素子や受光素子といった半導体光素子21のほか、半導体光素子21に電気的に接続されるICチップ22及びキャパシタ(チップコンデンサ)23が搭載されている。半導体光素子21が発光素子である場合、ICチップ22は例えばドライバICである。また、半導体光素子21が受光素子である場合、ICチップ22は例えばトランスインピーダンスアンプ(TIA)である。
【0036】
半導体光素子21及びICチップ22の裏面電極は、リジッド配線基板30の主面30a上に設けられた配線パターン上に、Agペースト等の導電性接着剤を介して固定されている。また、半導体光素子21及びICチップ22の表面電極は、例えばAuから成るボンディングワイヤ24を介して互いに電気的に接続されている。なお、ICチップ22の別の表面電極は、別のボンディングワイヤ25を介してリジッド配線基板30の信号配線パターンに電気的に接続されている。また、リジッド配線基板30には、信号伝達用の複数のリードピン26を挿通させるための複数のスルーホール31が形成されている。複数のスルーホール31は、リジッド配線基板30の主面30aと裏面30bとの間を貫通している。更に、リジッド配線基板30は、ICチップ22と複数のリードピン26とを互いに電気的に接続するための金属製の複数の信号配線を有している。これらの信号配線は、リジッド配線基板30の内層に設けられてもよく、或いは主面30a上や裏面30b上に設けられてもよい。
【0037】
スリーブ40は、所定方向A1に沿って延びる部材であり、半導体光素子21から出射される光若しくは半導体光素子21へ入射される光を透過する樹脂(例えばウルテム(登録商標))から成る。スリーブ40は、所定方向A1における一端40a(図3参照)が、リジッド配線基板30の主面30a上に固定されている。
【0038】
スリーブ40の光ファイバ挿入孔41は、所定方向A1に沿った中心軸線を有する略円筒形状を呈しており、所定方向A1における一端側に開口41aを有する。フェルールに保持された光ファイバの先端部は、この開口41aから光ファイバ挿入孔41に挿入される。光ファイバ挿入孔41の内径は、例えば直径1.25mmのフェルールと嵌合できる大きさに設定される。所定方向A1における光ファイバ挿入孔41の他端側は閉じられており、光ファイバの端面との接触を避ける為の凹部41bが形成されている。凹部41bの平面形状は円形であり、その直径は光ファイバの直径よりも長く、フェルールの直径よりも短い。
【0039】
スリーブ40の素子収容孔42は、所定方向A1に沿った中心軸線を有する略四角筒形状を呈しており、図4に示されるように、該中心軸線を囲む側壁43〜46によって構成されている。換言すれば、側壁43〜46は、所定方向A1から見て四角形状を呈しており、素子収容孔42の四角形の各辺を構成している。具体的には、側壁43及び45は、図4に示される第1方向A2に沿って延びており、第2方向A3に並んで互いに対向している。側壁44及び46は、図4に示される第2方向A3に沿って延びており、第1方向A2に並んで互いに対向している。なお、第1方向A2及び第2方向A3は、互いに直交する方向であり、共に所定方向A1と直交している。所定方向A1における側壁43〜46の一端面40a(図3参照)は、リジッド配線基板30の主面30aに対向している。側壁43〜46の厚さは、例えば700μmである。
【0040】
素子収容孔42は、半導体光素子21、ICチップ22及びキャパシタ23を収容するための空間47を、リジッド配線基板30との間に画成する。素子収容孔42の光ファイバ挿入孔41側の端部は閉じられており、光ファイバ挿入孔41との間には、半導体光素子21から出射された光(若しくは半導体光素子21へ入射する光)を集光する為のレンズ48が、スリーブ40との一体成型により形成されている。半導体光素子21は、この空間47において光ファイバ挿入孔41の中心軸線の延長線上に配置される。半導体光素子21が発光素子である場合、半導体光素子21は光ファイバ挿入孔41へ向けて光を出射する。この光は、レンズ48によって集光されたのち、光ファイバ挿入孔41に挿入された光ファイバの端面に入射する。また、半導体光素子21が受光素子である場合、半導体光素子21は、光ファイバ挿入孔41に挿入された光ファイバの端面から出射されてレンズ48によって集光された光を受光する。
【0041】
素子収容孔42の側壁43〜46のうち対向する一対の側壁43及び45には、複数のリードピン26が埋め込まれている。本実施形態では、一方の側壁43に4本のリードピン26が埋め込まれ、他方の側壁43に別の4本のリードピン26が埋め込まれている。これらのリードピン26は、所定方向A1に沿って延びる細長形状を呈しており、側壁43及び45の端面40aからリジッド配線基板30に向けて突出している。リードピン26は、例えば黄銅や鉄系の合金であるコバールといった金属から成り、半田付けを容易にする為に、その表面にはニッケル/スズめっきが施されている。側壁43に埋め込まれた4本のリードピン26は、第1方向A2に沿って並んで配置されている。同様に、側壁45に埋め込まれた別の4本のリードピン26もまた、第1方向A2に沿って並んで配置されている。すなわち、これらのリードピン26は、素子収容孔42を構成する四角形における対向する一対の辺に沿って配置されている。なお、後述するように、リードピン26は、側壁43及び45に対してインサートモールドにより一体成型されるとよい。或いは、リードピン26は、側壁43及び45に圧入されてもよい。
【0042】
リードピン26は、リジッド配線基板30のスルーホール31を貫通し、リジッド配線基板30の裏面30bから突出している。リードピン26は、リジッド配線基板30の裏面30b側において、半田等の導電性接着剤33によってリジッド配線基板30の信号配線に固定され、該信号配線と電気的に接続される。こうして、リードピン26がリジッド配線基板30に固定されることによって、リジッド配線基板30とスリーブ40とが互いに固定される。
【0043】
なお、スリーブ40の端面40aとリジッド配線基板30の主面30aとの間には、スリーブ40とリジッド配線基板30とを更に強固に固定する為に接着剤が注入され、隙間が完全に埋められていることが好ましい。ここで使用される接着剤としては、例えば熱硬化性のものや、紫外線硬化性のもの等が好適である。
【0044】
フレキシブル配線基板50は、第1方向A2に延びており、その一端部51は、リジッド配線基板30の裏面30bに沿って配置されている。フレキシブル配線基板50の一端部51には、リードピン26を挿通させる為の複数のスルーホールが形成されている。リードピン26は、フレキシブル配線基板50の裏面50b側において、半田等の導電性接着剤53によってフレキシブル配線基板50の信号配線に固定され、該信号配線と電気的に接続される。こうして、リードピン26がフレキシブル配線基板50に固定されることによって、リジッド配線基板30とフレキシブル配線基板50とが互いに固定される。フレキシブル配線基板50が有する信号配線は、一定の特性インピーダンスでもって高周波信号を伝達する為に、例えば2層の配線パターンがマイクロストリップラインを構成するように配設されて成ることが好ましい。
【0045】
なお、本実施形態のリードピン26は、後述する製造方法において示されるように、まず素子収容孔42の側壁43及び45に埋め込まれ、その後に、リジッド配線基板30及びフレキシブル配線基板50の各スルーホールに挿通される。
【0046】
続いて、本実施形態に係る光モジュール20の製造方法について説明する。図5は、この製造方法の各工程を示すフローチャートである。
【0047】
まず、スリーブ40を作製する(第1工程、S1)。スリーブ40は、所定の形状を有する金型を用いて樹脂をモールドすることにより、好適に形成される。また、このとき、複数のリードピン26を、素子収容孔42の側壁43及び45に埋め込まれた状態で固定する。一例では、スリーブ40をモールド成型する金型の内部に複数のリードピン26をセットし、インサートモールドによる一体成型を行うことによって、このようなリードピン26の固定を容易に行うことができる。また、他の例では、樹脂をモールドすることによりスリーブ40を作製したのち、このスリーブ40の側壁43及び45の端面40aへリードピン26を圧入することによっても、このようなリードピン26の固定を容易に行うことができる。
【0048】
続いて、スリーブ40、リジッド配線基板30、及びフレキシブル配線基板50を互いに組み立てる(第2工程、S2)。具体的には、まず、半導体光素子21等が実装されたリジッド配線基板30の主面30a上に、スリーブ40の一端40aを固定する。すなわち、リードピン26をリジッド配線基板30のスルーホールに挿通して導電接着することにより、スリーブ40とリジッド配線基板30とを相互に固定する。次いで、リジッド配線基板30の裏面30bに沿ってフレキシブル配線基板50を配置し、フレキシブル配線基板50に形成されたスルーホールにリードピン26を挿通する。そして、リードピン26をフレキシブル配線基板50に導電接着することにより、リジッド配線基板30とフレキシブル配線基板50とを相互に固定する。また、これにより、リジッド配線基板30の信号配線とフレキシブル配線基板50の信号配線とを電気的に接続する。こうして、本実施形態に係る光モジュール20が作製される。
【0049】
なお、上述した第2工程では、リードピン26をリジッド配線基板30のスルーホールに挿通した状態で、光ファイバ挿入孔41と半導体光素子21とを光軸調整した後に、リードピン26をリジッド配線基板30に導電接着することが好ましい。具体的には、光ファイバ挿入孔41の開口41aから、レンズ48を介して半導体光素子21の位置を顕微鏡やCCDカメラ等を用いて視認する。そして、光ファイバ挿入孔41の中心に半導体光素子21が配置されるように、リジッド配線基板30とスリーブ40との相対位置を調整する。その後、これらの相対位置が決定した段階において、リードピン26をリジッド配線基板30に導電接着するとよい。
【0050】
以上に説明した光モジュール20及びその製造方法によって得られる効果について説明する。本実施形態に係る光モジュール20及びその製造方法では、リードピン26が、樹脂製のスリーブ40に形成された素子収容孔42の側壁43及び45に埋め込まれている。リジッド配線基板30の主面30aにおいて、スリーブ40の素子収容孔42の側壁43〜46が配置される領域には、そもそも電子部品の配置は不可能である。そこで、上記光モジュール20では、このように電子部品の配置が不可能な領域へのリードピン26の配置が、リードピン26がスリーブ40に埋め込まれることによって可能とされている。このような構成によれば、リジッド配線基板30の主面30aにおいて電子部品の実装面積を狭めることを好適に回避できる。また、スリーブ40、リジッド配線基板30、及びフレキシブル配線基板50が、リードピン26を介して相互に固定されるので、これらが分離することを強固に防ぎ、結合部分の信頼性を高めることができる。更に、図6に示された光トランシーバ100Aのように接着層Bがはみ出すこともなく、フレキシブル配線基板50が好適に屈曲できるので、光トランシーバ10の小型化を可能にできる。
【0051】
また、本実施形態のように、リードピン26は、素子収容孔42の側壁に埋め込まれたのち、リジッド配線基板30及びフレキシブル配線基板50の各スルーホールに挿通されることが好ましい。これにより、本実施形態の光モジュール20を容易に作製することができる。
【0052】
また、本実施形態のように、リードピン26と素子収容孔42の側壁43及び45とはインサートモールドにより一体成型されることが好ましい。或いは、リードピン26は、素子収容孔42の側壁に圧入されることが好ましい。これらのうち何れかによって、リードピン26が素子収容孔42の側壁43及び45に埋め込まれた構成を好適に実現できる。
【0053】
また、本実施形態のように、素子収容孔42の側壁43〜46は、所定方向A1から見て四角形状を呈しており、複数のリードピン26が、この四角形における対向する一対の辺に沿って配置されていることが好ましい。このように、所定方向A1から見た素子収容孔42の側壁43〜46が四角形状を呈していることにより、リジッド配線基板30の主面30a上における電子部品の配置領域が四角形状となり、電子部品の配置効率を高めることができる。また、リードピン26の並び方向がフレキシブル配線基板50の長手方向(曲げ方向)に沿っていることにより、リードピン26がフレキシブル配線基板50上の配線パターンの経路を妨げることを回避することができる。
【0054】
本発明による光モジュール及びその製造方法は、上述した実施形態に限られるものではなく、他に様々な変形が可能である。例えば、上述した実施形態ではリードピン26が素子収容孔42の側壁43及び45に埋め込まれているが、リードピン26は側壁43〜46のいずれに埋め込まれてもよい。また、上述した実施形態では8本のリードピン26が設けられているが、リードピンの本数はこれに限られず、任意のN本(Nは1以上の整数)のリードピンが設けられることができる。
【0055】
また、リードピンと各配線基板との導電接着には、一般的には半田が用いられるが、樹脂製の導電性接着剤などを用いることも可能である。
【0056】
また、上述した実施形態では素子収容孔42の側壁43〜46が所定方向A1から見て四角形状を呈しているが、素子収容孔の側壁は、例えば円形や他の形状を呈しても良い。
【符号の説明】
【0057】
10…光トランシーバ、20…光モジュール、21…半導体光素子、22…ICチップ、23…キャパシタ、24,25…ボンディングワイヤ、26…リードピン、30…リジッド配線基板、31…スルーホール、33…導電性接着剤(半田)、40…スリーブ、41…光ファイバ挿入孔、42…素子収容孔、43〜46…側壁、47…空間、48…レンズ、50…フレキシブル配線基板、53…導電性接着剤(半田)、60…配線基板、70…筐体、71…内部空間、73…光モジュール収容部、75…レセプタクル部、77…リードピン、100A〜100D…光トランシーバ、A1…所定方向、A2…第1方向、A3…第2方向。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体光素子と光ファイバとを光結合する光モジュールであって、
主面上に半導体光素子を搭載するリジッド配線基板と、
前記光ファイバの光軸方向に沿った所定方向に延在し、該所定方向における一端が前記リジッド配線基板の前記主面上に固定された樹脂製のスリーブと、
前記リジッド配線基板の裏面に沿って設けられたフレキシブル配線基板と、
前記リジッド配線基板に形成されたスルーホール、及び前記フレキシブル配線基板に形成されたスルーホールに挿通され、前記リジッド配線基板の信号配線と前記フレキシブル配線基板の信号配線とに電気的に接続された信号伝達用の一又は複数のリードピンと
を備え、
前記スリーブが、前記光ファイバが挿入される光ファイバ挿入孔を前記所定方向における他端に有しており、前記半導体光素子を収容する素子収容孔を前記所定方向の一端に有しており、
前記リードピンが、前記所定方向に沿った前記素子収容孔の側壁に埋め込まれていることを特徴とする、光モジュール。
【請求項2】
前記リードピンが、前記素子収容孔の前記側壁に埋め込まれたのち、前記リジッド配線基板及び前記フレキシブル配線基板の各スルーホールに挿通されたことを特徴とする、請求項1に記載の光モジュール。
【請求項3】
前記リードピンと前記素子収容孔の前記側壁とがインサートモールドにより一体成型されていることを特徴とする、請求項2に記載の光モジュール。
【請求項4】
前記リードピンが、前記素子収容孔の前記側壁に圧入されていることを特徴とする、請求項2に記載の光モジュール。
【請求項5】
前記素子収容孔の前記側壁が、前記所定方向から見て四角形状を呈しており、
前記複数のリードピンが、前記四角形における対向する一対の辺に沿って配置されていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の光モジュール。
【請求項6】
半導体光素子と光ファイバとを光結合する光モジュールを製造する方法であって、
前記光ファイバの光軸方向に沿った所定方向に延在し、前記半導体光素子を収容する素子収容孔を前記所定方向の一端に有し、前記光ファイバが挿入される光ファイバ挿入孔を前記所定方向の他端に有する樹脂製のスリーブを作製する第1工程と、
前記所定方向における前記スリーブの一端を、主面上に半導体光素子を搭載するリジッド配線基板の前記主面上に配置するとともに、前記リジッド配線基板の裏面に沿ってフレキシブル配線基板を配置し、前記リジッド配線基板に形成されたスルーホール、及び前記フレキシブル配線基板に形成されたスルーホールに一又は複数のリードピンを挿通し、前記リジッド配線基板の信号配線と前記フレキシブル配線基板の信号配線とを電気的に接続する第2工程と
を備え、
前記第1工程において、前記リードピンを、前記所定方向に沿った前記素子収容孔の側壁に埋め込まれた状態で固定し、
前記第2工程において、前記リードピンを前記リジッド配線基板及び前記フレキシブル配線基板の各スルーホールに挿通して導電接着することにより、前記スリーブ、前記リジッド配線基板および前記フレキシブル配線基板を相互に固定することを特徴とする、光モジュールの製造方法。
【請求項7】
前記第1工程において、前記リードピンと前記素子収容孔の前記側壁とをインサートモールドにより一体成型することを特徴とする、請求項6に記載の光モジュールの製造方法。
【請求項8】
前記第1工程において、前記リードピンを前記素子収容孔の前記側壁に圧入することを特徴とする、請求項6に記載の光モジュールの製造方法。
【請求項9】
前記第2工程において、前記リードピンを前記リジッド配線基板及び前記フレキシブル配線基板の各スルーホールに挿通した状態で前記光ファイバ挿入孔と前記半導体光素子とを光軸調整したのち、前記リードピンを前記リジッド配線基板に導電接着することを特徴とする、請求項6〜8のいずれか一項に記載の光モジュールの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−20080(P2013−20080A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−153064(P2011−153064)
【出願日】平成23年7月11日(2011.7.11)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】