説明

光モジュール

【課題】光ファイバーからの光信号を受光素子で受ける、または発光素子からの光信号を光ファイバーで受ける構成のいずれであっても、光結合効率が向上する光モジュールを提供する。
【解決手段】第1溝1aと第2溝1bとが連続して形成された基板1と、第1溝1a内に設けられた内部導波路16と、第1溝1aの先端部に設けられた光路変換用のミラー部15とを備えている。基板1の表面に実装された光素子12a,12bと、コア部17と光学的に接続されるファイバーコア部21を有する光ファイバー2とを備えている。第2溝1b内において、光ファイバー2の両側に設置された光ファイバー位置決め体40を備え、光ファイバー位置決め体40の少なくとも一側は樹脂構造体40(A)である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光信号を送信あるいは受信する光モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の光モジュールとしては、特許文献1に記載されている光モジュールが知られている。この光モジュールでは、図23に示すように、基板30に形状の異なる2つのV溝31,32が形成されている。一方のV溝31には、光ファイバー33のクラッド部33bが固定されている。クラッド部33bは、V溝31,32の境部分の立ち上がり傾斜部36によって位置決めされている。
【0003】
他方のV溝32の先端には、ミラー(反射面)34が形成されている。このミラー34によって、光ファイバー33のコア部33aの光軸が変えられる。そして、基板30に実装される受光素子35は、光ファイバー33からの光信号を受光する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−54228号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の光モジュールでは、光ファイバー33のコア部33aの先端33cからミラー34までの距離が長い。そのため、コア部33aから出射された光束が広がるので、光結合効率が低下するという問題があった。
【0006】
本発明は、前記問題を解消するためになされたもので、光ファイバーからの光信号を受光素子で受ける、または発光素子からの光信号を光ファイバーで受ける構成のいずれであっても、光結合効率が向上する光モジュールを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明は、表面において、少なくとも1本の第1溝と前記第1溝よりも深い第2溝とが連続して形成された基板と、前記基板の第1溝内に設けられた内部導波路と、前記第1溝の先端部に設けられた光路変換用のミラー部と、前記ミラー部と対向するように前記基板の表面に実装され、前記ミラー部を介して前記内部導波路のコア部に光信号を出射し、若しくは前記ミラー部を介して前記内部導波路のコア部からの光信号を受光する光素子と、前記内部導波路のコア部と光学的に接続されるファイバーコア部およびファイバークラッド部を有する光ファイバーと、前記第2溝内において、前記光ファイバーの両側に設置された光ファイバー位置決め体とを備え、前記光ファイバー位置決め体の少なくとも一側は樹脂構造体であることを特徴とする光モジュールを提供するものである。
【0008】
前記第1溝と前記第2溝の境界面は、前記基板の表面に対して略垂直である構成とすることができる。
【0009】
前記第2溝は、少なくとも前記樹脂構造体が位置する部位の底面が平面である構成とすることができる。
【0010】
前記樹脂構造体は、前記内部導波路と同一の材料である構成とすることができる。
【0011】
前記光ファイバー位置決め体は、前記基板の端部から前記第1溝の方向に向かって、前記光ファイバー位置決め体間の隙間が徐々に狭くなる斜面を有する構成とすることができる。
【0012】
前記光ファイバー位置決め体は、前記第2溝の底面から前記基板の表面に向かって、前記光ファイバー位置決め体間の隙間が徐々に狭くなる斜面を有する構成とすることができる。
【0013】
前記光ファイバー位置決め体は、前記第2溝の底面から前記基板の表面に向かって、前記光ファイバー位置決め体間の隙間が徐々に広くなる斜面を有する構成とすることができる。
【0014】
前記光ファイバー位置決め体間の隙間が、前記光ファイバーのファイバークラッド部の外径よりも狭く設定されている構成とすることができる。
【0015】
前記樹脂構造体における前記光ファイバーと接する面と反対側の面側に空間が形成されている構成とすることができる。
【0016】
前記樹脂構造体に、この樹脂構造体の厚み方向全体を貫通するスリットが形成されている構成とすることができる。
【0017】
前記樹脂構造体に、前記光ファイバーの先端部を当て止める部位が形成されている構成とすることができる。
【0018】
前記第1溝は、断面形状が略台形状であり、前記第1溝の底面は前記内部導波路のコア部よりも幅は広い構成とすることができる。
【0019】
前記基板の表面に、前記第2溝よりも深い第3溝が形成され、前記第3溝には、前記光ファイバーの被覆部が設置されている構成とすることができる。
【0020】
前記基板は、前記基板よりもサイズが大きい別基板に設置され、前記別基板に、前記光ファイバーの前記被覆部が固定されている構成とすることができる。
【0021】
前記基板は、前記基板よりもサイズが大きい別基板に設置され、前記光ファイバーの外周に被覆体が固定されて、前記別基板に、前記被覆体が固定されている構成とすることができる。
【0022】
複数の前記第1溝の各々は、互いに分離して前記基板に配置されている構成とすることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、基板の第1溝にコア部を有する内部導波路を設け、基板の第2溝内に設置した光ファイバーのファイバーコア部を内部導波路のコア部と光学的に接続するようにしている。そして、光素子が発光素子である場合においてミラー部を介して内部導波路のコア部に光信号を出射し、光素子が受光素子である場合においてミラー部を介して内部導波路のコア部からの光信号を受光するようになる。
【0024】
このように、光ファイバーのファイバーコア部の先端とミラー部との間に内部導波路を介在させているから、発光素子から出射された光束、および光ファイバーのファイバーコア部から出射された光束のいずれも広がらない。したがって、光ファイバーのファイバーコア部の先端とミラー部との間の光信号の伝搬ロスがほとんど無くなるため、光結合効率が向上するようになる。
【0025】
また、第2溝内において光ファイバーの両側に設置した、少なくとも一側は樹脂構造体である光ファイバー位置決め体を設けることで、光ファイバーを位置決めすることができる。これにより、光ファイバーのファイバーコア部を内部導波路のコア部と光学的に正確に接続できるようなる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施形態に係る光モジュールの概略側面図である。
【図2】図1の発光側の光モジュールの第1基板であり、(a)は側面断面図、(b)は(a)のI−I線断面図、(c)は(a)のII−II線断面図である。
【図3】発光素子、押さえブロック等を省略した第1基板の平面図である。
【図4】第1基板であり、(a)は斜視図、(b)は内部導波路と樹脂構造体を形成した斜視図、(c)は発光素子を実装した斜視図である。
【図5】第1基板であり、(a)は光ファイバーを設置した斜視図、(b)は押さえブロックを固定した斜視図、(c)は光ファイバーの要部斜視図である。
【図6】(a)はSi異方性エッチングを用いた場合の第1基板の斜視図、(b)はコア部の成形時の断面図である。
【図7】(a)は第1溝と第2溝の境界面が斜面である第1基板の側面断面図、(b)は樹脂構造体の隙間に斜面が位置している第1基板の正面断面図、(c)(d)は樹脂構造体が位置する部位の底面が斜面である場合のパターニングを説明するための第1基板の正面断面図である。
【図8】(a)〜(c)はコア部と樹脂構造体とを同時に形成する工程の説明図である。
【図9】(a)は樹脂構造体の第1変形例の平面図、(b)は樹脂構造体の第2変形例の正面断面図である。
【図10】(a)は樹脂構造体の第3変形例の正面断面図、(b)は樹脂構造体の第4変形例の正面断面図である。
【図11】(a)(b)は樹脂構造体の第5変形例の正面断面図、(c)(d)は樹脂構造体の第5変形例の正面断面図である。
【図12】(a)は比較例の樹脂構造体の正面断面図、(b)は多チャンネルの場合の脂構造体の第5変形例の正面断面図である。
【図13】(a)は樹脂構造体の隙間に気泡が混入した状況を説明するための正面断面図、(b)〜(d)は、樹脂構造体の第6〜8変形例の平面図である。
【図14】(a)は樹脂構造体の第9変形例の平面図、(b)は(a)の側面断面図である。
【図15】(a)は樹脂構造体の第10変形例の正面断面図、(b)(c)は第1基板の斜視図である。
【図16】(a)は内部導波路のコア部の第1変形例の平面図、(b)は(a)の正面断面図、(c)(d)は第1変形例の他の例の平面図である。
【図17】(a)は内部導波路のコア部の第2変形例の平面図、(b)は(a)の正面断面図、(c)(d)は第2変形例の他の例の平面図である。
【図18】第3溝を形成した第1基板の斜視図である。
【図19】第2基板に光ファイバーの被覆部を接着固定した側面断面図である。
【図20】第2基板に光ファイバーの被覆部とファイバークラッド部とを接着固定した側面断面図である。
【図21】第2基板に光ファイバーの被覆部と被覆体とを接着固定した側面断面図である。
【図22】複数本の第1溝を形成した多チャンネル用第1基板であり、(a)は斜視図、(b)は(a)の正面断面図である。
【図23】特許文献1の光モジュールであり、(a)は側面断面図、(b)は正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。図1は本発明に係る光モジュールの概略側面図である。図2は図1の発光側の光モジュールの第1基板1を示す図であり、(a)は側面断面図、(b)は(a)のI−I線断面図、(c)は(a)のII−II線断面図である。図3は内部導波路16のクラッド部18、発光素子12a、押さえブロック24、光学接着剤14等を省略した第1基板1の平面図である。
【0028】
図4(a)〜(c)は第1基板1を示す図であり、(a)は斜視図、(b)は内部導波路と樹脂構造体を形成した斜視図、(c)は発光素子12aを実装した斜視図である。図5は第1基板1を示す図であり、(a)は光ファイバー2を設置した斜視図、(b)は押さえブロック24を固定した斜視図、(c)は光ファイバー2の要部斜視図である。
【0029】
図6(a)はSi異方性エッチングを用いた場合の第1基板1の斜視図、図6(b)はコア部17の成形時の断面図である。
【0030】
図1において、光モジュールは、発光側の基板である第1基板(マウント基板)1と、受光側の基板である第1基板(マウント基板)3と、この第1基板1,3を光学的に結合する光ファイバー2とを備えている。なお、以下の説明においては、図1の上下方向(矢印Yの方向)を上下方向(高さ方向)、紙面と直交する方向を左右方向(幅方向)、図1の左側を前方、右側を後方という。
【0031】
実装時の熱の影響や使用環境による応力の影響を避けるために、第1基板1,3には、剛性が必要である。また、光伝送の場合には、発光素子から受光素子までの光伝送のために所定割合以上の効率が必要になるので、光素子を高精度に実装することや使用中の位置変動を極力抑制する必要がある。このため、第1基板1,3として、本実施形態ではシリコン(Si)基板が採用されている。
【0032】
第1基板1,3がシリコン基板であれば、第1基板1,3は、シリコンの結晶方位を利用して表面に高精度のエッチング溝加工が可能である。この溝を利用して高精度なミラー部15(後述)を形成することが可能である。この溝の内部に内部導波路16(後述)を形成することが可能になる。また、シリコン基板の平坦性は良好である。
【0033】
第1基板1,3は、それよりもサイズが大きい第2基板(別基板、例えば、インタポーザ基板)6の表面(上面)にそれぞれ設置されている。各第2基板6の裏面(下面)には、他の回路装置に電気的に接続するためのコネクタ7がそれぞれ取付けられている。
【0034】
第1基板1の表面(上面)には、電気信号を光信号に変換する発光素子12aが発光面を下向きとしてバンプ12c(図2参照)で実装されている。また、第2基板6の表面には、この発光素子12aに電気信号を送信するためのIC回路が形成されたIC基板(信号処理部)4aが実装されている。
【0035】
発光素子12aとして、本実施形態では、半導体レーザである面発光レーザ〔VCSEL(Vertical Cavity Surface Emitting Laser)〕が採用されている。この発光素子12aはLED等でもよい。
【0036】
IC基板4aは、前記VCSELを駆動するドライバICであり、発光素子12aの近傍に配設されている。そして、発光素子12aおよびIC基板4aは、第1基板1の表面と第2基板6の表面に形成された配線パターンに接続されている。
【0037】
第1基板1の表面には、図4(a)に示すように、断面形状が略台形状の第1溝(導波路形成用溝)1aと、断面形状が略矩形状で、第1溝1aよりも深く、かつ幅が広い第2溝1bが前後方向に連続して形成されている。なお、第2溝1bは、Si異方性エッチングを用いる場合には、第1溝1a側の角部分は図4(a)のような直角ではなく、図6(a)のようなコーナ状の肩となる。
【0038】
第1溝1aの先端部には、発光素子12aの真下となる位置に、光路を90度屈曲させるための光路変換用のミラー部15が形成されている。ミラー部15には、光の反射効率を高めるため金属等の薄膜を設けることが望ましく、例えば通信波長が赤外域の場合では、Au,Al,Ag,Cu等が良好な反射率を有する。さらに、第1基板1の表面に形成された配線パターンと同一材料とすることで、ミラー部15の金属薄膜と配線パターンとを同時形成することも可能である。
【0039】
第1基板1の第1溝1a内には、図2(c)に示すように、第1基板1の発光素子12aと光学的に結合する内部導波路16が設けられている。この内部導波路16は、ミラー部15から第2溝1bの方向に延在している。
【0040】
内部導波路16は、光が伝播する屈折率の高い断面略正方形状のコア部17と、それよりも屈折率の低いクラッド部18とから構成されている。
【0041】
図2(c)のように、コア部17の左右の両面(両側面)は、クラッド部18で覆われている。また、図示されていないが、コア部17の上面も、クラッド部18で薄く覆われている。
【0042】
図4(c)のように、内部導波路16が設けられた第1基板1の表面の所定位置には、発光素子12aが実装されている。この発光素子12aと第1基板1との間の空間には、図2(a)(c)に示されるように、アンダーフィル材(接着性の光学透明樹脂)13が充填されている。
【0043】
図1に戻って、受光側の第1基板3について説明する。この受光側の第1基板3の基本的な構成は、発光側の第1基板1と同様に構成されている。ただし、受光側の第1基板3の表面(上面)に、光信号を電気信号に変換する受光素子12bが受光面を下向きとしてバンプで実装されている。また、第2基板6の表面に、この受光素子12bに電気信号を送信するためのIC回路が形成されたIC基板(信号処理部)4bが実装されている点で、発光側の第1基板1と異なる。この受光素子12bとしては、PDが採用されており、IC基板4bは、電流・電圧の変換を行うTIA(Trans−impedance Amplifier)などの素子である。
【0044】
発光側の第1基板1と受光側の第1基板3およびIC基板4a,4bは、第2基板6の表面に取付けられたシールドケース8によってそれぞれシールドされている。光ファイバー2は、シールドケース8の貫通孔8aを貫通している。
【0045】
次に、光ファイバー2を説明する。光ファイバー2は、図1および図5(c)に示すように、発光側の第1基板1の内部導波路16のコア部17と受光側の第1基板3の内部導波路16のコア部17とを光学的に結合可能なファイバーコア部21を有している。光ファイバー2は、ファイバーコア部21と、このファイバーコア部21の外周を包囲するファイバークラッド部22と、このファイバークラッド部22の外周を被覆する被覆部23とで構成されるコードタイプである。このファイバーコア部21とファイバークラッド部22と被覆部23は、同心状に配置され、これらで構成される光ファイバー2は、円形断面を有する。
【0046】
光ファイバー2は、図1のように、シールドケース8の貫通孔8aを貫通しており、第1基板1の第2溝1bの手前付近で被覆部23が剥がされている。したがって、この剥がされた部分において、ファイバークラッド部22が露出されている。
【0047】
図2(a)(b)および図5(a)(b)のように、第1基板1の第2溝1bの底部には、光ファイバー2のファイバークラッド部22が設置されている。
【0048】
第2溝1b内には、光ファイバー2のファイバークラッド部22の両側に、第2溝1bの左右方向の略全長に亘って延在する、矩形状の光ファイバー位置決め体40が設置されている。本例では、両側の光ファイバー位置決め体40がいずれも樹脂構造体40(A)である。そして、ファイバークラッド部22は、両側の樹脂構造体40(A)の隙間に挟み込まれた状態で、下方向と左右方向が位置決めされている。このときに、第1基板1の内部導波路16のコア部17と光ファイバー2のファイバーコア部21の光軸が一致した位置決め状態で光学的に結合される。
【0049】
第1基板1の上側には、図2(a)および図5(b)のように、光ファイバー2のファイバークラッド部22の上部には押えブロック24が配置されている。この押えブロック24と第2溝1bとの間の空間には、光学接着剤14が充填されている。
【0050】
このように、光ファイバー2のファイバークラッド部22の先端側の部位は、押えブロック24によって第2溝1bに押え付けられた状態となっている。この先端側の部位は、押えブロック24とともに第1基板1に光学接着剤14によって接着固定される。
【0051】
前記のように構成した光モジュールでは、第1基板1の第1溝1aにおいて、コア部17とクラッド部18とからなる内部導波路16が設けられている。また、第1基板1の第2溝1b内に設置された光ファイバー2のファイバーコア部21は、内部導波路16のコア部17と光学的に接続されている。そして、光素子が発光素子12aである発光側の第1基板1では、ミラー部15を介して内部導波路16のコア部17に光信号を出射する。また、光素子が受光素子12bである受光側の第1基板3では、ミラー部15を介して内部導波路16のコア部17からの光信号を受光する。
【0052】
このように、光ファイバー2のファイバーコア部21の先端とミラー部15との間に内部導波路16が介在しているから、発光素子12aから出射された光束、および光ファイバー2のファイバーコア部21から出射された光束のいずれもが広がることがない。したがって、光ファイバー2のファイバーコア部21の先端とミラー部15との間の光信号の伝搬ロスがほとんど無くなるため、光結合効率が向上する。
【0053】
また、第2溝1b内において光ファイバー2の両側に設置した、少なくとも一側は樹脂構造体40(A)である光ファイバー位置決め体40を設けることで、光ファイバー2を位置決めすることができる。これにより、光ファイバー2のファイバーコア部21を内部導波路16のコア部17と光学的に正確に接続できるようなる。
【0054】
さらに、第1溝1aの底面を内部導波路16のコア部17よりも広い幅にすれば、図6(b)のように、コア部17の成形時において、内部導波路16のコア部17をパターニング(光硬化)する際、底面での不要な反射がなくなる。したがって、この場合、高精度なコア形状を得ることができる。
【0055】
図2(a)のように、第1溝1aと第2溝1bの境界面42は、第1基板1の表面に対して略垂直としている。これにより、光ファイバー2のファイバークラッド部22の先端部を内部導波路16の端部に近づけることができるから、内部導波路16と光ファイバー2との距離が近くなるため、光結合効率が向上する。また光ファイバー2の先端部を境界面42に当て止めるだけで、光ファイバー2の光軸方向の位置決めができるので、生産性が向上する。
【0056】
因みに、境界面42が図7(a)のような斜面であると、内部導波路16と光ファイバー2との距離が大きくなる。また、光軸方向に光ファイバー2を挿入すると境界面42である斜面に乗り上げて、光軸ずれが発生するおそれがある。
【0057】
また、図2(b)のように、第2溝1bは、少なくとも樹脂構造体40(A)が位置する部位の底面を平面とすれば、樹脂構造体40(A)をパターニング(光硬化)させる際に、底面が平面であると、パターン精度が向上する。なお、図7(b)のように、樹脂構造体40(A)の隙間に斜面1dが位置してもよい。
【0058】
因みに、図7(c)(d)のように、樹脂構造体40(A)が位置する部位の底面が斜面1dであると、樹脂構造体40(A)をパターニング(光硬化)させる際に、光が斜面1dで反射してパターン精度が低下するおそれがある。
【0059】
さらに、樹脂構造体40(A)は、内部導波路16のコア部17と同一の材料とすることができる。例えば、図8(a)のように、第1基板1に第1溝1aと第2溝1bとを形成した後、図8(b)のように、第1溝1aと第2溝1bにコア部17の材料(ハッチング参照)を充填する。その後、図8(c)のように、パターニングでコア部17と樹脂構造体40(A)とを同時に形成することができる。なお、樹脂構造体40(A)は、内部導波路16のクラッド部18と同一の材料とすることも可能である。
【0060】
このようにすれば、内部導波路16のコア部17と光ファイバー2の位置決め用の樹脂構造体40(A)とを同時に形成できるため、第1基板1の水平方向の光軸ずれを低減することができ、形成工程も減少させることができる。
【0061】
図9(a)のように、樹脂構造体40(A)は、第1基板1の端部から第1溝1aの方向に向かって、樹脂構造体40(A)間の隙間W1が徐々に狭くなる内斜面40aを有してもよい。
【0062】
このようにすれば、樹脂構造体40(A)の内斜面40aが誘い込み構造となる。したがって、両側の樹脂構造体40(A)の隙間に光ファイバー2を挿入する際に、光ファイバー2の位置合わせがラフであっても、内部導波路16のコア部17と正確に光軸合わせができるので、生産性が向上する。
【0063】
図9(b)のように、樹脂構造体40(A)は、第2溝1bの底面から第1基板1の表面に向かって、樹脂構造体40(A)間の隙間W2が徐々に狭くなる内斜面40bを有してもよい。
【0064】
このようにすれば、樹脂構造体40(A)をその弾性で左右方向(矢印a参照)に無理開きしながら、光ファイバー2を上部の隙間から挿入するだけで仮止めされる。したがって、光ファイバー2を光学接着剤14で本接着するまでの位置ずれが発生しにくくなって、作業性が向上する。
【0065】
図10(a)のように、樹脂構造体40(A)は、第2溝1bの底面から第1基板1の表面に向かって、樹脂構造体40(A)間の隙間W2が徐々に広くなる内斜面40cを有してもよい。
【0066】
このようにすれば、樹脂構造体40(A)の内斜面40cが誘い込み構造となる。したがって、両側の樹脂構造体40(A)の隙間に光ファイバー2を挿入する際に、光ファイバー2の位置合わせがラフであっても、内部導波路16のコア部17と正確に光軸合わせができるので、生産性が向上する。なお、内斜面40cの全体が傾斜している必要はなく、図10(b)のように、樹脂構造体40(A)の上部のみが傾斜した内斜面40cであってもよい。
【0067】
図11(a)のように、樹脂構造体40(A)の隙間W3を、光ファイバー2のクラッファイバークラッド部22の外径W4よりも狭く設定してもよい。
【0068】
このようにすれば、図11(b)のように、樹脂構造体40(A)をその弾性で左右方向(矢印a参照)に無理開きしながら、光ファイバー2を上部の隙間から挿入することができる。したがって、光ファイバー2のファイバークラッド部22の外径W4に対して樹脂構造体40(A)の隙間W3をマイナス公差としても、光ファイバー2を設置することができる。また、光ファイバー2は樹脂構造体40(A)の弾性で挟み込まれるので、がたつきがなくなって光軸ずれを低減できる。
【0069】
なお、図11(c)のように、図の左側の樹脂構造体40(A)を図の右側の樹脂構造体40(A)よりも厚くすれば、図11(d)のように、図の右側の薄い樹脂構造体40(A)のみが右方向(矢印a参照)に無理開きする。したがって、図の左側の厚い樹脂構造体40(A)が基準面となるので、光ファイバー2の位置決めが正確になる。
【0070】
図11(a)のように、樹脂構造体40(A)における光ファイバー2と接する面と反対側の面側に空間43を形成してもよい。
【0071】
このようにすれば、空間43を形成することで、図11(b)のように、樹脂構造体40(A)が弾性変形しやすくなって、樹脂構造体40(A)の破損を防ぐことができる。
【0072】
因みに、図12(a)のように空間がないと、樹脂構造体40(A)の塑性変形または破損(符号b参照)を招く可能性がある。その結果、発生したパーティクルが光ファイバー2または内部導波路16の端面に付着することによる光学ロスの増加や、樹脂構造体40(A)の破損した部位に、光学接着樹脂等が充填されずに気泡となり、信頼性を低下させるおそれがある。
【0073】
なお、図12(b)は後述する多チャンネルの例であり、多チャンネルであっても、空間43を形成しておくことが好ましい。
【0074】
図13(a)のように、樹脂構造体40(A)の隙間に光学接着剤14を充填して光ファイバー2を接着した際に、充填時に混入した気泡cが樹脂構造体40(A)の隙間の下部から抜けなくなる。
【0075】
そこで、図13(b)のように、樹脂構造体40(A)に、この樹脂構造体40(A)の厚み(上下)方向全体を貫通するスリット40dを形成する。図13(b)では、短片状の樹脂構造体40(A)を一定の間隔を隔てて並べることでスリット40dを形成している。
【0076】
このようにすれば、スリット40dを形成することで、光ファイバー2を接着剤接着する際に混入した気泡cが上方に抜けやすくなって、接着の信頼性が向上する。
【0077】
なお、スリット40dは、図13(b)のように、樹脂構造体40(A)を櫛歯状にすることで形成でき、あるいは、図13(d)のように、短片状の樹脂構造体40(A)を一定の間隔を隔てて斜め状に並べることでも形成できる。
【0078】
図14(a)(b)のように、樹脂構造体40(A)に、光ファイバー2のファイバークラッド部22の先端部を当て止める鉤状部位40eを形成することができる。
【0079】
このようにすれば、光ファイバー2の光軸方向に対する位置決めができるので、生産性が向上する。
【0080】
前記実施形態では、第2溝1bの左右両側の光ファイバー位置決め体40がいずれも樹脂構造体40(A)であった。これに対して、例えば第2溝1bの左側の樹脂構造体40(A)を省略して、図15(a)〜(c)のように、エッチングで形成できる第1基板1の張り出し部1eを光ファイバー位置決め構造体40として、光ファイバー2を位置決めすることもできる。
【0081】
一方、光素子が発光素子12aである発光側の第1基板1では、図16(a)(b)のように、内部導波路16のコア部17は、下記のように形成することができる。すなわち、ミラー部15から光ファイバー2のファイバーコア部21との接続端部に向かって、両側面17aの幅W5が直線的に徐々に細くなるような斜面状に形成する。また、両側面17aは、図16(c)のような段階的な直線の斜面状、あるいは図16(d)のような曲線の斜面状に形成することもできる。
【0082】
逆に、光素子が受光素子12bである受光側の第1基板3では、図17(a)(b)のように、内部導波路16のコア部17は、下記のように形成することができる。すなわち、光ファイバー2のファイバーコア部21との接続端部からミラー部15に向かって、両側面17aの幅W5が直線的に徐々に細くなるような斜面状に形成する。また、両側面17aは、図17(c)のような段階的な直線の斜面状、あるいは図17(d)のような曲線の斜面状に形成することもできる。
【0083】
このようにすれば、光素子が発光素子12aのときは、内部導波路16のコア部17を先細り(すなわち、前方へ行くにしたがって細くなる形状)とすることによって、発光素子12aから出射された光束が収束される。また、光素子が受光素子12bのときは、内部導波路16のコア部17を後細り(すなわち、後方へ行くにしたがって細くなる形状)とすることによって、光ファイバー2のファイバーコア部21から出射された光束が収束される。したがって、いずれの場合でも光結合効率がより向上するようになる。
【0084】
また、内部導波路16のコア部17の幅は、第1溝1aの上端の幅よりも狭くすることができる。
【0085】
このようにすれば、内部導波路16のコア部17の幅が第1溝1aの上端の幅と同じである場合には、発光素子12aからの光束がコア部17で幅方向に広がって、光束の一部が光ファイバー2のファイバーコア部21に至らないおそれがある。そこで、コア部17の幅を第1溝1aの上端の幅よりも狭く、好ましくは、ファイバーコア部21の幅と略同幅とすることで、光束のほぼ全部を光ファイバー2のファイバーコア部21に至らせることができるので、光結合効率が向上する。
【0086】
さらに、図2(c)のように、第1溝1aは、断面形状が略台形状であり、第1溝1aの底面は内部導波路16のコア部17よりも幅を広くすることができる。
【0087】
このようにすれば、第1溝1aの底面を内部導波路16のコア部17よりも広い幅にしたから、コア部17の成形時に、内部導波路16のコア部17をパターニング(光硬化)する際、底面での不要な反射がなくなるので、高精度なコア形状を得ることができる。
【0088】
因みに、特許文献1に示されるようなV溝であると、光が反射してパターニング精度が著しく低下する懸念がある。
【0089】
図18のように、第1基板1の表面には、第2溝1bに連続して、第2溝1bよりも深い第3溝1cを形成して、第3溝1cに光ファイバー2の被覆部23を設置することが可能である。
【0090】
このようにすれば、光ファイバー2の被覆部23も第1基板1の第3溝1cに設置できるから、ファイバークラッド部22の被覆部23との境界部分に光ファイバー2からの応力が集中するのを防止することができる。
【0091】
ファイバークラッド部22と同様に、被覆部23を第3溝1cに接着剤で接着固定すれば、光ファイバー2の固定強度が向上する。また、モジュール外部から光ファイバー2に曲げ力や引っ張り力が作用しても、内部導波路16との光結合部に影響しないために、光結合効率が低下することがない。
【0092】
なお、第3溝1cの光ファイバー2の被覆部23の両側に、第2溝1bと同様の樹脂構造体40(A)を設置して、光ファイバー2を位置決めすることもできる。
【0093】
また、第1基板1は、第1基板1よりもサイズが大きい第2(別)基板6に設置されている場合には、図19のように、第2基板6の表面に肉盛りされた接着剤20によって、光ファイバー2の被覆部23を第2基板6に固定することが可能である。
【0094】
このようにすれば、光ファイバー2の被覆部23を第2基板6に設置して固定できるから、光ファイバー2の固定強度が向上する。また、モジュール外部から光ファイバー2に曲げ力や引っ張り力が作用しても、内部導波路16との光結合部に影響しないために、光結合効率が低下しなくなる。さらに、光ファイバー2の被覆部23を第1基板1の第3溝1cに設置して固定する構造を併用すれば、より固定強度が向上する。
【0095】
なお、図20のように、第1基板1に第3溝1cが無い場合には、光ファイバー2の被覆部23を第2基板6の上方まで後退させて、第2基板6の表面に肉盛りされた接着剤20によって、光ファイバー2の被覆部23とファイバークラッド部22とを同時に第2基板6に固定することも可能である。
【0096】
図21のように、光ファイバー2の被覆部23にチューブ状の被覆体25が嵌め込まれる場合には、第2基板6に、光ファイバー2の被覆部23と被覆体25とを接着剤20で固定することができる。この被覆体25は、各基板1,6に光ファイバー2を平行状態に維持できる外径に設定されている。なお、被覆体25は、被覆部23の外周を覆うものであれば、被覆部23に嵌め込むものに限らない。
【0097】
被覆部23は、例えばUV硬化性樹脂で形成された厚さ5〜10μm程度の層であり、被覆体25は、例えばPVCやナイロン、または熱可塑性ポリエステルエラストマー〔例えば、ハイトレル(登録商標)〕で形成され、単心では外径が900ミクロン程度のものである。
【0098】
このように構成すれば、被覆体25は、第2基板6に設置され、光ファイバー2の被覆部23とともに第2基板6に固定されることが可能である。それによって、光ファイバー2の固定強度が向上する。また、モジュール外部から光ファイバー2に曲げ力や引っ張り力が作用しても、内部導波路16との光結合部に影響しないために、光結合効率が低下しなくなる。さらに、光ファイバー2の被覆部23を第1基板1の第3溝1cに設置して固定する構造を併用すれば、より固定強度が向上する。加えて、光ファイバー2の自重による撓みを被覆体25の厚みによって抑制することができ、光ファイバー2を各基板1,6に平行状態で固定できる。それによって、光ファイバー2と内部導波路16との光結合部に応力が発生しにくいので、光結合効率が低下しにくくなる。なお、第2基板6に被覆体25のみを接着剤20で固定しても、同様の作用効果を奏することができる。
【0099】
被覆体25は、シールドケース8の貫通孔8aから外部に出る光ファイバー2の被覆部23の曲げに対する保護のために、貫通孔8aの前後部分の被覆部23に嵌め込む短いタイプ(例えば20〜40mm長さ)がある。また、被覆体25は、光ファイバー2の全体の強度保護および難燃対応のために、モジュール間を繋ぐ被覆部23の全長を覆う長いタイプがある。
【0100】
前記実施形態では、1つの第1基板1の表面に第1溝1aおよび第2溝1bがそれぞれ1本ずつ形成された例が示されているが、これに限定されるものではない。すなわち、図22(a)(b)のように、複数本(本例では4本)の第1溝1aを第1基板1の表面に平行に形成して多チャンネル化してもよい。
【0101】
このようにすれば、複数の第1溝1aが互いに第1基板1の材料によって分離された状態で配置されているので、第1溝1aの各々を通る光信号が隣接する第1溝1aへ漏洩(クロストーク)することを抑制することが可能である。
【0102】
また、第2溝1bが互いに樹脂構造体40(A)によって分離された状態で配置されているので、第2溝1bを通る光ファイバー2の光信号が漏洩(クロストーク)することを抑制することが可能である。
【0103】
以上のように、本実施形態の光モジュールは、表面において、少なくとも1本の第1溝と前記第1溝よりも深い第2溝とが連続して形成された基板と、前記基板の第1溝内に設けられた内部導波路と、前記第1溝の先端部に設けられた光路変換用のミラー部と、前記ミラー部と対向するように前記基板の表面に実装され、前記ミラー部を介して前記内部導波路のコア部に光信号を出射し、若しくは前記ミラー部を介して前記内部導波路のコア部からの光信号を受光する光素子と、前記内部導波路のコア部と光学的に接続されるファイバーコア部およびファイバークラッド部を有する光ファイバーと、前記第2溝内において、前記光ファイバーの両側に設置された光ファイバー位置決め体とを備え、前記光ファイバー位置決め体の少なくとも一側は樹脂構造体であることを特徴とするものである。
【0104】
これによれば、基板の第1溝にコア部を有する内部導波路を設け、基板の第2溝内に設置した光ファイバーのファイバーコア部を内部導波路のコア部と光学的に接続するようにしている。そして、光素子が発光素子である場合においてミラー部を介して内部導波路のコア部に光信号を出射し、光素子が受光素子である場合においてミラー部を介して内部導波路のコア部からの光信号を受光するようになる。
【0105】
このように、光ファイバーのファイバーコア部の先端とミラー部との間に内部導波路を介在させているから、発光素子から出射された光束、および光ファイバーのファイバーコア部から出射された光束のいずれも広がらない。したがって、光ファイバーのファイバーコア部の先端とミラー部との間の光信号の伝搬ロスがほとんど無くなるため、光結合効率が向上するようになる。
【0106】
また、第2溝内において光ファイバーの両側に設置した、少なくとも一側は樹脂構造体である光ファイバー位置決め体を設けることで、光ファイバーを位置決めすることができる。これにより、光ファイバーのファイバーコア部を内部導波路のコア部と光学的に正確に接続できるようなる。
【0107】
前記第1溝と前記第2溝の境界面は、前記基板の表面に対して略垂直である構成とすることができる。
【0108】
これによれば、光ファイバーの先端部を内部導波路の端部に近づけることができるから、内部導波路と光ファイバーとの距離が近くなるため、光結合効率が向上する。また光ファイバーの先端部を境界面に当て止めるだけで、光ファイバーの光軸方向の位置決めができるので、生産性が向上する。
【0109】
前記第2溝は、少なくとも前記樹脂構造体が位置する部位の底面が平面である構成とすることができる。
【0110】
これによれば、樹脂構造体をパターニング(光硬化)させる際に、底面が平面であると、パターン精度が向上する。
【0111】
前記樹脂構造体は、前記内部導波路と同一の材料である構成とすることができる。
【0112】
これによれば、内部導波路と光ファイバーの位置決め用の樹脂構造体とを同時に形成できるため、基板の水平方向の光軸ずれを低減することができ、形成工程も減少することができる。
【0113】
前記光ファイバー位置決め体は、前記基板の端部から前記第1溝の方向に向かって、前記光ファイバー位置決め体間の隙間が徐々に狭くなる斜面を有する構成とすることができる。
【0114】
これによれば、光ファイバー位置決め体間の斜面が誘い込み構造となって、両側の光ファイバー位置決め体間の隙間に光ファイバーを挿入する際に、光ファイバーの位置合わせがラフであっても、内部導波路のコア部と正確に光軸合わせができるので、生産性が向上する。
【0115】
前記光ファイバー位置決め体は、前記第2溝の底面から前記基板の表面に向かって、前記光ファイバー位置決め体間の隙間が徐々に狭くなる斜面を有する構成とすることができる。
【0116】
これによれば、光ファイバー位置決め体をその弾性で無理開きしながら、光ファイバーを光ファイバー位置決め体間の上部の隙間から挿入するだけで仮止めされるので、光ファイバーを光学接着剤で本接着するまでの位置ずれが発生しにくくなって、作業性が向上する。
【0117】
前記光ファイバー位置決め体は、前記第2溝の底面から前記基板の表面に向かって、前記光ファイバー位置決め体間の隙間が徐々に広くなる斜面を有する構成とすることができる。
【0118】
これによれば、光ファイバー位置決め体間の斜面が誘い込み構造となって、両側の光ファイバー位置決め体間の隙間に光ファイバーを挿入する際に、光ファイバーの位置合わせがラフであっても、内部導波路のコア部と正確に光軸合わせができるので、生産性が向上する。
【0119】
前記光ファイバー位置決め体間の隙間が、前記光ファイバーのファイバークラッド部の外径よりも狭く設定されている構成とすることができる。
【0120】
これによれば、光ファイバー位置決め体をその弾性で無理開きしながら、光ファイバーを光ファイバー位置決め体間の上部の隙間から挿入することができるから、光ファイバーのファイバークラッド部の外径に対して光ファイバー位置決め体間の隙間をマイナス公差としても、光ファイバーを設置することができる。また、光ファイバーは光ファイバー位置決め体の弾性で挟み込まれるので、がたつきがなくなって光軸ずれを低減できる。
【0121】
前記樹脂構造体における前記光ファイバーと接する面と反対側の面側に空間が形成されている構成とすることができる。
【0122】
これによれば、空間を形成することで、樹脂構造体が弾性変形しやすくなって、樹脂構造体の破損を防ぐことができる。因みに、空間がないと、樹脂構造体の塑性変形または破損を招く可能性がある。結果、発生したパーティクルが光ファイバーまたは光導波路端面に付着することによる光学ロスの増加や、樹脂構造体の破損した部位に、光学接着樹脂が充填されずに気泡となり、信頼性を低下させるおそれがある。
【0123】
前記樹脂構造体に、この樹脂構造体の厚み方向全体を貫通するスリットが形成されている構成とすることができる。
【0124】
これによれば、スリットを形成することで、光ファイバーを光学接着剤で接着した際に混入した気泡が上方に抜けやすくなって、接着の信頼性が向上する。
【0125】
前記樹脂構造体に、前記光ファイバーの先端部を当て止める部位が形成されている構成とすることができる。
【0126】
これによれば、光ファイバーの光軸方向に対する位置決めができるので、生産性が向上する。
【0127】
前記第1溝は、断面形状が略台形状であり、前記第1溝の底面は前記内部導波路のコア部よりも幅は広い構成とすることができる。
【0128】
これによれば、第1溝の底面を内部導波路のコア部よりも広い幅にしたから、コア部の成形時に、内部導波路のコア部をパターニング(光硬化)する際、底面での不要な反射がなくなるので、高精度なコア形状を得ることができる。因みに、特許文献1に示されるようなV溝であると、光が反射してパターニング精度が著しく低下する懸念がある。
【0129】
前記基板の表面に、前記第2溝よりも深い第3溝が形成され、前記第3溝には、前記光ファイバーの被覆部が設置されている構成とすることができる。
【0130】
これによれば、光ファイバーの被覆部も第1基板の第3溝に設置できるから、ファイバークラッド部の被覆部との境界部分に光ファイバーからの応力が集中するのを防止することができる。
【0131】
前記基板は、前記基板よりもサイズが大きい別基板に設置され、前記別基板に、前記光ファイバーの前記被覆部が固定されている構成とすることができる。
【0132】
これによれば、光ファイバーの被覆部を別基板に設置して固定できるから、光ファイバーの固定強度が向上する。また、モジュール外部から光ファイバーに曲げ力や引っ張り力が作用しても、内部導波路との光結合部に影響しないために、光結合効率が低下しなくなる。
【0133】
前記基板は、前記基板よりもサイズが大きい別基板に設置され、前記光ファイバーの外周に被覆体が固定されて、前記別基板に、前記被覆体が固定されている構成とすることができる。
【0134】
これによれば、被覆体を別基板に設置して固定できるから、光ファイバーの固定強度が向上する。また、モジュール外部から光ファイバーに曲げ力や引っ張り力が作用しても、内部導波路との光結合部に影響しないために、光結合効率が低下しなくなる。加えて、光ファイバーの自重による撓みを被覆体の厚みで抑制して、光ファイバーを各基板に平行状態で固定できる。それによって、内部導波路との光結合部に応力が発生しにくいので、光結合効率が低下しにくくなる。
【0135】
複数の前記第1溝の各々は、互いに分離して前記基板に配置されている構成とすることができる。
【0136】
これによれば、複数の第1溝が互いに分離された状態で第1基板に配置されて多チャンネル化されているので、第1溝の各々を通る光信号が漏れて隣接する第1溝を通る光信号へ影響を与える現象、いわゆるクロストークの発生を抑えることが可能である。また、それによって、各々の第1溝における光結合効率が高くなる。
【符号の説明】
【0137】
1 第1基板
1a 第1溝
1b 第2溝
1c 第3溝
2 光ファイバー
6 第2基板(別基板)
12a 発光素子(光素子)
12b 受光素子(光素子)
13 アンダーフィル材
14 光学接着剤
15 ミラー部
16 内部導波路
17 コア部
18 クラッド部
21 ファイバーコア部
22 ファイバークラッド部
23 被覆部
25 被覆体
40 光ファイバー位置決め体
40(A) 樹脂構造体
42 境界面
43 空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面において、少なくとも1本の第1溝と前記第1溝よりも深い第2溝とが連続して形成された基板と、
前記基板の第1溝内に設けられた内部導波路と、
前記第1溝の先端部に設けられた光路変換用のミラー部と、
前記ミラー部と対向するように前記基板の表面に実装され、前記ミラー部を介して前記内部導波路のコア部に光信号を出射し、若しくは前記ミラー部を介して前記内部導波路のコア部からの光信号を受光する光素子と、
前記内部導波路のコア部と光学的に接続されるファイバーコア部およびファイバークラッド部を有する光ファイバーと、
前記第2溝内において、前記光ファイバーの両側に設置された光ファイバー位置決め体とを備え、前記光ファイバー位置決め体の少なくとも一側は樹脂構造体であることを特徴とする光モジュール。
【請求項2】
前記第1溝と前記第2溝の境界面は、前記基板の表面に対して略垂直であることを特徴とする請求項1に記載の光モジュール。
【請求項3】
前記第2溝は、少なくとも前記樹脂構造体が位置する部位の底面が平面であることを特徴とする請求項1または2に記載の光モジュール。
【請求項4】
前記樹脂構造体は、前記内部導波路と同一の材料であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の光モジュール。
【請求項5】
前記光ファイバー位置決め体は、前記基板の端部から前記第1溝の方向に向かって、前記光ファイバー位置決め体間の隙間が徐々に狭くなる斜面を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の光モジュール。
【請求項6】
前記光ファイバー位置決め体は、前記第2溝の底面から前記基板の表面に向かって、前記光ファイバー位置決め体間の隙間が徐々に狭くなる斜面を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の光モジュール。
【請求項7】
前記光ファイバー位置決め体は、前記第2溝の底面から前記基板の表面に向かって、前記光ファイバー位置決め体間の隙間が徐々に広くなる斜面を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の光モジュール。
【請求項8】
前記光ファイバー位置決め体間の隙間が、前記光ファイバーのファイバークラッド部の外径よりも狭く設定されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の光モジュール。
【請求項9】
前記樹脂構造体における前記光ファイバーと接する面と反対側の面側に空間が形成されていることを特徴とする請求項8に記載の光モジュール。
【請求項10】
前記樹脂構造体に、この樹脂構造体の厚み方向全体を貫通するスリットが形成されていることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の光モジュール。
【請求項11】
前記樹脂構造体に、前記光ファイバーの先端部を当て止める部位が形成されていることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の光モジュール。
【請求項12】
前記第1溝は、断面形状が略台形状であり、前記第1溝の底面は前記内部導波路のコア部よりも幅は広いことを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載の光モジュール。
【請求項13】
前記基板の表面に、前記第2溝よりも深い第3溝が形成され、前記第3溝には、前記光ファイバーの被覆部が設置されていることを特徴とする請求項1〜12のいずれか一項に記載の光モジュール。
【請求項14】
前記基板は、前記基板よりもサイズが大きい別基板に設置され、前記別基板に、前記光ファイバーの前記被覆部が固定されていることを特徴とする請求項1〜13のいずれか一項に記載の光モジュール。
【請求項15】
前記基板は、前記基板よりもサイズが大きい別基板に設置され、前記光ファイバーの外周に被覆体が固定されて、前記別基板に、前記被覆体が固定されていることを特徴とする請求項1〜13のいずれか一項に記載の光モジュール。
【請求項16】
複数の前記第1溝の各々は、互いに分離して前記基板に配置されていることを特徴とする請求項1〜15のいずれか一項に記載の光モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2013−57721(P2013−57721A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−194767(P2011−194767)
【出願日】平成23年9月7日(2011.9.7)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】