説明

光ロータリージョイント及び回転体の歪み計測装置

【課題】特に高速回転する回転側と固定側との間で非接触で光信号の授受を好適に行えるようにする。
【解決手段】光ロータリージョイント17の静圧軸受で構成される軸受ユニット17aは、固定側の光ファイバ15の端部15bを保持するハウジング17bと、回転側の光ファイバ19の一方の端部19aを中心に埋設した回転体5の回転軸5bを軸受する空気軸受部17cとを有する。空気軸受部17cは、両端部19a,15bの中心軸(コア19c,15cの中心軸)が一致するように、回転側の光ファイバ19の端部19aを軸受、調芯する。回転側と固定側の両光ファイバ19、15の端部19a,15bには、TECファイバ化によりコリメート部15f,19fが形成されている。コリメート部15f,19fは各光ファイバ19、15の端部19a,15bからの出射光を拡散光からコリメート光(ほぼ平行光)に変換する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転側と固定側との間で非接触で光信号を授受する光ロータリージョイントとこれを用いた回転体の歪み計測装置とに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、回転体の表面に生じた歪みを計測するには、回転体の表面に歪み検出用のセンサを配置し、そのセンサ出力を計測ユニット側に取り込む必要がある。その場合、回転体を含む回転側と計測ユニットを含む固定側との間で信号の授受を行う構成が欠かせない。
【0003】
回転側と固定側との間で信号の授受を行うものとしては、双方の接点どうしが機械的に接触するスリップリングが知られている。しかし、スリップリングは、両接点どうしの摺動により発生するノイズ等の影響があるので、高速通信には不向きである。その点、光ロータリージョイントは、機械的な接点どうしの接触を伴わないので、有効な信号伝送手段であると言える。
【0004】
光ロータリージョイントでは、回転側の光ファイバと固定側の光ファイバとの間で光信号を授受するので、両光ファイバの端面どうしを接触させて伝送損失を極力減らすことが考えられる。しかし、そうすると、接触面(端面)の摩耗により通信不能となり装置の寿命が短くなってしまう。そこで、両光ファイバの端面を間隔をおいて配置し、その間隔を光学オイルで満たすことが提案された(例えば、特許文献1)。
【0005】
しかし、回転側の回転により光学オイルが温度膨張を起こしたり、光学オイル中に気泡が発生したりして、伝送損失が増加するという問題がある。そこで、両光ファイバの端部に、コア径よりも内径が大きく内面が鏡面加工された管状光伝送路をそれぞれ光接続することで、光信号の授受を行う光伝送面を光ファイバの端面よりも実質的に拡大することが提案された(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭63−267902号公報
【特許文献2】特開2009−169053号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、管状光伝送路を光ファイバの端部に光接続する従来技術は、光伝送面を光ファイバの端面よりも実質的に拡大するもので、回転側と固定側との光ファイバの軸ずれ(光ファイバの径方向への光軸ずれ)やずれ角(光ファイバの光軸どうしが交差する角度)を抑制するものではない。しかも、管状光伝送路の開口から外部に出射する光は、光ファイバの端面から出射する光と同じく拡散光であり、光ファイバの軸ずれやずれ角が増えれば、伝送損失が増大することは避けられない。
【0008】
現在商品化されている光ロータリージョイントの最高対応回転数は10000回転(rpm)と言われているが、さらに高速回転の環境下で光ロータリージョイントを用いることが想定される場合は、伝送損失を抑制するための新たな工夫が欠かせない。
【0009】
本発明は前記事情に鑑みなされたもので、本発明の目的は、特に高速回転する回転側と固定側との間で非接触で光信号の授受を好適に行うことができる光ロータリージョイントと回転体の歪み計測装置とを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、請求項1に記載した本発明の光ロータリージョイントは、
コアの中心軸の周りに回転する回転側の光ファイバと固定側の光ファイバとの間で非接触で光信号を授受する光ロータリージョイントにおいて、
前記回転側及び前記固定側の各光ファイバの端部にそれぞれ設けられ、相手側の光ファイバに向けた出射光をコリメート光に変換するコリメート部と、
前記回転側の光ファイバを軸受する軸受ユニットと、
を備えることを特徴とする。
【0011】
請求項1に記載した本発明の光ロータリージョイントによれば、回転側と固定側の各光ファイバから相手側の光ファイバに向けて出射される光が、それぞれの光ファイバの端部に設けられたコリメート部によりコリメート光(平行光)に変換される。したがって、各光ファイバから相手側の光ファイバに出射される光が拡散光である場合に比べて、両光ファイバの中心軸の軸ずれ(光ファイバの径方向への光軸ずれ)の増加による伝送損失の拡大を抑制することができる。
【0012】
また、回転側の光ファイバを軸受ユニットにより軸受することで、回転側の回転に伴う固定側の光ファイバの軸に対する回転側の光ファイバの中心軸の軸ずれやずれ角(光ファイバの中心軸どうしが交差する角度)の度合いが抑制される。
【0013】
これらが相乗的に働くことによって、回転側の回転に伴う軸ずれやずれ角に起因する、回転側と固定側との両光ファイバ間における光信号の伝送損失を、低く抑えることができる。これにより、特に高速回転する回転側と固定側との間で、双方の光ファイバ間における光信号の授受を非接触かつ低損失で行うことができる。
【0014】
また、請求項2に記載した本発明の光ロータリージョイントは、請求項1に記載した本発明の光ロータリージョイントにおいて、前記各光ファイバがそれぞれ、モードフィールド径を端部において局所的に拡大したTEC(Thermal Expanded Core)ファイバであることを特徴とする。
【0015】
請求項2に記載した本発明の光ロータリージョイントによれば、請求項1に記載した本発明の光ロータリージョイントにおいて、各光ファイバとして用いるTEC(Thermal Expanded Core)ファイバでは、端部のモードフィールド径が局所的に拡大されてコリメート部を構成することになる。そして、TECファイバのモードフィールド径が拡大された端部を導光されることで、回転側と固定側の各光ファイバから相手側の光ファイバに出射される光はコリメート光となる。
【0016】
したがって、光ファイバとは別の光デバイス(例えばコリメータレンズ)を用いてコリメート部を構成するのに比べて、単一の光デバイス(光ファイバ)により、直進性が高いコリメート光に少ない伝送損失で変換することができる。
【0017】
さらに、請求項3に記載した本発明の光ロータリージョイントは、請求項1又は2に記載した本発明の光ロータリージョイントにおいて、前記軸受ユニットが静圧軸受であることを特徴とする。
【0018】
請求項3に記載した本発明の光ロータリージョイントによれば、請求項1又は2に記載した本発明の光ロータリージョイントにおいて、静圧軸受を軸受ユニットに用いることで、回転側が高速回転する場合の固定側の光ファイバの中心軸に対する回転側の光ファイバの中心軸の軸ずれやずれ角が、他の方式の軸受を軸受ユニットに用いるよりも抑制される。
【0019】
したがって、回転側及び固定側の各光ファイバのコリメート部によるコリメート光への変換精度の許容範囲を拡げても、回転側及び固定側の各光ファイバ間における光信号の伝送損失を、必要な程度に抑えることができる。これにより、コリメート部を構成するデバイスの選択幅を拡げることができる。
【0020】
また、上記目的を達成するため、請求項4に記載した本発明の回転体の歪み計測装置は、
請求項1、2又は3記載の光ロータリージョイントを備え、
前記光ロータリージョイントの回転側の光ファイバの特定箇所には、特定波長の光の一部を反射するファイバブラッググレーティングが形成されており、
前記回転側の光ファイバの特定箇所の周面が、該回転側の光ファイバのコアの中心軸の周りに回転する歪み計測対象の回転体に取り付けられており、
前記光ロータリージョイントを介して前記回転側の光ファイバの端部から前記固定側の光ファイバの端部に伝送される光信号の波長と前記特定波長とに基づいて、前記回転体における歪みを計測する、
ことを特徴とする。
【0021】
請求項4に記載した本発明の回転体の歪み計測装置によれば、回転側の光ファイバの特定箇所に形成したファイバブラッググレーティングにおいて一部反射する光の波長は、特定箇所を取り付けた歪み計測対象の回転体の表面が歪むと特定波長からシフトする。したがって、ファイバブラッググレーティングからの反射光の波長を、光ロータリージョイントを介して回転側の光ファイバの端部から固定側の光ファイバの端部に伝送される光信号の波長から特定し、これを特定波長と比較照合することで、計測対象の回転体の表面に生じた歪みを計測できる。
【0022】
また、請求項1、2又は3記載の光ロータリージョイントを用いることで、回転側の回転で生じた回転側と固定側との光ファイバどうしの軸ずれやずれ角に起因する光信号の伝送損失を、低く抑えることができる。
【0023】
したがって、高速回転する回転体が歪み計測対象である歪み計測装置であっても、回転側と固定側との間で、双方の光ファイバ間における光信号の授受を非接触かつ低損失で行い、歪み計測を正確に行うことができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、高速回転する回転側と固定側との間で、双方の光ファイバ間における光信号の授受を非接触かつ低損失で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態に係る回転体の歪み計測装置の概略構成を示す説明図である。
【図2】(a)は図1の回転体の周面に取り付けられる回転側の光ファイバに形成されるファイバブラッググレーティングを模式的に示す説明図、(b)は(a)のファイバブラッググレーティングに対する入射光及び透過光の波長と強度との関係を示すグラフ、(c)は(a)のファイバブラッググレーティングからの反射光の波長(ブラッグ波長)と強度との関係を示すグラフである。
【図3】本発明の一実施形態に係る図1の光ロータリージョイントの概略構成を示す説明図である。
【図4】図3の回転側と固定側とに一般的な光ファイバを用いた場合を示し、(a)はコア径(モードフィールド径)の説明図、(b)は光ファイバから出射される光の光束の説明図である。
【図5】図3の回転側と固定側とにTEC(Thermal Expanded Core)ファイバを用いた場合を示し、(a)はコア径(モードフィールド径)の説明図、(b)は光ファイバから出射される光の光束の説明図である。
【図6】(a)〜(d)は図3の回転側と固定側との光ファイバどうしによる光信号の伝送損失に影響する因子を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0027】
図1は本発明の一実施形態に係る回転体の歪み計測装置の概略構成を示す説明図である。図1に示す本実施形態の回転体の歪み計測装置(以下、「歪み計測装置」と略記する。)1は、駆動用モータ3により回転駆動される回転体5の周面5aの歪みを非接触で光により計測するものである。
【0028】
そして、歪み計測装置1は、光源11、光サーキュレータ13、固定側の光ファイバ15、光ロータリージョイント17、回転側の光ファイバ19、計測器21、及び、解析装置23を有している。
【0029】
このうち、回転側の光ファイバ19を除く光源11、光サーキュレータ13、固定側の光ファイバ15、計測器21、及び、解析装置23は、回転体5から分離して固定配置されている。一方、回転側の光ファイバ19は、回転体5に配置されて回転するように構成されている。
【0030】
詳しくは、回転側の光ファイバ19のうち一方の端部19aは、回転体5の回転軸5bに埋設されている。一方の端部19a側の中心軸、即ち、図2(a)に示す回転側の光ファイバ19のコア19cの中心軸は、図1に示す回転体5の回転軸5bの回転中心軸上に位置している。一方の端部19aの端面は回転軸5bの端面から外側に露出している。また、回転側の光ファイバ19はその途中から回転体5の外部に延出し、回転側の光ファイバ19のうち他方の端部19bの周面は、回転体5の周面5aに取付固定されている。
【0031】
図2(a)の説明図に示すように、他方の端部19bのコア19cには、特定波長の光の一部を反射するファイバブラッググレーティング(FBG:Fiber Bragg Grating)19dが形成されている。図2(a)中19eは回転側の光ファイバ19のクラッドを示す。
【0032】
FBG19dは、コア19cに格子間隔Λで形成した屈折率neの複数の格子部を有している。FBG19dは、一方の端部19aから他方の端部19bに向けてコア19cを透過する光のうち、ブラッグ波長λB(=2neΛ)の光を一方の端部19a側に反射させ、それ以外の波長の光を透過させる。本実施形態のFBG19dのブラッグ波長λBは、他方の端部19bに曲げ、撓みの変形がない状態で、図2(b),(c)のグラフに示すように、1550nmである。なお、実際の計測では1550nmの他にも数種の波長帯を使用した。即ち、1550nmは一例であり、計測波長は1550nmに限定されない。
【0033】
図1に示す光源11は、回転体5の周面5aの歪みを計測するための光を出力する。この光は光ファイバ12により光サーキュレータ13の第1のポートに入力され、第2のポートから固定側の光ファイバ15の一方の端部15aの端面に向けて出力される。
【0034】
固定側の光ファイバ15の他方の端部15bは、回転側の光ファイバ19の一方の端部19aと共に、光ロータリージョイント17の一部を構成している。この光ロータリージョイント17は、図3の説明図に示すように、軸受ユニット17aを有している。本実施形態では、この軸受ユニット17aを静圧軸受(空気軸受)によって構成している。
【0035】
軸受ユニット17aは、固定側の光ファイバ15の他方の端部15bを保持するハウジング17bと、このハウジング17bの内部に形成された空気軸受部17cとを有している。空気軸受部17cは、回転体5の回転軸5bを高圧空気によって非接触で軸受する。この軸受により、回転側の光ファイバ19の一方の端部19aの端面と、固定側の光ファイバ15の他方の端部15bの端面とが、向かい合わせに対向配置される。そして、空気軸受部17cの軸受により、回転側の光ファイバ19の一方の端部19aの中心軸(コア19cの中心軸)が、固定側の光ファイバ15の他方の端部15bの中心軸(図5(a)に示すコア15cの中心軸)と一致するように、回転側の光ファイバ19の一方の端部19aが調芯される。
【0036】
固定側の光ファイバ15の他方の端部15bと回転側の光ファイバ19の一方の端部19aとは、熱拡散技術を用いてモードフィールド径(コア15c,19cの径)を局所的に拡大させたTEC(Thermal Expanded Core)ファイバで構成している。固定側の光ファイバ15の他方の端部15bと回転側の光ファイバ19の一方の端部19aとをTECファイバ化することで、図4(a)の説明図に示す一般的なシングルモード(SM)ファイバの10μmから、図5(a)の説明図に示す30μm(最大)まで、各端部15b,19aのコア15c,19cの径を拡大させることができる。なお、図4(a)及び図5(a)中15eは固定側の光ファイバ15のクラッドを示す。
【0037】
このTECファイバ化により各端部15b,19aは、拡散光をコリメート光に変換するコリメート部15f,19fを一体に有することになる。したがって、各端部15b,19aをTECファイバ化すると、相手側の端部19a,15bに向けて出射される光は、図4(b)の説明図に示す一般的なシングルモードファイバ(SMF)のような拡散光から、図5(b)の説明図に示すほぼ平行光(コリメート光)に、コリメート部15f,19fによって変換される。
【0038】
光ロータリージョイント17中の、固定側の光ファイバ15の他方の端部15bと回転側の光ファイバ19の一方の端部19aとの間における光信号の伝送損失には、図6(a)〜(d)の各説明図に示すように、両端部15b,19a間のギャップ(間隔)S、中心軸(コア軸)の軸ずれLの大きさ、中心軸(コア軸)どうしのずれ角θの大きさ、及び、TECファイバ化した各端部15b,19aのコア15c,19cの径Dが、影響を及ぼすことになる。
【0039】
このうち、図6(a)に示す両端部15b,19a間のギャップ(間隔)Sは、相対的に短い方が伝送損失を抑えることができる。このギャップSに関しては、各端部15b,19aの出射光をコリメート部15f,19fがコリメート光に変換して相手側の端部19a,15bに届く光の強度を高めるので、許容範囲をある程度拡げることができる。
【0040】
また、図6(d)に示すTECファイバ化した各端部15b,19aのコア15c,19cの径Dは、各端部15b,19aのコリメート部15f,19fによるコリメート変換の特性を変化させる。コリメート部15f,19fのコリメート変換特性が変わると、両端部15b,19a間における光信号の伝送損失を目標値以内に抑えるための、図6(b),(c)に示す両端部15b,19aの中心軸(コア軸)の軸ずれLの大きさ、及び、中心軸(コア軸)どうしのずれ角θの大きさに関する各許容範囲が変わる。
【0041】
そこで、TECファイバ化した各端部15b,19aのコア15c,19cの径Dに応じて定まる中心軸(コア軸)の軸ずれLや中心軸(コア軸)どうしのずれ角θの許容範囲が、それぞれ適切な範囲となるように、TECファイバ化した各端部15b,19aのコア15c,19cの径Dを、適切な大きさに設定することが肝要である。
【0042】
具体的には、所望の回転数(例えば、20000〜30000rpm)で回転している回転体5の回転軸5bを軸受ユニット17aの空気軸受部17cで軸受したときの、中心軸(コア軸)の軸ずれLの大きさや、中心軸(コア軸)どうしのずれ角θの大きさを、それぞれ含むような許容範囲に設定されるように、TECファイバ化した各端部15b,19aのコア15c,19cの径Dを設定することが肝要である。
【0043】
これと共に、あるいは、これに代えて、所望の回転数(例えば、20000〜30000rpm)で回転している回転体5の回転軸5bを軸受ユニット17aの空気軸受部17cで軸受したときの、中心軸(コア軸)の軸ずれLの大きさや、中心軸(コア軸)どうしのずれ角θの大きさが、それぞれ適切な値となるように、適切な調芯性能の軸受ユニット17aを選択して使用することが肝要である。
【0044】
具体的には、所望の回転数(例えば、20000〜30000rpm)で回転している回転体5の回転軸5bを軸受ユニット17aの空気軸受部17cで軸受したときの、中心軸(コア軸)の軸ずれLの大きさや、中心軸(コア軸)どうしのずれ角θの大きさが、TECファイバ化した各端部15b,19aのコア15c,19cの径Dに応じて定まるそれぞれの許容範囲内の値となるように、軸受ユニット17aの調芯性能を選択することが肝要である。
【0045】
このように構成された光ロータリージョイント17では、光サーキュレータ13の第2のポートから固定側の光ファイバ15の一方の端部15aの端面に入射された光が、固定側の光ファイバ15の他方の端部15bから回転側の光ファイバ19の一方の他方の端部19aに伝送される。また、回転側の光ファイバ19の他方の端部19bに形成されたFBG19dからの反射光が、回転側の光ファイバ19の一方の他方の端部19aから固定側の光ファイバ15の他方の端部15bに伝送される。
【0046】
固定側の光ファイバ15の他方の端部15bに入射された反射光は、固定側の光ファイバ15の一方の端部15aの端面から図1に示す光サーキュレータ13の第2のポートに入力される。入力された反射光は、光サーキュレータ13の第3のポートから出力され、光ファイバ20により計測器21に入力される。
【0047】
計測器21は、入力されたFBG19dからの反射光の波長を検出し、検出した反射光の波長と、回転側の光ファイバ19の他方の端部19bに曲げ、撓みの変形がない状態におけるFBG19dのブラッグ波長λBとの波長差から、解析装置23が回転体の周面5aの歪みを計測する。
【0048】
以上に説明した構成の本実施形態の歪み計測装置1によれば、光ロータリージョイント17において、回転側と固定側の各光ファイバ19,15から相手側の光ファイバ15,19に向けて出射される光が、それぞれの光ファイバ19,15の端部19a,15bに設けられたコリメート部19f,15fにより、図5(b)に示すようなコリメート光(ほぼ平行光)に変換される。
【0049】
したがって、各光ファイバ19,15から相手側の光ファイバ15,19に出射される光が拡散光である場合に比べて、両光ファイバ19,15のコア19c,15cの軸ずれ(光ファイバ19,15の径方向への光軸ずれ)の増加による伝送損失の拡大を抑制することができる。
【0050】
また、回転側の光ファイバ19を軸受ユニット17aの空気軸受部17cにより軸受することで、回転側(回転体5)の回転に伴う固定側の光ファイバ15のコア15cの中心軸に対する回転側の光ファイバ19のコア19cの中心軸の軸ずれやずれ角(光ファイバの光軸どうしが交差する角度)の度合いが抑制される。
【0051】
これらが相乗的に働くことによって、回転側(回転体5)の回転に伴う回転側と固定側の両光ファイバ19,15のコア19c,15cの軸ずれやずれ角に起因する、回転側と固定側との両光ファイバ19,15間における光信号の伝送損失を、低く抑えることができる。これにより、特に高速回転する回転側(回転体5)と固定側との間で、双方の光ファイバ19,15間における光信号の授受を非接触かつ低損失で行うことができる。
【0052】
また、各光ファイバ19,15の特に端部19a,15bの部分は、TECファイバ化されることにより、モードフィールド径(コア19c,15cの径)が局所的に拡大されてコリメート部19f,15fを構成することになる。したがって、光ファイバ19,15とは別の光デバイス(例えばコリメータレンズ)を用いてコリメート部19f,15fを構成するのに比べて、単一の光デバイス(光ファイバ19,15)により直進性が高いコリメート光に少ない伝送損失で変換することができる。
【0053】
なお、本実施形態では静圧軸受を用いて構成した軸受ユニット17aを、他の方式の軸受を用いて構成してもよい。但し、静圧軸受の方が他の方式の軸受よりも、回転側(回転体5)が高速回転する場合の固定側の光ファイバ15のコア15cの中心軸に対する回転側の光ファイバ19のコア19cの中心軸の軸ずれやずれ角を、他の方式の軸受を軸受ユニットに用いるより抑制することができる。
【0054】
したがって、回転側及び固定側の各光ファイバ19,15のコリメート部19f,15fによるコリメート光への変換精度の許容範囲を拡げても、回転側及び固定側の各光ファイバ19,15間における光信号の伝送損失を、必要な程度に抑えることができる。これにより、コリメート部19f,15fを構成するデバイスの選択幅を拡げることができる。
【0055】
また、本実施形態では、光ロータリージョイント17を回転体5の周面5aの歪みを計測する歪み計測装置1に適用した場合を例に取って説明した。しかし、本発明の光ロータリージョイントは、回転体の歪みを計測する歪み計測装置に限らず、高速回転(例えば20000rpm以上)する回転側の光ファイバと固定側の光ファイバとの間で非接触で光信号の授受を行う場合に、広く適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、高速回転(例えば20000rpm以上)する回転側の光ファイバと固定側の光ファイバとの間で非接触で光信号の授受を行う場合に用いて好適である。
【符号の説明】
【0057】
1 計測装置
3 駆動用モータ
5 回転体
5a 周面
5b 回転軸
11 光源
12 光ファイバ
13 光サーキュレータ
15 固定側の光ファイバ
15a 一方の端部
15b 他方の端部
15c コア
15f コリメート部
17 光ロータリージョイント
17a 軸受ユニット
17b ハウジング
17c 空気軸受部
19 回転側の光ファイバ
19a 一方の端部
19b 他方の端部
19c コア
19d ファイバブラッググレーティング
19e クラッド
19f コリメート部
20 光ファイバ
21 計測器
23 解析装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアの中心軸の周りに回転する回転側の光ファイバと固定側の光ファイバとの間で非接触で光信号を授受する光ロータリージョイントにおいて、
前記回転側及び前記固定側の各光ファイバの端部にそれぞれ設けられ、相手側の光ファイバに向けた出射光をコリメート光に変換するコリメート部と、
前記回転側の光ファイバを軸受する軸受ユニットと、
を備えることを特徴とする光ロータリージョイント。
【請求項2】
前記各光ファイバはそれぞれ、モードフィールド径を端部において局所的に拡大したTEC(Thermal Expanded Core)ファイバであることを特徴とする請求項1記載の光ロータリージョイント。
【請求項3】
前記軸受ユニットは静圧軸受であることを特徴とする請求項1又は2記載の光ロータリージョイント。
【請求項4】
請求項1、2又は3記載の光ロータリージョイントを備え、
前記光ロータリージョイントの回転側の光ファイバの特定箇所には、特定波長の光の一部を反射するファイバブラッググレーティングが形成されており、
前記回転側の光ファイバの特定箇所の周面が、該回転側の光ファイバのコアの中心軸の周りに回転する歪み計測対象の回転体に取り付けられており、
前記光ロータリージョイントを介して前記回転側の光ファイバの端部から前記固定側の光ファイバの端部に伝送される光信号の波長と前記特定波長とに基づいて、前記回転体における歪みを計測する、
ことを特徴とする回転体の歪み計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−230193(P2012−230193A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−97525(P2011−97525)
【出願日】平成23年4月25日(2011.4.25)
【出願人】(391006234)一般社団法人日本航空宇宙工業会 (45)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】