説明

光伝送システム、光伝送装置およびトラフィック制御方法

【課題】電気バッファの利用効率を優先し、最大トラフィック量以下に合わせて電気バッファを設計しても、できるだけバッファ溢れを回避し、信号の損失を発生させない。
【解決手段】X台目の光伝送装置X0内の判定制御回路X104は、電気バッファX102の空き状況を監視し、電気バッファX102の空き状況がある閾値以下の時には、X−1台目の光伝送装置に対し、X−2台目の光伝送装置から送信されてくる光信号のうちX台目宛の光信号を一度電気信号に変換し電気バッファX102に蓄えてから送信する指示情報を送信し、電気バッファX102の空き状況がある閾値より大きい時には、X−1台目の光伝送装置に対し、X−2台目の光伝送装置から送信されてくる光信号のうちX台目宛の光信号を電気信号に変換せず電気バッファX102に蓄えることなく送信する指示情報を送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光信号のまま伝送する機能と、光信号を電気信号に変換した後に再度光信号に変換して伝送する機能を有する光伝送システムおよび光伝送装置における、トラフィック変動によるバッファ溢れを回避することを可能とする光伝送システム、光伝送装置およびトラフィック制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インターネットにおけるトラフィック量の増大に伴い、中継網の伝送装置にて生じるルーティングなどの電気処理による伝送遅延の回避、伝送装置処理部の規模縮小化等に向け、OEO(Optical- Electrical-Optical)変換を行わないフォトニックネットワークの研究が活発に行われている(非特許文献1参照)。しかし、光パケットスイッチング技術を用いたフォトニックネットワークでは、光バッファの実現が難しいことから、将来のネットワークにおいては、全てがフォトニックネットワークに置き換わっていくのではなく、電気処理をベースとした既存ネットワークと、これらフォトニックネットワークが共存するネットワーク構成になるものと考えられる。
【0003】
以上のような背景をもとに、非特許文献2では、光処理と電気処理両方の機能を合わせもつネットワークの提案がなされている。非特許文献2をもとにしたシステム構成例を図4に示す。図4の光伝送システムは、N台の光伝送装置19〜N9が一列に接続される構成で、光伝送装置X9(Xは1〜Nの整数)は、下流からの光信号を分岐する光スプリッタX900と、分岐した光信号を受信する光受信器X901と、光受信器X901からの電気信号を蓄える電気バッファX902と、電気バッファX902とは異なる抽出電気バッファX903と、電気バッファX902からの電気信号を読み出す判定制御回路X904と、光スプリッタX900で分岐した光信号を透過する光遅延線X905と、光遅延線X905からの光信号を光再生する半導体光増幅器X906で構成される。
【0004】
ここで光受信器X901は、光伝送装置(X−1)9からの光信号を受信した後、受信した信号のヘッダ情報を判定制御回路X904に送信し、判定制御回路X904は、受信したヘッダ情報をもとに、光伝送装置(X−1)9からの光信号を電気バッファX902から抽出して抽出電気バッファX903に送信するか、あるいは半導体光増幅器X906で光再生するかの判定を行う。光遅延線X905は、光受信器X901による信号受信処理と判定制御回路X904における信号判定処理に要する時間相当の光遅延線であり、判定制御回路X904は、光受信器X901からの光信号をもとにクロック信号を生成する機能を有し、クロック信号、設計された光遅延線X905の距離、光受信器X901による信号受信処理、判定制御回路X904における信号判定処理に要する時間を考慮し、光遅延線X905を透過した光信号が半導体光増幅器X906を通過するタイミングと、半導体光増幅器X906の制御タイミングを一致させる。
【0005】
判定制御回路における判定処理方法としては、非特許文献2に記載のサービス種別に応じた判定が挙げられる。すなわち受信したヘッダ情報にもとづき、抽出すべきサービスの信号のときは、抽出電気バッファに信号を送信し、半導体光増幅器では光再生を行わず、抽出サービス以外の信号のときには、抽出電気バッファに信号を送信せず、半導体光増幅器で光再生を行う。このように構成し制御することにより、該当サービス以外の信号は、電気信号に変換することなく光信号のまま伝送することが可能となるため、電気処理による伝送遅延特性の劣化を防ぐことができる。
【0006】
しかしながら、このように構成し制御を行う場合、各光伝送装置における電気バッファは、各光伝送装置にて抽出するサービスの信号の最大トラフィック量に合わせて設計しなければならないという課題が生じる。図5に伝送される信号のトラフィック変動例を示す。図5において、光信号は時間によってそのトラフィック量が変動するため、抽出する信号の品質に信号損失等の影響を与えないためには、電気バッファをトラフィック量の最大値(図5のA)に合わせて設計しなければならない。そのため、トラフィック量が少ない場合には、その電気バッファは利用されないため、利用効率は悪くなってしまう。その反対に、電気バッファの利用効率を優先し、あるトラフィック量(図5のB)に合わせて設計すると、それ以上のトラフィックが伝送されてきた場合(図5の斜線部分)には、バッファ溢れとなり、信号損失が発生してしまう。
【0007】
前述のバッファ溢れとなってしまう様子を図6に示す。光伝送装置(X−2)9から伝送されてくる光信号A1〜A4は、光伝送装置X9で電気信号に変換される抽出信号であり、光伝送装置(X−1)9では、光信号のまま伝送される。光伝送装置X9に到着した光信号A1〜A4は、光受信器X901で電気信号に変換された後、電気バッファX902に蓄えられる。ここで、電気バッファX902のバッファサイズを、あるトラフィック量に合わせて設計しておくと、そのトラフィック量以上の信号(A4)が到着した場合には、バッファ溢れが生じてしまうこととなる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】S.J.Ben Yoo, “Optical Packet and Burst Switching Technologies for the Future Photonic Internet,” Journal Lightwave Technology, Vol.24, No.12, pp.4468-4492, December 2006.
【非特許文献2】島田達也他、“SOA多段接続型アクセスネットワークの検討”、2009年信ソ大 B−10−29.
【非特許文献3】Satoshi Narikawa, “Gbit-Class Transmission Using SOA Data Rewriter for WDM-PON,” IEICE TRANS COMMUN., Vol.E91-B, No.2, pp.399-408, February 2008.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、以上のような背景で行われたものであり、電気バッファの利用効率を優先し、最大トラフィック量以下に合わせて電気バッファを設計しても、できるだけバッファ溢れを回避し、信号の損失を発生させないことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明は、該当する光伝送装置の下流に接続される他の光伝送装置の電気バッファを有効に利用する機能をもたせたことである。
【0011】
すなわち、本発明は、複数台の光伝送装置が一列に接続され、下流から上流に信号が伝送される光伝送システムであって、各光伝送装置が、下流からの光信号を分波する第1の波長スプリッタと、該第1の波長スプリッタからの光信号を伝送する光再生変調部と、該光再生変調部からの光信号を合波する第2の波長スプリッタと、上流からの光信号を前記第2の波長スプリッタを介した後に受信する第2の光受信器と、前記光再生変調部からの指示情報を送信する光送信器とを備え、前記光再生変調部が、前記第1の波長スプリッタからの光信号を分岐する光スプリッタと、該光スプリッタからの一方の光信号を受信する第1の光受信器と、該第1の光受信器からの電気信号を蓄える電気バッファと、該電気バッファとは異なるもう1つの抽出電気バッファと、前記第1の光受信器から光信号のヘッダ情報を読み取り、前記電気バッファからの電気信号を抽出して前記抽出電気バッファに送信する判定制御回路と、前記分岐したもう一方の光信号を透過する光遅延線と、該光遅延線からの光信号を光増幅する光増幅器と、該光増幅器からの光信号を光再生あるいは光飽和する半導体光増幅器と、該半導体光増幅器からの飽和信号を前記電気バッファからの電気信号で変調する光変調器とを備え、下流から数えてX台目の光伝送装置内の光再生変調部の判定制御回路が、前記電気バッファの空き状況を監視する手段と、前記電気バッファの空き状況がある閾値以下の時には、X−1台目の光伝送装置に対し、X−1台目の光伝送装置においてX−2台目から送信されてくる光信号のうちX台目宛の光信号を一度電気信号に変換し電気バッファに蓄えてから送信する指示情報を送信する手段と、前記電気バッファの空き状況がある閾値より大きい時には、X−1台目の光伝送装置に対し、X−1台目の光伝送装置においてX−2台目から送信されてくる光信号のうちX台目宛の光信号を電気信号に変換せず電気バッファに蓄えることなく送信する指示情報を送信する手段とを備えることを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、上述した光伝送システムに用いられる、下流から数えてX台目の光伝送装置であって、下流から数えてX台目の光伝送装置内の光再生変調部の判定制御回路が、前記電気バッファの空き状況を監視する手段と、前記電気バッファの空き状況がある閾値以下の時には、X−1台目の光伝送装置に対し、X−1台目の光伝送装置においてX−2台目から送信されてくる光信号のうちX台目宛の光信号を一度電気信号に変換し電気バッファに蓄えてから送信する指示情報を送信する手段と、前記電気バッファの空き状況がある閾値より大きい時には、X−1台目の光伝送装置に対し、X−1台目の光伝送装置においてX−2台目から送信されてくる光信号のうちX台目宛の光信号を電気信号に変換せず電気バッファに蓄えることなく送信する指示情報を送信する手段とを備えることを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、上述した光伝送システムにおけるトラフィック制御方法であって、下流から数えてX台目の光伝送装置内の光再生変調部の判定制御回路の処理手順が、前記電気バッファの空き状況を監視するステップと、前記電気バッファの空き状況がある閾値以下の時には、X−1台目の光伝送装置に対し、X−1台目の光伝送装置においてX−2台目から送信されてくる光信号のうちX台目宛の光信号を一度電気信号に変換し電気バッファに蓄えてから送信する指示情報を送信するステップと、前記電気バッファの空き状況がある閾値より大きい時には、X−1台目の光伝送装置に対し、X−1台目の光伝送装置においてX−2台目から送信されてくる光信号のうちX台目宛の光信号を電気信号に変換せず電気バッファに蓄えることなく送信する指示情報を送信するステップとを含むことを特徴とする。
【0014】
このように構成し制御することにより、X−2台目から送信されてくる光信号のうちX台目宛の光信号は、X−1台目の光伝送装置にて電気処理されるため、光信号のまま伝送されるときに比べ遅延が発生する。そのためX台目の光伝送装置では、トラフィック量が減少するため、信号のバッファ溢れを回避することができる。
【0015】
また、本発明は、上述した光伝送システムにおいて、下流から数えてX−1台目の光伝送装置内の光再生変調部の判定制御回路が、X−1台目の光伝送装置の電気バッファの空き状況を監視する手段と、X台目の光伝送装置からの指示情報にもとづき、X−2台目から送信されてくる光信号のうちX台目宛の光信号を一度電気信号に変換しX−1台目の光伝送装置の電気バッファに蓄えてから送信する際に、X−1台目の光伝送装置の電気バッファの空き状況がある閾値以下の時には、X−2台目の光伝送装置に対し、X−2台目の光伝送装置においてX−3台目から送信されてくる光信号のうちX台目宛の光信号を一度電気信号に変換しX−2台目の光伝送装置の電気バッファに蓄えてから送信する指示情報を送信する手段と、X−1台目の光伝送装置の電気バッファの空き状況がある閾値より大きい時には、X−2台目の光伝送装置に対し、X−2台目の光伝送装置においてX−3台目から送信されてくる光信号のうちX台目宛の光信号を電気信号に変換せずX−2台目の光伝送装置の電気バッファに蓄えることなく送信する指示情報を送信する手段とを備え、各光伝送装置が、電気バッファの空き状況に応じて、下流の光伝送装置に対し指示情報を送信するように構成したことを特徴とする。
【0016】
また、本発明は、上述した光伝送システムに用いられる、下流から数えてX−1台目の光伝送装置であって、下流から数えてX−1台目の光伝送装置内の光再生変調部の判定制御回路が、X−1台目の光伝送装置内の電気バッファの空き状況を監視する手段と、X台目の光伝送装置からの指示情報にもとづき、X−2台目から送信されてくる光信号のうちX台目宛の光信号を一度電気信号に変換しX−1台目の光伝送装置の電気バッファに蓄えてから送信する際に、X−1台目の光伝送装置の電気バッファの空き状況がある閾値以下の時には、X−2台目の光伝送装置に対し、X−2台目の光伝送装置においてX−3台目から送信されてくる光信号のうちX台目宛の光信号を一度電気信号に変換しX−2台目の光伝送装置の電気バッファに蓄えてから送信する指示情報を送信する手段と、X−1台目の光伝送装置内の電気バッファの空き状況がある閾値より大きい時には、X−2台目の光伝送装置に対し、X−2台目の光伝送装置においてX−3台目から送信されてくる光信号のうちX台目宛の光信号を電気信号に変換せずX−2台目の光伝送装置の電気バッファに蓄えることなく送信する指示情報を送信する手段とを備えることを特徴とする。
【0017】
また、本発明は、上述した光伝送システムにおけるトラフィック制御方法であって、下流から数えてX−1台目の光伝送装置内の光再生変調部の判定制御回路の処理手順が、X−1台目の光伝送装置内の電気バッファの空き状況を監視するステップと、X台目の光伝送装置からの指示情報にもとづき、X−2台目から送信されてくる光信号のうちX台目宛の光信号を一度電気信号に変換しX−1台目の光伝送装置の電気バッファに蓄えてから送信する際に、X−1台目の光伝送装置の電気バッファの空き状況がある閾値以下の時には、X−2台目の光伝送装置に対し、X−2台目の光伝送装置においてX−3台目から送信されてくる光信号のうちX台目宛の光信号を一度電気信号に変換しX−2台目の光伝送装置の電気バッファに蓄えてから送信する指示情報を送信するステップと、X−1台目の光伝送装置内の電気バッファの空き状況がある閾値より大きい時には、X−2台目の光伝送装置に対し、X−2台目の光伝送装置においてX−3台目から送信されてくる光信号のうちX台目宛の光信号を電気信号に変換せずX−2台目の光伝送装置の電気バッファに蓄えることなく送信する指示情報を送信するステップとを含み、電気バッファの空き状況に応じて、下流の光伝送装置に対し指示情報を送信することを特徴とする。
【0018】
このように構成し制御することにより、本発明では、X−1台目の光伝送装置の電気バッファだけでなく、更に下流の光伝送装置の電気バッファの利用し、トラフィック量を一定量以下に抑制することができる。
【0019】
ここで、一度電気信号に変換した後、再度光信号にして送信する方法は、非特許文献3に記載の半導体光増幅器の特性を利用することにより実現される。すなわち、光遅延線からの光信号を、半導体光増幅器の光入出力特性において光飽和領域となる光入力強度まで光増幅器により光増幅させ、増幅させた光信号を半導体光増幅器に入力することにより半導体光増幅器にて入力光信号のデータの削除を行い、出力される飽和信号(データが削除された光信号)を再度光変調器で変調することにより実現する。
また、波長スプリッタX001と波長スプリッタX002は、光ファイバ1芯で、光伝送装置10→光伝送装置N0方向の光信号伝送と、光伝送装置N0→光伝送装置10方向の指示情報伝送の、双方向伝送を実現するために波長多重を行う際に必要となるものである。
【0020】
伝送されてくる信号の送信間隔を調整し伝送帯域を制御する技術としてシェーピングがあり、ATM(Asynchronous Transfer Mode:非同期転送モード)の伝送装置などに広く用いられている。シェーピングは、信号が電気信号に変換した後、次の伝送装置に送信する信号の送信間隔を調整する技術である。このようにシェーピングは、電気信号に変換した時に利用される技術であるため、そのまま本発明が前提とする光処理と電気処理両方の機能をもつシステムに適用しようとすると、最下流の光伝送装置にて信号の送信間隔を調整する必要が生じる。すると、最下流の光伝送装置からは複数の光伝送装置宛の信号が送信されるため、結果的にシェーピングが必要ない光伝送装置宛の送信間隔にも影響が生じてしまう。本発明では、できるだけ他の光伝送装置宛の信号に影響を与えないために、隣接する下流の光伝送装置にてシェーピングを行う点が特徴である。また、バッファの空き状況に応じ、複数の光伝送装置でシェーピングを実現する点が特徴である。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、光処理と電気処理両方を合わせもつ光伝送システムにおいて、ある光伝送装置のトラフィック量を一定量以下に抑制することができ、最大トラフィック量に合わせて電気バッファを設計しなくても、トラフィック変動によるバッファ溢れを回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の光伝送システムの構成を示す図である。
【図2】本発明の光伝送装置におけるトラフィック変動例を示す図である。
【図3】本発明のトラフィック制御方法の動作を説明するフローチャートである。
【図4】従来の光伝送システムの構成を示す図である。
【図5】従来の光伝送装置におけるトラフィック変動例を示す図である。
【図6】従来の光伝送システムにおけるバッファ溢れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施例について図面を参照して説明する。図1は、本発明の光伝送システムの構成を示す図である。本発明の光伝送システムは、図1に示すように、N台の光伝送装置10〜N0が一列に接続され、光伝送装置10から光伝送装置N0に信号が伝送される光伝送システムである。光伝送装置X0(Xは1〜Nの整数)は、下流からの光信号を分波する波長スプリッタX001(第1の波長スプリッタ)と、波長スプリッタX001からの光信号を伝送する光再生変調部X10と、光再生変調部X10からの光信号を合波する波長スプリッタX002(第2の波長スプリッタ)と、波長スプリッタX002を介した後に上流からの光信号を受信する光受信器X01(第2の光受信器)と、光再生変調部X10からの指示情報を送信する光送信器X02からなる。
【0024】
光再生変調部X10は、波長スプリッタX001からの光信号を分岐する光スプリッタX100と、光スプリッタX100からの一方の光信号を受信する光受信器X101(第1の光受信器)と、光受信器X101からの電気信号を蓄える電気バッファX102と、電気バッファX102とは異なるもう1つの抽出電気バッファX103と、光受信器X101からの光信号のヘッダ情報を読み取り、電気バッファX102からの電気信号を抽出して抽出電気バッファX103に送信する判定制御回路X104と、前記分岐したもう一方の光信号を透過する光遅延線X105と、光遅延線X105からの光信号を増幅する光増幅器X107と、光増幅器X107からの光信号を光再生あるいは光飽和する半導体光増幅器X106と、半導体光増幅器X106からの飽和信号を電気バッファX102からの電気信号で変調する光変調器X108からなる。
【0025】
光伝送装置X0の判定制御回路X104は、電気バッファX102の空き状況を監視し、空き状況がある閾値以下の時には、X−1台目の光伝送装置に対して、X−2台目の光伝送装置から送信されてくる光信号のうちX台目宛の光信号を一度電気信号に変換し、電気バッファ(X−1)102に蓄えてから送信する指示情報を送信し、空き状況がある閾値より大きい時には、X−1台目の光伝送装置に対して、X−2台目の光伝送装置から送信されてくる光信号のうちX台目宛の光信号を電気信号に変換せず電気バッファ(X−1)102に蓄えることなく送信する指示情報を送信する機能を有する。
【0026】
ここで本発明の特徴とするところは、X台目の光伝送装置における電気バッファの空き状況に応じて、X−1台目において電気信号に変換する、あるいは電気信号に変換しない機能をもたせたことにより、X台目の電気バッファの設計を、最大トラフィック量に合わせることなく、できるだけバッファ溢れを回避する機能を提供する点である。
【0027】
図2に本発明の光伝送装置におけるトラフィック変動例を示す。従来の光伝送装置におけるトラフィック変動(図5と同一の変動例)では、図5で説明したとおり、斜線部分のトラフィックが伝送されてきた場合には、バッファ溢れになってしまい、信号損失が発生してしまう。本発明では、下流の光伝送装置にて一度電気バッファに蓄えることにより意図的に遅延させるため、トラフィック量を一定量以下に抑制することができ、信号のバッファ溢れを回避することができる。
【0028】
図2のようにトラフィック量を抑制しようとしても、抑制しきれない場合も考えられる。X−1台目の光伝送装置において、X−1台目で抽出すべき信号があり、X−1台目の光伝送装置における電気バッファの空き状況が小さいときには、X台目宛の光信号を電気信号に蓄えることができない。このような場合には、X−1台目の光伝送装置から、更にX−2台目の光伝送装置に対し、X−3台目から送信されてくる光信号のうちX台目宛の光信号を一度電気信号に変換し、電気バッファに蓄えてから送信する指示情報を送信することで、トラフィック量を一定量以下に抑制することができる。
【0029】
本発明では、このようにX−1台目の光伝送装置の電気バッファだけでなく、更に下流の光伝送装置の電気バッファの利用し、トラフィック量を一定量以下に抑制することができる。
【0030】
図3は、本発明の光伝送システムにおけるトラフィック制御方法の動作を説明するフローチャートである。光伝送装置X0の判定制御回路X104は、電気バッファX102の空き状況を監視し、空き状況が閾値以下の場合(S101でYesの場合)、光伝送装置(X−1)0に対し、光伝送装置X0宛の光信号を電気信号に変換する指示情報を送信する(S102)。一方、空き状況が閾値より大きい場合(S101でNoの場合)は何もしない(S103)。
【0031】
次に、光伝送装置X0宛の光信号を電気信号に変換する指示情報を受け取った光伝送装置(X−1)0の判定制御回路(X−1)104は、電気バッファ(X−1)102の空き状況を監視し、空き状況が閾値以下の場合(S201でYesの場合)、光伝送装置(X−2)0に対し、光伝送装置X0宛の光信号を電気信号に変換する指示情報を送信する(S202)。一方、空き状況が閾値より大きい場合(S201でNoの場合)は、光伝送装置X0宛の光信号を電気信号に変換してから送信する(S203)。
【0032】
次に、光伝送装置X0宛の光信号を電気信号に変換する指示情報を受け取った光伝送装置(X−2)0の判定制御回路(X−2)104は、電気バッファ(X−2)102の空き状況を監視し、空き状況が閾値以下の場合(S301でYesの場合)、光伝送装置(X−3)0に対し、光伝送装置X0宛の光信号を電気信号に変換する指示情報を送信する(S302)。一方、空き状況が閾値より大きい場合(S301でNoの場合)は、光伝送装置X0宛の光信号を電気信号に変換してから送信する(S303)。
以下同様に電気バッファの空き状況に応じて、さらに下流の光伝送装置に対し同様な指示情報を順に送信する。
【0033】
本発明における光伝送装置への指示情報は、単に電気信号に変換するだけでなく、電気信号に変換後の電気バッファにおける待ち時間や、電気信号への変換を継続する時間を指示することも可能である。このように制御することにより、電気信号に変換することだけに起因する遅延時間に比べ、より長い時間遅延を発生させることができるため、大幅なトラフィックの抑制制御が可能となる。
【0034】
以上説明したように、本発明によれば、光処理と電気処理両方を合わせもつ光伝送システムにおいて、ある光伝送装置のトラフィック量を一定量以下に抑制することができ、最大トラフィック量に合わせて電気バッファを設計しなくても、トラフィック変動によるバッファ溢れを回避することができる。
【符号の説明】
【0035】
10,X0,N0,19,X9,(X−1)9,N9 光伝送装置
X10 光再生変調部
X001,X002 波長スプリッタ
X01,X101,X901,(X−1)901 光受信器
X02 光送信器
X100,X900,(X−1)900 光スプリッタ
X102,X902,(X−1)902 電気バッファ
X103,X903,(X−1)903 抽出電気バッファ
X104,X904,(X−1)904 判定制御回路
X105,X905,(X−1)905 光遅延線
X106,X906,(X−1)906 半導体光増幅器
X107 光増幅器
X108 光変調器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数台の光伝送装置が一列に接続され、下流から上流に信号が伝送される光伝送システムであって、
各光伝送装置は、下流からの光信号を分波する第1の波長スプリッタと、該第1の波長スプリッタからの光信号を伝送する光再生変調部と、該光再生変調部からの光信号を合波する第2の波長スプリッタと、上流からの光信号を前記第2の波長スプリッタを介した後に受信する第2の光受信器と、前記光再生変調部からの指示情報を送信する光送信器とを備え、
前記光再生変調部は、前記第1の波長スプリッタからの光信号を分岐する光スプリッタと、該光スプリッタからの一方の光信号を受信する第1の光受信器と、該第1の光受信器からの電気信号を蓄える電気バッファと、該電気バッファとは異なるもう1つの抽出電気バッファと、前記第1の光受信器から光信号のヘッダ情報を読み取り、前記電気バッファからの電気信号を抽出して前記抽出電気バッファに送信する判定制御回路と、前記分岐したもう一方の光信号を透過する光遅延線と、該光遅延線からの光信号を光増幅する光増幅器と、該光増幅器からの光信号を光再生あるいは光飽和する半導体光増幅器と、該半導体光増幅器からの飽和信号を前記電気バッファからの電気信号で変調する光変調器とを備え、
下流から数えてX台目の光伝送装置内の光再生変調部の判定制御回路は、
前記電気バッファの空き状況を監視する手段と、
前記電気バッファの空き状況がある閾値以下の時には、X−1台目の光伝送装置に対し、X−1台目の光伝送装置においてX−2台目から送信されてくる光信号のうちX台目宛の光信号を一度電気信号に変換し電気バッファに蓄えてから送信する指示情報を送信する手段と、
前記電気バッファの空き状況がある閾値より大きい時には、X−1台目の光伝送装置に対し、X−1台目の光伝送装置においてX−2台目から送信されてくる光信号のうちX台目宛の光信号を電気信号に変換せず電気バッファに蓄えることなく送信する指示情報を送信する手段と、
を備えることを特徴とする光伝送システム。
【請求項2】
請求項1に記載の光伝送システムにおいて、
下流から数えてX−1台目の光伝送装置内の光再生変調部の判定制御回路は、
X−1台目の光伝送装置の電気バッファの空き状況を監視する手段と、
X台目の光伝送装置からの指示情報にもとづき、X−2台目から送信されてくる光信号のうちX台目宛の光信号を一度電気信号に変換しX−1台目の光伝送装置の電気バッファに蓄えてから送信する際に、X−1台目の光伝送装置の電気バッファの空き状況がある閾値以下の時には、X−2台目の光伝送装置に対し、X−2台目の光伝送装置においてX−3台目から送信されてくる光信号のうちX台目宛の光信号を一度電気信号に変換しX−2台目の光伝送装置の電気バッファに蓄えてから送信する指示情報を送信する手段と、
X−1台目の光伝送装置の電気バッファの空き状況がある閾値より大きい時には、X−2台目の光伝送装置に対し、X−2台目の光伝送装置においてX−3台目から送信されてくる光信号のうちX台目宛の光信号を電気信号に変換せずX−2台目の光伝送装置の電気バッファに蓄えることなく送信する指示情報を送信する手段とを備え、
各光伝送装置は、電気バッファの空き状況に応じて、下流の光伝送装置に対し指示情報を送信するように構成したことを特徴とする光伝送システム。
【請求項3】
請求項1に記載の光伝送システムに用いられる、下流から数えてX台目の光伝送装置であって、
下流から数えてX台目の光伝送装置内の光再生変調部の判定制御回路は、
前記電気バッファの空き状況を監視する手段と、
前記電気バッファの空き状況がある閾値以下の時には、X−1台目の光伝送装置に対し、X−1台目の光伝送装置においてX−2台目から送信されてくる光信号のうちX台目宛の光信号を一度電気信号に変換し電気バッファに蓄えてから送信する指示情報を送信する手段と、
前記電気バッファの空き状況がある閾値より大きい時には、X−1台目の光伝送装置に対し、X−1台目の光伝送装置においてX−2台目から送信されてくる光信号のうちX台目宛の光信号を電気信号に変換せず電気バッファに蓄えることなく送信する指示情報を送信する手段と、
を備えることを特徴とする光伝送装置。
【請求項4】
請求項2に記載の光伝送システムに用いられる、下流から数えてX−1台目の光伝送装置であって、
下流から数えてX−1台目の光伝送装置内の光再生変調部の判定制御回路は、
X−1台目の光伝送装置内の電気バッファの空き状況を監視する手段と、
X台目の光伝送装置からの指示情報にもとづき、X−2台目から送信されてくる光信号のうちX台目宛の光信号を一度電気信号に変換しX−1台目の光伝送装置の電気バッファに蓄えてから送信する際に、X−1台目の光伝送装置の電気バッファの空き状況がある閾値以下の時には、X−2台目の光伝送装置に対し、X−2台目の光伝送装置においてX−3台目から送信されてくる光信号のうちX台目宛の光信号を一度電気信号に変換しX−2台目の光伝送装置の電気バッファに蓄えてから送信する指示情報を送信する手段と、
X−1台目の光伝送装置内の電気バッファの空き状況がある閾値より大きい時には、X−2台目の光伝送装置に対し、X−2台目の光伝送装置においてX−3台目から送信されてくる光信号のうちX台目宛の光信号を電気信号に変換せずX−2台目の光伝送装置の電気バッファに蓄えることなく送信する指示情報を送信する手段と、
を備えることを特徴とする光伝送装置。
【請求項5】
請求項1に記載の光伝送システムにおけるトラフィック制御方法であって、
下流から数えてX台目の光伝送装置内の光再生変調部の判定制御回路の処理手順は、
前記電気バッファの空き状況を監視するステップと、
前記電気バッファの空き状況がある閾値以下の時には、X−1台目の光伝送装置に対し、X−1台目の光伝送装置においてX−2台目から送信されてくる光信号のうちX台目宛の光信号を一度電気信号に変換し電気バッファに蓄えてから送信する指示情報を送信するステップと、
前記電気バッファの空き状況がある閾値より大きい時には、X−1台目の光伝送装置に対し、X−1台目の光伝送装置においてX−2台目から送信されてくる光信号のうちX台目宛の光信号を電気信号に変換せず電気バッファに蓄えることなく送信する指示情報を送信するステップと、
を含むことを特徴とするトラフィック制御方法。
【請求項6】
請求項2に記載の光伝送システムにおけるトラフィック制御方法であって、
下流から数えてX−1台目の光伝送装置内の光再生変調部の判定制御回路の処理手順は、
X−1台目の光伝送装置内の電気バッファの空き状況を監視するステップと、
X台目の光伝送装置からの指示情報にもとづき、X−2台目から送信されてくる光信号のうちX台目宛の光信号を一度電気信号に変換しX−1台目の光伝送装置の電気バッファに蓄えてから送信する際に、X−1台目の光伝送装置の電気バッファの空き状況がある閾値以下の時には、X−2台目の光伝送装置に対し、X−2台目の光伝送装置においてX−3台目から送信されてくる光信号のうちX台目宛の光信号を一度電気信号に変換しX−2台目の光伝送装置の電気バッファに蓄えてから送信する指示情報を送信するステップと、
X−1台目の光伝送装置内の電気バッファの空き状況がある閾値より大きい時には、X−2台目の光伝送装置に対し、X−2台目の光伝送装置においてX−3台目から送信されてくる光信号のうちX台目宛の光信号を電気信号に変換せずX−2台目の光伝送装置の電気バッファに蓄えることなく送信する指示情報を送信するステップとを含み、
電気バッファの空き状況に応じて、下流の光伝送装置に対し指示情報を送信することを特徴とするトラフィック制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−239276(P2011−239276A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−110151(P2010−110151)
【出願日】平成22年5月12日(2010.5.12)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】