説明

光信号処理器

【課題】 入出力ポートの切り替えを出来ると同時に、信号光の光量を調節することが可能な光信号処理器を提供する。
【解決手段】 光ファイバ断面11のポートPから入力された波長λ〜λの光は、光学系110により波長分岐されて波長毎に集光される。波長λの光は光信号調整手段21により光量を調整した状態で光学系140方向に出力され、光学系140を経て光ファイバ14のポートPに入射する。波長λの光は光信号調整手段22により光量を調整した状態で光学系130方向に出力され、光学系130を経て光ファイバ13のポートPに入射する。波長λの光は光信号調整手段23により光量を調整した状態で光学系120方向に出力され、光学系120を経て光ファイバ12のポートPに入射する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波長分割多重光通信システムにおいて用いる光信号処理器に関する。
【背景技術】
【0002】
多波長の信号光を多重化して光伝送路により伝送する波長分割多重(WDM:Wavelength Division Multiplexing)光通信システムでは、多波長の信号光を合波または分波する光合分波器が用いられる。特許文献1に開示された光合分波器は、各波長の光を入力または出力するポートを選択することが可能であり、信号光伝送経路や信号光波長がフレキシブルな光通信ネットワークにおいて好適に用いられる。
【0003】
この特許文献1に開示された光合分波器は、入力ポートに入力した光を空間的に分岐する波長分岐素子と、この波長分岐素子により分岐された各波長を出力する先の出力ポートを選択する反射部と、を備え、反射部を挿入又は退避させることにより、出力ポートを切り替えている。
【特許文献1】特開2005−308867号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
WDM光通信システムでは、信号光を伝送する際に光増幅装置が用いられる。しかしながら、光増幅装置は波長によって増幅率が異なり、増幅後の光量に波長毎のバラつきが見られる。そのため、WDM光通信システムにおいて特許文献1の光合分波器を用いた場合、光増幅装置によって増幅された後の信号光の光量を調整するための装置を別途導入する必要があった。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、入出力ポートの切り替えを出来ると同時に、信号光の光量を調節することが可能な光信号処理器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る光信号処理器は、ポートPに光を入力し、その光に含まれる各波長の光をポートP〜Pの何れかのポートから出力する光信号処理器であって、(1)ポートPに入力される光に含まれる各波長の光を空間的に分岐して、その分岐した各波長の光を、直線上に並び互いに異なる集光点へ集光する第1光学系と、(2)第1光学系により集光される各波長の光を入力し、その集光点において各波長の光を入力光路とは異なる光路へ出力する光信号調整手段と、(3)光信号調整手段とポートPの間に設けられ、光信号調整手段から特定方向に出力された光を入力して、その光をポートPから出力する第n光学系と、を備えることを特徴とする。ただし、Nは3以上の整数であり、nは2以上N以下の各整数である。また、光信号調整手段が、(2−1)直線上に並び互いに異なる集光点毎に設けられ、(2−2)第1光学系により集光される各波長の光の集光点にある場合に、第1光学系により集光される各波長の光を前記第n光学系に向けて出力する光路変更部と、(2−3)光路変更部に隣接し、第1光学系により集光される各波長の光の集光点にある場合に、第1光学系により集光される各波長の光を第1〜第n光学系のいずれとも異なる方向へ出力する光量調整部と、(2−4)光路変更部と光量調整部とを、直線上に並び互いに異なる集光点を含む平面上の直線方向に移動させる可動部と、を含むことをさらに特徴とする。
【0007】
上記の光信号処理器では、ポートPに入力した光は、第1光学系により空間的に分岐され、波長毎に異なる光路を進み、直線上に並び互いに異なる集光点へ集光される。第1光学系により集光された各波長の光は、集光点において光信号調整手段により入力光路とは異なる光路へ出力される。光信号調整手段から出力された光のうち、特定方向へ出力された光は、第n光学系を経て、ポートPから出力される。
【0008】
この光信号調整手段は、第1光学系により集光された各波長の光を第n光学系へ向けて出力する光路変更部と、第1光学系により集光された各波長の光を第1〜第n光学系のいずれとも異なる方向へ出力する光量調整部と、光路変更部と光量調整部とを直線上に並び互いに異なる集光点からなる平面上の直線方向に移動させる可動部と、から構成される。光路変更部と光量調整部とは隣接しており、集光点が光路変更部と光量調整部との境界部にある場合に、集光点に集光された光のうち光路変更部に入射した光は、第n光学系へ向けて出力される。一方、集光点に集光された光のうち、光量調整部に入射した光は第1〜第n光学系のいずれとも異なる方向へ出力される。
【0009】
この光信号処理器では、光信号調整手段の光路変更部または光量調整部に光透過部を備え、光透過部が第1光学系から出力された各波長の光の集光点にある場合に、第1光学系により集光される各波長の光を透過することを好適とする。この場合は、第1光学系により集光されて光信号調整手段に入光した光は、光透過部により透過された後、第1光学系と対向する第n光学系を経てポートPから出力される。
【0010】
また、この光信号処理器では、第1光学系と光信号調整手段との間に、光信号遮蔽手段をさらに備え、光信号遮蔽手段は、第1光学系により集光される各波長の光の光路上にある場合に、当該各波長の光を入力して当該光が集光点に集光されないようにする光信号遮蔽部と、光信号遮蔽部を移動させる可動部と、を含む構成としてもよい。この場合、光信号調整手段の光路変更部と光量調整部とを移動させる際に、第1光学系から出力され当該光信号調整手段上の集光点に到達する光が、光信号調整手段によって想定していない光学系の設けられた方向へ出力されることを防止することができる。
【0011】
また、この光信号処理器では、光信号調整手段の光路変更部と光量調整部のなす角が10度以上であるのが好適である。
【0012】
この光信号処理器では、光信号調整手段における可動部及び光信号遮蔽手段における可動部の少なくとも一方がMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)素子であるのが好適である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、入出力ポートの切り替えが出来ると同時に、信号光の光量を調節することが可能な光信号処理器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一または同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、各図には説明の便宜のためにxyz直交座標系が示されている。
【0015】
(第1実施形態)
まず、本発明に係る光信号処理器の第1実施形態について説明する。図1は第1実施形態に係る光信号処理器1の構成図である。この図に示される光信号処理器1は、光ファイバ11と、光ファイバ12、13、14との間に、光学系110、120、130、140、光信号調整手段21、22、23を備える。この光信号処理器1は、光ファイバ11の端面位置にポートPを有している。同様に、光ファイバ12の端面位置にポートPを有している。また光ファイバ13の端面位置にポートPを有している。さらに光ファイバ4の端面位置にポートPを有している。本実施形態では、光ファイバ11のポートPに光を入力し、その光に含まれる各波長の光を光ファイバ12のポートP、光ファイバ13のポートP、光ファイバ14のポートPのうちの何れかから出力する。
【0016】
光学系110は、レンズ111、113および回折格子素子112を備える。同様に光学系120は、レンズ121、123および回折格子素子122を備える。光学系130はレンズ131、133および回折格子素子132を備える。光学系140はレンズ141、143および回折格子素子142を備える。
【0017】
光ファイバ11〜14と光学系110、120、130、140、光信号調整手段21〜23との間では、xyz直交座標系を設定し、光学系110に含まれるレンズ113の光軸に平行にz軸を設定する。図1は、yz平面への投影図である。
【0018】
光学系110は、光ファイバ11のポートPに入力される光に含まれる各波長の光を空間的に分岐して、その分岐した各波長の光を、直線上に並び互いに異なる集光点へ集光する第1光学系として作用する。レンズ111は、光ファイバ11のポートPから光が出射されると、その光を入力しコリメートして出力する。次に、回折格子素子112は、レンズ111によりコリメートされた光を入力し、その光に含まれる各波長(本実施形態では3波長λ〜λ)の光を空間的に分岐して、その分岐した各波長の光を互いに異なる光路へ出力する。この回折格子素子112の各格子はx軸方向に延びており、このとき回折格子素子112から出力された各波長の光は、yz平面に平行であって互いに異なる方向へ進む。レンズ113は、回折格子素子112から出力された各波長の光を集光する。このときレンズ113から出力された各波長の光は、yz平面に平行に進み、y軸方向に平行な直線上に並ぶ集光点に集光される。
【0019】
光学系120は、光信号調整手段21〜23に入力した各波長の光のうち光学系120方向に出力された光を入力しコリメートして出力するレンズ123と、レンズ123によりコリメートされた光を入力しレンズ121へ向けて出力する回折格子素子122と、回折格子素子123から出力された光を入力し光ファイバ12のポートPへ向けて出力するレンズ121と、を備える。
【0020】
光学系130は、光信号調整手段21〜23に入力した各波長の光のうち、直進した光を入力しコリメートして出力するレンズ133と、レンズ133によりコリメートされた光を入力しレンズ131へ向けて出力する回折格子素子132と、回折格子素子132から出力された光を入力し光ファイバ13のポートPへ向けて出力するレンズ131と、を備える。
【0021】
光学系140は、光信号調整手段21〜23に入力した各波長の光のうち光学系140方向に出力された光を入力しコリメートして出力するレンズ143と、レンズ143によりコリメートされた光を入力しレンズ141へ向けて出力する回折格子素子142と、回折格子素子142から出力された光を入力し光ファイバ14のポートPへ向けて出力するレンズ141と、を備える。
【0022】
光信号調整手段21は、波長λの光の光信号調整手段として、波長λの光の集光点に設けられる。同様に光信号調整手段22は、波長λの光の光信号調整手段として、波長λの光の集光点に設けられる。また、光信号調整手段23は、波長λの光の光信号調整手段として、波長λの光の集光点に設けられる。
【0023】
図1では、光信号調整手段21に入力した波長λの光は、光信号調整手段21に含まれる光路変更部および光量調整部により光量を調整された状態で、光学系140の方向へ出力される。また、光信号調整手段22に入力した波長λの光は、同様に光量を調整された状態で、光学系130の方向へ出力される。光信号調整手段23に入力した波長λの光は、同様に光量を調整された状態で、光学系120の方向へ出力される。
【0024】
ここで、光信号調整手段の構成を、図2を用いて説明する。図2は、第1実施形態に係る光信号調整手段21の光路変更部および光量調整部の斜視図である。光信号調整手段21は、x軸に沿って直線上に、光路変更部および光量調整部として、反射面211、212、213、214、215を備える。図2では示していないが、光信号調整手段21はさらにx軸方向に移動することが可能な可動部を備える。これにより光路変更部および光量調整部を、波長λの光の集光点に移動させることができる。この可動部は、例えばMEMS素子などによる。
【0025】
この光信号調整手段21において、反射面213が波長λの光の集光点にある場合、光学系110によって集光された波長λの光は、反射面213を経て光学系140の方向へ出力される。また、反射面215が波長λの光の集光点にある場合は、光学系110によって集光された波長λの光は、反射面215を経て光学系120の方向へ出力される。光量調整部211、212、214が波長λの光の集光点にある場合は、光学系110によって集光された波長λ1の光は、光学系110、120、130、140のいずれとも異なる方向へ出力される。さらに、光信号調整手段21の反射面211〜215のいずれの面も波長λの光の集光点にない場合、光学系110によって集光された波長λの光は直進して、光学系130の方向へ出力される。上記のように、反射面213および215は光路変更部として、反射面211、212、214は光量調整部として機能する。
【0026】
光信号調整手段22および23は、光信号調整手段21と同様の構造を備えている。光信号調整手段22は、反射面221〜225を備えている。また、光信号調整手段23は、反射面231〜235を備えている。これらの反射面は、光信号調整手段21の反射面211〜215と同様の機能を有し、光路変更部または光量調整部として機能する。
【0027】
図3は、第1実施形態において光信号調整手段21〜23が移動している状態を模式的に示す斜視図である。光信号調整手段21〜23は、それぞれの可動部により、x軸方向へ移動することが可能である。このように光信号調整手段21〜23をx軸方向に移動して、波長λ〜λのそれぞれの光の集光点に、特定の反射面を移動させることにより、波長λ〜λの光の出力方向を決めることができる。
【0028】
図4は、第1実施形態において光信号調整手段21〜23に、波長λ〜λの光が入射したときの各波長の光の反射の様子を模式的に示した斜視図である。波長λ〜λの光は、それぞれ、y軸に平行な直線I−I’上の集光点に集光される。以下、光信号調整手段21〜23についてそれぞれ説明する。
【0029】
図4の光信号調整手段21には波長λの光が入射している。光信号調整手段21は、反射面のうち、反射面211のx軸方向の端部が、波長λの光の集光点に位置するように移動している。この場合、集光点の入射した光の一部は反射面を通らないため直進し、光学系130に到達する。しかし、集光点に入射した光のうち反射面211に入射した光は、反射面211で反射する。反射面211で反射した光は、光学系110、120、130、140のいずれにも到達しない。この結果、光学系130に到達する波長λの光は、光信号調整手段21に入射した時点と比較して、反射面211で反射した光量の分だけ光量が減少される。
【0030】
図4の光信号調整手段22には波長λの光が入射している。光信号調整手段22は、反射面222と反射面223との境界部が波長λの光の集光点に位置するように移動している。この場合、集光点の入射した光のうちの一部は、反射面222で反射し、残りの光は反射面223で反射する。反射面222で反射した光は、光学系110、120、130、140のいずれにも到達しないが、反射面223で反射した光は光学系140の方向へ出力される。この結果、光学系140に到達する波長λの光は、光信号調整手段22に入射した時点と比較して、反射面222で反射した光量の分だけ光量が減少される。
【0031】
図4の光信号調整手段23には波長λの光が入射している。光信号調整手段23は、反射面234と反射面235との境界部が波長λの光の集光点に位置するように移動している。この場合、集光点に入射した光のうちの一部は反射面234で反射し、残りの光は反射面235で反射する。反射面234で反射した光は、光学系110、120、130、140のいずれにも到達しないが、反射面235で反射した光は光学系120の方向へ出力される。この結果、光学系120に到達する波長λの光は、光信号調整手段23に入射した時点と比較して、反射面234で反射した光量の分だけ光量が減少される。
【0032】
このように、特定の光学系へ向けて反射する反射面(光路変更部)と、いずれの光学系にも到達しない方向へ反射する反射面(光量調整部)との境界部へ各波長の光を入力することで、いずれの光学系にも到達しない方向へ反射する反射面で反射される光量の分だけ光量を減少することができる。また、特定の光学系へ向けて反射する反射面と、いずれの光学系にも到達しない方向へ反射する反射面のそれぞれへ入射する光量の比率を変えることで、特定の光学系へ向けて出力する光の光量を調整することができる。この光量の調整は、光信号調整手段の位置のx軸方向への移動により容易に行うことができる。
【0033】
図5は、第1実施形態に係る光信号処理器1の別の動作を示す斜視図である。図5では、光信号調整手段21の位置を調整して、光信号調整手段21に入射する波長λの光を光学系120の方向へ出力している。一方、図1と同様に光信号調整手段22に入射する波長λの光は光学系130へ出力されている。また、光信号調整手段23に入射する波長λの光は光学系120の方向へ出力されている。したがって、この光信号処理器1では、光ファイバ12のポートPへ波長λおよび波長λの2波長の光が出力される。また、光学系140の方向へは波長λ〜λのいずれの光も出力されない。このように、各波長の光の集光点の光信号調整手段を調整することにより、複数の波長の光を同一の光学系の方向へ出力することもできる。
【0034】
本実施形態によれば、入出力ポートの切り替えと信号光の光量の調節とを、光信号調整手段の調整により同時に行うことが出来る光信号処理器が提供される。また、光信号調整手段は可動部により容易に移動させることができ、上記の入出力ポートの切り替えと信号光の光量の調節とを、容易に実施することができる。
【0035】
なお、上記では光信号処理器1が光を分波する場合について述べたが、本実施形態は分波に限らず、合波を行うこともできる。すなわち、光ファイバ12〜14のポートP〜Pから複数の波長(波長λ〜λ)の光を入力し、光信号調整手段21〜23を経て、光ファイバのポートPから合波として出力することもできる。
【0036】
(第2実施形態)
次に、本発明に係る光信号処理器の第2実施形態について説明する。図6は第2実施形態に係る光信号処理器2の構成図である。この図に示される光信号処理器2は、光ファイバ11と、12、13、14、15、16との間に、光学系110、120、130、140、150、160、光信号調整手段21〜24を備える。光ファイバ15の端面位置にポートPを有している。同様に、光ファイバ16の端面位置にポートPを有している。光学系150は、レンズ151、153および回折格子素子152を備える。同様に光学系160は、レンズ161、163および回折格子素子162を備える。光学系110、120、130、140は第1実施形態と同様の構成を持つ。図6は、図1と同様にxyz直交座標系を設定し、光学系110に含まれるレンズ113の光軸に平行にz軸を設定する。図6はxz平面の投影図である。なお、光ファイバ12、14、光学系120、140および光信号調整手段21〜23は、図6では図示されていない。
【0037】
光学系110は、第1実施形態と同様に、光ファイバ11のポートPに入力される光に含まれる各波長の光を空間的に分岐して、その分岐した各波長の光を、直線上に並び互いに異なる集光点へ集光する第1光学系として作用する。なお、図6では、複数の波長(本実施形態では4波長λ〜λ)の光を空間的に分岐した後の波長λの光のみを図示し、波長λの光の集光点に設けられる光信号調整手段24のみを図示している。
【0038】
光学系150は、光信号調整手段24に入力した光のうち光学系150方向に出力された光を入力しコリメートして出力するレンズ153と、レンズ153によりコリメートされた光を入力しレンズ151に向けて出力する回折格子素子152と、回折格子素子153から出力された光を入力し光ファイバ15のポートPへ向けて出力するレンズ151と、を備える。
【0039】
また、光学系160は、光信号調整手段24に入力した各波長の光のうち光学系160方向に出力された光を入力しコリメートして出力するレンズ163と、レンズ163によりコリメートされた光を入力しレンズ161に向けて出力する回折格子素子162と、回折格子素子163から出力された光を入力し光ファイバ16のポートPへ向けて出力するレンズ161と、を備える。
【0040】
図6では、光信号調整手段24に入力した波長λの光は、光信号調整手段24に含まれる光路変更部および光量調整部により、光量を調整された状態で光学系150および光学系160の何れかの方向へ出力される。
【0041】
図7は、第2実施形態に係る光信号調整手段24の光路変更部および光量調整部を示す図である。図7(a)は、光信号調整手段24の光路変更部および光量調整部の斜視図である。光信号調整手段24は、x軸に沿って直線状に、光路変更部および光量調整部として、反射面241〜249を備える。光信号調整手段24はさらに、図7では図示していないが、x軸方向へ移動する可動部を備える。これにより光信号調整手段24の光路変更部および光量調整部を波長λの光の集光点に移動させることができる。
【0042】
この光信号調整手段24において、反射面241〜245については、図2で示した光信号調整手段21の反射面211〜215と同様の機能を持ち、反射面243および245は光路変更部として、反射面241、242、244は光量調整部として、それぞれ機能する。光信号調整手段24ではさらに反射面246〜249を備える。図7(a)では、反射面248と反射面249との境界部はy軸に平行で、波長λの光の集光点を含む直線I−I’と平行である。
【0043】
図7(b)は光信号調整手段24のうち、反射面246〜249を含む一部をy軸方向から見た断面図である。反射面247が波長λの光の集光点にある場合、光学系110によって集光された波長λの光は、反射面を経て光学系150の方向へ出力される。また、反射面248が波長λの光の集光点にある場合は、光学系110によって集光された波長λの光は、反射面248を経て光学系160の方向へ出力される。反射面246、249のいずれかが波長λの集光点にある場合は、光学系110によって集光された波長λの光は、光学系110〜160のいずれとも異なる方向へ出力される。上記のように、反射面247および248は光路変更部として、反射面246、249は光量調整部として機能する。
【0044】
図7(a)、(b)で示すように、反射面248と反射面249の境界部に波長λの光が集光されるとき、入射した光の一部は反射面248で反射し、残りの光は反射面249で反射する。反射面248で反射した光は、光学系160の方向へ出力されるが、反射面249で反射した光は、光学系110〜160のいずれにも到達しない。この結果、光学系160に到達する波長λの光は、光信号調整手段24に入射した時点と比較して、反射面249で反射した光の分だけ光量が減少している。
【0045】
また、反射面247と反射面248との境界部を波長λの光の集光点に移動させた場合は、反射面247で反射した光は光学系150の方向へ出力され、反射面248で反射した光は光学系160の方向へ出力されるので、波長λの光を光学系150と光学系160の方向へ、特定の比率で分岐することができる。この比率についても、光調整手段24をx軸方向に調整することで、自由に決めることができる。
【0046】
本実施形態によれば、光信号処理器2の出力先の光ファイバを、各波長の光の集光点を含むyz平面に限らず設置することができ、より幅広い構造をとる光信号処理器を提供することができる。
【0047】
なお、上記では光信号処理器2が光を分波する場合について述べたが、本実施形態は分波に限らず、合波を行うこともできる。すなわち、光ファイバ12〜16のポートP〜Pから複数の波長の光を入力し、光信号調整手段21〜24を経て、光ファイバのポートPから合波として出力することもできる。
【0048】
(光信号処理器の第1変形例)
図8は第1実施形態に係る光信号処理器の第1変形例として、光信号処理器に含まれる光信号調整手段の変形例を示す斜視図である。図8の光信号調整手段25において、反射面251〜255については、図2で示した光信号調整手段21の反射面211〜215と同様の機能を持つ。光信号調整手段25ではさらに、反射面253に開口部253aを備える。また、反射面255に開口部255aを備える。
【0049】
光信号調整手段25では、特定の波長の光が開口部253aまたは開口部255aに入射すると、開口部に入射した光は直進し、第1実施形態における光学系130の方向へ出力される。また、図2の光信号調整手段21と同じく、反射面253に入射した光は光学系140の方向へ出力される。また、反射面255に入射した光は光学系120の方向へ出力される。したがって、特定の波長の光を反射面253と開口部253aとの境界部に入力すると、一部の光は反射面253で反射して光学系140の方向へ、残りの光は開口部253aを経て光学系130の方向へ、特定の比率で出力される。また、特定の波長の光を反射面255と開口部255aとの境界部に入力すると、一部の光は反射面255で反射して光学系120の方向へ、残りの光は開口部253aを経て光学系130の方向へ、特定の比率で出力される。また、この比率は、光信号調整手段25をx軸方向に調整することで、自由に決めることができる。
【0050】
このように、反射面に開口部を備える光信号調整手段を用いることにより、光信号調整手段に入力する光を、光信号調整手段に入射した光が直進して到達する光学系と、反射面で反射することにより到達する光学系とへ、特定の比率で分岐することができる。
【0051】
(光信号処理器の第2変形例)
図9は第1実施形態に係る光信号処理器の第2変形例を示す構成図である。図9に示す第2変形例では、第1実施形態に係る光信号処理器のうち、第1光学系110(図9では第1光学系110に含まれるレンズ113を示している)と光信号調整手段21〜23との間に、光信号遮蔽手段31〜33を設けている点が第1実施形態と異なる点である。以下、この光信号遮蔽手段31〜33について説明する。
【0052】
光信号遮蔽手段31〜33は、yz平面に対して平行な方向に進みy軸に沿って直線状に配置された各集光点に向けて集光する波長λ〜λの光の光路をそれぞれ塞ぐように設けられる。すなわち、光信号遮蔽手段31は、レンズ113から出力される波長λの光の光信号遮蔽手段として、波長λの光の光路上に設けられる。同様に、光信号遮蔽手段32は、レンズ113から出力される波長λの光の光信号遮蔽手段として、波長λの光の光路上に設けられる。また、光信号遮蔽手段33は、レンズ113から出力される波長λの光の光信号遮蔽手段として、波長λの光の光路上に設けられる。
【0053】
光信号遮蔽手段31〜33に含まれる光信号遮蔽部は、例えばレンズ113から出力される特定の波長の光を吸収できる光吸収材により構成されることができる。また、光信号遮蔽部は、光信号遮蔽部31〜33に入力する光を反射して、光学系110,120,130,140とは異なる方向に出力する構成としてもよい。
【0054】
また、図9では示していないが、光信号遮蔽手段は、さらにx軸方向に移動することが可能な可動部をそれぞれ備える。この可動部により、光信号遮蔽手段31〜33を波長λ〜λの光の光路上に移動させたり、光路上とは異なる位置に移動させたりすることができる。この可動部は、例えばMEMS素子などによる。
【0055】
第1実施形態に係る光信号処理器1が、上記の構成を有する光信号遮蔽手段を備えた場合の効果について説明する。
【0056】
光学系110から出力される各波長の光の出力方向の変更は、光信号調整手段21〜23を移動させることにより、特定の反射面を各波長の光の集光点に配置させることにより行われる。具体的には、光学系110から出力される波長λの光の出力方向を、光学系140の方向から光学系130の方向に変更してさらに光量を調整するためには、波長λの光の集光点が反射面215から反射面211の上端(図4に示す光信号調整手段21の位置)にあるように、光信号調整手段21を移動させる必要がある。ここで、光信号処理器1が光信号遮蔽手段を備えていない場合には、波長λの光の集光点が反射面215,214,213,212,211に位置するように光信号調整手段21を移動させなければならない。このとき、光信号調整手段21のそれぞれの反射面に対して波長λの光が照射されるため、各反射面で反射された光が本来の目的とは異なる光学系(例えば光学系140)に一時的に出力される。そこで、本変形例のように光学系110と光信号調整手段21との間に光信号遮蔽手段31を設けて、光信号調整手段21の切替時には、光信号遮蔽手段31を移動させることにより波長λの光の光路を塞ぐように光信号遮蔽部を配置することにより、目的外の光学系に光信号が到達するのを防ぐことができる。
【0057】
(光信号処理器の第3変形例)
図10は第1実施形態に係る光信号処理器の第3変形例を示す斜視図である。第3変形例では、光学系110と光信号調整手段21との間に光信号遮蔽手段34を設けている点は第2変形例と同様であるが、光信号遮蔽手段34の反射面342により反射された波長λの光が光信号調整手段21の反射面213に入射する点が第2変形例と異なる点である。
【0058】
図10に示すように第3変形例に係る光信号遮蔽手段34は光信号調整手段21と同じxy平面に配置され、x軸に沿って直線上に、反射面342と、光信号遮蔽部である反射面341と、を備える。さらに、図10では示していないが、光信号遮蔽手段34はx軸方向に移動することが可能な可動部を備える。これにより、光信号遮蔽手段34を波長λの光の光路上に移動させることができる。この可動部は、例えばMEMS素子などによる。
【0059】
反射面342は、例えば、x軸に対して平行であり、かつ光学系110から出力される波長λの光の光軸に対して45°の傾きを有して配置される。また、反射面341は光信号遮蔽部の機能を備え、光学系110から出力される波長λの光が反射面341において反射した際に、その反射光が光信号調整手段や光学系に到達しない方向に出射されるように配置されている。
【0060】
このような構成を有する光信号遮蔽手段34を用いた場合における光信号調整手段21の切替時の動作について説明する。
【0061】
図10に示すように、光学系110から出力される波長λの光の光路上に光信号遮蔽手段34の反射面342が配置されているとき、波長λの光は反射面342により反射されて、光信号調整手段21の反射面213の方向へ出力される。そして、波長λの光の集光点に配置された反射面213(光路変更部)により光路が変更され、光学系140の方向へ出力される。このようにして光学系140の方向へ出力される。
【0062】
次に、光信号調整手段21の切替時には、光信号調整手段21を切替える前に、波長λの光の光路上に光信号遮蔽手段34の反射面341(光信号遮蔽部)が配置されるように光信号遮蔽手段34の可動部を移動させる。このとき、光学系110から出力され、反射面341により反射された光は、光学系110,120,130,140のいずれにも到達しない。したがって、光信号調整手段21の切替時に、目的外の光学系に光信号が到達するのを防ぐことができる。
【0063】
また、上記の反射面341を光吸収部材としても上記変形例と同様に光信号調整手段21の切替時に、目的外の光学系への光信号の到達を抑制することができる効果が得られる。
【0064】
なお、波長λの光に光信号調整手段21に対して光信号遮蔽手段34が隣接して配置されている図10に示した第3変形例は、特定の波長の光に対して一対の光信号遮蔽手段及び光信号調整手段が配置されることが必要である。すなわち、第1実施形態に係る光信号処理器1のように、3種類の波長の光を分岐させる場合には、それぞれの波長の光が集光される集光点に配置される光信号調整手段に対して光信号遮蔽手段を儲けることにより、目的外の光学系への光信号の到達を抑制することができる。
【0065】
なお、第2変形例及び第3変形例において、光信号遮蔽手段31〜34は、可動部によりx軸方向に移動することが可能であるとしたが、光信号遮蔽手段31〜34の移動方向はx軸方向に限られない。
【0066】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、光ファイバの数(入出力ポートの数)は任意であり、この個数に応じて光路変更部および光量調整部となる反射面の個数を適切に設計すればよい。また、上記実施形態における光信号調整手段に含まれる可動部はx軸方向に沿って移動することができるが、移動方向はこれに限られない。また、光ファイバに替えて、基板上に形成された平面光導波路が用いられてもよい。光学系についても、例えば回折格子素子として透過型に替えて反射型の素子を用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】第1実施形態に係る光信号処理器1の構成図である。
【図2】第1実施形態に係る光信号調整手段21の光路変更部および光量調整部の斜視図である。
【図3】第1実施形態において光信号調整手段21〜23が移動している状態を模式的に示す斜視図である。
【図4】第1実施形態において光信号調整手段21〜23に、波長λ〜λの光が入射したときの各波長の光の反射の様子を模式的に示す斜視図である。
【図5】第1実施形態に係る光信号処理器1の別の動作を示す斜視図である。
【図6】第2実施形態に係る光信号処理器2の構成図である。
【図7】第2実施形態に係る光信号調整手段24の光路変更部および光量調整部を示す図である。
【図8】第1実施形態に係る光信号処理器の第1変形例を示す斜視図である。
【図9】第1実施形態に係る光信号処理器の第2変形例を示す構成図である。
【図10】第1実施形態に係る光信号処理器の第3変形例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0068】
1、2…光信号処理器、11〜16…光ファイバ、110、120、130、140、150、160…光学系、111、113、121、123、131、133、141、143、151、153、161、163…レンズ、112、122、132、142,152、162…回折格子素子、21〜25…光信号調整手段、31〜34…光信号遮蔽手段、211〜215、221〜225、231〜235、241〜249、251〜255、341、342…反射面、253a、255a…開口部、P〜P…ポート。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポートPに光を入力し、その光に含まれる各波長の光をポートP〜Pの何れかのポートから出力する光信号処理器であって、
前記ポートPに入力される光に含まれる各波長の光を空間的に分岐して、その分岐した各波長の光を、直線上に並び互いに異なる集光点へ集光する第1光学系と、
前記第1光学系により集光される各波長の光を入力し、その集光点において各波長の光を入力光路とは異なる光路へ出力する光信号調整手段と、
前記光信号調整手段とポートPの間に設けられ、前記光信号調整手段から特定方向に出力された光を入力して、その光をポートPから出力する第n光学系と、
を備え、
前記光信号調整手段が、
前記直線上に並び互いに異なる集光点毎に設けられ、
前記第1光学系により集光される各波長の光の集光点にある場合に、前記第1光学系により集光される各波長の光を前記第n光学系に向けて出力する光路変更部と、
前記光路変更部に隣接し、前記第1光学系により集光される各波長の光の集光点にある場合に、前記第1光学系により集光される各波長の光を前記第1〜第n光学系のいずれとも異なる方向へ出力する光量調整部と、
前記光路変更部と前記光量調整部とを、前記直線上に並び互いに異なる集光点を含む平面上の直線方向に移動させる可動部と、
を含む
ことを特徴とする光信号処理器(ただし、Nは3以上の整数、nは2以上N以下の各整数)。
【請求項2】
前記光信号調整手段の前記光路変更部または前記光量調整部に光透過部を備え、
前記光透過部が前記第1光学系から出力された各波長の光の集光点にある場合に、前記第1光学系により集光される各波長の光を透過することを特徴とする請求項1記載の光信号処理器。
【請求項3】
前記第1光学系と前記光信号調整手段との間に、光信号遮蔽手段をさらに備え、
前記光信号遮蔽手段は、
前記第1光学系により集光される各波長の光の光路上にある場合に、当該各波長の光を入力して当該光が前記集光点に集光されないようにする光信号遮蔽部と、
前記光信号遮蔽部を移動させる可動部と、
を含むことを特徴とする請求項1または2記載の光信号処理器。
【請求項4】
前記光信号調整手段において、前記光路変更部と隣接する前記光量調整部のなす角が10度以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の光信号処理器。
【請求項5】
前記光信号調整手段における可動部及び前記光信号遮蔽手段における可動部の少なくとも一方がMEMS素子であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の光信号処理器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−69819(P2009−69819A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−205887(P2008−205887)
【出願日】平成20年8月8日(2008.8.8)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【出願人】(593006630)学校法人立命館 (359)
【Fターム(参考)】