説明

光出力が改善されたエレクトロルミネッセンス・デバイス

OLEDデバイスであって、第1の面と第2の面を有する透明な基板(10)と;この基板の第1の面の上に配置された透明な電極層(12)と;この透明な電極層の上に配置された短絡低減層(50)と;この短絡低減層の上に配置されていて、少なくとも1つの発光層(35)と、その発光層の上に配置された電荷注入層(37)とを含む有機発光素子(30)と;電荷注入層の上に配置された反射性電極層(22)と;基板の第1の面または第2の面を覆って配置された光抽出増大構造(40)とを備えていて、短絡低減層が、全厚さ抵抗率が10-9〜102Ω-cm2である透明な膜であり;反射性電極層が、Ag、または80%を超えるAgを含有するAg合金を含み;このデバイスの全体サイズが基板の厚さの10倍よりも大きいOLEDデバイス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエレクトロルミネッセンス・デバイスに関するものであり、より詳細には、光出力を改善するための平坦なエレクトロルミネッセンス・デバイス構造に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、エレクトロルミネッセンス・デバイスに関する。エレクトロルミネッセンス・デバイスの例として、小分子有機発光デバイス(SMOLED)、ポリマー発光デバイス(PLED)、無機エレクトロルミネッセンス・デバイスなどがある。“有機発光デバイス(OLED)”という用語は、小分子有機発光デバイスとポリマー発光デバイスの両方を意味する。
【0003】
典型的な従来のエレクトロルミネッセンス・デバイスは、透明な基板(残りの層よりも1〜4桁厚い)と、透明な第1の電極層と、少なくとも1つの発光層を含む発光素子と、反射性の第2の電極層を備えている。光がエレクトロルミネッセンス・デバイスの中で発生するのは、2つの電極から注入された電子と正孔が発光素子を通って流れ、再結合または衝突イオン化によって光を発生させるときである。発光素子は、放出される光が発生する少なくとも1つの発光層を含むいくつかの材料層を含むことができる。例えばOLEDデバイスの場合には、発光素子は、電子注入層と、電子輸送層と、1つ以上の発光層と、正孔輸送層と、正孔注入層を含むことができる。これらの層のうちのいくつかをまとめることや、追加の層(例えば電子阻止層または正孔阻止層)を追加することができる。第1の電極層がアノードであり、第2の電極層がカソードであることが最も多い。
【0004】
発光材料は、空気よりも大きな屈折率を持つ。発光層と大気の間に位置する透明な基板は、屈折率が発光層よりも小さいが、空気よりも大きいことが最も多い。光が屈折率のより大きな層から屈折率のより小さな層へと伝わるとき、内部全反射が起こる可能性がある。内部全反射された光は、屈折率のより小さな基板の中に入ることはできず、屈折率のより大きな層の中にトラップされる。例えばOLEDデバイスの場合には、発光層は一般に屈折率が1.7〜1.8であり、透明な電極層は屈折率が約1.9であり、基板は屈折率が約1.5である。内部全反射は、透明な電極層/基板の界面で起こる可能性がある。法線に対して臨界角よりも大きな角度で発光層からこの界面に到達する光の一部は有機層と透明な電極層の中にトラップされ、最終的にこれらの層の材料に吸収されるため、有効な機能を果たすことがない。光のこの部分を有機モードの光と呼ぶ。同様に、内部全反射は、基板/大気の界面でも起こる可能性がある。法線に対して臨界角よりも大きな角度でこの界面に到達する光の一部は、基板と透明な電極層と有機層の中にトラップされ、最終的にデバイスの中でこれらの層の材料に吸収されるか、OLEDデバイスの縁部で励起されるため、有効な機能を果たすことがない。光のこの部分を基板モードの光と呼ぶ。発光層から発生する光の50%超が最終的に有機モードの光になり、30%超が最終的に基板モードの光になり、発光層からの光の20%未満が大気中に出て有効な光となる。発生してデバイスから実際に出ていくこの20%の光を大気モードの光と呼ぶ。したがって内部全反射が原因となった光のトラップにより、エレクトロルミネッセンス・デバイスの出力効率が著しく低下する。
【0005】
光がトラップされる効果を小さくすることによって薄膜エレクトロルミネッセンス・デバイスの効率を大きくし、基板モードの光と有機モードの光がデバイスから出ていけるようにするため、さまざまな方法がこれまでに提案されてきた。そうした方法が、以下の参考文献に詳細に記載されている:アメリカ合衆国特許第5,955,837号、第5,834,893号、第6,091,195号、第6,787,796号、第6,777,871号、アメリカ合衆国特許出願公開2004/0217702 A1、2005/0018431 A1、2001/0026124 A1、WO 02/37580 A1、WO 02/37568 A1(これらの内容は、参考としてこの明細書に組み込まれているものとする)。これらの方法のうちの多くは光の抽出をうまく増大させることがわかっているが、問題が残されている。
【0006】
本発明により、光の抽出効率と動作寿命が改善されたエレクトロルミネッセンス・デバイスが提供される。
【0007】
光のトラップはOLEDデバイスの中で起こる。なぜなら発光層で発生した光線の一部は有機層-基板の界面または基板-大気の界面(今後は“界面”と呼ぶ)に臨界角よりも大きな角度で入射し、全反射(TIR)によってOLEDデバイスの中に戻されるからである。するとTIR光はOLED構造の中を伝播し、反射性電極によって反射されてこれらの界面に再び何度も入射した後、OLED構造のさまざまな層に完全に吸収されるか、OLEDデバイスの縁部から外に出てゆくことになる。OLED構造は平坦な形状であるため、反射された光がこれら界面に向かって入射する角度が変わることは決してなく、常にTIRの問題が起こる。したがってTIR光はOLED構造の中にトラップされる。この光を大気中に取り出せるようにするには、これら界面への入射角を変える必要がある。光の抽出効率を増大させるため従来から提案されているさまざまな方法では、光の方向を変えてトラップされた光が大気中に出ていく機会を増やすことのできる増大構造が提示されている。発光層からはいくらかの光があらゆる方向に出ていくため、発光層から発生したその光はあらゆる角度で界面に到達する。提案されているどの方法も、すべての光線の方向を臨界角よりも小さな角度となる方向に変化させて完全に大気中に出ていけるようにすることはできない。従来法は、そうではなく、光線が増大構造にぶつかるたびにその光線の一部だけを好ましい方向(臨界角未満)に変化させる。例えばマイクロ-レンズ構造またはフォトニック結晶構造を用いる方法では、ある角度範囲内でその構造にぶつかる光線の方向を変化させて大気中に出ていけるようにすることが可能である。散乱中心を利用する方法は、そこにぶつかるあらゆる光の一部の方向をランダムに、または半ばランダムに変化させて大気中に出す。どの場合にも、発生した光がすべて出ていくには多くの経路を通る。OLED構造の中を伝播する間に光は吸収されて失われる可能性がある。すべての光が大気中に出ていく前にいつくかの経路を通るという事実があるため、問題が大きくなっている。反射性電極が吸収問題に対して大きく貢献できる可能性があることが見いだされた。反射性電極としてよく反射する金属を用いると望ましいことが広く認識されているとはいえ、OLEDで最も一般的に用いられている反射性電極であるアルミニウムでさえ、その大きな反射率のため、光抽出増大構造を用いるときに抽出効率が大きく低下することが見いだされた。また、AgまたはAgをベースとした合金は、光抽出増大構造を有するOLEDの反射性電極として用いると、はるかに優れた結果をもたらすことも見いだされた。光抽出増大構造のない従来のOLEDでは、Al電極を用いたOLEDと、AgまたはAgをベースとした合金を用いたOLEDの間の性能の違いは、無視できるほど小さい。AgまたはAgをベースとした合金の優れた性能は、光抽出増大構造を用いるときにだけ顕著になる。アメリカ合衆国特許第6,965,197号には、反射性電極としてAgまたはAgをベースとした合金を用いることが提案されている。しかし実際には、AgまたはAgをベースとした合金がOLEDの反射性電極として用いられることは稀である。なぜならAgまたはAgをベースとした合金からなる電極の使用に伴う問題が存在しているからである。第1に、Agは、仕事関数の値が、アノードとしてうまく機能する上で小さすぎ、カソードとしては大きすぎる。第2に、反射性電極としてAgまたはAgをベースとした合金を用いたOLEDデバイスは、短絡のために動作中の早すぎる段階で故障する傾向があることが経験的にわかっている。第3に、反射性電極としてAgまたはAgをベースとした合金を用いるときには、電極による吸収が減るため発生した光が平均としてデバイスの中を横方向により多く伝播した後に取り出されることが見いだされている。デバイスの全体サイズが基板の厚さよりも著しく大きくはない場合には、いくらかの光がデバイスの領域の外に広がり、デバイス領域の外部にある構造によって吸収されて失われるか、デバイスの反対側から外に出ていくか、基板の端部から出ていく。この広がりによる損失はかなり大きい可能性がある。
【0008】
OLEDデバイスは、画素化したデバイス(例えばアクティブ・マトリックス・ディスプレイまたはパッシブ・マトリックス・ディスプレイ)にすることができる。画素化したデバイスは、多数の小さな発光画素に分割された能動領域を持っていて、画素同士を隔てる非発光領域を含むことができる。デバイスの全領域は、すべての画素を主として含む領域と、画素同士を隔てる非発光領域になろう。OLEDデバイスは、多数の区画で構成することもできる。その例が直列接続のアレイを有するOLEDデバイスであり、アメリカ合衆国特許第6,694,296号と第7,034,470号に記載されている。デバイスの全領域は、すべての区画を主として含む領域になろう。
【0009】
この明細書では、デバイスの全体サイズは、デバイスの全領域の一方向の最小サイズである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、効果的な電荷注入層を発光素子の一部として用いることによって仕事関数のマッチングという問題を解決する。この電荷注入層は、AgまたはAgをベースとした合金からなる反射性電極層に隣接して配置される。反射性電極層をカソードとして用いる場合には電子注入層を選択し、反射性電極層をアノードとして用いる場合には正孔注入層を選択する。適切な電子注入層または正孔注入層はあとで詳細に説明する。本発明は、適切な抵抗率を持つ薄い透明な層を2つの電極の間に配置することによって短絡による早すぎる段階の故障を解決する。適切な抵抗率を持つこの薄い透明な層をこの明細書では短絡低減層と呼ぶ。本発明は、デバイスの全体サイズが基板の厚さの少なくとも10倍超であるデバイス構造を用いることによって広がりによる損失の問題も解決する。
【0011】
本発明の一実施態様では、OLEDデバイスは、
(a)第1の面と第2の面を有する透明な基板と;
(b)この基板の第1の面の上に配置された透明な電極層と;
(c)この透明な電極層の上に配置された短絡低減層と;
(d)この短絡低減層の上に配置されていて、少なくとも1つの発光層と、その発光層の上に配置された電荷注入層とを含む有機発光素子と;
(e)電荷注入層の上に配置された反射性電極層と;
(f)基板の第1の面または第2の面を覆って配置された光抽出増大構造とを備えていて、
短絡低減層は、全厚さ抵抗率が10-9〜102Ω-cm2である透明な膜であり;反射性電極層は、Ag、または80%を超えるAgを含有するAg合金を含み;このデバイスの全体サイズは基板の厚さの10倍よりも大きい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明によるOLEDデバイスの概略断面図である。
【図2】直列に接続された複数の区画からなるアレイを有する本発明のOLEDデバイスの概略断面図である。
【図3】直列に接続された複数の区画からなるアレイを有する本発明のOLEDデバイスの概略上面図である。
【図4】本発明によるOLEDデバイスの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
OLEDデバイスに関して本発明を以下に説明する。しかし同じこと、または同様のことが、無機エレクトロルミネッセンス・デバイスにも当てはまることを理解されたい。
【0014】
アメリカ合衆国特許出願公開2005/2225234は、薄い抵抗膜を用いることで、OLEDデバイスが動作する前に起こりがちな短絡という欠陥に起因する有害な効果を減らすことを教示している。その目的は、製造の歩留まりを大きくすることである。本発明で扱う主題は、AgまたはAgをベースとした合金を用いて動作前に短絡という欠陥がないOLEDデバイスを提供することである。しかしこのOLEDデバイスは、実際に動作させている間に短絡という欠陥を起こしやすい。OLEDデバイスを通過する電流は明らかにこのような欠陥を誘起するが、短絡という欠陥が誘起されるメカニズムはわかっていない。1つの仮説は、2つの電極間の高電場または動作電流がAg原子を移動させて導電性フィラメントを形成し、それがOLED構造に含まれる多くの層に侵入して2つの電極を接続するというものである。これが実際のメカニズムだとすると、Agフィラメントは短絡低減層にも侵入する可能性がある。まったく予想外なことに、本発明に従って短絡低減層に適切な材料を選択するとこのような侵入は起こらず、デバイスが動作することによって誘導される短絡による故障の劇的な減少が観察された。
【0015】
図1を参照すると、本発明の一実施態様によるOLEDデバイス101が示されている。全体サイズ16を持つOLEDデバイス101は、第1の面10aと第2の面10bと厚さ10cを持つ基板10を備えている、基板10の第1の面10aの上には、透明な電極層12と、短絡軽減層50と、有機発光素子30と、反射性電極層22が配置されている。基板10の第2の面10bの下には、光抽出増大構造40が配置されている。それに加え、第1の面10aまたは第2の面10bの上に他の層が存在していてもよい。それは例えば、反射性電極層22および/または光抽出増大構造40を覆って配置される保護層である。
【0016】
有機発光素子30は、少なくとも1つの発光層35と、電荷注入層37を備えている。有機発光素子30は、他の層も備えることができる。それは例えば、第2の電荷注入層、電子輸送層、より多くの発光層、正孔輸送層である。有機発光素子30は、2つ以上の発光層が接続層によって隔てられた積層構造を備えていてもよい。積層構造の構成は、アメリカ合衆国特許第6,872,472号、第6,936,961号、第6,717,358号、第6,991,859号、第7,126,267号、アメリカ合衆国特許出願公開2005/0029933 A1、2006/0040132 A1、2006/0087225 A1に記載されている(これらの内容は、参考としてこの明細書に組み込まれているものとする)。電荷注入層37が反射性電極層22に隣接して配置され、反射性電極層22がカソードである場合には電子注入層として選択され、反射性電極層22がアノードである場合には正孔注入層として選択される。動作中は電圧が透明な電極層12と反射性電極層22の間に印加されて電荷担体が発光層35に注入される。その電荷担体が結合すると発光層35で光が発生する。OLEDデバイス101は一般にボトム-エミッション型デバイスと呼ばれており、このOLEDデバイスの発光層35から発生する光は、短絡低減層50と、透明な電極層12と、透明な基板10を伝わって大気中に出る。
【0017】
透明な電極層12は、一般に、透明な導電性金属酸化物層(例えばインジウム-スズ酸化物(ITO)、インジウム-亜鉛酸化物(IZO)、アルミニウムをドープした亜鉛酸化物(AZO)など)で形成される。あるいは透明な電極層12は、薄い金属膜で形成すること、または薄い金属膜と1つ以上の透明な酸化物層(例えばITO、IZO、AZO)の組み合わせで形成することができる。金属は、Ag、Agをベースとした合金、Mg、Ag-Mg合金、Au、Al、Cuのいずれかであることが好ましい。反射性電極層22は、AgまたはAgをベースとした合金で形成することが好ましい。本発明の目的のためには、Agをベースとした合金は、80原子%を超えるAgを含む合金である。反射性電極層22は2つ以上の層を含んでいてもよく、その場合には、少なくとも1つの層(有機発光素子に最も近い層が好ましい)がAgまたはAgをベースとした合金を含む。反射性電極層22は、一般的な真空堆積法(例えば蒸着やスパッタリング)で形成することができる。反射性電極層22の好ましい厚さは30nm以上である。
【0018】
短絡低減層50は、OLEDデバイスを動作させている間に起こる短絡という欠陥の有害な効果を小さくすることのできる適切な導電率の薄い透明な層である。短絡低減層50は、基板10の第1の面10aの面積の大半に付着させることができる。あるいはOLEDデバイスが2つ以上の区画を含んでいる場合には、短絡低減層50を区画と同じパターンで形成し、OLEDデバイスの有効面積だけを主に覆うようにすることもできる。
【0019】
AgまたはAgをベースとした合金からなる反射性電極を有するOLEDデバイスを動作させることによって誘起される短絡という故障は、高電場または動作電流の結果として導電性Agフィラメントが2つの電極間に形成されることによって起こると考えられている。このようなフィラメントは、形成されると抵抗の小さな経路を形成し、印加される電流をデバイスからそれさせて故障させる。適切に選択された短絡低減層50は、OLEDデバイスそのものに付加する電気抵抗よりもはるかに大きな電気抵抗をAgフィラメントに付加する。なぜならAgフィラメントはOLEDデバイスよりも接触面積がはるかに小さいからである。印加された電流は今やAgフィラメントよりもOLEDデバイスのほうを優先的に流れるため、Agフィラメントの有害な効果が軽減される。
【0020】
本発明の詳細な説明を容易にするため、以下の用語を定義する:
(a)材料の基本的な特性であるバルク抵抗率ρ(単位はΩcm)。
(b)厚さtの薄いシート状材料の抵抗率であるシート抵抗率ρ/t(単位はΩまたはΩ/□だが、後者が好ましい)。
(c)厚さtの薄いシート状材料の厚さ全体の抵抗率である全厚さ抵抗率ρt(単位はΩcm2)。
【0021】
OLEDデバイスの実効電気抵抗は、そのサイズと動作条件に依存する。本発明の一実施態様では、OLEDデバイス101は1000 cd/m2で動作し、輝度効率は20 cd/Aであり、動作電圧は3ボルトである。したがってOLEDデバイス101の実効全厚さ抵抗率は約600Ωcm2である。OLEDデバイス101のサイズが10cm2であるならば、このOLEDデバイスの実効電気抵抗は約60Ωである。例えば短絡という欠陥を流れる電流が印加される電流の10%未満であるようにするためには、短絡という欠陥の全電気抵抗は600Ωよりも大きくなければならない。Agフィラメントの全接触面積が100nm×100nm(10-10cm2)であるならば、全厚さ抵抗率が6×10-8Ωcm2以上である薄膜層は、短絡という欠陥に600Ωよりも大きな抵抗を付加することになり、短絡低減層50として有効であろう。全厚さ抵抗率がより大きな薄膜は、短絡という欠陥の有害な効果を減らす上でより一層効果的である。しかし抵抗率には限度がある。なぜなら短絡低減層50の存在によってOLEDデバイスにも電気抵抗が付加されるからである。この例ではOLEDデバイスは実効全厚さ抵抗率が600Ωcm2であるため、付加される抵抗によってOLEDデバイスの性能が10%以上低下しないようにするには、短絡低減層は、この値の10%、すなわち60Ωcm2よりも小さい全厚さ抵抗率を持たねばならない。したがってここで議論しているケースに関しては、全厚さ抵抗率が6×10-8Ωcm2〜60Ωcm2の薄膜を有効な短絡低減層50として用いることができる。短絡低減層50の好ましい厚さは、約20nm〜約200nmである。したがって短絡低減層のための材料に必要なバルク抵抗率は、20nmの薄膜に関しては約3×10-2〜3×107Ωcmであり、200mの薄膜に関しては3×10-3〜3×106Ωcmである。対応するシート抵抗率は、20nmの薄膜に関しては1.5×104〜1.5×1013Ω/□であり、200mの薄膜に関しては1.5×103〜1.5×1012Ω/□である。
【0022】
本発明は、上に説明したのとは異なる条件下で別の動作効率を持つOLEDデバイスにも適用できる。たいていのOLEDデバイスでは、短絡低減層50の全厚さ抵抗率は6×10-8Ωcm2〜102Ωcm2の範囲でなければならない。この範囲は、2×10-6Ωcm2〜2Ωcm2であることが好ましい。これは、バルク抵抗率が3×10-3Ωcm〜3×107Ωcm(10-1Ωcm〜16Ωcmの範囲が好ましい)の材料で形成した厚さ20〜200nmの薄膜を用いて実現できる。
【0023】
短絡低減層50で使用できる材料として、無機のインジウム酸化物、亜鉛酸化物、スズ酸化物、モリブデン酸化物、バナジウム酸化物、アンチモン酸化物、ビスマス酸化物、レニウム酸化物、タンタル酸化物、タングステン酸化物、ニオブ酸化物、ニッケル酸化物や、これらの混合物がある。これら酸化物材料の薄膜は、一般的な真空堆積法(例えば蒸着やスパッタリング)で形成することができる。これら酸化物材料のうちのいくつか、またはその混合物の薄膜は、例えばOLEDまたは光電変換太陽電池の透明な電極などの用途に適した抵抗率の小さいものが開発されていることに注意されたい。そのような用途では、バルク抵抗率は約10-3Ωcm未満でなければならないが、その場合には、薄膜は短絡低減層として機能できない。しかし酸素分圧などの堆積条件を適切に制御することにより、これらの材料からなる薄膜で、短絡低減層として有用な範囲の抵抗率を持つものを調製できる。短絡低減層として用いるのに適した他の材料として、上に挙げた酸化物材料と、酸化物、フッ化物、窒化物、硫化物、ならびにこれらの混合物の中から選択した絶縁材料との混合物が挙げられる。混合物層の抵抗率は、これら2種類の材料の比を調節することによって望む範囲の値にすることができる。短絡低減層のための特に有用な1つの材料は、硫化亜鉛または硫化亜鉛-酸化ケイ素混合物と、インジウム-スズ酸化物、インジウム酸化物、スズ酸化物いずれかとの混合物である。材料の混合物を含む層は、2種類以上のターゲットから同時にスパッタリングすることによって、または2種類以上の蒸発源から同時に蒸発させることによって作製できる。あるいはそのような層は、混合物にした複数の材料を含むあらかじめ混合したターゲットからスパッタリングすることによって、またはあらかじめ混合した供給源から蒸発させることによって(フラッシュ蒸発またはワイヤ-フィード蒸発の利用を含む)作製することができる。
【0024】
光抽出増大構造40は、OLEDデバイスからの発光を改善する任意の構造が可能である。光抽出増大構造40の例は、以下の参考文献に詳細に記載されている:アメリカ合衆国特許第5,955,837号、第5,834,893号、第6,091,195号、第6,787,796号、第6,777,871号、アメリカ合衆国特許出願公開2004/0217702 A1、2005/0018431 A1、2001/0026124 A1、WO 02/37580 A1、WO 02/37568 A1(これらの内容は、参考としてこの明細書に組み込まれているものとする)。有効な光抽出増大構造として、散乱層、粗い表面、フォトニック結晶、マイクロ-レンズ・アレイなどがある。散乱層は、粒子または空孔を、その粒子または空孔とは異なる屈折率を持つマトリックスの中に分散させて形成することができる。散乱層で第2の面10bを覆うこと、または散乱層で別の支持体の表面を覆った後に第2の面10bと貼り合わせることができる。散乱層は、粒子間に空孔がある屈折率の大きな粒子からなる被覆を第2の面10bに形成したものにすることもできる。屈折率の大きな好ましい粒子の選択は、チタン酸化物、ジルコニウム酸化物、ニオブ酸化物、タンタル酸化物、亜鉛酸化物、スズ酸化物、硫化亜鉛からなるグループの中からなされる。粒子のサイズは約100nm〜約10,000nmの範囲が可能であり、粒子の形状は、球形、楕円体形、不規則な形のいずれかが可能である。粒子は、不規則な形状であって一方向の最大サイズが300nm〜約2,000nmであることが好ましい。また、粒子の材料はチタン酸化物であることが好ましい。マイクロ-レンズ・アレイは、半球形またはピラミッド形の表面突起からなる二次元の規則的または不規則なアレイである。マイクロ-レンズ・アレイは、エンボス加工またはエッチングによって第2の面10bを直接加工して形成すること、または第2の面10bの表面にそのような凹凸を持つ別の材料からなるシートを貼り付けて形成することができる。表面の凹凸のサイズは、約1,000nm〜約1,000,000nmであることが好ましい。粗い表面は、第2の面10bを、特定のサイズまたは形状にならないようにランダムに粗くしたものである。フォトニック結晶は、第2の面10bの表面に、または第2の面10bに貼り合わせた別の材料からなるシートの表面に形成された周期的な誘電構造である。
【0025】
AgまたはAgをベースとした合金を含む反射性電極層22を有するOLEDデバイスでは、光抽出増大構造40はデバイス領域にトラップされたすべての光を取り出せるわけではないため、デバイスの全体サイズ16が基板の厚さ10cよりも著しく大きいのでなければ、かなりの量の光が基板10の中を横方向に移動してデバイス領域の外に出てゆき失われる。光を効果的に取り出すには、デバイスの全体サイズ16は、基板の厚さ10cの少なくとも10倍、好ましくは20倍超でなければならない。
【0026】
図2を参照すると、本発明の一実施態様によるOLEDデバイス102の概略断面図が示されている。OLEDデバイス102は、共通する1つの基板10上の4つのOLED区画が直列に接続されたアレイである。ここでは、1つの区画の透明な電極が、その区画の左にある次の区画の反射性電極層に接続されている。OLEDデバイス101におけるように、どのOLED区画もすべての層を含んでいるが、図を見やすくするため図2にはすべての層は示していない。左にある第1の区画の反射性電極層22と右にある最後の区画の透明な電極12に電圧を印加すると、電流が4つの区画すべてを通って流れ、そのすべての区画が光を発生させる。このように直列に接続されたアレイは、アメリカ合衆国特許第6,694,296号、第7,034,470号に詳細に記載されている。図2には、デバイスの全体サイズ16と基板の厚さ10cも示されている。個々の区画または画素は、アメリカ合衆国特許第5,703,436号と第6,274,980号に記載されている積層OLED構造を持つこともできる。この構造では、複数の発光層が接続層によって隔てられている。
【0027】
図3を参照すると、本発明の一実施態様によるOLEDデバイス103の上面図が示されている。OLEDデバイス103は、共通する1つの基板10の表面に直列に接続された6つのアレイ60を備えている。OLEDデバイス101におけるように、OLEDデバイス103はすべての層を含んでいるが、説明をわかりやすくするため、基板10と、透明な電極層12と、反射性電極層22だけを示してある。図3には、デバイスの全体サイズ16と基板の厚さ10cも示されている。ここでも、複数の区画または画素を有するデバイスにとって、デバイスの全体サイズは、OLEDデバイスの全能動領域の一方向の最小サイズである。
【0028】
図4を参照すると、OLEDデバイス201の概略断面図が示されている。OLEDデバイス201は、基板10と、光抽出増大構造40と、透明な電極層12と、短絡低減層50と、有機発光素子30と、反射性電極層22を備えている。ここでは光抽出増大構造40が基板10と透明な電極層12の間に配置されていることを除き、どの層にもOLEDデバイス101と同じ説明が当てはまる。したがって光抽出増大構造40は、その上にデバイスを短絡させることなく他の層を形成するため、滑らかな表面という追加の特徴を持つ必要がある。OLEDデバイス201は、画素化または区画化することもできる。本発明のOLEDデバイスは、ディスプレイ装置または照明装置として利用できる。前者の場合には、OLEDデバイスは、パッシブ・マトリックス構造またはアクティブ・マトリックス構造の一部にすることができる。
【0029】
一般的なデバイス構造
【0030】
基板
【0031】
本発明のOLEDは一般に支持用基板の上に設けられ、カソードまたはアノードをその基板と接触させることができる。基板と接触する電極を通常は底部電極と呼ぶ。通常、底部電極はアノードだが、本発明がこの構成に限定されることはない。基板は、どの方向に光を出したいかに応じ、透光性または不透明にすることができる。透光特性は、基板を通してEL光を見る上で望ましい。その場合には、透明なガラスまたはプラスチックが一般に用いられる。EL光を上部電極を通じて見るような用途では、底部支持体の透過特性は重要でないため、底部支持体は、透光性、光吸収性、光反射性のいずれでもよい。この場合に用いる基板としては、ガラス、プラスチック、半導体材料、シリコン、セラミック、絶縁性表面層を有する金属、回路板材料などがある。もちろん、このような構成のデバイスでは透光性のある上部電極を設ける必要がある。
【0032】
アノードとカソード
【0033】
透明な電極12は、OLEDデバイスのアノードでもカソードでもよい。透明な電極12がアノードである場合には、反射性電極層22はカソードであり、逆も同様である。
【0034】
正孔注入層(HIL)
【0035】
必ずしも必要なわけではないが、HILをアノードに接触させて設けると有用であることがしばしばある。特に、AgまたはAgをベースとした合金で形成された反射性電極層22をアノードとして用いる場合、その反射性電極層22と接するHILが重要である。なぜなら、AgまたはAgをベースとした合金は、正孔を効率的に注入するのに適した仕事関数を持たないからである。HILは、HTLへの正孔の注入を容易にしてOLEDの駆動電圧を低下させる機能を持つことができる。HILは、後に続く有機層の膜形成能力を向上させうる場合がある。HILで用いるのに適した材料として、アメリカ合衆国特許第4,720,432号に記載されているポルフィリン化合物、アメリカ合衆国特許第6,208,075号に記載されているプラズマ堆積させたフルオロカーボン・ポリマー、いくつかの芳香族アミン(例えばm-MTDATA(4,4',4"-トリス[(3-エチルフェニル)フェニルアミノ]トリフェニルアミン))などがある。有機ELデバイスにおいて有用であることが報告されている別の正孔注入材料は、ヨーロッパ特許第0 891 121 A1号と第1 029 909 A1号に記載されている。
【0036】
アメリカ合衆国特許第6,423,429号に記載されているように、p型をドープされた有機層もHILにおいて有用である。p型をドープされた有機層とは、導電性であって電荷担体が主に正孔である層を意味する。導電性は、電子がホスト材料からドーパント材料に移動する結果として電荷移動錯体が形成されることによって生じる。
【0037】
いくつかの無機金属酸化物も優れたHIL材料である。有用な無機HIL材料として、モリブデン酸化物、バナジウム酸化物、ニッケル酸化物、銀酸化物などがある。これらの材料からなる非常に薄い10分の数nm〜数10nmという層が望ましいHIL機能を提供することができる。
【0038】
正孔輸送層(HTL)
【0039】
OLEDにおけるHTLは、少なくとも1種類の正孔輸送化合物(例えば芳香族第三級アミン)を含んでいる。芳香族第三級アミンは、炭素原子(そのうちの少なくとも1つは芳香族環のメンバーである)だけに結合する少なくとも1つの3価窒素原子を含んでいる化合物であると理解されている。芳香族第三級アミンの1つの形態として、アリールアミン(例えばモノアリールアミン、ジアリールアミン、トリアリールアミン、重合アリールアミン)が可能である。モノマー・トリアリールアミンの例は、Klupfelらによってアメリカ合衆国特許第3,180,730号に示されている。1個以上のビニル基で置換された他の適切なトリアリールアミン、および/または少なくとも1つの活性な水素含有基を含む他の適切なトリアリールアミンは、Brantleyらによってアメリカ合衆国特許第3,567,450号と第3,658,520号に開示されている。
【0040】
芳香族第三級アミンのより好ましいクラスは、アメリカ合衆国特許第4,720,432号と第5,061,569号に記載されている少なくとも2つの芳香族第三級アミン部分を含むものである。HTLは、単一の芳香族第三級アミン化合物で、または芳香族第三級アミン化合物の混合物で形成することができる。有用な芳香族第三級アミンの代表例は以下のものである。
1,1-ビス(4-ジ-p-トリルアミノフェニル)シクロヘキサン
1,1-ビス(4-ジ-p-トリルアミノフェニル)-4-フェニルシクロヘキサン
4,4'-ビス (ジフェニルアミノ)クアドリフェニル
ビス(4-ジメチルアミノ-2-メチルフェニル)フェニルメタン
N,N,N-トリ(p-トリル)アミン
4-(ジ-p-トリルアミノ)-4'-[4(ジ-p-トリルアミノ)-スチリル]スチルベン
N,N,N',N'-テトラ-p-トリル-4,4'-ジアミノビフェニル
N,N,N',N'-テトラフェニル-4,4'-ジアミノビフェニル
N,N,N',N'-テトラ-1-ナフチル-4,4'-ジアミノビフェニル
N,N,N',N'-テトラ-2-ナフチル-4,4'-ジアミノビフェニル
N-フェニルカルバゾール
4,4'-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル
4,4'-ビス[N-(1-ナフチル)-N-(2-ナフチル)アミノ]ビフェニル
4,4"-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]-p-テルフェニル
4,4'-ビス[N-(2-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル
4,4'-ビス[N-(3-アセナフテニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル
1,5-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ナフタレン
4,4'-ビス[N-(9-アントリル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル
4,4"-ビス[N-(1-アントリル)-N-フェニルアミノ]-p-テルフェニル
4,4'-ビス[N-(2-フェナントリル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル
4,4'-ビス[N-(8-フルオランテニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル
4,4'-ビス[N-(2-ピレニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル
4,4'-ビス[N-(2-ナフタセニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル
4,4'-ビス[N-(2-ペリレニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル
4,4'-ビス[N-(1-コロネニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル
2,6-ビス(ジ-p-トリルアミノ)ナフタレン
2,6-ビス[ジ-(1-ナフチル)アミノ]ナフタレン
2,6-ビス[N-(1-ナフチル)-N-(2-ナフチル)アミノ]ナフタレン
N,N,N',N'-テトラ(2-ナフチル)-4,4"-ジアミノ-p-テルフェニル
4,4'-ビス{N-フェニル-N-[4-(1-ナフチル)-フェニル]アミノ}ビフェニル
4,4'-ビス[N-フェニル-N-(2-ピレニル)アミノ]ビフェニル
2,6-ビス[N,N-ジ(2-ナフチル)アミン]フルオレン
1,5-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ナフタレン
4,4',4"-トリス[(3-メチルフェニル)フェニルアミノ]トリフェニルアミン。
【0041】
有用な正孔輸送材料の別のクラスとして、ヨーロッパ特許第1 009 041号に記載されている多環式芳香族化合物がある。3個以上のアミン基を持つ第三級芳香族アミンを使用できる。その中にはオリゴマー材料が含まれる。さらに、正孔輸送ポリマー材料を使用することができる。それは、例えば、ポリ(N-ビニルカルバゾール)(PVK)、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、コポリマー(例えばポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(4-スチレンスルホネート)(PEDOT/PSSとも呼ばれる))などである。
【0042】
発光層(LEL)
【0043】
アメリカ合衆国特許第4,769,292号、第5,935,721号により詳しく説明されているように、OLED 200のLEL 134は、ルミネッセンス材料または蛍光材料を含んでおり、この領域で電子-正孔対の再結合が起こる結果としてエレクトロルミネッセンスが生じる。LELは、1種類または複数種類のゲスト化合物をドープした少なくとも1種類のホスト材料を含むことができる。光は主としてドーパントから発生し、任意の色が可能である。LEL内のホスト材料は、電子輸送材料、または正孔輸送材料、または正孔-電子再結合をサポートする別の1つの材料または組み合わせた材料にすることができる。ドーパントは通常は強い蛍光染料の中から選択されるが、リン光化合物(例えばWO 98/55561、WO 00/18851、WO 00/57676、WO 00/70655に記載されている遷移金属錯体)も有用である。ドーパントは、一般に0.01〜10重量%の割合でホスト材料に組み込まれる。ポリマー材料もホスト材料として用いることができ、ポリフルオレンやポリビニルアリーレンなど(例えばポリ(p-フェニレンビニレン)(PPV)))がある。この場合には、小分子ドーパントをホストであるポリマーに分子として分散させること、またはドーパントを少量成分として共重合させてホストのポリマーに添加することができよう。
【0044】
ドーパントとして染料を選択するための重要な1つの関係は、電子エネルギーのバンド・ギャップの比較である。ホストからドーパント分子にエネルギーが効率的に移動するための1つの必要条件は、ドーパントのバンド・ギャップがホスト材料のバンド・ギャップよりも小さいことである。リン光発光体では、ホストの三重項エネルギーのレベルが、ホストからドーパントへのエネルギーの移動を可能にするのに十分な高さであることも重要である。
【0045】
有用であることが知られているホスト分子および発光分子として、アメリカ合衆国特許第4,768,292号、第5,141,671号、第5,150,006号、第5,151,629号、第5,405,709号、第5,484,922号、第5,593,788号、第5,645,948号、第5,683,823号、第5,755,999号、第5,928,802号、第5,935,720号、第5,935,721号、第6,020,078号に開示されているものなどがある。
【0046】
8-ヒドロキシキノリン(オキシン)の金属錯体と、それと同様の誘導体は、エレクトロルミネッセンスをサポートすることのできる有用なホスト化合物の1つのクラスを形成する。有用なキレート化オキシノイド化合物の代表例は以下のものである。
CO-1:アルミニウムトリスオキシン[別名、トリス(8-キノリノラト)アルミニウム(III)]
CO-2:マグネシウムビスオキシン[別名、ビス(8-キノリノラト)マグネシウム(II)]
CO-3:ビス[ベンゾ{f}-8-キノリノラト]亜鉛(II)
CO-4:ビス(2-メチル-8-キノリノラト)アルミニウム(III)-μ-オキソ-ビス(2-メチル-8-キノリノラト)アルミニウム(III)
CO-5:インジウムトリスオキシン[別名、トリス(8-キノリノラト)インジウム]
CO-6:アルミニウムトリス(5-メチルオキシン)[別名、トリス(5-メチル-8-キノリノラト)アルミニウム(III)]
CO-7:リチウムオキシン[別名、(8-キノリノラト)リチウム(I)]
CO-8:ガリウムオキシン[別名、トリス(8-キノリノラト)ガリウム(III)]
CO-9:ジルコニウムオキシン[別名、テトラ(8-キノリノラト)ジルコニウム(IV)]。
有用なホスト材料の他のクラスとして、アントラセンの誘導体(例えば2-(1,1-ジメチルエチル)-9,10-ビス(2-ナフタレニル)アントラセン(TBADN)、9,10-ジ-(2-ナフチル)アントラセン(ADN)と、アメリカ合衆国特許第5,935,721号に記載されているこれらの誘導体)、アメリカ合衆国特許第5,121,029号に記載されているジスチリルアリーレン誘導体、ベンズアゾール誘導体(例えば2,2',2"-(1,3,5-フェニレン)トリス[1-フェニル-1H-ベンゾイミダゾール])、青色発光金属キレート化オキシノイド化合物(例えばビス(2-メチル-8-キノリノラト)(4-フェニルフェノラト)アルミニウム(B-Alq))などがある。カルバゾール誘導体はリン光発光体のための特に有用なホストである。
【0047】
有用な蛍光ドーパントとして、アントラセンの誘導体、テトラセンの誘導体、キサンテンの誘導体、ペリレンの誘導体、ルブレンの誘導体、クマリンの誘導体、ローダミンの誘導体、キナクリドンの誘導体、ジシアノメチレンピラン化合物、チオピラン化合物、ポリメチン化合物、ピリリウム化合物、チアピリリウム化合物、フルオレン誘導体、ペリフランテン誘導体、インデノペリレン誘導体、ビス(アジニル)アミンホウ素化合物、ビス(アジニル)メタン化合物、カルボスチリル化合物などがある。
【0048】
本発明では、LELの厚さは5nm〜45nmの範囲である。発光層の厚さは5nm〜30nmの範囲であることが好ましい。より好ましいのは、発光層の厚さが5nm〜20nmの範囲になっていることである。
【0049】
電子輸送層(ETL)
【0050】
OLEDデバイスのETLを形成する際に用いるのが好ましい薄膜形成材料は、金属キレート化オキシノイド系化合物(オキシンそのもの(一般には8-キノリノールまたは8-ヒドロキシキノリンとも呼ばれる)のキレートも含む)である。このような化合物は、電子の注入と輸送を容易にし、優れた性能を示すのを助け、しかも容易に薄膜の形態にすることができる。オキシノイド化合物の例は以下のものである。
CO-1:アルミニウムトリスオキシン[別名、トリス(8-キノリノラト)アルミニウム(III)]
CO-2:マグネシウムビスオキシン[別名、ビス(8-キノリノラト)マグネシウム(II)]
CO-3:ビス[ベンゾ{f}-8-キノリノラト]亜鉛(II)
CO-4:ビス(2-メチル-8-キノリノラト)アルミニウム(III)-μ-オキソ-ビス(2-メチル-8-キノリノラト)アルミニウム(III)
CO-5:インジウムトリスオキシン[別名、トリス(8-キノリノラト)インジウム]
CO-6:アルミニウムトリス(5-メチルオキシン)[別名、トリス(5-メチル-8-キノリノラト)アルミニウム(III)]
CO-7:リチウムオキシン[別名、(8-キノリノラト)リチウム(I)]
CO-8:ガリウムオキシン[別名、トリス(8-キノリノラト)ガリウム(III)]
CO-9:ジルコニウムオキシン[別名、テトラ(8-キノリノラト)ジルコニウム(IV)]。
【0051】
他の電子輸送材料として、アメリカ合衆国特許第4,356,429号に開示されているさまざまなブタジエン誘導体や、アメリカ合衆国特許第4,539,507号に記載されているさまざまな複素環式蛍光増白剤がある。ベンズアゾール、オキサジアゾール、トリアゾール、ピリジンチアジアゾール、トリアジンや、いくつかのシロール誘導体も、有用な電子輸送材料である。
【0052】
電子注入層(EIL)
【0053】
必ずしも必要ではないが、カソードに接してEILを設けると有用であることがしばしばある。特に、AgまたはAgをベースとした合金で形成された反射性電極層22をカソードとして用いる場合、その反射性電極層22と接するEILが重要である。なぜなら、AgまたはAgをベースとした合金は、電子を効率的に注入するのに適した仕事関数を持たないからである。アメリカ合衆国特許第6,013,384号に記載されているように、EILはETLに電子を容易に注入して導電性を大きくし、その結果としてOLEDの駆動電圧を低下させる機能を持つことができる。EILで用いるのに適した材料は、n型をドープされた有機層を形成するためにドーパントとして強い還元剤または仕事関数が小さな(3.0eV未満の)金属を含む上記のETLである、n型をドープされた有機層とは、導電性であって電荷担体が主に電子である層を意味する。導電性は、電子がドーパント材料からホスト材料に移動する結果として電荷移動錯体が形成されることによって生じる。別の無機電子注入材料もOLEDのEILを形成するのに有用である可能性がある。無機EILは、仕事関数の小さい金属または金属塩(例えばアメリカ合衆国特許第5,677,572号に記載されている0.5〜1nmのLiF層や、0.4〜10nmのLiまたはCaからなる金属層)を含んでいることが好ましい。
【0054】
別の層
【0055】
いくつかの場合には、有機HIL(場合によってはHTLと呼ぶこともできる)が正孔の注入と正孔の輸送の両方の機能を担い、有機EIL(場合によってはETLと呼ぶこともできる)が電子の注入と電子の輸送の両方の機能を担う。従来技術では、発光ドーパントを、ホストとして機能できるHTLに添加できることも知られている。複数のドーパントを1つ以上の層に添加して白色発光OLEDを作り出すことができる。例えば青色発光材料と黄色発光材料、またはシアン色発光材料と赤色発光材料、または赤色発光材料と緑色発光材料と青色発光材料を組み合わせて白色発光OLEDを作る。白色発光デバイスは、例えばアメリカ合衆国特許出願公開2002/0025419 A1、アメリカ合衆国特許第5,683,823号、第5,503,910号、第5,405,709号、第5,283,182号、ヨーロッパ特許第1 187 235号、第1 182 244号に記載されている。
【0056】
追加の層(例えば従来技術で知られている、LELのアノード側に隣接した電子阻止層)も、本発明のデバイスで利用できる。
【符号の説明】
【0057】
10 基板
10a 第1の面
10b 第2の面
10c 基板の厚さ
12 透明な電極層
16 デバイスの全体サイズ
22 反射性電極層
30 発光素子
35 発光層
37 電荷注入層
40 光抽出増大構造
50 短絡低減層
60 直列に接続されたアレイ
101 OLEDデバイス
102 OLEDデバイス
103 OLEDデバイス
201 OLEDデバイス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
OLEDデバイスであって、
(a)第1の面と第2の面を有する透明な基板と;
(b)この基板の第1の面の上に配置された透明な電極層と;
(c)この透明な電極層の上に配置された短絡低減層と;
(d)この短絡低減層の上に配置されていて、少なくとも1つの発光層と、その発光層の上に配置された電荷注入層とを含む有機発光素子と;
(e)上記電荷注入層の上に配置された反射性電極層と;
(f)上記基板の第1の面または第2の面を覆って配置された光抽出増大構造とを備えていて、
上記短絡低減層が、全厚さ抵抗率が10-9〜102Ω-cm2である透明な膜であり;上記反射性電極層が、Ag、または80%を超えるAgを含有するAg合金を含み;このデバイスの全体サイズが基板の厚さの10倍よりも大きいOLEDデバイス。
【請求項2】
上記短絡低減層が、インジウム酸化物、亜鉛酸化物、スズ酸化物、モリブデン酸化物、バナジウム酸化物、アンチモン酸化物、ビスマス酸化物、レニウム酸化物、タンタル酸化物、タングステン酸化物、ニオブ酸化物、ニッケル酸化物の中から選択した1つの材料を含む、請求項1に記載のOLEDデバイス。
【請求項3】
上記短絡低減層が、インジウム酸化物、亜鉛酸化物、スズ酸化物、モリブデン酸化物、バナジウム酸化物、アンチモン酸化物、ビスマス酸化物、レニウム酸化物、タンタル酸化物、タングステン酸化物、ニオブ酸化物、ニッケル酸化物の中から選択した少なくとも2つの材料の混合物を含む、請求項1に記載のOLEDデバイス。
【請求項4】
上記短絡低減層が、電気的絶縁性のある酸化物材料、フッ化物材料、窒化物材料、硫化物材料のいずれかと、インジウム酸化物、亜鉛酸化物、スズ酸化物、モリブデン酸化物、バナジウム酸化物、アンチモン酸化物、ビスマス酸化物、レニウム酸化物、タンタル酸化物、タングステン酸化物、ニオブ酸化物、ニッケル酸化物の中から選択した少なくとも1つの材料との混合物を含む、請求項1に記載のOLEDデバイス。
【請求項5】
上記短絡低減層が、硫化亜鉛と、インジウム-スズ酸化物、インジウム酸化物、スズ酸化物いずれかとの混合物を含む、請求項4に記載のOLEDデバイス。
【請求項6】
上記反射性電極層がカソードであり、上記電荷注入層が電子注入層である、請求項1に記載のOLEDデバイス。
【請求項7】
上記反射性電極層がアノードであり、上記電荷注入層が正孔注入層である、請求項1に記載のOLEDデバイス。
【請求項8】
上記光抽出増大構造が散乱層である、請求項1に記載のOLEDデバイス。
【請求項9】
上記散乱層が粒子または空孔を含んでいて、その粒子または空孔が、その粒子または空孔とは異なる屈折率を持つマトリックスの中に分散されている、請求項8に記載のOLEDデバイス。
【請求項10】
上記散乱層が別の支持体の上に載せられた後、上記基板と貼り合わされている、請求項8に記載のOLEDデバイス。
【請求項11】
上記散乱層が、上記基板の表面に、粒子間に空孔がある高屈折率粒子からなるコーティングを備える、請求項8に記載のOLEDデバイス。
【請求項12】
上記高屈折率粒子の選択が、チタン酸化物、ジルコニウム酸化物、ニオブ酸化物、タンタル酸化物、亜鉛酸化物、スズ酸化物、硫化亜鉛などの無機材料の中からなされる、請求項11に記載のOLEDデバイス。
【請求項13】
上記高屈折率粒子が不規則な形状であり、一方向の最大サイズの優勢値が300nm〜約2,000nmである、請求項1に記載のOLEDデバイス。
【請求項14】
直列に接続された1つ以上の区画を含む、請求項1に記載のOLEDデバイス。
【請求項15】
積層構造を有する、請求項1に記載のOLEDデバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−527107(P2010−527107A)
【公表日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−507384(P2010−507384)
【出願日】平成20年2月20日(2008.2.20)
【国際出願番号】PCT/US2008/002232
【国際公開番号】WO2008/140644
【国際公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【出願人】(590000846)イーストマン コダック カンパニー (1,594)
【Fターム(参考)】