光出力装置並びに磁気記憶媒体駆動装置およびヘッドスライダ
【課題】対象物に十分な光量で光を到達させることができる光出力装置並びに磁気記憶媒体駆動装置およびヘッドスライダを提供する。
【解決手段】ヘッドスライダ22の非磁性膜32内には光導波路62が埋め込まれる。光導波路62は、非磁性膜32の特定表面42から所定の後退量Xで後退する位置で前端を区画する。こうした記憶媒体駆動装置11では、光導波路62の終端から光が出力される。光は非磁性膜32を通過する。光は記憶媒体14に到達する。光導波路62の前端および記憶媒体14の間には所定の長さで光路が確立される。本発明者らの検証によれば、光導波路62の前端が特定表面42から後退すれば、記憶媒体14に到達する光の光量が増大することが確認された。こういった記憶媒体駆動装置11によれば、記憶媒体14に十分な光量で光は到達することができる。
【解決手段】ヘッドスライダ22の非磁性膜32内には光導波路62が埋め込まれる。光導波路62は、非磁性膜32の特定表面42から所定の後退量Xで後退する位置で前端を区画する。こうした記憶媒体駆動装置11では、光導波路62の終端から光が出力される。光は非磁性膜32を通過する。光は記憶媒体14に到達する。光導波路62の前端および記憶媒体14の間には所定の長さで光路が確立される。本発明者らの検証によれば、光導波路62の前端が特定表面42から後退すれば、記憶媒体14に到達する光の光量が増大することが確認された。こういった記憶媒体駆動装置11によれば、記憶媒体14に十分な光量で光は到達することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光導波路の終端から光を出力する光出力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
終端に向かって先細る光導波路は広く知られる。こういった光導波路は近接場光の生成にあたって広く利用される。こういった近接場光の利用が磁気情報の書き込みにあたって模索される。記録層が近接場光の熱で熱せられると、記録層の保磁力は低下する。こうした保磁力の低下に基づき記録層内に磁化が書き込まれると、いわゆる熱ゆらぎに対して記録層内で磁化の耐性は高められることができる。
【特許文献1】特開2004−158067号公報
【特許文献2】特表2005−515578号公報
【特許文献2】米国特許第6944112号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
一般に、光導波路の終端が記録層に近づけば近づくほど、記録層に形成される光のスポットサイズは縮小される。しかも、光導波路の終端が記録層に近づけば近づくほど、記録層に到達する光の光量は増大すると考えられてきた。その結果、光導波路の先端はむき出しのまま維持された。
【0004】
前述の書き込みの実現にあたって光導波路はヘッドスライダに搭載される。電磁変換素子および光導波路はヘッドスライダ上に積層形成される。いわゆる研磨処理に基づき電磁変換素子の大きさは調整される。この調整にあたって光導波路は同時に研磨処理に曝される。その結果、光導波路の終端は損傷してしまう。出力光は散乱してしまう。十分な光量で記録層に光が到達することができない。
【0005】
本発明は、上記実状に鑑みてなされたもので、対象物に十分な光量で光を到達させることができる光出力装置並びに磁気記憶媒体駆動装置およびヘッドスライダを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、第1発明によれば、第1屈折率の材料から構成されるクラッドと、クラッド内に埋め込まれて第1屈折率と異なる第2屈折率の材料から構成され、終端に向かって先細るコアと、第2屈折率の材料とは異なる材料で構成され、終端で光路を横切る光透過層とを備えることを特徴とする光出力装置が提供される。
【0007】
こうした光出力装置ではコアの終端から光が出力される。光は光透過層を通過する。光は対象物に到達する。コアの終端および対象物の間には所定の長さで光路が確立される。本発明者らの検証によれば、コアの終端が対象物から所定量で遠ざかれば、対象物に到達する光の光量が増大することが確認された。こういった光出力装置によれば、対象物に十分な光量で光は到達することができる。
【0008】
しかも、本発明者らの検証によれば、コアの終端から出力される光の光量は、到達距離の増大に応じて増減を繰り返す波形に従って変化することが確認された。したがって、光出力装置では、光透過層中の光路の長さは、光透過層が省略される際に実現される光量よりも大きな光量を実現する値に設定されればよい。
【0009】
第2発明によれば、記憶媒体と、記憶媒体に向き合わせられるヘッドスライダとを備え、ヘッドスライダは、スライダ本体と、スライダ本体の空気流出側端面に積層されて、特定表面で記憶媒体に向き合わせられる絶縁性の非磁性膜と、非磁性膜内に埋め込まれて、非磁性膜の特定表面から所定の後退量で後退する位置で前端を区画する光導波路とを備えることを特徴とする記憶媒体駆動装置が提供される。
【0010】
こうした記憶媒体駆動装置では、光導波路の終端から光が出力される。光は非磁性膜の特定表面から所定の後退量で後退する位置で前端を区画する。光は非磁性膜を通過する。光は記憶媒体に到達する。光導波路の前端および記憶媒体の間には所定の長さで光路が確立される。本発明者らの検証によれば、光導波路の前端が特定表面から所定の後退量で後退すれば、記憶媒体に到達する光の光量が増大することが確認された。こういった記憶媒体駆動装置によれば、記憶媒体に十分な光量で光は到達することができる。
【0011】
しかも、本発明者らの検証によれば、記憶媒体内の記録層に到達する光の光量は、到達距離の増大に応じて増減を繰り返す波形に従って変化することが確認された。したがって、記憶媒体駆動装置では、後退量は、後退量がゼロに設定される際に実現される光量よりも大きな光量を実現する値に設定されればよい。
【0012】
光導波路は、非磁性膜の屈折率と異なる屈折率の材料から構成されればよい。このとき、光導波路は、均一な間隔で相互に向き合う垂直境界面同士で区画される均一路と、垂直境界面から非磁性膜の表面に向かって延び、非磁性膜の表面に近づくにつれて相互に接近する傾斜境界面同士で区画される先細路とを備えればよい。その一方で、光導波路は、仮想平面に沿って広がる第1境界面と、第1境界面に均一な間隔で向き合う第2境界面と、第2境界面から非磁性膜の表面に向かって延び、徐々に第1境界面に接近する第3境界面とで区画されてもよい。非磁性膜内には非磁性膜の表面で前端を露出させる電磁変換素子が埋め込まれればよい。
【0013】
第3発明によれば、スライダ本体と、スライダ本体の空気流出側端面に積層されて、特定表面で記憶媒体に向き合わせられる絶縁性の非磁性膜と、非磁性膜内に埋め込まれて、非磁性膜の特定表面から所定の後退量で後退する位置で前端を区画する光導波路とを備えることを特徴とするヘッドスライダが提供される。こうしたヘッドスライダは前述の記憶媒体駆動装置の実現に大いに貢献することができる。
【0014】
第4発明によれば、記憶媒体と、記憶媒体に向き合わせられるヘッドスライダとを備え、ヘッドスライダは、スライダ本体と、スライダ本体の空気流出側端面に積層されて、特定表面で記憶媒体に向き合わせられる絶縁性の非磁性膜と、非磁性膜内に埋め込まれる光導波路と、光導波路の前端で光路を横切る光透過層とを備えることを特徴とする記憶媒体駆動装置が提供される。
【0015】
こうした記憶媒体駆動装置では、光導波路の終端から光が出力される。光は非磁性膜の特定表面から所定の後退量で後退する位置で前端を区画する。光は光透過層を通過する。光は記憶媒体に到達する。光導波路の前端および記憶媒体の間には所定の長さで光路が確立される。本発明者らの検証によれば、光導波路の前端に光透過層が形成されれば、すなわち、光導波路の前端が特定表面から後退すれば、記憶媒体に到達する光の光量が増大することが確認された。こういった記憶媒体駆動装置によれば、記憶媒体に十分な光量で光は到達することができる。
【0016】
本発明者らの検証によれば、光導波路の前端から出力される光の光量は、到達距離の増大に応じて増減を繰り返す波形に従って変化することが確認された。したがって、前述と同様に、光透過層中の光路の長さは、光透過層が省略される際に実現される光量よりも大きな光量を実現する値に設定されればよい。
【0017】
記憶媒体駆動装置では、光導波路は、非磁性膜の屈折率と異なる屈折率の材料から構成される。このとき、光導波路の前端には、均一な間隔で相互に向き合う垂直境界面同士で区画される均一路が区画されてもよい。非磁性膜内には非磁性膜の表面で前端を露出させる電磁変換素子が埋め込まれてもよい。
【0018】
第5発明によれば、スライダ本体と、スライダ本体の空気流出側端面に積層されて、特定表面で記憶媒体に向き合わせられる絶縁性の非磁性膜と、非磁性膜内に埋め込まれる光導波路と、光導波路の前端で光路を横切る光透過層とを備えることを特徴とするヘッドスライダが提供される。こうしたヘッドスライダは前述の記憶媒体駆動装置の実現に大いに貢献することができる。
【発明の効果】
【0019】
以上のように本発明によれば、対象物に十分な光量で光を到達させることができる光出力装置並びに磁気記憶媒体駆動装置およびヘッドスライダが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、添付図面を参照しつつ本発明の一実施形態を説明する。
【0021】
図1は、本発明に係る記憶媒体駆動装置の一具体例すなわちハードディスク駆動装置(HDD)11の内部構造を概略的に示す。このHDD11は筐体すなわちハウジング12を備える。ハウジング12は箱形のベース13およびカバー(図示されず)から構成される。ベース13は例えば平たい直方体の内部空間すなわち収容空間を区画する。ベース13は例えばアルミニウムといった金属材料から鋳造に基づき成形されればよい。カバーはベース13の開口に結合される。カバーとベース13との間で収容空間は密閉される。カバーは例えばプレス加工に基づき1枚の板材から成形されればよい。
【0022】
収容空間には、記憶媒体としての2枚以上の磁気ディスク14が収容される。磁気ディスク14はスピンドルモータ15の回転軸に装着される。スピンドルモータ15は例えば5400rpmや7200rpm、10000rpm、15000rpmといった高速度で磁気ディスク14を回転させることができる。磁気ディスク14にはいわゆる垂直磁気ディスクが用いられる。
【0023】
収容空間にはキャリッジ16がさらに収容される。このキャリッジ16はキャリッジブロック17を備える。キャリッジブロック17は、垂直方向に延びる支軸18に回転自在に連結される。キャリッジブロック17には、支軸18から水平方向に延びる剛体のキャリッジアーム19が区画される。キャリッジブロック17は例えば鋳造に基づきアルミニウムから成型されればよい。周知の通り、隣接する磁気ディスク14同士の間で1つのキャリッジアーム19が配置される。
【0024】
キャリッジアーム19の先端にはヘッドサスペンション21が取り付けられる。ヘッドサスペンション21は、キャリッジアーム19の先端から前方に向かって延びる。ヘッドサスペンション21の前端には浮上ヘッドスライダ22が支持される。浮上ヘッドスライダ22は磁気ディスク14の表面に向き合わせられる。周知の通り、隣接する磁気ディスク14同士の間でキャリッジアーム19には2つのヘッドサスペンション21が支持される。
【0025】
浮上ヘッドスライダ22には電磁変換素子が搭載される。電磁変換素子の詳細は後述される。浮上ヘッドスライダ22には、磁気ディスク14の表面に向かってヘッドサスペンション21から押し付け力が作用する。磁気ディスク14が回転すると、磁気ディスク14の表面に沿って気流が生成される。この気流の働きで浮上ヘッドスライダ22には浮力が作用する。ヘッドサスペンション21の押し付け力と浮力とが釣り合うことで磁気ディスク14の回転中に比較的に高い剛性で浮上ヘッドスライダ22は浮上し続けることができる。
【0026】
キャリッジブロック17には動力源すなわちボイスコイルモータ(VCM)23が接続される。このVCM23の働きでキャリッジブロック17は支軸18回りで回転することができる。こうしたキャリッジブロック17の回転に基づきキャリッジアーム19およびヘッドサスペンション21の揺動は実現される。浮上ヘッドスライダ22の浮上中に支軸18回りでキャリッジアーム19が揺動すると、浮上ヘッドスライダ22は半径方向に磁気ディスク14の表面を横切ることができる。こうした浮上ヘッドスライダ22の半径方向移動に基づき電磁変換素子は目標の記録トラックに位置決めされる。
【0027】
図2は一具体例に係る浮上ヘッドスライダ22を示す。この浮上ヘッドスライダ22は、例えば平たい直方体に形成されるスライダ本体31を備える。スライダ本体31の空気流出端面には絶縁性の非磁性膜すなわち素子内蔵膜32が積層される。この素子内蔵膜32に前述の電磁変換素子33が組み込まれる。電磁変換素子33の詳細は後述される。
【0028】
スライダ本体31は例えばAl2O3−TiC(アルチック)といった硬質の非磁性材料から形成されればよい。素子内蔵膜32は例えば1.76の屈折率のAl2O3(アルミナ)といった比較的に軟質の絶縁非磁性材料から形成されればよい。スライダ本体31は媒体対向面すなわち浮上面34で磁気ディスク14に向き合う。浮上面34は特定表面を構成する。浮上面34には平坦なベース面35すなわち基準面が規定される。磁気ディスク14が回転すると、スライダ本体31の前端から後端に向かって浮上面34には気流36が作用する。
【0029】
浮上面34には、前述の気流36の上流側すなわち空気流入側でベース面35から立ち上がる1筋のフロントレール37が形成される。フロントレール37はベース面35の空気流入端に沿ってスライダ幅方向に延びる。同様に、浮上面34には、気流の下流側すなわち空気流出側でベース面35から立ち上がるリアレール38が形成される。リアレール38はスライダ幅方向の中央位置に配置される。
【0030】
浮上面34には、空気流出側でベース面35から立ち上がる左右1対の補助リアレール39、39がさらに形成される。補助リアレール39、39はベース面35の左右の縁に沿ってそれぞれ配置される。その結果、補助リアレール39、39同士はスライダ幅方向に間隔を空けて配置される。補助リアレール39、39同士の間にリアレール38は配置される。
【0031】
フロントレール37、リアレール38および補助リアレール39、39の頂上面にはいわゆる空気軸受け面(ABS)41、42、43が規定される。空気軸受け面41、42、43の空気流入端は段差44、45、46でレール37、38、39の頂上面に接続される。磁気ディスク14の回転に基づき生成される気流36は浮上面34に受け止められる。このとき、段差44、45、46の働きで空気軸受け面41、42、43には比較的に大きな正圧すなわち浮力が生成される。しかも、フロントレール37の後方すなわち背後には大きな負圧が生成される。これら浮力および負圧のバランスに基づき浮上ヘッドスライダ22の浮上姿勢は確立される。なお、浮上ヘッドスライダ22の形態はこういった形態に限られるものではない。
【0032】
浮上面34の裏側に規定される浮上ヘッドスライダ22の背面にはカプラ素子47が貼り付けられる。浮上ヘッドスライダ22はカプラ素子47でヘッドサスペンション21に取り付けられる。カプラ素子47の一端には反射面48が規定される。カプラ素子47の他端には光ファイバ49の一端が連結される。光ファイバ49の他端は、例えばキャリッジアーム19に搭載されるLD(レーザダイオード)といった光源(図示されず)に連結される。LDから供給される光は反射面48で反射する。反射した光は浮上ヘッドスライダ22の背面に入射する。
【0033】
図3は電磁変換素子33の様子を詳細に示す。電磁変換素子33は、書き込みヘッド素子すなわち単磁極ヘッド51と読み出しヘッド素子52とを備える。単磁極ヘッド51は、周知の通り、例えば磁気コイルで生起される磁界を利用して磁気ディスク14に2値情報を書き込むことができる。読み出しヘッド素子52には、例えば巨大磁気抵抗効果(GMR)素子やトンネル接合磁気抵抗効果(TMR)素子といった磁気抵抗効果(MR)素子が用いられればよい。読み出しヘッド素子52は、周知の通り、磁気ディスク14から作用する磁界に応じて変化する抵抗に基づき2値情報を検出することができる。
【0034】
単磁極ヘッド51および読み出しヘッド素子52は素子内蔵膜32内に埋め込まれる。読み出しヘッド素子52では、トンネル接合膜といった磁気抵抗効果膜53が上下1対の導電層すなわち下部シールド層54および上部シールド層55に挟み込まれる。下部シールド層54および上部シールド層55は例えばFeNやNiFeといった磁性材料から構成されればよい。下部シールド層54および上部シールド層55同士の間隔は磁気ディスク13上で記録トラックの線方向に磁気記録の分解能を決定する。
【0035】
単磁極ヘッド51は、空気軸受け面42で露出する前端から後方に向かって広がる主磁極56および補助磁極57を備える。主磁極56および補助磁極57は例えばFeNやNiFeといった磁性材料から構成されればよい。図4を併せて参照し、主磁極56および補助磁極57の間で磁気コイルすなわち薄膜コイル58が形成される。主磁極56の後端は薄膜コイル58の中心位置で補助磁極57に連結片59で磁気的に連結される。こうして主磁極56、補助磁極57および連結片59は、薄膜コイル58の中心位置を貫通する磁性コアを形成する。
【0036】
空気軸受け面42ではスライダ本体31および素子内蔵膜32の表面に保護膜61が形成される。前述の電磁変換素子33は空気軸受け面42の空気流出側で素子内蔵膜32の表面から読み出しギャップや書き込みギャップを露出させる。保護膜61は電磁変換素子33の読み出しギャップや書き込みギャップに覆い被さる。保護膜61には例えば2.03の屈折率のDLC(ダイヤモンドライクカーボン)が用いられればよい。保護膜61は一様な膜厚で広がればよい。膜厚は例えば5nm程度に設定されればよい。
【0037】
単磁極ヘッド51および読み出しヘッド素子52の間で素子内蔵膜32には光導波路すなわちコア62が埋め込まれる。単磁極ヘッド51、読み出しヘッド素子52およびコア62のコア幅方向の中心線は一致する。コア62には例えば2.40の屈折率のTiO2が用いられればよい。コア62は素子内蔵膜32よりも大きい屈折率を有する。コア62は浮上ヘッドスライダ22の背面から空気軸受け面42に向かって延びる。コア62の後端は前述のカプラ素子47に接続される。こうしてカプラ素子47からコア62に光が供給される。
【0038】
図5に示されるように、コア62の終端すなわち前端は、空気軸受け面42から所定の後退量Xで後退する位置に区画される。素子内蔵膜32内には、コア62の前端すなわち開口63で光路を横切る光透過層32aが区画される。光透過層32aは空気軸受け面42に沿って広がる。光透過層32aの膜厚は後退量Xに一致する。後退量Xは例えば130nm〜200nm程度に設定される。コア62は、光透過層32aの後方に区画されるクラッド32b内に埋め込まれる。光透過層32aには透明で硬い材料が用いられる。ここでは、光透過層32aおよびクラッド32bはともにアルミナから形成される。
【0039】
コア62は、前端で開口63を区画する先細路65を区画する。先細路65は、空気軸受け面42に近づくにつれて相互に接近する傾斜境界面66同士で区画される。先細路65の後端には均一路67の前端が接続される。均一路67は、均一な間隔で相互に向き合う垂直境界面68同士で区画される。垂直境界面68は空気軸受け面42に直交する。
【0040】
図6に示されるように、浮上ヘッドスライダ22の浮上中、空気軸受け面42は磁気ディスク14の表面に向き合わせられる。磁気ディスク14は支持体としての基板71を備える。基板71には例えばガラス基板やアルミニウム基板、シリコン基板が用いられればよい。基板71の表面には軟磁性の裏打ち層72が広がる。裏打ち層72には例えばCoNbZr膜が用いられればよい。裏打ち層72では、基板71の表面に平行に規定される面内方向に磁化容易軸は確立される。
【0041】
裏打ち層71の表面には磁気記録層73が広がる。磁気記録層73には例えばTbFeCo膜が用いられればよい。TbFeCo膜の屈折率は3.13程度に設定される。磁気記録層73では、基板71の表面に直交する垂直方向に磁化容易軸は確立される。磁気記録層73は例えば100nm程度の膜厚を有する。磁気記録層73の表面は保護膜74で覆われる。保護膜71には例えばDLCが用いられる。保護膜71は例えば3nm程度の膜厚を有する。浮上ヘッドスライダ22の浮上量は例えば15nm程度に設定される。
【0042】
浮上ヘッドスライダ22は磁気ディスク14上で目標の記録トラックに位置決めされる。光ファイバ49およびカプラ素子47を介してLDからコア62に光が供給される。垂直境界面68や傾斜境界面66の働きで光は開口63に向かって集束する。開口63から磁気記録層73に向かって光が照射される。光は光透過層32aを通過する。光のエネルギーは磁気記録層73で熱のエネルギーに変換される。磁気記録層73は加熱される。磁気記録層73の温度は上昇する。磁気記録層73では保磁力は低下する。
【0043】
このとき、薄膜コイル58には書き込み電流が供給される。薄膜コイル58では磁界が生起される。主磁極56、補助磁極57および連結片59内には磁束が流通する。磁束は空気軸受け面42から漏れ出る。漏れ出る磁束は記録磁界を形成する。こうして磁気ディスク14に2値情報は書き込まれる。電磁変換素子33が通過すると、磁気記録層73の温度は室温に戻る。磁気記録層73の保磁力は増大する。その結果、磁気記録層73では2値情報は確実に保持されることができる。
【0044】
本発明者らはシミュレーションに基づき本発明の効果を検証した。検証にあたってFDTD(Finite Difference Time Domain)法に基づきシミュレーションが実施された。シミュレーションに基づき、コア62から照射される光の光量と、磁気記録層73に到達する光の光量との比率すなわち第1比率が算出された。同様に、コア62から照射される光の光量と、コア62内に向かって反射する光の光量との比率すなわち第2比率が算出された。第1比率および第2比率は後退量Xすなわち光透過層32aの膜厚ごとに算出された。
【0045】
シミュレーションにあたって前述の浮上ヘッドスライダ22が用いられた。光の波長は660nmに設定された。浮上ヘッドスライダ22の保護膜61の膜厚は5nmに設定された。浮上ヘッドスライダ22の浮上量は15nmに設定された。磁気ディスク14の保護膜74の膜厚は3nmに設定された。磁気記録層73の膜厚は100nmに設定された。なお、浮上ヘッドスライダ22および磁気ディスク14の間には空気層が配置される。空気層の屈折率は1に設定される。
【0046】
その結果、図7に示されるように、第1比率および第2比率はともに、光の到達距離の増大すなわち後退量Xの増大に応じて増減を繰り返す波形に従って変化した。その結果、後退量Xが例えば130nm〜200nmの範囲に設定されると、後退量Xがゼロに設定される際、すなわち、開口63が空気軸受け面42に露出する際に算出される光量比よりも大きな光量比が得られた。大きな光量比を実現する範囲は周期的に現れた。後退量Xが所定の数値範囲に設定されると、これまで以上に十分な光量で磁気記録層73に光が到達することが確認された。
【0047】
なお、第1光量比の第1ピーク位置までの間隔Aと、第1光量比の第1ピーク位置から第2ピーク位置までの間隔Bとの相違は、空気層や保護膜61や保護膜74の屈折率の働きに基づくと考えられる。その他、一般に、保護膜61や保護膜74に用いられるDLCは分光学的に吸収計数が大きい。しかしながら、保護膜61や保護膜74の膜厚は極めて小さいことから、シミュレーションにあたって保護膜61や保護膜74で吸収される光の光量は無視されることができる。
【0048】
次に、磁気記録層73の膜厚は10nmに変更された。その他の条件は前述と同様に設定された。このとき、第1比率および第2比率が算出された。その結果、図8に示されるように、第1比率および第2比率はともに後退量Xの増大に応じて増減を繰り返す波形に従って変化した。後退量Xが例えば150nm〜180nmの範囲に設定されると、コア62の開口63が空気軸受け面42に露出する際に算出される光量比よりも大きな光量比が得られた。これまで以上に十分な光量で磁気記録層73に光が到達することが確認された。
【0049】
以上のシミュレーションの結果、後退量Xと光透過層32aとの関係は次式で表現される。
【数1】
なお、niは光透過層32aの屈折率、diは開口63の後退量X、jは開口63から磁気記録層73までに配置される層の総数をそれぞれ示す。層の総数には空気層も含まれる。この式の左辺は開口63および磁気記録層73の間の光路長を示す。式の右辺は、磁気記録層73に到達する光の最大光量を示す。ただし、mは自然数とする。
【0050】
次に本発明に係る浮上ヘッドスライダ22の製造方法を簡単に説明する。図9に示されるように、ウェハ81上に読み出しヘッド素子52が積層形成される。読み出しヘッド素子52の表面は平坦化される。読み出しヘッド素子52の表面には下部クラッド膜82が積層形成される。下部クラッド膜82の表面にはコア膜83が積層形成される。下部クラッド膜82には例えばアルミナが用いられる。コア膜83には例えばTiO2が用いられる。コア膜83の表面には所定のパターンでレジスト膜84が形成される。
【0051】
図10に示されるように、レジスト膜84の輪郭はコア62の輪郭を象る。レジスト膜84の外側でコア膜83にはエッチング処理が施される。エッチング処理にあたってFIB(集束イオンビーム)装置やイオンミリング装置が用いられればよい。その結果、図11に示されるように、エッチング処理に基づきコア膜83からコア62が削り出される。削り出し後、レジスト膜84は除去される。下部クラッド膜82の表面には上部クラッド膜86が積層形成される。上部クラッド膜86にはアルミナが用いられる。
【0052】
図12に示されるように、上部クラッド膜86の表面には単磁極ヘッド51が積層形成される。こうして素子内臓膜32内に電磁変換素子33が埋め込まれる。その後、ウェハ81からウェハバーが切り出される。切り出し後、スライダ本体31および素子内臓膜32には研磨処理が施される。スライダ本体31および素子内蔵膜32は基準面85まで削られる。電磁変換素子33の大きさは調整される。こうして基準面85に沿って浮上面34が規定される。
【0053】
図13に示されるように、浮上ヘッドスライダ22には浮上面34が形成される。開口63は浮上面34から所定の後退量Xで後退する。後退量Xは研磨処理の研磨量に基づき設定されることができる。その後、浮上面34には保護膜(図示されず)が形成される。ここでは、下部クラッド膜82および上部クラッド膜86は光透過層32aおよびクラッド32bを構成する。その他、素子内蔵膜32、コア62および光透過層32aは本発明の光出力装置を構成する。
【0054】
以上のような製造方法では、コア62は例えばエッチング処理に基づき削り出される。開口63は高い精度で形成されることができる。しかも、開口63は基準面85すなわち空気軸受け面42から所定の後退量Xで後退する。研磨処理は下部クラッド膜82および上部クラッド膜86のみに実施される。開口63は研磨処理に曝されない。開口63の損傷は確実に回避される。加えて、後退量Xは研磨量に基づき簡単に調整されることができる。
【0055】
図14は本発明の第2実施形態に係る浮上ヘッドスライダ22aの構造を概略的に示す。この浮上ヘッドスライダ22aでは、先細部65の前端に均一路87が接続される。均一路87の前端に開口63が区画される。均一路87は、均一な間隔で相互に向き合う垂直境界面88同士で区画される。光透過層32aにはクラッド32bと異なる材料が用いられる。光透過層32aは例えばアルミナから形成されればよい。クラッド32bは例えば1.46の屈折率のSiO2から形成されればよい。こうしてコア膜83の屈折率とクラッド32bの屈折率との差は比較的に大きく設定される。その他、前述の浮上ヘッドスライダ22と均等な構成や構造には同一の参照符号が付される。
【0056】
こうした浮上ヘッドスライダ22aの製造にあたって、前述と同様に、下部クラッド膜82の表面にコア62が積層形成される。図15に示されるように、下部クラッド膜82の表面に上部クラッド膜86が積層形成される。下部クラッド膜82や上部クラッド膜86はSiO2から形成される。続いて、上部クラッド膜86の表面にレジスト膜89が積層形成される。レジスト膜89の前端はコア62の前端よりも後退すればよい。レジスト膜89に基づき上部クラッド膜86、コア62および下部クラッド膜82にエッチング処理が実施される。こうして開口63が形成される。開口63の形成後、レジスト膜89は除去される。
【0057】
図16に示されるように、コア62および上部クラッド膜86の外側で下部クラッド膜82の表面に光透過層32aが形成される。その後、前述と同様に、光透過層32aおよび上部クラッド膜86の表面に単磁極ヘッド51が形成される。スライダ本体31および素子内蔵膜32は基準面85まで削られる。電磁変換素子33の大きさは調整される。基準面85に沿って浮上面34が形成される。浮上面34には保護膜(図示されず)が形成される。こうして浮上ヘッドスライダ22aは製造される。
【0058】
こうした浮上ヘッドスライダ22aでは、コア62の前端には均一路87が区画される。均一路87は開口63の幅を維持する。レジスト膜89の前端はコア62の前端よりも後退する。したがって、基準面85から規定される後退量Xがコア62の均一路87上に設定される限り、すなわち、レジスト膜89の前端が均一路87上に位置決めされる限り、エッチング処理に基づき開口63の幅および位置は簡単に設計通りに確立される。コア62では高い精度で開口63が形成される。しかも、クラッド32bはSiO2から構成されることから、コア膜83の屈折率とクラッド32bの屈折率との差は比較的に大きく設定される。その一方で、光透過層32aの働きでコア膜83やクラッド32bは研磨処理に曝されない。コア膜83およびクラッド32bの損傷は確実に回避される。
【0059】
図17は本発明の第3実施形態に係る浮上ヘッドスライダ22bの構造を概略的に示す。この浮上ヘッドスライダ22bでは、コア62は、仮想平面に沿って広がる第1境界面94と、第1境界面94に均一な間隔で向き合う第2境界面95とを区画する。第2境界面95から空気軸受け面42に向かって第3境界面96が延びる。第3境界面96は空気軸受け面42に向かうにつれて徐々に第1境界面94に接近する。コア62は第1境界面94で単磁極ヘッド51の主磁極56に向き合わせられる。
【0060】
第1境界面94には開口63が区画される。第1境界面94および主磁極56の間に光透過層32aが区画される。その他、前述の浮上ヘッドスライダ22と均等な構成や構造には同一の参照符号が付される。こうした浮上ヘッドスライダ22bでは、光は第3境界面96で反射する。反射した光は、主磁極56の前端に向き合わせられる磁気ディスク14の磁気記録層73に照射される。書き込みギャップ内で磁気記録層73は加熱される。加熱は効率的に実施される。
【0061】
以上のような浮上ヘッドスライダ22bでは、第1境界面94で開口63が確立される。したがって、前述の式の左辺で表現される光路長は開口63から磁気記録層73までの距離に当てはめられればよい。後退量Xは光路に沿って空気軸受け面42から開口63のまでの距離で規定されればよい。こうした浮上ヘッドスライダ22bの製造にあたって、前述の下部クラッド膜82の表面にコア62の第3境界面96を受け止める傾斜面が形成されればよい。傾斜面の形成にあたってFIB装置やイオンミリング装置が用いられればよい。
【0062】
(付記1) 第1屈折率の材料から構成されるクラッドと、クラッド内に埋め込まれて第1屈折率と異なる第2屈折率の材料から構成され、終端に向かって先細るコアと、第2屈折率の材料とは異なる材料で構成され、終端で光路を横切る光透過層とを備えることを特徴とする光出力装置。
【0063】
(付記2) 付記1に記載の光出力装置において、コアの終端から出力される光の光量は、到達距離の増大に応じて増減を繰り返す波形に従って変化し、前記光透過層中の光路の長さは、前記光透過層が省略される際に実現される光量よりも大きな光量を実現する値に設定されることを特徴とする光出力装置。
【0064】
(付記3) 記憶媒体と、記憶媒体に向き合わせられるヘッドスライダとを備え、ヘッドスライダは、スライダ本体と、スライダ本体の空気流出側端面に積層されて、特定表面で記憶媒体に向き合わせられる絶縁性の非磁性膜と、非磁性膜内に埋め込まれて、非磁性膜の特定表面から所定の後退量で後退する位置で前端を区画する光導波路とを備えることを特徴とする記憶媒体駆動装置。
【0065】
(付記4) 付記3に記載の記憶媒体駆動装置において、記憶媒体内の記録層に到達する光の光量は、到達距離の増大に応じて増減を繰り返す波形に従って変化し、前記後退量は、前記後退量がゼロに設定される際に実現される光量よりも大きな光量を実現する値に設定されることを特徴とする記憶媒体駆動装置。
【0066】
(付記5) 付記3に記載の記憶媒体駆動装置において、前記光導波路は、前記非磁性膜の屈折率と異なる屈折率の材料から構成されることを特徴とする記憶媒体駆動装置。
【0067】
(付記6) 付記5に記載の記憶媒体駆動装置において、前記光導波路は、均一な間隔で相互に向き合う垂直境界面同士で区画される均一路と、垂直境界面から非磁性膜の表面に向かって延び、非磁性膜の表面に近づくにつれて相互に接近する傾斜境界面同士で区画される先細路とを備えることを特徴とする記憶媒体駆動装置。
【0068】
(付記7) 付記5に記載の記憶媒体駆動装置において、前記光導波路は、仮想平面に沿って広がる第1境界面と、第1境界面に均一な間隔で向き合う第2境界面と、第2境界面から非磁性膜の表面に向かって延び、徐々に第1境界面に接近する第3境界面とで区画されることを特徴とする記憶媒体駆動装置。
【0069】
(付記8) 付記3に記載の記憶媒体駆動装置において、非磁性膜内に埋め込まれて非磁性膜の表面で前端を露出させる電磁変換素子をさらに備えることを特徴とする記憶媒体駆動装置。
【0070】
(付記9) スライダ本体と、スライダ本体の空気流出側端面に積層されて、特定表面で記憶媒体に向き合わせられる絶縁性の非磁性膜と、非磁性膜内に埋め込まれて、非磁性膜の特定表面から所定の後退量で後退する位置で前端を区画する光導波路とを備えることを特徴とするヘッドスライダ。
【0071】
(付記10) 付記9に記載のヘッドスライダにおいて、記憶媒体内の記録層に到達する光の光量は、到達距離の増大に応じて増減を繰り返す波形に従って変化し、前記後退量は、前記後退量がゼロに設定される際に実現される光量よりも大きな光量を実現する値に設定されることを特徴とするヘッドスライダ。
【0072】
(付記11) 付記9に記載のヘッドスライダにおいて、前記光導波路は、前記非磁性膜の屈折率と異なる屈折率の材料から構成されることを特徴とするヘッドスライダ。
【0073】
(付記12) 付記11に記載のヘッドスライダにおいて、前記光導波路は、均一な間隔で相互に向き合う垂直境界面同士で区画される均一路と、垂直境界面から非磁性膜の表面に向かって延び、非磁性膜の表面に近づくにつれて相互に接近する傾斜境界面同士で区画される先細路とを備えることを特徴とするヘッドスライダ。
【0074】
(付記13) 付記11に記載のヘッドスライダにおいて、前記光導波路は、仮想平面に沿って広がる第1境界面と、第1境界面に均一な間隔で向き合う第2境界面と、第2境界面から非磁性膜の表面に向かって延び、徐々に第1境界面に接近する第3境界面とで区画されることを特徴とするヘッドスライダ。
【0075】
(付記14) 付記9に記載のヘッドスライダにおいて、非磁性膜内に埋め込まれて非磁性膜の表面で前端を露出させる電磁変換素子をさらに備えることを特徴とするヘッドスライダ。
【0076】
(付記15) 記憶媒体と、記憶媒体に向き合わせられるヘッドスライダとを備え、ヘッドスライダは、スライダ本体と、スライダ本体の空気流出側端面に積層されて、特定表面で記憶媒体に向き合わせられる絶縁性の非磁性膜と、非磁性膜内に埋め込まれる光導波路と、光導波路の前端で光路を横切る光透過層とを備えることを特徴とする記憶媒体駆動装置。
【0077】
(付記16) 付記15に記載の記憶媒体駆動装置において、前記光導波路の前端から出力される光の光量は、到達距離の増大に応じて増減を繰り返す波形に従って変化し、前記光透過層中の光路の長さは、前記光透過層が省略される際に実現される光量よりも大きな光量を実現する値に設定されることを特徴とする記憶媒体駆動装置。
【0078】
(付記17) 付記15に記載の記憶媒体駆動装置において、前記光導波路は、前記非磁性膜の屈折率と異なる屈折率の材料から構成されることを特徴とする記憶媒体駆動装置。
【0079】
(付記18) 付記17に記載の記憶媒体駆動装置において、前記光導波路の前端には、均一な間隔で相互に向き合う垂直境界面同士で区画される均一路が区画されることを特徴とする記憶媒体駆動装置。
【0080】
(付記19) 付記17に記載の記憶媒体駆動装置において、非磁性膜内に埋め込まれて非磁性膜の表面で前端を露出させる電磁変換素子をさらに備えることを特徴とする記憶媒体駆動装置。
【0081】
(付記20) スライダ本体と、スライダ本体の空気流出側端面に積層されて、特定表面で記憶媒体に向き合わせられる絶縁性の非磁性膜と、非磁性膜内に埋め込まれる光導波路と、光導波路の前端で光路を横切る光透過層とを備えることを特徴とするヘッドスライダ。
【0082】
(付記21) 付記20に記載のヘッドスライダにおいて、前記光導波路の前端から出力される光の光量は、到達距離の増大に応じて増減を繰り返す波形に従って変化し、前記光透過層中の光路の長さは、前記光透過層が省略される際に実現される光量よりも大きな光量を実現する値に設定されることを特徴とするヘッドスライダ。
【0083】
(付記22) 付記20に記載のヘッドスライダにおいて、前記光導波路は、前記非磁性膜の屈折率と異なる屈折率の材料から構成されることを特徴とするヘッドスライダ。
【0084】
(付記23) 付記22に記載のヘッドスライダにおいて、前記光導波路の前端には、均一な間隔で相互に向き合う垂直境界面同士で区画される均一路が区画されることを特徴とするヘッドスライダ。
【0085】
(付記24) 付記22に記載のヘッドスライダにおいて、非磁性膜内に埋め込まれて非磁性膜の表面で前端を露出させる電磁変換素子をさらに備えることを特徴とするヘッドスライダ。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明に係る記憶媒体駆動装置の一具体例すなわちハードディスク駆動装置の内部構造を概略的に示す平面図である。
【図2】一具体例に係るヘッドスライダの構造を概略的に示す斜視図である。
【図3】電磁変換素子の拡大正面図である。
【図4】図3の4−4線に沿った断面図である。
【図5】図4の5−5線に沿った断面図である。
【図6】ヘッドスライダから磁気ディスクに光が照射される様子を概略的に示す断面図である。
【図7】光透過層の膜厚と光の到達効率との関係を示すグラフである。
【図8】光透過層の膜厚と光の到達効率との関係を示すグラフである。
【図9】読み出しヘッド上にクラッドおよびコアが形成される様子を概略的に示す断面図である。
【図10】コア膜上にレジスト膜が形成される様子を概略的に示す平面図である。
【図11】読み出しヘッド上にクラッドおよびコアが形成される様子を概略的に示す断面図である。
【図12】クラッド上に書き込みヘッドが形成される様子を概略的に示す断面図である。
【図13】浮上面が形成される様子を概略的に示す断面図である。
【図14】本発明の第2実施形態に係る浮上ヘッドスライダの構造を概略的に示す断面図である。
【図15】読み出しヘッド上にコアおよびクラッドが形成される様子を概略的に示す断面図である。
【図16】光透過層が形成される様子を概略的に示す断面図である。
【図17】本発明の第3実施形態に係る浮上ヘッドスライダの構造を概略的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0087】
11 記憶媒体駆動装置(ハードディスク駆動装置)、14 記憶媒体(磁気ディスク)、22 ヘッドスライダ(浮上ヘッドスライダ)、31 スライダ本体、32 非磁性膜(素子内蔵膜)、32a 光透過層、32b クラッド、33 電磁変換素子、34 特定表面(浮上面)、62 コア(光導波路)、65 先細路、66 傾斜境界面、67 均一路、68 垂直境界面、73 記録層(磁気記録層)、87 均一路、88 垂直境界面、94 第1境界面、95 第2境界面、96 第3境界面。
【技術分野】
【0001】
本発明は、光導波路の終端から光を出力する光出力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
終端に向かって先細る光導波路は広く知られる。こういった光導波路は近接場光の生成にあたって広く利用される。こういった近接場光の利用が磁気情報の書き込みにあたって模索される。記録層が近接場光の熱で熱せられると、記録層の保磁力は低下する。こうした保磁力の低下に基づき記録層内に磁化が書き込まれると、いわゆる熱ゆらぎに対して記録層内で磁化の耐性は高められることができる。
【特許文献1】特開2004−158067号公報
【特許文献2】特表2005−515578号公報
【特許文献2】米国特許第6944112号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
一般に、光導波路の終端が記録層に近づけば近づくほど、記録層に形成される光のスポットサイズは縮小される。しかも、光導波路の終端が記録層に近づけば近づくほど、記録層に到達する光の光量は増大すると考えられてきた。その結果、光導波路の先端はむき出しのまま維持された。
【0004】
前述の書き込みの実現にあたって光導波路はヘッドスライダに搭載される。電磁変換素子および光導波路はヘッドスライダ上に積層形成される。いわゆる研磨処理に基づき電磁変換素子の大きさは調整される。この調整にあたって光導波路は同時に研磨処理に曝される。その結果、光導波路の終端は損傷してしまう。出力光は散乱してしまう。十分な光量で記録層に光が到達することができない。
【0005】
本発明は、上記実状に鑑みてなされたもので、対象物に十分な光量で光を到達させることができる光出力装置並びに磁気記憶媒体駆動装置およびヘッドスライダを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、第1発明によれば、第1屈折率の材料から構成されるクラッドと、クラッド内に埋め込まれて第1屈折率と異なる第2屈折率の材料から構成され、終端に向かって先細るコアと、第2屈折率の材料とは異なる材料で構成され、終端で光路を横切る光透過層とを備えることを特徴とする光出力装置が提供される。
【0007】
こうした光出力装置ではコアの終端から光が出力される。光は光透過層を通過する。光は対象物に到達する。コアの終端および対象物の間には所定の長さで光路が確立される。本発明者らの検証によれば、コアの終端が対象物から所定量で遠ざかれば、対象物に到達する光の光量が増大することが確認された。こういった光出力装置によれば、対象物に十分な光量で光は到達することができる。
【0008】
しかも、本発明者らの検証によれば、コアの終端から出力される光の光量は、到達距離の増大に応じて増減を繰り返す波形に従って変化することが確認された。したがって、光出力装置では、光透過層中の光路の長さは、光透過層が省略される際に実現される光量よりも大きな光量を実現する値に設定されればよい。
【0009】
第2発明によれば、記憶媒体と、記憶媒体に向き合わせられるヘッドスライダとを備え、ヘッドスライダは、スライダ本体と、スライダ本体の空気流出側端面に積層されて、特定表面で記憶媒体に向き合わせられる絶縁性の非磁性膜と、非磁性膜内に埋め込まれて、非磁性膜の特定表面から所定の後退量で後退する位置で前端を区画する光導波路とを備えることを特徴とする記憶媒体駆動装置が提供される。
【0010】
こうした記憶媒体駆動装置では、光導波路の終端から光が出力される。光は非磁性膜の特定表面から所定の後退量で後退する位置で前端を区画する。光は非磁性膜を通過する。光は記憶媒体に到達する。光導波路の前端および記憶媒体の間には所定の長さで光路が確立される。本発明者らの検証によれば、光導波路の前端が特定表面から所定の後退量で後退すれば、記憶媒体に到達する光の光量が増大することが確認された。こういった記憶媒体駆動装置によれば、記憶媒体に十分な光量で光は到達することができる。
【0011】
しかも、本発明者らの検証によれば、記憶媒体内の記録層に到達する光の光量は、到達距離の増大に応じて増減を繰り返す波形に従って変化することが確認された。したがって、記憶媒体駆動装置では、後退量は、後退量がゼロに設定される際に実現される光量よりも大きな光量を実現する値に設定されればよい。
【0012】
光導波路は、非磁性膜の屈折率と異なる屈折率の材料から構成されればよい。このとき、光導波路は、均一な間隔で相互に向き合う垂直境界面同士で区画される均一路と、垂直境界面から非磁性膜の表面に向かって延び、非磁性膜の表面に近づくにつれて相互に接近する傾斜境界面同士で区画される先細路とを備えればよい。その一方で、光導波路は、仮想平面に沿って広がる第1境界面と、第1境界面に均一な間隔で向き合う第2境界面と、第2境界面から非磁性膜の表面に向かって延び、徐々に第1境界面に接近する第3境界面とで区画されてもよい。非磁性膜内には非磁性膜の表面で前端を露出させる電磁変換素子が埋め込まれればよい。
【0013】
第3発明によれば、スライダ本体と、スライダ本体の空気流出側端面に積層されて、特定表面で記憶媒体に向き合わせられる絶縁性の非磁性膜と、非磁性膜内に埋め込まれて、非磁性膜の特定表面から所定の後退量で後退する位置で前端を区画する光導波路とを備えることを特徴とするヘッドスライダが提供される。こうしたヘッドスライダは前述の記憶媒体駆動装置の実現に大いに貢献することができる。
【0014】
第4発明によれば、記憶媒体と、記憶媒体に向き合わせられるヘッドスライダとを備え、ヘッドスライダは、スライダ本体と、スライダ本体の空気流出側端面に積層されて、特定表面で記憶媒体に向き合わせられる絶縁性の非磁性膜と、非磁性膜内に埋め込まれる光導波路と、光導波路の前端で光路を横切る光透過層とを備えることを特徴とする記憶媒体駆動装置が提供される。
【0015】
こうした記憶媒体駆動装置では、光導波路の終端から光が出力される。光は非磁性膜の特定表面から所定の後退量で後退する位置で前端を区画する。光は光透過層を通過する。光は記憶媒体に到達する。光導波路の前端および記憶媒体の間には所定の長さで光路が確立される。本発明者らの検証によれば、光導波路の前端に光透過層が形成されれば、すなわち、光導波路の前端が特定表面から後退すれば、記憶媒体に到達する光の光量が増大することが確認された。こういった記憶媒体駆動装置によれば、記憶媒体に十分な光量で光は到達することができる。
【0016】
本発明者らの検証によれば、光導波路の前端から出力される光の光量は、到達距離の増大に応じて増減を繰り返す波形に従って変化することが確認された。したがって、前述と同様に、光透過層中の光路の長さは、光透過層が省略される際に実現される光量よりも大きな光量を実現する値に設定されればよい。
【0017】
記憶媒体駆動装置では、光導波路は、非磁性膜の屈折率と異なる屈折率の材料から構成される。このとき、光導波路の前端には、均一な間隔で相互に向き合う垂直境界面同士で区画される均一路が区画されてもよい。非磁性膜内には非磁性膜の表面で前端を露出させる電磁変換素子が埋め込まれてもよい。
【0018】
第5発明によれば、スライダ本体と、スライダ本体の空気流出側端面に積層されて、特定表面で記憶媒体に向き合わせられる絶縁性の非磁性膜と、非磁性膜内に埋め込まれる光導波路と、光導波路の前端で光路を横切る光透過層とを備えることを特徴とするヘッドスライダが提供される。こうしたヘッドスライダは前述の記憶媒体駆動装置の実現に大いに貢献することができる。
【発明の効果】
【0019】
以上のように本発明によれば、対象物に十分な光量で光を到達させることができる光出力装置並びに磁気記憶媒体駆動装置およびヘッドスライダが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、添付図面を参照しつつ本発明の一実施形態を説明する。
【0021】
図1は、本発明に係る記憶媒体駆動装置の一具体例すなわちハードディスク駆動装置(HDD)11の内部構造を概略的に示す。このHDD11は筐体すなわちハウジング12を備える。ハウジング12は箱形のベース13およびカバー(図示されず)から構成される。ベース13は例えば平たい直方体の内部空間すなわち収容空間を区画する。ベース13は例えばアルミニウムといった金属材料から鋳造に基づき成形されればよい。カバーはベース13の開口に結合される。カバーとベース13との間で収容空間は密閉される。カバーは例えばプレス加工に基づき1枚の板材から成形されればよい。
【0022】
収容空間には、記憶媒体としての2枚以上の磁気ディスク14が収容される。磁気ディスク14はスピンドルモータ15の回転軸に装着される。スピンドルモータ15は例えば5400rpmや7200rpm、10000rpm、15000rpmといった高速度で磁気ディスク14を回転させることができる。磁気ディスク14にはいわゆる垂直磁気ディスクが用いられる。
【0023】
収容空間にはキャリッジ16がさらに収容される。このキャリッジ16はキャリッジブロック17を備える。キャリッジブロック17は、垂直方向に延びる支軸18に回転自在に連結される。キャリッジブロック17には、支軸18から水平方向に延びる剛体のキャリッジアーム19が区画される。キャリッジブロック17は例えば鋳造に基づきアルミニウムから成型されればよい。周知の通り、隣接する磁気ディスク14同士の間で1つのキャリッジアーム19が配置される。
【0024】
キャリッジアーム19の先端にはヘッドサスペンション21が取り付けられる。ヘッドサスペンション21は、キャリッジアーム19の先端から前方に向かって延びる。ヘッドサスペンション21の前端には浮上ヘッドスライダ22が支持される。浮上ヘッドスライダ22は磁気ディスク14の表面に向き合わせられる。周知の通り、隣接する磁気ディスク14同士の間でキャリッジアーム19には2つのヘッドサスペンション21が支持される。
【0025】
浮上ヘッドスライダ22には電磁変換素子が搭載される。電磁変換素子の詳細は後述される。浮上ヘッドスライダ22には、磁気ディスク14の表面に向かってヘッドサスペンション21から押し付け力が作用する。磁気ディスク14が回転すると、磁気ディスク14の表面に沿って気流が生成される。この気流の働きで浮上ヘッドスライダ22には浮力が作用する。ヘッドサスペンション21の押し付け力と浮力とが釣り合うことで磁気ディスク14の回転中に比較的に高い剛性で浮上ヘッドスライダ22は浮上し続けることができる。
【0026】
キャリッジブロック17には動力源すなわちボイスコイルモータ(VCM)23が接続される。このVCM23の働きでキャリッジブロック17は支軸18回りで回転することができる。こうしたキャリッジブロック17の回転に基づきキャリッジアーム19およびヘッドサスペンション21の揺動は実現される。浮上ヘッドスライダ22の浮上中に支軸18回りでキャリッジアーム19が揺動すると、浮上ヘッドスライダ22は半径方向に磁気ディスク14の表面を横切ることができる。こうした浮上ヘッドスライダ22の半径方向移動に基づき電磁変換素子は目標の記録トラックに位置決めされる。
【0027】
図2は一具体例に係る浮上ヘッドスライダ22を示す。この浮上ヘッドスライダ22は、例えば平たい直方体に形成されるスライダ本体31を備える。スライダ本体31の空気流出端面には絶縁性の非磁性膜すなわち素子内蔵膜32が積層される。この素子内蔵膜32に前述の電磁変換素子33が組み込まれる。電磁変換素子33の詳細は後述される。
【0028】
スライダ本体31は例えばAl2O3−TiC(アルチック)といった硬質の非磁性材料から形成されればよい。素子内蔵膜32は例えば1.76の屈折率のAl2O3(アルミナ)といった比較的に軟質の絶縁非磁性材料から形成されればよい。スライダ本体31は媒体対向面すなわち浮上面34で磁気ディスク14に向き合う。浮上面34は特定表面を構成する。浮上面34には平坦なベース面35すなわち基準面が規定される。磁気ディスク14が回転すると、スライダ本体31の前端から後端に向かって浮上面34には気流36が作用する。
【0029】
浮上面34には、前述の気流36の上流側すなわち空気流入側でベース面35から立ち上がる1筋のフロントレール37が形成される。フロントレール37はベース面35の空気流入端に沿ってスライダ幅方向に延びる。同様に、浮上面34には、気流の下流側すなわち空気流出側でベース面35から立ち上がるリアレール38が形成される。リアレール38はスライダ幅方向の中央位置に配置される。
【0030】
浮上面34には、空気流出側でベース面35から立ち上がる左右1対の補助リアレール39、39がさらに形成される。補助リアレール39、39はベース面35の左右の縁に沿ってそれぞれ配置される。その結果、補助リアレール39、39同士はスライダ幅方向に間隔を空けて配置される。補助リアレール39、39同士の間にリアレール38は配置される。
【0031】
フロントレール37、リアレール38および補助リアレール39、39の頂上面にはいわゆる空気軸受け面(ABS)41、42、43が規定される。空気軸受け面41、42、43の空気流入端は段差44、45、46でレール37、38、39の頂上面に接続される。磁気ディスク14の回転に基づき生成される気流36は浮上面34に受け止められる。このとき、段差44、45、46の働きで空気軸受け面41、42、43には比較的に大きな正圧すなわち浮力が生成される。しかも、フロントレール37の後方すなわち背後には大きな負圧が生成される。これら浮力および負圧のバランスに基づき浮上ヘッドスライダ22の浮上姿勢は確立される。なお、浮上ヘッドスライダ22の形態はこういった形態に限られるものではない。
【0032】
浮上面34の裏側に規定される浮上ヘッドスライダ22の背面にはカプラ素子47が貼り付けられる。浮上ヘッドスライダ22はカプラ素子47でヘッドサスペンション21に取り付けられる。カプラ素子47の一端には反射面48が規定される。カプラ素子47の他端には光ファイバ49の一端が連結される。光ファイバ49の他端は、例えばキャリッジアーム19に搭載されるLD(レーザダイオード)といった光源(図示されず)に連結される。LDから供給される光は反射面48で反射する。反射した光は浮上ヘッドスライダ22の背面に入射する。
【0033】
図3は電磁変換素子33の様子を詳細に示す。電磁変換素子33は、書き込みヘッド素子すなわち単磁極ヘッド51と読み出しヘッド素子52とを備える。単磁極ヘッド51は、周知の通り、例えば磁気コイルで生起される磁界を利用して磁気ディスク14に2値情報を書き込むことができる。読み出しヘッド素子52には、例えば巨大磁気抵抗効果(GMR)素子やトンネル接合磁気抵抗効果(TMR)素子といった磁気抵抗効果(MR)素子が用いられればよい。読み出しヘッド素子52は、周知の通り、磁気ディスク14から作用する磁界に応じて変化する抵抗に基づき2値情報を検出することができる。
【0034】
単磁極ヘッド51および読み出しヘッド素子52は素子内蔵膜32内に埋め込まれる。読み出しヘッド素子52では、トンネル接合膜といった磁気抵抗効果膜53が上下1対の導電層すなわち下部シールド層54および上部シールド層55に挟み込まれる。下部シールド層54および上部シールド層55は例えばFeNやNiFeといった磁性材料から構成されればよい。下部シールド層54および上部シールド層55同士の間隔は磁気ディスク13上で記録トラックの線方向に磁気記録の分解能を決定する。
【0035】
単磁極ヘッド51は、空気軸受け面42で露出する前端から後方に向かって広がる主磁極56および補助磁極57を備える。主磁極56および補助磁極57は例えばFeNやNiFeといった磁性材料から構成されればよい。図4を併せて参照し、主磁極56および補助磁極57の間で磁気コイルすなわち薄膜コイル58が形成される。主磁極56の後端は薄膜コイル58の中心位置で補助磁極57に連結片59で磁気的に連結される。こうして主磁極56、補助磁極57および連結片59は、薄膜コイル58の中心位置を貫通する磁性コアを形成する。
【0036】
空気軸受け面42ではスライダ本体31および素子内蔵膜32の表面に保護膜61が形成される。前述の電磁変換素子33は空気軸受け面42の空気流出側で素子内蔵膜32の表面から読み出しギャップや書き込みギャップを露出させる。保護膜61は電磁変換素子33の読み出しギャップや書き込みギャップに覆い被さる。保護膜61には例えば2.03の屈折率のDLC(ダイヤモンドライクカーボン)が用いられればよい。保護膜61は一様な膜厚で広がればよい。膜厚は例えば5nm程度に設定されればよい。
【0037】
単磁極ヘッド51および読み出しヘッド素子52の間で素子内蔵膜32には光導波路すなわちコア62が埋め込まれる。単磁極ヘッド51、読み出しヘッド素子52およびコア62のコア幅方向の中心線は一致する。コア62には例えば2.40の屈折率のTiO2が用いられればよい。コア62は素子内蔵膜32よりも大きい屈折率を有する。コア62は浮上ヘッドスライダ22の背面から空気軸受け面42に向かって延びる。コア62の後端は前述のカプラ素子47に接続される。こうしてカプラ素子47からコア62に光が供給される。
【0038】
図5に示されるように、コア62の終端すなわち前端は、空気軸受け面42から所定の後退量Xで後退する位置に区画される。素子内蔵膜32内には、コア62の前端すなわち開口63で光路を横切る光透過層32aが区画される。光透過層32aは空気軸受け面42に沿って広がる。光透過層32aの膜厚は後退量Xに一致する。後退量Xは例えば130nm〜200nm程度に設定される。コア62は、光透過層32aの後方に区画されるクラッド32b内に埋め込まれる。光透過層32aには透明で硬い材料が用いられる。ここでは、光透過層32aおよびクラッド32bはともにアルミナから形成される。
【0039】
コア62は、前端で開口63を区画する先細路65を区画する。先細路65は、空気軸受け面42に近づくにつれて相互に接近する傾斜境界面66同士で区画される。先細路65の後端には均一路67の前端が接続される。均一路67は、均一な間隔で相互に向き合う垂直境界面68同士で区画される。垂直境界面68は空気軸受け面42に直交する。
【0040】
図6に示されるように、浮上ヘッドスライダ22の浮上中、空気軸受け面42は磁気ディスク14の表面に向き合わせられる。磁気ディスク14は支持体としての基板71を備える。基板71には例えばガラス基板やアルミニウム基板、シリコン基板が用いられればよい。基板71の表面には軟磁性の裏打ち層72が広がる。裏打ち層72には例えばCoNbZr膜が用いられればよい。裏打ち層72では、基板71の表面に平行に規定される面内方向に磁化容易軸は確立される。
【0041】
裏打ち層71の表面には磁気記録層73が広がる。磁気記録層73には例えばTbFeCo膜が用いられればよい。TbFeCo膜の屈折率は3.13程度に設定される。磁気記録層73では、基板71の表面に直交する垂直方向に磁化容易軸は確立される。磁気記録層73は例えば100nm程度の膜厚を有する。磁気記録層73の表面は保護膜74で覆われる。保護膜71には例えばDLCが用いられる。保護膜71は例えば3nm程度の膜厚を有する。浮上ヘッドスライダ22の浮上量は例えば15nm程度に設定される。
【0042】
浮上ヘッドスライダ22は磁気ディスク14上で目標の記録トラックに位置決めされる。光ファイバ49およびカプラ素子47を介してLDからコア62に光が供給される。垂直境界面68や傾斜境界面66の働きで光は開口63に向かって集束する。開口63から磁気記録層73に向かって光が照射される。光は光透過層32aを通過する。光のエネルギーは磁気記録層73で熱のエネルギーに変換される。磁気記録層73は加熱される。磁気記録層73の温度は上昇する。磁気記録層73では保磁力は低下する。
【0043】
このとき、薄膜コイル58には書き込み電流が供給される。薄膜コイル58では磁界が生起される。主磁極56、補助磁極57および連結片59内には磁束が流通する。磁束は空気軸受け面42から漏れ出る。漏れ出る磁束は記録磁界を形成する。こうして磁気ディスク14に2値情報は書き込まれる。電磁変換素子33が通過すると、磁気記録層73の温度は室温に戻る。磁気記録層73の保磁力は増大する。その結果、磁気記録層73では2値情報は確実に保持されることができる。
【0044】
本発明者らはシミュレーションに基づき本発明の効果を検証した。検証にあたってFDTD(Finite Difference Time Domain)法に基づきシミュレーションが実施された。シミュレーションに基づき、コア62から照射される光の光量と、磁気記録層73に到達する光の光量との比率すなわち第1比率が算出された。同様に、コア62から照射される光の光量と、コア62内に向かって反射する光の光量との比率すなわち第2比率が算出された。第1比率および第2比率は後退量Xすなわち光透過層32aの膜厚ごとに算出された。
【0045】
シミュレーションにあたって前述の浮上ヘッドスライダ22が用いられた。光の波長は660nmに設定された。浮上ヘッドスライダ22の保護膜61の膜厚は5nmに設定された。浮上ヘッドスライダ22の浮上量は15nmに設定された。磁気ディスク14の保護膜74の膜厚は3nmに設定された。磁気記録層73の膜厚は100nmに設定された。なお、浮上ヘッドスライダ22および磁気ディスク14の間には空気層が配置される。空気層の屈折率は1に設定される。
【0046】
その結果、図7に示されるように、第1比率および第2比率はともに、光の到達距離の増大すなわち後退量Xの増大に応じて増減を繰り返す波形に従って変化した。その結果、後退量Xが例えば130nm〜200nmの範囲に設定されると、後退量Xがゼロに設定される際、すなわち、開口63が空気軸受け面42に露出する際に算出される光量比よりも大きな光量比が得られた。大きな光量比を実現する範囲は周期的に現れた。後退量Xが所定の数値範囲に設定されると、これまで以上に十分な光量で磁気記録層73に光が到達することが確認された。
【0047】
なお、第1光量比の第1ピーク位置までの間隔Aと、第1光量比の第1ピーク位置から第2ピーク位置までの間隔Bとの相違は、空気層や保護膜61や保護膜74の屈折率の働きに基づくと考えられる。その他、一般に、保護膜61や保護膜74に用いられるDLCは分光学的に吸収計数が大きい。しかしながら、保護膜61や保護膜74の膜厚は極めて小さいことから、シミュレーションにあたって保護膜61や保護膜74で吸収される光の光量は無視されることができる。
【0048】
次に、磁気記録層73の膜厚は10nmに変更された。その他の条件は前述と同様に設定された。このとき、第1比率および第2比率が算出された。その結果、図8に示されるように、第1比率および第2比率はともに後退量Xの増大に応じて増減を繰り返す波形に従って変化した。後退量Xが例えば150nm〜180nmの範囲に設定されると、コア62の開口63が空気軸受け面42に露出する際に算出される光量比よりも大きな光量比が得られた。これまで以上に十分な光量で磁気記録層73に光が到達することが確認された。
【0049】
以上のシミュレーションの結果、後退量Xと光透過層32aとの関係は次式で表現される。
【数1】
なお、niは光透過層32aの屈折率、diは開口63の後退量X、jは開口63から磁気記録層73までに配置される層の総数をそれぞれ示す。層の総数には空気層も含まれる。この式の左辺は開口63および磁気記録層73の間の光路長を示す。式の右辺は、磁気記録層73に到達する光の最大光量を示す。ただし、mは自然数とする。
【0050】
次に本発明に係る浮上ヘッドスライダ22の製造方法を簡単に説明する。図9に示されるように、ウェハ81上に読み出しヘッド素子52が積層形成される。読み出しヘッド素子52の表面は平坦化される。読み出しヘッド素子52の表面には下部クラッド膜82が積層形成される。下部クラッド膜82の表面にはコア膜83が積層形成される。下部クラッド膜82には例えばアルミナが用いられる。コア膜83には例えばTiO2が用いられる。コア膜83の表面には所定のパターンでレジスト膜84が形成される。
【0051】
図10に示されるように、レジスト膜84の輪郭はコア62の輪郭を象る。レジスト膜84の外側でコア膜83にはエッチング処理が施される。エッチング処理にあたってFIB(集束イオンビーム)装置やイオンミリング装置が用いられればよい。その結果、図11に示されるように、エッチング処理に基づきコア膜83からコア62が削り出される。削り出し後、レジスト膜84は除去される。下部クラッド膜82の表面には上部クラッド膜86が積層形成される。上部クラッド膜86にはアルミナが用いられる。
【0052】
図12に示されるように、上部クラッド膜86の表面には単磁極ヘッド51が積層形成される。こうして素子内臓膜32内に電磁変換素子33が埋め込まれる。その後、ウェハ81からウェハバーが切り出される。切り出し後、スライダ本体31および素子内臓膜32には研磨処理が施される。スライダ本体31および素子内蔵膜32は基準面85まで削られる。電磁変換素子33の大きさは調整される。こうして基準面85に沿って浮上面34が規定される。
【0053】
図13に示されるように、浮上ヘッドスライダ22には浮上面34が形成される。開口63は浮上面34から所定の後退量Xで後退する。後退量Xは研磨処理の研磨量に基づき設定されることができる。その後、浮上面34には保護膜(図示されず)が形成される。ここでは、下部クラッド膜82および上部クラッド膜86は光透過層32aおよびクラッド32bを構成する。その他、素子内蔵膜32、コア62および光透過層32aは本発明の光出力装置を構成する。
【0054】
以上のような製造方法では、コア62は例えばエッチング処理に基づき削り出される。開口63は高い精度で形成されることができる。しかも、開口63は基準面85すなわち空気軸受け面42から所定の後退量Xで後退する。研磨処理は下部クラッド膜82および上部クラッド膜86のみに実施される。開口63は研磨処理に曝されない。開口63の損傷は確実に回避される。加えて、後退量Xは研磨量に基づき簡単に調整されることができる。
【0055】
図14は本発明の第2実施形態に係る浮上ヘッドスライダ22aの構造を概略的に示す。この浮上ヘッドスライダ22aでは、先細部65の前端に均一路87が接続される。均一路87の前端に開口63が区画される。均一路87は、均一な間隔で相互に向き合う垂直境界面88同士で区画される。光透過層32aにはクラッド32bと異なる材料が用いられる。光透過層32aは例えばアルミナから形成されればよい。クラッド32bは例えば1.46の屈折率のSiO2から形成されればよい。こうしてコア膜83の屈折率とクラッド32bの屈折率との差は比較的に大きく設定される。その他、前述の浮上ヘッドスライダ22と均等な構成や構造には同一の参照符号が付される。
【0056】
こうした浮上ヘッドスライダ22aの製造にあたって、前述と同様に、下部クラッド膜82の表面にコア62が積層形成される。図15に示されるように、下部クラッド膜82の表面に上部クラッド膜86が積層形成される。下部クラッド膜82や上部クラッド膜86はSiO2から形成される。続いて、上部クラッド膜86の表面にレジスト膜89が積層形成される。レジスト膜89の前端はコア62の前端よりも後退すればよい。レジスト膜89に基づき上部クラッド膜86、コア62および下部クラッド膜82にエッチング処理が実施される。こうして開口63が形成される。開口63の形成後、レジスト膜89は除去される。
【0057】
図16に示されるように、コア62および上部クラッド膜86の外側で下部クラッド膜82の表面に光透過層32aが形成される。その後、前述と同様に、光透過層32aおよび上部クラッド膜86の表面に単磁極ヘッド51が形成される。スライダ本体31および素子内蔵膜32は基準面85まで削られる。電磁変換素子33の大きさは調整される。基準面85に沿って浮上面34が形成される。浮上面34には保護膜(図示されず)が形成される。こうして浮上ヘッドスライダ22aは製造される。
【0058】
こうした浮上ヘッドスライダ22aでは、コア62の前端には均一路87が区画される。均一路87は開口63の幅を維持する。レジスト膜89の前端はコア62の前端よりも後退する。したがって、基準面85から規定される後退量Xがコア62の均一路87上に設定される限り、すなわち、レジスト膜89の前端が均一路87上に位置決めされる限り、エッチング処理に基づき開口63の幅および位置は簡単に設計通りに確立される。コア62では高い精度で開口63が形成される。しかも、クラッド32bはSiO2から構成されることから、コア膜83の屈折率とクラッド32bの屈折率との差は比較的に大きく設定される。その一方で、光透過層32aの働きでコア膜83やクラッド32bは研磨処理に曝されない。コア膜83およびクラッド32bの損傷は確実に回避される。
【0059】
図17は本発明の第3実施形態に係る浮上ヘッドスライダ22bの構造を概略的に示す。この浮上ヘッドスライダ22bでは、コア62は、仮想平面に沿って広がる第1境界面94と、第1境界面94に均一な間隔で向き合う第2境界面95とを区画する。第2境界面95から空気軸受け面42に向かって第3境界面96が延びる。第3境界面96は空気軸受け面42に向かうにつれて徐々に第1境界面94に接近する。コア62は第1境界面94で単磁極ヘッド51の主磁極56に向き合わせられる。
【0060】
第1境界面94には開口63が区画される。第1境界面94および主磁極56の間に光透過層32aが区画される。その他、前述の浮上ヘッドスライダ22と均等な構成や構造には同一の参照符号が付される。こうした浮上ヘッドスライダ22bでは、光は第3境界面96で反射する。反射した光は、主磁極56の前端に向き合わせられる磁気ディスク14の磁気記録層73に照射される。書き込みギャップ内で磁気記録層73は加熱される。加熱は効率的に実施される。
【0061】
以上のような浮上ヘッドスライダ22bでは、第1境界面94で開口63が確立される。したがって、前述の式の左辺で表現される光路長は開口63から磁気記録層73までの距離に当てはめられればよい。後退量Xは光路に沿って空気軸受け面42から開口63のまでの距離で規定されればよい。こうした浮上ヘッドスライダ22bの製造にあたって、前述の下部クラッド膜82の表面にコア62の第3境界面96を受け止める傾斜面が形成されればよい。傾斜面の形成にあたってFIB装置やイオンミリング装置が用いられればよい。
【0062】
(付記1) 第1屈折率の材料から構成されるクラッドと、クラッド内に埋め込まれて第1屈折率と異なる第2屈折率の材料から構成され、終端に向かって先細るコアと、第2屈折率の材料とは異なる材料で構成され、終端で光路を横切る光透過層とを備えることを特徴とする光出力装置。
【0063】
(付記2) 付記1に記載の光出力装置において、コアの終端から出力される光の光量は、到達距離の増大に応じて増減を繰り返す波形に従って変化し、前記光透過層中の光路の長さは、前記光透過層が省略される際に実現される光量よりも大きな光量を実現する値に設定されることを特徴とする光出力装置。
【0064】
(付記3) 記憶媒体と、記憶媒体に向き合わせられるヘッドスライダとを備え、ヘッドスライダは、スライダ本体と、スライダ本体の空気流出側端面に積層されて、特定表面で記憶媒体に向き合わせられる絶縁性の非磁性膜と、非磁性膜内に埋め込まれて、非磁性膜の特定表面から所定の後退量で後退する位置で前端を区画する光導波路とを備えることを特徴とする記憶媒体駆動装置。
【0065】
(付記4) 付記3に記載の記憶媒体駆動装置において、記憶媒体内の記録層に到達する光の光量は、到達距離の増大に応じて増減を繰り返す波形に従って変化し、前記後退量は、前記後退量がゼロに設定される際に実現される光量よりも大きな光量を実現する値に設定されることを特徴とする記憶媒体駆動装置。
【0066】
(付記5) 付記3に記載の記憶媒体駆動装置において、前記光導波路は、前記非磁性膜の屈折率と異なる屈折率の材料から構成されることを特徴とする記憶媒体駆動装置。
【0067】
(付記6) 付記5に記載の記憶媒体駆動装置において、前記光導波路は、均一な間隔で相互に向き合う垂直境界面同士で区画される均一路と、垂直境界面から非磁性膜の表面に向かって延び、非磁性膜の表面に近づくにつれて相互に接近する傾斜境界面同士で区画される先細路とを備えることを特徴とする記憶媒体駆動装置。
【0068】
(付記7) 付記5に記載の記憶媒体駆動装置において、前記光導波路は、仮想平面に沿って広がる第1境界面と、第1境界面に均一な間隔で向き合う第2境界面と、第2境界面から非磁性膜の表面に向かって延び、徐々に第1境界面に接近する第3境界面とで区画されることを特徴とする記憶媒体駆動装置。
【0069】
(付記8) 付記3に記載の記憶媒体駆動装置において、非磁性膜内に埋め込まれて非磁性膜の表面で前端を露出させる電磁変換素子をさらに備えることを特徴とする記憶媒体駆動装置。
【0070】
(付記9) スライダ本体と、スライダ本体の空気流出側端面に積層されて、特定表面で記憶媒体に向き合わせられる絶縁性の非磁性膜と、非磁性膜内に埋め込まれて、非磁性膜の特定表面から所定の後退量で後退する位置で前端を区画する光導波路とを備えることを特徴とするヘッドスライダ。
【0071】
(付記10) 付記9に記載のヘッドスライダにおいて、記憶媒体内の記録層に到達する光の光量は、到達距離の増大に応じて増減を繰り返す波形に従って変化し、前記後退量は、前記後退量がゼロに設定される際に実現される光量よりも大きな光量を実現する値に設定されることを特徴とするヘッドスライダ。
【0072】
(付記11) 付記9に記載のヘッドスライダにおいて、前記光導波路は、前記非磁性膜の屈折率と異なる屈折率の材料から構成されることを特徴とするヘッドスライダ。
【0073】
(付記12) 付記11に記載のヘッドスライダにおいて、前記光導波路は、均一な間隔で相互に向き合う垂直境界面同士で区画される均一路と、垂直境界面から非磁性膜の表面に向かって延び、非磁性膜の表面に近づくにつれて相互に接近する傾斜境界面同士で区画される先細路とを備えることを特徴とするヘッドスライダ。
【0074】
(付記13) 付記11に記載のヘッドスライダにおいて、前記光導波路は、仮想平面に沿って広がる第1境界面と、第1境界面に均一な間隔で向き合う第2境界面と、第2境界面から非磁性膜の表面に向かって延び、徐々に第1境界面に接近する第3境界面とで区画されることを特徴とするヘッドスライダ。
【0075】
(付記14) 付記9に記載のヘッドスライダにおいて、非磁性膜内に埋め込まれて非磁性膜の表面で前端を露出させる電磁変換素子をさらに備えることを特徴とするヘッドスライダ。
【0076】
(付記15) 記憶媒体と、記憶媒体に向き合わせられるヘッドスライダとを備え、ヘッドスライダは、スライダ本体と、スライダ本体の空気流出側端面に積層されて、特定表面で記憶媒体に向き合わせられる絶縁性の非磁性膜と、非磁性膜内に埋め込まれる光導波路と、光導波路の前端で光路を横切る光透過層とを備えることを特徴とする記憶媒体駆動装置。
【0077】
(付記16) 付記15に記載の記憶媒体駆動装置において、前記光導波路の前端から出力される光の光量は、到達距離の増大に応じて増減を繰り返す波形に従って変化し、前記光透過層中の光路の長さは、前記光透過層が省略される際に実現される光量よりも大きな光量を実現する値に設定されることを特徴とする記憶媒体駆動装置。
【0078】
(付記17) 付記15に記載の記憶媒体駆動装置において、前記光導波路は、前記非磁性膜の屈折率と異なる屈折率の材料から構成されることを特徴とする記憶媒体駆動装置。
【0079】
(付記18) 付記17に記載の記憶媒体駆動装置において、前記光導波路の前端には、均一な間隔で相互に向き合う垂直境界面同士で区画される均一路が区画されることを特徴とする記憶媒体駆動装置。
【0080】
(付記19) 付記17に記載の記憶媒体駆動装置において、非磁性膜内に埋め込まれて非磁性膜の表面で前端を露出させる電磁変換素子をさらに備えることを特徴とする記憶媒体駆動装置。
【0081】
(付記20) スライダ本体と、スライダ本体の空気流出側端面に積層されて、特定表面で記憶媒体に向き合わせられる絶縁性の非磁性膜と、非磁性膜内に埋め込まれる光導波路と、光導波路の前端で光路を横切る光透過層とを備えることを特徴とするヘッドスライダ。
【0082】
(付記21) 付記20に記載のヘッドスライダにおいて、前記光導波路の前端から出力される光の光量は、到達距離の増大に応じて増減を繰り返す波形に従って変化し、前記光透過層中の光路の長さは、前記光透過層が省略される際に実現される光量よりも大きな光量を実現する値に設定されることを特徴とするヘッドスライダ。
【0083】
(付記22) 付記20に記載のヘッドスライダにおいて、前記光導波路は、前記非磁性膜の屈折率と異なる屈折率の材料から構成されることを特徴とするヘッドスライダ。
【0084】
(付記23) 付記22に記載のヘッドスライダにおいて、前記光導波路の前端には、均一な間隔で相互に向き合う垂直境界面同士で区画される均一路が区画されることを特徴とするヘッドスライダ。
【0085】
(付記24) 付記22に記載のヘッドスライダにおいて、非磁性膜内に埋め込まれて非磁性膜の表面で前端を露出させる電磁変換素子をさらに備えることを特徴とするヘッドスライダ。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明に係る記憶媒体駆動装置の一具体例すなわちハードディスク駆動装置の内部構造を概略的に示す平面図である。
【図2】一具体例に係るヘッドスライダの構造を概略的に示す斜視図である。
【図3】電磁変換素子の拡大正面図である。
【図4】図3の4−4線に沿った断面図である。
【図5】図4の5−5線に沿った断面図である。
【図6】ヘッドスライダから磁気ディスクに光が照射される様子を概略的に示す断面図である。
【図7】光透過層の膜厚と光の到達効率との関係を示すグラフである。
【図8】光透過層の膜厚と光の到達効率との関係を示すグラフである。
【図9】読み出しヘッド上にクラッドおよびコアが形成される様子を概略的に示す断面図である。
【図10】コア膜上にレジスト膜が形成される様子を概略的に示す平面図である。
【図11】読み出しヘッド上にクラッドおよびコアが形成される様子を概略的に示す断面図である。
【図12】クラッド上に書き込みヘッドが形成される様子を概略的に示す断面図である。
【図13】浮上面が形成される様子を概略的に示す断面図である。
【図14】本発明の第2実施形態に係る浮上ヘッドスライダの構造を概略的に示す断面図である。
【図15】読み出しヘッド上にコアおよびクラッドが形成される様子を概略的に示す断面図である。
【図16】光透過層が形成される様子を概略的に示す断面図である。
【図17】本発明の第3実施形態に係る浮上ヘッドスライダの構造を概略的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0087】
11 記憶媒体駆動装置(ハードディスク駆動装置)、14 記憶媒体(磁気ディスク)、22 ヘッドスライダ(浮上ヘッドスライダ)、31 スライダ本体、32 非磁性膜(素子内蔵膜)、32a 光透過層、32b クラッド、33 電磁変換素子、34 特定表面(浮上面)、62 コア(光導波路)、65 先細路、66 傾斜境界面、67 均一路、68 垂直境界面、73 記録層(磁気記録層)、87 均一路、88 垂直境界面、94 第1境界面、95 第2境界面、96 第3境界面。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1屈折率の材料から構成されるクラッドと、クラッド内に埋め込まれて第1屈折率と異なる第2屈折率の材料から構成され、終端に向かって先細るコアと、第2屈折率の材料とは異なる材料で構成され、終端で光路を横切る光透過層とを備えることを特徴とする光出力装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光出力装置において、コアの終端から出力される光の光量は、到達距離の増大に応じて増減を繰り返す波形に従って変化し、前記光透過層中の光路の長さは、前記光透過層が省略される際に実現される光量よりも大きな光量を実現する値に設定されることを特徴とする光出力装置。
【請求項3】
記憶媒体と、記憶媒体に向き合わせられるヘッドスライダとを備え、ヘッドスライダは、スライダ本体と、スライダ本体の空気流出側端面に積層されて、特定表面で記憶媒体に向き合わせられる絶縁性の非磁性膜と、非磁性膜内に埋め込まれて、非磁性膜の特定表面から所定の後退量で後退する位置で前端を区画する光導波路とを備えることを特徴とする記憶媒体駆動装置。
【請求項4】
請求項3に記載の記憶媒体駆動装置において、記憶媒体内の記録層に到達する光の光量は、到達距離の増大に応じて増減を繰り返す波形に従って変化し、前記後退量は、前記後退量がゼロに設定される際に実現される光量よりも大きな光量を実現する値に設定されることを特徴とする記憶媒体駆動装置。
【請求項5】
請求項3に記載の記憶媒体駆動装置において、前記光導波路は、均一な間隔で相互に向き合う垂直境界面同士で区画される均一路と、垂直境界面から非磁性膜の表面に向かって延び、非磁性膜の表面に近づくにつれて相互に接近する傾斜境界面同士で区画される先細路とを備えることを特徴とする記憶媒体駆動装置。
【請求項6】
請求項3に記載の記憶媒体駆動装置において、前記光導波路は、仮想平面に沿って広がる第1境界面と、第1境界面に均一な間隔で向き合う第2境界面と、第2境界面から非磁性膜の表面に向かって延び、徐々に第1境界面に接近する第3境界面とで区画されることを特徴とする記憶媒体駆動装置。
【請求項7】
スライダ本体と、スライダ本体の空気流出側端面に積層されて、特定表面で記憶媒体に向き合わせられる絶縁性の非磁性膜と、非磁性膜内に埋め込まれて、非磁性膜の特定表面から所定の後退量で後退する位置で前端を区画する光導波路とを備えることを特徴とするヘッドスライダ。
【請求項8】
記憶媒体と、記憶媒体に向き合わせられるヘッドスライダとを備え、ヘッドスライダは、スライダ本体と、スライダ本体の空気流出側端面に積層されて、特定表面で記憶媒体に向き合わせられる絶縁性の非磁性膜と、非磁性膜内に埋め込まれる光導波路と、光導波路の前端で光路を横切る光透過層とを備えることを特徴とする記憶媒体駆動装置。
【請求項1】
第1屈折率の材料から構成されるクラッドと、クラッド内に埋め込まれて第1屈折率と異なる第2屈折率の材料から構成され、終端に向かって先細るコアと、第2屈折率の材料とは異なる材料で構成され、終端で光路を横切る光透過層とを備えることを特徴とする光出力装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光出力装置において、コアの終端から出力される光の光量は、到達距離の増大に応じて増減を繰り返す波形に従って変化し、前記光透過層中の光路の長さは、前記光透過層が省略される際に実現される光量よりも大きな光量を実現する値に設定されることを特徴とする光出力装置。
【請求項3】
記憶媒体と、記憶媒体に向き合わせられるヘッドスライダとを備え、ヘッドスライダは、スライダ本体と、スライダ本体の空気流出側端面に積層されて、特定表面で記憶媒体に向き合わせられる絶縁性の非磁性膜と、非磁性膜内に埋め込まれて、非磁性膜の特定表面から所定の後退量で後退する位置で前端を区画する光導波路とを備えることを特徴とする記憶媒体駆動装置。
【請求項4】
請求項3に記載の記憶媒体駆動装置において、記憶媒体内の記録層に到達する光の光量は、到達距離の増大に応じて増減を繰り返す波形に従って変化し、前記後退量は、前記後退量がゼロに設定される際に実現される光量よりも大きな光量を実現する値に設定されることを特徴とする記憶媒体駆動装置。
【請求項5】
請求項3に記載の記憶媒体駆動装置において、前記光導波路は、均一な間隔で相互に向き合う垂直境界面同士で区画される均一路と、垂直境界面から非磁性膜の表面に向かって延び、非磁性膜の表面に近づくにつれて相互に接近する傾斜境界面同士で区画される先細路とを備えることを特徴とする記憶媒体駆動装置。
【請求項6】
請求項3に記載の記憶媒体駆動装置において、前記光導波路は、仮想平面に沿って広がる第1境界面と、第1境界面に均一な間隔で向き合う第2境界面と、第2境界面から非磁性膜の表面に向かって延び、徐々に第1境界面に接近する第3境界面とで区画されることを特徴とする記憶媒体駆動装置。
【請求項7】
スライダ本体と、スライダ本体の空気流出側端面に積層されて、特定表面で記憶媒体に向き合わせられる絶縁性の非磁性膜と、非磁性膜内に埋め込まれて、非磁性膜の特定表面から所定の後退量で後退する位置で前端を区画する光導波路とを備えることを特徴とするヘッドスライダ。
【請求項8】
記憶媒体と、記憶媒体に向き合わせられるヘッドスライダとを備え、ヘッドスライダは、スライダ本体と、スライダ本体の空気流出側端面に積層されて、特定表面で記憶媒体に向き合わせられる絶縁性の非磁性膜と、非磁性膜内に埋め込まれる光導波路と、光導波路の前端で光路を横切る光透過層とを備えることを特徴とする記憶媒体駆動装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2008−198301(P2008−198301A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−34005(P2007−34005)
【出願日】平成19年2月14日(2007.2.14)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年2月14日(2007.2.14)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
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