説明

光制御装置とその製造方法、電気光学装置、及び電子機器

【課題】高開口率の光制御装置を提供する。
【解決手段】本発明の光制御装置は、基板と、前記基板に形成された光透過領域と、前記基板上で水平移動することで前記光透過領域に対して進退する複数の遮光板と、を有し、複数の前記遮光板のうち少なくとも2つの前記遮光板が、互いに異なる移動平面を有するとともに、前記光透過領域から後退した位置で少なくとも部分的に重なることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光制御装置とその製造方法、電気光学装置、及び電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、光記憶/記録、光論理演算等に利用される光変調手段として、基板開口部上に複数の遮光板を設け、これを移動させることによって開口部を通る光の透過/非透過を制御するメカニカル光シャッター(光制御装置)が提案されている(例えば特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3912760号公報
【特許文献2】特開平9−218360号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、開口部に対して側方から進退する2枚のシャッターを設け、かかるシャッターにより光の透過/非透過を制御する構成が開示されている。しかしながら、かかる構成ではシャッターを開口部と同じ若しくは開口部を超える大きさとしなければならず、構造上開口率を50%とすることはできなかった。また、開口部の両側から進出させたシャッターを開口部上で密着させて光を遮断するため、シャッター同士の合わせの精度を達成できないと光漏れが大きくなるという課題があった。
【0005】
これに対して、特許文献2には、開口部に対して進退する2枚の遮光板を、開口部を遮蔽する位置で部分的に重ね合わせる構成が開示されている。しかしながら、かかる構成でも遮光板は開口部と同じ若しくは開口部を超える大きさとしなければならず、やはり開口率を50%以上とすることはできなかった。また、2枚の遮光板の先端部を重ねるために遮光板が複雑な形状となっており、さらに動作不具合を回避するために複雑な制御が必要であった。
【0006】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑み成されたものであって、高開口率の光制御装置とその製造方法を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の光制御装置は、基板と、前記基板に形成された光透過領域と、前記基板上で水平移動することで前記光透過領域に対して進退する複数の遮光板と、を有し、複数の前記遮光板のうち少なくとも2つの前記遮光板が、互いに異なる移動平面を有するとともに、前記光透過領域から後退した位置で少なくとも部分的に重なることを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、光透過領域から遮光板を後退させたときに、2枚の遮光板が重なって配置されるため、遮光板の退避領域を狭小化することができる。これにより、貫通孔の平面領域を大きくすることが可能になり、高開口率を達成することができる。
【0009】
すべての前記遮光板が、前記基板の一方の主面側に形成されている構成とすることができる。
この構成によれば、基板の一面側に遮光板を形成するので、連続した工程ですべての遮光板を形成することができる。
【0010】
前記基板の両面に、それぞれ前記遮光板が形成されている構成とすることもできる。
この場合、基板のそれぞれの面における配線層を比較的少なくすることができる。
【0011】
複数の前記遮光板が、前記光透過領域上に進出した位置で互いに部分的に重なることが好ましい。
この構成によれば、光遮断状態における光漏れを減少させることができる。
【0012】
前記遮光板に、静電アクチュエーターが接続されていることが好ましい。すなわち、遮光板を駆動する手段が、静電アクチュエーターであることが好ましい。
かかる構成によれば、比較的簡素な構成で動作制御も容易な光制御装置を得ることができる。
【0013】
本発明の光制御装置の製造方法は、基板と、前記基板に形成された光透過領域と、前記基板上で水平移動することで前記光透過領域に対して進退する複数の遮光板と、を有する光制御装置の製造方法であって、前記基板上の第1デバイス形成層に、一又は複数の前記遮光板を形成する工程と、前記第1デバイス形成層とは異なる第2デバイス形成層に、一又は複数の前記遮光板を形成する工程と、を有することを特徴とする。
【0014】
この製造方法によれば、互いに異なる第1及び第2デバイス形成層にそれぞれ遮光板を形成するので、互いに干渉することなく水平移動可能な遮光板を基板上に形成することができる。これにより、光透過領域から後退した位置で互いに重なり合う複数の遮光板を基板上に容易に形成することができる。その結果、遮光板の退避領域が狭小化され、開口率が向上した光制御装置を製造することができる。
【0015】
本発明の光制御装置の製造方法は、基板と、前記基板に形成された光透過領域と、前記基板上で水平移動することで前記光透過領域に対して進退する複数の遮光板と、を有する光制御装置の製造方法であって、前記基板上の第1デバイス形成層に、一又は複数の前記遮光板を形成する工程と、前記基板とは異なる暫定基板上の前記第2デバイス形成層に一又は複数の前記遮光板を形成する工程と、前記暫定基板と前記第2デバイス形成層のうち少なくとも前記第2デバイス形成層を前記基板と貼り合わせる工程と、を有することを特徴とする。
【0016】
この製造方法によれば、別々に形成した第1及び第2デバイス形成層を貼り合わせるので、第1デバイス形成層に形成された遮光板と第2デバイス形成層に形成された遮光板は必然的に異なる層に配置されることとなる。したがって、光透過領域から後退した位置で互いに重なり合う複数の遮光板を基板上に容易に形成することができる。その結果、遮光板の退避領域が狭小化され、開口率が向上した光制御装置を製造することができる。
【0017】
前記基板の一方の主面に、前記第1デバイス形成層と前記第2デバイス形成層とを積層することもできる。
この製造方法によれば、基板の一方の面に、互いに干渉することなく水平移動可能な複数の遮光板が形成された光制御装置を製造することができる。
【0018】
前記基板の一方の主面に前記第1デバイス形成層を設け、前記基板の他方の主面に前記第2デバイス形成層を設けることもできる。
この製造方法によれば、基板のそれぞれの面に遮光板が形成された構成の光制御装置を製造することができる。
【0019】
本発明の光制御装置の製造方法は、第1基板と第2基板とを貼り合わせてなる基板と、前記基板に形成された光透過領域と、前記基板上で水平移動することで前記光透過領域に対して進退する複数の遮光板と、を有する光制御装置の製造方法であって、前記第1基板上の第1デバイス形成層に、一又は複数の前記遮光板を形成する工程と、前記第2基板上の第2デバイス形成層に、一又は複数の前記遮光板を形成する工程と、前記第1基板の前記第1デバイス形成層と反対側の面と、前記第2基板の前記第2デバイス形成層と反対側の面とを貼り合わせる工程と、を有することを特徴とする。
【0020】
この製造方法によれば、基板の両面にそれぞれ遮光板が形成された構成の光制御装置を容易に製造することができる。
【0021】
本発明の電気光学装置は、先に記載の光制御装置を備えたことを特徴とする。
この構成によれば、高開口率の画素を具備し、高輝度の表示が得られる電気光学装置を提供することができる。
【0022】
本発明の電子機器は、先に記載の電気光学装置を備えたことを特徴とする。
また本発明の電子機器は、先に記載の光制御装置を備えたことを特徴とする。
この構成によれば、高開口率の光変調手段を備えた電子機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】光制御装置の第1実施形態を示す平面図。
【図2】光制御部を拡大して示す図。
【図3】光遮断状態の光制御部を示す平面図。
【図4】光通過状態の光制御部を示す平面図。
【図5】図3,4に対応する断面図。
【図6】第1実施形態に係る製造工程を示す図。
【図7】第1実施形態に係る製造工程を示す図。
【図8】第1実施形態に係る製造工程を示す図。
【図9】光制御装置の第2実施形態を示す平面図。
【図10】光制御装置の第2実施形態を示す平面図。
【図11】第2実施形態に係る光制御装置の動作説明のための断面図。
【図12】第2実施形態に係る製造工程を示す図。
【図13】第2実施形態に係る製造工程を示す図。
【図14】第2実施形態に係る製造工程を示す図。
【図15】電気光学装置の実施形態を示す図。
【図16】電子機器の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を用いて本発明の実施の形態について説明する。
なお、本発明の範囲は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。また、以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、実際の構造と各構造における縮尺や数等を異ならせている。
【0025】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の光制御装置の第1実施形態を示す平面図であり、図1(a)はアクチュエーターを可視化した図、図1(b)は遮光板の配置状態を示す説明図である。
図2は、図1に示す光制御部を拡大して示す図であり、図2(a)は光制御部の平面図、図2(b)は、図2(a)に示すA−A’線に沿う位置の断面図である。
【0026】
図1に示すように、光制御装置100は、基体としての基板18と、基板18上に形成された複数の光制御部10(10A、10B)を備えている。
光制御部10は、図1及び図2に示すように、それぞれ、基板18を貫通して形成された貫通孔19(光透過領域)と、貫通孔19上に進退する遮光板16及び遮光板17と、遮光板16を駆動する第1アクチュエーター21と、遮光板17を駆動する第2アクチュエーター22とを備えている。
【0027】
基板18は、例えばシリコンやガラス等からなり、その表面に遮光膜や絶縁膜が形成されたものであってもよい。基板18には、平面視矩形状を成して基板18を厚さ方向に貫通する貫通孔19が形成されている。本実施形態の場合、平面視矩形状の貫通孔19の一辺に沿う位置に第1アクチュエーター21が形成されており、第1アクチュエーター21が配置された辺と対向する貫通孔19の一辺に第2アクチュエーター22が形成されている。
【0028】
なお、基板18がガラス基板等の透明基板である場合には、貫通孔19に対応する開口部を有する遮光膜を基板18の表面に形成し、光制御部10の光透過領域とすればよい。ただし、基板18が透明基板であっても貫通孔19を形成することは妨げられない。
【0029】
第1アクチュエーター21は、貫通孔19の一辺に沿う位置に形成された櫛歯状の第1固定電極11と、第1固定電極11に噛み合う櫛歯状の第1可動電極12とを有する。第1固定電極11から図示下方に延出された梁部11aと、梁部11aの先端に形成された固定部11bとにより、第1固定電極11は基板18上に支持されている。第1可動電極12から図示上方に延出された弾性梁部12aと、弾性梁部12aの先端に形成された支持部12bとにより、第1可動電極12は基板18上に支持されている。
【0030】
第1固定電極11は、梁部11a及び固定部11bを介して基板18上に形成された図示略の配線に接続されている。また第1可動電極12は、弾性梁部12a及び支持部12bを介して基板18上の図示略の配線に接続されている。光制御装置100の動作時には、上記の配線を介して、図示略の電位制御回路から第1固定電極11及び第1可動電極12に所定の電位が入力される。
【0031】
第1固定電極11及び第1可動電極12は、例えば不純物をドープした多結晶シリコンや金属材料からなり、いずれも平面視略櫛歯状に形成されている。第1固定電極11は、図2に示すように、図示上下方向に延在する幹電極11cと、幹電極11cから第1可動電極12側(図示左側)に延出された複数(図示では8本)の枝電極11dとを有する。複数の枝電極11dの先端は貫通孔19の外周部に配置されている。
第1可動電極12は、図示上下方向に延在する幹電極12cと、幹電極12cから第1固定電極11側に延出された複数(図1では8本)の枝電極12dとを有する。
【0032】
第1固定電極11と第1可動電極12とは、互いの枝電極11d、12dを噛み合わせるようにして基板18上に配置されている。第1固定電極11及び第1可動電極12の長手方向(図示上下方向)において、第1固定電極11の枝電極11dと第1可動電極12の枝電極12dとが交互に配置されている。
【0033】
第2アクチュエーター22は、第1固定電極11とは反対側の貫通孔19の一辺に沿う位置に形成された櫛歯状の第2固定電極13と、第2固定電極13と噛み合う櫛歯状の第2可動電極14とを有する。第2固定電極13から図示下方に延出された梁部13aと、梁部13aの先端に形成された固定部13bとにより、第2固定電極13は基板18上に支持されている。第2可動電極14から図示上方に延出された弾性梁部14aと、弾性梁部14aの先端に形成された支持部14bとにより、第2可動電極14は基板18上に支持されている。
【0034】
第2固定電極13は、梁部13a及び固定部13bを介して基板18上に形成された図示略の配線に接続されている。また第2可動電極14は、弾性梁部14a及び支持部14bを介して基板18上の図示略の配線に接続されている。光制御装置100の動作時には、上記の配線を介して、図示略の電位制御回路から第2固定電極13及び第2可動電極14に所定の電位が入力される。
【0035】
第2固定電極13及び第2可動電極14は、例えば不純物をドープした多結晶シリコンや金属材料からなり、いずれも平面視略櫛歯状に形成されている。第2固定電極13は、図2に示すように、図示上下方向に延在する幹電極13cと、幹電極13cから第2可動電極14側(図示右側)に延出された複数(図示では8本)の枝電極13dとを有する。複数の枝電極13dの先端は貫通孔19の外周部に配置されている。
第2可動電極14は、図示上下方向に延在する幹電極14cと、幹電極14cから第2固定電極13側に延出された複数(図1では8本)の枝電極14dとを有する。
【0036】
第2固定電極13と第2可動電極14とは、互いの枝電極13d、14dを噛み合わせるようにして基板18上に配置されている。第2固定電極13及び第2可動電極14の長手方向(図示上下方向)において、第2固定電極13の枝電極13dと第2可動電極14の枝電極14dとが交互に配置されている。
【0037】
図2(b)に示す断面図を見ると、基板18を厚さ方向に貫通する貫通孔19が形成されている。貫通孔19の側方の基板18上には配線25が形成されている。配線25が形成された層の上層には、第1デバイス形成層31と、第2デバイス形成層32とが基板18側から順に形成されている。下層側の第1デバイス形成層31には、第1アクチュエーター21(第1固定電極11、第1可動電極12など)が形成されている。上層側の第2デバイス形成層32には、第2アクチュエーター22(第2固定電極13、第2可動電極14など)が形成されている。
【0038】
基板18上の配線25上は、第1デバイス形成層31に形成された第1固定電極11の固定部11bが配置され、固定部11bから延びた柱状部11eを介して第1固定電極11と配線25とが接続されている。
さらに固定部11b上には、第2デバイス形成層32に形成された第2固定電極13の固定部13bが配置され、固定部13bから延びた柱状部13eを介して第2固定電極13と第1固定電極11とが接続されている。したがって、配線25は、第1固定電極11及び第2固定電極13と電気的に接続されている。
【0039】
図2(b)に示すように、本実施形態では、第1可動電極12と第2可動電極14が、それぞれ異なるデバイス形成層に形成されており、光制御部10の動作時に互いに干渉しない構成とされている。なお、図示は省略しているが、第1可動電極12及び第2可動電極14についても、それぞれ支持部12b、14bを介して基板18上の配線と接続され、当該配線を介して電源から電位入力可能に構成されている。
【0040】
[動作説明]
次に、図3から図5を参照しつつ光制御装置100の動作について説明する。
図3は、光遮断状態の光制御部10A,10Bを示す平面図であり、図3(a)はアクチュエーターの状態、図3(b)は遮光板の状態を示している。
図4は、光通過状態の光制御部10A,10Bを示す平面図であり、図4(a)はアクチュエーターの状態、図4(b)は遮光板の状態を示している。
図5(a)は、図3(a)のB−B’線に沿う位置における断面図であり、図5(b)は、図4(a)のC−C’線に沿う位置における断面図である。
【0041】
光制御装置100は、第1可動電極12及び第2可動電極14をそれぞれ水平移動させることで貫通孔19上に遮光板16,17を進退させる。これにより、貫通孔19から射出される光を遮光板16,17により通過、遮断することで、光の透過/非透過を制御する。
【0042】
まず、図3及び図5(a)に示す光遮断状態は、光制御部10A、10Bの初期状態である。すなわち、第1及び第2固定電極11,13、第1及び第2可動電極12,14に何ら電位を入力しない状態では、光制御部10A、10Bはいずれも光遮断状態となる。
あるいは、第1固定電極11と第1可動電極12とを同電位、第2固定電極13と第2可動電極14とを同電位に保持してもよい。
【0043】
光遮断状態の光制御部10A、10Bでは、図3(b)に示すように、遮光板16及び遮光板17はいずれも貫通孔19上に位置し、これら2枚の遮光板16,17により貫通孔19が覆われている。さらに、遮光板16の第2アクチュエーター22側の辺縁部と、遮光板17の第1アクチュエーター21側の辺縁部とが、平面視で重なるように配置されている。
【0044】
一方、図5(a)に示すように、遮光板16と遮光板17とは、基板18上の異なる層(第1及び第2デバイス形成層31,32)に形成されているため、平面視で重なって配置されていても、遮光板16及び第1可動電極12と、遮光板17及び第2可動電極14とが接触することはない。
【0045】
次に、図4及び図5(b)に示す光通過状態に移行させるには、図3に示した光遮断状態において、第1固定電極11と第1可動電極12との間に電圧が印加され、例えば、第1固定電極11が相対的に低電位、第1可動電極12が相対的に高電位とされる。なお、固定電極と可動電極の電位の高低関係は逆であってもよい。
このように電圧が印加されると、第1固定電極11と第1可動電極12との間の静電引力が生じ、第1可動電極12が第1固定電極11側へ引き寄せられる。これにより、第1可動電極12上に配設されている遮光板16が第1固定電極11側へ移動し、貫通孔19上から退避される。
【0046】
また、第2固定電極13と第2可動電極14との間に電圧が印加され、例えば、第2固定電極13が相対的に低電位、第2可動電極14が相対的に高電位とされる。なお、固定電極と可動電極の電位の高低関係は逆であってもよい。
このように電圧が印加されると、第2固定電極13と第2可動電極14との間に生じる静電引力により、第2可動電極14が第2固定電極13側へ引き寄せられる。これにより、第2可動電極14上に配設されている遮光板17が第2固定電極13上に移動し、貫通孔19上から退避される。
なお、図1及び図2に示した状態は、上記動作によって第2可動電極14を途中まで動かした状態に対応する。
【0047】
以上の動作により、図4及び図5(b)に示すように、遮光板16,17が貫通孔19の外側に退避され、貫通孔19から射出される光が光制御部10A、10Bを通過する状態となる。また、図5(b)に示すように、遮光板16及び第1可動電極12と、遮光板17及び第2可動電極14とは、互いに干渉することなく水平移動が可能であるため、光通過状態では、第1固定電極11側へ引き寄せられた第1可動電極12及び遮光板16と、第2固定電極13側へ引き寄せられた第2可動電極14及び遮光板17とが、平面視でほぼ重なった状態となる。
【0048】
なお、図4及び図5(b)に示す光通過状態から、固定電極及び可動電極への電圧印加を停止すると、第1可動電極12(及び遮光板16)は弾性梁部12aの弾性復帰力により図3に示した光遮断状態の位置に復帰する。また第2可動電極14も弾性梁部14aの弾性復帰力により図4に示した光遮断状態の位置に復帰する。
【0049】
以上詳細に説明したように、本実施形態の光制御装置100は、第1及び第2固定電極11,13と、第1及び第2可動電極12,14の電位状態を制御することで第1及び第2アクチュエーター21,22を駆動し、これによって遮光板16,17を貫通孔19に対して水平に進退させることで、貫通孔19から射出される光の通過/遮断状態を自在に切り換えることができる。
【0050】
そして、本実施形態の光制御装置100では、第1可動電極12及び遮光板16と、第2可動電極14及び遮光板17とが、互いに干渉することなく自在に水平移動可能とされている。これにより、図4及び図5(b)に示したように、光遮断状態において、遮光板16と遮光板17とが平面視で重なった状態とすることができる。したがって、遮光板16,17を貫通孔19上から後退させたときに配置される領域を小さくすることができる。その結果、貫通孔19の開口径を大きくし、開口率を向上させることができる。
【0051】
また、本実施形態の光制御装置100では、光遮断状態において遮光板16,17が平面視で部分的に重なるように配置することができる。これにより、貫通孔19から射出した光を遮光板16と遮光板17とにより確実に遮断することができ、光漏れの生じにくい構造とすることができる。
【0052】
[製造方法]
次に、上記実施形態の光制御装置100の製造方法について、図6から図8を参照して説明する。図6から図8に示す工程図は、図3のD−D’線に沿う位置における各工程での状態を示す断面図である。
【0053】
まず、図6(a)に示すように、例えばシリコンからなる基板18を用意する。
図示は省略しているが、用意した基板18の少なくとも図示上面側には絶縁膜が形成されている。この絶縁膜は、シリコンからなる基板18を熱酸化して形成してもよいし、CVD法やスパッタ法などの成膜法を用いて形成してもよい。また、絶縁膜としては、シリコン酸化物膜に限らず、シリコン窒化物やシリコン酸化窒化物膜であってもよい。
【0054】
次に、図6(b)に示すように、基板18上に、例えば不純物をドープした多結晶シリコンや金属材料からなる配線25を形成する。
具体的には、例えば不純物をドープした多結晶シリコンからなる導電膜をスパッタ法などの公知の成膜法により基板18上に形成した後、フォトリソグラフィー工程及びエッチング工程によって導電膜をパターニングすることで、所定の平面形状の配線25を形成する。
配線25は、多結晶シリコンの他、アルミニウムやアルミ銅合金などの金属材料を用いて形成してもよく、導電性の高分子材料を用いて形成してもよい。
【0055】
次に、図6(c)に示すように、例えばシリコン酸化物膜からなる第1犠牲層41を、例えばCVD法などを用いて形成する。この第1犠牲層41上の配線層が、本発明における第1デバイス形成層となる。
次いで、図6(d)に示すように、フォトリソグラフィー工程及びエッチング工程によって、第1犠牲層41を貫通して配線25に達するコンタクトホール41a、41aを形成する。
【0056】
次に、第1犠牲層41を覆うように、例えば不純物をドープした多結晶シリコンからなる導電膜をスパッタ法などの公知の成膜法により形成する。その後、この導電膜をフォトリソグラフィー工程及びエッチング工程でパターニングすることで、図6(e)に示すように、第1固定電極11(梁部11a、固定部11b)、第1可動電極12(弾性梁部12a、支持部12b)を形成する。
第1固定電極11及び第1可動電極12は、多結晶シリコンの他、アルミニウムやアルミ銅合金などの金属材料を用いて形成してもよく、導電性の高分子材料を用いて形成してもよい。
【0057】
次に、図7(a)に示すように、基板18上の全面に第2犠牲層42を形成する。その後、第2犠牲層42の表面をCMP(Chemical Mechanical Polishing)などの処理により平坦化する。この平坦化処理により第2犠牲層42を部分的に除去することで、図7(a)に示すように、少なくとも第1可動電極12を露出させる。
【0058】
第2犠牲層42は、先の第1犠牲層41と同様の材料を用いて形成してもよいし、異なる材料を用いて形成してもよい。第2犠牲層42と第1犠牲層41とで異なる材料を用いる場合には、同等のエッチング速度が得られる材料を用いることが好ましい。第2犠牲層42は、例えばシリコン酸化物膜やシリコン窒化物膜とすることができる。
【0059】
次に、第2犠牲層42や第1固定電極11、第1可動電極12を覆うように、例えばアルミニウムからなる金属膜を成膜する。その後、この金属膜をフォトリソグラフィー工程及びエッチング工程によってパターニングすることで、図7(b)に示すように、第1可動電極12上に遮光板16を形成する。遮光板16は、アルミニウムの他、クロムやアルミ銅合金、白金、チタン、タングステンなどを用いて形成してもよい。以上により、第1犠牲層41上の第1デバイス形成層31に第1アクチュエーター21が形成される。
【0060】
次に、図7(c)に示すように、遮光板16や第2犠牲層42、第1固定電極11を覆うように、第3犠牲層43を形成する。第3犠牲層43の構成材料は第2犠牲層42と同様に選択することができる。この第3犠牲層43上の配線層が、本発明における第2デバイス形成層となる。第1アクチュエーター21が形成された第1デバイス形成層と、第2デバイス形成層とは、第3犠牲層43を介して離間される。
その後、図7(d)に示すように、第3犠牲層43を貫通して第1固定電極11の固定部11bに達するコンタクトホール43a、43aを、フォトリソグラフィー工程及びエッチング工程により形成する。
【0061】
次に、第3犠牲層43上に例えば多結晶シリコンからなる導電膜をスパッタ法などの公知の成膜法により形成する。その後、この導電膜をフォトリソグラフィー工程及びエッチング工程でパターニングすることで、図8(a)に示すように、第2固定電極13(梁部13a、固定部13b)、第2可動電極14(弾性梁部14a、支持部14b)を形成する。
第2固定電極13及び第2可動電極14は、多結晶シリコンの他、アルミニウムやアルミ銅合金などの金属材料を用いて形成してもよく、導電性の高分子材料を用いて形成してもよい。
【0062】
次に、図8(b)に示すように、基板18上の全面に第4犠牲層44を形成し、かかる第4犠牲層44の表面をCMP(Chemical Mechanical Polishing)などの処理により平坦化する。この平坦化処理により第4犠牲層44を部分的に除去することで、少なくとも第2可動電極14を露出させる。第4犠牲層44は、先の第2及び第3犠牲層42,43と同様に選択することができる。
【0063】
その後、第4犠牲層44や第2固定電極13、第2可動電極14を覆うように、例えばアルミニウムからなる金属膜を成膜する。そして、この金属膜をフォトリソグラフィー工程及びエッチング工程によってパターニングすることで、図8(b)に示すように、第2可動電極14上に遮光板17を形成する。遮光板17は、アルミニウムの他、クロムやアルミ銅合金、白金、チタン、タングステンなどを用いて形成してもよい。以上により、第2デバイス形成層32に第2アクチュエーター22が形成される。
【0064】
次に、図8(c)に示すように、第4犠牲層44や遮光板17、第2固定電極13を覆うように、第5犠牲層45を形成する。その後、基板18の裏面(図示下面)側から、異方性エッチングにより貫通孔19を形成する。貫通孔19のエッチング処理では、第1犠牲層41がエッチングストッパーとなる。
【0065】
次に、図8(d)に示すように、フッ酸系のエッチング液やエッチングガスを用いたエッチング工程により、第1犠牲層41〜第5犠牲層45を除去する。これにより、基板18上に、貫通孔19上で水平移動可能の遮光板16を備えた第1アクチュエーター21、及び遮光板17を備えた第2アクチュエーター22を具備した光制御部10が形成される。
以上の工程により、光制御装置100を製造することができる。
【0066】
なお、以上に説明した製造方法は一例であり、本発明の技術範囲内で適宜変更することができる。例えば、上記実施形態では第1デバイス形成層31に第1アクチュエーター21を形成した後、さらに連続して第2デバイス形成層32に第2アクチュエーター22を形成しているが、第1アクチュエーター21と第2アクチュエーター22とを別々の基板を用いて形成してもよい。すなわち、基板18とは異なる暫定基板上に第2アクチュエーター22を形成した後、基板18上に形成した第1アクチュエーター21上に第2アクチュエーター22を貼り付け、その後に暫定基板を除去する製造方法を採用することもできる。
【0067】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について、図9から図11を参照して説明する。
なお、以下で参照する各図において、先の図1から図8と共通の構成要素には同一の符号を付し、それらの詳細な説明は省略する。
【0068】
図9及び図10は、本発明の第2実施形態である光制御装置200を示す平面図であり、図9はアクチュエーターを可視化した図、図10は遮光板の配置状態を示す説明図である。
また図9(a)及び図10(a)は、光制御装置200を第1面(+Z側の面)から見た平面図であり、図9(b)及び図10(b)は、光制御装置200を第2面(−Z側の面)から見た平面図である。
【0069】
図9及び図10に示すように、光制御装置200は、基体としての基板18と、基板18に形成された複数の光制御部10(10A、10B)を備えている。
光制御部10は、図9及び図10に示すように、それぞれ、基板18を貫通して形成された貫通孔19(光透過領域)と、貫通孔19上に進退する遮光板16及び遮光板17と、遮光板16を駆動する第1アクチュエーター21と、遮光板17を駆動する第2アクチュエーター22とを備えている。
そして、本実施形態の場合、光制御部10の第1アクチュエーター21が基板18の第1面に形成されており、第2アクチュエーター22が基板18の第2面に形成されている。
【0070】
第1アクチュエーター21は、基板18の第1面において、貫通孔19の一辺に沿う位置に形成された櫛歯状の第1固定電極11と、第1固定電極11に噛み合う櫛歯状の第1可動電極12とを有する。第1可動電極12上に、遮光板16が設けられており、第1可動電極12と一体に水平移動可能とされている。
【0071】
第2アクチュエーター22は、基板18の第2面において、第1アクチュエーター21とは反対側の貫通孔19の一辺に沿う位置に形成された櫛歯状の第2固定電極13と、第2固定電極13に噛み合う櫛歯状の第2可動電極14とを有する。第2可動電極14上に、遮光板17が設けられており、第2可動電極14と一体に水平移動可能とされている。
【0072】
図11は、図9のE−E’線に沿う位置の光制御装置200の断面図である。なお、図11(a)は、光遮断状態の光制御装置200を示しており、図9とは遮光板17の位置が異なっている。
図11(a)に示すように、基板18の第1面(図示上面)には、配線25と、第1固定電極11と、第1可動電極12と、遮光板16とが設けられている。第1固定電極11は、図9に示した固定部11bを介して配線25と接続されている。
また、基板18の第2面(図示下面)には、配線26と、第2固定電極13と、第2可動電極14と、遮光板17とが設けられている。第2固定電極13は、図9に示した固定部13bを介して配線26と接続されている。
【0073】
[動作説明]
次に、図11を参照して光制御装置200の動作について説明する。
図11(a)は、光遮断状態の光制御部10A,10Bを示す断面図であり、図11(b)は、光通過状態の光制御部10A,10Bを示す断面図である。
【0074】
光制御装置200は、光制御装置100と同様に、第1可動電極12及び第2可動電極14をそれぞれ水平移動させることで貫通孔19上に遮光板16,17を進退させる。これにより、貫通孔19から射出される光を遮光板16,17により通過、遮断することで、光の透過/非透過を制御する。
【0075】
まず、図11(a)に示す光遮断状態は、光制御部10A、10Bの初期状態である。すなわち、第1及び第2固定電極11,13、第1及び第2可動電極12,14に何ら電位を入力しない状態では、光制御部10A、10Bはいずれも光遮断状態となる。
あるいは、第1固定電極11と第1可動電極12とを同電位、第2固定電極13と第2可動電極14とを同電位に保持してもよい。
【0076】
光遮断状態の光制御部10A、10Bでは、図11(a)に示すように、遮光板16及び遮光板17はいずれも貫通孔19上に位置し、平面視したときには、これら2枚の遮光板16,17により貫通孔19が覆われている。さらに、遮光板16の貫通孔19中央部側の辺縁部と、遮光板17の貫通孔19中央部側の辺縁部とが、平面視で重なるように配置されている。図11(a)に示すように、遮光板16と遮光板17とは、基板18の異なる面にそれぞれ形成されているため、遮光板16及び第1可動電極12と、遮光板17及び第2可動電極14とが接触することはない。
【0077】
次に、図11(b)に示す光通過状態に移行させるには、図11(a)に示した光遮断状態において、第1固定電極11と第1可動電極12との間に電圧が印加され、例えば、第1固定電極11が相対的に低電位、第1可動電極12が相対的に高電位とされる。なお、固定電極と可動電極の電位の高低関係は逆であってもよい。
このように電圧が印加されると、第1固定電極11と第1可動電極12との間の静電引力が生じ、第1可動電極12が第1固定電極11側へ引き寄せられる。これにより、第1可動電極12上に配設されている遮光板16が第1固定電極11側へ移動し、貫通孔19上から退避される。
【0078】
また、第2固定電極13と第2可動電極14との間に電圧が印加され、例えば、第2固定電極13が相対的に低電位、第2可動電極14が相対的に高電位とされる。なお、固定電極と可動電極の電位の高低関係は逆であってもよい。
このように電圧が印加されると、第2固定電極13と第2可動電極14との間に生じる静電引力により、第2可動電極14が第2固定電極13側へ引き寄せられる。これにより、第2可動電極14上に配設されている遮光板17が第2固定電極13上に移動し、貫通孔19上から退避される。なお、図1及び図2に示した状態は、上記動作によって第2可動電極14を途中まで動かした状態に対応する。
【0079】
以上の動作により、図4及び図5(b)に示すように、遮光板16,17が貫通孔19の外側に退避され、貫通孔19から射出される光が光制御部10A、10Bを通過する状態となる。また、図11(b)に示すように、遮光板16及び第1可動電極12と、遮光板17及び第2可動電極14とは、それぞれ基板18の異なる面に形成されているため、光通過状態では、第1可動電極12及び遮光板16と、第2可動電極14及び遮光板17とが、平面視でほぼ重なった状態となる。
【0080】
以上詳細に説明したように、本実施形態の光制御装置200は、第1実施形態の光制御装置100と同様に、第1及び第2固定電極11,13と、第1及び第2可動電極12,14の電位状態を制御することで第1及び第2アクチュエーター21,22を駆動し、これによって遮光板16,17を貫通孔19に対して水平に進退させることで、貫通孔19から射出される光の通過/遮断状態を自在に切り換えることができる。
【0081】
そして、本実施形態の光制御装置200では、第1可動電極12及び遮光板16と、第2可動電極14及び遮光板17とが、基板18の異なる面に形成されている。これにより、図11(b)に示したように、光遮断状態において、遮光板16と遮光板17とが平面視で重なった状態とすることができる。したがって、遮光板16,17を貫通孔19上から後退させたときに配置される領域を小さくすることができる。その結果、貫通孔19の開口径を大きくし、開口率を向上させることができる。
【0082】
また、本実施形態の光制御装置200でも、光遮断状態において遮光板16,17が平面視で部分的に重なるように配置することができる。これにより、貫通孔19から射出した光を遮光板16と遮光板17とにより確実に遮断することができ、光漏れの生じにくい構造とすることができる。
【0083】
[製造方法]
次に、上記実施形態の光制御装置100の製造方法について、図12から図14を参照して説明する。図12から図14に示す工程図は、図9のF−F’線に沿う位置における各工程での状態を示す断面図である。
【0084】
まず、図12(a)に示すように、例えばシリコンからなる第1基板18Aを用意する。
図示は省略しているが、用意した第1基板18Aの少なくとも図示上面側には絶縁膜が形成されている。この絶縁膜は、シリコンからなる第1基板18Aを熱酸化して形成してもよいし、CVD法やスパッタ法などの成膜法を用いて形成してもよい。また、絶縁膜としては、シリコン酸化物膜に限らず、シリコン窒化物やシリコン酸化窒化物膜であってもよい。
【0085】
次に、図12(b)に示すように、第1基板18A上に、例えば不純物をドープした多結晶シリコンや金属材料からなる配線25をパターン形成する。配線25は、多結晶シリコンの他、アルミニウムやアルミ銅合金などの金属材料を用いて形成してもよく、導電性の高分子材料を用いて形成してもよい。
【0086】
次に、図12(c)に示すように、例えばシリコン酸化物膜からなる第1犠牲層41を、例えばCVD法などを用いて形成する。この第1犠牲層41上の配線層が第1デバイス形成層31となる。
次いで、図12(d)に示すように、フォトリソグラフィー工程及びエッチング工程によって、第1犠牲層41を貫通して配線25に達するコンタクトホール41a、41aを形成する。
【0087】
次に、第1犠牲層41を覆うように、例えば多結晶シリコンからなる導電膜をスパッタ法などの公知の成膜法により形成する。その後、この導電膜をフォトリソグラフィー工程及びエッチング工程でパターニングすることで、図12(e)に示すように、第1固定電極11(梁部11a、固定部11b)、第1可動電極12(弾性梁部12a、支持部12b)を形成する。
第1固定電極11及び第1可動電極12は、多結晶シリコンの他、アルミニウムやアルミ銅合金などの金属材料を用いて形成してもよく、導電性の高分子材料を用いて形成してもよい。
【0088】
次に、図13(a)に示すように、第1基板18A上の全面に第2犠牲層42を形成し、CMP処理などにより第2犠牲層42の表面を部分的に除去して第1可動電極12を露出させる。そして、第1可動電極12上にアルミニウム等からなる遮光板16をパターン形成する。以上の工程により、第1基板18A上の第1デバイス形成層31に第1アクチュエーター21が形成される。
【0089】
次に、図13(b)に示すように、第1アクチュエーター21を覆うように、第3犠牲層43を形成した後、第1基板18Aの裏面(図示下面)側から、異方性エッチングにより第1貫通孔19Aを形成する。第1貫通孔19Aのエッチング処理では、第1犠牲層41がエッチングストッパーとなる。
以上の工程により、第1アクチュエーター21が形成された第1基板18Aを作製することができる。
【0090】
次に、図13(c)に示すように、第1基板18Aとは別に用意した第2基板18Bに対して、先の第1基板18Aに対する工程を繰り返し行い、第2基板18B上に、配線26と、第2固定電極13と、第2可動電極14と、これらの間を埋める第1犠牲層41、第2犠牲層42、及び第3犠牲層43を形成する。さらに、第2基板18Bの裏面(図示下面)側から第2貫通孔19Bを形成する。
以上の工程により、第2デバイス形成層32に第2アクチュエーター22が形成された第2基板18Bを作製することができる。
【0091】
次に、図14(a)に示すように、図13(b)に示した第1基板18Aの裏面18aと、図13(c)に示した第2基板18Bの裏面18bとを対向させて、2枚の基板18A、18Bを貼り合わせる。これにより、第1基板18Aと第2基板18Bとを貼り合わせてなる基板18の内部に、第1貫通孔19Aと第2貫通孔19Bとからなる貫通孔19が形成される。
【0092】
次に、図14(b)に示すように、フッ酸系のエッチング液やエッチングガスを用いたエッチング工程により、第1犠牲層41、第2犠牲層42、及び第3犠牲層43を除去する。
これにより、基板18の第1面(図示上面)に、貫通孔19上で水平移動可能の遮光板16を備えた第1アクチュエーター21が形成され、第2面(図示下面)に遮光板17を備えた第2アクチュエーター22が形成された光制御部10を得ることができる。
以上の工程により、光制御装置200を製造することができる。
【0093】
なお、本実施形態の製造方法についても、本発明の技術範囲内で製造工程を適宜変更できるのはもちろんである。例えば、上記実施形態では、第1アクチュエーター21が形成された第1基板18Aと、第2アクチュエーター22が形成された第2基板18Bとを裏面同士で貼り合わせることとしたが、暫定基板を用いた製造方法を適用することも可能である。
【0094】
暫定基板を用いる場合、図13(c)に示した第2アクチュエーター22を、暫定基板上に形成する。そして、かかる第2アクチュエーター22を、図13(b)に示す第1アクチュエーター21が形成された第1基板18Aの裏面18aに貼り付け、その後に暫定基板を取り除くことで光制御装置200と同等の構成を備えた光制御装置を製造することができる。
【0095】
また、場合によっては、1枚の基板を用いて製造してもよい。すなわち、第1基板18Aに第1アクチュエーター21を形成し、第1アクチュエーター21を覆う第3犠牲層43を形成した後(図13(b))、第1基板18Aの裏面18aに第2アクチュエーター22を形成してもよい。
【0096】
(電気光学装置)
図15は、先の実施形態の光制御装置100を備えた電気光学装置40の概略平面図である。
電気光学装置40は、図15に示すように、基板18と、基板18上に形成された表示領域50と、表示領域50の側方(図示下方)に形成された駆動回路60とを備えて構成されている。表示領域50には、複数の光制御装置100が平面視マトリクス状に配列されており、各々の光制御装置100は、図示略の配線を介して駆動回路60に接続されている。
【0097】
本実施形態の電気光学装置40は、光制御装置100を画素として備えており、各々の光制御装置100において、貫通孔19から射出される光の通過/遮断状態を遮光板16,17の水平移動によって独立に制御することができる。
【0098】
先に説明したように、本発明に係る光制御装置100は、光通過状態において遮光板16と遮光板17とが重なって配置されるため、遮光板16,17及びアクチュエーターの設置領域を狭小化することができ、高い開口率を得ることができる。したがって、本実施形態の電気光学装置40によれば、表示領域を構成する画素において高い開口率を得ることができる。
【0099】
なお、本実施形態では、電気光学装置40の画素として光制御装置100を用いた場合について説明したが、上述した光制御装置200を備えた光制御装置によって画素を構成してもよいのはもちろんである。
【0100】
(電子機器)
次に、本発明の電子機器の一実施形態について説明する。
図16は、上記実施形態の電気光学装置を備えた電子機器の一例であるプロジェクターを示す図である。
【0101】
図16に示すように、プロジェクター400は、三原色に対応する原色光を各々出力する光源装置51R、51G、51Bと、透過型ライトバルブ40R、40G、40Bと、ダイクロイックプリズム54と、投射光学系55とを備えている。
透過型ライトバルブ40R、40G、40Bは、先に説明した本発明に係る電気光学装置40からなり、透過型の光制御装置100を画素として備えたライトバルブである。
【0102】
光源装置51R、51G、51Bは、それぞれ赤色光、緑色光、青色光を射出し、射出された各色光は、それぞれ透過型ライトバルブ40R、40G、40Bに入射して変調される。変調された各色光は、ダイクロイックプリズム54によって合成され、合成された光は投射光学系55によってスクリーン等に投射される。
【0103】
また、本実施形態のプロジェクター400は、照度均一化光学系52R、52G、52Bを含んでいる。照度均一化光学系52R、52G、52Bは、レーザー光源やLED光源を備えた光源装置51R、51G、51Bから射出された出力光の照度分布を均一化する。照度均一化光学系52Rは、ホログラム421Rとフィールドレンズ422R等により構成されている。照度均一化光学系52G、52Bは、照度均一化光学系52Rと同様に、ホログラム421G、421B、フィールドレンズ422G、422Bを備えた構成になっている。
【0104】
透過型ライトバルブ40R、40G、40Bの各々により変調された色光は、ダイクロイックプリズム54に入射する。ダイクロイックプリズム54は4つの直角プリズムを貼り合わせて形成され、その内面(直角プリズムの表面)に赤色光を反射する誘電体多層膜と青色光を反射する誘電体多層膜とが十字状に配置されている。3つの色光は、これらの誘電体多層膜によって合成され、カラー画像を表す光になる。合成された光が投射光学系55によりスクリーンや壁等の被投射面450に拡大投射されることにより、投射画像が表示される。
【0105】
本実施形態のプロジェクター400によれば、透過型ライトバルブ40R、40G、40Bとして、本発明に係る電気光学装置40を備えているので、高輝度、高コントラストの表示が得られるプロジェクターとなっている。
【0106】
なお、上記したプロジェクターの構成は一例であり、その構成は適宜変更することができる。例えば、プロジェクター400では色光合成素子としてダイクロイックプリズムを用いているが、ダイクロイックミラーをクロス配置とし色光を合成するものや、ダイクロイックミラーを平行に配置し色光を合成するもの等を用いた構成としてもよい。
【符号の説明】
【0107】
100,200 光制御装置、40 電気光学装置、10,10A,10B 光制御部、11 第1固定電極、12 第1可動電極、13 第2固定電極、14 第2可動電極、16,17 遮光板、19 貫通孔(光透過領域)、21 第1アクチュエーター、22 第2アクチュエーター、31 第1デバイス形成層、32 第2デバイス形成層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、前記基板に形成された光透過領域と、前記基板上で水平移動することで前記光透過領域に対して進退する複数の遮光板と、を有し、
複数の前記遮光板のうち少なくとも2つの前記遮光板が、互いに異なる移動平面を有するとともに、前記光透過領域から後退した位置で少なくとも部分的に重なることを特徴とする光制御装置。
【請求項2】
すべての前記遮光板が、前記基板の一方の主面側に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の光制御装置。
【請求項3】
前記基板の両面に、それぞれ前記遮光板が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の光制御装置。
【請求項4】
複数の前記遮光板が、前記光透過領域上に進出した位置で互いに部分的に重なることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の光制御装置。
【請求項5】
前記遮光板に、静電アクチュエーターが接続されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の光制御装置。
【請求項6】
基板と、前記基板に形成された光透過領域と、前記基板上で水平移動することで前記光透過領域に対して進退する複数の遮光板と、を有する光制御装置の製造方法であって、
前記基板上の第1デバイス形成層に、一又は複数の前記遮光板を形成する工程と、
前記第1デバイス形成層とは異なる第2デバイス形成層に、一又は複数の前記遮光板を形成する工程と、
を有することを特徴とする光制御装置の製造方法。
【請求項7】
基板と、前記基板に形成された光透過領域と、前記基板上で水平移動することで前記光透過領域に対して進退する複数の遮光板と、を有する光制御装置の製造方法であって、
前記基板上の第1デバイス形成層に、一又は複数の前記遮光板を形成する工程と、
前記基板とは異なる暫定基板上の前記第2デバイス形成層に一又は複数の前記遮光板を形成する工程と、
前記暫定基板と前記第2デバイス形成層のうち少なくとも前記第2デバイス形成層を前記基板と貼り合わせる工程と、
を有することを特徴とする光制御装置の製造方法。
【請求項8】
前記基板の一方の主面に、前記第1デバイス形成層と前記第2デバイス形成層とを積層することを特徴とする請求項6又は7に記載の光制御装置の製造方法。
【請求項9】
前記基板の一方の主面に前記第1デバイス形成層を設け、前記基板の他方の主面に前記第2デバイス形成層を設けることを特徴とする請求項6又は7に記載の光制御装置の製造方法。
【請求項10】
第1基板と第2基板とを貼り合わせてなる基板と、前記基板に形成された光透過領域と、前記基板上で水平移動することで前記光透過領域に対して進退する複数の遮光板と、を有する光制御装置の製造方法であって、
前記第1基板上の第1デバイス形成層に、一又は複数の前記遮光板を形成する工程と、
前記第2基板上の第2デバイス形成層に、一又は複数の前記遮光板を形成する工程と、
前記第1基板の前記第1デバイス形成層と反対側の面と、前記第2基板の前記第2デバイス形成層と反対側の面とを貼り合わせる工程と、
を有することを特徴とする光制御装置の製造方法。
【請求項11】
請求項1から5のいずれか1項に記載の光制御装置を備えたことを特徴とする電気光学装置。
【請求項12】
請求項11に記載の電気光学装置を備えたことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−197778(P2010−197778A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−43552(P2009−43552)
【出願日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】