光半導体素子の製造方法
【課題】メサ構造の側面からの樹脂の剥離を抑制できる光半導体素子の製造方法を提供する。
【解決手段】光導波路層11、クラッド層12、コンタクト層13、及びキャップ層17を半導体基板2上に順次成長させる。エッチングマスク70をキャップ層17上に形成し、キャップ層17に対してウェットエッチングを行う。少なくともコンタクト層13及びクラッド層12に対してドライエッチングを行い、メサ構造14を形成する。メサ構造14を覆う絶縁膜15を形成する。半導体基板2上に樹脂を塗布することにより、メサ構造14を誘電体樹脂層9によって埋め込む。メサ構造14上の誘電体樹脂層9及び絶縁膜15に対してエッチングを行い、キャップ層17を露出させる。キャップ層17を除去したのち、メサ構造14上に電極50を形成する。
【解決手段】光導波路層11、クラッド層12、コンタクト層13、及びキャップ層17を半導体基板2上に順次成長させる。エッチングマスク70をキャップ層17上に形成し、キャップ層17に対してウェットエッチングを行う。少なくともコンタクト層13及びクラッド層12に対してドライエッチングを行い、メサ構造14を形成する。メサ構造14を覆う絶縁膜15を形成する。半導体基板2上に樹脂を塗布することにより、メサ構造14を誘電体樹脂層9によって埋め込む。メサ構造14上の誘電体樹脂層9及び絶縁膜15に対してエッチングを行い、キャップ層17を露出させる。キャップ層17を除去したのち、メサ構造14上に電極50を形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光半導体素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、光半導体素子及びその製造方法が開示されている。この光半導体素子は、光導波路を含むメサ構造と、該メサ構造を埋め込む樹脂層とを備えている。メサ構造上には樹脂層の開口が形成されており、該開口には、メサ構造に電流を供給するための電極が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−205025号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
いわゆるリッジ構造やハイメサ構造といったメサ構造の側面が、樹脂によって埋め込まれた構造を備える光半導体素子がある(例えば特許文献1を参照)。図12は、このような光半導体素子の構造例を示す断面図であり、光導波方向に垂直な断面を示している。図12に示される光半導体素子100は、半導体基板101と、半導体基板101上に設けられた光導波路層102と、光導波路層102上に設けられたクラッド層103と、クラッド層103上に設けられたコンタクト層104とを備えている。光導波路層102、クラッド層103及びコンタクト層104は、光導波方向に延びるメサ構造105を構成しており、このメサ構造105の両側面は、絶縁膜106によって覆われている。また、メサ構造105の両側方には樹脂層107が設けられており、樹脂層107によってメサ構造105が埋め込まれている。コンタクト層104の上方には、絶縁膜106及び樹脂層107の開口が形成されており、該開口内に形成されたオーミック電極膜108がコンタクト層104と接触している。オーミック電極膜108上及び樹脂層107上にわたって、メッキ配線層109が設けられている。
【0005】
図12に示された構造を備える光半導体素子は、例えば以下の方法によって作製される。まず、図13(a)に示されるように、光導波路層102、クラッド層103、及びコンタクト層104を半導体基板101上に成長させる。次に、図13(b)に示されるように、所定の光導波方向に延びるエッチングマスク120をコンタクト層104上に形成する。そして、図13(c)に示されるように、エッチングマスク120を用いてコンタクト層104、クラッド層103、及び光導波路層102をエッチングすることにより、これらの層102〜104を含むメサ構造105を形成する。
【0006】
続いて、図14(a)に示されるように、メサ構造105および半導体基板101を覆う絶縁膜106を形成したのち、半導体基板101上に樹脂層107を塗布することにより、メサ構造105を埋め込む。そして、図14(b)に示されるように、メサ構造105上に開口を有するレジストマスク121を樹脂層107上に形成し、このレジストマスク121を用いて樹脂層107及び絶縁膜106をエッチング(例えばプラズマエッチング)することにより、樹脂層107及び絶縁膜106に開口を形成してメサ構造105のコンタクト層104を露出させる(図14(c))。
【0007】
続いて、図15(a)に示されるように、樹脂層107の表面及び開口、並びに露出したコンタクト層104を覆う絶縁膜110を形成する。そして、図15(b)に示されるように、メサ構造105上に開口を有するレジストマスク122を絶縁膜110上に形成したのち、図15(c)に示されるように、このレジストマスク122を用いて絶縁膜110をエッチングすることにより、絶縁膜110に開口を形成してメサ構造105のコンタクト層104を再び露出させる。
【0008】
続いて、図16(a)に示されるようにレジストマスク122を除去したのち、図16(b)に示されるように、コンタクト層104上にオーミック電極膜108を形成し、更に、オーミック電極膜108上から樹脂層107上にかけてメッキ配線層109を形成する。こうして、図12に示された構造を備える光半導体素子100が作製される。
【0009】
しかしながら、上述した製造方法には、次のような課題がある。すなわち、図14(c)に示された工程において樹脂層107及び絶縁膜106をエッチングする際、メサ構造105上の樹脂層107及び絶縁膜106を完全に除去する為には、エッチングを十分な時間行う必要がある。しかし、エッチングを長時間行うことにより、図17に示されるように、樹脂層107及び絶縁膜106のうちメサ構造105の側面に接する部分までエッチングされてしまい、樹脂層107がメサ構造105の側面から剥がれてしまう。
【0010】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、メサ構造の側面からの樹脂の剥離を抑制できる光半導体素子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決するために、本発明による光半導体素子の第1の製造方法は、(1)光導波路層、クラッド層、コンタクト層、及びキャップ層を基板上に順次成長する成長工程と、(2)所定の光導波方向に延びるエッチングマスクをキャップ層上に形成するマスク形成工程と、(3)エッチングマスクを用いて、キャップ層に対しウェットエッチングを行う第1のエッチング工程と、(4)エッチングマスクを用いて、少なくともコンタクト層及びクラッド層に対してドライエッチングを行い、光導波方向に延びるメサ構造を形成する第2のエッチング工程と、(5)メサ構造を覆う絶縁膜を形成する絶縁膜形成工程と、(6)基板上に樹脂を塗布し、メサ構造を樹脂によって埋め込む樹脂形成工程と、(7)メサ構造上の樹脂及び絶縁膜に対してエッチングを行い、キャップ層を露出させる第3のエッチング工程と、(8)キャップ層に対してエッチングを行い、キャップ層を除去する第4のエッチング工程と、(9)メサ構造上に電極を形成する電極形成工程とを有することを特徴とする。
【0012】
この第1の製造方法では、まずキャップ層に対してウェットエッチングを行う。このとき、キャップ層に対してサイドエッチングが進行する。次いで、少なくともコンタクト層及びクラッド層に対してドライエッチングを行うことによって、メサ構造を形成する。このような方法によって、光導波方向と交差する方向のキャップ層の幅が、該方向のメサ構造の幅より狭くなる。そして、このような構造では、メサ構造の側面上端より上方に存在する樹脂の厚さが、キャップ層上に存在する樹脂の厚さより厚い。したがって、第3のエッチング工程におけるエッチング深さは、メサ構造の側面上端に達するより早く、キャップ層に達することとなる。これにより、メサ構造の側面近傍の樹脂や絶縁膜がエッチングされる前に、当該エッチングを終了することができる。或いは、キャップ層上の樹脂及び絶縁膜が完全に除去される為に十分な時間のエッチングを行った場合でも、メサ構造の側面近傍の樹脂及び絶縁膜に対する過剰なエッチングを抑制できる。したがって、上述した第1の製造方法によれば、メサ構造の側面からの樹脂の剥離を効果的に抑制することができる。
【0013】
また、上述した光半導体素子の第1の製造方法は、第2のエッチング工程後における、光導波方向と交差する方向のキャップ層の幅が、該方向のコンタクト層の幅より狭いことを特徴としてもよい。これにより、上述した効果を好適に実現できる。
【0014】
また、本発明による光半導体素子の第2の製造方法は、(1)光導波路層、クラッド層、及びコンタクト層を基板上に順次成長する成長工程と、(2)所定の光導波方向に延びるエッチングマスクをコンタクト層上に形成するマスク形成工程と、(3)エッチングマスクを用いて、少なくともコンタクト層及びクラッド層に対してドライエッチングを行い、光導波方向に延びるメサ構造を形成する第1のエッチング工程と、(4)コンタクト層の側面に対するウェットエッチングを選択的に行う第2のエッチング工程と、(5)メサ構造を覆う絶縁膜を形成する絶縁膜形成工程と、(6)基板上に樹脂を塗布し、メサ構造を樹脂によって埋め込む樹脂形成工程と、(7)メサ構造上の樹脂及び絶縁膜に対してエッチングを行い、コンタクト層を露出させる第3のエッチング工程と、(8)メサ構造上に電極を形成する電極形成工程とを有することを特徴とする。
【0015】
この第2の製造方法では、まず、少なくともコンタクト層及びクラッド層に対してドライエッチングを行うことによって、メサ構造を形成する。次いで、コンタクト層の側面に対してウェットエッチングを選択的に行う。このとき、コンタクト層の側面に対するサイドエッチングが、クラッド層の側面より深く進行する。このような方法によって、光導波方向と交差する方向のコンタクト層の幅が、コンタクト層を除くメサ構造の幅より狭くなる。そして、このような構造では、コンタクト層を除くメサ構造の側面上端より上方に存在する樹脂の厚さが、コンタクト層上に存在する樹脂の厚さより厚い。したがって、第3のエッチング工程におけるエッチング深さは、コンタクト層を除くメサ構造の側面上端に達するより早く、コンタクト層に達することとなる。これにより、コンタクト層を除くメサ構造の側面近傍の樹脂や絶縁膜がエッチングされる前に、当該エッチングを終了することができる。或いは、コンタクト層上の樹脂及び絶縁膜が完全に除去される為に十分な時間のエッチングを行った場合でも、コンタクト層を除くメサ構造の側面近傍の樹脂及び絶縁膜に対する過剰なエッチングを抑制できる。したがって、上述した第2の製造方法によれば、メサ構造の側面からの樹脂の剥離を効果的に抑制することができる。
【0016】
また、上述した光半導体素子の第2の製造方法は、第2のエッチング工程後における、光導波方向と交差する方向のコンタクト層の幅が、該方向のクラッド層の幅より狭いことを特徴としてもよい。これにより、上述した効果を好適に実現できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明による光半導体素子の製造方法によれば、メサ構造の側面からの樹脂の剥離を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、第1実施形態に係る製造方法により製造される光半導体素子の例として、マッハツェンダー型の光変調器の構成を示す平面図である。
【図2】図2は、光変調器のII−II線に沿った断面を示す図である。
【図3】図3は、第1実施形態に係る製造方法の各工程を示す断面図である。
【図4】図4は、第1実施形態に係る製造方法の各工程を示す断面図である。
【図5】図5は、第1実施形態に係る製造方法の各工程を示す断面図である。
【図6】図6は、第1実施形態に係る製造方法の各工程を示す断面図である。
【図7】図7は、図1に示された光変調器のII−II断面構造の別の形態を示す図である。
【図8】図8は、第2実施形態に係る製造方法の各工程を示す断面図である。
【図9】図9は、第2実施形態に係る製造方法の各工程を示す断面図である。
【図10】図10は、第2実施形態に係る製造方法の各工程を示す断面図である。
【図11】図11は、第2実施形態に係る製造方法の各工程を示す断面図である。
【図12】図12は、光半導体素子の構造例を示す断面図である。
【図13】図13は、光半導体素子の製造方法の各工程を示す断面図である。
【図14】図14は、光半導体素子の製造方法の各工程を示す断面図である。
【図15】図15は、光半導体素子の製造方法の各工程を示す断面図である。
【図16】図16は、光半導体素子の製造方法の各工程を示す断面図である。
【図17】図17は、図13〜図16に示された製造方法による問題点を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照しながら本発明による光半導体素子の製造方法の実施の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0020】
(第1の実施の形態)
図1は、本実施形態に係る製造方法により製造される光半導体素子の例として、マッハツェンダー型の光変調器の構成を示す平面図である。また、図2は、この光変調器1AのII−II線に沿った断面を示す図である。この光変調器1Aは、2本の光導波路10,20と、入射側分波器30と、出射側合波器40と、2つの電極50,60とを備えている。光導波路10及び20、並びに入射側分波器30及び出射側合波器40は、図2に示される共通の半導体基板2の主面2a上に形成されている。半導体基板2は、第1導電型(例えばn型)の半導体からなる基板であり、半導体基板2としては、例えばn型InP基板が好適である。また、図2に示されるように、光変調器1Aは、半導体基板2の裏面2b上に形成された電極80を更に備えている。
【0021】
光導波路10,20は、入射側分波器30と出射側合波器40との間に延設されており、その一端は入射側分波器30に結合され、他端は出射側合波器40に結合されている。また、光導波路10,20は、その延在方向に交差する方向に並んで配置されている。光導波路10は、光導波領域10a、位相制御領域10b及び光導波領域10cを含む。光導波領域10a、位相制御領域10b及び光導波領域10cは、光導波方向(すなわち光導波路10の延在方向)にこの順で配列されている。同様に、光導波路20は、光導波領域20a、位相制御領域20b及び光導波領域20cを含む。光導波領域20a、位相制御領域20b及び光導波領域20cは、光導波方向(すなわち光導波路20の延在方向)にこの順で配列されている。
【0022】
入射側分波器30は、外部から光変調器1Aに入射した入射光L1を、光導波路10,20それぞれに分波する。出射側合波器40は、光導波路10,20それぞれを伝搬した光を合波する。入射側分波器30及び出射側合波器40は、例えばMMIカプラによって好適に構成される。
【0023】
電極50は位相制御領域10b上に形成されており、電極60は位相制御領域20b上に形成されている。電極50,60それぞれは、ワイヤボンディングのためのボンディングパッド50a,60aそれぞれを有している。
【0024】
図2を参照して、位相制御領域10b付近の構造について説明する。なお、位相制御領域20b付近の構造も、図2と同様である。位相制御領域10bは、光導波路層11と、クラッド層12と、コンタクト層13とを有している。光導波路層11は、アンドープ半導体からなる。このアンドープ半導体としては、GaInAsP、AlGaInAs、AlInAs及びGaInAs等を例示することができる。光導波路層11は、単一の層(バルク層)からなってもよく、井戸層を該井戸層よりバンドギャップが大きいバリア層によって挟み込んだ量子井戸構造を有していてもよい。
【0025】
クラッド層12及びコンタクト層13は、第2導電型(例えばp型)の半導体からなる。クラッド層12のp型半導体としては、例えばp型InPが好適である。コンタクト層13のp型半導体としては、例えばp型InGaAsが好適である。クラッド層12及びコンタクト層13は、所定の光導波方向に延びるメサ構造14を成している。このメサ構造14の両側面14a,14b上には、絶縁膜15が設けられている。絶縁膜15は、メサ構造14の両側面14a,14b上からメサ構造14の周囲の半導体基板2上にわたって設けられている。絶縁膜15は、例えばSiNやSiO2といったシリコン化合物からなる。絶縁膜15の厚さは、例えば300nmである。
【0026】
メサ構造14の両側面14a,14bは、誘電体樹脂層9により埋め込まれている。誘電体樹脂層9は、例えばBCBやポリイミドといった樹脂からなり、メサ構造14の周囲の半導体基板2上に設けられている。半導体基板2の主面2aを基準とする誘電体樹脂層9の表面の高さは、主面2aを基準とするメサ構造14の高さより高い。誘電体樹脂層9の層厚は、例えば2μmである。誘電体樹脂層9は、メサ構造14上に開口9aを有する。なお、誘電体樹脂層9の表面は、絶縁膜16に覆われている。絶縁膜16は、例えばSiNやSiO2といったシリコン化合物からなる。絶縁膜16の厚さは、例えば200nmである。絶縁膜16は、メサ構造14上に開口を有する。
【0027】
電極50は、オーミック電極膜51と、メッキ配線層52とを有する。オーミック電極膜51は、メサ構造14上に設けられており、メサ構造14のコンタクト層13と接触している。オーミック電極膜51は、例えばAu/Zn/Auといった積層構造を有する。メッキ配線層52は、例えばAuメッキによって形成される。メッキ配線層52は、オーミック電極膜51を完全に覆っており、また誘電体樹脂層9の開口9aを埋め込んでいる。メッキ配線層52は、メサ構造14上から誘電体樹脂層9上にわたって(本実施形態では、オーミック電極膜51上から絶縁膜16上にわたって)設けられている。
【0028】
以上の構成を備える光変調器1Aの製造方法について説明する。図3〜図6は、光変調器1Aの製造方法の各工程を示す断面図であり、図1に示されたII−II断面の製造過程を示している。
【0029】
まず、図3(a)に示されるように、光導波路層11、クラッド層12、及びコンタクト層13を半導体基板2の主面2a上に順次成長させる(成長工程)。また、コンタクト層13の上にキャップ層17を成長させる。キャップ層17は、例えばアンドープInPといったInP系化合物半導体からなる。なお、これらの層11〜14の成長は、例えば有機金属気相成長法(OMVPE;Organo Metaric Vapor Phase Epitaxy)によって好適に行われる。
【0030】
次に、図3(b)に示されるように、所定の光導波方向に延びるエッチングマスク70をキャップ層17上に形成する(マスク形成工程)。エッチングマスク70は、例えば次のようにして形成される。まず、プラズマCVD法を用いて、SiNといった絶縁膜をキャップ層17上の全面に形成する。次に、この絶縁膜上に通常のフォトリソグラフィ技術を用いて所定の光導波方向に延びるレジストマスクを形成する。そして、このレジストマスクを用いて、絶縁膜に対しプラズマエッチングを施す。こうして、絶縁膜からなるエッチングマスク70が形成される。
【0031】
続いて、図3(c)に示されるように、エッチングマスク70を用いて、キャップ層17に対しウェットエッチングを行う(第1のエッチング工程)。キャップ層17がInPからなる場合には、エッチング液として塩酸が好適である。このとき、キャップ層17の側面に対してサイドエッチングが進行するように、エッチング時間を調整する。これにより、図3(c)に示されるように、光導波方向と交差する方向におけるキャップ層17の幅W1は、エッチングマスク70の同方向の幅W2より狭くなる。このエッチングは、InGaAsからなるコンタクト層13において停止する。
【0032】
続いて、図4(a)に示されるように、エッチングマスク70を用いて、少なくともコンタクト層13及びクラッド層12に対してドライエッチングを行い、光導波方向に延びるメサ構造を形成する(第2のエッチング工程)。本実施形態では、コンタクト層13、クラッド層12、光導波路層11及び半導体基板2の一部をエッチングしており、メサ構造14は、これらの層11〜13及び半導体基板2の一部を含んでいる。本工程では、メサ構造14をドライエッチング(例えばプラズマエッチング)によって形成することにより、メサ構造14の側面14a,14bを半導体基板2の主面2aに対して垂直に近づけることができるので、光を効率良く閉じ込める為に好適な光導波路層11の側面が得られる。
【0033】
また、この第2のエッチング工程では、メサ構造14をドライエッチングによって形成するので、光導波方向と交差する方向におけるコンタクト層13、クラッド層12、及び光導波路層11の幅W6は、エッチングマスク70の幅W2とほぼ等しくなる。したがって、キャップ層17の幅W1は、コンタクト層13、クラッド層12、及び光導波路層11の幅W6よりも狭くなる。
【0034】
続いて、エッチングマスク70を除去したのち、図4(b)に示されるように、メサ構造14を覆う絶縁膜15を形成する(絶縁膜形成工程)。一実施例では、プラズマCVDによってSiNからなる絶縁膜15を製膜する。続いて、半導体基板2上において、例えばBCBやポリイミドといった樹脂を、メサ構造14が完全に埋め込まれる程度の厚さにスピン塗布したのち、該樹脂の熱硬化を行う。これにより、誘電体樹脂層9が形成される(樹脂形成工程)。
【0035】
続いて、図4(c)に示されるように、通常のフォトリソグラフィ技術を用いて、メサ構造14上に開口を有するレジストマスク71を誘電体樹脂層9上に形成する。なお、このレジストマスク71の開口の幅W3は、メサ構造14の幅W6(図4(a)を参照)よりも広く形成される。そして、図5(a)に示されるように、レジストマスク71を用いてメサ構造14上の誘電体樹脂層9及び絶縁膜15に対してエッチングを行うことにより、キャップ層17を露出させる(第3のエッチング工程)。このエッチング方法としては、例えばプラズマエッチング等のドライエッチングが好適である。プラズマエッチングを行う場合、エッチャントガスとしては、例えばCF4及びO2の混合ガスが好適である。
【0036】
続いて、レジストマスク71を除去したのち、図5(b)に示されるように、絶縁膜16を形成する。絶縁膜16は、誘電体樹脂層9の表面、開口9aの側面、及びキャップ層17を覆う。一実施例では、プラズマCVDによってSiO2からなる絶縁膜16を製膜する。
【0037】
続いて、図5(c)に示されるように、通常のフォトリソグラフィ技術を用いて、メサ構造14上に開口を有するレジストマスク72を、誘電体樹脂層9の表面上及び開口9aの側面上に形成する。なお、このレジストマスク72は、開口の幅W4がメサ構造14の幅W6(図4(a)を参照)とほぼ等しくなるように形成される。
【0038】
続いて、図6(a)に示されるように、レジストマスク72を用いて、絶縁膜16のうちメサ構造14上の部分をエッチングすることにより該部分を除去する。この工程におけるエッチング方法としては、例えばプラズマエッチング等のドライエッチングが好適である。SiO2から成る絶縁膜16に対してプラズマエッチングを行う場合、エッチャントガスとしては、例えばCF4ガスが好適である。
【0039】
続いて、レジストマスク72を除去したのち、図6(b)に示されるように、キャップ層17に対してエッチングを行うことにより、キャップ層17を除去する(第4のエッチング工程)。InPから成るキャップ層17に対するエッチング方法としては、例えば塩酸をエッチング液とするウェットエッチングが好適である。この工程では、絶縁膜16がエッチングマスクとして作用する。また、InGaAsから成るコンタクト層13は塩酸に対するエッチング速度が格段に遅いので、この工程では、InPから成るキャップ層17のみを選択的にエッチングすることができる。
【0040】
続いて、図6(c)に示されるように、メサ構造14上に電極50(位相制御領域20bの場合は電極60)を形成する(電極形成工程)。具体的には、いわゆるリフトオフ法を用いてメサ構造14上にオーミック電極膜51を形成したのち、Auメッキを施すことにより、メッキ配線層52をオーミック電極膜51上に形成する。オーミック電極膜51は、メサ構造14上に形成された絶縁膜16の開口を塞ぐように形成され、メサ構造14のコンタクト層13と接触する。メッキ配線層52は、オーミック電極膜51を完全に覆い、且つ誘電体樹脂層9の開口9aを埋め込むように形成される。メッキ配線層52は、メサ構造14上から誘電体樹脂層9上にわたって形成される。
【0041】
以上に説明した本実施形態の製造方法では、キャップ層17に対してウェットエッチングを行うことにより、キャップ層17に対してサイドエッチングを進行させ、次いで、コンタクト層13、クラッド層12、及び光導波路層11に対してドライエッチングを行うので、図4(a)に示されたように、キャップ層17の幅W1が、コンタクト層13等の幅W2よりも狭くなる。
【0042】
そして、このような構造では、メサ構造14の側面14a,14bの上端より上方に存在する誘電体樹脂層9の厚さ(図4(c)に示される厚さT1)が、キャップ層17上に存在する誘電体樹脂層9の厚さ(同T2)より厚い。したがって、図5(a)に示された第3のエッチング工程におけるエッチング深さは、メサ構造14の側面14a,14bの上端に達するより早く、キャップ層17に達することとなる。これにより、メサ構造14の側面14a,14b近傍の誘電体樹脂層9や絶縁膜15がエッチングされる前に、当該エッチングを終了することができる。或いは、キャップ層17上の誘電体樹脂層9及び絶縁膜15が完全に除去される為に十分な時間のエッチングを行った場合でも、メサ構造14の側面14a,14b近傍の誘電体樹脂層9及び絶縁膜15に対する過剰なエッチングを抑制することができる。したがって、本実施形態による光変調器1Aの製造方法によれば、メサ構造14の側面14a,14bからの誘電体樹脂層9の剥離を抑制することができる。
【0043】
(第2の実施の形態)
図7は、図1に示された光変調器1AのII−II断面構造の別の形態を示す図である。図7を参照すると、本実施形態と第1実施形態との構成上の相違点は、コンタクト層の幅である。すなわち、本実施形態の位相制御領域10bは、光導波路層11と、クラッド層12と、コンタクト層13とを有しており、これらの層はメサ構造14を構成している。そして、光導波方向と交差する方向におけるコンタクト層13の幅W5は、メサ構造14における他の層(光導波路層11及びクラッド層12)の幅W2よりも狭くなっている。
【0044】
このような構成を備える本実施形態の光変調器の製造方法について説明する。図8〜図11は、本実施形態に係る製造方法の各工程を示す断面図であり、図1に示されたII−II断面の製造過程を示している。
【0045】
まず、図8(a)に示されるように、光導波路層11、クラッド層12、及びコンタクト層13を半導体基板2の主面2a上に順次成長させる(成長工程)。なお、これらの層11〜13の成長は、例えばOMVPEによって好適に行われる。次に、図8(b)に示されるように、所定の光導波方向に延びるエッチングマスク70をコンタクト層13上に形成する(マスク形成工程)。エッチングマスク70は、第1実施形態と同様にして形成される。
【0046】
続いて、図8(c)に示されるように、エッチングマスク70を用いて、少なくともコンタクト層13及びクラッド層12に対してドライエッチングを行い、光導波方向に延びるメサ構造を形成する(第1のエッチング工程)。本実施形態では、コンタクト層13、クラッド層12、光導波路層11及び半導体基板2の一部をエッチングしており、メサ構造14は、これらの層11〜13及び半導体基板2の一部を含んでいる。
【0047】
続いて、図9(a)に示されるように、コンタクト層13の側面に対してウェットエッチングを選択的に行う(第2のエッチング工程)。すなわち、コンタクト層13の側面に対するサイドエッチング速度が他の層(光導波路層11及びクラッド層12)の側面に対する再度エッチング速度よりも速くなるように、ウェットエッチングを行う。コンタクト層13がInGaAsからなる場合には、エッチング液としてリン酸と過酸化水素水と水との混合液が好適である。この工程により、光導波方向と交差する方向におけるコンタクト層13の幅W5は、光導波路層11及びクラッド層12の同方向の幅W6より狭くなる。
【0048】
続いて、エッチングマスク70を除去したのち、図9(b)に示されるように、メサ構造14を覆う絶縁膜15を形成し(絶縁膜形成工程)、第1実施形態と同様の方法により、誘電体樹脂層9を形成する(樹脂形成工程)。そして、図9(c)に示されるように、メサ構造14上に開口を有するレジストマスク71を誘電体樹脂層9上に形成する。
【0049】
続いて、図10(a)に示されるように、レジストマスク71を用いてメサ構造14上の誘電体樹脂層9及び絶縁膜15に対してエッチングを行うことにより、コンタクト層13を露出させる(第3のエッチング工程)。このエッチング方法としては、例えばプラズマエッチング等のドライエッチングが好適である。プラズマエッチングを行う場合、エッチャントガスとしては、例えばCF4及びO2の混合ガスが好適である。
【0050】
続いて、レジストマスク71を除去したのち、図10(b)に示されるように、絶縁膜16を形成する。絶縁膜16は、第1実施形態と同様の方法によって好適に形成される。そして、図10(c)に示されるように、通常のフォトリソグラフィ技術を用いて、メサ構造14上に開口を有するレジストマスク72を、誘電体樹脂層9の表面上及び開口9aの側面上に形成する。
【0051】
続いて、図11(a)に示されるように、レジストマスク72を用いて、絶縁膜16のうちメサ構造14上の部分をエッチングすることにより該部分を除去する。この工程におけるエッチング方法は、第1実施形態と同様である。その後、レジストマスク72を除去したのち(図11(b))、メサ構造14上に電極50(位相制御領域20bの場合は電極60)を形成する(電極形成工程)。なお、電極50のオーミック電極膜51及びメッキ配線層52の形成方法は、第1実施形態と同様である。
【0052】
以上に説明した本実施形態の製造方法では、まず、コンタクト層13、クラッド層12及び光導波路層11に対してドライエッチングを行うことによってメサ構造14を形成し、次いで、コンタクト層13の側面に対してウェットエッチングを選択的に行うので、図9(a)に示されたように、コンタクト層13の幅W5が、クラッド層12等の幅W2より狭くなる。
【0053】
そして、このような構造では、コンタクト層13を除くメサ構造14の側面14a,14bの上端より上方に存在する誘電体樹脂層9の厚さ(図9(c)に示される厚さT3)が、キャップ層17上に存在する誘電体樹脂層9の厚さ(同T4)より厚い。したがって、図10(a)に示された第3のエッチング工程におけるエッチング深さは、メサ構造14の側面14a,14bの上端に達するより早く、コンタクト層13に達することとなる。これにより、コンタクト層13を除くメサ構造14の側面14a,14b近傍の誘電体樹脂層9や絶縁膜15がエッチングされる前に、当該エッチングを終了することができる。或いは、キャップ層17上の誘電体樹脂層9及び絶縁膜15が完全に除去される為に十分な時間のエッチングを行った場合でも、コンタクト層13を除くメサ構造14の側面14a,14b近傍の誘電体樹脂層9及び絶縁膜15に対する過剰なエッチングを抑制することができる。したがって、本実施形態による光変調器1Aの製造方法によれば、メサ構造14の側面14a,14bからの誘電体樹脂層9の剥離を抑制することができる。
【0054】
本発明による光半導体素子の製造方法は、上述した実施形態に限られるものではなく、他に様々な変形が可能である。例えば、上述した各実施形態では、InP系化合物半導体によって構成される光半導体素子を製造する際に本発明を適用した例を示したが、本発明は、他の種々の半導体によって構成される光半導体素子を製造する際にも適用可能である。
【0055】
また、上述した各実施形態では、本発明の方法によって製造される光半導体素子としてマッハツェンダー型の光変調器を例示したが、本発明による製造方法は、メサ構造が樹脂によって埋め込まれる構造を備える種々の光半導体素子に適用可能である。
【符号の説明】
【0056】
1A…光変調器、2…半導体基板、2a…主面、2b…裏面、9…誘電体樹脂層、9a…開口、10,20…光導波路、10a,20a…光導波領域、10b,20b…位相制御領域、10c,20c…光導波領域、11…光導波路層、12…クラッド層、13…コンタクト層、14…メサ構造、14a,14b…側面、15,16…絶縁膜、17…キャップ層、30…入射側分波器、40…出射側合波器、50,60,80…電極、50a,60a…ボンディングパッド、51…オーミック電極膜、52…メッキ配線層、70…エッチングマスク、71,72…レジストマスク、L1…入射光。
【技術分野】
【0001】
本発明は、光半導体素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、光半導体素子及びその製造方法が開示されている。この光半導体素子は、光導波路を含むメサ構造と、該メサ構造を埋め込む樹脂層とを備えている。メサ構造上には樹脂層の開口が形成されており、該開口には、メサ構造に電流を供給するための電極が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−205025号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
いわゆるリッジ構造やハイメサ構造といったメサ構造の側面が、樹脂によって埋め込まれた構造を備える光半導体素子がある(例えば特許文献1を参照)。図12は、このような光半導体素子の構造例を示す断面図であり、光導波方向に垂直な断面を示している。図12に示される光半導体素子100は、半導体基板101と、半導体基板101上に設けられた光導波路層102と、光導波路層102上に設けられたクラッド層103と、クラッド層103上に設けられたコンタクト層104とを備えている。光導波路層102、クラッド層103及びコンタクト層104は、光導波方向に延びるメサ構造105を構成しており、このメサ構造105の両側面は、絶縁膜106によって覆われている。また、メサ構造105の両側方には樹脂層107が設けられており、樹脂層107によってメサ構造105が埋め込まれている。コンタクト層104の上方には、絶縁膜106及び樹脂層107の開口が形成されており、該開口内に形成されたオーミック電極膜108がコンタクト層104と接触している。オーミック電極膜108上及び樹脂層107上にわたって、メッキ配線層109が設けられている。
【0005】
図12に示された構造を備える光半導体素子は、例えば以下の方法によって作製される。まず、図13(a)に示されるように、光導波路層102、クラッド層103、及びコンタクト層104を半導体基板101上に成長させる。次に、図13(b)に示されるように、所定の光導波方向に延びるエッチングマスク120をコンタクト層104上に形成する。そして、図13(c)に示されるように、エッチングマスク120を用いてコンタクト層104、クラッド層103、及び光導波路層102をエッチングすることにより、これらの層102〜104を含むメサ構造105を形成する。
【0006】
続いて、図14(a)に示されるように、メサ構造105および半導体基板101を覆う絶縁膜106を形成したのち、半導体基板101上に樹脂層107を塗布することにより、メサ構造105を埋め込む。そして、図14(b)に示されるように、メサ構造105上に開口を有するレジストマスク121を樹脂層107上に形成し、このレジストマスク121を用いて樹脂層107及び絶縁膜106をエッチング(例えばプラズマエッチング)することにより、樹脂層107及び絶縁膜106に開口を形成してメサ構造105のコンタクト層104を露出させる(図14(c))。
【0007】
続いて、図15(a)に示されるように、樹脂層107の表面及び開口、並びに露出したコンタクト層104を覆う絶縁膜110を形成する。そして、図15(b)に示されるように、メサ構造105上に開口を有するレジストマスク122を絶縁膜110上に形成したのち、図15(c)に示されるように、このレジストマスク122を用いて絶縁膜110をエッチングすることにより、絶縁膜110に開口を形成してメサ構造105のコンタクト層104を再び露出させる。
【0008】
続いて、図16(a)に示されるようにレジストマスク122を除去したのち、図16(b)に示されるように、コンタクト層104上にオーミック電極膜108を形成し、更に、オーミック電極膜108上から樹脂層107上にかけてメッキ配線層109を形成する。こうして、図12に示された構造を備える光半導体素子100が作製される。
【0009】
しかしながら、上述した製造方法には、次のような課題がある。すなわち、図14(c)に示された工程において樹脂層107及び絶縁膜106をエッチングする際、メサ構造105上の樹脂層107及び絶縁膜106を完全に除去する為には、エッチングを十分な時間行う必要がある。しかし、エッチングを長時間行うことにより、図17に示されるように、樹脂層107及び絶縁膜106のうちメサ構造105の側面に接する部分までエッチングされてしまい、樹脂層107がメサ構造105の側面から剥がれてしまう。
【0010】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、メサ構造の側面からの樹脂の剥離を抑制できる光半導体素子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決するために、本発明による光半導体素子の第1の製造方法は、(1)光導波路層、クラッド層、コンタクト層、及びキャップ層を基板上に順次成長する成長工程と、(2)所定の光導波方向に延びるエッチングマスクをキャップ層上に形成するマスク形成工程と、(3)エッチングマスクを用いて、キャップ層に対しウェットエッチングを行う第1のエッチング工程と、(4)エッチングマスクを用いて、少なくともコンタクト層及びクラッド層に対してドライエッチングを行い、光導波方向に延びるメサ構造を形成する第2のエッチング工程と、(5)メサ構造を覆う絶縁膜を形成する絶縁膜形成工程と、(6)基板上に樹脂を塗布し、メサ構造を樹脂によって埋め込む樹脂形成工程と、(7)メサ構造上の樹脂及び絶縁膜に対してエッチングを行い、キャップ層を露出させる第3のエッチング工程と、(8)キャップ層に対してエッチングを行い、キャップ層を除去する第4のエッチング工程と、(9)メサ構造上に電極を形成する電極形成工程とを有することを特徴とする。
【0012】
この第1の製造方法では、まずキャップ層に対してウェットエッチングを行う。このとき、キャップ層に対してサイドエッチングが進行する。次いで、少なくともコンタクト層及びクラッド層に対してドライエッチングを行うことによって、メサ構造を形成する。このような方法によって、光導波方向と交差する方向のキャップ層の幅が、該方向のメサ構造の幅より狭くなる。そして、このような構造では、メサ構造の側面上端より上方に存在する樹脂の厚さが、キャップ層上に存在する樹脂の厚さより厚い。したがって、第3のエッチング工程におけるエッチング深さは、メサ構造の側面上端に達するより早く、キャップ層に達することとなる。これにより、メサ構造の側面近傍の樹脂や絶縁膜がエッチングされる前に、当該エッチングを終了することができる。或いは、キャップ層上の樹脂及び絶縁膜が完全に除去される為に十分な時間のエッチングを行った場合でも、メサ構造の側面近傍の樹脂及び絶縁膜に対する過剰なエッチングを抑制できる。したがって、上述した第1の製造方法によれば、メサ構造の側面からの樹脂の剥離を効果的に抑制することができる。
【0013】
また、上述した光半導体素子の第1の製造方法は、第2のエッチング工程後における、光導波方向と交差する方向のキャップ層の幅が、該方向のコンタクト層の幅より狭いことを特徴としてもよい。これにより、上述した効果を好適に実現できる。
【0014】
また、本発明による光半導体素子の第2の製造方法は、(1)光導波路層、クラッド層、及びコンタクト層を基板上に順次成長する成長工程と、(2)所定の光導波方向に延びるエッチングマスクをコンタクト層上に形成するマスク形成工程と、(3)エッチングマスクを用いて、少なくともコンタクト層及びクラッド層に対してドライエッチングを行い、光導波方向に延びるメサ構造を形成する第1のエッチング工程と、(4)コンタクト層の側面に対するウェットエッチングを選択的に行う第2のエッチング工程と、(5)メサ構造を覆う絶縁膜を形成する絶縁膜形成工程と、(6)基板上に樹脂を塗布し、メサ構造を樹脂によって埋め込む樹脂形成工程と、(7)メサ構造上の樹脂及び絶縁膜に対してエッチングを行い、コンタクト層を露出させる第3のエッチング工程と、(8)メサ構造上に電極を形成する電極形成工程とを有することを特徴とする。
【0015】
この第2の製造方法では、まず、少なくともコンタクト層及びクラッド層に対してドライエッチングを行うことによって、メサ構造を形成する。次いで、コンタクト層の側面に対してウェットエッチングを選択的に行う。このとき、コンタクト層の側面に対するサイドエッチングが、クラッド層の側面より深く進行する。このような方法によって、光導波方向と交差する方向のコンタクト層の幅が、コンタクト層を除くメサ構造の幅より狭くなる。そして、このような構造では、コンタクト層を除くメサ構造の側面上端より上方に存在する樹脂の厚さが、コンタクト層上に存在する樹脂の厚さより厚い。したがって、第3のエッチング工程におけるエッチング深さは、コンタクト層を除くメサ構造の側面上端に達するより早く、コンタクト層に達することとなる。これにより、コンタクト層を除くメサ構造の側面近傍の樹脂や絶縁膜がエッチングされる前に、当該エッチングを終了することができる。或いは、コンタクト層上の樹脂及び絶縁膜が完全に除去される為に十分な時間のエッチングを行った場合でも、コンタクト層を除くメサ構造の側面近傍の樹脂及び絶縁膜に対する過剰なエッチングを抑制できる。したがって、上述した第2の製造方法によれば、メサ構造の側面からの樹脂の剥離を効果的に抑制することができる。
【0016】
また、上述した光半導体素子の第2の製造方法は、第2のエッチング工程後における、光導波方向と交差する方向のコンタクト層の幅が、該方向のクラッド層の幅より狭いことを特徴としてもよい。これにより、上述した効果を好適に実現できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明による光半導体素子の製造方法によれば、メサ構造の側面からの樹脂の剥離を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、第1実施形態に係る製造方法により製造される光半導体素子の例として、マッハツェンダー型の光変調器の構成を示す平面図である。
【図2】図2は、光変調器のII−II線に沿った断面を示す図である。
【図3】図3は、第1実施形態に係る製造方法の各工程を示す断面図である。
【図4】図4は、第1実施形態に係る製造方法の各工程を示す断面図である。
【図5】図5は、第1実施形態に係る製造方法の各工程を示す断面図である。
【図6】図6は、第1実施形態に係る製造方法の各工程を示す断面図である。
【図7】図7は、図1に示された光変調器のII−II断面構造の別の形態を示す図である。
【図8】図8は、第2実施形態に係る製造方法の各工程を示す断面図である。
【図9】図9は、第2実施形態に係る製造方法の各工程を示す断面図である。
【図10】図10は、第2実施形態に係る製造方法の各工程を示す断面図である。
【図11】図11は、第2実施形態に係る製造方法の各工程を示す断面図である。
【図12】図12は、光半導体素子の構造例を示す断面図である。
【図13】図13は、光半導体素子の製造方法の各工程を示す断面図である。
【図14】図14は、光半導体素子の製造方法の各工程を示す断面図である。
【図15】図15は、光半導体素子の製造方法の各工程を示す断面図である。
【図16】図16は、光半導体素子の製造方法の各工程を示す断面図である。
【図17】図17は、図13〜図16に示された製造方法による問題点を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照しながら本発明による光半導体素子の製造方法の実施の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0020】
(第1の実施の形態)
図1は、本実施形態に係る製造方法により製造される光半導体素子の例として、マッハツェンダー型の光変調器の構成を示す平面図である。また、図2は、この光変調器1AのII−II線に沿った断面を示す図である。この光変調器1Aは、2本の光導波路10,20と、入射側分波器30と、出射側合波器40と、2つの電極50,60とを備えている。光導波路10及び20、並びに入射側分波器30及び出射側合波器40は、図2に示される共通の半導体基板2の主面2a上に形成されている。半導体基板2は、第1導電型(例えばn型)の半導体からなる基板であり、半導体基板2としては、例えばn型InP基板が好適である。また、図2に示されるように、光変調器1Aは、半導体基板2の裏面2b上に形成された電極80を更に備えている。
【0021】
光導波路10,20は、入射側分波器30と出射側合波器40との間に延設されており、その一端は入射側分波器30に結合され、他端は出射側合波器40に結合されている。また、光導波路10,20は、その延在方向に交差する方向に並んで配置されている。光導波路10は、光導波領域10a、位相制御領域10b及び光導波領域10cを含む。光導波領域10a、位相制御領域10b及び光導波領域10cは、光導波方向(すなわち光導波路10の延在方向)にこの順で配列されている。同様に、光導波路20は、光導波領域20a、位相制御領域20b及び光導波領域20cを含む。光導波領域20a、位相制御領域20b及び光導波領域20cは、光導波方向(すなわち光導波路20の延在方向)にこの順で配列されている。
【0022】
入射側分波器30は、外部から光変調器1Aに入射した入射光L1を、光導波路10,20それぞれに分波する。出射側合波器40は、光導波路10,20それぞれを伝搬した光を合波する。入射側分波器30及び出射側合波器40は、例えばMMIカプラによって好適に構成される。
【0023】
電極50は位相制御領域10b上に形成されており、電極60は位相制御領域20b上に形成されている。電極50,60それぞれは、ワイヤボンディングのためのボンディングパッド50a,60aそれぞれを有している。
【0024】
図2を参照して、位相制御領域10b付近の構造について説明する。なお、位相制御領域20b付近の構造も、図2と同様である。位相制御領域10bは、光導波路層11と、クラッド層12と、コンタクト層13とを有している。光導波路層11は、アンドープ半導体からなる。このアンドープ半導体としては、GaInAsP、AlGaInAs、AlInAs及びGaInAs等を例示することができる。光導波路層11は、単一の層(バルク層)からなってもよく、井戸層を該井戸層よりバンドギャップが大きいバリア層によって挟み込んだ量子井戸構造を有していてもよい。
【0025】
クラッド層12及びコンタクト層13は、第2導電型(例えばp型)の半導体からなる。クラッド層12のp型半導体としては、例えばp型InPが好適である。コンタクト層13のp型半導体としては、例えばp型InGaAsが好適である。クラッド層12及びコンタクト層13は、所定の光導波方向に延びるメサ構造14を成している。このメサ構造14の両側面14a,14b上には、絶縁膜15が設けられている。絶縁膜15は、メサ構造14の両側面14a,14b上からメサ構造14の周囲の半導体基板2上にわたって設けられている。絶縁膜15は、例えばSiNやSiO2といったシリコン化合物からなる。絶縁膜15の厚さは、例えば300nmである。
【0026】
メサ構造14の両側面14a,14bは、誘電体樹脂層9により埋め込まれている。誘電体樹脂層9は、例えばBCBやポリイミドといった樹脂からなり、メサ構造14の周囲の半導体基板2上に設けられている。半導体基板2の主面2aを基準とする誘電体樹脂層9の表面の高さは、主面2aを基準とするメサ構造14の高さより高い。誘電体樹脂層9の層厚は、例えば2μmである。誘電体樹脂層9は、メサ構造14上に開口9aを有する。なお、誘電体樹脂層9の表面は、絶縁膜16に覆われている。絶縁膜16は、例えばSiNやSiO2といったシリコン化合物からなる。絶縁膜16の厚さは、例えば200nmである。絶縁膜16は、メサ構造14上に開口を有する。
【0027】
電極50は、オーミック電極膜51と、メッキ配線層52とを有する。オーミック電極膜51は、メサ構造14上に設けられており、メサ構造14のコンタクト層13と接触している。オーミック電極膜51は、例えばAu/Zn/Auといった積層構造を有する。メッキ配線層52は、例えばAuメッキによって形成される。メッキ配線層52は、オーミック電極膜51を完全に覆っており、また誘電体樹脂層9の開口9aを埋め込んでいる。メッキ配線層52は、メサ構造14上から誘電体樹脂層9上にわたって(本実施形態では、オーミック電極膜51上から絶縁膜16上にわたって)設けられている。
【0028】
以上の構成を備える光変調器1Aの製造方法について説明する。図3〜図6は、光変調器1Aの製造方法の各工程を示す断面図であり、図1に示されたII−II断面の製造過程を示している。
【0029】
まず、図3(a)に示されるように、光導波路層11、クラッド層12、及びコンタクト層13を半導体基板2の主面2a上に順次成長させる(成長工程)。また、コンタクト層13の上にキャップ層17を成長させる。キャップ層17は、例えばアンドープInPといったInP系化合物半導体からなる。なお、これらの層11〜14の成長は、例えば有機金属気相成長法(OMVPE;Organo Metaric Vapor Phase Epitaxy)によって好適に行われる。
【0030】
次に、図3(b)に示されるように、所定の光導波方向に延びるエッチングマスク70をキャップ層17上に形成する(マスク形成工程)。エッチングマスク70は、例えば次のようにして形成される。まず、プラズマCVD法を用いて、SiNといった絶縁膜をキャップ層17上の全面に形成する。次に、この絶縁膜上に通常のフォトリソグラフィ技術を用いて所定の光導波方向に延びるレジストマスクを形成する。そして、このレジストマスクを用いて、絶縁膜に対しプラズマエッチングを施す。こうして、絶縁膜からなるエッチングマスク70が形成される。
【0031】
続いて、図3(c)に示されるように、エッチングマスク70を用いて、キャップ層17に対しウェットエッチングを行う(第1のエッチング工程)。キャップ層17がInPからなる場合には、エッチング液として塩酸が好適である。このとき、キャップ層17の側面に対してサイドエッチングが進行するように、エッチング時間を調整する。これにより、図3(c)に示されるように、光導波方向と交差する方向におけるキャップ層17の幅W1は、エッチングマスク70の同方向の幅W2より狭くなる。このエッチングは、InGaAsからなるコンタクト層13において停止する。
【0032】
続いて、図4(a)に示されるように、エッチングマスク70を用いて、少なくともコンタクト層13及びクラッド層12に対してドライエッチングを行い、光導波方向に延びるメサ構造を形成する(第2のエッチング工程)。本実施形態では、コンタクト層13、クラッド層12、光導波路層11及び半導体基板2の一部をエッチングしており、メサ構造14は、これらの層11〜13及び半導体基板2の一部を含んでいる。本工程では、メサ構造14をドライエッチング(例えばプラズマエッチング)によって形成することにより、メサ構造14の側面14a,14bを半導体基板2の主面2aに対して垂直に近づけることができるので、光を効率良く閉じ込める為に好適な光導波路層11の側面が得られる。
【0033】
また、この第2のエッチング工程では、メサ構造14をドライエッチングによって形成するので、光導波方向と交差する方向におけるコンタクト層13、クラッド層12、及び光導波路層11の幅W6は、エッチングマスク70の幅W2とほぼ等しくなる。したがって、キャップ層17の幅W1は、コンタクト層13、クラッド層12、及び光導波路層11の幅W6よりも狭くなる。
【0034】
続いて、エッチングマスク70を除去したのち、図4(b)に示されるように、メサ構造14を覆う絶縁膜15を形成する(絶縁膜形成工程)。一実施例では、プラズマCVDによってSiNからなる絶縁膜15を製膜する。続いて、半導体基板2上において、例えばBCBやポリイミドといった樹脂を、メサ構造14が完全に埋め込まれる程度の厚さにスピン塗布したのち、該樹脂の熱硬化を行う。これにより、誘電体樹脂層9が形成される(樹脂形成工程)。
【0035】
続いて、図4(c)に示されるように、通常のフォトリソグラフィ技術を用いて、メサ構造14上に開口を有するレジストマスク71を誘電体樹脂層9上に形成する。なお、このレジストマスク71の開口の幅W3は、メサ構造14の幅W6(図4(a)を参照)よりも広く形成される。そして、図5(a)に示されるように、レジストマスク71を用いてメサ構造14上の誘電体樹脂層9及び絶縁膜15に対してエッチングを行うことにより、キャップ層17を露出させる(第3のエッチング工程)。このエッチング方法としては、例えばプラズマエッチング等のドライエッチングが好適である。プラズマエッチングを行う場合、エッチャントガスとしては、例えばCF4及びO2の混合ガスが好適である。
【0036】
続いて、レジストマスク71を除去したのち、図5(b)に示されるように、絶縁膜16を形成する。絶縁膜16は、誘電体樹脂層9の表面、開口9aの側面、及びキャップ層17を覆う。一実施例では、プラズマCVDによってSiO2からなる絶縁膜16を製膜する。
【0037】
続いて、図5(c)に示されるように、通常のフォトリソグラフィ技術を用いて、メサ構造14上に開口を有するレジストマスク72を、誘電体樹脂層9の表面上及び開口9aの側面上に形成する。なお、このレジストマスク72は、開口の幅W4がメサ構造14の幅W6(図4(a)を参照)とほぼ等しくなるように形成される。
【0038】
続いて、図6(a)に示されるように、レジストマスク72を用いて、絶縁膜16のうちメサ構造14上の部分をエッチングすることにより該部分を除去する。この工程におけるエッチング方法としては、例えばプラズマエッチング等のドライエッチングが好適である。SiO2から成る絶縁膜16に対してプラズマエッチングを行う場合、エッチャントガスとしては、例えばCF4ガスが好適である。
【0039】
続いて、レジストマスク72を除去したのち、図6(b)に示されるように、キャップ層17に対してエッチングを行うことにより、キャップ層17を除去する(第4のエッチング工程)。InPから成るキャップ層17に対するエッチング方法としては、例えば塩酸をエッチング液とするウェットエッチングが好適である。この工程では、絶縁膜16がエッチングマスクとして作用する。また、InGaAsから成るコンタクト層13は塩酸に対するエッチング速度が格段に遅いので、この工程では、InPから成るキャップ層17のみを選択的にエッチングすることができる。
【0040】
続いて、図6(c)に示されるように、メサ構造14上に電極50(位相制御領域20bの場合は電極60)を形成する(電極形成工程)。具体的には、いわゆるリフトオフ法を用いてメサ構造14上にオーミック電極膜51を形成したのち、Auメッキを施すことにより、メッキ配線層52をオーミック電極膜51上に形成する。オーミック電極膜51は、メサ構造14上に形成された絶縁膜16の開口を塞ぐように形成され、メサ構造14のコンタクト層13と接触する。メッキ配線層52は、オーミック電極膜51を完全に覆い、且つ誘電体樹脂層9の開口9aを埋め込むように形成される。メッキ配線層52は、メサ構造14上から誘電体樹脂層9上にわたって形成される。
【0041】
以上に説明した本実施形態の製造方法では、キャップ層17に対してウェットエッチングを行うことにより、キャップ層17に対してサイドエッチングを進行させ、次いで、コンタクト層13、クラッド層12、及び光導波路層11に対してドライエッチングを行うので、図4(a)に示されたように、キャップ層17の幅W1が、コンタクト層13等の幅W2よりも狭くなる。
【0042】
そして、このような構造では、メサ構造14の側面14a,14bの上端より上方に存在する誘電体樹脂層9の厚さ(図4(c)に示される厚さT1)が、キャップ層17上に存在する誘電体樹脂層9の厚さ(同T2)より厚い。したがって、図5(a)に示された第3のエッチング工程におけるエッチング深さは、メサ構造14の側面14a,14bの上端に達するより早く、キャップ層17に達することとなる。これにより、メサ構造14の側面14a,14b近傍の誘電体樹脂層9や絶縁膜15がエッチングされる前に、当該エッチングを終了することができる。或いは、キャップ層17上の誘電体樹脂層9及び絶縁膜15が完全に除去される為に十分な時間のエッチングを行った場合でも、メサ構造14の側面14a,14b近傍の誘電体樹脂層9及び絶縁膜15に対する過剰なエッチングを抑制することができる。したがって、本実施形態による光変調器1Aの製造方法によれば、メサ構造14の側面14a,14bからの誘電体樹脂層9の剥離を抑制することができる。
【0043】
(第2の実施の形態)
図7は、図1に示された光変調器1AのII−II断面構造の別の形態を示す図である。図7を参照すると、本実施形態と第1実施形態との構成上の相違点は、コンタクト層の幅である。すなわち、本実施形態の位相制御領域10bは、光導波路層11と、クラッド層12と、コンタクト層13とを有しており、これらの層はメサ構造14を構成している。そして、光導波方向と交差する方向におけるコンタクト層13の幅W5は、メサ構造14における他の層(光導波路層11及びクラッド層12)の幅W2よりも狭くなっている。
【0044】
このような構成を備える本実施形態の光変調器の製造方法について説明する。図8〜図11は、本実施形態に係る製造方法の各工程を示す断面図であり、図1に示されたII−II断面の製造過程を示している。
【0045】
まず、図8(a)に示されるように、光導波路層11、クラッド層12、及びコンタクト層13を半導体基板2の主面2a上に順次成長させる(成長工程)。なお、これらの層11〜13の成長は、例えばOMVPEによって好適に行われる。次に、図8(b)に示されるように、所定の光導波方向に延びるエッチングマスク70をコンタクト層13上に形成する(マスク形成工程)。エッチングマスク70は、第1実施形態と同様にして形成される。
【0046】
続いて、図8(c)に示されるように、エッチングマスク70を用いて、少なくともコンタクト層13及びクラッド層12に対してドライエッチングを行い、光導波方向に延びるメサ構造を形成する(第1のエッチング工程)。本実施形態では、コンタクト層13、クラッド層12、光導波路層11及び半導体基板2の一部をエッチングしており、メサ構造14は、これらの層11〜13及び半導体基板2の一部を含んでいる。
【0047】
続いて、図9(a)に示されるように、コンタクト層13の側面に対してウェットエッチングを選択的に行う(第2のエッチング工程)。すなわち、コンタクト層13の側面に対するサイドエッチング速度が他の層(光導波路層11及びクラッド層12)の側面に対する再度エッチング速度よりも速くなるように、ウェットエッチングを行う。コンタクト層13がInGaAsからなる場合には、エッチング液としてリン酸と過酸化水素水と水との混合液が好適である。この工程により、光導波方向と交差する方向におけるコンタクト層13の幅W5は、光導波路層11及びクラッド層12の同方向の幅W6より狭くなる。
【0048】
続いて、エッチングマスク70を除去したのち、図9(b)に示されるように、メサ構造14を覆う絶縁膜15を形成し(絶縁膜形成工程)、第1実施形態と同様の方法により、誘電体樹脂層9を形成する(樹脂形成工程)。そして、図9(c)に示されるように、メサ構造14上に開口を有するレジストマスク71を誘電体樹脂層9上に形成する。
【0049】
続いて、図10(a)に示されるように、レジストマスク71を用いてメサ構造14上の誘電体樹脂層9及び絶縁膜15に対してエッチングを行うことにより、コンタクト層13を露出させる(第3のエッチング工程)。このエッチング方法としては、例えばプラズマエッチング等のドライエッチングが好適である。プラズマエッチングを行う場合、エッチャントガスとしては、例えばCF4及びO2の混合ガスが好適である。
【0050】
続いて、レジストマスク71を除去したのち、図10(b)に示されるように、絶縁膜16を形成する。絶縁膜16は、第1実施形態と同様の方法によって好適に形成される。そして、図10(c)に示されるように、通常のフォトリソグラフィ技術を用いて、メサ構造14上に開口を有するレジストマスク72を、誘電体樹脂層9の表面上及び開口9aの側面上に形成する。
【0051】
続いて、図11(a)に示されるように、レジストマスク72を用いて、絶縁膜16のうちメサ構造14上の部分をエッチングすることにより該部分を除去する。この工程におけるエッチング方法は、第1実施形態と同様である。その後、レジストマスク72を除去したのち(図11(b))、メサ構造14上に電極50(位相制御領域20bの場合は電極60)を形成する(電極形成工程)。なお、電極50のオーミック電極膜51及びメッキ配線層52の形成方法は、第1実施形態と同様である。
【0052】
以上に説明した本実施形態の製造方法では、まず、コンタクト層13、クラッド層12及び光導波路層11に対してドライエッチングを行うことによってメサ構造14を形成し、次いで、コンタクト層13の側面に対してウェットエッチングを選択的に行うので、図9(a)に示されたように、コンタクト層13の幅W5が、クラッド層12等の幅W2より狭くなる。
【0053】
そして、このような構造では、コンタクト層13を除くメサ構造14の側面14a,14bの上端より上方に存在する誘電体樹脂層9の厚さ(図9(c)に示される厚さT3)が、キャップ層17上に存在する誘電体樹脂層9の厚さ(同T4)より厚い。したがって、図10(a)に示された第3のエッチング工程におけるエッチング深さは、メサ構造14の側面14a,14bの上端に達するより早く、コンタクト層13に達することとなる。これにより、コンタクト層13を除くメサ構造14の側面14a,14b近傍の誘電体樹脂層9や絶縁膜15がエッチングされる前に、当該エッチングを終了することができる。或いは、キャップ層17上の誘電体樹脂層9及び絶縁膜15が完全に除去される為に十分な時間のエッチングを行った場合でも、コンタクト層13を除くメサ構造14の側面14a,14b近傍の誘電体樹脂層9及び絶縁膜15に対する過剰なエッチングを抑制することができる。したがって、本実施形態による光変調器1Aの製造方法によれば、メサ構造14の側面14a,14bからの誘電体樹脂層9の剥離を抑制することができる。
【0054】
本発明による光半導体素子の製造方法は、上述した実施形態に限られるものではなく、他に様々な変形が可能である。例えば、上述した各実施形態では、InP系化合物半導体によって構成される光半導体素子を製造する際に本発明を適用した例を示したが、本発明は、他の種々の半導体によって構成される光半導体素子を製造する際にも適用可能である。
【0055】
また、上述した各実施形態では、本発明の方法によって製造される光半導体素子としてマッハツェンダー型の光変調器を例示したが、本発明による製造方法は、メサ構造が樹脂によって埋め込まれる構造を備える種々の光半導体素子に適用可能である。
【符号の説明】
【0056】
1A…光変調器、2…半導体基板、2a…主面、2b…裏面、9…誘電体樹脂層、9a…開口、10,20…光導波路、10a,20a…光導波領域、10b,20b…位相制御領域、10c,20c…光導波領域、11…光導波路層、12…クラッド層、13…コンタクト層、14…メサ構造、14a,14b…側面、15,16…絶縁膜、17…キャップ層、30…入射側分波器、40…出射側合波器、50,60,80…電極、50a,60a…ボンディングパッド、51…オーミック電極膜、52…メッキ配線層、70…エッチングマスク、71,72…レジストマスク、L1…入射光。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光導波路層、クラッド層、コンタクト層、及びキャップ層を基板上に順次成長する成長工程と、
所定の光導波方向に延びるエッチングマスクを前記キャップ層上に形成するマスク形成工程と、
前記エッチングマスクを用いて、前記キャップ層に対しウェットエッチングを行う第1のエッチング工程と、
前記エッチングマスクを用いて、少なくとも前記コンタクト層及び前記クラッド層に対してドライエッチングを行い、前記光導波方向に延びるメサ構造を形成する第2のエッチング工程と、
前記メサ構造を覆う絶縁膜を形成する絶縁膜形成工程と、
前記基板上に樹脂を塗布し、前記メサ構造を前記樹脂によって埋め込む樹脂形成工程と、
前記メサ構造上の前記樹脂及び前記絶縁膜に対してエッチングを行い、前記キャップ層を露出させる第3のエッチング工程と、
前記キャップ層に対してエッチングを行い、前記キャップ層を除去する第4のエッチング工程と、
前記メサ構造上に電極を形成する電極形成工程と
を有することを特徴とする、光半導体素子の製造方法。
【請求項2】
前記第2のエッチング工程後における、前記光導波方向と交差する方向の前記キャップ層の幅が、該方向の前記コンタクト層の幅より狭いことを特徴とする、請求項1に記載の光半導体素子の製造方法。
【請求項3】
光導波路層、クラッド層、及びコンタクト層を基板上に順次成長する成長工程と、
所定の光導波方向に延びるエッチングマスクを前記コンタクト層上に形成するマスク形成工程と、
前記エッチングマスクを用いて、少なくとも前記コンタクト層及び前記クラッド層に対してドライエッチングを行い、前記光導波方向に延びるメサ構造を形成する第1のエッチング工程と、
前記コンタクト層の側面に対するウェットエッチングを選択的に行う第2のエッチング工程と、
前記メサ構造を覆う絶縁膜を形成する絶縁膜形成工程と、
前記基板上に樹脂を塗布し、前記メサ構造を前記樹脂によって埋め込む樹脂形成工程と、
前記メサ構造上の前記樹脂及び前記絶縁膜に対してエッチングを行い、前記コンタクト層を露出させる第3のエッチング工程と、
前記メサ構造上に電極を形成する電極形成工程と
を有することを特徴とする、光半導体素子の製造方法。
【請求項4】
前記第2のエッチング工程後における、前記光導波方向と交差する方向の前記コンタクト層の幅が、該方向の前記クラッド層の幅より狭いことを特徴とする、請求項3に記載の光半導体素子の製造方法。
【請求項1】
光導波路層、クラッド層、コンタクト層、及びキャップ層を基板上に順次成長する成長工程と、
所定の光導波方向に延びるエッチングマスクを前記キャップ層上に形成するマスク形成工程と、
前記エッチングマスクを用いて、前記キャップ層に対しウェットエッチングを行う第1のエッチング工程と、
前記エッチングマスクを用いて、少なくとも前記コンタクト層及び前記クラッド層に対してドライエッチングを行い、前記光導波方向に延びるメサ構造を形成する第2のエッチング工程と、
前記メサ構造を覆う絶縁膜を形成する絶縁膜形成工程と、
前記基板上に樹脂を塗布し、前記メサ構造を前記樹脂によって埋め込む樹脂形成工程と、
前記メサ構造上の前記樹脂及び前記絶縁膜に対してエッチングを行い、前記キャップ層を露出させる第3のエッチング工程と、
前記キャップ層に対してエッチングを行い、前記キャップ層を除去する第4のエッチング工程と、
前記メサ構造上に電極を形成する電極形成工程と
を有することを特徴とする、光半導体素子の製造方法。
【請求項2】
前記第2のエッチング工程後における、前記光導波方向と交差する方向の前記キャップ層の幅が、該方向の前記コンタクト層の幅より狭いことを特徴とする、請求項1に記載の光半導体素子の製造方法。
【請求項3】
光導波路層、クラッド層、及びコンタクト層を基板上に順次成長する成長工程と、
所定の光導波方向に延びるエッチングマスクを前記コンタクト層上に形成するマスク形成工程と、
前記エッチングマスクを用いて、少なくとも前記コンタクト層及び前記クラッド層に対してドライエッチングを行い、前記光導波方向に延びるメサ構造を形成する第1のエッチング工程と、
前記コンタクト層の側面に対するウェットエッチングを選択的に行う第2のエッチング工程と、
前記メサ構造を覆う絶縁膜を形成する絶縁膜形成工程と、
前記基板上に樹脂を塗布し、前記メサ構造を前記樹脂によって埋め込む樹脂形成工程と、
前記メサ構造上の前記樹脂及び前記絶縁膜に対してエッチングを行い、前記コンタクト層を露出させる第3のエッチング工程と、
前記メサ構造上に電極を形成する電極形成工程と
を有することを特徴とする、光半導体素子の製造方法。
【請求項4】
前記第2のエッチング工程後における、前記光導波方向と交差する方向の前記コンタクト層の幅が、該方向の前記クラッド層の幅より狭いことを特徴とする、請求項3に記載の光半導体素子の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2013−44793(P2013−44793A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−180659(P2011−180659)
【出願日】平成23年8月22日(2011.8.22)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月22日(2011.8.22)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
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