説明

光反射材、成形品、ならびに光反射材の製造方法

【課題】高充填に酸化チタンを含む芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を用いた光反射材においても熱安定性が大幅に改良され、反射シートに要求される高反射特性と遮光性を具備した光反射材を提供する。
【解決手段】
芳香族ポリカーボネート樹脂(a)100重量部に対し、酸化チタン(b)10重量部以上を含む芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を押出成形して成り、前記酸化チタン(b)が、該酸化チタンに対して0〜2重量%の無機処理剤で表面処理されていることを特徴とする、光反射材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芳香族ポリカーボネート樹脂と酸化チタンを含む芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を押出成形して成る光反射材に関する。特に、良好な光反射性および遮光性を示す芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を押出成形してなる光反射板または光線反射シート、ならびに、それらを加工して成る成形品に関する。また、光反射材を製造する製造方法に関する。
【技術背景】
【0002】
従来から、芳香族ポリカーボネート樹脂が優れた機械的性質を有することが知られており、自動車分野、OA機器分野、電気・電子分野をはじめ工業的に広く利用されている。例えば、芳香族ポリカーボネート樹脂に酸化チタン等の白色顔料を添加した芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、コンピュータやテレビ等の液晶表示装置のバックライト、照光式プッシュスイッチ、光電スイッチの反射板などの、高度の光反射率が要求される表示装置等における、光線反射用途の成形品材料として使用されている。
近年、液晶表示装置は、液晶TVを中心に大型化が進みつつある。このような液晶表示装置に使用される薄肉で大型(大面積)の反射シートは、通常、ポリエステルフィルムが使用されているが、表示装置に使用される光源によっては環境温度が上昇してしまい、従来のポリエステルでは耐熱性が不十分な場合がある。
【0003】
そこで、耐熱性の高い芳香族ポリカーボネート樹脂を使用することが検討されている。例えば、特許文献1には、芳香族ポリカーボネート系重合体85〜60質量%、酸化チタン15〜40質量%を含有する樹脂組成物にて形成された光反射シートが記載されている。しかし、本発明者が検討したところ、引用文献1に記載の樹脂組成物では、高温で成形した時の熱に対する安定性が不充分であることがわかった。すなわち、芳香族ポリカーボネート樹脂に酸化チタンを添加すると、熱安定性が大幅に低下してしまう。特に、上述のような光反射シートの場合は、薄肉であるにも関わらず光反射特性と共に遮光性が要求される為、多量の酸化チタンを含有する必要があり、熱安定性の低下はさらに大きな問題となる。
【0004】
【特許文献1】特開2004−149623号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、かかる現状に鑑みなされたものであって、高充填に酸化チタンを含む芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を用いた光反射材においても熱安定性が大幅に改良され、反射シートに要求される高反射特性と遮光性を具備した光反射材およびそれを使用した成形品、ならびに、光反射材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者が、鋭意検討を行った結果、驚くべきことに、改良された酸化チタンを高充填した芳香族ポリカーボネート樹脂組成物によって、高温で成形する場合においても、熱安定性が大幅に改良されることを見出し、さらに、該組成物を光反射材として使用し得ることを見出した。
すなわち本発明の課題は、下記手段により達成された。
(1)芳香族ポリカーボネート樹脂(a)100重量部に対し、酸化チタン(b)10重量部以上を含む芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を押出成形して成り、前記酸化チタン(b)が、該酸化チタン(b)に対して0〜2重量%の無機処理剤で表面処理されていることを特徴とする、光反射材。
(1−2)前記酸化チタン(b)が有機処理剤での表面処理および前記酸化チタンに対して2重量%以下の無機処理剤での表面処理の両方がなされている、(1−2)に記載の光反射材。
(2)前記光反射材が、光反射シートである(1)に記載の光反射材。
(3)前記酸化チタン(b)が有機処理剤にて表面処理されている、(1)または(2)に記載の光反射材。
(4)前記芳香族ポリカーボネート樹脂組成物が、前記芳香族ポリカーボネート樹脂(a)100重量部に対し、さらに難燃剤(c)30重量部以下を含有してなる、(1)〜(3)のいずれかに記載の光反射材。
【0007】
(5)前記難燃剤(c)が、シリコーン系難燃剤(c−1)、リン酸エステル系難燃剤(c−2)および有機酸のアルカリ(土類)金属塩(c−3)から選択された少なくとも1種である、(4)に記載の光反射材。
(6)前記シリコーン系難燃剤(c−1)が、シリカ粉末の表面にポリオルガノシロキサンを担持させてなる粉末シリコーン(c−1−1)である、(5)に記載の光反射材。
(7)前記シリコーン系難燃剤(c−1)が、主鎖が分岐構造を有し、かつ、ケイ素原子に結合する芳香族基を有する分岐シリコーン樹脂(c−1−2)である、(5)に記載の光反射材。
(8)前記シリコーン系難燃剤(c−1)の含有量が、芳香族ポリカーボネート樹脂(a)100重量部に対し0.5〜10重量部である、(5)〜(7)のいずれかに記載の光反射材。
【0008】
(9)前記リン酸エステル系難燃剤(c−2)の含有量が、芳香族ポリカーボネート樹脂(a)100重量部に対し2〜20重量部である、(5)〜(8)のいずれかに記載の光反射材。
(10)前記有機酸の有機酸のアルカリ(土類)金属塩(c−3)が、有機スルホン酸金属塩である、(5)〜(9)のいずれかに記載の光反射材。
(11)前記芳香族ポリカーボネート樹脂組成物が、前記芳香族ポリカーボネート樹脂(a)100重量部に対し、さらに、ポリテトラフルオロエチレン(d)を、0.01〜1重量部含有する、(4)〜(10)のいずれかに記載の光反射材。
(12)前記ポリテトラフルオロエチレン(d)が、フィブリル形成能を有するものである、(11)に記載の光反射材。
(13)(2)〜(12)のいずれかに記載の光反射シートを、熱成形して得られる成形品。
【0009】
(14)前記成形品が光反射板または光反射枠である、(13)に記載の成形品。
(15)芳香族ポリカーボネート樹脂(a)100重量部に対し、酸化チタン(b)10重量部以上を含み、かつ、該酸化チタン(b)が、該酸化チタンに対して0〜2重量%の無機処理剤で表面処理されている、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を、押出成形する工程を含む(1)〜(12)のいずれかに記載の光反射材の製造方法。
(15−2)前記酸化チタン(b)が、該酸化チタンに対して有機処理剤のみにて表面処理されている、(14)に記載の光反射材の製造方法。
(15−3)前記押出成形が、ダイス温度240〜270℃以上でなされている上記いずれかの光反射材の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物に特定の酸化チタンを添加する事で、高温成形時における不良現象、例えば、シルバーストリークス等を抑制し、良好な反射特性および遮光性を有する光反射材を提供することが可能となった。さらに、耐熱性に優れているため、耐熱性の要求される光反射材に用いる場合にも、より好ましいものとなった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。尚、本願明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
【0012】
芳香族ポリカーボネート樹脂(a)
本発明に使用される芳香族ポリカーボネート樹脂(a)は、本発明の趣旨を逸脱しない限り特に定めるものではなく、広く公知のものを採用できる。例えば、芳香族ヒドロキシ化合物またはこれと少量のポリヒドロキシ化合物を、ホスゲンまたは炭酸ジエステル等と反応させることによって得られる、分岐していてもよい熱可塑性芳香族ポリカーボネート重合体または共重合体である。従って、芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法についても、特に限定されるものではなく、公知の方法、例えばホスゲン法(界面重合法)あるいは溶融法(エステル交換法)等で製造することができる。
【0013】
芳香族ポリカーボネート樹脂の原料である芳香族ジヒドロキシ化合物は、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(=ビスフェノールA)、テトラメチルビスフェノールA、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン、ハイドロキノン、レゾルシノールおよび4,4−ジヒドロキシジフェニルなどが好ましい例として挙げられ、ビスフェノールAがより好ましい。さらに、上記の芳香族ジヒドロキシ化合物にスルホン酸テトラアルキルホスホニウムが1個以上結合した化合物を使用することにより、難燃性を付与、あるいは、さらに高めることもできる。
【0014】
分岐した芳香族ポリカーボネート樹脂を得るには、フロログルシン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプテン−2、4,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、2,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプテン−3、1,3,5−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタンなどのポリヒドロキシ化合物、あるいは、3,3−ビス(4−ヒドロキシアリール)オキシインドール(=イサチンビスフェノール)、5−クロルイサチン、5,7−ジクロルイサチン、5−ブロムイサチンなどを前記芳香族ジヒドロキシ化合物の一部として用いればよい。使用量は、0.01〜10モル%が好ましく、0.1〜2モル%がより好ましい。
【0015】
芳香族ポリカーボネート樹脂の分子量を調節するには、一価の芳香族ヒドロキシ化合物を用いればよく、例えばm−またはp−メチルフェノール、m−またはp−プロピルフェノール、p−t−ブチルフェノールおよびp−長鎖アルキル置換フェノールなどが使用される。
【0016】
芳香族ポリカーボネート樹脂(a)としては、好ましくは、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンから誘導される芳香族ポリカーボネート樹脂、または2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンと他の芳香族ジヒドロキシ化合物とから誘導される芳香族ポリカーボネート共重合体である。さらにシロキサン構造を有するポリマーあるいはオリゴマーを共重合させてもよい。
【0017】
芳香族ポリカーボネート樹脂(a)としては、これらのうち2種以上の樹脂を混合して用いることもできる。
【0018】
芳香族ポリカーボネート樹脂(a)の分子量は、溶媒としてメチレンクロライドを用い、温度25℃で測定された溶液粘度より換算した粘度平均分子量で、16,000〜30,000が好ましく、17,000〜25,000がより好ましい。
【0019】
ここで、粘度平均分子量(M)とは、オストワルド粘度計を用い、芳香族ポリカーボネート樹脂の0.5g/Lの塩化メチレン溶液について25℃で極限粘度[η]を求め、次のSchnellの粘度式、すなわち [η]=1.23×10-50.83 から算出される値を意味する。
【0020】
酸化チタン(b)
本発明における酸化チタン(b)の平均粒子径は、0.05〜0.5μmのものが好ましい。このような範囲内にすることにより、遮光性および光反射率をより高めることができ、特に、0.5μm以下とすることにより、成形品表面に肌荒れを起したり、衝撃強度の低下を生じやすくなるのをより効果的に防止できる。酸化チタンの平均粒子径は、より好ましくは0.1〜0.5μmであり、最も好ましくは0.15〜0.35μmである。
【0021】
酸化チタンは、いずれの方法で製造されたものであってもよいが、塩素法または硫酸法で製造されたものが好ましく、塩素法で製造されたものがより好ましい。塩素法で製造された酸化チタンは、硫酸法で製造された酸化チタンよりも、白度等の点でより優れていることによるものである。酸化チタンの結晶形態としては、本発明の趣旨を逸脱しない限り特に定めるものではないが、ルチル型またはアナターゼ型が好ましく、ルチル型がより好ましい。ルチル型は、アナターゼ型の酸化チタンよりも、白度、光反射率および耐候性の点でさらに優れていることによるものである。
【0022】
市販されている酸化チタンは、通常、シリカ、アルミナ、ジルコニア等の含水酸化物により表面処理されている。しかし、無機処理により酸化チタンの分散性は向上するものの、表面に形成された無機処理層の吸着水により、かかる酸化チタンを含有する芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、成形物の外観不良、燃焼時のドリッピング等の不具合を生じる可能性がある。さらに、成形機中で組成物を滞留させた場合に樹脂の分子量低下を起こさないためにも、水分量は少ない方が好ましい。
一般的には、酸化チタンに対して2重量%より多く4重量%以下程度の無機処理が行われている酸化チタンが多いが、本発明では、特に成形機中で組成物を滞留させた場合の樹脂の分子量低下を防ぐため、無機処理剤の量が酸化チタンに対し0〜2重量%であり、0〜1.5重量%が好ましく、0〜0.8重量%がより好ましく、0重量%(無機処理なし)がさらに好ましい。無機処理なしの場合は特に、後述する有機処理剤によって処理されていることが好ましい。なお、耐候性やハンドリング性(2次凝集防止)を考慮すると、0.5重量%程度以上の無機処理剤で処理されているのが好ましい。
【0023】
無機処理を行う場合には、処理剤は、好ましくは、シリカ、アルミナおよびジルコニア、ならびに、これらの混合物であり、より好ましくは、シリカおよびアルミナ、ならびに、これらの混合物である。ここで、シリカは吸水性が高く水分の影響を受けやすい傾向にあるので、シリカを用いる場合および他の処理剤と併用する場合はシリカの量が少ないこと(無機処理剤全体の30重量%以下)がより好ましい。
【0024】
本発明における酸化チタン(b)は、有機処理剤により表面処理されたものであることが好ましい。少ない無機処理剤により処理された酸化チタン、特に、無機処理をしない酸化チタンの場合は、酸化チタン表面の活性を抑え、組成物中で不必要な副反応を生じさせないために、有機処理が極めて有効である。
【0025】
有機処理に使用する表面処理剤としては、アルコキシ基、エポキシ基、アミノ基、またはSi−H結合を有する、有機シラン化合物または有機シロキサン化合物等が挙げられ、アルコキシ基、エポキシ基、アミノ基、あるいはSi−H結合を有する有機シロキサン化合物がより好ましく、ハイドロジェンポリシロキサン(Si−H結合を有するシロキサン化合物)がさらに好ましい。有機処理剤の処理量は、酸化チタンに対して1〜5重量%、好ましくは1.5〜3重量%である。
【0026】
本発明における、酸化チタンの無機処理および有機処理の方法に特に制限はなく、公知の方法にて行うことができる。例えば、無機処理はシリカ、アルミナ、ジルコニア等の塩類水溶液を加え、これを中和するアルカリまたは酸を加えて、生成する含水酸化物で酸化チタン粒子表面を被覆する方法などが挙げられる。有機処理については、有機シロキサン化合物と酸化チタンをスーパーミキサー、ヘンシェルミキサー、V型タンブラー等の混合装置により混合攪拌処理する方法等が挙げられる。
【0027】
酸化チタンについて無機処理および有機処理の両方を行う場合は、酸化チタンに対し、0.1〜2重量%の無機処理および1〜4重量%の有機処理を行うことが好ましい。
さらに、この場合の無機処理剤と有機処理剤の組み合わせとしては、シリカ、アルミナおよびジルコニア、ならびに、これらの混合物のいずれかと、アルコキシ基、エポキシ基、アミノ基、またはSi−H結合を有する、有機シラン化合物または有機シロキサン化合物の組み合わせが好ましく、ジルコニアおよびアルミナ、ならびに、これらの混合物とSi−H結合を有するシロキサン化合物の組み合わせがより好ましい。
【0028】
酸化チタン(b)の含有量(表面処理剤の量を含む。以下、同様。)は、芳香族ポリカーボネート樹脂(a)100重量部に対して10重量部以上であり、また好ましくは、70重量部程度以下である。10重量部を下回ると遮光性が不充分になりやすく、70重量部以下とすることにより、耐衝撃性が不充分になるのをより効果的に防止できる。
本発明の光反射材において、光反射性に加えて遮光性をも求める場合には、酸化チタン(b)の量は比較的多い方が好ましい。具体的には20重量部以上が好ましく、40重量部以上がより好ましい。また、例えば本発明の光反射材における、光反射面とは逆の面に、金属をラミネートする場合など、遮光性が求められない場合には、組成物の流動性および耐衝撃性の点から酸化チタンは比較的少ない方が好ましい。具体的には10〜40重量部程度が好ましく、10〜20重量部程度がより好ましい。
【0029】
難燃剤(c)
本発明における反射材料は、更に難燃剤(c)を含有していてもよい。難燃剤(c)の種類は、本発明の趣旨を逸脱しない限り特に定めるものではなく、例えば、ポリカーボネート樹脂を含む組成物に、難燃剤を付与するものとして一般的に用いられているものを広く採用することができる。この中でも、シリコーン系難燃剤(c−1)、リン酸エステル系難燃剤(c−2)、有機酸のアルカリ(土類)金属塩(c−3)、ハロゲン系難燃剤が好ましく、シリコーン系難燃剤(c−1)、リン酸エステル系難燃剤(c−2)、有機酸のアルカリ(土類)金属塩(c−3)がより好ましい。シリコーン系難燃剤(c−1)、リン酸エステル系難燃剤(c−2)および有機酸のアルカリ(土類)金属塩(c−3)は、安全性、廃棄・焼却時の環境への影響や成型時の金型腐食、省資源化におけるリサイクル適性などにも優れているためである。
なお、本明細書において「アルカリ(土類)金属塩」とは、「アルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩」を意味する。
難燃剤(c)の配合量は、その種類にもよるが、芳香族ポリカーボネート樹脂(a)100重量部に対し、好ましくは30重量部以下であり、より好ましくは0.001〜30重量部であり、さらに好ましくは0.001〜20重量部である。難燃剤の配合量を30重量部以下とすることにより、機械的物性や耐熱性などが低下してしまうのをより効果的に防ぐことが可能となる。
【0030】
シリコーン系難燃剤(c−1)
本発明に使用されるシリコーン系難燃剤(c−1)としては、ポリカーボネート樹脂に添加した場合、その難燃性を改良することができる種々のシリコーン、或いはシリコーン含有化合物が含まれる。
シリコーン系難燃剤(c−1)の配合量は、芳香族ポリカーボネート樹脂(a)100重量部に対し、好ましくは0.5〜10重量部であり、より好ましくは0.5〜7重量部であり、さらに好ましくは0.5〜5重量部である。10重量部以下とすることにより、機械的物性や耐熱性などが低下してしまうのをより効果的に防ぐことが可能となる。
【0031】
さらに、具体的には、シリカ粉末の表面にポリオルガノシロキサンを担持させた粉末状シリコーン(c−1−1)、主鎖が分岐構造を有し、かつケイ素に結合する芳香族基を有する分岐シリコーン化合物(c−1−2)、芳香族基含有環状ポリオルガノシロキサンおよび直鎖状ポリオルガノシロキサンを含有するシリコーン化合物(c−1−3)等が好ましく使用される。さらに、ハンドリング性に優れ、且つ芳香族ポリカーボネート樹脂への分散性・混合性がより向上していることから、シリカ粉末の表面にポリオルガノシロキサンを担持させた粉末状シリコーン(c−1−1)、または、主鎖が分岐構造を有し、かつケイ素に結合する芳香族基を有する分岐シリコーン化合物(c−1−2)がより好ましい。
【0032】
粉末状シリコーン(c−1−1)
(c−1−1)シリカ粉末の表面にポリオルガノシロキサンを担持させた粉末状シリコーンに用いられるシリカ粉末としては、フュームドシリカ、沈殿法または採掘形態から得られた微粉砕シリカ等が挙げられる。フュームドシリカおよび沈殿法により得られたシリカは、表面積が50〜400m2/gの範囲のものが好ましい。表面積がこの範囲にあると、その表面にポリオルガノシロキサンを担持(例えば、吸収、吸着または保持)させ易くなる。採掘シリカを用いる場合は、少なくとも等重量のヒュームまたは沈殿シリカを組み合わせて、混合物の表面積を50〜400m2/gの範囲とするのが好ましい。
【0033】
なお、シリカ粉末は、ポリオルガノシロキサン以外の表面処理剤によって表面を前処理されていてもよい。前処理剤としては、ヒドロキシ基またはアルコキシ基を末端基に有する低分子量のポリオルガノシロキサン、ヘキサオルガノジシロキサン、およびヘキサオルガノジシラザンなどが挙げられる。これらの中で特に好ましいものは、ヒドロキシル基を末端基とする平均重合度が2〜100のオリゴマーであって、常温で液状ないし粘稠な油状を呈するポリジメチルシロキサンである。
【0034】
シリカ粉末或いは表面処理されたシリカ粉末は更に、その表面をポリオルガノシロキサン(なお、前処理剤との相違を明確にするため、ポリオルガノシロキサン重合体と称することがある。)で処理される。ポリオルガノシロキサン重合体は、平均重合度が100〜10000のものが好ましく、100〜5000のものがより好ましい。さらに、ポリオルガノシロキサン重合体は、直鎖であっても分岐鎖を有してもよいが、直鎖のポリジオルガノシロキサン重合体がより好ましい。ポリオルガノシロキサン重合体が有する有機基(オルガノ基)は、炭素数が1〜20のアルキル基、ハロゲン化炭化水素基等の置換アルキル基、ビニルおよび5−ヘキセニル等のアルケニル基、シクロヘキシル等のシクロアルキル基、ならびにフェニル、トリル、およびベンジル等のアリール基、アラルキル基等が好ましい例として挙げられ、炭素原子数が1〜4の低級アルキル基、フェニル基、および、3,3,3−トリフルオロプロピル等のハロゲン置換アルキル基がより好ましく、メチル基がさらに好ましい。
【0035】
ポリオルガノシロキサン重合体は、分子鎖中に官能基を有していてもよい。官能基としてはメタクリル基またはエポキシ基等が好ましい。メタクリル基またはエポキシ基を有すると、燃焼時に芳香族ポリカーボネート樹脂(a)との架橋反応を起させることができるので、樹脂組成物の難燃性を一層向上させることができる。ポリオルガノシロキサン重合体分子鎖中の官能基の量は、0.01〜1モル%が好ましく、0.03〜0.5モル%がより好ましく、0.05〜0.3モル%がさらに好ましい。
【0036】
ポリオルガノシロキサン重合体をシリカ粉末に担持させる際には、さらに接着促進剤を用いてもよい。接着促進剤を用いることによって、シリカ粉末とポリオルガノシロキサン重合体との界面をより一層強固に接着させることができる。接着促進剤としては、例えば、アルコキシシラン系接着促進剤が挙げられる。
【0037】
アルコキシシラン系接着促進剤として、好ましくは、下記一般式(1)、
Y−Si(OMe)3
(一般式(1)中、Meはメチル基を表し、Yはエポキシアルキル基、アクリルオキシアルキル基、メタクリルオキシアルキル基、ビニル基、フェニル基またはN−β−(N−ビニルベンジルアミノ)エチル−γ−アミノアルキル・モノハイドロジェンヒドロ・クロリド基を表す。)
で表される化合物が挙げられる。具体的には、γ−アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドオキシプロピルプロピルトリメトキシシラン、N−β−(N−ビニルペンジルアミノ)エチル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン・モノハイドロジェンヒドロ・クロリド、フェニルトリメトキシシランおよびビニルトリメトキシシラン等が好ましい例として挙げられる。
【0038】
接着促進剤は、前記シリカ粉末100重量部に対し、好ましくは、0.5〜15重量部の範囲で添加される。これを添加する時期は、シリカ粉末とポリオルガノシロキサン重合体を混合する際と同時であるのが望ましい。
【0039】
本発明に使用されるシリコーン粉末(c−1−1)におけるポリオルガノシロキサン重合体の含有量について、該ポリオルガノシロキサン重合体として最も好ましいポリジメチルシロキサン重合体を使用する場合を例に説明すると、シリカ粉末とポリジメチルシロキサン重合体との配合割合は、シリカ粉末10〜90重量%、ポリジメチルシロキサン重合体90〜10重量%が好ましく、シリカ粉末20〜80重量%、ポリジメチルシロキサン重合体80〜20重量%がより好ましく、シリカ粉末20〜50重量%、ポリジメチルシロキサン重合体80〜50重量%がさらに好ましい。
シリコーン粉末を構成するシリカ粉末の量を10重量%以上とすることにより、ポリジメチルシロキサン重合体をより効果的に担持することができ、90重量%以下とすることにより、成形品に外観不良が生じるのをより効果的に防ぐことができる。
尚、上記好ましいシリカ粉末の量は、表面を無機処理されている場合は表面処理剤の量を含むものである。その他のポリオルガノシロキサン重合体を用いる場合も、本発明の光反射材における含有量は上述と同様である。
上記粉末状シリコーンは、公知のものを採用でき、例えば、東レ・ダウコーニング・シリコーン社、シリコーン粉末が好ましい例として挙げられる。
【0040】
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物中の粉末状シリコーン(c−1−1)の含有量は、芳香族ポリカーボネート樹脂(a)100重量部に対して、好ましくは、0.5〜10重量部、より好ましくは0.5〜7重量部、さらに好ましくは0.5〜5重量部である。
粉末状シリコーン(c−1−1)の量を0.5重量部以上とすることにより、光反射材の難燃性、機械的強度、耐熱性をより良好なものとし、10重量部以下とすることにより光反射材の耐衝撃性や流動性をより良好なものとすることができ、さらに、難燃性もより向上する。
【0041】
主鎖が分岐構造を有し、かつケイ素に結合する芳香族基を有する分岐シリコーン化合物(c−1−2)
本発明に使用される、主鎖が分岐構造を有し、かつケイ素原子に結合する芳香族基を有する分岐シリコーン化合物(c−1−2)は、構成単位として、下記一般式で表されるシロキサン単位(D単位)、シロキサン単位(T単位)およびシロキサン単位(Q単位)の少なくとも1つを含むものが好ましい。
D単位 R12SiO2/2
T単位 R3SiO3/2
Q単位 SiO4/2
上記式中、R1、R2およびR3はそれぞれ独立に、炭素数1〜10の置換または非置換の1価炭化水素基であり、少なくともその1部が芳香族基であるシリコーン化合物である。
【0042】
分岐シリコーン化合物(c−1−2)は、D単位を含有し、TおよびQの少なくとも一方を含有し、更に末端基としてRSiO1/2(但し、1分子中に含まれるRは、同一であっても異なっていてもよい、一価の基であり、好ましくは炭化水素基、アルコキシ基、水酸基等である。)を有するものがより好ましく、T単位/D単位系、T単位/D単位/Q単位系、D単位/Q単位系等がさらに好ましい。
D単位を含有することで、可とう性が改善され、難燃性をさらに改善することができる。また、T単位およびQ単位の少なくとも一方を含有することにより、主鎖が分岐構造を有するため好ましい。
【0043】
分岐シリコーン化合物中の各単位の割合は、D単位、T単位およびQ単位の合計に対しモル比で、D単位が好ましくは20〜50%、より好ましくは20〜40%、T単位が好ましくは0〜90%、より好ましくは60〜80%、Q単位が好ましくは0〜50%、より好ましくは0.01〜50%である。
1〜R3で示される1価の炭化水素基は、脂肪族基としては、低級アルキル基、特にメチル基が好ましく、芳香族基としては、フェニル基が好ましい。フェニル基量は40モル%以上であることが好ましい。
【0044】
分岐シリコーン化合物(c−1−2)は、重量平均分子量が、2,000〜50,000の範囲であることが好ましい。分岐シリコーン化合物(c−1−2)は、例えば、特開平11−140294号公報、特開平10−139964号公報および特開平11−217494号公報に記載の方法で製造できる。また、市販品も広く採用できる。
【0045】
本発明組成物中の分岐シリコーン化合物(c−1−2)の含有量は、芳香族ポリカーボネート樹脂(a)100重量部に対して0.5〜10重量部であることが好ましく、0.5〜5重量部であることがより好ましい。0.5重量部以上とすることにより、燃焼性をより効果的に保つことが可能となり、10重量部以下とすることにより、成形品外観および弾性率等の低下をより効果的に防ぎ、かつ、難燃性を十分に保つことが可能となる。
【0046】
芳香族基含有環状ポリオルガノシロキサンおよび直鎖状ポリオルガノシロキサンを含有するシリコーン化合物(c−1−3)
本発明に使用される、芳香族基含有環状ポリオルガノシロキサンおよび直鎖状ポリオルガノシロキサンを含有するシリコーン化合物(c−1−3)とは、下記一般式(3)の環状ポリオルガノシロキサン単位、および一般式(4)の直鎖状ポリオルガノシロキサン単位を含有し、一般式(3)および一般式(4)の繰り返し単位の合計に対し、一般式(3)の繰り返し単位が5〜95重量%の化合物である。
【0047】
一般式(3)
【化1】

一般式(4)
【化2】

(一般式(3)および一般式(4)中、n1は2以上の整数であり、n2は3以上の整数である。R4は、それぞれ、炭素数6〜20の芳香族基を含有する1価の炭化水素基であり、R5は、それぞれ、炭素数1〜20の1価の脂肪族炭化水素基である。R6およびR7は、それぞれ、水素原子またはトリオルガノシリル基を表す。)
【0048】
一般式(3)および一般式(4)において、R4で示される炭素数6〜20の芳香族基を含有する1価の炭化水素基としては、アラルキル基、アルキル基で置換された芳香族炭化水素基、および芳香族炭化水素基が好ましい例として挙げられ、芳香族炭化水素基がより好ましい。
アラルキル基としては、ベンジル基、フェネチルが好ましく、アルキル基としては、トリル基、キシリル基が好ましく、芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基が好ましい。特に好ましくはフェニル基である。
【0049】
また、一般式(3)および一般式(4)において、R5で示される炭素数1〜20の1価の脂肪族炭化水素基としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、ブチル基、ヘキシル基、デシル基等のアルキル基、ビニル基、アリル基等のアルケニル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基が好ましい例として挙げられ、より好ましくはメチル基である。
【0050】
一般式(3)で示される芳香族基含有環状ポリオルガノシロキサンのn2は特に上限はないが、好ましくは3〜6程度であり、一般式(4)で示される直鎖状ポリオルガノシロキサンは通常n1が10〜10000が好ましく、10〜5000がより好ましい。
【0051】
芳香族基含有環状ポリオルガノシロキサンおよび直鎖状ポリオルガノシロキサンを含有するシリコーン化合物(c−1−3)は、特開2002−53746号公報等公知の方法で製造することができる。例えば、芳香族含有ジクロロシランR45SiCl2や芳香族含有ジアルコキシシランR45Si(OR')2を、加水分解重合することにより、通常末端がシラノール基である直鎖状ポリオルガノシロキサン(4)と環状ポリオルガノシロキサン(3)の混合物が得られる。なお、R4およびR5は前記一般式(3)におけると同義であり、R'はアルキル基である。
【0052】
本発明組成物中のシリコーン化合物(c−1−3)の含有量は、芳香族ポリカーボネート樹脂(a)100重量部に対して0.5〜10重量部であることが好ましく、0.5〜5重量部であることがより好ましい。0.5重量部以上にすることにより、難燃性をより効果的に保ち、10重量部以下とすることにより、成形品外観および弾性率等の低下をより効果的に防ぎ、また、難燃性もより効果的に保つことができる。
【0053】
リン酸エステル系難燃剤(c−2)
本発明において使用されるリン酸エステル系難燃剤は、本発明の趣旨を逸脱しない限り特に定めるものではないが、モノリン酸エステルあるいは縮合リン酸エステル等が好ましく、縮合リン酸エステルがより好ましい。
具体的には、下記の一般式(5)で表されるリン系化合物が挙げられる。
【0054】
一般式(5)
【化3】

【0055】
(一般式(5)中、R8、R9、R10およびR11は、それぞれ、炭素数1〜6のアルキル基またはアルキル基で置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基を示し、p、q、rおよびsは、それぞれ0または1であり、mは1〜5の整数であり、Xはアリーレン基を示す。)
【0056】
上記一般式(5)で表されるリン系化合物は、mが1〜5の縮合リン酸エステルであり、mが異なる縮合リン酸エステルの混合物として使用する場合については、mの値はそれらの混合物の平均値とする。Xはアリーレン基を示し、例えばレゾルシノール、ハイドロキノン、ビスフェノールA等のジヒドロキシ化合物から誘導される基である。上記一般式(5)で表されるリン系化合物の具体例としては、XがビスフェノールAから誘導されたものである場合は、フェニル・ビスフェノール・ポリホスフェート、クレジル・ビスフェノール・ポリホスフェート、フェニル・クレジル・ビスフェノール・ポリホスフェート、キシリル・ビスフェノール・ポリホスフェート、フェニル-P-t-ブチルフェニル・ビスフェノール・ポリホスフェート、フェニル・イソプロピルフェニル・ビスフェノールポリホスフェート、クレジル・キシリル・ビスフェノール・ポリホスフェート、フェニル・イソプロピルフェニル・ジイソプロピルフェニル・ビスフェノールポリホスフェート等が好ましい例として挙げられ、フェニル・ビスフェノールポリホスフェートが好ましい例として挙げられる。
【0057】
リン酸エステル系難燃剤(c−2)の配合量は、芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対し、2〜20重量部が好ましく、5〜15重量部がより好ましい。リン系難燃剤の添加量を2重量部以上とすることにより、難燃性をより効果的に保つことができ、20重量部以下とすることにより、機械的物性が低下してしまうのをより効果的に防止できる。
【0058】
有機酸のアルカリ(土類)金属塩(c−3)
本発明に使用される有機酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩(c−3)としては、芳香族ポリカーボネート樹脂に添加した場合、その難燃性を改良することができる金属塩である。具体的には、有機スルホン酸金属塩が好ましく、スルホン酸アルカリ金属塩および/またはスルホン酸アルカリ土類金属塩等がより好ましい。
より具体的にはパーフルオロアルカンスルホン酸金属塩、パーフルオロアルキレンジスルホン酸金属塩、芳香族スルホン酸金属塩が好ましく、パーフルオロアルカンスルホン酸金属塩、パーフルオロアルキレンジスルホン酸金属塩がより好ましい。
【0059】
パーフルオロアルカンスルホン酸金属塩としては、パーフルオロアルカンスルホン酸のアルカリ金属塩、パーフルオロアルカンスルホン酸のアルカリ土類金属塩などが好ましい例として挙げられ、炭素数1〜8のパーフルオロアルカン基を有するスルホン酸アルカリ金属塩、炭素数1〜8のパーフルオロアルカン基を有するスルホン酸アルカリ土類金属塩がより好ましい。
【0060】
パーフルオロアルカンスルホン酸の具体例としては、パーフルオロメタンスルホン酸、パーフルオロエタンスルホン酸、パーフルオロプロパンスルホン酸、パーフルオロブタンスルホン酸、パーフルオロヘキサンスルホン酸、パーフルオロヘプタンスルホン酸、パーフルオロオクタンスルホン酸などが好ましい例として挙げられる。
【0061】
パーフルオロアルキレンジスルホン酸金属塩の具体例としては、下記一般式(6)および一般式(7)が挙げられる。
一般式(6)
【化4】

一般式(6)中、Mはアルカリ金属またはアルカリ土類金属を示す。aは、Mがアルカリ金属の場合は2を、Mがアルカリ土類金属の場合は1を示す。bは1〜12の整数であり、好ましくは1〜8である。bの数が12を超えると樹脂組成物との相溶性が悪化する場合があり、そのため成形品の外観が悪化するおそれがある。
【0062】
一般式(6)で示されるパーフルオロアルカンジスルホン酸金属塩としては、パーフルオロメタンジスルホン酸、パーフルオロエタンジスルホン酸、パーフルオロプロパンジスルホン酸、パーフルオロイソプロパンジスルホン酸、パーフルオロブタンジスルホン酸、パーフルオロペンタンジスルホン酸、パーフルオロヘキサンジスルホン酸、パーフルオロヘプタンジスルホン酸、パーフルオロオクタンジスルホン酸等の塩が好ましい例として挙げられ、パーフルオロプロパンジスルホン酸またはパーフルオロブタンジスルホン酸の塩が芳香族ポリカーボネート樹脂との相溶性および難燃性付与の点からより好ましい。
【0063】
一般式(7)
【化5】

【0064】
一般式(7)中、‘R12は炭素数4〜7個のパーフルオロシクロアルキル基で置換されていても良い、総炭素数2〜12の直鎖状または分岐状パーフルオロアルキレン基を示し、M’はアルカリ金属またはアルカリ土類金属を示す。cはM’の価数である。
【0065】
一般式(7)で示される難燃性化合物としては、パーフルオロエタンジスルホン酸イミド、パーフルオロプロパンジスルホン酸イミド、パーフルオロブタンジスルホン酸イミド、パーフルオロペンタンジスルホン酸イミド、パーフルオロヘキサンジスルホン酸イミド等の塩が好ましい例として挙げられ、パーフルオロプロパンジスルホン酸イミドまたはパーフルオロブタンジスルホン酸イミドの塩が芳香族ポリカーボネート樹脂との相溶性および難燃性付与の点からより好ましい。
【0066】
芳香族スルホン酸金属塩としては、芳香族スルホンスルホン酸アルカリ金属塩、芳香族スルホンスルホン酸アルカリ土類金属塩などが好ましい例として挙げられ、これらは重合体であってもよい。
【0067】
芳香族スルホンスルホン酸金属塩としては、ジフェニルスルホン−3−スルホン酸のナトリウム塩、ジフェニルスルホン−3−スルホン酸のカリウム塩、4・4’−ジブロモジフェニル−スルホン−3−スルホンのナトリウム塩、4・4’−ジブロモジフェニル−スルホン−3−スルホンのカリウム塩、4−クロロ−4’−ニトロジフェニルスルホン−3ースルホン酸のカルシウム塩、ジフェニルスルホン−3・3’−ジスルホン酸のジナトリウム塩、ジフェニルスルホン−3・3’−ジスルホン酸のジカリウム塩などが好ましい例として挙げられる。
【0068】
有機スルホン酸金属塩の金属としては、アルカリ金属およびアルカリ土類金属などが好ましい例として挙げられる。アルカリ金属およびアルカリ土類金属としては、ナトリウム、リチウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウムおよびバリウムなどが好ましい例として挙げられ、アルカリ金属塩としては、リチウム、ナトリウム、カリウムの塩が、また、アルカリ土類金属塩としてはマグネシウム、カルシウムの塩が、芳香族ポリカーボネート樹脂との相溶性および難燃性付与の点からより好ましい。有機スルホン酸金属塩は、2種以上の混合物であってもよい。
【0069】
有機スルホン酸金属塩の含有量は、芳香族ポリカーボネート樹脂(a)100重量部に対し、0.001〜5重量部が好ましく、0.001〜2重量部がより好ましく、0.01〜1重量部がさらに好ましい。有機スルホン酸金属塩の配合量を0.01重量部以上とすることにより、難燃性をより効果的に保つことが可能となり、2重量部以下とすることにより、熱安定性をより向上させることができる。
【0070】
ハロゲン系難燃剤としては、ハロゲン化エポキシ樹脂、ハロゲン化フェノキシ樹脂、ハロゲン化ポリカーボネート樹脂およびそれらのオリゴマー等が好ましく、ハロゲン化ポリカーボネートオリゴマーがより好ましい。
【0071】
さらに、本発明の光反射材には、これら難燃剤に加え、難燃化効率をより向上させる観点から、難燃助剤を用いても良い。
難燃助剤としては、例えば酸化アンチモン、シリカ等が挙げられる。特に、シリコーン系難燃剤(c−1)と併用するにはシリカが好ましく、ハロゲン系難燃剤と併用するには酸化アンチモンが好ましい。
難燃剤の含有量は、芳香族ポリカーボネート樹脂(a)100重量部に対し、好ましくは0.1〜3重量部程度である。
【0072】
ポリテトラフルオロエチレン(d)
本発明における芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、ポリテトラフルオロエチレン(d)を含有していてもよい。
ポリテトラフルオロエチレン(d)は、フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンが好ましい。フィブリル形成能とは、例えば、重合体中に容易に分散し、かつ重合体同士を結合して繊維状構造を作る性質を有するものをいう。フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンはASTM規格でタイプ3に分類される。具体的には、例えば、市販品を採用することができ、三井・デュポンフロロケミカル(株)製「テフロン(登録商標)(R)6J」あるいは、ダイキン化学工業(株)製「ポリフロン」等の粉末系のもの、三井デュポンフロロケミカル(株)製「テフロン(R)30J」、あるいは、ダイキン化学工業(株)製「フルオンD−1」等の水性分散液系のもの、三菱レイヨン(株)製「メタブレンA−3800」等のビニル系単量体を重合してなる多層構造系等が好ましい例として挙げられる。
なお、本発明のポリテトラフルオロエチレン(d)として、一般的には、主にコスト面から粉末系が好ましく用いられるが、より外観の良好な成形品を得るために、高い分散性を求める場合には、水系分散液系あるいは多層構造系のものが好ましい。
【0073】
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物中のポリテトラフルオロエチレン(d)の含有量は、芳香族ポリカーボネート樹脂(a)100重量部に対し、好ましくは0.01〜1重量部、より好ましくは0.02〜0.8重量部、さらに好ましくは0.05〜0.6重量部である。0.01重量部以上とすることにより難燃性をより効果的に保つことができ、1重量部以下とすることにより、成形品外観が低下してしまうのをより効果的に防止することができる。
【0074】
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物には、上記(a)〜(d)成分以外に、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で蛍光増白剤、衝撃改良剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の安定剤、顔料、染料、滑剤、その他の難燃剤、離型剤、摺動性改良剤等の添加剤、ガラス繊維、ガラスフレーク等の強化材あるいはチタン酸カリウム、ホウ酸アルミニウム等のウィスカー、芳香族ポリカーボネート樹脂以外の熱可塑性樹脂を配合することができる。
【0075】
蛍光増白剤は、成形品を明るく見せるため、成形品に加えられる顔料あるいは染料であり、成形品の黄色味を消し、明るさを増加させる添加剤である。本発明で採用する蛍光増白剤としては、クマリン系、ナフトトリアゾリルスチルベン系、ベンズオキサゾール系、ベンズイミダゾール系、およびジアミノスチルベン-ジスルホネート系等が好ましい例として挙げられ、クマリン系およびベンズイミダゾール系がより好ましく、クマリン系がさらに好ましい。
具体的には、市販品である、ハッコールケミカル(株)製「ハッコール PSR」、ヘキストAG製「HOSTALUX KCB」、住友化学(株)製「WHITEFLOURPSN CONC」等が挙げられる。
蛍光増白剤の配合量は、芳香族ポリカーボネート樹脂(a)100重量部に対し、0.005〜0.1重量部の範囲が好ましい。0.005重量部以上とすることにより、成形品の黄色味を消し、明るさを増加させるという機能が十分に発揮されないおそれがあり、また0.1重量部を超えると本樹脂組成物の熱安定性を低下させる場合がある。
【0076】
紫外線吸収剤は、本発明の趣旨を逸脱しない限り特に定めるものではないが、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、サリチル酸フェニル系、ヒンダードアミン系等が好ましい例として挙げられ、ベンゾトリアゾール系がより好ましい。ベンゾトリアゾール系は、組成物の熱安定性という点からより好ましい。
紫外線吸収剤を配合することにより耐候性をより向上させることができる。
【0077】
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、2,4−ジヒドロキシ−ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシ−ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ドデシロキシ−ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクタデシロキシ−ベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシ−ベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシ−ベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシ−ベンゾフェノン等が好ましい例として挙げられる。
【0078】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、2−(2’−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3',5'−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3,−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]等が好ましい例として挙げられる。
【0079】
サリチル酸フェニル系紫外線吸収剤としては、フェニルサルチレート、2−4−ジターシャリーブチルフェニル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート等が挙げられる。ヒンダードアミン系紫外線吸収剤としては、ビス(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)セバケート等が好ましい例として挙げられる。
【0080】
紫外線吸収剤は、また、5%減量温度が300℃以上であるものが好ましい。このような紫外線吸収剤は、射出成形時或いは押出成形時の不良現象、たとえばモールドデポジット、シルバーストリークス、ロール汚れ等を抑制し、成形品の使用時の耐光性を向上させることができるため好ましい。
したがって、本発明の紫外線吸収剤としては、5%減量温度が300℃以上であり、ベンゾトリアゾール系のものが特に好ましい。
【0081】
ここで、減量温度の評価方法は、熱天秤において、10℃/分の昇温速度で温度を変化させ、化合物(紫外線吸収剤)の重量が5%減少するときの温度をもって評価する。
このような熱特性を有する例として、例えばベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤では、例えば下記の構造を有する二量体が好ましい例として挙げられる。
【0082】
【化6】

【0083】
式中、R31およびR32は、炭素数2〜12のアルキル基を示す。
より具体的には、下記の構造式で示すものが、特に好ましい。
【0084】
【化7】

【0085】
上記以外に紫外線の保有するエネルギーを、分子内で振動エネルギーに変換し、その振動エネルギーを、熱エネルギー等として放出する機能を有する化合物、酸化防止剤あるいは着色剤等との併用で効果を発現する化合物、および/または、光エネルギー変換剤的に作用する光安定剤(クエンチャー)等も採用することができる。
【0086】
本発明組成物中の紫外線吸収剤の配合量は、芳香族ポリカーボネート樹脂(a)100重量部に対し、好ましくは0.01〜2重量部、より好ましくは0.05〜1.8重量部、さらに好ましくは0.1〜1.5重量部である。紫外線吸収剤を0.01重量部以上とすることにより、耐侯性をより効果的に保つことが可能であり、2重量部以下とすることにより、調色性をより効果的に保つことができ、また、ブリードアウトをより効果的に抑止でき好ましい。
本発明では、紫外線吸収剤は、1種または2種以上を用いることができる。
【0087】
芳香族ポリカーボネート樹脂以外の熱可塑性樹脂としては、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、HIPS樹脂あるいはABS樹脂等のスチレン系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂等の熱可塑性樹脂が好ましい例として挙げられる。芳香族ポリカーボネート樹脂以外の熱可塑性樹脂の配合量は、好ましくは、芳香族ポリカーボネート樹脂と芳香族ポリカーボネート樹脂以外の熱可塑性樹脂との合計量の40重量%以下が好ましく、30重量%以下がより好ましい。
【0088】
本発明における芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法は、特に制限されるものではなく、例えば、芳香族ポリカーボネート樹脂(a)、酸化チタン(b)、必要に応じて難燃剤(c)やポリテトラフルオロエチレン(d)など、さらに必要により配合される蛍光増白剤等の添加剤などを一括溶融混練する方法;芳香族ポリカーボネート樹脂(a)と酸化チタン(b)、(含有させる場合には)難燃剤(c)をあらかじめ混練後、(含有させる場合には)ポリテトラフルオロエチレン(d)、および必要により含有させる蛍光増白剤等を配合し溶融混練する方法;芳香族ポリカーボネート樹脂(a)と(含有させる場合には)難燃剤(c)を予め混合後、酸化チタン(b)、(含有させる場合には)ポリテトラフルオロエチレン(d)、および必要により含有させる蛍光増白剤等を配合し、溶融混練する方法;などが挙げられる。
【0089】
次に、上記ポリカーボネート樹脂組成物を用いた本発明の光反射シートの製造方法、該光反射シートの熱成形方法、および該光反射シートと他材料との積層体の製造方法について説明する。
本発明の光反射シートは、上記芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を押出成形することにより製造される。具体的には、上述の方法等で調製した芳香族ポリカーボネート樹脂組成物をペレット化した後、これを押出成形する方法、または溶融混練して得られた芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を直接(ペレット化せず)、押出成形する方法などが、好ましい例として挙げられる。
【0090】
ペレット化された芳香族ポリカーボネート樹脂を使用する場合には、該ペレットを約120〜130℃で、2〜10時間程度乾燥した後、押出成形に供するとよい。乾燥条件は、好ましくは約120℃で、2〜10時間である。
この芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の乾燥は一般の加熱空気、乾燥空気、真空下等の雰囲気下で行うことが出来る。この乾燥工程により、ペレットに含まれる水分や、組成物調製時の溶融混練工程で生ずる揮発性の反応複生成物の多くを除去することが出来る。
ペレット化された、または溶融状態の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、通常、脱揮装置付き押出機で特定の形状に押出成形される。この脱揮装置は、溶融状態の材料について大気圧力以下に減圧出来るものであり、この減圧脱揮により材料に残存する水分や、組成物の溶融混練の際に生ずる揮発性の反応複生成物を除去するとともに、本押出成形により生成する副次的な揮発性の反応複生成物をも除去することができる。
ここで、成形材料(芳香族ポリカーボネート樹脂組成物)の乾燥および押出成形時の脱揮が不充分であると、シートが発泡したり、あるいはシート表面の肌荒れが生じ、反射率が低下するあるいは反射むらが生じやすい。
続いて、ダイス温度約240〜270℃(好ましくは250〜260℃)、ロール温度125〜175℃程度でシートを成形する。なお、ダイス温度については、ロール手前での樹脂ダレを発生させない温度に設定することが必要で、使用される芳香族ポリカーボネート樹脂(a)の分子量や酸化チタン(b)の量に応じて適宜調整すればよい。
さらに、シート成形時の冷却ロール温度は通常125〜175℃程度であり、好ましくは145〜175℃程度である。ここで、すべてのロール温度が125℃未満であると、溶融状態の組成物の剛性が高いため、ニップロール間でのサイジングが難しく、幅および長方向での表面状態の均質性が保てず、本シート単体およびその熱成形品の面における反射むらが生じやすい。また、すべてのロール温度が175℃を超えると、ロールへの粘着、密着により表面の密着、剥がしむらやシートのそりが生じやすくなり、本発明の目的とする均一な反射特性を有する光反射材がより得られない可能性がある。
本発明における前記ポリカーボネート樹脂組成物を用いた光反射シートは熱成形性を有し、特定の熱成形条件により、例えば光源の本数や形状に合わせた反射面を有する光反射材を製造することが出来る。
ここで、熱成形時のシート加熱温度(シート表面温度)は好ましくは170〜200℃程度、より好ましくは、熱プレスの場合は170〜180℃程度であり、真空成形の場合は170〜200℃程度である。
尚、熱成形前のシート表面に意匠性がある場合は、その意匠性を損なわない為に、熱成形時のシート表面温度は、シート化時のシート表面温度より低い事が望ましい。その場合は、熱成形時のシート表面温度を125〜150℃とすることが好ましい。
本発明の熱成形法は特に限定されないが、プレス成形、真空成形、真空圧空成形、熱板成形、波板成形等を用いることが出来る。また一般的に真空成形と総称される成形法においてもドレープホーミング法、マッチドダイ法、プレッシャーバブルプラグアシスト真空成形法、プラグアシスト法、真空スナップバック法、エアースリップホーミング、トラッップドシート接触加熱―プレッシャーホーミング法、単純圧空成形法等が挙げられる。
なお、本熱成形時に用いるシートは予備乾燥をして用いることが好ましく、吸湿による発泡現象を防ぐことが出来る。この際の乾燥条件は120〜130℃程度で、約2〜10時間の乾燥が好ましい。
【0091】
光反射シートの熱成形によって得られる成形品に、特に制限はないが、例えば前述したように、光源の本数や形状に合わせた反射面を有する光反射板や、光反射枠(通常、液晶表示装置の光もれを防ぐものため、外枠部分に設置するもの)など、光反射機能が求められる様々な形状の成形品が挙げられる。
本発明の光反射材は、上述した光反射シートに、その反射特性を大きく阻害しない範囲で、他の材料を積層してなる積層体であってもよい。例えば、光反射面に帯電防止剤、耐光剤を含む透明ポリカーボネート層や、アクリル樹脂層を積層できる。この際、樹脂層の厚みは500μm以下が好ましく、また100μm厚み相当での全光線透過率が85%以上であることが好ましい。また、光反射面の裏面に光遮蔽材や、構造補強のための層を設けることが出来る。ここで光遮蔽材とは薄肉のアルミ等の金属層、アルミ等を含む塗料を用いてなる塗布層などが挙げられ、構造補強層としてはポリカーボネート系樹脂層などが挙げられる。
これら他の層は塗布、蒸着、押出ラミネーション、ドライラミネーション、共押出等の方法により、上述した光反射シートに積層することが出来る。さらに熱拡散のために、アルミ箔等の金属層を設けても良い。
【0092】
本発明の光反射材は、可視光波長領域における光反射率と光線遮光性に優れている。具体的には、例えば波長500nmにおいて光反射率が95%以上と高い値を示す。従って、本発明の光反射材は、光反射板や光反射シート、光反射枠として採用することができる。
本発明の反射板用成形品は、光反射率に優れており、例えば、液晶表示装置のバックライト用光線反射板や光反射枠、電気・電子機器、広告灯などの照明用装置、自動車用メーターパネルなどの自動車用機器など反射板として有用である。
【実施例】
【0093】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
【0094】
本発明では、下記原料を採用した。
(1)(a)芳香族ポリカーボネート樹脂(PC)
ポリ−4,4−イソプロピリデンジフェニルカーボネート(三菱エンジニアリングプラスチックス(株)、ユーピロンS−3000、粘度平均分子量21,000)を採用した。
(2)(b)酸化チタン
塩素法で製造された平均粒子径0.21μmの酸化チタンに対し、表1に記す量の処理剤にて、表面処理を行った。
まず無機処理は、アルミナ/ジルコニア処理(AL/Zr)またはアルミナ/シリカ処理(AL/Si)を、有機処理は、ハイドロジェンシロキサン(A)を用いて行った。また、無機処理剤および有機処理剤の処理量は、表1に示した。有機処理は、ハイドロジェンポリシロキサン(A)を配合し、スーパーミキサーにて、攪拌しながら温度を120℃まで上昇させ、1時間保持した後、温度を下げて取り出した。
【0095】
【表1】

【0096】
(3)(c)難燃剤
(c−1−1)シリコーン1
60000cStの粘度を有するポリジメチルシロキサンをシリカに担持した粉末(東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製、トレフィルF202、ポリジメチルシロキサン含有量 60重量%)を採用した。
(c−1−2)シリコーン2
主鎖が分岐構造を有し、ケイ素原子に結合するフェニル基含有シリコーン化合物(信越化学(株)製、X−40−9805)を用いた。
(c−2)リン酸エステル
レゾルシンジキシリルホスフェート(旭電化工業(株)製、FP500)を用いた。
(c−3)アルカリ金属塩
パーフルオロブタンスルホン酸カリウム(大日本インキ化学(株)製、メガファックF114)を採用した。
【0097】
(4)(d)ポリテトラフルオロエチレン
ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)(ダイキン(株)製、ポリフロンF−201L)を採用した。
【0098】
(5)安定剤
(I)ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−フォスファイト(旭電化(株)製、PEP−36)および(II)ペンタエリスリチル−テトラキス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオネート))(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製、Irgnox1010)の混合物を採用した。添加量は、芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対して(I)0.07重量部、(II)0.18重量部とした。
【0099】
(6)離型剤
ステアリン酸(日本油脂(株)製、NAA180)およびペンタエリスリトールジステアレート(日本油脂(株)製、H−476D)を採用した。添加量は、芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対して(I)0.07重量部、(II)0.07重量部を採用した。
(7)紫外線吸収剤
下記構造式で表される紫外線吸収剤を使用した。
【化8】

(8)蛍光増白剤
3−フェニル−7−(2H−ナフト(1,2−d)−トリアゾール−2−イル)クマリン(ハッコールケミカル(株)製、ハッコール PSR)を採用した。
【0100】
樹脂組成物は下記の方法で試験、評価した。
(1)外観:厚み1mmのシートを押出成形し、目視にて成形品外観を観察し、「○」は良好、「△」はやや良好、「×」は外観不良(シルバーストリークスが発生)の基準で評価した。なお、試験片は300℃のシリンダー温度にて通常成形用(成形サイクル45秒)及び滞留形成(形成サイクル300秒)の2種を形成して、それぞれ、表面外観を目視にて評価した。
(2)光反射率:成形品厚み1mmの角板を試験片として、波長500nmでの光反射率を測定した。具体的には、島津製作所製可視紫外分光光度(UV−3100PC)にて測定した。
(3)光線透過率:1mm厚みの押出成形シートの、波長500nmにおける光線透過率を、前記(2)光反射率と同じ機器にて測定した。
(4)燃焼性:1.6mm厚みのUL−94規格の試験片を成形し、垂直燃焼試験を行い、評価した。
【0101】
実施例1
表2に示すとおり、芳香族ポリカーボネート樹脂(PC)100重量部に対し、酸化チタン1を40重量部、安定剤0.25重量部、離型剤0.14重量部を配合し、タンブラーにて20分混合後、30mm二軸押出機にてシリンダー温度270℃で溶融、混練、押出ししてペレット化した。得られたペレットを用い、シリンダー温度260℃にて、押出成形を行い1mmのシートを作成した。尚、2mm角板および1.6mm厚燃焼試験片については、射出成形機にて300℃のシリンダー温度、80℃の金型温度にて成形し、評価を実施した。評価結果を表3に示した。
【0102】
実施例2〜8および比較例1
表2に示す処方で原料を配合する以外は実施例1と同様にして芳香族ポリカーボネート樹脂組成物ペレットを製造し、実施例1と同様にして試験片を成形し、評価した。結果を表3に示した。
【0103】
【表2】

【0104】
【表3】

【0105】
表3の実施例1〜3と比較例1とから明らかなように、酸化チタンの無機処理量を調整することで、成形品外観も良好で光反射率も500nmで96%と高いものが得られた。これらの効果は各種難燃剤を添加しても(実施例4〜7)、低下が認められず、すなわち、その安定性は変わらず良好な反射特性を示す事がわかった。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明の光反射材、特に、光反射板や光反射シートは、光反射率に優れており、例えば、液晶表示装置のバックライト用光線反射板、光反射枠または光反射シート、ならびに、電気・電子機器、広告灯などの照明用装置、自動車用メーターパネルなどの自動車用機器などの光線反射板または光反射シートとして有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族ポリカーボネート樹脂(a)100重量部に対し、酸化チタン(b)10重量部以上を含む芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を押出成形して成り、前記酸化チタン(b)が、該酸化チタン(b)に対して0〜2重量%の無機処理剤で表面処理されていることを特徴とする、光反射材。
【請求項2】
前記光反射材が、光反射シートである請求項1に記載の光反射材。
【請求項3】
前記酸化チタン(b)が有機処理剤にて表面処理されている、請求項1または2に記載の光反射材。
【請求項4】
前記芳香族ポリカーボネート樹脂組成物が、前記芳香族ポリカーボネート樹脂(a)100重量部に対し、さらに難燃剤(c)30重量部以下を含有してなる、請求項1〜3のいずれかに記載の光反射材。
【請求項5】
前記難燃剤(c)が、シリコーン系難燃剤(c−1)、リン酸エステル系難燃剤(c−2)および有機酸のアルカリ(土類)金属塩(c−3)から選択された少なくとも1種である、請求項4に記載の光反射材。
【請求項6】
前記シリコーン系難燃剤(c−1)が、シリカ粉末の表面にポリオルガノシロキサンを担持させてなる粉末シリコーン(c−1−1)である、請求項5に記載の光反射材。
【請求項7】
前記シリコーン系難燃剤(c−1)が、主鎖が分岐構造を有し、かつ、ケイ素原子に結合する芳香族基を有する分岐シリコーン樹脂(c−1−2)である、請求項5に記載の光反射材。
【請求項8】
前記シリコーン系難燃剤(c−1)の含有量が、芳香族ポリカーボネート樹脂(a)100重量部に対し0.5〜10重量部である、請求項5〜7のいずれかに記載の光反射材。
【請求項9】
前記リン酸エステル系難燃剤(c−2)の含有量が、芳香族ポリカーボネート樹脂(a)100重量部に対し2〜20重量部である、請求項5〜8のいずれかに記載の光反射材。
【請求項10】
前記有機酸のアルカリ(土類)金属塩(c−3)が、有機スルホン酸金属塩である、請求項5〜9のいずれかに記載の光反射材。
【請求項11】
前記芳香族ポリカーボネート樹脂組成物が、前記芳香族ポリカーボネート樹脂(a)100重量部に対し、さらに、ポリテトラフルオロエチレン(d)を、0.01〜1重量部含有する、請求項4〜10のいずれかに記載の光反射材。
【請求項12】
前記ポリテトラフルオロエチレン(d)が、フィブリル形成能を有するものである、請求項11に記載の光反射材。
【請求項13】
請求項2〜12のいずれかに記載の光反射シートを、熱成形して得られる成形品。
【請求項14】
前記成形品が光反射板または光反射枠である、請求項13に記載の成形品。
【請求項15】
芳香族ポリカーボネート樹脂(a)100重量部に対し、酸化チタン(b)を10重量部以上含み、かつ、該酸化チタン(b)が、該酸化チタンに対して0〜2重量%の無機処理剤で表面処理されている、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を、押出成形する工程を含む請求項1〜12のいずれかに記載の光反射材の製造方法。

【公開番号】特開2006−28267(P2006−28267A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−206405(P2004−206405)
【出願日】平成16年7月13日(2004.7.13)
【出願人】(594137579)三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社 (609)
【Fターム(参考)】