説明

光増幅装置、OADM装置、光中継装置、およびOADM通信システム

【課題】複数の光信号のいずれかが欠落しても、残りの光信号の光強度を当該欠落前と等しく維持できることに加え、構造が簡素な光増幅装置を提供する。
【解決手段】波長多重された2つ以上の光信号を増幅する光増幅器11と、光増幅器11に励起光を供給する励起光源12とを有している。励起光源12は、励起光が所定の光強度になるように自律的に制御する。光信号の波長数の減少に応じて励起光源12による励起光の所定の光強度を低下するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、OADM通信システムにおけるOADM装置や光中継装置に備えられ、当該装置から出力すべき光信号を増幅する光増幅装置に関する。
【背景技術】
【0002】
送信端局から受信端局に波長多重された光信号を海底ケーブル等の光ファイバ伝送路を経て伝送するOADM(Optical Add-Drop Multiplexer)通信システムにおいて、端局間、即ち、光ファイバ伝送路上には、OADM装置や、光中継装置が設けられている。OADM装置は、波長多重された光信号から特定波長の光信号を分離、混合する装置である。光中継装置は、分離された光信号や混合されるべき光信号をその光強度を補いつつ伝送する装置である。
【0003】
OADM装置や光中継装置は、当該装置から出力すべき光信号を増幅する光増幅装置を備えている。光増幅装置は、波長多重された光信号を増幅する光増幅器と、光増幅器に励起光を供給する励起光源とを有している。
【0004】
励起光源は、励起光を出射するレーザーダイオード等の発光素子と、発光素子の近傍に備えられ、発光素子が出射する励起光の光強度を検出するフォトダイオード等の受光素子と、受光素子の検出信号に基づいて励起光が所定の光強度になるように調整する光源制御部とを有している。即ち、励起光源は、励起光の光強度が一定になるように自律的に制御している。
【0005】
図1(a)を参照すると、OADM通信システムの一例は、複数の光信号成分が波長多重されて成る光信号を送信する送信端局A、Dと、光信号を受信する受信端局B、Cと、端局Aと端局Bとの間に設けられ、波長多重された光信号から特定波長の光信号成分を分離、混合するOADM装置Xとを有している。
【0006】
端局AとOADM装置Xとの間には、光ファイバ伝送路Faが敷設されている。OADM装置Xと端局Bとの間には、光ファイバ伝送路Fbが敷設されている。OADM装置Xと端局Cとの間には、光ファイバ伝送路Fcが敷設されている。端局DとOADM装置Xとの間には、光ファイバ伝送路Fdが敷設されている。尚、本例において、端局Cと端局Dとは、特定波長帯の光信号(光信号成分)に対して所定の処理を行う一台の処理装置内に一体に収容されている。これに対応して、光ファイバ伝送路Fcと光ファイバ伝送路Fdとは、互いに沿って敷設されている。
【0007】
このOADM通信システムはさらに、光ファイバ伝送路Fa上に設けられ、OADM装置Xによって混合されるべき光信号をその光強度を補いつつ伝送する光中継装置Ra1、Ra2と、光ファイバ伝送路Fb上に設けられ、OADM装置Xによって分離された光信号をその光強度を補いつつ伝送する光中継装置Rb1、Rb1と、光ファイバ伝送路Fc上に設けられ、OADM装置Xによって分離された光信号をその光強度を補いつつ伝送する光中継装置Rc1、Rc2、Rc3と、光ファイバ伝送路Fd上に設けられ、OADM装置Xによって混合されるべき光信号をその光強度を補いつつ伝送する光中継装置Rd1、Rd2、Rd3とを有している。
【0008】
OADM装置Xならびに複数の光中継装置はそれぞれ、前述したような光増幅装置を備えている。
【0009】
図1(a)における波長−光強度(WL−P)のグラフに示されるように、端局Aは、互いに異なる波長帯に亘り、かつ、互いに同じ光強度の光信号α、βが混合されて成る光信号を送信する。OADM装置Xは、端局Aから光中継装置Ra1、Ra2を経て伝送された光信号のうち、光信号αを分離すると共に送信する。端局Cは、OADM装置Xから光中継装置Rc1、Rc2、Rc3を経て伝送された光信号αを受信する。光信号αは、端局Cと端局Dとを収容した前記処理装置によって処理され、光信号α’に変更される。光信号αと光信号α’とは、互いに同じ波長帯かつ同じ光強度である。端局Dは、光信号α’を送信する。OADM装置Xはさらに、端局Dから光中継装置Rd1、Rd2、Rd3を経て伝送された光信号α’を、端局Aから受信した光信号βと混合すると共に送信する。端局Bは、OADM装置Xから光中継装置Rb1、Rb1を経て伝送された光信号α’、βが混合されて成る光信号を受信する。
【0010】
ところで、図1(a)に示されたOADM通信システムにおいて、仮に、光ファイバ伝送路FcおよびFdの少なくとも一方にケーブル障害が発生し、図1(b)に示されるようにOADM装置Xと端局C、Dとの通信が不通となった場合、端局Bには、光信号α’が届かず、光信号βのみが届くことになる。即ち、OADM装置Xから端局Bに送信される光信号は、その波長数が信号α’の波長数(多重数)だけ減少する。この場合、OADM装置Xと端局Bとの間の光ファイバ伝送路Fb上に備えられた光中継装置Rb1、Rb1は、それぞれの光増幅装置が励起光の光強度が一定となるように自律的に制御しながら光信号を中継しているため、端局Bは、図1(b)に示されるように光信号α’の欠落分だけ上昇した光強度の光信号βを受信することになる。そして、光信号βは非線形劣化を起こし、システム特性も劣化する。
【0011】
これに対し、複数の光信号のいずれかが欠落しても、残りの光信号の光強度を当該欠落前と等しく維持しようとする技術が提案されている。このような技術による光増幅装置は、波長多重された光信号を増幅する光増幅器と、光増幅器に励起光を供給する励起光源と、光増幅器によって増幅された光信号の一部を分岐する光分岐器と、光分岐器によって分岐された光信号のうちの特定波長の光信号成分のみを抽出する光波長フィルタと、光増幅器から出力された後に光波長フィルタによって抽出された特定波長の光信号成分の光強度を検出し、この光強度が一定となるように励起光源による励起光の光強度を調整する光強度制御部とを有している。
【0012】
この種の光増幅装置は、例えば、特許文献1、2に開示されている。特許文献1には、光増幅器と、励起光源と、光分岐器と、光波長フィルタと、光強度制御部としての自動出力制御部とを有する光増幅装置が開示されている。自動出力制御部は、光増幅器によって増幅された後に光波長フィルタによって反射された特定の光信号波長成分の電力が一定になるように、励起光源から出力される励起光を制御する。また、特許文献2には、光増幅器と、励起光源と、光分岐器と、光波長フィルタと、光強度制御部としての単一波長信号強度制御手段(出力光強度制御手段)とを有する光増幅装置が開示されている。単一波長信号強度制御手段は、光増幅器から出力された波長多重光信号の1波長あたりの光強度が一定となるように、励起光源から光増幅器に供給される励起光の光強度を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2001−016170号公報
【特許文献2】特開2002−134819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかし、特許文献1、2に開示された例をも含め、光増幅器から出力された特定波長の光信号成分の光強度を検出し、この光強度が一定となるように励起光源による励起光の光強度を調整する光強度制御部を有する光増幅装置は、フィードバック制御を行っているため、構造が複雑である。
【0015】
それ故、本発明の課題は、複数の光信号のいずれかが欠落しても、残りの光信号の光強度を当該欠落前と等しく維持できることに加え、構造が簡素な光増幅装置を提供することである。
【0016】
本発明の他の課題は、そのような光増幅装置を有するOADM装置または光中継装置を提供することである。
【0017】
本発明のさらに他の課題は、そのようなOADM装置または光中継装置を有するOADM通信システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明によれば、波長多重された2つ以上の光信号を増幅する光増幅器と、前記光増幅器に励起光を供給する励起光源とを有し、前記励起光源は、励起光が所定の光強度になるように自律的に制御する光増幅装置において、光信号の波長数の減少に応じて前記励起光源による励起光の前記所定の光強度を低下するように構成されたことを特徴とする光増幅装置が得られる。
【0019】
前記励起光源における所定の光強度を切り替える光源強度切替回路を有し、前記光源強度切替回路は、前記光増幅部が出力する光信号の一部を分岐する光分岐器と、前記光分岐器によって分岐された光信号から特定波長の光信号成分を抽出する光波長フィルタと、前記波長光フィルタによって抽出された特定波長の光信号成分の光強度を検出する受光素子と、前記受光素子によって検出された特定波長の光信号成分の光強度がゼロもしくは増加したときに波長数が減少したと判断し、当該減少した波長数に応じて前記励起光源における所定の光強度を低下させる光源強度切替部とを有していてもよい。
【0020】
前記光波長フィルタは、前記光分岐器によって分岐された光信号から複数の特定波長の光信号成分を順次抽出する可変光波長フィルタであり、前記光源強度切替部は、前記受光素子によって検出された複数の特定波長の光信号成分のいずれかの光強度がゼロもしくは増加したときに波長数が減少したと判断し、当該減少した波長数に応じて前記励起光源における所定の光強度を低下させるものであってもよい。
【0021】
前記光波長フィルタは、各光信号につき、少なくとも1つの光信号成分を抽出するものであってもよい。
【0022】
特定波長の光強度の増加量、減少した波長数、および励起光の光強度の低下させるべき調整量の対応テーブルを書き換え可能に記憶したメモリをさらに有し、前記光源強度切替部は、前記メモリを参照して、減少した波長数に応じて前記励起光源における所定の光強度を低下させるものであってもよい。
【0023】
本発明によればまた、波長多重された光信号から特定波長の光信号を分離、混合するOADM装置であって、前記光増幅装置を有することを特徴とするOADM装置が得られる。
【0024】
本発明によればさらに、分離された光信号や混合されるべき光信号をその光強度を補いつつ伝送する光中継装置であって、前記光増幅装置を有することを特徴とする光中継装置が得られる。
【0025】
また、本発明によれば、光ファイバ伝送路と、前記光ファイバ伝送路を介して波長多重された光信号を送信する光送信端局と、前記光ファイバ伝送路を介して前記光送信端局から光信号を受信する光受信端局と、前記光ファイバ伝送路上に設けられた前記OADM装置とを有することを特徴とするOADM通信システムが得られる。
【0026】
さらに、本発明によれば、前記光ファイバ伝送路上に設けられた前記光中継装置をさらに有することを特徴とするOADM通信システムが得られる。
【発明の効果】
【0027】
本発明による光増幅装置は、複数の光信号のいずれかが欠落しても、残りの光信号の光強度を当該欠落前と等しく維持できることに加え、構造が簡素である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】(a)および(b)は、本発明の関連技術によるOADM通信システムの構成および動作を説明するための図である。
【図2】(a)および(b)は、本発明によるOADM通信システムの構成および動作を説明するための図である。
【図3】本発明の実施例1による光中継装置の構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の実施例2による光中継装置の構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の実施例3による光中継装置の構成を示すブロック図である。
【図6】本発明による光中継装置における光源強度切替部が参照する特定波長の光強度の増加量ΔPout、減少した波長数Δλ、および励起光の光強度の低下させるべき調整量ΔPpの対応テーブルの一例を示す表図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明による光増幅装置は、波長多重された2つ以上の光信号を増幅する光増幅器と、光増幅器に励起光を供給する励起光源とを有している。励起光源は、励起光が所定の光強度になるように自律的に制御する。
【0030】
特に、本光増幅装置は、光信号の波長数の減少に応じて励起光源による励起光の所定の光強度を低下するように構成されている。
【0031】
上記構成により、本発明による光増幅装置は、複数の光信号のいずれかが欠落しても、光信号の欠落に因る波長数の減少に応じて励起光の光強度を所定の光強度に低下させるため、残りの光信号の光強度を光信号の欠落前と等しく維持できる。これに加え、単に、特定波長の光強度の変化を検出することによって光信号の波長数の減少を検出するようにしているため、フィードバック制御を行っていた関連技術に比べ、構造が簡素である。
【0032】
以下、図面を参照して、本発明による光増幅装置のより具体的な実施例を詳細に説明する。
【実施例1】
【0033】
図2(a)および(b)は、本発明の実施例による光増幅装置が適用されたOADM通信システムを示している。尚、図2(a)および(b)において、本発明の関連技術と同一または同様部には、同一または同様の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0034】
図2(a)を参照すると、本OADM通信システムは、図1(a)に示された関連技術と同様に、送信端局Aから受信端局Bに波長多重された光信号を海底ケーブル等の光ファイバ伝送路を経て伝送する。
【0035】
本OADM通信システムは、それぞれ異なる波長の複数の光信号成分が波長多重されて成る光信号を送信する送信端局A、Dと、光信号を受信する受信端局B、Cと、端局Aと端局Bとの間に設けられ、波長多重された光信号から特定波長の光信号成分を分離、混合するOADM装置Xとを有している。
【0036】
端局AとOADM装置Xとの間には、光ファイバ伝送路Faが敷設されている。OADM装置Xと端局Bとの間には、光ファイバ伝送路Fbが敷設されている。OADM装置Xと端局Cとの間には、光ファイバ伝送路Fcが敷設されている。端局DとOADM装置Xとの間には、光ファイバ伝送路Fdが敷設されている。端局Cと端局Dとは、特定波長帯の光信号(光信号成分)に対して所定の処理を行う一台の処理装置内に一体に収容されている。これに対応して、光ファイバ伝送路Fcと光ファイバ伝送路Fdとは、互いに沿って敷設されている。
【0037】
本OADM通信システムはさらに、光ファイバ伝送路Fa上に設けられ、OADM装置Xによって混合されるべき光信号をその光強度を補いつつ伝送する光中継装置Ra1、Ra2と、光ファイバ伝送路Fb上に設けられ、OADM装置Xによって分離された光信号をその光強度を補いつつ伝送する光中継装置Rb1、Rb1と、光ファイバ伝送路Fc上に設けられ、OADM装置Xによって分離された光信号をその光強度を補いつつ伝送する光中継装置Rc1、Rc2、Rc3と、光ファイバ伝送路Fd上に設けられ、OADM装置Xによって混合されるべき光信号をその光強度を補いつつ伝送する光中継装置Rd1、Rd2、Rd3とを有している。OADM装置Xならびに各光中継装置はそれぞれ、本発明による光増幅装置を備えており、この光増幅装置については後述する。
【0038】
図3は、図2(a)に示された光中継装置のうちの光中継装置Rb1またはRb1に備えられた光増幅装置10の構成を示している。尚、図2(a)に示されたOADM装置Xならびに光中継装置Rb1またはRb1以外の光中継装置に備えられる光増幅装置も光増幅装置10と同様の構成であるため、説明は省略する。
【0039】
図3を参照すると、本発明の実施例1による光増幅装置10は、波長多重された光信号α’、βを増幅する光増幅器11と、光増幅器11に励起光を供給する励起光源12とを有している。
【0040】
光増幅器11は、図示はしないが、希土類添加ファイバと、アイソレータと、利得等化モジュールとを備えている。
【0041】
励起光源12は、発光素子(LD)121と、受光素子(PD)122と、光源制御部123と、光結合器124とを有している。発光素子121は、レーザーダイオード等によって構成され、励起光を出射する。受光素子122は、発光素子121の近傍に備えられたフォトダイオード等によって構成され、発光素子121が出射する励起光の光強度を検出する。光源制御部123は、受光素子122の検出信号に基づいて励起光が所定の光強度になるように調整する。光結合器124は、光増幅器11の入力側に励起光を供給する。即ち、励起光源12は、励起光の光強度が一定になるように自律的に制御している。
【0042】
特に、本実施例による光増幅装置10は、光信号の波長数の減少に応じて励起光源による励起光の所定の光強度を低下するように構成されている。具体的には、光増幅装置10は、励起光源12における所定の光強度を切り替える光源強度切替回路13を有している。
【0043】
光源強度切替回路13は、光分岐器14と、光波長フィルタ15と、受光素子(PD)16と、光源強度切替部17とを有している。光分岐器14は、光増幅器11が出力する光信号の一部を分岐する。光波長フィルタ15は、光分岐器14によって分岐された光信号から特定波長の光信号成分を抽出する。受光素子16は、波長光フィルタ15によって抽出された特定波長の光信号成分の光強度を検出する。光源強度切替部17は、受光素子16によって検出された特定波長の光信号成分の光強度がゼロもしくは増加したときに波長数が減少したと判断し、その減少した波長数に応じて励起光源における所定の光強度を低下させる。
【0044】
尚、受光素子16によって検出される特定波長の光信号成分の光強度の増加量と、そのときの波長数の減少数とは、一義的に対応しており、その具体的な対応関係も予め分かっている。また、波長数の減少数(特定波長の光信号成分の光強度の増加量)と、これに応じて調整すべき(低下させるべき)励起光の光強度の調整量との具体的な対応関係も予め決まっている。よって、光源強度切替部17には、これらパラメータ三者の対応関係を予め記憶させておく。即ち、光源強度切替部17は、図6に示されるような特定波長の光強度の増加量ΔPout、減少した波長数Δλ、および励起光の光強度の低下させるべき調整量ΔPpの対応テーブルを記憶しており、これを参照しながら励起光源における所定の光強度を低下させる。
【0045】
次に、さらに図2(a)および(b)をも参照して、本光増幅装置10の動作を説明する。尚、図2(a)および(b)における光中継装置Rb1、Rb1それぞれは、図3に示された光増幅装置10を備えている。
【0046】
図2(a)における波長−光強度(WL−P)のグラフに示されるように、端局Aは、互いに異なる波長帯に亘り、かつ、互いに同じ光強度の光信号α、βが混合されて成る光信号を送信する。ここで、例えば、光信号αは8波長が多重され、光信号βは10波長が多重されているとする。OADM装置Xは、端局Aから光中継装置Ra1、Ra2を経て伝送された光信号のうち、光信号αを分離すると共に送信する。端局Cは、OADM装置Xから光中継装置Rc1、Rc2、Rc3を経て伝送された光信号αを受信する。光信号αは、端局Cと端局Dとを収容した前記処理装置によって処理され、光信号α’(8波長)に変更される。光信号αと光信号α’とは、互いに同じ波長帯かつ同じ光強度である。端局Dは、光信号α’を送信する。OADM装置Xはさらに、端局Dから光中継装置Rd1、Rd2、Rd3を経て伝送された光信号α’を、端局Aから受信した光信号βと混合すると共に送信する。端局Bは、OADM装置Xから、それぞれ光増幅装置10(図3)を備えた光中継装置Rb1、Rb1を経て伝送された光信号α’、βが混合されて成る光信号を受信する。
【0047】
さて、図2(a)に示されたOADM通信システムにおいて、光ファイバ伝送路FcおよびFdの少なくとも一方にケーブル障害が発生し、図2(b)に示されるようにOADM装置Xと端局C、Dとの通信が不通となった場合、端局Bには、光信号α’が届かず、光信号βのみが届くことになる。即ち、OADM装置Xから端局Bに送信される光信号は、その波長数が信号α’の波長数(多重数)、即ち、8波長だけ減少する。
【0048】
この場合、OADM装置Xと端局Bとの間の光ファイバ伝送路Fb上に備えられた光中継装置Rb1、Rb1それぞれにおいて、光増幅装置10は、次のように動作する。
【0049】
光増幅装置10の光源強度切替回路13において、光分岐器14は、光増幅器11が出力する光信号(光信号βのみ)の一部を分岐する。
【0050】
光波長フィルタ15は、光分岐器14によって分岐された光信号から特定波長の光信号成分を抽出する。
【0051】
受光素子16は、波長光フィルタ15によって抽出された特定波長の光信号成分の光強度を検出する。尚、光波長フィルタ15が抽出する特定波長が光信号α’に含まれる成分である場合は、受光素子16は、光強度ゼロを検出することになる。
【0052】
光源強度切替部17は、受光素子16によって検出された特定波長の光信号成分の光強度がゼロもしくは増加したときに波長数が減少したと判断し、その減少した波長数に(8波長)に応じて励起光源における所定の光強度を低下させる。即ち、光源強度切替部17は、特定波長の光信号成分の光強度がゼロの場合は、その波長を成分として含む欠落した光信号の波長数分だけ励起光源の光強度を低下させる。一方、特定波長の光信号成分が増加した場合は、光源強度切替部17は、図6に示されるような特定波長の光強度の増加量ΔPout、減少した波長数Δλ、および励起光の光強度の低下させるべき調整量ΔPpの対応テーブルを参照しながら励起光源における所定の光強度を低下させる。
【0053】
励起光源12の光源制御部123は、受光素子122の検出信号に基づいて、励起光が光源強度切替部17によって低下させられた所定の光強度になるように調整する。
【0054】
この結果、端局Bは、図2(b)に示されるように、本来の光強度の光信号βを受信する。
【実施例2】
【0055】
図4に示された本発明の実施例2は、光波長フィルタが可変光波長フィルタである点で図3に示された実施例1と異なる。このため、図4において実施例1と同一または同様部に同一または同様の符号を付すと共に、詳細な説明は省略する。
【0056】
図4は、図2(a)に示された光中継装置のうちの光中継装置Rb1またはRb1に備えられた光増幅装置20の構成を示している。尚、図2(a)に示されたOADM装置Xならびに光中継装置Rb1またはRb1以外の光中継装置に備えられる光増幅装置も光増幅装置10と同様の構成であるため、説明は省略する。
【0057】
図4を参照すると、本発明の実施例2による光増幅装置20は、波長多重された光信号α’、βを増幅する光増幅器11と、光増幅器11に励起光を供給する励起光源12とを有している。
【0058】
励起光源12は、発光素子(LD)121と、受光素子(PD)122と、光源制御部123と、光結合器124とを有している。発光素子121は、レーザーダイオード等によって構成され、励起光を出射する。受光素子122は、発光素子121の近傍に備えられたフォトダイオード等によって構成され、発光素子121が出射する励起光の光強度を検出する。光源制御部123は、受光素子122の検出信号に基づいて励起光が所定の光強度になるように調整する。光結合器124は、光増幅器11の入力側に励起光を供給する。即ち、励起光源12は、励起光の光強度が一定になるように自律的に制御している。
【0059】
本実施例による光増幅装置20は、実施例1と同様に、光信号の波長数の減少に応じて励起光源による励起光の所定の光強度を低下するように構成されている。具体的には、光増幅装置10は、励起光源12における所定の光強度を切り替える光源強度切替回路23を有している。
【0060】
光源強度切替回路23は、光分岐器14と、可変光波長フィルタ18と、受光素子(PD)16と、光源強度切替部17とを有している。光分岐器14は、光増幅器11が出力する光信号の一部を分岐する。可変光波長フィルタ18は、光分岐器によって分岐された光信号から複数の特定波長の光信号成分を順次抽出する。光源強度切替部17は、受光素子16によって検出された複数の特定波長の光信号成分のいずれかの光強度がゼロもしくは増加したときに波長数が減少したと判断し、その減少した波長数に応じて励起光源12における所定の光強度を低下させる。尚、光増幅器11は、2以上の光信号を増幅するものであり、可変光波長フィルタ18は、各光信号につき、少なくとも1つの光信号成分を抽出する。光源強度切替部17は、図6に示されるような特定波長の光強度の増加量ΔPout、減少した波長数Δλ、および励起光の光強度の低下させるべき調整量ΔPpの対応テーブルを記憶しており、これを参照しながら励起光源における所定の光強度を低下させる。
【0061】
次に、さらに図2(a)および(b)をも参照して、本光増幅装置20の動作を説明する。尚、図2(a)および(b)における光中継装置Rb1、Rb1それぞれは、図4に示された光増幅装置20を備えている。
【0062】
図2(a)に示されたOADM通信システムにおいて、光ファイバ伝送路FcおよびFdの少なくとも一方にケーブル障害が発生し、図2(b)に示されるようにOADM装置Xと端局C、Dとの通信が不通となった場合、端局Bには、光信号α’が届かず、光信号βのみが届くことになる。即ち、OADM装置Xから端局Bに送信される光信号は、その波長数が信号α’の波長数(多重数)、即ち、8波長だけ減少する。
【0063】
この場合、OADM装置Xと端局Bとの間の光ファイバ伝送路Fb上に備えられた光中継装置Rb1、Rb1それぞれにおいて、光増幅装置20は、次のように動作する。
【0064】
光増幅装置20の光源強度切替回路23において、光分岐器14は、光増幅器11が出力する光信号(光信号βのみ)の一部を分岐する。
【0065】
可変光波長フィルタ18は、光分岐器14によって分岐された光信号から特定波長の光信号成分を順次抽出する。
【0066】
受光素子16は、可変光波長フィルタ18によって順次抽出された特定波長の光信号成分の光強度を検出する。尚、可変光波長フィルタ18が抽出する特定波長が光信号α’に含まれる成分である場合は、受光素子16は、光強度ゼロを検出することになる。
【0067】
光源強度切替部17は、受光素子16によって検出された特定波長の光信号成分の光強度がゼロもしくは増加したときに波長数が減少したと判断し、その減少した波長数に(8波長)に応じて励起光源における所定の光強度を低下させる。即ち、光源強度切替部17は、特定波長の光信号成分の光強度がゼロの場合は、その波長を成分として含む欠落した光信号の波長数分だけ励起光源の光強度を低下させる。一方、特定波長の光信号成分が増加した場合は、光源強度切替部17は、図6に示されるような特定波長の光強度の増加量ΔPout、減少した波長数Δλ、および励起光の光強度の低下させるべき調整量ΔPpの対応テーブルを参照しながら励起光源における所定の光強度を低下させる。
【0068】
励起光源12の光源制御部123は、受光素子122の検出信号に基づいて、励起光が光源強度切替部17によって低下させられた所定の光強度になるように調整する。
【0069】
この結果、端局Bは、図2(b)に示されるように、本来の光強度の光信号βを受信する。
【実施例3】
【0070】
図5に示された本発明の実施例3は、図6に示されるような対応テーブルを光源強度切替部と個別のメモリに書き換え可能に記憶している点で図4に示された実施例2と異なる。このため、図5において実施例2と同一または同様部に同一または同様の符号を付すと共に、詳細な説明は省略する。
【0071】
図5は、図2(a)に示された光中継装置のうちの光中継装置Rb1またはRb1に備えられた光増幅装置30の構成を示している。尚、図2(a)に示されたOADM装置Xならびに光中継装置Rb1またはRb1以外の光中継装置に備えられる光増幅装置も光増幅装置30と同様の構成であるため、説明は省略する。
【0072】
図5を参照すると、本発明の実施例3による光増幅装置30は、波長多重された光信号α’、βを増幅する光増幅器11と、光増幅器11に励起光を供給する励起光源12とを有している。
【0073】
励起光源12は、発光素子(LD)121と、受光素子(PD)122と、光源制御部123と、光結合器124とを有している。発光素子121は、レーザーダイオード等によって構成され、励起光を出射する。受光素子122は、発光素子121の近傍に備えられたフォトダイオード等によって構成され、発光素子121が出射する励起光の光強度を検出する。光源制御部123は、受光素子122の検出信号に基づいて励起光が所定の光強度になるように調整する。光結合器124は、光増幅器11の入力側に励起光を供給する。即ち、励起光源12は、励起光の光強度が一定になるように自律的に制御している。
【0074】
本実施例による光増幅装置30は、実施例1、2と同様に、光信号の波長数の減少に応じて励起光源による励起光の所定の光強度を低下するように構成されている。具体的には、光増幅装置30は、励起光源12における所定の光強度を切り替える光源強度切替回路33を有している。
【0075】
光源強度切替回路33は、光分岐器14と、可変光波長フィルタ18と、受光素子(PD)16と、光源強度切替部17と、後述するメモリ19とを有している。光分岐器14は、光増幅器11が出力する光信号の一部を分岐する。可変光波長フィルタ18は、光分岐器によって分岐された光信号から複数の特定波長の光信号成分を順次抽出する。光源強度切替部17は、受光素子16によって検出された複数の特定波長の光信号成分のいずれかの光強度がゼロもしくは増加したときに波長数が減少したと判断し、その減少した波長数に応じて励起光源12における所定の光強度を低下させる。尚、光増幅器11は、2以上の光信号を増幅するものであり、可変光波長フィルタ18は、各光信号につき、少なくとも1つの光信号成分を抽出する。
【0076】
メモリ19は、図6に示されるような特定波長の光強度の増加量ΔPout、減少した波長数Δλ、および励起光の光強度の低下させるべき調整量ΔPpの対応テーブルを書き換え可能に記憶している。光源強度切替部17は、メモリ19を参照しながら励起光源における所定の光強度を低下させる。
【0077】
次に、さらに図2(a)および(b)をも参照して、本光増幅装置30の動作を説明する。尚、図2(a)および(b)における光中継装置Rb1、Rb1それぞれは、図5に示された光増幅装置30を備えている。
【0078】
図2(a)に示されたOADM通信システムにおいて、光ファイバ伝送路FcおよびFdの少なくとも一方にケーブル障害が発生し、図2(b)に示されるようにOADM装置Xと端局C、Dとの通信が不通となった場合、端局Bには、光信号α’が届かず、光信号βのみが届くことになる。即ち、OADM装置Xから端局Bに送信される光信号は、その波長数が信号α’の波長数(多重数)、即ち、8波長だけ減少する。
【0079】
この場合、OADM装置Xと端局Bとの間の光ファイバ伝送路Fb上に備えられた光中継装置Rb1、Rb1それぞれにおいて、光増幅装置30は、次のように動作する。
【0080】
光増幅装置30の光源強度切替回路33において、光分岐器14は、光増幅器11が出力する光信号(光信号βのみ)の一部を分岐する。
【0081】
可変光波長フィルタ18は、光分岐器14によって分岐された光信号から特定波長の光信号成分を順次抽出する。
【0082】
受光素子16は、可変光波長フィルタ18によって順次抽出された特定波長の光信号成分の光強度を検出する。尚、可変光波長フィルタ18が抽出する特定波長が光信号α’に含まれる成分である場合は、受光素子16は、光強度ゼロを検出することになる。
【0083】
光源強度切替部17は、受光素子16によって検出された特定波長の光信号成分の光強度がゼロもしくは増加したときに波長数が減少したと判断し、その減少した波長数に(8波長)に応じて励起光源における所定の光強度を低下させる。即ち、光源強度切替部17は、特定波長の光信号成分の光強度がゼロの場合は、その波長を成分として含む欠落した光信号の波長数分だけ励起光源の光強度を低下させる。一方、特定波長の光信号成分が増加した場合は、光源強度切替部17は、メモリ19に記憶された特定波長の光強度の増加量ΔPout、減少した波長数Δλ、および励起光の光強度の低下させるべき調整量ΔPpの対応テーブルを参照しながら励起光源における所定の光強度を低下させる。
【0084】
励起光源12の光源制御部123は、受光素子122の検出信号に基づいて、励起光が光源強度切替部17によって低下させられた所定の光強度になるように調整する。
【0085】
この結果、端局Bは、図2(b)に示されるように、本来の光強度の光信号βを受信する。
【産業上の利用可能性】
【0086】
以上説明した実施例に限定されることなく、本発明は、特許請求の範囲に記載された技術範囲内であれば、種々の変形が可能であることは云うまでもない。
【符号の説明】
【0087】
10、20、30 光増幅装置
11 光増幅器
12 励起光源
121 発光素子(LD)
122 受光素子(PD)
123 光源制御部
124 光結合器
13、23、33 光源強度切替回路
14 光分岐器
15 光波長フィルタ
16 受光素子(PD)
17 光源強度切替部
18 可変光波長フィルタ
19 メモリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長多重された2つ以上の光信号を増幅する光増幅器と、前記光増幅器に励起光を供給する励起光源とを有し、前記励起光源は、励起光が所定の光強度になるように自律的に制御する光増幅装置において、
光信号の波長数の減少に応じて前記励起光源による励起光の前記所定の光強度を低下するように構成されたことを特徴とする光増幅装置。
【請求項2】
前記励起光源における所定の光強度を切り替える光源強度切替回路を有し、前記光源強度切替回路は、
前記光増幅部が出力する光信号の一部を分岐する光分岐器と、
前記光分岐器によって分岐された光信号から特定波長の光信号成分を抽出する光波長フィルタと、
前記波長光フィルタによって抽出された特定波長の光信号成分の光強度を検出する受光素子と、
前記受光素子によって検出された特定波長の光信号成分の光強度がゼロもしくは増加したときに波長数が減少したと判断し、当該減少した波長数に応じて前記励起光源における所定の光強度を低下させる光源強度切替部とを有する請求項1に記載の光増幅装置。
【請求項3】
前記光波長フィルタは、前記光分岐器によって分岐された光信号から複数の特定波長の光信号成分を順次抽出する可変光波長フィルタであり、
前記光源強度切替部は、前記受光素子によって検出された複数の特定波長の光信号成分のいずれかの光強度がゼロもしくは増加したときに波長数が減少したと判断し、当該減少した波長数に応じて前記励起光源における所定の光強度を低下させる請求項2に記載の光増幅装置。
【請求項4】
前記光波長フィルタは、各光信号につき、少なくとも1つの光信号成分を抽出する請求項3に記載の光増幅装置。
【請求項5】
特定波長の光強度の増加量、減少した波長数、および励起光の光強度の低下させるべき調整量の対応テーブルを書き換え可能に記憶したメモリをさらに有し、
前記光源強度切替部は、前記メモリを参照して、減少した波長数に応じて前記励起光源における所定の光強度を低下させる請求項2乃至4のいずれか一項に記載の光増幅装置。
【請求項6】
波長多重された光信号から特定波長の光信号を分離、混合するOADM装置であって、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の光増幅装置を有することを特徴とするOADM装置。
【請求項7】
分離された光信号や混合されるべき光信号をその光強度を補いつつ伝送する光中継装置であって、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の光増幅装置を有することを特徴とする光中継装置。
【請求項8】
光ファイバ伝送路と、前記光ファイバ伝送路を介して波長多重された光信号を送信する光送信端局と、前記光ファイバ伝送路を介して前記光送信端局から光信号を受信する光受信端局と、前記光ファイバ伝送路上に設けられた請求項6に記載のOADM装置とを有することを特徴とするOADM通信システム。
【請求項9】
前記光ファイバ伝送路上に設けられた請求項7に記載の光中継装置をさらに有することを特徴とするOADM通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−84666(P2012−84666A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−228936(P2010−228936)
【出願日】平成22年10月8日(2010.10.8)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】