説明

光学シート、ロール金型、及びこのロール金型の製造方法

【課題】欠陥隠蔽性を保ちながら、離型が容易であり、歩留まりを向上させることができる光学シート、ロール金型、及びロール金型の製造方法を提供する。
【解決手段】プリズムシート1は、シート入射面3に入射された光を内部で伝搬させ、シート出射面5から出射するプリズムシート1であって、シート入射面3に形成された複数の凸状部41からなるプリズムパターンと、凸状部51よりも凹凸が小さい凹状部63であって、プリズムパターン19を形成する各々の凸状部51の高さ方向中央よりも下側にのみ設けられた複数の凹状部63とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学シート、ロール金型、及びこのロール金型の製造方法に関し、特に、表面にプリズムパターンが形成された光学シート、この光学シートを製造するためのロール金型、及びこのロール金型の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、液晶装置のバックライト等に使用される光学シートが知られている。光学シートは、一方の表面に複数の柱状プリズムを備えている。この柱状プリズムは、光学シートを構成するシート基材の表面に樹脂を滴下し、さらにこの表面をロール金型に押し当てることで製造されている。具体的には、シート基材上に柱状プリズムを形成するとき、ロール金型と、このロール金型と対向して設けられたニップロールによってシート基材を挟持搬送しながら、ロール金型とシート基材の間に樹脂を滴下し、さらにこの樹脂を硬化させることでロール金型の表面の加工パターンをシート基材に転写するようになっている。
【0003】
また、ロール金型の加工パターンは、ロール金型基材の表面に銅めっき層を形成して、この銅めっき層を、超硬バイト、CBNバイト、ダイヤモンドバイト等の切削工具が取り付けられた旋盤を用いて切削することで製造されている。そして銅めっき層を切削すると、加工パターンにはバリが生じてしまい、バリの残った加工パターンで光学シートを形成すると、加工パターンと共に、バリの形状が樹脂層に転写されてしまう。このような問題を解決するための手段としては、特許文献1に記載されたものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2007/046337号パンフレット
【0005】
特許文献1に記載された光学シートは、表面に三角形断面のプリズムを有し、このプリズムの間の谷部に、金型から転写された粗面化部が設けられていることとしている。この光学シートを製造するための金型は、金型の表面に形成された三角形断面の加工パターンに対してブラスト処理を施して製造されており、このブラスト処理によって加工パターンの頂部の頂上に粗面化部に対応する凸凹が形成している。そしてこのような加工パターンが光学シートに転写されると、プリズムの間の谷部には、粗面化部が形成される。このとき、粗面化部は、ブラスト処理された加工パターンの頂部と相補的な形状となっているので、プリズムの斜面から突出した形状となっている。そして引用文献1によれば、プリズムの間に粗面化部を設けることによって、金型に生じるバリが転写されることによる光学シートの欠陥を隠蔽できることとしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、引用文献1に記載されたような光学シート、及びその製造方法によれば、ブラスト処理によって金型の表面に凹部を設けるようになっており、光学シートを離型する際に、金型の微細な凹凸構造に入り込んだ樹脂が離型せずに残ってしまい、精密な形状の離型が困難であり、且つ光学シートの歩留まりが低下するという問題があった。また、金型表面へのブラスト処理には精密な条件制御が必要であり、精密な形状を容易に金型に形成する技術の開発が望まれていた。
【0007】
そこで本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、欠陥隠蔽性を保ちながら、離型が容易であり、歩留まりを向上させることができる光学シート、ロール金型、及びロール金型の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、本発明は、入射面に入射された光を内部で伝搬させ、出射面から出射する光学シートであって、入射面に形成された複数の凸状部からなるプリズムパターンと、凸状部よりも凹凸が小さい凹状部であって、プリズムパターンを形成する各々の凸状部の高さ方向中央よりも下側にのみ設けられた複数の凹状部とを備えることを特徴とする。
【0009】
このように構成された本発明によれば、プリズムパターンを形成する凸状部の高さ方向中央よりも下側に複数の凹状部が形成されており、光学シートを製造するための金型にはこれに対応する凸状部を設けることとなる。これにより、凹状部によって光学シートに生じる欠陥を隠蔽することができると共に、光学シートの離型を容易に行うことができる。
【0010】
また、本発明において、好ましくは、凸状部は、三角形断面を有する三角柱状体であり、プリズムパターンは、複数の三角柱状体を並列配置して形成されたものであり、凹状部は、隣接する三角柱状体によって形成される谷部に設けられている。さらに本発明において、好ましくは、凹状部の深さは、0.1〜10μmである。
【0011】
また、上述した課題を解決するために本発明は、光学シート製造用のロール金型であって、外周面に形成され、光学シートの光の入射面に形成されるプリズムパターンを構成する複数の凸状部と相補的な形状を有する加工用凸状部と、この加工用凸状部の高さ方向中央よりも上側にのみ設けられ、加工用凸状部よりも小さい複数の微小凸状部を有する微小加工パターンとを備えることを特徴としている。
【0012】
このように構成された本発明によれば、外周面に形成された加工パターン及び複数の凸状部からなる微小加工パターンを備えるロール金型から光学シートを離型するようになる。そしてこの微小加工パターンは、加工用凸状部の高さ方向中央よりも上側にのみ設けられているので、ロール金型に生じるバリによる光学シートの欠陥を隠蔽することができ、さらに微小加工パターンを複数の微小凸状部とすることによって光学シートの離型を容易にすることができる。
【0013】
また、上述した課題を解決するために本発明は、光学シート製造用のロール金型の製造方法であって、ロール金型基材の外周面に、光学シートの光の入射面に形成されるプリズムパターンを構成する複数の凸状部と相補的な形状を有する加工用凸状部からなる加工パターンを形成する第1の加工ステップと、この加工用凸状部の高さ方向中央よりも上側に、この加工用凸状部よりも小さい複数の微小凸状部を有する微小加工パターンを形成する第2の加工ステップとを備え、この第2の加工ステップは、微小粒子を含むめっき液槽内にロール金型基材を浸漬する浸漬ステップと、めっき液槽内のめっき液に浸漬されたロール金型基材を所定の速度で周方向に回転させる回転ステップと、ロール金型基材の表面に微小粒子の結晶を成長させて微小凸状部を形成する結晶成長ステップとを含むことを特徴とする。
【0014】
このように構成された本発明によれば、ロール金型の基材を微小粒子を含むめっき液槽内に浸漬させて、ロール金型の基材を回転させながらロール金型上に微小粒子の結晶を成長させることができ、これにより、微小粒子の結晶を、第1の加工ステップで形成された加工用凸状部の高さ方向中央よりも上側にのみ成長させることができる。そしてこのようなロール金型の製造方法によれば、微小加工パターンによってロール金型に生じるバリによる光学シートの欠陥を隠蔽することができ、さらに微小加工パターンを凸状部とすることによって光学シートの離型を容易にすることができる。
【発明の効果】
【0015】
このように、本発明によれば、欠陥隠蔽性を保ちながら、離型が容易であり、歩留まりを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態によるプリズムシートを示す斜視図である。
【図2】本発明の実施形態によるプリズムシートの製造装置を示す側面図である。
【図3】本発明の実施形態によるロール金型の外周面近傍を示す断面図である。
【図4】本発明の実施形態によるロール金型を用いて形成されたプリズムを示す断面図である。
【図5】本発明の実施形態によるロール金型にめっき処理を施すためのめっき処理装置を示すブロック図である。
【図6】図5のめっき処理装置に備えられためっき処理槽を正面から見た断面図である。
【図7】図5のめっき処理装置に備えられためっき処理槽を側面から見た断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の第1の実施形態によるプリズムシートについて説明する。図1は、プリズムシートを示す斜視図である。
【0018】
まず、図1に示すようにプリズムシート1は、外部の光源から出射された光が入射されるシート入射面3と、シート入射面3に入射してプリズムシート1内部に入った光を出射させるためのシート出射面5を備える。そしてプリズムシート1のシート入射面3には、活性化エネルギー線硬化型樹脂を硬化させて形成した、複数の三角形柱状のプリズム7が並列配置されている。
【0019】
このようなプリズムシート1は、透光性を有するシート基材9の一方の面にプリズム7を配置することで形成されている。また、シート基材9の他方の面には、拡散層11が設けられており、シート基材9内の光を拡散させて出射させるようになっている。
【0020】
プリズム7は、その屈折率が1.52以上、好ましくは1.55以上、さらに好ましくは1.6以上となるように形成されている。このようなプリズム7を形成する活性化エネルギー線硬化型樹脂は、紫外線、電子線等の活性化エネルギー線で硬化するものであればどのようなものであってもよいが、光学特性等の観点から、ポリエステル類、エポキシ樹脂系、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート等のアクリレート系樹脂を用いることが好ましい。このような硬化樹脂に使用される活性化エネルギー線硬化性組成物としては、取扱性や硬化性等の点で、多官能アクリレート及び/または多宮能メタクリレート、モノアクリレート及び/またはモノメタクリレート、及び活性化エネルギー線による光重合開始剤を主成分とすることが好ましい。代表的な多官能アクリレート及び/または多官能メタクリレートとしては、ポリオールポリ(メタ)アクリレート、ポリエステルポリ(メタ)アクリレート、エポキシボリ(メタ)アクリレート、ウレタンポリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは単独あるいは2種以上の混合物として使用される。また、モノアクリレート及び/またはモノメタクリレートとしては、モノアルコールのモノ(メタ)アクリル酸エステル、ポリオールのモノ(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。
【0021】
またシート基材9は、厚さ10〜500μm、好ましくは30〜300μmの硝子板、又はポリエチレンテレフタラート若しくはポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂、ジアセチルセルロース若しくはトリアセチルセルロース等のセルロース計樹脂、ポリエチレン、ポリプロビレン、環状ないしノルボルネン構造を有するポリオレフィン及びエチレン・プロピレン共重合体等のオレフィン系樹脂、ナイロン及び芳香族ポリアミド系のポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、塩化ビニル系樹脂、若しくはポリメタクリルイミド系樹脂等の透明樹脂シート、又はフィルムによって形成される。そして、シート基材9の表面には、活性化エネルギー線硬化型樹脂の密着性を高めるために、アンカーコート処理が施されている。
【0022】
また、このようなプリズム7を形成するモノマーと、シート基材9を同一の材料から形成することも可能である。この場合、シート基材9としては、アクリル樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ホリエステル系樹脂、塩化ビニル系樹脂のような光透過率の高い合成樹脂を用いることができる。これらの樹脂の中でも、光透過率の高さ、耐熱性、力学的特性、成形加工性等の観点から、アクリル樹脂を用いることができる。そしてこの場合、アクリル樹脂としては、メタクリル酸メチルを主成分とする樹脂を用い、その含有量は、80重量%以上とするのがよい。
【0023】
拡散層11は、透光性樹脂中に光拡散剤を分散させて形成されている。そしてシート基材9上に配置された透光性樹脂の表面からは、光拡散剤が突出しており、光透過性樹脂の表面は、凹凸に形成されている。
【0024】
図2は、このようなプリズムシートの製造装置を示す側面図である。プリズムシート製造装置は、ロール金型21と、ロール金型21に近接して配置されたニップロール23、及び剥離ローラ25を備える。また、プリズムシート製造装置は、これらロール金型21、ニップロール23、及び剥離ローラ25によって搬送されるシート基材9上に配置される活性化エネルギー線硬化性組成物を貯留するタンク27と、タンク27内の活性化エネルギー線硬化型組成物をシート基材9上に塗布する塗布装置29と、活性化エネルギー線としての紫外線を出射するUVランプ31を備える。そしてプリズムシート製造装置は、シート基材9が、矢印A方向に回転駆動される円筒柱状のロール金型21の外周面に巻回されながら矢印B方向に搬送されるように構成されている。
【0025】
タンク27に貯留された活性化エネルギー線硬化型組成物は、プリズムパターンを形成する各プリズム7の厚さを一定にするために、所定の粘度に保持する事が好ましい。この粘度の範囲は、20〜3000mPa・Sであることが好ましく、100〜1000mPa・Sであることがより好ましい。活性化エネルギー線硬化性組成物の粘度を20mPa・S以上とすることによって、形成されるプリズム7の厚さを一定にするためにニップ圧を比較的低く設定したり、ロール金型21の回転速度を極端に速くしたりする必要がなくなる。さらにニップ圧を比較的低くすると、ニップロール23の動作が安定しないので、プリズムパターンを形成するプリズム7の厚さが不均一になる。また、ロール金型21の回転速度を極端に速くすると、活性化エネルギー線の照射量が不足し活性化エネルギー線硬化性組成物の硬化が不十分となる傾向にある。また、活性化エネルギー線硬化性組成物の粘度を3000mPa・S以下とすることにより、ロール金型21の形状転写面構造の細部まで十分に活性化エネルギー線硬化型組成物を行き渡らせることができ、後述する加工パターンの正確な転写が困難となったり、気泡の混入による欠陥が発生しやすくなったり成形速度の極端な低下による生産性の悪化をもたらしたりすることがなくなる。このため、活性化エネルギー線硬化性組成物の粘度を一定に保持させるためには、活性化エネルギー線硬化型組成物の温度制御が十分に行えるように、タンク27の外部や内部にシーズヒーター、温水ジャケット等の熱源設備を設置しておくことが好ましい。
【0026】
図3は、ロール金型の外周面近傍を示す断面図である。図3に示すように、ロール金型21の外周面には、複数の加工用凸状部41からなる加工パターンが形成されている。この加工用凸状部41は、ロール金型21の周方向に延びる、三角柱状体によって形成されている。そしてロール金型21の外周には、複数の三角柱状体が並列配置されており、加工パターンを構成している。そして各々の加工用凸状部41には、微小粒子43を含有するめっき層45が設けられている。そして、各々の加工用凸状部41の高さ方向中央よりも上側には、この微小粒子43によって、微小加工パターン47が形成されている。このような加工用凸状部41は、高さ10〜500μmの三角形断面を有する柱状体からなり、ロール金型21の軸線方向の配列ピッチは、10〜500μmとされる。
【0027】
また、微小加工パターン47は、微小粒子43によって形成される複数の微小凸状部によって構成される。尚、以下では、めっき層45に含まれる微小粒子43を「微小凸状部43」とする。
複数の微小凸状部43は、加工用凸状部41の頂部近傍、即ち加工用凸状部41の傾斜面における、加工用凸状部41の高さ方向中央よりも上側にのみ設けられている。この微小凸状部43の高さは、0.1〜10μmであることが好ましく、0.1〜5μmであることがより好ましい。この微小加工パターン47を形成する微小凸状部43の数を多くすることによって、加工用凸状部41が形成するプリズム7の間の谷部に生じる欠陥の隠蔽性は向上するが、一方で微小凸状部43の数が多すぎると、光学シート1全体の輝度が低下してしまうため、この微小加工パターン47を構成する微小凸状部43の数は、200μm×200μmの範囲内に、数十から数千個とされるのがよい。また、微小加工パターン47を構成する微小凸状部43は、不均一に存在しているのがよい。詳細は後述するが、めっき層45は、加工用凸状部41が形成されたロール金型21の基材を、微小凸状部43を形成するための炭化ケイ素等の微小粒子が混在するめっき液に浸漬させることで形成される。このときめっき層45の厚さは、0.1〜1.0μmであることが好ましく、0.3〜0.7μmであることがより好ましい。
【0028】
図4は、このようなロール金型を用いて形成されたプリズムを示す断面図である。図4に示すように、プリズム7は、ロール金型21の加工用凸状部41と相補的な形状及び大きさの凸状部51と、この凸状部51よりも凹凸が小さい微小凹状部53を備える。凸状部51は、加工用凸状部41と相補的な、ほぼ三角形断面を有する。そして加工用凸状部41を形成する三角形断面の凸状部51の頂部の角度は、40〜150°の範囲として設定される。また、この凸状部51の頂部の角度は、光学シート1の用途に応じて変更可能であり、光学シートを液晶装置のバックライトに用いる場合には、その頂部の角度は、80〜100°とされるのがよく、85〜95°の範囲であることがより好ましい。また、光学シートを液晶装置の導光板と併用する場合には、凸状部51の頂部の角度は、45〜70°の範囲であるのが好ましい。プリズム7間のピッチは、加工用凸状部41の谷部のピッチと相補的なものであり、10〜500μmとされる。そして凸状部51は、矢印Cによって示す様にプリズム7の臨界角よりも小さい角度でその表面に入射される光を、プリズムシート1内に導くようになっている。
【0029】
また微小凹状部53は、ロール金型21の外周に設けられた微小凸状部43と相補的な形状及び大きさを有する。具体的には、微小凹状部53は、三角形断面を有する隣接する凸状部51の各々の斜面に各々設けられており、全ての微小凹状部53は、凸状部51の高さ方向中央よりも下側に位置しており、隣接する凸状部51によって形成される谷部に沿って形成されている。これら複数の微小凹状部53は、加工用凸状部41の表面から突出している微小加工パターン47によって形成されたものであるので、凸状部51の表面に対して凹んだ形状を有する。そして微小凹状部53は、矢印Dによって示すように、隣接する凸状部51同士によって形成される谷部近傍に入射された光を散乱させて、プリズムシート1内部に導くようになっている。そして微小凹状部53の深さは、微小加工パターン47を構成する微小凸状部43と相補的なものであり、0.1〜10μmであることが好ましく、0.1〜5μmであることがより好ましい。さらに微小凹状部53の数等についても、微小加工パターン47を構成する微小凸状部43の数に対応しており、200μm×200μmの範囲内に、数十から数千個とされるのがよい。
【0030】
図5は、ロール金型にめっき処理を施すためのめっき処理装置を示すブロック図であり、図6は、このめっき処理装置に備えられためっき処理槽を正面から見た断面図であり、図7は、このめっき処理装置を側面から見た断面図である。
【0031】
図5に示すように、めっき処理装置61は、ロール金型基材63を浸漬させるためのめっき処理槽65と、このめっき処理槽65よりも加工ライン上流側に設けられた、水洗処理、脱脂処理、酸活性処理等を行うための前処理槽67と、めっき処理槽65よりも加工ライン下流側に設けられた水洗処理、乾燥処理等を行うための後処理槽69を備える。これら各処理槽65,67,69は、並列に配置されており、ロール金型基材63が、各処理層の上部に設けられたアーム71によって加工ラインの上流側から下流側に向けて搬送される。そして、アーム71によってロール金型基材63を上下に昇降させることで、ロール金型基材63は、各処理槽65,67,69に導入され、又は各処理槽65,67,69から取り出されるようになっている。
【0032】
図6及び図7に示すように、めっき処理槽65は、炭化ケイ素粉を含むニッケルめっき液を貯留する内槽81と、この内槽81から溢れたニッケルめっき液を受ける外槽83と、めっき液を内槽81へ流入させる流入口85を備える。
【0033】
内槽81は、ロール金型基材63の長手方向の長さよりも長尺な長辺を有する長方形の箱型に形成されている。また、内槽81の長手方向端部の壁87には、アーム71によって支持されているロール金型基材63が降りてきたときに、ロール金型基材63のシャフト89が嵌まるようになった切欠き(図示せず)を有する。そしてアーム71に支持されて内槽81に浸漬させられたロール金型基材63は、めっき処理が施されるときに、アーム71によってシャフト89回りを矢印E方向に回転させられるようになっている。炭化ケイ素粉は、粒径が0.1〜1.0μmのものを用い、めっき液内の炭化ケイ素粉の濃度は、1〜20vol%とされる。また、このニッケルめっき液には、ロール金型基材63の外周面のニッケルめっき層を比較的薄くかつ均一の厚さで形成するために、パラジウム触媒等を添加しないようになっている。
【0034】
内槽81の底には、めっき液を内槽81に流入させるための流入口85を覆うように配置された整流板91が設けられている。また、ロール金型基材63が浸漬されたときのロール金型基材63と整流板91の間には、遮蔽板93が設けられている。さらに内槽81には、電気ヒータ等の加熱手段(図示せず)が設けられており、めっき液の温度を調整できるようになっている。また、内槽81内には、電極(図示せず)が設けられており、この電極を用いてロール金型基材63の表面にめっき処理を施すようになっている。さらに内槽81の上部には、シャワー(図示せず)が設けられており、アーム71によって内槽81から引き上げられたロール金型基材63の表面に付着しためっき液を洗浄するようになっている。
【0035】
外槽83は、内槽81よりも一回り大きく形成された箱型の槽であり、内槽81を取り囲むように配置されている。そして外槽83と内槽81の各々の壁の間には、間隙が設けられており、この間隙によって、内槽81から溢れためっき液が、外槽83によって受け止められるようになっており、さらにアーム71を所定位置まで降下させることができるようになっている。また、外槽83の底には、めっき液を内槽81に還流させるための還流口95が設けられており、この還流口95から延びる管97は、内槽81にめっき液を流入させるための管99と合流している。そして還流口95から還流されためっき液は、流入口85に供給される。また、還流口95から延びる管97には、ポンプ101が接続されており、還流口95に入っためっき液を流入口85まで圧送するようになっている。また、内槽81と同様に外槽83にも、めっき液の温度を調整することができる加熱手段(図示せず)が設けられている。また、内槽81及び外槽83から延びる管97,99は、内槽81と外槽83の間で分岐しており、必要に応じて内槽81及び外槽83内のめっき液を排液できるようになっている。
【0036】
流入口85は、内槽81の底の中心部に設けられている。そして流入口85を覆う整流板91は、ロール金型基材63が内槽81に浸漬させられて回転させられたときの回転方向下流側が開口し、上流側を閉じるように流入口85を覆うようになっている。これにより、流入口85から内槽81内に流入させられためっき液は、整流板91に当たってロール金型基材63の回転方向下流側、すなわち矢印F方向に向かって流れる。また、遮蔽板93は、内槽81の長手方向に沿って延びる、ほぼV字断面を有する板状部材であり、整流板91によってロール金型基材63の回転方向下流側に向かって流れるめっき液が、ロール金型基材63に直接当たるのを防止するようになっている。また、遮蔽板93をほぼV字断面とすることによって、遮蔽板93が内槽81内のめっき液の流れを妨げるのを防止することができる。
【0037】
次に、ロール金型21の製造方法について詳述する。
【0038】
先ず、ロール金型基材63を準備する。ロール金型基材63としては、円筒形の鋼製ロールを用い、その外周面に厚さ100〜1000μm、ビッカース硬度が180〜250Hvの硬質銅めっきによる銅めっき層を形成する。そしてこの銅めっき層を超硬バイト、CBNバイト、ダイヤモンドバイト等の切削工具が取り付けられた旋盤を用いて切削して、複数の加工用凸状部41からなる加工パターンを形成する。
【0039】
そしてこのようなロール金型基材63を、めっき処理装置61のアーム71に取り付ける。次いで、アーム71を移動させて、ロール金型基材63の前処理槽67に順次搬送しながら、ロール金型基材63を加工ライン下流側に向けて移動させる。次いで、ロール金型基材63をめっき処理槽65の内槽81のめっき液に浸漬させる。
【0040】
ロール金型基材63を浸漬させる前に、内槽81には、流入口85から炭化ケイ素を含むめっき液が供給される。また、これと同時に、加熱手段によりめっき液が加熱される。このとき内槽81には、内槽81から溢れ出る程度の量のめっき液が供給され、溢れためっき液は、外槽83によって受けられ、外槽83から内槽81へ還流される。そして、外槽83から還流されためっき液は、整流板91により一定方向に流れるようになり、内槽81内において、ロール金型基材63が浸漬されたときに回転する方向と同一方向へのめっき液の流れが作り出される。そしてこのとき、一部のめっき液が、外槽83に溢れ出て、再び内槽81に還流されるようになるが、このようにめっき液を還流させることによって、内槽81内のめっき液の温度を一定の温度に保つことができ、これにより一定の膜厚のめっき層45を形成することができる。このとき、めっき液の還流量、又はめっき液が内槽から溢れ出す量は、約250lの容積を有するの内槽81に対して、80〜110l/分程度とされる。また、内槽81内のめっき液の温度は、80〜95℃、好ましくは84〜90℃に保たれる。また、整流板91とロール金型基材63の間に遮蔽板93を設けることによって、ロール金型基材63には、ロール金型基材63の回転方向に流れるめっき液だけが当たるようになる。
【0041】
次いで、ロール金型基材63を内槽81に浸漬させ、シャフト89回りに回転させながら、電極に電圧を印加して、内槽81内に電流を流し、ロール金型基材63の外周に電解めっき処理を施す。そしてロール金型基材63を回転させることによって、めっき液中の炭化ケイ素粉は、ロール金型基材63の外周方向、すなわち、加工用凸状部41の傾斜面上を加工用凸状部41の頂部の方向に向けて移動し、加工用凸状部41の高さ方向中央よりも上側に集まる。
【0042】
ここで、ロール金型基材63を回転させるときには、周速が1.5〜5m/分、好ましくは1.7〜5m/分、より好ましくは1.8〜5m/分となる。周速が1.5m/分未満とした場合には、ロール金型基材63の外周面に発生する水素ガスが外周面から離脱しにくくなり、外周面に水素ガスの流れによる欠陥が発生しやすくなり、さらに外周面の加工用凸状部41間の谷部に炭化ケイ素粉が堆積してしまう。これによって、加工用凸状部41の頂部にのみ微小加工パターン47を形成することができなくなってしまう。一方で、ロール金型基材63の周速が5m/分を超えると、めっき層45の厚さが不均一になり、めっき斑が発生しやすくなる。尚、ロール金型基材63の周速は、その外径に応じて調節することができる。
【0043】
そしてロール金型基材63をめっき液内で回転させて、所定時間経過後、電流を停止させる。そしてこのような電解めっき処理により、ロール金型基材63の外周面にニッケルのめっき層45が形成される。そして電流を停止させてから、所定の時間、ロール金型基材63を回転させながら無電解めっき処理を行う。これにより、さらに炭化ケイ素粉の自己触媒によって、加工用凸状部41の高さ方向中央よりも上側で炭化ケイ素の結晶が成長して、微小凸状部43が形成される。このように、ロール金型基材63を回転させながら電解めっき処理及び無電解めっき処理を施すことにより、加工用凸状部41の高さ方向中央よりも上側に微小加工パターン47が形成されたロール金型21を得ることができる。その後、ロール金型21は、後処理槽69において、水洗処理、湯洗処理、乾燥処理等の後処理を経ながらアーム71によって加工ライン下流側に向けて搬送される。
【0044】
ここでロール金型基材63をめっき液に浸漬させた状態で、電極に電圧を印加する時間を、10〜60秒、より好ましくは15〜40秒とする。そしてこの時間の経過後に、電極への通電を停止させ、その後は自己触媒によってめっき処理をすることによって、非常に薄い膜厚のめっき層を形成することができる。
【0045】
このように本発明の実施形態によれば、加工パターン及びそこに形成された微小加工パターン47を備えるロール金型によって、欠陥の隠蔽性が高い光学シートを提供することができる。
【0046】
尚、上述の実施形態では、ロール金型を製造するときに、ロール金型の軸線を水平方向に保持して、ロール金型を回転させながらめっき液に浸漬させることとしたが、ロール金型の軸線を垂直にして、めっき液に浸漬させてもよい。この場合、電解めっき処理中及び無電解めっき処理中の何れの場合においても、めっき液中の炭化ケイ素が重力によって加工用凸状部の傾斜面に沿って、その先端側に移動するので、ロール金型基材を回転させる必要がない。
【0047】
以下、本発明を実施例について詳述する。
【0048】
〔実施例1〕
先ず、ロール金型基材として外径200mm、画長320mmの鋼製ロールを準備した。そしてロール金型基材の外周面を研磨した後、その外周面に銅めっきを施して厚さ500μm、ビッカース硬度230Hvの硬質銅めっき層を設けた。次いで、ダイヤモンドバイトを用いて、銅めっき層を旋削して、ピッチ30μmピッチで加工パターンを形成した。そしてこのロール金型基材の中心のシャフトにめっき処理装置のアームを取り付けて、ロール金型基材を周速6.5m/分で回転させながら前処理槽において水洗処理、脱脂処理、及び酸活性処理を行った。
【0049】
次いで、前処理が施されたロール金型基材を、めっき処理槽上に移動させて、ロール金型基材の周速を1.9m/分に変速してから、ロール金型基材をほぼ平行に保ちながら、アームによってロール金型基材を内槽内に降下させた。そしてロール金型基材を、炭化ケイ素粉を含み、88℃に加熱されためっき液に浸漬させた。そしてロール金型基材を内槽に浸漬させたまま、内槽内の電極に5Vの電圧を印加して、100Aの電流を30秒間流した。そして、電極への電力供給を停止した後も、ロール金型基材を周速1.9m/分で回転させながら、88℃のめっき液に浸漬させ続けた。無電解ニッケルめっき処理の間、内槽には、内槽の流入口からニッケルめっき液を105l/分で流入させ、さらに内槽から溢れ出しためっき液を、外槽から内槽に還流させた。これにより、ロール金型基材の回転方向と同一方向における、めっき液の流れを作り出した。
【0050】
そして、浸漬開始から230秒後にポンプを停止し、浸漬開始から235秒後にシャワーから水(室温)を30l/分で噴出させ、金型本体の水洗を開始し、内槽のニッケルめっき液の排出を開始した。ニッケルめっき液の排出開始直後、アームを上昇させ、ロール金型を引き上げた。そして、シャワーから、ロール金型下部に向けて斜め上方から水(室温)を30l/分で噴出させ、ロール金型を120秒水洗した。水洗後、ロール金型の周速を6.5m/分に戻した。
【0051】
その後、ロール金型を後処理槽に移動させ、水洗処理および乾燥処理を施し、アームからロール金型を取り外した。
【0052】
次いで、ニッケルめっきを施したこのロール金型と、アクリル系紫外線硬化性組成物(三菱レイヨン社製、RP4000S)とを用い、光学シートの製造装置を用いて光学シートを製造した。ロール金型とニップルロールの間に、シート基材として、片面に密着性向上処理を施したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東洋紡社製、A4100、厚さ188μm、幅470mm)を、処理面がロール金型の外周面に巻き付くように製造装置に導入した。
【0053】
次いで、樹脂タンクから供給された40℃のアクリル系紫外線硬化性組成物を、シート基材とロール金型との間に供給しながら、ロール金型を周速7m/分で回転させた。供給されたアクリル系紫外線硬化性組成物が、シート基材とロール金型との間に保持された状態で、9.6kW(120W/cm)の放射線照射装置から、照射量(照射エネルギー)が200mJ/cm2となるように紫外線を照射し、アクリル系紫外線硬化性組成物を硬化させ、賦型した後、ロール金型からシート基材を剥離して光学シートを得た。
【0054】
得られた光学シートの断面と表面をSEMで観察したところ、光学シートのプリズムの下側半分(プリズムの高さ方向中央よりも下側)に、不均一な無数の微小凹状部が形成されていることが確認された。
【0055】
そして得られた光学シートを14.1(ワイド)サイズに切り出し、これを側面に冷陰極管が配置された14.1W(ワイド)サイズのアクリル樹脂製導光体の光出射面上に配置した。このとき、プリズムが形成されている面が下向きとなるように、すなわち導光板の出射面と対向するように光学シートを配置した。そして、導光板における、冷陰極管が配置されていない側面、及び出射面とは反対側の面を反射シートで覆い、面光源装置を形成した。そして、この面光源装置において、冷陰極管を点灯させ、輝度計(トプコン社製、商品名BM−7)を用いて法線輝度及び半値幅を測定した。その結果、法線輝度は
2150Cd/m2であり、出射光の半値幅は20.2°であった。
【0056】
〔実施例2〕
実施例2では、ロール金型基材をめっき液に浸漬させるときに、ロール金型基材を縦方向に保持して浸漬させた。このとき、めっき処理中は、ロール金型を回転させず、停止させた。その後、実施例1と同様の処理を行ったところ、実施例1と同様の光学シートを得ることができた。
【0057】
〔比較例1〕
実施例1にて製造した光学シートと、従来技術である特開2007−70658号公報に記載された方法で製造した光学シートとの隠蔽性と輝度及び半値幅を比較した。その結果、実施例1の光学シートでは、プリズムの間に形成される欠陥の隠蔽性が75%上昇した。また、実施例1の光学シートでは、輝度が約5%低下した程度であった。なお、隠蔽性の評価は、従来技術で製造した光学シートにおいて確認できた欠陥を実施例1で製造した光学シートに変更した場合における、視認が出来なくなった数に基づいて算出した。
【0058】
〔比較例2〕
ロール金型を製造する際に、ロール金型基材を回転させずにめっき処理槽に浸漬させて、外周にめっき層を形成した。そしてこのロール金型を用いて製造された光学シートをSEMを用いて観察したところ、プリズムの頂部近傍を含むプリズムの斜面全体に微小凹状部が形成されていた。そしてこの光学シートを用いた面光源装置の輝度は、1905Cd/m2であった。また、ロール金型側の微小凸状部の中には、ロール金型基材をめっき液に浸漬させているときに、SiCがロール金型基材に堆積して結晶成長し、SiC粒子の大きさが10μmを超えるものが存在した。その一方で、光学シートにおける、ロール金型基材をめっき液に浸漬させているとき下側に面していた部分と対応する箇所では、SiCが殆ど見受けられず、20μm×200μm当たり数個の凹形状しか存在しなかった。
【符号の説明】
【0059】
1 プリズムシート
3 シート入射面
5 シート出射面
7 プリズム
21 ロール金型
41 加工用凸状部
47 微小加工パターン
51 凸状部
63 凹状部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射面に入射された光を内部で伝搬させ、出射面から出射する光学シートであって、
前記入射面に形成された複数の凸状部からなるプリズムパターンと、
前記凸状部よりも凹凸が小さい凹状部であって、前記プリズムパターンを形成する各々の凸状部の高さ方向中央よりも下側にのみ設けられた複数の凹状部とを備えること、
を特徴とする光学シート。
【請求項2】
前記凸状部は、三角形断面を有する三角柱状体であり、
前記プリズムパターンは、複数の三角柱状体を並列配置して形成されたものであり、
前記凹状部は、隣接する三角柱状体によって形成される谷部に設けられている請求項1に記載の光学シート。
【請求項3】
前記凹状部の深さは、0.1〜10μmである請求項1又は請求項2に記載の光学シート。
【請求項4】
光学シート製造用のロール金型であって、
外周面に形成され、前記光学シートの光の入射面に形成されるプリズムパターンを構成する複数の凸状部と相補的な形状を有する加工用凸状部と、
この加工用凸状部の高さ方向中央よりも上側にのみ設けられ、前記加工用凸状部よりも小さい複数の微小凸状部を有する微小加工パターンとを備えること、
を特徴とするロール金型。
【請求項5】
光学シート製造用のロール金型の製造方法であって、
ロール金型基材の外周面に、前記光学シートの光の入射面に形成されるプリズムパターンを構成する複数の凸状部と相補的な形状を有する加工用凸状部からなる加工パターンを形成する第1の加工ステップと、
この加工用凸状部の高さ方向中央よりも上側に、この加工用凸状部よりも小さい複数の微小凸状部を有する微小加工パターンを形成する第2の加工ステップとを備え、
この第2の加工ステップは、微小粒子を含むめっき液槽内に前記ロール金型基材を浸漬する浸漬ステップと、
めっき液槽内のめっき液に浸漬された前記ロール金型基材を所定の速度で周方向に回転させる回転ステップと、
前記ロール金型基材の表面に前記微小粒子の結晶を成長させて前記微小凸状部を形成する結晶成長ステップとを含むこと、
を特徴とするロール金型の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−169879(P2010−169879A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−12140(P2009−12140)
【出願日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】