説明

光学シートの製造方法

【課題】冷却速度を制御することにより、熱可塑性樹脂シートを製造する際のシートのたわみを少なくし、転写性の低下も同時に防ぐことができる。またプリズムシート裏面に硬度が必要な場合保護フィルム、ハードコート層を設ける工程を省くことができる。
【解決手段】加圧ロール16、パターンロール15と温調ロール群17を備えた押出成形装置を用い、Tダイ13からシート状に溶融樹脂を吐出し、吐出した樹脂シート14をパターン形状を成形するためのパターンロール15と加圧ロール16により加圧し、パターンを成膜する。次にシートを搬送および冷却速度を調整する温調ロール群17により搬送し冷却速度を調整する。ここで温調ロール群17とは下流程低温に設定されており、各部でシートの冷却速度を調整できるように温度を調整可能な温度調整機構を有した複数の搬送ロールで構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に液晶テレビや照明等の光学部材に用いられる光学シートを押出成形法において製造する場合に、光学シートの冷却速度を制御して製造された、たわみを改善した光学シート並びその製造方法及びその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置に代表されるディスプレイ装置では、光源より出射された光を液晶パネルに入射するバックライト方式が主にとられている。画像表示に必要となる明るさは当該バックライトより得られている。
【0003】
バックライト方式を採用する液晶表示装置では、消費電力においてバックライト光源が多くの割合を占める。よって光源の光の利用効率向上による消費電力低減が強く求められている。
【0004】
バックライトにおける光源の光の利用率を高める手段に輝度向上シートを使用する方法がとられており、表面に微細な凹凸パターンを有する輝度向上シートが使用されている。例えば、液晶表示装置の輝度向上を目的として表面にプリズム形状を付与したシートがあり、3M社のBEF(登録商標:Brightness Enhancement Film)に代表される上向きに設置する頂角90°のプリズムシートが使用されている。
【0005】
プリズムシートは、導光体から出る光が液晶方向に向くように光の角度を変える役割を担っている。プリズムシートはパネル方向に上向きおよび、下向きに配置し輝度向上を図るものがあり、下向きのものではプリズム斜面において液晶パネル方向に反射し輝度向上を実現している。上向きのプリズムでは、プリズムからの出射光をした拡散シートで法線方向に変角してプリズムシートに導光し、プリズム斜面から光が出射する際に屈折の原理で法線方向に変曲することで光を液晶方向に向ける。
【0006】
プリズムシートによる輝度向上だけでなく、光学シートではモワレ防止のためにマイクロレンズ形状を付与したパターンシートも使用されている。
【0007】
プリズムシート作製法には紫外線成形法および押出成形法が提案されている。
【0008】
紫外線成形法によるプリズムシートの成形では、高転写率でのパターン形成が可能である。しかし、紫外線成形法を利用した製造方法では製造コストが高いため、液晶表示装置の低コスト化に対応することが難しくなってきている。
【0009】
一方押出成形法では、溶融樹脂を押出機に取り付けられたダイから吐出し、一対のロールによって加圧しプリズムシートを作製する。この成形法では一方のロールに成形パターンが設けられた版と、平坦な面を有するロールとによって挟み圧力をかけることにより光学シートを作製するものである。
【0010】
しかし、光学シートを押出成形法で作製した際、パターンを転写後の冷却過程で、シートの温度変化に伴うシートの収縮が起こりたわみの発生の原因となる。たわみの発生は光学シート面の外観を悪化させ、特にプリズムシート面外観の悪化は光学特性において致命的な欠陥となるため、プリズムシートのたわみの改善が必要となる。
【0011】
上記押出成形法において凹凸パターンを転写し、たわみによるプリズムシート面の改善するため、成形時のロールの温度を制御し光学シートの凹凸パターンの転写率を改善する方法や、外観を整えるために一対のロールで凹凸パターンを転写成形した後にプリズムシートの冷却温度を制御しプリズムシートの面状態を改善する方法が行われている。凹凸パターンのシートへの転写率向上や、シート外観改善の方法として以下のものが知られている。
【0012】
特許文献1には、溶融押出法において凹凸パターンを付与した版ロールの内部の温度を150℃に保持しながら、溶融樹脂を押出成形し光学フィルムを作製する方法を示している。
【0013】
特許文献2には、熱可塑性樹脂を冷却ロールによって接触搬送をすることにより多段冷却をする製造方法により、シートへの皺の発生を防ぐ方法を示している。
【0014】
特許文献3には、Tダイより押し出したフィルムを凹凸形状を施した成形ロールと弾性ロールとでニップし、凹凸形状を賦形する方法で、成形ロールの表面温度をガラス転移温度Tg+20℃〜Tg+45℃、弾性ロールを20℃以上ガラス転移温度Tg以下の温度範囲とすることによって、転写性および離型性の両立を図る方法を示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特許第3308733号
【特許文献2】特開2008-254210
【特許文献3】特開2007-90859
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、特許文献1の対策では、熱可塑性樹脂フィルムに対する皺の抑制は行えているものの、皺を抑えたフィルムの作製にとどまっており、凹凸模様を転写した場合の転写性を維持したままシート外観の改良の両立を行えていない。
【0017】
また特許文献2の対策では、転写性および離型性の改善はされているものの、作製したシートの外観改良について解決されていない。
【0018】
パターンロールを用いた賦形では押出樹脂を高温に設定し粘度を低くした方が有利である。しかし凹凸模様を切削したロールで賦形し剥離した後に押出シート温度がガラス転移点より高いと押出シートに転写した形状が崩れてしまう。
【0019】
光学シートであるプリズムシートの作製において、たわみによる外観の悪化は致命的な光学シート特性の悪化をもたらす。このたわみはパターンロールから剥離後に冷却されるシートの冷却速度が均一でないと、シートの各部での冷却度合いの違いからシートの収縮に違いができ結果としてたわみが発生する。
【0020】
一方で、作製したプリズムシート21に図7に示すような、保護層22が必要な場合、保護フィルムもしくはハードコート層を設ける工程が増えるため、生産性が低く高コストとなってしまう。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記の課題を解決するための手段として、請求項第1記載の発明は、押出ダイから溶融した熱可塑性樹脂材料をシート状に吐出し、前記吐出された樹脂材料を成形ロールと加圧ロールによって加圧し一方の面にパターン形状が転写されたシートを形成し、前記シートを、それぞれが温度調整機構を有した複数の搬送ロールからなる温調ロール群を搬送させ、前記各搬送ロールの温度を適宜設定することで前記温調ロール群上での前記シートの冷却速度を制御するようにしたことを特徴とする光学シートの製造方法である。
【0022】
また、請求項2記載の発明は、前記搬送ロールは搬送方向下流ほど低い温度設定となっており、前記シートの冷却速度の制御は、前記成形ロールから剥離した距離によって冷却速度を変化させることで行なわれることを特徴とした請求項1における光学シートの製造方法である。
【0023】
また、請求項3記載の発明は、前記成形ロールから剥離時の樹脂シートの温度を、前記熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tgに対して、20℃以上、+30℃以下の温度範囲とした請求項1または2における光学シートの製造方法である。
【0024】
また、請求項4記載の発明は、前記シートの冷却速度の制御は、前記温調ロール群の搬送方向の下流に至るにつれてシートが次第に冷却され、かつ、前記温調ロール群の搬送方向に沿った各部で前記シートを冷却させる速度が変わるように行なう事を特徴とする請求項1〜3に何れか1項記載の光学シートの製造方法である。
【0025】
また、請求項5記載の発明は、前記温調ロール群は、パターン形状が転写されていない前記シートの平滑面と接触し、前記シートの冷却速度の制御は、パターン形状が転写された面より冷却速度を速くすることにより行なわれ、前記光学シートの平滑面側の硬度を、パターン形状が転写された面より高くする事を特徴とする請求項1〜4に何れか1項記載の光学シートの製造方法である。
【0026】
また、請求項6記載の発明は、前記搬送ロールの表面は鏡面で形成されている事を特徴とする請求項1〜5に何れか1項記載の光学シートの製造方法。
【発明の効果】
【0027】
本発明のプリズムシート作成方法によれば、温度調整用の搬送ロールを有することにより、光学フィルム作製の際に発生するフィルムのたわみを抑制し優れた外観を得られる。
【0028】
この温度調整用の搬送ロールで、シートの冷却速度を調整することにより、特に形状の転写が困難なプリズムシートにおいてたわみを抑制するだけでなく、形状転写後の冷却速度が遅くプリズムシートの転写率を向上させることが可能となる。
【0029】
更には温度調整用の搬送ロールによって、冷却速度を制御することによって、プリズム形状転写側の裏面となる平滑面の硬度を賦形面と比べ高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の熱可塑性樹脂シートを作製するための製造装置の全体構成図を示す。
【図2】本発明に係わるプリズム形状を作製する場合のパターンロール外略図を示す。
【図3】本発明に係わる熱可塑性樹脂に形状が転写された後、パターンロールからの剥離部からの距離とシート温度変化の傾向の一例を示す。
【図4】(比較例1)および(比較例2)を行う際の製造装置の全体構成図を示す。
【図5】(実施例1、2)および(比較例1、2)にて得られたパターンシートの概略図を示す。
【図6】(実施例1、2)および(比較例1、2)における剥離部からの距離および樹脂フィルムの温度を示す。
【図7】保護面を有するプリズムシート形状を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。
【0032】
本発明に用いられる熱可塑性樹脂は、光学フィルムの製造に適した樹脂を選ぶ必要がある。光学フィルムの製造には透明な透明性、耐熱性、耐湿性、耐衝撃性が必要となる。例えば液晶表示装置にしようする場合、耐熱性、耐湿性、耐衝撃性を備えていることが求められる。このような熱可塑性樹脂には、例えばポリカーボネート樹脂、アクリル系樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリオレフィン樹脂からなる樹脂が適している。
【0033】
図1に示すように、加圧ロール、パターンロールと温調ロールを備えた押出成形装置は、原料を供給するためのホッパー11から、熱可塑性樹脂を過熱混練する押出機12、フィルム状に溶融樹脂を吐出するTダイ13、Tダイから吐出した樹脂フィルム14、パターン形状を成形するためのパターンロール15、パターンロール15に樹脂を加圧し押さえるための加圧ロール16、成膜したフィルムを搬送および冷却速度を調整する温調ロール群17、フィルムを巻取る巻取り機18からなる。
温調ロール群17は、下流程低温に設定されており、各部でフィルムの冷却速度を調整できるように温度を調整可能な複数の搬送ロール(冷却ロール)で構成され、少なくとも2つ以上の搬送ロールを有する。
【0034】
パターンロール15は中心軸を回転の軸とし回転可能になっており、温度調整機構を持った構成をしている。温度調整機構はロール内部に温調媒体として油等を循環させて行い、25℃から200℃の間で温度調整をし、温度調整には温調機器等を使用し行う。
【0035】
パターンロール15は25℃以上、200℃以下で調整可能であるが、設定温度はガラス転移温度Tg−20℃以上、ガラス転移温度Tg+30℃以下が成形時に適していることを特徴とする。ガラス転移温度Tg−20℃未満で成膜すると凹凸形状を十分に転写することができず、ガラス転移温度Tg+30℃より高く設定するとパターンロール15で転写した凹凸形状は転写フィルム温度が形状を保てる温度より高いため、形状が崩れてしまう。またガラス転移温度Tg+30℃以上に設定すると剥離時に樹脂フィルムが剥がれず、ロールに張り付いてしまう。
【0036】
パターンロール15にはTダイ13から吐出された熱可塑性樹脂に凹凸パターンを転写するための形状15a(図2)が彫られている。この形状は例えばプリズム形状をしており、Tダイ13から吐出したフィルム14に凹凸形状を転写するものである。
【0037】
凹凸形状の転写には、形状を付与するパターンロール15と加圧する加圧ロール(弾性ロール)16によって狭圧することによってパターンフィルムを得る。
【0038】
温調ロール群17では上流からから下流にいくに従い搬送ロール温度が下がっていくように設定されており、各搬送ロール(冷却ロール)に温調機能を有しており凹凸形状が転写されたフィルムに様々な温度履歴を経て冷却することができるため、冷却速度を使用する樹脂やフィルムに転写する形状によって変更可能となる。
各搬送ロールは回転可能であってもよく、あるいは、巻取り機18に同期させて回転駆動してもよい。
【0039】
また、温調ロール群17には各搬送ロールに温調機能を有しているので、冷却速度を選択的に変更、調整することが可能となる。
【0040】
ここで、温調ロール群17の温調機能は内部に温度調整媒体を流すための流路を設けており、温度調整媒体として例えば油や水を使用し温度調整機器等を用い、この油もしくは水等の媒体によって搬送ロール温度を調整する。
【0041】
また、温調ロール群17に接したシート裏面の平滑面では冷却速度がパターンシート形状転写面より速くなる。よって冷却速度が速い平滑面側ではより樹脂が収縮し密度が大きくなることから、パターン面よりも密度が高く硬度が高い平滑面が得られることが可能となっている。
【0042】
また、温調ロール群17(搬送ロール)の材質はロール芯材として金属が適しており、表面の材質は金属、セラミック、樹脂等の限定は無いが表面の材料として金属を使用しCrメッキを施すことにより耐腐食性、耐久性を良くし、溶融樹脂の張り付きを抑制できる。よってCrメッキを施すことが好ましいと考えられる。
【0043】
温調ロール群17は鏡面である必要があり、また熱の影響を成膜したシートに均一に与えるために、作製するシート幅より広いロール幅が必要である。
【0044】
【表1】

【0045】
表1に示したのは温調ロール群17の冷却過程の例であり、段階的に冷却速度を変化させている。言い換えると、温調ロール群17の搬送方向の下流に至るにつれてシートが次第に冷却され、かつ、温調ロール群17の搬送方向に沿った各部でシートを冷却させる速度が変わるようにしている。また図3には各段階での冷却過程の範囲を示しており、パターンロール15のフィルム剥離部20からの距離Lが200mmにおいてガラス転移温度Tg−50℃以上、ガラス転移温度Tg−10℃以下となる範囲にすることでパターンロール15から剥離後に転写した凹凸模様が変形することなく保持される。ガラス転移温度Tg−10℃より高く温度を設定すると剥離後に形状が崩れてしまう。また、ガラス転移温度Tg−50℃未満においては冷却速度が速すぎるために成膜したシートにたわみを発生させてしまう。200mm以降においては、表1に示した冷却速度範囲を外れるとシートにたわみを発生させる設定温度となる。
【0046】
パターンロール15の形状は特に限定されず、プリズム形状、レンチキュラー形状、マイクロレンズ形状と様々な形状をとることができ、用途によって彫刻形状を決定することができる。
【0047】
本発明で作製したパターンを転写した樹脂シートは、液晶表示装置、照明等の光学部材(光学シート)として使用されることを特徴としている。
【実施例】
【0048】
(実施例1)
ポリカーボネート樹脂(帝人化成:パンライト L-1250Z100 一般タイプ)を使用し、単軸押出機(口径32mm、L/D=24)にTダイ(有効幅330mm)を取付け、シート状に溶融樹脂を押し出した。Tダイよりシート厚が250μmとなるようにシートを吐出し成膜を行った。また、弾性ロール16は直径160mm、幅400mmのゴムロールを使用し、パターンロール15は直径300mm、幅400mmの金属ロールを使用した。パターンロールには断面形状頂点の角度が90°、ピッチ100μm、高さ50μmの三角形をロール幅方向に連続的に凹凸形状を380mm幅で配した。パターンロール15と弾性ロール16で構成されたニップ部においてパターンロール温度を100〜150℃とし、温調ロール群17は冷却速度が剥離後200mm部まで8℃/s、200〜400mm部で0.6℃/s、400〜600mm部で0.6℃/s、600〜800mm部で5.6℃/s、800〜1400mm部で1.3℃/sで冷却されるように設定し、ライン速度を3.0m/分で運転し、単軸押出機のスクリューの回転数を90回転/分とし、パターンロール15と弾性ロール16のニップ部での溶融樹脂温度を290℃としパターンシートを成膜した。
【0049】
(比較例1)
温調ロール群17を使用せず、搬送ロール(冷却ロール)を1本に設定した他は実施例1と同様の条件でパターンシートを成膜した。搬送ロール(冷却ロール)を1本としたことで冷却速度が変化して、図4に示したパターンロール15からの剥離部20と搬送ロール(冷却ロール)19との接点L(400mm)の間での冷却速度は0.5℃/s、搬送ロール(冷却ロール)に接触した以降(パターンロールから剥離後400mm以降)において12℃/sで冷却されるように設定し成膜した。
【0050】
(実施例2)
ライン速度を2.0m/分で運転し、単軸押出機のスクリューの回転数を50回転/分とし、ニップ部での溶融樹脂温度を270℃としパターンシートを成膜し、それ以外の条件は実施例1と同様の条件で成膜した。
【0051】
(比較例2)
温調ロール群17を使用せず、搬送ロール(冷却ロール)を一本に設定し冷却速度を変更した他は実施例2と同様の条件でパターンシートを成膜した。また、搬送ロール(冷却ロール)を1本にしたことで冷却速度の変化が、比較例1と同様の条件となる。
【0052】
(比較例3)
温調ロール群17を使用せず、搬送ロール(冷却ロール)を一本に設定し冷却速度を変更した他は実施例1と同様の条件でパターンシートを成膜した。搬送ロール(冷却ロール)を1本としたことで冷却速度が変化して、図4に示したパターンロール15からの剥離部20と搬送ロール(冷却ロール)19との接点L(400mm)の間での冷却速度は0.2℃/s、冷却ロールに接触した以降(パターンロールから剥離後400mm以降)において0.2℃/sで冷却されるように設定し成膜した。
【0053】
上記実施例1〜2および比較例1〜3は図5に示した形状のシートを作製するよう、パターンロール形状を設定した。
【0054】
【表2】

【0055】
上記のように実施例1および実施例2と比較して比較例1、比較例2および比較例3は表2に示した。本発明の効果を得られる冷却速度範囲を外れている。また、実施例1〜2と比較例1〜3の評価結果を示している。この評価結果から実施例1〜2の転写率は比較例1〜2と同じ値を保っており、なおかつシート外観のたわみが改善されている。また比較例3では転写率の低下および、たわみが発生している。よって、温調ロール群17を使用することは光学シート作製に有効である。
【0056】
【表3】

【0057】
上記のように実施例1および実施例2において形状転写面と形状を転写してない平滑面のビッカース硬度を表3に示した。形状転写面のビッカース硬度をHv1、平滑面のビッカース硬度をHv2とし比を取ると、Hv2/Hv1=1.08となる。よって平滑面側において8%の硬度の向上している。よって、温調ロール群17を使用することはシート裏面における平滑面の硬度向上に有効である。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明の条件でパターンシートの成膜を行うことで、転写した形状を損なうことなく、その上たわみが発生せず、優れた外観をもった液晶表示装置や、照明器具に用いることができ、またパターンシートの平滑面側の硬度を高くした光学シートの作製ができる。
【符号の説明】
【0059】
11 ホッパー、12 押出機、13 Tダイ、14 吐出フィルム、15 パターンロール、16 加圧ロール、17 温調ロール群、18 巻き取りロール、15a パターンロール形状、19 冷却ロール、20 シート剥離部、21 プリズムシート面、22 シート保護面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出ダイから溶融した熱可塑性樹脂材料をシート状に吐出し、
前記吐出された樹脂材料を成形ロールと加圧ロールによって加圧し一方の面にパターン形状が転写されたシートを形成し、
前記シートを、それぞれが温度調整機構を有した複数の搬送ロールからなる温調ロール群を搬送させ、
前記各搬送ロールの温度を適宜設定することで前記温調ロール群上での前記シートの冷却速度を制御するようにした、
ことを特徴とする光学シートの製造方法。
【請求項2】
前記搬送ロールは搬送方向下流ほど低い温度設定となっており、
前記シートの冷却速度の制御は、前記成形ロールから剥離した距離によって冷却速度を変化させることで行なわれることを特徴とした請求項1における光学シートの製造方法。
【請求項3】
前記成形ロールから剥離時の樹脂シートの温度を、前記熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tgに対して、20℃以上、+30℃以下の温度範囲とした請求項1または2における光学シートの製造方法。
【請求項4】
前記シートの冷却速度の制御は、前記温調ロール群の搬送方向の下流に至るにつれてシートが次第に冷却され、かつ、前記温調ロール群の搬送方向に沿った各部で前記シートを冷却させる速度が変わるように行なう事を特徴とする請求項1〜3に何れか1項記載の光学シートの製造方法。
【請求項5】
請求項4における前記温調ロール群は、パターン形状が転写されていない前記シートの平滑面と接触し、
前記シートの冷却速度の制御は、パターン形状が転写された面より冷却速度を速くすることにより行なわれ、前記光学シートの平滑面側の硬度を、パターン形状が転写された面より高くする事を特徴とする請求項1〜4に何れか1項記載の光学シートの製造方法。
【請求項6】
前記搬送ロールの表面は鏡面で形成されている事を特徴とする請求項1〜5に何れか1項記載の光学シートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−152657(P2011−152657A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−14109(P2010−14109)
【出願日】平成22年1月26日(2010.1.26)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】