説明

光学シートの製造方法

【課題】 光学シートの背面にドットパターン印刷を施す際に、印刷面におけるスジの発生を抑制することにより、光学シートを用いた製品の品質向上を図ることができる光学シートの製造方法および製造装置を提供する。
【解決手段】 導光板を製造する際のドットパターン印刷において、インクジェットノズル51から導光板の原板60に対してインクを噴射する。このとき、原板60の非印刷面を吸引吸着して反りを排除し、ジェットノズル51と原板60との距離であるギャップ距離Dが2.8mm以下に調整されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学シートとその製造方法および製造装置並びにこの光学シートを用いた面光源装置および透過型画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ(透過型画像表示装置)の面光源装置として用いられるバックライトには、いわゆる直下型のものやエッジライト型のものが知られている。このうち、直下型の面光源装置は、冷陰極管やLED等の光源を導光板の背面側に並べて、導光板の背面から入射した光を正面側に出射するものである。
【0003】
一方のエッジライト型の面光源装置は、冷陰極管やLED等の光源を透明な板である導光板の側面に並べて、導光板の側面から入射した光を正面側に出射するものである。従来のバックライトとしては、輝度を高くできるという観点から直下型の面光源装置が多く用いられていた。しかし、近年においては、薄くて高輝度なLED光源の使用が増加していることや、液晶ディスプレイの薄型化に伴ってエッジライト型の面光源装置の使用割合が増加している。
【0004】
このようなエッジライト型の面光源装置における導光板では、背面にドット印刷を施すことにより、側面から入射した光を背面で乱反射させて、正面から出射させるようにしている。導光板の背面にドット印刷を施す方法としては、スクリーン印刷による方法が知られている(たとえば、特許文献1参照)。しかしながら、スクリーン印刷によってドット印刷を施す際には、パターンごとに個別の版を用意する必要がある。このため、スクリーン印刷では、自由度が低いという問題があった。
【0005】
他方、スクリーン印刷以外の方法としては、インクジェットを用いたドットパターン印刷が知られている(たとえば、特許文献2参照)。インクジェットを用いることにより、多数の版を用意する必要はなくなるため、印刷パターンが多様化したとしても対応できるように自由度を高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−49421号公報
【特許文献2】特開2006−136867号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、近年、この種の導光板を用いた面光源装置には、高精度、たとえば150dpi以上のものが求められるようになってきた。
【0008】
また、近年、液晶表示ディスプレイがテレビなどに適用されて導光板の大型化及び薄型化が求められる傾向にある。導光板を製造するにあたり、導光板原板は反りがない板状であることが理想的であるが、実際には、保管中の吸湿や不均一の加熱などにより、反りやたわみが発生する。導光板の大型化及び薄型化に伴い、このような反りの影響が顕著となることが想定される。
【0009】
しかし、上記特許文献2に開示された導光板に対しては、高い精細度に対する要求、及び導光板原板の反り改善に対する要求は高くなかった。このため、上記特許文献2に開示されたドットパターン印刷を用いた導光板では、ドットパターン印刷を行った際に、ドット間距離の不均一さやドット形状の乱れが原因となって印刷面にスジが見えてしまうことがあった。このように印刷面にスジが見えてしまうと、光学シートを用いた液晶ディスプレイなどの品質の低下を招いてしまうという問題があった。
【0010】
そこで、本発明の課題は、光学シートの背面にドットパターン印刷を施す際に、印刷面におけるスジの発生を抑制することにより、光学シートを用いた製品の品質向上を図ることができる光学シートの製造方法および製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決した本発明に係る光学シートの製造方法は、光源から出射される光を入射する入射面が側面に形成され、入射した光の出射面が表面に形成された光学シートにおける原板の背面に対して、インクジェットノズルからインクを噴射するインクジェットを用いたドットパターン印刷によってドットパターンが印刷された光学シートを製造する光学シートの製造方法であって、ドットパターン印刷を行う、原板の非印刷面を吸引吸着して反りを排除し、インクジェットノズルと光学シートの原板との距離が、2.8mm以下に調整されていることを特徴とする。
【0012】
一般に、低精細のドットパターンを形成する場合には、インクジェットノズルと原板との距離が遠い場合でも印刷パターンにスジが生じることはほとんどなかったため、インクジェットと原板との接触を避けるために、ギャップ距離を大きくとっていた。しかし、高精細のドットパターンを形成する場合には、ギャップ距離が大きいと、印刷パターンにスジが発生することがあり、このスジによって製品の品質が低下する問題が生じた。この点、本発明に係る光学シートの製造方法においては、ドットパターン印刷を行う、原板の非印刷面を吸引吸着して反りを排除し、インクジェットノズルと原板との距離が、2.8mm以下に調整されている。原板の非印刷面を吸引吸着して反りを排除することで、インクジェットノズルと原板との距離が、2.8mm以下に調整されていることにより、光学シートにおけるドットパターン印刷の印刷面におけるスジの発生を抑制することができる。したがって、光学シートを用いた製品の品質向上を図ることができる。なお、ドットパターン印刷を行う際のインクジェットノズルと原板とのより好ましい距離は1.8mm以下であり、さらに好ましい範囲は1.0mm以下である。
【0013】
ここで、ドットパターン印刷を行う際のインクジェットノズルと原板との距離が2.8mm以下に調整されている態様とすることができる。
【0014】
導光板などの光学シートに用いられる原板は、完全に平面状となることは少なく、若干の反りを生じることが多い。この反りの影響によってインクジェットノズルと原板との距離が長くなりすぎると、印刷面におけるスジの発生が懸念される。この点、ドットパターン印刷を行う際、原板の非印刷面を吸引吸着して反りを排除し、インクジェットノズルと原板との距離が2.8mm以下に調整されていることにより、印刷面におけるスジの発生をより確実に抑制することができる。その結果、さらに光学シートを用いた製品の品質向上を図ることができる。
【0015】
さらに、原板の厚さが4.5mm以下である態様とすることができる。
【0016】
このように、原板の厚さは4.5mm以下に調整されているのが好適である。また、原板の厚さは、2.0mm以下に調整されているのがさらに好適である。
【0017】
また、ドットパターン印刷を行う際に、原板はテーブル上に載置されており、インクジェットノズルとテーブルとの距離が、2.8mmに原板の厚さを加算した距離以下とされている態様とすることができる。
【0018】
このように、原板の厚さを加味することにより、インクジェットと原板との距離を、原板が載置されたテーブルとインクジェットノズルとの間の距離で管理することができる。
【0019】
光学シートの製造方法によって製造された光学シートとすることもできるし、この光学シートの入射面の側方に配置された光源と、を備える面光源装置とすることもできる。さらに、この面光源装置を備え、光学シートの出射面に対向して配置され、光源から出射された光に照射されて画像を表示する透過型画像表示部を備える透過型画像表示装置とすることもできる。
【0020】
他方、上記課題を解決した本発明に係る光学シートの製造装置は、光源から出射される光を入射する入射面が側面に形成され、入射した光の出射面が表面に形成され、背面に対して、インクジェットノズルからインクを噴射するインクジェットを用いたドットパターン印刷によってドットパターンが印刷された光学シートを製造する光学シートの製造装置であって、ドットパターン印刷を行う際、原板の非印刷面を吸引吸着して反りを排除し、インクジェットノズルと、原板が載置されるテーブルとの距離が、2.8mmに原板の厚さを加算した距離以下に調整されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る光学シートの製造方法および製造装置によれば、光学シートの背面にドットパターン印刷を施す際に、印刷面におけるスジの発生を抑制することにより、光学シートを用いた製品の品質向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施形態に係る導光板を用いた透過型画像表示装置を模式的に示す分解側断面図である。
【図2】実施形態に係る導光板を用いた透過型画像表示装置を模式的に示す平面図である。
【図3】実施形態に係る導光板製造装置を示す斜視図である。
【図4】ドットパターン印刷を行う際のインクジェットノズルと導光板の原板との関係を模式的に示す側面図である。
【図5】ドットパターン印刷が行われる際に導光板を載置する搬送ベルトを示す平面図である。
【図6】(a)(b)とも、印刷ドットの他の配置パターンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、各実施形態において、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略することがある。また、図示の便宜上、図面の寸法比率は説明のものと必ずしも一致しない。
【0024】
本発明においては、液晶表示装置などの透過型画像表示装置に用いられる面光源装置における光学シートである導光板の製造方法におけるドットパターン印刷が主に特徴的である。本実施形態では、まず、導光板を含む液晶表示装置の構造について説明し、続いて、導光板の製造方法におけるドットパターン印刷について説明する。
【0025】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る導光板を用いた液晶表示を模式的に示す分解側断面図、図2は、その背面図である。図1に示すように、透過型画像表示装置である液晶表示装置1は、透過型画像表示部10および面光源装置20を備えている。面光源装置20は、透過型画像表示部10の背面側に配置されており、透過型画像表示部10の背面側から光を照射している。以下の説明では、図1に示すように、面光源装置20と透過型画像表示部10の配列方向をZ方向(板厚方向)と称し、Z方向に直交する2方向であって互いに直交する2方向をX方向およびY方向と称す。
【0026】
透過型画像表示部10は、液晶セル11および直線偏光板12を備えており、液晶セル11の両面側に直線偏光板12が配設されている。液晶セル11、直線偏光板12は、既知の液晶表示装置において用いられるものを用いることができる。液晶セル11としては、TFT型、STN型等の公知の液晶セルを例示することができる。
【0027】
面光源装置20は、光学シートである導光板30と、LED光源22とを備えている。導光板30は、光を透過させる透光性樹脂から形成され板状を成している。なお、導光板30は、シート状でもよく、フィルム状でもよい。また、導光板30の厚みTは、1.0mm以上4.5mm以下であることが好ましい。
【0028】
導光板30は、透光性樹脂からなる板状の部材を備えている。透光性樹脂の屈折率は、たとえば1.49〜1.59の範囲内である。導光板30に使用される透光性樹脂としては、メタアクリル樹脂が主として用いられる。導光板30に使用される樹脂として、その他の樹脂を用いてもよく、スチレン系の樹脂を用いてもよい。透光性樹脂としては、アクリル樹脂、スチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、環状オレフィン樹脂、MS樹脂(アクリルとスチレンの共重合体)などを用いることができる。さらに、導光板30には、光拡散剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、光重合安定剤などの添加剤を添加することもできる。
【0029】
また、導光板30は、直方体をなしており、図2に示すように、Z軸方向(厚み方向)に対向する一対の主面である表面31および背面32を備えている。また、導光板30は、X軸方向に対向する一対の側面33およびY軸方向に対向する一対の側面34を備えている。表面31および背面32は、側面33,34と交差する方向、さらに言えば、側面33,34と直交する方向に形成されている。これらの表面31、背面32、側面33,34は、いずれも長方形状をなしている。
【0030】
このうち、表面31は、平坦である面であったり、凹凸が付与された面であったりすることができる。表面31に凹凸を付与する場合には、たとえば、Z軸方向に突出し、その長手方向がX軸方向に沿う複数の突条部をY軸方向に離間させて互いに平行に並べて配置することができる。突条部の形状としては、表面がプリズム形状となる形状とすることができ、突条部を長手方向に直交する方向で切断した際の断面形状が、半円形状、半楕円形状となる形状とすることができる。また、突条部は、長手方向に直交する方向で切断した際の断面形状が同一形状となるようにすることが好ましい。なお、突条部が延在する方向は、光源から出射される光が導光板の側面から入射する際の入射方向と平行であることが望ましい。
【0031】
また、表面31は、面状の光を出射可能な面として機能する。表面31は、透過型画像表示部10側に配置され、背面32は、透過型画像表示部10とは反対側に配置される。導光板30の正面側においては、導光板30と透過型画像表示部10との間に、各種フィルム41が配置されている。さらに、背面32と対面する位置には、導光板30内の光を表面31側へ反射させる反射シート42が配設されている。各種フィルム41としては、拡散フィルム、プリズムフィルム、輝度向上フィルムなどが挙げられる。
【0032】
LED光源22は、導光板30の側方であって、導光板30のY軸方向に延在する側面33と対向して配置されている。導光板30における側面33は、LED光源22から出射される光を入射する入射面となる。複数のLED光源22は、側面33の長手方向(Y軸方向)に沿って、離散的に配置されている。導光板30における側面33から入射した光は、表面31から出射する。導光板30の表面は、側面33から入射した光を出射する出射面となる。
【0033】
LED光源22の配置間隔は、通常5mm〜20mmとされている。LED光源22は、Y軸を挟んで対向する側面33に沿って配置されている。この態様に代えて、導光板30の4辺のそれぞれに沿って配置されていてもよく、X軸を挟んで対向する側面34に沿って配置されてもよい。あるいは、側面33,34のうちのいずれか1辺に沿って配置されていてもよい。また、光源は、LED光源に限らずその他の光源でもよい。さらに、光源としては、冷陰極管などの線状光源が配置されている構成でもよい。
【0034】
LED光源22は、たとえば白色LEDで構成されており、一つの箇所に複数のLEDを配置して一つの光源単位を構成している。また、一つの光源単位としては、赤色、緑色、青色の異なる三色のLEDが、近接され並べられて配置されていてもよい。ここで、複数のLEDを有する光源単位が、上述した配置方向に沿って離散的に配置される場合には、異なる色のLED同士は可能な限り近づけられて配置されていることが好ましい。
【0035】
LED光源としては、様々な出光分布を有するものが使用可能であるが、LED光源の法線方向(X軸方向)の光度が最大であり、光度分布の半値幅が40度以上80度以下である出光分布を有するものが、好適である。また、LED光源のタイプとしては、具体的に、ランバーシアン型、砲弾型、サイドエミッション型などが挙げられる。
【0036】
導光板30を平面視した際のサイズは、目的とする透過型画像表示部10の画面サイズに適合するように設定される。具体的に、直交する2辺の長さが、通常250mm×440mm以上(対角線の長さLが506mm以上)であるものが用いられる。さらには、500mm×800mm以上(対角線の長さLが943mm以上)の大型サイズのものが用いられることもある。あるいは、導光板30の平面視形状は、長方形とされているが、正方形などの他の形状とすることもできる。また、導光板30の原板(透光性樹脂シート)の厚さTは、4.5mm以下とし、たとえば2.0mmや1.0mmとすることもできる。
【0037】
また、導光板30の原板60は、下記式(1)を満たしていてもよい。
【数1】

ただし、Lは、原板の対角線の長さ(mm)、Tは、原板の厚み(mm)である。なお、対角線の長さLは、500mm以上である。
【0038】
さらに、導光板30の背面32には、複数の印刷ドット35が形成されている。印刷ドット35は、インクジェットを用いたドットパターン印刷によって形成される。印刷ドット35は、背面32におけるLED光源22に近い方がその径が小さく、LED光源22から離れるにつれて徐々に径が大きくなるように形成されている。
【0039】
また、印刷ドット35については、図2に示す形態のほか、たとえば、図6(a)に示すように、略同一の大きさの複数の印刷ドット35が導光板30の背面側に略同一間隔で格子状に配置されている態様とすることもできる。印刷ドット35を格子状に配置する場合には、正方格子、三角格子、立方格子、六方格子、籠目格子などとすることができる。あるいは、図6(b)に示すように、略同一の大きさの複数の印刷ドット35をランダムに配置する態様とすることもできる。その他、これらの態様で印刷ドット35の大きさが適宜変わる態様とすることもできる。
【0040】
続いて、導光板30の製造方法におけるドットパターン印刷について説明する。ドットパターン印刷はインクジェットを用いて行われている。インクジェットを用いたドットパターン印刷を行う際には、導光板30を製造する際の原板に対して、インクジェットノズルからインクを噴射してドットパターンを印刷する。
【0041】
図3は、実施形態に係る導光板製造装置を示す斜視図である。ドットパターン印刷を行う際には、図3に示すような導光板製造装置(光学シートの製造装置)200が用いられる。図3に示す導光板の製造装置200は、透光性樹脂シート60(導光板30の原板)を搬送する搬送手段70と、インクジェットヘッド50とを備えている。また、製造装置200は、原板60の移動方向Aにおいて、インクジェットヘッド50の下流側に、図示しないUVランプ及び検査装置を備えている。
【0042】
搬送手段70は、透光性樹脂シート60を載置して搬送する搬送ベルト71と、搬送ベルト71を移動させる一対の搬送ローラー72(図3では、一方のみを図示している)と、搬送ベルト71に載置された透光性樹脂シート60を吸引するための吸引ボックス73とを備えている。
【0043】
搬送ベルト71は、一対の搬送ローラー72に架け渡されて水平方向(図示A方向)に延在している。駆動側の搬送ローラー72は、図示しないモーターによって回転駆動され、搬送ベルト71を移動させる。原板60の印刷面60aが上側に向けられ、印刷面60aとは反対側の面である非印刷面60bが、搬送ベルト(テーブル)71に当接して配置される。
【0044】
吸引ボックス73は、箱型を成し、上下方向に離間した搬送ベルト71,71間に配置されている。吸引ボックス73は、移動方向Aに沿って複数配置されている。吸引ボックス73は、例えば真空ポンプなどの排気手段に接続され、箱内が減圧可能な構成となっている。
【0045】
図4は、ドットパターン印刷を行う際のインクジェットノズルと導光板の原板との関係を模式的に示す側面図である。インクジェットヘッド50には、複数のインクジェットノズル51が設けられている。図5は、ドットパターン印刷が行われる際に導光板を載置する搬送ベルトを示す図である。吸引ボックス73は、搬送ベルト71を載置する天板73aを有している。この天板73aの外表面は、平坦面を成し、搬送ベルト71を摺動させる面を構成する。そして、搬送ベルト71上に透光性樹脂シート60が載置される。すなわち、搬送ベルト71は、原板60が載置されるテーブルとして機能する。
【0046】
吸引ボックス73の天板73a及び搬送ベルト71には、複数の開口部73b,71aが設けられている。開口部73b,71aの間隔は、例えば5cm程度とされている。開口部73b,71aの形状は、円形以外の形状でもよい。搬送ベルト71が所定の位置に配置されると、搬送ベルト71の開口部71aと天板73aの開口部73bとが一致する。そして、真空ポンプ部を作動させて、吸引ボックス73内が減圧されると、搬送された原板60の非印刷面60bが搬送ベルト71上で吸着され、反りが排除される。そして、原板60が載置されている搬送ベルト71(テーブル)とインクジェットノズル51との距離が、2.8mmに原板60の厚さTを加算した距離以下に調整されている。
【0047】
なお、導光板製造装置200では、原板60を連続的又は間欠的に搬送可能である。また、原板60が載置されるテーブルは、搬送ベルト71に限定されず、その他の搬送トレイなどでもよい。また、導光板製造装置200は、搬送手段を備えていない構成でもよい。テーブルに原板60を載置して、原板60の非印刷面60bを吸引吸着して、原板60の反りを排除すればよい。
【0048】
導光板30を製造する場合、まず、原板60(導光板30が有する透光性樹脂シート)の背面(32)となるべき原板60の表面に撥液処理を施してもよい。
【0049】
撥液処理の程度としては、撥液処理された原板60の表面に水滴を滴下した際の接触角が80度〜130度、好ましくは85度〜120度、より好ましくは90度〜110度である。接触角を80度以上とすることで、反射ドット(印刷ドット)35,35同士の連結を防止することができ、また、より密に反射ドット35を設けることができる。更に、接触角を130度以下とすることで、反射ドット35と、原板60の密着性を高く保つことが可能である。
【0050】
撥液処理の例は、撥液処理剤としての表面改質剤を用いる処理、各種エネルギー線による処理、化学吸着による処理、材料表面におけるグラフト重合による処理などである。
【0051】
表面改質剤を用いる処理は、原板60の表面上に少量の表面改質剤を添加した撥液層を形成する処理である。撥液処理剤としての表面改質剤の例は、パーフルオロアルキル基(Rf基)を側鎖に有するビニル系のポリマーやRf基含有シリコーンなどである。撥液層は、表面改質剤を紙ウエス等に染み込ませて表面に塗布したり、表面改質剤をスプレーやインクジェット印刷により表面に吹き付ける等の方法で形成することができる。
【0052】
各種エネルギー線による処理は、エネルギー線により表面に撥液性をもたせる処理である。エネルギー線の例は、プラズマ、電子線、イオンビームなどである。プラズマ処理を利用した場合の撥液処理の例は、プラズマ・エッチングによって表面を粗化した後に、粗化された表面に例えば撥液性の単分子膜を形成すること、フッ素系ガスプラズマによる表面のフッ素化、撥液化合物から構成される被膜をプラズマCVDによって表面に形成すること、プラズマ重合によって表面上に撥液性薄膜を形成すること等である。
【0053】
表面粗化による処理の例は、熱プレスによる原板60の表面への凹凸形状の付与、薬品によるエッチング、ブラスト処理などである。
【0054】
化学吸着による処理では、吸着分子の末端をフッ素で修飾することが好ましい。特に、末端の置換基としてはCF3基が撥液性の観点から好ましい。
【0055】
このような処理の例のうち、フッ素系ガスプラズマによる表面のフッ素化が簡便で且つ均一に表面処理を行える点で好ましい。
【0056】
搬送ベルト71は、図示しないモーターによって矢印Aで示す水平方向に移動可能とされている。インクジェットノズル51から噴射されたインク54は、紫外線硬化樹脂からなり、原板60に着弾した後、円形状に徐々に拡がっていく。さらに、導光板製造装置200は、図示しない紫外線照射装置を備えている。インクには顔料を添加してもよく、無添加でもよい。
【0057】
顔料は、好ましくは炭酸カルシウム粒子、硫酸バリウム粒子及び二酸化チタン粒子の少なくとも何れか一つである。炭酸カルシウム粒子、硫酸バリウム粒子及び二酸化チタン粒子それぞれの累積50%粒子径D50は、50〜3000nm、より好ましくは、100〜1500nm、更に好ましくは300〜600nmである。累積50%粒子径D50が50〜3000nmの範囲内にある炭酸カルシウム粒子、硫酸バリウム粒子、二酸化チタン粒子は、市販品から粒度分布に基づいて適宜選択することにより入手が可能である。顔料のインクにおける含有割合は、通常、インクの全体質量を基準として0.5〜15.0質量%程度である。炭酸カルシウム粒子、硫酸バリウム粒子及び二酸化チタン粒子の少なくとも一つである顔料を利用したインクは、無機物を利用したインクである。
【0058】
光重合性成分は、ビニル基等の光重合性官能基を有し、好ましくはヒドロキシル基を有しない光重合性モノマー及び/又は光重合性オリゴマーから構成される。ヒドロキシル基を有しない光重合性モノマーの含有割合は、好ましくは、インクの全体質量を基準として65〜75質量%である。ヒドロキシル基を有しない光重合性オリゴマーの含有割合は、好ましくは、インクの全体質量を基準として10〜20質量%である。
【0059】
ヒドロキシル基を有しない光重合性モノマーは、例えば、1,4−ブタンジオールジアクリレート(例えば、サートマージャパン(株)製、SR213)、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(例えば、サートマージャパン(株)製、SR238F)、1,3−ブチレンジアクリレート(例えば、サートマージャパン(株)製、SR212)、1,9−ノナンジオールジアクリレート(例えば、新中村化学工業(株)製、A−NOD−N)、及び、プロポキシ化(2)ネオペンチルグリコールジアクリレート(例えば、サートマージャパン(株)製、SR9003)から選ばれる。
【0060】
ヒドロキシル基を有しない光重合性オリゴマーは、好ましくは、脂肪族ウレタン(メタ)アクリレート(例えば、サートマージャパン(株)製、CN985B88、CN991)を含む。脂肪族ウレタン(メタ)アクリレートは、脂肪族ポリイソシアネートと脂肪族ポリオールとから形成されるポリウレタンオリゴマー鎖と、これに結合したアクリレート基又はメタクリレート基とを有する光重合性オリゴマーである。脂肪族ウレタン(メタ)アクリレートのガラス転移温度は、好ましくは40℃以上である。
【0061】
光重合開始剤は、紫外線硬化型樹脂の分野において通常用いられているものから適宜選択することができる。光重合開始剤のインクにおける含有割合は、通常、0.5〜10.0質量%程度である。
【0062】
インクジェットインクは、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、顔料、光重合性成分及び光重合開始剤以外の成分を含有していてもよい。
【0063】
ドットパターン印刷を行う際には、まず、原板60の非印刷面60bを吸引吸着して反りを排除し、インクジェットノズル51から原板60にインク54を所定量噴射してドットパターン印刷部55を生成する。その後、紫外線照射装置が設けられた位置にドットパターン印刷部55がくるまで、モーターによってテーブル52を移動させて原板53を搬送する。それから、紫外線照射装置によって原板53におけるドットパターン印刷部55に紫外線を照射することにより、インクを硬化させて図2に示す印刷ドット35を生成する。
【0064】
ここで、本実施形態においては、インクジェットノズル51からインク54を噴射する際、原板60の非印刷面60bを吸引吸着して反りを排除することで、インクジェットノズル51と原板53との距離を2.8mmに設定している。低精細のドットパターンを形成する場合には、インクジェットノズル51と原板53との距離(以下「ギャップ距離」という)Dが大きい場合でも印刷パターンにスジが生じることはほとんどなかったため、インクジェットノズル51と原板53との接触を避けるために、ギャップ距離Dを大きくとっていた。
【0065】
しかし、高精細のドットパターンを形成する場合には、ギャップ距離Dが大きいと、印刷パターンにスジが発生することがあり、このスジによって製品の品質が低下する。この点、ここでは、ドットパターン印刷を行う際のインクジェットノズル51と原板60との距離が、2.8mmに調整されている。インクジェットノズル51と原板60との距離が、2.8mmに調整されていることにより、導光板30に施されたドットパターン印刷の印刷面におけるスジの発生を抑制することができる。したがって、導光板30を用いた面光源装置20や液晶表示装置1の品質向上を図ることができる。
【0066】
導光板30に施されたドットパターン印刷の印刷面におけるスジの発生を抑制するためのギャップ距離Dは2.8mm以下となる。さらには、ギャップ距離Dを1.8mm以下とすることにより、さらに好適にスジの発生を抑制することができる。また、ギャップ距離Dは小さい方が望ましいが、ギャップ距離Dの下限値については、ドットパターン印刷を施す際におけるインクジェットノズル51と原板53との接触を避けることができる程度の大きさとすることができる。具体的には、ギャップ距離Dを0.4mm以上、あるいは0.5mm以上とすることができる。これらの観点からは、ギャップ距離は、0.4mm以上2.8mm以下とすることが必要であり、0.5mm以上1.8mm以下とすることが好適であり、0.5mm以上1.0mm以下とすることがさらに好適である。
【実施例】
【0067】
以下、光学シートの印刷面におけるスジの発生状況についての実験を行った。この実験では、ギャップ距離Dを適宜変更して複数の光学シートを製造し、これらの光学シートについて、それぞれスジの発生状況を目視によって評価した。設定したギャップ距離Dは、0.5mm、1.3mm、2.3mm、4.0mm、および9.0mmとした。
【0068】
また、共通の条件として、原板(光学シート)は40インチパネルのものを用いた。また、使用したインクのインク粘度は18.6mPa・s、インク液量は30pLとした。さらに、ドットパターンにおけるドット直径はおよそ130μm程度とした。さらに、原板を搬送する際の走査(搬送)速度は400mm/s、解像度は150dpiとした。また、インクが原板に着弾してから1.5秒後に紫外線照射を行った。紫外線照射の際のUV積算光量は0.25J/cm2とした。
【0069】
その結果、ギャップ距離Dが0.5mm、1.3mm、2.3mmの場合には、いずれもスジの発生がほとんど見られなかった。また、ギャップ距離Dが5.0mmの場合には、隣接するドットにおけるインク同士がくっつき、ライン状にスジが発生する結果となった。さらに、ギャップ距離Dが9.0mmの場合には、非印刷領域にまでインクが飛散し、スジが大きく発生する結果となった。
【0070】
導光板の印刷面を目視した場合、ギャップ距離Dが2.3mmでスジがほとんど見られず、4.0mmでスジがはっきり見られたが、ギャップ距離Dが2.8mm程度であれば、ほとんどスジが見られないものと考えられる。また、ギャップ距離Dが1.3mmであれば、スジはほぼ完全に見られなかった。この結果から、ギャップ距離Dであれば、スジはほぼ完全に見られなくなると考えられる。よって、本発明のギャップ距離Dを2.8mmに規定し、より好適なギャップ距離Dを1.8mmに規定した。
【符号の説明】
【0071】
1…液晶表示装置、10…透過型画像表示部、11…液晶セル、12…直線偏光板、20…面光源装置、22…LED光源、30…導光板、31…表面、32…背面、33,34…側面、35…印刷ドット、41…各種フィルム、42…反射シート、50…インクジェットヘッド、51…インクジェットノズル、52…テーブル、53…原板、54…インク、55…ドットパターン印刷部、60…原板(透光性樹脂シート)、60a…印刷面、60b…非印刷面、70…搬送手段、71…搬送ベルト、71a…開口部、72…搬送ローラー、73…吸引ボックス、73a…天板、73b…開口部、200…導光板製造装置(光学シードの製造装置)、D…ギャップ距離、L…原板の対角線の長さ、T…原板の対角線の長さ、A…原板の移動方向。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源から出射される光を入射する入射面が側面に形成され、入射した前記光の出射面が表面に形成された光学シートにおける原板の背面に対して、インクジェットノズルからインクを噴射するインクジェットを用いたドットパターン印刷によってドットパターンが印刷された光学シートを製造する光学シートの製造方法であって、
前記ドットパターン印刷を行う際、原板の非印刷面を吸引吸着して反りを排除し、前記インクジェットノズルと前記原板との距離が、2.8mm以下に調整されていることを特徴とする光学シートの製造方法。
【請求項2】
前記原板の厚さが4.5mm以下である請求項1に記載の光学シートの製造方法。
【請求項3】
前記原板の対角線の長さLが500mm以上である請求項1又は2に記載の光学シートの製造方法。
【請求項4】
前記原板の対角線の長さLと厚みTが下記式(1)を満たすことを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の光学シートの製造方法。
【数1】

ただし、Lは、原板の対角線の長さ(mm)、Tは、原板の厚み(mm)である。
【請求項5】
前記ドットパターン印刷を行う際に、前記原板はテーブル上に載置されており、
前記インクジェットノズルと前記テーブルとの距離が、2.8mmに前記原板の厚さを加算した距離以下とされている請求項1〜4のうちの何れか一項に記載の光学シートの製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか一項に記載の光学シートの製造方法によって製造された光学シート。
【請求項7】
請求項6に記載の光学シートと、
前記光学シートの入射面に対向して配置された光源と、を備える面光源装置。
【請求項8】
請求項7に記載の面光源装置を備え、
前記光学シートの出射面に対向して配置され、前記光源から出射された光に照射されて画像を表示する透過型画像表示部を備える透過型画像表示装置。
【請求項9】
光源から出射される光を入射する入射面が側面に形成され、入射した前記光の出射面が表面に形成され、背面に対して、インクジェットノズルからインクを噴射するインクジェットを用いたドットパターン印刷によってドットパターンが印刷された光学シートを製造する光学シートの製造装置であって、
前記ドットパターン印刷を行う際、原板の非印刷面を吸引吸着して反りを排除し、前記インクジェットノズルと、前記原板が載置されるテーブルとの距離が、2.8mmに前記原板の厚さを加算した距離以下に調整されていることを特徴とする光学シートの製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−16398(P2013−16398A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−149442(P2011−149442)
【出願日】平成23年7月5日(2011.7.5)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【出願人】(000107907)セーレン株式会社 (462)
【Fターム(参考)】