説明

光学フィルタ、これを備えたディスプレイ及びプラズマディスプレイパネル

【課題】透明で、耐衝撃性に優れ、反射防止性、電磁遮蔽性にも優れたPDP用に好適な光学フィルタを提供すること。
【解決手段】反射防止膜および導電層を含む光学フィルタであって、さらに衝撃緩和層を有し、且つ−10℃での周波数1Hzにおける衝撃緩和層の動的貯蔵弾性率が1×103〜1×106Paの範囲にあり、且つ動的損失弾性率が1×103〜3×105Paの範囲にあることを特徴とする光学フィルタ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマディスプレイパネル(PDP)、ブラウン管(CRT)ディスプレイ、液晶ディスプレイ、有機EL(電界発光)ディスプレイ、表面電界型ディスプレイ(SED)を含む電界放出型ディスプレイ(FED)等の各種ディスプレイに対して反射防止、帯電防止、電磁波遮蔽等の各種機能を有する光学フィルタ、光学フィルタに有利に使用される衝撃緩和層、及びこの光学フィルタを備えたディスプレイ、特にPDPに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ(PDP)、ELディスプレイ等のフラットパネルディスプレイ、及びCRTディスプレイにおいては、外部からの光が表面で反射し、内部の視覚情報が見えにくいとの問題は、従来から知られており、反射防止膜等を含む光学フィルムの設置等、種々対策がなされている。
【0003】
近年、ディスプレイは大画面表示が主流となり、次世代の大画面表示デバイスとしてPDPが一般的になってきている。しかしながら、このPDPでは表示のため発光部に高周波パルス放電を行っているため、不要な電磁波の輻射や赤外線リモコン等の誤動作の原因ともなる赤外線の輻射のおそれがあり、このため、PDPに対しては、導電性を有するPDP用反射防止フィルム(電磁波シールド性光透過窓材)が種々提案されている。この電磁波シールド性光透過窓材の導電層としては、例えば、(1)金属銀を含む透明導電薄膜が設けられた透明フィルム、(2)金属線又は導電性繊維を網状にした導電メッシュを設けた透明フィルム、(3)透明フィルム上の銅箔等の層を網状にエッチング加工し、開口部を設けたもの、(4)透明フィルム上に導電性インクをメッシュ状に印刷したもの、等が知られている。
【0004】
さらに、従来のPDPを初めとした大型ディスプレイでは、反射防止フィルムや近赤外線カットフィルム等の種々のフィルムを貼り合わされているため、パネルのガラスが万一割れた場合にも飛散防止の役目は果たしていると考えられていたが、十分でなく、視認面側からの衝撃に対して緩和機能を有する等の安全規格上の要求事項に応える必要がでてきている。
【0005】
上記衝撃緩和のための粘着層を有するPDP用フィルタが、例えば、特許文献1に記載されている。特許文献1には、その粘着層として、25℃、1000〜10000Hzの条件下における動的貯蔵弾性率が9×104〜4×106Paを有するものが提案されている。
【0006】
【特許文献1】特開2005−23133号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者等の検討によれは、上記粘着層を用いて、反射防止フィルム、電磁波遮断層を有するPDPフィルタを作製し、PDPのガラス板の貼付して、耐衝撃試験を行ったところ、十分な性能が得られない場合があることが明らかとなった。即ち、実際に起こり得る程度の比較的大きい衝撃が加えられた場合、ガラス板が破損することがあることが判明した。例えば、JIS−C−0046或いはIEC−68−2−63で規定されている家庭用電化製品、電気付属品(アクセサリ)、その他これらに類するものの外部から加えられる衝撃に耐えられるかどうか調べるためのスプリングハンマ衝撃試験を行った場合、充分な耐衝撃性を有していないことが明らかとなった。
【0008】
従って、本発明は、透明で、耐衝撃性に優れたディスプレイ用に好適な光学フィルタを提供することを目的とする。
【0009】
また、本発明は、透明で、耐衝撃性に優れ、反射防止性、電磁遮蔽性にも優れたPDP用に好適な光学フィルタを提供することを目的とする。
【0010】
さらに、本発明は、上記優れた特性の光学フィルタが画像表示ガラス板の表面に貼り合わされたディスプレイを提供することを目的とする。
【0011】
さらにまた、本発明は、上記優れた特性の光学フィルタが画像表示ガラス板の表面に貼り合わされたPDPを提供することを目的とする。
【0012】
また本発明は、前記光学フィルタに有利に使用することができる衝撃緩和層を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記特許文献1では、1000〜10000Hzの高い周波数で衝撃性の評価がなされているが、本発明者の検討によれば低周波数の1Hzにおける−10℃での弾性率で規定した方が実際の衝撃性能(前記スプリングハンマ衝撃試験による)との相関があることを見いだした。即ち、本発明者は、「光学フィルタに求められる上記スプリングハンマ衝撃試験による衝撃性能」と「温度分散による粘弾性測定結果(動的貯蔵弾性率及び動的損失弾性率)」との関係を詳しく調査した結果、ひずみ周波数1Hzにおいては、−10℃での弾性率が、上記衝撃性の良否に良く対応していることを見いだした。
【0014】
従って、本発明は、
反射防止膜および導電層を含む光学フィルタであって、
さらに衝撃緩和層を有し、且つ−10℃での周波数1Hzにおける、衝撃緩和層の動的貯蔵弾性率が1×103〜1×106Paの範囲にあり、且つ動的損失弾性率が1×103〜3×105Paの範囲にあることを特徴とする光学フィルタ;
透明基板の一方の表面側に反射防止膜が、他方の表面側に導電層が設けられてなる光学フィルタであって、
導電層のいずれかの表面に衝撃緩和層が設けられており、且つ−10℃での周波数1Hzにおける、衝撃緩和層の動的貯蔵弾性率が1×103〜1×106Paの範囲にあり、且つ動的損失弾性率が1×103〜3×105Paの範囲にあることを特徴とする光学フィルタ(1);
一方の表面側に反射防止膜が設けられた透明基板と、一方の表面側に導電層が設けられ別の透明基板との、2枚の透明基板が、該反射防止膜が形成されていない表面と該導電層とで接着されてなる光学フィルタであって、
該反射防止膜が形成されていない表面と該導電層との間に透明粘着剤層が設けられ、導電層の透明粘着剤層が設けられてない表面側に衝撃緩和層が設けられ、そして−10℃での周波数1Hzにおける、衝撃緩和層の動的貯蔵弾性率が1×103〜1×106Paの範囲にあり、且つ動的損失弾性率が1×103〜3×105Paの範囲にあることを特徴とする光学フィルタ(2);及び
一方の表面側に反射防止膜が設けられた透明基板と、一方の表面側に導電層が設けられた別の透明基板との、2枚の透明基板が、該反射防止膜が形成されていない表面と該導電層とで接着されてなる光学フィルタであって、
該反射防止膜が形成されていない透明基板表面と該導電層との間に衝撃緩和層が設けられ、そして−10℃での周波数1Hzにおける、衝撃緩和層の動的貯蔵弾性率が1×103〜1×106Paの範囲にあり、且つ動的損失弾性率が1×103〜3×105Paの範囲にあることを特徴とする光学フィルタ(3);
にある。
【0015】
上記動的貯蔵弾性率は、上記範囲の下限未満であると、柔らか過ぎて変形に対する応力が小さくなりすぎて復元力が不足し、一方上記範囲の上限超であると、硬すぎて変形に対する応力が大きくなりすぎて緩和層の緩和性能が不足する。また、動的損失弾性率についても同様なことが言える。さらに、低周波数の1Hzにおける−10℃における弾性率について規定したが、前述のように、これはこの条件が実際の衝撃力(前記スプリングハンマ衝撃試験による)との相関が認められたためである。
【0016】
本発明における、動的貯蔵弾性率及び静的損失弾性率は、粘弾性測定装置としてRDA3(レオメトリック・サイエンティフィック社製)を用い、φ=8mmの平行円盤形治具にて、測定厚さ1.0mmで、−60〜100℃の温度分散範囲、昇温速度2℃/分、周波数1Hzにおいて測定したものである。
【0017】
本発明では、衝撃緩和層の衝撃吸収能力の評価を、図8に示す方法で行った。即ち、コンクリート床上に、厚さ5mmの鉄板を載置し、その上にサンプルを固定できるように紙ヤスリ(#150)を置き、その上にサンプル(厚さ2.5mmのガラス板上に衝撃緩和層及び厚さ188μmのPETフィルムを貼付したもの;寸法は5cm角)を載置し、そのPETフィルム上からスプリングインパクトハンマーを所定の衝撃力で衝撃を加えて、ガラス板の損傷を観察した。従って、サンプルは強固に堅い土台に固定して、実際の衝撃を想定した、極めて厳しい条件で試験を行った。
【0018】
本発明の光学フィルタ(一般に光学フィルム)の好適態様は以下の通りである。
(1)動的貯蔵弾性率が、1×104〜1×105Paの範囲にある。また動的損失弾性率が、5×103〜5×104Paの範囲にある。
(2)衝撃緩和層が、アクリル樹脂である。アクリル樹脂を構成するモノマーとして、少なくともアルキルアクリレート(但し、アルキル基の炭素原子数が4〜10個である)を含んでいる。特に2−エチルヘキシルアクリレート)とアクリル酸とを含んでいることが好ましい。
アクリル樹脂を構成するモノマーとして、さらにアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート{好ましくは、アルコキシル基は炭素原子数1〜5個を有し、アルキレングリコールは、エチレングリコール又はプロピレングリコールであり、(アルキレングリコールの繰り返し数)は2〜15である}とヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートとを含んでいることが好ましい。また、また、アクリル樹脂を構成するモノマーとして、さらに(メタ)アクリロイル基を2個以上有する多官能アクリレートモノマー(特にトリメチロールプロパントリアクリレート)を含んでいることが好ましい。このようなアクリル樹脂を使用することにより、前記特定の動的貯蔵弾性率及び静的損失弾性率を有する樹脂を設計しやすい。また、これにより衝撃を吸収し、且つ衝撃による変形から容易に変形前の形に戻りやすい。
(3)衝撃緩和層が、衝撃緩和層が、アルキルアクリレート(但し、アルキル基の炭素原子数が4〜10個である)とアクリル酸とを含むモノマー混合物が部分的に重合された部分重合体・モノマー混合物を硬化させた層である。
(3)衝撃緩和層の層厚が、0.1〜3.0mmの範囲、さらに0.2〜1.0mmの範囲にある。
(4)反射防止膜が、近赤外線遮蔽機能を有する。一般に、反射防止膜を構成する少なくとも1層に色素等の近赤外線を吸収する物質を導入する。
(5)近赤外線遮蔽層を別途設ける場合、衝撃緩和層のいずれかの表面に、近赤外線遮蔽層が設けられる。
(6)本発明の光学フィルタをPDP用として使用する場合、導電層が、電磁波遮蔽機能を有することが必要である。
(7)導電層が、メッシュ状の金属層又は金属含有層である。PDP用として有利である。
(8)最外層の導電層又は近赤外線遮蔽層の、外側表面には透明粘着剤層が設けられる。この透明粘着剤層を用いてディスプレイの表示表面のガラス板に貼付される。
(9)メッシュ状の金属層又は金属含有層の間隙には透明粘着剤層が埋め込まれている。衝撃緩和層を好適に調整することにより、この透明粘着剤層の代わりをすることができる。
(10)透明基板がプラスチックフィルム、特にポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)である。長尺状フィルムを用いることにより連続製造が容易となる。
(11)透明粘着剤層の上に剥離シートが設けられている。取り扱いが容易となる。
(12)反射防止膜の上に保護層(例、保護用ポリマーフィルム)が設けられている。取り扱いが容易となる。
(13)光線透過率が50%以上(好ましくは70%以上)である。ディスプレイの画像が見やすい。
(14)(7)のメッシュ状の金属層又は金属含有層は、エッチングにより、又は印刷法により形成されているか、金属繊維層である。低抵抗を得られやすい。
(15)導電層が、塗工層である。導電層の形成が容易である。
【0019】
導電層が、ポリマー中に無機化合物の導電性粒子が分散された塗工層であることが好ましい。
(16)導電層が、導電性ポリマーの塗工層である。
(17)導電層が、ITO等の金属酸化物層の透明膜である。
(18)導電層が、誘電体層と金属層との交互積層膜である。特に、誘電体層/金属層/誘電体層/金属層/誘電体層の5層以上の積層体が好ましい。透明性、低抵抗性に優れている。
(19)反射防止膜が、少なくとも1層の塗工層を含む。製造が容易である。
(20)反射防止膜が、塗工形成されたハードコート層、及びその上に設けられたハードコート層より屈折率の高い塗工形成された高屈折率層を含む膜、特にハードコート層、塗工による高屈折率層及び塗工による低屈折率層を含む膜であることが好ましい。
【0020】
本発明の光学フィルタは、プラズマディスプレイパネル用フィルタであることが好ましい。
【0021】
また本発明は、上述の衝撃緩和層、即ち、−10℃での周波数1Hzにおける、衝撃緩和層の動的貯蔵弾性率が1×103〜1×106Paの範囲にあり、且つ動的損失弾性率が1×103〜3×105Paの範囲にある衝撃緩和層にもある。
【0022】
上記光学フィルタの好適態様を、上記衝撃緩和層にも適用することができる。
【0023】
さらに、本発明は、上記光学フィルタが画像表示ガラス板の表面に貼り合わされていることを特徴とするディスプレイにもある。
【0024】
さらにまた、本発明は、光学フィルタが画像表示ガラス板の表面に貼り合わされていることを特徴とするプラズマディスプレイパネルにもある。
【発明の効果】
【0025】
本発明の光学フィルタは、ディスプレイの反射防止、帯電防止、電磁波遮蔽に優れたフィルムであって、且つ耐衝撃性に優れたものである。即ち、本発明の光学フィルタは衝撃緩和層を備えており、−10℃での周波数1Hzにおける動的貯蔵弾性率が、1×103〜1×106Paの範囲にあり、且つ動的損失弾性率が、1×103〜3×105Paの範囲にあり、これにより大きな衝撃に対してもディスプレイの表示画面であるガラス板を損傷することがほとんど無い。
【0026】
さらに、特に、導電層としてメッシュ状の金属層を用いた場合、金属層が設けられたフィルム表面が粗面となっているため、この粗面の凹凸を完全に埋めることが光学フィルタ全体の透明性を向上させる必要であるが、本発明の衝撃緩和層は適度な柔軟性を有するため、その透明化樹脂層の機能もかねることができる(光学フィルタ(3))。
【0027】
また、一方の表面に反射防止膜が設けられた透明基板と、一方の表面に導電層が設けられ別の透明基板との、2枚の透明基板を、衝撃緩和層を介して接着された特有の構成を有する光学フィルタとした場合、格段に優れた耐衝撃性が得ることができる。さらに、反射防止膜を有する透明フィルム及び導電層を有する透明フィルムをそれぞれ製造し、これらを衝撃緩和層を介して接着することにより得ることができるので、連続的に製造することも容易で、生産性に優れた反射防止フィルムということもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明の反射防止性、帯電防止性及び耐衝撃性に優れた光学フィルタについて、以下に詳細に説明する。本発明は、反射防止膜、導電層及び衝撃緩和層を少なくとも有する光学フィルタである。
【0029】
本発明の光学フィルタの基本構成を示す1例の概略断面図を図1に示す。図1において、透明基板11の一方の表面に反射防止膜12が設けられ、他方の表面には透明粘着剤層13を介して導電層14が設けられ、さらに導電層14の表面に衝撃緩和層15が設けられている。衝撃緩和層15は、透明基板11と透明粘着剤層13との間、或いは透明粘着剤層13と導電層14との間に設けても良い。ディスプレイ本体の表示ガラス表面にこの光学フィルタを貼付する場合は、一般に衝撃緩和層15をガラス表面に対向させて、透明粘着剤により接着される。
【0030】
反射防止膜12は、一般に基板より屈折率の低いハードコート層とその上に設けられた低屈折率層との複合膜であるか、或いは高屈折率層上にさらに低屈折率層が設けられた複合膜である。反射防止膜12は基板より屈折率の高いハードコート層のみであっても、或いは低屈折率層のみであっても有効である。このような反射防止膜12を構成する層は、いずれも塗工により形成されていることが、生産性、経済性の観点から好ましい。光学フィルタがPDP用の場合は、反射防止膜は、近赤外線遮蔽機能を有することが好ましい。
【0031】
導電層13は、例えば、メッシュ状の金属層又は金属含有層、又は塗工層、或いは金属酸化物層(誘電体層)、又は金属酸化物層と金属層との交互積層膜である。メッシュ状の金属層又は金属含有層は、一般に、エッチングにより、又は印刷法により形成されているか、金属繊維層である。これにより低抵抗値を得られやすい。メッシュ状の金属層又は金属含有層のメッシュの空隙が、透明樹脂で埋められている(本発明では透明粘着剤層又は衝撃緩衝層)ことが好ましい。これにより透明性が向上する。導電層が、塗工層、例えば、ポリマー中に無機化合物の導電性粒子が分散された塗工層、或いは導電性ポリマーの塗工層であることが好ましい。これにより生産性、経済性は向上する。
【0032】
本発明の衝撃緩和層の、周波数1Hz(−10℃)における、動的貯蔵弾性率が1×103〜1×106Paの範囲にあり、且つ動的損失弾性率が1×103〜3×105Paの範囲にあることが必要である。上記動的貯蔵弾性率は、上記範囲の下限未満であると、柔らか過ぎて変形に対する応力が小さくなりすぎて復元力が不足し、一方、上記範囲の上限超であると、硬すぎて変形に対する応力が大きくなりすぎて衝撃緩和層の緩和性能が不足する。また、動的損失弾性率についても同様なことが言える。
【0033】
本発明では、衝撃緩和層の衝撃吸収能力の評価は、前記の図8に示す方法で行った。即ち、JISC−60068−2−75(環境試験方法−電気・電子−第2−75部:ハンマ試験)で規定されているスプリングハンマ衝撃試験により評価されている。従って、実際の最悪の衝撃を想定して、極めて厳しい条件で試験が行なわれている。
【0034】
衝撃緩和層が、アクリル樹脂からなる層であることが好ましい。衝撃緩和層の層厚が、0.1〜3.0mmの範囲、さらに0.2〜1.0mmの範囲にあることが好ましい。これにより優れた耐衝撃性が得られやすい。
【0035】
本発明の光学フィルムは、通常の反射防止フィルムにおいては、表面抵抗値が108Ω/□以下、好ましくは102〜108Ω/□の範囲、特に102〜105Ω/□の範囲であることが好ましく、特に金属メッシュを用いた電磁波遮蔽用フィルムにおいては、一般に10Ω/□以下、好ましくは0.01〜5Ω/□の範囲、特に0.005〜5Ω/□の範囲が好ましい。それぞれの範囲において、帯電防止或いは電磁波の遮断の効果が得られやすい。
【0036】
本発明の光学フィルタは、ディスプレイの反射防止、帯電防止、所望により電磁波遮蔽に優れたフィルムであって、且つ耐衝撃性に優れたものである。即ち、本発明の光学フィルタは図1に示すように、衝撃緩和層を備えており、この衝撃緩和層は、上記のように、周波数1Hz(−10℃)における、動的貯蔵弾性率が1×103〜1×106Paの範囲にあり、且つ動的損失弾性率が1×103〜3×105Paの範囲にある。これにより大きな衝撃に対してもディスプレイの表示画面であるガラス板を損傷することがほとんど無い。
【0037】
さらに、特に、導電層としてメッシュ状の金属層を用いた場合、金属層が設けられたフィルム表面が粗面となっているため、この粗面の凹凸を完全に埋めることが光学フィルタ全体の透明性を向上させる必要であるが、本発明の衝撃緩和層は適度な柔軟性を有するため、その透明化樹脂層の機能もかねることができる。
【0038】
また、一方の表面に反射防止膜が設けられた透明基板と、一方の表面に導電層が設けられ別の透明基板との、2枚の透明基板を、衝撃緩和層を介して接着された特有の構成を有する光学フィルタとした場合、格段に優れた耐衝撃性が得ることができる。さらに、反射防止膜を有する透明フィルム及び導電層を有する透明フィルムをそれぞれ製造し、これらを衝撃緩和層を介して接着することにより得ることができるので、連続的に製造することも容易で、生産性に優れた反射防止フィルムということもできる。
【0039】
本発明の光学フィルタにおける、好ましい態様の1例の概略断面図を図2に示す。図1における導電層が、PDP用に好適な光学フィルタとするには、メッシュ状の金属層又は金属含有層であることが好ましい。図2にPDP用の光学フィルタとして好ましい態様が示されている。図2において、透明基板21Aの一方の表面に反射防止膜22が設けられ、別の透明基板21Bの一方の表面には導電層24が設けられ、これら2枚の透明基板は、この反射防止膜が形成されていない基板表面と導電層とを対向させて、透明粘着剤層23を介して圧着され、さらに透明基板21Bの他方の表面に衝撃緩和層25が設けられている。導電層24は、ここではメッシュ状で、その間隙は透明粘着剤層23により埋められている。ディスプレイ本体の表示ガラス表面にこの光学フィルタを貼付する場合は、一般に衝撃緩和層25をガラス表面に対向させて、透明粘着剤により接着される。衝撃緩和層25の粘着性が充分である場合は、透明粘着剤の使用を省略することができる。
【0040】
光学フィルタがPDP用の場合は、反射防止膜は、近赤外線遮蔽機能を有することが好ましい。
【0041】
図1又は図2において、近赤外線遮蔽層又はフィルムを別に設ける場合、図3又図4に示す態様をとることが好ましい。図3において、透明基板31Aの一方の表面に反射防止膜32が設けられ、別の透明基板31Bの一方の表面には導電層34が設けられ、これら2枚の透明基板は、この反射防止膜が形成されていない基板表面と導電層34とを対向させて、透明粘着剤層33を介して圧着され、透明基板31Bの他方の表面に衝撃緩和層35及び近赤外線遮蔽フィルム36が設けられている。導電層34はここではメッシュ状で、その間隙は透明粘着剤層33により埋められている。近赤外線遮蔽フィルム36は、衝撃緩和層35により接着されているが、別途接着層(透明粘着剤層)を設けても良い。ディスプレイ本体の表示ガラス表面にこの光学フィルタを貼付する場合は、一般に衝撃緩和層15をガラス表面に対向させて、透明粘着剤により接着される。
【0042】
図4において、透明基板41Aの一方の表面に反射防止膜42が設けられ、別の透明基板41Bの一方の表面には導電層44が設けられ、これら2枚の透明基板は、この反射防止膜が形成されていない表面と導電層44とを対向させて、透明粘着剤層43Aを介して圧着され、さらに透明基板41Bの他方の表面には、透明粘着剤層43Bを介して近赤外線遮蔽フィルム46が設けられ、その上に衝撃緩和層45が積層されている。導電層44はここではメッシュ状で、その間隙は透明粘着剤層43Aにより埋められている。近赤外線遮蔽フィルム46は、透明粘着剤層43Bにより透明基板41Bに接着され、近赤外線遮蔽フィルム46上には衝撃緩和層45が接着されている。ディスプレイ本体の表示ガラス表面にこの光学フィルタを貼付する場合は、一般に衝撃緩和層45をガラス表面に対向させて、透明粘着剤により接着される。近赤外線遮蔽フィルム46は透明基板41Aと透明粘着剤層43Bとの間に透明粘着剤層を介して設けても良い。
【0043】
次に、本発明の光学フィルタの基本構成を示す1例の概略断面図を図5に示す。図5において、透明基板51の一方の表面に反射防止膜52が設けられ、他方の表面には衝撃緩和層55を介して導電層54が設けられている。ディスプレイ本体の表示ガラス表面にこの光学フィルタを貼付する場合は、一般に導電層54をガラス表面に対向させて、透明粘着剤により貼付される。
【0044】
図5における導電層が、PDP用に好適な光学フィルタとするには、メッシュ状の金属層又は金属含有層であることが好ましい。図6にPDP用の光学フィルタとして好ましい態様が示されている。図6において、透明基板61Aの一方の表面に反射防止膜62が設けられ、別の透明基板61Bの一方の表面には導電層64が設けられ、これら2枚の透明基板は、この反射防止膜が形成されていない基板表面と導電層64とを対向させて、衝撃緩和層65を介して圧着されている。導電層64はここではメッシュ状で、その間隙は衝撃緩和層65により埋められている。衝撃緩和層が、充分に可撓性があり、且つ膜厚が厚い場合にこの態様が可能となる。ディスプレイ本体の表示ガラス表面にこの光学フィルタを貼付する場合は、一般に衝撃緩和層64をガラス表面に対向させて、透明粘着剤により接着される。光学フィルタがPDP用の場合は、反射防止膜は、近赤外線遮蔽機能を有することが好ましい。
【0045】
図5又は図6において、近赤外線遮蔽層又はフィルムを別に設ける場合、図7に示す態様をとることが好ましい。図7にPDP用の光学フィルタとして好ましい態様が示されている。図7において、透明基板71Aの一方の表面に反射防止膜72が設けられ、別の透明基板71Bの一方の表面には導電層74が設けられ、これら2枚の透明基板を、この反射防止膜が形成されていない表面と導電層74とを対向させて、衝撃緩和層75を介して圧着されている。透明基板71Bの他方の表面に透明粘着剤層73を介して近赤外線遮蔽フィルム76が設けられている。導電層74はここではメッシュ状で、その間隙は衝撃緩和層75により埋められている。ディスプレイ本体の表示ガラス表面にこの光学フィルタを貼付する場合は、一般に近赤外線遮蔽フィルム76をガラス表面に対向させて、透明粘着剤により接着される。近赤外線遮蔽フィルム76は透明基板71Aと衝撃緩衝層75との間に透明粘着剤層を介して設けても良い。
【0046】
本発明の反射防止膜、導電層等は、塗工により形成されることが、生産性の観点からは有利である。特に、両者とも、紫外線硬化性樹脂を用いて、塗工、硬化を連続して行って形成することにより、高い生産性で反射防止フィルムを製造することができる。但し、導電層は、要求される性能に応じて、特にPDF用はメッシュ状の金属層等が用いられる場合が多い。上記塗工膜、塗工層は、一般に、矩形の透明基板(一般にフィルム又はシート)上、或いは連続フィルム上に形成することができる。矩形の透明基板の場合、各層はバッチ式で形成され、連続フィルム上に形成する場合は、各層を連続式、一般にロールトゥロール方式で形成される。本発明では、特に後者が好ましい。
【0047】
本発明のディスプレイ用に好適な光学フィルタに使用される材料について以下に説明する。
【0048】
透明基板は、その材料としては、透明(「可視光に対して透明」を意味する。)であれば特に制限はないが、一般にプラスチックフィルムが使用される。例えば、ポリエステル{例、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート}、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、アクリル樹脂、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン、トリアセテート樹脂、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、金属イオン架橋エチレン−メタクリル酸共重合体、ポリウレタン、セロファン等を挙げることができる。これらの中でも、加工時の負荷(熱、溶剤、折り曲げ等)に対する耐性が高く、透明性が特に高い等の点で、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等が好ましい。特に、PETが、加工性が優れているので好ましい。
【0049】
透明基板の厚さとしては、光学フィルタの用途等によっても異なるが、一般に1μm〜5mm程度が好ましい。
【0050】
本発明の導電層は、得られる光学フィルタの表面抵抗値が、一般に108Ω/□以下、好ましくは102〜108Ω/□の範囲、特に102〜105Ω/□の範囲、或いは一般に10Ω/□以下、好ましくは0.01〜5Ω/□の範囲、特に0.005〜5Ω/□の範囲となるように設定される。導電層は、塗工層であることが好ましいが、メッシュ(格子)状の導電層も好ましい。或いは、気相成膜法により得られる層(金属酸化物(ITO等)の透明導電薄膜)でも良い。さらに、ITO等の金属酸化物の誘電体膜とAg等の金属層との交互積層体(例、ITO/銀/ITO/銀/ITOの積層体)であっても良い。
【0051】
メッシュ状の導電層としては金属繊維及び金属被覆有機繊維の金属を網状にしたもの、透明フィルム上の銅箔等の層を網状にエッチング加工し、開口部を設けたもの、透明フィルム上に導電性インクをメッシュ状に印刷したもの、等を挙げることができる。
【0052】
メッシュ状の導電層の場合、メッシュとしては、金属繊維及び/又は金属被覆有機繊維よりなる線径1μm〜1mm、開口率50〜95%のものが好ましい。より好ましい線径は10〜500μm、開口率は60〜95%である。なお、導電性メッシュの開口率とは、当該導電性メッシュの投影面積における開口部分が占める面積割合を言う。
【0053】
導電性メッシュを構成する金属繊維及び金属被覆有機繊維の金属としては、銅、ステンレス、アルミニウム、ニッケル、チタン、タングステン、錫、鉛、鉄、銀、炭素或いはこれらの合金、好ましくは銅、ステンレス、アルミニウムが用いられる。
【0054】
金属被覆有機繊維の有機材料としては、ポリエステル、ナイロン、塩化ビニリデン、アラミド、ビニロン、セルロース等が用いられる。
【0055】
金属箔等の導電性の箔をパターンエッチングしたもの場合、金属箔の金属としては、銅、ステンレス、アルミニウム、ニッケル、鉄、真鍮、或いはこれらの合金、好ましくは銅、ステンレス、ニッケルが用いられる。
【0056】
金属箔の厚さは、薄過ぎると取り扱い性やパターンエッチングの作業性等の面で好ましくなく、厚過ぎると得られるガラスの厚さに影響を及ぼしたり、エッチング工程の所要時間が長くなることから、1〜200μm程度とするのが好ましい。
【0057】
エッチングパターンの形状には特に制限はなく、例えば四角形の孔が形成された格子状の金属箔や、円形、六角形、三角形又は楕円形の孔が形成されたパンチングメタル状の金属箔等が挙げられる。また、孔は規則的に並んだものに限らず、ランダムパターンとしても良い。この金属箔の投影面における開口部分の面積割合は、20〜95%であることが好ましい。
【0058】
或いは、メッシュ状の導電層を、透明基板に導電性インキをパターン印刷して形成しても良い。次のような導電性インキを用い、スクリーン印刷法、インクジェット印刷法、静電印刷法等により透明基板の表面に印刷することができる。
【0059】
一般に、粒径100μm以下のカーボンブラック粒子、或いは銅、アルミニウム、ニッケル等の金属又は合金の粒子等の導電性材料の粒子を50〜90重量%濃度にPMMA、ポリ酢酸ビニル、エポキシ樹脂等のバインダ樹脂に分散させたものである。このインクは、トルエン、キシレン、塩化メチレン、水等の溶媒に適当な濃度に希釈または分散させて透明基板の板面に印刷により塗布し、その後必要に応じ室温〜120℃で乾燥させ基板上に塗着させる。上記と同様の導電性材料の粒子をバインダ樹脂で覆った粒子を静電印刷法により直接塗布し熱等で固着させる。
【0060】
このようにして形成される印刷膜の厚さは、薄過ぎると電磁波シールド性が不足するので好ましくなく、厚過ぎると得られるガラスの厚さに影響を及ぼすことから、0.5〜100μm程度とするのが好ましい。
【0061】
このようなパターン印刷によれば、パターンの自由度が大きく、任意の線径、間隔及び開口形状の導電層を形成することができ、従って、所望の電磁波遮断性と光透過性を有するガラス板(又はプラスチックフィルム)を容易に形成することができる。
【0062】
導電層のパターン印刷の形状には特に制限はなく、例えば四角形の開口部が形成された格子状の印刷膜や、円形、六角形、三角形又は楕円形の開口部が形成されたパンチングメタル状の印刷膜等が挙げられる。また、開口部は規則的に並んだものに限らず、ランダムパターンとしても良い。この印刷膜の投影面における開口部分の面積割合は、20〜95%であることが好ましい。
【0063】
塗工による導電層としては、ポリマー中に無機化合物の導電性粒子が分散された塗工層を挙げることができる。
【0064】
導電性粒子を構成する無機化合物としては、例えば、アルミニウム、ニッケル、インジウム、クロム、金、バナジウム、スズ、カドミウム、銀、プラチナ、銅、チタン、コバルト、鉛等の金属、合金;或いはITO、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化インジウム−酸化スズ(ITO、いわゆるインジウムドープ酸化スズ)、酸化スズ−酸化アンチモン(ATO、いわゆるアンチモンドープ酸化スズ)、酸化亜鉛−酸化アルミニウム(ZAO;いわゆるアルミニウムドープ酸化亜鉛)等の導電性酸化物等を挙げることができる。特に、ITOが好ましい。平均粒径は10〜10000nm、特に10〜50nmが好ましい。
【0065】
ポリマーの例としては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、マレイン酸樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、ポリイミド樹脂、含ケイ素樹脂等を挙げることができる。さらに、これらの樹脂のうち熱硬化性樹脂であることが好ましい。
【0066】
或いは、ポリマーは後述するハードコート層に使用される紫外線硬化性樹脂を用いることが特に好ましい。
【0067】
上記塗工による導電層の形成は、ポリマー(必要により溶剤を用いて)中に上記導電性微粒子を混合等により分散させて塗工液を作製し、この塗工液を、透明基板上に塗工し、適宜乾燥、硬化させる。熱可塑性樹脂を用いた場合は、塗工後乾燥することにより、熱硬化型の場合は、乾燥、熱硬化することにより得られる。紫外線硬化性樹脂を用いた場合は、塗工後、必要に応じて乾燥し、紫外線照射することにより得られる。
【0068】
上記塗工形成された導電層の厚さとしては、0.01〜5μm、特に0.05〜3μmが好ましい。前記厚さが、0.01μm未満であると電磁波シールド性又は帯電防止性が充分でないことがあり、一方5μmを超えると、得られるフィルムの透明性を低下させる場合がある。
【0069】
本発明の導電層は、塗工により形成される導電性ポリマーの層であることも好ましい。例えば、ポリアセチレン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリアセン、ポリフェニルアセチレン、ポリナフタレン等の炭化水素系ポリマー;ポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリエチレンビニレン、ポリアズレン、ポリイソチアナフテン等のヘテロ原子含有ポリマーを挙げることができる。ポリピロール、ポリチオフェンが好ましい。上記導電性ポリマーの明導電層の厚さとしては、0.01〜5μm、特に0.05〜3μmが好ましい。前記厚さが、0.01μm未満であると、電磁波シールド性又は帯電防止性が充分でないことがあり、一方5μmを超えると、得られるフィルムの透明性を低下させる場合がある。
【0070】
導電層を気相成膜法により形成する場合(金属酸化物層)、その形成方法としては、特に制限はないが、スパッタリング、イオンプレーティング、電子ビーム蒸着、真空蒸着、化学蒸着等の気相製膜法や、印刷、塗工等が挙げることができるが、気相製膜法(スパッタリング、イオンプレーティング、電子ビーム蒸着、真空蒸着、化学蒸着)が好ましい。前記の無機化合物を用いて導電層を形成することができる。導電層を気相成膜法で形成した場合は、その層厚は、30〜50000nm、特に50nm程度が好ましい。
【0071】
導電層上に、さらに金属メッキ層を、導電性を向上させるためは設けても良い。金属メッキ層は、公知の電解メッキ法、無電解メッキ法により形成することができる。メッキに使用される金属としては、一般に銅、銅合金、ニッケル、アルミ、銀、金、亜鉛又はスズ等を使用することが可能であり、好ましくは銅、銅合金、銀、又はニッケルであり、特に経済性、導電性の点から、銅又は銅合金を使用することが好ましい。
【0072】
また導電層は、誘電体層(金属酸化物)と金属層との交互積層膜でも良い。特に、誘電体層/金属層/誘電体層/金属層/誘電体層の5層以上の積層体が好ましい。例えば、ITO等の金属酸化物の誘電体層とAg等の金属層との交互積層体(例、ITO/銀/ITO/銀/ITOの積層体)を挙げることができる。
【0073】
上記透明導電膜は、物理蒸着法または化学蒸着法により成膜することができる。物理蒸着法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、レーザーアブレーション法が挙げられるが、一般的にはスパッタリング法で成膜するのが好ましい。化学蒸着法としては、常圧CVD法、減圧CVD法、プラズマCVD法が挙げられる。
【0074】
本発明の反射防止膜は、一般に基板より屈折率の高いハードコート層とその上に設けられた低屈折層との複合膜であるか、好ましくは低屈折率層上にさらに高屈折率層が設けられた複合膜である。反射防止膜は基板より屈折率の高いハードコート層のみであっても、或いは低屈折率層のみであっても有効である。但し、基板の屈折率が低い場合、基板より屈折率の低いハードコート層とその上に設けられた高屈折層との複合膜、或いは高屈折率層上にさらに低屈折率層が設けられた複合膜としても良い。本発明の反射防止膜に近赤外線遮蔽機能を付与する場合は、上記ハードコート層等に近赤外線を吸収する後述する材料(例、色素)を混合及び/又は混練して導入するか、反射防止膜を形成するための透明基板に導入すればよい。
【0075】
ハードコート層としては、アクリル樹脂層、エポキシ樹脂層、ウレタン樹脂層、シリコン樹脂層等からなる層を挙げることができ、通常その層厚は1〜50μm、好ましくは1〜10μmである。熱硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂のいずれでもよいが、紫外線硬化性樹脂が好ましい。
【0076】
熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、レゾルシノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、フラン樹脂、シリコン樹脂などを挙げることができる。
【0077】
紫外線硬化性樹脂(モノマー、オリゴマー)としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルポリエトキシ(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、フェニルオキシエチル(メタ)アクリレート、トリシクロデカンモノ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン、N−ビニルカプロラクタム、2−ヒドロキシ−3−フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、o−フェニルフェニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジプロポキシジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリス〔(メタ)アクリロキシエチル〕イソシアヌレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレートモノマー類;ポリオール化合物(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,9−ノナンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、トリメチロールプロパン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,4−ジメチロールシクロヘキサン、ビスフェノールAポリエトキシジオール、ポリテトラメチレングリコール等のポリオール類、前記ポリオール類とコハク酸、マレイン酸、イタコン酸、アジピン酸、水添ダイマー酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の多塩基酸又はこれらの酸無水物類との反応物であるポリエステルポリオール類、前記ポリオール類とε−カプロラクトンとの反応物であるポリカプロラクトンポリオール類、前記ポリオール類と前記、多塩基酸又はこれらの酸無水物類のε−カプロラクトンとの反応物、ポリカーボネートポリオール、ポリマーポリオール等)と有機ポリイソシアネート(例えば、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、ジシクロペンタニルジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4′−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,2′−4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等)と水酸基含有(メタ)アクリレート(例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、シクロヘキサン−1,4−ジメチロールモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート等)の反応物であるポリウレタン(メタ)アクリレート、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸の反応物であるビスフェノール型エポキシ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレートオリゴマー類等を挙げることができる。これら化合物は1種又は2種以上、混合して使用することができる。これらの紫外線硬化性樹脂を、熱重合開始剤とともに用いて熱硬化性樹脂として使用してもよい。
【0078】
ハードコート層とするには、上記の紫外線硬化性樹脂(モノマー、オリゴマー)の内、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の硬質の多官能モノマーを主に使用することが好ましい。
【0079】
紫外線硬化性樹脂の光重合開始剤として、紫外線硬化性樹脂の性質に適した任意の化合物を使用することができる。例えば、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルホリノプロパン−1、2,2−ジエトキシアセトフェノン等のアセトフェノン系、ベンジルジメチルケタールなどのベンゾイン系、ベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系、イソプロピルチオキサントン、2−4−ジエチルチオキサントンなどのチオキサントン系、その他特殊なものとしては、メチルフェニルグリオキシレートなどが使用できる。特に好ましくは、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルホリノプロパン−1、ベンゾフェノン等が挙げられる。これら光重合開始剤は、必要に応じて、4−ジメチルアミノ安息香酸のごとき安息香酸系叉は、第3級アミン系などの公知慣用の光重合促進剤の1種または2種以上を任意の割合で混合して使用することができる。また、光重合開始剤のみの1種または2種以上の混合で使用することができる。特に1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバ・スペシャリティケミカルズ社製、イルガキュア184)が好ましい。
【0080】
光重合開始剤の量は、樹脂組成物に対して0.1〜10質量%、好ましくは0.1〜5質量%である。
【0081】
ハードコート層は、透明基板より屈折率が低いことが好ましく、上記紫外線硬化性樹脂を用いることにより一般に基板より低い屈折率を得られやすい。従って、透明基板としては、PET等の高い屈折率の材料を用いることが好ましい。このため、ハードコート層は、屈折率を、1.60以下にすることが好ましい。膜厚は前記の通りである。
【0082】
高屈折率層は、ポリマー(好ましくは紫外線硬化性樹脂)中に、ITO,ATO,Sb23,SbO2,In23,SnO2,ZnO、AlをドープしたZnO、TiO2等の導電性金属酸化物微粒子(無機化合物)が分散した層とすることが好ましい。金属酸化物微粒子としては、平均粒径10〜10000nm、好ましくは10〜50nmのものが好ましい。特にITO(特に平均粒径10〜50nmのもの)が好ましい。屈折率を1.64以上としたものが好適である。膜厚は一般に10〜500nmの範囲、好ましくは20〜200nmである。
【0083】
なお、高屈折率層が導電層である場合、この高屈折率層2の屈折率を1.64以上とすることにより反射防止フィルムの表面反射率の最小反射率を1.5%以内にすることができ、1.69以上、好ましくは1.69〜1.82とすることにより反射防止フィルムの表面反射率の最小反射率を1.0%以内にすることができる。
【0084】
ハードコート層は、可視光線透過率が85%以上であることが好ましい。高屈折率層及び低屈折率層の可視光線透過率も、いずれも85%以上であることが好ましい。
【0085】
低屈折率層は、シリカ、フッ素樹脂等の微粒子、好ましくは中空シリカを10〜40重量%(好ましくは10〜30質量%)がポリマー(好ましくは紫外線硬化性樹脂)中に分散した層(硬化層)であることが好ましい。この低屈折率層の屈折率は、1.45〜1.51が好ましい。この屈折率が1.51超であると、反射防止フィルムの反射防止特性が低下する。膜厚は一般に10〜500nmの範囲、好ましくは20〜200nmである。
【0086】
中空シリカとしては、平均粒径10〜100nm、好ましくは10〜50nm、比重0.5〜1.0、好ましくは0.8〜0.9のものが好ましい。
【0087】
反射防止膜が上記3層より構成される場合、例えば、ハードコート層の厚さは2〜20μm、高屈折率層の厚さは75〜90nm、低屈折率層の厚さは85〜110nmであることが好ましい。
【0088】
反射防止膜の、各層を形成するには、前記の通り、ポリマー(好ましくは紫外線硬化性樹脂)に必要に応じ上記の微粒子を配合し、得られた塗工液を塗工し、次いで乾燥、必要により熱硬化させるか、或いは塗工後、必要により乾燥し、紫外線を照射する。この場合、各層を1層ずつ塗工し硬化させてもよく、全層を塗工した後、まとめて硬化させてもよい。
【0089】
塗工の具体的な方法としては、アクリル系モノマー等を含む紫外線硬化性樹脂をトルエン等の溶媒で溶液にした塗工液をグラビアコータ等によりコーティングし、その後乾燥し、次いで紫外線により硬化する方法を挙げることができる。このウェットコーティング法であれば、高速で均一に且つ安価に成膜できるという利点がある。このコーティング後に例えば紫外線を照射して硬化することにより密着性の向上、膜の硬度の上昇という効果が得られる。前記導電層も同様に形成することができる。
【0090】
紫外線硬化の場合は、光源として紫外〜可視領域に発光する多くのものが採用でき、例えば超高圧、高圧、低圧水銀灯、ケミカルランプ、キセノンランプ、ハロゲンランプ、マーキュリーハロゲンランプ、カーボンアーク灯、白熱灯、レーザー光等を挙げることができる。照射時間は、ランプの種類、光源の強さによって一概には決められないが、数秒〜数分程度である。また、硬化促進のために、予め積層体を40〜120℃に加熱し、これに紫外線を照射してもよい。
【0091】
本発明の反射防止層は、上記のように塗工により形成することが好ましいが、気相成膜法により形成しても良い。通常、高屈折率層及び低屈折率層を、物理蒸着法または化学蒸着法により成膜することができる。物理蒸着法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、レーザーアブレーション法が挙げられるが、一般的にはスパッタリング法で成膜するのが好ましい。化学蒸着法としては、常圧CVD法、減圧CVD法、プラズマCVD法が挙げられる。
【0092】
高屈折率層及び低屈折率層等の組合せの例としては、下記のものを挙げることができる。
【0093】
(a) 高屈折率層/低屈折率層の順で各1層ずつ、合計2層に積層したもの、(b) 高屈折率層/低屈折率層を2層ずつ交互に、合計4層に積層したもの、(c) 中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層の順で各1層ずつ、合計3層に積層したもの、(d) 高屈折率層/低屈折率層の順で各層を交互に3層ずつ、合計6層に積層したもの。高屈折率層としては、ITO(スズインジウム酸化物)又はZnO、AlをドープしたZnO、TiO2、SnO2、ZrO等の薄膜を採用することができる。また、低屈折折率層としては、SiO2、MgF2、Al23等の屈折率が1.6以下の薄膜を用いることができる。
【0094】
上記透明導電膜は、物理蒸着法または化学蒸着法により成膜することができる。物理蒸着法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、レーザーアブレーション法が挙げられるが、一般的にはスパッタリング法で成膜するのが好ましい。化学蒸着法としては、常圧CVD法、減圧CVD法、プラズマCVD法が挙げられる。
【0095】
本発明の衝撃緩和層は、本発明の反射防止フィルムを装着したディスプレイに反射防止フィルム側から衝撃が加えられた場合に、ディスプレイのガラスを破損したり、反射防止フィルム自体が破損しないように設けられている。
【0096】
本発明の衝撃緩和層は、周波数1Hz(−10℃)における、動的貯蔵弾性率が1×103〜1×106Paの範囲にあり、且つ動的損失弾性率が1×103〜3×105Paの範囲にある層である。特に、動的貯蔵弾性率が1×104〜1×105Paの範囲にあることが好ましい。また動的損失弾性率が、5×103〜5×104Paの範囲にあることが好ましい。
【0097】
上記衝撃緩和層を構成する樹脂としては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、アクリル樹脂(例、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エチル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸メチル共重合体、金属イオン架橋エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体)、部分鹸化エチレン−酢酸ビニル共重合体、カルボキシル化エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル−無水マレイン酸共重合体、エチレン−酢酸ビニル−(メタ)アクリレート共重合体等のエチレン系共重合体を挙げることができる(なお、「(メタ)アクリル」は「アクリル又はメタクリル」を示す。)。その他、ポリビニルブチラール(PVB)樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコン樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂等も用いることができるが、良好な衝撃吸収性が得られやすいのはエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、アクリル樹脂である。
【0098】
アクリル樹脂は、紫外線又は熱硬化性(メタ)アクリレート組成物の硬化層であることが好ましい。
【0099】
上記硬化性(メタ)アクリレート組成物は、一般に、炭素原子数4〜14のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主体とする(50質量%以上)モノマー材料を部分的に重合してなる部分重合体・モノマー混合物からなり、さらにこの部分重合体・モノマー混合物100質量部及び(メタ)アクリロイル基を2個以上有する多官能(メタ)アクリレートを0.1〜1.0質量部含有するものが好ましい。本発明において、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとはアクリル酸アルキルエステル及び/又はメタクリル酸アルキルエステルをいう。
【0100】
部分重合体・モノマー混合物の製造に用いられる炭素原子数4〜14のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、ブチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート,デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレートなどが挙げられ、これらは1種又は2種以上を混合して用いられる。また、前記アルキル基は、直鎖又は分岐鎖のいずれでもよいが、t−アルキル基でないことが好ましい。
【0101】
部分重合体・モノマー混合物の製造には前記モノマーと共重合可能なモノビニルモノマーを光学特性や耐熱性等の物性の向上を目的として必要に応じて併用することが好ましい。このモノビニルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、及び(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル等のヒドロキシル基含有モノマー;(メタ)アクリル酸メトキシエチル、及び(メタ)アクリル酸エトキシエチル等の(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル系モノマー;モノ(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール、モノ(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート;メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、及びメトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート等のアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート{即ち、アルキルポリオキシアルキレン(メタ)アクリレート};メタクリル酸及びアクリル酸等を挙げることができる。特に、アクリル酸及びメタアクリル酸(アクリル酸が好ましい);(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル等のヒドロキシル基含有モノマー;及びアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートが好ましい。アルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートは、アルコキシル基が炭素原子数1〜5個(特にメトキシ、エトキシ)を有する基であり、アルキレングリコールが、エチレングリコール又はプロピレングリコールであり、(アルキレングリコールの繰り返し数)が2〜15(特に6〜12)であることが好ましい。
【0102】
上記モノビニルモノマーのなかで、ヒドロキシル基含有モノマー、アルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートは、耐湿熱性の向上に有効であるので好ましい。さらに、アクリル酸が、良好な相溶性を示す点で好ましい。また上記モノビニルモノマーとして、上記アルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートとヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートとを含んでいることも好ましい。
【0103】
部分重合体・モノマー混合物の製造は、適宜の重合開始剤を用いて溶液重合、塊状重合、乳化重合等の公知のラジカル重合法を適宜選択して用いることができる。ラジカル重合開始剤としては、アゾ系、過酸化物系の各種公知のものを使用できる。例えば、塊状重合では、重合開始剤をモノマー100質量部に対し0.01〜0.2質量部程度使用し、これに紫外線などの放射線を少量照射して部分的に重合させ、反応系を増粘させることにより得られる。モノマーの重合率は3〜50質量%であることが好ましく、さらに好ましくは5〜30質量%、特に好ましくは10〜20質量%である。
【0104】
(メタ)アクリロイル基を2個以上有する多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレートやポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート等が挙げることができる。
【0105】
上記硬化性(メタ)アクリレート組成物の好ましいものとしては、炭素原子数4〜14のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主体とする(50質量%以上)モノマー材料を部分的に重合してなる部分重合体・モノマー混合物100質量部、及び(メタ)アクリロイル基を2個以上有する多官能(メタ)アクリレートを0.1〜1.0質量部含有するものである。
【0106】
この硬化性(メタ)アクリレート組成物を構成する部分重合体・モノマー混合物としては、特に、少なくともアルキルアクリレート(但し、アルキル基の炭素原子数が4〜10個である;特に2−エチルヘキシルアクリレート)とアクリル酸を含む混合物であることが好ましい。上記アクリル酸は、上記アルキルアクリレートに対して、0.1〜20質量%、特に0.5〜10質量%使用することが好ましい。
【0107】
硬化性(メタ)アクリレート組成物を構成するモノマーとして、部分重合体・モノマー混合物に加えて、さらに(メタ)アクリロイル基を2個以上有する多官能アクリレートモノマー(特にトリメチロールプロパントリアクリレート)を含んでいることが、特に好ましい。多官能アクリレートモノマーは、一般に、上記部分重合体・モノマー混合物100質量部に対して0.1〜1.0質量部使用される。
【0108】
このようなアクリル樹脂の材料を使用することにより、前記特定の動的貯蔵弾性率及び静的損失弾性率を得るための樹脂を設計しやすい。また、これにより衝撃を吸収し、且つ衝撃による変形から容易に変形前の形に戻りやすい層が得られ易い。得られる層のゲル分率は70〜100質量%であることが好ましく、さらに好ましくは80〜100質量%、特に好ましくは80〜99質量%である。その重量平均分子量が10000〜700000、特に400000〜700000であることが好ましい。衝撃緩和層の層厚が、0.1〜3.0mmの範囲、さらに0.2〜1.0mmの範囲が好ましい。
【0109】
上記紫外線又は熱硬化性(メタ)アクリレート組成物に、前述のハードコート層の材料として記載した光重合開始剤(紫外線)又は熱重合開始剤(熱)、そして所望により各種添加剤を含んでいる。例えば、組成物の接着特性を調整するため、公知の粘着付与樹脂(例えば、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、石油樹脂、クマロン・インデン樹脂、スチレン系樹脂など)を添加してもよい。また、粘着付与樹脂以外の添加剤としては、可塑剤、ガラス繊維、ガラスビーズ、金属粉、又は微粉末シリカなどの充てん剤、顔料、着色剤、酸化防止剤、老化防止剤、シランカップリング剤、紫外線吸収剤などが挙げられる。また、微粒子を含有させて光拡散性を有する粘着剤層とすることもできる。
【0110】
本発明の衝撃緩和層の形成方法は、特に制限されず種々な方法を利用することができる。例えば、透明基板の片面又は両面或いは所望の層の表面に、前記硬化性(メタ)アクリレート組成物を塗布、乾燥し、必要により硬化させて(好ましくは塊状重合により)、衝撃緩和層を形成する方法を挙げることができる。また、表面が剥離性の転写シート上に前記硬化性(メタ)アクリレート組成物を塗布、乾燥して必要により硬化させて衝撃緩和層を形成した後、衝撃緩和層を基板の片面又は両面に貼り付け、前記転写シートを剥離除去することにより衝撃緩和層を形成してもよい。
【0111】
本発明の衝撃緩和層を紫外線照射により形成する場合は、例えば、上記紫外線硬化性(メタ)アクリレート組成物を、表面が剥離性の転写シートに塗布した後、必要により塗布膜の表面にも表面が剥離性の転写シートを載置し(サンドイッチ状態で)、紫外線照射により硬化させることにより得たのち、転写シートを除去することにより得ることができる。或いは、光学フィルタの衝撃緩和層を設けるべき表面に、直接上記紫外線硬化性(メタ)アクリレート組成物を、塗布した後、紫外線照射により硬化させることにより衝撃緩和層を形成することができる。また、比較的厚めの衝撃緩衝層を形成する必要があることから、光重合反応させることにより衝撃緩和層を形成することが好ましい。
【0112】
上記紫外線硬化方式の好ましい態様では、まずモノマー材料及び光重合開始剤を混合し、少量の光照射により一部のモノマーを重合させて反応系を増粘させる(部分重合体・モノマー混合物の作製)。この部分重合体・モノマー混合物に多官能(メタ)アクリレート、及び光重合開始剤等を適宜添加混合して、これを適当な厚みで上記基板等に塗布する。その後、光照射により重合、架橋させて衝撃緩衝層を形成する。光重合開始剤の量は、紫外線又は熱硬化性(メタ)アクリレート組成物に対して0.1〜10質量%、好ましくは0.1〜5質量%である。
【0113】
或いは後述するEVA等の熱可塑性樹脂の衝撃緩和層は、前記塗布以外の方法でも形成可能であり、例えばEVAと上述の添加剤とを混合し、押出機、ロール等で混練した後、カレンダー、ロール、Tダイ押出、インフレーション等の成膜法により所定の形状にシート成形することにより製造される。成膜に際してはブロッキング防止、ガラス基板との圧着時の脱気を容易にするためエンボスが付与される。
【0114】
本発明の透明粘着剤層は、層間又はフィルム間を接着するか、或いはディスプレイに接着するための層であり。その接着機能を有するものであればどのような樹脂でも使用することができる。例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、アクリル樹脂(例、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エチル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸メチル共重合体、金属イオン架橋エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体)、部分鹸化エチレン−酢酸ビニル共重合体、カルボキシル化エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル−無水マレイン酸共重合体、エチレン−酢酸ビニル−(メタ)アクリレート共重合体等のエチレン系共重合体を挙げることができる(なお、「(メタ)アクリル」は「アクリル又はメタクリル」を示す。)。その他、ポリビニルブチラール(PVB)樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコン樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂等も用いることができるが、良好な接着性が得られやすいのはアクリル樹脂系粘着剤、エポキシ樹脂である。
【0115】
その層厚は、一般に10〜50μm、好ましくは、20〜30μmの範囲が好ましい。光学フィルタは、一般に上記粘着剤層をディスプレイのガラス板に加熱圧着することによる装備することができる。
【0116】
導電層をメッシュ状で形成する場合、メッシュの空隙部を埋めるために上記透明粘着剤層を用いることが好ましい。
【0117】
上記透明粘着剤層の材料として、EVAも使用することができる。EVAとしては酢酸ビニル含有量が5〜50重量%、好ましくは15〜40重量%のものが使用される。酢酸ビニル含有量が5重量%より少ないと透明性に問題があり、また40重量%を超すと機械的性質が著しく低下する上に、成膜が困難となり、フィルム相互のブロッキングが生じ易い。
【0118】
架橋剤としては加熱架橋する場合は、有機過酸化物が適当であり、シート加工温度、架橋温度、貯蔵安定性等を考慮して選ばれる。使用可能な過酸化物としては、例えば2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド;2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン−3;ジーt−ブチルパーオキサイド;t−ブチルクミルパーオキサイド;2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン;ジクミルパーオキサイド;α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン;n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート;2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン;1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン;1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン;t−ブチルパーオキシベンゾエート;ベンゾイルパーオキサイド;第3ブチルパーオキシアセテート;2,5−ジメチル−2,5−ビス(第3ブチルパーオキシ)ヘキシン−3;1,1−ビス(第3ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン;1,1−ビス(第3ブチルパーオキシ)シクロヘキサン;メチルエチルケトンパーオキサイド;2,5−ジメチルヘキシル−2,5−ビスパーオキシベンゾエート;第3ブチルハイドロパーオキサイド;p−メンタンハイドロパーオキサイド;p−クロルベンゾイルパーオキサイド;第3ブチルパーオキシイソブチレート;ヒドロキシヘプチルパーオキサイド;クロルヘキサノンパーオキサイド等を挙げることができる。これらの過酸化物は1種を単独で又は2種以上を混合して、通常EVA100重量部に対して、5質量部以下、好ましくは0.5〜5.0質量部の割合で使用される。
【0119】
有機過酸化物は通常EVAに対し押出機、ロールミル等で混練されるが、有機溶媒、可塑剤、ビニルモノマー等に溶解し、EVAのフィルムに含浸法により添加しても良い。
【0120】
なお、EVAの物性(機械的強度、光学的特性、接着性、耐候性、耐白化性、架橋速度など)改良のために、各種アクリロキシ基又はメタクリロキシ基及びアリル基含有化合物を添加することができる。この目的で用いられる化合物としてはアクリル酸又はメタクリル酸誘導体、例えばそのエステル及びアミドが最も一般的であり、エステル残基としてはメチル、エチル、ドデシル、ステアリル、ラウリル等のアルキル基の他、シクロヘキシル基、テトラヒドロフルフリル基、アミノエチル基、2−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシプロピル基、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル基などが挙げられる。また、エチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の多官能アルコールとのエステルを用いることもできる。アミドとしてはダイアセトンアクリルアミドが代表的である。
【0121】
その例としては、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、グリセリン等のアクリル又はメタクリル酸エステル等の多官能エステルや、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、フタル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリル、マレイン酸ジアリル等のアリル基含有化合物が挙げられ、これらは1種を単独で或いは2種以上を混合して、通常EVA100質量部に対して0.1〜2質量部、好ましくは0.5〜5質量部用いられる。
【0122】
EVAを光により架橋する場合、上記過酸化物の代りに光増感剤が通常EVA100質量部に対して5質量部以下、好ましくは0.1〜3.0質量部使用される。
【0123】
この場合、使用可能な光増感剤としては、例えばベンゾイン、ベンゾフェノン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ジベンジル、5−ニトロアセナフテン、ヘキサクロロシクロペンタジエン、p−ニトロジフェニル、p−ニトロアニリン、2,4,6−トリニトロアニリン、1,2−ベンズアントラキノン、3−メチル−1,3−ジアザ−1,9−ベンズアンスロンなどが挙げられ、これらは1種を単独で或いは2種以上を混合して用いることができる。
【0124】
また、接着促進剤としてシランカップリング剤が併用される。このシランカップリング剤としては、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0125】
シランカップリング剤は、一般にEVA100質量部に対して0.001〜10質量部、好ましくは0.001〜5質量部の割合で1種又は2種以上が混合使用される。
【0126】
なお、本発明に係るEVA接着層には、その他、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、老化防止剤、塗料加工助剤、着色剤等を少量含んでいてもよく、また、場合によってはカーボンブラック、疎水性シリカ、炭酸カルシウム等の充填剤を少量含んでも良い。
【0127】
近赤外線遮蔽層又はフィルムとしては、一般に近赤外線カットフィルムであり、例えば、ベースフィルムの表面に、色素等を含む近赤外線カット層が形成されたものであるか、或いは色素等を含有するフィルムである。色素の例としては、シアニン系色素、スクアリリウム系色素、アントラキノン系色素、フタロシアニン系色素、ポリメチン系色素、ポリアゾ系色素を挙げることができ、特にシアニン系色素又はスクアリリウム系色素が好ましい。これらの色素は、単独又は組み合わせて使用することができる。
【0128】
特に好ましい近赤外線カットフィルムは、ベースフィルムの表面に、ジイモニウム系化合物と特定の銅錯体及び/又は銅化合物とを含む近赤外線カット層が形成されたものであり、この近赤外線カット層はベースポリマーにジイモニウム系化合物と銅錯体及び/又は銅化合物とを分散させ、適当な溶剤で希釈して濃度調整したコーティング液を透明基板の表面にコーティングし、コーティング膜を乾燥させることにより形成することができる。
【0129】
上記近赤外線カットフィルムは、ベースフィルムに、2層以上の近赤外線カット層、好ましくは2種以上の近赤外線吸収剤の層で構成した層を設けても良く、この場合には、近赤外の幅広い波長域において著しく良好な近赤外線カット性能を得ることができ、有利である。
【0130】
2層以上の近赤外線カットフィルムは、次のような構成をとることができる。
【0131】
ベースフィルム上に近赤外線カット層を形成した近赤外線カットフィルムと、ベースフィルム上に近赤外線カット層を形成した近赤外線カットフィルムとの併用;
ベースフィルムの一方の面に近赤外線カット層を形成し、他方の面にも近赤外線カット層を形成した近赤外線カットフィルム;
ベースフィルム上に近赤外線カット層と近赤外線カット層とを積層形成した近赤外線カットフィルム;
ベースフィルム上に近赤外線カット層を形成した近赤外線カットフィルム;
上記のいずれか2以上の組み合わせ。
【0132】
上記の構成において、近赤外線カット層のうちの一方をジイモニウム系化合物と銅錯体及び/又は銅化合物とを含む層とし、他方をこれとは異なる層とするのが好ましい。
【0133】
また、上記の構成において、近赤外線カット層をジイモニウム系化合物と銅錯体及び/又は銅化合物とを含む層とし、必要に応じて更に異なる近赤外線吸収剤を配合するのが好ましい。
【0134】
なお、本発明において、ジイモニウム系化合物と銅錯体及び/又は銅化合物とを含む層以外の近赤外線カット層として、次のようなものを1種又は2種以上を組み合わせて用いるのが、透明性を損なうことなく、良好な近赤外線カット性能(例えば850〜1250nmなど近赤外の幅広い波長域において、近赤外線を十分に吸収する性能)を得られるので好ましい。
【0135】
(a) 厚さ100〜5000ÅのITOのコーティング層、(b) 厚さ100〜10000ÅのITOと銀の交互積層体によるコーティング層、(c) 厚さ0.5〜50μmのニッケル錯体系とイモニウム系の混合材料を適当な透明のベースポリマーを用いて膜としたコーティング層、(d) 厚さ10〜10000μmの2価の銅イオンを含む銅化合物を適当な透明のベースポリマーを用いて膜としたコーティング層、(e) 厚さ0.5〜50μmの有機色素系コーティング層。
【0136】
保護層は、前記ハードコート層と同様にして形成することが好ましい。
【0137】
剥離シートの材料としては、ガラス転移温度が50℃以上の透明のポリマーが好ましく、このような材料としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリシクロヘキシレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ナイロン46、変性ナイロン6T、ナイロンMXD6、ポリフタルアミド等のポリアミド系樹脂、ポリフェニレンスルフィド、ポリチオエーテルサルフォン等のケトン系樹脂、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン等のサルフォン系樹脂の他に、ポリエーテルニトリル、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、トリアセチルセルロース、ポリスチレン、ポリビニルクロライド等のポリマーを主成分とする樹脂を用いることができる。これら中で、ポリカーボネート、ポリメチルメタアクリレート、ポリビニルクロライド、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレートが好適に用いることができる。厚さは10〜200μmが好ましく、特に30〜100μmが好ましい。
【0138】
本発明の光学フィルタは、例えば、反射防止膜が形成された透明フィルムと、導電層が形成された透明フィルムを、その層又は膜を持たない面を対向させて、或いは膜を持たない面と導電層(メッシュ状金属層)を対向させて、その一方の面に衝撃緩和層のシートを配置して、重ね合わさせ、減圧、加温下に脱気して予備圧着した後、加熱又は光照射により衝撃緩和層を加熱(必要により硬化)して一体化することにより容易に製造することができる。あるいは、上記3枚のシートを、連続的に搬送して重ね合わせ、加熱圧着して、連続的に製造することも可能である。或いは、衝撃緩和層の代わりに透明粘着剤層を適宜使用して製造することができる。その際衝撃緩和層は他の位置に同時に又は別途設けられる。
【0139】
このようにして得られる本発明の光学フィルタは、PDP等のディスプレイの画像表示ガラス板の表面に貼り合わされて使用される。
【0140】
本発明のPDP表示装置は、透明基板としてプラスチックフィルムを使用することにより、本発明の光学フィルタをその表面であるガラス板表面に直接貼り合わせることができるため、PDP自体の軽量化、薄型化、低コスト化に寄与できる。また、PDPの前面側に透明成形体からなる前面板を設置する場合に比べると、PDPとPDP用フィルタとの間に屈折率の低い空気層をなくすことができるため、界面反射による可視光反射率の増加、二重反射などの問題を解決でき、PDPの視認性をより向上させることができる。また、本発明では特定の衝撃緩和層が設けられているので、高い衝撃力に対して緩和性を有するため、外部からの大きな衝撃に対してPDPを保護する機能を有するものである。
【0141】
従って、本発明の光学フィルタは、反射防止効果、帯電防止性に優れ、危険な電磁波の放射もほとんどなく、衝撃に対して保護機能が大きいことから、見やすく、ホコリ等が付きにくく、安全なディスプレイということができる。
【実施例】
【0142】
以下、実施例と比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0143】
[実施例1]
(1)衝撃緩衝層形成用組成物(紫外線硬化性(メタ)アクリレート組成物)の調製
97.5質量部の2−エチルヘキシルアクリレート及び2.5質量部のアクリル酸を重合率30%(質量)まで重合させた部分重合体・モノマー混合物を作製した。
【0144】
この部分重合体・モノマー混合物100質量部に、光重合開始剤(2,2−ジエトキシアセトフェノン)0.2質量部、メトキシポリプロピレングリコールアクリレート(プロピレングリコール繰り返し数:9)30質量部、2−ヒドロキシブチルアクリレート10質量部、多官能モノマー(トリメチロールプロパントリアクリレート)0.1質量部を添加し、充分に撹拌して衝撃緩衝層形成用組成物(紫外線硬化性(メタ)アクリレート組成物塗布液)を調製した。
【0145】
(2)衝撃緩衝層の形成
得られた衝撃緩衝層形成用組成物(塗布液)を、剥離ポリエステルフィルム上に塗布し、その上からさらに別の剥離ポリエステルフィルムを載置し、この剥離フィルムの上から紫外線ランプで紫外線を合計積算光量3000mJ/cm2になるまで照射した。これにより衝撃緩衝層形成用組成物が光重合し、厚さ1.0mmの衝撃緩衝層を得た。得られた衝撃緩衝層のゲル分率は95%(質量)であった。
【0146】
[実施例2]
実施例1において、(2)衝撃緩衝層の形成において、紫外線を合計積算光量1800mJ/cm2になるまで照射した以外同様にして衝撃緩衝層を得た。得られた衝撃緩衝層のゲル分率は88%(質量)であった。
【0147】
[実施例3]
実施例1において、(1)衝撃緩衝層形成用組成物の調製における97.5質量部の2−エチルヘキシルアクリレート及び2.5質量部のアクリル酸を、90質量部の2−エチルヘキシルアクリレート及び10質量部のアクリル酸に変更した以外同様にして衝撃緩衝層形成用組成物を調製した。
【0148】
他の手順は実施例1と同様にして行い衝撃緩衝層を得た。得られた衝撃緩衝層のゲル分率は93%(質量)であった。
【0149】
[比較例1]
実施例1において、(1)衝撃緩衝層形成用組成物の調製における97.5質量部の2−エチルヘキシルアクリレート及び2.5質量部のアクリル酸を、75質量部の2−エチルヘキシルアクリレート及び25質量部のアクリル酸に変更した以外同様にして衝撃緩衝層形成用組成物を調製した。
【0150】
他の手順は実施例1と同様にして行い衝撃緩衝層を得た。得られた衝撃緩衝層のゲル分率は95%(質量)であった。
【0151】
[比較例2]
実施例1において、(1)衝撃緩衝層形成用組成物の調製における97.5質量部の2−エチルヘキシルアクリレート及び2.5質量部のアクリル酸を、95質量部の2−エチルヘキシルアクリレート及び5質量部のアクリル酸に変更した以外同様にして衝撃緩衝層形成用組成物を調製し、そして(2)衝撃緩衝層の形成において、紫外線を合計積算光量100mJ/cm2になるまで照射した以外同様にして衝撃緩衝層を得た。得られた衝撃緩衝層のゲル分率は51%(質量)であった。
【0152】
[実施例4〜6]
厚さ188μmのPETフィルムの一方の表面に、シリカ微粒子分散紫外線硬化性樹脂(商品名Z7501;JSR(株)製)を分散させた紫外線硬化性樹脂(アクリロイル基を有する樹脂組成物)からなるハードコート層形成用塗工液(シリカ含有量:51質量%(固形分))を、グラビアコータで塗工、乾燥後、紫外線照射して硬化させ、厚さ6μmのハードコート層を形成した。
【0153】
次いで、このハードコート層の上に、ITO微粒子(平均粒径40nm)を分散させた紫外線硬化性樹脂(ITO含有量:35質量%(固形分))を、前記と同様に塗工、硬化させて厚さ0.1μmの高屈折率層を形成した。
【0154】
さらに、高屈折率層の上にポーラスシリカ(中空シリカ、平均粒径40μm、比表面積 m3/g)を分散させた紫外線硬化性樹脂(シリカ含有量:20.5質量%(固形分))を、前記と同様に塗工、硬化させて厚さ0.1μmの低屈折率層を形成した。上記工程を連続的に実施して、ロール状の積層体1を作製した。
【0155】
表面に銅箔が形成された厚さ188μmのPETフィルムの、銅箔の上にフォトレジストを塗布し、乾燥後、メッシュパターン状のマスクを介してレジスト層を露光し、現像し、次いでエッチング処理を行った。これにより導電層(メッシュパターン金属層:厚さ10μm、線幅10μm、線のピッチ:300μm、開口率:90%)を有するPETフィルム(導電層を有する透明基板;積層体2)を得た。
【0156】
上記積層体1と積層体2とを、実施例1〜3及び比較例1〜2で得られた衝撃緩和層を介在させて加熱圧着して本発明の光学フィルタを作製した。
【0157】
[衝撃緩和層の評価]
(1)動的貯蔵弾性率及び動的損失弾性率
上記動的貯蔵弾性率及び動的損失弾性率は下記の方法に従い測定した。
【0158】
実施例、比較例で得られた衝撃緩衝層を用い、粘弾性測定装置としてRDA3(レオメトリック・サイエンティフィック社製)を用い、φ=8mmの平行円盤形治具にて、測定厚さ1.0mmで、−60〜100℃の温度分散範囲、昇温温度2℃/分、周波数1Hzにおいて測定した。
【0159】
(2)耐衝撃性
サンプルの作製
実施例1〜3及び比較例1〜2で得られた衝撃緩衝層を、一方の剥離シートを除去し、5cm角の厚さ2.5mmのガラス板上5cm角の衝撃緩衝層を重ね、その上に5cm角の厚さ188μmのPETフィルム(2.5cm×2.5cm)を重ねて押圧し、3層の積層体を得た。
【0160】
図8に示すように、コンクリート床上に、厚さ5mmの鉄板を載置し、その上にサンプルを固定できるように紙ヤスリ(#150)を置き、その上に上記サンプル(5cm角の厚さ2.5mmのガラス板上に衝撃緩和層及び厚さ188μmのPETフィルムを貼付したもの)を載置し、そのPETフィルム上からスプリングインパクトハンマーを所定の衝撃力で衝撃を加えて、ガラス板の損傷を観察した。
【0161】
所定の衝撃力として、0.20J、0.35J、0.5J、0.70J、1.00Jで行った。各実施例に付きサンプルを5枚用意し、試験を行以下基のように評価した。
【0162】
○: サンプルのガラスに割れが見られなかった。
【0163】
×: 1枚以上のサンプルのガラスに割れが見られた。
(3)ゲル分率
作製した衝撃緩衝層のゲル分率は、乾燥重量W1 (g)の粘着剤層を酢酸エチル中に室温(23℃)で7日間浸潰した後、取り出して乾燥したときの重量をW2 (g)としたとき、下記式により算出される値である。
【0164】
ゲル分率(重量%)=(W2 /W1 )×100
【0165】
上記結果を表1に示す。
【0166】
【表1】

【0167】
また、実施例4〜6で得られたPDPフィルタは、実際にPDPに貼付しても透明性、電磁波遮蔽性等、従来のものと遜色はなかった。従って、本発明の衝撃緩和層を設けても、PDP用光学フィルタに必要な特性を損なうことがないことが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0168】
【図1】本発明の光学フィルタの基本構成を示す1例の概略断面図である。
【図2】本発明の光学フィルタにおける好ましい態様の1例の概略断面図である。
【図3】上記図2の本発明の光学フィルタにおける、別の態様の1例の概略断面図である。
【図4】上記図2の本発明の光学フィルタにおける、別の態様の1例の概略断面図である。
【図5】本発明の光学フィルタにおける、好ましい態様の別の1例の概略断面図である。
【図6】上記図5の光学フィルタにおける、特に好ましい態様の1例の概略断面図である。
【図7】上記図5の本発明の光学フィルタにおける、別の態様の別の1例の概略断面図である。
【図8】実施例における耐衝撃試験を説明するための概略断面図である。
【符号の説明】
【0169】
11、21A、21B、31A、31B、41A、41B、51、61A、61B、71A、71B 透明基板
12、22、32,42、52、62、72 反射防止膜
13、23、33、43A、43B、73 透明粘着剤層
14、24、34、44、54、64、74 導電層
15、25、35、45、55、65、75 衝撃緩和層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反射防止膜および導電層を含む光学フィルタであって、
さらに衝撃緩和層を有し、且つ−10℃での周波数1Hzにおける衝撃緩和層の動的貯蔵弾性率が1×103〜1×106Paの範囲にあり、且つ動的損失弾性率が1×103〜3×105Paの範囲にあることを特徴とする光学フィルタ。
【請求項2】
透明基板の一方の表面側に反射防止膜が、他方の表面側に導電層が設けられてなる光学フィルタであって、
導電層のいずれかの表面に衝撃緩和層が設けられており、且つ−10℃での周波数1Hzにおける衝撃緩和層の動的貯蔵弾性率が1×103〜1×106Paの範囲にあり、且つ動的損失弾性率が1×103〜3×105Paの範囲にあることを特徴とする光学フィルタ。
【請求項3】
一方の表面側に反射防止膜が設けられた透明基板と、一方の表面側に導電層が設けられ別の透明基板との、2枚の透明基板が、該反射防止膜が形成されていない表面と該導電層とで接着されてなる光学フィルタであって、
該反射防止膜が形成されていない表面と該導電層との間に透明粘着剤層が設けられ、導電層の透明粘着剤層が設けられてない表面側に衝撃緩和層が設けられ、そして−10℃での周波数1Hzにおける衝撃緩和層の動的貯蔵弾性率が1×103〜1×106Paの範囲にあり、且つ動的損失弾性率が1×103〜3×105Paの範囲にあることを特徴とする光学フィルタ。
【請求項4】
一方の表面側に反射防止膜が設けられた透明基板と、一方の表面側に導電層が設けられた別の透明基板との、2枚の透明基板が、該反射防止膜が形成されていない表面と該導電層とで接着されてなる光学フィルタであって、
該反射防止膜が形成されていない透明基板表面と該導電層との間に衝撃緩和層が設けられ、そして−10℃での周波数1Hzにおける衝撃緩和層の動的貯蔵弾性率が1×103〜1×106Paの範囲にあり、且つ動的損失弾性率が1×103〜3×105Paの範囲にあることを特徴とする光学フィルタ。
【請求項5】
動的貯蔵弾性率が1×104〜1×105Paの範囲にある請求項1〜4のいずれか1項に記載の光学フィルタ。
【請求項6】
動的損失弾性率が5×103〜5×104Paの範囲にある請求項1〜5のいずれか1項に記載の光学フィルタ。
【請求項7】
衝撃緩和層が、アクリル樹脂からなる請求項1〜6のいずれか1項に記載の光学フィルタ。
【請求項8】
アクリル樹脂を構成するモノマーとして、少なくともアルキルアクリレート(但し、アルキル基の炭素原子数が4〜10個である)とアクリル酸とを含んでいる請求項7に記載の光学フィルタ。
【請求項9】
アクリル樹脂を構成するモノマーとして、少なくとも2−エチルヘキシルアクリレートとアクリル酸とを含んでいる請求項8に記載の光学フィルタ。
【請求項10】
アクリル樹脂を構成するモノマーとして、さらにアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートとヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートとを含んでいる請求項8又は9に記載の光学フィルタ。
【請求項11】
アクリル樹脂を構成するモノマーとして、さらにトリメチロールプロパントリアクリレートを含んでいる請求項8〜10のいずれか1項に記載の光学フィルタ。
【請求項12】
衝撃緩和層が、アルキルアクリレート(但し、アルキル基の炭素原子数が4〜10個である)とアクリル酸とを含むモノマー混合物が部分的に重合された部分重合体・モノマー混合物を硬化させた層である請求項1〜11のいずれか1項に記載の光学フィルタ。
【請求項13】
衝撃緩和層の層厚が、0.1〜3.0mmの範囲にある請求項1〜12のいずれか1項に記載の光学フィルタ。
【請求項14】
反射防止膜が、近赤外線遮蔽機能を有する請求項1〜13のいずれかに1項に記載の光学フィルタ。
【請求項15】
衝撃緩和層のいずれかの表面に、近赤外線遮蔽層が設けられている請求項1〜14のいずれかに1項に記載の光学フィルタ。
【請求項16】
導電層が、電磁波遮蔽機能を有する請求項1〜15のいずれか1項に記載の光学フィルタ。
【請求項17】
導電層が、メッシュ状の金属層又は金属含有層である請求項1〜16のいずれかに1項に記載の光学フィルタ。
【請求項18】
最外層の導電層又は近赤外線遮蔽層の、外側表面には透明粘着剤層が設けられる請求項1〜17のいずれかに1項に記載の光学フィルタ。
【請求項19】
メッシュ状の金属層又は金属含有層の間隙には透明粘着剤層が埋め込まれている請求項17に記載の光学フィルタ。
【請求項20】
透明基板がプラスチックフィルムである請求項1〜19のいずれか1項に記載の光学フィルタ。
【請求項21】
透明粘着剤層上に剥離シートが設けられている請求項3又は5〜20のいずれか1項に記載の光学フィルタ。
【請求項22】
反射防止膜上に、保護層が設けられている請求項1〜21のいずれか1項に記載の光学フィルタ。
【請求項23】
プラズマディスプレイパネル用フィルタである請求項1〜22のいずれか1項に記載の光学フィルタ。
【請求項24】
−10℃での周波数1Hzにおける動的貯蔵弾性率が1×103〜1×106Paの範囲にあり、且つ動的損失弾性率が1×103〜3×105Paの範囲にあることを特徴とする衝撃緩和層。
【請求項25】
請求項1〜22のいずれか1項に記載の光学フィルタが画像表示ガラス板の表面に貼り合わされていることを特徴とするディスプレイ。
【請求項26】
請求項1〜22のいずれか1項に記載の光学フィルタが画像表示ガラス板の表面に貼り合わされていることを特徴とするプラズマディスプレイパネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−51832(P2008−51832A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−224838(P2006−224838)
【出願日】平成18年8月22日(2006.8.22)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】