光学フィルタ
【課題】光学特性を犠牲にすることなく、更に光学特性の観点からは過剰な積層数を必要とせず、基板の膜応力に起因する変形をより低減する。
【解決手段】IR阻止域の薄膜積層構造体43が最も厚い構成になることから、基板31の片面に第3阻止域Cの薄膜積層構造体43、他面に第1阻止域A、第2阻止域Bの薄膜積層構造体41、42を成膜する。連続したIR阻止域の薄膜積層構造体を分割して基板両面に積層することにより、基板両面の物理膜厚の差を小さくすることができ、膜応力を低減できる。
【解決手段】IR阻止域の薄膜積層構造体43が最も厚い構成になることから、基板31の片面に第3阻止域Cの薄膜積層構造体43、他面に第1阻止域A、第2阻止域Bの薄膜積層構造体41、42を成膜する。連続したIR阻止域の薄膜積層構造体を分割して基板両面に積層することにより、基板両面の物理膜厚の差を小さくすることができ、膜応力を低減できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の波長領域の光の透過を制限する撮像装置用の光学フィルタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ビデオカメラ等に使用される固体撮像素子は、人の眼の特性に対応させるために、紫外線カットフィルタや近赤外線カットフィルタ等の光学フィルタと組み合わせて使用されることが多い。一般的に、これらの光学フィルタは、ガラス基板上に複数層から成る蒸着膜を成膜することにより形成されている。
【0003】
しかし、近年の光学装置の小型化・軽量化の要求により、光学系においても更なる省スペース化が求められており、ガラス基板においても現行以上の薄型化が必要とされている。光学フィルタとして使用されるガラス基板は、機械的強度が低いため、作業中に基板であるガラス自体が破損してしまう虞れを有している。また、ガラス基板は概ね板厚が0.3mm以下になると、機械的強度が極端に低下し、破損の可能性を著しく高くなり、量産性等に大きな課題を有している。
【0004】
その対策として、ガラス基板の代りに柔軟性の高い樹脂基板を用いることにより、板厚の薄い基板であっても基板自体が破損することを防止できる。樹脂基板はガラス基板よりもガラス転移温度が低いため、紫外線カットフィルタ、近赤外線カットフィルタ、UVIRカットフィルタ等の光学フィルタを形成した場合には、熱応力に耐えられずに基板が大きく変形する問題を有している。
【0005】
しかし、近年の低温成膜技術の進歩により、この問題は特許文献1に示すように回避できるようになってきた。また特許文献2においては、ガラス転移温度が比較的高いノルボルネン系の樹脂基板を使用することにより、この問題を解決する方法が開示されている。
【0006】
ガラス基板と比較して剛性の低い樹脂基板においては、膜応力による基板の反りに関する問題が顕在化する。また、たとえガラス基板への成膜であっても、基板の薄型化を考慮すると、膜応力は大きな問題となる。これに対して、蒸着物質やプロセス条件等による膜応力の値を反映させ、積層膜の膜応力を相殺するような設計の積層方法や、基板両面に積層膜を成膜する方法も知られている。
【0007】
また特許文献3に示すように、製造プロセス上で各層の膜応力の少ない膜質に制御する方法も提案されている。
【0008】
しかし、近年の光学系の更なる高精度化・低コスト化の要求が高まるにつれて薄い基材上への構成であっても、より少ない層数で、より反り量の少ない光学フィルタを製作可能な多層蒸着膜が求められている。
【0009】
【特許文献1】特開平10−133253号公報
【特許文献2】特開2004−37548号公報
【特許文献3】特開2000−248356号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述した膜応力を相殺するように積層する方法や、各層の膜応力を緩和した方法の場合においては、積層した薄膜のうち少なくとも一部が比較的、膜密度の低い状態になってしまう。これにより、例えば湿度や温度の周囲環境により、光学特性が変化し易い膜質になってしまい、紫外波長領域と近赤外波長領域の両方の透過率を同時に制限する所謂UVIRカットフィルタ等の光学フィルタとしての仕様を満足することが極めて困難となる。
【0011】
また、図12に示すように基板1の両面に所定の波長領域の透過率を制限する積層膜を分割して構成する場合がある。この場合には、基板1の両面に例えばSiO2層、TiO2層を交互に同一の膜厚d1、d2、・・・、dnで、基板1に対して上下対称となるように積層する場合が、最も膜応力を低減できることになる。
【0012】
しかし、この場合には膜の構成設計が困難であり、基板1の片面に設計した場合と同一の積層数と膜厚になるように膜設計を行うと、光学特性を大きく犠牲にする虞れがある。また、光学特性と膜応力の緩和を同時に満足するようにすると、積層数が増加し、光学フィルタの製作工数の増加の要因となる。
【0013】
本発明の目的は、上述の問題点を解消し、光学特性を犠牲にすることなく、また過剰な積層数を要することなく、成膜時の基板の膜応力に起因する変形をより低減した光学フィルタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するための本発明に係る光学フィルタは、透明基板に複数の薄膜を積層して、所定の波長領域の光の透過を制限する複数の薄膜積層構造体を形成し、これらの複数の前記薄膜積層構造体の内、少なくとも2つの前記薄膜積層構造体は透過を制限する波長領域が連続しており、前記波長領域が連続する前記薄膜積層構造体を前記透明基板の両面に少なくとも1つずつ配置したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る光学フィルタによれば、光学系の省スペース化・低コスト化に対応すると共に、光学フィルタの反り等の変形が低減でき、所望の波長領域の透過率を制限する光学カットフィルタ等を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明を図1〜図11に図示の実施例に基づいて詳細に説明する。
図1はビデオカメラ等の撮影光学系の構成図を示し、レンズ11、光量調節部材12、レンズ13〜15、ローパスフィルタ16、CCD等から成る固体撮像素子17が順次に配列されている。光量調節部材12においては、絞り羽根支持板18に一対の絞り羽根19a、19bが可動に取り付けられている。また、絞り羽根19aには、固体撮像素子17の特性に合わせて所定の波長領域の光の透過を制限し、適正な画像を得るための光学フィルタ20が接着されている。なお、本実施例における光学フィルタ20は絞り羽根19aに貼り付けているが、撮影光学系の光路中に設ければよい。
【0017】
なお以下の説明では、光学フィルタ20は近赤外波長領域と紫外波長領域の透過率を同時に制限するUVIRカットフィルタについて述べるが、その他のNDフィルタ、IRフィルタ、UVフィルタ等の光学フィルタであってもよい。
【0018】
樹脂基板をガラス基板と比較すると、ガラス転移温度が低く基板と膜との線膨張係数の差に起因する基板の反りや、反りに伴う膜面のクラックの発生等が考えられるため、成膜中に発生する熱の低温化を図る必要がある。
【0019】
図2は光学フィルタ20を製造する場合の蒸着時に用いる冷却機構の底面図、図3は断面図をそれぞれ示している。銅製の円板から成る冷却板21の裏面には溝が設けられ、この溝内にチラーにより調温された冷媒を流す冷却パイプ22が渦巻状に配置されている。そして、冷却板21上には光学フィルタ20の基材となる図示しない基板を取り付けるための基板治具23が配置されている。
【0020】
本実施例における成膜中は、成膜開始から成膜終了までの全層において、基板の裏面を冷却しながら蒸着を行う。また、冷却パイプ22に流す冷媒には食塩水を使用し、−10℃で温度制御を行い、冷媒の流量は6リットル/分とする。なお、成膜中の基板の最大温度は両面共に70℃以下であり、これは基板表面に予め設置しておいた真空中専用のサーモラベルより測定する。
【0021】
図2に示した冷却パイプ22の引き回しは1つの例であり、基板治具23の設置位置や、蒸着傘の形状や大きさ等の諸条件により最適な配置は様々であり、冷媒の流量等により冷却パイプ22の径等は適宜に変更することができる。
【0022】
上述した理由により、成膜中の基板温度は通常の成膜に比べて低温となるため、何らかのアシストを付加することが好ましい。成膜方法については、スパッタ法、IAD法、イオンプレーティング法、IBS法、クラスタ蒸着法等のような、膜厚を比較的正確に制御でき、再現性の高い膜を得ることができればよい。また、必要とされる膜の性質や、基板を含めた各材料の制約条件等から最適な方法を選択すればよい。なお、本実施例においては真空蒸着法を選択し、アシストを付加した他の成膜方法と比べ、比較的に膜に起因する応力を小さい値に制御できる理由からイオンプレーティング法を選択している。
【0023】
また、基板は光学系の省スペース化を実現するために、板厚が0.1mm以下であることが好ましい。更に、熱に起因する基板の反りと、基板上の僅かな膜厚分布により発生する微妙な凹凸を低減するために、70℃以上のガラス転移温度を有し、更に2400MPa以上の曲げ弾性率を有する透明樹脂基板を用いている。
【0024】
このような特性を併せ持つ透明基板としては、Arton(JSR社製、商品名)等のノルボルネン系の樹脂フィルムや、ネオプリム(三菱ガス化学社製、商品名)等のポリイミド系の樹脂フィルム等が最適な材料の1つである。
【0025】
本実施例においては、ガラス転移温度が160℃程度あり、かつ曲げ弾性率が約3000MPa程度あることにより、基板に板厚0.1mmのArtonフィルムを選択した。基板にガラス基板ではなく、樹脂基板を選択した理由としては、上述したように基板自体を薄くした場合であっても、光学フィルタ20を生成する作業工程中及び製作後の作業中に、破損が生ずることを避けるためである。
【0026】
図4は縦横共に60mmの正方形状のArtonフィルムから成る基板31にマスク32を配置した状態の平面図を示している。基板31に蒸着膜を成膜した後に、マスク32を取り外して図5に示すように切り抜くことにより、縦横共に10mmの正方形の複数個の光学フィルタ20を得ることができる。
【0027】
図6は上述の方法により製造したUVIRカットフィルタから成る光学フィルタ20の断面模式図、図7は分光透過率の理論値のグラフ図をそれぞれ示している。一般的に、UVIRカットフィルタは比較的積層膜数が多く、特に反りの問題を引き起こし易い問題を有している。成膜に起因する応力による基板31の反りに関しては、基板31の両面に同程度の物理的膜厚を有する膜を積層することにより低減できる。
【0028】
一般的なUVIRカットフィルタの場合には、550nm前後の可視波長領域よりも波長の短い紫外波長領域にかけての所望する波長域にUV阻止域と、可視波長領域よりも波長の長い近赤外波長領域にかけての所望する波長域にIR阻止域を有している。しかし、このIR阻止域の分光透過率を十分に満足するような性能の積層膜とすると、膜厚が厚くなり過ぎて反り等の原因となってしまう。
【0029】
従って、本実施例のUVIRカットフィルタは図7に示すようにUV阻止域に第1阻止域Aを有すると共に、IR阻止域では連続した波長領域の第2阻止域Bと第3阻止域Cとの2つに分割している。
【0030】
図8は基板31に第3阻止域Cのみを成膜した場合の分光透過率の理論値のグラフ図、図9は基板31に第1阻止域A及び第2阻止域Bの成膜した場合の分光透過率の理論値のグラフ図をそれぞれ示している。第1阻止域A〜第3阻止域Cを同時に設けることにより、図7に示すようにUVIRカットフィルタとしての十分な分光透過率となる。
【0031】
ここで、1つの阻止域を構成する薄膜積層構造体を1つのブロックとして考えると、上述した第1阻止域A〜第3阻止域Cは、図6に示すような複数の薄膜積層構造体41〜43により形成される。一般的に、これらの薄膜積層構造体41〜43はそれぞれは異なる中心波長を有している。この中心波長をλとした場合に、TiO2層に代表される高屈折率材料と、SiO2層に代表される低屈折率材料とを、それぞれ交互にλ(波長)/4ずつ積層した構成を基本としている。そして、所望の光学特性を得るために、各層の膜厚に概ね0.7〜1.3倍程度の微量の厚みを加減して積層している。
【0032】
TiO2層は屈折率が高く膜設計上有利な材料であるために用いている。また、SiO2層は成膜条件によって勿論微妙に異なることはあるが、イオンプレーティングによる成膜において、TiO2層と膜応力の発生方向が反対であり、屈折率も低く、膜設計上有利な材料であるために用いている。なお、本実施例においては、高屈折率材料にTiO2を用いたが、Nb2O5、Ta2O5、ZrO2等を用いてもよい。また、低屈折率材料にはSiO2の代りにMgF2等を使用することもできる。
【0033】
ただし、このような構成の場合に、基板31や空気との界面の層と、中心波長が異なる各薄膜積層構造体同士が隣接している層においては、厚みが微調の範囲を超えることがあり、例えば0.5倍のλ/4程度の膜厚になることがある。更に、全層の中で上述した界面層は別に数層、例えば全層が40層であれば、1〜3層程度、微調量の範囲を超える層がある場合もある。また、設計によってはAl2O3等の中間屈折率材料を含むこともある。
【0034】
この中心波長を波長の短い順に図7に示すように、波長λ1、λ2、λ3とした場合に、透過帯から不透過帯へと急峻な変化が必要とされる波長λ2を中心波長に有する第2阻止域Bの積層数が最も多くなる。従って、積層数の平衡だけを考えると、基板31の片面に第2阻止域B、他面に第1阻止域Aと第3阻止域Cを配置した場合に、基板31の両面の合計の積層数の差を最も低減することができる。しかし、実際に基板31の変形等に起因する膜応力を最も低減できる構成は、基板31の両面の物理膜厚の差を考慮する必要がある。
【0035】
一般的なUVIRカットフィルタは、IR阻止域の波長λ3を中心に有する薄膜積層構造体43が最も厚い構成となっている。従って、図6に示すように、基板31の片面に第3阻止域Cの薄膜積層構造体43、他面に第1阻止域A、第2阻止域Bの薄膜積層構造体41、42とした場合が、最も基板31の両面の物理膜厚の差を小さくすることができる。
【0036】
例えば、波長分散がない屈折率が2.0の材料と、屈折率が1.5の材料をλ/4の厚みに成膜した場合を考えると、物理膜厚は次の表1に示すようになる。
【0037】
λ=800nmの場合とλ=950nmの場合には、λ=950nmの方が物理膜厚は厚くなる。
【0038】
表1
物理膜厚(n=2.0) 物理膜厚(n=1.5)
λ=800nm 100.00nm 133.33nm
λ=950nm 118.75nm 158.33nm
【0039】
ここで、屈折率2.0と、屈折率1.5の材料をλ/4ずつ交互に複数層を積層した場合を考えると、表1で示した差分に積層数を積算した値が、各材料の総計の物理膜厚となり、積層数が増えるほどその差が大きくなる。
【0040】
そこで、上述したように3つの薄膜積層構造体41〜43を基板31の両面に配置する場合に、光学特性だけではなく、可能な限り物理的な膜厚が基板31の両面で均衡するように、予め適切な膜設計を行う必要がある。このような方法により、基板31の反りを低減しかつ光学特性を満足するために、必要以上に過剰な層数を積層する必要のないUVIRカットフィルタを作製することができる。
【0041】
図10はUVIRカットフィルタの膜構成図を示しており、基板31の表面にSiO2層とTiO2層を交互に17層、裏面に27層を積層し、両面で44層の構成としている。このように、基板31の両面の膜厚をほぼ同様にすることにより、膜応力に起因する基板31の反りの発生を低減できるように設計を行っている。なお、成膜においては、表面に17層を成膜した後に、基板31の表裏を変え、表面と同様にマスク32を施して裏面に27層を成膜したが、逆に27層を成膜した後に基板の表裏を変え、17層を成膜しても良い。
【0042】
成膜条件としては、高屈折率材料ではDCパワーは400V、RFパワーは500W、低屈折率材料ではDCパワーは300V、RFパワーは400Wに設定している。
【0043】
図11は上述の方法により製作したUVIRカットフィルタの分光透過率特性のグラフ図である。図7の理論値と比較すると、全く同様な光学特性を得ることはできなかったが、UVIRカットフィルタの目的を達成できるレベルの特性が得られる。
【0044】
このように、設計値と作製したUVIRカットフィルタの特性が異なった理由としては、設計に使用した光学定数と若干の誤差が生じたことによると考えられる。より高精度に理論値に近いUVIRカットフィルタを製作するためには、各層のそれぞれでの光学定数をより正確に把握することや、成膜温度を一定に制御したり、アシストのパワーを調整したりする必要がある。更に、全ての層でより均一な光学定数を得ることができるように制御すること等が必要であると考えられる。
【0045】
上述の方法により製作されたサンプルについて、温度60℃、湿度90%の環境試験を行った。480時間後では環境試験開始前と比較し、近赤外側の半値波長である680nmでの透過率変化はシフト量が3nm以下となった。同様な環境試験を数サンプルで実施したが、全てのサンプルにおいて同様な結果となった。
【0046】
フィルタの外観に関しても良好であり、反りや凹凸、更に皺やクラック等は発生せず、環境試験後も皺やクラック等の発生は確認されなかった。
【0047】
また、本実施例の光学フィルタをビデオカメラ等の撮影装置に使用することにより、反り等による画像劣化が少なく、かつ環境特性の優れた撮像装置とすることができる。また、光学フィルタを装置に組み込むときの破損等も、従来のガラスを使用した光学フィルタよりも少なく、装置の組立が容易となる。
【0048】
なお本実施例においては、第1阻止域A〜第3阻止域Cの3つに分割し、3つの薄膜積層構造体を用いたが、4以上に分割してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】撮影光学系の構成図である。
【図2】冷却機構の断面図である。
【図3】冷却機構の底面図である。
【図4】基板上にマスクを配置した状態の平面図である。
【図5】光学フィルタを切り抜いた状態の平面図である。
【図6】光学フィルタの断面の構成図である。
【図7】分光透過率の理論値のグラフ図である。
【図8】分光透過率の理論値のグラフ図である。
【図9】分光透過率の理論値のグラフ図である。
【図10】UVIRカットフィルタの膜構成図である。
【図11】UVIRカットフィルタの分光透過率のグラフ図である。
【図12】従来の光学フィルタの膜構成図である。
【符号の説明】
【0050】
11、13〜15 レンズ
12 光量調節部材
16 ローパスフィルタ
17 固体撮像素子
18 絞り羽根支持板
19a、19b 絞り羽根
20 光学フィルタ
21 冷却板
22 冷却パイプ
23 基板治具
31 基板
32 マスク
41〜43 薄膜積層構造体
A 第1阻止域
B 第2阻止域
C 第3阻止域
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の波長領域の光の透過を制限する撮像装置用の光学フィルタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ビデオカメラ等に使用される固体撮像素子は、人の眼の特性に対応させるために、紫外線カットフィルタや近赤外線カットフィルタ等の光学フィルタと組み合わせて使用されることが多い。一般的に、これらの光学フィルタは、ガラス基板上に複数層から成る蒸着膜を成膜することにより形成されている。
【0003】
しかし、近年の光学装置の小型化・軽量化の要求により、光学系においても更なる省スペース化が求められており、ガラス基板においても現行以上の薄型化が必要とされている。光学フィルタとして使用されるガラス基板は、機械的強度が低いため、作業中に基板であるガラス自体が破損してしまう虞れを有している。また、ガラス基板は概ね板厚が0.3mm以下になると、機械的強度が極端に低下し、破損の可能性を著しく高くなり、量産性等に大きな課題を有している。
【0004】
その対策として、ガラス基板の代りに柔軟性の高い樹脂基板を用いることにより、板厚の薄い基板であっても基板自体が破損することを防止できる。樹脂基板はガラス基板よりもガラス転移温度が低いため、紫外線カットフィルタ、近赤外線カットフィルタ、UVIRカットフィルタ等の光学フィルタを形成した場合には、熱応力に耐えられずに基板が大きく変形する問題を有している。
【0005】
しかし、近年の低温成膜技術の進歩により、この問題は特許文献1に示すように回避できるようになってきた。また特許文献2においては、ガラス転移温度が比較的高いノルボルネン系の樹脂基板を使用することにより、この問題を解決する方法が開示されている。
【0006】
ガラス基板と比較して剛性の低い樹脂基板においては、膜応力による基板の反りに関する問題が顕在化する。また、たとえガラス基板への成膜であっても、基板の薄型化を考慮すると、膜応力は大きな問題となる。これに対して、蒸着物質やプロセス条件等による膜応力の値を反映させ、積層膜の膜応力を相殺するような設計の積層方法や、基板両面に積層膜を成膜する方法も知られている。
【0007】
また特許文献3に示すように、製造プロセス上で各層の膜応力の少ない膜質に制御する方法も提案されている。
【0008】
しかし、近年の光学系の更なる高精度化・低コスト化の要求が高まるにつれて薄い基材上への構成であっても、より少ない層数で、より反り量の少ない光学フィルタを製作可能な多層蒸着膜が求められている。
【0009】
【特許文献1】特開平10−133253号公報
【特許文献2】特開2004−37548号公報
【特許文献3】特開2000−248356号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述した膜応力を相殺するように積層する方法や、各層の膜応力を緩和した方法の場合においては、積層した薄膜のうち少なくとも一部が比較的、膜密度の低い状態になってしまう。これにより、例えば湿度や温度の周囲環境により、光学特性が変化し易い膜質になってしまい、紫外波長領域と近赤外波長領域の両方の透過率を同時に制限する所謂UVIRカットフィルタ等の光学フィルタとしての仕様を満足することが極めて困難となる。
【0011】
また、図12に示すように基板1の両面に所定の波長領域の透過率を制限する積層膜を分割して構成する場合がある。この場合には、基板1の両面に例えばSiO2層、TiO2層を交互に同一の膜厚d1、d2、・・・、dnで、基板1に対して上下対称となるように積層する場合が、最も膜応力を低減できることになる。
【0012】
しかし、この場合には膜の構成設計が困難であり、基板1の片面に設計した場合と同一の積層数と膜厚になるように膜設計を行うと、光学特性を大きく犠牲にする虞れがある。また、光学特性と膜応力の緩和を同時に満足するようにすると、積層数が増加し、光学フィルタの製作工数の増加の要因となる。
【0013】
本発明の目的は、上述の問題点を解消し、光学特性を犠牲にすることなく、また過剰な積層数を要することなく、成膜時の基板の膜応力に起因する変形をより低減した光学フィルタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するための本発明に係る光学フィルタは、透明基板に複数の薄膜を積層して、所定の波長領域の光の透過を制限する複数の薄膜積層構造体を形成し、これらの複数の前記薄膜積層構造体の内、少なくとも2つの前記薄膜積層構造体は透過を制限する波長領域が連続しており、前記波長領域が連続する前記薄膜積層構造体を前記透明基板の両面に少なくとも1つずつ配置したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る光学フィルタによれば、光学系の省スペース化・低コスト化に対応すると共に、光学フィルタの反り等の変形が低減でき、所望の波長領域の透過率を制限する光学カットフィルタ等を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明を図1〜図11に図示の実施例に基づいて詳細に説明する。
図1はビデオカメラ等の撮影光学系の構成図を示し、レンズ11、光量調節部材12、レンズ13〜15、ローパスフィルタ16、CCD等から成る固体撮像素子17が順次に配列されている。光量調節部材12においては、絞り羽根支持板18に一対の絞り羽根19a、19bが可動に取り付けられている。また、絞り羽根19aには、固体撮像素子17の特性に合わせて所定の波長領域の光の透過を制限し、適正な画像を得るための光学フィルタ20が接着されている。なお、本実施例における光学フィルタ20は絞り羽根19aに貼り付けているが、撮影光学系の光路中に設ければよい。
【0017】
なお以下の説明では、光学フィルタ20は近赤外波長領域と紫外波長領域の透過率を同時に制限するUVIRカットフィルタについて述べるが、その他のNDフィルタ、IRフィルタ、UVフィルタ等の光学フィルタであってもよい。
【0018】
樹脂基板をガラス基板と比較すると、ガラス転移温度が低く基板と膜との線膨張係数の差に起因する基板の反りや、反りに伴う膜面のクラックの発生等が考えられるため、成膜中に発生する熱の低温化を図る必要がある。
【0019】
図2は光学フィルタ20を製造する場合の蒸着時に用いる冷却機構の底面図、図3は断面図をそれぞれ示している。銅製の円板から成る冷却板21の裏面には溝が設けられ、この溝内にチラーにより調温された冷媒を流す冷却パイプ22が渦巻状に配置されている。そして、冷却板21上には光学フィルタ20の基材となる図示しない基板を取り付けるための基板治具23が配置されている。
【0020】
本実施例における成膜中は、成膜開始から成膜終了までの全層において、基板の裏面を冷却しながら蒸着を行う。また、冷却パイプ22に流す冷媒には食塩水を使用し、−10℃で温度制御を行い、冷媒の流量は6リットル/分とする。なお、成膜中の基板の最大温度は両面共に70℃以下であり、これは基板表面に予め設置しておいた真空中専用のサーモラベルより測定する。
【0021】
図2に示した冷却パイプ22の引き回しは1つの例であり、基板治具23の設置位置や、蒸着傘の形状や大きさ等の諸条件により最適な配置は様々であり、冷媒の流量等により冷却パイプ22の径等は適宜に変更することができる。
【0022】
上述した理由により、成膜中の基板温度は通常の成膜に比べて低温となるため、何らかのアシストを付加することが好ましい。成膜方法については、スパッタ法、IAD法、イオンプレーティング法、IBS法、クラスタ蒸着法等のような、膜厚を比較的正確に制御でき、再現性の高い膜を得ることができればよい。また、必要とされる膜の性質や、基板を含めた各材料の制約条件等から最適な方法を選択すればよい。なお、本実施例においては真空蒸着法を選択し、アシストを付加した他の成膜方法と比べ、比較的に膜に起因する応力を小さい値に制御できる理由からイオンプレーティング法を選択している。
【0023】
また、基板は光学系の省スペース化を実現するために、板厚が0.1mm以下であることが好ましい。更に、熱に起因する基板の反りと、基板上の僅かな膜厚分布により発生する微妙な凹凸を低減するために、70℃以上のガラス転移温度を有し、更に2400MPa以上の曲げ弾性率を有する透明樹脂基板を用いている。
【0024】
このような特性を併せ持つ透明基板としては、Arton(JSR社製、商品名)等のノルボルネン系の樹脂フィルムや、ネオプリム(三菱ガス化学社製、商品名)等のポリイミド系の樹脂フィルム等が最適な材料の1つである。
【0025】
本実施例においては、ガラス転移温度が160℃程度あり、かつ曲げ弾性率が約3000MPa程度あることにより、基板に板厚0.1mmのArtonフィルムを選択した。基板にガラス基板ではなく、樹脂基板を選択した理由としては、上述したように基板自体を薄くした場合であっても、光学フィルタ20を生成する作業工程中及び製作後の作業中に、破損が生ずることを避けるためである。
【0026】
図4は縦横共に60mmの正方形状のArtonフィルムから成る基板31にマスク32を配置した状態の平面図を示している。基板31に蒸着膜を成膜した後に、マスク32を取り外して図5に示すように切り抜くことにより、縦横共に10mmの正方形の複数個の光学フィルタ20を得ることができる。
【0027】
図6は上述の方法により製造したUVIRカットフィルタから成る光学フィルタ20の断面模式図、図7は分光透過率の理論値のグラフ図をそれぞれ示している。一般的に、UVIRカットフィルタは比較的積層膜数が多く、特に反りの問題を引き起こし易い問題を有している。成膜に起因する応力による基板31の反りに関しては、基板31の両面に同程度の物理的膜厚を有する膜を積層することにより低減できる。
【0028】
一般的なUVIRカットフィルタの場合には、550nm前後の可視波長領域よりも波長の短い紫外波長領域にかけての所望する波長域にUV阻止域と、可視波長領域よりも波長の長い近赤外波長領域にかけての所望する波長域にIR阻止域を有している。しかし、このIR阻止域の分光透過率を十分に満足するような性能の積層膜とすると、膜厚が厚くなり過ぎて反り等の原因となってしまう。
【0029】
従って、本実施例のUVIRカットフィルタは図7に示すようにUV阻止域に第1阻止域Aを有すると共に、IR阻止域では連続した波長領域の第2阻止域Bと第3阻止域Cとの2つに分割している。
【0030】
図8は基板31に第3阻止域Cのみを成膜した場合の分光透過率の理論値のグラフ図、図9は基板31に第1阻止域A及び第2阻止域Bの成膜した場合の分光透過率の理論値のグラフ図をそれぞれ示している。第1阻止域A〜第3阻止域Cを同時に設けることにより、図7に示すようにUVIRカットフィルタとしての十分な分光透過率となる。
【0031】
ここで、1つの阻止域を構成する薄膜積層構造体を1つのブロックとして考えると、上述した第1阻止域A〜第3阻止域Cは、図6に示すような複数の薄膜積層構造体41〜43により形成される。一般的に、これらの薄膜積層構造体41〜43はそれぞれは異なる中心波長を有している。この中心波長をλとした場合に、TiO2層に代表される高屈折率材料と、SiO2層に代表される低屈折率材料とを、それぞれ交互にλ(波長)/4ずつ積層した構成を基本としている。そして、所望の光学特性を得るために、各層の膜厚に概ね0.7〜1.3倍程度の微量の厚みを加減して積層している。
【0032】
TiO2層は屈折率が高く膜設計上有利な材料であるために用いている。また、SiO2層は成膜条件によって勿論微妙に異なることはあるが、イオンプレーティングによる成膜において、TiO2層と膜応力の発生方向が反対であり、屈折率も低く、膜設計上有利な材料であるために用いている。なお、本実施例においては、高屈折率材料にTiO2を用いたが、Nb2O5、Ta2O5、ZrO2等を用いてもよい。また、低屈折率材料にはSiO2の代りにMgF2等を使用することもできる。
【0033】
ただし、このような構成の場合に、基板31や空気との界面の層と、中心波長が異なる各薄膜積層構造体同士が隣接している層においては、厚みが微調の範囲を超えることがあり、例えば0.5倍のλ/4程度の膜厚になることがある。更に、全層の中で上述した界面層は別に数層、例えば全層が40層であれば、1〜3層程度、微調量の範囲を超える層がある場合もある。また、設計によってはAl2O3等の中間屈折率材料を含むこともある。
【0034】
この中心波長を波長の短い順に図7に示すように、波長λ1、λ2、λ3とした場合に、透過帯から不透過帯へと急峻な変化が必要とされる波長λ2を中心波長に有する第2阻止域Bの積層数が最も多くなる。従って、積層数の平衡だけを考えると、基板31の片面に第2阻止域B、他面に第1阻止域Aと第3阻止域Cを配置した場合に、基板31の両面の合計の積層数の差を最も低減することができる。しかし、実際に基板31の変形等に起因する膜応力を最も低減できる構成は、基板31の両面の物理膜厚の差を考慮する必要がある。
【0035】
一般的なUVIRカットフィルタは、IR阻止域の波長λ3を中心に有する薄膜積層構造体43が最も厚い構成となっている。従って、図6に示すように、基板31の片面に第3阻止域Cの薄膜積層構造体43、他面に第1阻止域A、第2阻止域Bの薄膜積層構造体41、42とした場合が、最も基板31の両面の物理膜厚の差を小さくすることができる。
【0036】
例えば、波長分散がない屈折率が2.0の材料と、屈折率が1.5の材料をλ/4の厚みに成膜した場合を考えると、物理膜厚は次の表1に示すようになる。
【0037】
λ=800nmの場合とλ=950nmの場合には、λ=950nmの方が物理膜厚は厚くなる。
【0038】
表1
物理膜厚(n=2.0) 物理膜厚(n=1.5)
λ=800nm 100.00nm 133.33nm
λ=950nm 118.75nm 158.33nm
【0039】
ここで、屈折率2.0と、屈折率1.5の材料をλ/4ずつ交互に複数層を積層した場合を考えると、表1で示した差分に積層数を積算した値が、各材料の総計の物理膜厚となり、積層数が増えるほどその差が大きくなる。
【0040】
そこで、上述したように3つの薄膜積層構造体41〜43を基板31の両面に配置する場合に、光学特性だけではなく、可能な限り物理的な膜厚が基板31の両面で均衡するように、予め適切な膜設計を行う必要がある。このような方法により、基板31の反りを低減しかつ光学特性を満足するために、必要以上に過剰な層数を積層する必要のないUVIRカットフィルタを作製することができる。
【0041】
図10はUVIRカットフィルタの膜構成図を示しており、基板31の表面にSiO2層とTiO2層を交互に17層、裏面に27層を積層し、両面で44層の構成としている。このように、基板31の両面の膜厚をほぼ同様にすることにより、膜応力に起因する基板31の反りの発生を低減できるように設計を行っている。なお、成膜においては、表面に17層を成膜した後に、基板31の表裏を変え、表面と同様にマスク32を施して裏面に27層を成膜したが、逆に27層を成膜した後に基板の表裏を変え、17層を成膜しても良い。
【0042】
成膜条件としては、高屈折率材料ではDCパワーは400V、RFパワーは500W、低屈折率材料ではDCパワーは300V、RFパワーは400Wに設定している。
【0043】
図11は上述の方法により製作したUVIRカットフィルタの分光透過率特性のグラフ図である。図7の理論値と比較すると、全く同様な光学特性を得ることはできなかったが、UVIRカットフィルタの目的を達成できるレベルの特性が得られる。
【0044】
このように、設計値と作製したUVIRカットフィルタの特性が異なった理由としては、設計に使用した光学定数と若干の誤差が生じたことによると考えられる。より高精度に理論値に近いUVIRカットフィルタを製作するためには、各層のそれぞれでの光学定数をより正確に把握することや、成膜温度を一定に制御したり、アシストのパワーを調整したりする必要がある。更に、全ての層でより均一な光学定数を得ることができるように制御すること等が必要であると考えられる。
【0045】
上述の方法により製作されたサンプルについて、温度60℃、湿度90%の環境試験を行った。480時間後では環境試験開始前と比較し、近赤外側の半値波長である680nmでの透過率変化はシフト量が3nm以下となった。同様な環境試験を数サンプルで実施したが、全てのサンプルにおいて同様な結果となった。
【0046】
フィルタの外観に関しても良好であり、反りや凹凸、更に皺やクラック等は発生せず、環境試験後も皺やクラック等の発生は確認されなかった。
【0047】
また、本実施例の光学フィルタをビデオカメラ等の撮影装置に使用することにより、反り等による画像劣化が少なく、かつ環境特性の優れた撮像装置とすることができる。また、光学フィルタを装置に組み込むときの破損等も、従来のガラスを使用した光学フィルタよりも少なく、装置の組立が容易となる。
【0048】
なお本実施例においては、第1阻止域A〜第3阻止域Cの3つに分割し、3つの薄膜積層構造体を用いたが、4以上に分割してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】撮影光学系の構成図である。
【図2】冷却機構の断面図である。
【図3】冷却機構の底面図である。
【図4】基板上にマスクを配置した状態の平面図である。
【図5】光学フィルタを切り抜いた状態の平面図である。
【図6】光学フィルタの断面の構成図である。
【図7】分光透過率の理論値のグラフ図である。
【図8】分光透過率の理論値のグラフ図である。
【図9】分光透過率の理論値のグラフ図である。
【図10】UVIRカットフィルタの膜構成図である。
【図11】UVIRカットフィルタの分光透過率のグラフ図である。
【図12】従来の光学フィルタの膜構成図である。
【符号の説明】
【0050】
11、13〜15 レンズ
12 光量調節部材
16 ローパスフィルタ
17 固体撮像素子
18 絞り羽根支持板
19a、19b 絞り羽根
20 光学フィルタ
21 冷却板
22 冷却パイプ
23 基板治具
31 基板
32 マスク
41〜43 薄膜積層構造体
A 第1阻止域
B 第2阻止域
C 第3阻止域
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基板に複数の薄膜を積層して、所定の波長領域の光の透過を制限する複数の薄膜積層構造体を形成し、これらの複数の前記薄膜積層構造体の内、少なくとも2つの前記薄膜積層構造体は透過を制限する波長領域が連続しており、前記波長領域が連続する前記薄膜積層構造体を前記透明基板の両面に少なくとも1つずつ配置したことを特徴とする光学フィルタ。
【請求項2】
前記複数の薄膜積層構造体は3つ以上であり、前記透過を制限する波長領域が連続する少なくとも前記2つの前記薄膜積層構造体の内、物理膜厚が最も厚い前記薄膜積層構造体を前記透明基板の片面に配置し、他の前記薄膜積層構造体を他面に配置したことを特徴とする請求項1に記載の光学フィルタ。
【請求項3】
前記複数の薄膜積層構造体は3つであり、前記透過を制限する波長領域が連続する2つの前記薄膜積層構造体の内、透過を制限する中心波長が長い前記薄膜積層構造体を前記透明基板の片面に配置し、他の2つの前記薄膜積層構造体を他面に配置したことを特徴とする請求項1に記載の光学フィルタ。
【請求項4】
近赤外波長領域と紫外波長領域とのそれぞれ所定の波長領域の透過を制限する光学フィルタであり、前記透過を制限する波長領域が連続する少なくとも2つの前記薄膜積層構造体は、前記近赤外波長領域の透過を制限する前記薄膜積層構造体であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1つの請求項に記載の光学フィルタ。
【請求項5】
前記透明基板は樹脂基板であることを特徴とする請求項1〜4の何れか1つの請求項に記載の光学フィルタ。
【請求項6】
前記透明基板のガラス転移温度は70℃以上であり、曲げ弾性率は2400MPa以上であることを特徴とする請求項5に記載の光学フィルタ。
【請求項7】
前記薄膜は少なくともTiO2層とSiO2層を含む蒸着膜であることを特徴とする請求項1〜6の何れか1つの請求項に記載の光学フィルタ。
【請求項8】
請求項1〜6の何れか1つの請求項に記載の光学フィルタを使用した撮像装置。
【請求項1】
透明基板に複数の薄膜を積層して、所定の波長領域の光の透過を制限する複数の薄膜積層構造体を形成し、これらの複数の前記薄膜積層構造体の内、少なくとも2つの前記薄膜積層構造体は透過を制限する波長領域が連続しており、前記波長領域が連続する前記薄膜積層構造体を前記透明基板の両面に少なくとも1つずつ配置したことを特徴とする光学フィルタ。
【請求項2】
前記複数の薄膜積層構造体は3つ以上であり、前記透過を制限する波長領域が連続する少なくとも前記2つの前記薄膜積層構造体の内、物理膜厚が最も厚い前記薄膜積層構造体を前記透明基板の片面に配置し、他の前記薄膜積層構造体を他面に配置したことを特徴とする請求項1に記載の光学フィルタ。
【請求項3】
前記複数の薄膜積層構造体は3つであり、前記透過を制限する波長領域が連続する2つの前記薄膜積層構造体の内、透過を制限する中心波長が長い前記薄膜積層構造体を前記透明基板の片面に配置し、他の2つの前記薄膜積層構造体を他面に配置したことを特徴とする請求項1に記載の光学フィルタ。
【請求項4】
近赤外波長領域と紫外波長領域とのそれぞれ所定の波長領域の透過を制限する光学フィルタであり、前記透過を制限する波長領域が連続する少なくとも2つの前記薄膜積層構造体は、前記近赤外波長領域の透過を制限する前記薄膜積層構造体であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1つの請求項に記載の光学フィルタ。
【請求項5】
前記透明基板は樹脂基板であることを特徴とする請求項1〜4の何れか1つの請求項に記載の光学フィルタ。
【請求項6】
前記透明基板のガラス転移温度は70℃以上であり、曲げ弾性率は2400MPa以上であることを特徴とする請求項5に記載の光学フィルタ。
【請求項7】
前記薄膜は少なくともTiO2層とSiO2層を含む蒸着膜であることを特徴とする請求項1〜6の何れか1つの請求項に記載の光学フィルタ。
【請求項8】
請求項1〜6の何れか1つの請求項に記載の光学フィルタを使用した撮像装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−217138(P2009−217138A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−62656(P2008−62656)
【出願日】平成20年3月12日(2008.3.12)
【出願人】(000104652)キヤノン電子株式会社 (876)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月12日(2008.3.12)
【出願人】(000104652)キヤノン電子株式会社 (876)
【Fターム(参考)】
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