説明

光学フィルム及びその製造方法、並びにプラズマディスプレイ用前面フィルタ

【課題】プラズマディスプレイパネルの前面フィルタ等に用いられる光学フィルムにおいて、赤外線吸収性を有しかつ密着性に優れ、更に平面性が高く、表面が平滑で、カールも少なく、面品質の良好な光学フィルムを提供する。
【解決手段】赤外吸収染料として、下記一般式(1)で示される化合物を含む樹脂フィルムを延伸して作製することを特徴とする光学フィルムの製造方法。


〔一般式(1)において、Xは硫黄原子又は酸素原子を表し、R1、R2は水素及び1価の任意の基を表し、m、nは0、1、2、3又は4を表す。〕

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマディスプレイ等の表示装置用として用いる事のできる光学フィルムと、これを用いたプラズマディスプレイ用前面フィルタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
プラズマディスプレイ用の前面フィルタには、近赤外線カット性能、熱線遮蔽性能、電磁波シールド性能、傷つき防止性能、反射防止性能等様々な機能が求められている。
【0003】
特に、プラズマディスプレイパネルでは、画面から電磁波と熱線が多く放出され、パネル表面の温度は80〜100℃となり、火傷の危険性もあるために、プラズマディスプレイパネルの前面フィルタにはこれらを遮蔽する機能が求められていた。又、熱線の他、近赤外線(波長800〜1100nm)も放出され、家電製品などのリモコンを誤動作させる恐れがあり、その対策も求められていた。これらの赤外線カット性能の他、前記の様々の機能を付与させるため、種々の積層構造の前面フィルタが提案されて(例えば、特許文献1〜5参照)いる。しかしながらこのような複雑な積層構造体は製造コストが高く、又、接着によって形成される積層体では接着部の密着性(各積層界面の接着性)がわるく、この向上が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−167350号公報
【特許文献2】特開平11−66933号公報
【特許文献3】特開平11−65461号公報
【特許文献4】特開平11−65464号公報
【特許文献5】特開平11−65462号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、プラズマディスプレイパネルの前面フィルタ等に用いられる光学フィルムにおいて、赤外線吸収性を有しかつ密着性に優れ、更に平面性が高く、表面が平滑で、カールも少なく、面品質の良好な光学フィルムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は鋭意検討を重ねた結果、前記の課題は下記の手段によって解決できることを見いだした。
【0007】
1.赤外吸収染料として、下記一般式(1)または、下記一般式(2)で示される化合物を含む樹脂フィルムを延伸して作製することを特徴とする光学フィルムの製造方法。
【0008】
【化1】

【0009】
〔一般式(1)において、Xは硫黄原子又は酸素原子を表し、R、Rは水素及び1価の任意の基を表し、m、nは0、1、2、3又は4を表す。〕
【0010】
【化2】

【0011】
〔一般式(2)において、R、R、R、R、R及びRは各々1価の置換基を表す。l、mは0〜4の整数を表す。〕
2.前記赤外吸収染料を含む熱可塑性樹脂の成形物を一方向の延伸倍率が1.0〜2.0倍でもう一方向の延伸倍率が2.3〜7.0倍に二軸延伸製膜することを特徴とする前記1に記載の光学フィルムの製造方法。
【0012】
3.前記1又は2に記載の方法により製造された光学フィルム。
【0013】
4.赤外領域に吸収を有する赤外吸収染料と紫外線吸収剤を含有することを特徴とする前記3に記載の光学フィルム。
【0014】
5.少なくとも一方の表面に紫外線吸収剤を含有し、内部に赤外吸収染料が含まれる領域を有することを特徴とする前記4に記載の光学フィルム。
【0015】
6.赤外吸収染料が含まれる領域に可塑剤が含まれることを特徴とする前記3〜5のいずれか1項に記載の光学フィルム。
【0016】
7.前記3〜6のいずれか1項に記載の光学フィルムを含むプラズマディスプレイ用前面フィルタ。
【発明の効果】
【0017】
プラズマディスプレイ用前面フィルタなどに用いる光学フィルムとして有用な赤外吸収能が高く、平面性に優れ、カールの少なく、膜の密着性も良好な、耐久性の高い、しかも生産性が高く安価な光学フィルム及びその製造方法が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】積層フィルムの共流延による製造装置の一例を示す工程図である。
【図2】共流延による製造装置で用いられるスリットダイの断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0020】
本発明者は、上記のように光学フィルム自身に赤外吸収染料を含有させることにより、簡単な構造を有し、かつ、前面パネルへの接着性に優れるフィルムを提供することを見いだした。
【0021】
溶液流延法による製造においてドープ自身に赤外吸収染料を含有させることによって平面性に優れたフィルムを提供することができる。更に、赤外吸収染料とともに紫外線吸収剤を含有させることによって、赤外吸収性が長期に渡って安定に得られる。紫外線吸収剤は赤外線吸収染料と同じ部分に含まれていても良いが、より好ましくは2種以上のドープを使用し、主にフィルム内部に赤外吸収染料を含有、表層に紫外線吸収剤が含まれている構成であることがより好ましい。又、特に赤外吸収染料と可塑剤が一緒に含まれているとより赤外吸収性が安定に維持されるために好ましい。
【0022】
ここでいうフィルムの表層とは、フィルムの表面から10μm以内の領域を指し、それ以外の部分をフィルムの内部領域とする。フィルムの表層と内部領域の組成を変化させるには、フィルムの流延による製造方法において後述するが、それぞれ組成の異なったドープ液を逐次或いは同時流延する方法により製造することができる。
【0023】
フィルムの表層或いは内部層の組成は、カッター等で、表面10μmを削り取りこれを溶剤に溶解しこれをガスクロマトグラフィー法や、HPLC法等により成分分析を行うことによりその組成を容易に決定できる。
【0024】
本発明は、赤外吸収染料を含む熱可塑性樹脂の成型品を延伸することによって、より平面性に優れ、接着性が良好な光学フィルムを提供することができる。
【0025】
赤外線を吸収できる染料の代表例は有機染料であり、本発明における赤外吸収染料は、赤外領域(800nm〜1100nm)に吸収を有する有機染料であり、好ましくは可視領域、赤外領域を通し、主吸収が赤外領域にある有機染料が好ましく、中でも実質的に可視部における吸収がなく、赤外領域(800nm〜1100nm)に吸収を有するものであれば如何なるものでもよい。赤外吸収染料については多くの化合物が知られており、例えばシアニン染料、オキソノール染料があげられる。しかしながらこれらの染料はいずれも可視部の吸収が大きく、分解物が黄色の吸収を持ち、又化合物が比較的不安定で分解しやすい他、コストが高いという欠点も有していた。
【0026】
本発明に用いられる有機染料は実質的に可視部における吸収がなく、赤外領域(800nm〜1100nm)に吸収を有するものであれば如何なるものでもよいが、前記のチオピリリウムスクアリリウム染料、チオピリリウムクロコニウム染料、ピリリウムスクアリリウム染料又はピリリウムクロコニウム染料のなかから選ばれる染料特に前記一般式(1)で示される化合物及び一般式(2)で示される化合物を染料として用いるのが好ましい。
【0027】
本発明の光学フィルムに用いることのできる樹脂として、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、セロファン、セルロースジアセテートフィルム、セルロースアセテートブチレートフィルム、セルロースアセテートプロピオネートフィルム、セルロースアセテートフタレートフィルム、セルローストリアセテート、セルロースナイトレート等のセルロースエステル類又はそれらの誘導体からなるフィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリエチレンナフタレート、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレンビニルアルコールフィルム、シンジオタクティックポリスチレン系フィルム、ポリカーボネートフィルム、ノルボルネン樹脂系フィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリスルホン系フィルム、ポリエーテルケトンイミドフィルム、ポリアミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、ナイロンフィルム、ポリメチルメタクリレートフィルム、アクリルフィルムあるいはポリアリレート系フィルム等を挙げることができるが、本発明には、流延法により製膜ができるセルローストリアセテートフィルム(TACフィルム)、セルロースアセテートプロピオネートフィルム等のセルロースエステルフィルム、ポリカーボネート(以下PCと略すことがある)フィルムが透明性、機械的性質、光学的異方性がない点など好ましく、それらの中でも、特にTACフィルム及びPCフィルムが、製膜性が容易で加工性に優れているため好ましく用いられる。
【0028】
本発明で用いることのできるセルロースエステルフィルムとしては、セルロースエステルが低級脂肪酸エステルであることが好ましい。セルロースエステルの低級脂肪酸エステルにおける低級脂肪酸とは、炭素原子数が6以下の脂肪酸を意味し、例えば、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート等がセルロースの低級脂肪酸エステルの好ましい例として挙げられる。
【0029】
また、上記以外にも、特開平10−45804号、同8−231761号、米国特許第2,319,052号等に記載のセルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート等の混合脂肪酸エステルを用いることが出来る。
【0030】
上記記載の中でも、特に好ましく用いられるセルロースの低級脂肪酸エステルはセルローストリアセテートである。
【0031】
更に、ベース強度の観点から、特に重合度250〜400、結合酢酸量が54〜62.5%が好ましく用いられ、更に好ましいのは、結合酢酸量が58〜62.5%のセルローストリアセテートである。
【0032】
本発明で用いることのできるセルローストリアセテートは、綿花リンターから合成されたセルローストリアセテートと木材パルプから合成されたセルローストリアセテートのどちらかを単独あるいは混合して用いることができる。ベルトやドラムからの剥離性がもし問題になれば、ベルトやドラムからの剥離性が良い綿花リンターから合成されたセルローストリアセテートを多く使用すれば生産性が高く好ましい。
【0033】
木材パルプから合成されたセルローストリアセテートを混合し用いた場合、綿花リンターから合成されたセルローストリアセテートの比率が40質量%以上で、剥離性の効果が顕著になるため好ましく、60質量%以上がさらに好ましく、単独で使用することが最も好ましい。
【0034】
樹脂の性質によって、溶液流延法によって製膜する方法とエクストルーダ等による溶融押出し成型にて、溶融状態で樹脂を押し出し製膜する方法が可能であるが、光学異方性が少ないフィルムを得るためや高い膜厚精度、面品質を得るには溶液流延法によって製膜することがより好ましい。
【0035】
本発明の光学フィルムは50μm〜300μm程度の膜厚のものが用途に応じて好ましく用いられる。
【0036】
次に本発明で用いられる赤外を吸収できる有機染料について述べる。
【0037】
本発明で用いられる赤外領域(800〜1100nm)に吸収を有する赤外吸収染料は赤外を吸収できるものであれば特に限定されないが、中でも、可視部の吸収が少なく、分解物等による黄変の少ない、チオピリリウムスクアリリウム染料、チオピリリウムクロコニウム染料、ピリリウムスクアリリウム染料又はピリリウムクロコニウム染料を用いることが望ましい。
【0038】
これらの、チオピリリウムスクアリリウム染料、チオピリリウムクロコニウム染料、ピリリウムスクアリリウム染料又はピリリウムクロコニウム染料とは、チオピリリウム核、ピリリウム核とスクアリリウム核、クロコニウム核を有する化合物である。
【0039】
尚、スクアリリウム核を有する化合物とは、分子構造中に1−シクロブテン−2−ヒドロキシ−4−オンを有する化合物であり、クロコニウム核を有する化合物とは分子構造中に1−シクロペンテン−2−ヒドロキシ−4,5−ジオンを有する化合物である。ここで、ヒドロキシ基は解離していてもよい。
【0040】
これらの化合物としては前記一般式(1)で表される。一般式(1)において、Xは硫黄原子又は酸素原子を表し、R、Rは水素及び1価の任意の基を表し、m、nは0、1、2、3又は4を表す。
【0041】
一般式(1)を更に説明する。式中、R、Rは各々1価の置換基を表す。1価の置換基には特に制限はないが、アルキル基(例えばメチル基、エチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、メトキシエチル基、メトキシエトキシエチル基、2−エチルヘキシル基、2−ヘキシルデシル基、ベンジル基等)、アリール基(例えばフェニル基、4−クロロフェニル基、2,6−ジメチルフェニル基等)であることが好ましく、アルキル基であることがより好ましく、t−ブチル基であることが特に好ましい。R、Rは共同して環を形成してもよい。m、nは各々0から4の整数を表し、2以下であることが好ましい。
【0042】
以下に本発明に用いられるこれらの一般式(1)で表される染料を例示するが、本発明はこれらの染料に限定されない。
【0043】
【化3】

【0044】
【化4】

【0045】
【化5】

【0046】
これらの染料は、特願平10−309493号に記載された製造方法により製造することができる。
【0047】
本発明においてはまた、前記一般式(2)にて示されるクロコニウム染料を用いることができる。
【0048】
一般式(2)において、R、R、R、R、R及びRは各々1価の置換基を表す。l、mは0〜4の整数を表す。
【0049】
これらの一般式(2)の置換基を更に詳しく説明する。式中、R、R、R、R、R及びRが各々表す1価の置換基には制限はないが、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、メトキシエチル基、メトキシエトキシエチル基、2−エチルヘキシル基、2−ヘキシルデシル基、ベンジル基等)、アリール基(例えば、フェニル基、4−クロロフェニル基、2,6−ジメチルフェニル基等)、ヒドロキシル基、アシル基(例えば、アセチル基等)であることが好ましく、アルキル基、アリール基、ヒドロキシル基であることがより好ましく、中でも、炭素数5以上の置換基、エーテル結合を有する置換基また、ヒドロキシル基を有していることが好ましい。更には、アルキル基であることが最も好ましい。特に、R、R、R、Rは炭素数5以上の置換基またはエーテル結合をもつ置換基であることが有機溶媒に対する溶解度が改良されて特に好ましい。また、R、R、R、R、R及びRは協同して環を形成してもよく、例えばR、R、Rが協同してジュロリジル基を形成してもよい。l、mは各々0〜4の整数を表し、0または1であることが染料の合成しやすさの点で好ましい。
【0050】
以下、これらの染料の具体例を例示するが、これらの染料も具体例のみに限定されるものではない。
【0051】
【化6】

【0052】
【化7】

【0053】
【化8】

【0054】
これらのクロコニウム染料は、特願平10−236522号に記載の方法により容易に合成することができる。
【0055】
上記の染料は可視領域に実質的に吸収がなく、本発明に用いる染料として尤も好ましいものである。
【0056】
これら赤外吸収染料の使用量は化合物の種類、使用条件などにより一様ではないが、通常は光学フィルム1m当り、0.01g〜2gが好ましく用いられる。
【0057】
これらのうち、溶媒に可溶なものはドープに均一に添加して流延法にて製膜できるためより好ましく、溶媒に不要なものは微粒子として下記の方法で分散して添加することも可能である。
【0058】
更に本発明において、赤外吸収染料を含有する部分には可塑剤を添加することが好ましく、赤外吸収染料の安定性を向上させることができ、密着性も向上する。
【0059】
可塑剤としては、リン酸エステルまたはカルボン酸エステルが好ましく用いられる。リン酸エステルとしては、トリフェニルフォスフェート(TPP)およびトリクレジルホスフェート(TCP)、ビフェニル−ジフェニルホスフェート、ジメチルエチルホスフェート、が含まれる。カルボン酸エステルとしては、フタル酸エステルおよびクエン酸エステルが代表的なものである。フタル酸エステルの例には、ジメチルフタレート(DMP)、ジエチルフタレート(DEP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジオクチルフタレート(DOP)およびジエチルヘキシルフタレート(DEHP)、エチルフタリルエチルグリコレート等が用いられる。クエン酸エステルとしては、クエン酸アセチルトリエチル(OACTE)およびクエン酸アセチルトリブチル(OACTB)が用いられる。その他のカルボン酸エステルの例には、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル、種々のトリメリット酸エステルが含まれる。フタル酸エステル系可塑剤(DMP、DEP、DBP、DOP、DEHP)が好ましく用いられるがこれらに限定されるものではない。
【0060】
可塑剤の添加量はフィルム中に好ましくは1〜20質量%で添加され、好ましくは2〜15質量%で添加することが望ましい。
【0061】
更に、特に凝固点が25℃以下の可塑剤がフィルムに柔軟性を与え、赤外吸収染料の溶解性も助けるため好ましく用いられる。
【0062】
また、本発明の光学フィルムに、紫外線吸収剤を含有させることによって、より耐久性が改善された光学フィルムを得ることが出来る。すなわち、赤外吸収染料を含有する層に紫外線吸収剤を含有させることによって、より安定した赤外吸収効果を長期間維持することができるのである。また、2層構成のフィルムの場合、一方の層に赤外吸収染料を含有させ、もう1方の層に紫外線吸収剤を含有させることもできる。さらに3層以上の構成のフィルムの場合、フィルム内部に赤外吸収染料又は赤外吸収染料と紫外線吸収剤を含有させ、少なくとも1方の表層に紫外線吸収剤を含有させることが好ましい。より好ましくは両面の表層に紫外線吸収剤を含有させることができる。
【0063】
本発明に用いるこれら有用な紫外線吸収剤としては、サリチル酸誘導体(UV−1)、ベンゾフェノン誘導体(UV−2)、ベンゾトリアゾール誘導体(UV−3)、アクリロニトリル誘導体(UV−4)、安息香酸誘導体(UV−5)又は有機金属錯塩(UV−6)等があり、それぞれ(UV−1)としては、サリチル酸フェニル、4−t−チルフェニルサリチル酸等を、(UV−2)としては、2−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン等を、(UV−3)としては、2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)−ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−5′−ジ−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール等を、(UV−4)としては、2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3′−ジフェニルアクリレート、メチル−α−シアノ−β−(p−メトキシフェニル)アクリレート等を、(UV−5)としては、レゾルシノール−モノベンゾエート、2′,4′−ジ−t−ブチルフェニル−3,5−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート等を、(UV−6)としては、ニッケルビス−オクチルフェニルサルファミド、エチル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルリン酸のニッケル塩等を挙げることができる。
【0064】
本発明で好ましく用いられる上記記載の紫外線吸収剤は、透明性が高く、偏光板や液晶素子、プラズマディスプレイ等の光学装置の劣化を防ぐ効果に優れたベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤やベンゾフェノン系紫外線吸収剤が好ましく、不要な着色がより少ないベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が特に好ましい。本発明に用いられる紫外線吸収剤添加液の添加方法としては、下記に記載の方法が挙げられる。
【0065】
(添加方法A)
紫外線吸収剤添加液の調製方法としては、アルコールやメチレンクロライド、ジオキソランなどの有機溶剤に紫外線吸収剤を溶解してから直接ドープ組成中に添加する。
【0066】
(添加方法B)
紫外線吸収剤添加液の調製方法としては、アルコールやメチレンクロライド、ジオキソランなどの有機溶剤に紫外線吸収剤と少量のセルロースエステルを溶解してからインラインミキサーでドープに添加する。
【0067】
添加方法Bの方が、紫外線吸収剤の添加量を容易に調整できるため、生産性に優れていて好ましい。
【0068】
紫外線吸収剤の使用量は化合物の種類、使用条件などにより一様ではないが、通常は光学フィルム1m当り、0.1g〜2.0gが好ましく、0.3g〜1.5gがさらに好ましく、0.5g〜1.0gが特に好ましい。
【0069】
また、本発明の光学フィルムには表面の滑り性を付与するために微粒子(マット剤)を添加することができる。微粒子としては、下記の無機物および/または有機物が単独であるいは適宜組み合わされて用いられる。
【0070】
例えば、無機粒子としては酸化ケイ素、酸化チタン、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、酸化錫、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク、カオリン、硫酸カルシウム等を挙げることができ、また有機粒子としては、アクリル樹脂、有機シリコーン樹脂、ポリスチレン、尿素樹脂、ホルムアルデヒド縮合物、ポリメタアクリル酸メチルアクリレート樹脂、アクリルスチレン系樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、シリコーン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ベンゾグアナミン系樹脂、メラミン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、あるいはポリ弗化エチレン系樹脂等からなるものが用いられるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0071】
本発明に係る二酸化珪素の微粒子としては、例えば、アエロジルR972、R974、R812、200、300、R202、OX50、TT600(以上日本アエロジル(株)製)等の商品名を有する市販品が使用できる。
【0072】
本発明に係る酸化ジルコニウムの微粒子としては、例えば、アエロジルR976及びR811(以上日本アエロジル(株)製)等の商品名で市販されているものが使用できる。
【0073】
有機化合物としては、例えば、シリコーン樹脂、弗素樹脂及びアクリル樹脂等のポリマーが好ましく、中でも、シリコーン樹脂が好ましく用いられる。
【0074】
上記記載のシリコーン樹脂の中でも、特に三次元の網状構造を有するものが好ましく、例えば、トスパール103、同105、同108、同120、同145、同3120及び同240(以上東芝シリコーン(株)製)等の商品名を有する市販品が使用できる。
【0075】
これらの粒子粉末の体積平均粒径としては、0.01μm〜0.5μmが好ましく用いられる。添加の割合は、固形分あたり0.01〜0.5質量%となるように添加されていることが望ましい。
【0076】
すべり性は動摩擦係数によって表現されるが、動摩擦係数としてはフィルム表面と裏面間の動摩擦係数で、JIS−K−7125(1987)に準じて測定した場合に、2以下であることが好ましく1.5以下であることがさらに好ましく、1.0以下であることがさらに好ましく、0.5以下であることがさらに好ましい。マット剤添加量を増やすことによって動摩擦係数は低くすることができる。すべり性は鋼球での測定で、動摩擦係数0.4以下好ましくは0.2以下であることが望まれる。
【0077】
マット剤等の微粒子の分散液を調製する方法としては、例えば以下に示すような3種類が挙げられるが特にこれらに限定されるものではない。
【0078】
(調製方法A)
溶剤と微粒子を撹拌混合した後、分散機で分散を行う。これを微粒子分散液とする。微粒子分散液をドープ液に加えて撹拌する。
【0079】
(調製方法B)
溶剤と微粒子を撹拌混合した後、分散機で分散を行う。これを微粒子分散液とする。別に溶剤に少量の樹脂を加え、撹拌溶解する。これに前記微粒子分散液を加えて撹拌する。これを微粒子添加液とする。微粒子添加液をインラインミキサーでドープ液と十分混合する。
【0080】
(調製方法C)
溶剤に少量の樹脂を加え、撹拌溶解する。これに微粒子を加えて分散機で分散を行う。これを微粒子添加液とする。微粒子添加液をインラインミキサーでドープ液と十分混合する。
【0081】
調製方法Aは微粒子の分散性に優れ、調製方法Cは微粒子が再凝集しにくい点に優れている。調製方法Bは微粒子の分散性と、微粒子が再凝集しにくい等、両方に優れている好ましい調製方法である。
【0082】
(分散方法)
微粒子を溶剤などと混合して分散するときの微粒子の濃度は5〜30質量%が好ましく、10〜25質量%がさらに好ましく、15〜20質量%が最も好ましい。
【0083】
使用される溶剤は、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、或いは酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類、アルコール類が用いられ、特に低級アルコール類が好ましく、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール等が挙げられるが特にこれらに限定されるものではない。
【0084】
分散機は通常の分散機が使用できる。分散機は大きく分けてメディア分散機とメディアレス分散機に分けられる。
【0085】
メディア分散機としてはボールミル、サンドミル、ダイノミルなどがあげられる。
【0086】
メディアレス分散機としては超音波型、遠心型、高圧型などがある。高圧分散装置は、微粒子と溶媒を混合した組成物を、細管中に高速通過させることで、高剪断や高圧状態など特殊な条件を作りだす装置である。高圧分散装置で処理する場合、例えば、管径1〜2000μmの細管中で装置内部の最大圧力条件が10MPa以上であることが好ましい。更に好ましくは20MPa以上である。またその際、最高到達速度が100m/秒以上に達するもの、伝熱速度が418kJ/時間以上に達するものが好ましい。
【0087】
上記のような高圧分散装置にはMicrofluidics Corporation社製超高圧ホモジナイザ(商品名マイクロフルイダイザ)あるいはナノマイザ社製ナノマイザがあり、他にもマントンゴーリン型高圧分散装置、例えばイズミフードマシナリ製ホモジナイザ、三和機械(株)社製UHN−01等が挙げられる。
【0088】
セルロースエステルフィルムの場合、上記の様な各成分を含有する樹脂溶液であるドープ液を支持体上にキャスティング(流延)する方法により製造することができる。特に表面層及び内部層で添加剤組成の異なったフィルムを作製するには以下の共流延による製造方法が好ましい。
【0089】
例えば、2層以上のセルロースエステル積層フィルムの製造においては、セルロースエステルを溶剤に溶解させたドープ液と赤外吸収染料及び少量のセルロースエステルとが溶解している溶液とをインラインミキサーで混合(分散)して作製したドープ液とセルロースエステルが溶解しているドープ液に例えば、別途、インラインでUV吸収剤等が添加され、また、必要なら微粒子分散液も添加され(或いは別途微粒子含有ドープ液を共流延する)、これらを複数のスリットを有するダイスリットを用いて、流延ベルト上に流延(キャスト工程)し、次いで、流延ベルト上にて溶剤の一部を除去(流延ベルト上の乾燥工程)した後、流延ベルトから剥離し、剥離したフィルムを乾燥(フィルム乾燥工程)することにより、光学フィルムが得られる。
【0090】
これらのセルロースエステル積層フィルムの共流延による製造方法を図1及び図2で示される工程図を参照しながら、更に説明する。
【0091】
図1は、セルロースエステル積層フィルムの共流延による製造装置の一例を示す工程図であり、図2は、図1のスリットダイ6の断面図を示す。
【0092】
セルロースエステルドープ液を調液するドープ液タンク1には、ドープ液1aが投入されており、赤外吸収染料添加液タンク2には、赤外吸収染料添加液2aが、また、ドープ液タンク3には、UV吸収剤添加液3aが投入されている。
【0093】
ドープ液1aは送液ポンプ4b、4cにより、インラインミキサー5a、5bまで送られ、赤外吸収染料添加液2aはポンプ4aによってインラインミキサー5aまで送られる。インラインミキサー5aでドープ液1aと赤外吸収染料添加液2aは充分混合され、スリットダイ6のスリット12に送られる。
【0094】
同様に、インラインミキサー5bで、ドープ液1aとUV吸収剤添加液3aは充分混合され、スリットダイ6のスリット13に送られる。
【0095】
スリットダイ6から上下表面の層は、ドープ液1aとUV吸収剤添加液3aの混合液で構成され、真ん中の層は、ドープ液1aと赤外吸収染料添加液2aの混合液の状態で流延口11から共流延され、ドラム7より連続的に移動する流延ベルト8上に流延される。流延された3層からなるセルロースエステルドープ層は、乾燥後、セルロースエステル積層フィルム10として、ローラ9により流延ベルトから、剥離される。これにより、赤外吸収染料を内部領域にもち、両方の表面側にUV吸収剤を含有するセルロースエステルフィルムが得られる。
【0096】
共流延の方法については、前述のような、2つまたは3つのスリットを有するダイ内で合流させ2層または3層構成にする同時多層流延方法や、異なったダイを通じて2層または3層構成にする逐次多層流延方法等があるが、これらの中のいずれであってよく、また、逐次多層流延と同時多層流延を組み合わせた多層流延方法であっても良い。
【0097】
本発明において、樹脂が溶解しているドープ液とは、セルロースエステル等の樹脂が溶剤(溶媒)に溶解している状態であり、前記ドープ液には、可塑剤等の添加剤を加えることも出来、勿論、必要によりこの他の添加剤を加えることも出来る。ドープ液中の樹脂の濃度としては、10〜30質量%が好ましく、更に好ましくは、18〜20質量%である。
【0098】
本発明で用いることのできる溶剤は、単独でも併用でもよいが、良溶剤と貧溶剤を混合して使用することが、生産効率の点で好ましく、更に好ましくは、良溶剤と貧溶剤の混合比率は良溶剤が70〜95質量%であり、貧溶剤が5〜30質量%である。
【0099】
本発明で用いることのできる良溶剤、貧溶剤とは、使用する樹脂を単独で溶解するものを良溶剤、単独で膨潤するかまたは溶解しないものを貧溶剤と定義している。そのため、樹脂の結合酢酸量によっては、良溶剤、貧溶剤が変わり、例えばアセトンを溶剤として用いるときには、セルロースエステルの場合の結合酢酸量55%では良溶剤になり、結合酢酸量60%では貧溶剤となってしまう。
【0100】
本発明で用いることのできる良溶剤としては、メチレンクロライド等の有機ハロゲン化合物やジオキソラン類が挙げられる。
【0101】
また、本発明で用いることのできる貧溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n−ブタノール、シクロヘキサン等が好ましく用いられる。
【0102】
セルロースエステルがセルロースアセテートプロピオネートの場合、あるいはセルローストリアセテートを一旦−20℃以下に冷却して溶解させる場合には、酢酸メチルとアセトンの混合溶媒が好ましく用いられる。
【0103】
上記記載のドープ液を調製する時の、セルロースエステルの溶解方法としては、一般的な方法を用いることができるが、好ましい方法としては、セルロースエステルを貧溶剤と混合し、湿潤あるいは膨潤させ、さらに良溶剤と混合する方法が好ましく用いられる。このとき加圧下で、溶剤の常温での沸点以上でかつ溶剤が沸騰しない範囲の温度で加熱し、攪拌しながら溶解する方法が、ゲルやママコと呼ばれる塊状未溶解物の発生を防止するため、より好ましい。
【0104】
加圧は窒素ガスなどの不活性気体を圧入する方法や、加熱による溶剤の蒸気圧の上昇によって行ってもよい。加熱は外部から行うことが好ましく、例えば、ジャケットタイプのものは温度コントロールが容易で好ましい。
【0105】
溶剤を添加しての加熱温度は、使用溶剤の沸点以上で、かつ該溶剤が沸騰しない範囲の温度が好ましく例えば60℃以上、70〜110℃の範囲に設定するのが好適である。又、圧力は設定温度で、溶剤が沸騰しないように調整される。
【0106】
溶解後は冷却しながら容器から取り出すか、または容器からポンプ等で抜き出して熱交換器などで冷却し、これを製膜に供する。このときの冷却温度は常温まで冷却してもよいが、沸点より5〜10℃低い温度まで冷却し、その温度のままキャスティングを行うほうが、ドープ粘度を低減できるためより好ましい。
【0107】
キャスト工程における支持体はベルト状もしくはドラム状のステンレスを鏡面仕上げした支持体が好ましく用いられる。キャスト工程の支持体の温度は一般的な温度範囲0℃〜溶剤の沸点未満の温度で、流延することができるが、0〜40℃の支持体上に流延するほうが、ドープをゲル化させる事ができ剥離限界時間の点で好ましい。剥離限界時間とは透明で平面性の良好なフィルムを連続的に得られる流延速度の限界において、流延されたドープが支持体上にある時間をいう。剥離限界時間は短い方が生産性に優れていて好ましい。
【0108】
流延(キャスト)される側の支持体の表面温度は、0〜40℃、溶液(ドープ)の温度は、25〜60℃、更に溶液(ドープ)の温度を支持体の温度より高くするのが好ましく、+5℃以上に設定するのが更に好ましい。溶液(ドープ)温度、支持体温度は、高いほど溶媒の乾燥速度が速くできるので好ましいが、あまり高すぎると発泡したり、平面性が劣化する場合がある。
【0109】
支持体の温度の更に好ましい範囲は、20〜40℃、溶液(ドープ)温度の更に好ましい範囲は、35〜45℃である。
【0110】
また、剥離する際の支持体温度を10〜40℃、更に好ましくは、15〜30℃にすることでフィルムと支持体との密着力を低減できるので、好ましい。
【0111】
製造時のセルロースエステルフィルムが良好な平面性を示すためには、支持体から剥離する際の残留溶媒量は、10〜80%が好ましく、更に好ましくは、20〜40%または60〜80%であり、特に好ましくは、20〜30%である。
【0112】
本発明においては、残留溶媒量は下記式で定義される。
【0113】
残留溶媒量=(加熱処理前質量−加熱処理後質量)/(加熱処理後質量)×100%
尚、残留溶媒量を測定する際の、加熱処理とは、フィルムを115℃で1時間の加熱処理を行うことを表す。
【0114】
支持体とフィルムを剥離する際の剥離張力は、通常200〜250N/mで剥離が行われるが、セルロースエステルの単位質量あたりの添加剤量(赤外染料及び紫外線吸収剤等)の含有量が多く、且つ、従来よりも薄膜化されているセルロースエステルフィルムは、剥離の際にシワが入りやすいため、剥離できる最低張力〜170N/mで剥離することが好ましく、更に好ましくは、最低張力〜140N/mで剥離することである。
【0115】
また、セルロースエステルフィルムの乾燥工程においては、支持体より剥離したフィルムを更に乾燥し、残留溶媒量を3質量%以下にすることが好ましい、更に好ましくは、0.5質量%以下である。
【0116】
フィルム乾燥工程ではロール懸垂方式か、ピンテンター方式でフィルムを搬送しながら乾燥する方式が好ましく用いられる。表示部材用としては、ピンテンター方式で幅を保持しながら乾燥させることが、寸法安定性を向上させるために好ましい。特に支持体より剥離した直後の残留溶剤量の多いところで幅保持を行うことが、寸法安定性向上効果をより発揮するため特に好ましく、特に赤外領域に吸収を有する染料を添加した場合には非常に効果的である。フィルムを乾燥させる手段は特に制限なく、一般的に熱風、赤外線、加熱ロール、マイクロ波等で行う。簡便さの点で熱風で行うのが好ましい。乾燥温度は40〜150℃の範囲で3〜5段階の温度に分けて、段々高くしていくことが好ましく、80〜140℃の範囲で行うことが寸法安定性を良くするためさらに好ましい。
【0117】
光学フィルムの製造では流延後剥離した後にテンター等の手段によって幅保持されることが好ましく、これにより高い平面性を維持させることができる。これによって、長期に渡って反りが発生しない光学フィルムを得ることができる。テンターは残留溶媒量が10〜40質量%の範囲でかけることが望ましい。更に好ましくは15〜35質量%である。残留溶媒量は溶媒を含むフィルムから前記の方法により求めることができる。
【0118】
又、製造された光学フィルムは光学的等方性にも優れ、以下の式で定義される膜厚方向のリターデーションRtで100nm以下の光学フィルムが得られ、80nm以下の光学フィルムも得ることができ、更に、0〜50nmの光学フィルムも得ることができる点で優れている。更に、均一なリターデーションが得られる点でも優れている。
【0119】
Rt=((Nx+Ny)/2−Nz)×d
又、以下の式で定義される面内のリターデーションRoが±10nm好ましくは5nmのものが得られる点でも優れている。
【0120】
Ro=(Nx−Ny)×d
(式中、Nxはフィルムの製膜方向に平行な方向におけるフィルムの屈折率、Nyは製膜方向に垂直な方向におけるフィルムの屈折率、Nzは厚み方向におけるフィルムの屈折率、dはフィルムの厚み(nm)を各々表す。)
上記のリターデーションRt又はRoは自動複屈折率計KOBRA−21ADH(王子計測機器(株)製)を用いて、23℃、55%RHの環境下で590nmの波長における3次元屈折率測定を行い、Nx、Ny、Nzを測定し、これによりRt、Roを算出することができる。
【0121】
本発明のポリエステル等の熱可塑性樹脂においても、これを溶融押し出し成型して光学フィルムを作製することによって、赤外吸収能に優れ、カールや、膜剥がれ等の問題がなく、耐久性の高い均一で平面性の良好な光学フィルムを得ることができたのである。以下に具体的に説明する。
【0122】
本発明の光学フィルムにポリエステル等の熱可塑性樹脂が用いられる場合、ポリエステルフィルムを構成するポリエステルは、特に限定されるものではないが、ジカルボン酸成分とジオール成分を主要な構成成分とするフィルム形成性を有するポリエステルであることが好ましい。
【0123】
主要な構成成分のジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2−6ナフタレンジカルボン酸、2−7ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェニルエタンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルチオエーテルジカルボン酸、ジフェニルケトンジカルボン酸、フェニルインダンジカルボン酸などを挙げることができる。また、ジオール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビスフェノールフルオレンジヒドロキシエチルエーテル、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ハイドロキノン、シクロヘキサンジオール等を挙げることができる。
【0124】
これらを主要な構成成分とするポリエステルの中でも透明性、機械的強度、寸法安定性等の点から、ジカルボン酸成分として、テレフタル酸及び/又は2−6ナフタレンジカルボン酸、ジオール成分として、エチレングリコール及び/又はジエチレングリコールを主要な構成成分とするポリエステルが好ましい。中でも、ポリエチレンテレフタレート又はポリエチレン2−6ナフタレートを主要な構成成分とするポリエステルや、テレフタル酸と2−6ナフタレンジカルボン酸とエチレングリコールからなる共重合ポリエステル、及びこれらのポリエステルの二種以上の混合物を主要な構成成分とするポリエステルが好ましい。ポリエステルに対してエチレンテレフタレートユニット(成分)又はエチレン2−6ナフタレンユニット(成分)が70質量%以上含有されていると、透明性、機械的強度、寸法安定性などに高度に優れたフィルムが得られる。
【0125】
これらのポリエステルフィルムを構成するポリエステルは、本発明の効果を阻害しない範囲であれば、更に他の共重合成分が共重合されていても良いし、他のポリエステルが混合されていても良い。これらの例としては、先に挙げたジカルボン酸成分やジオール成分、またはそれらから成るポリエステルを挙げることができる。
【0126】
ポリエステルフィルムを構成するポリエステルには、スルホネート基を有する芳香族ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体、ポリオキシアルキレン基を有するジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体、ポリオキシアルキレン基を有するジオールなどを共重合しても良い。ポリエステルの重合反応性やフィルムの透明性の点で、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、2−ナトリウムスルホテレフタル酸、4−ナトリウムスルホフタル酸、4−ナトリウムスルホ−2,6−ナフタレンジカルボン酸及びこれらのナトリウムを他の金属(例えばカリウム、リチウムなど)やアンモニウム塩、ホスホニウム塩などで置換した化合物又はそのエステル形成性誘導体、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール共重合体及びこれらの両端のヒドロキシ基を酸化するなどしてカルボキシル基とした化合物などが好ましい。また、フィルムの耐熱性を向上する目的では、ビスフェノール系化合物、ナフタレン環又はシクロヘキサン環を有する化合物を共重合することができる。
【0127】
本発明に用いられるポリエステルには、酸化防止剤が含有されていても良い。特にポリエステルが、ポリオキシアルキレン基を有する化合物を含む場合に、本発明の目的の効果が顕著となる。含有させる酸化防止剤はその種類につき特に限定はなく、各種の酸化防止剤を使用することができるが、例えばヒンダードフェノール系化合物、ホスファイト系化合物、チオエーテル系化合物などの酸化防止剤を挙げることができる。中でも透明性の点でヒンダードフェノール系化合物の酸化防止剤が好ましい。
【0128】
酸化防止剤の含有量は、通常、ポリエステルに対して0.01〜2質量%、好ましくは0.1〜0.5質量%である。
【0129】
本発明に用いられるポリエステルフィルムには、必要に応じて易滑性を付与することもできる。易滑性付与手段としては、特に限定はないが、ポリエステルに不活性無機粒子を添加する外部粒子添加方法、ポリエステルの合成時に添加する触媒を析出させる内部粒子析出方法、あるいは界面活性剤などをフィルム表面に塗布する方法などが一般的である。
【0130】
本発明に用いられるポリエステルフィルムの原料ポリエステルの合成方法は、特に限定があるわけではなく、従来公知のポリエステルの製造方法に従って製造できる。例えば、ジカルボン酸成分をジオール成分と直接エステル化反応させる直接エステル化法、初めにジカルボン酸成分としてジアルキルエステルを用いて、これとジオール成分とでエステル交換反応させ、これを減圧下で加熱して余剰のジオール成分を除去することにより重合させるエステル交換法を用いることができる。この際、必要に応じてエステル交換触媒あるいは重合反応触媒を用い、あるいは耐熱安定剤を添加するができる。また、合成時の各過程で着色防止剤、酸化防止剤、結晶核剤、滑り剤、安定剤、ブロッキング防止剤、紫外線吸収剤、粘度調節剤、消泡剤、透明化剤、帯電防止剤、pH調整剤、染料、顔料などを添加させても良い。
【0131】
〈本発明におけるガラス転移温度Tg、結晶化温度Tc及び融点Tmの定義〉
フィルムあるいはペレット10mgを、毎分300mlの窒素気流中、300℃で溶融し、直ちに液体窒素中で急冷する。この急冷サンプルを示差走査型熱量計(理学電器社製、DSC8230型)にセットし、毎分100mlの窒素気流中、毎分10℃の昇温速度で昇温し、Tg、Tc及びTmを検出する。Tgはベースラインが偏奇し始める温度と、新たにベースラインに戻る温度との平均値、Tcはその発熱ピークのピーク温度、Tmはその吸熱ピークのピーク温度とした。なお、測定開始温度は、測定されるTgより50℃以上低い温度とする。
【0132】
次に、ポリエステルフィルムの製造方法について説明する。
【0133】
本発明において用いられるポリエステルフィルムは、一方向の延伸倍率が1.0〜2.0倍、それと直交する方向の延伸倍率が2.3〜7.0倍に二軸延伸製膜されたポリエステルフィルムであることが好ましく、より好ましくは、縦方向の延伸倍率が1.0〜2.0倍、横方向の延伸倍率が2.3〜7.0倍に二軸延伸製膜されたポリエステルフィルムであり、さらに好ましくは、縦方向の延伸倍率が1.1〜1.8倍、横方向の延伸倍率が3.0〜6.0倍に二軸延伸製膜されたポリエステルフィルムである。
【0134】
上記ポリエステルフィルムを得るには、従来公知の方法で行うことができ特に限定されないが、以下のような方法で行うことができる。縦方向とは、フィルムの製膜方向(長手方向)を、横方向とはフィルムの製膜方向と直角方向のことをいう。
【0135】
まず、原料のポリエステルをペレット状に成型し、熱風乾燥又は真空乾燥した後、本発明の赤外吸収染料を添加し、混合、混練した後、溶融押出し、Tダイよりシート状に押出して、静電印加法などにより冷却ドラムに密着させ、冷却固化させ、未延伸シートを得る。
【0136】
次いで、得られた未延伸シートを複数のロール群及び/又は赤外線ヒーターなどの加熱装置を介してポリエステルのガラス転移温度(Tg)からTg+100℃の範囲内に加熱し、一段又は多段縦延伸する方法である。本発明において、縦方向の延伸倍率は1.0〜2.0倍の範囲であることが好ましく、より好ましくは、1.1〜1.8倍の範囲である。
【0137】
次に、上記の様にして得られた縦方向に延伸されたポリエステルフィルムを、Tg〜Tm−20℃の温度範囲内で、横延伸し次いで熱固定する。本発明において、横方向の延伸倍率は、2.3〜7.0倍の範囲であることが好ましく、より好ましくは3.0〜6.0倍の範囲、更に好ましくは4.0〜6.0倍の範囲である。
【0138】
横延伸する場合、2つ以上に分割された延伸領域で温度差を1〜50℃の範囲で順次昇温しながら横延伸すると巾方向の物性の分布が低減でき好ましい。更に横延伸後、フィルムを、その最終横延伸温度以下でTg−40℃以上の範囲に0.01〜5分間保持する巾方向の物性の分布が更に低減でき好ましい。
【0139】
熱固定は、その最終横延伸温度より高温で、Tm−150℃〜Tm−25℃の温度範囲内で通常0.5〜300秒間熱固定する。熱固定温度はより好ましくはTm−140℃〜Tm−60℃の温度範囲で、更に好ましくは、Tm−130℃〜Tm−70℃の温度範囲で熱固定することである。この際、2つ以上に分割された領域で温度差を1〜100℃の範囲で順次昇温しながら熱固定することがより好ましい。
【0140】
熱固定されたフィルムは通常Tg以下まで冷却され、フィルム両端のクリップ把持部分をカットし巻き取られる。この際、最終熱固定温度以下、Tg以上の温度範囲内で、横方向及び/又は縦方向に0.1〜10%弛緩処理することが好ましい。また、冷却は、最終熱固定温度からTgまでを、毎秒100℃以下の冷却速度で徐冷することが好ましい。冷却、弛緩処理する手段は特に限定はなく、従来公知の手段で行えるが、特に複数の温度領域で順次冷却しながら、これらの処理を行うことが、フィルムの寸法安定性向上の点で好ましい。なお、冷却速度は、最終熱固定温度をTl、フィルムが最終熱固定温度からTgに達するまでの時間をtとしたとき、(Tl−Tg)/tで求めた値である。
【0141】
これら熱固定条件、冷却、弛緩処理条件のより最適な条件は、フィルムを構成するポリエステルにより異なるので、得られた二軸延伸フィルムの物性を測定し、好ましい特性を有するように適宜調整することにより決定すれば良い。
【0142】
また、上記フィルム製造に際し、延伸の前及び/又は後でクリアコート層、帯電防止層、易滑性層、接着層、バリアー層などの機能性層を塗設しても良い。この際、コロナ放電処理、プラズマ放電処理、薬液処理などの各種表面処理を必要に応じて施すことができる。カットされたフィルム両端のクリップ把持部分は、粉砕処理された後、あるいは必要に応じて造粒処理や解重合・再重合などの処理を行った後、同じ品種のフィルム用原料として又は異なる品種のフィルム用原料として再利用しても良い。
【0143】
本発明において一方向のみに延伸製膜されたポリエステルフィルムとは、上記二軸延伸製膜において、どちらか一方向のみを行うことで得られる。延伸する方向は、縦方向、横方向いずれでも良いが、より好ましくは、横方向のみに延伸製膜する方法である。この場合、延伸倍率は2.3〜7.0倍の範囲であることが好ましく、より好ましくは3.0〜6.0倍の範囲、更に好ましくは4.0〜6.0倍の範囲である。上記のようにして製膜されたポリエステルフィルムの面方向においての屈折率は、横方向の屈折率(nTD)と縦方向の屈折率(nMD)との差nTD−nMDが0.03以上であることが好ましく、より好ましくは0.04以上、更に好ましくは0.05以上である。
【0144】
本発明において、上記のように製膜されたポリエステルフィルムの80℃30分処理での熱収縮率が縦・横方向ともに5%以下であることが好ましい。より好ましくは、熱収縮率が縦・横方向ともに2%以下、更に好ましくは、1%以下である。
【0145】
ポリエステルの光学フィルムにおいても、厚みは50〜300μm程度のものが用いられ、好ましくは、60〜200μmである。
【0146】
本発明に用いるポリエステルフィルムのTgは、50℃以上が好ましく、更に60℃以上が好ましい。Tgは示差走査熱量計で測定するところのベースラインが偏奇し始める温度と、新たにベースラインに戻る温度との平均値として求められる。
【0147】
本発明の光学フィルムは、表面が導電性を有することが好ましく、表面比抵抗(23℃、25%RH)が1×1012Ω/□以下であることが好ましい。より好ましくは、1×1011Ω/□以下、更に好ましくは、1×1010Ω/□以下である。
【0148】
フィルムに導電性を付与する方法は特に限定されないが、吸湿性物質又は導電性物質を含有させることによって形成することができる。これら導電性を付与させる物質としては、例えば、界面活性剤、導電性ポリマー、無機金属酸化物を挙げることができる。
【0149】
用いることができる界面活性剤としては、アニオン性、カチオン性、両性及びノニオン性のいずれでも良い。アニオン性界面活性剤としては、例えばアルキルカルボン酸塩、アルキルスルフォン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルフォン酸塩、アルキル硫酸エステル類、アルキルリン酸エステル類、N−アシル−N−アルキルタウリン類、スルホコハク酸エステル類、スルホアルキルポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル類などのような、カルボキシ基、スルホ基、ホスホ基、硫酸エステル基、燐酸エステル基等の酸性基を含むものが好ましい。
【0150】
カチオン性界面活性剤としては、例えばアルキルアミン塩類、脂肪族あるいは芳香族第4級アンモニウム塩類、ピリジニウム、イミダゾリウムなどの複素環第4アンモニウム塩類、及び脂肪族又は複素環を含むホスホニウム又はスルホニウム塩類等が好ましい。
【0151】
両性界面活性剤としては、例えばアミノ酸類、アミノアルキルスルホン酸類、アミノアルキル硫酸又は燐酸エステル類、アルキルベタイン類、アミンオキシド類等が好ましい。
【0152】
ノニオン性界面活性剤としては、例えばサポニン(ステロイド系)、アルキレンオキサイド誘導体(例えばポリエチレングリコール、ポリエチレングリコール/ポリプロピレングリコール縮合物、ポリエチレングリコールアルキルエーテル類又はポリエチレングリコールアルキルアリールエーテル類、ポリエチレングリコールエステル類、ポリエチレングリコールソルビタンエステル類、ポリアルキレングルコールアルキルアミン又はアミド類、シリコーンのポリエチレンオキサイド付加物類)、グリシドール誘導体(例えばアルケニルコハク酸ポリセリド、アルキルフェノールポリグリセリド)、多価アルコール脂肪酸エステル類等のアルキルエステル類等が好ましい。
【0153】
導電性ポリマーは、特に限定されず、アニオン性、カチオン性、両性及びノニオン性のいずれでも良いが、その中でも好ましいのは、アニオン性、カチオン性である。より好ましいのは、アニオン性では、スルホン酸系、カルボン酸系、カチオン性では、3級アミン系、4級アンモニウム系のポリマー又はラテックスである。
【0154】
これらの導電性ポリマーは、例えば特公昭52−25251号、特開昭51−29923号、特公昭60−48024号記載のアニオン性ポリマー又はラテックス、特公昭57−18176号、同57−56059号、同58−56856号、米国特許第4,118,231号などに記載のカチオン性ポリマー又はラテックスを挙げることができる。
【0155】
本発明の光学フィルムは耐擦傷性を向上させるために必要に応じて表面にクリアハードコート層を塗設することもできる。このため活性線硬化樹脂(例えば紫外線硬化樹脂)あるいは熱硬化樹脂を含む塗布組成物を塗設することができるが、塗布する下面の表面粗さが粗いと、クリアハードコートの表面が増幅されて粗くなることがある。しかしながら、本発明の光学フィルムは平面性に優れ、表面粗さも小さいため、クリアハードコート層を設ける場合においても、その表面において良好な平面性を得ることができるのである。
【0156】
特にクリアハードコート加工のための活性線硬化性樹脂層の例について説明する。活性線硬化樹脂層とは紫外線や電子線のような活性線照射により架橋反応などを経て硬化する樹脂を主たる成分とする層をいう。活性線硬化樹脂としては紫外線硬化性樹脂や電子線硬化性樹脂などが代表的なものとして挙げられるが、紫外線や電子線以外の活性線照射によって硬化する樹脂でもよい。紫外線硬化性樹脂としては、例えば、紫外線硬化型アクリルウレタン系樹脂、紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂、紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂、紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂、又は紫外線硬化型エポキシ樹脂等を挙げることが出来る。
【0157】
紫外線硬化型アクリルウレタン系樹脂は、一般にポリエステルポリオールにイソシアネートモノマー、もしくはプレポリマーを反応させて得られた生成物に更に2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(以下アクリレートにはメタクリレートを包含するものとしてアクリレートのみを表示する)、2−ヒドロキシプロピルアクリレート等の水酸基を有するアクリレート系のモノマーを反応させることによって容易に得ることが出来る(例えば特開昭59−151110号)。
【0158】
紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂は、一般にポリエステルポリオールに2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシアクリレート系のモノマーを反応させることによって容易に得ることが出来る(例えば、特開昭59−151112号)。
【0159】
紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂の具体例としては、エポキシアクリレートをオリゴマーとし、これに反応性希釈剤、光反応開始剤を添加し、反応させたものを挙げることが出来る(例えば、特開平1−105738号)。この光反応開始剤としては、ベンゾイン誘導体、オキシムケトン誘導体、ベンゾフェノン誘導体、チオキサントン誘導体等のうちから、1種もしくは2種以上を選択して使用することが出来る。
【0160】
また、紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂の具体例としては、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等を挙げることが出来る。これらの樹脂は通常公知の光増感剤と共に使用される。また上記光反応開始剤も光増感剤としても使用出来る。具体的には、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、ミヒラーケトン、α−アミロキシムエステル、テトラメチルウラムモノサルファイド、チオキサントン等及びこれらの誘導体を挙げることが出来る。また、エポキシアクリレート系の光反応剤の使用の際、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン等の増感剤を用いることが出来る。塗布乾燥後に揮発する溶媒成分を除いた紫外線硬化性樹脂組成物に含まれる光反応開始剤又光増感剤は該組成物の1〜10質量%で好ましく用いられる。
【0161】
樹脂モノマーとしては、例えば、不飽和二重結合が一つのモノマーとして、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、酢酸ビニル、ベンジルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、スチレン等の一般的なモノマーを挙げることが出来る。また不飽和二重結合を二つ以上持つモノマーとして、エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ジビニルベンゼン、1,4−シクロヘキサンジアクリレート、1,4−シクロヘキシルジメチルアジアクリレート、前出のトリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリルエステル等を挙げることができる。
【0162】
活性線硬化樹脂層の塗布組成物は固形分濃度は10〜95質量%であることが好ましく、塗布方法により適当な濃度が選ばれる。
【0163】
活性線硬化性樹脂を光硬化反応により硬化皮膜層を形成するための光源としては、紫外線を発生する光源であればいずれでも使用出来る。例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等を用いることが出来る。照射条件はそれぞれのランプによって異なるが、照射光量は20〜10000mJ/cm程度あればよく、好ましくは、50〜2000mJ/cmである。近紫外線領域から可視光線領域にかけてはその領域に吸収極大のある増感剤を用いることによって使用出来る。
【0164】
活性線硬化樹脂層を塗設する際の溶媒は、前述の樹脂層を塗設する溶媒、例えば、炭化水素類、アルコール類、ケトン類、エステル類、グリコールエーテル類、その他の溶媒の中から適宜選択し、あるいは混合されて利用できる。
【0165】
紫外線硬化性樹脂組成物塗布液の塗布方法としては、グラビアコーター、スピナーコーター、ワイヤーバーコーター、ロールコーター、リバースコーター、押出コーター、エアードクターコーター等公知の方法を用いることが出来る。塗布量はウェット膜厚で0.1〜30μmが適当で、好ましくは、0.5〜15μmである。塗布速度は好ましくは10〜100m/minで行われる。
【0166】
紫外線硬化性樹脂組成物は塗布乾燥された後、紫外線を光源より照射するが、照射時間は0.5秒〜5分がよく、紫外線硬化性樹脂の硬化効率、作業効率等から3秒〜2分がより好ましい。
【0167】
さらに、本発明の光学フィルムには又、帯電防止層、反射防止層、易接着層を設けることができる。
【0168】
本発明の光学フィルムは表面を改質するため、コロナ放電処理、プラズマ放電処理を施すことも可能であり、これによって塗布液の濡れ性を改善したり、接着性をより高めることもできる。又、プラズマ処理によって電磁波遮蔽、熱線カットのための金属又は金属酸化物の薄膜を付与することもできる。
【0169】
これら本発明の光学フィルムは、プラズマディスプレイパネル用フィルタとして、従来公知の透明樹脂材上に赤外遮断層をコーティングにより塗設したものに比べて、赤外線カット性能に優れ、膜剥がれや、カール特性にも優れ、また耐久性にも優れ、低コストで製造可能なものである。
【0170】
これをプラズマディスプレイパネル用フィルタとして用いることにより、近赤外領域の光を用いる他の装置に対する誤作動や、プラズマディスプレイパネル自身の加熱を抑えると共に、プラズマディスプレイパネル用フィルタとして用いる事のできる耐久性の高い有用な光学フィルムが得られる。
【実施例】
【0171】
以下、実施例を用いて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの態様に限定されない。
【0172】
参考例1
表1に示した成分を含む各々のドープを作製した。
【0173】
【表1】

【0174】
CAP:セルロースアセテートプロピオネート
アセチル置換度 2.0
プロピオニル置換度 0.8
数平均分子量 100,000
TAC:セルローストリアセテート
平均酢化度 61%
UV吸収剤A:
チヌビン109(チバ・ジャパン(株)製) 0.8kg
チヌビン117(チバ・ジャパン(株)製) 0.8kg
可塑剤B:
トリフェニルフォスフェート 11kg
可塑剤C:
トリフェニルフォスフェート 8kg
エチルフタリルエチルグリコレート 3kg
赤外吸収染料D:
例示化合物1−1
赤外吸収染料E:
例示化合物2−1
微粒子F:
アエロジル200V(日本アエロジル(株)製) 0.1kg
微粒子G:
アエロジルR972(日本アエロジル(株)製) 0.1kg
各ドープの調製にあたって、赤外吸収染料はエタノール10kgに添加し溶解した。微粒子を添加する場合は、ここに微粒子が分散されたエタノール液を添加した。残りのエタノールとこれ以外のドープを構成する各材料を密閉容器に投入し、加圧下で80℃に保温し撹拌しながら完全に溶解した後、濾過し各ドープを調製した。
【0175】
先ず、調製したドープ3を冷却して33℃に保ち、ステンレスバンド上に均一に流延し、33℃で5分間乾燥した。ステンレスバンド上から剥離後、残留溶媒量が35質量%から10質量%となる間に延伸倍率が1.01〜1.05倍となるようにテンターを行った。更に多数のロールで搬送させながら乾燥を終了させ、表2の光学フィルム1を得た。
【0176】
同様に調製したドープ1〜7のうち、ドープ2、ドープ7を用いてそれぞれ表2の光学フィルム6、7を作製した。
【0177】
同様に、ベルト流延装置を用い、2つのスリットを有するダイ内で合流させ2層構成にする同時多層流延方法で共流延液を温度33℃、1500mm幅でステンレス製の流延ベルト上にベルト側から第1層(ドープ7)、第2層(ドープ6)の順で、乾燥膜厚でドープ7の固形分が40μmとなりドープ6の固形分が40μmとなるように、ステンレスバンド上に均一に流延し、33℃で5分間乾燥した。ステンレスバンド上から剥離後、残留溶媒量が30質量%〜10質量%で延伸倍率が1.01〜1.05倍となるようにテンターを行った。更に多数のロールで搬送させながら乾燥を終了させ、表2の光学フィルム5を得た。
【0178】
同様に、ベルト流延装置を用い、ドープ1でドープ2をサンドイッチするように3つのスリットを有するダイ内で合流させ3層構成にする同時多層流延方法で共流延液を温度33℃、1500mm幅でステンレス製の流延ベルト上にベルト側から第1層(ドープ1)、第2層(ドープ2)、第3層(ドープ1)の順で、乾燥膜厚でドープ1が20μmずつとなりドープ2が40μmとなるように、ステンレスバンド上に均一に流延し、33℃で5分間乾燥した。ステンレスバンド上から剥離後、残留溶媒量が30質量%〜10質量%で延伸倍率が1.01〜1.05倍となるようにテンターを行った。更に多数のロールで搬送させながら乾燥を終了させ、表2の光学フィルム2を得た。
【0179】
又、ドープ1でドープ3をサンドイッチするようにした以外は同様の方法で表2の光学フィルム3を得た。
【0180】
さらに、ドープ4でドープ5をサンドイッチするようにした以外は同様の方法で表2の光学フィルム4を得た。
【0181】
また、前述の方法で調製した表1に示したドープ1を用い以下のようにして比較光学フィルム1を作製した。
【0182】
ドープ1を冷却して33℃に保ち、ベルト流延装置のステンレスバンド上にドープ1を均一に流延し、33℃で5分間乾燥した。ステンレスバンド上から剥離後、残留溶媒量が35質量%から10質量%となる間に延伸倍率が1.01〜1.05倍となるようにテンターを行った。更に多数のロールで搬送させながら乾燥を終了させ、乾燥膜厚80μmのフィルムを得た。
【0183】
このフィルムの流延の際にステンレスバンド側(B面側)だった面に下記の組成物をリバースロールコートにより塗設して乾燥膜厚で10μmの塗布層を設け、比較光学フィルム1とした。
【0184】
(塗布組成物)
ジアセチルセルロース 1.0kg
赤外吸収染料H 0.1kg
酢酸エチル 50kg
アセトン 32kg
イソプロピルアルコール 4kg
【0185】
【化9】

【0186】
上記で得られた光学フィルム1〜7、比較光学フィルム1について、下記の方法に従って評価を行った。
【0187】
(a)カール値の測定
該フィルム試料を23℃55%RH環境下で48時間放置後、該フィルムを長手方向(製膜方向)2mm、幅手方向50mmに切断する。さらに、そのフィルム小片を23±2℃、55%RH環境下で24時間調湿し、曲率スケールを用いて、該フィルムと合致するカーブを有する円周に相当する曲率半径を確認し、その曲率半径(1/m)を該フィルムのカール値とした(例えば、フィルムのカールが10(1/m)の場合、半径0.1mの円の円周のカーブと同じ曲率であることを意味する)。
【0188】
(b)ロール汚れ
10000mの光学フィルムを作製した後、ステンレスバンド支持体から剥離したフィルムが接する一本目のロールの汚れ具合を目視で観察し、以下のランクに分けて評価した。
【0189】
(評価基準)
◎:ロールが汚れているのが全くわからない
○:ロールのごく一部がかすかに汚れている
△:ロールが全面的にかすかに汚れている
×:ロールが全面的に汚れている
(c)碁盤目付着性試験(密着性)
JIS D0202の4.15に記載の碁盤目付着性試験に準じて、密着性の評価を実施した。
【0190】
すなわち、JIS K5400の6.15による方法で試験面に1mm幅で碁盤目100個(10×10)を作り、碁盤目の上にJIS Z 1522に記載のセロハン粘着テープ(幅18mm)を完全に付着させ、直ちにテープの一端を試験面に直角に保ち、瞬間的に引き離し、完全に剥がれないで残った碁盤目の数を調べた。
【0191】
(評価基準)
A:全く剥離されなかった
B:剥離された面積割合が10%未満であった
C:剥離された面積割合が10〜30%未満であった
D:剥離された面積割合が30%以上であった
(d)耐久性試験
試料に紫外線強度100mW/cmで50時間照射した後、23℃、55%RHの室内に24時間放置した。この試料の着色の有無を確認した。
【0192】
紫外線照射条件:
岩崎電気(株)製 アイスーパーUVテスター SUV−F1
光源 メタルハライドランプ
紫外線強度 100mW/cm
照射時間 50時間
試料温度 20℃
(評価基準)
◎:変色は認められない
○:薄い黄色に変色している
△:黄色に変色している
【0193】
【表2】

【0194】
実施例1
以下のように、ポリエステルフィルムを用い光学フィルムの作製を行った。
【0195】
(PETフィルムの作製)
テレフタル酸ジメチル100質量部、エチレングリコール65質量部、ジエチレングリコール2質量部にエステル交換触媒として酢酸マグネシウム水和物0.05質量部を添加し、常法に従ってエステル交換反応を行った。得られた生成物に、三酸化アンチモン0.05質量部、リン酸トリメチルエステル0.03質量部を添加した。次いで、徐々に昇温、減圧にし、280℃、0.5mmHg(1mmHgは、9.80665Paである)で重合を行い、固有粘度0.70、融点(Tm)261℃、ガラス転移温度(Tg)76℃のポリエチレンテレフタレートを得た。
【0196】
さらに、このポリエチレンテレフタレートを150℃で8時間真空乾燥した後、昇温して溶融し、更に赤外吸収染料として一般式(1)の化合物から1−1を選び添加混合、混練し、押出機を用いて285℃で溶融押出し、30℃の冷却ドラム上に静電印加しながら密着させ、冷却固化させ、未延伸シートを得た。この未延伸シートをロール式縦延伸機を用いて、85℃で縦方向に1.2倍延伸した。表裏面の温度差は5℃以内であった。
【0197】
得られた一軸延伸フィルムをテンター式横延伸機を用いて、95℃で横方向に4.5倍延伸した。次いで、70℃で2秒間熱処理し、更に熱固定ゾーン180℃で25秒間熱固定した。次いで、150℃で横(幅手)方向に弛緩処理し巻き取り、横方向の長さ1500mm、厚さ40μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを作製した。これを光学フィルム8とした。
【0198】
赤外吸収染料1−1を除いた以外は同様の方法でPETフィルムを作製した。次いで、このフィルムに下記の組成物をリバースロールコートにより塗設して乾燥膜厚で10μmの塗布層を設け、比較光学フィルム2とした。
【0199】
(塗布組成物)
ポリメチルメタクリレート 1.0kg
赤外吸収染料H 0.1kg
メチルエチルケトン 50kg
プロピレングリコールモノメチルエーテル 36kg
上記で得られた本発明の光学フィルム8、比較光学フィルム2について、前述の方法に従ってカールと密着性を評価した。
【0200】
【表3】

【0201】
表3の結果によれば、光学フィルム8は比較光学フィルム2に比べ、カールも少なく密着性にも優れることが確認された。
【符号の説明】
【0202】
1 ドープ液タンク
1a ドープ液
2 赤外吸収染料添加液タンク
2a 赤外吸収染料添加液
3 タンク
3a UV吸収剤添加液
4a ポンプ
4b ポンプ
4c ポンプ
4d ポンプ
5a インラインミキサー
5b インラインミキサー
6 スリットダイ
7 ドラム
8 流延ベルト
9 ローラ
10 セルロースエステル積層フィルム
11 流延口
12 スリット
13 スリット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤外吸収染料として、下記一般式(1)または、下記一般式(2)で示される化合物を含む樹脂フィルムを延伸して作製することを特徴とする光学フィルムの製造方法。
【化1】

〔一般式(1)において、Xは硫黄原子又は酸素原子を表し、R、Rは水素及び1価の任意の基を表し、m、nは0、1、2、3又は4を表す。〕
【化2】

〔一般式(2)において、R、R、R、R、R及びRは各々1価の置換基を表す。l、mは0〜4の整数を表す。〕
【請求項2】
前記赤外吸収染料を含む熱可塑性樹脂の成形物を一方向の延伸倍率が1.0〜2.0倍でもう一方向の延伸倍率が2.3〜7.0倍に二軸延伸製膜することを特徴とする請求項1に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法により製造された光学フィルム。
【請求項4】
赤外領域に吸収を有する赤外吸収染料と紫外線吸収剤を含有することを特徴とする請求項3に記載の光学フィルム。
【請求項5】
少なくとも一方の表面に紫外線吸収剤を含有し、内部に赤外吸収染料が含まれる領域を有することを特徴とする請求項4に記載の光学フィルム。
【請求項6】
赤外吸収染料が含まれる領域に可塑剤が含まれることを特徴とする請求項3〜5のいずれか1項に記載の光学フィルム。
【請求項7】
請求項3〜6のいずれか1項に記載の光学フィルムを含むプラズマディスプレイ用前面フィルタ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−15155(P2010−15155A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−163549(P2009−163549)
【出願日】平成21年7月10日(2009.7.10)
【分割の表示】特願2000−2480(P2000−2480)の分割
【原出願日】平成12年1月11日(2000.1.11)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】