説明

光学ユニットの組立方法およびラインヘッドの組立方法

【課題】2つのレンズアレイを組み合わせる光学ユニットにおいて、対応する一対のレンズの心ずれが小さく、結像性能の低下の抑えられた光学ユニットの組立方法およびそれを用いたラインヘッドの組立方法を得ること。
【解決手段】第1のレンズアレイ611に対する第3のレンズアレイ621の位置を、Y軸方向から調整用スライダー1100,1200を第3のレンズアレイ621に当接して調整する。第1のレンズアレイ611の幅L1と比較して、第3のレンズアレイ621幅L2が長いので、調整用スライダー1100,1200が第1のレンズアレイ611に接触することなく第3のレンズアレイ621の移動が可能で、位置合わせが容易に精度よくできる。したがって、結像性能の低下を抑えた光学ユニットの組立方法が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つのレンズアレイを組み合わせた光学ユニットの組立方法、これを用いたラインヘッドの組立方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を用いる複写機、プリンター等の画像形成装置には、感光体の外表面を露光処理する露光手段が備えられているが、かかる露光手段としては、ラインヘッドが知られている。
例えば、主走査方向に配列された有機EL(Electro Luminescence)発光素子を備える有機EL発光素子アレイと、有機EL発光素子アレイの光の射出側に設けられた光学ユニットと、光学ユニットおよび有機EL発光素子アレイを支持するハウジングとを備えたラインヘッドが知られている。
【0003】
短尺のレンズアレイを接合して長尺レンズアレイを形成する方法および2つのレンズアレイを備えた光学ユニットを使ったラインヘッドが知られている。2つのレンズアレイはハウジングとしてのケースに収められて位置決めされている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−37199号公報(20頁および21頁、図19)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
2つのレンズアレイを組み合わせる光学ユニットおよびこの光学ユニットを用いたラインヘッドにおいては、レンズアレイの一つのレンズの心および他のレンズアレイの対応するレンズの心の光軸からのずれが大きくなると、結像性能が低下する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]
第1の方向にレンズが配された第1のレンズアレイを基台に載置し、前記第1のレンズアレイにスペーサーを配置して接着し、前記第1の方向と直交する第2の方向の長さが前記第1のレンズアレイよりも長い第2のレンズアレイを前記スペーサーに当接させながら、前記第2の方向から調整用当接部材を当接して位置を調整し、前記スペーサーに接着固定することを特徴とする光学ユニットの組立方法。
【0008】
この適用例によれば、第1のレンズアレイのレンズに対応する第2のレンズアレイのレンズの位置を、第2の方向から調整用当接部材を第2のレンズアレイに当接して調整する。ここで、第1のレンズアレイの第2の方向の長さと比較して、第2のレンズアレイの第2の方向の長さが長いので、調整用当接部材が第1のレンズアレイに接触することなく第2のレンズアレイの移動が可能で、位置合わせが容易に精度よくできる。したがって、結像性能の低下を抑えた光学ユニットの組立方法が得られる。
【0009】
[適用例2]
上記光学ユニットの組立方法において、前記スペーサーと前記第1のレンズアレイとを接着する接着剤は光硬化性接着剤であり、前記スペーサーは光透過性を有することを特徴とする光学ユニットの組立方法。
この適用例では、スペーサーを配置し位置決めを行った状態で接着する際に、光硬化性接着剤を用いる。ここで、スペーサーが光透過性を有しているので、位置決めを行った状態で、スペーサーを介して光の照射を行なうことによって、光硬化性接着剤の硬化の時点を選択できる。したがって、正確な位置でスペーサーの固定、接着が行なえる。
【0010】
[適用例3]
上記光学ユニットの組立方法において、前記第1のレンズアレイおよび前記第2のレンズアレイはアライメントマークを有することを特徴とする光学ユニットの組立方法。
この適用例では、第1のレンズアレイおよび第2のレンズアレイは、それぞれアライメントマークを有しているので、第1のレンズアレイのアライメントマークと第2のレンズアレイのアライメントマークとを合わせることで、第1のレンズアレイのレンズと第2のレンズアレイのレンズの位置合わせが容易に精度よくできる。したがって、結像性能の低下を抑えた光学ユニットの組立方法が得られる。
【0011】
[適用例4]
支持ガラスを基台に載置して、第1の方向にレンズが配された第1のレンズアレイを前記支持ガラスに配置して接着し、第2のレンズアレイを前記支持ガラスの前記第1のレンズアレイの前記第1の方向に配置して接着し、前記第1のレンズアレイおよび前記第2のレンズアレイにスペーサーを配置して接着し、前記第1の方向と直交する第2の方向の長さが前記第1のレンズアレイよりも長い第3のレンズアレイを前記スペーサーに当接しながら前記第2の方向から調整用当接部材を当接して位置を調整し、前記スペーサーに接着固定し、前記第2の方向の長さが前記第2のレンズアレイよりも長い第4のレンズアレイを前記スペーサーに当接しながら前記第2の方向から前記調整用当接部材を当接して位置を調整し、前記スペーサーに接着固定することを特徴とする光学ユニットの組立方法。
【0012】
この適用例によれば、支持ガラスに第1の方向に載置された第1のレンズアレイおよび第2のレンズアレイによって、一つのレンズアレイが構成され、第3のレンズアレイおよび第4のレンズアレイによって、一つのレンズアレイが構成される。ここで、長尺のレンズアレイと比較して、短尺のレンズアレイは精度よく製造ができる。
また、第2の方向の長さが第1のレンズアレイよりも長い第3のレンズアレイをスペーサーに当接しながら、第2の方向から調整用当接部材を当接して位置を調整して、スペーサーに接着固定する。同様に、第2の方向の長さが第2のレンズアレイよりも長い第4のレンズアレイをスペーサーに当接しながら、第2の方向から調整用当接部材を当接して位置を調整する。したがって、調整用当接部材が第1のレンズアレイおよび第2のレンズアレイに接触することなく移動が可能で、位置合わせが容易に精度よくでき、結像性能の低下をより抑えた光学ユニットの組立方法が得られる。
【0013】
[適用例5]
上記光学ユニットの組立方法において、前記支持ガラスの前記第2の方向の長さは、前記第1のレンズアレイおよび前記第2のレンズアレイの前記第2の方向の長さよりも短く、前記第1のレンズアレイおよび前記第2のレンズアレイを前記第2の方向から前記調整用当接部材を当接して位置を調整し、前記支持ガラスに接着固定することを特徴とする光学ユニットの組立方法。
この適用例では、支持ガラスの第2の方向の長さが、第1のレンズアレイおよび第2のレンズアレイの第2の方向の長さよりも短いので、調整用当接部材が支持ガラスに接触することなく移動が可能で、位置合わせが容易に精度よくできる。したがって、結像性能の低下をより抑えた光学ユニットの組立方法が得られる。
【0014】
[適用例6]
第1の方向にレンズが配された第1のレンズアレイを基台に載置し、前記第1のレンズアレイに第1のスペーサーを配置して接着し、前記第1の方向と直交する第2の方向の長さが前記第1のレンズアレイよりも長い第2のレンズアレイを前記第1のスペーサーに当接しながら、前記第2の方向から調整用当接部材を当接して位置を調整し前記第1のスペーサーに接着固定し、前記第2のレンズアレイに第2のスペーサーを配置し接着し、発光素子を備えた前記第2の方向の長さが前記第2のレンズアレイよりも長い発光素子基板を前記第2のスペーサーに当接しながら、前記第2の方向から前記調整用当接部材を当接して位置を調整し前記第2のスペーサーに接着固定することを特徴とするラインヘッドの組立方法。
【0015】
この適用例によれば、第1のレンズアレイの第2の方向の長さと比較して、第2のレンズアレイの第2の方向の長さが長いので、第1のレンズアレイのレンズに対応する第2のレンズアレイのレンズの位置を合わせる際に、第2の方向から調整用当接部材を当接して位置を調整するので、調整用当接部材が第1のレンズアレイに接触することなく第2のレンズアレイの移動が可能で、位置合わせが容易に精度よくできる。また、第1のレンズアレイおよび第2のレンズアレイに対して、発光素子基板を第1のレンズアレイおよび第2のレンズアレイに接触することなく移動が可能で、位置合わせが容易に精度よくできる。したがって、結像性能の低下を抑えたラインヘッドの組立方法が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施形態における画像形成装置の全体構成を示す概略図。
【図2】ラインヘッドの部分切断斜視図。
【図3】ラインヘッドおよび感光ドラム付近の部分断面図。
【図4】光学ユニットおよびラインヘッドの製造方法を示すフローチャート図。
【図5】光学ユニットの製造方法を示す部分断面図および部分斜視図。
【図6】レンズアレイの位置合わせの方法を示す部分平面図。
【図7】レンズアレイの位置合わせの方法を示す部分断面図。
【図8】ラインヘッドの製造方法を示す部分断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、実施形態におけるレンズアレイおよびその製造方法、レンズアレイおよびそれを用いたラインヘッド、画像形成装置を図面に基づいて詳細に説明する。
(画像形成装置)
図1は、実施形態にかかる画像形成装置1の全体構成を示す概略図である。
図1において、画像形成装置1は、帯電工程、露光工程、現像工程、転写工程、定着工程を含む一連の画像形成プロセスによって画像を記録媒体Pに記録する電子写真方式のプリンターである。実施形態では、画像形成装置1は、いわゆるタンデム方式を採用するカラープリンターである。
【0018】
このような画像形成装置1は、図1に示すように、帯電工程、露光工程、現像工程のための画像形成ユニット10と、転写工程のための転写ユニット20と、定着工程のための定着ユニット30と、紙などの記録媒体Pを搬送するための搬送機構40と、この搬送機構40に記録媒体Pを供給する給紙ユニット50とを有している。
【0019】
画像形成ユニット10は、イエローのトナー像を形成する画像形成ステーション10Yと、マゼンタのトナー像を形成する画像形成ステーション10Mと、シアンのトナー像を形成する画像形成ステーション10Cと、ブラックのトナー像を形成する画像形成ステーション10Kとの4つの画像形成ステーションを備えている。
【0020】
画像形成ステーション10Y,10M,10C,10Kは、それぞれ、静電的な潜像を担持する感光体としての感光ドラム11を有し、その周囲(外周側)には、帯電ユニット12、露光手段としてのラインヘッド13、現像装置14、クリーニングユニット15が配設されている。ここで、各画像形成ステーション10Y,10M,10C,10Kは、用いるトナーの色が異なる以外は、ほぼ同じ構成である。
【0021】
感光ドラム11は、全体形状が円筒状をなし、その軸線まわりに図1中矢印方向に回転可能となっている。そして、感光ドラム11の外周面付近には、感光層(図示せず)が設けられている。このような感光ドラム11の外周面は、ラインヘッド13から射出した光を受光する受光面111を有している。
帯電ユニット12は、コロナ帯電などにより感光ドラム11の受光面111を一様に帯電させるものである。
【0022】
現像装置14は、トナーを貯留する貯留部(図示せず)を有しており、当該貯留部から、感光ドラム11の受光面111にトナーを供給し、付与する。受光面111にトナーが付与されると、受光面111に形成された静電的な潜像がトナー像として現像され、可視化される。
クリーニングユニット15は、感光ドラム11の受光面111に当接するゴム製のクリーニングブレード151を有し、後述する一次転写後の感光ドラム11上に残存するトナーをクリーニングブレード151により掻き落として除去するようになっている。
【0023】
転写ユニット20は、各画像形成ステーション10Y,10M,10C,10Kの感光ドラム11上に形成された各色のトナー像を一括して記録媒体Pに転写するようになっている。
各画像形成ステーション10Y,10M,10C,10Kでは、それぞれ、感光ドラム11が1回転する間に、帯電ユニット12による感光ドラム11の受光面111の帯電と、ラインヘッド13による受光面111の露光と、現像装置14による受光面111へのトナーの供給と、後述する一次転写ローラー22による中間転写ベルト21へのトナー像の一次転写と、クリーニングユニット15による受光面111のクリーニングとが順次行なわれる。
【0024】
転写ユニット20は、エンドレスベルト状の中間転写ベルト21を有し、この中間転写ベルト21は、複数(図1に示す構成では4つ)の一次転写ローラー22と駆動ローラー23と従動ローラー24とで張架されており、駆動ローラー23の回転により、図1に示す矢印方向に、感光ドラム11の周速度とほぼ同じ周速度で回転駆動される。
各一次転写ローラー22は、それぞれ、対応する感光ドラム11に中間転写ベルト21を介して対向配設されており、感光ドラム11上の単色のトナー像を中間転写ベルト21に一次転写するようになっている。この一次転写ローラー22は、一次転写時に、トナーの帯電極性とは逆の極性の一次転写電圧が印加される。
【0025】
中間転写ベルト21上には、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのうちの少なくとも1色のトナー像が担持される。例えば、フルカラー画像の形成時には、中間転写ベルト21上に、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のトナー像が順次重ねて転写されて、フルカラーのトナー像が中間転写像として形成される。
また、転写ユニット20は、中間転写ベルト21を介して駆動ローラー23に対向配設される二次転写ローラー25と、中間転写ベルト21を介して従動ローラー24に対向配設されるクリーニングユニット26とを有している。
【0026】
二次転写ローラー25は、中間転写ベルト21上に形成された単色あるいはフルカラーなどのトナー像を、給紙ユニット50から供給される紙、フィルム、布等の記録媒体Pに二次転写するようになっている。二次転写ローラー25は、二次転写時に、中間転写ベルト21に押圧されるとともに二次転写電圧が印加される。このような二次転写時には、駆動ローラー23は、二次転写ローラー25のバックアップローラーとしても機能する。
クリーニングユニット26は、中間転写ベルト21の表面に当接するゴム製のクリーニングブレード261を有し、二次転写後の中間転写ベルト21上に残存するトナーをクリーニングブレード261により掻き落として除去するようになっている。
【0027】
定着ユニット30は、定着ローラー301と、定着ローラー301に圧接される加圧ローラー302とを有しており、定着ローラー301と加圧ローラー302との間を記録媒体Pが通過するよう構成されている。
定着ローラー301の内側には、当該定着ローラー301の外周面を加熱するヒーターが内蔵されている。定着ユニット30では、トナー像の二次転写を受けた記録媒体Pが、定着ローラー301と加圧ローラー302との間を通過しながら加熱および加圧されることにより、トナー像が記録媒体Pに融着して像として定着する。
搬送機構40は、二次転写ローラー25と中間転写ベルト21との間の二次転写部へ給紙タイミングを計りつつ記録媒体Pを搬送するレジストローラー対41と、定着ユニット30での定着処理済みの記録媒体Pを挟持搬送する搬送ローラー対42,43,44とを有している。
【0028】
搬送機構40は、記録媒体Pの一方の面のみに画像形成を行う場合には、定着ユニット30によって一方の面に定着処理された記録媒体Pを搬送ローラー対42により挟持搬送して、画像形成装置1の外部へ排出する。また、記録媒体Pの両面に画像形成する場合には、定着ユニット30によって一方の面に定着処理された記録媒体Pを一旦搬送ローラー対42により挟持した後に、搬送ローラー対42を反転駆動するとともに、搬送ローラー対43,44を駆動して、当該記録媒体Pを表裏反転してレジストローラー対41へ帰還させ、前述と同様の動作により、記録媒体Pの他方の面に画像を形成する。
給紙ユニット50は、未使用の記録媒体Pを収容する給紙カセット51と、給紙カセット51から記録媒体Pを1枚ずつレジストローラー対41へ向け給送するピックアップローラー52とを備えている。
【0029】
(ラインヘッド)
次に、ラインヘッド13について説明する。図2は、ラインヘッド13の部分切断斜視図である。また、図3は、ラインヘッド13および感光ドラム11付近の部分断面図である。図中には、ラインヘッド13の第1の方向としての長手方向である主走査方向を示すX軸とX軸に直交する第2の方向としての幅方向を示すY軸およびZ軸とを示した。
【0030】
図3に示すように、ラインヘッド13は、感光ドラム11の受光面111に対向して配置されている。ラインヘッド13は、図示しないパーソナルコンピューターなどのホストコンピューターから画像情報を受け、これに応じて、感光ドラム11の受光面111に向けて光Lを照射するものである。図では、光Lの光路を実線で示した。
一様に帯電された感光ドラム11の受光面111に光Lが照射されると、その光Lの照射パターンに対応した静電的な潜像が受光面111上に形成される。
【0031】
図2および図3において、ラインヘッド13は、光学ユニット60と遮光部材70と発光素子基板ユニット80とベース90とを備えている。
光学ユニット60は、レンズアレイ61とレンズアレイ62と第1のスペーサー63とを備えている。ここで、第2のスペーサー64を加えた構成を光学ユニット60と称してもよい。
レンズアレイ61とレンズアレイ62とは、第1のスペーサー63を挟んで接着剤65によって接着されている。また、レンズアレイ62と発光素子基板ユニット80とは、第2のスペーサー64を挟んで接着剤65によって接着されている。
レンズアレイ61とレンズアレイ62との間隔は、第1のスペーサー63の厚さによって決まり、レンズアレイ62と発光素子基板ユニット80との間隔は、第2のスペーサー64の厚さによって決まる。
【0032】
レンズアレイ61は、短尺の第1のレンズアレイ611および第2のレンズアレイ612と支持ガラス613とを備えている。第1のレンズアレイ611および第2のレンズアレイ612は、支持ガラス613の第1の方向であるX軸方向に並んで配置され、接着されている。ここで、短尺とは、長手方向であるX軸方向の長さが支持ガラス613と比較して短いことをいう。
レンズアレイ62は、短尺の第3のレンズアレイ621および第4のレンズアレイ622を備えている。第3のレンズアレイ621および第4のレンズアレイ622は、第1のスペーサー63と第2のスペーサー64との間にX軸方向に並んで配置され、第1のスペーサー63および第2のスペーサー64に接着されている。
【0033】
レンズアレイ61およびレンズアレイ62の発光素子基板ユニット80側には、凸曲面からなる複数のレンズとしての第1レンズ610および第2レンズ620が、それぞれX軸方向に配されている。第1レンズ610および第2レンズ620の構成材料としては、光学特性を有するものであれば、特に限定されないが、例えば、樹脂材料および/またはガラス材料が好適に用いられる。
【0034】
ここで、図3において、レンズアレイ61とレンズアレイ62とは、一点鎖線で示した光軸OA上に、対応する各第1レンズ610の心6101および第2レンズ620の心6201が配置されている。
ここで、図2において、第1のレンズアレイ611および第2のレンズアレイ612のY軸方向の幅L1、第3のレンズアレイ621および第4のレンズアレイ622のY軸方向の幅L2および支持ガラス613のY軸方向の幅L3は、L3<L1<L2となるように形成されている。
幅L1、幅L2、幅L3の具体的な寸法は、例えば、L3が15.0mmの場合、L1が15.5mm、L2が16.0mm程度とし、0.5mm程度広げて形成するがこれらに限らない。
【0035】
遮光部材70は、発光素子基板ユニット80とレンズアレイ62との間に配置され、発光素子基板ユニット80に接着されている。遮光部材70は貫通孔71が形成されており、対応する各第1レンズ610および第2レンズ620に一つの貫通孔71が対応している。
【0036】
発光素子基板ユニット80は、発光素子基板81と複数の発光素子からなる発光素子群82とカバー83とを備えている。
発光素子基板81は、ガラスや樹脂などの光Lに対して透明性を有する基板から形成されている。発光素子基板81の幅L4は、L1、L2、L3より広いのが好ましい。
発光素子群82は、有機EL発光素子、発光ダイオードなどの発光素子で構成され、光学ユニット60が接着されている発光素子基板81の面と対向する裏面に形成されている。
カバー83は、発光素子群82を覆うように発光素子基板81に取り付けられ、発光素子群82を保護している。
【0037】
ベース90は、カバー83に取り付けられ、光学ユニット60と発光素子基板ユニット80とを支持している。ベース90には、発光素子群82を駆動制御する図示しない回路基板、配線等が組み込まれる。
【0038】
発光素子群82から射出した光Lは、発光素子基板81、遮光部材70に形成された貫通孔71、レンズアレイ61およびレンズアレイ62に形成された、対応する各第1レンズ610および第2レンズ620を透過し、感光ドラム11の受光面111に到達して結像する。
【0039】
(レンズアレイおよびラインヘッドの組立方法)
以下に、ラインヘッド13の組立方法について説明する。特に、光学ユニット60の組立方法を中心に説明する。
図4は、光学ユニット60およびラインヘッド13の組立方法を示すフローチャート図である。
ラインヘッド13の組立方法は、光学ユニット60の製造工程として、支持ガラス固定工程としてのステップ1(S1)と、レンズアレイ接着工程としてのステップ2(S2)と、第1のスペーサー接着工程としてのステップ3(S3)と、レンズアレイ接着工程としてのステップ4(S4)とを含み、加えて、第2のスペーサー接着工程としてのステップ5(S5)と、遮光部材組付け工程としてのステップ6(S6)と、ラインヘッド組立工程としてのステップ7(S7)とを含む。
【0040】
図5は、光学ユニット60の組立方法を示す部分断面図および部分斜視図である。図中では、工程ごとに部分断面図および部分斜視図を並べて示した。
図5(a)は支持ガラス固定工程(S1)を、図5(b)はレンズアレイ接着工程(S2)を、図5(c)は第1のスペーサー接着工程(S3)を、図5(d)はレンズアレイ接着工程(S4)を、図5(e)は第2のスペーサー接着工程(S5)を示している。
【0041】
図5(a)において、支持ガラス固定工程(S1)では、平面110および吸引孔120を備えた基台としての作業台100を用意する。次に、支持ガラス613を、平面110の吸引孔120を塞ぐ位置に配置する。配置後、吸引孔120から吸引を行い、負圧により支持ガラス613を作業台100に固定する。吸引孔120は一つに限らず、支持ガラス613の第1の方向としての長手方向に複数設けるのが好ましい。吸引孔120を複数設けることにより、支持ガラス613が平面110によりなじみ、支持ガラス613の反りを矯正することができる。
【0042】
図5(b)において、レンズアレイ接着工程(S2)では、第1のレンズアレイ611および第2のレンズアレイ612を支持ガラス613上で長手方向に並べて配置し、接着して固定することによってレンズアレイ61を形成する。第1のレンズアレイ611および第2のレンズアレイ612は、図2および図3に示した第1レンズ610が設けられていない裏面を支持ガラス613に対向させて配置する。
接着に用いる図3に示した接着剤65としては、光硬化性、熱硬化型、嫌気性等、いずれの接着剤を用いてもよいが、位置決めを行った状態で固定するには、光の照射によって硬化の時点が選択できる光硬化性接着剤が好ましい。
【0043】
第1のレンズアレイ611および第2のレンズアレイ612は、ガラス基板に樹脂レンズ基板を貼り付けて形成してもよいし、ガラス基板に樹脂レンズを直接形成して得てもよい。また、第1のレンズアレイ611および第2のレンズアレイ612の形状は、第1レンズ610の配置に応じて決める。具体的には、第1レンズ610が互い違いに千鳥状に配置されている場合は、第1レンズ610が分割されないように、平面視した場合に平行四辺形とする。
【0044】
図5(c)において、第1のスペーサー接着工程(S3)では、レンズアレイ61の第1レンズ610が設けられていない外周に、スペーサーとして光透過性の第1のスペーサー63を配置し、接着して固定する。具体的には、第1レンズ610を挟んだ両側に、レンズアレイ61の長手方向に複数の第1のスペーサー63を並べて配置する。
ここで、第1のスペーサー63は直方体で、レンズアレイ61に対向する面と、レンズアレイ62に対向する面が平行なものを使用する。
【0045】
図5(d)において、レンズアレイ接着工程(S4)では、第1のスペーサー63上に、第3のレンズアレイ621および第4のレンズアレイ622を長手方向に並べて配置し、接着固定する。
図6および図7に、第3のレンズアレイ621および第4のレンズアレイ622の配置の方法を詳しく示した。図6は、第3のレンズアレイ621および第4のレンズアレイ622の位置合わせの方法を示す部分平面図であり、図7は、部分断面図である。
【0046】
以下では、第3のレンズアレイ621の位置合わせの様子を例に説明するが、第4のレンズアレイ622も、第3のレンズアレイ621の位置合わせと同様に位置合わせを行なう。
まず、第1のスペーサー63上に図3に示した接着剤65を塗布する。ここで、接着剤65には、ギャップ剤を含ませるのが好ましい。ギャップ剤を含ませることにより、第3のレンズアレイ621が動きやすくなり、位置合わせが容易になる。
次に、第3のレンズアレイ621を第1のスペーサー63上に載せる。このとき、第3のレンズアレイ621を、位置合わせするべき位置から少しずらして第1のスペーサー63上に載せる。
【0047】
図6および図7において、調整用当接部材としての調整用スライダー1100,1200,1300によって、第3のレンズアレイ621に形成されたアライメントマークM2を、第1のレンズアレイ611に形成されたアライメントマークM1に合わせる。
具体的には、調整用スライダー1100,1200によって、第3のレンズアレイ621をY軸方向に押し、調整用スライダー1300によって第3のレンズアレイ621をX軸方向に押しながら調整を行う。
このとき、第3のレンズアレイ621の変形を抑えるために、調整用スライダー1100,1200および1300は一方向から押すのが好ましい。
また、第3のレンズアレイ621が調整用スライダー1100,1200,1300に常に接触するように作業台100を傾けた状態で、調整用スライダー1100,1200,1300を押しながら調整を行うとよい。
さらに、図7中片矢印で示すように、第3のレンズアレイ621のZ軸方向に力を加えて押し付けながら行うと、第1のレンズアレイ611と第3のレンズアレイ621との間隔がより均一になり好ましい。
調整用スライダー1100,1200,1300を押しすぎて、アライメントマークM2を、アライメントマークM1に合わせられなかった場合は、調整用スライダー1100,1200,1300を元の位置に戻して、再度調整を行う。
アライメントマークM2をアライメントマークM1に合わせる作業は、顕微鏡で観察しながら行ってもよいし、CCD(Charge Coupled Device)カメラを用いた装置によって自動で行ってもよい。
【0048】
以上が、光学ユニット60の組立方法である。以下に、ラインヘッド13の組立方法の残りの工程を示す。
図5(e)において、第2のスペーサー接着工程(S5)では、レンズアレイ62の第2レンズ620が設けられていない部分に、第2のスペーサー64を配置し、接着して固定する。具体的には、第2レンズ620を挟んだ両側に、レンズアレイ62の長手方向に複数の第2のスペーサー64を並べて配置する。
ここで、第2のスペーサー64は直方体で、レンズアレイ62に対向する面と、この面に対向する面が平行なものを使用する。
【0049】
図8は、ラインヘッド13の組立方法を示す部分断面図および部分斜視図である。図中では、工程ごとに部分断面図および部分斜視図を並べて示した。
図8(f)は遮光部材組付け工程(S6)を、図8(g)はラインヘッド組立工程(S7)を示している。
【0050】
図8(f)において、発光素子基板ユニット80の発光素子基板81に遮光部材70を接着固定する。このとき、接着剤としてギャップ剤入り接着剤を用い、第3のレンズアレイ621の位置合わせの方法と同様に、調整用スライダー1100,1200,1300を用いて位置合わせを行ってもよい。
【0051】
図8(g)において、遮光部材70が接着固定された発光素子基板ユニット80と第2のスペーサー64とを接着固定する。
発光素子群82を備えた第2の方向の長さが第3のレンズアレイ621および第4のレンズアレイ622よりも長い発光素子基板81を第2のスペーサー64に当接しながら、第2の方向であるY軸方向から調整用スライダー1100,1200を当接して位置を調整し、調整用スライダー1300によって第3のレンズアレイ621をX軸方向に押しながら調整し、第2のスペーサー64に接着固定する。
その後、ベース90をカバー83に取り付けて、ラインヘッド13が得られる。
【0052】
以上に述べた製造方法において、レンズアレイ接着工程(S2)において、接着剤としてギャップ剤入り接着剤を用い、第3のレンズアレイ621および第4のレンズアレイ622の位置合わせの方法と同様に、調整用スライダー1100,1200,1300を用いて位置合わせを行ってもよい。
【0053】
以上に述べた実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1)第1のレンズアレイ611および第2のレンズアレイ612の第1レンズ610に対応する第3のレンズアレイ621および第4のレンズアレイ622の第2レンズ620の位置を、Y軸方向から調整用スライダー1100,1200をレンズアレイ62に当接して調整する。ここで、第1のレンズアレイ611および第2のレンズアレイ612幅L1と比較して、第3のレンズアレイ621および第4のレンズアレイ622の幅L2が長いので、調整用スライダー1100,1200が第1のレンズアレイ611および第2のレンズアレイ612に接触することなく第3のレンズアレイ621および第4のレンズアレイ622の移動が可能で、位置合わせが容易に精度よくできる。したがって、結像性能の低下を抑えた光学ユニットの組立方法が得られる。
【0054】
(2)第1のスペーサー63を配置し位置決めを行った状態で接着する際に、光硬化性の接着剤65を用いる。ここで、第1のスペーサー63が光透過性を有しているので、位置決めを行った状態で、第1のスペーサー63を介して光の照射を行なうことによって、光硬化性の接着剤65の硬化の時点を選択できる。したがって、正確な位置で第1のスペーサー63の固定、接着を行なうことができる。
【0055】
(3)第1のレンズアレイ611および第2のレンズアレイ612は、アライメントマークM1を、第3のレンズアレイ621および第4のレンズアレイ622は、アライメントマークM2を有しているので、アライメントマークM1とアライメントマークM2とを合わせることで、第1レンズ610と第2レンズ620との位置合わせが容易に精度よくできる。したがって、結像性能の低下を抑えた光学ユニット60の組立方法を得ることができる。
【0056】
(4)支持ガラス613にX軸方向に載置された第1のレンズアレイ611および第2のレンズアレイ612によって、一つのレンズアレイ61が構成され、第3のレンズアレイ621および第4のレンズアレイ622によって、一つのレンズアレイ62が構成される。ここで、長尺のレンズアレイと比較して、短尺のレンズアレイは精度よく製造ができ、結像性能の低下を抑えた光学ユニット60の組立方法を得ることができる。
【0057】
(5)支持ガラス613のY軸方向の幅L3が、第1のレンズアレイ611および第2のレンズアレイ612の幅L1よりも短いので、調整用スライダー1100,1200が支持ガラス613に接触することなく移動が可能で、位置合わせが容易に精度よくできる。したがって、結像性能の低下を抑えた光学ユニット60の組立方法を得ることができる。
【0058】
(6)第1のレンズアレイ611および第2のレンズアレイ612の幅L1、第3のレンズアレイ621および第4のレンズアレイ622の幅L2に対して、発光素子基板81の幅L4が長いので、第1のレンズアレイ611および第2のレンズアレイ612、第3のレンズアレイ621および第4のレンズアレイ622に接触することなく移動が可能で、位置合わせが容易に精度よくできる。したがって、結像性能の低下を抑えたラインヘッド13の組立方法を得ることができる。
【0059】
上述した実施形態以外にも、種々の変更を行うことが可能である。
例えば、レンズアレイ61を第1のレンズアレイ611および第2のレンズアレイ612の二つのレンズアレイで構成するほかに、一つのレンズアレイ61で構成してもよいし、3以上のレンズアレイで構成してもよい。同様に、レンズアレイ62を第3のレンズアレイ621および第4のレンズアレイ622の二つのレンズアレイで構成するほかに、一つのレンズアレイ62で構成してもよいし、3以上のレンズアレイで構成してもよい。
また、第1のスペーサー63および第2のスペーサー64の接着面を研磨面とすることで、間隔を精度よく決めることができる。
また、第1のスペーサー63および第2のスペーサー64の形状は直方体に限らず、対向する平行な面を2面備えた形状であればよい。
【0060】
さらに、上記実施形態では、カラー画像形成装置について説明したが適用対象はこれに限定されるものではなく、いわゆる単色画像を形成するモノクロ画像形成装置の組立方法に対しても適用することができる。
【符号の説明】
【0061】
13…ラインヘッド、60…光学ユニット、63…スペーサーとしての第1のスペーサー、64…第2のスペーサー、65…光硬化性接着剤としての接着剤、81…発光素子基板、82…複数の発光素子からなる発光素子群、100…基台としての作業台、610…レンズとしての第1レンズ,611…第1のレンズアレイ、612…第2のレンズアレイ、613…支持ガラス、620…レンズとしての第2レンズ、621…第3のレンズアレイ、622…第4のレンズアレイ、1100,1200,1300…調整用当接部材としての調整用スライダー、X軸方向…第1の方向としての長手方向、Y軸方向…第2の方向としての幅方向、M1,M2…アライメントマーク。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向にレンズが配された第1のレンズアレイを基台に載置し、
前記第1のレンズアレイにスペーサーを配置して接着し、
前記第1の方向と直交する第2の方向の長さが前記第1のレンズアレイよりも長い第2のレンズアレイを前記スペーサーに当接させながら、前記第2の方向から調整用当接部材を当接して位置を調整し、
前記スペーサーに接着固定する
ことを特徴とする光学ユニットの組立方法。
【請求項2】
請求項1に記載の光学ユニットの組立方法において、
前記スペーサーと前記第1のレンズアレイとを接着する接着剤は光硬化性接着剤であり、前記スペーサーは光透過性を有する
ことを特徴とする光学ユニットの組立方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の光学ユニットの組立方法において、
前記第1のレンズアレイおよび前記第2のレンズアレイはアライメントマークを有する
ことを特徴とする光学ユニットの組立方法。
【請求項4】
支持ガラスを基台に載置して、
第1の方向にレンズが配された第1のレンズアレイを前記支持ガラスに配置して接着し、
第2のレンズアレイを前記支持ガラスの前記第1のレンズアレイの前記第1の方向に配置して接着し、
前記第1のレンズアレイおよび前記第2のレンズアレイにスペーサーを配置して接着し、
前記第1の方向と直交する第2の方向の長さが前記第1のレンズアレイよりも長い第3のレンズアレイを前記スペーサーに当接しながら前記第2の方向から調整用当接部材を当接して位置を調整し、前記スペーサーに接着固定し、
前記第2の方向の長さが前記第2のレンズアレイよりも長い第4のレンズアレイを前記スペーサーに当接しながら前記第2の方向から前記調整用当接部材を当接して位置を調整し、前記スペーサーに接着固定する
ことを特徴とする光学ユニットの組立方法。
【請求項5】
請求項4に記載の光学ユニットの組立方法において、
前記支持ガラスの前記第2の方向の長さは、前記第1のレンズアレイおよび前記第2のレンズアレイの前記第2の方向の長さよりも短く、
前記第1のレンズアレイおよび前記第2のレンズアレイを前記第2の方向から前記調整用当接部材を当接して位置を調整し、
前記支持ガラスに接着固定する
ことを特徴とする光学ユニットの組立方法。
【請求項6】
第1の方向にレンズが配された第1のレンズアレイを基台に載置し、
前記第1のレンズアレイに第1のスペーサーを配置して接着し、
前記第1の方向と直交する第2の方向の長さが前記第1のレンズアレイよりも長い第2のレンズアレイを前記第1のスペーサーに当接しながら、前記第2の方向から調整用当接部材を当接して位置を調整し前記第1のスペーサーに接着固定し、
前記第2のレンズアレイに第2のスペーサーを配置し接着し、
発光素子を備えた前記第2の方向の長さが前記第2のレンズアレイよりも長い発光素子基板を前記第2のスペーサーに当接しながら、前記第2の方向から前記調整用当接部材を当接して位置を調整し前記第2のスペーサーに接着固定する
ことを特徴とするラインヘッドの組立方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−88312(P2011−88312A)
【公開日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−242224(P2009−242224)
【出願日】平成21年10月21日(2009.10.21)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】