説明

光学レンズ

【課題】 レンズ内部における屈折率分布が小さく、レンズの収差(焦点距離のズレ)が小さい光学レンズを提供する。
【解決手段】 炭素数2〜30のα−オレフィンに由来する構成単位(I)と、分子内に芳香環を有し、エンド体含有量が83モル%以上であるノルボルネン系単量体に由来する構成単位(II)とを含むα−オレフィン・ノルボルネン系単量体付加共重合体を成形して得られる光学レンズ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズ内部で屈折率分布が小さい光学レンズに関し、より詳しくは、α−オレフィンと芳香環を有するノルボルネン系単量体との共重合体を成形して得られる光学レンズであって、レンズ内部での屈折率分布が小さく、レンズ収差が小さい光学レンズに関する。
【背景技術】
【0002】
α−オレフィンと、ノルボルネン系単量体などの環状オレフィンとを付加共重合させて得られるα−オレフィン・環状オレフィン付加共重合体は、光学特性、機械特性、熱特性等に優れるため、光学レンズ等の光学材料として用いられている。
【0003】
このα−オレフィン・環状オレフィン付加共重合体は一般的に屈折率が低いものである。そのため、このものを成形して得られる光学レンズを、例えば、小型化、薄型化が求められる光学式情報記録装置用のピックアップレンズとして用いる場合には、従来のものよりも高い屈折率を有するα−オレフィン・環状オレフィン付加共重合体を用いる必要がある。
【0004】
従来、このような高い屈折率を有するα−オレフィン・環状オレフィン付加共重合体として、α−オレフィンと芳香環を有するノルボルネン系単量体との共重合体がいくつか提案されている。例えば、エチレンと芳香環を含有するノルボルネン化合物のランダム共重合体であって、エチレン含有率が50〜90モル%であるもの(特許文献1)、エチレンと芳香環を含有するノルボルネン化合物のランダム共重合体であって、芳香環を含有するノルボルネン化合物のエンド体比率が80モル%以下のもの(特許文献2)、オレフィンと芳香環を含有する環状オレフィン類の共重合体で、メタロセン触媒を用いて重合するもの(特許文献3)等が挙げられる。
【0005】
しかしながら、これらの共重合体を使用して光学レンズ等の光学用成形体とした場合、レンズ内部で屈折率の分布が大きいために、レンズ中央部と周辺部で焦点距離がずれ、レンズの収差が大きくなる等の問題があった。
また、400nm程度の短波長レーザー光を用いる高密度光学記録媒体用ピックアップレンズに用いる場合においては、データ記録時又は読み出し時のビットエラーレートが大きくなるという問題があった。
【特許文献1】特開平1−185307号公報
【特許文献2】特開平5−86131号公報
【特許文献3】特表平11−504669号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述した従来技術の問題に鑑みてなされたものであり、α−オレフィンと芳香環を有するノルボルネン系単量体との共重合体を成形して得られる光学レンズであって、レンズ内部での屈折率分布が小さく、レンズ収差が小さい光学レンズを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一般的には、レンズの開口数を大きくするほど、そのレンズを作製することが難しくなる。なぜなら、光を強く曲げるため、屈折率の大きい材料を用いたり、曲率を大きくしなければならず、収差の影響を受けやすいので、成形精度や材料としての均質性を高める必要がある等、材料、設計、成形のすべてにおいて、高精度が求められるからである。
【0008】
本発明者は、上記課題を解決すべく、α−オレフィンと芳香環を有するノルボルネン系単量体との共重合体を成形して得られる光学レンズについて鋭意研究した。その結果、エチレン等のα−オレフィンと、分子内に芳香環を有し、エンド体含有量が83モル%以上であるノルボルネン系単量体とを付加共重合して得られるα−オレフィン・環状オレフィン付加共重合体を成形すると、レンズ内部での屈折率分布が小さく、開口数が大きくレンズ収差が小さい光学レンズを得ることができることを見出した。また、この光学レンズをピックアップレンズとして用いると、データ記録時及び読み出し時のビットエラーレートを小さくできることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
かくして本発明によれば、炭素数2〜30のα−オレフィンに由来する構成単位(I)と、分子内に芳香環を有し、エンド体含有量が83モル%以上であるノルボルネン系単量体に由来する構成単位(II)とを含むα−オレフィン・ノルボルネン系単量体共重合体を成形して得られる光学レンズが提供される。
【0010】
本発明の光学レンズは、光学式情報記録装置の光ピックアップに用いられるものであるのが好ましい。
本発明の光学レンズは、開口数が0.6以上であり、波長380〜660nmのレーザー光学系で使用されるものであるのが好ましく、開口数が0.8以上であり、波長380〜450nmのレーザー光学系で使用されるものであるのがより好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、レンズ内部における屈折率分布が小さく、レンズの収差(焦点距離のズレ)の小さな光学レンズが提供される。
本発明の光学レンズは、光学式情報記録装置のピックアップレンズとして用いた場合に、データ記録時及び読み出し時のビットエラーレートが小さいものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の光学レンズは、炭素数2〜30のα−オレフィンに由来する構成単位(I)と、分子内に芳香環を有し、エンド体含有量が83モル%以上であるノルボルネン系単量体に由来する構成単位(II)とを含むα−オレフィン・ノルボルネン系単量体共重合体を成形して得られるものである。
【0013】
1)α−オレフィン・ノルボルネン系単量体共重合体
本発明に用いるα−オレフィン・ノルボルネン系単量体共重合体(以下、単に「共重合体」ということがある。)は、炭素数2〜30のα−オレフィンに由来する構成単位(I)(以下、単に「構成単位(I)」ということがある。)と、分子内に芳香環を有し、エンド体含有量が83モル%以上であるノルボルネン系単量体に由来する構成単位(II)(以下、単に「構成単位(II)」ということがある。)とを含む。
【0014】
本発明に用いる共重合体中の、構成単位(I)と構成単位(II)の存在割合は、特に限定されないが、構成単位(I):構成単位(II)のモル比で表して、通常5:95〜95:5、好ましくは10:90〜90:10、より好ましくは30:70〜85:15である。
【0015】
本発明に用いる共重合体の種類は特に制限されず、ランダム共重合体であっても、ブロック共重合体であってもよい。また、ブロック共重合体である場合、ジブロック共重合体やトリブロック共重合体、4以上のマルチブロック共重合体、傾斜ブロック共重合体などいかなる種類のブロック共重合体であってもよい。本発明に用いる共重合体としては、入手が容易であることや、レンズ内部での屈折率分布が小さく、レンズの収差が小さい光学レンズが得られることなどから、ランダム共重合体であるのが好ましい。
【0016】
(1)α−オレフィンに由来する構成単位(I)
構成単位(I)は、α−オレフィンを付加重合して得られる繰返し単位である。
α−オレフィンは、分子末端に二重結合を有する脂肪族不飽和炭化水素である。
本発明に用いるα−オレフィンとしては、特に制限されないが、炭素数が2〜30の直鎖状または分岐状のα−オレフィンが好ましい。
【0017】
その具体例としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン等が挙げられる。
これらのα−オレフィンは1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの中でも、入手容易性、優れた光学特性を有する光学レンズを得ることができる共重合体が得られること等から、炭素数2〜6のα−オレフィンが好ましく、エチレンが特に好ましい。
【0018】
(2)ノルボルネン系単量体に由来する構成単位(II)
構成単位(II)は、ノルボルネン系単量体を付加重合して得られる繰返し単位である。
用いるノルボルネン系単量体としては、分子内に芳香環を有し、エンド体含有量が83モル%以上であり、付加(共)重合するものであれば特に制約はない。
【0019】
ノルボルネン系単量体が有する芳香環としては、特に制約はなく、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環等が挙げられる。なかでも、入手容易性等からベンゼン環、ナフタレン環が好ましく、ベンゼン環がより好ましい。
【0020】
分子内に芳香環を有するノルボルネン系単量体としては、例えば、下記式(1)で示される化合物が挙げられる。
【0021】
【化1】

【0022】
式(1)中、R〜Rはそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基またはアルコキシル基を表す。R〜R12はそれぞれ独立して、水素原子、またはハロゲン原子、珪素原子、酸素原子若しくは窒素原子を含んでいてもよい炭化水素基を表す。mは0、1または2である。但し、R〜R12の少なくとも一つは、芳香環を有する基であり、RとR11は互いに結合して環を形成してもよい。
【0023】
これらの中でも、本発明に用いるノルボルネン系単量体としては、下記式(2)で示される化合物が好ましい。
【0024】
【化2】

【0025】
式(2)中、R13〜R15はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、またはアルコキシル基を表す。
13〜R15のハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
炭化水素基としては、炭素数1〜20のものが好ましい。炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基等のアルキル基等の脂肪族炭化水素基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等の脂環式炭化水素基;フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基等の芳香族炭化水素基;等が挙げられる。
アルコキシル基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、t−ブトキシ基等が挙げられる。
【0026】
また、R14は、後述するアリール基(Ar)の炭素原子と直接または炭素数1〜3のアルキレン基を介して結合して、環を形成していてもよい。
【0027】
Arは、置換基を有していてもよいアリール基を表す。アリール基としては、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、アントラニル基等が挙げられる。
【0028】
アリール基の置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子;メチル基、エチル基等のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシル基;フェニル基、4−メチルフェニル基等の置換基を有していてもよいフェニル基;メチルチオ基、エチルチオ基などのアルキルチオ基;ニトロ基;シアノ基;などが挙げられる。また、アリール基は、同一または相異なる2個以上の置換基を有していてもよい。
pは0または自然数を表し、0〜2の整数が好ましい。
【0029】
前記式(2)で表されるノルボルネン系単量体の具体例としては、5−フェニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メチル−5−フェニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−ベンジル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−トリル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−(エチルフェニル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−(イソプロピルフェニル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、テトラシクロ[9.2.1.02,5.03,8]テトラデカ−3,5,7,12−テトラエン〔別称:1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン(MTF)〕、テトラシクロ[10.2.1.02,11.04,9]ペンタデカ−4,6,8,13−テトラエン、ペンタシクロ[7.6.1.111,14.05,16.010,15]ヘプタデカ−1,3,5,7,9(16),12−ヘキサエン、5−(α−ナフチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−(アントラセニル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン等が挙げられる。
【0030】
本発明においては、芳香環を有するノルボルネン系単量体として、エンド体を83モル%以上、好ましくは90モル%以上含有するものを用いる。エンド体を83モル%以上含む、芳香環を有するノルボルネン系単量体を用いることにより、屈折率分布が小さい光学レンズを得ることができる。
【0031】
ここで、前記式(2)で表される化合物を例にすると、エンド体は下記式(2−1)で表される立体異性体であり、エキソ体は下記式(2−2)で表される立体異性体である。
【0032】
【化3】

【0033】
(式中、R13〜R15、Ar、及びpは、前記と同じ意味を表す。)
分子内に芳香環を有し、エンド体含有量が83モル%以上であるノルボルネン系単量体は、例えば、シクロペンタジエンと芳香環を有するオレフィン化合物とのディールズアルダー反応によって製造することができる。
【0034】
このディールズアルダー反応においては、シクロペンタジエンと芳香環を有するオレフィン化合物とのエンド付加が優先して進行するので、ディルーズアルダー反応を比較的低い反応温度で行うことにより、エンド体を83モル%以上含有するノルボルネン系単量体を得ることができる。
【0035】
エンド体とエキソ体のモル比は、H−NMR、又は13C−NMRを測定することによって決定することができる(特開平5−97719号公報等参照)。
【0036】
反応原料であるシクロペンタジエンは、ナフサ副生油中に存在し、通常二量体として製品化されている。使用する場合には、二量体であるジシクロペンタジエンを140℃〜180℃で熱分解することにより容易に得ることができる。
【0037】
もう一方の反応原料である芳香環を有するオレフィン化合物としては、従来公知の化合物を使用できる。例えば、スチレン、α−メチルスチレン、アリルベンゼン、ビニルトルエン、インデン、アセナフチレン、ビニルナフタレン等が挙げられる。
【0038】
シクロペンタジエン化合物と芳香環を有するオレフィン化合物とのディールズアルダー反応において、両者の混合比(シクロペンタジエン化合物:芳香環を有するオレフィン化合物)は、モル比で、通常1:2〜1:50の範囲、好ましくは1:2〜1:20、より好ましくは1:2〜1:10の範囲である。シクロペンタジエン化合物の量が多すぎると、不純物として重質分(シクロペンタジエンの多量体)が多く生成し、芳香環を有するオレフィン化合物の量が多すぎると、目的物の収率が低下するので好ましくない。
【0039】
シクロペンタジエン化合物と芳香環を有するオレフィン化合物とのディールズアルダー反応は、無溶媒または適当な溶媒中で行うことができる。
【0040】
用いる溶媒としては、反応に不活性な溶媒であれば特に制限されないが、反応混合物から目的物の単離および反応原料の回収を容易にする上では、芳香環を有するオレフィン化合物、及び目的物の芳香環を有するノルボルネン系単量体の沸点と、溶媒の沸点の差が5℃以上である溶媒を選択するのが好ましい。具体的には、n−ヘキサン、シクロヘキサン、n−オクタン、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン等の炭素数6〜13の炭化水素系溶媒等が挙げられる。
【0041】
反応温度は、通常100〜250℃の範囲、好ましくは100〜200℃、より好ましくは100〜180℃である。反応温度が高すぎるとエキソ体が多く生成し、エンド体の含有率が低下するので好ましくない。反応温度が低い方が、エンド体含有率を大きくすることができるため好ましい。但し、反応温度があまりに低すぎると付加反応の反応時間が長くなり、生産効率の面から好ましくない。
【0042】
前記ディールズアルダー反応は、バッチ式で行うことも連続式で行うこともでき、生産効率の観点からは連続式が好ましい。
反応時間は、反応をバッチ式で行う場合は、通常0.1〜100時間、好ましくは0.2〜10時間の範囲であり、連続式で行う場合は、空間速度0.1〜100h−1、好ましくは0.2〜50h−1の範囲である。
また反応圧力は、常圧〜10MPaの範囲である。
【0043】
反応終了後は、通常の後処理操作を行うことにより、目的物である、分子内に芳香環を有し、エンド体含有量が83モル%以上であるノルボルネン系単量体を単離することができる。
【0044】
目的物を単離する方法としては、例えば、バッチ処理、或いは各種充填物を充填した蒸留塔を備えた蒸留装置を用いて、連続的に蒸留を行うことにより、目的物を分離、精製する方法が挙げられる。蒸留条件は、圧力0.01〜1000kPa、温度20〜200℃の範囲で任意に選択すればよい。
【0045】
本発明に用いるα−オレフィン・ノルボルネン系単量体共重合体は、前記炭素数2〜30のα−オレフィンと、分子内に芳香環を有し、エンド体含有量が83モル%以上であるノルボルネン系単量体とを、オレフィン共重合用触媒の存在下に公知の方法を用いて付加共重合することにより製造することができる。
【0046】
炭素数2〜30のα−オレフィンと、分子内に芳香環を有し、エンド体含有量が83モル%以上であるノルボルネン系単量体とを共重合する方法は、α−オレフィン・ノルボルネン系単量体付加共重合体が得られる方法であれば、特に制約されない。例えば、α−オレフィンとノルボルネン系単量体を目的とする共重合比で混合して、共重合反応を行うことによりランダム共重合体を得る方法、用いる単量体ごとに重合鎖を合成して、ブロック共重合体を得る方法等が挙げられる。これらの中でも、製造が容易で、屈折率分布が小さい光学レンズが得られることからランダム共重合体を得る方法が好ましい。
【0047】
α−オレフィンとノルボルネン系単量体との反応モル比は、特に制約はないが、通常5:95〜95:5、好ましくは10:90〜90:10である。
また本発明においては、本発明の目的を損なわない範囲で、少量の他の共重合可能なモノマー、例えば、芳香環を有するノルボルネン系単量体以外のノルボルネン系単量体等を添加して、共重合を行うこともできる。
【0048】
用いるオレフィン共重合用触媒としては、特に制約されない。例えば、周期表第3〜11族の金属の金属化合物を主成分とする触媒が使用できる。具体的には、特公平7−51609号公報や特開平5−86131号公報に記載されているバナジウム系触媒、特表平11−504669号公報に記載されているメタロセン系触媒等が挙げられる。
【0049】
オレフィン共重合用触媒の使用量は、オレフィン共重合用触媒中の金属化合物が、反応溶液1リットル当たり、通常10−12〜10−2モル、好ましくは10−10〜10−3モルになる量である。
【0050】
共重合する方法は、溶解重合、懸濁重合等の液相重合法、または気相重合法のいずれの方法であっても構わない。
【0051】
液相重合法を用いる場合においては、α−オレフィンおよび/またはノルボルネン系単量体自身を溶媒として用いてもよいし、不活性炭化水素溶媒を溶媒として用いてもよい。
不活性炭化水素溶媒としては、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン等の脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;エチレンクロリド、クロルベンゼン、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素;等が挙げられる。これらの溶媒は、1種単独で、あるいは2種以上を混合して用いてもよい。
【0052】
重合する方式は、回分式、半連続式、連続式のいずれの方法でもよく、反応条件の異なる2段以上に分けて重合する方法でもよい。
【0053】
重合温度は、通常−50〜+200℃、好ましくは0〜170℃の範囲である。
重合圧力は、通常、常圧〜9.8MPa、好ましくは常圧〜4.9MPaである。
重合時間は、反応規模等によるが、通常、数分〜数時間である。
【0054】
重合反応終了後は、重合反応液に重合停止剤を添加して、重合反応を停止させる。用いる重合停止剤としては、例えば、メタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール化合物が挙げられる。
【0055】
重合反応を停止した後は、公知の分離・精製手段により、目的とする共重合体を単離することができる。例えば、公知の濾過、洗浄、吸着等の公知の方法により反応溶液から共重合用触媒を除去したのち、反応液を共重合体の貧溶媒中に注ぎ、共重合体の結晶を析出させる方法等が挙げられる。
【0056】
以上のようにして得られる共重合体は熱可塑性樹脂であり、そのメルトフローレート(MFR)は、280℃、荷重2.16kgfでJIS K 6719に基づき測定した値で、60〜200g/10分、好ましくは65〜190g/10分の範囲である。共重合体のMFRが過度に低いと成形加工性に劣り、また逆に、過度に高いと機械的強度に劣り好ましくない。
【0057】
得られる共重合体のガラス転移温度(Tg)は、使用目的に応じて適宜選択されればよいが、通常70℃以上、好ましくは70〜250℃、より好ましくは80〜200℃であるときに、耐熱性と成形加工性とが高度にバランスされ好適である。
【0058】
得られる共重合体の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されるポリスチレン換算値で、通常10,000〜1,000,000、好ましくは50,000〜500,000の範囲である。Mwが小さすぎると強度特性に劣り、大きすぎると成形性に劣る。
【0059】
Mwは、重合系に水素を存在させるか、または重合温度を変化させることによって調節することができる。また、用いる芳香環を有するオレフィン化合物の種類により調節することもできる。
共重合体の分子量分布(Mw/Mn)は、通常5.0以下、好ましくは4.0以下である。
【0060】
2)光学レンズの製法
本発明の光学レンズは、前記共重合体を成形して得られるものである。また、本発明の光学レンズは、前記共重合体に各種配合剤や他の重合体等の他の成分を配合して得られる熱可塑性樹脂組成物を調製し、これを成形して得られるものであってもよい。
【0061】
用いる配合剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤等の酸化防止剤;ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、アクリレート系紫外線吸収剤、金属錯塩系紫外線吸収剤等の紫外線吸収剤;ヒンダードアミン系光安定剤等の光安定剤;リン酸トリエステル系化合物、フタル酸エステル系化合物、脂肪酸一塩基酸エステル系化合物、二価アルコールエステル系化合物、オキシ酸エステル系化合物、パラフィン系化合物、液状ポリマー系化合物等の可塑剤ないし柔軟化剤;アルキルスルホン酸塩、ステアリン酸のグリセリンエステル等の帯電防止剤;脂肪族アルコール、脂肪族エステル、芳香族エステル、トリグリセライド類、フッ素系界面活性剤、高級脂肪酸酸金属塩等の離型剤;滑剤;重金属不活性化剤等が挙げられる。
【0062】
また、長時間の高温高湿度環境下での白濁を防止するための改質剤として、Tgが30℃以下の軟質重合体、アルコール性化合物等を添加してもよい。これらの添加剤は、各々単独でも、二種以上組みあわせて使用してもよい。
【0063】
配合剤の配合量は、光学レンズとしての特性を損なわない範囲であれば特に限定されないが、例えば酸化防止剤、紫外線吸収剤ないし光安定剤であれば、共重合体100重量部当り、通常0.0001〜5.0重量部、好ましくは0.001〜1.0重量部、より好ましくは0.01〜0.5重量部の範囲であり、その他の配合剤についても目的に応じて適宜選択すればよい。
【0064】
共重合体に上記配合剤を配合する方法は、例えば、ミキサー、二軸混錬機、ロール、ブラベンダー、押出機等で共重合体を溶融状態にして配合剤と混練する方法、適当な溶剤に溶解して分散させ凝固する方法等が挙げられる。二軸混練機を用いる場合には、混錬後に、通常は溶融状態でストランド状に押し出し、ペレタイザーにてペレット状にカットして用いられる。
【0065】
本発明で用いる共重合体又は熱可塑性樹脂組成物(以下、「これらを「共重合体等」ということがある」は、含有する異物の数が極力少ないものであることが好ましい。ここでいう異物とは、外部から混入した不純物のほか、前記共重合体の製造工程で混入する触媒残渣、ゲル化物、副反応物等、樹脂に相溶しないものであり、形状は通常粒状であるが、それに限定されない。異物の数が多いと、透過する光を散乱させ、透過光のパワーの損失が大きくなる。光散乱は使用する光の波長が短いほど大きくなり、特に本発明の光学レンズを、波長380nm〜450nmの短波長レーザー光学系のピックアップ装置に用いようとする場合にその影響が大きい。
【0066】
本発明で用いる共重合体等は、粒径0.5μm以上の異物の含有量が、通常3×10個/g以下、好ましくは2×10個/g以下である。特に高度の透明性(低曇り価)が求められる場合は、粒径0.5μm以上の異物の含有量を、好ましくは1×10個/g以下、より好ましくは7×10個/g以下、特に好ましくは5×10個/g以下に低減する。共重合体等中の異物を上記の範囲とすると、得られる光学レンズは、波長380〜450nmの短波長レーザー光学系のピックアップ装置に用いる場合に特に好適なものとなる。
【0067】
異物を低減させる方法は特に限定されないが、共重合体の製造工程において、共重合体を含有する溶液を、(a)孔径が0.5μm以下、好ましくは0.3μm以下の機械式フィルターで、少なくとも1回、好ましくは2回以上濾過する方法、(b)電荷的補足機能を有する濾過フィルターで濾過する方法、等を挙げることができる。
共重合体等中の異物の含有量は、例えば、光散乱式微粒子検出器を用いて測定することができる。
【0068】
本発明で用いる共重合体等は、揮発性成分の含有量が少ないものが好ましい。本発明で用いる共重合体等における揮発性成分の含有量は、通常0.3重量%(3000ppm)以下、好ましくは0.1重量%(1000ppm)以下、より好ましくは500ppm以下である。特に高品質の光学レンズを得るためには、揮発性成分の含有量を500ppm以下に低減させることが好ましく、より好ましくは300ppm以下、特に好ましくは200ppm以下にまで低減させる。
【0069】
揮発性成分としては、有機溶剤、未反応モノマーまたはその変性物等が挙げられる。揮発性成分が多すぎると、成形時にボイドや表面の凹状欠陥等が発生し易く、また、成形された光学レンズの均質性が損なわれ、特に波長380〜450nmの短波長レーザー光学系のピックアップ装置に用いようとする場合に光散乱を生じ易くなる。
【0070】
揮発性成分を低減させる方法は特に限定されないが、共重合体の製造工程において、重合時に重合転化率を向上させ、未反応モノマーを低減させたり、有機溶剤を用いる工程において、脱溶剤時の条件(例えば温度、減圧度等)を最適化する方法等が挙げられる。
【0071】
共重合体等を光学レンズに成形する方法としては、特に制約されず、公知の成形方法を採用することができる。例えば、(a)射出成形による方法、(b)共重合体等を加熱溶融させて形成した溶融樹脂(組成物)の塊を、そのガラス転移温度以上の温度にあるうちにプレス用金型を用いてプレス成形する方法、(c)射出成形によって形成した予備成形体をプレス成形する方法、(d)共重合体等のペレットを直接金型に供給してプレス成形する方法、等が挙げられる。これらの中でも、効率よく成形体が得られることから、(a)の射出成形による方法が好ましい。
【0072】
射出成形の条件としては、シリンダ温度は、通常220〜350℃、好ましくは250〜300℃である。金型温度は通常50〜180℃、好ましくは80〜150℃である。射出圧力は、通常30〜200MPa、好ましくは60〜150MPaである。保圧時間は、通常1〜300秒間、好ましくは5〜150秒間である。冷却時間は、通常5〜300秒間、好ましくは10〜150秒間である。
【0073】
シリンダ温度が高すぎると共重合体等の分解、劣化等が起こって強度特性が低下したり、着色したりする場合があり、低すぎると光学レンズに残留応力が発生して、複屈折が大きくなったり、転写性が悪くなる。金型温度が、高すぎると離型不良が発生し、低すぎると複屈折が大きくなったり、転写性が悪くなる。保圧時間が長すぎると、共重合体等の分解、劣化等が起こり、短すぎると成形収縮が大きくなる。冷却時間は、長すぎると生産性が低下し、短すぎると複屈折が大きくなったり、転写性が悪くなる。よって、これらの成形条件が上記範囲にある場合、成形品である光学レンズの機械強度、複屈折、離型性、転写性、生産性等が高度にバランスされて好適である。
【0074】
光学レンズの成形においては、上述したような異物の混入を防止するため、成形時の環境中の異物を低減させることが好ましく、共重合体等の搬入、移送、成形の少なくとも一つ以上の工程をクリーンルーム内で行うことが好ましく、全ての工程をクリーンルーム内で行うことがより好ましい。この場合のクリーンルーム内の清浄度は、通常クラス10,000(空気1m中の粒子径0.5μm以下の粒子の数が10,000個以下)以下、好ましくはクラス6,000(同6,000個以下)以下である。
【0075】
本発明の光学レンズの形状は、太陽光のような連続波長分布を有する光線やレーザー光のような単波長の光線が入射したとき、その光路を変更させる機能を有するものであれば限定されない。
【0076】
その具体例としては、平面主体に構成されて光線屈折機能を有するプリズムレンズ;両凸レンズ、平凸レンズ、メニスク凸レンズのような焦点を持ち、光線を焦点に収束させる機能を有するレンズ;両凹レンズ、平凹レンズ、メニスク凹レンズのような焦点を持ち光線を焦点から発散させる機能を有するレンズ;フレネルレンズ、レンティキュラーレンズのように平面に微細凹凸を形成したレンズ;等が挙げられる。
【0077】
本発明の光学レンズは屈折率分布が小さいものである。屈折率分布が小さいとは、レンズ内部の場所による屈折率の違いが小さいことを意味する。本発明の光学レンズの屈折率分布は、好ましくは7.0×10−4以下、より好ましくは4.5×10−4以下である。
本発明の光学レンズは、屈折率分布が小さいため、レンズの収差(焦点距離のズレ)が小さく、レンズが小型であっても高密度の記録を可能とするものである。
【0078】
屈折率分布は、例えば、レンズ材料で試験片を作成し、試験片の中心部、角部等の場所ごとの屈折率を実測し、数値の分布で評価することができる。具体的には、前記試験片の角部Aの屈折率と、中心部Bの屈折率とをそれぞれ測定し、角部Aと中心部Bの屈折率の差(角部Aの屈折率−中心部Bの屈折率)を求めることによって、評価することができる。屈折率は、公知の屈折計を用いて測定することができる。
【0079】
本発明の光学レンズは、コンパクトディスク(CD)やデジタルビデオディスク(DVD)等の光学式情報記録装置の光ピックアップに用いられるものであるのが好ましい。
本発明の光学レンズを、光ピックアップレンズとして用いた場合には、データ記録時及び読み出し時のビットエラーレートを小さくすることができる。
【0080】
ここで、ビットエラーレートは、光ディスク等の光学式情報記録媒体にデータ信号を書き込み、次に読み出した時のデータエラーの割合をいう。
レンズのビットエラーレートの測定方法としては、例えば、ディスク評価装置に、該装置が備えている対物レンズに替えて測定したいレンズを装着し、光磁気記録ディスクヘの信号の記録・読み出し時のビットエラーレートを測定する方法等が挙げられる。
【0081】
本発明の光学レンズは開口数が大きいレンズである。
開口数は、レンズが光をどれだけ絞り込めるかを表す指標であり、開口数が大きいほど光を強く絞り込め、小さな光スポットを作製できる。従って、大きな開口数を有するレンズは、光ディスクの記録密度を上げることができる。
開口数は、絞り込んだ光の角度の半分をθとすると、sinθで表される値である(図1参照)。
【0082】
開口数の大きいレンズを用いると、次の効果が得られる。(i)レンズの焦点距離が短いので、レンズの小型化・薄型化が可能である。(ii)焦点距離が短い割にレンズ径が大きいので、多くの光を集められ、光パワーを強くすることができる。(iii)光波長を短くすることで、集光スポットをより小さくして、面積当たりにより多くの情報記録スポットを設けることができる。
【0083】
本発明の光学レンズは、開口数が0.6以上であり、波長380〜660nmのレーザー光学系で使用されるものであるのがより好ましく、開口数が0.8以上であり、波長380〜450nmのレーザー光学系で使用されるものであるのが特に好ましい。
【0084】
本発明の光学レンズは、レーザー光波長650nm、レンズ開口数0.65を標準とする現行のDVDや、レーザー光波長650nm、レンズ開口数0.6を標準とするスーパーオーディオCDのピックアップレンズに好適であり、レーザー光波長405nm、レンズ開口数0.85を標準とするブルーレイディスクやHD−DVDのピックアップレンズとして特に好適である。
【0085】
なお、本発明の光学レンズは、波長が380〜660nm、好ましくは380〜450nmの範囲のレーザー光を用いる光ピックアップ装置用のレンズであるのが特に好ましいが、その他の波長範囲、例えば450〜830nmの波長範囲のレーザー光を用いる光ピックアップ装置用に用いることもできる。
【0086】
本発明の光学レンズは透明性が高いものである。本発明の光学レンズの透明性(光線透過率)は、光路長1mmで80%以上、より好ましくは85%以上である。
【0087】
本発明の光学レンズは複屈折が小さいものである。本発明の光学レンズの射出成形による厚み3mmの板の中心部のリタデーション値は、通常100nm以下である。
【0088】
複屈折の大きさは、位相差と等価として考えることができる。
射出成形により製造された光学レンズには一般的に残留応力が発生し、これにより、光学レンズ内に複屈折が発生する。複屈折が大きい光学レンズを光ピックアップ装置に用いると、スポット形状が楕円形状に変形してしまい、光学式情報記録媒体(CDやDVD等の光ディスク)の記録/再生を良好に行うことができない。
従って、本発明の光学レンズにおいては、光軸と平行な方向から測定した光学レンズの位相差が、レンズ内の最大位相差をδとすると、δ<|50°|を満足することが好ましく、δ<|20°|を満足することがさらに好ましい。この条件を満足することにより良好なスポット形状を得ることができる。
位相差は、一般にセナルモン法として知られている方法で測定することができる。
【実施例】
【0089】
以下、本発明を実施例によりさらに詳しく説明する。但し、本発明は、以下の実施例によりなんら限定されるものではない。
【0090】
共重合体の諸物性は、以下の方法により測定した。
(1)分子量:
テトラヒドロフランを溶媒とする、ゲル・パーミェーション・クロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレン換算の重量平均分子量:Mw、数平均分子量:Mn、分子量分布:Mw/Mnを測定した。
(2)ガラス転移温度(Tg):
示差走査熱量計(DSC)により、昇温速度10℃/分で測定した。
(3)α−オレフィンと、芳香環を有するノルボルネン系単量体との共重合比(モノマー組成比):
得られた共重合体の、エチレン由来の構成単位(I)と、ノルボルネン系単量体由来の構成単位(II)の組成比は、H−NMRにより測定して求めた。
【0091】
(モノマー製造例)テトラシクロ[9.2.1.02,5.03,8]テトラデカ−3,5,7,12−テトラエン(以下、「MTF」と略す)の製造
(i)エンド体の含有率が95モル%のMTF(1)の製造
常法に従って、ジシクロペンタジエンを160℃で連続的に熱分解して、シクロペンタジエンを得た。得られたシクロペンタジエンとインデンとを、重量比10/90で混合してオートクレーブに仕込み、反応温度140℃で8時間反応させた。
反応混合物を、充填カラムを備えた蒸留装置を用いて、圧力60Pa、還流比10の条件で蒸留し、MTF(1)を得た。ガスクロマトグラフィー分析によるMTF(1)の純度は99.3%であり、特開平5−97719号公報に記載の方法に従って測定したエンド体の含有率は95モル%であった。
【0092】
(ii)エンド体の含有率が85モル%のMTF(2)の製造
特開平5−97719号公報に記載の方法に従ってMTF(1)の異性化を行った。
得られたMTF(1)10部と、シクロヘキサン15部とを混合し、さらに固体酸としてゼオライト(ゼオラムF−9、東ソー社製)5部を加え、室温で5時間反応させた。反応後、反応液から濾過によりゼオライトを除去し、さらに減圧下(5kPa)でシクロヘキサンを留去し、異性化させたMTF(1’)を得た。得られたMTF(1’)のエンド体含有率は57モル%であった。
次に、MTF(1)とMTF(1’)とを、重量比74/26の割合で混合して、エンド体含有率が85モル%であるMTF(2)を得た。
【0093】
(iii)エンド体の含有率が75モル%のMTF(3)の製造
MTF(1)とMTF(1’)とを、重量比47/53の割合で混合し、エンド体含有率が75モル%であるMTF(3)を得た。
【0094】
(製造例1)
撹拌機付き耐圧ガラス反応器に、トルエン850部、モノマー製造例で得たMTF(1)100部、およびトルエン4.3部に溶解したトリエチルアルミニウム0.53部を加えた。次に、トルエン35部、rac−エチレンビス(1−インデニル)ジルコニウムジクロリド0.02部、および、トルエン1.4部に溶解したメチルアルミノキサン0.27部を別のガラス反応器で混合して、前記反応器に添加した。0.3MPaのエチレンガスを導入し、40℃で重合を開始した。30分重合した後、重合反応液を多量の塩酸酸性メタノールに注いでポリマーを完全に析出させた。濾別洗浄後、60℃で15時間減圧乾燥して、目的物であるMTF・エチレン共重合体を108部得た。
【0095】
得られた共重合体のMwは133,000、Mnは57、800、分子量分布(Mw/Mn)は2.30、共重合体中のエチレン/MTF組成比は、65/35(モル/モル)であった。Tgは146℃であった。これらの測定結果を第1表にまとめて示す。
【0096】
(製造例2)
エチレンガスの導入圧力を0.4MPaとし、重合温度を50℃とし、重合反応時間を60分とした以外は、製造例1と同様にして、共重合体を96部得た。得られた共重合体のMwは151,000、Mnは48、200、分子量分布(Mw/Mn)は3.13、共重合体中のエチレン/MTF組成比は、64/36(モル/モル)であった。Tgは145℃であった。これらの測定結果を第1表にまとめて示す。
【0097】
(製造例3)
MTF(1)の代わりにMTF(2)を用いた以外は、製造例1と同様にして、共重合体を100部得た。得られた共重合体のMwは131,000、Mnは57,500、分子量分布(Mw/Mn)は2.28、共重合体中のエチレン/MTF組成比は、64/36(モル/モル)であった。Tgは143℃であった。これらの測定結果を第1表にまとめて示す。
【0098】
(製造例4)
MTF(1)の代わりにMTF(2)を用いた以外は、製造例2と同様にして、共重合体を105部得た。得られた目的物である共重合体のMwは157,000、Mnは49,000、分子量分布(Mw/Mn)は3.2、共重合体中のエチレン/MTF組成比は、63/37(モル/モル)であった。Tgは141℃であった。これらの測定結果を第1表にまとめて示す。
【0099】
(製造例5)
MTF(1)の代わりにMTF(3)を用いた以外は、製造例1と同様にして、共重合体を96部得た。得られた目的物である共重合体のMwは144,000、Mnは60,000、分子量分布(Mw/Mn)は2.38、共重合体中のエチレン/MTF組成比は、66/34(モル/モル)であった。Tgは137℃であった。これらの測定結果を第1表にまとめて示す。
【0100】
(製造例6)
MTF(1)の代わりにMTF(3)を用いた以外は、製造例2と同様にして、共重合体を105部得た。得られた目的物である共重合体のMwは159,000、Mnは44,600、分子量分布(Mw/Mn)は3.57、共重合体中のエチレン/MTF組成比は、65/35(モル/モル)であった。Tgは135℃であった。これらの測定結果を第1表にまとめて示す。
【0101】
【表1】

【0102】
(実施例1〜4)
製造例1〜4で得た各共重合体を射出成形することにより、図2に示すような、寸法50mm×50mm×厚さ5mmの平板状の試験片を作製した。
得られた試験片の角部A(表面から厚さ方向に2.5mmの場所)の屈折率を精密屈折計(KPR−200、カルニュー光学社製)を用いて、波長450nmでの屈折率(20℃)を測定した。
試験片の中心部Bの屈折率を測定するために、図3に示すように、試験片を図中の破線(面の中心を通る互いに直交する直線)に沿って切断して4分割し、切断面の角部(表面から厚さ方向に2.5mmの場所)の屈折率を同様に測定した。
【0103】
角部A(4点:A、A、A、A)の測定値の平均値、および中心部B(4点:B、B、B、B)の測定値の平均値を求め、その差(角部Aの屈折率の平均値−中心部Bの屈折率の平均値)を屈折率分布とした。
【0104】
製造例1〜4で得た各共重合体を射出成形することにより、単玉構成で、有効径3mm、像側開口数0.85の、光ピックアップ用対物レンズを成形した。
【0105】
得られたレンズの位相差をセナルモン法により測定した。すなわち、図4に示すような構成となるセナルモン光学系に,測定するレンズを置き、回転検光子を回転させ、消光状態になる回転角αを測定した。その回転角αの2倍(2α)が位相差となる。
【0106】
また、得られたレンズを、ディスク評価装置(DDU−1000、パルステック工業社製)に、本装置が備えている対物レンズに替えて装着し、光磁気記録ディスクヘの信号の記録・読み出し時のビットエラーレートを測定した。記録、読み出し共に波長405nmの半導体レーザー光を用い、媒体の線速度は3.0m/秒とした。またレーザー光パワーは記録時5.0mW、再生時2.5mWとした。測定結果を第2表に示す。
【0107】
(比較例1、2)
製造例5、6で得た各共重合体について、実施例1〜4と同様の方法によって、屈折率分布を測定した。
次に、各共重合体を射出成形することにより、光ピックアップ用対物レンズを成形し、実施例1〜4と同様の方法によってビットエラーレートを測定した。測定結果を第2表に示す。
【0108】
【表2】

【0109】
第2表より、エンド体を95モル%有するMTF(1)を用いて作製した実施例1、2の光学レンズ、及びエンド体を85モル%有するMTF(2)を用いて作製した実施例3、4の光学レンズは、エンド体を75モル%有するMTF(3)を用いて作製した比較例1、2の光学レンズに比して屈折率分布が小さく、ビットエラーレートが非常に小さいものであることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】図1は、レンズの開口数の説明図である。
【図2】図2は、屈折率分布測定に用いる試験片の、角部及び中心部を示す図である。
【図3】図3は、屈折率分布測定用試験片の、屈折率測定点を示す図である。
【図4】図4は、セナルモン法による位相差測定の説明図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素数2〜30のα−オレフィンに由来する構成単位(I)と、分子内に芳香環を有し、エンド体含有量が83モル%以上であるノルボルネン系単量体に由来する構成単位(II)とを含むα−オレフィン・ノルボルネン系単量体付加共重合体を成形して得られる光学レンズ。
【請求項2】
光学式情報記録装置の光ピックアップに用いられるものである請求項1に記載の光学レンズ。
【請求項3】
開口数が0.6以上であり、波長380〜660nmのレーザー光学系で使用されるものである請求項2に記載の光学レンズ。
【請求項4】
開口数が0.8以上であり、波長380〜450nmのレーザー光学系で使用されるものである請求項3に記載の光学レンズ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−178150(P2006−178150A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−370790(P2004−370790)
【出願日】平成16年12月22日(2004.12.22)
【出願人】(000229117)日本ゼオン株式会社 (1,870)
【Fターム(参考)】