説明

光学式変位計

【課題】ダイヤフラムの反射面の劣化による検出精度の低下を抑制でき、しかも変位の検出範囲を拡大できる、光学式変位計を提供する。
【解決手段】光学式圧力計10は、ダイヤフラム11と、隔壁14と、スリット15と、発光素子16と、検出用受光素子17と、を備えたことを特徴とする。ダイヤフラム11は、表裏をなす第一面111及び第二面112から成り、第一面111で受ける圧力Fに応じて変位dを生ずる。隔壁14は、第二面112に対向するとともに、発光室12と受光室13とを仕切る。スリット15は、隔壁14と第二面112との間隙から成る。発光素子16は、発光室12に設けられ、電力Pを入力し光Lに変換して出力する。検出用受光素子17は、受光室13に設けられ、発光素子16から出力されスリット15を通過した光L’を入力し電気信号(光電流Io)に変換して出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、力によるダイヤフラムの変位を光学的に検出する光学式変位計に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の光学式変位計の一例として、光学式圧力計が特許文献1に開示されている。図6は特許文献1に記載の光学式圧力計を示し、図6[1]は構造の縦断面図、図6[2]は特性のグラフである。以下、これらの図面に基づき説明する。
【0003】
図6[1]に示すように、特許文献1の光学式圧力計50は、本体51、ダイヤフラム52、発光ダイオード53、フォトトランジスタ54等を有する。ダイヤフラム52は、ポリエチレン膜55と反射板56との二層構造である。ポリエチレン膜55は、透明で可撓性を有する。反射板56は、ポリエチレン膜55の表面に蒸着により形成した金、銀、アルミニウムなどの金属層から成る。ダイヤフラム52が圧力を受けると、ポリエチレン膜55及び反射板56が変形することにより、変位dを生ずる。図6[1]では、圧力を受けて変形したポリエチレン膜55の下面を、仮想線(二点鎖線)で示している。変形前のポリエチレン膜55の下面と変形後のポリエチレン膜55の下面との差が、変位dである。
【0004】
発光ダイオード53から出力された光p1は反射板56で正反射し、その正反射した光p2はフォトトランジスタ54に入力される。これにより、光学式圧力計50は、圧力によるダイヤフラム52の変位dを光学的に検出することができる。
【0005】
図6[2]は、ダイヤフラム52の変位dをパラメータとする出力電流Io特性(反射光の検出感度)を示すグラフである。発光ダイオード53が発光すると、その光p1が反射板56で正反射して光p2となる。この光p2がフォトトランジスタ54に入射し、フォトトランジスタ54に出力電流Ioが流れる。このとき、出力電流Ioは、発光ダイオード53の光量、すなわち発光ダイオード53の電流Ifが一定であっても変位dによって変化する。変位dが大きくなるにつれて出力電流Ioが大きくなり、変位dがある大きさを超えると、逆に変位dが大きくなるにつれて出力電流Ioが次第に小さくなっていく。したがって、反射板56への圧力による変位dを、出力電流Ioの変化によって捉えることができる。この出力電流Ioの変化量と圧力との相関をあらかじめ測定しておけば、出力電流Ioから直接圧力の絶対値を知ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−149816号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の光学式圧力計50では、次のような問題があった。
【0008】
反射板56は、ダイヤフラム52の一部であることから直接圧力が加わるため、圧力の変化によって伸縮を何度も繰り返すことになる。そのため、反射板56は、経時変化によって微小なクラックが入るなどの劣化が起きやく、劣化すると変色、剥離等を生じて反射率が変化する。その結果、使用しているうちに検出精度が低下するなど、信頼性が損なわれていた。
【0009】
また、変位dに応じて反射板56も変形するため、反射板56で正反射する光p2は、変位dに応じて複雑な動きをする。そのため、図6[2]に示すように、入力(変位d)と出力(出力電流Io)との関係が複雑になる。その結果、入力と出力との関係が一対一に対応する、ごくわずかの範囲の変位dしか検出できなかった。実際に、特許文献1の光学式圧力計50では、図6[2]において変位dが0〜1mmとなるわずかな範囲だけを検出している(上記公報段落0006、0007参照)。
【0010】
そこで、本発明の目的は、ダイヤフラムの反射面の劣化による検出精度の低下を抑制でき、しかも変位の検出範囲を拡大できる、光学式変位計を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明に係る光学式変位計は、
表裏をなす第一面及び第二面から成るとともに当該第一面で受ける力に応じて変位を生ずるダイヤフラムと、
前記第二面に対向するとともに発光側と受光側とを仕切る隔壁と、
この隔壁と前記第二面との間隙から成るスリットと、
前記発光側に設けられ、電力を入力し光に変換して出力する発光素子と、
前記受光側に設けられ、前記発光素子から出力された光のうち前記スリットを通過した光を入力し電気信号に変換して出力する検出用受光素子と、
を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る光学式変位計によれば、ダイヤフラムの反射光を用いずに、スリットの通過光を用いることにより、ダイヤフラムの反射面の劣化による検出精度の低下を抑えることができるので、信頼性を向上できる。また、変位大(小)→スリット幅小(大)→受光量減(増)の関係は、変位のとり得るすべての範囲において成り立つので、広い範囲の変位を問題なく検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第一実施形態の光学式圧力計を示し、図1[1]は基本構成及び検出原理を示す概念図、図1[2]は検出結果を示すグラフ、図1[3]は変位が最大になった場合の概念図である。
【図2】第一実施形態の光学式圧力計における構造の第一例を示し、図2[1]は縦断面図、図2[2]は横断面図である。
【図3】第一実施形態の光学式圧力計における構造の第二例を示し、図3[1]は縦断面図、図3[2]は横断面図、図3[3]はダイヤフラムの変位が最大になるときの要部縦断面図である。
【図4】第二実施形態の光学式圧力計を示す回路図である。
【図5】第二実施形態の光学式圧力計における構造の一例を示し、図5[1]は縦断面図、図5[2]は横断面図である。
【図6】特許文献1に記載の光学式圧力計を示し、図6[1]は構造の縦断面図、図6[2]は特性のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る光学式変位計の実施形態として、光学式圧力計について図面を参照しつつ説明する。
【0015】
図1は第一実施形態の光学式圧力計を示し、図1[1]は基本構成及び検出原理を示す概念図、図1[2]は検出結果を示すグラフ、図1[3]は変位が最大になった場合の概念図である。以下、この図面に基づき説明する。
【0016】
本実施形態の光学式圧力計10は、ダイヤフラム11と、隔壁14と、スリット15と、発光素子16と、検出用受光素子17と、を備えたことを特徴とする。ダイヤフラム11は、表裏をなす第一面111及び第二面112から成り、第一面111で受ける圧力Fに応じて変位dを生ずる。隔壁14は、第二面112に対向するとともに、発光室12と受光室13とを仕切る。スリット15は、隔壁14と第二面112との間隙から成る。発光素子16は、発光室12に設けられ、電力Pを入力し光Lに変換して出力する。検出用受光素子17は、受光室13に設けられ、発光素子16から出力されスリット15を通過した光L’を、入力し電気信号(光電流Io)に変換して出力する。
【0017】
図1[1]では、ダイヤフラム11に圧力Fが加わって変位dが生じたときの第二面112の位置を、仮想線(二点鎖線)で示している。このときの第二面112と隔壁14との距離がスリット幅wである。図1[3]では、ダイヤフラム11に更に圧力Fが加わって変位dが最大値dmaxになったときの第二面112の位置を、仮想線(二点鎖線)で示している。このとき、ダイヤフラム11が隔壁14に当接するため、スリット幅wは「0」である。
【0018】
次に、光学式圧力計10の動作(作用及び効果)を説明する。
【0019】
ダイヤフラム11に圧力Fが加わると、その圧力Fに応じてダイヤフラム11に変位dが生じる。その変位dが大きくなると、ダイヤフラム11と隔壁14との間のスリット幅wが小さくなる。スリット幅wが小さくなると、発光素子16から出力された光Lのうち、スリット15を通過する光L’が少なくなって、検出用受光素子17に到達する光が少なくなる。したがって、検出用受光素子17の受光量(光電流Io)によって、ダイヤフラム11の変位d及びこれに対応する圧力Fを間接的に検出することができる。このように、光学式圧力計10によれば、ダイヤフラム11の反射光を用いずに、スリット15を通過する光L’を用いることにより、ダイヤフラム11の反射面の劣化による検出精度の低下を抑えることができるので、信頼性を向上できる。
【0020】
また、「変位d大(又は小)→スリット幅w小(又は大)→受光量(光電流Io)減(又は増)」の関係は、変位dのとり得るすべての範囲において成り立つ。このとき、変位dが負(圧力Fが負)すなわち陰圧であっても検出することができる。つまり、スリット15の断面積は変位dに反比例するので、光電流Ioは、図1[2]に示すように、変位dが増加するにつれて減少し、変位dが最大値dmaxになったときに最小値Iominとなる。変位dが最大値dmaxになったときに、ダイヤフラム11が隔壁14に隙間無く当接するようにすれば、最小値Iominは検出用受光素子17の暗電流となる。したがって、光学式圧力計10によれば、負から正までの極めて広い範囲の変位dを、変位dに直線的に変化する光電流Ioとして検出することができる。なお、図1[1]において、ダイヤフラム11は一般に円板状であるので、隔壁14が平板状であれば、隔壁14の上端(開口端)を下に凸の円弧状にすることにより、ダイヤフラム11が隔壁14に隙間無く当接する構造を実現できる。
【0021】
第二面112は、発光素子16から出力された光Lの正反射を防止する機能を有することが好ましい。光Lの正反射を防止する機能とは、例えば光Lを乱反射する白色又は微細な凹凸、光Lを吸収する黒色などによって実現できる。この場合は、ダイヤフラム11での光Lの正反射を防止できるので、ダイヤフラム11の劣化に起因する検出精度の低下をより確実に抑えることができる。
【0022】
図1[3]に示すように、変位dが最大値dmaxになるときに、ダイヤフラム11が隔壁14に当接することが好ましい。変位dが最大値dmaxになるときにダイヤフラム11が隔壁14に当接することにより、それ以上の圧力Fがダイヤフラム11に加わってもダイヤフラム11にはそれ以上の変位dが生じない。したがって、ダイヤフラム11に大きな圧力Fが加わって破損することを抑えることができるので、より信頼性を向上できる。
【0023】
図2は第一実施形態の光学式圧力計における構造の第一例を示し、図2[1]は縦断面図、図2[2]は横断面図である。以下、この図面に基づき説明する。なお、図2において図1と同じ部分は同じ符号を付す。
【0024】
扁平な有底円筒状のケース20内が、直線状の隔壁14によって発光室12と受光室13とに仕切られている。すなわち、ケース20は、隔壁14を挟んで、内側面21a及び内底面22aから成る発光室12と、内側面21b及び内底面22bから成る受光室13とを有する。発光室12の内底面22aに発光素子16が設けられ、受光室13の内底面22bに検出用受光素子17が設けられている。ケース20の上端(開口端)には、ダイヤフラム11が設けられている。内側面21a,21b、内底面22a,22b及び隔壁14は、それぞれ光L,L’を乱反射又は正反射する機能を有することが好ましい。特に、内側面21aは発光素子16から出力された光Lをスリット15方向へ向けるため、内側面21bはスリット15を通過した光L’を検出用受光素子17方向へ向けるため、それぞれ乱反射又は正反射する機能を有することが好ましい。
【0025】
発光素子16から出力された光Lは、発光室12内を乱反射し、その一部がスリット15を通過する。スリット15を通過した光L’は、受光室13内を乱反射し、その一部が検出用受光素子17に到達する。このような構成によって、図1を用いた説明で述べたように、作用及び効果を奏する。
【0026】
図3は第一実施形態の光学式圧力計における構造の第二例を示し、図3[1]は縦断面図、図3[2]は横断面図、図3[3]はダイヤフラムの変位が最大になるときの要部縦断面図である。以下、この図面に基づき説明する。なお、図3において図1及び図2と同じ部分は同じ符号を付す。
【0027】
第一例(図2)と異なる箇所は、隔壁14’が円筒状になっていることである。そのため、発光室12’が内周、受光室13が外周になっている。発光室12’及び受光室13’の内壁面は、それぞれ光L,L’を乱反射する機能を有することが好ましい。
【0028】
発光素子16から出力された光Lは、発光室12’内を乱反射し、その一部がスリット15を通過する。スリット15を通過した光L’は、受光室13’内を乱反射し、その一部が検出用受光素子17に到達する。このような構成によって、図1を用いた説明で述べたように、作用及び効果を奏する。
【0029】
また、ダイヤフラム11が円板状であり、隔壁14’が円筒状であり、ダイヤフラム11の中心軸と隔壁14’の中心軸とが一致し、ダイヤフラム11の変位が最大になるときに第二面112が隔壁14’の周端14aに当接する(図3[3])。この状態で、それ以上の圧力がダイヤフラム11に加わっても、ダイヤフラム11にはそれ以上の変位が生じない。このとき、ダイヤフラム11に加わる圧力が隔壁14’の周端14aによって円状に均一に分散されるので、ダイヤフラム11に大きな圧力が加わって破損することをより確実に抑えることができる。他の構成、作用及び効果は図2の第一例と同様である。
【0030】
図4は、第二実施形態の光学式圧力計を示す回路図である。以下、この図面に基づき説明する。なお、図4において図1と同じ部分は同じ符号を付す。
【0031】
本実施形態の光学式圧力計30は、第一実施形態の光学式圧力計10(図1)において、制御用受光素子31と、制御回路32とを更に備えている。制御用受光素子31は、発光素子16から出力された光Lの一部をスリット15を介することなく光L''として直接入力し、光L''を電気信号に変換して出力する。また、制御用受光素子31の入出力特性の温度依存性は、検出用受光素子17の入出力特性の温度依存性と同じになっている。制御回路32は、制御用受光素子31の出力を発光素子16の入力へフィードバックして、制御用受光素子31の出力を一定にする機能を有する。
【0032】
光学式圧力計30によれば、入出力特性の温度依存性が検出用受光素子17と同じであり発光素子16からの光Lの一部を光L''として直接受ける制御用受光素子31を設け、制御用受光素子31の出力を発光素子16の入力にフィードバックして制御用受光素子31の出力が一定になるように制御することにより、発光素子16及び検出用受光素子17の両方の温度特性の影響を低減できるので、温度変化による検出値の変動を抑えることができる。以下により詳しく説明する。
【0033】
発光素子16から出力された光Lの一部はスリット15を通過し、スリット15を通過した光L’の一部が検出用受光素子17に到達する。そのため、検出用受光素子17の受光量を検出することにより、スリット幅に対応するダイヤフラム11の変位を検出することができる。しかし、発光素子16、制御用受光素子31及び検出用受光素子17はそれぞれ温度特性を有するため、そのままでは、変位が一定の場合でも、温度に応じて検出値が変わってしまう。
【0034】
そこで、発光素子16の光L’の一部を光L''として直接(スリット15を介さずに)制御用受光素子31で受け、制御用受光素子31の出力が一定になるように、制御用受光素子31の出力を発光素子16の入力にフィードバックする。例えば、発光素子16の出力が温度変化により増加(又は減少)すると、制御用受光素子31の出力も増加する(又は減少)ので、発光素子16の入力を減少(又は増加)させることにより制御用受光素子31の出力を一定にする。また、発光素子16の出力が一定でも制御用受光素子31の出力が温度変化により増加(又は減少)すると、発光素子16の入力を減少(又は増加)させることにより制御用受光素子31の出力を一定にする。このとき、制御用受光素子31及び検出用受光素子17は入出力特性の温度依存性がともに同じであるから、制御用受光素子31の出力を一定にすることは、検出用受光素子17の出力を一定にすることでもある。すなわち、制御用受光素子31の出力を発光素子16の入力へ負帰還させることにより、制御用受光素子31の出力は、発光素子16、制御用受光素子31及び検出用受光素子17のそれぞれの温度特性の影響が低減したものとなる。
【0035】
図5は第二実施形態の光学式圧力計における構造の一例を示し、図5[1]は縦断面図、図5[2]は横断面図である。以下、この図面に基づき説明する。なお、図5において図2及び図4と同じ部分は同じ符号を付す。
【0036】
発光室12の底面に発光素子16及び制御用受光素子31が並んで設けられ、受光室13の底面に検出用受光素子17が設けられている。発光素子16から出力された光Lは、発光室12内を乱反射し、一部が光L''として制御用受光素子31に到達し、一部がスリット15を通過する。スリット15を通過した光L’は、受光室13内を乱反射し、その一部が検出用受光素子17に到達する。このような構成によって、図4を用いた説明で述べたように、作用及び効果を奏する。他の構成、作用及び効果は図2の第一例と同様である。
【0037】
次に、図4及び図5に基づき、本実施形態の光学式圧力計30について更に詳しく説明する。
【0038】
「入出力特性の温度依存性が同じ」について説明する。受光素子は、光信号を入力し、この光信号を一定の効率で電気信号に変換して出力する。このとき、二つの受光素子の入出力の温度依存性が同じとは、入力が一定でも温度変化に応じて出力が変化するとき、一方の受光素子の出力が増加するときは他方の受光素子も出力が増加し、逆に一方の受光素子の出力が減少するときは他方の受光素子も出力が減少することをいう。例えば、同一メーカの同一型名の二つの素子があれば、これらの素子の入出力特性の温度依存性は同じといえる。
【0039】
発光素子16及び検出用受光素子17は、それぞれ隔壁14を隔てて配置されることにより、発光素子16からの光Lが(スリット15を介することなく)直接検出用受光素子17に到達しない構造になっている。一方、発光素子16及び制御用受光素子31は、同じ発光室12内に近接して配置されることにより、発光素子16からの光Lの一部が光L''として直接制御用受光素子31に到達する構造になっている。光L''は、発光素子16で発生した光Lが発光室12内で乱反射して制御用受光素子31に到達した光である。
【0040】
発光素子16、検出用受光素子17及び制御用受光素子31は、例えば互いに近接して配置されることにより、それぞれほぼ同じ温度になる熱結合部33となっている。熱結合性を高めるためには、ケース20の底面を熱伝導性に優れた金属やセラミックスとしたり、発光素子16、検出用受光素子17及び制御用受光素子31を熱伝導性及び透光性に優れた樹脂で被覆したりすることが好ましい。
【0041】
発光素子16は発光ダイオードである。検出用受光素子17及び制御用受光素子31は、フォトダイオードを起電力発生素子として使用している。制御回路32は、制御用受光素子31の出力を増幅する増幅器321と、増幅器321の出力の帰還量βを設定する可変抵抗器322と、可変抵抗器322の出力と駆動回路34からの矩形波との差を増幅する増幅器323とを備えている。増幅器321,323はオペアンプ及びその外付け抵抗器等からなる。
【0042】
検出用受光素子17の出力側には、出力回路35が設けられている。出力回路35は、検出用受光素子17の出力を増幅する増幅器351と、増幅器321の出力の一部を増幅器353の入力とする可変抵抗器352と、可変抵抗器352の出力と増幅器351の出力との差を増幅する増幅器353と、CR微分回路であるコンデンサ354及び抵抗器355と、ボルテージフォロワ356とを備えている。増幅器351,353はオペアンプ及びその外付け抵抗器等からなる。
【0043】
次に、光学式圧力計30の動作(作用及び効果)について更に詳しく説明する。
【0044】
発光素子16からスリット15を通過する光L’は、ダイヤフラム11の変位に応じて増減する。そのため、検出用受光素子17の受光量を検出することにより、間接的にダイヤフラム11の変位やダイヤフラム11に加わる圧力を検出することができる。しかし、発光素子16及び検出用受光素子17はともに温度特性を有するため、そのままでは、変位が一定のときでも、温度に応じて変位の検出値が変わってしまう。
【0045】
そこで、本実施形態では、発光素子の光Lの一部を光L''として直接(スリット15を介さずに)制御用受光素子31で受け、制御用受光素子31の出力が一定になるように、制御用受光素子31の出力を発光素子16の入力にフィードバックする。例えば、発光素子16の出力が温度変化により増加すると、制御用受光素子31の出力も増加する。この場合は、増幅器323の−入力端子の電圧が増加することにより、発光素子16の入力が減少するので、制御用受光素子31の出力が減少する。逆に、発光素子16の出力が温度変化により減少すると、制御用受光素子31の出力も減少する。この場合は、増幅器323の−入力端子の電圧が減少することにより、発光素子16の入力が増加するので、制御用受光素子31の出力が増加する。また、発光素子16の出力が一定でも、制御用受光素子31の出力が温度変化により増加すると、増幅器323の−入力端子の電圧が増加することにより、発光素子16の入力が減少するので、制御用受光素子31の出力が減少する。逆に、発光素子16の出力が一定でも、制御用受光素子31の出力が温度変化により減少すると増幅器323の−入力端子の電圧が減少することにより、発光素子16の入力が増加するので、制御用受光素子31の出力が増加する。その結果、制御用受光素子31の出力は、発光素子16及び制御用受光素子31の両方の温度特性の影響が低減したものとなる。
【0046】
検出用受光素子17は、入出力特性の温度依存性が制御用受光素子31と同じである。また、検出用受光素子17は、スリット15を介する点を除き、制御用受光素子31と同じように発光素子16からの光L’を受ける。そのため、制御用受光素子31の出力が一定になるように発光素子16の入力をフィードバック制御することは、ダイヤフラム11の変位に対応して異なる検出用受光素子17の出力が温度変化にかかわらず一定になるように、発光素子16の入力をフィードバック制御することに他ならない。したがって、検出用受光素子17の出力は、制御用受光素子31の出力と同様に、発光素子16及び検出用受光素子17の両方の温度特性の影響が低減したものとなる。
【0047】
出力回路35において、検出用受光素子17の出力は、制御用受光素子31の出力に比べて一般に非常に小さくなる。そこで、可変抵抗器352によって制御用受光素子31の出力のレベルを落として、検出用受光素子17の出力のレベルに揃え、両者の差を増幅器353で出力している。すなわち、増幅器353の出力電圧Vout1は、スリット15を通過する光L’の変化分に相当する。出力電圧Vout1は、コンデンサ354及び抵抗器355から成る微分回路で直流分がカットされ、かつ増幅器321,351,353で生ずるオフセットがカットされ、温度ドリフト分が軽減されて、出力電圧Vout2となる。
【0048】
制御用受光素子31側の増幅器321の出力電圧をVo、検出用受光素子17側の増幅器351の出力電圧をVo’、ダイヤフラム11の変位によって変化した電圧をVs、ダイヤフラム11の変位に関係ない一定電圧をVc、比例定数をk、可変抵抗器352で設定された倍率をαとすると、Vo,Vo’,Vout1はそれぞれ次式で表せる。
Vo=Vc+Vs
Vo’=kVc−kVs
Vout1=αVo−Vo’
スリット15が狭くなると、スリット15を通過する光L’が少なくなるので、発光室12が明るくなり、受光室13が暗くなる。すなわち、発光室12側のVsの係数は負であり、受光室13側のVsの係数は正である。
ここで、ダイヤフラム11の変位が「0」のとき、Vs=0であるから、Vout1は次式で表せる。
Vout1=αVo−Vo’=(α−k)Vc
したがって、ダイヤフラム11の変位が「0」のときVout1=0にするには、可変抵抗器352を調整してα=kに設定すればよい。このとき、Vout1は、
Vout1=k(Vc+Vs)−(kVc−kVs)=2kVs
となる。したがって、出力電圧Vout1は、ダイヤフラム11の変位によって変化した電圧Vsに比例した値となる。
【0049】
また、光学式圧力計30は、発光素子16を一定の周波数の矩形波で駆動する駆動回路34と、検出用受光素子17の出力を前記周波数に同期させて整流する同期整流回路(図示せず)とを備えている。その同期整流回路によって、出力電圧Vout2は、リップル電圧が低減すると同時に、外乱光の影響が低減する。同期整流回路の出力がダイヤフラム11の変位となる。
【0050】
次に、制御回路32によるフィードバック制御について詳しく説明する。駆動回路34の出力電圧をVin、増幅器323の増幅率をA1、発光素子16の発光効率をα1、発光素子16から制御用受光素子31への光伝達率をγ、制御用受光素子31の変換効率をα2、増幅器321の増幅率をA2、可変抵抗器322による帰還率をβ、増幅器321の出力電圧をVoとする。このとき、Voは次式で与えられる。
Vo=A(Vin−βVo) ・・・<1>
ただし、A=A1×α1×γ×α2×A2 ・・・<2>
式<1>から次式が得られる。
Vo={A/(1+Aβ)}Vin
={1/(1/A+β)}Vin ・・・<3>
ここで、式<2>において、通常、増幅器323,321の増幅率A1、A2は極めて大きいので、(A1×A2)(α1×γ×α2)>>0となるように設定できる。したがって、式<3>において1/A≒0とみなせることにより、式<3>は次式のように表せる。
Vo=(1/β)Vin ・・・<4>
式<4>から明らかなように、α1又はα2が温度変化により変動しても、Voは影響を受けない。
【0051】
本実施形態の光学式圧力計30によれば、入出力特性の温度依存性が検出用受光素子17と同じであり発光素子16からの光を直接受ける制御用受光素子31を設け、制御用受光素子31の出力を発光素子16の入力にフィードバックして制御用受光素子31の出力が一定になるように制御することにより、発光素子16及び検出用受光素子17の両方の温度特性の影響を低減できるので、温度変化による測定値の変動を抑えることができる。
【0052】
特に、ダイヤフラム11を屋外の水中に浸漬して水圧を検出する場合、発光素子16及び検出用受光素子17等は外気温の変動及び水温の変動によって広範囲の温度変化にさらされることになる。このような厳しい使用条件にもかかわらず、光学式圧力計30によれば温度変化の影響が少ない測定値が得られるので、光学式圧力計30を屋外の水圧計として用いる場合は特に効果が顕著になる。
【0053】
本実施形態の光学式圧力計30の他の構成、作用及び効果については、第一実施形態の光学式圧力計10(図1乃至図3)と同じである。
【0054】
なお、本発明は、上記各実施形態に限定されない。例えば、検出用受光素子17及び制御用受光素子31は、フォトダイオードの代わりに、フォトトランジスタや光導電素子を用いてもよい。発光素子16は、発光ダイオードの代わりに、EL(electroluminescence)素子や半導体レーザを用いてもよい。
【0055】
以上、上記各実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明の構成や詳細については、当業者が理解し得るさまざまな変更を加えることができる。また、本発明には、上記各実施形態の構成の一部又は全部を相互に適宜組み合わせたものも含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明に係る光学式変位計は、力によるダイヤフラムの変位を光学的に検出する計測器、例えば光学式圧力計などに利用可能である。
【符号の説明】
【0057】
10 光学式圧力計(光学式変位計)
11 ダイヤフラム
111 第一面
112 第二面
12 発光室(発光側)
13 受光室(受光側)
14 隔壁
15 スリット
16 発光素子
17 検出用受光素子
F 圧力(力)
d 変位
L,L’ 光
P 電力
30 光学式圧力計(光学式変位計)
31 制御用受光素子
32 制御回路
33 熱結合部
34 駆動回路
35 出力回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表裏をなす第一面及び第二面から成るとともに当該第一面で受ける力に応じて変位を生ずるダイヤフラムと、
前記第二面に対向するとともに発光側と受光側とを仕切る隔壁と、
この隔壁と前記第二面との間隙から成るスリットと、
前記発光側に設けられ、電力を入力し光に変換して出力する発光素子と、
前記受光側に設けられ、前記発光素子から出力され前記スリットを通過した光を入力し電気信号に変換して出力する検出用受光素子と、
を備えたことを特徴とする光学式変位計。
【請求項2】
前記第二面は、前記発光素子から出力された光の正反射を防止する機能を有する、
ことを特徴とする請求項1記載の光学式変位計。
【請求項3】
前記変位が最大になるときに前記第二面が前記隔壁に当接する、
ことを特徴とする請求項1又は2記載の光学式変位計。
【請求項4】
前記ダイヤフラムが円板状であり、前記隔壁が円筒状であり、前記ダイヤフラムの中心軸と前記隔壁の中心軸とが一致し、前記変位が最大になるときに前記第二面が前記隔壁の周端に当接する、
ことを特徴とする請求項3記載の光学式変位計。
【請求項5】
前記発光素子から出力された光を前記スリットを介することなく直接入力し電気信号に変換して出力するとともに入出力特性の温度依存性が前記検出用受光素子と同じである制御用受光素子と、
この制御用受光素子の出力を前記発光素子の入力へフィードバックして当該制御用受光素子の出力を一定にする制御回路と、
を更に備えたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項記載の光学式変位計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−185710(P2010−185710A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−28770(P2009−28770)
【出願日】平成21年2月10日(2009.2.10)
【出願人】(393027567)株式会社ケネック (3)
【出願人】(593108990)
【Fターム(参考)】