説明

光学材料用樹脂組成物

【課題】
屈折率1.60付近で低比重、高強度、高耐熱性の良好な物性を兼ね備えている材料を提供する。
【解決手段】
(a)アクリロイル基、メタクリロイル基、アリル基、およびビニル基からなる群より選択されるいずれかの基と、β−エピチオプロピル基とをそれぞれ1分子中に1個以上有する化合物と、(b)スチレン骨格を有する化合物とからなる光学材料用組成物、さらに(c)チオール基を1分子中に1個以上有する化合物を含む光学材料用組成物、および該光学材料用組成物を重合硬化させてなる光学材料、そして該光学材料からなる光学レンズおよび光学材料の製造方法により上記課題を解決し、本発明に至った。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチックレンズ、プリズム、光ファイバー、情報記録基盤、フィルター等の光学材料、中でもプラスチックレンズに好適に使用される。
【背景技術】
【0002】
プラスチック材料は軽量かつ靭性に富み、また染色が容易であることから、各種光学材料、特に眼鏡レンズに近年多用されている。光学材料、特に眼鏡レンズに要求される性能は、低比重と高屈折率に加え、物理的性能としては高耐熱性と高強度である。低比重はレンズの軽量化、高屈折率はレンズの薄肉化を可能とし、高耐熱性と高強度は二次加工性を容易とすると共に安全性等の観点からも重要である。
現在眼鏡レンズとして最も多用されている屈折率は1.6付近であり、従来技術における代表的な材料には、臭素原子を含むメタクリレート化合物、ポリチオールとポリイソシアネートから得られるチオウレタンがある。臭素原子を含むメタクリレート化合物として代表的なものは非特許文献1に示されるものであるが、眼鏡レンズとして重要な要素である強度、耐熱性に劣り、また臭素を多く含むために比重が大きく、着色しやすいといった問題点があった。チオウレタン材料は非特許文献2や特許文献1〜5に示される材料であり、強度が改善されているが耐熱性は十分ではなかった。また硫黄原子を多く含むため比重が大きく、さらには切削加工時に悪臭を伴うといった課題があった。
一方、これまでに特許文献6〜9に示される低比重レンズの提案もされてきている。しかしながら屈折率は1.5程度にとどまるため薄肉化には適さず、結果としてレンズの軽量化には至っていなかった。また強度、耐熱性に劣るといった問題もあり、普及していない。
したがって、屈折率1.6付近で低比重、高強度、高耐熱性の良好な物性を兼ね備えている材料が求められていた。
【0003】
【非特許文献1】日化協月報、1987年8月号、p27−31
【非特許文献2】日化協月報、1994年2月号、p8−11
【特許文献1】特公平4−58489号公報
【特許文献2】特公平4−15249号公報
【特許文献3】特開平8−271702号公報
【特許文献4】特開平9−110955号公報
【特許文献5】特開平9−110956号公報
【特許文献6】特開平5−215903号公報
【特許文献7】特開平5−307102号公報
【特許文献8】特開平5−307103号公報
【特許文献9】特開平7−292043号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、屈折率1.6付近で低比重、高強度、高耐熱性の良好な物性を兼ね備えている材料を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、このような状況に鑑み、鋭意研究を重ねた結果、本課題を解決し、本発明に至った。具体的には、(a)アクリロイル基、メタクリロイル基、アリル基、およびビニル基からなる群より選択されるいずれかの基と、β−エピチオプロピル基とをそれぞれ1分子中に1個以上有する化合物と、(b)スチレン骨格を有する化合物とからなる光学材料用組成物、さらに(c)チオール基を1分子中に1個以上有する化合物を含む光学材料用組成物、および該光学材料用組成物を重合硬化させてなる光学材料、そして該光学材料からなる光学レンズおよび光学材料の製造方法であり、すなわち以下に示す通りである。
1.(a)アクリロイル基、メタクリロイル基、アリル基、およびビニル基からなる群より選択されるいずれかの基と、β−エピチオプロピル基とをそれぞれ1分子中に1個以上有する化合物と、(b)スチレン骨格を有する化合物を含有する光学材料用組成物。
2.(a)アクリロイル基、メタクリロイル基、アリル基、およびビニル基からなる群より選択されるいずれかの基と、β−エピチオプロピル基とをそれぞれ1分子中に1個以上有する化合物が下記(1)式で表される化合物である第1項記載の光学材料用組成物。
【化1】

(1)
((1)式中、XはO(CH、S(CH、または(CHを示し、nは0から6の整数を示す。Yはアクリロイル基、メタクリロイル基、アリル基、またはビニル基を示す。)
3.(1)式で表される化合物がチオグリシジルメタクリレート((1)式においてXがO、Yがメタクリロイル基)である第2項記載の光学材料用組成物。
4.(1)式で表される化合物がアリルチオグリシジルエーテル((1)式においてXがO、Yがアリル基)である第2項記載の光学材料用組成物。
5.(b)スチレン骨格を有する化合物がスチレン、α−メチルスチレン、およびジビルベンゼンから選ばれる1種以上である第1項記載の光学材料用組成物。
6.さらに(c)チオール基を1分子中に1個以上有する化合物を含む第1項記載の光学材料用組成物。
7.(c)チオール基を1分子中に1個以上有する化合物が、ビス(2−メルカプトエチル)スルフィド、ペンタエリスリトールテトラキス(2−メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、2,5−ビス(メルカプトメチル)−1,4−ジチアン、1,2−ビス(2−メルカプトエチルチオ)−3−メルカプトプロパン、4,8−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、4,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、5,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、1,1,3,3−テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1,3−ビス(メルカプトメチル)ベンゼンおよび1,4−ビス(メルカプトメチル)ベンゼンから選ばれる1種以上である第6項記載の光学材料用組成物。
8.第1項記載の光学材料用組成物を、硬化触媒の存在下重合硬化して得られる光学材料。
9.硬化触媒が、複素環を有するアミン、ホスフィン、第4級アンモニウム塩、第4級ホスホニウム塩、第3級スルホニウム塩、第2級ヨードニウム塩、過酸化物、アゾ化合物の中から選ばれる少なくとも1種以上の化合物である第8項記載の光学材料。
10.硬化触媒が、複素環を有するアミン、ホスフィン、第4級アンモニウム塩、第4級ホスホニウム塩、第3級スルホニウム塩、第2級ヨードニウム塩中から選ばれる少なくとも1種以上の化合物と、過酸化物、アゾ化合物の中から選ばれる少なくとも1種以上の化合物の組み合わせである第8項記載の光学材料。
11.第8項記載の光学材料からなる光学レンズ。
12.第1項記載の光学材料用組成物を、重合硬化して得られる光学材料の製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明の組成物を重合硬化して得られる光学材料により、従来技術の化合物を原料とする限り困難であった屈折率1.6付近で低比重、高強度、高耐熱性の良好な物性を兼ね備えている材料を得ることが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
(a)アクリロイル基、メタクリロイル基、アリル基、およびビニル基からなる群より選択されるいずれかの基と、β−エピチオプロピル基とをそれぞれ1分子中に1個以上有する化合物は、この条件を満たすすべての化合物を包含する。具体的には、前記(1)式で示される化合物、2−または3―または4−(β−エピチオプロピルチオメチル)スチレン、2−または3―または4−(β−エピチオプロピルオキシメチル)スチレン、2−または3―または4−(β−エピチオプロピルチオ)スチレン、2−または3―または4−(β−エピチオプロピルオキシ)スチレンが挙げられる。
より好ましい化合物は、(1)式で示される化合物である。中でも好ましい化合物は(1)式においてnが0、より好ましい化合物は(1)式においてXがOまたはSであり、Yがメタクリロイル基又はアリル基である。更に好ましい化合物は、チオグリシジルメタクリレート((1)式においてXがO、Yがメタクリロイル基)、アリルチオグリシジルエーテル((1)式おいてXがO、Yがアリル基)、チオグリシジルチオメタクリレート((1)式においてXがS、Yがメタクリロイル基)、およびアリルチオグリシジルチオエーテル((1)式においてXがS、Yがアリル基)である。特に好ましい化合物は、チオグリシジルメタクリレートおよびアリルチオグリシジルエーテルであり、最も好ましい化合物はチオグリシジルメタクリレートである。
以上具体例を示したが、これらに限定されるわけではなく、またこれらは単独でも2種以上を混合して使用しても構わない。
【0008】
(b)スチレン骨格を有する化合物は、この条件を満たすすべての化合物を包含するが、好ましい化合物はとしては、以下の例が挙げられる。
スチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、α−メチルスチレン、α−メチルスチレンダイマー、2,4,6−トリメチルスチレン、4−tert−ブチルスチレン、ビニルフェノール、ビニルチオフェノール、2−クロロスチレン、3−クロロスチレン、4−クロロスチレン、3−クロロメチルスチレン、4−クロロメチルスチレン、2−ブロモスチレン、3−ブロモスチレン、4−ブロモスチレン、3−ブロモメチルスチレン、4−ブロモメチルスチレン、4−アミノスチレン、3−シアノメチルスチレン、4−シアノメチルスチレン、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、4−ビニルビフェニル、2,2’−ジビニルビフェニル、4,4’−ジビニルビフェニル、2,2−ビス(4−ビニルフェニル)プロパン、ビス(4−ビニルフェニル)エーテル、ビニルナフタレン、ジビニルナフタレン等が挙げられる。
【0009】
中でも好ましい化合物は、スチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、α−メチルスチレン、α−メチルスチレンダイマー、2,4,6−トリメチルスチレン、4−tert−ブチルスチレン、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼンである。より好ましい化合物は、スチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、α−メチルスチレン、4−tert−ブチルスチレン、ジビニルベンゼンである。さらに好ましい化合物はスチレン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼンであり、最も好ましい化合物はスチレンである。
【0010】
(a)アクリロイル基、メタクリロイル基、アリル基、およびビニル基からなる群より選択されるいずれかの基と、β−エピチオプロピル基とをそれぞれ1分子中に1個以上有する化合物と(b)スチレン骨格を有する化合物の割合は任意であるが、好ましくは(a)アクリロイル基、メタクリロイル基、アリル基、ビニル基のいずれかの基とチイラン環をそれぞれ1分子中に1個以上有する化合物1から99重量部と、(b)スチレン骨格を有する化合物1重量部から99重量部であり、より好ましくは(a)化合物5重量部から90重量部と、(b)化合物10重量部から95重量部であり、さらに好ましくは(a)化合物10重量部から80重量部と、(b)化合物20重量部から90重量部であり、さらに好ましくは(a)化合物10重量部から50重量部と、(b)化合物50から90重量部であり、最も好ましくは(a)化合物10重量部から30重量部と、(b)化合物70重量部から90重量部である。
【0011】
(c)チオール基を1分子中に1個以上有する化合物は、この条件を満たすすべての化合物を包含するが、具体的にはチオフェノール類、チオール類、メルカプトアルコール類、ヒドロキシチオフェノール類等である。
【0012】
チオフェノール類としては、チオフェノール、4−tert−ブチルチオフェノール、2−メチルチオフェノール、3−メチルチオフェノール、4−メチルチオフェノール、o−ジメルカプトベンゼン、m−ジメルカプトベンゼン、p−ジメルカプトベンゼン、1,3,5−トリメルカプトベンゼン等を挙げることができる。
【0013】
チオール類としてはメチルメルカプタン、エチルメルカプタン、n−プロピルメルカプタン、n−ブチルメルカプタン、アリルメルカプタン、n−ヘキシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−デシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、n−テトラデシルメルカプタン、n−ヘキサデシルメルカプタン、n−オクタデシルメルカプタン、シクロヘキシルメルカプタン、イソプロピルメルカプタン、tert−ブチルメルカプタン、tert−ノニルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン、ベンジルメルカプタン、4−クロロベンジルメルカプタン、メチルチオグリコレート、エチルチオグリコレート、n−ブチルチオグリコレート、n−オクチルチオグリコレート、メチル(3−メルカプトプロピオネート)、エチル(3−メルカプトプロピオネート)、3−メトキシブチル(3−メルカプトプロピオネート)、n−ブチル(3−メルカプトプロピオネート)、2−エチルヘキシル(3−メルカプトプロピオネート)、n−オクチル(3−メルカプトプロピオネート)等のモノチオール類、メタンジチオール、1,2−ジメルカプトエタン、2,2−ジメルカプトプロパン、1,3−ジメルカプトプロパン、1,2,3−トリメルカプトプロパン、1,4−ジメルカプトブタン、1,6−ジメルカプトヘキサン、ビス(2−メルカプトエチル)スルフィド、1,2−ビス(2−メルカプトエチルチオ)エタン、1,5−ジメルカプト−3−オキサペンタン、1,8−ジメルカプト−3,6−ジオキサオクタン、2,2−ジメチルプロパン−1,3−ジチオール、3,4−ジメトキシブタン−1,2−ジチオール、2−メルカプトメチル−1,3−ジメルカプトプロパン、2−メルカプトメチル1,4−ジメルカプトプロパン、2−(2−メルカプトエチルチオ)−1,3−ジメルカプトプロパン、1,2−ビス(2−メルカプトエチルチオ)−3−メルカプトプロパン、1,1,1−トリス(メルカプトメチル)プロパン、テトラキス(メルカプトメチル)メタン、4,8−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、4,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、5,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、1,1,3,3−テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパン、エチレングリコールビス(2−メルカプトアセテート)、エチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、1,4−ブタンジオールビス(2−メルカプトアセテート)、1,4−ブタンジオールビス(3−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(2−メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(2−メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、1,1−ジメルカプトシクロヘキサン、1,2−ジメルカプトシクロヘキサン、1,3−ジメルカプトシクロヘキサン、1,4−ジメルカプトシクロヘキサン、1,3−ビス(メルカプトメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(メルカプトメチル)シクロヘキサン、2,5−ビス(メルカプトメチル)−1,4−ジチアン、2,5−ビス(メルカプトエチル)−1,4−ジチアン、1,2−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,4−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、ビス(4−メルカプトフェニル)スルフィド、ビス(4−メルカプトフェニル)エーテル、2,2−ビス(4−メルカプトフェニル)プロパン、ビス(4−メルカプトメチルフェニル)スルフィド、ビス(4−メルカプトメチルフェニル)エーテル、2,2−ビス(4−メルカプトメチルフェニル)プロパン等のポリチオール類等を挙げることができる。
【0014】
メルカプトアルコール類としては、2−メルカプトエタノール、2−メルカプトプロパノール、3−メルカプトプロパノール、2−ヒドロキシプロピルメルカプタン、2−フェニル−2−メルカプトエタノール、2−フェニル−2−ヒドロキシエチルメルカプタン、3−メルカプト−1,2−プロパンジオール、2−メルカプト−1,3−プロパンジオール、2,3−ジメルカプトプロパノール、1,3−ジメルカプト−2−プロパノール、2,2−ジメチルプロパン−1,3−ジオール、グリセリルジチオグリコレート等を挙げることができる。
ヒドロキシチオフェノール類としては、2−ヒドロキシチオフェノール、3−ヒドロキシチオフェノール、4−ヒドロキシチオフェノール等を挙げることができる。
以上具体例を示したが、これらに限定されるわけではなく、またこれらは単独でも2種以上を混合して使用しても構わない。
【0015】
以上の中で好ましい化合物はポリチオールであり、その具体例としてはビス(2−メルカプトエチル)スルフィド、ペンタエリスリトールテトラキス(2−メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、2,5−ビス(メルカプトメチル)−1,4−ジチアン、1,2−ビス(2−メルカプトエチルチオ)−3−メルカプトプロパン、4,8−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、4,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、5,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、1,1,3,3−テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1,3−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,4−ビス(メルカプトメチル)ベンゼンが挙げられる。さらに最も好ましい化合物の具体例としては、ビス(2−メルカプトエチル)スルフィド、2,5−ビス(メルカプトメチル)−1,4−ジチアン、1,2−ビス(2−メルカプトエチルチオ)−3−メルカプトプロパン、4,8−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、4,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、5,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、1,1,3,3−テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパンが挙げられる。
【0016】
(c)チオール基を1分子中に1個以上有する化合物の割合は任意であるが、好ましくは(a)アクリロイル基、メタクリロイル基、アリル基、およびビニル基のいずれかの基とチイラン環をそれぞれ1分子中に1個以上有する化合物と(b)スチレン骨格を有する化合物との合計100重量部に対し0重量部から50重量部であり、好ましくは0.1重量部から30重量部、さらに好ましくは1重量部から20重量部であり、より好ましくは1重量部から10重量部である。
【0017】
本発明の硬化触媒として、複素環を有するアミン、ホスフィン、第4級アンモニウム塩、第4級ホスホニウム塩、第3級スルホニウム塩、第2級ヨードニウム塩、過酸化物、アゾ化合物の中から選ばれる少なくとも1種以上の化合物が用いられる。
複素環を有するアミンの具体例としては、イミダゾール、N−メチルイミダゾール、N−メチル−2−メルカプトイミダゾール、2−メチルイミダゾール、4−メチルイミダゾール、N−エチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、4−エチルイミダゾール、N−ブチルイミダゾール、2−ブチルイミダゾール、N−ウンデシルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、N−フェニルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、N−ベンジルイミダゾール、2−ベンジルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、N−(2’−シアノエチル)−2−メチルイミダゾール、N−(2’−シアノエチル)−2−ウンデシルイミダゾール、N−(2’−シアノエチル)−2−フェニルイミダゾール、3,3−ビス(2−エチル−4−メチルイミダゾリル)メタン、アルキルイミダゾールとイソシアヌル酸の付加物、アルキルイミダゾールとホルムアルデヒドの縮合物等の各種イミダゾール類、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン、5,6−ジブチルアミノ−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン等のアミジン類が挙げられる。好ましくは、イミダゾール類である。
【0018】
ホスフィンの具体例としては、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリイソプロピルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリオクチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリベンジルホスフィン、トリス(2−メチルフェニル)ホスフィン、トリス(3−メチルフェニル)ホスフィン、トリス(4−メチルフェニル)ホスフィン、トリス(ジエチルアミノ)ホスフィン、ジメチルフェニルホスフィン、ジエチルフェニルホスフィン、ジシクロヘキシルフェニルホスフィン、ジエチルフェニルホスフィン、ジシクロヘキシルフェニルホスフィン、エチルジフェニルホスフィン、ジフェニルシクロヘキシルホスフィン、クロロジフェニルホスフィン等が挙げられる。好ましくはトリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィンである。
【0019】
第4級アンモニウム塩の具体例としては、テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムブロマイド、テトラメチルアンモニウムアセテート、テトラエチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムブロマイド、テトラエチルアンモニウムアセテート、テトラ−n−ブチルアンモニウムフルオライド、テトラ−n−ブチルアンモニウムクロライド、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロマイド、テトラ−n−ブチルアンモニウムヨーダイド、テトラ−n−ブチルアンモニウムアセテート、テトラ−n−ブチルアンモニウムボロハイドライド、テトラ−n−ブチルアンモニウムヘキサフルオロホスファイト、テトラ−n−ブチルアンモニウムハイドロゲンサルファイト、テトラ−n−ブチルアンモニウムテトラフルオロボーレート、テトラ−n−ブチルアンモニウムテトラフェニルボーレート、テトラ−n−ブチルアンモニウムパラトルエンスルホネート、テトラ−n−ヘキシルアンモニウムクロライド、テトラ−n−ヘキシルアンモニウムブロマイド、テトラ−n−ヘキシルアンモニウムアセテート、テトラ−n−オクチルアンモニウムクロライド、テトラ−n−オクチルアンモニウムブロマイド、テトラ−n−オクチルアンモニウムアセテート、トリメチル−n−オクチルアンモニウムクロライド、トリメチルベンジルアンモニウムクロライド、トリメチルベンジルアンモニウムブロマイド、トリエチル−n−オクチルアンモニウムクロライド、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド、トリエチルベンジルアンモニウムブロマイド、トリ−n−ブチル−n−オクチルアンモニウムクロライド、トリ−n−ブチルベンジルアンモニウムフルオライド、トリ−n−ブチルベンジルアンモニウムクロライド、トリ−n−ブチルベンジルアンモニウムブロマイド、トリ−n−ブチルベンジルアンモニウムヨーダイド、メチルトリフェニルアンモニウムクロライド、メチルトリフェニルアンモニウムブロマイド、エチルトリフェニルアンモニウムクロライド、エチルトリフェニルアンモニウムブロマイド、n−ブチルトリフェニルアンモニウムクロライド、n−ブチルトリフェニルアンモニウムブロマイド、1−メチルピリジニウムブロマイド、1−エチルピリジニウムブロマイド、1−n−ブチルピリジニウムブロマイド、1−n−ヘキシルピリジニウムブロマイド、1−n−オクチルピリジニウムブロマイド、1−n−ドデシルピリジニウムブロマイド、1−フェニルピリジニウムブロマイド、1−メチルピコリニウムブロマイド、1−エチルピコリニウムブロマイド、1−n−ブチルピコリニウムブロマイド、1−n−ヘキシルピコリニウムブロマイド、1−n−オクチルピコリニウムブロマイド、1−n−ドデシルピコリニウムブロマイド、1−フェニルピコリニウムブロマイド等が挙げられる。好ましくはテトラ−n−ブチルアンモニウムブロマイド、トリエチルベンジルアンモニウムクロライドである。
【0020】
第4級ホスホニウム塩の具体例としては、テトラメチルホスホニウムクロライド、テトラメチルホスホニウムブロマイド、テトラエチルホスホニウムクロライド、テトラエチルホスホニウムブロマイド、テトラ−n−ブチルホスホニウムクロライド、テトラ−n−ブチルホスホニウムブロマイド、テトラ−n−ブチルホスホニウムヨーダイド、テトラ−n−ヘキシルホスホニウムブロマイド、テトラ−n−オクチルホスホニウムブロマイド、メチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、メチルトリフェニルホスホニウムヨーダイド、エチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、エチルトリフェニルホスホニウムヨーダイド、n−ブチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、n−ブチルトリフェニルホスホニウムヨーダイド、n−ヘキシルトリフェニルホスホニウムブロマイド、n−オクチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、テトラフェニルホスホニウムブロマイド、テトラキスヒドロキシメチルホスホニウムクロライド、テトラキスヒドロキシメチルホスホニウムブロマイド、テトラキスヒドロキシエチルホスホニウムクロライド、テトラキスヒドロキシブチルホスホニウムクロライド等が挙げられる。好ましくはテトラ−n−ブチルホスホニウムブロマイドである。
【0021】
第3級スルホニウム塩の具体例としては、トリメチルスルホニウムブロマイド、トリエチルスルホニウムブロマイド、トリ−n−ブチルスルホニウムクロライド、トリ−n−ブチルスルホニウムブロマイド、トリ−n−ブチルスルホニウムヨーダイド、トリ−n−ブチルスルホニウムテトラフルオロボーレート、トリ−n−ヘキシルスルホニウムブロマイド、トリ−n−オクチルスルホニウムブロマイド、トリフェニルスルホニウムクロライド、トリフェニルスルホニウムブロマイド、トリフェニルスルホニウムヨーダイド等が挙げられる。
第2級ヨードニウム塩の具体例としては、ジフェニルヨードニウムクロライド、ジフェニルヨードニウムブロマイド、ジフェニルヨードニウムヨーダイド等が挙げられる。
【0022】
過酸化物の具体例としては、メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド、1,1−ジ(tert−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ジ(tert−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ジ(tert−ブチルパーオキシ)−2−メチルシクロヘキサン、1,1−ジ(tert−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ブタン、n−ブチル−4,4−ジ(tert−ブチルパーオキシ)バレレート、2,2−ジ〔4,4−ジ(tert−ブチルパーオキシ)シクロヘキシル〕プロパン等のパーオキシケタール、p−メンタハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、tert−ブチルハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド、ジ(2−tert−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、tert−クミルパーオキサイド、ジ−tert−ヘキシルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)−3−ヘキシン等のジアルキルパーイキサイド、ジイソブチリルパーオキサイド、ジ(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイド、ジ(3−メチルベンゾイル)パーオキサイド、ベンゾイル(3−メチルベンゾイル)パーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド、ジ(4−メチルベンゾイル)パーオキサイド等のジアシルパーオキサイド、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ(4−tert−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート、ジアリルパーオキシジカーボネート、ジ−n−ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジミリスチルパーオキシジカーボネート等のパーオキシジカーボネート、クミルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、tert−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、tert−ブチルパーオキシネオデカノエート、tert−ブチルパーオキシネオヘプタノエート、tert−ヘキシルパーオキシピバレート、tert−ブチルパーオキシピバレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、tert−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、tert−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、tert−ブチルパーオキシマレイン酸、tert−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、tert−ブチルパーオキシラウレート、tert−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、tert−ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、tert−ブチルパーオキシアセテート、tert−ブチルパーオキシ−3−メチルベンゾエート、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、tert−ブチルパーオキシネオベンゾエート、クミルパーオキシネオヘキサノエート、tert−ヘキシルパーオキシネオヘキサノエート、tert−ブチルパーオキシネオヘキサノエート、等のパーオキシエステル、tert−ブチルパーオキシアリルモノカーボネート、3,3’,4,4’−テトラ(tert−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン等が挙げられる。好ましくは、ジ(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシネオデカノエート、tert−ヘキシルパーオキシピバレート、tert−ブチルパーオキシピバレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、tert−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートである。より好ましくはtert−ブチルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートである。
【0023】
アゾ化合物の具体例としては、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−シクロプロピルシクロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、1−〔(1−シアノ−1−メチルエチル)アゾ〕ホルムアミド、2−フェニルアゾ−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルプロパン)および2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)等が挙げられる。
【0024】
以上具体的な化合物を例示したが、これらに限定されるわけではなく、またこれらは単独でも2種以上を混合して使用しても構わない。好ましくは、複素環を有するアミン、ホスフィン、第4級アンモニウム塩、第4級ホスホニウム塩、第3級スルホニウム塩、および第2級ヨードニウム塩の中から選ばれる少なくとも1種以上の化合物と、過酸化物、アゾ化合物の中から選ばれる少なくとも1種以上の化合物の組み合わせることである。より好ましくは、複素環を有するアミン、ホスフィン、第4級アンモニウム塩、および第4級ホスホニウム塩の中から選ばれる少なくとも1種以上の化合物と、過酸化物、アゾ化合物中から選ばれる少なくとも1種以上の化合物の組み合わせることである。さらに好ましくは、複素環を有するアミン、第4級アンモニウム塩、および第4級ホスホニウム塩の中から選ばれる少なくとも1種以上の化合物と、過酸化物の中から選ばれる少なくとも1種以上の化合物の組み合わせることであり、最も好ましくは複素環を有するアミン、4級ホスホニウム塩の中から選ばれる少なくとも1種以上の化合物と、過酸化物中から選ばれる少なくとも1種以上の化合物の組み合わせることであり、中でも複素環を有するアミンの中から選ばれる少なくとも1種以上の化合物と、過酸化物中から選ばれる少なくとも1種以上の化合物の組み合わせることである。
【0025】
触媒の添加量は光学材料用組成物100重量部に対して0.002から6重量部であり、好ましくは0.01から4重量部である。好ましい組み合わせを用いた場合、アミン、ホスフィン、第4級アンモニウム塩、第4級ホスホニウム塩、第3級スルホニウム塩、および第2級ヨードニウム塩中から選ばれる少なくとも1種以上の化合物の添加量は光学材料用組成物100重量部に対して0.001から3重量部、過酸化物、アゾ化合物の中から選ばれる少なくとも1種以上の化合物の添加量は光学材料用組成物100重量部に対して0.001から3重量部である。より好ましい添加量は、アミン、ホスフィン、第4級アンモニウム塩、第4級ホスホニウム塩、第3級スルホニウム塩、および第2級ヨードニウム塩中から選ばれる少なくとも1種以上の化合物の添加量は組成物100重量部に対して0.005から2重量部、過酸化物、アゾ化合物の中から選ばれる少なくとも1種以上の化合物の添加量は組成物100重量部に対して0.005から2重量部である。
【0026】
本発明の組成物を重合硬化して光学材料を得る際、周知の酸化防止剤、紫外線吸収剤、ブルーイング剤等の添加剤を加えて、得られる材料の実用性をより向上せしめることはもちろん可能である。
【0027】
紫外線吸収剤の好ましい例としては、サリチル酸系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、シアノアクリレート系化合物等が挙げられる。それらの具体例としては、サリチル酸系化合物としては、フェニルサリシレート、p−tert−ブチルフェニルサリシレート、p−オクチルフェニルサリシレート;ベンゾフェノン系化合物としては、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ベンゾイロキシベンゾフェノン、2,2,4,4−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2−ジヒドロキシ−4,4−ジメトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン、ビス(2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイルフェニル)メタン、1,4−ビス(4−ベンゾイル−3−ヒドロキシフェノキシ)ブタン;ベンゾトリアゾール系化合物としては、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、5−クロロ−2−(3,5−ジ−tert−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3−tert−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−tert−ペンチル−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−tert−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−オクチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−tert−アミル−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−メタアクリロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−3−(3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5−メチルフェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス〔4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール〕;シアノアクリレート系化合物としては、2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、エチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート等が挙げられる。中でも好ましい化合物は、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物であり、最も好ましい化合物はベンゾトリアゾール系化合物である。特に好ましい化合物の具体例は2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、5−クロロ−2−(3,5−ジ−tert−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3−tert−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−tert−ペンチル−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−tert−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−オクチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾールである。これらは単独でも2種類以上を混合して使用してもかまわない。
ブルーイング剤の好ましい例としてはアントラキノン系化合物が挙げられる。これらの酸化防止剤、紫外線吸収剤およびブルーイング剤の添加量は、通常、組成物100重量部に対してそれぞれ0.000001〜5重量部である。
【0028】
本発明の光学材料用組成物が重合中に型から剥がれやすい場合は、周知の外部および/または内部密着性改善剤を使用または添加して、得られる硬化物と型の密着性を向上せしめることも可能である。密着性改善剤としては、周知のシランカップリング剤やチタネート化合物類などがあげられ、これらは単独でも、2種類以上を混合して用いてもかまわない。添加量は通常、光学材料用組成物100重量部に対して0.0001〜5重量部である。逆に、本発明の光学材料用組成物が重合後に型から剥がれにくい場合は、周知の外部および/または内部離型剤を使用または添加して、得られる硬化物の型からの離型性を向上せしめることも可能である。離型剤とは、フッ素系ノニオン界面活性剤、シリコン系ノニオン界面活性剤、燐酸エステル、酸性燐酸エステル、オキシアルキレン型酸性燐酸エステル、酸性燐酸エステルのアルカリ金属塩、オキシアルキレン型酸性燐酸エステルのアルカリ金属塩、高級脂肪酸の金属塩、高級脂肪酸エステル、パラフィン、ワックス、高級脂肪族アミド、高級脂肪族アルコール、ポリシロキサン類、脂肪族アミンエチレンオキシド付加物などがあげられ、これらは単独でも、2種類以上を混合して用いてもかまわない。添加量は通常、光学材料用組成物100重量部に対して0.0001〜5重量部である。
【0029】
本発明の光学材料用組成物を重合硬化して光学材料を製造する方法は、さらに詳しく述べるならば以下の通りである。前述した各組成成分、酸化防止剤、紫外線吸収剤、重合触媒、ラジカル重合開始剤、密着性改善剤、離型剤などの添加剤を、全て同一容器内で同時に撹拌下に混合しても良く、また各原料を段階的に添加混合しても良く、さらに数成分を別々に混合後さらに同一容器内で再混合しても良い。各原料および副原料はいかなる順序で混合してもかまわない。混合にあたり、設定温度、これに要する時間等は基本的には各成分が十分に混合される条件であれば良い。
【0030】
本発明では光学材料用組成物に対し、あらかじめ脱気処理を行うが、これにより光学材料の高度な透明性が達成される場合がある。脱気処理は、組成成分の一部もしくは全部と反応可能な化合物、重合触媒、添加剤の混合前、混合時あるいは混合後に、減圧下に行う。好ましくは、混合時あるいは混合後に、減圧下に行う。処理条件は、0.001〜50torrの減圧下、1分〜24時間、0℃〜100℃で行う。減圧度は、好ましくは0.005〜25torrであり、より好ましくは0.01〜10torrであり、これらの範囲で減圧度を可変しても構わない。脱気時間は、好ましくは5分〜18時間であり、より好ましくは10分〜12時間である。脱気の際の温度は、好ましくは5℃〜80℃であり、より好ましくは10℃〜60℃であり、これらの範囲で温度を可変しても構わない。脱気処理の際は、撹拌、気体の吹き込み、超音波などによる振動などによって、光学材料用組成物の界面を更新することは、脱気効果を高める上で好ましい操作である。脱気処理により、除去される成分は、主に硫化水素等の溶存ガスや低分子量のチオール等の低沸点物等である。さらには、これらの光学材料用組成物および/または混合前の各原料を0.05〜10μm程度の孔径を有するフィルターで固形物等を濾過し精製することは本発明の光学材料の品質をさらに高める上からも好ましい。
【0031】
このようにして得られた光学材料用組成物は、ガラスや金属製の型に注入し、加熱や紫外線などの活性エネルギー線の照射によって重合硬化反応を進めた後、型から外し製造される。好ましくは、加熱によって重合硬化する。この場合、硬化時間は0.1〜200時間、通常1〜100時間であり、硬化温度は−10〜160℃、通常−10〜140℃である。重合は所定の重合温度で所定時間ホールドし、0.1℃〜100℃/時間で昇温し、0.1℃〜100℃/時間で降温およびこれらの組み合わせで行う。また、重合終了後、硬化物を50〜150℃の温度で10分〜5時間程度アニール処理を行う事は、本発明の光学材料の歪を除くために好ましい処理である。さらに必要に応じて染色、ハードコート、耐衝撃性コート、反射防止、防曇性付与等表面処理を行うことができる。
【実施例】
【0032】
以下の実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、得られたレンズの評価は以下の方法で行った。
屈折率:アタゴ社製アッベ屈折計NAR−4Tを用い、d線での屈折率とアッベ数を25℃で測定した。
耐熱性:セイコーインスツルメンツ株式会社製熱機械的分析装置TMA/SS6000を用い、直径1mmのピンを試料に乗せて10gの荷重を与えて30℃から昇温してTMA測定を行い、軟化点温度を測定した。軟化点温度が120℃以上のものをA、100〜120℃のものをB、80〜100℃のものをC、80℃以下のものをDとした。
比重:アルファーミラージュ株式会社製電子比重計ED−120Tを用い、25℃で測定した。
強度:厚さ2.5mmの平板に縁から3mmの位置に直径2mmの穴を開け、この穴にピンを差し込み、このピンを引っ張り破壊したときの強度を測定した。破壊強度が1000gf以上のものをA、600gf以上1000gf未満のものをB、300gf以上600gf未満のものをC、300g未満のものをDとした。
外観、透明性:目視で観察した。
【0033】
実施例1
(a)化合物としてチオグリシジルメタクリレート90重量部、(b)化合物としてスチレン10重量部に触媒としてメチルイミダゾール1重量部、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート1重量部を加え室温で攪拌し均一液とした。次いでこれを10torrで10分間脱気した後ろ過し、レンズ用モールドに注入し、オーブン中で30℃から120℃まで22時間かけて昇温して重合硬化させた。その後型から外し、110℃で1時間加熱してアニール処理を行った。得られたレンズは透明であり、良好な外観であった。物性等を測定し、その結果を表1に示した。
【0034】
実施例2〜20
表1に示す組成、触媒を用いて実施例1と同様に重合硬化させてレンズを得た。得られたレンズは透明であり、良好な外観であった。屈折率、耐熱性、比重、強度を測定し、その結果を表1に示した。
【0035】
【表1】

【0036】
表1の化合物略号
(a)化合物
TGMA:チオグリシジルメタクリレート
ATGE:アリルチオグリシジルエーテル
EPTMS:3−(β−エピチオプロピルチオメチル)スチレンと4−(β−エピチオプロピルチオメチル)スチレンの50/50(重量比)の混合物
(b)化合物
ST:スチレン
DVB:ジビニルベンゼン
αMS:α−メチルスチレン
(c)化合物
BMES:ビス(2−メルカプトエチル)スルフィド
XDT:p−キシリレンジチオール
触媒
PR :ピペリジン
MI :N−メチルイミダゾール
EBAC:トリエチルベンジルアンモニウムクロライド
TBP :トリブチルホスフィン
TBPB:テトラブチルホスホニウムブロマイド
POO :1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート
PBO :tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート
AIBN:アゾビスイソブチロニトリル
PBND:tert−ブチルパーオキシネオデカノエート
【0037】
比較例1
チオグリシジルメタクリレート100重量部に触媒としてメチルイミダゾール1重量部、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート1重量部を加え室温で攪拌し均一液とした。次いでこれを10torrで10分間脱気した後ろ過し、レンズ用モールドに注入し、オーブン中で30℃から120℃まで22時間かけて昇温して重合硬化させた。その後型から外し、110℃で1時間加熱してアニール処理を行った。得られたレンズは透明であり、良好な外観であった。屈折率、耐熱性、比重、強度を測定し、その結果を表2に示した。
【0038】
比較例2〜6
表2に示す組成、触媒を用いて実施例1と同様に重合硬化させてレンズを得た。得られたレンズは透明であり、良好な外観であった。屈折率、耐熱性、比重、強度を測定し、その結果を表2に示した。
【0039】
比較例7
1,9−ノナンジオールメタクリレート30重量部、ラウリルメタクリレート60重量部、α−メチルスチレン10重量部に触媒としてtert−ブチルパーオキシネオデカノエート1.2重量部を加え室温で攪拌し均一液とした。次いでこれを10torrで10分間脱気した後ろ過し、レンズ用モールドに注入し、オーブン中50℃で10時間、60℃で8時間、80℃で3時間、100℃で2時間加熱して重合硬化させた。その後型から外し、110℃で1時間加熱してアニール処理を行った。得られたレンズは透明であり、良好な外観であった。屈折率、耐熱性、比重、強度を測定し、その結果を表2に示した。
【0040】
【表2】

【0041】
表2の化合物略号
TGMA:チオグリシジルメタクリレート
ATGE:アリルチオグリシジルエーテル
EPTMS:3−(β−エピチオプロピルチオメチル)スチレンと4−(β−エピチオプロピルチオメチル)スチレンの50/50(重量比)の混合物
ST:スチレン
BPAMA:2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−(2−メタクリロイルオキシ)フェニル)プロパン
PETP:ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)
MXDI:m−キシリレンジイソシアネート
NDM:1,9−ノナンジオールメタクリレート
LMA:ラウリルメタクリレート
αMS:α−メチルスチレン
表2の触媒略号
MI :N−メチルイミダゾール
POO :1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート
PBND:tert−ブチルパーオキシネオデカノエート
BTC :ジブチルスズジクロライド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)アクリロイル基、メタクリロイル基、アリル基、およびビニル基からなる群より選択されるいずれかの基と、β−エピチオプロピル基とをそれぞれ1分子中に1個以上有する化合物と、(b)スチレン骨格を有する化合物を含有する光学材料用組成物。
【請求項2】
(a)アクリロイル基、メタクリロイル基、アリル基、およびビニル基からなる群より選択されるいずれかの基と、β−エピチオプロピル基とをそれぞれ1分子中に1個以上有する化合物が下記(1)式で表される化合物である請求項1記載の光学材料用組成物。
【化1】

(1)
((1)式中、XはO(CH、S(CH、または(CHを示し、nは0から6の整数を示す。Yはアクリロイル基、メタクリロイル基、アリル基、またはビニル基を示す。)
【請求項3】
(1)式で表される化合物がチオグリシジルメタクリレート((1)式においてXがO、Yがメタクリロイル基)である請求項2記載の光学材料用組成物。
【請求項4】
(1)式で表される化合物がアリルチオグリシジルエーテル((1)式においてXがO、Yがアリル基)である請求項2記載の光学材料用組成物。
【請求項5】
(b)スチレン骨格を有する化合物がスチレン、α−メチルスチレン、およびジビルベンゼンから選ばれる1種以上である請求項1記載の光学材料用組成物。
【請求項6】
さらに(c)チオール基を1分子中に1個以上有する化合物を含む請求項1記載の光学材料用組成物。
【請求項7】
(c)チオール基を1分子中に1個以上有する化合物が、ビス(2−メルカプトエチル)スルフィド、ペンタエリスリトールテトラキス(2−メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、2,5−ビス(メルカプトメチル)−1,4−ジチアン、1,2−ビス(2−メルカプトエチルチオ)−3−メルカプトプロパン、4,8−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、4,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、5,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、1,1,3,3−テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1,3−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、および1,4−ビス(メルカプトメチル)ベンゼンから選ばれる1種以上である請求項6記載の光学材料用組成物。
【請求項8】
請求項1記載の光学材料用組成物を、硬化触媒の存在下重合硬化して得られる光学材料。
【請求項9】
硬化触媒が、複素環を有するアミン、ホスフィン、第4級アンモニウム塩、第4級ホスホニウム塩、第3級スルホニウム塩、第2級ヨードニウム塩、過酸化物およびアゾ化合物の中から選ばれる少なくとも1種以上の化合物である請求項8記載の光学材料。
【請求項10】
硬化触媒が、複素環を有するアミン、ホスフィン、第4級アンモニウム塩、第4級ホスホニウム塩、第3級スルホニウム塩、第2級ヨードニウム塩中から選ばれる少なくとも1種以上の化合物と、過酸化物、アゾ化合物の中から選ばれる少なくとも1種以上の化合物の組み合わせである請求項8記載の光学材料。
【請求項11】
請求項8記載の光学材料からなる光学レンズ。
【請求項12】
請求項1記載の光学材料用組成物を、重合硬化して得られる光学材料の製造方法。

【公開番号】特開2009−84545(P2009−84545A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−31796(P2008−31796)
【出願日】平成20年2月13日(2008.2.13)
【出願人】(000004466)三菱瓦斯化学株式会社 (1,281)
【Fターム(参考)】