説明

光学用樹脂溶液製膜用積層ポリエステルフィルム

【課題】
本発明は、光学用樹脂フィルムの離型性、輝点欠点および透明性に優れた光学用樹脂溶液製膜用積層ポリエステルフィルムを提供する。
【解決手段】
ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、組成物(A)と炭素数が12〜25のアルキル鎖を有するアクリル系樹脂(B)からなる積層膜が設けられた積層ポリエステルフィルムであって、その組成物(A)が、ポリチオフェンとポリ陰イオンからなる組成物および/またはポリチオフェン誘導体とポリ陰イオンからなる組成物であり、かつ、積層ポリエステルフィルム中に含まれる100μm以上の内部異物が10個/m未満であることを特徴とする光学用樹脂溶液製膜用積層ポリエステルフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学用樹脂溶液製膜用積層ポリエステルフィルムに関するものであり、更に詳しくは、光学用樹脂フィルムの離型性と透明性に優れ、かつ輝点欠点を少なくすることができる光学用樹脂溶液製膜用積層ポリエステルフィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置や光ディスクなどに用いられる光学用途のフィルムには、無色透明で複屈折が小さいことに加えて、高耐熱性や低吸湿性などの特性が求められる。近年、光学用樹脂として、ポリメチルメタクリレート系樹脂、ポリカーボネートや脂環式ポリオレフィンが注目されている。これらの樹脂は、優れた耐熱性、透明性および低吸湿性を有する材料である上に、光弾性係数の小さいポリマーなので、これらのポリマーを用いたフィルムはレターデーションのむらが生じにくく、部品の軽量化に好ましい材料である。
【0003】
ポリカーボネートや脂環式ポリオレフィンなどの光学用樹脂を用いたフィルムの成形方法としては、これまで主に溶融押出し法や溶融射出法などの溶融法が用いられてきた。溶融法と異なるフィルム成形方法として、溶液法が知られている。溶液法は、樹脂を溶媒に溶解もしくは分散させた後、支持体(キャリア)上に流延や塗布などを行い乾燥しフィルム成形を行う方法であり、溶融法のように樹脂に高温をかける必要がなく温和な条件で成形でき、また成形中のフィルムは応力の影響を受けにくいために、レターデーションなどの光学特性の面内ばらつきが少ないフィルム成形体が得られるという利点がある。
【0004】
また、溶液法は、厚みむらが小さく、かつ表面性の高いフィルムが得られることから、特に光学フィルムの製造法として優れている成形方法である。
【0005】
これらの樹脂を溶液製膜する場合、溶媒としてトルエンを用いる方法が知られているが、トルエンの沸点は100℃以上と高いので、残存揮発成分が少ない最終製品を工業的に生産するには高温で乾燥しなけらばならないため、樹脂が着色したり平面性が悪化したりすることがある(特許文献1参照)。
【0006】
一方、溶解に低沸点で揮発性の高い溶媒を使用すると、高温乾燥の必要はなくなるが、溶液からの溶媒の揮発が起こりやすく、支持体上での乾燥途中にフィルムが支持体から自然剥離してしまうという問題がある。支持体からのフィルムの自然剥離は、連続生産ができない、あるいはロール状に巻取ることができないという問題につながる。
【0007】
一つの解決策として、支持体の表面粗さを調節して剥離を起こりにくくする方法がある。しかしながら、透明性の高い光学フィルムを得るためには、キャスティング支持体の表面が製品のフィルムに転写しないよう、支持体表面はできるだけ平滑であることが好ましいので、支持体の表面粗さの調節には自ずと限界がある(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平9−120001号公報
【特許文献2】特開2002−326240号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述の技術ではポリカーボネートや脂環式ポリオレフィンを揮発性の高い溶媒に溶解し、溶液法にてフィルム化する方法は、透明性の高いフィルムを安定的に得るという点で問題があり、工業的に長尺フィルムを得る方法が確立されていなかった。
【0009】
そこで本発明の目的は、光学用樹脂フィルムの離型性と透明性に優れ、かつ輝点欠点を少なくすることができる光学用樹脂溶液製膜用積層ポリエステルフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の光学用樹脂溶液製膜用積層ポリエステルフィルムは、ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、組成物(A)と炭素数が12〜25のアルキル鎖を有するアクリル系樹脂(B)からなる積層膜が設けられた積層ポリエステルフィルムであって、該組成物(A)が、ポリチオフェンとポリ陰イオンからなる組成物および/またはポリチオフェン誘導体とポリ陰イオンからなる組成物であり、かつ、積層ポリエステルフィルム中に含まれる粒径100μm以上の内部異物が10個/m未満であることを特徴とする光学用樹脂溶液製膜用積層ポリエステルフィルムである。
【0011】
本発明の光学用樹脂溶液製膜用積層ポリエステルフィルムの好ましい態様によれば、 上記積層ポリエステルフィルムの少なくとも片面の3次元中心線平均粗さ(SRa)は3〜20nmであり、3次元十点平均粗さ(SRz)は1000nm以下である。
【0012】
また、本発明の光学用樹脂溶液製膜用積層ポリエステルフィルムの好ましい態様によれば、上記積層膜中に、さらにエポキシ系架橋剤および/またはその反応生成物(C)が含まれてなり、かつ、固形分重量比で、組成物(A)に対してエポキシ系架橋剤および/またはその反応生成物(C)の総量が50〜95重量%であることが含まれる。
【0013】
また、本発明の光学用樹脂溶液製膜用積層ポリエステルフィルムの好ましい態様によれば、上記積層膜中に、炭素数が12〜25のアルキル鎖を有するアクリル系樹脂(B)が、組成物(A)とエポキシ系架橋剤および/またはその反応生成物(C)の合計100重量部に対して、10〜40重量部含まれている。
【0014】
本発明の光学用樹脂溶液製膜用積層ポリエステルフィルムは、ポリカーボネートまたは脂環式ポリオレフィンの溶液製膜に好適に用いられる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の光学用樹脂溶液製膜用積層ポリエステルフィルムは、平面性、透明性および電防止性に優れ、かつハンドリング性に優れた光学用樹脂溶液製膜用積層ポリエステルフィルムとして非常に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の光学用樹脂溶液製膜用積層ポリエステルフィルムは、ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、ポリチオフェンとポリ陰イオンからなる組成物および/またはポリチオフェン誘導体とポリ陰イオンからなる組成物(組成物(A))と、炭素数が12〜25のアルキル鎖を有するアクリル系樹脂(B)からなる積層膜が設けられた積層ポリエステルフィルムである。
【0017】
本発明で用いられる積層ポリエステルフィルムを構成するポリエステルとは、エステル結合を主鎖の主要な結合鎖とする高分子化合物の総称であり、好ましいポリエステルは、エチレンテレフタレート、プロピレンテレフタレート、エチレン−2,6−ナフタレート、ブチレンテレフタレート、プロピレン−2,6−ナフタレート、およびエチレン−α,β−ビス(2−クロロフェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボキシレートなどから選ばれた少なくとも1種の構成成分を主要構成成分とするものである。これら構成成分は、1種のみ用いても、2種以上併用してもよいが、中でも品質および経済性などを総合的に判断すると、エチレンテレフタレートを主要構成成分とするポリエステルを用いることが特に好ましい。また、これらポリエステルには、更に他のジカルボン酸成分やジオール成分が一部、好ましくは20モル%以下共重合されていてもよい。
【0018】
更に、このポリエステル中には、各種添加剤、例えば、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、有機の易滑剤、顔料、染料、有機または無機の微粒子、充填剤、帯電防止剤および核剤などが、適宜選択して添加されていてもよい。
【0019】
上述したポリエステルの極限粘度(25℃のo−クロロフェノール中で測定)は、0.4〜1.2dl/gの範囲にあることが好ましく、より好ましくは0.5〜0.8dl/gの範囲である。
【0020】
積層ポリエステルフィルムの厚みは、特に限定されるものではなく用途に応じて適宜選択されるが、機械的強度およびハンドリング性などの点から、通常好ましくは1〜500μmであり、より好ましくは10〜300μmであり、最も好ましくは30〜200μmである。
【0021】
光学用樹脂溶液製膜用の積層ポリエステルフィルムは、光学用樹脂を溶液製膜する際に用いられる基材フィルムでとして用いられるフィルムであり、本発明の場合、特定のポリエステルフィルムからなり、積層膜が設けられた状態においては二軸配向されたものであることが好ましい。二軸配向されたポリエステルフィルムとは、一般に、未延伸状態のポリエステルシートまたはフィルムを長手方向および幅方向に各々2.5〜5倍程度延伸され、その後、熱処理が施されて、結晶配向が完了されたものであり、広角X線回折で二軸配向のパターンを示すものをいう。
【0022】
また、ポリエステルフィルムは、共押出による複合フィルムであってもよい。特に2層以上の複合フィルムとしたとき、例えば、スキン層に易滑性の微粒子を添加し、コア層は無粒子とするなど、易滑性と表面粗さを両立しやすい。更に、3層複合フィルムとしたとき、例えば、スキン層に易滑性の微粒子を添加し、コア層は無粒子あるいは回収原料を用いるなどした場合でも、易滑性と表面粗さを両立しやすいなどの利点がある。一方、得られたフィルムを各種の方法で貼り合わせて複合フィルムとして用いることもできる。
【0023】
本発明において、ポリエステルフィルム上に設けられる積層膜は、組成物(A)と炭素数が12〜25のアルキル鎖を有するアクリル系樹脂(B)からなる積層膜であり、上記組成物(A)は、ポリチオフェンとポリ陰イオンからなる組成物および/またはポリチオフェン誘導体とポリ陰イオンからなる組成物である。
【0024】
本発明においては、さらに、エポキシ架橋剤および/またはその反応生成物(C)を含んだ状態で、すなわち、上記積層膜中の組成物(A)と炭素数が12〜25のアルキル鎖を有するアクリル系樹脂(B)とエポキシ架橋剤および/またはその反応生成物(C)の含有量が、積層膜全体の50重量%以上であることが好ましく、より好ましくは70重量%以上であり、最も好ましくは80重量%以上である。
【0025】
本発明において、積層膜を構成する組成物(A)は、好ましくは、ポリチオフェンおよびポリチオフェン誘導体を含んでなるものである。
【0026】
本発明において、積層ポリエステルフィルムの積層膜に用いることのできる組成物(A)は、下記の一般式(1)
【0027】
【化1】

【0028】
および/または、下記の一般式(2)
【0029】
【化2】

【0030】
で示した化合物を、ポリ陰イオンの存在下で重合することによって得ることができる。
【0031】
上記一般式(1)において、r1とr2は、それぞれ独立に、水素元素、炭素数1〜12の脂肪族炭化水素基、脂環族炭化水素基、もしくは芳香族炭化水素基を表し、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、シクロへキシレン基、ベンゼン基などである。化2では、nは1〜4の整数である。
【0032】
本発明では、上記一般式(2)で表される構造式からなるポリチオフェンおよび/またはポリチオフェン誘導体(nは1〜4の整数)を用いることが好ましく、例えば、n=1(メチレン基)、n=2(エチレン基)、n=3(プロピレン基)の化合物が好ましい。中でも特に好ましい化合物は、n=2のエチレン基の化合物、すなわち、ポリ−3,4−エチレンジオキシチオフェンである。
【0033】
本発明では、ポリチオフェンおよび/またはポリチオフェン誘導体として、例えば、チオフェン環の3位と4位の位置が置換された構造を有する化合物が例示され、かつ、上記したとおり該3位と4位の炭素原子に酸素原子が結合した化合物が例示される。該炭素原子に直接、水素原子あるいは炭素原子が結合したものは、塗液の水性化が容易でない場合がある。
【0034】
次に、本発明において、積層ポリエステルフィルムの積層膜に用いられる組成物(A)のうち、ポリ陰イオンについて説明する。
【0035】
本発明において組成物(A)で用いられるポリ陰イオンは、遊離酸状態の酸性ポリマーであり、例えば、高分子カルボン酸、あるいは、高分子スルホン酸、ポリビニルスルホン酸などが挙げられる。高分子カルボン酸としては、例えば、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸およびポリマレイン酸が例示され、高分子スルホン酸としては、例えば、ポリスチレンスルホン酸が例示され、特に、ポリスチレンスルホン酸が導電性の点で最も好ましく用いられる。なお、本発明において、遊離酸は、一部が中和された塩の形をとってもよい。
【0036】
これらポリ陰イオンを重合時に用いることにより、本来、水に不溶なポリチオフェン系化合物を水分散あるいは水性化しやすく、かつ、酸としての機能がポリチオフェン系化合物のドーピング剤としての機能も果たすものと考えられる。
【0037】
本発明においては、高分子カルボン酸や高分子スルホン酸は、共重合可能な他のモノマー、例えば、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルおよびスチレンなどと共重合した形で用いることもできる。
【0038】
ポリ陰イオンとして用いられる高分子カルボン酸や高分子スルホン酸の分子量は、特に限定されないが、塗剤の安定性や導電性の点で、その重量平均分子量は1000〜1000000が好ましく、より好ましくは5000〜150000である。本発明の特性を阻害しない範囲で、一部、リチウム塩やナトリウム塩などのアルカリ塩やアンモニウム塩などを含んでもよい。中和された塩の場合も、非常に強い酸として機能するポリスチレンスルホン酸とアンモニウム塩は、中和後の平衡反応の進行により、酸性サイドに平衡がずれることが分かっており、これにより、ドーパントとして作用するものと考える。
【0039】
本発明においては、ポリチオフェンまたはポリチオフェン誘導体に対して、ポリ陰イオンは、固形分重量比で過剰に存在させた方が導電性の点で好ましく、ポリチオフェンおよび/またはポリチオフェン誘導体が1重量部に対し、ポリ陰イオンは、1重量部より多く、5重量部以下が好ましく、より好ましくは1重量部より多く、3重量部以下である。もちろん、本発明の効果を損なわない範囲で、組成物(A)中に他の成分が用いられていてもよい。
【0040】
また、上記した組成物(A)は、例えば、特開平6−295016号公報、特開平7−292081号公報、特開平1−313521号公報、特開2000−6324号公報、ヨーロッパ特許EP602713号および米国特許US5391472号などに記載の方法により製造することができるが、これら以外の方法で製造したものであってもよい。例えば、ポリ−3,4−エチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸からなる複合体の水性塗液として、Bayer社/H.C.Starck社(ドイツ国)から“Baytron”Pとして販売されているものなどを用いることができる。
【0041】
本発明で用いられる組成物(A)は、例えば、3,4−ジヒドロキシチオフェン−2,5−ジカルボキシエステルのアルカリ金属塩を出発物質として、3,4−エチレンジオキシチオフェンを得た後、ポリスチレンスルホン酸水溶液にペルオキソ二硫酸カリウムと硫酸鉄と、先に得た3,4−エチレンジオキシチオフェンを導入し、反応させ、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)などのポリチオフェンに、ポリスチレンスルホン酸などのポリ陰イオンが複合体化した組成物を得ることができる。
【0042】
本発明において、積層ポリエステルフィルムの積層膜に用いられる炭素数が12〜25のアルキル鎖を有するアクリル系樹脂(B)としては、例えば、炭素数12〜25個のアルキル基を側鎖に持つアクリル系モノマーと、該アクリル系モノマーと共重合可能なモノマーとの共重合アクリル系樹脂が挙げられる。
【0043】
共重合アクリル系樹脂中の炭素数12〜25個のアルキル基を側鎖に持つアクリル系モノマーの共重合比率は、35重量%以上のものが好ましい。なお、該共重合量は、離型性や共重合化などの点でより好ましくは35〜85重量%であり、最も好ましくは60〜80重量%である。
【0044】
このような炭素数が12〜25のアルキル鎖を側鎖に持つアクリル系モノマーとしては、上記の要件を満たすものであれば特に限定されるものではないが、例えば、アクリル酸ドデシル、アクリル酸トリデシル、アクリル酸テトラデシル、アクリル酸ペンタデシル、アクリル酸ヘキサデシル、アクリル酸ヘプタデシル、アクリル酸オクタデシル、アクリル酸ノナデシル、アクリル酸エイコシル、アクリル酸ヘンエイコシル、アクリル酸ドコシル、アクリル酸トリコシル、アクリル酸テトラコシル、アクリル酸ペンタコシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸エイコシル、およびタクリル酸ペンタコシルなどの長鎖アルキル基含有アクリル系モノマーなどが好適に用いられる。なお、炭素数が25を超えるものについては工業的に容易に入手することが困難であり、炭素数が25程度のものが上限である。
【0045】
本発明で用いられる長鎖アルキル基含有アクリル系樹脂は、環境面の配慮から、水系の塗剤を用いることが好ましく、例えば、エマルション化するために、他の共重合可能なモノマーとしては、下記のアクリル系モノマーやビニル系モノマーを用いることができる。モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エトキシエチル、アクリル酸2−メトキシエチル、アクリル酸2−ブトキシエチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、アクリロニトニル、メタクリロニトニル、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸、スチレン、イタコン酸、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、Nーメチロール(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシエチルリン酸エステル、ビニルスルホン酸ソーダ、スチレンスルホン酸ソーダ、および無水マレイン酸などを用いることができる。
【0046】
好ましい長鎖アルキル基含有アクリル系樹脂としては、ステアリルメタクリレート、ベヘニルメタクリレート、ベヘニルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、メタクリル酸、アクリル酸、およびメチルメタクリレートから選ばれる共重合体などが挙げられる。
【0047】
本発明において、積層ポリエステルフィルムの積層膜に用いることができるエポキシ系架橋剤および/またはその反応生成物(C)は特に限定されないが、本発明においては、分子量が1000以下であることが好適である。特に、エポキシ系架橋剤および/またはその反応生成物(C)を水溶性で分子量を1000以下とすることで、延伸工程での柔軟性や流動性が発現し、積層膜を形成する混合体の乾燥後の延伸追従性を高め、塗膜の亀裂による白化現象を抑制し、透明性が付与される。一方、例えば、分子量が大きくなり過ぎると、塗布、乾燥後の延伸時に塗膜に亀裂が入るなどの現象が発生し、透明性が低下する傾向がある。また、分子量を800以下、より好ましくは、600以下とすることで、組成物(A)や長鎖アルキル基含有アクリル系樹脂(B)とエポキシ系架橋剤および/またはその反応生成物(C)が、より相溶しやすくなり、透明性が向上する。
【0048】
本発明においてエポキシ系架橋剤および/またはその反応生成物(C)は、透明性、導電性などが向上するので、水溶性の架橋剤であることが好ましい。
【0049】
本発明において、水溶性の架橋剤とは、水溶率が好ましくは80%以上の架橋剤をいい、「水溶率」とは、23℃の温度で、架橋剤の固形分10部を90部の水に溶解したとき、架橋剤が溶解している割合をいう。すなわち、水溶率が80%とは、23℃の温度で、10部の架橋剤のうち80重量%が90部の水に溶解し、残りの20重量%の架橋剤が未溶解物として残っている状態を示す。また、水溶率100%とは用いた10部の架橋剤が90部の水に全て溶解している状態を表す。本発明において、エポキシ系架橋剤および/またはその反応生成物(C)は、水溶率が90%以上のものが好ましく、より好ましくは水溶率が100%である。水溶率が高いと塗液自体を水性化できるだけでなく、透明性や導電性の点でも優れたものとできる。
【0050】
上記したエポキシ系架橋剤および/またはその反応生成物(C)は、例えば、グリセリンなどの高沸点溶媒などの添加に比べ、ブロッキングをおこさず、熱処理工程を行うテンター内部の汚染や、大気汚染がないので、好適である。
【0051】
本発明の積層ポリエステルフィルムにおいて、エポキシ系架橋剤および/またはその反応生成物(C)の種類は特に限定されないが、例えば、ソルビトールポリグリシジルエーテル系、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル系、ジグリセロールポリグリシジルエーテル系、およびポリエチレングリコールジグリシジルエーテル系などを用いることができる。例えば、ナガセケムテック株式会社製エポキシ化合物“デナコール”(登録商標)(EX−611、EX−614、EX−614B、EX−512、EX−521、EX−421、EX−313、EX−810、EX−830、EX−850など)、坂本薬品工業株式会社製のジエポキシ・ポリエポキシ系化合物(SR−EG、SR−8EG、SR−GLGなど)、大日本インキ工業株式会社製エポキシ架橋剤“EPICLON” (登録商標)EM−85−75W、あるいはCR−5Lなどを好適に用いることができ、中でも、水溶性を有するものが好ましい。
【0052】
エポキシ系架橋剤および/またはその反応生成物(C)は、エポキシ当量(weight per epoxy equivalent)が100〜300WPEであるものが反応性の点で好ましく、エポキシ当量は、より好ましくは110〜200WPEである。
【0053】
本発明において、積層ポリエステルフィルムの積層膜製造に用いられる塗液は、好ましくは、実質的に水を主たる媒体とする水性の塗液である。本発明で好適に用いられる塗液は、塗布性の向上する、透明性の向上などの目的で、本発明の効果を阻害しない程度に適量の有機溶媒を含有してもよく、例えば、イソプロピルアルコール、t−ブチルセロソルブ、n−ブチルセロソルブ、エチルセロソルブ、アセトン、N−メチル−2−ピロリドン、エタノール、およびメタノールなどを好適に用いることができる。中でも、塗布性を向上させる点でイソプロピルアルコールを用いることが特に好ましく、その含有量は、塗液中に20重量%以下が好ましく、より好ましくは10重量%以下である。なお、塗液中に多量の有機溶媒を含有させると、いわゆるインラインコーティング法に適用した場合、予熱、乾燥、延伸および熱処理工程などを行うテンターにおいて、爆発の危険がある。
【0054】
本発明で用いられるエポキシ系架橋剤および/またはその反応生成物(C)は、積層膜の状態においては、積層膜を構成する成分に含まれる官能基と結合した状態であってもよいし、未反応の状態であってもよいし、部分的に架橋構造を形成したものであってもよい。エポキシ系架橋剤および/またはその反応生成物(C)は、積層膜の状態では、塗膜の強度や耐ブロッキング性やべたつき感、更には耐水性などの点で、架橋している状態が好ましい。なお、架橋は、他の成分に含まれる官能基と結合した状態でもよく、架橋剤自体の自己架橋構造であってもよい。
【0055】
また、本発明においては、複数の架橋剤の併用も好適に用いられ、例えば、エポキシ系架橋剤とメラミン系架橋剤、あるいは異なる種類のエポキシ系架橋剤の併用は、両者の特性が発現するので好ましい態様である。このとき用いられる架橋剤としては、例えば、メラミン系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アジリジン系架橋剤、アミドエポキシ化合物、チタンキレートなどのチタネート系カップリング剤、オキサゾリン系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、メチロール化あるいはアルキロール化した尿素系、アクリルアミド系などを用いることができる。
【0056】
本発明において、積層ポリエステルフィルムの積層膜は、積層膜中に、固形分重量比で、組成物(A)とエポキシ架橋剤および/またはその反応生成物(C)に対してエポキシ系架橋剤および/またはその反応生成物(C)が50〜95重量%であることが好ましい。例えば、エポキシ系架橋剤および/またはその反応生成物(C)が50重量%未満では導電性が発現しにくい場合がある。更に、エポキシ系架橋剤および/またはその反応生成物(C)が極端に少ない場合、例えば、10重量%未満などの場合、未処理のポリエステルフィルムなどと同様の絶縁体レベルとなり、かつ、塗膜の白化が大きく、透明性も悪い。一方、エポキシ系架橋剤および/またはその反応生成物(C)が95重量%を超えると透明性は良化するものの、導電性に寄与する組成物(A)の量が少なすぎ、導電性が発現しにくくなる。なお、本発明者らの検討によれば、エポキシ系架橋剤および/またはその反応生成物(C)が、50〜80重量%であることが透明性や導電性の点でより好ましく、さらに好ましくは60〜80重量%である。積層膜中のエポキシ系架橋剤および/またはその反応生成物(C)の含有量を、50〜90重量%とすることで、透明性と導電性が極めて高いレベルで両立させることが可能となる。
【0057】
一方、本発明において、積層ポリエステルフィルムの積層膜は、上記した組成物(A)やエポキシ系架橋剤および/またはその反応生成物(C)以外に、炭素数が12〜25のアルキル鎖を有するアクリル系樹脂(B)が含まれてなることが必要であり、組成物(A)とエポキシ系架橋剤および/またはその反応生成物(C)の合計100重量部に対して、5重量部以上添加することで離型性が発現するが、更に10〜40重量部添加させることで、極めて高度な離型性を付与することができる。さらに好ましくは15〜30重量%とすることで、高度な離型性を付与することができるだけでなく、加熱時のオリゴマー析出抑制性についても極めて高いレベルのものとすることができる。これは、ポリチオフェン系組成物(A)やエポキシ系架橋剤および/またはその反応生成物(C)などの親水性を有する化合物、すなわち物質の表面エネルギーが高いものと、炭素数が12〜25のアルキル鎖を有するアクリル系樹脂(B)などのような疎水性の化合物、すなわち物質の表面エネルギーが低いものとの両者の相分離現象によるものと推定している。特にインラインコート法のような高温での熱処理が可能なプロセスに適用することで、本現象がより顕著に発現するものと推定している。
【0058】
本発明において、積層ポリエステルフィルムの積層膜は、組成物(A)と炭素数が12〜25のアルキル鎖を有するアクリル系樹脂(B)を必須成分とし、更にエポキシ系架橋剤および/またはその反応生成物(C)が含まれてなることが好ましいが、更に他の樹脂、特にポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、およびアクリル樹脂などが少なくとも1種含まれていてもよい。但し、例えば、ポリエステル樹脂など他の樹脂成分が20重量%を超える場合などは、本発明の特性、特に離型性が発現しにくくなる傾向があり、添加する場合は、好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下とすることが好ましい。
【0059】
更に本発明おいては、ポリエステルフィルムの少なくとも片面に設けられる積層膜とは反対側の面に、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂およびクリル樹脂から選ばれた少なくとも1種からなる層を設けてもよい。この場合、積層膜が設けられた側は、湿度依存性のない高いレベルの導電性、離型性、耐水性、平滑性およびオリゴマー析出抑制性を有し、かつ、反対側は接着性などを有する別の機能層とすることができ、例えば、転写箔用途などの積層構成で用いる場合に非常に有用である。
【0060】
ここで用いられるポリエステル樹脂、ウレタン樹脂およびアクリル樹脂は、積層膜で任意に用いることができる該樹脂群と同じであってもよいし、別種であってもよいが、例えば、下記のものを用いることができる。
【0061】
本発明において、積層ポリエステルフィルムの積層膜や反対側の層の構成成分として好適に用いることができるポリエステル樹脂は、主鎖あるいは側鎖にエステル結合を有するもので、ジカルボン酸とジオールを重縮合して得られるものである。
【0062】
該ポリエステル樹脂を構成するカルボン酸成分としては、芳香族、脂肪族、脂環族のジカルボン酸や3価以上の多価カルボン酸を使用することができる。
【0063】
芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、フタル酸、2,5−ジメチルテレフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,2−ビスフェノキシエタン−p,p’−ジカルボン酸、およびフェニルインダンジカルボン酸などを用いることができる。積層膜の強度や耐熱性の点から、これらの芳香族ジカルボン酸が、好ましくは全ジカルボン酸成分の30モル%以上、より好ましくは35モル%以上、最も好ましくは40モル%以上を占めるポリエステルを用いることが好ましい。
【0064】
また、脂肪族および脂環族のジカルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカンジオン酸、ダイマー酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸など、およびそれらのエステル形成性誘導体を用いることができる。
【0065】
ポリエステル樹脂のグリコール成分としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、2,4−ジメチル−2−エチルヘキサン−1,3−ジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−イソブチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール、4,4’−チオジフェノール、ビスフェノールA、4,4’−メチレンジフェノール、4,4’−(2−ノルボルニリデン)ジフェノール、4,4’−ジヒドロキシビフェノール、o−,m−,およびp−ジヒドロキシベンゼン、4,4’−イソプロピリデンフェノール、4,4’−イソプロピリデンビンジオール、シクロペンタン−1,2−ジオール、およびシクロヘキサン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジオールなどを用いることができる。
【0066】
また、ポリエステル樹脂を水性塗液として用いる場合には、ポリエステル樹脂の水溶性化あるいは水分散化を容易にするため、スルホン酸塩基を含む化合物やカルボン酸塩基を含む化合物を共重合することが好ましい。
【0067】
カルボン酸塩基を含む化合物としては、例えば、トリメリット酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、無水ピロメリット酸、4−メチルシクロヘキセン−1,2,3−トリカルボン酸、トリメシン酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸、1,2,3,4−ペンタンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフルフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフルフリル)−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、シクロペンタンテトラカルボン酸、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸、エチレングリコールビストリメリテート、2,2’,3,3’−ジフェニルテトラカルボン酸、チオフェン−2,3,4,5−テトラカルボン酸、エチレンテトラカルボン酸など、あるいはこれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩等を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0068】
スルホン酸塩基を含む化合物としては、例えば、スルホテレフタル酸、5−スルホイソフタル酸、4−スルホイソフタル酸、4−スルホナフタレン−2,7−ジカルボン酸、スルホ−p−キシリレングリコール、2−スルホ−1,4−ビス(ヒドロキシエトキシ)ベンゼンなどあるいはこれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、およびアンモニウム塩を用いることができるが、これに限定されない。
【0069】
好ましいポリエステル樹脂としては、酸成分としてテレフタル酸、イソフタル酸、セバシン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、グリコール成分としてエチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコールから選ばれる共重合体などが挙げられる。耐水性が必要とされる場合は、5−ナトリウムスルホイソフタル酸の代わりに、トリメリット酸をその共重合成分とした共重合体なども好適に用いることができる。
【0070】
ポリエステル樹脂のガラス転移点(以後、「Tg」と略称する)は、0〜130℃であることが好ましく、より好ましくは10〜85℃である。Tgが0℃未満では、例えば、積層膜同士が固着するブロッキング現象が発生する場合があり、Tgが130℃を超える場合は、樹脂の安定性や水分散性が劣る場合がある。
【0071】
更に、積層膜中には本発明の効果が損なわれない範囲内で各種の添加剤、例えば酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、有機の易滑剤、顔料、染料、有機または無機の微粒子、充填剤、帯電防止剤および核剤などが配合されてもよい。
【0072】
特に、本発明を実施するにあたり、塗液中に無機粒子を添加配合し二軸延伸したものは、易滑性が向上するので更に好ましい。
【0073】
添加する無機粒子としては、代表的には、シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、アルミナゾル、カオリン、タルク、マイカおよび炭酸カルシウムなどを用いることができる。用いられる無機粒子は、本発明の効果が損なわれない範囲のものであればよいが、例えば、部材として積層状態で用いられる光学フィルムやその保護フィルムなどを本発明の転写用フィルムから剥がして使用する場合など、その剥離後の部材表面の平滑性や光沢性が非常に重要視されるため、転写用フィルムの表面粗さについて、3次元中心線平均粗さ(SRa)が3〜20nmであることが好ましい。更に本発明においては、SRaはより好ましくは3〜18nmである。また、3次元十点平均粗さ(SRz)は1000nm以下であることが好ましく、より好ましくは800nm以下である。SRaとSRzが上記範囲を超えると光学用樹脂の表面が部分的に大きく荒れ、透明性が悪化する傾向がある。
【0074】
上記を達成するため、本発明においては添加する粒子としては、平均粒径0.01〜0.3μmであるものが好ましく、より好ましくは0.02〜0.2μmであり、固形分に対する配合比も、特に限定されないが、重量比で0.05〜20重量部が好ましく、より好ましくは0.1〜10重量部である。
【0075】
さらに、積層ポリエステルフィルム中に100μ以上の内部異物が10個/m以下であることが必要であり、5個/m以下であることが好ましい。
【0076】
積層ポリエステルフィルム内に内部異物が存在すると、得られた光学用樹脂フィルムに輝点欠点が多くなり、液晶表示装置など組み込まれた際の表示欠点の原因となるので好ましくない。
【0077】
このようなポリエステルフィルムを得るには、濾過精度1〜20μmのフィルターを用いる必要があり、濾過寿命や、粗大突起、内部異物の発生を抑制するためには、絶対濾過精度3〜10μmのフィルターを用いることが更に好ましい。
【0078】
また、本発明を実施するにあたり、水系樹脂の塗布の方法は、例えば、リバースコート法、スプレーコート法、バーコート法、グラビアコート法、ロッドコート法およびダイコート法などを用いることができる。
【0079】
積層膜の厚みは、特に限定されないが、通常は0.005〜0.2μmの範囲が好ましく、より好ましくは0.01〜0.1μm、最も好ましくは0.01μm〜0.05μmである。積層膜の厚みが薄すぎると帯電防止性不良となる場合がある。
【0080】
本発明にかかる積層ポリエステルフィルムを製造するに際して、積層膜を設けるのに好ましい方法としては、基材フィルムであるポリエステルフィルムの製造工程中に塗布し、基材フィルムと共に延伸する方法が最も好適である。例えば、溶融押し出しされた結晶配向前のポリエステルフィルムを長手方向に2.5〜5倍程度延伸し、一軸延伸されたポリエステルフィルムに連続的に塗液を塗布する。塗布されたポリエステルフィルムは段階的に加熱されたゾーンを通過しつつ乾燥され、幅方向に2.5〜5倍程度延伸される。更に、連続的に150〜250℃の温度の加熱ゾーンに導かれ結晶配向を完了させる方法(インラインコート法)によって得ることができる。この場合に用いられる塗布液は、環境汚染や防爆性の点で水系のものが好ましい。
【0081】
本発明においては、塗液を塗布する前に、基材フィルムであるポリエステルフィルムの表面(上記例の場合、一軸延伸ポリエステルフィルム)にコロナ放電処理などを施し、該表面の濡れ張力を、好ましくは47mN/m以上、より好ましくは50mN/m以上とすることが、積層膜の基材フィルムであるポリエステルフィルムとの接着性を向上させることができるので好ましく用いることができる。また、イソプロピルアルコール、ブチルセロソルブおよびN−メチル−2−ピロリドンなどの有機溶媒を塗液中に若干量含有させて、濡れ性や基材フィルムとの接着性を向上させることも好適である。
【0082】
本発明における溶液製膜用光学用樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィンやポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル、脂環式ポリオレフィン、ポリアリレート、ポリカーボネート、ポリエーテルサルホンおよびポリサルホン等があげられ、好ましくは脂環式ポリオレフィン、ポリアリレート、ポリカーボネート、ポリエーテルサルホンおよびポリサルホンであるが、より好ましくは光学特性の点でポリカーボネートおよび脂環式ポリオレフィンである。
【0083】
脂環式ポリオレフィンの具体例としては、下記の化学式(3)および/または化学式(4)で表される構成単位を有するポリマーを挙げることができる。
【0084】
【化3】

【0085】
(ただし、式中、R1,R2,R3,R4は、水素、炭素数1〜6の炭化水素残基またはハロゲン、エステル、ニトリル、ピリジルなどの極性基で、それぞれ同一または異なっていてもよく、R1,R2とR3,R4は互いに環を形成してもよい。mは正の整数であり、n,qは0または正の整数である。)
【0086】
【化4】

【0087】
(ただし、式中、R5,R6,R7,R8は、水素、炭素数1〜6の炭化水素残基またはハロゲン、エステル、ニトリル、ピリジルなどの極性基で、それぞれ同一または異なっていてもよく、R5,R6とR7,R8は互いに環を形成してもよい。kは正の整数であり、l,pは0または正の整数である。)
上記化学式(3)で表される構成単位を有するポリマーに用いられる単量体としては、例えば、ノルボルネン、およびそのアルキルおよび/またはアルキリデン置換体(例えば、5−メチル−2−ノルボルネン、5,6ジメチル−2−ノルボルネン、5−エチル−2−ノルボルネン、5−ブチル−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン等)、ジシクロペンタジエン、2,3−ジヒドロジシクロペンタジエン、これらのメチル、エチル、プロピル、ブチル等のアルキル置換体、およびハロゲン等の極性基置換体(例えば、ジメタノオクタヒドロナフタレン、そのアルキルおよび/またはアルキリデン置換体)、およびハロゲン等極性基置換体(例えば、6−メチル−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−エチル−1,4:5,8−ジメタノ1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−エチリデン−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−クロロ−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−シアノ−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−ピリジル−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、および6−メトキシカルボニル−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン等)、シクロペンタジエンの3〜4量体(例えば、4,9:5,8−ジメタノ−3a,4,4a,5,8,8a,9,9a−オクタヒドロ−1H−ベンゾインデン、4,11:5,10:6,9−トリメタノ−3a,4,4a,5,5a,6,9,9a,10,10a,11,11a−ドデカヒドロ−1H−シクロペンタアントラセン等)などが挙げられ、これらを1種または2種以上使用し、公知の開環重合方法により重合して開環重合体を得る。得られた開環重合体を通常の水素添加方法により水素添加して、上記化学式(3)で表される構造単位を有するポリマーを製造する。
【0088】
上記ポリマーのガラス転移温度は160℃以上が好ましいが、その目的のためにはノルボルネン系モノマーの中でも4量体または5量体のものを使用するか、これらを主成分とし、2環体や3環体のモノマーと併用することが好ましい。特に複屈折の点で、4量体の低級アルキル置換体またはアルケニル置換体を主成分とすることが好ましい。
【0089】
また、上記化学式(4)で表される構造単位を有するポリマーに用いられる単量体としては、前記のノルボルネン系モノマーの1種以上と、エチレンが挙げられ、これらを公知の方法により付加重合してポリマーを得る。得られたポリマーおよび/またはその水素添加物は、上記化学式(4)で表される構造単位を有するポリマーとして使用され、それらは、いずれも飽和ポリマーである。
【0090】
また、脂環式ポリオレフィンは、上記化学式(3)または化学式(4)の構造単位の製造工程で、分子量調節剤として、1−ブテン、1−ペンテンおよび1−ヘキセンなどのα−オレフィンを添加したり、あるいはシクロプロペン、シクロブテン、シクロペンテン、シクロへプテン、シクロオクテンおよび5,6−ジヒドロシクロペンタジエン等のシクロオレフィンなどの他のモノマー成分を少量共重合したポリマーであってもよい。
【0091】
脂環式ポリオレフィンとしては、例えば、JSR(株)の“アートン”(登録商標)、日本ゼオン(株)の“ゼオノア”(登録商標)および“ゼオネックス”(登録商標)、および三井化学(株)の“アペル” (登録商標)などが好ましく用いられる。
【0092】
これら脂環式ポリオレフィンの分子量の範囲は、シクロヘキサンを溶媒とするGPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)分析により測定した数平均分子量が、強度の点から、好ましくは1〜30万であり、さらに好ましくは2〜20万である。
【0093】
また、脂環式ポリオレフィンの分子鎖中に残留する不飽和結合を水素添加(以下、水添と記載)により飽和させる場合には、水添率は90%以上が好ましく、より好ましくは95%以上であり、さらに好ましくは99%以上である。飽和重合体であることにより、耐候性や耐光劣化性が改良される。
【0094】
本発明で使用される脂環式ポリオレフィンは、1種のみを用いてもよく、また2種以上を用いてもよい。また、同一種においても分子量が異なるものをブレンドしてもよい。また本発明で用いられる脂環式ポリオレフィンには、酸化防止剤や帯電防止剤、滑剤、界面活性剤および紫外線吸収剤等を添加してもよい。
【0095】
次に、本発明で用いられるポリエステルフィルムの製造方法について、ポリエチレンテレフタレート(以下、「PET」と略称する)を基材フィルムとした例について、更に詳細に説明するが、これに限定されるものではない。
【0096】
本発明で用いられる積層ポリエステルフィルムの製造方法をより具体的に例示して説明する。極限粘度0.5〜0.8dl/gのPETペレットを真空乾燥した後、押し出し機に供給し、260〜300℃の温度で溶融する。この際、絶対濾過精度3〜10μmのフィルターで濾過する個とが好ましい。その後、T字型口金よりシート状に押し出し、静電印加キャスト法を用いて表面温度10〜60℃の温度の鏡面キャスティングドラムに巻き付けて、冷却固化させて未延伸PETフィルムを作成する。この未延伸フィルムを70〜120℃の温度に加熱されたロール間で縦方向(フィルムの進行方向)に2.5〜5倍延伸する。このフィルムの少なくとも片面にコロナ放電処理を施し、該表面の濡れ張力を47mN/m以上とし、その処理面に本発明にかかる水性塗液を塗布する。この塗布されたフィルムをクリップで把持して70〜150℃に加熱された熱風ゾーンに導き、乾燥した後、幅方向に2.5〜5倍延伸し、引き続き160〜250℃の温度の熱処理ゾーンに導き、1〜30秒間の熱処理を行い、結晶配向を完了させる。この熱処理工程中において、必要に応じて幅方向あるいは長手方向に1〜10%の弛緩処理を施してもよい。二軸延伸は、縦、横逐次延伸あるいは同時二軸延伸のいずれでもよく、また縦、横延伸後、縦、横いずれかの方向に再延伸してもよい。また、ポリエステルフィルムの厚みは特に限定されないが、1〜500μmが好ましい。
【0097】
なお、積層膜が設けられる基材フィルムであるポリエステルフィルム中に、積層膜形成組成物、あるいは積層膜形成組成物の反応生成物から選ばれる少なくとも1種の物質を含有させることにより、積層膜と基材フィルムであるポリエステルフィルムとの接着性を向上させたり、易滑性を向上させることができる。積層膜形成組成物、あるいはこれらの反応生成物の添加量は、その添加量の合計が5ppm以上20重量%未満であるのが、接着性、易滑性の点で好ましい。特に、環境保護、生産性を考慮すると、該積層膜形成組成物を含む再生ペレットを用いる方法が好適である。
【0098】
このようにして得られた本発明の積層ポリエステルフィルムは、離型性と表面性に優れ、輝点欠点が少ないため、ポリカーボネートや脂環式ポリオレフィンなどの光学用樹脂の溶液製膜の工程フィルムとして用いられる転写箔の基材フィルムとして好適に用いることができる。
【0099】
[特性の測定方法および効果の評価方法]
本発明における特性の測定方法および効果の評価方法は、次のとおりである。
【0100】
(1)積層膜の厚み
サンプル、例えば積層ポリエステルフィルムの断面を超薄切片に切り出し、RuO4染色、OsO4染色、あるいは両者の二重染色による染色超薄切片法により、TEM(透過型電子顕微鏡)で観察、写真撮影を行った。その断面写真から積層膜の厚み測定を行った。
[観察方法]
・装置:透過型電子顕微鏡(日立(株)製H−7100FA型)
・測定条件:加速電圧 100kV
・試料調整:超薄切片法。
【0101】
(2)表面粗さ
3次元中心線平均粗さ(SRa)および3次元十点平均粗さ(SRz)は、光触針式3次元粗さ計ET−30HK(小坂研究所株式会社製)を用いて、測定長0.5mm、測定本数80本、カットオフ0.25mm、送りピッチ5μm、触針荷重10mg、スピード100μm/秒で測定した。
【0102】
(3)フィルムの内部異物
偏光板のクロスニコル下でフィルムを目視観察して確認された輝点部分を顕微鏡で観察し異物の核部分の大きさを測定し、100μm以上の大きさの異物をカウントする。測定面積は1m
【0103】
(4)離型性
得られたポリエステルフィルム上に、光学用樹脂として脂環式ポリオレフィン(JSR(株)アートンG)を濃度20重量%となるように溶解した塩化メチレン溶液をダイコート方式で塗付後、オーブンに通し40℃の温度で3分間乾燥後、ポリエステルフィルムから剥離し熱可塑性樹脂フィルムを得た。剥離した熱可塑性樹脂フィルム及びポリエステルフィルムの表面の剥離アトの有無を観察した。両者共に剥離アトが無いものを○、あるものを×とした。
【0104】
(5)輝点欠点
上記方法で得られた光学用樹脂フィルムを、暗室内で3波長蛍光灯の反射で目視で確認できる輝点となる欠点を観察し、個数をカウントした。測定面積は1m
【0105】
(6)ヘーズ(透明性)
JIS−K−7105(1981年)に準じ、上記方法で得た熱可塑性樹脂フィルムのヘーズを測定した。
【実施例】
【0106】
次に、実施例に基づいて本発明を説明する。
(実施例1)
実質的に粒子を含まないPETペレット(極限粘度0.63dl/g)を十分に真空乾燥した後、押し出し機に供給し285℃の温度で溶融し、絶対濾過精度5μもフィルターで濾過しT字型口金からシート状に押し出し、静電印加キャスト法を用いて表面温度25℃の鏡面キャスティングドラムに巻き付けて冷却固化させた。このようにして得られた未延伸PETフィルムを、92℃の温度に加熱して長手方向に3.3倍延伸し、一軸延伸PETフィルムとした。この一軸延伸PETフィルムに空気中でコロナ放電処理を施し、その濡れ張力を55mN/mとし、その処理面に下記の積層膜形成塗液を塗布した。積層膜形成塗液が塗布された一軸延伸PETフィルムを、クリップで把持しながら予熱ゾーンに導き、95℃の温度で乾燥後、引き続き連続的に100℃の温度の加熱ゾーンで幅方向に3.5倍延伸し、更に、225℃の温度の加熱ゾーンで熱処理を施し、結晶配向の完了した積層PETフィルムを得た。得られた積層PETフィルム厚みは38μmであり、積層膜の厚みは0.025μmであった。結果を表1に示す。離型性、透明性および輝点欠点に優れたものであった。
「積層膜形成塗液」
・液A1:
ポリ−3,4−エチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸からなる複合体の水性塗液(Bayer社/H.C.Starck社(ドイツ国)製“Baytron” (登録商標)P)。
・塗液B1:
エポキシ架橋剤として、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル系エポキシ架橋剤(ナガセケムテックス(株)製“デナコール”(登録商標)EX−512(分子量約630、エポキシ当量168、水溶率100%))を水に溶解させた水性塗液。
・塗液C1:
下記の共重合組成からなる長鎖アルキル基含有アクリル樹脂を、イソプロピルアルコール5重量%とn−ブチルセロソルブ5重量%を含む水に溶解させた水性塗液。
<共重合成分>
ベヘニルメタクリレート 65重量%
(長鎖アルキル鎖炭素数22)
メタクリル酸 25重量%
2−ヒドロキシエチルメタクリレート 10重量%
上記した塗液A1と塗液B1を固形分重量比で、塗液A1/塗液B1=20/80で混合したものを、5日間、常温で熟成させた(熟成塗液1と略称する)。その後、該熟成塗液1と塗液C3を固形分重量比で、熟成塗液1/塗液C3=100/20で混合したものを、積層膜形成塗液とした。
【0107】
(実施例2)
実施例1で用いた積層膜形成塗液に代え、下記の積層膜形成塗液を用いたこと以外は、実施例1と同様にして積層PETフィルムを得た。
「積層膜形成塗液」
・塗液A1および塗液B1は実施例1と同じものを用いた。
・塗液C2:
下記の共重合組成からなる長鎖アルキル基含有アクリル樹脂を、イソプロピルアルコール5重量%とn−ブチルセロソルブ5重量%を含む水に溶解させた水性塗液。
<共重合成分>
ステアリルメタクリレート 65重量%
(長鎖アルキル鎖炭素数12)
メタクリル酸 25重量%
2−ヒドロキシエチルメタクリレート 10重量%
上記した塗液A1と塗液B1を固形分重量比で、塗液A1/塗液B1=20/80で混合したものを、5日間、常温で熟成させた(熟成塗液1と略称する)。その後、該熟成塗液1と塗液C2を固形分重量比で、熟成塗液1/塗液C2=100/5で混合したものを、積層膜形成塗液とした。結果を表1に示す。離型性、透明性および輝点欠点に優れたものであった。
【0108】
(実施例3)
実施例1で用いたPETペレットとして、平均粒径0.4μmの凝集シリカを0.015%,平均粒径1.5μmの凝集シリカを0.005%含有するPETペレット(極限粘度0.63dl/g)を用い、下記の積層膜形成塗液を用い、かつ、PETフィルムの厚みを16μmとしたこと以外は、実施例1と同様にして積層PETフィルムを得た。結果を表1に示す。離型性、透明性および輝点欠点に優れたものであった。
「積層膜形成塗液」
・塗液A1および塗液B1は実施例1と同じものを用いた。
・塗液C3:
下記の共重合組成からなる長鎖アルキル基含有アクリル樹脂を、イソプロピルアルコール10重量%とn−ブチルセロソルブ5重量%を含む水に溶解させた水性塗液。
<共重合成分>
ベヘニルメタクリレート 65重量%
(長鎖アルキル鎖炭素数22)
メタクリル酸 25重量%
2−ヒドロキシエチルメタクリレート 10重量%
上記した塗液A1と塗液B1を固形分重量比で、塗液A1/塗液B1=25/75で混合したものを、5日間、常温で熟成させた(熟成塗液1と略称する)。その後、該熟成塗液1と塗液C3を固形分重量比で、熟成塗液1/塗液C3=100/5で混合したものを、積層膜形成塗液とした。
【0109】
(比較例1)
平均粒径0.4μmの凝集シリカを0.015%,平均粒径1.5μmの凝集シリカを0.005%含有するPETペレット(極限粘度0.63dl/g)を十分に真空乾燥した後、押し出し機に供給し285℃の温度で溶融し、絶対濾過精度15μmのフィルターで濾過したこと以外は、実施例1と同様にして積層PETフィルムを得た。結果を表1に示す。輝点欠点と透明性に劣るものであった。
【0110】
(比較例2)
実施例1で用いた積層膜形成塗液に代え、下記の積層膜形成塗液を用い、かつ、塗布層の厚みを0.08μmとしたこと以外は、実施例1と同様にして積層PETフィルムを得た。結果を表1に示す。離型性に劣るものであった。
「積層膜形成塗液」
・塗液D1:
ポリスチレンスルホン酸アンモニウム塩(重量平均分子量:65000)を水に溶解した水性塗液。
・塗液E1:
下記の共重合組成からなるアクリル樹脂(ガラス転移温度:42℃)を粒子状に水に分散させた水性塗液(エマルション粒子径は50nm)。
<共重合成分>
メチルメタクリレート 62重量%
(アルキル鎖の炭素数1)
エチルアクリレート 35重量%
(アルキル鎖の炭素数2)
アクリル酸 2重量%
N−メチロールアクリルアミド 1重量%
上記した塗液D1と塗液E1を固形分重量比で、塗液D1/塗液E1=20/80で混合したものを、積層膜形成塗液とした。
【0111】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0112】
本発明の光学用樹脂溶液製膜用二軸延伸ポリエステルフィルムは、ポリカーボネートや脂環式ポリオレフィンなどの溶液製膜に用いられることができ有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、組成物(A)と炭素数が12〜25のアルキル鎖を有するアクリル系樹脂(B)からなる積層膜が設けられた積層ポリエステルフィルムであって、該組成物(A)が、ポリチオフェンとポリ陰イオンからなる組成物および/またはポリチオフェン誘導体とポリ陰イオンからなる組成物であり、かつ、積層ポリエステルフィルム中に含まれる粒径100μm以上の内部異物が10個/m未満であることを特徴とする光学用樹脂溶液製膜用積層ポリエステルフィルム。
【請求項2】
ポリエステルフィルムの少なくとも片面の3次元中心線平均粗さ(SRa)が3〜20nmであり、3次元十点平均粗さ(SRz)が1000nm以下であることを特徴とする請求項1記載の光学用樹脂溶液製膜用積層ポリエステルフィルム。
【請求項3】
積層膜中に、さらにエポキシ系架橋剤および/またはその反応生成物(C)が含まれてなり、かつ、固形分重量比で、組成物(A)に対してエポキシ系架橋剤および/またはその反応生成物(C)の総量が50〜95重量%であることを特徴とする請求項1または2記載の光学用樹脂溶液製膜用積層ポリエステルフィルム。
【請求項4】
積層膜中に、炭素数が12〜25のアルキル鎖を有するアクリル系樹脂(B)が、組成物(A)とエポキシ系架橋剤および/またはその反応生成物(C)の合計100重量部に対して、10〜40重量部含まれていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の光学用樹脂溶液製膜用積層ポリエステルフィルム。
【請求項5】
ポリカーボネートまたは脂環式ポリオレフィンの溶液製膜に用いられることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の光学用樹脂溶液製膜用積層ポリエステルフィルム。

【公開番号】特開2006−231658(P2006−231658A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−48448(P2005−48448)
【出願日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】