説明

光学異方性膜、液晶表示装置およびそれらに用いる化合物

【課題】簡易な構成で、表示品位のみならず、視野角が著しく改善されたIPS型液晶表
示装置を製造しうる光学異方性膜を提供すること。
【解決手段】スメクチック相で配向を固定化されている、下記一般式(I)で表される棒
状化合物の架橋物を含有することを特徴とする光学異方性膜。
【化1】


[式中、P1、P2はオキシラニル基またはオキセタニル基;X1、X2はアルキレン基;L
1〜L4は単結合、−CO−O−等;Y1〜Y3はハロゲン原子等;n1〜n3は0〜4;m
は0〜4である]。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開環重合性基を有し、スメクチック相を発現する棒状化合物を利用した光学異方性膜およびこの膜を用いた液晶表示装置に関する。特に、本発明の液晶表示装置は、水平方向に配向した液晶分子に横方向の電界を印加することにより表示を行う、インプレーンスイッチングモード(IPSモード)の液晶表示装置である。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置としては、二枚の直交した偏光板の間に、ネマチック液晶をツイスト配列させた液晶層を挟み、電界を基板に対して垂直な方向にかける方式、いわゆるTNモードが広く用いられている。この方式では、黒表示時に液晶が基板に対して立ち上がるために、斜めから見ると液晶分子による複屈折が発生し、光漏れが起こる。この問題に対して液晶性分子がハイブリッド配向したフィルムを用いることで、液晶セルを光学的に補償し、この光漏れを防止する方式が実用化されている。しかし、液晶性分子を用いても液晶セルを問題なく完全に光学的に補償することは非常に難しく、画面下方向での諧調反転が抑えきれないという問題を生じていた。
【0003】
かかる問題を解決するため、横電界を液晶に対して印加する、いわゆるインプレーンスイッチング(IPS)モードによる液晶表示装置や、誘電率異方性が負の液晶を垂直配向してパネル内に形成した突起やスリット電極によって配向分割した垂直配向(VA)モードが提案され、実用化されている。近年、これらのパネルはモニター用途に留まらず、TV用途として開発が進められており、それに伴って画面の輝度が大きく向上してきている。このため、これらの動作モードで従来問題とされていなっかった、黒表示時の対角位斜め入射方向での僅かな光漏れが表示品質の低下の原因として顕在化してきた。
【0004】
この色調や黒表示の視野角を改善する手段の一つとして、液晶層と偏光板の間に複屈折特性を有する光学補償材料を配置することがIPSモードにおいても検討されている。例えば、傾斜時の液晶層のレターデーションの増減を補償する作用を有する光軸を互いに直交した複屈折媒体を基板と偏光板との間に配置することで、白表示または中間調表示を斜め方向から直視した場合の色付きが改善できることが開示されている(特許文献1参照)。
【0005】
また、負の固有複屈折を有するスチレン系ポリマーやディスコチック液晶性化合物からなる光学補償フィルムを使用した方法(特許文献2、3、4参照)や、光学補償フィルムとして複屈折が正で光学軸がフィルムの面内にある膜と複屈折が正で光学軸がフィルムの法線方向にある膜とを組み合わせる方法(特許文献5参照)、レターデーションが二分の一波長の二軸性の光学補償シートを使用する方法(特許文献6参照)、偏光板の保護膜として負のレターデーションを有する膜を使い、この表面に正のレターデーションを有する光学補償層を設ける方式(特許文献7参照)が提案されている。
【0006】
後述するように、本発明者は正の複屈折性を有し光軸が法線方向にある位相差領域を組み合わせることでIPSの光学補償を達成したが、かかる位相差領域を実現するには液晶材料を垂直に配向させ、その配向状態を固定化する方法が知られている。液晶材料を用いて光学異方性材料を形成する場合、ネマティック相で固定化することが一般的である。しかし、近年モニターの表示特性に対する要求が厳しくなってきており、ネマティック相で固定化した異方性材料ではミクロな均一性が十分ではなく改善が求められている。かかる要求に対しては特許文献8、9および10でスメクティック相での固定化が開示されている。
【0007】
【特許文献1】特開平9−80424号公報
【特許文献2】特開平10−54982号公報
【特許文献3】特開平11−202323号公報
【特許文献4】特開平9−292522号公報
【特許文献5】特開平11−133408号公報
【特許文献6】特開平11−305217号公報
【特許文献7】特開平10−307291号公報
【特許文献8】特表2000−514202号公報
【特許文献9】特開平10−319408号公報
【特許文献10】特開平6−331826号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、提案された方式の多くは、液晶セル中の液晶の複屈折の異方性を打ち消して視野角を改善する方式であるために、直交偏光板を斜めから見た場合の偏光軸交差角度の直交からのズレに基づく光漏れを十分に解決できないという問題がある。また、この光漏れを補償できるとされる方式でも、液晶セルを問題なく完全に光学的に補償することは非常に難しい。さらに、延伸複屈折ポリマーフィルムで光学補償を行うIPSモード液晶セル用光学補償シートでは、複数のフィルムを用いる必要があり、その結果、光学補償シートの厚さが増し、表示装置の薄形化に不利である。また、延伸フィルムの積層には粘着層を用いるため、温湿度変化により粘着層が収縮してフィルム間の剥離や反りといった不良が発生することがあった。
【0009】
また、液晶材料をスメクチック相で垂直に固定化する技術に関しては、特許文献8,9ではスメクチック相の配向に特殊な配向処理を要したり、ガラス基板上で位相差領域を作製するなど、工業的なレベルでの製造には不向きであった。また特許文献10では高分子液晶材料を垂直配向させているため配向に長時間を有し、やはり工業的なレベルでの製造には不向きであった。
【0010】
本発明は前記諸問題に鑑みなされたものであって、簡易な構成で、表示品位のみならず、視野角が著しく改善されたIPS型液晶表示装置を提供することを目的とする。また、本発明は、液晶表示装置、特にIPS型液晶表示装置の視野角の改善に寄与するため、2つの開環重合可能な重合性基を有し、かつスメクチック相を発現する棒状化合物、および該化合物を利用した光学異方性膜光学補償フィルム(光学補償フィルム)を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の課題は、下記[1]〜[11]により解決された。
[1] スメクチック相で配向を固定化されている、下記一般式(I)で表される棒状化合物の架橋物を含有することを特徴とする光学異方性膜。
【0012】
【化1】

[式中、P1およびP2はそれぞれ独立にオキシラニル基またはオキセタニル基であり;X1およびX2はそれぞれ独立にアルキレン基または置換アルキレン基であり;L1およびL4はそれぞれ独立に単結合、−O−CO−O−,−CO−O−,−CO−S−,−CO−NR3−,−O−、−S−、−O−CO−、−S−CO−、−NR3−CO−、−C≡C−または−CH=CH−であり、R3は水素原子あるいはアルキル基であり;L2およびL3はそれぞれ独立に単結合、−O−CO−O−,−CO−O−,−CO−S−,−CO−NR3−、−O−CO−、−S−CO−、−NR3−CO−、−C≡C−または−CH=CH−であり、R3は水素原子またはアルキル基であり;Y1〜Y3はそれぞれ独立にハロゲン原子、シアノ基、アルキル基、アルケニル基またはアルコキシ基であり;n1〜n3はそれぞれ独立に0〜4であり;mは0〜4である]。
[2] 式(I)で表される化合物の架橋物が、垂直に配向した状態で固定化されることを特徴とする[1]に記載の光学異方性膜。
[3]式(I)で表される化合物の空気界面での垂直配向を促進する添加剤を含有する位相差層からなることを特徴とする[1]または[2]に記載の光学異方性膜。
[4] 前記位相差層が式(I)で表される化合物の配向膜界面での垂直配向を促進する添加剤を含有することを特徴とする[1]〜[3]のいずれか一項に記載の光学異方性膜。
[5] 少なくとも、第1偏光膜と、第1位相差領域と、第2位相差領域と、液晶層を一対の基板で挟んだ液晶セルとを含み、黒表示時に液晶分子が前記一対の基板の表面に対して実質的に平行に配向する液晶表示装置であって、第1位相差領域のレターデーションReが20nm〜150nmであり、第1位相差領域の値Nzが1.5〜7であり、第2位相差領域のレターデーションReが実質的に0nmであり、第2位相差領域のレターデーションRthが−80nm〜−400nmであり、前記第2位相差領域は、[1]〜[4]のいずれか一項に記載の光学異方性膜を含み、該光学異方性膜に含まれる式(I)で表される化合物の架橋物が実質的に垂直に配向した状態で固定化されており、且つ第1偏光膜の透過軸が黒表示時の液晶分子の遅相軸方向に平行である液晶表示装置。
[6] 前記第1偏光膜、前記第1位相差領域、前記第2位相差領域および前記液晶セルが、この順序で配置され、且つ前記第1位相差領域の遅相軸が、前記第1偏光膜の透過軸に実質的に平行である[5]に記載の液晶表示装置。
[7] 前記第1偏光膜、前記第2位相差領域、前記第1位相差領域および前記液晶セルがこの順序で配置され、且つ前記第1位相差領域の遅相軸が前記第1偏光膜の透過軸に実質的に直交である[5]に記載の液晶表示装置。
[8] 前記第1偏光膜の透過軸と直交する透過軸を有する第2偏光膜をさらに有し、前記第1および第2偏光膜が、前記第1位相差領域、前記第2位相差領域および前記液晶セルを挟持して配置されている[5]〜[7]のいずれか1つに記載の液晶表示装置。
[9]前記第1偏光膜および/または第2偏光膜を挟んで配置された一対の保護膜を有し、該一対の保護膜のうち液晶層に近い側の保護膜の厚み方向の位相差Rthが40nm以下である[5]〜[8]のいずれか1つに記載の液晶表示装置。
[10]前記第1偏光膜および/または第2偏光膜を挟んで配置された一対の保護膜を有し、該一対の保護膜のうち液晶層に近い側の保護膜がセルロースアシレートフィルムまたはノルボルネン系フィルムである[5]〜[9]のいずれか1つに記載の液晶表示装置。
[11]下記一般式(X)で表される化合物。
【化2】

[式中、R1およびR2はそれぞれ独立に水素原子またはアルキル基であり;X1およびX2はそれぞれ独立にアルキレン基または置換アルキレン基であり;L1およびL4はそれぞれ独立に単結合、−O−CO−O−,−CO−O−,−CO−S−,−CO−NR3−,−O−、−S−、−O−CO−、−S−CO−、−NR3−CO−、−C≡C−または−CH=CH−であり、R3は水素原子あるいはアルキル基であり;L2およびL3はそれぞれ独立に単結合、−O−CO−O−,−CO−O−,−CO−S−,−CO−NR3−、−O−CO−、−S−CO−、−NR3−CO−、−C≡C−または−CH=CH−であり、R3は水素原子あるいはアルキル基であり;Y1〜Y3はそれぞれ独立にハロゲン原子、シアノ基、アルキル基、アルケニル基またはアルコキシ基であり;n1〜n3はそれぞれ独立に0〜4であり;mは0〜4である]。
【発明の効果】
【0013】
少なくとも、第1偏光膜と、第1位相差領域と、第2位相差領域と、液晶材料からなる液晶層を一対の基板で挟んだ液晶セルとを含み、黒表示時に該ネマチック液晶材料の液晶分子が前記一対の基板の表面に対して実質的に平行に配向する液晶表示装置であって、第1位相差領域のレターデーションReが20nm〜150nmであり、第1位相差領域の値Nzが1.5〜7であり、第2位相差領域のレターデーションReが実質的に0nmであり、第2位相差領域のレターデーションRthが−80nm〜−400nmであり、且つ第1偏光膜の透過軸が黒表示時の液晶分子の遅相軸方向に平行にすることによって、正面方向の特性を何ら変更させることなく、斜めの方位角方向から見た場合に2枚の偏光板の吸収軸が90度からずれることから生ずるコントラストの低下、特に45度の斜め方向からのコントラストの低下を改善することができる。さらに、偏光膜の保護膜のRthを40nm以下とすることによって更なるコントラスト向上を実現することができる。また、第2位相差領域の構成要素にとして、本発明の光学異方性膜を用いることにより、特殊な垂直配向膜を用いずに簡便に第2位相差領域を作製することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
[棒状化合物]
本発明は、下記式(I)で表される棒状化合物を用いる。
【化3】

【0015】
棒状化合物とは、棒状液晶化合物の分子構造において、よく知られている概念であり、(液晶便覧編集委員会編、液晶便覧;岩柳茂夫、液晶)に記載されている。
式(I)において、P1およびP2はそれぞれ独立にオキシラニル基またはオキセタニル基であり、オキセタニル基であることが好ましい。
【0016】
1およびX2は、それぞれ独立にアルキレン基または置換アルキレン基であり、分岐構造を有しても良い。アルキレン基の炭素原子数は、例えば、1〜30個であることができ、1〜20個であることが好ましく、1〜12個であることがさらに好ましい。アルキレン基を構成する一つ以上の互いに隣接しないCH2基は−O−,−C(=O)O−,−O−C(=O)−,−O−C(=O)O−または−C(=O)−に置換されていてもよく、および/または、アルキレン基を構成する一つ以上のH原子はハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基)、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基)に置換されていてもよい。X1およびX2でいう「置換アルキレン基」はこのような定義で用いられる。但し、X1およびX2は、置換されていないアルキレン基であることが好ましい。
【0017】
1およびL4は、それぞれ独立に単結合、−O−CO−O−,−CO−O−,−CO−S−,−CO−NR3−,−O−、−S−、−O−CO−、−S−CO−、−NR3−CO−、−C≡C−または−CH=CH−であり、R3は水素原子あるいはアルキル基である。L1およびL4として好ましいのは、−O−CO−O−、−CO−O−、−CO−S−、−O−、−S−、−O−CO−、−S−CO−であり、−O−がさらに好ましい。
2およびL3は、それぞれ独立に単結合、−O−CO−O−,−CO−O−,−CO−S−,−CO−NR3−、−O−CO−、−S−CO−、−NR3−CO−、−C≡C−または−CH=CH−であり、R3は水素原子あるいはアルキル基である。L2およびL3として好ましいのは、単結合、−CO−O−、−CO−S−、−O−CO−、−S−CO−であり、−CO−O−および−O−CO−がさらに好ましい。
【0018】
1、Y2およびY3は、それぞれ独立に、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基)、アルケニル基、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基)である。Y1、Y2およびY3は、フッ素原子、シアノ基、メチル基であることが好ましい。n1、n2およびn3は、それぞれ独立に、0〜4であり、0〜1であることが好ましく、0であることがさらに好ましい。mは、0〜4であり、0〜3であることが好ましく、1〜2であることがさらに好ましい。
【0019】
また、m個の式(II)で表される繰り返し単位は、各単位においてそれぞれ独立に、Y2、n2およびL3を決定することができる。
【0020】
【化4】

【0021】
式(I)で表される化合物のうち、本発明では以下の式(X)で表される化合物を選択して用いることができる。
【0022】
【化5】

【0023】
式(X)において、R1およびR2はそれぞれ独立に水素原子またはアルキル基である。
1、X2、L1〜L4、Y1〜Y3、n1〜n3およびmの定義および好ましい範囲は、一般式(I)において説明したとおりである。
【0024】
以下に、式(I)で表される棒状化合物の例を示す。
【0025】
【化6】

【0026】
【化7】

【0027】
【化8】

【0028】
一般式(I)で表される棒状化合物は、単独で液晶性を示すことができる。但し、この棒状化合物を他の液晶と混合することより液晶性を示してもよい。発現する液晶相は、スメクチックA相が好ましい。
一般式(I)で表される棒状化合物を他の液晶性化合物と混合して用いる場合、一般式(I)で表される棒状化合物の液晶性分子全体に対する割合は、1〜99質量%が好ましく、10〜98質量%がさらに好ましく、30〜95質量%が最も好ましい。
【0029】
併用する液晶性化合物は、円盤状液晶性化合物よりも棒状液晶性化合物の方が好ましい。他の棒状液晶性化合物は、例えば、Makromol.Chem.,190巻、2255頁(1989年)、Advanced Materials 5巻、107頁(1993年)、米国特許4683327号、同5622648号、同5770107号各明細書、国際公開WO95/22586号、同95/24455号、同97/00600号、同98/23580号、同98/52905号、特開平2004−特開平1−272551号、同6−16616号、同7−110469号、同11−80081号、および特開2001−328973号の各公報に記載された化合物があることができる。
【0030】
液晶状態の温度領域は、0℃〜300℃が好ましく、10℃〜250℃がさらに好ましく、20℃〜200℃が最も好ましい。
【0031】
本発明の光学異方性膜は、上記一般式(I)で表される棒状化合物の架橋物を含有し、この棒状化合物の架橋物は、スメクチック相で配向を固定化されていることを特徴とする。
【0032】
以下において、本発明の光学異方性膜について、この光学異方性膜を用いる本発明の液晶表示装置の一実施形態およびその構成部材とともに、順次説明する。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0033】
本明細書において、「平行」、「直交」とは、厳密な角度±10°未満の範囲内であることを意味する。この範囲は厳密な角度との誤差は、±5°未満であることが好ましく、±2°未満であることがより好ましい。また、「実質的に垂直」とは、厳密な垂直の角度よりも±20°未満の範囲内であることを意味する。この範囲は厳密な角度との誤差は、±15°未満であることが好ましく、±10°未満であることがより好ましい。また、「遅相軸」は、屈折率が最大となる方向を意味する。さらに屈折率の測定波長は特別な記述がない限り、可視光域のλ=550nmでの値である。
【0034】
本明細書において「偏光板」とは、特に断らない限り、長尺の偏光板および液晶装置に組み込まれる大きさに裁断された(本明細書において、「裁断」には「打ち抜き」および「切り出し」等も含むものとする)偏光板の両者を含む意味で用いられる。また、本明細書では、「偏光膜」および「偏光板」を区別して用いるが、「偏光板」は「偏光膜」の少なくとも片面に該偏光膜を保護する透明保護膜を有する積層体を意味するものとする。
【0035】
まず、図面を用いて本発明の液晶表示装置の実施の形態を詳細に説明する。図1は、本発明の液晶表示装置の画素領域例を示す模式図である。図2および図3は、本発明の液晶表示装置の一実施形態の模式図である。
[液晶表示装置]
図2に示す液晶表示装置は、偏光膜8および20と、第1位相差領域10と、第2位相差領域12と、基板13および17と、該基板に挟持される液晶層15とを有する。偏光膜8及20は、それぞれ保護膜7aと7bおよび19aと19bによって挟持されている。
【0036】
図2の液晶表示装置では、液晶セルは、基板13および17と、これらに挟持される液晶層15からなる。液晶層の厚さd(μm)と屈折率異方性Δnとの積Δn・dは透過モードにおいて、ねじれ構造を持たないIPS型では0.2〜0.4μmの範囲が最適値となる。この範囲では白表示輝度が高く、黒表示輝度が小さいことから、明るくコントラストの高い表示装置が得られる。基板13および17の液晶層15に接触する表面には、配向膜(不図示)が形成されていて、液晶分子を基板の表面に対して略平行に配向させ、配向膜上に施されたラビング処理方向14および18等により、電圧無印加状態もしくは低印加状態における液晶分子配向方向が制御されている。また、基板13若しくは17の内面には、液晶分子に電圧印加可能な電極(図2中不図示)が形成されている。
【0037】
図1に、液晶層15の1画素領域中の液晶分子の配向を模式的に示す。図1は、液晶層15の1画素に相当する程度の極めて小さい面積の領域中の液晶分子の配向を、基板13および17の内面に形成された配向膜のラビング方向4、および基板13および17の内面に形成された液晶分子に電圧印加可能な電極2および3とともに示した模式図である。電界効果型液晶として正の誘電異方性を有するネマチック液晶を用いてアクティブ駆動を行った場合の、電圧無印加状態若しくは低印加状態での液晶分子配向方向は5aおよび5bであり、この時に黒表示が得られる。電極2および3間に印加されると、電圧に応じて液晶分子は6aおよび6b方向へとその配向方向を変える。通常、この状態で明表示を行なう。
【0038】
再び図2において、偏光膜8の透過軸9と、偏光膜20の透過軸21は直交して配置されている。第1位相差領域10の遅相軸11は、偏光膜8の透過軸9および黒表示時の液晶層15中の液晶分子の遅相軸方向16に平行である。
図2に示す液晶表示装置では、偏光膜8が二枚の保護膜7aおよび7bに挟持された構成を示しているが、保護膜7bはなくてもよい。また、偏光膜20も二枚の保護膜19aおよび19bに挟持されているが、液晶層15に近い側の保護膜19aはなくてもよい。なお、図2の態様では、第1位相差領域および第2位相差領域は、液晶セルの位置を基準にして、液晶セルと視認側の偏光膜との間に配置されていてもよいし、液晶セルと背面側の偏光膜との間に配置されていてもよい。本実施形態では、いずれの構成においても、第2位相差領域が液晶セルにより近くなるように配置する。
【0039】
本発明の他の実施形態を図3に示す。図3に液晶表示装置における各部材に付された番号は、図2と同じである。図3の液晶表示装置は、第2位相差領域12が偏光膜8および第1位相差領域10の間に配置されている。図3の液晶表示装置において、保護膜7bまたは保護膜19aはなくてもよい。図3に示す態様では、第1位相差領域10は、その遅相軸11が、偏光膜8の透過軸9と黒表示時の液晶層15中の液晶分子の遅相軸方向16に直交になるように配置される。なお、図3の態様では、第1位相差領域および第2位相差領域は、液晶セルの位置を基準にして、液晶セルと視認側の偏光膜との間に配置されていてもよいし、液晶セルと背面側の偏光膜との間に配置されていてもよい。本実施形態では、いずれの構成においても、第1位相差領域が液晶セルにより近くなるように配置する。
【0040】
なお、図3には、上側偏光板および下側偏光板を備えた透過モードの表示装置の態様を示したが、本発明は一の偏光板のみを備える反射モードの態様であってもよく、かかる場合は、液晶セル内の光路が2倍になることから、最適Δn・dの値は上記の1/2程度の値になる。また、本発明に用いられる液晶セルはIPSモードに限定されることなく、黒表示時に液晶分子が前記一対の基板の表面に対して実質的に平行に配向する液晶表示装置であれば、いずれも好適に用いることができる。この例としては強誘電性液晶表示装置、反強誘電性液晶表示装置、ECB型液晶表示装置がある。
【0041】
本発明の液晶表示装置は、図1〜図3に示す構成に限定されず、他の部材を含んでいてもよい。例えば、液晶層と偏光膜との間にカラーフィルターを配置してもよい。また、偏光膜の保護膜の表面に反射防止処理やハードコートを施しても良い。また、構成部材に導電性を付与したものを使用してもよい。また、透過型として使用する場合は、冷陰極あるいは熱陰極蛍光管、あるいは発光ダイオード、フィールドエミッション素子、エレクトロルミネッセント素子を光源とするバックライトを背面に配置することができる。この場合、バックライトの配置は図2および図3の上側であっても下側であっても良い。また、液晶層とバックライトとの間に、反射型偏光板や拡散板、プリズムシートや導光板を配置することもできる。また、上記した様に、本発明の液晶表示装置は、反射型であってもよく、かかる場合は、偏光板は観察側に1枚配置したのみでよく、液晶セル背面あるいは液晶セルの下側基板の内面に反射膜を配置する。もちろん前記光源を用いたフロントライトを液晶セル観察側に設けることも可能である。
【0042】
本発明の液晶表示装置には、画像直視型、画像投影型や光変調型が含まれる。本発明は、TFTやMIMのような3端子または2端子半導体素子を用いたアクティブマトリックス液晶表示装置に適用した態様が特に有効である。勿論、時分割駆動と呼ばれるパッシブマトリックス液晶表示装置に適用した態様も有効である。
【0043】
以下、本発明の液晶表示装置に使用される光学異方性膜および液晶表示装置に使用可能な種々の部材の好ましい光学特性や部材に用いられる材料、その製造方法等について、詳細に説明する。
【0044】
本明細書において、Re(λ)、Rth(λ)は各々、波長λにおける面内のリターデーションおよび厚さ方向のリターデーションを表す。Re(λ)はKOBRA 21ADH(王子計測機器(株)製)において波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。Rth(λ)は前記Re(λ)、面内の遅相軸(KOBRA 21ADHにより判断される)を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して+40°傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて測定したレターデーション値、および面内の遅相軸を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して−40°傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて測定したレターデーション値の計3つの方向で測定したレターデーション値と平均屈折率の仮定値および入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADHが算出する。ここで平均屈折率の仮定値は ポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学フィルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについてはアッベ屈折計で測定することができる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する:セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA 21ADHはnx、ny、nzを算出する。この算出されたnx,ny,nzよりNz=(nx−nz)/(nx−ny)がさらに算出される。
【0045】
[第1位相差領域]
本発明の液晶表示装置に含まれる第1位相差領域は、レターデーションReが20nm〜150nmである。斜め方向の光漏れを効果的に低減するためには、第1位相差領域のReは、40nm〜115nmであるのがより好ましく、60nm〜95nmであるのがさらに好ましい。また、Nzは1.5〜7である。斜め方向の光漏れを効果的に低減するためには、第1位相差領域のNzは、2.0〜5.5であるのがより好ましく、2.5〜4.5であるのがさらに好ましい。
【0046】
基本的には前記第1位相差領域は、前記光学特性を有する限り、その材料および形態については特に制限されない。例えば、複屈折ポリマーフィルムからなる位相差膜、透明支持体上に高分子化合物を塗布後に加熱塩した膜、および透明支持体上に低分子あるいは高分子液晶性化合物を塗布もしくは転写することによって形成された位相差層を有する位相差膜など、いずれも第1位相差領域として使用することができる。また、それぞれを積層して使用することもできる。
【0047】
複屈折ポリマーフィルムとしては、複屈折特性の制御性や透明性、耐熱性に優れるものが好ましい。この場合、用いる高分子材料としては均一な二軸配向が達成できる高分子であれば特に制限はないが、従来公知のもので溶液流延法や押出し成形方式で製膜できるもの好ましく、ノルボルネン系高分子、ポリカーボネート系高分子、ポリアリレート系高分子、ポリエステル系高分子、ポリサルフォン等の芳香族系高分子、セルロースアシレート、または、それらポリマーの2種または3種以上を混合したポリマーなどがあげられる。
【0048】
フィルムの二軸配向は、押出し成形方式や流延製膜方式等の適宜な方式で製造した当該熱可塑性樹脂からなるフィルムを、例えばロールによる縦延伸方式、テンターによる横延伸方式や二軸延伸方式などにより、延伸処理することにより達成することができる。前記のロールによる縦延伸方式では加熱ロールを用いる方法や雰囲気を加熱する方法、それらを併用する方法等の適宜な加熱方法を採ることができる。またテンターによる二軸延伸方式では全テンター方式による同時二軸延伸方法や、ロール・テンター法による逐次二軸延伸方法などの適宜な方法を採ることができる。
また、配向ムラや位相差ムラの少ないものが好ましい。その厚さは、位相差等により適宜に決定しうるが、一般には薄型化の点より1〜300μm、就中10〜200μm、特に20〜150μmとすることが適当である。
【0049】
ノルボルネン系高分子としては、ノルボルネンおよびその誘導体、テトラシクロドデセンおよびその誘導体、ジシクロペンタジエンおよびその誘導体、メタノテトラヒドロフルオレンおよびその誘導体などのノルボルネン系モノマーの主成分とするモノマーの重合体であり、ノルボルネン系モノマーの開環重合体、ノルボルネン系モノマーとこれと開環共重合可能なその他のモノマーとの開環共重合体、ノルボルネン系モノマーの付加重合体、ノルボルネン系モノマーとこれと共重合可能なその他のモノマーとの付加共重合体、およびの水素添加物などが挙げられる。これらの中でも、耐熱性、機械的強度等の観点から、ノルボルネン系モノマーの開環重合体水素化物が最も好ましい。ノルボルネン系重合体、単環の環状オレフィンの重合体または環状共役ジエンの重合体の分子量は、使用目的に応じて適宜選択されるが、シクロヘキサン溶液(重合体樹脂が溶解しない場合はトルエン溶液)のゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーで測定したポリイソプレンまたはポリスチレン換算の重量平均分子量で、通常5,000〜500,000、好ましくは8,000〜200,000、より好ましくは10,000〜100,000の範囲であるときに、フィルム(A)の機械的強度、および成形加工性とが高度にバランスされて好適である。
【0050】
セルロースアシレートのアシル基としては、脂肪族基でもアリル基でもよく特に限定されない。それらは、例えばセルロースのアルキルカルボニルエステル、アルケニルカルボニルエステルあるいは芳香族カルボニルエステル、芳香族アルキルカルボニルエステルなどであり、それぞれさらに置換された基を有していてもよく、総炭素数が22以下のエステル基が好ましい。これらの好ましいセルロースアシレートとしては、エステル部の総炭素数が22以下のアシル基(例えば、アセチル、プロピオニル、ブチロイル、バレル、ヘプタノイル、オクタノイル、デカノイル、ドデカノイル、トリデカノイル、ヘキサデカノイル、オクタデカノイルなど)、アリールカルボニル基(アクリル、メタクリルなど)、アリルカルボニルキ(ベンゾイル、ナフタロイルなど)、シンナモイル基を挙げることができる。これらの中でも、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートステアレート、セルロースアセテートベンゾエートなどであり、混合エステルの場合はその比率は特に限定されないが、好ましくはアセテートが総エステルの30モル%以上であることが好ましい。
【0051】
これらの中でも、セルロースアシレートが好ましく、特に写真用グレードのものが好ましく、市販の写真用グレードのものは粘度平均重合度、置換度等の品質を満足して入手することができる。写真用グレードのセルローストリアセテートのメーカーとしては、ダイセル化学工業(株)(例えばLT−20,30,40,50,70,35,55,105など)、イーストマンコダック社(例えば、CAB−551−0.01、CAB−551−0.02、CAB−500−5、CAB−381−0.5、CAB−381−02、CAB−381−20、CAB−321−0.2、CAP−504−0.2、CAP−482−20、CA−398−3など)、コートルズ社、ヘキスト社等があり、何れも写真用グレードのセルロースアシレートを使用できる。また、フィルムの機械的特性や光学的な特性を制御する目的で、可塑剤、界面活性剤、レターデーション調節剤、UV吸収剤などを今後することができる(参考資料:特開2002−277632号公報、特開2002−182215号公報)。
【0052】
透明樹脂をシートまたはフィルム状に成形する方法は、例えば、加熱溶融成形法、溶液流延法のいずれも用いることができる。加熱溶融成形法は、さらに詳細に、押出成形法、プレス成形法、インフレーション成形法、射出成形法、ブロー成形法、延伸成形法などに分類できるが、これらの方法の中でも、機械的強度、表面精度等に優れたフィルムを得るためには、押出成形法、インフレーション成形法、およびプレス成形法が好ましく、押出成形法が最も好ましい。成形条件は、使用目的や成形方法により適宜選択されるが、加熱溶融成形法による場合は、シリンダー温度が、好ましくは100〜400℃、より好ましくは150〜350℃の範囲で適宜設定される。上記シートまたはフィルムの厚みは、好ましくは10〜300μm、より好ましくは30〜200μmである。
【0053】
上記シートまたはフィルムの延伸は、該透明樹脂のガラス転移温度をTgとするとき、好ましくはTg−30℃からTg+60℃の温度範囲、より好ましくはTg−10℃からTg+50℃の温度範囲にて、少なくとも一方向に好ましくは1.01〜2倍の延伸倍率で行う。延伸方向は少なくとも一方向であればよいが、その方向は、シートが押出成形で得られたものである場合には、樹脂の機械的流れ方向(押出方向)であることが好ましく、延伸方法は自由収縮一軸延伸法、幅固定一軸延伸法、二軸延伸法などが好ましい。光学特性の制御はこの延伸倍率と加熱温度を制御することによって行なうことができる。
【0054】
[第2位相差領域]
本発明の液晶表示装置が有する第2位相差領域は、レターデーションReは実質的に0nmである。第2位相差領域の厚み方向のレターデーションRthは、−80nm〜−400nmである。
【0055】
前記第2位相差領域のRthのより好ましい範囲は、他の光学部材の光学特性に応じて変動し、特に、より近くに位置する偏光膜の保護膜(例えば、トリアセチルセルロースフィルム)のRthに応じて、大きく変動する。斜め方向の光漏れを効果的に低減するためには、第2位相差領域のRthは、−100nm〜−340nmであるのがより好ましく、−120nm〜−270nmであるのがさらに好ましい。一方、第2位相差領域のReは0近傍の値になる。具体的には、面内レターデーションReは、0〜50nmであるのが好ましく、0〜20nmであるのがより好ましい。
【0056】
本発明において、第2位相差領域は、スメクチック相で配向を固定化されている一般式(I)で表される棒状化合物の架橋物を含有する、本発明の光学異方性膜を含む。この光学異方性膜は、正の複屈折性を有する位相差層である。第2位相差領域は、前記光学異方性膜を位相差層として少なくとも1層有する層である。さらに、一の位相差層のみならず複数の位相差層を積層して、上記光学特性を示す第2位相差領域を構成することもできる。また、支持体と位相差層との積層体全体で上記光学特性を満たすようにして、第2位相差領域を構成してもよい。
【0057】
さらに、本発明の液晶表示装置が有する第2位相差領域においては、光学異方性膜に含まれる式(I)で表される化合物の架橋物は、実質的に垂直に配向した状態で固定化されている。実質的に垂直とは、フィルム面と棒状液晶性化合物のダイレクターとのなす角度が70°〜90°の範囲内であることを意味する。これらの液晶性化合物は斜め配向させてもよいし、傾斜角が徐々に変化するように(ハイブリッド配向)させてもよい。斜め配向またはハイブリッド配向の場合でも、平均傾斜角は70°〜90°であることが好ましく、80°〜90°がより好ましく、85°〜90°が最も好ましい。
【0058】
以下、本発明の第2位相差領域に好適に用いられる、本発明の光学異方性膜 (スメクチック相で配向を固定化されている一般式(I)で表される棒状化合物の架橋物を含有する位相差層) について説明する。
【0059】
本発明の光学異方性膜の形成には、一般式(I)で表される棒状化合物を用いる。位相差層の形成は、一般式(I)で表される棒状化合物を含有する組成物を、配向膜を有する透明支持体の配向膜上に塗布し、次いで棒状化合物を架橋させることで行うことができる。上記組成物には1種類の棒状化合物を含めることもできるが、1種類の棒状化合物を含めることもできる。さらに、上記組成物には、棒状化合物以外の非重合性(非架橋性)の液晶性化合物を併用することもできる。単独または併用で用いる個々の液晶性化合物についてはネマティック液晶相、スメクティック液晶相、またはコレステリック液晶相を形成してもよい。後述するように塗布する場合には溶媒や重合開始剤等の添加剤を入れた組成物を塗布するが、加熱乾燥の過程で溶媒が揮散した状態の液晶組成物として、配向固定させる温度範囲でスメクチック液晶相をとるものが好適に用いられる。
【0060】
上記棒状化合物から形成された光学異方性膜は、上記棒状性化合物に加えて、所望により、下記の重合開始剤や空気界面垂直配向剤や他の添加剤を含む塗布液を、支持体上の配向膜上に塗布し、垂直配向させ、該配向状態を固定することで形成することができる。仮支持体上に形成した場合は、該位相差層を支持体上に転写することで作製することもできる。さらに、1層の位相差層のみならず複数の位相差層を積層して、上記光学特性を示す第2位相差領域を構成することもできる。仮支持体上に形成する場合、および複数の位相差層を積層する場合、垂直配向剤等を添加することで、垂直配向させることができる。また、配向状態の固定は、後述するように、液晶性化合物に導入した重合性基(P)の重合反応により実施することが好ましい。また、支持体と位相差層との積層体全体で上記光学特性を満たすようにして、第2位相差領域を構成してもよい。
【0061】
垂直配向させた液晶性化合物は、配向状態を維持して固定する。配向状態の固定化は、液晶性化合物に導入した重合性基(P)、即ち、一般式(I)で表される棒状化合物のP1およびP2の重合(架橋)反応により実施する。重合反応には、熱重合開始剤を用いる熱重合反応と光重合開始剤を用いる光重合反応とが含まれる。光重合反応が好ましい。オキシラニル基、オキセタニル基のようなカチオン重合の場合、光カチオン開始剤および/または熱カチオン開始剤を用いて固定化を行う。光カチオン発生剤とは、適当な光の波長を照射することによりカチオンを発生できる化合物を意味し、有機スルフォニウム塩系、ヨードニウム塩系、フォスフォニウム塩系等を例示する事ができる。これら化合物の対イオンとしては、アンチモネート、フォスフェート、などが好ましく用いられる。熱カチオンカチオン剤とは、適当な温度に加熱されることによりカチオンを発生できる化合物であり、例えば、ベンジルスルホニウム塩類、ヒドラジニウム塩類が挙げられる。また、ビニルシクロプロパン基のようなラジカル重合の場合、光ラジカル発生剤の例には、α−カルボニル化合物(米国特許2367661号、同2367670号の各明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許2448828号明細書記載)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許2722512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許3046127号、同2951758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許3549367号明細書記載)、アクリジンおよびフェナジン化合物(特開昭60−105667号公報、米国特許4239850号明細書記載)およびオキサジアゾール化合物(米国特許4212970号明細書記載)が含まれる。オキシラニル基、オキセタニル基のようなカチオン重合の場合、光カチオン発生剤および/または熱カチオン発生剤を用いて重合させる。
【0062】
光重合開始剤の使用量は、塗布液の固形分の0.01〜20質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%であることがさらに好ましい。棒状液晶性分子の重合のための光照射は、紫外線を用いることが好ましい。照射エネルギーは、20mJ/cm2〜50J/cm2であることが好ましく、100〜800mJ/cm2であることがさらに好ましい。光重合反応を促進するため、加熱条件下で光照射を実施してもよい。前記光学異方性層を含む第1位相差領域の厚さは、0.1〜10μmであることが好ましく、0.5〜5μmであることがさらに好ましく、1〜5μmであることが最も好ましい。
【0063】
[配向膜界面側の垂直配向促進剤]
本発明の光学異方性膜を構成する位相差層を形成するために用いられる組成物は、配向膜界面側の垂直配向促進剤を含有していても良い。配向膜界面側の垂直配向促進剤としてはオニウム塩を好適に用いることができる。本発明においてオニウム塩は配向膜界面側において棒状液晶化合物を垂直配向させるのに寄与する。前記オニウム塩の例は、アンモニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩等のオニウム塩が含まれる。好ましくは、4級オニウム塩であり、特に好ましくは第4級アンモニウム塩である。
【0064】
第4級アンモニウムは、一般に第3級アミン(例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリエタノールアミン、N−メチルピロリジン、N−メチルピペリジン、N,N−ジメチルピペラジン、トリエチレンジアミン、N,N,N',N'−テトラメチルエチレンジアミンなど)あるいは含窒素複素環(ピリジン環、ピコリン環、2,2'−ビピリジル環、4,4'−ビピリジル環、1,10−フェナントロリン環、キノリン環、オキサゾール環、チアゾール環、N−メチルイミダゾール環、ピラジン環、テトラゾール環など)をアルキル化(メンシュトキン反応)、アルケニル化、アルキニル化あるいはアリール化して得られる。
【0065】
第4級アンモニウム塩としては、含窒素複素環からなる第4級アンモニウム塩が好ましく、特に好ましくは第4級ピリジニウム塩である。具体的には、例えば、以下に示した化合物を挙げられる。
【化9】

【0066】
[空気界面垂直配向剤]
通常、液晶性化合物は、空気界面側では傾斜して配向する性質を有するので、均一に垂直配向した状態を得るために、空気界面側において液晶性化合物を垂直に配向制御することが必要である。この目的のために、空気界面側に偏在して、その排除体積効果や静電気的な効果によって液晶性化合物を垂直に配向させる作用を及ぼす化合物を液晶塗布液に含有させて、位相差膜を形成するのが好ましい。
【0067】
空気界面配向剤としては、例えば、以下に示した化合物を挙げることができる。
【化10】

【0068】
また、特開2002−20363号公報、特開2002−129162号公報に記載されている化合物を用いることができる。また、特開2004−53981号公報の段落番号[0072]〜[0075]および特開2004−004688号公報の段落番号[0071]〜[0078]に記載される事項も本発明に適宜適用することができる。
【0069】
[配向膜]
配向膜は、液晶性分子の配向方向を規定する機能を有する。しかし、本発明はホメオトロピック配向した液晶性組成物に関するものであり、面内の配向方向はないため、配向膜は本発明において必須ではない。配向膜は本発明の光学異方性膜の形成には用いられるが、光学異方性膜に配向膜が含まれる必要はない。但し、含まれていてもよい。配向膜は液晶性組成物の配向の均一性を向上させたり、ポリマー基材と光学異方性層との間の密着性を向上させることができるために、必要に応じて、用いることができる。また、液晶性化合物を配向後にその配向状態を固定してしまえば、配向膜はその役割を果たしているために、除去することも可能である。即ち、配向状態が固定された配向膜上の光学異方性層のみを偏光子上に転写して光学異方性層を有する偏光板を作製することも可能である。
【0070】
配向膜は、有機化合物(好ましくはポリマー)のラビング処理、無機化合物の斜方蒸着、マイクログルーブを有する層の形成、あるいはラングミュア・ブロジェット法(LB膜)による有機化合物(例、ω−トリコサン酸、ジオクタデシルメチルアンモニウムクロライド、ステアリル酸メチル)の累積のような手段で設けることができる。さらに、電場の付与、磁場の付与あるいは光照射により、配向機能が生じる配向膜も知られている。
【0071】
配向膜は、必要であればラビング処理することができる。配向膜に使用するポリマーは、原則として、液晶性分子を配向させる機能のある分子構造を有する。
本発明では、液晶性分子を配向させる機能に加えて、架橋性官能基(例、二重結合)を有する側鎖を主鎖に結合させるか、あるいは、液晶性分子を配向させる機能を有する架橋性官能基を側鎖に導入することが好ましい。
配向膜に使用されるポリマーは、それ自体架橋可能なポリマーあるいは架橋剤により架橋されるポリマーのいずれも使用することができし、これらの組み合わせを複数使用することができる。
【0072】
ポリマーの例には、例えば特開平8−338913号公報明細書中段落番号[0022]記載のメタクリレート系重合体、スチレン系重合体、ポリオレフィン、ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコール、ポリ(N−メチロールアクリルアミド)、ポリエステル、ポリイミド、酢酸ビニル重合体、カルボキシメチルセルロース、ポリカーボネート等が含まれる。シランカップリング剤をポリマーとして用いることができる。水溶性ポリマー(例、ポリ(N−メチロールアクリルアミド)、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール)が好ましく、ゼラチン、ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコールがさらに好ましく、ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコールが最も好ましい。重合度が異なるポリビニルアルコールまたは変性ポリビニルアルコールを2種類併用することが特に好ましい。
【0073】
ポリビニルアルコールの鹸化度は、70〜100%が好ましく、80〜100%がさらに好ましい。ポリビニルアルコールの重合度は、100〜5000であることが好ましい。
【0074】
液晶性分子を配向させる機能を有する側鎖は、一般に疎水性基を官能基として有する。具体的な官能基の種類は、液晶性分子の種類および必要とする配向状態に応じて決定する。
例えば、変性ポリビニルアルコールの変性基としては、共重合変性、連鎖移動変性またはブロック重合変性により導入できる。変性基の例には、親水性基(カルボン酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基、アミノ基、アンモニウム基、アミド基、チオール基等)、炭素数10〜100個の炭化水素基、フッ素原子置換の炭化水素基、チオエーテル基、重合性基(不飽和重合性基、エポキシ基、アジリニジル基等)、アルコキシシリル基(トリアルコキシ、ジアルコキシ、モノアルコキシ)等が挙げられる。これらの変性ポリビニルアルコール化合物の具体例として、例えば特開2000−155216号公報明細書中の段落番号[0022]〜[0145]、同2002−62426号公報明細書中の段落番号[0018]〜[0022]に記載のもの等が挙げられる。
【0075】
架橋性官能基を有する側鎖を配向膜ポリマーの主鎖に結合させるか、あるいは、液晶性分子を配向させる機能を有する側鎖に架橋性官能基を導入すると、配向膜のポリマーと光学異方性層に含まれる多官能モノマーとを共重合させることができる。その結果、多官能モノマーと多官能モノマーとの間だけではなく、配向膜ポリマーと配向膜ポリマーとの間、そして多官能モノマーと配向ポリマーとの間も共有結合で強固に結合される。従って、架橋性官能基を配向膜ポリマーに導入することで、光学補償シートの強度を著しく改善することができる。
配向膜ポリマーの架橋性官能基は、多官能モノマーと同様に、重合性基を含むことが好ましい。具体的には、例えば特開2000−155216号公報明細書中段落番号[0080]〜[0100]記載のもの等が挙げられる。
【0076】
配向膜ポリマーは、上記の架橋性官能基とは別に、架橋剤を用いて架橋させることもできる。
架橋剤としては、アルデヒド、N−メチロール化合物、ジオキサン誘導体、カルボキシル基を活性化することにより作用する化合物、活性ビニル化合物、活性ハロゲン化合物、イソオキサゾールおよびジアルデヒド澱粉が含まれる。2種類以上の架橋剤を併用してもよい。具体的には、例えば特開2002−62426号公報明細書中の段落番号[0023]〜[024]記載の化合物等が挙げられる。反応活性の高いアルデヒド、特にグルタルアルデヒドが好ましい。
【0077】
架橋剤の添加量は、ポリマーに対して0.1〜20質量%が好ましく、0.5〜15質量%がさらに好ましい。配向膜に残存する未反応の架橋剤の量は、1.0質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがさらに好ましい。このように調節することで、配向膜を液晶表示装置に長期使用、或は高温高湿の雰囲気下に長期間放置しても、レチキュレーション発生のない充分な耐久性が得られる。
【0078】
配向膜は、基本的に、配向膜形成材料である上記ポリマー、架橋剤を含む透明支持体上に塗布した後、加熱乾燥(架橋させ)し、必要であればラビング処理することにより形成することができる。架橋反応は、前記のように、透明支持体上に塗布した後、任意の時期に行なって良い。ポリビニルアルコールのような水溶性ポリマーを配向膜形成材料として用いる場合には、塗布液は消泡作用のある有機溶媒(例、メタノール)と水の混合溶媒とすることが好ましい。その比率は質量比で、水:メタノールが0より大きく99以下:100未満1以上が好ましく、0より大きく91以下:100未満9以上であることがさらに好ましい。これにより、泡の発生が抑えられ、配向膜、さらには光学異方層の層表面の欠陥が著しく減少する。
【0079】
配向膜の塗布方法は、スピンコーティング法、ディップコーティング法、カーテンコーティング法、エクストルージョンコーティング法、ロッドコーティング法またはロールコーティング法が好ましい。特にロッドコーティング法が好ましい。また、乾燥後の膜厚は0.1〜10μmが好ましい。加熱乾燥は、20度〜110度で行なうことができる。充分な架橋を形成するためには60度〜100度が好ましく、特に80度〜100度が好ましい。乾燥時間は1分〜36時間で行なうことができるが、好ましくは1分〜30分である。pHも、使用する架橋剤に最適な値に設定することが好ましく、グルタルアルデヒドを使用した場合は、pH4.5〜5.5で、特に5が好ましい。
【0080】
配向膜は、透明支持体上または上記下塗層上に設けられる。配向膜は、上記のようにポリマー層を架橋したのち、必要であれば表面をラビング処理することにより得ることができる。
【0081】
前記ラビング処理は、LCDの液晶配向処理工程として広く採用されている処理方法を適用することができる。即ち、配向膜の表面を、紙やガーゼ、フェルト、ゴムあるいはナイロン、ポリエステル繊維などを用いて一定方向に擦ることにより、配向を得る方法を用いることができる。一般的には、長さおよび太さが均一な繊維を平均的に植毛した布などを用いて数回程度ラビングを行うことにより実施される。
【0082】
次に、配向膜を機能させて、配向膜の上に設けられる光学異方性層の液晶性分子を配向させる。その後、必要に応じて、配向膜ポリマーと光学異方性層に含まれる多官能モノマーとを反応させるか、あるいは、架橋剤を用いて配向膜ポリマーを架橋させる。配向膜の膜厚は、0.1〜10μmの範囲にあることが好ましい。
【0083】
[溶媒]
塗布液の調製に使用する溶媒としては、有機溶媒が好ましく用いられる。有機溶媒の例には、アミド(例、N,N−ジメチルホルムアミド)、スルホキシド(例、ジメチルスルホキシド)、ヘテロ環化合物(例、ピリジン)、炭化水素(例、ベンゼン、ヘキサン)、アルキルハライド(例、クロロホルム、ジクロロメタン)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸ブチル)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン)、エーテル(例、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン)が含まれる。アルキルハライドおよびケトンが好ましい。二種類以上の有機溶媒を併用してもよい。塗布液の塗布は、公知の方法(例、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、ダイコーティング法)により実施できる。
【0084】
[位相差層中の他の材料]
上記の液晶性化合物と共に、可塑剤、界面活性剤、重合性モノマー等を併用して、塗工膜の均一性、膜の強度、液晶性化合物の配向性等を向上させることができる。これらの素材は液晶性化合物と相溶性を有し、配向を阻害しないことが好ましい。
【0085】
重合性モノマーとしては、ラジカル重合性もしくはカチオン重合性の化合物が挙げられる。好ましくは、多官能性ラジカル重合性モノマーであり、上記の重合性基含有の液晶化合物と共重合性のものが好ましい。例えば、特開2002−296423号公報明細書中の段落番号[0018]〜[0020]記載のものが挙げられる。上記化合物の添加量は、棒状液晶性分子に対して一般に1〜50質量%の範囲にあり、5〜30質量%の範囲にあることが好ましい。
【0086】
界面活性剤としては、従来公知の化合物が挙げられるが、特にフッ素系化合物が好ましい。具体的には、例えば特開2001−330725号公報明細書中の段落番号[0028]〜[0056]記載の化合物が挙げられる。
【0087】
液晶性化合物とともに使用するポリマーは、塗布液を増粘できることが好ましい。ポリマーの例としては、セルロースエステルを挙げることができる。セルロースエステルの好ましい例としては、特開2000−155216号公報明細書中の段落番号[0178]記載のものが挙げられる。液晶性化合物の配向を阻害しないように、上記ポリマーの添加量は、液晶性分子に対して0.1〜10質量%の範囲にあることが好ましく、0.1〜8質量%の範囲にあることがより好ましい。
【0088】
[支持体]
本発明では、液晶性化合物から形成された位相差層を、支持体上に形成してもよい。支持体は透明であるのが好ましく、具体的には、光透過率が80%以上であるのが好ましい。支持体は、波長分散が小さいのが好ましく、具体的には、Re400/Re700の比が1.2未満であることが好ましい。中でも、ポリマーフィルムが好ましい。透明支持体は第1位相差領域、第2位相差領域または偏光板保護膜を兼ねることもできる。また、透明支持体と位相差層全体で、第1位相差領域または第2位相差領域を構成していてもよい。支持体の光学異方性は小さいのが好ましく、面内レターデーション(Re)が20nm以下であることが好ましく、10nm以下であることがさらに好ましく、5nm以下であることが最も好ましい。また、第1位相差領域を兼ねる場合は、レターデーションReが20nm〜150nmであって、40nm〜115nmであるのがより好ましく、60nm〜95nmであるのがさらに好ましい。また、Nzが1.5〜7であって、2.0〜5.5であるのがより好ましく、2.5〜4.5であるのがさらに好ましい。
【0089】
支持体となるポリマーフィルムの例には、セルロースエステル、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアクリレートおよびポリメタクリレートのフィルムが含まれる。セルロースエステルフィルムが好ましく、アセチルセルロースフィルムがさらに好ましく、トリアセチルセルロースフィルムが最も好ましい。ポリマーフィルムは、ソルベントキャスト法により形成することが好ましい。透明支持体の厚さは、20〜500μmであることが好ましく、40〜200μmであることがさらに好ましい。透明支持体とその上に設けられる層(接着層、垂直配向膜あるいは位相差層)との接着を改善するため、透明支持体に表面処理(例、グロー放電処理、コロナ放電処理、紫外線(UV)処理、火炎処理)を実施してもよい。透明支持体の上に、接着層(下塗り層)を設けてもよい。また、透明支持体や長尺の透明支持体には、搬送工程でのすべり性を付与したり、巻き取った後の裏面と表面の貼り付きを防止するために、平均粒子サイズが10〜100nm程度の無機粒子を固形分重量比で5%〜40%混合したポリマー層を支持体の片側に塗布や支持体との共流延によって形成したものを用いることが好ましい。
【0090】
[偏光膜用保護膜]
第1および第2偏光膜用保護膜としては、可視光領域に吸収が無く、光透過率が80%以上であり、複屈折性に基づくレターデーションが小さいものが好ましい。具体的には、面内のReが0〜30nmが好ましく、0〜15nmがより好ましく、0〜5nmが最も好ましい。さらに、厚み方向のレターデーションRthは0〜40nmであることが好ましく、0〜20nmがより好ましく、0〜10nmであることが最も好ましい。この特性を有するフィルムであれば好適に用いることができるが、偏光膜の耐久性の観点からはセルロースアシレートやノルボルネン系のフィルムがより好ましい。セルロースアシレートフィルムのRthを小さくする方法として、例えば、以下に示した化合物を用いる方法を挙げることができる。
【化11】

【0091】
また、セルロースアシレートフィルムのRthを小さくする方法として、特開平11−246704号公報、特開2001−247717号公報に記載の方法なども挙げられる。また、セルロースアシレートフィルムの厚みを小さくすることによっても、Rthを小さくすることができる。第1および第2偏光膜用保護膜としてのセルロースシレートフィルムの厚みは10〜100μmであることが好ましく、10〜60μmであるのがより好ましく、20〜45μmであることがさらに好ましい。
【実施例】
【0092】
以下に実施例と比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0093】
一般式(I)で表される棒状化合物は、下記合成例に従って合成することができる。
【0094】
[合成例1]
例示化合物(1)を、下記のルートにより合成した。下記ルート中、MEMは、2−メトキシエトキシメチルの略語である。
【0095】
【化12】

【0096】
上記反応スキームにおいて、4−ヒドロキシ安息香酸メチル(31)(250mmol)、2−メトキシエトキシメチルクロライド(450mmol)の塩化メチレン溶液400mLにジイソプロピルエチルアミン(500mmol)を内温10℃以下で添加した。40℃まで昇温し、3時間撹拌した。水を加えて分液し、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去し、(32)を得た。得られた(32)のエタノール溶液100mLに水酸化ナトリウム(500mmol)の水溶液50mlを加え、4時間加熱還流した。希塩酸水にて中和した後、酢酸エチルを加えて分液した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去した。残渣をアセトニトリルで煮沸精製を行い、(33)(82%:(1)から2工程の収率)を得た。
【0097】
(33)(207mmol)のテトラヒドロフラン溶液250mLに、氷冷下、メタンスルホニルクロライド(207mmol)とジイソプロピルエチルアミン(248mmol)のテトラヒドロフラン10mL溶液を滴下した。滴下後、室温まで昇温させ、1時間撹拌した。その後、氷冷し、4−ヒドロキシベンズアルデヒド(207mmol)のテトラヒドロフラン溶液50mLを添加し、さらにジイソプロピルエチルアミン(248mmol)のテトラヒドロフラン溶液10mLを滴下した。滴下終了後、N,N−ジメチルアミノピリジンを触媒量加え、そのまま室温まで昇温し4時間撹拌した。酢酸エチルを加え、有機層を希塩酸で3回洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去し残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液:酢酸エチル/塩化メチレン=1/15)にて精製し、(34)を得た。得られた(34)のアセトニトリル溶液350mLにりん酸二水素ナトリウム二水和物(42mmol)の水溶液60mL、35%過酸化水素水(31mL)、亜塩素酸ナトリウム(269mmol)の水溶液150mL、テトラブチルアンモニウム硫酸水素塩(2.07mmol)を室温で加え、1.5時間撹拌した。水500mLを加え、ろ過後、残渣を酢酸エチルに溶かし無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、溶媒を減圧留去した。残渣をヘキサンで煮沸精製を行い、(35)(69%:(33)から2工程の収率)を得た。
【0098】
(35)(57.8mmol)のテトラヒドロフラン溶液150mLに、氷冷下、メタンスルホニルクロライド(57.8mmol)とジイソプロピルエチルアミン(69.4mmol)のテトラヒドロフラン10mL溶液を滴下した。滴下後、室温まで昇温させ、1時間撹拌した。その後、氷冷し、4−ヒドロキシベンズアルデヒド(57.8mmol)のテトラヒドロフラン溶液40mLを添加し、さらにジイソプロピルエチルアミン(69.4mmol)のテトラヒドロフラン溶液10mLを滴下した。滴下終了後、N,N−ジメチルアミノピリジンを触媒量加え、そのまま室温まで昇温し4時間撹拌した。水500mLを加え、ろ過後、残渣を塩化メチレンに溶かし無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、溶媒を減圧留去した。残渣をヘキサンで煮沸精製を行い、(36)(61%)を得た。
【0099】
(36)(44.4mmol)のアセトニトリル/酢酸エチル溶液(400mL/100mL)にりん酸二水素ナトリウム二水和物(8.90mmol)の水溶液15mL、35%過酸化水素水(6.70mL)、亜塩素酸ナトリウム(57.7mmol)の水溶液55.0mL、テトラブチルアンモニウム硫酸水素塩(0.444mmol)を室温で加え、7時間撹拌した。水200mLを加え、ろ過後、残渣を塩化メチレンに溶かし無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、溶媒を減圧留去した。残渣をヘキサンで煮沸精製を行い、(37)(53%)を得た。
【0100】
(37)(21.3mmol)のクロロホルム溶液300mLにトリフルオロ酢酸(213mmol)を加え、室温で6時間撹拌した。トリフルオロ酢酸、クロロホルムを減圧留去した後、残渣をヘキサンで煮沸精製し、(38)(82%)を得た。
【0101】
(38)(1.32mmol)のジメチルアセトアミド溶液12mLに、6−ブロモ−1−ヘキセン(3.43mmol)、炭酸カリウム(3.43mmol)を加え、40℃まで昇温し、4時間撹拌した。水20mLを加え、ろ過後、残渣を塩化メチレンに溶かし無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、溶媒を減圧留去した。残渣をヘキサンで煮沸精製を行い、(39)を得た。得られた(39)の塩化メチレン溶液50mLに3−クロロペルオキシベンゾイックアシッド(3.96mmol)を加え、室温で12時間撹拌する。飽和Na223水溶液15mL、飽和NaHCO3水溶液15mL加え、抽出し、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去し残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液:塩化メチレン/酢酸エチル=30/1)にて精製し、例示化合物(1)(46%:(38)から2工程の収率)を得た。
【0102】
[合成例2]
例示化合物(3)を、合成例1の例示化合物(1)と同様に合成した。ただし、(39)を以下の化合物に代えた。
【化13】

【0103】
[合成例3]
例示化合物(5)を、下記のルートで合成した。
【0104】
【化14】

【0105】
例示化合物(1)の合成中間体である(38)(1.32mmol)のジメチルホルムアミド溶液10mLに(40)(1.58mmol)、炭酸水素ナトリウム(2.90mmol)を加え、100℃に昇温して3時間撹拌した。希塩酸水にて中和した後、塩化メチレンを加えて分液した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去した。残渣をヘキサンで煮沸精製を行い、(41)を得た。得られた(41)のジメチルホルムアミド溶液10mLに(42)(1.72mmol)、炭酸水素ナトリウム(2.64mmol)を加え、100℃に昇温して4時間撹拌した。水40mLを加え、ろ過後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液:塩化メチレン/酢酸エチル=30/1)にて精製し、例示化合物(5)(31%:(38)から2工程の収率)を得た。
1H NMR (300MHz, CDCl3) δ1.2-2.1(m, 18H), 3.2-4.8(m, 20H ), 7.1(d, J = 9Hz, 2H),
7.3-7.7(m, 4H), 8.0-8.2(m, 4H), 8.25(d, J = 9Hz, 2H)
【0106】
[合成例4]
例示化合物(6)を、合成例3の例示化合物(5)と同様に合成した。ただし、(42)を以下の化合物に代えた。
1H NMR (300MHz, CDCl3) δ1.2-2.1(m, 22H), 3.2-4.8(m, 20H), 7.14(d, J = 9Hz, 2H), 7.3-7.7(m, 4H), 8.0-8.2(m, 4H), 8.25(d, J = 9Hz, 2H)
【化15】

【0107】
[合成例5]
例示化合物(21)を、下記のルートにより合成した。
【0108】
【化16】

【0109】
(a)(258mmol)の50%水酸化ナトリウム水溶液335gおよびヘキサン260ml混合溶液にテトラブチルアンモニウムブロマイド(12.9mmol)、(b)(774mmol)を加え、室温で30分撹拌した後、還流させ3時間撹拌した。水を加え、有機層を水で3回洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去し、得られた残渣を蒸留して(c)(86%)を得た。
【0110】
(c)(207mmol)のジメチルアセトアミド溶液250mLに、(d)(207mmol)、炭酸カリウム(230mmol)を加え、100℃まで昇温し、4時間撹拌した。酢酸エチルを加え、有機層を希塩酸で2回洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去し得られた残渣のアセトニトリル溶液350mLにりん酸二水素ナトリウム二水和物(42mmol)の水溶液60mL、35%過酸化水素水(31mL)、亜塩素酸ナトリウム(269mmol)の水溶液150mL、テトラブチルアンモニウム硫酸水素塩(2.07mmol)を室温で加え、1.5時間撹拌した。水500mLを加え、ろ過後、残渣を酢酸エチルに溶かし無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、溶媒を減圧留去した。残渣をヘキサンで煮沸精製を行い、(e)(73%:(c)から2工程の収率)を得た。
【0111】
(e)(44.6mmol)のテトラヒドロフラン溶液100mLに、氷冷下、メタンスルホニルクロライド(44.6mmol)とジイソプロピルエチルアミン(58.0mmol)のテトラヒドロフラン5mL溶液を滴下した。滴下後、室温まで昇温させ、1時間撹拌した。その後、氷冷し、(d)(44.6mmol)のテトラヒドロフラン溶液30mLを添加し、さらにジイソプロピルエチルアミン(58.0mmol)のテトラヒドロフラン溶液5mLを滴下した。滴下終了後、N,N−ジメチルアミノピリジンを触媒量加え、そのまま室温まで昇温し5時間撹拌した。酢酸エチルを加え、有機層を希塩酸で3回洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去し、得られた残渣のアセトニトリル溶液150mLにりん酸二水素ナトリウム二水和物(1.35g)の水溶液10mL、35%過酸化水素水(6.5mL)、亜塩素酸ナトリウム(6.3g)の水溶液10mL、テトラブチルアンモニウム硫酸水素塩(152mg)を室温で加え、4時間撹拌した。水100mLを加え、ろ過後、残渣を酢酸エチルに溶かし無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、溶媒を減圧留去した。残渣をヘキサンで煮沸精製を行い、(f)(81%:(e)から2工程の収率)を得た。
【0112】
(g)を(c)の合成を参考にして合成を行なった。ただし、(b)を以下の化合物(j)に代えた。
Br(CH210Br (j)
【0113】
(h)(22.8mmol)のジメチルホルムアミド溶液30mLに、(g)(25.1mmol)、炭酸水素ナトリウム(51.3mmol)を加え、80℃まで昇温し、4時間撹拌した。酢酸エチルを加え、有機層を希塩酸で2回洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去し残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液:ヘキサン/酢酸エチル = 1/1)にて精製し、(i)(70%)を得た。
【0114】
(f)(4.27mmol)のテトラヒドロフラン溶液20mLに、氷冷下、メタンスルホニルクロライド(4.27mmol)とジイソプロピルエチルアミン(5.55mmol)のテトラヒドロフラン5mL溶液を滴下した。滴下後、室温まで昇温させ、1時間撹拌した。その後、氷冷し、(i)(4.27mmol)のテトラヒドロフラン溶液10mLを添加し、さらにジイソプロピルエチルアミン(5.55mmol)のテトラヒドロフラン溶液5mLを滴下した。滴下終了後、N,N−ジメチルアミノピリジンを触媒量加え、そのまま室温まで昇温し3時間撹拌した。酢酸エチルを加え、有機層を希塩酸で2回洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去し残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液:ヘキサン/酢酸エチル=1/5)にて精製し、例示化合物(21)(59%)を得た。
1H NMR (300MHz, CDCl3) δ0.7-1.1(m, 6H), 1.2-2.1(m, 28H), 3.2-4.8(m, 20H), 7.0(d, J = 9Hz, 2H), 7.3-7.5(m, 4H), 7.6-7.8(m, 4H), 8.0-8.2(m, 4H), 8.3(d, J = 9Hz, 2H)
【0115】
[合成例6]
例示化合物(17)を、合成例1で合成した(e)、(i)を用いて合成した。
【化17】

(e)(4.27mmol)のテトラヒドロフラン溶液20mLに、氷冷下、メタンスルホニルクロライド(4.27mmol)とジイソプロピルエチルアミン(5.55mmol)のテトラヒドロフラン5mL溶液を滴下した。滴下後、室温まで昇温させ、50分間撹拌した。その後、氷冷し、(i)(4.27mmol)のテトラヒドロフラン溶液10mLを添加し、さらにジイソプロピルエチルアミン(5.55mmol)のテトラヒドロフラン溶液5mLを滴下した。滴下終了後、N,N−ジメチルアミノピリジンを触媒量加え、そのまま室温まで昇温し3時間撹拌した。酢酸エチルを加え、有機層を希塩酸で2回洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去し残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液:ヘキサン/酢酸エチル=1/5)にて精製し、例示化合物(17)(80%)を得た。
1H NMR (300MHz, CDCl3) δ0.7-1.1(m, 6H), 1.2-2.1(m, 28H), 3.2-4.8(m, 20H), 7.0(d, J = 8Hz, 2H), 7.3 (d, J = 8Hz, 2H), 7.6-7.8(m, 4H), 8.0-8.2(m, 4H)
【0116】
[合成例7]
例示化合物(30)を合成例5の例示化合物(21)と同様に合成した。ただし、(d)を以下の化合物(k)に代えた。
【化18】

1H NMR (300MHz, CDCl3) δ0.7-1.1(m, 6H), 1.2-2.1(m, 28H), 3.2-4.8(m, 20H), 6.8-8.7(m, 14H)
【0117】
本発明に従う棒状化合物を他の液晶性化合物と混合して用いる場合、本発明に従う棒状化合物の液晶性分子全体に対する割合は、1〜99質量%が好ましく、10〜98質量%がさらに好ましく、30〜95質量%が最も好ましい。併用する液晶性化合物は、円盤状液晶性化合物よりも棒状液晶性化合物の方が好ましい。他の棒状液晶性化合物は、特開平8−27284号、同7−306317号、同9−104866号、特開2001−4837号の各公報に記載がある。
【0118】
液晶状態の温度領域は、0℃〜300℃が好ましく、10℃〜250℃がさらに好ましく、20℃〜200℃が最も好ましい。
【0119】
[製造例1]
<IPSモード液晶セル1の作製>
一枚のガラス基板上に、図1に示す様に、隣接する電極間の距離が20μmとなるように電極(図1中2および3)を配設し、その上にポリイミド膜を配向膜として設け、ラビング処理を行なった。図1中に示す方向4に、ラビング処理を行なった。別に用意した一枚のガラス基板の一方の表面にポリイミド膜を設け、ラビング処理を行なって配向膜とした。二枚のガラス基板を、配向膜同士を対向させて、基板の間隔(ギャップ;d)を3.9μmとし、二枚のガラス基板のラビング方向が平行となるようにして重ねて貼り合わせ、次いで屈折率異方性(Δn)が0.0769および誘電率異方性(Δε)が正の4.5であるネマチック液晶組成物を封入した。液晶層のd・Δnの値は300nmであった。
【0120】
<第1位相差領域1、第1位相差領域2、第1位相差領域3の作製>
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、セルロースアセテート溶液を調製した。該溶液を保留粒子サイズ4μm、濾水時間35秒の濾紙(No.63、アドバンテック製)を5kg/cm2以下で用いてろ過した。
【0121】
【表1】

【0122】
別のミキシングタンクに、下記のレターデーション上昇剤Aを8質量部、レターデーション上昇剤Bを10質量部、二酸化珪素微粒子(平均粒子サイズ:0.1μm)0.28質量部、メチレンクロライド80質量部およびメタノール20質量部を投入し、加熱しながら攪拌して、レターデーション上昇剤溶液(かつ微粒子分散液)を調製した。セルロースアセテート溶液474質量部に該レターデーション上昇剤溶液40質量部を混合し、充分に攪拌してドープを調製した。
【0123】
【化19】

【0124】
得られたドープを、バンド流延機を用いて流延した。残留溶剤量が15質量%のフィルムを、130℃の条件で、テンターを用いて20%の延伸倍率で横延伸し、延伸後の幅のまま50℃で30秒間保持した後クリップを外してセルロースアセテートフィルムを作製した。延伸終了時の残留溶媒量は5質量%であり、さらに乾燥して残留溶媒量を0.1質量%未満としてフィルムを作製した。
【0125】
このようにして得られたフィルム(第1位相差領域1)の厚さは80μmであった。作製した第1位相差領域1について、自動複屈折率計(KOBRA−21ADH、王子計測機器(株)社製)を用いて、Reの光入射角度依存性を測定することによってReが70nm、Rthが175nmであり、これからNzが3.0であることが分かった。
【0126】
別のミキシングタンクに、前記のレターデーション上昇剤Aを16質量部、レターデーション上昇剤Bを8質量部、二酸化珪素微粒子(平均粒子サイズ:0.1μm)0.28質量部、メチレンクロライド80質量部およびメタノール20質量部を投入し、加熱しながら攪拌して、レターデーション上昇剤溶液(かつ微粒子分散液)を調製した。セルロースアセテート溶液474質量部に該レターデーション上昇剤溶液45質量部を混合し、充分に攪拌してドープを調製し、前述の第1位相差領域1同様に製膜した。このようにして得られたフィルム(第1位相差領域2)の厚さは80μmであった。作製した第1位相差領域2について、自動複屈折率計(KOBRA−21ADH、王子計測機器(株)社製)を用いて、Reの光入射角度依存性を測定することによって、Reが60nm、Rthが210nmであり、これからNzが4.0であることが分かった。
【0127】
別のミキシングタンクに、前記のレターデーション上昇剤Aを18質量部、二酸化珪素微粒子(平均粒子サイズ:0.1μm)0.28質量部、メチレンクロライド80質量部およびメタノール20質量部を投入し、加熱しながら攪拌して、レターデーション上昇剤溶液(かつ微粒子分散液)を調製した。セルロースアセテート溶液474質量部に該レターデーション上昇剤溶液25質量部を混合し、充分に攪拌してドープを調製し、延伸倍率を23%にした以外は前述の第1位相差領域1同様に製膜した。このようにして得られたフィルム(第1位相差領域3)の厚さは80μmであった。作製した第1位相差領域3について、自動複屈折率計(KOBRA−21ADH、王子計測機器(株)社製)を用いて、Reの光入射角度依存性を測定することによって、Reが35nm、Rthが135nmであり、これからNzが4.4であることが分かった。
【0128】
<第2位相差領域1〜第2位相差領域15の作製>
製作した第1位相差領域1、第1位相差領域2、および第1位相差領域3の表面のケン化処理を行い、このフィルム上に下記の組成の配向膜塗布液をワイヤーバーコーターで20ml/m2塗布した。60℃の温風で60秒、さらに100℃の温風で120秒乾燥し、膜を形成した。次に、形成した膜にフィルムの遅相軸方向と平行の方向にラビング処理を施して、配向膜を得た。
配向膜塗布液の組成
下記の変性ポリビニルアルコール 10質量部
水 371質量部
メタノール 119質量部
グルタルアルデヒド 0.5質量部
【0129】
【化20】

【0130】
次に、棒状液晶化合物(例示化合物1、5、6、9、17、18、21または30)3.8g、トリアリルルフォニウムヘキサフルオロアンチモネート50%プロピレンカーボネート溶液(アルドリッチ社製)0.076g、下記のオニウム塩0.076g、下記の空気界面側垂直配向剤0.002gを9.2gのメチルエチルケトンに溶解した溶液(2−1〜2−12)を調製した。棒状液晶化合物および空気界面側垂直配向剤の種類は表2および表4に示すようにした。この溶液を、前記配向膜を形成したフィルムの配向膜側に、下記の番手のワイヤーバーでそれぞれ塗布した。これを金属の枠に貼り付けて、100℃の恒温槽中で2分間加熱し、棒状液晶化合物を配向させた。次に、130℃で500mJ/cm高圧水銀灯により、20秒間UV照射し棒状液晶化合物を架橋して、その後、室温まで放冷して位相差層を作製した。第1位相差領域と第2位相差領域との組み合わせ、および使用したワイヤーバーの番手を表3、表5および表7に示す。
【0131】
【化21】

【0132】
【表2】

【0133】
【表3】

【0134】
自動複屈折率計(KOBRA−21ADH、王子計測機器(株)社製)を用いて、製作したフィルムのReの光入射角度依存性を測定し、予め測定した支持体の寄与分を差し引くことによって、第2位相差領域のみの光学特性を算出したところ、それぞれ第2位相差領域1はReが0nm、Rthが−225nm、第2位相差領域2はReが0nm、Rthが−180nm、第2位相差領域3はReが0nm、Rthが−295nm、第2位相差領域4はReが0nm、Rthが−170nm、第2位相差領域5はReが0nm、Rthが−292nm、第2位相差領域6はReが0nm、Rthが−290nmであって、いずれも棒状液晶が略垂直に配向していることを確認した。
【0135】
【表4】

【0136】
【表5】

【0137】
自動複屈折率計(KOBRA−21ADH、王子計測機器(株)社製)を用いて、製作したフィルムのReの光入射角度依存性を測定し、予め測定した支持体の寄与分を差し引くことによって、第2位相差領域のみの光学特性を算出したところ、それぞれ第2位相差領域7はReが0nm、Rthが−225nm、第2位相差領域8はReが0nm、Rthが−222nm、第2位相差領域9はReが0nm、Rthが−224nm、第2位相差領域10はReが0nm、Rthが−227nm、第2位相差領域11はReが0nm、Rthが−213nm、第2位相差領域12はReが0nm、Rthが−223nmであって、いずれも棒状液晶が略垂直に配向していることを確認した。
【0138】
【表6】

【0139】
【表7】

【0140】
自動複屈折率計(KOBRA−21ADH、王子計測機器(株)社製)を用いて、製作したフィルムのReの光入射角度依存性を測定し、予め測定した支持体の寄与分を差し引くことによって、第2位相差領域のみの光学特性を算出したところ、それぞれ第2位相差領域13はReが0nm、Rthが−225nm、第2位相差領域14はReが0nm、Rthが−222nm、第2位相差領域15はReが0nm、Rthが−224nmであって、いずれも棒状液晶が略垂直に配向していることを確認した。
【0141】
[製造例2]
<偏光板保護膜1の作製>
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、セルロースアセテート溶液Aを調製した。
<セルロースアセテート溶液A組成>
置換度2.86のセルロースアセテート 100質量部
トリフェニルホスフェート(可塑剤) 7.8質量部
ビフェニルジフェニルホスフェート(可塑剤) 3.9質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 300質量部
メタノール(第2溶媒) 54質量部
1−ブタノール 11質量部
【0142】
別のミキシングタンクに、下記の組成物を投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、添加剤溶液B−1を調製した。
<添加剤溶液B−1組成>
メチレンクロライド 80質量部
メタノール 20質量部
光学的異方性低下剤 40質量部
【0143】
【化22】

【0144】
セルロースアセテート溶液Aを477質量部に、添加剤溶液B−1の40質量部を添加し、充分に攪拌して、ドープを調製した。ドープを流延口から0℃に冷却したドラム上に流延した。溶媒含有率70質量%の場外で剥ぎ取り、フィルムの巾方向の両端をピンテンター(特開平4−1009号公報の図3に記載のピンテンター)で固定し、溶媒含有率が3〜5質量%の状態で、横方向(機械方向に垂直な方向)の延伸率が3%となる間隔を保ちつつ乾燥した。その後、熱処理装置のロール間を搬送することにより、さらに乾燥し、厚み80μmの偏光板保護膜1を作製した。
自動複屈折率計(KOBRA−21ADH、王子計測機器(株)社製)を用いて、Reの光入射角度依存性を測定し、光学特性を算出したところ、Reが1nm、Rthが6nmであることが確認できた。
【0145】
<偏光板Aの作製>
次に延伸したポリビニルアルコールフィルムにヨウ素を吸着させて偏光膜を製作し、市販のセルロースアセテートフィルム(フジタックTD80UF、富士写真フイルム(株)製、Re=3nm、Rth=45nm)にケン化処理を行い、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、偏光膜の片面に貼り付け偏光板Aを形成した。
【0146】
<偏光板Bの作製>
延伸したポリビニルアルコールフィルムにヨウ素を吸着させて偏光膜を製作し、市販のセルロースアセテートフィルム(フジタックTD80UF、富士写真フイルム(株)製)にケン化処理を行い、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、偏光膜の両面に貼り付け偏光板Bを形成した。
【0147】
<偏光板Cの作製>
同様にして偏光膜を製作し、市販のセルロースアセテートフィルム(フジタックTD80UF、富士写真フイルム(株)製)にケン化処理を行い、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、偏光膜の片面に貼り付けた。さらに同様にして前記製作の偏光板保護膜1を偏光膜のもう片面に貼り付け偏光板Cを形成した。
【0148】
<偏光板Dの作製>
同様にして偏光膜を製作し、市販のセルロースアセテートフィルム(フジタックTD80UF、富士写真フイルム(株)製)にケン化処理を行い、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、偏光膜の片面に貼り付けた。さらに同様にして市販のセルロースアセテートフィルム(フジタックT40UZ、富士写真フイルム(株)製、Re=1nm、Rth=35nm)にケン化処理を行い、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて偏光膜のもう片面に貼り付け偏光板Dを形成した。
【0149】
[実施例1]
偏光板Aにポリビニルアルコール系接着剤を用いて、作製したフィルム位相差1を、第1位相差領域1側が偏光膜側となるように、且つ偏光膜の透過軸と第1位相差領域1の遅相軸が平行になるように偏光膜のセルロースアセテートフィルムを貼合していない側に貼り付け偏光板1を形成した。
【0150】
これを、前記で作製したIPSモード液晶セル1の一方に、第1位相差領域1の遅相軸が液晶セルのラビング方向と平行になるように(即ち、第1位相差領域1の遅相軸が、黒表示時の液晶セルの液晶分子の遅相軸と平行になるように)、且つ第2位相差領域1面側が液晶セル側になるように偏光板1を貼り付けた。
続いて、このIPSモード液晶セル1のもう一方の側に偏光板Cを偏光板保護膜1側が液晶セル側になるように、且つ偏光板1とはクロスニコルの配置になるように貼り付け、液晶表示装置を作製した。このように作製した液晶表示装置の漏れ光を測定した。左斜め方向60°から観察した際の漏れ光は0.05%であった。
【0151】
[実施例2]
偏光板Aにポリビニルアルコール系接着剤を用いて、作製したフィルム位相差2を、第1位相差領域1側が偏光膜側となるように、且つ偏光膜の透過軸と第1位相差領域1の遅相軸が平行になるように偏光膜のセルロースアセテートフィルムを貼合していない側に貼り付け偏光板2を形成した。
【0152】
これを、前記で作製したIPSモード液晶セル1の一方に、第1位相差領域1の遅相軸が液晶セルのラビング方向と平行になるように(即ち、第1位相差領域1の遅相軸が、黒表示時の液晶セルの液晶分子の遅相軸と平行になるように)、且つ第2位相差領域2面側が液晶セル側になるように偏光板2を貼り付けた。
続いて、このIPSモード液晶セル1のもう一方の側に偏光板DをT40UZ側が液晶セル側になるように、且つ偏光板2とはクロスニコルの配置になるように貼り付け、液晶表示装置を作製した。このように作製した液晶表示装置の漏れ光を測定した。左斜め方向60°から観察した際の漏れ光は0.06%であった。
【0153】
[実施例3]
偏光板Bにフィルム位相差3を、第2位相差領域3側が偏光膜側となるように、且つ偏光膜の透過軸と第1位相差領域2の遅相軸が直交になるようにアクリル樹脂系接着剤を用いて、貼り付け偏光板3を形成した。
【0154】
これを、前記で作製したIPSモード液晶セル1の一方に、第1位相差領域2の遅相軸が液晶セルのラビング方向と直交になるように(即ち、第1位相差領域2の遅相軸が、黒表示時の液晶セルの液晶分子の遅相軸と直交になるように)、且つ第1位相差領域2面側が液晶セル側になるように偏光板3を貼り付けた。
続いて、このIPSモード液晶セル1のもう一方の側に偏光板Cを偏光板保護膜1側が液晶セル側になるように、且つ偏光板3とはクロスニコルの配置になるように貼り付け、液晶表示装置を作製した。このように作製した液晶表示装置の漏れ光を測定した。左斜め方向60°から観察した際の漏れ光は0.07%であった。
【0155】
[実施例4]
偏光板Cにフィルム位相差4を、第2位相差領域4側が偏光膜側となるように、且つ偏光膜の透過軸と第1位相差領域1の遅相軸が直交になるようにアクリル樹脂系接着剤を用いて、偏光板保護膜1側に貼り付け偏光板4を形成した。
【0156】
これを、前記で作製したIPSモード液晶セル1の一方に、第1位相差領域1の遅相軸が液晶セルのラビング方向と直交になるように(即ち、第1位相差領域1の遅相軸が、黒表示時の液晶セルの液晶分子の遅相軸と直交になるように)、且つ第1位相差領域1面側が液晶セル側になるように偏光板4を貼り付けた。
続いて、このIPSモード液晶セル1のもう一方の側に偏光板Bを偏光板4とはクロスニコルの配置になるように貼り付け、液晶表示装置を作製した。このように作製した液晶表示装置の漏れ光を測定した。左斜め方向60°から観察した際の漏れ光は0.09%であった。
【0157】
[実施例5]
偏光板Aに第1位相差領域3の遅相軸が偏光膜の透過軸と平行になるようにポリビニルアルコール系接着剤を用いて貼り合わせ、次にフィルム位相差5を第1位相差領域3側が偏光膜側となるように、且つ偏光膜の透過軸と第1位相差領域3の遅相軸が平行になるようにアクリル樹脂系接着剤を用いて、偏光板Aの先に貼合した第1位相差領域3側に貼り付け偏光板5を形成した。この場合、第1位相差領域は、2枚の第1位相差領域3(Re=35nm、Rth=135nm)が積層された積層体から形成されており、位相差領域としてRe=70nm、Rth=270nm、Nz=4.4の光学特性を有する。
【0158】
これを、前記で作製したIPSモード液晶セル1の一方に、第1位相差領域3の遅相軸が液晶セルのラビング方向と平行になるように(即ち、第1位相差領域3の遅相軸が、黒表示時の液晶セルの液晶分子の遅相軸と平行になるように)、且つ第2位相差領域3面側が液晶セル側になるように偏光板5を貼り付けた。
続いて、このIPSモード液晶セル1のもう一方の側に偏光板DをT40UZ側が液晶セル側になるように、且つ偏光板5とはクロスニコルの配置になるように貼り付け、液晶表示装置を作製した。このように作製した液晶表示装置の漏れ光を測定した。左斜め方向60°から観察した際の漏れ光は0.12%であった。
【0159】
[実施例6]
偏光板Aにポリビニルアルコール系接着剤を用いて、作製したフィルム位相差7を、第1位相差領域1側が偏光膜側となるように、且つ偏光膜の透過軸と第1位相差領域1の遅相軸が平行になるように偏光膜のセルロースアセテートフィルムを貼合していない側に貼り付け偏光板6を形成した。
【0160】
これを、前記で作製したIPSモード液晶セル1の一方に、第1位相差領域1の遅相軸が液晶セルのラビング方向と平行になるように(即ち、第1位相差領域1の遅相軸が、黒表示時の液晶セルの液晶分子の遅相軸と平行になるように)、且つ第2位相差領域13面側が液晶セル側になるように偏光板6を貼り付けた。
続いて、このIPSモード液晶セル1のもう一方の側に偏光板Cを偏光板保護膜1側が液晶セル側になるように、且つ偏光板6とはクロスニコルの配置になるように貼り付け、液晶表示装置を作製した。このように作製した液晶表示装置の漏れ光を測定した。左斜め方向60°から観察した際の漏れ光は0.035%であった。
【0161】
[実施例7]
偏光板Aにポリビニルアルコール系接着剤を用いて、作製したフィルム位相差11を、第1位相差領域1側が偏光膜側となるように、且つ偏光膜の透過軸と第1位相差領域1の遅相軸が平行になるように偏光膜のセルロースアセテートフィルムを貼合していない側に貼り付け偏光板7を形成した。
【0162】
これを、前記で作製したIPSモード液晶セル1の一方に、第1位相差領域1の遅相軸が液晶セルのラビング方向と平行になるように(即ち、第1位相差領域1の遅相軸が、黒表示時の液晶セルの液晶分子の遅相軸と平行になるように)、且つ第2位相差領域11面側が液晶セル側になるように偏光板7を貼り付けた。
続いて、このIPSモード液晶セル1のもう一方の側に偏光板Cを偏光板保護膜1側が液晶セル側になるように、且つ偏光板7とはクロスニコルの配置になるように貼り付け、液晶表示装置を作製した。このように作製した液晶表示装置の漏れ光を測定した。左斜め方向60°から観察した際の漏れ光は0.060%であった。
【0163】
[実施例8]
偏光板Aにポリビニルアルコール系接着剤を用いて、作製したフィルム位相差12を、第1位相差領域1側が偏光膜側となるように、且つ偏光膜の透過軸と第1位相差領域1の遅相軸が平行になるように偏光膜のセルロースアセテートフィルムを貼合していない側に貼り付け偏光板8を形成した。
【0164】
これを、前記で作製したIPSモード液晶セル1の一方に、第1位相差領域7の遅相軸が液晶セルのラビング方向と平行になるように(即ち、第1位相差領域7の遅相軸が、黒表示時の液晶セルの液晶分子の遅相軸と平行になるように)、且つ第2位相差領域12面側が液晶セル側になるように偏光板8を貼り付けた。
続いて、このIPSモード液晶セル1のもう一方の側に偏光板Cを偏光板保護膜1側が液晶セル側になるように、且つ偏光板8とはクロスニコルの配置になるように貼り付け、液晶表示装置を作製した。このように作製した液晶表示装置の漏れ光を測定した。左斜め方向60°から観察した際の漏れ光は0.050%であった。
【0165】
[実施例9]
偏光板Aにポリビニルアルコール系接着剤を用いて、作製したフィルム位相差13を、第1位相差領域1側が偏光膜側となるように、且つ偏光膜の透過軸と第1位相差領域1の遅相軸が平行になるように偏光膜のセルロースアセテートフィルムを貼合していない側に貼り付け偏光板9を形成した。
【0166】
これを、前記で作製したIPSモード液晶セル1の一方に、第1位相差領域1の遅相軸が液晶セルのラビング方向と平行になるように(即ち、第1位相差領域1の遅相軸が、黒表示時の液晶セルの液晶分子の遅相軸と平行になるように)、且つ第2位相差領域7面側が液晶セル側になるように偏光板9を貼り付けた。
続いて、このIPSモード液晶セル1のもう一方の側に偏光板Cを偏光板保護膜1側が液晶セル側になるように、且つ偏光板9とはクロスニコルの配置になるように貼り付け、液晶表示装置を作製した。このように作製した液晶表示装置の漏れ光を測定した。左斜め方向60°から観察した際の漏れ光は0.050%であった。
【0167】
[実施例10]
偏光板Aにポリビニルアルコール系接着剤を用いて、作製したフィルム位相差14を、第1位相差領域1側が偏光膜側となるように、且つ偏光膜の透過軸と第1位相差領域1の遅相軸が平行になるように偏光膜のセルロースアセテートフィルムを貼合していない側に貼り付け偏光板10を形成した。
【0168】
これを、前記で作製したIPSモード液晶セル1の一方に、第1位相差領域1の遅相軸が液晶セルのラビング方向と平行になるように(即ち、第1位相差領域1の遅相軸が、黒表示時の液晶セルの液晶分子の遅相軸と平行になるように)、且つ第2位相差領域14面側が液晶セル側になるように偏光板10を貼り付けた。
続いて、このIPSモード液晶セル1のもう一方の側に偏光板Cを偏光板保護膜1側が液晶セル側になるように、且つ偏光板10とはクロスニコルの配置になるように貼り付け、液晶表示装置を作製した。このように作製した液晶表示装置の漏れ光を測定した。左斜め方向60°から観察した際の漏れ光は0.050%であった。
【0169】
[実施例11]
偏光板Aにポリビニルアルコール系接着剤を用いて、作製したフィルム位相差15を、第1位相差領域1側が偏光膜側となるように、且つ偏光膜の透過軸と第1位相差領域1の遅相軸が平行になるように偏光膜のセルロースアセテートフィルムを貼合していない側に貼り付け偏光板11を形成した。
【0170】
これを、前記で作製したIPSモード液晶セル1の一方に、第1位相差領域1の遅相軸が液晶セルのラビング方向と平行になるように(即ち、第1位相差領域1の遅相軸が、黒表示時の液晶セルの液晶分子の遅相軸と平行になるように)、且つ第2位相差領域15面側が液晶セル側になるように偏光板11を貼り付けた。
続いて、このIPSモード液晶セル1のもう一方の側に偏光板Cを偏光板保護膜1側が液晶セル側になるように、且つ偏光板11とはクロスニコルの配置になるように貼り付け、液晶表示装置を作製した。このように作製した液晶表示装置の漏れ光を測定した。左斜め方向60°から観察した際の漏れ光は0.020%であった。
【0171】
[比較例1]
前記作製したIPSモード液晶セル1の両側に市販の偏光板(HLC2−5618、(株)サンリッツ製)を、クロスニコルの配置で貼り付け、液晶表示装置を作製した。光学補償フィルムは用いなかった。上記液晶表示装置では、実施例1と同様に、上側の偏光板の透過軸が液晶セルのラビング方向と平行になるように偏光板を貼り付けた。このように作製した液晶表示装置の漏れ光を測定した。左斜め方向60°から観察した際の漏れ光は0.55%であった。
【0172】
[比較例2]
偏光板Aにポリビニルアルコール系接着剤を用いて、作製したフィルム位相差1を、第1位相差領域1側が偏光膜側となるように、しかし、偏光膜の透過軸と第1位相差領域1の遅相軸が直交になるように偏光膜のセルロースアセテートフィルムを貼合していない側に貼り付け偏光板12を形成した。
【0173】
これを、前記で作製したIPSモード液晶セル1の一方に、第1位相差領域1の遅相軸が液晶セルのラビング方向と直交になるように(即ち、第1位相差領域1の遅相軸が、黒表示時の液晶セルの液晶分子の遅相軸と直交になるように)、且つ第2位相差領域1面側が液晶セル側になるように偏光板12を貼り付けた。
続いて、このIPSモード液晶セル1のもう一方の側に偏光板Aを偏光板保護膜1側が液晶セル側になるように、且つ偏光板12とはクロスニコルの配置になるように貼り付け、液晶表示装置を作製した。このように作製した液晶表示装置の漏れ光を測定した。左斜め方向60°から観察した際の漏れ光は1.75%と極めて大きいものであった。
【0174】
[比較例3]
偏光板Bにフィルム位相差3を、第2位相差領域3側が偏光膜側となるように、しかし偏光膜の透過軸と第1位相差領域2の遅相軸が平行になるようにアクリル樹脂系接着剤を用いて、貼り付け偏光板13を形成した。
【0175】
これを、前記で作製したIPSモード液晶セル1の一方に、第1位相差領域2の遅相軸が液晶セルのラビング方向と平行になるように(即ち、第1位相差領域2の遅相軸が、黒表示時の液晶セルの液晶分子の遅相軸と平行になるように)、且つ第1位相差領域2面側が液晶セル側になるように偏光板13を貼り付けた。
続いて、このIPSモード液晶セル1のもう一方の側に偏光板Aを偏光板保護膜1側が液晶セル側になるように、且つ偏光板13とはクロスニコルの配置になるように貼り付け、液晶表示装置を作製した。このように作製した液晶表示装置の漏れ光を測定した。左斜め方向60°から観察した際の漏れ光は2.04%極めて大きいものであった。
【0176】
[比較例4]
第2位相差領域7の作製で用いた例示化合物9の替わりに特表2000−514202号公報に記載の液晶混合物(X)を用いて実施例6と同様の評価を行なった。その結果、左斜め方向60°から観察した際の漏れ光は0.10%であった。
【化23】

【図面の簡単な説明】
【0177】
【図1】本発明の液晶表示装置の画素領域例を示す概略図である。
【図2】本発明の液晶表示装置の一例を示す概略図である。
【図3】本発明の液晶表示装置の他の例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0178】
1 液晶素子画素領域
2 画素電極
3 表示電極
4 ラビング方向
5a、5b 黒表示時の液晶化合物のダイレクター
6a、6b 白表示時の液晶化合物のダイレクター
7a,7b、19a,19b 偏光膜用保護膜
8、20 偏光膜
9、21 偏光膜の偏光透過軸
10 第1位相差領域
11 第1位相差領域の遅相軸
12 第2位相差領域
13、17 セル基板
14、18 セル基板ラビング方向
15 液晶層
16 液晶層の遅相軸方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スメクチック相で配向を固定化されている、下記一般式(I)で表される棒状化合物の架橋物を含有することを特徴とする光学異方性膜。
【化1】

[式中、P1およびP2はそれぞれ独立にオキシラニル基またはオキセタニル基であり;X1およびX2はそれぞれ独立にアルキレン基または置換アルキレン基であり;L1およびL4はそれぞれ独立に単結合、−O−CO−O−,−CO−O−,−CO−S−,−CO−NR3−,−O−、−S−、−O−CO−、−S−CO−、−NR3−CO−、−C≡C−または−CH=CH−であり、R3は水素原子あるいはアルキル基であり;L2およびL3はそれぞれ独立に単結合、−O−CO−O−,−CO−O−,−CO−S−,−CO−NR3−、−O−CO−、−S−CO−、−NR3−CO−、−C≡C−または−CH=CH−であり、R3は水素原子またはアルキル基であり;Y1〜Y3はそれぞれ独立にハロゲン原子、シアノ基、アルキル基、アルケニル基またはアルコキシ基であり;n1〜n3はそれぞれ独立に0〜4であり;mは0〜4である]。
【請求項2】
式(I)で表される化合物の架橋物が、垂直に配向した状態で固定化されることを特徴とする請求項1に記載の光学異方性膜。
【請求項3】
式(I)で表される化合物の空気界面での垂直配向を促進する添加剤を含有する位相差層からなることを特徴とする請求項1または2に記載の光学異方性膜。
【請求項4】
前記位相差層が式(I)で表される化合物の配向膜界面での垂直配向を促進する添加剤を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の光学異方性膜。
【請求項5】
少なくとも、第1偏光膜と、第1位相差領域と、第2位相差領域と、液晶層を一対の基板で挟んだ液晶セルとを含み、黒表示時に液晶分子が前記一対の基板の表面に対して実質的に平行に配向する液晶表示装置であって、第1位相差領域のレターデーションReが20nm〜150nmであり、第1位相差領域の値Nzが1.5〜7であり、第2位相差領域のレターデーションReが実質的に0nmであり、第2位相差領域のレターデーションRthが−80nm〜−400nmであり、前記第2位相差領域は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の光学異方性膜を含み、該光学異方性膜に含まれる式(I)で表される化合物の架橋物が実質的に垂直に配向した状態で固定化されており、且つ第1偏光膜の透過軸が黒表示時の液晶分子の遅相軸方向に平行である液晶表示装置。
【請求項6】
前記第1偏光膜、前記第1位相差領域、前記第2位相差領域および前記液晶セルが、この順序で配置され、且つ前記第1位相差領域の遅相軸が、前記第1偏光膜の透過軸に実質的に平行である請求項5に記載の液晶表示装置。
【請求項7】
前記第1偏光膜、前記第2位相差領域、前記第1位相差領域および前記液晶セルがこの順序で配置され、且つ前記第1位相差領域の遅相軸が前記第1偏光膜の透過軸に実質的に直交である請求項5に記載の液晶表示装置。
【請求項8】
前記第1偏光膜の透過軸と直交する透過軸を有する第2偏光膜をさらに有し、前記第1および第2偏光膜が、前記第1位相差領域、前記第2位相差領域および前記液晶セルを挟持して配置されている請求項5〜7のいずれか一項に記載の液晶表示装置。
【請求項9】
前記第1偏光膜および/または第2偏光膜を挟んで配置された一対の保護膜を有し、該一対の保護膜のうち液晶層に近い側の保護膜の厚み方向の位相差Rthが40nm以下である請求項5〜8のいずれか一項に記載の液晶表示装置。
【請求項10】
前記第1偏光膜および/または第2偏光膜を挟んで配置された一対の保護膜を有し、該一対の保護膜のうち液晶層に近い側の保護膜がセルロースアシレートフィルムまたはノルボルネン系フィルムである請求項5〜9のいずれか一項に記載の液晶表示装置。
【請求項11】
下記一般式(X)で表される化合物。
【化2】

[式中、R1およびR2はそれぞれ独立に水素原子またはアルキル基であり;X1およびX2はそれぞれ独立にアルキレン基または置換アルキレン基であり;L1およびL4はそれぞれ独立に単結合、−O−CO−O−,−CO−O−,−CO−S−,−CO−NR3−,−O−、−S−、−O−CO−、−S−CO−、−NR3−CO−、−C≡C−または−CH=CH−であり、R3は水素原子あるいはアルキル基であり;L2およびL3はそれぞれ独立に単結合、−O−CO−O−,−CO−O−,−CO−S−,−CO−NR3−、−O−CO−、−S−CO−、−NR3−CO−、−C≡C−または−CH=CH−であり、R3は水素原子またはアルキル基であり;Y1〜Y3はそれぞれ独立にハロゲン原子、シアノ基、アルキル基、アルケニル基またはアルコキシ基であり;n1〜n3はそれぞれ独立に0〜4であり;mは0〜4である]。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2006−276821(P2006−276821A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−237418(P2005−237418)
【出願日】平成17年8月18日(2005.8.18)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】