説明

光学的記録再生装置

【課題】 光ピックアップのシーク直後あるいは筐体姿勢差で発生するレンズシフトの影響でディスク回転周期のレーザーパワー変動が発生する。この影響を抑制して最適な記録パワーを精度良く求めることを目的とする。
【解決手段】 対物レンズ位置検知手段とレンズシフト判定手段を備え、対物レンズ位置が光軸中心から所定範囲内に入ってからOPCを実施する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー光を用いてディスク状媒体に情報の記録または再生を行う光学的記録再生装置に関し、特には記録パワー調整プロセスを備え、最適な記録パワーを求めて、良好なる情報の記録または再生動作を行なう装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
昨今ディスク媒体が安価で大量に供給される環境に至り、光学的記録再生装置は、ディスク媒体の組成や固体ばらつきを十分カバーする必要が生じている。媒体の組成としては、トラック幅やピッチ、溝形状、記録膜の材料、半径方向の膜均一性など、主にメーカー毎の仕様、製造工程に依存する。また、媒体の固体ばらつきは同一メーカーであっても、製造ロットの違いなどによって特性差が現れる。ビデオカメラなどのモバイル機器においては、高品位映像(HD;High Definition)をリアルタイムで媒体に記録しなければならない。すなわち、モバイル機器としての使用環境やディスク媒体の固体ばらつきに対して良好な記録品位を保つために、記録レーザーパワーの最適化技術は極めて重要である。
【0003】
周知の記録パワー最適化処理は、先ずディスク媒体の所定領域において、記録レーザーパワーを段階的に変えてテスト記録を試行する。次に、該試行記録したデータを再生して、最良の再生信号が得られる記録パワーを求める。こうした処理は、OPC(Optimum Power Control)と呼ばれ、ディスク媒体毎、あるいは周囲温度変化毎、さらにはディスク半径位置毎などに応じて実施され、常に記録品位が最適となる記録パワーが設定されている。
【0004】
ところで、ディスク媒体への記録、再生を担う光ピックアップにおいて、レーザービームの光軸中心と対物レンズの中心ズレ(以下「レンズシフト」と記す)によって、光ビームスポット品位が劣化することが知られている。
【0005】
図4は、対物レンズNA=0.6、レーザー波長λ=660nm相当の光ピックアップにおいて、対物レンズ出射光量(4−1)とトータル波面周差(4−2)の関係を例示するグラフである。(4−1)は、横軸が対物レンズ位置〔um〕、縦軸に対物レンズ出射光量を示している。対物レンズ位置が0のとき、すなわち対物レンズ中心と光軸中心が一致しているときの光量を1とすると、対物レンズ位置を+300〔um〕ずらしたとき、光量は0.8となり、約20%の光量低下が認められる。一方、(4−2)は、横軸が対物レンズ位置〔um〕、縦軸にはディスク面の光スポット品位を示すトータル波面収差〔mλrms〕を表している。対物レンズ位置が0のとき、すなわち対物レンズ中心と光軸中心が一致しているときの収差を30〔mλrms〕とすると、対物レンズ位置を+300〔um〕ずらしたとき、収差は50〔mλrms〕になり、光スポット品位が悪化する様子が示されている。
【0006】
このように、光ピックアップの対物レンズ位置は、対物レンズ出射パワー強度や光ビームスポット品位に関わる。すなわち、最適記録パワーを求めるOPCの精度に影響を与える。
【0007】
従来、上述のレンズシフトの影響を排除した記録レーザーパワーの最適化技術として、特開2001−60320号公報(特許文献1)や特開2002−352426号公報(特許文献2)が知られている。特開2001−60320号公報には、ディスク回転周期で変動する記録パワーに対して、再生処理でOPCの精度確保を図る技術が開示されている。具体的には、OPCテスト記録を行なった後、ディスク上の異なる角度位置から複数領域の再生信号特性値を平均化処理することで周内のパワー変動成分を抑制したOPC結果を得ようとするものである。また、特開2002−352426号公報には、光ビーム戻り光の周期的な変動成分を検出して、該周期的変動成分を打ち消すように、記録パワーを出力を補正する技術が開示されている。
【特許文献1】特開2001−60320公報
【特許文献2】特開2002−352426公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記従来技術には次のような課題があった。特開2001−60320号公報記載技術では、ディスク周内の再生信号変動成分を平均化処理するため、トラック複数箇所に各パワーでテスト記録したデータが必要となる。すなわち、OPCテスト領域が多大に必要となる。前述のとおり、モバイル機器では、記録パワーの最適調整を頻繁に実施する。一方、ディスク上、所定のOPC使用領域は限られている。よって、追記型メディア(ライトワンス)では、OPC回数が増えるとOPC使用領域を使い切ってしまう危惧がある。
【0009】
また、特開2002−352426号公報記載技術は、記録時のディスク反射光量の周内変動が抑制されるように記録パワー強度を変化させる。よって、光ビームスポットに収差の発生があっても、記録パワー強度だけで補正するので、記録品質の向上、換言すれば諸変動要因に対するマージン確保が困難である。
【0010】
すなわち、上述の従来技術1及び2は、光ビームスポットにおける収差増大の原因となるレンズシフトに対して対策が講じられていない。より具体的には、OPC処理でシーク動作が不可欠であるが、シーク直後にレンズシフトが発生する。また、装置に姿勢差があるとき、重力の影響でレンズシフトが発生する。レンズシフトによるOPCの精度確保という課題に対して、本質的な解決策が望まれている。
【0011】
そこで本発明では、レンズシフトの影響があっても、記録パワーの最適化処理を適切に実施する光学的記録再生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明による光学的記録再生装置は、光源と、前記光源からの光束を、配置されるディスク状の記録媒体に対して集光させるための対物レンズと、前記対物レンズを駆動するアクチュエータとを含む光ピックアップと、
前記光ピックアップを前記記録媒体の半径方向に移送する送り制御手段と、
前記光ピックアップに対する前記対物レンズの前記半径方向における相対位置を検出する検出手段と、
前記検出手段によって得られた相対位置が、所定の範囲内か否かを判定する判定手段と、
前記記録媒体に情報を記録するための前記光束の光量を調整する調整手段と有する光学的記録再生装置であって、
前記判定手段によって前記相対位置が前記所定の範囲内であると判定された場合に、前記調整手段が行われる光学的記録再生装置。
【発明の効果】
【0013】
このように本発明によれば、レンズシフトに起因する記録パワーの回転周期変動や光ビームスポットの収差増を抑え、最適記録パワーを高精度に求めることができる。特に、装置の超小型化やモバイル環境使用下によって生じるOPC処理に不可欠なシーク動作、あるいは装置姿勢差によって発生する過酷な動的変動要因に対して、記録品質に大きく関わる記録パワー調整工程の信頼性向上に寄与する。牽いては、良好な記録品質を確保する効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
(第1の実施例)
以下、本発明の好ましい実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
本発明によるレーザーパワー調整は、例えば、図1に示すような光学的記録再生装置100に適用される。
【0016】
<光学的記録再生装置100の構成要素及び一連の動作>
光学的記録再生装置100は、ディスク状の記録媒体である光ディスク(以下「ディスク」と記す)101、光ピックアップ(以下「OPU」と記す)120、スピンドルモータ(以下「SPM」と記す)110を備える。更に、スピンドルモータドライバ(以下「SPMドライバ」と記す)109、LDパワー制御回路111、アクチュエータドライバ113、送り機構112、サーボ記録再生プロセッサ114、ディスクコントローラ(CPU)115を備えている。
【0017】
図1の全体構成ならびに基本動作を説明する。
ディスクコントローラ115は、CPU(中央演算処理ユニット)を備える。外部インタフェース116を介して、不図示の操作系からユーザー指示コマンド、あるいは所定のプログラムを実行することで、光学的記録再生装置100全体の動作を制御する。ディスクへの記録あるいは再生動作は、メモリ117を介して、周知のショックプルーフ(間欠駆動)制御がなされる。
【0018】
ディスク101は、たとえば相変化タイプのディスクであって、記録層にGe−Sb−Te等の相変化材料で構成されている。ディスクを回転させながら光ビーム強度を変調して照射すると、アモルファス状態と結晶状態が可逆的に変化する。記録層を結晶状態からアモルファス状態に変化させるには、光ビームをパルス上に照射し、一旦溶融した後、急冷する。逆に、アモルファス状態から結晶状態変化させるには、比較的弱い光ビーム強度のレーザー光を照射して結晶化温度以上でアニールする。このような相変化特性を利用して、情報の1または0を状態変化で蓄積可能な特性を有している。なお、ディスク101は、有機色素を記録層に備えたライトワンス(追記型)タイプのディスクであってもよい。ライトワンスタイプでは、記録時に照射された強い光ビームが色素膜で吸収され、熱変質することで、媒体の反射率が変化する。このタイプのディスクは、記録は1回しかできないが、プレーヤーの再生互換が高く比較的安価なため、需要が急拡大している。
【0019】
次に、ディスクコントローラ115ならびにサーボ記録再生プロセッサ114によるサーボ・記録再生処理を説明する。プロセッサ114は、スピンドルモータドライバ(以下「SPM」制御)によって、スピンドルモータ(SPM)110の回転駆動制御を行なう。ここで、スピンドルモータの回転制御は、所謂CLV(Constant Linear Velocity;線速度一定)である。ディスク101には、トラック溝にそってウォブルと呼ばれる蛇行側壁が形成されている。ディスク回転速度は、当該ウォブルの周波数が目標値になるように制御される。
【0020】
OPU120は、対物レンズ102、アクチュエータ103、光学系104、LD/ドライバ105、再生信号センサ106、LDパワーモニタセンサ107、温度センサ108によって構成されている。OPU103はフレキシブルケーブル等によって、サーボ記録再生プロセッサ114、あるいはモータ、アクチュエータドライバ系に接続されている。
【0021】
LD/ドライバ105は、光源として用いられる半導体レーザー素子(以下「LD」と記す)ならびにレーザードライバである。LDより出射されたレーザー光は、光学系104、対物レンズ102を介して、ディスク101に集光される。また、LDパワーモニタセンサ107は、半導体受光センサと光電変換アンプによって構成される。LDより出射されたレーザー光の一部は、LDパワーモニタセンサ107を経由、サーボ記録再生プロセッサ114、LDパワー制御回路111によってAPC(Auto Power Control)ループを構成する。すなわち、LDパワーモニタセンサ出力とディスクコントローラ115で設定された目標パワーが一致するようLD出射パワーがフィードバック制御される。
【0022】
再生信号センサ106は、半導体受光センサと光電変換アンプによって構成される。ここで、図6を用いてレンズ位置(Lenz Position;以下「LP」と略す)信号を説明する。このLP信号を用いることにより、OPU120に対する対物レンズ102の相対位置を検出することができる。図6は3ビームによるDPP法(差動プッシュプル法;Differential Push Pull)のトラック上の光スポット配置、センサ構成、そしてマトリクス部を示している。
【0023】
メインビームMainは、トラック中心に位置制御されている。サブビームSUB1、SUB2は、Mainに対して1/2トラック半径方向にずらして位置制御される。
【0024】
センサ部は、3ビームにそれぞれ対応しており、メインビームMainには4分割センサ(A〜D)、サブビームSUB1、SUB2には2分割センサ(E〜F、G〜H)が配置されている。再生信号センサ出力は、フレキシブルケーブル等を介してOPU120からサーボ記録再生プロセッサ114の演算処理部に伝送される。演算処理部では、ゲイン制御(Auto Gain Control)、フィルタ処理(Pre Filter)、ディジタル化(Analog/Digital Converter)されて、A〜H各チャンネル信号がマトリクス演算処理される。
【0025】
マトリクス部には、各センサ出力信号を演算処理する機能ブロックが示されている。601〜604は演算器、605〜606は加算器、607は係数演算器である。メインビームMainの反射光は、4分割センサA〜Dに照射される。当該センサ出力信号は、先ず(A+D)信号と(B+C)信号が生成される。次に、演算器602に入力され(A+D)−(B+C)が演算出力される。また、サブビームSUB1の反射光は、2分割センサE、Fに照射される。当該センサ出力信号は演算器601に入力され、(E−F)信号が出力される。一方、サブビームSUB2の反射光は、センサG、Hに照射される。当該センサ出力信号は演算器603に入力され、(G−H)信号が出力される。(E−F)信号と(G−H)信号は、加算器605に入力され、(E+G)−(F+H)信号が出力される。続いて係数演算器607で所定係数k倍され、k{(E+G)−(F+H)}が出力される。
【0026】
ここで、トラックエラー信号TEは、演算器604出力によって得られる。
TE=(A+D)−(B+C)−k{(E+G)−(F+H)}
メインビームのプッシュプル信号は、演算器602出力信号(A+D)−(B+C)として得られるが、ディスク半径方向の対物レンズシフトに起因するオフセットが含まれている。そこで、サブビームのプッシュプル成分(E+G)−(F+H)を所定係数k倍した後、差分演算し、当該オフセット成分をキャンセルしたトラックエラー信号TEを生成する。
【0027】
また、LP信号は、加算器606出力によって得られる。
LP信号=(A+D)−(B+C)+k{(E+G)−(F+H)}
LP信号は、メインプッシュプル信号とサブプッシュプル信号の和によってディスク半径方向のレンズシフト成分として抽出される。所定係数kは、メインビームとサブビームの分割光量比に応じて決定される定数である。
【0028】
以上より、トラッキングエラーTE信号、そしてLP信号に基づいて、光ビームスポットは情報トラック溝方向にトラッキング制御がなされる。なお、トラッキング制御は、アクチュエータ103における微調整と、送り機構112による粗調整で制御される。
【0029】
図7はアクチュエータによるレンズ位置制御(微調)の概略を示す図である。図7において、701はディスク面、702、703はそれぞれ対物レンズ位置、704は光束である。対物レンズ位置702では、対物レンズ中心と光軸が合致してディスク面701へのトラッキング追従を行っている。アクチュエータによって対物レンズ位置を703(レンズ位置△LPだけ)のようにシフトさせて光ビームスポットを目標トラックにトレースさせながら記録または再生を行う。すなわち、対物レンズがアクチュエータの可動範囲にある間は、スレッド送り機構は停止したまま、アクチュエータ制御のみで対物レンズをディスク半径方向にシフトさせてトラッキング追従を行う。このとき、LP信号によってアクチュエータの可動範囲端に位置されたことが検知されると、スレッド送り機構が稼動して、光ピックアップ全体をディスク半径方向に移送する(粗調)。このように、アクチュエータによる微調と、スレッド送り機構による粗調を組み合わせて、対物レンズをディスクの所定トラックに追従制御させる。また、送り機構112は、OPU120をディスク半径方向に移送して(トラバース制御)、所定アドレスへのシーク動作を担う。
【0030】
次に、ディジタル化された再生信号は、不図示のPLL(Phase Locked Loop)によって再生信号のエッジに同期したクロックが生成され、データ処理される。さらに、PRML(Partial−Response Maximum−Likelihood)によるデータ検出、ECC(誤り訂正;Error Correction Code)等、所定の復号処理がなされる。
【0031】
一方、ディスクへの記録はサーボ記録再生プロセッサ114において、ディスクフォーマットに準拠した変調処理で記録パターンが生成される。LD/ドライバ105は、記録パターンに応じてレーザー発光パルスの波形整形・タイミング制御がなされ、所謂ライトストラテジ動作を担う。
【0032】
ディスクコントローラ115は、ショックプルーフ動作で記録を行なう。具体的には、装置に入出力されるデータのレート(低速)とディスクに記録するレート(高速)の差を利用して、ディスクアクセスを間欠的に動作させる。即ち、外部インタフェースからの信号がメモリ117に蓄積される間、ディスクアクセスを休止状態にしておく。休止状態とは、電力消費の多いLDを消灯して、関連する電気回路ブロックの動作を止めることである。メモリ117に所定量のデータが蓄積されたらディスクアクセスを開始して、メモリ117からディスク101に記録を行なう。ディスクへの記録が終了したら、ディスクアクセスを再び休止状態にする。このようにディスクアクセスを間欠的に行なうことで、休止時にLD消灯できるので、平均的な電力消費が削減できる。また、装置外部から振動や衝撃が加わっても、メモリ117がバッファとなり、サーボ復帰処理(リトライ処理)できるので、耐震信頼性向上の効果が得られる。
【0033】
また、OPU120内部には温度センサ108が設けられており、ディスクコントローラ115によって、LD近傍の温度を検知する機能を有する。
【0034】
<光学的記録再生装置100の記録パワー調整フロー>
図2は、本発明による記録パワー調整を示すフローチャートである。図2を用いて具体的なフローを説明する。
【0035】
ステップS201:OPC領域にシーク
このステップは、ディスクへの最適記録パワーを求めるために、OPU120をディスク所定領域PCA(Power Calibration Area)に移送する。ディスクコントローラ115は、サーボ動作を立上げて、アドレスシークを行なう。PCAは、ディスク最内周もしくは最外周の所定アドレスに割り当てられている。OPU120は、PCA領域に移送された後、当該アドレス近傍でウエイトジャンプ(待機動作)する。
【0036】
ステップS202:レンズシフト判定
ディスクコントローラはLP信号を取得し、所定のしきい値(Th値)と比較する。
LP<Th値であれば、ステップS204に移行する。
LP>Th値であれば、ステップS203に移行する。
【0037】
ステップS203:送り制御
サーボ記録再生プロセッサは、OPU120における対物レンズ102の位置がセンターになるように、送り機構112を制御する。光ビームスポットは、所定アドレスにウエイト動作しているので、送り制御によってレンズシフト成分LPが小さくなる。送り制御がなされると、再びステップS202に戻って、レンズシフトが判定される。
【0038】
ステップS204:OPC実施
ステップS202において、レンズシフトが所定値以下と判定された場合、ディスクコントローラ115は、記録レーザーパワーを決定するOPC(Optimum Power Control)を実施する。具体的には、PCA領域に試し記録を行なって再生信号を評価する。試し記録時、記録レーザーパワーを複数段階変更しながら記録を行う。再生時は、試行記録したデータを再生し、記録レーザーパワー毎に再生データを取得して、信号品質を判断する。信号品質の判断には、たとえば、再生信号の振幅の対象性を示すアシンメトリ(β値)、エッジのゆらぎを示すジッタ値、あるいは再生データの信頼性を示すエラー率などを指標とする。そして、最も記録品位が良好となるレーザーパワーの値、すなわち最適記録パワーを求める。
【0039】
求められた最適記録パワーは、所定レジスタに格納する。同時に、OPCを行なった時刻、温度などの条件も属性情報として保持しておく。この属性情報は、たとえば一定時間経過後あるいは一定温度変化があったことを検知して、最適記録パワーを最探索する場合に利用する。
【0040】
ここで、図3、図5を用いて、本実施形に基づく記録パワー調整シーケンスを詳述する。図3は、横軸に時間、縦軸に対物レンズ位置をとり、対物レンズ位置の時間推移を示している。縦軸に示す変位303(内周側)から304(外周側)は、アクチュエータにおける対物レンズの物理的可動限界である。また、変位301から変位302は、レンズシフトによって生じる光量の低下や収差増があっても、記録再生の品位に支障ないマージン範囲である。そして、変位Th1からTh2はレンズシフトゼロ近傍であり、OPCを実施許可する範囲である。
【0041】
いま、PCA領域にシークした際、A0点に対物レンズが位置したとする。A0点は、通常の記録再生には支障ないが、記録パワーを求めるOPCの実施は許可されない(ステップS202)。そこで、光ディスク101に対する対物レンズ102のディスク半径方向における相対位置を保持した状態で、送り制御が実施され、対物レンズの相対位置はA0点からA1点にシフトされる(ステップS203)。レンズシフトがしきい値Th1より小さいと判断されると(ステップS202)、OPCの実施が許可される(ステップS204)。このように、レンズ位置がTh1からTh2の所定の範囲内にある場合のみ、すなわち図3でA1からA2区間、B1からB2区間だけ、OPCの実施が許可される。その後、ディスクのトレース動作が継続されると、A3点で再び送り制御が動き、B0点まで対物レンズがシフトされ、この所作が繰り返される。
【0042】
ここで対物レンズ位置のしきい値と光量の関係を図5に示す。レンズシフトゼロの点における対物レンズ出射光を1.0とすると、しきい値Th1(A1点)、Th2(A2点)の相対光量は0.96、301(A0点)、302(A3点)の相対光量は0.8である。対物レンズ出射光量の回転周期変動は、ディスクの偏芯量によって変わるが、レンズシフトがTh1からTh2区間内であれば、平均的な光量変動は、概ね±3%に収まり、記録パワー調整(OPC)時の精度確保に十分なマージンである。また、301から302区間の平均的な光量変動は±10%以下であり、情報を記録することのできるレンズシフトの許容範囲である。また、再生時も同様である。このように、Th1からTh2までのOPCを実施許可する所定の範囲は、301から302のレンズシフトの許容範囲よりも狭く設定されている。そして、しきい値の設定は、ディスク偏芯を踏まえた平均的な光量変動の大きさに基づいて設定されている。
【0043】
以上、本発明による実施フローについて詳述した。OPC実施前に、レンズシフト量を監視するので(ステップS202)、記録パワーの調整誤差を抑圧することができ、記録品位の向上に寄与する。
【0044】
(第2の実施例)
本発明による第2の実施形について、図8を用いて説明する。図8は、横軸に時間、縦軸に対物レンズ位置をとり、対物レンズ位置の時間推移を示している。縦軸に示す変位303(内周側)から304(外周側)は、アクチュエータにおける対物レンズの物理的可動限界である。また、変位301から変位302は、レンズシフトによって生じる光量の低下や収差増があっても、記録再生の品位に支障ないマージン範囲である。そして、変位Th1からTh2はレンズシフトゼロ近傍であり、OPCを実施許可する範囲である。
【0045】
本実施形では、LP信号に基づいて、アクチュエータの駆動範囲が制限されている。通常記録動作では、301から302区間において、アクチュエータによる対物レンズの位置制御がなされる。それに対して、OPC時は、Th1からTh2区間のみにアクチュエータの可動範囲が制限される。
【0046】
このように、しきい値の設定は変えず、アクチュエータの可動範囲を制限することによって、ディスク偏芯を踏まえた平均的な光量変動を抑え、OPC動作時に最適記録パワーを高精度に求めることができる。
【0047】
なお、LP信号は、前述のマトリクス演算出力に限定されるものではない。対物レンズを駆動するアクチュエータ駆動信号の平均レベルを監視してもよい。ディスクの面ブレや偏芯など、回転周期の変動を平均化すれば、アクチュエータ駆動信号からLP信号を得ることができる。
【0048】
また、本発明の好ましい実施の形態について、ハードウエアを踏まえた構成について説明したが、本発明の主旨はこれに制約されることなく、ソフトウエアによるプログラム処理によっても実現可能なことはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】光学的記録再生装置の機能ブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に関わる動作を示すフローチャートである。
【図3】本発明の第1の実施形態の全体シーケンスを説明する図である。
【図4】レンズシフトによる光量変動、収差変動を説明する図である。
【図5】本発明のレンズシフト判定手段の所定値設定を説明する図である。
【図6】本発明による実施形態のレンズ位置制御信号を説明する図である。
【図7】レンズシフトを説明する図である。
【図8】本発明の第2の実施形態の全体シーケンスを説明する図である。
【符号の説明】
【0050】
101 光ディスク
102 対物レンズ
103 アクチュエータ
104 光学系
105 LD/ドライバ
106 再生信号センサ
107 LDパワーモニタセンサ
108 温度センサ
109 SPMドライバ
110 SPM
111 LDパワー制御回路
112 送り機構
113 アクチュエータドライバ
114 サーボ記録再生プロセッサ
115 ディスクコントローラ
116 外部インタフェース
117 メモリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、前記光源からの光束を、配置されるディスク状の記録媒体に対して集光させるための対物レンズと、前記対物レンズを駆動するアクチュエータとを含む光ピックアップと、
前記光ピックアップを前記記録媒体の半径方向に移送する送り制御手段と、
前記光ピックアップに対する前記対物レンズの前記半径方向における相対位置を検出する検出手段と、
前記検出手段によって得られた相対位置が、所定の範囲内か否かを判定する判定手段と、
前記記録媒体に情報を記録するための前記光束の光量を調整する調整手段と有する光学的記録再生装置であって、
前記判定手段によって前記相対位置が前記所定の範囲内であると判定された場合に、前記調整手段が行われることを特徴とする光学的記録再生装置。
【請求項2】
前記所定の範囲は、前記記録媒体に対して前記情報を記録することのできる前記相対位置の許容範囲よりも、狭く設定されていることを特徴とする請求項1記載の光学的記録再生装置。
【請求項3】
前記対物レンズの相対位置を前記所定の範囲内にするために、前記光ピックアップは、前記記録媒体に対する前記対物レンズの相対位置を保持した状態で、前記送り制御手段によって移送されることを特徴とする請求項2記載の光学的記録再生装置。
【請求項4】
前記対物レンズの相対位置を前記所定の範囲内にするために、前記アクチュエータによる前記対物レンズの駆動の範囲を制限する制御手段を有することを特徴とする請求項2に記載の光学的記録再生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−193641(P2009−193641A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−34686(P2008−34686)
【出願日】平成20年2月15日(2008.2.15)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】