光学素子および発光装置
【課題】グレアを低減できる光学素子および発光装置を提供する。
【解決手段】導光体2は、内部が充実体とされ、凹面11から入射された光を導光し出射面12から出射するメニスカスレンズとし、メニスカスレンズを光を拡散する光散乱粒子が含有された光拡散体で形成している。発光装置1は、内部が充実体とされ、LED部材3から発せられる光が凹11面から入射され出射面12から出射する導光体2を有し、導光体2は、凹面11を凹面とし、出射面12を凸面としたメニスカスレンズとされ、このメニスカスレンズは、光を拡散する光拡散体で形成されている。
【解決手段】導光体2は、内部が充実体とされ、凹面11から入射された光を導光し出射面12から出射するメニスカスレンズとし、メニスカスレンズを光を拡散する光散乱粒子が含有された光拡散体で形成している。発光装置1は、内部が充実体とされ、LED部材3から発せられる光が凹11面から入射され出射面12から出射する導光体2を有し、導光体2は、凹面11を凹面とし、出射面12を凸面としたメニスカスレンズとされ、このメニスカスレンズは、光を拡散する光拡散体で形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学素子および発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、LED(Light Emitting Diode)のハイパワー化、高効率化により、白熱電球および蛍光灯の代替えとして、LED照明装置が実用化されてきている。白熱電球または蛍光灯に比べて、LEDは大きさが小さく、光束密度が高い。また、白熱電球および蛍光灯が全方位に発光するのに対して、LEDは光線の指向性を高くし易いという特徴を有する。また、最近では、3Wさらには10WというパワーLEDも実用化されている。
【0003】
このようなLEDを光源とする電球として、特許文献1には、透光性のグローブの外表面に拡散シートを具備しているLED電球が提案されている。このLED電球は、その輝度をほぼ均一にできるものとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−91140号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら特許文献1に提案されているLED電球は、その設計によって配光角を調整できない。そのため、ハイパワーのLEDを用いた場合には、まぶしさ(グレア)の大きいものとなる。
【0006】
本発明は、このような背景の下に行われたものであって、グレアを低減できる光学素子および発光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の光学素子は、内部が充実体とされ、一方の面から入射された光を導光し他方の面から出射する光学素子において、一方の面を凹面とし、他方の面を凸面としたメニスカスレンズとし、メニスカスレンズを光を拡散する光拡散体で形成した。
【0008】
ここで、他方の面側が球形をなし、一方の面と他方の面との境界部となるメニスカスレンズのコバが、球形の面とは反対側に突出した環状の面となっていることが好ましい。
【0009】
また、一方の面は、光を散乱するシボ状になっていることが好ましい。
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の発光装置は、発光部材と、内部が充実体とされ、発光部材から発せられる光が一方の面から入射され他方の面から出射する光学素子とを有する発光装置において、光学素子は、一方の面を凹面とし、他方の面を凸面としたメニスカスレンズとされ、このメニスカスレンズは、光を拡散する光拡散体で形成されている。
【0011】
ここで、一方の面と他方の面との境界部となるメニスカスレンズのコバが一方の面から進入してきた光を全反射することが好ましい。
【0012】
また、光学素子を一方の面側から支える保持具を有し、保持具が、光を光学素子側に反射する反射面を有していることが好ましい。
【0013】
また、コバまたは保持具によって反射され、メニスカスレンズ内に入射した光であって光散乱体が無いとした場合の光が他方の面に入射する入射角をθとし、他方の面の全反射臨界角をθcとしたとき、(θc×1.7)>θ>(θc×0.9)の範囲となる入射角θのものを20%以上とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、グレアを低減できる光学素子および発光装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る発光装置の縦断面概要図である。
【図2】図1に示す導光体中の光散乱粒子となるシリコーン粒子の散乱原理を示す図で、単一真球粒子による散乱光強度の角度分布(Α、Θ)を示すグラフである。
【図3】図1に示す発光装置におけるLED部材から出射された光の光路を示す図であり、凹面の特定の領域に照射される光の光路を示す図である。
【図4】図1に示す発光装置におけるLED部材から出射された光の光路を示す図であり、LED部材から出射された光のうち、大きく広がった光が凹面の下部領域に照射された光の光路を示す図である。
【図5】図1に示す発光装置におけるLED部材から出射された光の光路を示す図であり、LED部材から出射された光のうち、図4に示す光よりさらに大きく広がった光が傾斜面の鏡面シートに反射してコバの特定の領域に照射された光の光路を示す図である。
【図6】図1に示す発光装置においてLEDから直接コバの特定の領域に向けて出射された光の光路を示す図である。
【図7】図1に示す発光装置の上面からの発光状態を示す図である。
【図8】図1に示す発光装置の側面からの発光状態を示す図である。
【図9】比較例の構成を示す図で、LED部材の外表面に拡散シートをを配置した比較例の発光装置の縦断面概要図を示す図である。
【図10】図9に示す比較例の発光装置の上面からの発光状態を示す図である。
【図11】図9に示す比較例の発光装置の側面からの発光状態を示す図である。
【図12】本発明の第2の実施の形態に係る発光装置の縦断面概要図である。
【図13】図12に示す発光装置の上面からの発光状態を示す図である。
【図14】図12に示す発光装置の側面からの発光状態を示す図である。
【図15】本発明の第3の実施の形態に係る発光装置の縦断面概要図である。
【図16】図15に示す発光装置の上面からの発光状態を示す図である。
【図17】図15に示す発光装置の側面からの発光状態を示す図である。
【図18】本発明の第4の実施の形態に係る発光装置の縦断面概要図である。
【図19】図18に示す発光装置のLED部材の平面図である。
【図20】図18に示す発光装置の上面からの発光状態を示す図である。
【図21】図18に示す発光装置の側面からの発光状態を示す図である。
【図22】比較例2の発光装置の上面からの発光状態を示す図である。
【図23】比較例2の発光装置の側面からの発光状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(本発明の第1の実施の形態に係る発光装置1について)
本発明の第1の実施の形態に係る発光装置1および発光装置1に用いられる光学素子としての導光体2の構成について説明する。
【0017】
図1は、発光装置1の縦断面概要図である。発光装置1は、発光部材となるチップ型のLEDを円形板状の中央に配置したLED部材3と、LED部材3から発せられる光を導光し内部が充実体とされる導光体2と、導光体2を保持する保持具4を有している。導光体2は、LED部材3から発せられる光が入射する三角錐状にえぐれた凹面11を有している。この凹面11が、一方の面となる。
【0018】
そして、導光体2は、一方の面とは反対側に、球形をなしLED部材3から発せられた光を出射するドーム形状の出射面12(他方の面)を有している。すなわち、導光体2は、平滑な凹面11と球形状の出射面12を有するメニスカスレンズである。さらに、導光体2は、凹面11と出射面12とをつなぐために凹面11の周囲を円錐台の周面状に取り囲むコバ13を有している。すなわち、導光体2は、LED部材3から発せられ導光体2内に導光された光であって導光体2の中心軸Mに対して大きな角度(たとえば60から80度)でLED部材3から出射される光を反射する環状の面であるコバ13を有している。このコバ13の面は、導光体2の周方向に若干突出する凸面となっている。すなわち、LED部材3側にわずかに突出する曲面となっている。
【0019】
また、導光体2は、たとえば透明のポリメチルメタクリレート(以下、「PMMA」と略記する。)からなる樹脂成形体である。そして、PMMAには、粒子径が2μm〜10μmの光散乱粒子となる透光性シリコーン粒子を分散させてある。これにより、導光体2は、光拡散体になっている。
【0020】
以下、導光体2のシリコーン粒子について説明する。このシリコーン粒子は、体積的に一様な散乱能が与えられた導光体であり、散乱微粒子としての球形粒子を多数含んでいる。導光体2の内部に光が入射すると、その光は散乱微粒子によって散乱することになる。
【0021】
ここで、シリコーン粒子の理論的な基礎を与えるMie散乱理論について説明する。Mie散乱理論は、一様な屈折率を有する媒体(マトリックス)中に該媒体と異なる屈折率を有する球形粒子(散乱微粒子)が存在するケースについてマックスウェルの電磁方程式の解を求めたものである。光散乱粒子に相当する散乱微粒子によって散乱した散乱光の角度に依存した強度分布I(Α、Θ)は下記(1)式で表される。Αは、散乱微粒子の光学的大きさを示すサイズパラメータであり、マトリックス中での光の波長λで規格化された球形粒子(散乱微粒子)の半径rに相当する量である。角度Θは散乱角で、入射光の進行方向と同一方向をΘ=180°にとる。
【0022】
また、(1)式中のi1、i2は(4)式で表される。そして、(2)〜(4)式中の下添字ν付のaおよびbは(5)式で表される。上添字1および下添字νを付したP(cosΘ)は、Legendreの多項式、下添字ν付のa、bは1次、2次のRecatti−Bessel関数Ψ*、ζ*(ただし、「*」は下添字νを意味する。)とその導関数とからなる。mはマトリックスを基準にした散乱微粒子の相対屈折率で、m=nscatter/nmatrixである。
【0023】
【数1】
【0024】
図2は、上記(1)〜(5)式に基づいて、単一真球粒子による強度分布I(Α、Θ)を示すグラフである。この図2では、原点Gの位置に散乱微粒子としての真球粒子があり、下方から入射光が入射した場合の散乱光強度の角度分布I(Α、Θ)を示している。そして、原点Gから各曲線S1〜S3までの距離が、それぞれの散乱角方向の散乱光強度である。曲線S1はΑが1.7であるときの散乱光強度、曲線S2はΑが11.5であるときの散乱光強度、曲線S3はΑが69.2であるときの散乱光強度を示している。なお、図2においては、散乱光強度を対数目盛で示している。このため、図2では僅かな強度差として見える部分が、実際には非常に大きな差となる。
【0025】
この図2に示すように、サイズパラメータΑが大きくなればなるほど(ある波長λで考えた場合は真球粒子の粒径が大きくなればなるほど)、上方(照射方向の前方)に対して指向性高く光が散乱されていることがわかる。また、実際のところ、散乱光強度の角度分布I(Α、Θ)は、入射光波長λを固定すれば、散乱子の半径rと、媒体および散乱微粒子の相対屈折率mとをパラメータとして制御することができる。なお、導光体2は、前方散乱が大きいものとなっている。
【0026】
このような、単一真球粒子がN個含まれる光散乱導光体に光を入射させると、光は真球粒子により散乱される。散乱光は光散乱導光体中を進み、他の真球粒子により再度散乱される。ある程度以上の体積濃度で粒子を添加した場合には、このような散乱が逐次的に複数回行われた後、光が光散乱導光体から出射する。このような散乱光がさらに散乱されるような現象を多重散乱現象と呼ぶ。このような多重散乱においては、透明ポリマーでの光線追跡法による解析は容易ではない。しかし、モンテカルロ法により光の挙動を追跡し、その特性を解析することはできる。それによると、入射光が無偏光の場合、散乱角の累積分布関数F(Θ)は下記の(6)式で表される。
【0027】
【数2】
【0028】
ここで(6)式中のI(Θ)は、(1)式で表されるサイズパラメータΑの真球粒子の散乱強度である。強度Ioの光が光散乱導光体に入射し、距離yを透過した後、光の強度が散乱によりIに減衰したとすると、これらの関係は下記の(7)式で表される。
【0029】
【数3】
【0030】
この(7)式中のτは濁度と呼ばれ、媒体の散乱係数に相当するものであり、下記の(8)式のように粒子数Nに比例する。なお、(8)式中、σsは散乱断面積である。
【0031】
【数4】
【0032】
(7)式から長さLの光散乱導光体を散乱せずに透過する確率Pt(L)は下記の(9)式で表される。
【0033】
【数5】
【0034】
反対に光路長Lまでに散乱される確率Ps(L)は下記の(10)式で表される。
【数6】
【0035】
これらの式からわかるように、濁度τを変えることにより、光散乱導光体内での多重散乱の度合いを制御することができる。
【0036】
以上の関係式により、散乱微粒子のサイズパラメータΑと濁度τとの少なくとも1つをパラメータとして、光散乱導光体内での多重散乱を制御可能であり、出射面12における出射光強度と散乱角も適正に設定可能である。
【0037】
図1に示す樹脂成形体の保持具4は、中央がくり抜かれた円環状の形状をしている。その円環状の内周面は、図1における上側から下側に向かうに従い円環状の径を小さくする傾斜面21となっている。この傾斜面21は、断面形状で直線となり、全体形状では凹面とされている。そして、この傾斜面21には、鏡面となるように鏡面シート(図示省略)が貼付されている。よって、傾斜面21は、凹面鏡の一部となっている。なお、傾斜面21は、曲面状の凹部の一部として形成しても良い。このように傾斜面21は、凹面鏡の一部を形成する構成としているが、傾斜面21は、凹面鏡としなくても良い。
【0038】
導光体2は、コバ13が保持具4の傾斜面21に対向するように配置されている。また、導光体2のコバ13は、保持具4の上側の外周の縁部22にて保持されている。LED部材3は、図1における保持具4の下側面の円形にくり抜かれたくり抜き部23に対向するように固定されている。その結果、LED部材3の出射位置で導光体2の中心軸Mと交差する位置N1は、凹面11の円錐状の頂点に対向するようにされている。この出射位置N1は、LED部材3の中央位置でもある。また、コバ13と傾斜面21との間は、凹面11側から保持具4の上側の外周の縁部22に向かうに従って隙間の狭くなる間隙25となっている。
【0039】
発光装置1におけるLED部材3から出射された光の光路について説明する。図3から図6に、その光路の各例を示している。図3は、発光装置1において、LED部材3の中央位置N1ではなく、中央の出射位置N1から外周方向にずれた位置、すなわち凹面11の円錐状の周面に向かう出射位置N2から出射された光が凹面11の特定の領域Pに照射された場合の光路を示している。その光は、領域Pから導光体2に透過される光路L1と、領域Pにて反射される反射光の光路L2の2つの光路である。出射位置N1と出射位置N2を想定するのは、LED部材3の光の出射部位が点ではなく所定の面積を有する領域となるためである。
【0040】
光路L1は、LED部材3から出射された光が領域Pのある部分に当たり、凹面11から導光体2の内部へと進入し、出射面12から外部へ出射する光路である。光路L2は、LED部材3から出射された光が領域Pの他の部分に当たり、凹面11の領域Pで反射し、その後凹面11の別の領域から導光体2の内部へと進入し、出射面12から外部へ出射する光路である。なお、光が導光体2の内部へと進入し出射面12から外部へ出射するまでの間は、光は光散乱粒子の影響を受け、多重散乱する。光路L1,L2は、共に散乱が生じていないとしたときの経路であると共に多重散乱を受けた場合であっても確率が高い経路でもある。
【0041】
図4には、LED部材3の出射位置N2から出射された光のうち、大きく広がった光が凹面11の下部領域に照射された光の光路L3を示している。この下部領域に照射された光は、凹面11から導光体2の内部へと進入し、その後、コバ13にて全反射する。このような経路を取る光は、中心軸Mに対する広がり角度が60度を超えるものとなっている。しかし、凹面11の形状を変えることによって45度以上のものとしたり、65度以上のものとしたりすることができる。コバ13にて全反射した光は、さらに出射面12にて全反射を繰り返す。このとき、光が導光体2の内部へと進入し出射面12にて全反射を繰り返し、最後に導光体2の出射面から出射するまでの間は、光は光散乱粒子の影響を受け、多重散乱する。そのため、出射面12にて全反射を繰り返す過程で、その光の一部は、全反射されずに出射面12から光が出射されることとなる。この出射される光の光路L31,L32,L33を破線で図4に示す。なお、コバ13で全反射する光の全てが出射面12で再度全反射する訳ではない。なお、このコバ13の役割は、LED部材3の出射範囲を見かけ上広くするものである。
【0042】
図5には、LED部材3の出射位置N2から出射された光のうち、図4に示す光よりさらに大きく広がった光が傾斜面21の鏡面シートに反射してコバ13の特定の領域Qに照射された光の光路を示している。LED部材3から出射された光が領域Qに照射されると、その光は、2つの光路L4,L5をとる。光路L4は、LED部材3から出射された光が領域Qに当たり、コバ13から導光体2の内部へと進入する光路である。光路L5は、LED部材3から出射された光が領域Qに当たり、コバ13の領域Qで反射し、その後再度傾斜面21の鏡面シートに反射してコバ13の別の領域から導光体2の内部へと進入する光路である。導光体2の内部へと進入した光は、出射面12にて全反射を繰り返す。このとき、光が導光体2の内部へと進入し出射面12にて全反射を繰り返し、最後に出射面12から出射するまでの間は、光は光散乱粒子の影響を受け、多重散乱する。そのため、出射面12にて全反射を繰り返す過程で、その光の一部は、全反射されずに出射面12から出射されることとなる。この出射される光の光路L41,L42,L51,L52を破線で図5に示す。
【0043】
ここで、図4、図5に示すように、コバ13または保持具4によって反射され、導光体2内に入射した光であって光散乱粒子が無いとした場合の光が出射面12に入射する入射角をθとし、出射面12の全反射臨界角をθcとしたとき、(θc×1.7)>θ>(θc×0.9)の範囲となる入射角θのものは、20%以上となっている。
【0044】
図6は、LED部材3から出射される光がLED部材3の外周に近い側となる出射位置N4である場合の光路L6を示している。LED部材3から出射された光がコバ13の特定の領域Rに照射されると、その光は、光路L6をとる。光路L6は、まず、コバ13から導光体2の内部へと透過し、その後凹面11を全反射し、さらにその後出射面12から外部へ出射される。なお、光が導光体2の内部へと透過し出射面12から外部へ出射するまでの間は、光は光散乱粒子の影響を受け、多重散乱する。さらに、LED部材3の出射位置は、凹面11に複数向かうようにされていても良い。
【0045】
図7は、発光装置1の上面からの発光状態を示す。また、図8は、発光装置1の側面からの発光状態を示す。図7および図8において、発光状態は、色が白に近づくに従い出射輝度が高くなり、色が黒に近づくに従い出射輝度が低くなるように示している。
【0046】
また、図9は、比較対象の構成例を示す図であり、特許文献1に開示されているLED電球の構成に近づけるべく、円形板状のLED部材91の外表面に拡散シート92を配置した発光装置93の縦断面概要図である。図10は、発光装置93の上面からの発光状態を示す。また、図11は、発光装置93の側面からの発光状態を示す。発光状態は、図7および図8と同様に示している。なお、発光装置1のLED部材3と発光装置93のLED部材91は同一のものを用い、供給電力も同一とした。よって、出射位置N1,N2なども発光装置1のそれと同一である。すなわち、出射範囲をLED部材3,91の全範囲とした場合である。これは、図に示すLED部材3,91の左右方向方向の長さを一辺とした四角形の範囲が出射範囲となることを意味する。
【0047】
図7および図8と、図10および図11とを見比べると、発光装置93よりも発光装置1の方が導光体2全体に光が拡散し、グレアが低減できていることがわかる。すなわち、発光装置93は、図10に示すように中央部に高輝度部分、すなわちLED部材91の出射範囲の中央に相当する部分が明確に現われているこれに対し、発光装置1では、図7に示すように中央には高輝度部分はなく、中央を囲むようにして、リング状の高輝度部分が現われている。
【0048】
(本発明の第2の実施の形態に係る発光装置31について)
本発明の第2の実施の形態に係る発光装置31および発光装置31に用いられる光学素子としての導光体32の構成について説明する。
【0049】
図12は、発光装置31の縦断面概要図である。発光装置31は、発光装置1における導光体2の形状が異なる以外は発光装置1と同一の構成である。よって、導光体32以外の部材については発光装置1と同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0050】
導光体32は、LED部材3から発せられる光を導光し内部が充実体とされるものである。導光体32は、LED部材3から発せられる光が入射する部分の奥側が三角錐状にえぐれ、開口側がその三角錐状の底面から続くように円柱状の空間とされる凹面41を有している。この凹面41が、一方の面となる。
【0051】
そして、導光体32は、一方の面とは反対側に、球形をなしLED部材3から発せられた光を出射する出射面42(他方の面)を有している。すなわち、導光体32は、凹面41と出射面42を有するメニスカスレンズである。さらに、導光体32は、凹面41の周囲を取り囲み凹面41の開口側内周面と直角をなす円環状部43と、発光装置1の導光体2におけるコバ13と同様に円環状部43を円錐台の周面状に取り囲む環状の面である円環状部44を有している。これら円環状部43,44を総称してコバ45ということにする。コバ45は、LED部材3から発せられ導光体2内に導光された光を反射する。
【0052】
発光装置31におけるLED部材3から出射された光の光路は、発光装置1のそれと略同様である。また、コバ45または保持具4によって反射され、導光体32内に入射した光であって光散乱粒子が無いとした場合の光が出射面42に入射する入射角をθとし、出射面42の全反射臨界角をθcとしたとき、(θc×1.7)>θ>(θc×0.9)の範囲となる入射角θのものは、発光装置1同様20%以上となっている。
【0053】
図13は、発光装置31の上面からの発光状態を示す。また、図14は、発光装置31の側面からの発光状態を示す。発光状態は、図7および図8と同様に示している。なお、発光装置31のLED部材3と発光装置1のLED装置3は同一のものを用い、供給電力も同一とした。図13および図14と、比較対象の図10および図11とを見比べると、発光装置93よりも発光装置31の方が導光体32全体に光が拡散し、グレアが低減できていることがわかる。
【0054】
(本発明の第3の実施の形態に係る発光装置51について)
本発明の第3の実施の形態に係る発光装置51および発光装置51に用いられる光学素子としての導光体32の構成について説明する。
【0055】
図15は、発光装置51の縦断面概要図である。発光装置51は、発光装置31における保持具4の形状が異なり、導光体32の厚みが若干大きいこと以外は発光装置31と同一の構成である。よって、保持具53以外の部材については発光装置31と同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0056】
保持具53の図15における上側から下側までの高さは、保持具4の3倍である。保持具53は、中央がくり抜かれた円環状の形状をしている。その円環状の内周面は、図14における上側から下側に向かうに従い円環状の径を小さくする凹形状かつ曲面形状の傾斜面61となっている。この傾斜面61には、鏡面となるように鏡面シート(図示省略)が貼付されている。傾斜面61は、発光装置1の傾斜面21と同様に凹面鏡となっている。しかし、傾斜面61は、凹面鏡としなくても良い。
【0057】
導光体32は、コバ45が保持具53の傾斜面61に対向するように配置されている。また、導光体32のコバ45は、保持具53の縁部62にて保持されている。LED部材3は、図15における保持具53の下側面の円形にくり抜かれたくり抜き部63に対向するようにして固定されている。その結果、LED部材3の出射位置N1は、凹面41に向かうように配置されている。また、コバ45と傾斜面61との間は、凹面61側から縁部62に向かうに従って隙間の狭くなる間隙64となっている。
【0058】
発光装置51におけるLED部材3から出射された光の光路は、発光装置1のそれと略同様である。また、コバ45または保持具53によって反射され、導光体32内に入射した光であって光散乱粒子が無いとした場合の光が出射面42に入射する入射角をθとし、出射面42の全反射臨界角をθcとしたとき、(θc×1.7)>θ>(θc×0.9)の範囲となる入射角θのものは、発光装置1同様20%以上となっている。
【0059】
図16は、発光装置51の上面からの発光状態を示す。また、図17は、発光装置51の側面からの発光状態を示す。発光状態は、図7および図8と同様に示している。なお、発光装置51のLED部材3と発光装置1のLED部材3は同一のものを用い、供給電力も同一とした。図16および図17と、比較対象の図10および図11とを見比べると、発光装置93よりも発光装置51の方が導光部32全体に光が拡散し、グレアが低減できていることがわかる。
【0060】
(本発明の第4の実施の形態に係る発光装置71について)
本発明の第4の実施の形態に係る発光装置71および発光装置71に用いられる光学素子としての導光体2の構成について説明する。
【0061】
図18は、発光装置71の縦断面概要図である。発光装置71は、発光装置1における光の出射位置が4箇所となったこと以外は発光装置1と同一の構成である。すなわち、1つのLED部材3に4つのLED3A,3B,3C,3Dが配置される構成となっている。よって、各LED部材3A〜3Dの中心となる出射中心位置P1,P2,P3,P4とLED3A〜3D以外については発光装置1と同一の符号を付し、その説明を省略する。ここで、出射中心位置P1〜P4は、コバ13と凹面11との境界位置に対向する位置である。
【0062】
図19は、発光装置71のLED部材3の平面図である。正方形の部位がLED3A〜3Dで、その各中心位置が出射中心位置P1〜P4となる。発光装置71におけるLED部材3から出射された光の光路は、発光装置1のそれと略同様である。
【0063】
図20は、発光装置71の上面からの発光状態を示す。また、図21は、発光装置71の側面からの発光状態を示す。図20および図21において、発光状態は、色が白に近づくに従い出射輝度が高くなり、色が黒に近づくに従い出射輝度が低くなるように示している。
【0064】
また、図22は、比較例の発光装置93において、図18,図19に示すLED部材3を用いた比較例2を示すもので、発光装置の上面からの発光状態を示す。また、図23は、比較例2の発光装置の側面からの発光状態を示す。発光状態は、図20および図21と同様に示している。なお、比較例2の発光装置では、発光装置71のLED部材3と同一のものを用い、供給電力も同一とした。
【0065】
図20および図21と、図22および図23とを見比べると、比較例2の発光装置よりも発光装置71の方が導光体2全体に光が拡散し、グレアが低減できていることがわかる。
【0066】
(本発明の実施の形態によって得られる主な効果)
本発明の実施の形態に係る導光体2,32は、内部が充実体とされ、凹面11,41などから入射された光を導光し出射面12,42から出射するメニスカスレンズとし、メニスカスレンズを光を拡散する光散乱粒子が含有された光拡散体で形成した。このため、凹面11,41の形状を変えることで配光角を簡単に制御でき、しかもグレアを減少させることができる。また、発光装置1,31,51,71は、出射面12,42において光の一部を全反射させ、一方、光の一部を出射させる光路を形成できる。すなわち、出射面12,42にて全反射を繰り返す過程で、全反射されずに出射面12,42から光が出射される光が存在する。また、全反射をせずに出射面12,42から出射する光の方向も拡散される。そのため、出射する光を拡散してグレアを低減できる。
【0067】
また、出射面12,42側が球形をなし、凹面11,41と出射面12,42とをつなぐ境界部となるコバ13,45が、環状の凸面となっている。そのため、中心軸Mに対して大きな角度で導光体2,32に進入してきた光をコバ13,45の環状の面にて全反射させやすい。
【0068】
また、コバ13,45が凹面11,41から進入してきた光を全反射し、出射面12,42側へ光を導くため、LED部材3の出射部位外からも輝度を発生させ、輝度を均一にし、グレアをより防止する。
【0069】
また、保持具4,53が、光を導光体2,32側に反射する反射面を有しているため、保持具4,53の方向に漏れる光がある場合でも、その光を導光体2,32へと戻し、発光装置1,31,51,71の発光効率を高める。また、保持具4,53の反射面によって光を全反射し、導光体2,32側に導くため、LED部材3の出射部位外からも輝度を発生させ、輝度を均一にし、グレアをより防止できる。
【0070】
また、発光装置1、31,51,71において、コバ13,45または保持具4,53によって反射され、導光体2,32内に入射した光であって光散乱粒子が無いとした場合の光が出射面12,42に入射する入射角をθとし、出射面12,42の全反射臨界角をθcとしたとき、(θc×1.7)>θ>(θc×0.9)の範囲となる入射角θのものは、20%以上となっている。そのため、出射面12,42における光の全反射の確率が高まり、導光体2,32の出射面12,42の全体から輝度を発生させることができる。この範囲内の光は、導光体2,32内部で全反射する回数を抑えることができ、高い出射効率を維持できる。また、(θc×1.7)>θ>(θc×1.1)の範囲となる入射角θのものが、30%以上となることが、より好ましい。この範囲の光は、散乱を受けた際でも全反射し導光体2,32の側面に出射される確率が高くなり、側面から見た場合でも輝度が均一になる。
【0071】
また、導光体2,32には、透光性シリコーン粒子からなる光散乱粒子が含有されている。そのため、従来の光拡散シートを用いた場合の発光装置93の全体の明るさ(図10および図11に示す)に比べて、発光装置1,31,51,71の全体の明るさ(それぞれ図7および図8、図13および図14、図16および図17、図20および図21に示す)が明るい。これは、この光散乱粒子による光拡散は、光吸収の程度が低いためである。
【0072】
(他の形態)
以上、本発明の実施の形態における導光体2,32およびそれを用いた発光装置1,31,51,71について説明したが、本発明の要旨を逸脱しない限り種々変更実施可能である。
【0073】
本発明の実施の形態に係る導光体2,32は、内部が充実体とされ、凹面11,41から入射された光を導光し出射面12,42から出射するメニスカスレンズとしている。そして、メニスカスレンズは、光を拡散する光散乱粒子を含有する光拡散体で形成している。しかし、メニスカスレンズは、たとえばポリカーボネート樹脂に光拡散体としてのシリコーン粒子を分散させたもの等としても良い。
【0074】
また、光拡散体として光散乱粒子を用いる場合には、光散乱粒子の材質、形状、粒径等の諸条件を適宜設定できる。たとえば、光散乱粒子は、その粒子径が2μmから9μmの球状かつ透光性のシリコーン粒子としている。しかし、光散乱粒子は、導光体2内の光を多重散乱するものであれば、その材質、形状、粒子径等を問わず、種々のものを用いることができる。ただし、導光体2,32において入射光の前方散乱を適切な範囲で大きくするためには、粒子径が2μmから9μm、より好ましくは5μmから9μmの球状かつ透光性のシリコーン粒子を用いることが好ましい。
【0075】
また、出射面12,42側が球形(ドーム状)をなし、凹面11,41と出射面12,42とをつなぎ、LED部材3側に突出するコバ13,45が、環状の面となっている。しかし、出射面12,42側は楕円球のような形状等としても良い。また、コバ13,45は、環状の面ではなく、たとえば一部環状が途切れていても良い。また、LED部材3側に突出するコバ13,45を設けないようにしても良い。
【0076】
また、凹面11,41は、平滑面とされているが、光を散乱するシボ状になっていても良い。凹面11,41をシボ状とすることによって、導光体2,32内における光の拡散・散乱が促進される。
【0077】
また、凹面11,41と出射面12,42との境界部となるコバ13,45が凹面11,41から導光体2,32へ進入してきた光を全反射している。しかし、たとえばコバ13,45にて光が透過され、保持具4,53によって反射されることとしても良い。
【0078】
また、発光装置1,31,51,71は、導光体2,32を凹面11,41側から支える保持具4,53を有し、保持具4,53が、光を導光体2,32側に反射する反射面(傾斜面21に貼付されている鏡面シート)を有している。しかし、発光装置1,31,51,71は、保持具4,53とその反射面を省略しても良い。たとえば、コバ13,45の面にプリズムを形成して、光を反射することとしても良い。また、傾斜面21,61に鏡面シートを貼付するのではなく、蒸着、磨き加工等によって鏡面を形成しても良い。
【0079】
また、発光装置1、31,53において、コバ13,45または保持具4,53によって反射され、導光体2,32内に入射した光であって光散乱粒子が無いとした場合の光が出射面12,42に入射する入射角をθとし、出射面12,42の全反射臨界角をθcとしたとき、(θc×1.7)>θ>(θc×0.9)の範囲となる入射角θのものは、 20%以上となっている。しかし、その値は20%未満としても良い。
【0080】
また、LED部材3の出射位置A,Bは、凹面11に向かうようにされている。そして、LED部材3の各LED3A〜3Dの各出射中心位置P1〜P4は、凹面11とコバ13の境界位置に向かうようにされている。しかし、各LED3A〜3Dの出射中心位置は、コバ13,45の部分に向かうようにされていても良い。また、LED部材3の出射位置は、凹面11およびコバ13,45に向かうようにされていても良い。この場合、LEDは、複数個用いられる。
【0081】
また、発光部材はLEDに限定されず、有機エレクトロルミネッセンス(Organic Electro-Luminescence、OEL、有機EL)、無機エレクトロルミネッセンス(Inorganic Electro-Luminescence、IEL、無機EL)、レーザー光等の他の発光部材を用いることができる。さらに、LEDにはチップ型のものを用いているが、レンズ付きのLEDを用いることができる。
【符号の説明】
【0082】
1,31,51,71 発光装置
2,32 導光体(光学素子、メニスカスレンズ)
3 LED部材(発光部材)
4,53 保持具
11,41 凹面(一方の面)
12,42 出射面(他方の面)
13,45 コバ
θ 入射角
θc 全反射臨界角
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学素子および発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、LED(Light Emitting Diode)のハイパワー化、高効率化により、白熱電球および蛍光灯の代替えとして、LED照明装置が実用化されてきている。白熱電球または蛍光灯に比べて、LEDは大きさが小さく、光束密度が高い。また、白熱電球および蛍光灯が全方位に発光するのに対して、LEDは光線の指向性を高くし易いという特徴を有する。また、最近では、3Wさらには10WというパワーLEDも実用化されている。
【0003】
このようなLEDを光源とする電球として、特許文献1には、透光性のグローブの外表面に拡散シートを具備しているLED電球が提案されている。このLED電球は、その輝度をほぼ均一にできるものとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−91140号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら特許文献1に提案されているLED電球は、その設計によって配光角を調整できない。そのため、ハイパワーのLEDを用いた場合には、まぶしさ(グレア)の大きいものとなる。
【0006】
本発明は、このような背景の下に行われたものであって、グレアを低減できる光学素子および発光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の光学素子は、内部が充実体とされ、一方の面から入射された光を導光し他方の面から出射する光学素子において、一方の面を凹面とし、他方の面を凸面としたメニスカスレンズとし、メニスカスレンズを光を拡散する光拡散体で形成した。
【0008】
ここで、他方の面側が球形をなし、一方の面と他方の面との境界部となるメニスカスレンズのコバが、球形の面とは反対側に突出した環状の面となっていることが好ましい。
【0009】
また、一方の面は、光を散乱するシボ状になっていることが好ましい。
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の発光装置は、発光部材と、内部が充実体とされ、発光部材から発せられる光が一方の面から入射され他方の面から出射する光学素子とを有する発光装置において、光学素子は、一方の面を凹面とし、他方の面を凸面としたメニスカスレンズとされ、このメニスカスレンズは、光を拡散する光拡散体で形成されている。
【0011】
ここで、一方の面と他方の面との境界部となるメニスカスレンズのコバが一方の面から進入してきた光を全反射することが好ましい。
【0012】
また、光学素子を一方の面側から支える保持具を有し、保持具が、光を光学素子側に反射する反射面を有していることが好ましい。
【0013】
また、コバまたは保持具によって反射され、メニスカスレンズ内に入射した光であって光散乱体が無いとした場合の光が他方の面に入射する入射角をθとし、他方の面の全反射臨界角をθcとしたとき、(θc×1.7)>θ>(θc×0.9)の範囲となる入射角θのものを20%以上とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、グレアを低減できる光学素子および発光装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る発光装置の縦断面概要図である。
【図2】図1に示す導光体中の光散乱粒子となるシリコーン粒子の散乱原理を示す図で、単一真球粒子による散乱光強度の角度分布(Α、Θ)を示すグラフである。
【図3】図1に示す発光装置におけるLED部材から出射された光の光路を示す図であり、凹面の特定の領域に照射される光の光路を示す図である。
【図4】図1に示す発光装置におけるLED部材から出射された光の光路を示す図であり、LED部材から出射された光のうち、大きく広がった光が凹面の下部領域に照射された光の光路を示す図である。
【図5】図1に示す発光装置におけるLED部材から出射された光の光路を示す図であり、LED部材から出射された光のうち、図4に示す光よりさらに大きく広がった光が傾斜面の鏡面シートに反射してコバの特定の領域に照射された光の光路を示す図である。
【図6】図1に示す発光装置においてLEDから直接コバの特定の領域に向けて出射された光の光路を示す図である。
【図7】図1に示す発光装置の上面からの発光状態を示す図である。
【図8】図1に示す発光装置の側面からの発光状態を示す図である。
【図9】比較例の構成を示す図で、LED部材の外表面に拡散シートをを配置した比較例の発光装置の縦断面概要図を示す図である。
【図10】図9に示す比較例の発光装置の上面からの発光状態を示す図である。
【図11】図9に示す比較例の発光装置の側面からの発光状態を示す図である。
【図12】本発明の第2の実施の形態に係る発光装置の縦断面概要図である。
【図13】図12に示す発光装置の上面からの発光状態を示す図である。
【図14】図12に示す発光装置の側面からの発光状態を示す図である。
【図15】本発明の第3の実施の形態に係る発光装置の縦断面概要図である。
【図16】図15に示す発光装置の上面からの発光状態を示す図である。
【図17】図15に示す発光装置の側面からの発光状態を示す図である。
【図18】本発明の第4の実施の形態に係る発光装置の縦断面概要図である。
【図19】図18に示す発光装置のLED部材の平面図である。
【図20】図18に示す発光装置の上面からの発光状態を示す図である。
【図21】図18に示す発光装置の側面からの発光状態を示す図である。
【図22】比較例2の発光装置の上面からの発光状態を示す図である。
【図23】比較例2の発光装置の側面からの発光状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(本発明の第1の実施の形態に係る発光装置1について)
本発明の第1の実施の形態に係る発光装置1および発光装置1に用いられる光学素子としての導光体2の構成について説明する。
【0017】
図1は、発光装置1の縦断面概要図である。発光装置1は、発光部材となるチップ型のLEDを円形板状の中央に配置したLED部材3と、LED部材3から発せられる光を導光し内部が充実体とされる導光体2と、導光体2を保持する保持具4を有している。導光体2は、LED部材3から発せられる光が入射する三角錐状にえぐれた凹面11を有している。この凹面11が、一方の面となる。
【0018】
そして、導光体2は、一方の面とは反対側に、球形をなしLED部材3から発せられた光を出射するドーム形状の出射面12(他方の面)を有している。すなわち、導光体2は、平滑な凹面11と球形状の出射面12を有するメニスカスレンズである。さらに、導光体2は、凹面11と出射面12とをつなぐために凹面11の周囲を円錐台の周面状に取り囲むコバ13を有している。すなわち、導光体2は、LED部材3から発せられ導光体2内に導光された光であって導光体2の中心軸Mに対して大きな角度(たとえば60から80度)でLED部材3から出射される光を反射する環状の面であるコバ13を有している。このコバ13の面は、導光体2の周方向に若干突出する凸面となっている。すなわち、LED部材3側にわずかに突出する曲面となっている。
【0019】
また、導光体2は、たとえば透明のポリメチルメタクリレート(以下、「PMMA」と略記する。)からなる樹脂成形体である。そして、PMMAには、粒子径が2μm〜10μmの光散乱粒子となる透光性シリコーン粒子を分散させてある。これにより、導光体2は、光拡散体になっている。
【0020】
以下、導光体2のシリコーン粒子について説明する。このシリコーン粒子は、体積的に一様な散乱能が与えられた導光体であり、散乱微粒子としての球形粒子を多数含んでいる。導光体2の内部に光が入射すると、その光は散乱微粒子によって散乱することになる。
【0021】
ここで、シリコーン粒子の理論的な基礎を与えるMie散乱理論について説明する。Mie散乱理論は、一様な屈折率を有する媒体(マトリックス)中に該媒体と異なる屈折率を有する球形粒子(散乱微粒子)が存在するケースについてマックスウェルの電磁方程式の解を求めたものである。光散乱粒子に相当する散乱微粒子によって散乱した散乱光の角度に依存した強度分布I(Α、Θ)は下記(1)式で表される。Αは、散乱微粒子の光学的大きさを示すサイズパラメータであり、マトリックス中での光の波長λで規格化された球形粒子(散乱微粒子)の半径rに相当する量である。角度Θは散乱角で、入射光の進行方向と同一方向をΘ=180°にとる。
【0022】
また、(1)式中のi1、i2は(4)式で表される。そして、(2)〜(4)式中の下添字ν付のaおよびbは(5)式で表される。上添字1および下添字νを付したP(cosΘ)は、Legendreの多項式、下添字ν付のa、bは1次、2次のRecatti−Bessel関数Ψ*、ζ*(ただし、「*」は下添字νを意味する。)とその導関数とからなる。mはマトリックスを基準にした散乱微粒子の相対屈折率で、m=nscatter/nmatrixである。
【0023】
【数1】
【0024】
図2は、上記(1)〜(5)式に基づいて、単一真球粒子による強度分布I(Α、Θ)を示すグラフである。この図2では、原点Gの位置に散乱微粒子としての真球粒子があり、下方から入射光が入射した場合の散乱光強度の角度分布I(Α、Θ)を示している。そして、原点Gから各曲線S1〜S3までの距離が、それぞれの散乱角方向の散乱光強度である。曲線S1はΑが1.7であるときの散乱光強度、曲線S2はΑが11.5であるときの散乱光強度、曲線S3はΑが69.2であるときの散乱光強度を示している。なお、図2においては、散乱光強度を対数目盛で示している。このため、図2では僅かな強度差として見える部分が、実際には非常に大きな差となる。
【0025】
この図2に示すように、サイズパラメータΑが大きくなればなるほど(ある波長λで考えた場合は真球粒子の粒径が大きくなればなるほど)、上方(照射方向の前方)に対して指向性高く光が散乱されていることがわかる。また、実際のところ、散乱光強度の角度分布I(Α、Θ)は、入射光波長λを固定すれば、散乱子の半径rと、媒体および散乱微粒子の相対屈折率mとをパラメータとして制御することができる。なお、導光体2は、前方散乱が大きいものとなっている。
【0026】
このような、単一真球粒子がN個含まれる光散乱導光体に光を入射させると、光は真球粒子により散乱される。散乱光は光散乱導光体中を進み、他の真球粒子により再度散乱される。ある程度以上の体積濃度で粒子を添加した場合には、このような散乱が逐次的に複数回行われた後、光が光散乱導光体から出射する。このような散乱光がさらに散乱されるような現象を多重散乱現象と呼ぶ。このような多重散乱においては、透明ポリマーでの光線追跡法による解析は容易ではない。しかし、モンテカルロ法により光の挙動を追跡し、その特性を解析することはできる。それによると、入射光が無偏光の場合、散乱角の累積分布関数F(Θ)は下記の(6)式で表される。
【0027】
【数2】
【0028】
ここで(6)式中のI(Θ)は、(1)式で表されるサイズパラメータΑの真球粒子の散乱強度である。強度Ioの光が光散乱導光体に入射し、距離yを透過した後、光の強度が散乱によりIに減衰したとすると、これらの関係は下記の(7)式で表される。
【0029】
【数3】
【0030】
この(7)式中のτは濁度と呼ばれ、媒体の散乱係数に相当するものであり、下記の(8)式のように粒子数Nに比例する。なお、(8)式中、σsは散乱断面積である。
【0031】
【数4】
【0032】
(7)式から長さLの光散乱導光体を散乱せずに透過する確率Pt(L)は下記の(9)式で表される。
【0033】
【数5】
【0034】
反対に光路長Lまでに散乱される確率Ps(L)は下記の(10)式で表される。
【数6】
【0035】
これらの式からわかるように、濁度τを変えることにより、光散乱導光体内での多重散乱の度合いを制御することができる。
【0036】
以上の関係式により、散乱微粒子のサイズパラメータΑと濁度τとの少なくとも1つをパラメータとして、光散乱導光体内での多重散乱を制御可能であり、出射面12における出射光強度と散乱角も適正に設定可能である。
【0037】
図1に示す樹脂成形体の保持具4は、中央がくり抜かれた円環状の形状をしている。その円環状の内周面は、図1における上側から下側に向かうに従い円環状の径を小さくする傾斜面21となっている。この傾斜面21は、断面形状で直線となり、全体形状では凹面とされている。そして、この傾斜面21には、鏡面となるように鏡面シート(図示省略)が貼付されている。よって、傾斜面21は、凹面鏡の一部となっている。なお、傾斜面21は、曲面状の凹部の一部として形成しても良い。このように傾斜面21は、凹面鏡の一部を形成する構成としているが、傾斜面21は、凹面鏡としなくても良い。
【0038】
導光体2は、コバ13が保持具4の傾斜面21に対向するように配置されている。また、導光体2のコバ13は、保持具4の上側の外周の縁部22にて保持されている。LED部材3は、図1における保持具4の下側面の円形にくり抜かれたくり抜き部23に対向するように固定されている。その結果、LED部材3の出射位置で導光体2の中心軸Mと交差する位置N1は、凹面11の円錐状の頂点に対向するようにされている。この出射位置N1は、LED部材3の中央位置でもある。また、コバ13と傾斜面21との間は、凹面11側から保持具4の上側の外周の縁部22に向かうに従って隙間の狭くなる間隙25となっている。
【0039】
発光装置1におけるLED部材3から出射された光の光路について説明する。図3から図6に、その光路の各例を示している。図3は、発光装置1において、LED部材3の中央位置N1ではなく、中央の出射位置N1から外周方向にずれた位置、すなわち凹面11の円錐状の周面に向かう出射位置N2から出射された光が凹面11の特定の領域Pに照射された場合の光路を示している。その光は、領域Pから導光体2に透過される光路L1と、領域Pにて反射される反射光の光路L2の2つの光路である。出射位置N1と出射位置N2を想定するのは、LED部材3の光の出射部位が点ではなく所定の面積を有する領域となるためである。
【0040】
光路L1は、LED部材3から出射された光が領域Pのある部分に当たり、凹面11から導光体2の内部へと進入し、出射面12から外部へ出射する光路である。光路L2は、LED部材3から出射された光が領域Pの他の部分に当たり、凹面11の領域Pで反射し、その後凹面11の別の領域から導光体2の内部へと進入し、出射面12から外部へ出射する光路である。なお、光が導光体2の内部へと進入し出射面12から外部へ出射するまでの間は、光は光散乱粒子の影響を受け、多重散乱する。光路L1,L2は、共に散乱が生じていないとしたときの経路であると共に多重散乱を受けた場合であっても確率が高い経路でもある。
【0041】
図4には、LED部材3の出射位置N2から出射された光のうち、大きく広がった光が凹面11の下部領域に照射された光の光路L3を示している。この下部領域に照射された光は、凹面11から導光体2の内部へと進入し、その後、コバ13にて全反射する。このような経路を取る光は、中心軸Mに対する広がり角度が60度を超えるものとなっている。しかし、凹面11の形状を変えることによって45度以上のものとしたり、65度以上のものとしたりすることができる。コバ13にて全反射した光は、さらに出射面12にて全反射を繰り返す。このとき、光が導光体2の内部へと進入し出射面12にて全反射を繰り返し、最後に導光体2の出射面から出射するまでの間は、光は光散乱粒子の影響を受け、多重散乱する。そのため、出射面12にて全反射を繰り返す過程で、その光の一部は、全反射されずに出射面12から光が出射されることとなる。この出射される光の光路L31,L32,L33を破線で図4に示す。なお、コバ13で全反射する光の全てが出射面12で再度全反射する訳ではない。なお、このコバ13の役割は、LED部材3の出射範囲を見かけ上広くするものである。
【0042】
図5には、LED部材3の出射位置N2から出射された光のうち、図4に示す光よりさらに大きく広がった光が傾斜面21の鏡面シートに反射してコバ13の特定の領域Qに照射された光の光路を示している。LED部材3から出射された光が領域Qに照射されると、その光は、2つの光路L4,L5をとる。光路L4は、LED部材3から出射された光が領域Qに当たり、コバ13から導光体2の内部へと進入する光路である。光路L5は、LED部材3から出射された光が領域Qに当たり、コバ13の領域Qで反射し、その後再度傾斜面21の鏡面シートに反射してコバ13の別の領域から導光体2の内部へと進入する光路である。導光体2の内部へと進入した光は、出射面12にて全反射を繰り返す。このとき、光が導光体2の内部へと進入し出射面12にて全反射を繰り返し、最後に出射面12から出射するまでの間は、光は光散乱粒子の影響を受け、多重散乱する。そのため、出射面12にて全反射を繰り返す過程で、その光の一部は、全反射されずに出射面12から出射されることとなる。この出射される光の光路L41,L42,L51,L52を破線で図5に示す。
【0043】
ここで、図4、図5に示すように、コバ13または保持具4によって反射され、導光体2内に入射した光であって光散乱粒子が無いとした場合の光が出射面12に入射する入射角をθとし、出射面12の全反射臨界角をθcとしたとき、(θc×1.7)>θ>(θc×0.9)の範囲となる入射角θのものは、20%以上となっている。
【0044】
図6は、LED部材3から出射される光がLED部材3の外周に近い側となる出射位置N4である場合の光路L6を示している。LED部材3から出射された光がコバ13の特定の領域Rに照射されると、その光は、光路L6をとる。光路L6は、まず、コバ13から導光体2の内部へと透過し、その後凹面11を全反射し、さらにその後出射面12から外部へ出射される。なお、光が導光体2の内部へと透過し出射面12から外部へ出射するまでの間は、光は光散乱粒子の影響を受け、多重散乱する。さらに、LED部材3の出射位置は、凹面11に複数向かうようにされていても良い。
【0045】
図7は、発光装置1の上面からの発光状態を示す。また、図8は、発光装置1の側面からの発光状態を示す。図7および図8において、発光状態は、色が白に近づくに従い出射輝度が高くなり、色が黒に近づくに従い出射輝度が低くなるように示している。
【0046】
また、図9は、比較対象の構成例を示す図であり、特許文献1に開示されているLED電球の構成に近づけるべく、円形板状のLED部材91の外表面に拡散シート92を配置した発光装置93の縦断面概要図である。図10は、発光装置93の上面からの発光状態を示す。また、図11は、発光装置93の側面からの発光状態を示す。発光状態は、図7および図8と同様に示している。なお、発光装置1のLED部材3と発光装置93のLED部材91は同一のものを用い、供給電力も同一とした。よって、出射位置N1,N2なども発光装置1のそれと同一である。すなわち、出射範囲をLED部材3,91の全範囲とした場合である。これは、図に示すLED部材3,91の左右方向方向の長さを一辺とした四角形の範囲が出射範囲となることを意味する。
【0047】
図7および図8と、図10および図11とを見比べると、発光装置93よりも発光装置1の方が導光体2全体に光が拡散し、グレアが低減できていることがわかる。すなわち、発光装置93は、図10に示すように中央部に高輝度部分、すなわちLED部材91の出射範囲の中央に相当する部分が明確に現われているこれに対し、発光装置1では、図7に示すように中央には高輝度部分はなく、中央を囲むようにして、リング状の高輝度部分が現われている。
【0048】
(本発明の第2の実施の形態に係る発光装置31について)
本発明の第2の実施の形態に係る発光装置31および発光装置31に用いられる光学素子としての導光体32の構成について説明する。
【0049】
図12は、発光装置31の縦断面概要図である。発光装置31は、発光装置1における導光体2の形状が異なる以外は発光装置1と同一の構成である。よって、導光体32以外の部材については発光装置1と同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0050】
導光体32は、LED部材3から発せられる光を導光し内部が充実体とされるものである。導光体32は、LED部材3から発せられる光が入射する部分の奥側が三角錐状にえぐれ、開口側がその三角錐状の底面から続くように円柱状の空間とされる凹面41を有している。この凹面41が、一方の面となる。
【0051】
そして、導光体32は、一方の面とは反対側に、球形をなしLED部材3から発せられた光を出射する出射面42(他方の面)を有している。すなわち、導光体32は、凹面41と出射面42を有するメニスカスレンズである。さらに、導光体32は、凹面41の周囲を取り囲み凹面41の開口側内周面と直角をなす円環状部43と、発光装置1の導光体2におけるコバ13と同様に円環状部43を円錐台の周面状に取り囲む環状の面である円環状部44を有している。これら円環状部43,44を総称してコバ45ということにする。コバ45は、LED部材3から発せられ導光体2内に導光された光を反射する。
【0052】
発光装置31におけるLED部材3から出射された光の光路は、発光装置1のそれと略同様である。また、コバ45または保持具4によって反射され、導光体32内に入射した光であって光散乱粒子が無いとした場合の光が出射面42に入射する入射角をθとし、出射面42の全反射臨界角をθcとしたとき、(θc×1.7)>θ>(θc×0.9)の範囲となる入射角θのものは、発光装置1同様20%以上となっている。
【0053】
図13は、発光装置31の上面からの発光状態を示す。また、図14は、発光装置31の側面からの発光状態を示す。発光状態は、図7および図8と同様に示している。なお、発光装置31のLED部材3と発光装置1のLED装置3は同一のものを用い、供給電力も同一とした。図13および図14と、比較対象の図10および図11とを見比べると、発光装置93よりも発光装置31の方が導光体32全体に光が拡散し、グレアが低減できていることがわかる。
【0054】
(本発明の第3の実施の形態に係る発光装置51について)
本発明の第3の実施の形態に係る発光装置51および発光装置51に用いられる光学素子としての導光体32の構成について説明する。
【0055】
図15は、発光装置51の縦断面概要図である。発光装置51は、発光装置31における保持具4の形状が異なり、導光体32の厚みが若干大きいこと以外は発光装置31と同一の構成である。よって、保持具53以外の部材については発光装置31と同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0056】
保持具53の図15における上側から下側までの高さは、保持具4の3倍である。保持具53は、中央がくり抜かれた円環状の形状をしている。その円環状の内周面は、図14における上側から下側に向かうに従い円環状の径を小さくする凹形状かつ曲面形状の傾斜面61となっている。この傾斜面61には、鏡面となるように鏡面シート(図示省略)が貼付されている。傾斜面61は、発光装置1の傾斜面21と同様に凹面鏡となっている。しかし、傾斜面61は、凹面鏡としなくても良い。
【0057】
導光体32は、コバ45が保持具53の傾斜面61に対向するように配置されている。また、導光体32のコバ45は、保持具53の縁部62にて保持されている。LED部材3は、図15における保持具53の下側面の円形にくり抜かれたくり抜き部63に対向するようにして固定されている。その結果、LED部材3の出射位置N1は、凹面41に向かうように配置されている。また、コバ45と傾斜面61との間は、凹面61側から縁部62に向かうに従って隙間の狭くなる間隙64となっている。
【0058】
発光装置51におけるLED部材3から出射された光の光路は、発光装置1のそれと略同様である。また、コバ45または保持具53によって反射され、導光体32内に入射した光であって光散乱粒子が無いとした場合の光が出射面42に入射する入射角をθとし、出射面42の全反射臨界角をθcとしたとき、(θc×1.7)>θ>(θc×0.9)の範囲となる入射角θのものは、発光装置1同様20%以上となっている。
【0059】
図16は、発光装置51の上面からの発光状態を示す。また、図17は、発光装置51の側面からの発光状態を示す。発光状態は、図7および図8と同様に示している。なお、発光装置51のLED部材3と発光装置1のLED部材3は同一のものを用い、供給電力も同一とした。図16および図17と、比較対象の図10および図11とを見比べると、発光装置93よりも発光装置51の方が導光部32全体に光が拡散し、グレアが低減できていることがわかる。
【0060】
(本発明の第4の実施の形態に係る発光装置71について)
本発明の第4の実施の形態に係る発光装置71および発光装置71に用いられる光学素子としての導光体2の構成について説明する。
【0061】
図18は、発光装置71の縦断面概要図である。発光装置71は、発光装置1における光の出射位置が4箇所となったこと以外は発光装置1と同一の構成である。すなわち、1つのLED部材3に4つのLED3A,3B,3C,3Dが配置される構成となっている。よって、各LED部材3A〜3Dの中心となる出射中心位置P1,P2,P3,P4とLED3A〜3D以外については発光装置1と同一の符号を付し、その説明を省略する。ここで、出射中心位置P1〜P4は、コバ13と凹面11との境界位置に対向する位置である。
【0062】
図19は、発光装置71のLED部材3の平面図である。正方形の部位がLED3A〜3Dで、その各中心位置が出射中心位置P1〜P4となる。発光装置71におけるLED部材3から出射された光の光路は、発光装置1のそれと略同様である。
【0063】
図20は、発光装置71の上面からの発光状態を示す。また、図21は、発光装置71の側面からの発光状態を示す。図20および図21において、発光状態は、色が白に近づくに従い出射輝度が高くなり、色が黒に近づくに従い出射輝度が低くなるように示している。
【0064】
また、図22は、比較例の発光装置93において、図18,図19に示すLED部材3を用いた比較例2を示すもので、発光装置の上面からの発光状態を示す。また、図23は、比較例2の発光装置の側面からの発光状態を示す。発光状態は、図20および図21と同様に示している。なお、比較例2の発光装置では、発光装置71のLED部材3と同一のものを用い、供給電力も同一とした。
【0065】
図20および図21と、図22および図23とを見比べると、比較例2の発光装置よりも発光装置71の方が導光体2全体に光が拡散し、グレアが低減できていることがわかる。
【0066】
(本発明の実施の形態によって得られる主な効果)
本発明の実施の形態に係る導光体2,32は、内部が充実体とされ、凹面11,41などから入射された光を導光し出射面12,42から出射するメニスカスレンズとし、メニスカスレンズを光を拡散する光散乱粒子が含有された光拡散体で形成した。このため、凹面11,41の形状を変えることで配光角を簡単に制御でき、しかもグレアを減少させることができる。また、発光装置1,31,51,71は、出射面12,42において光の一部を全反射させ、一方、光の一部を出射させる光路を形成できる。すなわち、出射面12,42にて全反射を繰り返す過程で、全反射されずに出射面12,42から光が出射される光が存在する。また、全反射をせずに出射面12,42から出射する光の方向も拡散される。そのため、出射する光を拡散してグレアを低減できる。
【0067】
また、出射面12,42側が球形をなし、凹面11,41と出射面12,42とをつなぐ境界部となるコバ13,45が、環状の凸面となっている。そのため、中心軸Mに対して大きな角度で導光体2,32に進入してきた光をコバ13,45の環状の面にて全反射させやすい。
【0068】
また、コバ13,45が凹面11,41から進入してきた光を全反射し、出射面12,42側へ光を導くため、LED部材3の出射部位外からも輝度を発生させ、輝度を均一にし、グレアをより防止する。
【0069】
また、保持具4,53が、光を導光体2,32側に反射する反射面を有しているため、保持具4,53の方向に漏れる光がある場合でも、その光を導光体2,32へと戻し、発光装置1,31,51,71の発光効率を高める。また、保持具4,53の反射面によって光を全反射し、導光体2,32側に導くため、LED部材3の出射部位外からも輝度を発生させ、輝度を均一にし、グレアをより防止できる。
【0070】
また、発光装置1、31,51,71において、コバ13,45または保持具4,53によって反射され、導光体2,32内に入射した光であって光散乱粒子が無いとした場合の光が出射面12,42に入射する入射角をθとし、出射面12,42の全反射臨界角をθcとしたとき、(θc×1.7)>θ>(θc×0.9)の範囲となる入射角θのものは、20%以上となっている。そのため、出射面12,42における光の全反射の確率が高まり、導光体2,32の出射面12,42の全体から輝度を発生させることができる。この範囲内の光は、導光体2,32内部で全反射する回数を抑えることができ、高い出射効率を維持できる。また、(θc×1.7)>θ>(θc×1.1)の範囲となる入射角θのものが、30%以上となることが、より好ましい。この範囲の光は、散乱を受けた際でも全反射し導光体2,32の側面に出射される確率が高くなり、側面から見た場合でも輝度が均一になる。
【0071】
また、導光体2,32には、透光性シリコーン粒子からなる光散乱粒子が含有されている。そのため、従来の光拡散シートを用いた場合の発光装置93の全体の明るさ(図10および図11に示す)に比べて、発光装置1,31,51,71の全体の明るさ(それぞれ図7および図8、図13および図14、図16および図17、図20および図21に示す)が明るい。これは、この光散乱粒子による光拡散は、光吸収の程度が低いためである。
【0072】
(他の形態)
以上、本発明の実施の形態における導光体2,32およびそれを用いた発光装置1,31,51,71について説明したが、本発明の要旨を逸脱しない限り種々変更実施可能である。
【0073】
本発明の実施の形態に係る導光体2,32は、内部が充実体とされ、凹面11,41から入射された光を導光し出射面12,42から出射するメニスカスレンズとしている。そして、メニスカスレンズは、光を拡散する光散乱粒子を含有する光拡散体で形成している。しかし、メニスカスレンズは、たとえばポリカーボネート樹脂に光拡散体としてのシリコーン粒子を分散させたもの等としても良い。
【0074】
また、光拡散体として光散乱粒子を用いる場合には、光散乱粒子の材質、形状、粒径等の諸条件を適宜設定できる。たとえば、光散乱粒子は、その粒子径が2μmから9μmの球状かつ透光性のシリコーン粒子としている。しかし、光散乱粒子は、導光体2内の光を多重散乱するものであれば、その材質、形状、粒子径等を問わず、種々のものを用いることができる。ただし、導光体2,32において入射光の前方散乱を適切な範囲で大きくするためには、粒子径が2μmから9μm、より好ましくは5μmから9μmの球状かつ透光性のシリコーン粒子を用いることが好ましい。
【0075】
また、出射面12,42側が球形(ドーム状)をなし、凹面11,41と出射面12,42とをつなぎ、LED部材3側に突出するコバ13,45が、環状の面となっている。しかし、出射面12,42側は楕円球のような形状等としても良い。また、コバ13,45は、環状の面ではなく、たとえば一部環状が途切れていても良い。また、LED部材3側に突出するコバ13,45を設けないようにしても良い。
【0076】
また、凹面11,41は、平滑面とされているが、光を散乱するシボ状になっていても良い。凹面11,41をシボ状とすることによって、導光体2,32内における光の拡散・散乱が促進される。
【0077】
また、凹面11,41と出射面12,42との境界部となるコバ13,45が凹面11,41から導光体2,32へ進入してきた光を全反射している。しかし、たとえばコバ13,45にて光が透過され、保持具4,53によって反射されることとしても良い。
【0078】
また、発光装置1,31,51,71は、導光体2,32を凹面11,41側から支える保持具4,53を有し、保持具4,53が、光を導光体2,32側に反射する反射面(傾斜面21に貼付されている鏡面シート)を有している。しかし、発光装置1,31,51,71は、保持具4,53とその反射面を省略しても良い。たとえば、コバ13,45の面にプリズムを形成して、光を反射することとしても良い。また、傾斜面21,61に鏡面シートを貼付するのではなく、蒸着、磨き加工等によって鏡面を形成しても良い。
【0079】
また、発光装置1、31,53において、コバ13,45または保持具4,53によって反射され、導光体2,32内に入射した光であって光散乱粒子が無いとした場合の光が出射面12,42に入射する入射角をθとし、出射面12,42の全反射臨界角をθcとしたとき、(θc×1.7)>θ>(θc×0.9)の範囲となる入射角θのものは、 20%以上となっている。しかし、その値は20%未満としても良い。
【0080】
また、LED部材3の出射位置A,Bは、凹面11に向かうようにされている。そして、LED部材3の各LED3A〜3Dの各出射中心位置P1〜P4は、凹面11とコバ13の境界位置に向かうようにされている。しかし、各LED3A〜3Dの出射中心位置は、コバ13,45の部分に向かうようにされていても良い。また、LED部材3の出射位置は、凹面11およびコバ13,45に向かうようにされていても良い。この場合、LEDは、複数個用いられる。
【0081】
また、発光部材はLEDに限定されず、有機エレクトロルミネッセンス(Organic Electro-Luminescence、OEL、有機EL)、無機エレクトロルミネッセンス(Inorganic Electro-Luminescence、IEL、無機EL)、レーザー光等の他の発光部材を用いることができる。さらに、LEDにはチップ型のものを用いているが、レンズ付きのLEDを用いることができる。
【符号の説明】
【0082】
1,31,51,71 発光装置
2,32 導光体(光学素子、メニスカスレンズ)
3 LED部材(発光部材)
4,53 保持具
11,41 凹面(一方の面)
12,42 出射面(他方の面)
13,45 コバ
θ 入射角
θc 全反射臨界角
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部が充実体とされ、一方の面から入射された光を導光し他方の面から出射する光学素子において、
上記一方の面を凹面とし、上記他方の面を凸面としたメニスカスレンズとし、上記メニスカスレンズを上記光を拡散する光拡散体で形成したことを特徴とする光学素子。
【請求項2】
請求項1記載の光学素子において、
前記他方の面側が球形をなし、
前記一方の面と前記他方の面との境界部となる前記メニスカスレンズのコバが、球形の面とは反対側に突出した環状の面となっていることを特徴とする光学素子。
【請求項3】
請求項1または2記載の光学素子において、
前記一方の面は、前記光を散乱するシボ状になっていることを特徴とする光学素子。
【請求項4】
発光部材と、内部が充実体とされ、上記発光部材から発せられる光が一方の面から入射され他方の面から出射する光学素子とを有する発光装置において、
上記光学素子は、上記一方の面を凹面とし、上記他方の面を凸面としたメニスカスレンズとされ、このメニスカスレンズは、上記光を拡散する光拡散体で形成されていることを特徴とする発光装置。
【請求項5】
請求項4記載の発光装置において、
前記一方の面と前記他方の面との境界部となる前記メニスカスレンズのコバが前記一方の面から進入してきた光を全反射することを特徴とする発光装置。
【請求項6】
請求項4または5記載の発光装置において、
前記光学素子を前記一方の面側から支える保持具を有し、上記保持具が、前記光を前記光学素子側に反射する反射面を有していることを特徴とする発光装置。
【請求項7】
請求項5または6記載の発光装置において、
前記コバまたは前記保持具によって反射され、前記メニスカスレンズ内に入射した光であって光散乱体が無いとした場合の光が前記他方の面に入射する入射角をθとし、前記他方の面の全反射臨界角をθcとしたとき、(θc×1.7)>θ>(θc×0.9)の範囲となる入射角θのものを20%以上としたことを特徴とする発光装置。
【請求項1】
内部が充実体とされ、一方の面から入射された光を導光し他方の面から出射する光学素子において、
上記一方の面を凹面とし、上記他方の面を凸面としたメニスカスレンズとし、上記メニスカスレンズを上記光を拡散する光拡散体で形成したことを特徴とする光学素子。
【請求項2】
請求項1記載の光学素子において、
前記他方の面側が球形をなし、
前記一方の面と前記他方の面との境界部となる前記メニスカスレンズのコバが、球形の面とは反対側に突出した環状の面となっていることを特徴とする光学素子。
【請求項3】
請求項1または2記載の光学素子において、
前記一方の面は、前記光を散乱するシボ状になっていることを特徴とする光学素子。
【請求項4】
発光部材と、内部が充実体とされ、上記発光部材から発せられる光が一方の面から入射され他方の面から出射する光学素子とを有する発光装置において、
上記光学素子は、上記一方の面を凹面とし、上記他方の面を凸面としたメニスカスレンズとされ、このメニスカスレンズは、上記光を拡散する光拡散体で形成されていることを特徴とする発光装置。
【請求項5】
請求項4記載の発光装置において、
前記一方の面と前記他方の面との境界部となる前記メニスカスレンズのコバが前記一方の面から進入してきた光を全反射することを特徴とする発光装置。
【請求項6】
請求項4または5記載の発光装置において、
前記光学素子を前記一方の面側から支える保持具を有し、上記保持具が、前記光を前記光学素子側に反射する反射面を有していることを特徴とする発光装置。
【請求項7】
請求項5または6記載の発光装置において、
前記コバまたは前記保持具によって反射され、前記メニスカスレンズ内に入射した光であって光散乱体が無いとした場合の光が前記他方の面に入射する入射角をθとし、前記他方の面の全反射臨界角をθcとしたとき、(θc×1.7)>θ>(θc×0.9)の範囲となる入射角θのものを20%以上としたことを特徴とする発光装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【公開番号】特開2011−49233(P2011−49233A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−194457(P2009−194457)
【出願日】平成21年8月25日(2009.8.25)
【出願人】(000227364)日東光学株式会社 (151)
【出願人】(591061046)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年8月25日(2009.8.25)
【出願人】(000227364)日東光学株式会社 (151)
【出願人】(591061046)
【Fターム(参考)】
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