説明

光学表面の実際形状の所望形状からの偏差を測定する方法および装置

本発明は光学表面の実際形状の所望形状からの偏差を測定する方法および装置に関する。光学表面(12;103)の所望形状から実際の形状の偏差を決定する方法は、以下のステップを含む。入射電磁測定波(20; 113)を発生させるステップと、到来波の波面を再形成する様に構成されている2つの回折構造(47、49; 145、146、141、143)を備えるステップと、入射測定波(20; 113) を少なくとも一つの被較正回折構造(47, 49; 145, 146, 141, 143) に放射することで、2つの回折構造(47、49; 145、146、141、143)の少なくとも一つを較正して、該較正済の回折構造と少なくとも一つの被較正回折構造(47, 49; 145, 146, 141, 143)との相互作用の後に、測定波の(20; 113)所望波面からの実際波面の較正偏差を決定するステップと、前記2つの回折構造(47; 49; 145, 146, 141, 143)を前記入射測定波(20; 113) の光路に位置させて、前記測定波の各光線を両方の前記回折構造(47; 49; 145, 146, 141, 143)を通すステップと、前記2つの回折構造(47; 49; 145, 146, 141, 143) により前記入射測定波(20; 113)を再形成して、前記光学表面の前記所望形状に適合した適合済測定波(64; 114)を形成するステップと、前記光学表面(12; 103) を、前記適合済測定波(64, 114)の前記光路に配置し、前記適合済測定波(64; 114)と前記光学表面(12; 103)とを相互作用させ、その後に前記適合済測定波(64; 114)の前記波面を測定するステップとを含む。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本発明は光学表面の実際形状の所望形状からの偏差を測定する方法および装置に関する。更に、本発明は光学素子を生産する方法に関する。この種の装置は、例えば国際公開第2006/077145号A2パンフレットに記載されている。この装置は、測定波を生成するための干渉計を備え、その波面はここでは光学表面の所望形状に適合されている。適合された測定波の波面は、光学表面における反射の後に干渉的に分析され、よって、光学表面実際形状の所望形状からの偏差が測定される。
【0002】
光学表面を備える光学素子は、例えばレンズまたはミラーのような光学部品である。この種の光学部品は、例えば、天体望遠鏡の光学系またはリソグラフィ加工に用いられる結像系に用いられる。このような光学系の成否は、光学系の光学部品が、それぞれの光学表面の表面形状が光学系の設計時に光学系の設計者が特定した所望形状に一致するように製造および加工が可能な精度によって実質的に決定する。この種の製造の枠組みの中では、加工された光学表面の形状を所望形状と比較して、完成した光学表面と理想表面の任意の差異および偏差を測定することが望ましい。光学表面は、処理表面と理想表面との差異が、例えば、所定の閾値を超えた場合に、処理され得る。
【0003】
一般的に、干渉計は光学表面の超高精度測定に用いられている。光学表面の測定のための従来の干渉計装置は、典型的には、測定する表面に当たる測定光線を生成するためのコヒーレント光源および干渉光学系を備え、被測定表面に当たる測定光線を提供するので、測定光の波面が測定する表面の位置において、被測定表面の所望形状と同じ形状を有する。このような状態では、測定光線の光は被測定表面の各所に略直角に当たり、測定光線が非測定表面から反射して、それ自体に戻ってくる。反射し戻ってきた測定光は参照表面により反射された参照光と重ねられる。測定された表面とその所望形状との偏差は干渉により算出される。
【0004】
従来の干渉光学系を用いて、比較的高精度に光学球面表面を測定するために球面波面を提供できるが、測定される非球面光学表面の各所で測定光が垂直に当たるような非球面波面を有する測定光線を提供するためには先端技術が必要とされる。この種の測定光線を提供するためには、ゼロレンズ、Kシステムまたは補償器と称される光学系が用いられる。ゼロレンズまたは補償器に関する背景情報は、ダニエル・マラカラ著の教科書、「オプティカル・ショップ・テスティング(Optical Shop Testing)第二版(ワイリー・インターサイエンス出版(1992))」の第12章に記載がある。
【0005】
非球面波面を生成するためのこの種の補償器は、例えば、回折格子またはホログラムのような、一つ以上の屈折光学素子を含み得る。干渉光学系における回折格子の使用に関する背景情報は、ダニエル・マラカラ著の教科書の第15.1章、第15.2章および第15.3章に記載されている。
【0006】
この回折格子は、例えば、レイトレーシング法のような、適切な計算方法でシミュレートされたコンピュータ生成ホログラム(CGH)であってもよく、ここで計算される回折格子の位相関数は、干渉計装置の光路においてCGHが所望の関数を有するように計算される。これは、計算された回折格子の位相関数から生成できる。
【0007】
この種のコンピュータ合成ホログラムを生産する方法は、例えば、リソグラフィ工程を用いて、レーザビームまたは電子ビームによって、格子を書き込むことを含む。
【0008】
ここで、一つの問題としては、使用される測定光の波長よりも実質的に格子周期を小さくする高線密度の回折格子の影響を、簡易な回折理論で予測することが難しく、更には、基準高、エッジの鋭さ、エッジの丸さのような、格子の生産に依存する要因が格子効果に影響するということがある。この種の影響は格子周期だけでは決定できず、現在の本発明の技術分野においては、厳密効果と称される。
【0009】
国際公開第03/048715 号A1パンフレットにより、2つの型の波面を生成するCGHを備える干渉計装置であって、生成される波面の一方は非球面光学表面を測定するために用いられる非球面波面であり、他方は、較正ブロックを測定する略球面波面である干渉計装置が公知である。較正ブロックの測定により、非球面光学表面の分析に用いられ得る測定光に対するホログラムの影響についての結論を導き出すことができる。
【0010】
いわゆる、回転平均法は、干渉測定が最も正確であるため、有利なことが判明している。しかし、回転平均法は回転対称な表面にのみ適している。回転対称性のない自由形状表面は、回転平均法を用いて測定できない。強度に偏心した、軸外非球面を用いると、多くの回転位置において明らかな欠点を含む測定値が得られる。軸外非球面は、基本的には回転対称の非球面をいうと理解され、その非球面は、対称軸について強度に偏心している被測定表面領域を有するものとされる。この種の軸外非球面を有する多くの回転位置における測定において、テスト光学系はテストされるべき軸外の有効な領域のためにのみ設計されるのではなく、実際には、回転対称な親非球面(parent asphere)のために設計される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際公開第03/048715 号A1パンフレット
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】ダニエル・マラカラ著、「オプティカル・ショップ・テスティング(Optical Shop Testing)第二版」、ワイリー・インターサイエンス出版、1992年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、前述の問題を解決することであり、特に、あらゆる形状の、具体的には、非球面光学表面の高精度測定のための方法及び装置を提供する。特に、本発明は、回転非対称の表面の測定を可能にする必要がある。この種の回転非対称の光学表面は、例えば、回転非対称の標本の光学表面または回転対称の標本の軸外領域を含む。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的は、請求項5に記載の方法、請求項35に記載の方法、請求項40に記載の装置および請求項1に記載の光学素子を用いた本発明によって達成できる。本発明の更なる有利な展開を従属請求項に記載する。本発明によれば、光学表面の実際形状の所望形状からの偏差を決定する方法が提供される。
【0015】
本発明による方法は、入射電磁測定波を与えるステップと、到来波の波面を再形成する様に構成されている2つの回折構造を与えるステップと、入射測定波を少なくとも一つの回折構造に放射することで、回折構造の少なくとも一つを較正して、該較正済の回折構造と少なくとも一つの被較正回折構造との相互作用の後に、所望形状からの実際形状の較正偏差を決定するステップと、前記2つの回折構造を前記入射測定波の光路に位置させて、前記測定波の各光線を両方の前記回折構造に通すステップと、前記2つの回折構造により前記入射測定波を再形成して、前記光学表面の前記所望形状に適合した適合済測定波を形成するステップと、前記光学表面を、前記適合済測定波の前記光路に配置し、前記適合済測定波と前記光学表面とを相互作用させ、その後に前記適合済測定波の前記波面を測定するステップとを含む。
【0016】
本発明においては、前記の目的は、光学表面の所望形状から実際形状の偏差を決定する装置を用いることで更に達成される。本発明に従う装置は、入射電磁測定波を発生させる手段と、到来波の波面を再形成するようにそれぞれ構成されている2つの回折構造とを備え、これらの両方の回折構造は入射測定波の各光線が両方の回折構造を経て放射するように入射測定モードにおいて入射測定波の光路に配置されており、入射測定波がこれら2つの回折構造により再形成されて、光学表面の所望形状に適合した適合済測定波を形成する。更には、本発明による装置は、測定波と較正される回折構造の相互作用の後に、測定波の実際形状の所望形状からの偏差を測定できるように構成されている2つの回折構造のうちの少なくとも一つを較正する手段と、適合済測定波と光学表面との相互作用の後に、適合済測定波の波面を測定する波面測定装置とを備える。
【0017】
本発明に従うこのような種類の回折構造により、所望の波面が高精度で自由に操作できる。この種の回折構造は、ホログラム、特に、コンピュータ合成ホログラム(CGH)を有し得る。CGHは、光線追跡のような方法でコンピュータにより適した回折を算出し、算出した回折を基板表面に書き込んで作成できる。例えば、リソグラフィ法を用いて回折を生成することもできる。回折構造の使用により、適合済測定波の所望波面の非常に正確な調整が可能となる。
【0018】
例えば、干渉計を用いて、適合済測定波が光学表面と相互作用した後に、その適合済測定波の波面を測定できる。このために適している干渉計は、例えば、フィゾー型、トゥワイマン・グリーン型、マイケルソン型およびマッハーチェンダー型干渉計等を含む。例えば、この種の干渉計は、ダニエル・マラカラ著の教科書、オプティカル・ショップ・テスティング(Optical Shop Testing)第二版(ワイリー・インターサイエンス出版(1992))に記載されている。光学表面の実際形状の所望形状からの偏差は、測定された波面から決定できる。有利には、本発明による方法は、測定された波面から、光学表面の実際形状の所望形状からの偏差を決定するステップを含む。
【0019】
上述のように、2つの回折構造のうち少なくとも一つの較正は、入射測定波を少なくとも一つの較正されるべき回折構造に照射して、その入射測定波が少なくとも一つの較正されるべき回折構造と相互作用した後に、本願では較正偏差と称する、実際の波面の所望の波面形状からの偏差を決定することによって実施される。従って、本発明では、入射測定波は、較正されるべき回折構造と相互作用した後に分析される。例えば、入射測定波が回折構造上で反射するかまたは回折構造を通過した後に、その実際の波面の所望の波面からの偏差について分析される。従って、このようにして決定される較正偏差は、被較正回折構造と測定波が相互作用した後の、所望波からの偏差の尺度となる。2つの回折構造を通過するときに、入射測定波は適合済測定波を形成するように再形成され、その波面は光学表面の所望形状に適合している。各適合済測定波は、光学表面の所望形状の表面にそれぞれ垂直に当たる(オートコリメーション位置)。
【0020】
本発明に従い、2つの回折構造のうちの少なくとも一つを較正することで、光学表面の所望形状からの実際形状の偏差を高精度で測定できる。測定波と少なくとも一つの被較正回折構造との相互作用の後に、測定波の所望波面から実際の波面を較正することによって得られる偏差を、光学表面の実際形状の所望形状からの偏差を決定する際に計算の上で考慮に入れることができる。
【0021】
本発明によれば、入射測定波の各光線は、両方の回析構造を経て放射する。本発明ではこの目的のために、例えば、2つの回折構造は交互に入射測定波の光路の別々の基板上に配置され得る。あるいは、例えば、2つの回折構造は共通の基板に重ねられ、2つの回折構造うちの一方は基本格子を形成し、他方は、オーバーグレーチングを形成する。この場合も、入射測定波の各光線は基本格子およびオーバーグレーチングとして存在する両方の回折構造を経て放射される。
【0022】
本発明に従う一つの実施形態において、2つの回折構造が設けられ、それらは一つの表面上に重ねて配置されるか、または、異なる表面上に別々に配置され得る。第一の回折構造は第二の回折構造の線密度と比較して高い線密度を有する。第一の回折構造における誤差は、生成される波面に比較的大きな影響を有する。厳密効果も、第一の回析構造により強く影響される。第二の回折構造は、低い回折効果を有する。第二の回折構造における誤差は、生成される波面に比較的小さい影響を有する。第二の構造による厳密効果は比較的は僅かである。従って、エラーの影響は、第一の回折構造の理論上の計算および制限(測定)によって非常に正確に予測できる。
【0023】
両方の回折構造の光線形成効果の組合せは、干渉計への入射光から非球面の形状テスト(shape testing)または外形テスト(form testing)のためのテスト波と、軸外非球面または自由形状表面と、既知の基準物体を測定する較正波とを生成する。
【0024】
理論計算および制限を伴う較正を計算することで、テスト波の誤差は非常に良好に決定でき、形状試験中に取り入れることが可能である。各回折構造における回折に基づく光線形成効果の組合せは、数学的に説明できる。
ΦP = m + m2P
ΦK = m + m2K
ΦP/Kは試験及び較正の波面を示す。
Φ1/2は、一次の、高線密度または低線密度の回折構造により生成される波面を示す。
≠0は、高線密度の回折構造上の試験および較正波に共通の回折順序を示す。
2P ≠m2K は、低線密度の回折構造上の試験および較正波に共通の回折順序を示す。
【0025】
本発明に従う、ある実施形態においては、回折構造が連続的に配置される。このために、回折構造が別々の基板に配置され得る。これは、基板較正または形状試験のいずれかのために、光路から基板(および格子)を除去する可能性を提供する。あるいは、連続的に配置された回折構造は、同じ基板の前面及び背面に配置され得る。本発明に従う別の実施形態において、回折構造が重ねて配置され、粗格子(φ)が微細格子(φ)のオーバーグレーチングとして作用する。微細格子および粗格子は、増幅器または位相格子として構成されても良い。位相格子として構成されることで、第一に、(例えば、吸収により)光を遮らないようになり、第二に、ゼロ次回折を抑制し、他の回折次数に応じた光を伝播するため、格子効率が増加する。
【0026】
本発明の既述の実施形態において、回折構造は入射測定波の光路に交互に配置される。第一の回折構造が較正される。他方の回折構造は、比較的小規模な波面変形さえ実行すればよい。従って、適切な波面変形特性に関して比較的高精度に行うことができる。従って、適合済測定波は、光学表面の所望形状からの偏差を極めて正確に含み得る。これは、光学表面のいかなる所望形状にもあてはまる。従って、光学表面は、例えば、自由形状の表面として構成されても良い。従って、適合済測定波の波面を正確に把握することで、光学表面が高精度に測定できる。
【0027】
本発明に従う第一の回折構造の較正によって、テスト・アセンブリの誤差の大部分が較正可能である。本質的に、第二の回折構造からの誤差の寄与だけが残る。本発明に従う較正によって、テスト・アセンブリの誤差の大部分が較正できる。残りの誤差寄与が、形状及び均一性、標本測定の最中の基板の変形、回折構造の書込み誤差、および、CGHを回折構造として用いる際の厳密誤差に関して、回折構造の基板の製造における不正確さに影響する。CGHの厳密誤差は、マクスウェル方程式による構造の厳密計算と比べると単純化されたモデル計算により算出できる、回折構造の線形勾配偏差として理解できる。
【0028】
他の回折構造が比較的小さい波面変形さえ行えばよいので、回折構造は低バンド密度で充分である。従って、上述の残余誤差の寄与は、小さな誤差をもたらすのみである。従って、CGH書込み誤差による波面誤差は、バンド密度と同程度である。基板の回折による誤差は変形効果と同程度なので、CGHのバンド密度とも同程度である。厳密効果からの寄与は、CGHのバンド密度よりも遥かに大きい。厳密な算出の精度も、低バンド密度による場合よりも実質的に高い。
【0029】
本発明により得られる、低線密度かつ第二回折構造に特異性の無い略直線のバンド勾配は、回折構造の均一生産工程を支援する。書込み処理で得られた回折構造により発生する波面内の誤差は最小化される。これは、構造の均一なエッチングを可能にする。このようにして得られた輪郭形状の不確定度が小さいほど、回折構造がより正確なものとなる。
【0030】
本発明の既述の実施態様において、回折構造はそれ自体の基板にそれぞれ配置される。即ち、第一回折構造は第一基板とともに第一回折素子の一部を形成し、第二回折構造は第二基板とともに第二回折構造の一部を形成する。本発明の代替的な実施形態において、2つの回折構造が共通の基板の表面に重ねられる。有利には、第一の回折構造は、基本格子を形成し、第二の回折構造はオーバーグレーチングを形成する。
【0031】
更に有利な実施形態では、有利には平面波である入射測定波を成型して適合済測定波を形成する際に、2つの回折構造のうちの第一の回折構造が波面再形成の主たる部分を行う。従って、第一の回折構造は、高い回折効果を有する。本実施形態において、波面再形成の主たる部分を行う第一の回折構造が較正される。ある特に有利な実施形態において、この回折構造は波面再形成の大部分を行い、即ち、光学表面の測定の際に、他の回折構造における通常の製造誤差は無視できるような不正確さしか生じさせないといえるほど、大部分を占める。有利には、第一の回折構造は第二の回折構造の線密度と比較して高い線密度を有する。
【0032】
さらに、2つの回折構造のうちの一つの線密度が、有利には、他方の、即ち、第二の回折構造の線密度が最大30本/mmである。測定精度回折構造を製造する際の、このような小さい線密度の書込み誤差は、本発明に係る方法により光学表面を測定する際にはほとんど測定結果に影響を及ぼさない。例えば、最適球面の光学表面の所望形状からの最大偏差が1°であり、較正済回折構造により入射測定波が最適球面に適合した波面を有する波に変換される場合には、このような制限が可能である。
【0033】
さらに、本発明による方法は、較正偏差を考慮した適合済測定波の測定波面や、光学表面の所望形状からの実際形状の偏差を決定するステップを更に含む場合に有利である。較正偏差を考慮することで、光学表面の測定形状の連続的な計算修正が可能となる。
【0034】
更なる有利な実施形態において、適合済入射測定波の再形成は、以下のステップを含む。すなわち、2つの回折構造のうちの第一の回折構造を、波面が光学表面の所望形状に近似される近似測定波を形成するようにすることで入射測定波を再成形するステップと、近似測定波の光路に配置された第二回折構造により、近似測定波の少なくとも一部を適合済測定波に再形成するようにするステップとを含む。従って、近似測定波の波面の光学表面の所望形状への適合は段階的に行われ、最初に、入射測定波を再成形して近似測定波を形成し、次いで、適合済測定波を形成する。
【0035】
反射を最小にするために、入射測定波が所定の傾斜角で第一の回折構造に当たることが有利である。これは、例えば、所定のプリズムまたは傾斜して配置された第一の回折構造により実現できる。
【0036】
入射測定波が測定モードで当たる、第一の回折構造が較正されることが有利である。従って、近似測定波の形状は、非常に正確に把握されている。第二の回折構造によって生じる波面誤差のみが、光学表面の測定結果を不正確なものにする。
【0037】
更に有利な実施形態では、適合済測定波の伝播方向は近似測定波の伝播方向に対して傾いている。2つの伝播方向間の傾斜角は、3°より大きいか、好ましくは約8°を超える。傾けることで分裂的な反射が減少し、この手段により略直線のバンド密度勾配が第二回折構造上に具現化され、しかも、結果として生成される線密度が比較的低く維持される。
【0038】
さらにまた、近似測定波が球面波面を有していれば有利である。例えば、較正球体により、この種の球面波面は高精度に較正できる。
【0039】
さらに、近似測定波の波面が実質的に光学表面の最適球体であり、従って、最適球体の形状に近似するか、または、その形状を有していることは有利である。従って、第二の回折構造によってもたらされる変形は、光学表面の最適球体からの光学表面の所望形状の偏差のみに制限される。これらの偏差は通常、比較的少なく、これにより、第二の回折構造の製造ばらつきにより生じる誤差も小さく保つことができる。
【0040】
さらに、近似測定波が非球面波面を有することも有利である。非球面波面は、球面形状からは逸脱した波面であるが、水平ではない波面として理解される。
【0041】
さらに、近似測定波の非球面波面が、近似測定波が第二の回折構造に供される基板の厚みを有する平面平行プレートを通過する際に、近似測定波の少なくとも一部の非球面波面が較正波を形成するように構成され、再形成され、その較正波の波面が円錐断面、具体的には、球面形状の断面形状を有することは有利である。波面の横断面は、波の伝播方向に対して垂直な断面であるとして理解される。従って、円錐断面形状の横断面を有する波面は、例えば、球形か、または楕円体、放物面または双曲面などの表面に沿う形状で延在する。この種の形状を有する波面は、やはり、この種の形状を有する較正物体によって、高精度に較正できる。これは、例えば、この較正物体上で波を反射させ、干渉的に反射波を測定することにより実施できる。従って、第二回折構造を経た後に、高精度に形状を決定できる較正物体により近似測定波を較正できる。この情報から、測定波が第一の回折構造を通過した後に、測定波の実際形状を直接導くことができる。この実施形態では、第二回折構造の基板の製造公差により生じた誤差の寄与も共に較正できる。この種の製造公差には、基板の形状と均質性とが含まれる。従って、測定中の基板の変形またはたわみ、CGH書込み誤差、CGHの厳密誤差だけが、誤差寄与として残る。これらの寄与が測定され、対応した較正データに変換されることが有利である。低屈折力および回折素子の低バンド密度に起因して、これらのデータは不確定度の度合いが小さい。
【0042】
有利には、近似測定波は、第二の回折構造により、適合済測定波および較正波の両方を形成するように再形成される。有利には、適合済測定波の伝播方向は、較正波の伝播方向に対して傾けられる。有利には、傾斜角は3°より大きく、更に有利には、約7°である。ある有利な実施形態において、較正波は、第二の回折構造を通過する近似測定波のゼロ次回折である。第二の回折構造を通過する、更に高次の回折次数の光は、適合済測定波として機能する。代替的な実施態様において、第二の回折構造は、複数回エンコードされ、複数の(具体的には2つの)格子構造が互いに独立している。較正波が格子構造によって生成され、適合済測定波が第二の格子構造によって生成される。較正波および適合済測定波を生成することにより、光学表面は事前に第一および第二の回折素子の配置を変更する必要なく、較正ステップの後に測定され得る。従って、機械的な要因によるばらつきの影響は最小化でき、測定結果の精度が改善できる。
【0043】
更に有利な実施形態では、近似測定波の非球面波面は、円錐断面形状の断面を有する。この場合、楕円、放物面または双曲面の形状を有する較正物体によって近似測定波を直接較正できる。
【0044】
さらに、近似測定波の非球面波面が回転対称であれば有利である。この場合、近似測定波を既知の方法を使用して高精度に較正できる。回転非対称の誤差は、例えば、公知の回転平均法および従来の誤差計算による回転対称誤差により決定できる。
【0045】
さらに、2つの回折構造のうちの一つを較正する際に、測定波の実際の波面が、測定波と被較正回折構造との相互作用の後に絶対的に決定されることは有利である。波面を絶対的に決定することで、被較正回折構造が、その波面変形特性に関して絶対的に較正できる。これは、改良された精度で、光学表面の実際形状を決定することを可能にする。
【0046】
上述したように、被較正回折構造を較正する際に、測定光が被較正回折構造と相互作用した後に、円錐断面形状を有する較正物体上で(具体的には較正球面で)反射され、干渉的に測定されることは有利である。従って、球面形状に加えて、較正物体は、楕円体、放物面または双曲面の形状を有し得る。測定波の波形状が、測定波と被較正回折構造との相互作用の後に対応する形状を有する場合には、高精度に波を較正することは可能である。
【0047】
特に有利には、較正物体の形状が絶対的に決定される。較正物体の形状が絶対的に既知の場合、測定波の実際の波面もまた、測定波と被較正回折構造の相互作用の後に絶対的に決定され得る。較正物体の形状を絶対的に決定するために、例えば、従来技術から公知のシア・テクニック(sear technique)または三点試験法(three position test)が用いられ得る。シア・テクニックは、Gunther Seitzによる、「Highly Resolved Interferometric Absolute Measurement of Rotationally Symmetrical Surface Errors」、DDGaO Proceedings 2006に記載されている。この文書の内容は、具体的な参照によって本出願の開示に組み込まれる。3点試験は、例えば、Katherine GreathおよびJames C. Wyantによる、「Absolute Measurement of Spherical Surfaces」、SPIE VOL. 1332 Optical Testing and Metrology III. Recent Advances Industrial Optical Inspection(1990)の第2〜7頁に記載されている。この文書は、また、明示的な参照によって本開示に組み込まれる。
【0048】
更に有利な実施形態において、被較正回折構造を較正する場合には、測定波と被較正回折構造との相互作用の後に、測定波の非回転対称の誤差が決定される。既に上述したように、被較正波が回転対称である場合に、この方法は、測定波の実際波面を絶対的に決定する可能性をもたらす。このような、非球面対称誤差の絶対的な決定は、例えば、当業者に公知の回転平均法により行われ得る。回転対称誤差は、従来の誤差算出(例えば、ドイツ国特許出願公開第10 2005 013908号明細書参照)を使用して決定され得る。
【0049】
本発明の更に他の実施形態によれば、本発明による装置の干渉計装置は、測定放射線のための放射線源、被測定物体が配置され得る測定放射線ビームを生成するための干渉光学系、および、測定放射線ビームと被測定物体ガ相互作用した後に測定放射を受信するための検出器を備え、その干渉光学系は回折格子という形で、回折素子を備える。
【0050】
一つの具体的な実施形態では、回折格子は少なくとも第一型および第二型の2つの回折素子から形成され、回折格子の少なくと一つの領域は、回折素子の格子構造がオーバーグレーチングを形成するように成形されている。
【0051】
オーバーグレーチングを備えるため、回折格子は、特徴的に異なる放射線回析効果を有している。他方、少なくとも第一及び第二型の回折素子が交互に配置して形成された周期構造上で放射が回折する。さらに他方では、オーバーグレーチングにより形成された周期構造により放射が回折される。
【0052】
オーバーグレーチングは、少なくとも、交互に配置した、互いに異なる光学特性を有する、細長いバンドの第一型及び第二型を備え、第一型および第二型のバンドはバンド内における回折素子の配列パターンが異なる。
【0053】
ある実施形態によれば、第一型のバンドは第二型のバンドとは、バンド内における回折素子の配列パターンが異なり、第一型のバンドでは第一型及び第二型の回折素子が交互に配置しており、第二型のバンドには回折素子が配置されていない。
【0054】
この目的のための代替的な実施形態では、第一型のバンド内と、第二型のバンド内の両方で、第一型及び第二型の回折素子がそれぞれ交互に配置される。第一および第二型のバンドは、バンド内の回折素子の配列パターンにおいて相互に異なり、実質的に同一の空間周波数を有するが、相対的に位相シフトして配置される。特に、第一型のバンド内の回折素子の回折素子の配列パターンは、第二型のバンド内の回折素子の配列パターンに対して、実質的に反対の位相を有する限りにおいて、配列パターンが相互に位相シフトし得る。
【0055】
例えば、第一型の回折素子が、第二型の回折素子よりも、測定放射をより多く吸収するので、第一及び第二型の回折素子によって振幅格子を形成するように構成することも可能である。また、第一型の回折素子が第二型の回折素子とは異なる影響を測定放射の位相に及ぼすので、第一及び第二型の回折素子が位相格子を形成することも可能である。特に、位相格子としての回折格子の効果と、振幅格子としての回折格子の効果を組み合わせて、それぞれ、測定放射に対する強度吸収効果および位相シフト効果に関して、第一型及び第二型の回折素子が異なるようにすることも可能である。
【0056】
測定放射が第一及び第二型の回折素子の隣接配列により形成された回折格子上で、例えば、正の第一(plus first)回折次数、負の第一(minus first)回折次数、正の第二(plus second)回折次数、負の第二(minus second)回折次数等で回折する。更に、測定放射はオーバーグレーチング上で、同様に正の第一回折次数、負の第一回折次数、正の第二回折次数、負の第二回折次数等で回折する。少なくとも第一及び第二型の回折素子の隣接配列に提供可能な格子周期は、少なくとも第一及び第二型のバンドの隣接配列に適用可能な格子周期よりも実質的に小さく、測定放射が回折素子により形成された回折格子上で所定の次数で回折する際の角度は、同じ回折次数でオーバーグレーチング上で測定放射が回折する角度よりも実質的に大きい。例えば、交互に配置した回折素子により形成される回折格子上での正の第一回折次数の回折角度は、オーバーグレーチング上での正の第一回折次数の回折角度よりも実質的に大きい。
【0057】
測定放射が、回折素子により形成される回折格子及びオーバーグレーチングの両方で回折するので、回折格子における回折及びオーバーグレーチングにおける回折による回折角度は、加算されて総回折角度となる。ここでは、総回折角度について多くの組合せが提供される。従って、例えば、回折素子の隣接配列により形成される格子が、主に正の第一回折次数および負の第一回折次数を生じ、また、オーバーグレーチングも、正の第一回折次数および負の第一回折次数を生じさせる。従って、4つの異なる総回折角度が、すなわち、回折格子およびオーバグティングで正の第一回折次数で回折される測定放射の第一の総回折角度、回折格子およびオーバグティングで負の第一回折次数で回折される測定放射の第二の総回折角度、回折格子およびオーバグティングで正の第一回折次数で回折される測定放射の第3の総回折角度、および、回折格子およびオーバグティングで負の第一回折次数で回折される測定放射の第4の総回折角度が、測定放射について生成される。
【0058】
本発明の一つの実施形態では、干渉計装置はゼロ回折次数ではない所定の回折次数でオーバーグレーチング上で回折する測定放射が、検出器により検出可能な干渉パターンを生成するように構成される。従って、干渉計装置はオーバーグレーチング上における回折が干渉測定に用いられるように構成される。このことは、例えば、ゼロ回折次数またはゼロ回折次数とは異なる回折次数でオーバーグレーチング上で回折する測定放射線を光路から除去する、干渉計装置の光路に配置された開口によって達成できる。
【0059】
本発明の一実施形態では、回折格子は、ゼロ回折次数とは異なる回折次数でオーバーグレーチング上で回折する測定放射線が実質的に球面波面を有するように構成される。この測定放射線も回折素子の隣接配列により形成される回折格子上でも回折されるので、回折格子上およびオーバーグレーチング上における回折を組み合わせて球面波面が生成される。このような方法で、球面基準物体を補助として、試験計測における回折格子の影響を測定して把握できる。具体的には、例えば、スカラー回折理論により十分な精度で表現できないような回折格子の影響を、上記のような方法で記録できる。実際に、オーバーグレーチング自体の大きい格子周期に基づくスカラー回折理論により、比較的良好にオーバーグレーチングの影響が表現できると考えられる。回折格子及びオーバーグレーチングの複合効果により、測定放射線がほぼ球面波面を有するが、この球面波面は、実際には球面波面からは偏差した波面形状であり、この偏差は、実質的に回折素子の隣接配列により形成される回折構造の影響を排他的に受ける。例えば、スカラー回折理論からは逸脱した回折格子の影響を記録し、実際の測定対称の測定結果を分析する際にそれを考慮に入れることが可能である。この種の測定のために、測定放射は、ゼロ回折次数や第一回折次数とは異なる回折次数でオーバーグレーチング上において回折し、かつ、非球面波面を有する。従って、スカラー回折理論からは逸脱した回折格子の効果は、球面テスト物体上での測定により較正可能であるため、干渉計装置は非球面表面の測定に適している。
【0060】
さらに、本発明の一つの実施形態において提供される、非球面表面を有する光学素子の製造方法は、以下に挙げる段階を含む。上記の干渉計装置を測定放射線ビーム内に光学素子を配置し、測定放射線がオーバーグレーチング上である回折次数で非球面表面に実質的に直角に当たるようにし、少なくとも一つの輝度分布を検出器で記録し、少なくとも一つの輝度分布に基づいて非球面表面を処理する。
【0061】
光学物体に改良された特性をもたらすことは、本発明の更なる目的である。本発明によれば、この目的は非球面の所望形状を有する光学表面を有する光学素子と、所望形状からの偏差が最大0.2nmである光学表面を有する光学素子によって達成される。
【0062】
このような光学素子の製造は、上述した本発明による方法および本発明による装置によって可能となる。本発明に従う方法により明らかになった光学表面の所望形状からの偏差により、光学表面を更に処理して、特定されたばらつきを観測する。現在入手可能な素子の光学表面の実際形状は、それらの所望形状から比較的大きく偏差している。
【0063】
本発明に従う一実施形態において、光学表面の実際形状は、所望形状からの偏差が最大0.1nmである。本発明による更なる実施形態において、光学表面の所望形状は、自由形状表面(すなわち、非回転対称)であり、少なくとも、最適球面からの偏差が最大5μm、有利には最大20μmである。本発明による一実施形態において、自由形状表面として構成される所望形状は、その最適球面からの偏差が少なくとも5μm、最大10mm、特に、最大1mmである。
【0064】
本発明による代替的な実施形態において、光学表面の所望形状は、実質的に回転対称で、その最適球面から少なくとも0.5mm、有利には、少なくとも2.5mmの最大偏差を有する。
【0065】
本発明によると、回折格子は更に、キャリアと、該キャリア上に備えられた、少なくとも一つの領域に延在する複数の細長い回折素子を含む回折構造とを含み、前記少なくとも一つの領域に少なくとも第一型の回折素子及び第二型の回折素子を備え、前記回折素子の長手方向に対して横方向からみると、第一型回折素子及び第二型回折素子が交互に配列して第一回折構造を形成し、前記第一型の回折素子及び前記第二型の回折素子が相互に異なる光学特性を有し、少なくとも一つの領域において、少なくとも第一型の細長いバンドおよび第二型の細長いバンドが平面に延在して第二回折構造を形成し、少なくとも一つの領域において、前記第一型のバンド及び前記第二型のバンドが、バンドの長手方向に対して横方向からみると、交互に配置し、前記第一のバンド及び前記第二型のバンドはバンド内の回折素子の配列パターンが異なることを特徴とする。
【0066】
更に、本発明により提供される干渉計装置は、平均波長を有する測定放射線、測定放射線を生成し、中に被測定物体が配置され得る干渉光学系、測定放射線ビームと被測定物体が相互作用した後に測定放射線ビームを受信する検出器、上記の回折格子を含む干渉計光学を含む放射線源を備える。
【0067】
更に、本発明に従う干渉計装置は、平均波長を有する測定放射線、中に測定対象物が配置され得る、測定放射線を生成する干渉光学系、測定放射線ビームと測定対象が相互作用した後に測定放射線ビームを受信する検出器、少なくとも回折格子の少なくとも一つの領域で、少なくとも第一及び第二型の回折素子で形成された回折格を含む干渉計光学、オーバーグレーチングを形成するように調節されている回折格子の回折構造を備える。
【0068】
さらに、本発明による方法は、光学表面を有する光学素子生産するように構成される。当該方法は、上記の干渉計装置を用いることと、測定放射がオーバーグレーチング上でゼロ次回折次数ではない第一回折次数で回折して、測定放射線ビームが光学表面に略垂直に当たるように、光学素子を測定放射線内に配置することと、少なくとも第一の輝度分布を検出器により記録することと、記録された第一の輝度分布に応じて、前記光学表面を処理することとを含む。
【0069】
上記の、本発明に従う方法の実施形態について述べた特徴は、本発明に従う装置にも同様に適用され得る。その結果もたらされた本発明に従う装置の有利な実施形態は、本発明の開示に特に含まれるべきである。更に、上記の本発明に従う方法の有利な実施形態に関する利点も、対応する本発明に従う装置の有利な実施形態に関連する。
【0070】
以下に、本発明の例示的実施形態を添付の図面を参照して更に詳述する。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】2つの回折素子を有する干渉計測定装置の本発明の実施形態である。
【図2】較正モードにおける、第一の回折素子を含む、図1の測定装置の一部分である。
【図3】測定モードにおける、第一の回折素子および第二の回折素子を有する、図2の測定装置の一部分である。
【図4a】図3の第一回折素子上の典型的なバンドパターンである。
【図4b】図3の第二回折素子上の典型的なバンドパターンである。
【図5】更なる実施形態における本発明に従う干渉測定装置の一領域であり、測定装置の較正モード及び測定モードの両方を説明する図である。
【図6】図5の第一回折素子上のバンドパターンである。
【図7】図5の第二回折素子上のバンドパターンである。
【図8】図5に示す実施形態における2つの回折素子の調整を示す。
【図9】図8に示す第一回折素子上の調整パターンの実施形態である。
【図10】図8に示す第二回折素子上の調整パターンの実施形態である。
【図11】本発明の更なる実施形態による干渉計測定装置としての干渉計装置の概略図である。
【図12】図11に示す干渉計装置に用いられる回折格子としての回折素子の概略的上面図である。
【図13】図12に示す回折格子の一部の概略的横断面図である。
【図14a】図11の干渉計装置の測定放射線の波面に対する、図12および13に示す回折格子の効果を示す。
【図14b】図11の干渉計装置の測定放射線の波面に対する、図12および13に示す回折格子の効果を示す。
【図15】図11および12に示す回折格子の位相関数のグラフである。
【図16】図12および13に示す回折格子の代替的実施形態の概略的横断面図である。
【図17】図12および13に示す代替的実施態様の概略斜視図である。
【図18】球面波面を有する基準物体が干渉計の光路に配置されている、本発明の更なる実施形態による干渉計装置の概略図である。
【図19】光路に被球面表面を有する物体が光路に配置されている、図18の干渉計装置である。
【発明を実施するための形態】
【0072】
図1は、本発明に従う実施形態における、干渉測定装置10を示す。測定装置10は、標本14の光学表面12の実際形状の所望形状からの偏差の測定に適している。標本14は例えば、光学レンズまたはミラーであり得る。標本14は図示しないホルダにより取り付けられている。
【0073】
干渉測定装置10は、順番に、光源18、ビームスプリッタ34、および、干渉カメラ44を備える干渉計16を含んでいる。光源18は照明放射19を生成し、かつ、この目的のために、例えば、ヘリウムネオンレーザのようなレーザ21を備え、レーザビーム22を生成している。照明放射19は、干渉測定を行うために十分なコヒーレント光を有する。ヘリウムネオンレーザの場合、照明の波長は約634nmである。しかし、照明放射19は、電磁放射の可視および不可視波長域内の他の波長を有しても良い。
【0074】
レーザ光線22はフォーカスレンズ24により開口26上に集束されて、コヒーレント光の発散ビームが開口を通る。発散ビーム28の波面は実質的には球面である。発散ビーム28はレンズ群30によりコリメートされ、これにより、照明放射19は実質的に水平な波面を生成する。照明放射19は干渉計16の光軸32に沿って伝播し、ビームスプリッタ34を通過する。
【0075】
よって、照明放射19は、フィゾー表面38を有するフィゾー素子36に当たる。照明放射19の一部の光はフィゾー表面38で反射して参照波40となる。照明放射19の光はフィゾー素子36を経て、水平波面42を有する入射測定光20として光軸32を更に伝播し、第一回折素子46に当たる。
【0076】
図1の符号IIを付した領域に、第一回折素子46に加えて、第二回折素子48、標本14および較正球面50を示す。しかし、干渉測定装置10の操作中には、これらの素子は図1に示したように同時には配置されない。実際には、これらの素子は、図2に示した較正時の構成または図3に示した測定時の構成のいずれかにおいて配置される。素子46、48、14および50を同時に示した図1は、測定装置10の基本操作モードを示すに過ぎない。
【0077】
図2に示した測定装置10の構成モードにおいて、入射測定光20は第一回折素子46により再形成され、近似測定波56となる。第一回折素子46は、第一基板45に配置された第一回折構造47を備え、入射測定光20を再形成する。第一回折構造47は、コンピュータ生成ホログラム(CGH)として構成されている。較正モードにおいて、第二回折素子48および標本14は、近似測定波56の光路上には無い。近似測定波56の伝播方向54は、入射測定波20の伝播方向52からは外れている。従って、第一回折素子46からの直接反射が干渉カメラ44に入ることを防いでいる。近似測定波56は、光学表面の最適球面に一致する球面波面を有し、構成球面50に当たる。較正球面50の形状は、前述したシア技術または三点法(three position technique)によって事前に絶対的に決定される。
【0078】
近似測定波56は、較正球面50で反射した後に、再度第一回折格子46を通過し、干渉カメラ44の対物系57によって、干渉カメラ44のカメラチップ60の記録表面58に導かれる。記録表面58で基準波40に重ねられ、干渉パターンを生成し、分析装置62によって、近似測定波56の理想波面からの偏差が測定される。従って、近似測定波56の実際波面は、正確に較正された較正球面50および第一回折素子46により絶対的に測定される。
【0079】
図3に示した測定モードにおいて、較正球面50を近似測定波56の光路外に出し、代わりに、第二回折素子48および標本14を光路上に移動する。第二回折素子48は第二基板51に配置された第二回折構造49を備える。標本14の光学表面12は、例えば、その最適球面に対して最大1度の傾斜偏差を有する非球面形であり得る。光学表面12の実際形状を正確に測定できるようにするために、光学表面12の最適球面形状を既に有している近似測定波56の波面を、僅かに変更する必要がある。これは、近似測定波56の光路上に配置された第二回折素子48により行われ、このとき回折構造49はコンピュータ生成ホログラム(CGH)として構成されている。近似測定波56は第二回折素子48を通過し、光学表面12の目的形状に一致する適合済測定波64に変換される。上記の例においては、最適球面に対する、光学表面12の目的形状の最大偏差は1度であり、第二回折素子48のCGHは、バンド密度28本/mmである。このように緊密な線密度は高精度であり得る。従って、上述のように、近似測定波56の波面は絶対的に較正され、適合済測定波64の実際波面形状を高精度に感知できる。第二回折素子48を通過する場合、近似測定波56が回折される。近似測定波56の伝播方向54と、適合済近似測定波64の伝播方向66との角度は約7度である。このようにして、測定結果に影響を及ぼす、第二回折素子48の表面からの反射を防止する。
【0080】
適合済測定波64を光学表面12に当たるように自動視準し、光学表面12で反射させる。従って、反射波は、第二回折素子48および第一回折素子46を経て干渉計16に、戻り測定光67として戻ってくる。戻り測定光67は参照波40と記録面58上で干渉し、インターフェログラムを生成する。このインターフェログラムは、分析装置62により、実際の近似測定波56の理想波面からの所定の較正偏差を考慮の上で分析される。分析の結果、所望形状からの、光学表面12の実際形状の偏差が算出される。
【0081】
図4aは、図1〜3における第一回折素子46のCGHのバンドパターン68の一例を示す。図4bは、図1〜3における第二回折素子48のCGHのバンドパターン70の一例を示す。図1〜3による測定装置10は、入射測定光20を再形成して、円錐断面形状を有する非球面波面断面の非球面波面を有する近似測定波56を形成する回折素子46を備える代替的実施形態に設けられ得る。この場合、較正球面50に代えて、近似測定光56の波面に一致する表面、すなわち、楕円面、方物面または双曲面を有する較正物体が用いられる。この種の測定装置によって、楕円面、方物面または双曲面とは僅かに差異のある光学表面を特に良好に測定できる。
【0082】
図5は、本発明に従う測定装置10の、図1における領域IIを示す。本実施形態は、球面波面に変えて非球面波面を有する第一回折素子46により生成される近似測定波56を用いる点で、図1に示した実施形態とは異なる。この波面は、ゼロ次回折で第二回折素子48を通過するもので、球面波面を有する。以下で、この波は較正波72と称する。あるいは、較正波72も円錐断面形状を有し得る。較正波72が較正球面50によって測定されるので、標本14が較正波72の光路の外に出される。較正波72が、楕円面、方物面または双曲面に一致する波面を有している場合、較正球面の形状はこれらに適合される。第一回折素子46の較正は、図2に示した較正に応じて実施され、較正の際には、0次回折で第二回折素子48を通過する場合に、近似測定波56が較正波72となるように再形成することが考慮される。
【0083】
第二回折素子48のCGHを通過の後の近似測定波56のm次回折は、適合測定波64となる。適合済測定波64は、図3に示した測定と同様に光学表面12で反射する。
【0084】
図6は、図5に示す第一回折素子46のCGHのバンドパターン68の一例を示す。図7は図5に示す第二回折素子48のバンドパターン70の一例を示す。代替実施態様においては、図5に示す第二回折素子48が、互いに独立した2つのCGH構造を有する二回エンコード(twice-encoded)CGHである。ここでは、第一CGH構造が近似測定波56を測定波72に変換し、第二CGH構造が適合済測定波64に変換する。
【0085】
図8は、図3に示した回折素子46および48の調整の一例を示す。入射測定波20に対する第一回折素子46の調整は、例えば、図示しないリトロー格子によって実施される。第一回折素子46に対する第二回折素子48の配置は、第二回折素子48の周辺域に配置された更なるリトロー格子74、および/または、第一回折素子46の周辺域に配置されたキャットアイ構造76によって実施される。図9は、第一回折素子46のCGHのバンドパターン68におけるキャットアイ構造を示す。図10は、第二回折格子48のCGHのバンドパターン70における、第二回折素子48の周辺領域に環状に配置されたリトロー格子を示す。キャットアイ構造76は、2つの回折素子46および48の間の傾斜角およびそれらの間の距離の制御に役立ち、リトロー格子74は2つの回折素子46および48の間の偏心制御に役立つ。
【0086】
図11は、干渉計装置101を概略的に示す。これは、ミラー105の非球面ミラー表面103の表面領域107の測定に役立つ。ミラー105は、図11には図示しないホルダによって、所定のテスト位置で、干渉構成101の光路に配置される。
【0087】
干渉計装置101は、測定光を生成するための光源を備えている。光源111はレーザビーム106を生成するためのヘリウムネオンレーザ104を備え得る。ビーム106は、フォーカスレンズ108により、空間フィルタ120上のホールに集束され、コヒーレント光の発散ビーム118はこのホールから出てくる。この発散ビーム118の波面は実質的に球面波面である。光源から放射された発散ビーム118は、一つまたは複数のレンズ121によってコリメートされ、実質的に平面波面を有する測定光の平行ビーム113を形成する。ビーム113は、干渉光学系115に伝播され、干渉光学系115を経るが、干渉光学系115によって再形成されて、測定光ビーム114が生成され、この波面はミラー面113でミラー面113の所望形状と実質的に一致するような形状をしている。よって、測定光114は、領域107のあらゆる位置において実質的に垂直に表面103に当たる。ミラー表面103の形状が所望形状からは偏差する場合、測定光の入射角は、垂直ではなく、干渉計装置101によって高感度に検出できる。従って、表面103を所望の外形または所望の形状に近づけるために、測定結果に基づいて、ミラー表面を更に加工することが可能である。
【0088】
ミラー面103における入射角が実質的に直角なので、ミラー表面103で反射した測定光は、干渉光学系115から表面103に至る際に通った光路と実質的に一致する光路に沿って干渉計装置115に進む。
【0089】
干渉計装置115を経て、光学表面103において反射された光は測定光の拡散ビーム118において配置されるビームスプリッタ131において部分的に反射される。ミラー表面103において反射された測定光のビーム129がビームスプリッタ131で反射され、開口を有する空間フィルタ138を経て、空間フィルタ138を通過したビーム129の一部分は対物レンズ135に導かれて、カメラ134におけるカメラチップ139の感光性表面137に至り、ミラー表面103の一部分107がカメラ134において結像する。
【0090】
干渉光学系115は、基板123を経た測定光並行ビーム113に対して実質的に直角または僅かに傾斜して方向づけられた平坦面119を有する僅かにV字型の基板117を有する。従って平坦面119は、干渉処理のための参照光としてビーム113の一部分を反射することで、干渉計システム101のフィゾー表面を形成する。フィゾー表面119により反射される参照光はビームスプリッタ131においても部分的に反射され、検出器134の感光性表面137においてミラー表面103によって反射された測定光と重ねられる。この重ね合わせにより生成される干渉パターンの適切な解析の後に、ミラー表面103の所望形状からの偏差が算出され、ミラー表面の適切な再処理のための計画が可能となる。
【0091】
上記のように、干渉光学系115は、入射光113および実質的に並行な波面を有する測定光を、光学表面103における光学表面の所望形状に実質的に一致する非球面波面を有するビーム114に変換する。この目的のために、干渉光学系115は、2つの並行平坦表面124および125を有する基板123を備え、基板125は回折格子をサポートしている。回折格子は、所定の回折次数で回折格子135において回折した測定光の波面が、ミラー表面103における波面の所望形状に一致する非球面波面となるように、平坦波面を有するビーム113を回折するように構成されたコンピュータ生成ホログラム(CGH)である。
【0092】
回折格子は、例えば、直径を10mmより大きく、特に、50mmより大きく、更には100mmより大きくし得る。本実施例のミラー表面103における非測定物体の直径は、100mmより大きく、特に、150mmより大きくし得る。特に、被測定物が、回折格子の直径よりも大きい直径を有するように準備する。例えば、物体の直径が、回折格子の1.5倍または2.0倍であり得る。
【0093】
検出器134の空間フィルタ138は、不要な測定光が検出器チップ139の感光性表面137にあたらないようにすることに役立つ。不必要な測定光は、干渉光学系115の表面で反射する測定光であって、フィゾー面119ではなく、例えば、フィゾー面119の反対側に位置する基板117の表面で反射する測定光を含み得る。さらには、空間フィルタ138は、理想の非球面波面を有する測定光線114を生じる回折次数とは異なる回折次数で回折格子125において回折する不要な測定光を吸収する必要がある。
【0094】
回折格子125の構成を、図12の上面図および図13の断面図に概略的に示す。
【0095】
回折格子125は、回折格子125の表面に分散して配置される複数の回折素子145、146を備える。長手方向に対して横から見た場合のように、回折素子145、146は、それぞれ細長い形状であり、交互に配置される。回折素子145および146は、回折格子125を経た測定光に対する光学特性において異なる。図13に示す断面図では、回折素子145は基板123上に形成された材料のバー(material bar)であり、回折素子146は隣接するバー145の間に形成されたギャップである。本実施形態において、バー145の高さは、基板123およびバー145のうちの一つを通過する測定放射線が、基板123およびギャップ146のうちの一つを通過する測定放射線に対して、測定放射の波長λの半分だけ位相変位するように調節される。従って、回折素子145、146は、測定放射のための位相格子の形状をした第一回折格子を形成するように交互に配置される。
【0096】
さらにまた、回折格子125は、相互に隣接し、特に、測定放射に対する影響や、特に、回折素子145および146の配列周期について異なる、配列バンド141および143に分割される。図13に示す実施形態において、バンド141と143は、バンド141内には回折素子145および146が互いに隣接して配置されており、バンド143には回折素子145、146全く配置されないという点で異なる。バンド141および143は、測定放射に対する光学的影響において異なるので、バンド141および143が周期的に交互に配置していると、測定光に対して光学回折格子の影響も与える。以下において、この光学回折格子を第二回析構造と称する。バンド141および143が、異なる配列パターンの回折素子145、146により形成されるので、バンド141、143の配列も、回折素子145、146によって形成される回折格子のオーバーグレーチングと称されうる。
【0097】
従って、回折格子125を通る測定放射は、回折素子145、146の隣接配列により形成される回折格子上において回折され、更に、バンド141、143の隣接配列により形成されるオーバーグレーチングにより回折される。以下に、図14aおよび14bを参照して説明する。図14aにおいて、参照番号151は光線113の平面波面の群を示し、参照番号153は光線113の伝播方向を示す。図14aで矢印155により示すように、バンド141内で回折素子145、146により形成される回折格子に当たる光は、この回折格子上で回折素子145、146により所与の回折次数で回析される。図14aにおいて、参照番号157は、バンド141、143により形成されるオーバーグレーチングよる影響を受けない、素子145、146で形成された回折格子のみによって回折された光の波面群を示す。図14bは、バンド141、143により形成されたオーバーグレーチング上における回折を考慮した、図14aに関する補足例である。この、オーバーグレーチング上における回折は、図14bに矢印159で示すように、回折格子125を通る光を更に回折させ、追加的に波面を変形させる。回折素子145、146によって形成される格子のみにより回折した波面群は図14bおよび図14aに参照符号157で示し、また、回折素子145及び146で形成された格子と、バンド141及び143により形成されたオーバーグレーチングとで回折した波面群を図14bに参照符号161で示す。
【0098】
特に素子145、146により形成される回折格子および、バンド141、143によって形成されるオーバーグレーチングによる、測定放射に対する波面形成効果、即ち、位相変化効果は線形に加算される。従って、回折格子125の位相関数は、下式により示される。
φGGH = m・φ+m・φ
φGGHは、回折格子125の位相関数を示す。
φは、回折素子145、146により形成された回折格子の位相関数を示す。
φは、バンド141、143により形成されたオーバーグレーチングの位相関数示す。
mおよびmは、それぞれ、0を含む正または負の整数であり、回折格子またはオーバーグレーチングに対する回折の回折次数を示す。
【0099】
図15は、上式により示される、関数φ、φ、φおよびφ−φのグラフを示す。回折格子125の対象性により、図15において、これらの関数は干渉光学系115の光軸および非球面表面103の対称軸109と一致する軸について対称である。回折素子145、146により形成される格子周期が比較的短いため、関数m1φ1(例えば、m= 1の場合)の勾配は、関数m2φ2(例えば、m=1の場合)の勾配より急である。
【0100】
本発明の一つの実施態様によると、格子の位相関数φと、回折格子125のオーバーグレーチングの位相関数φとが相互に組み合わされ、値mおよびmの所定の組み合わせ(例えば、m=m=1)において、関数m1φ1+m2φ2の形状が非球面なので、この位相関数に応じて回折される放射の波面は、被測定物体の位置における形状をしており、すなわち、図11の非球面のミラー表面103であり、これは、被測定物体の理想表面形状に一致する。従って、これらの波面を非球面表面である物体の測定に用いることができる。
【0101】
さらに、関数φおよびφは、mとmの値の追加的な所定の組み合わせ(例えば、m=1、m=−1)について、関数m1φ1+m2φ2が球面波面となるように構築される。基準球面波面を有する基準物体が、図11の干渉計装置101の光路に配置された場合、基準面の位置において関数m1φ1+m2φ2より生成される波面が、実質的に基準面と一致し、これにより、検出された干渉パターンから、関数m1φ1+m2φ2の実際の勾配が推定できる。この勾配も、関数m2φ2およびm1φ1により生成される。ここで、m2φ2は、バンド141、143によるオーバーグレーチングによって決定する。関数m2φ2の勾配は、比較的長周期のオーバーグレーチングに基づいて、例えば、スカラー回折論に基づく計算により、比較的正確に決定可能である。従って、項m1φ1は、m1φ1+m2φ2の実験測定から算出できる。特定の状況下においては、測定によらないで、回折素子145、146により形成された格子モデルに基づく回折計算により、純粋に理論的に関数m1φ1を導くよりも、このような方法で正確に関数m1φ1を算出できる。実際に、オーバーグレーチングおよび使用される測定光の波長λと比較すると、格子モデルは格子周期が短く、回折光よりも実質的に大きくない回折周期については、格子上での回折を決定するための従来の計算方法には欠点があった。従って、m2φ2の理論上の決定およびm1φ1の実験的な決定から、関数m1φ1+m2φ2の勾配が、比較的正確に推定できる。m1φ1+m2φ2によって、非球面表面103の測定のために用いられる波面の形状が決定できる。
【0102】
上記の例のように、上述の回折構造を較正する場合に測定放射線ビームとして提供される測定波の所望波面は、球面形状の位相関数φsphを有し、光学表面を測定するために用いられる適合済測定波は、非球面形状の位相関数φaspを有する。これらの位相関数φおよびφは以下のように提供される。
φ=1/2(φaspsph
φ=1/2(φasp−φsph
記載した方法により、理想形状および比較的高精度の非球面表面に近似した非球面波面を生成することが可能である。回折格子の波面形成効果の精度は、例えば1nm未満であり、特に、0.5nm未満であり得る。非球面表面の理想形状からの偏差の干渉測定において、波面の実際形状と非球面表面の実際形状との非球面表面偏差が計算され、これにより非球面表面の実際形状と非球面表面の理想形状との偏差を計算することができる。これらの偏差に基づいて、更なる成形処理が光学表面に施されうる。
【0103】
図16の下部分は、回折格子の更なる実施形態の断面を示す。図16の下部に示す回折格子124aは、図13において断面を示した、上記の回折格子と同様の構造を有する。回折格子124aは、測定放射に対する光学効果、特に、回折素子145aおよび146aの配列周期において相違する、バンド141aおよび143aより形成される。図13に示した回折格子とは異なり、回折格子124aは、相互に隣接配置する回折素子145aおよび146aを有するバンド141aおよび143aを備える。しかし、これらは配列パターンの位相において異なる。このことを示すために、図16の上部には回折格子124aの位相関数を、半径方向rについて示す。図16の上部の水平線171は、2πの整数倍数値である一定の位相φを表す。図16の上部の垂直線173は、バンド141aおよび143aの間の境界を表す。位相関数は、カーブ部分177、177、177、177により表され、回折素子145aおよび146aの配列を決定する。図16に示した実施例において、位相関数177〜177が、回折バー145aの半径方向外側の端に一致する位置において2πの整数倍数を通るように、回折素子145a、146aが配置されている。2πの整数倍数を有する位相関数の交差点とバー145aの半径方向外側端との関係は、図16に線175で示す。
【0104】
バンド141a、143aの範囲内において回折素子145a、146aが周期的に配置されていることは明確であり、このことが、分断曲線177、177がそれぞれ連続直線であることの理由である。しかし、バンド141aの境界173において、位相跳躍が発生し、あるバンドから他のバンドに回折要素が周期的に配列されるので、位相関数の連続性を維持することは不可能である。バンド141aおよび143aの位相跳躍値は約1.5πであり、選択した実施形態において、2つのバー145aがそれぞれ隣接するバンド141a、143aの間の境界173に互いに隣接する。このようにして、バーの幅が二倍の共通のバーが形成される。他の実施形態では位相跳躍は他の値であってもよく、特に、隣接間の位相跳躍値が約1.0πとなるように、回折格子を構成することもできる。
【0105】
従って、バンド141aおよび143aにおいて回折素子145a及び146bの配列パターンは互いに異なり、これらのバンドは相互に位相変位するように配置されている。従って、バンド141a、143aのオーバーグレーチングは、回折格子125aを経た測定放射に対して位相格子の効果を有する。
【0106】
図17は、回折格子の更なる実施態様を示す。図17に示す回折格子125cは、図12および図13を参照して説明した回折格子とは、細長い回折素子145b、146bが交互に位置し、主軸119bについて全く対称性が無い点で異なる。このような格子は、また、キャリア周波数ホログラム(carrier frequency hologram)とも称される。図示した実施形態のように、回折格子125cもバンド141bおよび143bを有するが、これらは主軸109bについて対称に配置される。バンド141bおよび143bは、回折素子145b、146bの配列パターンに関して相互に異なる。回折素子145b、146bは、バンド141bにのみ配列し、バンド143bは回折素子145b、146bを有していない。
【0107】
図18は、図11に示す干渉計装置と同様の構造を有し得る、干渉計装置101bの非常に簡潔な模式図である。干渉計装置101bは、図18において詳細に示さない放射源111bと、検出器134bを具備している。
【0108】
測定光線114bを生じさせる干渉光学系は、表面124bの反対側に延在する表面上の基板123bに適用される、フィゾー面119bおよび回折格子125bを備える。回折格子125bは、図17に概略的に示すような構造を有する。ここで、回折素子145b、146bは、高線密度に、交互に配置されており、キャリア周波数ホログラムを形成する。これにより、光線113bが回折格子125bに当たり、回折格子を経て観測すると、ビーム断面全体が回折している。これは、図18において、入射光線113bの入射光線の主軸109bが、回折格子125bを経る光線114bの主軸109’bに対して傾斜していることからも明らかである。さらに、回折格子125bは、光学特性の異なる、交互に配置したバンド141b、143bのオーバーグレーチングを有するので、入射光線113bは、回折構造145b、146bおよびバンド141b、143bで形成されるオーバーグレーチングで回折する。図15を参照して説明した通り、所定の回折次数で格子において回折し、所定の回折次数でオーバーグレーチングにおいて回折した測定光が球面波面を有し、干渉計装置101bの光路に垂直に配置された球面基準面151に当たるように、格子およびオーバーグレーチングが構成されている。球状基準面151が、あらかじめ高精度に製造され、かつ、独立した、従来の測定方法を用いて較正される。図15を参照して説明したように、回折構造145b、146bにより形成された回折格子の効果は、比較的高精度の基準球面表面151における測定により算出できる。
【0109】
図19は、図18の干渉計装置101bを示し、図18とは異なり、測定される非球面光学表面103bが干渉計装置101bの光路に配置されている。この場合、測定光が測定される非球面表面103bに実質的に略垂直に当たり、この測定光は回折構造145b、146bにより形成された回折格子で図18の構成と同じ回折次数で回折するが、バンド141b、143bにより形成されたオーバーグレーチングで図18の構成とは異なる回折次数で回折する。図19の測定構造内の検出器134bにより記録されるインターフェログラムから、光学表面133bの実際形状を算出し、光学表面133bを光学表面の所望形状と比較し、再加工して、その形状を所望形状に近づけることができるようになる。
【0110】
図7を参照して説明した実施態様において、各回折素子145b、146bにより形成された回折格子は、キャリア周波数格子であり、バンド141bおよび143bにより形成されるオーバーグレーチングはキャリア周波数を有さない。しかし、この態様の変更態様として、キャリア周波数を有するバンドにより形成されたオーバーグレーチングを利用することも可能である。さらに、各回折素子により形成された格子はキャリア周波数を有さないが、バンドにより形成されたオーバーグレーチングだけがキャリア周波数を有するようにすることも可能である。
【0111】
図18および19により説明される実施形態においては、被処理光学素子が非球面表面形状を有するが、較正物体が球面表面形状を有する。しかし、被処理光学表面を、自由形状の表面、即ち、回転軸または点に対する対象性を持たない表面にすることも可能である。さらに、製造されるべき光学表面が自由形状である場合には、較正物体が回転対称の非球面表面または自由形状表面を有するようにもできる。
【0112】
上述の実施形態において、各回折素子145、146によって形成される格子は、光学特性において異なる2種類の異なる回折素子を備えている。しかし、光学特性において異なる回折素子が、3つまたはそれ以上連続的かつ交互に配置して形成されるこの種の格子により、ブレーズド回折格子の効果も提供できる。
【0113】
さらに、上述の実施形態において形成されたオーバーグレーチングは、互いに隣接して配置される2種類の異なる種類のバンドにより形成される。しかし、光学特性の異なる3つまたはそれ以上の異なる種類のバンドを備えるオーバーグレーチングが、例えば、ブレーズド回折格子の関数を提供することも可能である。
【0114】
上述の干渉計装置は回折格子を交換可能に実装し、異なる光学表面を測定するために、異なる回折格子を干渉計装置の光路に導入することができる。
【0115】
上記の本発明の実施形態は、光学表面を有する光学素子の提供を可能にし、該光学表面は、理想的な非球面形状を有し、実際形状の、理想形状からの偏差が最大0.2mmである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学表面が非球面の所望形状を有しており、かつ、前記光学表面の実際形状の前記所望形状からの偏差は、最大0.2nmである、光学表面を有する光学素子。
【請求項2】
前記光学表面の前記実際形状の前記所望形状からの偏差は、最大0.1nmである、請求項1に記載の光学素子。
【請求項3】
前記光学表面の前記所望形状が自由形状表面であり、その最適球面からの偏差が、少なくとも最大5μmである、請求項1または2に記載の光学素子。
【請求項4】
前記光学表面の所望形状が、実質的に回転対称であり、かつ、その最適球面からの偏差が、少なくとも最大0.5mmである、請求項1または2に記載の光学素子。
【請求項5】
入射電磁測定波を提供し、
到来波の波面を再形成する様に構成されている2つの回折構造を提供し、
前記入射測定波を少なくとも一つの回折構造に放射することで、回折構造の少なくとも一つを較正して、該較正済の回折構造と少なくとも一つの被較正回折構造との相互作用の後に、所望形状からの実際形状の較正偏差を決定し、
前記2つの回折構造を前記入射測定波の光路に配置して、前記測定波の各光線が両方の前記回折構造を経て放射し、前記2つの回折構造により前記入射測定波を再形成して、前記光学表面の前記所望形状に適合した適合済測定波を形成し、
前記光学表面を、前記適合済測定波の前記光路に配置し、前記適合済測定波と前記光学表面とを相互作用させ、
前記適合済測定波と前記光学表面とを相互作用させた後に前記適合済測定波の前記波面を測定すること
を含むことを特徴とする、光学表面の実際形状の所望形状からの偏差を測定する方法。
【請求項6】
前記2つの回折構造が、それぞれ前記到来波の波面を再形成するように構成され、かつ、前記入射測定波の前記光路で順番に配置されることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記回折構造が、それ自体の基板上にそれぞれ配置されることを特徴とする、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
前記2つの回折構造が共通の基板上に重ねられることを特徴とする、請求項5〜7に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも一つの回折構造を較正するときに生成される前記測定波の前記所望波面が球面形状を有するように、前記回折構造が構成され、かつ、前記適合済測定波の前記波面が回転対称の非球面形状を有し、特に円錐断面、軸外非球面形状、および/または、自由形状表面であることを特徴とする、請求項5〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも一つの回折構造を較正するときに生成される前記測定波の前記所望波面が円錐断面形状を有するように、前記回折構造が構成され、かつ、前記適合済測定波の前記波面が円錐断面または自由形状表面形状とは異なる回転対称非球面形状を有することを特徴とする、請求項5〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記少なくとも一つの回折構造を較正するときに生成される前記測定波の前記所望波面が回転対称非球面形状を有するように、前記回折構造が構成され、かつ、前記適合済測定波の前記波面が前記自由形状表面を有することを特徴とする、請求項5〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記少なくとも一つの回折構造を較正するときに生成される前記測定波の前記所望波面が第一半径の球面形状を有するように、前記回折構造が構成され、かつ、前記適合済測定波の前記波面が第二半径の球面形状を有することを特徴とする、請求項5〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記入射測定光を再形成して前記適合済測定波を形成する場合に、前記2つの回折構造のうちの第一回折構造が波面再形成の大部分を担い、かつ、該第一回折構造が較正されていることを特徴とする、請求項5〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記回折構造のうちの一つの線密度が1ミリメートル当たり最大30本である、請求項5〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記較正偏差を考慮して、前記適合済み測定波の測定済みの波面から、前記光学表面の前記所望形状からの前記実際形状の偏差を決定するステップを更に含む、請求項5〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
適合済測定波を形成するための前記入射測定波の再形成は、
前記光学表面の前記所望形状に近似させた前記波面を有する近似測定波を形成するように、前記2つの回折構造のうちの第一回折構造により前記入射測定波を再形成するステップと、
前記適合済測定波を形成するように、前記適合済測定波の前記光路に配置された前記第二回折構造により、前記近似測定波の少なくとも一部を再形成するステップと、
を含む、請求項5〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記第一回折構造が較正されている、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記近似測定波の伝播方向に対して、前記適合済測定波の伝播方向が傾斜している、請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
前記近似測定波が球面波面を有する、請求項16〜18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記近似測定波の波面が実質的に前記光学表面の最適球面形状を有する、請求項16〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記近似測定波が非球面波面を有する、請求項16〜18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記第二回折構造が基板上に配置されており、かつ、前記近似測定波が前記第二回折構造に供される基板厚を有する平面平行プレートを通過する際に、前記近似測定波の少なくとも一部が再形成されて較正波を形成するように、前記近似測定波の波面が構成されており、前記較正波の波面は、円錐断面形状、特に、球面形状の断面を有することを特徴とする、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記近似測定波が前記第二回折構造により再形成され、前記適合済測定波及び較正波を形成する、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記近似測定波の非球面波面が円錐断面形状を有する、請求項21〜23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記近似測定波の非球面波面が回転対称である、請求項21〜24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記2つの回折構造のうちの一つを較正する際に、前記測定波と前記被較正回折構造との相互作用の後に、前記測定波の実際の波面形状が絶対的に決定されることを特徴とする請求項5〜25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記被較正回折構造を較正する際に、前記測定波と前記被較正回折構造との相互作用の後に、円錐断面形状の較正物体、特に較正球面上で、前記測定波が反射し、干渉的に測定されることを特徴とする、請求項5〜26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記較正物体の形状が絶対的に決定される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記被較正回折構造を較正する際に、前記測定波と測定されるべき波形要素との相互作用の後に、前記測定波の非回転対称誤差が絶対的に決定される、請求項5〜28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記二つの回折構造は回折素子の一部を形成し、前記回折素子は、
キャリアと、該キャリア上に備えられた、少なくとも一つの領域に延在する複数の細長い回折素子を含む回折構造とを含み、
前記少なくとも一つの領域に少なくとも第一型の回折素子及び第二型の回折素子を備え、前記回折素子の長手方向に対して横方向からみると、第一型回折素子及び第二型回折素子が交互に配列して第一回折構造を形成し、
前記第一型の回折素子及び前記第二型の回折素子が相互に異なる光学特性を有し、
少なくとも一つの領域において、少なくとも第一型の細長いバンドおよび第二型の細長いバンドが平面に延在して第二回折構造を形成し、
少なくとも一つの領域において、前記第一型のバンド及び前記第二型のバンドが、バンドの長手方向に対して横方向からみると、交互に配置し、
前記第一のバンド及び前記第二型のバンドはバンド内の回折素子の配列パターンが異なる、
ことを特徴とする、請求項5または請求の範囲8〜29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記第一型バンド内の、第一型及び第二型のバンド回折素子は交互に配置され、前記第二型のバンドは、第一型及び第二型の回折素子を含まないことを特徴とする、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記第一型バンド及び第一バンドに直接隣接する前記第二型バンドが、前記第一型及び第二型の回折素子の配列パターンが、実質的に等しい局所周波数を有するが、実質的に逆の位相を有して配置されることを特徴とする、請求項30または31に記載の方法。
【請求項33】
交互に配置される前記第一型及び第二型の回折素子が位相格子を形成することを特徴とする、請求項30〜32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
交互に配置される前記第一型及び第二型の回折素子が振幅格子を形成することを特徴とする、請求項30〜32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
請求項40〜67のいずれか一項に記載の装置を用いること、
前記オーバーグレーチングにより第一回折次数で回折する測定放射が、前記光学表面に実質的に垂直に当たるように、前記測定波に光学素子を配置すること、
少なくとも第一強度分布を波面測定装置の検出器で記録すること、
少なくとも一つの記録された第一の強度配布に応じて従属して光学表面を処理すること
を含む、光学表面を有する光学素子を製造する方法。
【請求項36】
前記第一回折次数とは異なる、第二回折次数で前記オーバーグレーチングにおいて回折する測定放射が前記較正物体の表面に略直角に当たるように、較正物体を測定波中に配置することと、
前記検出器を用いて、少なくとも第二強度分布を記録すること
を更に含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記光学表面の処理が、少なくとも一つの記録された前記第二強度分布に応じて更に実施されることを特徴とする、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記較正物体の表面が球面表面で、前記光学素子の光学表面が非球面表面であること、および/または
前記較正物体の表面が球面表面で、前記光学素子の光学表面が自由形状表面であること、および/または
前記較正物体の表面が回転対称非球面表面で、前記光学素子の光学表面が非球面表面であること、および/または
前記較正物体の表面が回転対称非球面表面で、前記光学素子の光学表面が自由形状表面であること、および/または
前記較正物体の表面が自由形状表面で、前記光学素子の光学表面が自由形状表面である
ことを特徴とする、請求項36または37に記載の方法。
【請求項39】
前記第二回折次数は、前記第一回折次数の逆の回折次数である、請求項35〜38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
入射電磁測定波を提供するための手段と、
到来波の波面を再形成するように構成された2つの回折構造であって、該2つの回折構造は測定モードで入射測定波の光路に配置されて、前記測定波の各光線が両方の回折構造を経て放射し、かつ、前記入射測定波は前記2つの回折構造により、前記光学表面の所望形状に適合する適合測定波を形成するように再形成されることを特徴とする2つの回折構造と、
前記測定波が少なくとも一つの被較正回折構造と相互作用した後に、前記測定波の所望波面からの実際の波面の較正偏差を決定するように構成されている前記2つの回折構造の少なくとも一つを較正するための手段と、
前記適合済測定波と前記光学表面が相互作用した後に、前記適合済測定波の前記波面を測定するための波面測定装置と
を有する、特に、請求項5〜39のいずれか一項に記載の方法を実施するために設定されている、光学表面の所望形状からの実際形状の偏差を決定するための装置。
【請求項41】
前記2つの回折構造は前記到来波の波面を再形成するようにそれぞれ構成されており、前記2つの回折構造は前記入射測定波の前記光路内に交互に配置されることを特徴とする、請求項40に記載の装置。
【請求項42】
前記回折構造は、それぞれ、それ自体の基板上に配置されることを特徴とする、請求項40または41に記載の装置。
【請求項43】
前記回折構造の前記線密度は、1ミリメートルにつき最大30本である、請求項40〜42のいずれか一項に記載の装置。
【請求項44】
前記入射測定波を再形成して前記適合済測定波を形成する際に、前記2つの回折素子のうちの第一の回折素子が、波面再形成の大部分を担うように、前記2つの回折構造が構成され、かつ、前記装置は前記回折構造を較正するように構成されていることを特徴とする、請求項40〜43のいずれか一項に記載の装置。
【請求項45】
前記較正偏差を考慮して、前記適合済測定波の測定済み波面から、前記光学表面の所望形状からの前記実際形状の偏差を決定するように構成されている分析装置を更に備える、請求項40〜44のいずれか一項に記載の装置。
【請求項46】
前記2つの回折構造が、
前記入射測定波の前記光路に配置され、かつ、前記入射測定波を再形成して前記光学表面の所望形状に近似する波面を有する近似測定波を形成するように設定されている第一回折構造と、
前記近似測定波の前記光路に配置され、かつ、前記近似測定波の少なくとも一部を再形成して前記適合済測定波を形成するように設定されている第二回折構造と
を備えることを特徴とする、請求項40〜45のいずれか一項に記載の装置。
【請求項47】
前記第一回折構造を較正するように構成された、請求項46に記載の装置。
【請求項48】
前記適合済測定波の伝播方向は、前記近似測定波の伝播方向に対して傾斜している、請求項46または47に記載の装置。
【請求項49】
前記近似測定波は、球面波面を有する、請求項46〜48のいずれか一項に記載の装置。
【請求項50】
前記近似測地波の波面は、実質的に前記光学表面の最適球面形状を有する、請求項46〜49のいずれか一項に記載の装置。
【請求項51】
前記近似測定波が非球面波面を有する、請求項46〜50のいずれか一項に記載の装置。
【請求項52】
前記装置は、前記第二回折構造が配置された基板を有し、前記近似測定波の前記非球面波面は、前記近似測定波が前記第二回折構造に供される基板厚を有する平面平行プレートを通過する際に、前記近似測定波の少なくとも一部が再形成されて較正波を形成するよう構成され、かつ、前記較正波の波面は円錐断面形状、特に、球面形状の断面を有することを特徴とする、請求項51に記載の装置。
【請求項53】
前記近似測定波は、前記第二回折構造により再形成されて、前記適合済測定波及び前記較正波の両方を形成することを特徴とする、請求項52に記載の装置。
【請求項54】
前記近似測定波の前記非球面波面は円錐断面形状の断面を有することを特徴とする、請求項51〜53のいずれか一項に記載の装置。
【請求項55】
前記近似測定波の前記非球面波面は回転対称であることを特徴とする、請求項51〜54のいずれか一項に記載の装置。
【請求項56】
較正のための手段が、前記測定光と前記被較正回折構造との相互作用の後に、前記測定波の実際波面を絶対的に決定するように設定されていることを、特徴とする請求項51〜55のいずれか一項に記載の装置。
【請求項57】
前記較正のための手段が、前記測定波と前記被較正回折構造との相互作用の後に前記測定波を反射する較正物体であって、その断面が円錐断面形状、特に較正球面である較正物体を有することを特徴とする、請求項51〜56のいずれか一項に記載の装置。
【請求項58】
前記較正のための手段が、前記較正物体の形状を絶対的に決定するように設定されている、請求項57に記載の装置。
【請求項59】
前記較正のための手段が、前記測定波と前記被較正回折構造との相互作用の後に、前記入射測定波の非回転対称誤差を絶対的に決定するように設定されることを特徴とする、請求項51〜58のいずれか一項に記載の装置。
【請求項60】
前記2つの回折構造が共通の基板上に重ねられている、請求項40、43、45、57、58および59のいずれか一項に記載の装置。
【請求項61】
前記2つの回折構造を有する回折素子であって、該回折素子は少なくとも第一型及び第二型の回折素子を有し、かつ、前記回折素子の少なくとも一つの領域において、前記回折素子の格子構造がオーバーグレーチングを形成するように調整されていることを特徴とする、請求項60に記載の装置。
【請求項62】
前記オーバーグレーチングにおいて、ゼロ次回折次数ではない所定の回折次数で回折した測定放射が、前記検出器によって検出可能な干渉パターンを生成するように構成されることを特徴とする、請求項61に記載の装置。
【請求項63】
前記光路から、ゼロ次回折次数または所定の回折次数以外の回折次数で、オーバーグレーチングにおいて回折した前記測定波の測定放射を除去する、前記光路に配置された開口を更に備える、請求項60〜62のいずれか一項に記載の装置。
【請求項64】
前記ゼロ次回折次数とは異なる第一回折次数で、前記オーバーグレーチングにおいて回折した前記測定波の測定放射が、実質的に球面波面を有することを特徴とする、請求項60〜63のいずれか一項に記載の装置。
【請求項65】
前記第一回折次数で回折する前記測定波の前記測定放射が、較正物体の表面に略直角に当たるように、前記測定波内に配置されうる表面を有する較正物体をさらに備えることを特徴とする、請求項64に記載の装置。
【請求項66】
前記較正物体が球面表面を有する、請求項65に記載の装置。
【請求項67】
キャリアと、該キャリア上に備えられた、少なくとも一つの領域に延在する複数の細長い回折素子を含む回折構造とを含み、
前記少なくとも一つの領域に少なくとも第一型の回折素子及び第二型の回折素子を備え、前記回折素子の長手方向に対して横方向からみると、第一型回折素子及び第二型回折素子が交互に配列し、
前記第一型の回折素子及び前記第二型の回折素子が相互に異なる光学特性を有し、
少なくとも一つの領域において、少なくとも第一型の細長いバンドおよび第二型の細長いバンドが平面に延在し、
少なくとも一つの領域において、前記第一型のバンド及び前記第二型のバンドが、バンドの長手方向に対して横方向からみると、交互に配置し、
前記第一のバンド及び前記第二型のバンドはバンド内の回折素子の配列パターンが異なる
ことを含む回折格子。
【請求項68】
平均波長を有する測定放射のための放射源と、
中に被測定物体を配置できる、測定放射線ビームを生成するための干渉光学系と、
前記測定放射と被測定物体との相互作用の後に測定放射を受信するための検出器と、
請求項67に従う回折格子を備える干渉光学系と
を備える干渉計装置。
【請求項69】
平均波長を有する測定放射のための放射源と、
中に被測定物体を配置できる、測定放射線ビームを生成するための干渉光学系と、
前記測定放射と被測定物体との相互作用の後に測定放射を受信するための検出器と、
少なくとも第一型及び第二型の回折素子により形成される回折格子であって、該回折格子の少なくとも一つの領域において、前記回折素子の回折構造がオーバーグレーチングを形成するように調整されることを特徴とする回折格子を備える干渉光学系と
を備える、特に請求項68に記載の干渉計装置。
【請求項70】
請求項68または69に従う干渉計装置を用いること、
測定放射がオーバーグレーチング上でゼロ次回折次数ではない第一回折次数で回折して、測定放射線ビームが光学表面に略垂直に当たるように、光学素子を測定放射線内に配置することと、
少なくとも第一の輝度分布を検出器により記録することと、
少なくとも一つの記録された第一の輝度分布に応じて、前記光学表面を処理することと
を含む、光学表面を有する光学素子を製造するための方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14a】
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【図14b】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公表番号】特表2009−544953(P2009−544953A)
【公表日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−521168(P2009−521168)
【出願日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際出願番号】PCT/EP2007/006639
【国際公開番号】WO2008/012091
【国際公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願人】(503263355)カール・ツァイス・エスエムティー・アーゲー (435)
【Fターム(参考)】