光学装置
【課題】高精度な分光測定が可能な光学装置を提供する。
【解決手段】光学装置1は、テレセントリック光学系31と、波長可変干渉フィルター5と、検出部32と、を備え、波長可変干渉フィルター5は、第一基板51と、可動部、および保持部を備えた第二基板52と、第一基板51に設けられた第一反射膜56と、可動部に設けられた第二反射膜57と、可動部を変位させる静電アクチュエーターと、を備え、第一反射膜56および第二反射膜57には、可動部の変位量が最大となった際に、測定中心波長を中心に予め設定された許容値以内となる波長の光を透過可能な測定有効領域Gが設定され、テレセントリック光学系31は、入射光の主光線が平行、かつ第一反射膜に対して垂直となるように、入射光を前記波長可変干渉フィルターに導くとともに、測定有効領域G内に入射光を集光させる。
【解決手段】光学装置1は、テレセントリック光学系31と、波長可変干渉フィルター5と、検出部32と、を備え、波長可変干渉フィルター5は、第一基板51と、可動部、および保持部を備えた第二基板52と、第一基板51に設けられた第一反射膜56と、可動部に設けられた第二反射膜57と、可動部を変位させる静電アクチュエーターと、を備え、第一反射膜56および第二反射膜57には、可動部の変位量が最大となった際に、測定中心波長を中心に予め設定された許容値以内となる波長の光を透過可能な測定有効領域Gが設定され、テレセントリック光学系31は、入射光の主光線が平行、かつ第一反射膜に対して垂直となるように、入射光を前記波長可変干渉フィルターに導くとともに、測定有効領域G内に入射光を集光させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
入射光から所定の波長の光を取り出す波長可変干渉フィルターを備えた光学装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一対の反射膜を互いに対向させ、入射光のうち一対の反射膜により多重干渉されて強め合った所定波長の光のみを透過または反射させる干渉フィルターが知られており、このような干渉フィルターを透過した光をイメージセンサーで撮像する光学装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
この特許文献1に記載の光学装置は、入射光を対物レンズにより、対象物からの光を平行化し、平行化された光を波長可変干渉フィルターに垂直に入射させ、波長可変干渉フィルターを透過した光をイメージセンサーで受光して撮像する装置である。
【0003】
このような光学装置において、目的波長の光をイメージセンサーで受光するためには、波長可変干渉フィルターの分解能を向上させる必要がある。このような波長可変干渉フィルターとして、例えば特許文献2に示すようなフィルターがある。
この特許文献2に記載の波長可変干渉フィルターは、一対の基板を互いに対向させ、このうち一方の基板には、可動部と、可動部を他方の基板に対して進退移動可能に保持するダイヤフラムとが設けられている。そして、この可動部に一対の反射膜のうちの一方の反射膜を形成し、可動部が設けられない他方の基板に、可動部の反射膜に対向する他方の反射膜が形成されている。このような光学フィルター装置では、可動部を進退させることで、一対の反射膜の間のギャップ寸法を変動させることができ、ギャップ寸法に応じた光を取り出すことができるとともに、ダイヤフラムに対して可動部の撓み量が小さくなるため、可動部に設けられた反射膜の撓みも抑えることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−162043号公報
【特許文献2】特開2009−251105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記特許文献2では、可動部がダイヤフラムよりも厚み寸法が大きく形成されているため、可動部を変位させた場合でも、ダイヤフラムの撓み量に対して可動部の撓み量を小さくすることができる。しかしながら、実際には、可動部にも撓みが生じており、その撓み量は、可動部の中心部では小さく、中心から可動部の外周部に向かうに従って大きくなる。また、この撓み量は、波長可変干渉フィルターのサイズにも左右され、例えば波長可変干渉フィルターのサイズが大きい場合、可動部の歪み量も大きくなる。したがって、この可動部上に設けられた反射膜にも撓みが生じ、一対の反射膜間のギャップ寸法が均一とならないため、分解能が低下してしまう。
【0006】
したがって、特許文献1に記載の光学装置において、上記のような波長可変干渉フィルターを用いる場合、波長可変干渉フィルターでの分解能の低下により、測定精度が悪化するという問題がある。また、光学装置において、イメージセンサーのサイズを大きくすることで、より高解像度な画像を取得することができるが、この場合、波長可変干渉フィルターのサイズも大きくする必要がある。しかしながら、上述のように、波長可変干渉フィルターのサイズを大きくすると、可動部の撓み量が増大して分解能が低下し、測定精度が悪化するという問題があった。
【0007】
本発明は、上記のような問題に鑑みて、高精度な分光測定が可能な光学装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の光学装置は、入射光のうち、多重干渉により強め合った光を透過させる波長可変干渉フィルターと、前記波長可変干渉フィルターに前記入射光を導くテレセントリック光学系と、前記波長可変干渉フィルターを透過した光を検出する検出部と、を具備し、前記波長可変干渉フィルターは、第一基板と、前記第一基板に対向し、可動部、および前記可動部の外周を保持して前記可動部を前記第一基板に対して進退移動可能に保持する保持部を備えた第二基板と、前記第一基板に設けられた第一反射膜と、前記可動部に設けられ、前記第一反射膜とギャップを介して対向する第二反射膜と、前記可動部を変位させて前記ギャップの寸法を変化させるギャップ可変部と、を備え、前記第一反射膜および前記第二反射膜には、前記ギャップ可変部により前記可動部の変位量が最大となった際に、測定中心波長を中心に、予め設定された許容値以内となる波長の光を透過可能な測定有効領域が設定され、前記テレセントリック光学系により、前記入射光の主光線が前記第一反射膜の面または前記第二反射膜の面に対して垂直に導かれ、前記測定有効領域内に前記入射光を集光させることを特徴とする。
【0009】
この発明では、テレセントリック光学系が像側テレセントリック光学系であり、テレセントリック光学系から射出された光の主光線が光軸に対して平行で、波長可変干渉フィルターに対して直交するように導光される。さらに、このテレセントリック光学系は、前記主光線が、波長可変干渉フィルターの第一反射膜および第二反射膜により形成されるギャップ領域のうち、測定有効領域内に集光されるように、光を集光する。なお、テレセントリック光学系とは主光線が焦点を通るように配列された光学系をいい、主光線が光軸に対して平行、つまり画角が0度となる光学系である。また、像側テレセントリック光学系とは、像側で主光線と光軸に対して平行となる光学系である。
ここで、測定有効領域は、波長可変干渉フィルターの分解能の低下の許容範囲に抑えられる領域である。つまり、第一反射膜および第二反射膜の間のギャップ領域のうち、この測定有効領域内で多重干渉されて透過された光は、測定中心波長を中心とした許容波長域内の光となる。
したがって、テレセントリック光学系により、波長可変干渉フィルターの測定有効領域に主光線を集光させることで、入射光から精度よく測定中心波長を中心とした波長域内の光を取り出して、検出部で受光させることができる。これにより、例えば平行光を波長可変干渉フィルターに入射させて、ギャップ領域における測定有効領域外をも用いて光を取り出す場合に比べて、波長可変干渉フィルターでの分解能の低下を抑制でき、光学装置において高精度な分光測定を実施することができる。
【0010】
本発明の光学装置では、前記測定有効領域は、前記ギャップ可変部により前記可動部の変位量が最大変位量に設定された際に、前記可動部の中心軸上に沿った前記ギャップの寸法と、前記測定有効領域の外周縁に対向する前記ギャップの寸法との差分値が、前記許容値の半値以下となる領域であることが好ましい。
【0011】
この発明では、ギャップ可変部により可動部を最大変位量だけ変位させた状態で、可動部の中心軸上に対応したギャップ寸法と、測定有効領域の外周縁に対応したギャップ寸法との差をxとし、許容値をλ0とした場合、x=λ0/2の関係を満たす領域内を測定有効領域としている。
つまり、波長可変干渉フィルターでは、ギャップの寸法dと、透過波長λとは、空気の屈折率を1として、d=λ/2として表される。したがって、可動部の中心軸上のギャップ寸法をd1、測定有効領域の外周縁に対応するギャップ寸法をd2とすると、可動部の中心軸を透過する光の波長(測定中心波長)は、λ1=2d1となり、測定有効領域の外周縁を透過する光の波長は、λ2=2d2=2(d1+x)=2(λ1/2+x)となる。
ここで、測定中心波長λ1を中心として許容値λ0以内となる波長域は、λ1−λ0からλ1+λ0の範囲となる。可動部が第一基板に向かって撓む場合、ギャップ寸法がd1より小さくなることはないので、測定有効領域の外周縁を透過した透過光の波長λ2(=2(λ1/2+x))がλ1+λ0以下であれば、測定有効領域を透過する透過光が、測定中心波長λ1を中心とした許容値λ0以内の光となる。すなわち、テレセントリック光学系により、x≦λ0/2となる測定有効領域に入射光を集光させることで、測定中心波長λ1から許容波長λ0以内の光を検出部にて検出させることが可能となる。
【0012】
本発明の光学装置では、前記波長可変干渉フィルターおよび前記検出部の間に、前記波長可変干渉フィルターを透過した透過光を拡大する拡大レンズ系が設けられたことが好ましい。
【0013】
この発明では、テレセントリック光学系により入射光を集光させる構成であるため、波長可変干渉フィルターのサイズの小型化に貢献することができる。これに加え、拡大レンズ系が設けられることで、波長可変干渉フィルターから透過した透過光を拡大して検出部に向かって射出することができる。このような構成では、波長可変干渉フィルターのサイズを大型化することなく、検出部のサイズのみを大きくすることができ、検出精度をより向上させることができる。
【0014】
本発明の光学装置では、前記テレセントリック光学系と前記波長可変干渉フィルターの間に、前記テレセントリック光学系から前記波長可変干渉フィルターに向かう光を透過させ、前記波長可変干渉フィルターから前記テレセントリック光学系に向かう光を吸収する第一円偏光板が設けられたことが好ましい。
【0015】
この発明では、波長可変干渉フィルターとテレセントリック光学系との間に第一円偏光板が設けられている。
一般に、波長可変干渉フィルターでは、第一反射膜および第二反射膜の間で多重干渉されて強め合った光が検出部側に透過されるが、透過しなかった光の成分はほぼ入射側に反射される。このような反射成分がテレセントリック光学系に戻ると、レンズ内およびレンズ間で反射し、ゴーストやフレアなどの原因となり、検出部での検出精度が低下する。
これに対して、本発明では、第一円偏光板により、波長可変干渉フィルターで反射された光が、テレセントリック光学系に戻るのを防止で、ゴーストやモアレの発生を抑え、検出部での検出精度を向上させることができる。
【0016】
本発明の光学装置では、前記波長可変干渉フィルターおよび前記検出部の間に、前記波長可変干渉フィルターから前記検出部に向かう光を透過させ、前記検出部から前記波長可変干渉フィルターに向かう光を吸収する第二円偏光板が設けられたことが好ましい。
【0017】
この発明では、波長可変干渉フィルターと、検出部との間に第二円偏光板が設けられており、検出部で反射された光が波長可変干渉フィルターに戻り、さらに正反射して検出部に戻る不都合を防止することができる。
また、第一円偏光板と第二円偏光板との双方を用いてもよく、この場合、第一円偏光板の直線偏光板の偏光方向と、第二円偏光板の直線偏光板の偏光方向とを揃える。これにより、波長可変干渉フィルターで反射された光のテレセントリック光学系への戻り、検出部で反射された光の波長可変干渉フィルターを経て検出部への戻りをそれぞれ防止することができ、より検出精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る第一実施形態の光学装置の概略構成を示す図である。
【図2】第一実施形態の波長可変干渉フィルターの概略構成を示す断面図である。
【図3】第一電極および第二電極の間に電極が印可され、可動部が第一基板側に最大量撓んだ状態で、図2において二点鎖線Aの部分を拡大した拡大図である。
【図4】第一実施形態の光学装置において、テレセントリック光学系により導光された光束の光路を示す図である。
【図5】テレセントリック光学系から射出された光束の光線形状の概略を示した図である。
【図6】主光線の傾きに対する、波長可変干渉フィルターを透過した透過光のピーク波長変動量を示す図である。
【図7】第二実施形態の光学装置のテレセントリック光学系により導光された光束の光路を示す図である。
【図8】第三実施形態の光学装置のテレセントリック光学系により導光された光束の光路を示す図である。
【図9】第四実施形態の光学装置のテレセントリック光学系により導光された光束の光路を示す図である。
【図10】テレセントリック光学系の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[第一実施形態]
以下、本発明に係る第一実施形態について、図面に基づいて説明する。
〔1.光学装置の全体構成〕
図1は、本発明に係る実施形態の光学装置1の概略構成を示す図である。
この光学装置1は、図1に示すように、光センサー3と、制御装置4と、を備えている。そして、この光学装置1は、分光カメラ装置であり、測定対象2の像を検出部32で撮像し、分光された光量分布特性を測定する装置である。
【0020】
〔2.光センサーの構成〕
光センサー3は、図1に示すように、波長可変干渉フィルター5と、波長可変干渉フィルター5に光を導くテレセントリック光学系31と、波長可変干渉フィルター5を透過した光を受光する検出部32と、波長可変干渉フィルター5で透過させる光の波長を可変する電圧制御回路33と、を備えている。
【0021】
(2−1.波長可変干渉フィルターの構成)
図2は、波長可変干渉フィルターの概略構成を示す断面図である。
波長可変干渉フィルター5は、図2に示すように、第一基板51、および第二基板52を備えている。これらの2枚の基板51,52は、それぞれ例えば、ソーダガラス、結晶性ガラス、石英ガラス、鉛ガラス、カリウムガラス、ホウケイ酸ガラス、無アルカリガラスなどの各種ガラスや、水晶など、可視光域の光を透過可能な素材により形成されている。そして、これらの2つの基板51,52は、外周縁に沿って形成される接合面513,523同士が、例えばシロキサンを主成分とするプラズマ重合膜53により接合されることで、一体的に構成されている。
【0022】
また、第一基板51と、第二基板52との間には、第一反射膜56および第二反射膜57が設けられる。ここで、第一反射膜56は、第一基板51の第二基板52に対向する面に固定され、第二反射膜57は、第二基板52の第一基板51に対向する面に固定されている。また、これらの第一反射膜56および第二反射膜57は、ギャップを介して対向配置されている。ここで、第一反射膜56および第二反射膜57により挟まれる空間をギャップ領域と称す。そして、波長可変干渉フィルター5は、このギャップ領域で入射光を多重干渉させ、互いに強め合った光を透過させる。
【0023】
さらに、第一基板51と第二基板52との間には、ギャップの寸法を調整するための、本発明のギャップ可変部である静電アクチュエーター54が設けられている。この静電アクチュエーター54は、第一基板51に設けられる第一電極541と、第二基板52に設けられる第二電極542とにより構成されている。
【0024】
(2−1−1.第一基板の構成)
第一基板51は、第二基板52に対向する対向面に、電極溝511およびミラー固定部512が、エッチングにより形成されている。
電極溝511は、図示は省略するが、基板厚み方向から第一基板51を見たフィルター平面視において、平面中心点を中心とするリング形状に形成されている。
ミラー固定部512は、電極溝511と同軸上で、第二基板52に向かって突出する円筒状に形成されている。
【0025】
電極溝511の溝底面には、静電アクチュエーター54を構成するリング状の第一電極541が形成されている。また、この第一電極541は、配線溝に沿って延出される第一電極線(図示略)が、第一基板51の外周部に向かって形成されている。そして、この第一電極線の先端が電圧制御回路33に接続されている。
【0026】
また、ミラー固定部512の第二基板52に対向する面には、第一反射膜56が固定されている。この第一反射膜56は、例えばSiO2、TiO2を積層することで構成された誘電体多層膜であってもよく、Ag合金などの金属膜により構成されるものであってもよい。また、誘電体多層膜と金属膜との双方が積層された構成であってもよい。
【0027】
そして、第一基板51の電極溝511の外方には、第一接合面513が形成されている。この第一接合面513には、上述したように、第一基板51および第二基板52を接合するプラズマ重合膜53が形成されている。
【0028】
(2−1−2.第二基板の構成)
第二基板52は、第一基板51に対向しない面がエッチングにより加工されることで、
形成される。この第二基板52は、基板中心点を中心とした円形筒状の可動部521と、可動部521と同軸であり可動部521を保持する保持部522と、を備えている。ここで、この保持部522の外周径寸法は、第一基板51の電極溝511の外周径寸法と同一寸法に形成されている。
【0029】
可動部521は、撓みを防止するために、保持部522よりも厚み寸法が大きく形成されている。
保持部522は、可動部521の周囲を囲うダイヤフラムであり、例えば厚み寸法が50μmに形成されている。なお、本実施形態では、ダイヤフラム状の保持部522を例示するが、例えば、可動部の中心に対して点対象となる位置に設けられる複数対の梁構造を有する保持部が設けられる構成などとしてもよい。
【0030】
保持部522の第一基板51に対向する面には、第一電極541に所定の間隔をあけて対向する、リング状の第二電極542が形成されている。ここで、上述したように、この第二電極542および前述した第一電極541により、静電アクチュエーター54が構成される。
また、第二電極542の外周縁の一部からは、第二基板52の外周部に向かって、第二電極線(図示略)が形成され、この第二電極線の先端が、電圧制御回路33に接続される。
【0031】
可動部521の第一基板51に対向する面には、ギャップを介して第一反射膜56に対向する第二反射膜57が形成されている。なお、第二反射膜57の構成は、第一反射膜56と同一であるため、ここでの説明は省略する。
【0032】
(2−1−3.電圧印可時の波長可変干渉フィルターの動作と測定有効領域)
図3は、第一電極541および第二電極542の間に電極が印可され、可動部521が第一基板51側に撓んだ状態での、図2の二点鎖線部分Aを拡大した拡大図である。
図2に示す初期状態において、電圧制御回路33から、第一電極541および第二電極542間に駆動電圧が印可されると、第二基板52の可動部521は、図3に示すように、静電引力により、第一基板51側に変位する。
【0033】
この時、可動部521は、ダイヤフラム状の保持部522に対して厚み寸法が大きく形成されているので、撓みにくい形状となっているが、実際には、保持部522の撓みにより微小量の撓みが発生する。ここで、可動部521の撓み量は、可動部521の中心軸Oから距離が離れるに従って大きくなる。したがって、可動部521の外周部では、可動部521上に形成された第二反射膜57と、対向する第一反射膜56との間のギャップ寸法も増大してしまう。この場合、ギャップ領域のうち、可動部521の中心軸O上を透過した光のピーク波長と、ギャップ領域の外周部を透過した光のピーク波長とにずれが生じ、波長可変干渉フィルター5の分解能が低下してしまう。
【0034】
検出部32での検出精度を向上させるためには、上記のようなピーク波長のずれを、予め設定された許容値以内に抑える必要がある。本発明では、ギャップ領域のうち、ピーク波長のずれを許容値以内に抑えることができる領域を測定有効領域Gとし、テレセントリック光学系31により、この測定有効領域G(図2、図3において、第一反射膜56および第二反射膜57の面の一点鎖線で挟まれた領域)内に入射光を集光させる。これにより、測定有効領域G内を透過した光のみを検出部32で検出させる。
【0035】
ここで、測定有効領域Gは、可動部521の中心軸O上を透過する光の測定中心波長λ1を中心として許容値λ0以内の波長の光を透過可能な領域であるとした場合、可動部521を第一基板51側に最大変位させた状態で、可動部521の厚み方向の撓み量がλ0/2以下となる領域となる。つまり、可動部521の中心軸O上のギャップ寸法をd1、測定有効領域Gの外周縁におけるギャップ寸法をd2とすると、下記式(1)が成立する。
【0036】
[数1]
d2−d1=λ0/2 …(1)
【0037】
また、許容値λ0としては、光学装置1の用途により適宜設定されるが、例えば一般的なイメージセンサーとして可視光域の分光スペクトル分布を測定する場合では、許容値を5nm以内に設定することが好ましく、赤外光を用いる場合では、許容値を10nm以内に設定することが好ましい。したがって、波長可変干渉フィルター5では、可動部521を最大変位させた際に、2.5〜5nm以下の撓み量となる領域を測定有効領域Gとして設定することが好ましい。
【0038】
(2−2.テレセントリック光学系の構成)
テレセントリック光学系31は、測定対象2からの入射光を波長可変干渉フィルター5に導く光学系であり、複数のレンズ等の光学部品により構成されている。
図4は、テレセントリック光学系31により導光された光束の光路を示す図である。図5は、テレセントリック光学系31から射出された光束の光線形状の概略を示した図である。
【0039】
テレセントリック光学系31は、光学装置1により撮像可能な範囲(画角)から入射された光を、複数のレンズを通して波長可変干渉フィルター5に導光する。ここで、テレセントリック光学系31は、対象物側から光学装置1に入射した光を、図5に示すようなコーン型の光束に変換する。また、このテレセントリック光学系31は、射出された光の主光線が光軸に平行で、かつ波長可変干渉フィルター5の第一基板51(第一反射膜56)に対して直交するように射出する。さらに、テレセントリック光学系31は、撮像可能な画角範囲内に入射した光が、波長可変干渉フィルター5の測定有効領域G内に集光されるように導光する。
【0040】
なお、ここで述べる直交とは、波長可変干渉フィルター5を透過した透過光のピーク波長にずれが生じない程度の角度であればよい。図6は、主光線の傾きに対する、波長可変干渉フィルターを透過した透過光のピーク波長変動量を示す図である。図6において、波長可変干渉フィルターに入射するコーン型の光束の片側勾配は、図5に示すように5度に設定されているものとする。
図6に示すように、波長可変干渉フィルター5から透過された透過光のピーク波長は、入射角度の変動量が大きくなるにしたがって、大きく変化する。また、波長が大きくなるに従って、ピーク波長の変動量も増大する。したがって、テレセントリック光学系31のレンズ設計においては、波長可変干渉フィルター5により透過させたい波長域に対して、どの程度のピーク波長の変動量を許容できるかにより、適宜設定されればよい。
例えば、1100nmの光を波長可変干渉フィルター5に入射させる場合、入射角度が2.7度ずれることで、ピーク波長が1nm変動してしまう。したがって、1100nm以下の波長域に対して波長可変干渉フィルター5により分光させる際、主光線の入射角度によるピーク波長の変動量を1nm以下に抑えたい場合では、テレセントリック光学系31から射出された光束の主光線の傾きを2.7度以内に抑える必要がある。
【0041】
(2−3.検出部の構成)
図1に戻り、検出部32は、テレセントリック光学系31の焦点面に設けられており、画角内の像の画像光がテレセントリック光学系31により導光され、検出部32において結像されて、撮像される。
この検出部32は、アレイ状に配列される複数の検出素子(図示略)を備えている。これらの検出素子は、例えばCCD(Charge Coupled Device)素子などの、光電交換素子により構成されており、受光した光の光量に応じた電気信号を生成して制御装置4に出力する。この検出部32は、テレセントリック光学系31の焦点面に設けられている。
【0042】
(2−4.電圧制御回路の構成)
電圧制御回路33は、制御装置4の制御により、静電アクチュエーター54の第一電極541および第二電極542に印加する電圧を制御する。
【0043】
〔3.制御装置の構成〕
制御装置4は、光学装置1の全体動作を制御する。
この制御装置4は、記憶部41やCPU(Central Processing Unit)42等により構成されるコンピューターであり、例えば汎用パーソナルコンピューターや、携帯情報端末、その他、測定専用コンピューターなどを用いることができる。
そして、制御装置4は、CPU42上で実行されるソフトウェアとして、駆動制御部421と、光量取得部422と、強度分布測定部423とを備えている。
【0044】
記憶部41は、CPU42上で実施する各種プログラムや、各種データが記憶されている。また、記憶部41は、静電アクチュエーター54に印加する駆動電圧に対する検出部32で検出される透過光の波長を示す相関データを記憶している。
【0045】
次に、CPU42上で実行される各ソフトウェアである駆動制御部421、光量取得部422、および強度分布測定部423について説明する。
【0046】
駆動制御部421は、記憶部41に記憶された相関データに基づいて、検出部32で測定対象光を受光可能な電圧値(入力値)を取得し、取得した電圧値を電圧制御回路33に出力して、波長可変干渉フィルター5のギャップの間隔を変動させる。
光量取得部422は、検出部32の各検出素子で検出された受光量を取得する。取得した受光量は、検出素子の位置データに関連付けて記憶部41に記憶される。
強度分布測定部423は、光量取得部422により取得された、各検出素子で検出された測定対象光の光量に基づいて、光強度分布図を作成する。
例えば、強度分布測定部423は、各検出素子の座標位置に対応した画素を有する光強度分布図を作成し、各画素に対応する検出素子での受光量に応じて、各画素の色や、濃淡等を設定する。
【0047】
(第一実施形態の作用効果)
上述したような第一実施形態の光学装置1では、入射光を波長可変干渉フィルター5に導くテレセントリック光学系31と、波長可変干渉フィルター5と、検出部32とを備えている。そして、テレセントリック光学系31は、像側テレセントリック光学系であり、主光線が光軸に平行で、第一反射膜56の面に対して直交する光束を波長可変干渉フィルター5に向かって射出する。また、テレセントリック光学系31は、画角の範囲内の入射光を、透過光の波長が測定中心波長λ1から許容値λ0以内となる測定有効領域Gに入射させる。
具体的には、テレセントリック光学系31は、可動部521が最大変位した状態で、可動部521の中心軸O上のギャップ寸法をd1とした際、ギャップ寸法d2がd1≦d2<d1+λ0以下となる領域に、画角範囲内の入射光を入射させる。
【0048】
このため、波長可変干渉フィルター5は、測定中心波長を中心として許容値λ0範囲内の波長の光を透過することができ、分解能を向上させることができる。また、このような透過光を検出部32で受けることで、画像光の正確な分光特性の測定を実施することができ、測定精度を向上させることができる。
【0049】
[第二実施形態]
次に本発明の第二実施形態について、図面に基づいて説明する。
図7は、本発明の第二実施形態に係る光学装置のテレセントリック光学系により導光された光束の光路を示す図である。
第二実施形態の光学装置1Aでは、図7に示すように、第一実施形態の光学装置1におけるテレセントリック光学系31と波長可変干渉フィルター5との間に、第一円偏光板34が設けられている。
【0050】
この第一円偏光板34は、テレセントリック光学系31側に面する直線偏光板341と、波長可変干渉フィルター5側に面する1/4波長板342とを組み合わせることで構成されている。
このような第一円偏光板34では、直線偏光板341で、テレセントリック光学系31から入射した光のうち、例えばP偏光波のみを透過し、S偏光波を吸収する。また、1/4波長板342では、透過されたP偏光波を円偏光(右旋光性円偏光波)にして波長可変干渉フィルター5に向かって射出する。
一方、波長可変干渉フィルター5では、多重干渉により強め合った光は透過光として検出部32側に透過されるが、その他の波長の光は、ほぼテレセントリック光学系31側に反射される。
この時、反射波は、旋回方向が逆転する。例えば、本実施形態では、1/4波長板342により右旋光性円偏光波に変換されているので、反射波は左旋光性円偏光波となる。このような左旋光性円偏光波は、第一円偏光板34の1/4波長板342に入射すると、S偏光波に変換され、直線偏光板341により吸収され、テレセントリック光学系31側に透過しない。
【0051】
(第二実施形態の作用効果)
上述したような第二実施形態の光学装置1Aでは、テレセントリック光学系31と、波長可変干渉フィルター5との間に、第一円偏光板34が設けられ、この第一円偏光板34は、テレセントリック光学系31に面する直線偏光板341と、波長可変干渉フィルター5に面する1/4波長板342とを組み合わせることで構成されている。
このため、第一円偏光板34は、テレセントリック光学系31から波長可変干渉フィルター5に向かって入射光を透過させることができ、波長可変干渉フィルター5で反射された光を吸収することができる。これにより、テレセントリック光学系31に波長可変干渉フィルター5で反射された光が戻ることがなく、このような反射波がテレセントリック光学系のレンズ内やレンズ間で反射することで生じるモアレやゴーストなどの発生も防止できる。したがって、検出部32での光量測定精度の低下を抑制することができる。
【0052】
[第三実施形態]
次に、本発明に係る第三実施形態の光学装置について、図面に基づいて説明する。
図8は、第三実施形態の光学装置1Bの概略構成を示す図である。
第三実施形態の光学装置1Bでは、図8に示すように、第二実施形態の光学装置1Aにおいて、さらに、波長可変干渉フィルター5と検出部32との間に、第二円偏光板35が設けられている。
【0053】
この第二円偏光板35は、波長可変干渉フィルター5側に面する1/4波長板351と、検出部32側に面する直線偏光板352とを組み合わせることで構成されている。ここで、直線偏光板352は、第一円偏光板34の直線偏光板341と同一偏光方向を有しており、P偏光波を透過させる。
【0054】
波長可変干渉フィルター5には、第一円偏光板34により右旋光性円偏光波が入射され 波長可変干渉フィルター5には、第一円偏光板34により右旋光性円偏光波が入射される。そして、第二円偏光板35では、波長可変干渉フィルター5を透過した右旋光性円偏光波を、1/4波長板351で、直線偏光(P偏光波)に変換する。変換された直線偏光波は、直線偏光板352を透過して検出部32側に射出される。
一方、検出部32で反射された光成分は、第二円偏光板35を透過し、波長可変干渉フィルター5で反射される。この反射光は第二円偏光板35の直線偏光板352に吸収され、検出部32への戻りが防止される。
【0055】
(第三実施形態の作用効果)
上述したような第二実施形態の光学装置1Bでは、波長可変干渉フィルター5と、検出部32との間に、第二円偏光板35が設けられ、この第二円偏光板35は、波長可変干渉フィルター5に面する1/4波長板351と、検出部32側に面する直線偏光板352とを組み合わせることで構成されている。
このため、第二円偏光板35は、波長可変干渉フィルター5から検出部32に向かって入射光を透過させることができ、検出部32で反射された光を吸収することができる。これにより、波長可変干渉フィルター5に検出部32で反射された光が戻ることがなく、このような反射波が波長可変干渉フィルター5のギャップ内で再び多重干渉されることがないので、検出部32での光量測定精度の低下を抑制することができる。
【0056】
[第四実施形態]
次に本発明に係る第四実施形態の光学装置1Cについて、図面に基づいて説明する。
図9は、第四実施形態の光学装置1Cの概略構成を示す図である。
図9に示すように、第四実施形態の光学装置1Cは、第三実施形態の光学装置1Bを変形したものであり、第二円偏光板35と検出部32との間に、拡大レンズ系36が設けられている。
また、光学装置1Cでは、波長可変干渉フィルター5がテレセントリック光学系31の焦点面に設けられており、検出部32は、拡大レンズ系36の焦点面に設けられている。
【0057】
このような光学装置1Cでは、波長可変干渉フィルター5を透過した光を拡大レンズ系36により拡大して検出部32で検出させる。このような構成では、波長可変干渉フィルター5に対して、検出部32のサイズを大きくすることができ、より多くの検出素子により高解像度の画像を取得することができる。したがって、より正確で詳細な分光分布測定を実施することができる。
【0058】
すなわち、第一、第二、および第三実施形態の光学装置1,1A,1Bでは、波長可変干渉フィルター5における測定有効領域Gのサイズと、検出部32のサイズとを同程度にする必要がある。このため、検出部32のサイズを大きくすると、波長可変干渉フィルター5のサイズも大きくする必要がある。
ここで、本発明では、分解能の低下が許容値以内となる測定有効領域Gを設定するため、検出部32のサイズに合わせて、測定有効領域Gのサイズを、検出部32に合わせて拡大する必要がある。しかしながら、測定有効領域Gのサイズを大きくするために、波長可変干渉フィルター5のサイズを大きくする場合、可動部521の撓み量が拡大量に応じて増大してしまう。このため、例えば、測定有効領域Gを1.5倍のサイズにするために、例えばフィルターサイズを2倍にする必要があるなど、測定有効領域のサイズ拡大量に比べて波長可変干渉フィルター5のサイズ拡大量を大きくする必要が生じるという問題がある。
また、これに加え、波長可変干渉フィルター5のサイズを大きくした場合、可動部521を変位させるための電力も大きくなり、保持部522の応力バランスを均一に保持することも困難となるので、可動部521を均一に変位させるための制御も困難となる。
【0059】
これに対して、本実施形態では、拡大レンズ系36により透過光を拡大して検出部32で受光させる構成であるため、波長可変干渉フィルター5のサイズを大型化する必要がなく、検出部32に対して小さいサイズの波長可変干渉フィルター5を用いることができる。
【0060】
(第四実施形態の作用効果)
上述したように、第四実施形態の光学装置1Cでは、波長可変干渉フィルター5と検出部32との間に拡大レンズ系36が設けられている。このため、波長可変干渉フィルター5のサイズを大型化することなく、検出部32のサイズを拡大することができる。したがって、波長可変干渉フィルター5を大型化することによる、分解能低下や、消費電力の増大、可動部521の制御等の問題がなく、容易に大サイズの検出部32により高精度な分光分布測定を実施することができる。
【0061】
〔他の実施形態〕
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【0062】
例えば、第一実施形態において、テレセントリック光学系31内に絞りが設けられる構成図を図2に示したが、これに限定されない。テレセントリック光学系31を構成するレンズ群としては、光学装置1で撮像可能な画角範囲内の入射光を、測定有効領域G内に集光させ、かつその主光線が互いに平行で、波長可変干渉フィルター5に垂直に入射すれば、いかなる光学部材により構成されていてもよく、その光学部材の数や種類は限定されない。例えば、図10に示すような構成のテレセントリック光学系が設けられていてもよい。
【0063】
また、上記実施形態では、ギャップ可変部として、第一電極541および第二電極542の間に電圧が印可されることで、保持部522を撓ませて可動部521を変位させる静電アクチュエーター54を例示したがこれに限らない。
例えば、第一電極541の代わりに、第一誘電コイルを配置し、第二電極の代わりに第二誘電コイルまたは永久磁石を配置した誘電アクチュエーターを用いる構成としてもよい。例えば第一誘電コイルおよび永久磁石が設けられる構成では、第一誘電コイルに流す電流を入力値として磁力を発生させ、永久磁石との間で発生する引力または斥力により可動部521を変位させる。
【0064】
さらに、静電アクチュエーター54の代わりに圧電アクチュエーターを用いる構成としてもよい。この場合、例えば保持部522に下部電極層、圧電膜、および上部電極層を積層配置させ、下部電極層および上部電極層の間に印加する電圧を入力値として可変させることで、圧電膜を伸縮させて保持部522を撓ませる。
【0065】
さらには、静電アクチュエーター54の代わりに空気圧を利用したアクチュエーターを用いる構成としてもよい。この場合、第一基板51および第二基板52の間を密閉空間とし、密閉空間に空気を導入する空気導入孔を設ける。そして、この空気導入孔に内部の空気圧を可変させるポンプを設け、空気圧を入力値として可変させることで、内圧の変化により可動部521を変位させる。
【0066】
そして、上記実施形態では、ダイヤフラム状の保持部522を例示したが、例えば、梁構造の保持部を複数設け、これらの梁構造の保持部により可動部521を保持する構成としてもよい。この場合、梁構造の保持部の撓みバランスを均一にするため、中心軸Oに対して点対称となる保持部を設けることが好ましい。
また、上記実施形態では第一反射膜と第二反射膜との反射膜間ギャップが、第一電極と第二電極との電極間ギャップに比べて小さい構成の波長可変干渉フィルターの例を示したが、反射膜間ギャップと電極間ギャップとが同じ寸法の構成であっても良い。さらに、反射膜間ギャップが電極間ギャップより大きい波長可変干渉フィルターの構成であってもよい。
【0067】
また、第二実施形態において、第一円偏光板34を設ける構成、第三実施形態において、第一円偏光板34および第二円偏光板35を設ける構成を例示したが、例えば、第一円偏光板34が設けられず、第二円偏光板35のみが設けられる構成などとしてもよい。また、第四実施形態において、第一円偏光板34および第二円偏光板35が設けられる構成を例示したが、第一円偏光板34および第二円偏光板35のうちいずれか一方のみが設けられる構成や、これらの円偏光板34,35が設けられない構成などとしてもよい。
【0068】
また、上記第三実施形態では、第二円偏光板35として、波長可変干渉フィルター5側に面する1/4波長板351と、検出部32側に面する直線偏光板352とを備える構成としたが、これに限定されない。例えば第二円偏光板35は、波長可変干渉フィルター5側に面する直線偏光板と、検出部32側に面する1/4波長板とを備える構成としてもよい。
この場合、直線偏光板は、波長可変干渉フィルター5を透過した右旋光性円偏光波のうち、例えばP偏光波を透過させて、S偏光波を吸収する。そして、直線偏光板を透過したP偏光波は1/4波長板により右旋光性円偏光波に変換されて、検出部32側に射出される。また、検出部32で反射された光成分は、反射により左旋光性円偏光波となっているため、1/4波長板によりS偏光波に変換され、直線偏光板により吸収される。
【0069】
その他、本発明の実施の際の具体的な構造および手順は、本発明の目的を達成できる範囲で他の構造などに適宜変更できる。
【符号の説明】
【0070】
1,1A,1B,1C…光学装置、5…波長可変干渉フィルター、31…テレセントリック光学系、32…検出部、34…第一円偏光板、35…第二円偏光板、36…拡大レンズ系、51…第一基板、52…第二基板、54…本発明のギャップ可変部である静電アクチュエーター、56…第一反射膜、57…第二反射膜、G…測定有効領域。
【技術分野】
【0001】
入射光から所定の波長の光を取り出す波長可変干渉フィルターを備えた光学装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一対の反射膜を互いに対向させ、入射光のうち一対の反射膜により多重干渉されて強め合った所定波長の光のみを透過または反射させる干渉フィルターが知られており、このような干渉フィルターを透過した光をイメージセンサーで撮像する光学装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
この特許文献1に記載の光学装置は、入射光を対物レンズにより、対象物からの光を平行化し、平行化された光を波長可変干渉フィルターに垂直に入射させ、波長可変干渉フィルターを透過した光をイメージセンサーで受光して撮像する装置である。
【0003】
このような光学装置において、目的波長の光をイメージセンサーで受光するためには、波長可変干渉フィルターの分解能を向上させる必要がある。このような波長可変干渉フィルターとして、例えば特許文献2に示すようなフィルターがある。
この特許文献2に記載の波長可変干渉フィルターは、一対の基板を互いに対向させ、このうち一方の基板には、可動部と、可動部を他方の基板に対して進退移動可能に保持するダイヤフラムとが設けられている。そして、この可動部に一対の反射膜のうちの一方の反射膜を形成し、可動部が設けられない他方の基板に、可動部の反射膜に対向する他方の反射膜が形成されている。このような光学フィルター装置では、可動部を進退させることで、一対の反射膜の間のギャップ寸法を変動させることができ、ギャップ寸法に応じた光を取り出すことができるとともに、ダイヤフラムに対して可動部の撓み量が小さくなるため、可動部に設けられた反射膜の撓みも抑えることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−162043号公報
【特許文献2】特開2009−251105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記特許文献2では、可動部がダイヤフラムよりも厚み寸法が大きく形成されているため、可動部を変位させた場合でも、ダイヤフラムの撓み量に対して可動部の撓み量を小さくすることができる。しかしながら、実際には、可動部にも撓みが生じており、その撓み量は、可動部の中心部では小さく、中心から可動部の外周部に向かうに従って大きくなる。また、この撓み量は、波長可変干渉フィルターのサイズにも左右され、例えば波長可変干渉フィルターのサイズが大きい場合、可動部の歪み量も大きくなる。したがって、この可動部上に設けられた反射膜にも撓みが生じ、一対の反射膜間のギャップ寸法が均一とならないため、分解能が低下してしまう。
【0006】
したがって、特許文献1に記載の光学装置において、上記のような波長可変干渉フィルターを用いる場合、波長可変干渉フィルターでの分解能の低下により、測定精度が悪化するという問題がある。また、光学装置において、イメージセンサーのサイズを大きくすることで、より高解像度な画像を取得することができるが、この場合、波長可変干渉フィルターのサイズも大きくする必要がある。しかしながら、上述のように、波長可変干渉フィルターのサイズを大きくすると、可動部の撓み量が増大して分解能が低下し、測定精度が悪化するという問題があった。
【0007】
本発明は、上記のような問題に鑑みて、高精度な分光測定が可能な光学装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の光学装置は、入射光のうち、多重干渉により強め合った光を透過させる波長可変干渉フィルターと、前記波長可変干渉フィルターに前記入射光を導くテレセントリック光学系と、前記波長可変干渉フィルターを透過した光を検出する検出部と、を具備し、前記波長可変干渉フィルターは、第一基板と、前記第一基板に対向し、可動部、および前記可動部の外周を保持して前記可動部を前記第一基板に対して進退移動可能に保持する保持部を備えた第二基板と、前記第一基板に設けられた第一反射膜と、前記可動部に設けられ、前記第一反射膜とギャップを介して対向する第二反射膜と、前記可動部を変位させて前記ギャップの寸法を変化させるギャップ可変部と、を備え、前記第一反射膜および前記第二反射膜には、前記ギャップ可変部により前記可動部の変位量が最大となった際に、測定中心波長を中心に、予め設定された許容値以内となる波長の光を透過可能な測定有効領域が設定され、前記テレセントリック光学系により、前記入射光の主光線が前記第一反射膜の面または前記第二反射膜の面に対して垂直に導かれ、前記測定有効領域内に前記入射光を集光させることを特徴とする。
【0009】
この発明では、テレセントリック光学系が像側テレセントリック光学系であり、テレセントリック光学系から射出された光の主光線が光軸に対して平行で、波長可変干渉フィルターに対して直交するように導光される。さらに、このテレセントリック光学系は、前記主光線が、波長可変干渉フィルターの第一反射膜および第二反射膜により形成されるギャップ領域のうち、測定有効領域内に集光されるように、光を集光する。なお、テレセントリック光学系とは主光線が焦点を通るように配列された光学系をいい、主光線が光軸に対して平行、つまり画角が0度となる光学系である。また、像側テレセントリック光学系とは、像側で主光線と光軸に対して平行となる光学系である。
ここで、測定有効領域は、波長可変干渉フィルターの分解能の低下の許容範囲に抑えられる領域である。つまり、第一反射膜および第二反射膜の間のギャップ領域のうち、この測定有効領域内で多重干渉されて透過された光は、測定中心波長を中心とした許容波長域内の光となる。
したがって、テレセントリック光学系により、波長可変干渉フィルターの測定有効領域に主光線を集光させることで、入射光から精度よく測定中心波長を中心とした波長域内の光を取り出して、検出部で受光させることができる。これにより、例えば平行光を波長可変干渉フィルターに入射させて、ギャップ領域における測定有効領域外をも用いて光を取り出す場合に比べて、波長可変干渉フィルターでの分解能の低下を抑制でき、光学装置において高精度な分光測定を実施することができる。
【0010】
本発明の光学装置では、前記測定有効領域は、前記ギャップ可変部により前記可動部の変位量が最大変位量に設定された際に、前記可動部の中心軸上に沿った前記ギャップの寸法と、前記測定有効領域の外周縁に対向する前記ギャップの寸法との差分値が、前記許容値の半値以下となる領域であることが好ましい。
【0011】
この発明では、ギャップ可変部により可動部を最大変位量だけ変位させた状態で、可動部の中心軸上に対応したギャップ寸法と、測定有効領域の外周縁に対応したギャップ寸法との差をxとし、許容値をλ0とした場合、x=λ0/2の関係を満たす領域内を測定有効領域としている。
つまり、波長可変干渉フィルターでは、ギャップの寸法dと、透過波長λとは、空気の屈折率を1として、d=λ/2として表される。したがって、可動部の中心軸上のギャップ寸法をd1、測定有効領域の外周縁に対応するギャップ寸法をd2とすると、可動部の中心軸を透過する光の波長(測定中心波長)は、λ1=2d1となり、測定有効領域の外周縁を透過する光の波長は、λ2=2d2=2(d1+x)=2(λ1/2+x)となる。
ここで、測定中心波長λ1を中心として許容値λ0以内となる波長域は、λ1−λ0からλ1+λ0の範囲となる。可動部が第一基板に向かって撓む場合、ギャップ寸法がd1より小さくなることはないので、測定有効領域の外周縁を透過した透過光の波長λ2(=2(λ1/2+x))がλ1+λ0以下であれば、測定有効領域を透過する透過光が、測定中心波長λ1を中心とした許容値λ0以内の光となる。すなわち、テレセントリック光学系により、x≦λ0/2となる測定有効領域に入射光を集光させることで、測定中心波長λ1から許容波長λ0以内の光を検出部にて検出させることが可能となる。
【0012】
本発明の光学装置では、前記波長可変干渉フィルターおよび前記検出部の間に、前記波長可変干渉フィルターを透過した透過光を拡大する拡大レンズ系が設けられたことが好ましい。
【0013】
この発明では、テレセントリック光学系により入射光を集光させる構成であるため、波長可変干渉フィルターのサイズの小型化に貢献することができる。これに加え、拡大レンズ系が設けられることで、波長可変干渉フィルターから透過した透過光を拡大して検出部に向かって射出することができる。このような構成では、波長可変干渉フィルターのサイズを大型化することなく、検出部のサイズのみを大きくすることができ、検出精度をより向上させることができる。
【0014】
本発明の光学装置では、前記テレセントリック光学系と前記波長可変干渉フィルターの間に、前記テレセントリック光学系から前記波長可変干渉フィルターに向かう光を透過させ、前記波長可変干渉フィルターから前記テレセントリック光学系に向かう光を吸収する第一円偏光板が設けられたことが好ましい。
【0015】
この発明では、波長可変干渉フィルターとテレセントリック光学系との間に第一円偏光板が設けられている。
一般に、波長可変干渉フィルターでは、第一反射膜および第二反射膜の間で多重干渉されて強め合った光が検出部側に透過されるが、透過しなかった光の成分はほぼ入射側に反射される。このような反射成分がテレセントリック光学系に戻ると、レンズ内およびレンズ間で反射し、ゴーストやフレアなどの原因となり、検出部での検出精度が低下する。
これに対して、本発明では、第一円偏光板により、波長可変干渉フィルターで反射された光が、テレセントリック光学系に戻るのを防止で、ゴーストやモアレの発生を抑え、検出部での検出精度を向上させることができる。
【0016】
本発明の光学装置では、前記波長可変干渉フィルターおよび前記検出部の間に、前記波長可変干渉フィルターから前記検出部に向かう光を透過させ、前記検出部から前記波長可変干渉フィルターに向かう光を吸収する第二円偏光板が設けられたことが好ましい。
【0017】
この発明では、波長可変干渉フィルターと、検出部との間に第二円偏光板が設けられており、検出部で反射された光が波長可変干渉フィルターに戻り、さらに正反射して検出部に戻る不都合を防止することができる。
また、第一円偏光板と第二円偏光板との双方を用いてもよく、この場合、第一円偏光板の直線偏光板の偏光方向と、第二円偏光板の直線偏光板の偏光方向とを揃える。これにより、波長可変干渉フィルターで反射された光のテレセントリック光学系への戻り、検出部で反射された光の波長可変干渉フィルターを経て検出部への戻りをそれぞれ防止することができ、より検出精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る第一実施形態の光学装置の概略構成を示す図である。
【図2】第一実施形態の波長可変干渉フィルターの概略構成を示す断面図である。
【図3】第一電極および第二電極の間に電極が印可され、可動部が第一基板側に最大量撓んだ状態で、図2において二点鎖線Aの部分を拡大した拡大図である。
【図4】第一実施形態の光学装置において、テレセントリック光学系により導光された光束の光路を示す図である。
【図5】テレセントリック光学系から射出された光束の光線形状の概略を示した図である。
【図6】主光線の傾きに対する、波長可変干渉フィルターを透過した透過光のピーク波長変動量を示す図である。
【図7】第二実施形態の光学装置のテレセントリック光学系により導光された光束の光路を示す図である。
【図8】第三実施形態の光学装置のテレセントリック光学系により導光された光束の光路を示す図である。
【図9】第四実施形態の光学装置のテレセントリック光学系により導光された光束の光路を示す図である。
【図10】テレセントリック光学系の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[第一実施形態]
以下、本発明に係る第一実施形態について、図面に基づいて説明する。
〔1.光学装置の全体構成〕
図1は、本発明に係る実施形態の光学装置1の概略構成を示す図である。
この光学装置1は、図1に示すように、光センサー3と、制御装置4と、を備えている。そして、この光学装置1は、分光カメラ装置であり、測定対象2の像を検出部32で撮像し、分光された光量分布特性を測定する装置である。
【0020】
〔2.光センサーの構成〕
光センサー3は、図1に示すように、波長可変干渉フィルター5と、波長可変干渉フィルター5に光を導くテレセントリック光学系31と、波長可変干渉フィルター5を透過した光を受光する検出部32と、波長可変干渉フィルター5で透過させる光の波長を可変する電圧制御回路33と、を備えている。
【0021】
(2−1.波長可変干渉フィルターの構成)
図2は、波長可変干渉フィルターの概略構成を示す断面図である。
波長可変干渉フィルター5は、図2に示すように、第一基板51、および第二基板52を備えている。これらの2枚の基板51,52は、それぞれ例えば、ソーダガラス、結晶性ガラス、石英ガラス、鉛ガラス、カリウムガラス、ホウケイ酸ガラス、無アルカリガラスなどの各種ガラスや、水晶など、可視光域の光を透過可能な素材により形成されている。そして、これらの2つの基板51,52は、外周縁に沿って形成される接合面513,523同士が、例えばシロキサンを主成分とするプラズマ重合膜53により接合されることで、一体的に構成されている。
【0022】
また、第一基板51と、第二基板52との間には、第一反射膜56および第二反射膜57が設けられる。ここで、第一反射膜56は、第一基板51の第二基板52に対向する面に固定され、第二反射膜57は、第二基板52の第一基板51に対向する面に固定されている。また、これらの第一反射膜56および第二反射膜57は、ギャップを介して対向配置されている。ここで、第一反射膜56および第二反射膜57により挟まれる空間をギャップ領域と称す。そして、波長可変干渉フィルター5は、このギャップ領域で入射光を多重干渉させ、互いに強め合った光を透過させる。
【0023】
さらに、第一基板51と第二基板52との間には、ギャップの寸法を調整するための、本発明のギャップ可変部である静電アクチュエーター54が設けられている。この静電アクチュエーター54は、第一基板51に設けられる第一電極541と、第二基板52に設けられる第二電極542とにより構成されている。
【0024】
(2−1−1.第一基板の構成)
第一基板51は、第二基板52に対向する対向面に、電極溝511およびミラー固定部512が、エッチングにより形成されている。
電極溝511は、図示は省略するが、基板厚み方向から第一基板51を見たフィルター平面視において、平面中心点を中心とするリング形状に形成されている。
ミラー固定部512は、電極溝511と同軸上で、第二基板52に向かって突出する円筒状に形成されている。
【0025】
電極溝511の溝底面には、静電アクチュエーター54を構成するリング状の第一電極541が形成されている。また、この第一電極541は、配線溝に沿って延出される第一電極線(図示略)が、第一基板51の外周部に向かって形成されている。そして、この第一電極線の先端が電圧制御回路33に接続されている。
【0026】
また、ミラー固定部512の第二基板52に対向する面には、第一反射膜56が固定されている。この第一反射膜56は、例えばSiO2、TiO2を積層することで構成された誘電体多層膜であってもよく、Ag合金などの金属膜により構成されるものであってもよい。また、誘電体多層膜と金属膜との双方が積層された構成であってもよい。
【0027】
そして、第一基板51の電極溝511の外方には、第一接合面513が形成されている。この第一接合面513には、上述したように、第一基板51および第二基板52を接合するプラズマ重合膜53が形成されている。
【0028】
(2−1−2.第二基板の構成)
第二基板52は、第一基板51に対向しない面がエッチングにより加工されることで、
形成される。この第二基板52は、基板中心点を中心とした円形筒状の可動部521と、可動部521と同軸であり可動部521を保持する保持部522と、を備えている。ここで、この保持部522の外周径寸法は、第一基板51の電極溝511の外周径寸法と同一寸法に形成されている。
【0029】
可動部521は、撓みを防止するために、保持部522よりも厚み寸法が大きく形成されている。
保持部522は、可動部521の周囲を囲うダイヤフラムであり、例えば厚み寸法が50μmに形成されている。なお、本実施形態では、ダイヤフラム状の保持部522を例示するが、例えば、可動部の中心に対して点対象となる位置に設けられる複数対の梁構造を有する保持部が設けられる構成などとしてもよい。
【0030】
保持部522の第一基板51に対向する面には、第一電極541に所定の間隔をあけて対向する、リング状の第二電極542が形成されている。ここで、上述したように、この第二電極542および前述した第一電極541により、静電アクチュエーター54が構成される。
また、第二電極542の外周縁の一部からは、第二基板52の外周部に向かって、第二電極線(図示略)が形成され、この第二電極線の先端が、電圧制御回路33に接続される。
【0031】
可動部521の第一基板51に対向する面には、ギャップを介して第一反射膜56に対向する第二反射膜57が形成されている。なお、第二反射膜57の構成は、第一反射膜56と同一であるため、ここでの説明は省略する。
【0032】
(2−1−3.電圧印可時の波長可変干渉フィルターの動作と測定有効領域)
図3は、第一電極541および第二電極542の間に電極が印可され、可動部521が第一基板51側に撓んだ状態での、図2の二点鎖線部分Aを拡大した拡大図である。
図2に示す初期状態において、電圧制御回路33から、第一電極541および第二電極542間に駆動電圧が印可されると、第二基板52の可動部521は、図3に示すように、静電引力により、第一基板51側に変位する。
【0033】
この時、可動部521は、ダイヤフラム状の保持部522に対して厚み寸法が大きく形成されているので、撓みにくい形状となっているが、実際には、保持部522の撓みにより微小量の撓みが発生する。ここで、可動部521の撓み量は、可動部521の中心軸Oから距離が離れるに従って大きくなる。したがって、可動部521の外周部では、可動部521上に形成された第二反射膜57と、対向する第一反射膜56との間のギャップ寸法も増大してしまう。この場合、ギャップ領域のうち、可動部521の中心軸O上を透過した光のピーク波長と、ギャップ領域の外周部を透過した光のピーク波長とにずれが生じ、波長可変干渉フィルター5の分解能が低下してしまう。
【0034】
検出部32での検出精度を向上させるためには、上記のようなピーク波長のずれを、予め設定された許容値以内に抑える必要がある。本発明では、ギャップ領域のうち、ピーク波長のずれを許容値以内に抑えることができる領域を測定有効領域Gとし、テレセントリック光学系31により、この測定有効領域G(図2、図3において、第一反射膜56および第二反射膜57の面の一点鎖線で挟まれた領域)内に入射光を集光させる。これにより、測定有効領域G内を透過した光のみを検出部32で検出させる。
【0035】
ここで、測定有効領域Gは、可動部521の中心軸O上を透過する光の測定中心波長λ1を中心として許容値λ0以内の波長の光を透過可能な領域であるとした場合、可動部521を第一基板51側に最大変位させた状態で、可動部521の厚み方向の撓み量がλ0/2以下となる領域となる。つまり、可動部521の中心軸O上のギャップ寸法をd1、測定有効領域Gの外周縁におけるギャップ寸法をd2とすると、下記式(1)が成立する。
【0036】
[数1]
d2−d1=λ0/2 …(1)
【0037】
また、許容値λ0としては、光学装置1の用途により適宜設定されるが、例えば一般的なイメージセンサーとして可視光域の分光スペクトル分布を測定する場合では、許容値を5nm以内に設定することが好ましく、赤外光を用いる場合では、許容値を10nm以内に設定することが好ましい。したがって、波長可変干渉フィルター5では、可動部521を最大変位させた際に、2.5〜5nm以下の撓み量となる領域を測定有効領域Gとして設定することが好ましい。
【0038】
(2−2.テレセントリック光学系の構成)
テレセントリック光学系31は、測定対象2からの入射光を波長可変干渉フィルター5に導く光学系であり、複数のレンズ等の光学部品により構成されている。
図4は、テレセントリック光学系31により導光された光束の光路を示す図である。図5は、テレセントリック光学系31から射出された光束の光線形状の概略を示した図である。
【0039】
テレセントリック光学系31は、光学装置1により撮像可能な範囲(画角)から入射された光を、複数のレンズを通して波長可変干渉フィルター5に導光する。ここで、テレセントリック光学系31は、対象物側から光学装置1に入射した光を、図5に示すようなコーン型の光束に変換する。また、このテレセントリック光学系31は、射出された光の主光線が光軸に平行で、かつ波長可変干渉フィルター5の第一基板51(第一反射膜56)に対して直交するように射出する。さらに、テレセントリック光学系31は、撮像可能な画角範囲内に入射した光が、波長可変干渉フィルター5の測定有効領域G内に集光されるように導光する。
【0040】
なお、ここで述べる直交とは、波長可変干渉フィルター5を透過した透過光のピーク波長にずれが生じない程度の角度であればよい。図6は、主光線の傾きに対する、波長可変干渉フィルターを透過した透過光のピーク波長変動量を示す図である。図6において、波長可変干渉フィルターに入射するコーン型の光束の片側勾配は、図5に示すように5度に設定されているものとする。
図6に示すように、波長可変干渉フィルター5から透過された透過光のピーク波長は、入射角度の変動量が大きくなるにしたがって、大きく変化する。また、波長が大きくなるに従って、ピーク波長の変動量も増大する。したがって、テレセントリック光学系31のレンズ設計においては、波長可変干渉フィルター5により透過させたい波長域に対して、どの程度のピーク波長の変動量を許容できるかにより、適宜設定されればよい。
例えば、1100nmの光を波長可変干渉フィルター5に入射させる場合、入射角度が2.7度ずれることで、ピーク波長が1nm変動してしまう。したがって、1100nm以下の波長域に対して波長可変干渉フィルター5により分光させる際、主光線の入射角度によるピーク波長の変動量を1nm以下に抑えたい場合では、テレセントリック光学系31から射出された光束の主光線の傾きを2.7度以内に抑える必要がある。
【0041】
(2−3.検出部の構成)
図1に戻り、検出部32は、テレセントリック光学系31の焦点面に設けられており、画角内の像の画像光がテレセントリック光学系31により導光され、検出部32において結像されて、撮像される。
この検出部32は、アレイ状に配列される複数の検出素子(図示略)を備えている。これらの検出素子は、例えばCCD(Charge Coupled Device)素子などの、光電交換素子により構成されており、受光した光の光量に応じた電気信号を生成して制御装置4に出力する。この検出部32は、テレセントリック光学系31の焦点面に設けられている。
【0042】
(2−4.電圧制御回路の構成)
電圧制御回路33は、制御装置4の制御により、静電アクチュエーター54の第一電極541および第二電極542に印加する電圧を制御する。
【0043】
〔3.制御装置の構成〕
制御装置4は、光学装置1の全体動作を制御する。
この制御装置4は、記憶部41やCPU(Central Processing Unit)42等により構成されるコンピューターであり、例えば汎用パーソナルコンピューターや、携帯情報端末、その他、測定専用コンピューターなどを用いることができる。
そして、制御装置4は、CPU42上で実行されるソフトウェアとして、駆動制御部421と、光量取得部422と、強度分布測定部423とを備えている。
【0044】
記憶部41は、CPU42上で実施する各種プログラムや、各種データが記憶されている。また、記憶部41は、静電アクチュエーター54に印加する駆動電圧に対する検出部32で検出される透過光の波長を示す相関データを記憶している。
【0045】
次に、CPU42上で実行される各ソフトウェアである駆動制御部421、光量取得部422、および強度分布測定部423について説明する。
【0046】
駆動制御部421は、記憶部41に記憶された相関データに基づいて、検出部32で測定対象光を受光可能な電圧値(入力値)を取得し、取得した電圧値を電圧制御回路33に出力して、波長可変干渉フィルター5のギャップの間隔を変動させる。
光量取得部422は、検出部32の各検出素子で検出された受光量を取得する。取得した受光量は、検出素子の位置データに関連付けて記憶部41に記憶される。
強度分布測定部423は、光量取得部422により取得された、各検出素子で検出された測定対象光の光量に基づいて、光強度分布図を作成する。
例えば、強度分布測定部423は、各検出素子の座標位置に対応した画素を有する光強度分布図を作成し、各画素に対応する検出素子での受光量に応じて、各画素の色や、濃淡等を設定する。
【0047】
(第一実施形態の作用効果)
上述したような第一実施形態の光学装置1では、入射光を波長可変干渉フィルター5に導くテレセントリック光学系31と、波長可変干渉フィルター5と、検出部32とを備えている。そして、テレセントリック光学系31は、像側テレセントリック光学系であり、主光線が光軸に平行で、第一反射膜56の面に対して直交する光束を波長可変干渉フィルター5に向かって射出する。また、テレセントリック光学系31は、画角の範囲内の入射光を、透過光の波長が測定中心波長λ1から許容値λ0以内となる測定有効領域Gに入射させる。
具体的には、テレセントリック光学系31は、可動部521が最大変位した状態で、可動部521の中心軸O上のギャップ寸法をd1とした際、ギャップ寸法d2がd1≦d2<d1+λ0以下となる領域に、画角範囲内の入射光を入射させる。
【0048】
このため、波長可変干渉フィルター5は、測定中心波長を中心として許容値λ0範囲内の波長の光を透過することができ、分解能を向上させることができる。また、このような透過光を検出部32で受けることで、画像光の正確な分光特性の測定を実施することができ、測定精度を向上させることができる。
【0049】
[第二実施形態]
次に本発明の第二実施形態について、図面に基づいて説明する。
図7は、本発明の第二実施形態に係る光学装置のテレセントリック光学系により導光された光束の光路を示す図である。
第二実施形態の光学装置1Aでは、図7に示すように、第一実施形態の光学装置1におけるテレセントリック光学系31と波長可変干渉フィルター5との間に、第一円偏光板34が設けられている。
【0050】
この第一円偏光板34は、テレセントリック光学系31側に面する直線偏光板341と、波長可変干渉フィルター5側に面する1/4波長板342とを組み合わせることで構成されている。
このような第一円偏光板34では、直線偏光板341で、テレセントリック光学系31から入射した光のうち、例えばP偏光波のみを透過し、S偏光波を吸収する。また、1/4波長板342では、透過されたP偏光波を円偏光(右旋光性円偏光波)にして波長可変干渉フィルター5に向かって射出する。
一方、波長可変干渉フィルター5では、多重干渉により強め合った光は透過光として検出部32側に透過されるが、その他の波長の光は、ほぼテレセントリック光学系31側に反射される。
この時、反射波は、旋回方向が逆転する。例えば、本実施形態では、1/4波長板342により右旋光性円偏光波に変換されているので、反射波は左旋光性円偏光波となる。このような左旋光性円偏光波は、第一円偏光板34の1/4波長板342に入射すると、S偏光波に変換され、直線偏光板341により吸収され、テレセントリック光学系31側に透過しない。
【0051】
(第二実施形態の作用効果)
上述したような第二実施形態の光学装置1Aでは、テレセントリック光学系31と、波長可変干渉フィルター5との間に、第一円偏光板34が設けられ、この第一円偏光板34は、テレセントリック光学系31に面する直線偏光板341と、波長可変干渉フィルター5に面する1/4波長板342とを組み合わせることで構成されている。
このため、第一円偏光板34は、テレセントリック光学系31から波長可変干渉フィルター5に向かって入射光を透過させることができ、波長可変干渉フィルター5で反射された光を吸収することができる。これにより、テレセントリック光学系31に波長可変干渉フィルター5で反射された光が戻ることがなく、このような反射波がテレセントリック光学系のレンズ内やレンズ間で反射することで生じるモアレやゴーストなどの発生も防止できる。したがって、検出部32での光量測定精度の低下を抑制することができる。
【0052】
[第三実施形態]
次に、本発明に係る第三実施形態の光学装置について、図面に基づいて説明する。
図8は、第三実施形態の光学装置1Bの概略構成を示す図である。
第三実施形態の光学装置1Bでは、図8に示すように、第二実施形態の光学装置1Aにおいて、さらに、波長可変干渉フィルター5と検出部32との間に、第二円偏光板35が設けられている。
【0053】
この第二円偏光板35は、波長可変干渉フィルター5側に面する1/4波長板351と、検出部32側に面する直線偏光板352とを組み合わせることで構成されている。ここで、直線偏光板352は、第一円偏光板34の直線偏光板341と同一偏光方向を有しており、P偏光波を透過させる。
【0054】
波長可変干渉フィルター5には、第一円偏光板34により右旋光性円偏光波が入射され 波長可変干渉フィルター5には、第一円偏光板34により右旋光性円偏光波が入射される。そして、第二円偏光板35では、波長可変干渉フィルター5を透過した右旋光性円偏光波を、1/4波長板351で、直線偏光(P偏光波)に変換する。変換された直線偏光波は、直線偏光板352を透過して検出部32側に射出される。
一方、検出部32で反射された光成分は、第二円偏光板35を透過し、波長可変干渉フィルター5で反射される。この反射光は第二円偏光板35の直線偏光板352に吸収され、検出部32への戻りが防止される。
【0055】
(第三実施形態の作用効果)
上述したような第二実施形態の光学装置1Bでは、波長可変干渉フィルター5と、検出部32との間に、第二円偏光板35が設けられ、この第二円偏光板35は、波長可変干渉フィルター5に面する1/4波長板351と、検出部32側に面する直線偏光板352とを組み合わせることで構成されている。
このため、第二円偏光板35は、波長可変干渉フィルター5から検出部32に向かって入射光を透過させることができ、検出部32で反射された光を吸収することができる。これにより、波長可変干渉フィルター5に検出部32で反射された光が戻ることがなく、このような反射波が波長可変干渉フィルター5のギャップ内で再び多重干渉されることがないので、検出部32での光量測定精度の低下を抑制することができる。
【0056】
[第四実施形態]
次に本発明に係る第四実施形態の光学装置1Cについて、図面に基づいて説明する。
図9は、第四実施形態の光学装置1Cの概略構成を示す図である。
図9に示すように、第四実施形態の光学装置1Cは、第三実施形態の光学装置1Bを変形したものであり、第二円偏光板35と検出部32との間に、拡大レンズ系36が設けられている。
また、光学装置1Cでは、波長可変干渉フィルター5がテレセントリック光学系31の焦点面に設けられており、検出部32は、拡大レンズ系36の焦点面に設けられている。
【0057】
このような光学装置1Cでは、波長可変干渉フィルター5を透過した光を拡大レンズ系36により拡大して検出部32で検出させる。このような構成では、波長可変干渉フィルター5に対して、検出部32のサイズを大きくすることができ、より多くの検出素子により高解像度の画像を取得することができる。したがって、より正確で詳細な分光分布測定を実施することができる。
【0058】
すなわち、第一、第二、および第三実施形態の光学装置1,1A,1Bでは、波長可変干渉フィルター5における測定有効領域Gのサイズと、検出部32のサイズとを同程度にする必要がある。このため、検出部32のサイズを大きくすると、波長可変干渉フィルター5のサイズも大きくする必要がある。
ここで、本発明では、分解能の低下が許容値以内となる測定有効領域Gを設定するため、検出部32のサイズに合わせて、測定有効領域Gのサイズを、検出部32に合わせて拡大する必要がある。しかしながら、測定有効領域Gのサイズを大きくするために、波長可変干渉フィルター5のサイズを大きくする場合、可動部521の撓み量が拡大量に応じて増大してしまう。このため、例えば、測定有効領域Gを1.5倍のサイズにするために、例えばフィルターサイズを2倍にする必要があるなど、測定有効領域のサイズ拡大量に比べて波長可変干渉フィルター5のサイズ拡大量を大きくする必要が生じるという問題がある。
また、これに加え、波長可変干渉フィルター5のサイズを大きくした場合、可動部521を変位させるための電力も大きくなり、保持部522の応力バランスを均一に保持することも困難となるので、可動部521を均一に変位させるための制御も困難となる。
【0059】
これに対して、本実施形態では、拡大レンズ系36により透過光を拡大して検出部32で受光させる構成であるため、波長可変干渉フィルター5のサイズを大型化する必要がなく、検出部32に対して小さいサイズの波長可変干渉フィルター5を用いることができる。
【0060】
(第四実施形態の作用効果)
上述したように、第四実施形態の光学装置1Cでは、波長可変干渉フィルター5と検出部32との間に拡大レンズ系36が設けられている。このため、波長可変干渉フィルター5のサイズを大型化することなく、検出部32のサイズを拡大することができる。したがって、波長可変干渉フィルター5を大型化することによる、分解能低下や、消費電力の増大、可動部521の制御等の問題がなく、容易に大サイズの検出部32により高精度な分光分布測定を実施することができる。
【0061】
〔他の実施形態〕
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【0062】
例えば、第一実施形態において、テレセントリック光学系31内に絞りが設けられる構成図を図2に示したが、これに限定されない。テレセントリック光学系31を構成するレンズ群としては、光学装置1で撮像可能な画角範囲内の入射光を、測定有効領域G内に集光させ、かつその主光線が互いに平行で、波長可変干渉フィルター5に垂直に入射すれば、いかなる光学部材により構成されていてもよく、その光学部材の数や種類は限定されない。例えば、図10に示すような構成のテレセントリック光学系が設けられていてもよい。
【0063】
また、上記実施形態では、ギャップ可変部として、第一電極541および第二電極542の間に電圧が印可されることで、保持部522を撓ませて可動部521を変位させる静電アクチュエーター54を例示したがこれに限らない。
例えば、第一電極541の代わりに、第一誘電コイルを配置し、第二電極の代わりに第二誘電コイルまたは永久磁石を配置した誘電アクチュエーターを用いる構成としてもよい。例えば第一誘電コイルおよび永久磁石が設けられる構成では、第一誘電コイルに流す電流を入力値として磁力を発生させ、永久磁石との間で発生する引力または斥力により可動部521を変位させる。
【0064】
さらに、静電アクチュエーター54の代わりに圧電アクチュエーターを用いる構成としてもよい。この場合、例えば保持部522に下部電極層、圧電膜、および上部電極層を積層配置させ、下部電極層および上部電極層の間に印加する電圧を入力値として可変させることで、圧電膜を伸縮させて保持部522を撓ませる。
【0065】
さらには、静電アクチュエーター54の代わりに空気圧を利用したアクチュエーターを用いる構成としてもよい。この場合、第一基板51および第二基板52の間を密閉空間とし、密閉空間に空気を導入する空気導入孔を設ける。そして、この空気導入孔に内部の空気圧を可変させるポンプを設け、空気圧を入力値として可変させることで、内圧の変化により可動部521を変位させる。
【0066】
そして、上記実施形態では、ダイヤフラム状の保持部522を例示したが、例えば、梁構造の保持部を複数設け、これらの梁構造の保持部により可動部521を保持する構成としてもよい。この場合、梁構造の保持部の撓みバランスを均一にするため、中心軸Oに対して点対称となる保持部を設けることが好ましい。
また、上記実施形態では第一反射膜と第二反射膜との反射膜間ギャップが、第一電極と第二電極との電極間ギャップに比べて小さい構成の波長可変干渉フィルターの例を示したが、反射膜間ギャップと電極間ギャップとが同じ寸法の構成であっても良い。さらに、反射膜間ギャップが電極間ギャップより大きい波長可変干渉フィルターの構成であってもよい。
【0067】
また、第二実施形態において、第一円偏光板34を設ける構成、第三実施形態において、第一円偏光板34および第二円偏光板35を設ける構成を例示したが、例えば、第一円偏光板34が設けられず、第二円偏光板35のみが設けられる構成などとしてもよい。また、第四実施形態において、第一円偏光板34および第二円偏光板35が設けられる構成を例示したが、第一円偏光板34および第二円偏光板35のうちいずれか一方のみが設けられる構成や、これらの円偏光板34,35が設けられない構成などとしてもよい。
【0068】
また、上記第三実施形態では、第二円偏光板35として、波長可変干渉フィルター5側に面する1/4波長板351と、検出部32側に面する直線偏光板352とを備える構成としたが、これに限定されない。例えば第二円偏光板35は、波長可変干渉フィルター5側に面する直線偏光板と、検出部32側に面する1/4波長板とを備える構成としてもよい。
この場合、直線偏光板は、波長可変干渉フィルター5を透過した右旋光性円偏光波のうち、例えばP偏光波を透過させて、S偏光波を吸収する。そして、直線偏光板を透過したP偏光波は1/4波長板により右旋光性円偏光波に変換されて、検出部32側に射出される。また、検出部32で反射された光成分は、反射により左旋光性円偏光波となっているため、1/4波長板によりS偏光波に変換され、直線偏光板により吸収される。
【0069】
その他、本発明の実施の際の具体的な構造および手順は、本発明の目的を達成できる範囲で他の構造などに適宜変更できる。
【符号の説明】
【0070】
1,1A,1B,1C…光学装置、5…波長可変干渉フィルター、31…テレセントリック光学系、32…検出部、34…第一円偏光板、35…第二円偏光板、36…拡大レンズ系、51…第一基板、52…第二基板、54…本発明のギャップ可変部である静電アクチュエーター、56…第一反射膜、57…第二反射膜、G…測定有効領域。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射光のうち、多重干渉により強め合った光を透過させる波長可変干渉フィルターと、
前記波長可変干渉フィルターに前記入射光を導くテレセントリック光学系と、
前記波長可変干渉フィルターを透過した光を検出する検出部と、を具備し、
前記波長可変干渉フィルターは、
第一基板と、
前記第一基板に対向し、可動部、および前記可動部の外周を保持して前記可動部を前記第一基板に対して進退移動可能に保持する保持部を備えた第二基板と、
前記第一基板に設けられた第一反射膜と、
前記可動部に設けられ、前記第一反射膜とギャップを介して対向する第二反射膜と、
前記可動部を変位させて前記ギャップの寸法を変化させるギャップ可変部と、
を備え、
前記第一反射膜および前記第二反射膜には、前記ギャップ可変部により前記可動部の変位量が最大となった際に、測定中心波長を中心に、予め設定された許容値以内となる波長の光を透過可能な測定有効領域が設定され、
前記テレセントリック光学系により、前記入射光の主光線が前記第一反射膜の面または前記第二反射膜の面に対して垂直に導かれ、前記測定有効領域内に前記入射光を集光させる
ことを特徴とする光学装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光学装置において、
前記測定有効領域は、前記ギャップ可変部により前記可動部の変位量が最大変位量に設定された際に、前記可動部の中心軸上に沿った前記ギャップの寸法と、前記測定有効領域の外周縁に対向する前記ギャップの寸法との差分値が、前記許容値の半値以下となる領域である
ことを特徴とする光学装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の光学装置において、
前記波長可変干渉フィルターおよび前記検出部の間に、前記波長可変干渉フィルターを透過した透過光を拡大する拡大レンズ系が設けられた
ことを特徴とする光学装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の光学装置において、
前記テレセントリック光学系と前記波長可変干渉フィルターの間に、前記テレセントリック光学系から前記波長可変干渉フィルターに向かう光を透過させ、前記波長可変干渉フィルターから前記テレセントリック光学系に向かう光を吸収する第一円偏光板が設けられた
ことを特徴とする光学装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の光学装置において、
前記波長可変干渉フィルターおよび前記検出部の間に、前記波長可変干渉フィルターから前記検出部に向かう光を透過させ、前記検出部から前記波長可変干渉フィルターに向かう光を吸収する第二円偏光板が設けられた
ことを特徴とする光学装置。
【請求項1】
入射光のうち、多重干渉により強め合った光を透過させる波長可変干渉フィルターと、
前記波長可変干渉フィルターに前記入射光を導くテレセントリック光学系と、
前記波長可変干渉フィルターを透過した光を検出する検出部と、を具備し、
前記波長可変干渉フィルターは、
第一基板と、
前記第一基板に対向し、可動部、および前記可動部の外周を保持して前記可動部を前記第一基板に対して進退移動可能に保持する保持部を備えた第二基板と、
前記第一基板に設けられた第一反射膜と、
前記可動部に設けられ、前記第一反射膜とギャップを介して対向する第二反射膜と、
前記可動部を変位させて前記ギャップの寸法を変化させるギャップ可変部と、
を備え、
前記第一反射膜および前記第二反射膜には、前記ギャップ可変部により前記可動部の変位量が最大となった際に、測定中心波長を中心に、予め設定された許容値以内となる波長の光を透過可能な測定有効領域が設定され、
前記テレセントリック光学系により、前記入射光の主光線が前記第一反射膜の面または前記第二反射膜の面に対して垂直に導かれ、前記測定有効領域内に前記入射光を集光させる
ことを特徴とする光学装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光学装置において、
前記測定有効領域は、前記ギャップ可変部により前記可動部の変位量が最大変位量に設定された際に、前記可動部の中心軸上に沿った前記ギャップの寸法と、前記測定有効領域の外周縁に対向する前記ギャップの寸法との差分値が、前記許容値の半値以下となる領域である
ことを特徴とする光学装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の光学装置において、
前記波長可変干渉フィルターおよび前記検出部の間に、前記波長可変干渉フィルターを透過した透過光を拡大する拡大レンズ系が設けられた
ことを特徴とする光学装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の光学装置において、
前記テレセントリック光学系と前記波長可変干渉フィルターの間に、前記テレセントリック光学系から前記波長可変干渉フィルターに向かう光を透過させ、前記波長可変干渉フィルターから前記テレセントリック光学系に向かう光を吸収する第一円偏光板が設けられた
ことを特徴とする光学装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の光学装置において、
前記波長可変干渉フィルターおよび前記検出部の間に、前記波長可変干渉フィルターから前記検出部に向かう光を透過させ、前記検出部から前記波長可変干渉フィルターに向かう光を吸収する第二円偏光板が設けられた
ことを特徴とする光学装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2012−103208(P2012−103208A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−254066(P2010−254066)
【出願日】平成22年11月12日(2010.11.12)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月12日(2010.11.12)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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