説明

光学記録用色素及び光学記録媒体

【課題】青色レーザー等の短波長レーザー光を使用し、高感度、高耐久性、高速記録に適する光学記録用色素及び光学記録媒体を提供する。
【解決手段】ビススチリル骨格を有するシアニン色素からなるカチオン成分とアゾ系金属錯体からなるアニオン成分とを含み、一般式1で示される光学記録用色素及びこの色素を含む記録層を有する光学記録媒体。(一般式1)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学記録用色素等に関し、より詳しくは、アゾ系金属錯体をアニオンに持つ、新規なビススチリル色素からなる光学記録用色素及び該色素を用いた光学記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来提案されている光学記録媒体としては、光磁気記録媒体、相変化記録媒体、カルコゲン酸化物光記録媒体、有機色素系光記録媒体、等がある。これらの中で、安価でプロセス上容易であるという点で有機色素系光学記録媒体は有意性を有するものと考えられている。有機色素系光学記録媒体としては、反射率の高い金属層を有機色素層の上に積層したタイプのCD−R、DVD−Rが、量産化され広く知られている。これらは780nm乃至650nmのレーザ波長を用いている。
【0003】
近年、より発振波長の短い青色半導体レーザの開発が進められている。短波長のレーザを用いるとより高密度の記録が可能となるため、青色レーザに適した色素及び色素系光学記録媒体の開発が求められていた。例えば、シアニン及びスチリル色素を使用した青色レーザ用記録材料としては、特許文献1、特許文献2、特許文献3及び特許文献4等が挙げられる。
また、シアニン系色素のアニオン部分をアゾ金属錯体で光安定化し、記録材料として使用する手法としては、例えば、特許文献5、特許文献6及び特許文献7で報告されている。
【0004】
【特許文献1】特開平10−151854号公報
【特許文献2】特開平11−314460号公報
【特許文献3】特開2000−263938号公報
【特許文献4】特開2002−96558号公報
【特許文献5】特許第3364231号公報(WO98/29251)
【特許文献6】特許3441410号公報
【特許文献7】特開2000−198273号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述した特許文献1〜特許文献4においては、青色レーザ用記録材料として重要な再生光耐久性に関する具体的な検討がなされていない。
また、特許文献5〜特許文献7においては、すべて、従来の半導体レーザ(780nmや、650nm近傍)での記録特性、若しくは、太陽光暴露を想定した光安定性等についての言及であり、これらも青色半導体レーザ(405nm近傍)での再生耐久性について検討がなされていない。
【0006】
尚、青色半導体レーザ(405nm近傍)の光は、そもそも高エネルギーの励起光源となり、従来の半導体レーザよりは、はるかに有機化合物の光反応や褪色を引き起こす可能性が高いと考えられる。さらに、そのレーザ光を集光して行う再生光耐久性試験は、劣化をさらに加速するものということが可能である。
【0007】
青色半導体レーザによる記録再生が必要な次世代有機色素系光学記録媒体に用いられる有機記録材料を考えた場合、従来のCD−R、DVD−Rで使用されている記録再生波長よりも、短波長側に極大吸収を持つ材料を使用すると紫外線の波長域に極大吸収を持つことになり、紫外線等に対する光安定性を確保しにくいこと、さらには、紫外線の波長域に極大吸収を持つ色素は、一般的に可視光域に極大吸収を持つ色素に比べ、分子量が小さく、分子設計に制限がある等の問題点がある。
【0008】
そこで、本発明者らは先に特開2002−74740号公報において、シアニン系、スチリル系、アゾ系色素等が、記録再生波長よりも長波側に極大吸収を持つ有機色素であっても、有機記録材料として、極めて優れた記録特性を有していることを示した。
しかしながら、青色レーザでの再生劣化の度合いは、従来の赤色レーザ(780nm、650nm)に比べて格段に高く、従来の記録特性に影響しない光安定化剤を加える方法では、再生耐久性を確保しようとすると多量に添加する必要があり、十分ではなかった。さらに、記録レーザに余裕を持たせたり、より高速な記録を実現するためには青色レーザに対し反応し易い(すなわち高記録感度の)色素が望ましいが、このとき再生耐久性がより困難になるという問題があった。このように、青色レーザでの高記録感度と再生耐久性を両立した実用性に耐え得る有機記録材料の提案が望まれていた。
【0009】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものである。
即ち、本発明の目的は、青色レーザで、まず、高記録感度と再生耐久性を両立した実用性に耐え得る光学記録用色素を提供することにある。
さらに、良好な高密度記録特性を実現できる光学記録用色素をも提供することにある。
また、本発明の他の目的は、青色レーザで高記録感度が得られる光学記録媒体を提供することにある。
【0010】
なお、ここで、高記録感度とは、レーザ波長405nm、NA0.65において、線速度6.61m/sを用いたときのHD DVD−R規格に準拠した記録で8mW以下であることを目安とする。これは2倍速記録(13.22m/s)を行ったときに記録感度が1倍速の√2倍となることを考慮して、一般的な青色半導体レーザの出せる記録パワー12mW以下で2倍速記録ができることを意味する。
また、「良好な記録特性」とは、記録信号のC/N値(例えば、後述のPRSNR)等を指標とする記録特性を意味する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そこで、本発明者等は鋭意検討の結果、後述する一般式1乃至一般式5で表されるビススチリル骨格を有するシアニン色素とアゾ系色素により、再生耐久性に優れ、かつ高速記録感度の光学記録媒体を提供できることを見出し、本発明に到達した。
前述したように、青色レーザ用記録材料として必要な要求特性として、良好な記録特性、十分な再生光耐久性、高速記録に適した記録感度の3つが挙げられるが、本発明では、これら要求特性を同時に満たすために、カチオン成分およびアニオン成分にそれぞれ機能を分担させ、その組み合わせによって、これらの3つの要求特性を同時に満たし、さらにそれらの組み合わせによる格段の効果が望める可能性があることを見出した。
【0012】
例えば、カチオン成分であるシアニン化合物に、薄膜の極大吸収値が、400乃至450nm付近のLOW TO HIGH型の記録メカニズム(記録により、反射率が高くなる記録を、LOW TO HIGH型という。)に適した光学特性の材料を選び、アニオン成分のアゾ系金属錯体塩については、カチオン成分よりも薄膜の極大吸収値が長波長の材料を選べば、レーザ波長405nmでの薄膜吸収値の寄与をカチオン部より少なくし、記録特性よりも再生光安定性についての機能を重視する材料設計を行うことが可能となる。あるいは、アニオン成分のアゾ系金属錯塩で吸収波長や溶解性等を調整することも可能である。このことにより、良好な記録特性、十分な再生光耐久性の両立を可能にした。
さらに、カチオン及びアニオン部の組み合わせを検討し、高速記録に適した記録感度を得るために、色素の熱分解温度を200℃乃至350℃付近に調整することにより、高感度化を達成した。
尚、アニオン色素、アニオン、アニオン成分、アニオン部は、本発明においては、本発明のアゾ系金属錯体(あるいは、アゾ系金属錯塩ともいう。)を意味する。同様に、カチオン色素、カチオン、カチオン成分、カチオン部は、本発明においては、本発明のシアニン色素を意味する。
【0013】
こういった構造の色素の組み合わせにより、3つの要求特性を同時に満たすことができる詳細な理由、特に高感度化については明確ではないが、カチオン部にビススチリル構造を取ることにより、本発明の色素が、熱分解温度に対し、非常に急峻に分解が行われるようになっていることが、TG/DTA分析により確認されている。このことは、レーザ記録時に発生する熱エネルギーのカチオン部からアニオン部への受け渡しが、ビススチリル構造をとることにより、素早く行われ、本発明で提唱したカチオン部およびアニオン部の機能分離が、効率よく行われていると考えられる。
【0014】
かくして本発明によれば、下記(1)の光学記録用色素及びその色素を記録層に含む(2)の光学記録媒体が提供される。
(1) カチオンとしてビススチリル骨格を有するシアニン色素と、且つアニオンとしてアゾ系金属錯体とを含有する下記一般式1で示されることを特徴とする光学記録用色素。
一般式1
【0015】
【化1】

【0016】
(一般式1において、R乃至Rは、水素原子もしくは、適宜の有機置換基を表し、独立もしくは連結していてもよい。R及びR10は、同じもしくは、異なる脂肪族炭化水素基で、それらの脂肪族炭化水素基は置換基を有していてもよい。X及びXは、炭素原子、若しくは、酸素原子、窒素原子、硫黄原子で、炭素原子以外の原子の場合は、R乃至Rの一部または全部が存在しない。A及びBは、互いに同じか異なる芳香環を表し、それらの芳香環は置換基を有していてもよい。C、Dは、少なくとも一方が、ヘテロ原子を一つ以上含む複素環基を表す。Mは、遷移金属原子を表す。)
(2) 基板上に、前記(1)に記載の光学記録用色素を含む記録層を有し、波長300nm以上、500nm以下の光により記録再生を行うことを特徴とする光学記録媒体。
【0017】
さらに、本発明によれば、光学記録用色素として、より好ましくは、以下の(3)〜(6)である。即ち、
(3) カチオンとしてビススチリル骨格を有するシアニン色素と、且つアニオンとしてアゾ系金属錯体とを含有する下記一般式2で示されることを特徴とする光学記録用色素。
一般式2
【0018】
【化2】

【0019】
(一般式2において、R11乃至R18は、水素原子もしくは、適宜の有機置換基を表し、独立もしくは連結していてもよい。R19及びR20は、同じもしくは、異なる脂肪族炭化水素基で、それらの脂肪族炭化水素基は置換基を有していてもよい。X及びXは、炭素原子、若しくは、酸素原子、窒素原子、硫黄原子で、炭素原子以外の原子の場合は、R11乃至R14の一部または全部が存在しない。A及びBは、互いに同じか異なる芳香環を表し、それらの芳香環は置換基を有していてもよい。C及びDは、少なくとも一方が、ヘテロ原子を一つ以上含む複素環基を表す。Mは、遷移金属原子を表す。)
(4) カチオンとしてビススチリル骨格を有するシアニン色素と、且つアニオンとしてアゾ系金属錯体とを含有する下記一般式3で示されることを特徴とする光学記録用色素。
一般式3
【0020】
【化3】

【0021】
(一般式3において、R21乃至R28、R31及びR32は、水素原子もしくは、適宜の有機置換基を表し、独立もしくは連結していてもよい。R29、R30及びR33は、同じもしくは、異なる脂肪族炭化水素基で、それらの脂肪族炭化水素基は置換基を有していてもよい。X及びXは、炭素原子、若しくは、酸素原子、窒素原子、硫黄原子で、炭素原子以外の原子の場合は、R21乃至R24の一部または全部が存在しない。A及びBは、互いに同じか異なる芳香環を表し、それらの芳香環は置換基を有していてもよい。Yは、酸素原子若しくは、硫黄原子を表す。Cは、複素環基で、ヘテロ原子を一つ以上含む。Mは、遷移金属原子を表す。)
(5) カチオンとしてビススチリル骨格を有するシアニン色素と、且つアニオンとしてアゾ系金属錯体とを含有する下記一般式4で示されることを特徴とする光学記録用色素。
一般式4
【0022】
【化4】

【0023】
(一般式4において、R34乃至R41は、水素原子もしくは、適宜の有機置換基を表し、独立もしくは連結していてもよい。R42乃至R45は、同じもしくは、異なる脂肪族炭化水素基で、それらの脂肪族炭化水素基は置換基を有していてもよい。X及びXは、炭素原子、若しくは、酸素原子、窒素原子、硫黄原子で、炭素原子以外の原子の場合は、R34乃至R37の一部または全部が存在しない。A及びBは、互いに同じか異なる芳香環を表し、それらの芳香環は置換基を有していてもよい。Yは、酸素原子若しくは、硫黄原子を表す。Cは、複素環基で、ヘテロ原子を一つ以上含む。Mは、遷移金属原子を表す。)
(6) カチオンとしてビススチリル骨格を有するシアニン色素と、且つアニオンとしてアゾ系金属錯体とを含有する下記一般式5で示されることを特徴とする光学記録用色素。
一般式5
【0024】
【化5】

【0025】
(一般式5において、R46乃至R53、R56及びR57は、水素原子もしくは、適宜の有機置換基を表し、独立もしくは連結していてもよい。R54及びR55は、同じもしくは、異なる脂肪族炭化水素基で、それらの脂肪族炭化水素基は置換基を有していてもよい。X及びX10は、炭素原子、若しくは、酸素原子、窒素原子、硫黄原子で、炭素原子以外の原子の場合は、R46乃至R49の一部または全部が存在しない。A及びBは、互いに同じか異なる芳香環を表し、それらの芳香環は置換基を有していてもよい。Cは、複素環基で、ヘテロ原子を一つ以上含む。Mは、遷移金属原子を表す。)
【発明の効果】
【0026】
本発明の光学記録用色素は、青色レーザでの高記録感度と再生耐久性を両立し、実用性に耐えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明を実施するための最良の形態(以下、発明の実施の形態)について詳細に説明する。尚、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することが出来る。
前記一般式1乃至一般式5において、カチオン部分のビスシアニン色素は、2価陽イオンを有するジカチオン色素で、溶液吸収が、300nmから500nmまでに極大吸収値を有しているものであれば望ましく、X〜X10(以下、X、Xともいう。)としては、炭素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子である。より好ましくは、炭素原子、酸素原子、窒素原子である。特に好ましくは、炭素原子である。A乃至A、B乃至Bは、互いに同じか異なる、置換基を有していてもよい、ベンゼン環やナフタレン環などの芳香族炭化水素環(芳香環)である。
従って、上記カチオン部分のビスシアニン色素の一般式において、
【0028】
【化6】

【0029】
(i=1〜5)としては、それぞれ独立に、具体的には、ベンゾイミダゾール環、α−ナフトイミダゾール環、β−ナフトイミダゾール環、インドール環、イソインドール環、インドレニン環、イソインドレニン環、ベンゾインドレニン環、ピリジノインドレニン環、オキサゾリン環、ベンゾオキサゾール環、ピリジノオキサゾール環、α−ナフトオキサゾール環、β−ナフトオキサゾール環、セレナゾール環、ベンゾセレナゾール環、α−ナフトセレナゾール環、β−ナフトセレナゾール環、ベンゾチアゾール環、α−ナフトチアゾール環、β−ナフトチアゾール環、ベンゾテルラゾール環、α−ナフトテルラゾール環、β−ナフトテルラゾール環等を挙げることができる。より好ましいのは、インドレニン環、ベンゾインドレニン環、ピリジノインドレニン環等のインドレニン環である。
特に好ましいのは、インドレニン環である。これらはさらに、メチル基や塩素原子など、比較的低分子量のアルキル基やハロゲン原子により置換されていてもよい。
【0030】
また、R〜R、R11〜R14、R21〜R24、R34〜R37、R46〜R49の例としては、例えば、メチル基、トリフルオロメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、5−メチルヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等の炭素数1〜8の脂肪族炭化水素基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の炭素数3〜6の脂環式炭化水素基;ベンジル基;フェネチル基;フェニル基、ビフェニリル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、キシリル基、メシチル基、o−クメニル基、m−クメニル基、p−クメニル基等の芳香族炭化水素基;メトキシ基、トリフルオロメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、フェノキシ基、ベンゾイルオキシ基等のエーテル基;メトキシカルボニル基、トリフルオロメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、アセトキシ基、ベンゾイルオキシ基等のエステル基;フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基等のハロゲン基;メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基、フェニルチオ基等のチオ基;メチルスルファモイル基、ジメチルスルファモイル基、エチルスルファモイル基、ジエチルスルファモイル基、プロピルスルファモイル基、ジプロピルスルファモイル基、ブチルスルファモイル基、ジブチルスルファモイル基等のスルファモイル基;第一級アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、プロピルアミノ基、ジプロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ブチルアミノ基、ジブチルアミノ基、ピペリジノ基等のアミノ基;メチルカルバモイル基、ジメチルカルバモイル基、エチルカルバモイル基、ジエチルカルバモイル基、プロピルカルバモイル基、ジプロピルカルバモイル基等のカルバモイル基;さらには、ヒドロキシ基、カルボキシ基、シアノ基、ニトロ基、スルフィノ基、スルホ基、メシル基等が挙げられる。
尚、上記炭素数1〜炭素数8の脂肪族炭化水素基の場合には、チオシクロペンタンやオキソシクロペンタンでさらに置換されていてもよい。
【0031】
〜R、R11〜R14、R21〜R24、R34〜R37、R46〜R49としてより好ましくは、ベンジル基やフェネチル基や炭素数3〜8の脂環式炭化水素基、炭素数1〜8の脂肪族炭化水素基である。
【0032】
さらに、前述した一般式1乃至一般式5のカチオン部における、R〜R、R15〜R18、R25〜R28、R38〜R41及びR50〜R53は、それぞれ独立に、水素原子又は同一分子内において互いに同じか異なる置換基を表す。個々の置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、イソプロペニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、5−メチルヘキシル基等の炭素数1〜7の脂肪族炭化水素基;メトキシ基、エトキシ、プロポキシ基、イソプロポキシ基等の炭素数1〜3のアルコキシ基、メトシキカルボニル基、トリフルオロメトシキカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、アセトキシ基、トリフルオロアセトキシ基、ベンゾイルオキシ基等のエステル基;フェニル基、ビフェニル基、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基等のハロゲン基;カルボシキ基、ヒドロキシ基が挙げられる。上記R〜R、R15〜R18、R25〜R28、R38〜R41及びR50〜R53としてより好ましくは、水素原子や炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基、炭素数1〜3のアリコキシ基、フェニル基、ハロゲン原子、ベンジル基、フェネチル基である。特に好ましくは、水素原子である。
【0033】
また、前述した一般式1乃至一般式5のカチオン部における、R及びR10、R19及びR20、R29及びR30、R42及びR43、R54及びR55はそれぞれ独立に、同一分子内において互いに同じか異なる炭化水素基を表す。個々の炭化水素基としては、炭素数1〜6の直鎖状又は分岐を有する、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、イソプロペニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、5−メチルヘキシル基等の脂肪族炭化水素基;さらには、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘキセニル基等の脂環式炭化水素基が挙げられる。より好ましくは、炭素数1〜6の脂肪族炭化水素基である。斯かる炭化水素基における水素原子は、その1又は複数が、例えば、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基等のハロゲン基によって、置換されてもよい。特に、フルオロ基により置換されたのものが、望ましい。
【0034】
アニオン部における、R33、R44及びR45は、それぞれ独立に、同一分子内において互いに同じか異なる炭化水素基を表す。個々の炭化水素基としては、炭素数1〜6の直鎖状又は分岐を有する、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、イソプロペニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、5−メチルヘキシル基等の脂肪族炭化水素基;さらには、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘキセニル基等の脂環式炭化水素基が挙げられる。より好ましくは、炭素数1〜6の脂肪族炭化水素基である。斯かる炭化水素基における水素原子は、その1又は複数が、例えば、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基等のハロゲン基によって、置換されてもよい。
【0035】
一般式1乃至一般式5のアニオン部で表されるアゾ系金属錯体は、通常、複数のアゾ系色素から成る配位子が金属(中心原子)に配位してなる金属錯塩の形態で用いられる。
そして、特に、本発明においては、中心金属イオンと、イオン結合性の大きい配位結合2つと孤立電子対からなる配位結合1つとを形成するアゾ系色素を2分子配位して成る、金属錯塩である。そして、そのアゾ系金属錯体は、溶液吸収が、300nmから500nmまでに極大吸収値を有しているものであれば望ましい。
中心原子Mとなる金属としては、通常、周期律表における第5族乃至第12族の遷移元素であって、例えば、原子、酸化物、あるいは、弗化物、臭化物、沃化物等のハロゲン化物の形態にあるものが挙げられる。
【0036】
斯かる金属元素の例としては、例えば、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、テクネチウム、レニウム、鉄、ルテニウム、オスミウム、コバルト、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム、白金、銅、銀、金、亜鉛、カドミウム、水銀等が挙げられる。望ましいのは3価の金属(M)を中心原子とする金属錯体であって、とりわけ、ニッケル、銅、コバルト等が望ましい。
【0037】
また、一般式1乃至一般式5のアニオン部で表されるアゾ系金属錯体のC乃至C及びD乃至Dは、いずれか一方は、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、セレン原子及びテルル原子から選ばれるヘテロ原子を1又は複数含んでなる、互いに同じか異なる例えば、フリル基、チエニル基、ピロリル基、ピリジン基、ピペリジノ基、ピペリジル基、キノリル基、イソオキサソール基等の5員環〜8員環の複素環基、あるいはフェニル基を表している。これらは、中心金属イオンとイオン結合性の大きい配位結合を形成することができるように、前記複素環のへテロ部位から水素原子が脱離するか、ヒドロキシル基で置換されたフェニル基が、活性水素を脱離するなどして、陰電荷部位を有するようにする。
【0038】
尚、C乃至Cは、前記陰電荷部位を有する置換基とは別に、例えば、メチル基、トリフルオロメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、5−メチルヘキシル基等の脂肪族炭化水素基;メトシキカルボニル基、トリフルオロメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、アセトキシ基、トリフルオロアセトキシ基、ベンゾイルオキシ基等のエステル基;フェニル基、ビフェニル基、ベンジル基、フェネチル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、o−クメニル基、m−クメニル基、p−クメニル基、キシリル基、メシチル基、スチリル基、シンナモイル基、ナフチル基等の芳香族炭化水素基;更には、カルボシキ基、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ等の置換基を1又は複数有していても良い。
【0039】
一般式1乃至一般式5のアニオン部で表されるアゾ系金属錯体のD乃至Dとしては、4−ヒドロキシーα―ピリドンやバルビツール酸、チオバルビツール酸、メルドラム酸、チオメルドラム酸等が挙げられる。
従って、Y及びYは、それぞれ独立に酸素原子か硫黄原子である。
【0040】
さらに、前述した一般式1乃至一般式5のアニオン部における、R31及びR32、R56及びR57は、それぞれ独立に、水素原子又は同一分子内において互いに同じか異なる置換基を表す。個々の置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、イソプロペニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、5−メチルヘキシル基等の炭素数1〜7の脂肪族炭化水素基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトシキ基、ペンチルオキシ基、フェノキシ等のエーテル基、メトシキカルボニル基、トリフルオロメトシキカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、アセトキシ基、トリフルオロアセトキシ基、ベンゾイルオキシ基等のエステル基;フェニル基、ビフェニル基、ベンジル基、フェネチル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、o−クメニル基、m−クメニル基、p−クメニル基、キシリル基、メシチル基、スチリル基、シンナモイル基、ナフチル基、ビフェニル基等の芳香族炭化水素基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基、ジペンチルアミノ基等のアミノ基、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基等のハロゲン基;カルボシキ基、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基が挙げられる。
【0041】
尚、スチリル色素、特に本発明のビススチリル色素は、ジカチオン構造であるため、溶媒溶解性が低く、N,N−ジメチルホルムアミドなどの溶媒を用いて溶解する必要がある。しかながら、特に、カップリングするアニオン色素の溶媒溶解性が高い場合、カップリング後の目的物の溶媒溶解性が向上するため、目的物の収率が低下する問題がある。そこで、本発明のアゾ金属錯体(アニオン色素)と、本発明のビススチリル色素(カチオン色素)とをカップリング反応の際にアセトニトリルとN,N−ジメチルホルムアミドの混合溶媒を使用することにより、目的物の収率を上げる工夫を行った。また、混合溶媒の配合比率についても、N,N−ジメチルホルムアミド比率が低いと、ビススチリル色素が完溶せず、アニオン色素部分とカチオン色素部分を正確に2対1でカップリングしないため、溶媒の配合比率は、純度向上のためにも、工夫する必要がある。また、更なる収率向上のために、カップリング中は、反応温度を上げて、逆に反応後は冷却することも有効である。
以下の実施例等の本発明の化合物は、上記の工夫を行って合成した。
【0042】
上記一般式1乃至一般式5のアニオン部で表されるアゾ系金属錯体としては、例えば、下記一般式6乃至一般式11で表せるものが具体的に挙げられる。(以下、一般式6〜一般式11は、その構造式が全体として1価のアニオン(1−)であることを意味する。)
一般式6:
【0043】
【化7】

【0044】
一般式7:
【0045】
【化8】

【0046】
一般式8:
【0047】
【化9】

【0048】
一般式9:
【0049】
【化10】

【0050】
一般式10:
【0051】
【化11】

【0052】
一般式11:
【0053】
【化12】

【0054】
ここで、一般式6乃至一般式11において、Mは上記したごとき周期表における第5族乃至第12族の遷移元素を表す。価数を3価とすれば、安定な錯塩を得られる可能性があり、好ましい。
【0055】
前述した一般式6乃至一般式11におけるR59及びR60、R62乃至R65は同一分子内において互いに同じか異なる炭化水素基を表す。個々の炭化水素基としては、炭素数1〜7の直鎖又は分岐の脂肪族炭化水素基あるいは炭素数1〜6の脂環式炭化水素基が好ましい。例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、イソプロペニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、5−メチルヘキシル基等の脂肪族炭化水素基;さらには、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘキセニル基等の脂環式炭化水素基が挙げられる。より好ましくは、炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基である。斯かる炭化水素基における水素原子は、その1又は複数が、例えば、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基等のハロゲン基によって、置換されてもよい。
【0056】
一般式6乃至一般式11におけるR58、R61、R66は、水素原子又は同一分子内において互いに同じか異なる置換基を表す。個々の置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、イソプロペニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、5−メチルヘキシル基等の脂肪族炭化水素基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘキセニル基等の脂環式炭化水素基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトシキ基、ペンチルオキシ基、フェノキシ等のエーテル基、メトシキカルボニル基、トリフルオロメトシキカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、アセトキシ基、トリフルオロアセトキシ基、ベンゾイルオキシ基等のエステル基;フェニル基、ビフェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、o−クメニル基、m−クメニル基、p−クメニル基、キシリル基、メシチル基、スチリル基、シンナモイル基、ナフチル基、ビフェニル基等の芳香族炭化水素基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基、ジペンチルアミノ基等のアミノ基、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基等のハロゲン基;カルボシキ基、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基;ハロゲン化アルキル基が挙げられる。また、隣接するR67及びR68、R69及びR70の組み合わせについては、互いに連結して存在しても良い。
【0057】
特に、安定なアゾ金属錯塩を形成するためには、ジアゾ成分においては、ジアゾ基に対してオルト位に、中心金属イオンと結合する陰イオン部位を有し、ジアゾ基に対してメタ位にニトロ基やトリフルオロメチル基等の電子吸引基を有するようにせしめることが好ましい。
また、一般式6乃至一般式11におけるR67乃至R70は、それぞれ独立に、水素原子又は同一分子内において互いに同じか異なる置換基を表す、。個々の置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、イソプロペニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基等の炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基が挙げられる。
【0058】
本実施の形態で用いる有機色素化合物の具体例としては、例えば、下記、化学式1乃至化学式30で表されるものが挙げられる。いずれも、所定の溶媒に溶解した溶液状態において波長400nmより長波長、通常、400nm乃至500nm付近の紫乃至青色域に主たる極大吸収をする化合物である。
化学式1:
【0059】
【化13】

【0060】
化学式2:
【0061】
【化14】

【0062】
化学式3:
【0063】
【化15】

【0064】
化学式4:
【0065】
【化16】

【0066】
化学式5:
【0067】
【化17】

【0068】
化学式6:
【0069】
【化18】

【0070】
化学式7:
【0071】
【化19】

【0072】
化学式8:
【0073】
【化20】

【0074】
化学式9:
【0075】
【化21】

【0076】
化学式10:
【0077】
【化22】

【0078】
化学式11:
【0079】
【化23】

【0080】
化学式12:
【0081】
【化24】

【0082】
化学式13:
【0083】
【化25】

【0084】
化学式14:
【0085】
【化26】

【0086】
化学式15:
【0087】
【化27】

【0088】
化学式16:
【0089】
【化28】

【0090】
化学式17:
【0091】
【化29】

【0092】
化学式18:
【0093】
【化30】

【0094】
化学式19:
【0095】
【化31】

【0096】
化学式20:
【0097】
【化32】

【0098】
化学式21:
【0099】
【化33】

【0100】
化学式22:
【0101】
【化34】

【0102】
化学式23:
【0103】
【化35】

【0104】
化学式24:
【0105】
【化36】

【0106】
化学式25:
【0107】
【化37】

【0108】
化学式26:
【0109】
【化38】

【0110】
化学式27:
【0111】
【化39】

【0112】
化学式28:
【0113】
【化40】

【0114】
化学式29:
【0115】
【化41】

【0116】
化学式30:
【0117】
【化42】

【0118】
本実施の形態が適用される光学記録用色素の更なる耐光性改善を図るために、耐光性改善剤を併用しても良く、例えば、ニトロソジフェニルアミン、ニトロソアニリン、ニトロソフェノール、ニトロソナフトール等のニトロソ化合物や、テトラシアノキノジメタン化合物、ジインモニウム塩、ビス[2’−クロロ−3−メトキシ−4−(2−メトキシエトキシ)ジチオベンジル]ニッケル(商品名『NKX−1199』、株式会社林原生物化学研究所製造)等のジチオール金属錯体、ホルマザン金属錯体等の金属錯体が用いられ、必要に応じて、これらは適宜組合せて用いられる。望ましい耐光性改善剤は、ニトロソ化合物やホルマザン金属錯体を含んでなるものであり、特に望ましいのは、同じ特許出願人による特開2000−344750号公報明細書(発明の名称「フェニルピリジルアミン誘導体」)に開示されたフェニルピリジルアミン骨格を有するニトロソ化合物か、あるいは、特開平8−295079号公報明細書(発明の名称「ホルマザン金属錯体系色素を用いた光記録媒体および光安定化方法」)に開示された、ホルマザン化合物又はその互変異性体の1又は複数を配位子とする、例えば、ニッケル、亜鉛、コバルト、鉄、銅、パラジウム等との金属錯体を含んでなるものである。斯かる耐光性改善剤と併用するときには、有機溶剤における当該有機色素化合物の溶解性を低下させたり、望ましい光特性を実質的に損なうことなく、読取光や環境光等への露光による有機色素化合物の劣化、退色、変色、変性等の望ましくない変化を効果的に抑制することができる。配合比としては、通常、有機色素化合物1モルに対して、耐光性改善剤を0.01乃至5モル、望ましくは、0.1乃至2モルの範囲で加減しながら含有せしめる。
【0119】
本実施の形態で使用するビススチリル色素は、一般式1のようなイオン対を成していることが、耐光性を高く維持するためには望ましいが、光記録媒体としてのその他の特性を確保するために、カチオン部、アニオン部をそれぞれ別のイオン対にして、独立に混合する方法で解決する事も可能である。
その場合に、ビスシアニン色素のアニオンとして、例えば、弗素イオン、塩素イオン、臭素イオン、沃素イオン、過塩素酸イオン、過沃素酸イオン、六弗化燐酸イオン、六弗化アンチモン酸イオン、六弗化錫酸イオン、硝酸イオン、燐酸イオン、硼弗化水素酸イオン、四弗硼素酸イオン等の無機酸アニオン、サリチル酸、p−ヒドロキシサリチル酸、チオシアン酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、ナフタレンスルホン酸イオン、ナフタレンジスルホン酸イオン、p−トルエンスルホン酸イオン、アルキルスルホン酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、アルキルカルボン酸イオン、トリハロアルキルカルボン酸イオン、アルキル硫酸イオン、トリハロアルキル硫酸イオン、ニコチン酸イオン等の有機酸アニオン等が挙げられる。また、アゾ系金属錯体塩のカチオンとしては、トリメチルアンモニウムイオン、トリエチルアンモニウムイオン、トリブチルアンモニウムイオン等が挙げられる。
【0120】
有機色素化合物を基板に塗布するための有機溶剤としては、光記録媒体の作製に頻用される2、2、3、3−テトラフロオロ−1−プロパノール(以下、「TFP」と略記する。)が挙げられる。また、TFP以外の他の汎用の有機溶剤としては、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、イソプロピルシクロヘキサン、tert−ブチルシクロヘキサン、オクタン、シクロオクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素類;四塩化炭素、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、1,2−ジブロモエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼン、ブロモベンゼン、α−ジクロロベンゼン等のハロゲン化物;メタノール、エタノール、2,2,2−トリフルオロエタノール、2−メトキシエタノール(メチルセロソルブ)、2−エトキシエタノール(エチルセロソルブ)、2−イソプロポキシ−1−エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、1−ブタノール、1−メトキシ−2−ブタノール、3−メトキシ−1−ブタノール、4−メトキシ−1−ブタノール、イソブチルアルコール、ペンチルアルコール、イソペンチルアルコール、シクロヘキサノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ジアセトンアルコール、フェノール、ベンジルアルコール、クレゾール等のアルコール類及びフェノール類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,4−ジオキサン、アニソール、1,2−ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジシクロヘキシル−18−クラウン−6、メチルカルビトール、エチルカルビトール等のエーテル類;フルフラール、アセトン、1,3−ジアセチルアセトン、エチルメチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、燐酸トリメチル等のエステル類;ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ヘキサメチル燐酸トリアミド等のアミド類;アセトニトリル、プロピオニトリル、スクシノニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル類;ニトロメタン、ニトロベンゼン等のニトロ化合物;エチレンジアミン、ピリジン、ピペリジン、モルホリン、N−メチルピロリドン等のアミン類;ジメチルスルホキシド、スルホラン等の含硫化合物等が挙げられる。これらの有機溶剤は、必要に応じて、これらを適宜混合して用いる。
【0121】
本実施の形態が適用される光学記録媒体に使用する基板も汎用のものでよく、通常、圧出成形法、射出成形法、圧出射出成形法、フォトポリマー法(2P法)、熱硬化一体成形法、光硬化一体成形法等により適宜の材料を最終用途に応じて、例えば、直径12cm、厚さ0.6mm又は1.1mmのディスク状に形成し、これを単板で用いるか、あるいは、粘着シート、接着剤等により適宜貼合せて用いる。基板の材料としては、実質的に透明で、波長400乃至500nmの範囲の光に対して80%以上、望ましくは、90%以上の透過率を有するものであれば、原理上、材質は問わない。個々の材料としては、例えば、ガラス、セラミックのほかに、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスチレン(スチレン共重合物)、ポリメチルペンテン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリカーボネート・ポリスチレン−アロイ、ポリエステルカーボネート、ポリフタレートカーボネート、ポリカーボネートアクリレート、非晶性ポリオレフィン、メタクリレート共重合物、ジアリルカーボネートジエチレングリコール、エポキシ樹脂等のプラスチックが用いられ、通常、ポリカーボネートが頻用される。
【実施例】
【0122】
以下、実施例に基づき本実施の形態をさらに具体的に説明する。なお、本実施の形態は実施例に限定されない。
(化学式38の合成実験例)
300ml反応器に下記化学式37で表される化合物を31.5g、テレフタルアルデヒド5.1g、酢酸8.9ml、及びアセトニチリル155mlを仕込み、加熱攪拌下、ピペリジン8.9mlを滴下し、更に1時間加熱攪拌した。その後、冷却し析出した結晶を濾取することにより、化学式38で表される化合物を20.12g得た。
【0123】
化学式38で表される化合物の結晶の一部を取り、熱特性としてTG/DTA分析による融点および分解点を測定したところ、化学式38で表される化合物は、304℃付近に、融点および分解点と区別のつかないような急峻な質量減少を示した。また、吸収特性として、常法によりメタノール溶液における可視吸収スペクトルを測定したところ、化学式38で表される化合物は、波長439nm付近の紫乃至青色領域に主たる吸収極大を示した(ε=5.15×10)。常法により20℃における有機溶剤への溶解性を調べたところ、N,N−ジメチルホルムアミド−d6、メタノール、TFP、エチルメチルケトン、アセトニトリル、クロロホルムをはじめとするアミド系、アルコール系、ケトン系、ニトリル系、ハロゲン系等の有機溶剤に対して実用上支障がない溶解性を発揮した。また、H−核磁気共鳴分析(以下「H−NMR分析」と略記する。)において、重ジメチルスルホキシド溶液にした本例の色素は、化学シフトδ(TMS,ppm)が1.83(12H、s、−CH)、4.22(6H、s、N−CH)、7.66乃至7.69(4H、m、Ar−H)、7.86(2H、d、−CH=)、7.90乃至7.98(4H、m、Ar−H)、8.40(4H、s、Ar−H)、8.45(2H、d、−CH=)の位置にピークを示した。
【0124】
化学式37;
【0125】
【化43】

【0126】
化学式38;
【0127】
【化44】

【0128】
(化学式42の合成実施例)
2リットル4口反応器に2−アミノ−4−ニトロフェノール60g、濃塩酸96ml、水288mlを加え氷冷下攪拌し、完溶させた後、亜硝酸ナトリウム28gを溶解した水溶液60mlを滴下した。次に、この混液を化学式B1で示される化合物79.2gを溶解したメタノール溶液948mlを滴下した。この後、1時間室温攪拌し、得られた結晶を濾取することにより、化学式B2で示される化合物129.3gを得た。
【0129】
化学式B1;
【0130】
【化45】

【0131】
化学式B2;
【0132】
【化46】

【0133】
1リットル4口反応器に化学式B2で示される化合物105g、酢酸コバルト4水和物35.2g、アセトニトリル630ml、及びトリエチルアミン118mlを仕込み、内温50℃で20分攪拌した。後、5リットル容器に水2.52リットルを仕込み、室温攪拌下、上記反応液を注加し、結晶化した。室温で攪拌30分、内温10℃以下で1時間攪拌した後、結晶を濾取した。得られた結晶を60℃で18時間乾燥し、化学式42で示される化合物123gを得た。
【0134】
結晶の一部を取り、熱特性としてTG/DTA分析による融点および分解点を測定したところ、化学式42で表される化合物は、323℃付近に、融点および分解点と区別のつかないような急峻な質量減少を示した。また、吸収特性として、常法によりメタノール溶液における可視吸収スペクトルを測定したところ、化学式42で表される化合物は、波長479nm付近の紫乃至青色領域に主たる吸収極大を示した(ε=5.55×10)。常法により20℃における有機溶剤への溶解性を調べたところ、N,N−ジメチルホルムアミド、メタノール、TFP、エチルメチルケトン、アセトニトリル、クロロホルムをはじめとするアミド系、アルコール系、ケトン系、ニトリル系、ハロゲン系などの有機溶剤に対して実用上支障がない溶解性を発揮した。また、H−NMR分析において、ジメチルスルホキシド−d6溶液にした本例の化合物は、化学シフトδ(TMS,ppm)が0.47(6H、t、−CH)、0.71乃至0.79(4H、m、−CH−)、0.87乃至0.96(4H、t、−CH−)、1.18(9H、t、−CH)、2.90(6H、s、−CH)、3.10(6H、q、−CH−)、3.47乃至3.58(4H、m、−CH−)、6.90(2H、d、Ar−H)、8.00(2H、dd、Ar−H)、9.03(2H、d、Ar−H)の位置にピークを示した。
【0135】
化学式42;
【0136】
【化47】

【0137】
(化学式41の合成実施例)
下記化学式39で表される化合物5.0gと化学式40で表される化合物11.0gをアセトニトリル中加熱完溶させた。その後、反応物を冷却し析出した結晶を濾取することにより、化学式41で表される化合物11.87gを得た。
【0138】
化学式41で表される化合物の結晶の一部を取り、熱特性としてTG/DTA分析による融点および分解点を測定したところ、化学式41で表される化合物は、220℃付近に、融点および分解点と区別のつかないような急峻な質量減少を示した。また、吸収特性として、常法によりメタノール溶液における可視吸収スペクトルを測定したところ、化学式41で表される化合物は、波長392nm付近の紫乃至青色領域に主たる吸収極大を示した(ε=4.33×10)。常法により20℃における有機溶剤への溶解性を調べたところ、N,N−ジメチルホルムアミド、メタノール、TFP、エチルメチルケトン、アセトニトリル、クロロホルムをはじめとするアミド系、アルコール系、ケトン系、ニトリル系、ハロゲン系等の有機溶剤に対して実用上支障がない溶解性を発揮した。また、H−NMR分析において、クロロホルム−d溶液にした本例の色素は、化学シフトδ(TMS,ppm)が0.65(6H、t、−CH)、1.90(6H、s、−CH)、3.47(3H、s、N−CH3)、4.02乃至4.20(4H、m、N−CH−)、6.38(2H、t、Ar−H)、6.75乃至6.86(4H、m、Ar−H)、7.19乃至7.22(3H、m、Ar−H)、7.42乃至7.69(7H、m、Ar−H及び−CH=)、8.00(1H、d、−CH=)、8.26(2H、d、Ar−H)の位置にピークを示した。
【0139】
化学式39;
【0140】
【化48】

【0141】
化学式40;
【0142】
【化49】

【0143】
化学式41;
【0144】
【化50】

【0145】
(化学式43の合成実施例)
前述した化学式39で表される化合物5.0gと前記化学式42で表される化合物12.4gをアセトニトリルとN,N−ジメチルホルムアミドの混液中加熱完溶させた。その後反応物を冷却し析出した結晶を濾取することにより、下記化学式43で表される化合物10.82gを得た。
【0146】
化学式43で表される化合物の結晶の一部を取り、熱特性としてTG/DTA分析による融点および分解点を測定したところ、化学式43で表される化合物は、270℃付近に、融点および分解点と区別のつかないような急峻な質量減少を示した。また、吸収特性として、常法によりメタノール溶液における可視吸収スペクトルを測定したところ、化学式43で表される化合物は、波長441nm付近の紫乃至青色領域に主たる吸収極大を示した(ε=5.51×10)。常法により20℃における有機溶剤への溶解性を調べたところ、N,N−ジメチルホルムアミド、メタノール、TFP、エチルメチルケトン、アセトニトリル、クロロホルムをはじめとするアミド系、アルコール系、ケトン系、ニトリル系、ハロゲン系等の有機溶剤に対して実用上支障がない溶解性を発揮した。また、H−NMR分析において、重クロロホルム溶液にした本例の色素は、化学シフトδ(TMS,ppm)が0.47(6H、t、−CH)、0.754乃至0.82(4H、m、−CH−)、0.92乃至0.97(4H、m、−CH−)、1.87(6H、s、−CH)、2.90(6H、s、−CH)、3.50乃至3.70(4H、m、N−CH−)、4.25(3H、s、N−CH)、6.82(2H、d、Ar−H)、7.53乃至7.65(8H、m、Ar−HおよびN−CH−)、7.85(2H、d、Ar−H)、7.99(2H、dd、Ar−H)、8.22(1H、d、−CH=)、9.11(2H、d、Ar−H)、の位置にピークを示した。
【0147】
化学式42;
【0148】
【化51】

【0149】
化学式43;
【0150】
【化52】

【0151】
(化学式1の合成実施例)
前述した化学式38で表される化合物1.2gと前述した化学式42で表される化合物5.58gをアセトニトリルとN,N−ジメチルホルムアミドの混液中加熱完溶させた。その後反応物を冷却し析出した結晶を濾取することにより、前述した化学式1で表される化合物3.64gを得た。
【0152】
化学式1で表される化合物の結晶の一部を取り、熱特性としてTG/DTA分析による融点および分解点を測定したところ、化学式1で表される化合物は、310℃付近に、融点および分解点と区別のつかないような急峻な質量減少を示した。また、吸収特性として、常法によりメタノール溶液における可視吸収スペクトルを測定したところ、化学式1で表される化合物は、波長474nm付近の紫乃至青色領域に主たる吸収極大を示した(ε=1.33×10)。常法により20℃における有機溶剤への溶解性を調べたところ、N,N−ジメチルホルムアミド、メタノール、TFP、エチルメチルケトン、アセトニトリル、クロロホルムをはじめとするアミド系、アルコール系、ケトン系、ニトリル系、ハロゲン系等の有機溶剤に対して実用上支障がない溶解性を発揮した。また、H−NMR分析において、N,N−ジメチルホルムアミド−d7溶液にした本例の色素は、化学シフトδ(TMS,ppm)が0.55(12H、t、−CH)、0.75乃至0.88(8H、m、−CH−)、0.94乃至1.10(8H、m、−CH−)、1.92(12H、s、−CH)、2.97(12H、s、−CH)、3.56乃至3.68(8H、m、−CH−)、4.42(6H、s、−CH)、6.90(4H、d、Ar−H)、7.70乃至7.73(4H、m、Ar−H)、7.9乃至8.14(10H、m、Ar−H)、8.49(4H、s、Ar−H)、8.68(2H、d、−CH=)、9.13(4H、d、Ar−H)の位置にピークを示した。
【0153】
(化学式12の合成実施例)
化学式44で表される化合物1.21gと前述した化学式42で表される化合物4.3gをアセトニトリルとN,N−ジメチルホルムアミドの混液中加熱完溶させた。その後反応物を冷却し析出した結晶を濾取することにより、前述した化学式12で表される化合物1.9gを得た。
【0154】
化学式12で表される化合物の結晶の一部を取り、熱特性としてTG/DTA分析による融点および分解点を測定したところ、化学式12で表される化合物は、331℃付近に、融点および分解点と区別のつかないような急峻な質量減少を示した。また、吸収特性として、常法によりメタノール溶液における可視吸収スペクトルを測定したところ、化学式12で表される化合物は、波長475nm付近の紫乃至青色領域に主たる吸収極大を示した(ε=1.22×10)。常法により20℃における有機溶剤への溶解性を調べたところ、N,N−ジメチルホルムアミド、メタノール、TFP、エチルメチルケトン、アセトニトリル、クロロホルムをはじめとするアミド系、アルコール系、ケトン系、ニトリル系、ハロゲン系等の有機溶剤に対して実用上支障がない溶解性を発揮した。また、H−NMR分析において、N,N−ジメチルホルムアミド−d7溶液にした本例の化学式12の化合物は、化学シフトδ(TMS,ppm)が0.44(12H、t、−CH)、0.68乃至0.80(8H、m、−CH−)、0.86乃至0.96(8H、m、−CH−)、1.60(4H、d、−CH−)、1.70乃至2.08(12H、m、−CH−)、2.27乃至2.40(4H、m、−CH−)、2.90(12H、s、−CH)、3.45乃至3.60(8H、m、−CH−)、4.24(6H、s、−CH)、6.90(4H、d、ArH)、7.64(2H、t、ArH)、7.74(2H、t、Ar−H)、7.78(2H、d、−CH=)、8.00(4H、dd、Ar−H)、8.06(2H、d、Ar−H)、8.21(2H、d、Ar−H)、8.35(4H、s、Ar−H)、8.37(2H、d、−CH=)、9.03(4H、d、Ar−H)、の位置にピークを示した。
【0155】
化学式44;
【0156】
【化53】

【0157】
(実施例1)
基板厚0.6mm、トラックピッチ0.4μmの基板上に、前述した化学式1の化合物をスピンコート法で塗布し、70℃で25分乾燥させ、スパッタリングによりAgBiNd反射膜を120nm設けたディスクに紫外線硬化樹脂により0.6mm厚の裏板に接着することでディスクを作成した。
波長405nm、NA(開口数)0.65のテスター(パルステック社製)を用い、線速度6.61m/s、最短マーク長204nmで記録を行った。記録、再生はDVDフォーラムにより定められたHDDVD−R規格Ver1.0に準拠した方式で行い、同規格にあるPRSNR(Partial Response SNR)の評価を行った。
この結果、最適な記録パワーは7.0mWと良好であり、このときのPRSNRは22.1と規格の15を大きく上回る結果であった。記録メカニズムはLOW TO HIGH型であり、反射率は記録前後で各々12%、24%であった。
また、再生耐久性は0.4mWの再生パワーで連続再生を行い、PRSNRが15を切る再生回数を求めた結果、125万回であった。
【0158】
【化54】

【0159】
(実施例2)
基板厚0.6mm、トラックピッチ0.4μmの基板上に、前述した化学式12の化合物をスピンコート法で塗布し、70℃で25分乾燥させ、スパッタリングによりAgBiNd反射膜を120nm設けたディスクに紫外線硬化樹脂により0.6mm厚の裏板に接着することでディスクを作成した。
評価実施例1と同様に評価を行ったところ、最適な記録パワーは6.8mWと良好であり、このときのPRSNRは19.6と規格の15を大きく上回る結果であった。記録メカニズムはLOW TO HIGH型であり、反射率は記録前後で各々11%、21%であった。
また、再生耐久性は0.4mWの再生パワーで連続再生を行い、PRSNRが15を切る再生回数を求めた結果、115万回であった。
【0160】
【化55】

【0161】
(比較例1)
基板厚0.6mm、トラックピッチ0.4μmの基板上に、前述した化学式38の化合物をスピンコート法で塗布し、スパッタリングによりAgBiNd反射膜を120nmしたディスクを紫外線硬化樹脂により0.6mm厚の裏板に接着することでディスクを作成した。
評価実施例1と同様に評価を行ったところ、最適な記録パワーは7.6mWであり、このときのPRSNRは32.0であった。
記録メカニズムはLOW TO HIGH型であり、反射率は記録前後で各々10%、19%であった。
また、再生耐久性は0.4mWの再生パワーで連続再生を行ったところ10000回の再生で記録信号がほぼ消失した。
【0162】
【化56】

【0163】
(比較例2)
基板厚0.6mm、トラックピッチ0.4μmの基板上に、前述した化学式41の化合物をスピンコート法で塗布し、スパッタリングによりAgBiNd反射膜を120nmしたディスクを紫外線硬化樹脂により0.6mm厚の裏板に接着することでディスクを作成した。
評価実施例1と同様に評価を行ったところ、最適な記録パワーは8.6mWであり、このときのPRSNRは18.7であった。
記録メカニズムはLOW TO HIGH型であり、反射率は記録前後で各々13%、22%であった。
また、再生耐久性は0.4mWの再生パワーで連続再生を行い、PRSNRが15を切る再生回数を求めた結果、40万回であった。
【0164】
【化57】

【0165】
(比較例3)
基板厚0.6mm、トラックピッチ0.4μmの基板上に、前述した化学式43の化合物をスピンコート法で塗布し、スパッタリングによりAgBiNd反射膜を120nmしたディスクを紫外線硬化樹脂により0.6mm厚の裏板に接着することでディスクを作成した。
評価実施例1と同様に評価を行ったところ、最適な記録パワーは9.2mWであり、このときのPRSNRは20.3であった。記録メカニズムはLOW TO HIGH型であり、反射率は記録前後で各々10%、19%であった。
また、再生耐久性は0.4mWの再生パワーで連続再生を行い、PRSNRが15を切る再生回数を求めた結果、65万回であった。
【0166】
【化58】

【0167】
(比較例4)
基板厚0.6mm、トラックピッチ0.4μmの基板上に、化学式42の化合物をスピンコート法で塗布し、スパッタリングによりAgBiNd反射膜を120nmしたディスクを紫外線硬化樹脂により0.6mm厚の裏板に接着することでディスクを作成した。
評価実施例1と同様に評価を行ったところ、最適な記録パワーは8.2mWと8mWより高かった。このときのPRSNRは14.8であり初期から目標の15に達しなかった。
記録メカニズムはLOW TO HIGH型であり、反射率は記録前後で各々11%、21%であった。
【0168】
【化59】

【0169】
叙上のごとく、本実施の形態が適用される光学記録用色素は、青色レーザ用有機記録材料として高感度でありながら、同時に実用上支障のない再生耐久性を確保しており、青色半導体レーザでの高速記録特性と再生耐久性を両立した実用性に耐え得る有機記録材料として極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カチオンとしてビススチリル骨格を有するシアニン色素と、且つアニオンとしてアゾ系金属錯体とを含有する下記一般式1で示されることを特徴とする光学記録用色素。
一般式1
【化1】

(一般式1において、R乃至Rは、水素原子もしくは、適宜の有機置換基を表し、独立もしくは連結していてもよい。R及びR10は、同じもしくは、異なる脂肪族炭化水素基で、それらの脂肪族炭化水素基は置換基を有していてもよい。X及びXは、炭素原子、若しくは、酸素原子、窒素原子、硫黄原子で、炭素原子以外の原子の場合は、R乃至Rの一部または全部が存在しない。A及びBは、互いに同じか異なる芳香環を表し、それらの芳香環は置換基を有していてもよい。C、Dは、少なくとも一方が、ヘテロ原子を一つ以上含む複素環基を表す。Mは、遷移金属原子を表す。)
【請求項2】
カチオンとしてビススチリル骨格を有するシアニン色素と、且つアニオンとしてアゾ系金属錯体とを含有する下記一般式2で示されることを特徴とする請求項1記載の光学記録用色素。
一般式2
【化2】

(一般式2において、R11乃至R18は、水素原子もしくは、適宜の有機置換基を表し、独立もしくは連結していてもよい。R19及びR20は、同じもしくは、異なる脂肪族炭化水素基で、それらの脂肪族炭化水素基は置換基を有していてもよい。X及びXは、炭素原子、若しくは、酸素原子、窒素原子、硫黄原子で、炭素原子以外の原子の場合は、R11乃至R14の一部または全部が存在しない。A及びBは、互いに同じか異なる芳香環を表し、それらの芳香環は置換基を有していてもよい。C及びDは、少なくとも一方が、ヘテロ原子を一つ以上含む複素環基を表す。Mは、遷移金属原子を表す。)
【請求項3】
カチオンとしてビススチリル骨格を有するシアニン色素と、且つアニオンとしてアゾ系金属錯体とを含有する下記一般式3で示されることを特徴とする請求項2記載の光学記録用色素。
一般式3
【化3】

(一般式3において、R21乃至R28、31及びR32は、水素原子もしくは、適宜の有機置換基を表し、独立もしくは連結していてもよい。R29、R30及びR33は、同じもしくは、異なる脂肪族炭化水素基で、それらの脂肪族炭化水素基は置換基を有していてもよい。X及びXは、炭素原子、若しくは、酸素原子、窒素原子、硫黄原子で、炭素原子以外の原子の場合は、R21乃至R24の一部または全部が存在しない。A及びBは、互いに同じか異なる芳香環を表し、それらの芳香環は置換基を有していてもよい。Yは、酸素原子若しくは、硫黄原子を表す。Cは、複素環基で、ヘテロ原子を一つ以上含む。Mは、遷移金属原子を表す。)
【請求項4】
カチオンとしてビススチリル骨格を有するシアニン色素と、且つアニオンとしてアゾ系金属錯体とを含有する下記一般式4で示されることを特徴とする請求項2記載の光学記録用色素。
一般式4
【化4】

(一般式4において、R34乃至R41は、水素原子もしくは、適宜の有機置換基を表し、独立もしくは連結していてもよい。R42乃至R45は、同じもしくは、異なる脂肪族炭化水素基で、それらの脂肪族炭化水素基は置換基を有していてもよい。X及びXは、炭素原子、若しくは、酸素原子、窒素原子、硫黄原子で、炭素原子以外の原子の場合は、R34乃至R37の一部または全部が存在しない。A及びBは、互いに同じか異なる芳香環を表し、それらの芳香環は置換基を有していてもよい。Yは、酸素原子若しくは、硫黄原子を表す。Cは、複素環基で、ヘテロ原子を一つ以上含む。Mは、遷移金属原子を表す。)
【請求項5】
カチオンとしてビススチリル骨格を有するシアニン色素と、且つアニオンとしてアゾ系金属錯体とを含有する下記一般式5で示されることを特徴とする請求項2記載の光学記録用色素。
一般式5
【化5】

(一般式5において、R46乃至R53、R56及びR57は、水素原子もしくは、適宜の有機置換基を表し、独立もしくは連結していてもよい。R54及びR55は、同じもしくは、異なる脂肪族炭化水素基で、それらの脂肪族炭化水素基は置換基を有していてもよい。X及びX10は、炭素原子、若しくは、酸素原子、窒素原子、硫黄原子で、炭素原子以外の原子の場合は、R46乃至R49の一部または全部が存在しない。A及びBは、互いに同じか異なる芳香環を表し、それらの芳香環は置換基を有していてもよい。Cは、複素環基で、ヘテロ原子を一つ以上含む。Mは、遷移金属原子を表す。)
【請求項6】
基板上に、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の光学記録用色素を含む記録層を有し、波長300nm以上、500nm以下の光により記録再生を行うことを特徴とする光学記録媒体。

【公開番号】特開2007−111887(P2007−111887A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−302870(P2005−302870)
【出願日】平成17年10月18日(2005.10.18)
【出願人】(501495237)三菱化学メディア株式会社 (105)
【出願人】(000155908)株式会社林原生物化学研究所 (168)
【Fターム(参考)】