光導波路、光変調器、および、光カプラ
【課題】 大型化を抑制しつつ、分岐比の劣化を抑制することができる、光導波路、光変調器、および、光カプラを提供する。
【解決手段】 光導波路は、基板に形成され、曲がり導波路と、前記曲がり導波路に接続されて分岐する分岐部と、を備え、前記曲がり導波路の前記分岐部と反対側の始点から前記分岐部に至るまでの導波路において、前記曲がり導波路の始点の実効屈折率よりも低い実効屈折率を有する低屈折率部が設けられていることを特徴とする。
【解決手段】 光導波路は、基板に形成され、曲がり導波路と、前記曲がり導波路に接続されて分岐する分岐部と、を備え、前記曲がり導波路の前記分岐部と反対側の始点から前記分岐部に至るまでの導波路において、前記曲がり導波路の始点の実効屈折率よりも低い実効屈折率を有する低屈折率部が設けられていることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光導波路、光変調器、および、光カプラに関する。
【背景技術】
【0002】
LiNbO3(LN)基板、LiTaO2基板等の電気光学結晶を用いた光導波路デバイスが開発されている。これらの光導波路デバイスは、結晶基板上の一部にチタンなどの金属膜を形成し熱拡散させる、あるいはパターニング後に安息香酸中でプロトン交換するなどして光導波路を形成した後、光導波路近傍に電極を設けることで形成される。このような光導波路デバイスとして、例えばマッハツェンダ型光変調器があげられる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−53086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
マッハツェンダ型光変調器では、曲がり導波路の後段にY字状の分岐部が設けられることがある。この構成では、曲がり導波路中で偏ったモードが分岐部に入射され、分岐比が50%からずれることがある。その結果、マッハツェンダの消光比が劣化するという問題が生じ得る。分岐比を50%に近づけるために分岐部前段に直線部を設けることもできるが、この場合においては光変調器が大型化するなどの問題が生じる。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、大型化を抑制しつつ分岐比の劣化を抑制することができる光導波路、光変調器、および、光カプラを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、明細書開示の光導波路は、基板に形成され、曲がり導波路と、前記曲がり導波路に接続されて分岐する分岐部と、を備え、前記曲がり導波路の前記分岐部と反対側の始点から前記分岐部に至るまでの導波路において、前記曲がり導波路の始点の実効屈折率よりも低い実効屈折率を有する低屈折率部が設けられているものである。
【0007】
上記課題を解決するために、明細書開示の光変調器は、上記光導波路を、光入力側および光出力側の少なくとも一方の分岐箇所に備えるものである。
【0008】
上記課題を解決するために、明細書開示の光カプラは、上記光導波路を入力導波路および出力導波路の少なくとも一方に備えるものである。
【発明の効果】
【0009】
明細書開示の光導波路、マッハツェンダ型光変調器、および光カプラによれば、大型化を抑制しつつ分岐比の劣化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】(a)は第1の実施形態に係るマッハツェンダ型の光変調器の模式的な平面図であり、(b)は(a)のA−A線断面図である。
【図2】(a)は比較例を説明するための図であり、(b)は第1の実施形態を説明するための図である。
【図3】(a)は図2(b)の構成において狭幅部の始点における幅を変えた場合の分岐比のスペクトルを示し、(b)は挿入損失(dB)を示し、(c)は波長依存性を示し、(d)は、曲がり導波路の曲率半径と過剰損失との関係を示す図である。
【図4】(a)は変形例1−1について説明するための図であり、(b)は変形例1−1の他の例について説明するための図であり、(c)は変形例1−2について説明するための図である。
【図5】(a)は変形例1−3について説明するための図であり、(b)は変形例1−4について説明するための図である。
【図6】(a)は変形例1−5について説明するための図であり、(b)は変形例1−6について説明するための図であり、(c)は変形例1−7について説明するための図である。
【図7】(a)は第2の実施形態に係るQPSK光変調器の模式的な平面図であり、(b)は分岐部、曲がり導波路および分岐部の拡大図である。
【図8】分岐部、曲がり導波路および分岐部の他の例を説明するための図である。
【図9】(a)〜(c)は光カプラについて説明するための図である。
【図10】(a)〜(c)は実効屈折率の調整手法について説明するための図である。
【図11】シリコン導波路を説明するための断面図である。
【図12】第4の実施形態に係る光送信機の全体構成を説明するためのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しつつ、実施の形態について説明する。
【0012】
(第1の実施形態)
図1(a)は、第1の実施形態に係るマッハツェンダ型の光変調器100の模式的な平面図である。図1(b)は、図1(a)のA−A線断面図である。図1(a)および図1(b)を参照して、光変調器100は、曲がり導波路11、分岐部12、中間導波路13,14、合流部15、および曲がり導波路16が形成された基板10を備える。基板10は、LiNb3(LN)基板、LiTaO2基板等の電気光学結晶を用いた電気光学基板である。
【0013】
曲がり導波路11、分岐部12、中間導波路13,14、合流部15および曲がり導波路16は、基板10にTi(チタン)等の金属を熱拡散させることによって形成される。曲がり導波路11の一端は、光変調器100の光入力端として機能する。曲がり導波路11の他端は、分岐部12の一端に接続される。分岐部12は、Y字分岐部を介して、曲がり導波路11と反対側に向かって分岐する。分岐部12の各分岐導波路は、中間導波路13,14のそれぞれの一端に接続される。中間導波路13,14は、互いに平行に配置されている。中間導波路13,14の他端は、合流部15のY字結合部を介して曲がり導波路16の一端に接続される。曲がり導波路16の他端は、光変調器100の光出力端として機能する。以上の構成により、曲がり導波路11、分岐部12、中間導波路13,14、合流部15および曲がり導波路16は、光導波路を構成する。
【0014】
図1(b)を参照して、基板10の光導波路側の面には、バッファ層30が設けられている。それにより、光導波路は、バッファ層30によって覆われている。バッファ層30は、光導波路を伝播する光が後述する電極によって吸収されることを防ぐために設けられている。バッファ層30は、例えば、厚さ0.2μm〜2μm程度のSiO2等である。
【0015】
中間導波路13上には、バッファ層30を介して、信号電極21が設けられている、中間導波路14上には、バッファ層30を介して、接地電極22が設けられている。それにより、信号電極21および接地電極22は、コプレーナ電極を構成する。基板10としてZカット基板を用いる場合には、Z方向の電解に起因する屈折率変化を利用するために、信号電極21および接地電極22は、中間導波路の真上に配置される。
【0016】
光変調器100を高速で駆動する場合、信号電極21および接地電極22の終端を抵抗で接続することによって進行波電極を構成し、進行波電極の入力側からマイクロ波信号を印加する。この場合、電界によって中間導波路13,14の屈折率が一例として+Δn、−Δnのように変化する。それにより、中間導波路13,14間の位相差が変化するため、マッハツェンダ干渉が生じる。その結果、曲がり導波路16の他端から、強度変調された信号光が出力される。電極の断面形状を変化させることでマイクロ波の実効屈折率を制御し、光の速度とマイクロ波の速度とを整合させることによって高速の光応答特性を得ることができる。
【0017】
図1(a)を参照して、ファイバとの結合を考慮し、導波路の入出力端(曲がり導波路11の一端および曲がり導波路16の他端)は、光変調器100の幅方向のほぼ中央に配置される。なお、光変調器100の幅方向は、図1(a)では紙面における上下方向と一致する。一方、中間導波路が形成される相互作用部では、電極の入出力部(ボンディングパッド等)が光変調器100の幅方向のいずれか一方側に配置される。したがって、中間導波路は、光変調器100の幅方向の他方側に偏って配置される。この構成によって、光変調器100の幅を狭くすることができる。しかしながら、導波路の入出力部と相互作用部との間で、導波路の位置が異なってしまう。そこで、曲がり導波路11,16を用いて導波路をS字状に曲げることが有効である。
【0018】
しかしながら、曲がり導波路11,16を設ける場合、曲がり導波路11の後段に分岐部12が配置されることになる。この場合、曲がり導波路11中で偏ったモードが分岐部12に入射され、分岐比が50%からずれる。その結果、マッハツェンダの消光比が劣化するという問題が生じ得る。そこで、図2(a)で説明される比較例のように、分岐部12の前段に所定の長さ以上の直線導波路17を設けることが考えられる。しかしながら、このような構成では、光変調器全体が大型化する。また、分岐比に波長依存性が生じることがある。
【0019】
マッハツェンダの消光比の劣化は、分岐部でパワーが等分されないこと、導波路伝播損失がパスにより異なること、等のいくつかの要因で生じる。消光比劣化を起こす可能性があることに気づいた本発明者は、原因を究明するために、実験および解析の両面から綿密な調査を行った。実験としては、変調器各部でどの程度の損失が発生しているのかを詳細に調査し、消光比劣化に起因する箇所の特定を行った。本発明者は、原因究明用サンプルの設計、試作、評価、分析等を繰り返し、その結果から、分岐部での分岐比のずれが主要因である可能性が高いと判断した。
【0020】
本発明者は、この考察に基づき、解析による理論の裏づけを行った。導波路シミュレーションとしてビーム伝播法を用い、モデルの構築、解析パラメータの設定、および計算を繰り返し、実測値からのフィードバックを通して解析精度を高め、解析モデルが妥当であることを確認した。また、得られた解析結果を分析し、曲がり導波路中で偏った分布をもつ光の伝播モードが分岐部に入射し、そのために分岐部の分岐比が50%からずれていることが消光比劣化の主要因であると結論づけた。
【0021】
この分析結果に基づき、本発明者は、消光比改善のための設計手法を検討した。分岐部の種々のパラメータを変えてシミュレーションを繰り返し、各パラメータの消光比への影響を調査した。分岐部の前に直線導波路を設ける手法では、分岐比を50%に近づける効果はあるが、光変調器の大型化および波長依存性の問題が生じ得る。そこで、伝播モードの偏りの影響を抑えるという観点から、本発明者は、鋭意研究の末、曲がり導波路の分岐部と反対側の始点から分岐部に至るまでの導波路において、実効屈折率を低くする方法を発案した。この方法によれば、曲がり導波路内で偏ったモードが分岐導波路内の非対称モードと結合しなくなる。それにより、モードの対称性が改善され、分岐比を50%または50%に近づけることができる。なお、実効屈折率は、導波路の断面積を変化させることによって変化させてもよく、導波路の幅または深さを変化させることによって変化させてもよく、導波路中の不純物濃度を変化させることによって変化させてもよい。以下の例では、導波路の幅を変化させることによって実効屈折率を変化させる。
【0022】
図2(b)の例では、導波路幅の狭い狭幅部18は、曲がり導波路11の分岐部12側端に設けられている。具体的には、曲がり導波路11の分岐部12と反対側の始点における幅をw1とし、狭幅部18における幅をw2とした場合に、w1>w2の関係が成立する。また、図2(b)の例では、狭幅部18の分岐部12と反対側の始点において、幅が不連続に小さくなっている。このように、導波路幅を小さくすることによって、狭幅部18における実効屈折率を小さくすることができる。すなわち、狭幅部18は、実効屈折率が低い低屈折率部として機能する。
【0023】
なお、導波路幅が狭い部分での光の閉じ込めが弱くなって放射損失が増加する問題が生じ得る。放射損失は、導波光の波長に依存し、導波光の波長が長いほど大きくなる傾向がある。そこで発明者は、分岐比とのトレードオフを考慮し、損失が少なく分岐比改善効果の得られる好ましい導波路幅について検討した。
【0024】
図3(a)は、図2(b)の構成において狭幅部18の始点における幅を変えた場合の分岐比のスペクトルを示す。図3(b)は、狭幅部18の挿入損失(dB)を示す。狭幅部18の幅は、4.5μm、6.0μm、7.5μmとした。図3(a)を参照して、分岐部12における分岐比は、狭幅部18の幅が広い場合には長波長側で50%からのずれが大きくなっているが、狭幅部18の幅が狭い場合には改善されている。したがって、導波路幅を狭くすることによって、波長依存性を改善することができる。図3(b)を参照して、挿入損失は導波路幅による影響は小さく、この範囲では損失を増やさずに分岐比が改善されている。
【0025】
なお、QPSK(Quadrature Phase Shift Keying)変調器では、高い消光比(例えば、消光比25dB以上)が要求される。例えば、50%±5%(45%〜55%)の範囲内の分岐比が要求される。Cバンド(1530nm〜1565nm)およびLバンド(1565nm〜1625nm)において分岐比が45%〜55%の範囲に入るのは、図3(a)において6.0μm以下の幅の場合である。以上のことから、狭幅部18の幅は、6.0μm以下であることが好ましく、4.5μm以下であることがより好ましい。
【0026】
また、狭幅部18を設ける際には、設計上の問題が生じ得る。導波路を曲げながら幅を変化させるため、パターニングに用いるフォトマスク作成時に描画点算出のためのデータ計算量が膨大になるからである。この場合、描画に要する時間がかかり、パターンの作成やチェックに要する時間が長くなる。また、算出されるデータ量が膨大になるため、データ量制限によるフォトマスク作成不能の状態に陥るおそれも出てくる。そこで本発明者は、導波路の連続性がある程度保たれ、かつデータ量が抑えられるようにデータを離散化して設計することを考案した。サンプルを設計し、試作と評価とを行ったところ、図3(c)に示す波長依存性の小さい分岐比が得られ、設計上の問題もクリアすることが示された。
【0027】
一方で、狭幅部18の幅を狭くし過ぎると、閉じ込め効果が弱まって放射損失が増加する可能性もある。図3(d)は、曲がり導波路11の曲率半径と過剰損失との関係を示す図である。図3(d)を参照して、曲率半径が大きい場合には、狭幅部18の幅が狭くても過剰損失は抑制されている。しかしながら、曲率半径が4mm未満になると、過剰損失が急激に増加する。狭幅部18の幅が狭いほど、過剰損失が大きく増加する。したがって、曲がり導波路11における曲率半径は、4mm以上であることが好ましい。
【0028】
(変形例1−1)
図4(a)は、変形例1−1について説明するための図である。図4(a)を参照して、狭幅部18は、分岐部12に向かって、テーパ状に徐々に(連続的に)狭くなるように形成されていてもよい。この場合、導波路幅の変化に伴う散乱損失を低減することができる。なお、図4(b)を参照して、分岐部12の股の部分が鋭角ではなくてもよい。例えば、分岐部12の股は、幅Gの切り欠きを入れた形状を有していてもよい。この場合、光導波路の光学特性、製造性を安定させることができる。本明細書の他の分岐部についても、同様のことが言える。
【0029】
(変形例1−2)
図4(c)は、変形例1−2について説明するための図である。図4(c)を参照して、狭幅部18は、曲がり導波路11の曲がり部分の途中から徐々に(連続的に)導波路幅が狭くなる部分であってもよい。この場合、導波路幅の変化に伴う散乱損失をより低減することができるとともに、曲がり導波路11をより小型化することができる。
【0030】
なお、図3(d)で説明したように、導波路幅が狭いほど損失が大きくなることから、導波路幅が狭くなるにつれて曲率半径が大きくなるように曲がり導波路11および狭幅部18を形成することが好ましい。この場合、曲がり導波路11の損失を低く抑制できるとともに、曲がり導波路11をより小型化することができる。
【0031】
例えば、図4(b)の例では、曲がり導波路11の曲がり部分の途中から徐々に導波路幅が狭くなっていることから、導波路幅が狭くなるにつれて曲率半径が大きくなっている。なお、損失の波長依存性が大きくなるような場合においては、狭幅部18の始点は、曲がり導波路11の曲がり方向の切換点Aよりも分岐部12側に位置していることが好ましい。
【0032】
(変形例1−3)
曲がり導波路においては、モード分布の中心が導波路の中心軸からずれることがある。この軸ずれは、導波路幅が狭くなるほど大きくなる。したがって、曲がり導波路11と分岐部12との接続箇所における軸ずれによる損失が発生することがある。そこで、狭幅部18のいずれかの箇所において、導波路の中心軸にオフセットを設けてもよい。なお、オフセットの方向は、励起モード、曲がり導波路の長さ、曲がり導波路の幅、曲がり導波路の曲率半径等に応じて決定される。
【0033】
図5(a)は、変形例1−3について説明するための図である。図5(a)を参照して、図4(a)の構成の狭幅部18の始点において、導波路の中心軸にオフセットを設けてもよい。図5(a)の例では、狭幅部18の中心軸を、曲がり導波路11の曲がり方向にシフトさせている。この場合、軸ずれに起因する損失を抑制することができる。
【0034】
(変形例1−4)
図5(b)は、変形例1−4について説明するための図である。図5(b)を参照して、図4(b)の構成の狭幅部18の終点において、導波路の中心軸にオフセットを設けてもよい。この場合においても、軸ずれに起因する損失を抑制することができる。
【0035】
(変形例1−5)
図6(a)は、変形例1−5について説明するための図である。ここで、導波路幅を狭くすると、曲がり部と直線部との間でモード径の差が大きくなる。この場合、モードミスマッチに起因する損失が発生することがある。そこで、図6(a)のように、狭幅部18において、導波路幅を不連続的に狭くしてもよい。すなわち、曲がり導波路11の始点における幅をw1とし、狭幅部18において幅が不連続に狭くなる直前の幅をw2とし、狭幅部18において幅が不連続に狭くなった直後の幅をw3とした場合に、w1>w2>w3の関係が成立していてもよい。この場合、モードミスマッチに起因する損失を抑制することができる。なお、図6(a)の例では中心軸にオフセット設けているが、オフセットを設けていなくてもよい。
【0036】
(変形例1−6)
図6(b)は、変形例1−6について説明するための図である。曲がり導波路11の途中で不要モードを除去するためには、狭幅部18が長いほど好ましい。そこで、狭幅部18は、図6(b)で説明されるように、曲がり導波路11がS字状に形成されている場合には、曲がり導波路11の曲がり方向の切換点Aよりも分岐部12と反対側から分岐部12にかけて設けられていることが好ましい。なお、曲がり導波路11の曲がり方向の切換点Aでの導波路幅が狭くなる。この場合、モードの軸ずれに起因する損失が大きくなるおそれがある。そこで、図6(b)で説明されるように、切換点Aにおいて、導波路の中心軸にオフセットを設けてもよい。
【0037】
(変形例1−7)
図6(c)は、変形例1−7について説明するための図である。図6(c)を参照して、分岐部12の分岐導波路の幅も、曲がり導波路11側から反対側にかけて徐々にまたは段階的に広くなっていてもよい。この場合、分岐部12の分岐導波路の幅が中間導波路13,14(相互作用部)の幅よりも狭くなる。それにより、分岐後の不要モードの発生を抑制することができるとともに、相互作用部における変調効率の低下を抑制することができる。なお、分岐部12における分岐比を50%により近づけるために、分岐部12の2つの分岐導波路の幅を、導波方向において同一の割合で変化させることが好ましい。
【0038】
なお、上記各例において、低屈折率部として機能する狭幅部18は相互作用部よりも前段に設けられているが、相互作用部よりも後段に設けられていてもよい。具体的には、狭幅部18は、曲がり導波路16の合流部15と反対側の端から合流部15までの間の導波路に設けられていてもよい。この場合においては、合流部15は、曲がり導波路に接続されて分岐する分岐部に相当する。また、曲がり導波路16の出射口が、曲がり導波路の分岐部と反対側の始点に相当する。
【0039】
(第2の実施形態)
第2の実施形態においては、QPSK(Quadrature Phase Shift Keying)変調器について説明する。図7(a)は、第2の実施形態に係るQPSK光変調器100aの模式的な平面図である。図7(a)を参照して、QPSK光変調器100aは、2つのマッハツェンダ型変調器(第1マッハツェンダ型光変調器および第2マッハツェンダ型光変調器)が形成された電気光学基板を備える。第1マッハツェンダ型光変調器および第2マッハツェンダ型光変調器の少なくとも一方は、第1の実施形態に係るマッハツェンダ型光変調器100と同様の構成を有する。
【0040】
第1マッハツェンダ型光変調器は、曲がり導波路11a、分岐部12a、中間導波路13a,14a、合流部15a、および曲がり導波路16aを備える。第2マッハツェンダ型光変調器は、曲がり導波路11b、分岐部12b、中間導波路13b,14b、合流部15b、および曲がり導波路16bを備える。
【0041】
QPSK光変調器100aは、光入力端に分岐部19を備え、光出力端に合流部20を備える。曲がり導波路11aおよび曲がり導波路11bは、分岐部19から分岐する。曲がり導波路16aおよび曲がり導波路16bは、合流部20において合流する。
【0042】
図7(b)は、分岐部19、曲がり導波路11a,11b、および分岐部12a,12bの拡大図である。図7(b)の例では、曲がり導波路11aの始点から分岐部12aに至るまでの導波路に狭幅部18aが設けられているとともに、曲がり導波路11bの始点から分岐部12bに至るまでの導波路に狭幅部18bが設けられている。この場合、分岐部12a,12bのいずれにおいても、分岐比の劣化を抑制することができる。
【0043】
図8は、分岐部19、曲がり導波路11a,11b、および分岐部12a,12bの他の例を説明するための図である。図8の例では、分岐部12aおよび分岐部12bは、QPSK光変調器100aの長手方向(光導波方向)において、異なる位置に配置されていてもよい。この場合、曲がり導波路11aと曲がり導波路11bとの間で、曲率半径、角度等を異ならせることができる。それにより、狭幅部18aおよび狭幅部18bの形状を個別に設定することができる。
【0044】
例えば、狭幅部18aの導波方向における長さは、狭幅部18bの導波方向における長さと異なっていてもよい。また、狭幅部18aの幅は、狭幅部18bの幅と異なっていてもよい。さらに、狭幅部18a,18bの中心軸にオフセットを設ける場合に、各オフセット量は互いに異なっていてもよい。また、分岐部12aの始点の幅は、分岐部12bの始点の幅と異なっていてもよい。このように、各パラメータを最適化することによって、各導波路における結合損失を低減化することができる。
【0045】
(第3の実施形態)
第3の実施形態においては、m×nの光カプラについて説明する。一例として、2×2の光カプラについて説明する。図9(a)は、本実施形態に係る光カプラ40の模式的平面図である。図9(a)を参照して、光カプラ40は、2本の入力導波路41,42、および2本出力導波路43,44を備える。入力導波路41,42および出力導波路43,44の少なくともいずれか1本は、第1の実施形態に係る曲がり導波路11および狭幅部18を備える。なお、第1の実施形態に係る分岐部12は、本実施形態においては光カプラ40が対応する。
【0046】
図9(a)の例では、入力導波路41が曲がり導波路11および狭幅部18を含む。図9(a)の例では、曲がり導波路11の始点から光カプラ40に至るまでの導波路に狭幅部18が設けられている。この場合、入力導波路41から入力される光に対する分岐比の劣化を抑制することができる。なお、光カプラ40においては、好ましい分岐比は、50%に限るものではなく、光カプラに要求される所望の値に設定される。
【0047】
図9(b)を参照して、入力導波路41,42および出力導波路43,44のいずれにおいても、狭幅部が設けられていてもよい。この場合において、少なくとも2本の導波路において、光カプラ40に向かって、同じ割合で幅が狭くなっていてもよい。この場合、当該2本の導波路の損失および波長特性を等しくすることができる。また、設計時と製造時との差に起因する2本の導波路の損失差のばらつきを抑制することができる。その結果、広波長帯で製造ばらつきの小さい消光比特性を得ることができる。以上の観点から、光カプラ40に同じ側から接続する2本の導波路が、光カプラ40の中心軸について対称の位置に結合していてもよい。
【0048】
図9(c)を参照して、狭幅部18よりも光カプラ40側において、導波路幅が広くなっていてもよい。この場合、導波路幅を狭くすることによって生じるモードフィールドの広がりに起因する結合損失を抑制することができる。
【0049】
以上、各実施形態において、導波路幅を狭くすることによって実効屈折率を低くする例について説明した。図10(a)〜図10(c)は、実効屈折率の他の調整手法について説明するための図である。上述したように、実効屈折率は、導波路の断面積、導波路幅、導波路深さ、導波路の不純物濃度等に基づいて調整することができる。
【0050】
まず、導波路の断面積を小さくすることによって、実効屈折率を小さくすることができる。具体的には、図10(a)を参照して、導波路幅wb(<導波路幅wa)とすることによって、導波路幅wbの導波路の実効屈折率を導波路幅waの導波路の実効屈折率よりも小さくすることができる。また、図10(b)を参照して、導波路深さd2(<導波路深さd1)とすることによって、導波路深さd2の導波路の実効屈折率を導波路深さd1の導波路の実効屈折率よりも小さくすることができる。
【0051】
また、図10(c)を参照して、導波路の不純物濃度n2(<不純物濃度n1)とすることによって、不純物濃度n2の導波路の実効屈折率を不純物濃度n1の導波路の実効屈折率よりも小さくすることができる。
【0052】
さらに、導波路の構成は、上記各例に限られない。他の例として、シリコン導波路を用いてもよい。図11は、シリコン導波路を説明するための断面図である。図11を参照して、シリコン基板50上に下部クラッド層60および上部クラッド層70を備え、光導波路80は、下部クラッド層60に形成されていてもよい。例えば、下部クラッド層60および上部クラッド層70として、石英系ガラスを用いることができる。また、光導波路80は、下部クラッド層60に対して、固相拡散法またはイオンプレーティング法等によって、Ge等を注入することによって形成することができる。このようなシリコン導波路に上記各例を適用してもよい。
【0053】
また、上記各例においては、曲がり導波路としてS字状の曲がり導波路を用いているが、それに限られない。分岐部における分岐比のずれは、曲がり導波路と分岐部との結合に起因して生じるものである。したがって、S字に曲がっていなくても、一方側にだけ曲がる曲がり導波路に対しても、上記各例を適用することができる。
【0054】
(第4の実施形態)
図12は、第4の実施形態に係る光送信機200の全体構成を説明するためのブロック図である。図12を参照して、光送信機200は、光デバイス210、データ生成部220等を備える。光デバイス210は、上記いずれかの光変調器を備えた半導体レーザ等である。データ生成部220は、光デバイス210を駆動するための駆動信号を光デバイスに送信する。光デバイスは、データ生成部220からの駆動信号に応じて光変調信号を出力する。出力された光変調信号は、光ファイバ等を介して外部に出力される。光デバイス210に搭載される光変調器は、小型化されるとともに高消光比を有することから、光送信機200は、高特性光信号を出力することができる。
【0055】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0056】
(付記)
(付記1)
基板に形成され、
曲がり導波路と、前記曲がり導波路に接続されて分岐する分岐部と、を備え、
前記曲がり導波路の前記分岐部と反対側の始点から前記分岐部に至るまでの導波路において、前記曲がり導波路の始点の実効屈折率よりも低い実効屈折率を有する低屈折率部が設けられていることを特徴とする光導波路。
(付記2)
前記低屈折率部の実効屈折率は、前記分岐部に向かって連続的にまたは段階的に低くなることを特徴とする付記1記載の光導波路。
(付記3)
前記低屈折率部は、前記曲がり導波路の途中に設けられていることを特徴とする付記1または2記載の光導波路。
(付記4)
前記曲がり導波路の曲率半径は、4mm以上であることを特徴とする付記3記載の光導波路。
(付記5)
前記低屈折率部の曲率半径は、実効屈折率の低下に伴って大きくなることを特徴とする付記3または4記載の光導波路。
(付記6)
前記低屈折率部において、導波路の中心軸にオフセットが設けられていることを特徴とする付記1〜5のいずれかに記載の光導波路。
(付記7)
前記曲がり導波路は、S字状の曲がり導波路であり、
前記低屈折率部の前記分岐部と反対側の始点は、前記曲がり導波路において、前記曲がり導波路の曲がり方向の切換点よりも前記分岐部と反対側に位置することを特徴とする付記1〜6のいずれかに記載の光導波路。
(付記8)
前記曲がり方向の切換点において、導波路の中心軸にオフセットが設けられていることを特徴とする付記7記載の光導波路。
(付記9)
前記曲がり導波路は、S字状の曲がり導波路であり、
前記低屈折率部の前記分岐部と反対側の始点は、前記曲がり導波路において、前記曲がり導波路の曲がり方向の切換点よりも前記分岐部側に位置することを特徴とする付記1〜6のいずれかに記載の光導波路。
(付記10)
前記分岐部の分岐導波路の実効屈折率は、分岐点から反対側にかけて徐々にまたは段階的に大きくなることを特徴とする付記1〜9のいずれかに記載の光導波路。
(付記11)
前記各分岐導波路の実効屈折率は、光導波方向において同じ割合で変化することを特徴とする付記10記載の光導波路。
(付記12)
前記低屈折率部は、前記曲がり導波路の始点の断面積よりも小さい断面積を有することによって、低い実効屈折率を有することを特徴とする付記1〜11のいずれかに記載の光導波路。
(付記13)
前記低屈折率部は、前記曲がり導波路の始点の幅よりも小さい幅を有することによって、低い実効屈折率を有することを特徴とする付記1〜11のいずれかに記載の光導波路。
(付記14)
前記低屈折率部における最小幅は、6μm以下であることを特徴とする付記13記載の光導波路。
(付記15)
前記低屈折率部は、前記曲がり導波路の始点よりも浅く形成されることによって、低い実効屈折率を有することを特徴とする付記1〜11のいずれかに記載の光導波路。
(付記16)
前記低屈折率部は、前記曲がり導波路の始点よりも低い不純物濃度を有することによって、低い実効屈折率を有することを特徴とする付記1〜11のいずれかに記載の光導波路。
(付記17)
付記1〜16のいずれかに記載の光導波路を、光入力側および光出力側の少なくとも一方の分岐箇所に備えるとともに、前記基板は電気光学効果を有することを特徴とするマッハツェンダ型の光変調器。
(付記18)
前記光変調器は、1つの光導波路が第1分岐部において2分岐した後に2つの第2分岐部においてさらに2分岐し、2つの第1合流部において各2つの導波路が合流した後に第2合流部において1つの導波路に合流するQPSK光変調器であり、
前記光導波路は、前記第2分岐部および前記第1合流部のいずれかの箇所に設けられていることを特徴とする付記17記載の光変調器。
(付記19)
前記2つの第2分岐部および/または前記2つの第1合流部は、前記光変調器の長手方向において、異なる位置に配置されていることを特徴とする付記18記載の光変調器。
(付記20)
付記1〜16のいずれかに記載の光導波路を入力導波路および出力導波路の少なくとも一方に備えることを特徴とする光カプラ。
【符号の説明】
【0057】
10 基板
11,16 曲がり導波路
12 分岐部
13,14 中間導波路
15 合流部
18 狭幅部
40 光カプラ
100 光変調器
200 光送信機
【技術分野】
【0001】
本発明は、光導波路、光変調器、および、光カプラに関する。
【背景技術】
【0002】
LiNbO3(LN)基板、LiTaO2基板等の電気光学結晶を用いた光導波路デバイスが開発されている。これらの光導波路デバイスは、結晶基板上の一部にチタンなどの金属膜を形成し熱拡散させる、あるいはパターニング後に安息香酸中でプロトン交換するなどして光導波路を形成した後、光導波路近傍に電極を設けることで形成される。このような光導波路デバイスとして、例えばマッハツェンダ型光変調器があげられる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−53086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
マッハツェンダ型光変調器では、曲がり導波路の後段にY字状の分岐部が設けられることがある。この構成では、曲がり導波路中で偏ったモードが分岐部に入射され、分岐比が50%からずれることがある。その結果、マッハツェンダの消光比が劣化するという問題が生じ得る。分岐比を50%に近づけるために分岐部前段に直線部を設けることもできるが、この場合においては光変調器が大型化するなどの問題が生じる。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、大型化を抑制しつつ分岐比の劣化を抑制することができる光導波路、光変調器、および、光カプラを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、明細書開示の光導波路は、基板に形成され、曲がり導波路と、前記曲がり導波路に接続されて分岐する分岐部と、を備え、前記曲がり導波路の前記分岐部と反対側の始点から前記分岐部に至るまでの導波路において、前記曲がり導波路の始点の実効屈折率よりも低い実効屈折率を有する低屈折率部が設けられているものである。
【0007】
上記課題を解決するために、明細書開示の光変調器は、上記光導波路を、光入力側および光出力側の少なくとも一方の分岐箇所に備えるものである。
【0008】
上記課題を解決するために、明細書開示の光カプラは、上記光導波路を入力導波路および出力導波路の少なくとも一方に備えるものである。
【発明の効果】
【0009】
明細書開示の光導波路、マッハツェンダ型光変調器、および光カプラによれば、大型化を抑制しつつ分岐比の劣化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】(a)は第1の実施形態に係るマッハツェンダ型の光変調器の模式的な平面図であり、(b)は(a)のA−A線断面図である。
【図2】(a)は比較例を説明するための図であり、(b)は第1の実施形態を説明するための図である。
【図3】(a)は図2(b)の構成において狭幅部の始点における幅を変えた場合の分岐比のスペクトルを示し、(b)は挿入損失(dB)を示し、(c)は波長依存性を示し、(d)は、曲がり導波路の曲率半径と過剰損失との関係を示す図である。
【図4】(a)は変形例1−1について説明するための図であり、(b)は変形例1−1の他の例について説明するための図であり、(c)は変形例1−2について説明するための図である。
【図5】(a)は変形例1−3について説明するための図であり、(b)は変形例1−4について説明するための図である。
【図6】(a)は変形例1−5について説明するための図であり、(b)は変形例1−6について説明するための図であり、(c)は変形例1−7について説明するための図である。
【図7】(a)は第2の実施形態に係るQPSK光変調器の模式的な平面図であり、(b)は分岐部、曲がり導波路および分岐部の拡大図である。
【図8】分岐部、曲がり導波路および分岐部の他の例を説明するための図である。
【図9】(a)〜(c)は光カプラについて説明するための図である。
【図10】(a)〜(c)は実効屈折率の調整手法について説明するための図である。
【図11】シリコン導波路を説明するための断面図である。
【図12】第4の実施形態に係る光送信機の全体構成を説明するためのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しつつ、実施の形態について説明する。
【0012】
(第1の実施形態)
図1(a)は、第1の実施形態に係るマッハツェンダ型の光変調器100の模式的な平面図である。図1(b)は、図1(a)のA−A線断面図である。図1(a)および図1(b)を参照して、光変調器100は、曲がり導波路11、分岐部12、中間導波路13,14、合流部15、および曲がり導波路16が形成された基板10を備える。基板10は、LiNb3(LN)基板、LiTaO2基板等の電気光学結晶を用いた電気光学基板である。
【0013】
曲がり導波路11、分岐部12、中間導波路13,14、合流部15および曲がり導波路16は、基板10にTi(チタン)等の金属を熱拡散させることによって形成される。曲がり導波路11の一端は、光変調器100の光入力端として機能する。曲がり導波路11の他端は、分岐部12の一端に接続される。分岐部12は、Y字分岐部を介して、曲がり導波路11と反対側に向かって分岐する。分岐部12の各分岐導波路は、中間導波路13,14のそれぞれの一端に接続される。中間導波路13,14は、互いに平行に配置されている。中間導波路13,14の他端は、合流部15のY字結合部を介して曲がり導波路16の一端に接続される。曲がり導波路16の他端は、光変調器100の光出力端として機能する。以上の構成により、曲がり導波路11、分岐部12、中間導波路13,14、合流部15および曲がり導波路16は、光導波路を構成する。
【0014】
図1(b)を参照して、基板10の光導波路側の面には、バッファ層30が設けられている。それにより、光導波路は、バッファ層30によって覆われている。バッファ層30は、光導波路を伝播する光が後述する電極によって吸収されることを防ぐために設けられている。バッファ層30は、例えば、厚さ0.2μm〜2μm程度のSiO2等である。
【0015】
中間導波路13上には、バッファ層30を介して、信号電極21が設けられている、中間導波路14上には、バッファ層30を介して、接地電極22が設けられている。それにより、信号電極21および接地電極22は、コプレーナ電極を構成する。基板10としてZカット基板を用いる場合には、Z方向の電解に起因する屈折率変化を利用するために、信号電極21および接地電極22は、中間導波路の真上に配置される。
【0016】
光変調器100を高速で駆動する場合、信号電極21および接地電極22の終端を抵抗で接続することによって進行波電極を構成し、進行波電極の入力側からマイクロ波信号を印加する。この場合、電界によって中間導波路13,14の屈折率が一例として+Δn、−Δnのように変化する。それにより、中間導波路13,14間の位相差が変化するため、マッハツェンダ干渉が生じる。その結果、曲がり導波路16の他端から、強度変調された信号光が出力される。電極の断面形状を変化させることでマイクロ波の実効屈折率を制御し、光の速度とマイクロ波の速度とを整合させることによって高速の光応答特性を得ることができる。
【0017】
図1(a)を参照して、ファイバとの結合を考慮し、導波路の入出力端(曲がり導波路11の一端および曲がり導波路16の他端)は、光変調器100の幅方向のほぼ中央に配置される。なお、光変調器100の幅方向は、図1(a)では紙面における上下方向と一致する。一方、中間導波路が形成される相互作用部では、電極の入出力部(ボンディングパッド等)が光変調器100の幅方向のいずれか一方側に配置される。したがって、中間導波路は、光変調器100の幅方向の他方側に偏って配置される。この構成によって、光変調器100の幅を狭くすることができる。しかしながら、導波路の入出力部と相互作用部との間で、導波路の位置が異なってしまう。そこで、曲がり導波路11,16を用いて導波路をS字状に曲げることが有効である。
【0018】
しかしながら、曲がり導波路11,16を設ける場合、曲がり導波路11の後段に分岐部12が配置されることになる。この場合、曲がり導波路11中で偏ったモードが分岐部12に入射され、分岐比が50%からずれる。その結果、マッハツェンダの消光比が劣化するという問題が生じ得る。そこで、図2(a)で説明される比較例のように、分岐部12の前段に所定の長さ以上の直線導波路17を設けることが考えられる。しかしながら、このような構成では、光変調器全体が大型化する。また、分岐比に波長依存性が生じることがある。
【0019】
マッハツェンダの消光比の劣化は、分岐部でパワーが等分されないこと、導波路伝播損失がパスにより異なること、等のいくつかの要因で生じる。消光比劣化を起こす可能性があることに気づいた本発明者は、原因を究明するために、実験および解析の両面から綿密な調査を行った。実験としては、変調器各部でどの程度の損失が発生しているのかを詳細に調査し、消光比劣化に起因する箇所の特定を行った。本発明者は、原因究明用サンプルの設計、試作、評価、分析等を繰り返し、その結果から、分岐部での分岐比のずれが主要因である可能性が高いと判断した。
【0020】
本発明者は、この考察に基づき、解析による理論の裏づけを行った。導波路シミュレーションとしてビーム伝播法を用い、モデルの構築、解析パラメータの設定、および計算を繰り返し、実測値からのフィードバックを通して解析精度を高め、解析モデルが妥当であることを確認した。また、得られた解析結果を分析し、曲がり導波路中で偏った分布をもつ光の伝播モードが分岐部に入射し、そのために分岐部の分岐比が50%からずれていることが消光比劣化の主要因であると結論づけた。
【0021】
この分析結果に基づき、本発明者は、消光比改善のための設計手法を検討した。分岐部の種々のパラメータを変えてシミュレーションを繰り返し、各パラメータの消光比への影響を調査した。分岐部の前に直線導波路を設ける手法では、分岐比を50%に近づける効果はあるが、光変調器の大型化および波長依存性の問題が生じ得る。そこで、伝播モードの偏りの影響を抑えるという観点から、本発明者は、鋭意研究の末、曲がり導波路の分岐部と反対側の始点から分岐部に至るまでの導波路において、実効屈折率を低くする方法を発案した。この方法によれば、曲がり導波路内で偏ったモードが分岐導波路内の非対称モードと結合しなくなる。それにより、モードの対称性が改善され、分岐比を50%または50%に近づけることができる。なお、実効屈折率は、導波路の断面積を変化させることによって変化させてもよく、導波路の幅または深さを変化させることによって変化させてもよく、導波路中の不純物濃度を変化させることによって変化させてもよい。以下の例では、導波路の幅を変化させることによって実効屈折率を変化させる。
【0022】
図2(b)の例では、導波路幅の狭い狭幅部18は、曲がり導波路11の分岐部12側端に設けられている。具体的には、曲がり導波路11の分岐部12と反対側の始点における幅をw1とし、狭幅部18における幅をw2とした場合に、w1>w2の関係が成立する。また、図2(b)の例では、狭幅部18の分岐部12と反対側の始点において、幅が不連続に小さくなっている。このように、導波路幅を小さくすることによって、狭幅部18における実効屈折率を小さくすることができる。すなわち、狭幅部18は、実効屈折率が低い低屈折率部として機能する。
【0023】
なお、導波路幅が狭い部分での光の閉じ込めが弱くなって放射損失が増加する問題が生じ得る。放射損失は、導波光の波長に依存し、導波光の波長が長いほど大きくなる傾向がある。そこで発明者は、分岐比とのトレードオフを考慮し、損失が少なく分岐比改善効果の得られる好ましい導波路幅について検討した。
【0024】
図3(a)は、図2(b)の構成において狭幅部18の始点における幅を変えた場合の分岐比のスペクトルを示す。図3(b)は、狭幅部18の挿入損失(dB)を示す。狭幅部18の幅は、4.5μm、6.0μm、7.5μmとした。図3(a)を参照して、分岐部12における分岐比は、狭幅部18の幅が広い場合には長波長側で50%からのずれが大きくなっているが、狭幅部18の幅が狭い場合には改善されている。したがって、導波路幅を狭くすることによって、波長依存性を改善することができる。図3(b)を参照して、挿入損失は導波路幅による影響は小さく、この範囲では損失を増やさずに分岐比が改善されている。
【0025】
なお、QPSK(Quadrature Phase Shift Keying)変調器では、高い消光比(例えば、消光比25dB以上)が要求される。例えば、50%±5%(45%〜55%)の範囲内の分岐比が要求される。Cバンド(1530nm〜1565nm)およびLバンド(1565nm〜1625nm)において分岐比が45%〜55%の範囲に入るのは、図3(a)において6.0μm以下の幅の場合である。以上のことから、狭幅部18の幅は、6.0μm以下であることが好ましく、4.5μm以下であることがより好ましい。
【0026】
また、狭幅部18を設ける際には、設計上の問題が生じ得る。導波路を曲げながら幅を変化させるため、パターニングに用いるフォトマスク作成時に描画点算出のためのデータ計算量が膨大になるからである。この場合、描画に要する時間がかかり、パターンの作成やチェックに要する時間が長くなる。また、算出されるデータ量が膨大になるため、データ量制限によるフォトマスク作成不能の状態に陥るおそれも出てくる。そこで本発明者は、導波路の連続性がある程度保たれ、かつデータ量が抑えられるようにデータを離散化して設計することを考案した。サンプルを設計し、試作と評価とを行ったところ、図3(c)に示す波長依存性の小さい分岐比が得られ、設計上の問題もクリアすることが示された。
【0027】
一方で、狭幅部18の幅を狭くし過ぎると、閉じ込め効果が弱まって放射損失が増加する可能性もある。図3(d)は、曲がり導波路11の曲率半径と過剰損失との関係を示す図である。図3(d)を参照して、曲率半径が大きい場合には、狭幅部18の幅が狭くても過剰損失は抑制されている。しかしながら、曲率半径が4mm未満になると、過剰損失が急激に増加する。狭幅部18の幅が狭いほど、過剰損失が大きく増加する。したがって、曲がり導波路11における曲率半径は、4mm以上であることが好ましい。
【0028】
(変形例1−1)
図4(a)は、変形例1−1について説明するための図である。図4(a)を参照して、狭幅部18は、分岐部12に向かって、テーパ状に徐々に(連続的に)狭くなるように形成されていてもよい。この場合、導波路幅の変化に伴う散乱損失を低減することができる。なお、図4(b)を参照して、分岐部12の股の部分が鋭角ではなくてもよい。例えば、分岐部12の股は、幅Gの切り欠きを入れた形状を有していてもよい。この場合、光導波路の光学特性、製造性を安定させることができる。本明細書の他の分岐部についても、同様のことが言える。
【0029】
(変形例1−2)
図4(c)は、変形例1−2について説明するための図である。図4(c)を参照して、狭幅部18は、曲がり導波路11の曲がり部分の途中から徐々に(連続的に)導波路幅が狭くなる部分であってもよい。この場合、導波路幅の変化に伴う散乱損失をより低減することができるとともに、曲がり導波路11をより小型化することができる。
【0030】
なお、図3(d)で説明したように、導波路幅が狭いほど損失が大きくなることから、導波路幅が狭くなるにつれて曲率半径が大きくなるように曲がり導波路11および狭幅部18を形成することが好ましい。この場合、曲がり導波路11の損失を低く抑制できるとともに、曲がり導波路11をより小型化することができる。
【0031】
例えば、図4(b)の例では、曲がり導波路11の曲がり部分の途中から徐々に導波路幅が狭くなっていることから、導波路幅が狭くなるにつれて曲率半径が大きくなっている。なお、損失の波長依存性が大きくなるような場合においては、狭幅部18の始点は、曲がり導波路11の曲がり方向の切換点Aよりも分岐部12側に位置していることが好ましい。
【0032】
(変形例1−3)
曲がり導波路においては、モード分布の中心が導波路の中心軸からずれることがある。この軸ずれは、導波路幅が狭くなるほど大きくなる。したがって、曲がり導波路11と分岐部12との接続箇所における軸ずれによる損失が発生することがある。そこで、狭幅部18のいずれかの箇所において、導波路の中心軸にオフセットを設けてもよい。なお、オフセットの方向は、励起モード、曲がり導波路の長さ、曲がり導波路の幅、曲がり導波路の曲率半径等に応じて決定される。
【0033】
図5(a)は、変形例1−3について説明するための図である。図5(a)を参照して、図4(a)の構成の狭幅部18の始点において、導波路の中心軸にオフセットを設けてもよい。図5(a)の例では、狭幅部18の中心軸を、曲がり導波路11の曲がり方向にシフトさせている。この場合、軸ずれに起因する損失を抑制することができる。
【0034】
(変形例1−4)
図5(b)は、変形例1−4について説明するための図である。図5(b)を参照して、図4(b)の構成の狭幅部18の終点において、導波路の中心軸にオフセットを設けてもよい。この場合においても、軸ずれに起因する損失を抑制することができる。
【0035】
(変形例1−5)
図6(a)は、変形例1−5について説明するための図である。ここで、導波路幅を狭くすると、曲がり部と直線部との間でモード径の差が大きくなる。この場合、モードミスマッチに起因する損失が発生することがある。そこで、図6(a)のように、狭幅部18において、導波路幅を不連続的に狭くしてもよい。すなわち、曲がり導波路11の始点における幅をw1とし、狭幅部18において幅が不連続に狭くなる直前の幅をw2とし、狭幅部18において幅が不連続に狭くなった直後の幅をw3とした場合に、w1>w2>w3の関係が成立していてもよい。この場合、モードミスマッチに起因する損失を抑制することができる。なお、図6(a)の例では中心軸にオフセット設けているが、オフセットを設けていなくてもよい。
【0036】
(変形例1−6)
図6(b)は、変形例1−6について説明するための図である。曲がり導波路11の途中で不要モードを除去するためには、狭幅部18が長いほど好ましい。そこで、狭幅部18は、図6(b)で説明されるように、曲がり導波路11がS字状に形成されている場合には、曲がり導波路11の曲がり方向の切換点Aよりも分岐部12と反対側から分岐部12にかけて設けられていることが好ましい。なお、曲がり導波路11の曲がり方向の切換点Aでの導波路幅が狭くなる。この場合、モードの軸ずれに起因する損失が大きくなるおそれがある。そこで、図6(b)で説明されるように、切換点Aにおいて、導波路の中心軸にオフセットを設けてもよい。
【0037】
(変形例1−7)
図6(c)は、変形例1−7について説明するための図である。図6(c)を参照して、分岐部12の分岐導波路の幅も、曲がり導波路11側から反対側にかけて徐々にまたは段階的に広くなっていてもよい。この場合、分岐部12の分岐導波路の幅が中間導波路13,14(相互作用部)の幅よりも狭くなる。それにより、分岐後の不要モードの発生を抑制することができるとともに、相互作用部における変調効率の低下を抑制することができる。なお、分岐部12における分岐比を50%により近づけるために、分岐部12の2つの分岐導波路の幅を、導波方向において同一の割合で変化させることが好ましい。
【0038】
なお、上記各例において、低屈折率部として機能する狭幅部18は相互作用部よりも前段に設けられているが、相互作用部よりも後段に設けられていてもよい。具体的には、狭幅部18は、曲がり導波路16の合流部15と反対側の端から合流部15までの間の導波路に設けられていてもよい。この場合においては、合流部15は、曲がり導波路に接続されて分岐する分岐部に相当する。また、曲がり導波路16の出射口が、曲がり導波路の分岐部と反対側の始点に相当する。
【0039】
(第2の実施形態)
第2の実施形態においては、QPSK(Quadrature Phase Shift Keying)変調器について説明する。図7(a)は、第2の実施形態に係るQPSK光変調器100aの模式的な平面図である。図7(a)を参照して、QPSK光変調器100aは、2つのマッハツェンダ型変調器(第1マッハツェンダ型光変調器および第2マッハツェンダ型光変調器)が形成された電気光学基板を備える。第1マッハツェンダ型光変調器および第2マッハツェンダ型光変調器の少なくとも一方は、第1の実施形態に係るマッハツェンダ型光変調器100と同様の構成を有する。
【0040】
第1マッハツェンダ型光変調器は、曲がり導波路11a、分岐部12a、中間導波路13a,14a、合流部15a、および曲がり導波路16aを備える。第2マッハツェンダ型光変調器は、曲がり導波路11b、分岐部12b、中間導波路13b,14b、合流部15b、および曲がり導波路16bを備える。
【0041】
QPSK光変調器100aは、光入力端に分岐部19を備え、光出力端に合流部20を備える。曲がり導波路11aおよび曲がり導波路11bは、分岐部19から分岐する。曲がり導波路16aおよび曲がり導波路16bは、合流部20において合流する。
【0042】
図7(b)は、分岐部19、曲がり導波路11a,11b、および分岐部12a,12bの拡大図である。図7(b)の例では、曲がり導波路11aの始点から分岐部12aに至るまでの導波路に狭幅部18aが設けられているとともに、曲がり導波路11bの始点から分岐部12bに至るまでの導波路に狭幅部18bが設けられている。この場合、分岐部12a,12bのいずれにおいても、分岐比の劣化を抑制することができる。
【0043】
図8は、分岐部19、曲がり導波路11a,11b、および分岐部12a,12bの他の例を説明するための図である。図8の例では、分岐部12aおよび分岐部12bは、QPSK光変調器100aの長手方向(光導波方向)において、異なる位置に配置されていてもよい。この場合、曲がり導波路11aと曲がり導波路11bとの間で、曲率半径、角度等を異ならせることができる。それにより、狭幅部18aおよび狭幅部18bの形状を個別に設定することができる。
【0044】
例えば、狭幅部18aの導波方向における長さは、狭幅部18bの導波方向における長さと異なっていてもよい。また、狭幅部18aの幅は、狭幅部18bの幅と異なっていてもよい。さらに、狭幅部18a,18bの中心軸にオフセットを設ける場合に、各オフセット量は互いに異なっていてもよい。また、分岐部12aの始点の幅は、分岐部12bの始点の幅と異なっていてもよい。このように、各パラメータを最適化することによって、各導波路における結合損失を低減化することができる。
【0045】
(第3の実施形態)
第3の実施形態においては、m×nの光カプラについて説明する。一例として、2×2の光カプラについて説明する。図9(a)は、本実施形態に係る光カプラ40の模式的平面図である。図9(a)を参照して、光カプラ40は、2本の入力導波路41,42、および2本出力導波路43,44を備える。入力導波路41,42および出力導波路43,44の少なくともいずれか1本は、第1の実施形態に係る曲がり導波路11および狭幅部18を備える。なお、第1の実施形態に係る分岐部12は、本実施形態においては光カプラ40が対応する。
【0046】
図9(a)の例では、入力導波路41が曲がり導波路11および狭幅部18を含む。図9(a)の例では、曲がり導波路11の始点から光カプラ40に至るまでの導波路に狭幅部18が設けられている。この場合、入力導波路41から入力される光に対する分岐比の劣化を抑制することができる。なお、光カプラ40においては、好ましい分岐比は、50%に限るものではなく、光カプラに要求される所望の値に設定される。
【0047】
図9(b)を参照して、入力導波路41,42および出力導波路43,44のいずれにおいても、狭幅部が設けられていてもよい。この場合において、少なくとも2本の導波路において、光カプラ40に向かって、同じ割合で幅が狭くなっていてもよい。この場合、当該2本の導波路の損失および波長特性を等しくすることができる。また、設計時と製造時との差に起因する2本の導波路の損失差のばらつきを抑制することができる。その結果、広波長帯で製造ばらつきの小さい消光比特性を得ることができる。以上の観点から、光カプラ40に同じ側から接続する2本の導波路が、光カプラ40の中心軸について対称の位置に結合していてもよい。
【0048】
図9(c)を参照して、狭幅部18よりも光カプラ40側において、導波路幅が広くなっていてもよい。この場合、導波路幅を狭くすることによって生じるモードフィールドの広がりに起因する結合損失を抑制することができる。
【0049】
以上、各実施形態において、導波路幅を狭くすることによって実効屈折率を低くする例について説明した。図10(a)〜図10(c)は、実効屈折率の他の調整手法について説明するための図である。上述したように、実効屈折率は、導波路の断面積、導波路幅、導波路深さ、導波路の不純物濃度等に基づいて調整することができる。
【0050】
まず、導波路の断面積を小さくすることによって、実効屈折率を小さくすることができる。具体的には、図10(a)を参照して、導波路幅wb(<導波路幅wa)とすることによって、導波路幅wbの導波路の実効屈折率を導波路幅waの導波路の実効屈折率よりも小さくすることができる。また、図10(b)を参照して、導波路深さd2(<導波路深さd1)とすることによって、導波路深さd2の導波路の実効屈折率を導波路深さd1の導波路の実効屈折率よりも小さくすることができる。
【0051】
また、図10(c)を参照して、導波路の不純物濃度n2(<不純物濃度n1)とすることによって、不純物濃度n2の導波路の実効屈折率を不純物濃度n1の導波路の実効屈折率よりも小さくすることができる。
【0052】
さらに、導波路の構成は、上記各例に限られない。他の例として、シリコン導波路を用いてもよい。図11は、シリコン導波路を説明するための断面図である。図11を参照して、シリコン基板50上に下部クラッド層60および上部クラッド層70を備え、光導波路80は、下部クラッド層60に形成されていてもよい。例えば、下部クラッド層60および上部クラッド層70として、石英系ガラスを用いることができる。また、光導波路80は、下部クラッド層60に対して、固相拡散法またはイオンプレーティング法等によって、Ge等を注入することによって形成することができる。このようなシリコン導波路に上記各例を適用してもよい。
【0053】
また、上記各例においては、曲がり導波路としてS字状の曲がり導波路を用いているが、それに限られない。分岐部における分岐比のずれは、曲がり導波路と分岐部との結合に起因して生じるものである。したがって、S字に曲がっていなくても、一方側にだけ曲がる曲がり導波路に対しても、上記各例を適用することができる。
【0054】
(第4の実施形態)
図12は、第4の実施形態に係る光送信機200の全体構成を説明するためのブロック図である。図12を参照して、光送信機200は、光デバイス210、データ生成部220等を備える。光デバイス210は、上記いずれかの光変調器を備えた半導体レーザ等である。データ生成部220は、光デバイス210を駆動するための駆動信号を光デバイスに送信する。光デバイスは、データ生成部220からの駆動信号に応じて光変調信号を出力する。出力された光変調信号は、光ファイバ等を介して外部に出力される。光デバイス210に搭載される光変調器は、小型化されるとともに高消光比を有することから、光送信機200は、高特性光信号を出力することができる。
【0055】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0056】
(付記)
(付記1)
基板に形成され、
曲がり導波路と、前記曲がり導波路に接続されて分岐する分岐部と、を備え、
前記曲がり導波路の前記分岐部と反対側の始点から前記分岐部に至るまでの導波路において、前記曲がり導波路の始点の実効屈折率よりも低い実効屈折率を有する低屈折率部が設けられていることを特徴とする光導波路。
(付記2)
前記低屈折率部の実効屈折率は、前記分岐部に向かって連続的にまたは段階的に低くなることを特徴とする付記1記載の光導波路。
(付記3)
前記低屈折率部は、前記曲がり導波路の途中に設けられていることを特徴とする付記1または2記載の光導波路。
(付記4)
前記曲がり導波路の曲率半径は、4mm以上であることを特徴とする付記3記載の光導波路。
(付記5)
前記低屈折率部の曲率半径は、実効屈折率の低下に伴って大きくなることを特徴とする付記3または4記載の光導波路。
(付記6)
前記低屈折率部において、導波路の中心軸にオフセットが設けられていることを特徴とする付記1〜5のいずれかに記載の光導波路。
(付記7)
前記曲がり導波路は、S字状の曲がり導波路であり、
前記低屈折率部の前記分岐部と反対側の始点は、前記曲がり導波路において、前記曲がり導波路の曲がり方向の切換点よりも前記分岐部と反対側に位置することを特徴とする付記1〜6のいずれかに記載の光導波路。
(付記8)
前記曲がり方向の切換点において、導波路の中心軸にオフセットが設けられていることを特徴とする付記7記載の光導波路。
(付記9)
前記曲がり導波路は、S字状の曲がり導波路であり、
前記低屈折率部の前記分岐部と反対側の始点は、前記曲がり導波路において、前記曲がり導波路の曲がり方向の切換点よりも前記分岐部側に位置することを特徴とする付記1〜6のいずれかに記載の光導波路。
(付記10)
前記分岐部の分岐導波路の実効屈折率は、分岐点から反対側にかけて徐々にまたは段階的に大きくなることを特徴とする付記1〜9のいずれかに記載の光導波路。
(付記11)
前記各分岐導波路の実効屈折率は、光導波方向において同じ割合で変化することを特徴とする付記10記載の光導波路。
(付記12)
前記低屈折率部は、前記曲がり導波路の始点の断面積よりも小さい断面積を有することによって、低い実効屈折率を有することを特徴とする付記1〜11のいずれかに記載の光導波路。
(付記13)
前記低屈折率部は、前記曲がり導波路の始点の幅よりも小さい幅を有することによって、低い実効屈折率を有することを特徴とする付記1〜11のいずれかに記載の光導波路。
(付記14)
前記低屈折率部における最小幅は、6μm以下であることを特徴とする付記13記載の光導波路。
(付記15)
前記低屈折率部は、前記曲がり導波路の始点よりも浅く形成されることによって、低い実効屈折率を有することを特徴とする付記1〜11のいずれかに記載の光導波路。
(付記16)
前記低屈折率部は、前記曲がり導波路の始点よりも低い不純物濃度を有することによって、低い実効屈折率を有することを特徴とする付記1〜11のいずれかに記載の光導波路。
(付記17)
付記1〜16のいずれかに記載の光導波路を、光入力側および光出力側の少なくとも一方の分岐箇所に備えるとともに、前記基板は電気光学効果を有することを特徴とするマッハツェンダ型の光変調器。
(付記18)
前記光変調器は、1つの光導波路が第1分岐部において2分岐した後に2つの第2分岐部においてさらに2分岐し、2つの第1合流部において各2つの導波路が合流した後に第2合流部において1つの導波路に合流するQPSK光変調器であり、
前記光導波路は、前記第2分岐部および前記第1合流部のいずれかの箇所に設けられていることを特徴とする付記17記載の光変調器。
(付記19)
前記2つの第2分岐部および/または前記2つの第1合流部は、前記光変調器の長手方向において、異なる位置に配置されていることを特徴とする付記18記載の光変調器。
(付記20)
付記1〜16のいずれかに記載の光導波路を入力導波路および出力導波路の少なくとも一方に備えることを特徴とする光カプラ。
【符号の説明】
【0057】
10 基板
11,16 曲がり導波路
12 分岐部
13,14 中間導波路
15 合流部
18 狭幅部
40 光カプラ
100 光変調器
200 光送信機
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に形成され、
曲がり導波路と、前記曲がり導波路に接続されて分岐する分岐部と、を備え、
前記曲がり導波路の前記分岐部と反対側の始点から前記分岐部に至るまでの導波路において、前記曲がり導波路の始点の実効屈折率よりも低い実効屈折率を有する低屈折率部が設けられていることを特徴とする光導波路。
【請求項2】
前記低屈折率部の実効屈折率は、前記分岐部に向かって連続的にまたは段階的に低くなることを特徴とする請求項1記載の光導波路。
【請求項3】
前記低屈折率部は、前記曲がり導波路の途中に設けられていることを特徴とする請求項1または2記載の光導波路。
【請求項4】
前記曲がり導波路の曲率半径は、4mm以上であることを特徴とする請求項3記載の光導波路。
【請求項5】
前記低屈折率部の曲率半径は、実効屈折率の低下に伴って大きくなることを特徴とする請求項3または4記載の光導波路。
【請求項6】
前記低屈折率部において、導波路の中心軸にオフセットが設けられていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の光導波路。
【請求項7】
前記曲がり導波路は、S字状の曲がり導波路であり、
前記低屈折率部の前記分岐部と反対側の始点は、前記曲がり導波路において、前記曲がり導波路の曲がり方向の切換点よりも前記分岐部と反対側に位置することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の光導波路。
【請求項8】
前記曲がり方向の切換点において、導波路の中心軸にオフセットが設けられていることを特徴とする請求項7記載の光導波路。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の光導波路を、光入力側および光出力側の少なくとも一方の分岐箇所に備えるとともに、前記基板は電気光学効果を有することを特徴とするマッハツェンダ型の光変調器。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれかに記載の光導波路を入力導波路および出力導波路の少なくとも一方に備えることを特徴とする光カプラ。
【請求項1】
基板に形成され、
曲がり導波路と、前記曲がり導波路に接続されて分岐する分岐部と、を備え、
前記曲がり導波路の前記分岐部と反対側の始点から前記分岐部に至るまでの導波路において、前記曲がり導波路の始点の実効屈折率よりも低い実効屈折率を有する低屈折率部が設けられていることを特徴とする光導波路。
【請求項2】
前記低屈折率部の実効屈折率は、前記分岐部に向かって連続的にまたは段階的に低くなることを特徴とする請求項1記載の光導波路。
【請求項3】
前記低屈折率部は、前記曲がり導波路の途中に設けられていることを特徴とする請求項1または2記載の光導波路。
【請求項4】
前記曲がり導波路の曲率半径は、4mm以上であることを特徴とする請求項3記載の光導波路。
【請求項5】
前記低屈折率部の曲率半径は、実効屈折率の低下に伴って大きくなることを特徴とする請求項3または4記載の光導波路。
【請求項6】
前記低屈折率部において、導波路の中心軸にオフセットが設けられていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の光導波路。
【請求項7】
前記曲がり導波路は、S字状の曲がり導波路であり、
前記低屈折率部の前記分岐部と反対側の始点は、前記曲がり導波路において、前記曲がり導波路の曲がり方向の切換点よりも前記分岐部と反対側に位置することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の光導波路。
【請求項8】
前記曲がり方向の切換点において、導波路の中心軸にオフセットが設けられていることを特徴とする請求項7記載の光導波路。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の光導波路を、光入力側および光出力側の少なくとも一方の分岐箇所に備えるとともに、前記基板は電気光学効果を有することを特徴とするマッハツェンダ型の光変調器。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれかに記載の光導波路を入力導波路および出力導波路の少なくとも一方に備えることを特徴とする光カプラ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−257634(P2011−257634A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−132932(P2010−132932)
【出願日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(309015134)富士通オプティカルコンポーネンツ株式会社 (72)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(309015134)富士通オプティカルコンポーネンツ株式会社 (72)
【Fターム(参考)】
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