光導波路素子の製造方法
【課題】DCドリフトが抑制された光導波路素子の製造方法を提供する。さらには、製造プロセスの途中で、DCドリフトを調整することを可能とし、製造の歩留まりを改善する、光導波路素子の製造方法を提供する。
【解決手段】電気光学効果を有する基板に、光導波路を形成する工程と、バッファ層を形成する工程と、電極を形成する工程とを有する、光導波路素子の製造方法において、該バッファ層を形成した後に、該バッファ層内の特定物質の濃度分布を加熱によって調整するための1段階又は複数段階の界面拡散層熱調整工程(S1,S2)を組み込む。
【解決手段】電気光学効果を有する基板に、光導波路を形成する工程と、バッファ層を形成する工程と、電極を形成する工程とを有する、光導波路素子の製造方法において、該バッファ層を形成した後に、該バッファ層内の特定物質の濃度分布を加熱によって調整するための1段階又は複数段階の界面拡散層熱調整工程(S1,S2)を組み込む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光導波路素子の製造方法に関し、特に、電気光学効果を有する基板に光導波路とバッファ層及び電極とを形成した光導波路素子であって、ドリフト現象を改善した光導波路素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ニオブ酸リチウム(以下LNと略す)などの電気光学効果を有する基板を用いた光導波路素子は、半導体変調器に比し低損失であり、高速動作が可能であり、広い波長範囲で特性が安定しているなどの特徴から、特に波長多重光伝送など高速光通信システムに広く用いられている。
【0003】
この光導波路素子を実際のシステムで使用するためには、温度変化によって変動する動作点のシフト(温度ドリフト)や長期的なDC電圧印加による動作点のシフト(DCドリフト)をフィードバック回路にて補償する仕組みが必要になっている。このため、これらのシフト量を出来るだけ小さくするような幾つかの対策が講じられている。
【0004】
例えば、特許文献1に示すように、温度ドリフトでは電極などの応力の影響をアニールによって低減させる技術や、特許文献2に示すように、DCドリフトを低減させるためにバッファ層にInなどの不純物をドープする技術などが開示されている。しかしながら、LN変調器の動作点シフトは極めて微妙な応力のバランスや、結晶やバッファ層中に含まれてしまう微量な不純物とそのバランスによって影響を受け、前記技術を含め、様々な対策が提案されているが、光導波路素子の温度ドリフトおよびDCドリフトを完全に抑圧することは、未だ実現していない。
【0005】
一方、LN光変調器などの光導波路素子は、要望される伝送容量の増大に伴って、より高速動作し、かつより低電圧駆動できることが求められている。また、NRZフォーマットなど比較的単純な強度変調からDQPSKや偏波合成変調器など位相や偏波情報も同時に伝送できるフォーマットに対応することを求められるようになっている。このため光導波路素子の基板構成はリッジ構造や薄板構造など複雑化し、また導波路構成もシングルのマッハツェンダー型からネスト型などへ複雑化している。
【0006】
これらに合わせて、上述した動作点シフトのフィードバック回路による補償も複雑化し、特に長期動作保障のポイントとなるDCドリフトに対して、より低電圧で制御、補償できるよう、DCドリフトが低減された光導波路素子が望まれている。
【0007】
また一方で、DCドリフトが低く抑圧された光導波路素子を生産、供給する上では、複雑化したウエハプロセスの最終検査を、素子が完成したウエハ上で若しくはウエハから切り出されたチップにて、DCドリフトなどを評価、選別し、当該特性がシステム要求仕様を満足するよう確認する必要がある。通常この段階で特性が不良であった場合、当該ウエハ若しくはチップは破棄することになり、歩留まり低下によるコスト劣化が発生していた。これはウエハプロセスが完了してしまうと、完成品に対する良否判断によって、ウエハ若しくはチップを使用若しくは廃棄するだけとなり、ウエハ完了後に、例えばチップの評価結果を見て追加調整的にDCドリフト特性などを補正、調整する技術が無かったことに起因している。
【0008】
DCドリフトのメカニズムの説明は、例えば、非特許文献1のように、LN変調器などの光導波路素子の内部の等価回路で説明されている。この中で重要なことは、LN基板に形成される光導波路やバッファ層、半導電性膜(Si膜等)、電極の各断面や表面方向における部分的な抵抗値と電気容量の全ての合成抵抗と合成容量及び各部分の抵抗と容量の比率が、DCドリフトの長期的なシフトに影響することであり、より低いDCドリフトにするためには、電極や導波路設計のほか、各プロセスで決定されるLN基板やバッファ層、半導電性膜などの断面方向と表面方向の抵抗や電気容量を、精密にコントロールして製造する必要が有る。
【0009】
しかしながら強誘電体であるLNと言う材料は、半導体のSiウエハなどに比べ結晶性が低く、製造メーカーや製造ロット、製造装置などによってバラツキが大きいと言う問題を持っており、断面や表面方向の抵抗のバラツキも大きい。またウエハプロセス中に成膜されるバッファ層や半導体膜中に微量の不純物が含まれるだけで、その抵抗値は桁が大きく変わる程変動してしまう。このため、LN変調器製造中の各プロセスで決定されるLN基板やバッファ層、Si膜などの断面方向と表面方向の抵抗や電気容量を、精密にコントロールして製造することは極めて困難であり、従って光導波路素子のDCドリフトはある種のバラツキをもってしまう。
【0010】
また、DCドリフトの低下やバラツキを抑制するのを更に困難にする原因は、上記各プロセスで決定されるLN基板やバッファ層、Si膜などの断面方向と表面方向の抵抗や電気容量が、個別に測定、分離することが極めて困難なことであり、事実上不可能なことである。従って、プロセス中のウエハ内素子や切断完了後のチップの合成抵抗値、合成容量やDCドリフトの傾向や程度などからこれらを類推するしか現実的な手段が無いことである。
【0011】
従って、一旦完成されたウエハは、ウエハ状若しくは切断後のチップの特性評価によって良否を判断し、製品への組み立て工程へ移すか廃棄するかの選別をおこなうのみとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特許第3544020号公報
【特許文献2】特許第3001027号公報
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Steven K.Korotky et al.,"An RCNetwork Analysis of Long Term Ti:LiNbO3 Bias Stability",Journal of Lightwave technology, Vol.14, No.12, p.2687-2689, IEEE, Dec. 1996
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明が解決しようとする課題は、上述した問題を解消し、DCドリフトが抑制された光導波路素子の製造方法を提供することであり、さらには、製造プロセスの途中で、DCドリフトを調整することを可能とし、製造の歩留まりを改善する、光導波路素子の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するため、請求項1に係る発明は、電気光学効果を有する基板に、光導波路を形成する工程と、バッファ層を形成する工程と、電極を形成する工程とを有する、光導波路素子の製造方法において、該バッファ層を形成した後に、該バッファ層内の特定物質の濃度分布を加熱によって調整するための1段階又は複数段階の界面拡散層熱調整工程を組み込むことを特徴とする。
【0016】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の光導波路素子の製造方法において、該界面拡散層熱調整工程が、光導波路素子をウエハ基板上又ウエハ基板から切り出した後に行われることを特徴とする。
【0017】
請求項3に係る発明は、請求項1に記載の光導波路素子の製造方法において、該界面拡散層熱調整工程が、光導波路素子をウエハ基板に形成する工程中に行われる第一の界面拡散層熱調整工程と、該光導波路素子をウエハ基板上又ウエハ基板から切り出した後に行われる第二の界面拡散層熱調整工程からなることを特徴とする。
【0018】
請求項4に係る発明は、請求項1乃至3のいずれかに記載の光導波路素子の製造方法において、該界面拡散層熱調整工程は、光導波路素子の所定の特性値を測定した後、その測定値に応じて調整されることを特徴とする。
【0019】
請求項5に係る発明は、請求項3に記載の光導波路素子の製造方法において、前記第一の界面拡散層熱調整工程の加熱温度は、前記第二の界面拡散層熱調整工程の加熱温度より高いことを特徴とする。
【0020】
請求項6に係る発明は、請求項1乃至5のいずれかに記載の光導波路素子の製造方法において、該基板は、ニオブ酸リチウムから構成され、該特定物質は、Liであることを特徴とする。
【0021】
請求項7に係る発明は、請求項6に記載の光導波路素子の製造方法において、該バッファ層内での基板表面の法線方向におけるLiの濃度分布は、1×1016(atoms/cm3)〜3×1021(atoms/cm3)の濃度が、1μm以下の範囲で分布していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
請求項1に係る発明により、電気光学効果を有する基板に、光導波路を形成する工程と、バッファ層を形成する工程と、電極を形成する工程とを有する、光導波路素子の製造方法において、該バッファ層を形成した後に、該バッファ層内の特定物質の濃度分布を加熱によって調整するための1段階又は複数段階の界面拡散層熱調整工程を組み込むため、界面拡散層熱調整工程により、光導波路素子のDCドリフトを調整することが可能となり、製造の歩留まりも改善することができる。
【0023】
請求項2に係る発明により、界面拡散層熱調整工程が、光導波路素子をウエハ基板上又ウエハ基板から切り出した後に行われるため、製品の最終段階に近い状況でも光導波路素子のDCドリフトを調整でき、より一層製造の歩留まりも改善できる。
【0024】
請求項3に係る発明により、界面拡散層熱調整工程が、光導波路素子をウエハ基板に形成する工程中に行われる第一の界面拡散層熱調整工程と、該光導波路素子をウエハ基板上又ウエハ基板から切り出した後に行われる第二の界面拡散層熱調整工程からなるため、光導波路素子のDCドリフトを多段階で調整することができ、DCドリフトの発生をより効果的に抑制することが可能となる。
【0025】
請求項4に係る発明により、界面拡散層熱調整工程は、光導波路素子の所定の特性値を測定した後、その測定値に応じて調整されため、光導波路素子の特性に応じた調整を行うことが可能となる。
【0026】
請求項5に係る発明により、第一の界面拡散層熱調整工程の加熱温度は、第二の界面拡散層熱調整工程の加熱温度より高いため、各々の工程で最も効果的にDCドリフトを調整することが可能となる。
【0027】
請求項6に係る発明により、基板は、ニオブ酸リチウムから構成され、特定物質は、Liであるため、ニオブ酸リチウム基板を利用した際に発生するDCドリフトを、基板を加熱した際に生ずるLiの拡散によって、効果的に抑制することが可能となる
【0028】
請求項7に係る発明により、バッファ層内での基板表面の法線方向におけるLiの濃度分布は、1×1016(atoms/cm3)〜3×1021(atoms/cm3)の濃度が、1μm以下の範囲で分布しているため、製造工程中の界面拡散層熱調整工程によりDCドリフトを効果的に抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】界面拡散層熱調整工程400℃を実施した場合のSIMSを用いた基板界面近傍の分析例である。
【図2】界面拡散層熱調整工程の温度(200℃〜700℃)を変化させた場合の基板界面近傍のLiの濃度分布を示すグラフである。
【図3】界面拡散層熱調整工程を実施していない場合のDCドリフトの様子を示すグラフである。
【図4】界面拡散層熱調整工程300℃を実施した場合のDCドリフトの様子を示すグラフである。
【図5】界面拡散層熱調整工程600℃を実施した場合のDCドリフトの様子を示すグラフである。
【図6】本発明を適応可能なマッハツェンダ型光変調器の平面図を示す図である。
【図7】図6のA−A’における断面図を示す図である。
【図8】従来の製造方法(プロセスフロー)の一例を示す図である。
【図9】本発明の製造方法(プロセスフロー)の例(その1)を示す図である。
【図10】本発明の製造方法(プロセスフロー)の例(その2)を示す図である。
【図11】本発明の製造方法(プロセスフロー)の例(その3)を示す図である。
【図12】形成方法(プロセスA:スパッタリング法,プロセスB:真空蒸着法)が異なるバッファ層に対して、界面拡散層熱調整工程を実施した際の温度とDCドリフトとの関連を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の光導波路素子の製造方法について、以下に詳細に説明する。
本発明者らは光導波路素子の製造工程における各プロセスで決定される、LN基板やバッファ層、Si膜などの断面方向と表面方向の抵抗や電気容量に関して、プロセス終了後にそれらプロセスで得られる構造や特性に大きく影響せずに、基板内部の断面や表面方向の抵抗や容量を調整し、DCドリフトを抑圧、調整することが出来ないかを検討した。その結果、基板、バッファ層、Si半導体膜及び電極などの各界面に着目、特にLN基板とバッファ層界面に存在するLi原子の量や範囲とDCドリフトとの関連性に着目した。
【0031】
図1は、LN基板とバッファ層界面近傍をSIMS(Secondary
Ion-microprobe Mass Spectrometry:2次イオン質量分析)で分析した一例である。この分析に用いたLN基板は通常のウエハプロセスに加え、界面拡散層熱調整工程として400℃、5時間の熱調整を実施したものである。グラフの縦軸は元素の量に相当し、横軸は0がバッファ層表面方向、+側に進むに連れLN基板側になり、Liの量が急激に増加している部分がLN基板とバッファ層の境界になる。Li原子は境界から約1μm内程度の範囲に分布しているが、この領域をLi原子の界面拡散層と見ることが出来る。
【0032】
この界面拡散層は、Liの存在量や存在領域の大きさに応じて、バッファ層(SiO2)やLN基板とは異なる抵抗及び電気容量を持つことが想定される。この部分の抵抗値及び電気容量は直接測定することは極めて難しく、変調器の合成抵抗や合成容量から類推若しくは、DCドリフトの挙動から想定することが現実的な方法となっている。
【0033】
もしここで、この界面拡散層におけるLiの量や領域を、各プロセスで決定されるLN基板やバッファ層、Si膜などの断面方向と表面方向の抵抗や電気容量に関して、それらプロセスで得られる構造や特性に大きく影響せずに、調整することが出来れば、この界面拡散層の抵抗値および容量を調整することが出来る事に相当すると考えられる。言い換えればDCドリフトの挙動を調整することができることになる。
【0034】
この界面拡散層に於けるLiの量や領域を調整する手段として、従来のウエハプロセスに対して、界面拡散層熱調整工程を導入しLiの量や存在領域を調整すれば、結晶品質を含むLN基板やバッファ層、Si膜、電極形成などの各ウエハプロセスによって決定されてしまうDCドリフト特性を更に変更調整することが出来ることになる。
【0035】
図2は上記技術思想に基き、バッファ層工程が終了した各ウエハに対して、各種温度の界面拡散層熱調整工程を導入し(時間はいずれも5時間実施した)、上記分析と同様にSIMSを用いてLNとバッファ層の境界領域のLi量を調べたものである。界面拡散層熱調整工程の温度が200℃から700℃になるに従ってLNとバッファ層の界面におけるLiの量がおよそ1×1016(atoms/cm3)から3×1021(atoms/cm3)に変化していることが判る。またその存在領域は1μm以下に渡って調整できていることが判り、この濃度分布においては、DCドリフトが効果的に抑制が可能である。なお、この界面拡散層領域の抵抗値および容量値は、直接分離して測定することは出来ないが、それぞれ異なったLiの分布量と分布領域を持っており、それぞれ異なった値になっていると想定される。
【0036】
これらウエハからこの界面拡散層熱調整工程を実施しなかった(温度0℃に相当)サンプルA(図3)及び界面拡散層熱調整工程をそれぞれ300℃(サンプルB,図4)および600℃(サンプルC,図5)として最終工程まで進め、各光導波路素子のDCドリフトを測定したものが図3乃至5である。界面拡散層熱調整工程の調整温度によって拡散層のLi量及び領域が変化しそれらに応じて、DCドリフト特性が変化していることが実施データから判る。図3乃至5の各グラフについては、後で詳述する。
【0037】
従って、電極設計や各ウエハプロセスの条件が決定され後、これら設計やウエハプロセス条件に最も適した界面拡散層熱調整工程を適応すれば、更にDCドリフトが抑圧された光導波路素子を提供することが出来る。
【0038】
特に注目すべき特徴の一つは、界面拡散層熱調整工程が図2から判るように、200℃程度の温度でも界面拡散層のLi量および領域を調整することが出来ることである。この特徴は、複雑化したウエハプロセスの結果、最終製品に到達する最終歩留まりを、ウエハプロセスが完了した後に更に改善/調整する手段を提供する画期的なものである。
【0039】
即ち、ウエハプロセスが完全に終了しウエハからチップを切り出した後、そのチップのDCドリフト特性を測定し、プロセスのバラツキなど含めた期待されたDCドリフト特性に及ばなかった場合、更に付加的に界面拡散層熱調整工程をウエハプロセス中に実施した調整温度より低い温度で実施し、DCドリフト特性を微調成することが可能であることを意味している。
【0040】
言い換えれば、プロセス設計及びウエハ製造パラメータ、使用材料などで大枠決まってしまうDCドリフト特性の疎調整を、第一の界面拡散層熱調整工程としてウエハプロセスの中で実施し、製造のバラツキや材料のバラツキなどで生じるDCドリフト特性の期待値からのズレを第二の界面拡散層熱調整工程としてウエハ基板上又チップをウエハから切り離した後調整実施することによって、製造歩留まりを改善し、製造コストを低く抑えることが可能となる。
【0041】
さらに、第一の界面拡散層熱調整工程の加熱温度は、第二の界面拡散層熱調整工程の加熱温度より高いため、第一の界面拡散層熱調整工程で大幅にDCドリフトを抑制し、第二の界面拡散層熱調整工程では、所定の特性を得るため、DCドリフトを微調整することも可能となる。さらに、チップ化した後の熱調整工程では、チップの切断面にもLiが拡散してくるため、過剰な加熱は、基板内のLiの欠乏の原因ともなる。このように、各々の工程で最も効果的にDCドリフトを調整することが好ましい。
【0042】
基板の状態や、バッファ層の形成方法など各種の条件によっても処理温度が異なるが、例えば、スパッタリング法でバッファ層を形成した場合には、第一の界面拡散層熱調整工程では300〜600℃、第二の界面拡散層熱調整工程では100〜300℃、より好ましくは、200〜300℃が好適な範囲である。
【0043】
これらDCドリフト量は、界面拡散層の抵抗値および容量値のみで決定されるのではなく、LN基板の抵抗や容量およびSi膜の抵抗や容量などとの相対的な抵抗値、容量値の比率が関与する。このため、全く同じ界面拡散層であってもLN基板やSi膜などのプロセスが異なれば異なったDCドリフト特性となり、また、異なったウエハプロセスに最適な界面拡散層熱調整工程の条件も異なることは言うまでも無い。
【0044】
また、上記Liの量や存在量域は、バッファ層の緻密度など成膜条件や成膜装置などによっても異なるであろうし、LN基板の製造条件によっても異なることが想定されるが、界面拡散層が存在し、この部分のLiの量と範囲を従来のウエハプロセスとは別に、界面拡散層熱調整工程によって付加的に変更、調整できることは言うまでもない。
【0045】
上記界面拡散層と表現している領域は、LNとバッファ層の接触部だけを指し示しているのではなく、Liの存在量が調整されたバッファ層内の領域、またLN基板内の領域を含んだ領域を示していることは、本発明の内容から明らかである。
【0046】
また、特許文献1に示すような、ウエハプロセスやチップ処理のプロセス中にアニールを行うものが開示されているが、従来技術のアニールは、基板や膜体の内部応力の緩和や、金属信号電極の内部応力を低減させることを目的としており、本発明のように、Liなどの拡散によって界面拡散層を形成させること、およびこれらの量及び領域を熱調整工程によって調整し、DCドリフト特性を低減、調整するような、本発明の技術思想とは全く異なるものである。
【0047】
本発明は、電気光学効果を有する基板に、光導波路を形成する工程と、バッファ層を形成する工程と、電極を形成する工程とを有する、光導波路素子の製造方法において、該バッファ層を形成した後に、該バッファ層内の特定物質の濃度分布を加熱によって調整するための界面拡散層熱調整工程を組み込むことを特徴とする。
【0048】
この構成により、例えば、電気光学効果を有する基板であるLNを主とした強誘電体を用いた光導波路素子において、LN基板とバッファ層界面に、比較的多いLi原子が、特定物質として比較的広い範囲に渡って存在しており、これらLi原子の濃度分布(存在量及び存在領域)を界面拡散層熱調整工程によって調整することが出来る。そして、光導波路素子のDCドリフト特性が各基板、バッファ層、Si膜などの断面や表面方向の抵抗と容量の大きさ、比率で変化すると言う原理を組み合わせ、産業上有用なDCドリフトがより抑圧された光導波路素子を提供し、歩留まりを改善しコストを低く抑えた光導波路素子を提供することが可能となる。
【実施例】
【0049】
以下、本発明の実施例を説明する。
図6は本発明を適応することが可能なマッハツエンダ型変調器の一例を示す平面図であり、図7は図6のA−A’における断面図である。本例は、ZcutのLN(ニオブ酸リチウム)基板7にTiを熱拡散させることによって光導波路1を形成し、この光導波路に電界を印加させるための信号電極5、接地電極4を設けて構成されている。ここでは図示されていないが、レーザーなどの光源から光導波路に入射された光は一旦2分岐され、信号電極に印加される電圧によって変調が掛けられる構成になっている。
【0050】
Tiを熱拡散して形成された導波路1上には電極による光吸収を低減させ、変調の帯域を拡大させることを目的としてバッファ層(SiO2層)2を形成する。バッファ層はスパッタリングや真空蒸着、CVDなどの形成方法が良く用いられるが、それぞれの成膜装置の特徴や製造条件によって、膜抵抗などの電気的特性や内部応力など機械的特性が大きく異なるため、ウエハサイズや成膜工程前後のウエハプロセスとの整合性、導波路設計などを考慮して、適切な成膜装置、製造条件が選ばれる。本実施例では「プロセスA」と表現しているものは、スパッタリング法にてSiO2を1.6μmの厚さで形成したものを示している。
【0051】
バッファ層2を形成したウエハ上にはウエハの焦電効果による動作点変動を防止する目的で導電層、例えばSi膜3を形成する。Si膜成膜後導波光を制御するための電極(4,5)を形成する。
【0052】
電極形成が終了したウエハはそれぞれのチップに切り出され、ここでは図示されていない金属筐体などに実装され、光導波路素子として使用可能な状態に組み立て上げられる。光導波路素子の作り込みが完成したウエハが、良好な状態であるか、問題点が無いかなど、ウエハ状態で検査を行うが、個々の光導波路素子に切り出した、チップ状態でも測定を実施して実装可否を事前検証する。特に光との相互作用が関連する損失(光の伝搬損失や結合損失)や駆動電圧、消光比、DCドリフトなどの測定項目はチップ状態で簡易的に検査を実施し、モジュール化に伴う歩留まりの向上を図りまたウエハプロセスの異常検出を行っている。多くの場合これらの検査は全数ではなく抜き取りで良い。それは上記項目の多くが同一ウエハで同一の傾向にあるためである。これら一連のプロセスは図8に表した光導波路素子の製造方法(プロセスフロー)で代表されるものである。
【0053】
図9乃至11は本発明の光導波路素子の製造方法を説明するプロセスフローであり、従来のプロセスフロー(図8)に、界面拡散層熱調整工程を加えたものである。図9の実施例では、従来のウエハプロセスフローに対してバッファ層形成工程終了後に新たに界面拡散層熱調整工程(S1)として、600℃、5時間の熱処理を行った。
【0054】
図2のLiの拡散による濃度分布から分かるとおり、この600℃の熱処理によってバッファ層とLNの界面にはおよそ1×1021(atms/cm3)程度のLiが0.7μm程度の領域に渡って存在するように調整されており、従来の界面拡散層熱調整工程を実施しない場合と比較し、Liの量と分布が大きく異なることが分かる。
【0055】
また、図10は本発明の光導波路素子の製造方法の他の一例であり、チップ切り出しを行い、チップの特性を測定後に界面拡散層熱調整工程(S2)として、200℃、1時間の熱処理を行っている。
【0056】
さらに、図11は本発明の光導波路素子の製造方法の他の一例であり、バッファ層形成工程終了後に界面拡散層熱調整工程(S1)を実施し、かつチップ切り出しを行い、その後チップの特性を測定した後に、界面拡散層熱調整工程(S2)を実施している。
【0057】
本発明の製造方法にて作製されたウエハ、及び従来の製造方法から作製されたウエハから、それぞれチップを切り出し、それぞれモジュールを作製しDCドリフト特性を測定したのが、図3乃至5である。各グラフの縦軸は規格化したDCドリフト量であり、横軸は経過時間を表している。各々のグラフには、S1で示す界面拡散層熱調整工程を行った場合と、S1,S2の両方の界面拡散層熱調整工程を行った場合の2つの測定結果を記載している。
【0058】
規格化DCドリフトの結果(図3乃至5)から明らかなように、本発明を実施したモジュールの規格化DCドリフト(図4及び5)は大幅に改善されており、またチップ化後の界面拡散層熱調整工程(S2)を更に追加した場合には、更に改善していることが分かる。
【0059】
ここで「プロセスA」と表現したバッファ層を形成した後、界面拡散層熱調整工程(S1)として300℃、5時間の熱調整を実施したウエハを作製し、規格化DCドリフト試験を実施したのが図4である。また、同様に「プロセスA」のバッファ層に、600℃、5時間の熱調整を実施したのが図5である。図4及び図5の本発明を実施したモジュールの規格化DCドリフトは、従来例プロセスのモジュール(図3)に比べ改善していることがわかる。なお、上記実施例は、チップをウエハから切り出した後にDCドリフト特性を測定した。しかし、ウエハ状態で測定する為、ウエハの一部を切断しバットジョイント、又は、ルチル等の高屈折率結晶のプリズムで光結合させ、DCドリフト特性を測定し、その後、ウエハ状態で、界面拡散層熱調整工程を実施することも可能であることは言うまでもない。
【0060】
これら界面拡散層の熱調整温度と規格化DCドリフトの関連をグラフ化したのが図12である。このグラフからプロセスAのバッファ層を形成する場合では、界面拡散層熱調整温度として最適な温度は650−700℃程度と想定されるが、界面拡散層熱調整工程(S1)としてはそれらより低めの温度、例えば600℃などを選択することが好ましい。これはプロセスのバラツキやウエハ材料などのバラツキで規格化DCドリフトが最小となる熱調整温度が異なった場合も、追加若しくは微調整としての界面拡散層熱調整工程(S2)によってDCドリフト特性を改善させることが出来るようにするためである。
【0061】
上記の実施例では、「プロセスA」としてスパッタリング法にてSiO2を形成した場合を例示したが、プロセス設計や材料、成膜方法などが異なった場合、同じ界面拡散層熱調整工程を実施しても最適となる調整温度は異なる。例えばSiO2の成膜を真空蒸着法にて1.2μmの厚さに形成した場合を「プロセスB」とし例示したものを図8にプロットした。この場合、規格化DCドリフトが最小になる界面拡散層熱調整温度の最適値は280℃程度であり、このような場合は界面拡散層熱調整工程S1若しくはS2として200℃程度が選ばれる。
【0062】
上述のように、電極設計や各ウエハプロセスの条件が決定され後、これら設計やウエハプロセス条件に最も適した界面拡散層熱調整工程を適応すれば、更にDCドリフトが抑圧されたLN変調器を提供することが出来る。
【0063】
なお、本発明の製造方法に加えて、従来のバッファ層形成工程内に膜の内部応力を緩和させることを目的としたアニールを行う場合もあるが、本発明の界面拡散層熱調整工程の温度は、アニール温度よりも高いため、本発明の界面拡散層熱調整工程を前記アニールの作用も含め同時に行うことも本発明の応用例として実施することができる。
【0064】
また、上記実施例ではチップ測定を実施した後、第二の界面拡散層熱調整工程(S2)を適応した例を上げたが、ウエハプロセスの安定度や生産工程の効率的運用などから、チップ測定前に第二の界面拡散層熱調整工程を実施し、その後、チップ測定を実施しても良いことは、言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0065】
以上説明したように、本発明によれば、DCドリフトが抑制された光導波路素子の製造方法を提供することであり、さらには、製造プロセスの途中で、DCドリフトを調整することを可能とし、製造の歩留まりを改善する、光導波路素子の製造方法を提供することが可能となる。
【符号の説明】
【0066】
1 光導波路
2 バッファ層
3 Si膜
4 接地電極
5 信号電極
6 基板/バッファ層境界面
7 基板
S1 第一の界面拡散層熱調整工程
S2 第二の界面拡散層熱調整工程
【技術分野】
【0001】
本発明は光導波路素子の製造方法に関し、特に、電気光学効果を有する基板に光導波路とバッファ層及び電極とを形成した光導波路素子であって、ドリフト現象を改善した光導波路素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ニオブ酸リチウム(以下LNと略す)などの電気光学効果を有する基板を用いた光導波路素子は、半導体変調器に比し低損失であり、高速動作が可能であり、広い波長範囲で特性が安定しているなどの特徴から、特に波長多重光伝送など高速光通信システムに広く用いられている。
【0003】
この光導波路素子を実際のシステムで使用するためには、温度変化によって変動する動作点のシフト(温度ドリフト)や長期的なDC電圧印加による動作点のシフト(DCドリフト)をフィードバック回路にて補償する仕組みが必要になっている。このため、これらのシフト量を出来るだけ小さくするような幾つかの対策が講じられている。
【0004】
例えば、特許文献1に示すように、温度ドリフトでは電極などの応力の影響をアニールによって低減させる技術や、特許文献2に示すように、DCドリフトを低減させるためにバッファ層にInなどの不純物をドープする技術などが開示されている。しかしながら、LN変調器の動作点シフトは極めて微妙な応力のバランスや、結晶やバッファ層中に含まれてしまう微量な不純物とそのバランスによって影響を受け、前記技術を含め、様々な対策が提案されているが、光導波路素子の温度ドリフトおよびDCドリフトを完全に抑圧することは、未だ実現していない。
【0005】
一方、LN光変調器などの光導波路素子は、要望される伝送容量の増大に伴って、より高速動作し、かつより低電圧駆動できることが求められている。また、NRZフォーマットなど比較的単純な強度変調からDQPSKや偏波合成変調器など位相や偏波情報も同時に伝送できるフォーマットに対応することを求められるようになっている。このため光導波路素子の基板構成はリッジ構造や薄板構造など複雑化し、また導波路構成もシングルのマッハツェンダー型からネスト型などへ複雑化している。
【0006】
これらに合わせて、上述した動作点シフトのフィードバック回路による補償も複雑化し、特に長期動作保障のポイントとなるDCドリフトに対して、より低電圧で制御、補償できるよう、DCドリフトが低減された光導波路素子が望まれている。
【0007】
また一方で、DCドリフトが低く抑圧された光導波路素子を生産、供給する上では、複雑化したウエハプロセスの最終検査を、素子が完成したウエハ上で若しくはウエハから切り出されたチップにて、DCドリフトなどを評価、選別し、当該特性がシステム要求仕様を満足するよう確認する必要がある。通常この段階で特性が不良であった場合、当該ウエハ若しくはチップは破棄することになり、歩留まり低下によるコスト劣化が発生していた。これはウエハプロセスが完了してしまうと、完成品に対する良否判断によって、ウエハ若しくはチップを使用若しくは廃棄するだけとなり、ウエハ完了後に、例えばチップの評価結果を見て追加調整的にDCドリフト特性などを補正、調整する技術が無かったことに起因している。
【0008】
DCドリフトのメカニズムの説明は、例えば、非特許文献1のように、LN変調器などの光導波路素子の内部の等価回路で説明されている。この中で重要なことは、LN基板に形成される光導波路やバッファ層、半導電性膜(Si膜等)、電極の各断面や表面方向における部分的な抵抗値と電気容量の全ての合成抵抗と合成容量及び各部分の抵抗と容量の比率が、DCドリフトの長期的なシフトに影響することであり、より低いDCドリフトにするためには、電極や導波路設計のほか、各プロセスで決定されるLN基板やバッファ層、半導電性膜などの断面方向と表面方向の抵抗や電気容量を、精密にコントロールして製造する必要が有る。
【0009】
しかしながら強誘電体であるLNと言う材料は、半導体のSiウエハなどに比べ結晶性が低く、製造メーカーや製造ロット、製造装置などによってバラツキが大きいと言う問題を持っており、断面や表面方向の抵抗のバラツキも大きい。またウエハプロセス中に成膜されるバッファ層や半導体膜中に微量の不純物が含まれるだけで、その抵抗値は桁が大きく変わる程変動してしまう。このため、LN変調器製造中の各プロセスで決定されるLN基板やバッファ層、Si膜などの断面方向と表面方向の抵抗や電気容量を、精密にコントロールして製造することは極めて困難であり、従って光導波路素子のDCドリフトはある種のバラツキをもってしまう。
【0010】
また、DCドリフトの低下やバラツキを抑制するのを更に困難にする原因は、上記各プロセスで決定されるLN基板やバッファ層、Si膜などの断面方向と表面方向の抵抗や電気容量が、個別に測定、分離することが極めて困難なことであり、事実上不可能なことである。従って、プロセス中のウエハ内素子や切断完了後のチップの合成抵抗値、合成容量やDCドリフトの傾向や程度などからこれらを類推するしか現実的な手段が無いことである。
【0011】
従って、一旦完成されたウエハは、ウエハ状若しくは切断後のチップの特性評価によって良否を判断し、製品への組み立て工程へ移すか廃棄するかの選別をおこなうのみとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特許第3544020号公報
【特許文献2】特許第3001027号公報
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Steven K.Korotky et al.,"An RCNetwork Analysis of Long Term Ti:LiNbO3 Bias Stability",Journal of Lightwave technology, Vol.14, No.12, p.2687-2689, IEEE, Dec. 1996
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明が解決しようとする課題は、上述した問題を解消し、DCドリフトが抑制された光導波路素子の製造方法を提供することであり、さらには、製造プロセスの途中で、DCドリフトを調整することを可能とし、製造の歩留まりを改善する、光導波路素子の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するため、請求項1に係る発明は、電気光学効果を有する基板に、光導波路を形成する工程と、バッファ層を形成する工程と、電極を形成する工程とを有する、光導波路素子の製造方法において、該バッファ層を形成した後に、該バッファ層内の特定物質の濃度分布を加熱によって調整するための1段階又は複数段階の界面拡散層熱調整工程を組み込むことを特徴とする。
【0016】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の光導波路素子の製造方法において、該界面拡散層熱調整工程が、光導波路素子をウエハ基板上又ウエハ基板から切り出した後に行われることを特徴とする。
【0017】
請求項3に係る発明は、請求項1に記載の光導波路素子の製造方法において、該界面拡散層熱調整工程が、光導波路素子をウエハ基板に形成する工程中に行われる第一の界面拡散層熱調整工程と、該光導波路素子をウエハ基板上又ウエハ基板から切り出した後に行われる第二の界面拡散層熱調整工程からなることを特徴とする。
【0018】
請求項4に係る発明は、請求項1乃至3のいずれかに記載の光導波路素子の製造方法において、該界面拡散層熱調整工程は、光導波路素子の所定の特性値を測定した後、その測定値に応じて調整されることを特徴とする。
【0019】
請求項5に係る発明は、請求項3に記載の光導波路素子の製造方法において、前記第一の界面拡散層熱調整工程の加熱温度は、前記第二の界面拡散層熱調整工程の加熱温度より高いことを特徴とする。
【0020】
請求項6に係る発明は、請求項1乃至5のいずれかに記載の光導波路素子の製造方法において、該基板は、ニオブ酸リチウムから構成され、該特定物質は、Liであることを特徴とする。
【0021】
請求項7に係る発明は、請求項6に記載の光導波路素子の製造方法において、該バッファ層内での基板表面の法線方向におけるLiの濃度分布は、1×1016(atoms/cm3)〜3×1021(atoms/cm3)の濃度が、1μm以下の範囲で分布していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
請求項1に係る発明により、電気光学効果を有する基板に、光導波路を形成する工程と、バッファ層を形成する工程と、電極を形成する工程とを有する、光導波路素子の製造方法において、該バッファ層を形成した後に、該バッファ層内の特定物質の濃度分布を加熱によって調整するための1段階又は複数段階の界面拡散層熱調整工程を組み込むため、界面拡散層熱調整工程により、光導波路素子のDCドリフトを調整することが可能となり、製造の歩留まりも改善することができる。
【0023】
請求項2に係る発明により、界面拡散層熱調整工程が、光導波路素子をウエハ基板上又ウエハ基板から切り出した後に行われるため、製品の最終段階に近い状況でも光導波路素子のDCドリフトを調整でき、より一層製造の歩留まりも改善できる。
【0024】
請求項3に係る発明により、界面拡散層熱調整工程が、光導波路素子をウエハ基板に形成する工程中に行われる第一の界面拡散層熱調整工程と、該光導波路素子をウエハ基板上又ウエハ基板から切り出した後に行われる第二の界面拡散層熱調整工程からなるため、光導波路素子のDCドリフトを多段階で調整することができ、DCドリフトの発生をより効果的に抑制することが可能となる。
【0025】
請求項4に係る発明により、界面拡散層熱調整工程は、光導波路素子の所定の特性値を測定した後、その測定値に応じて調整されため、光導波路素子の特性に応じた調整を行うことが可能となる。
【0026】
請求項5に係る発明により、第一の界面拡散層熱調整工程の加熱温度は、第二の界面拡散層熱調整工程の加熱温度より高いため、各々の工程で最も効果的にDCドリフトを調整することが可能となる。
【0027】
請求項6に係る発明により、基板は、ニオブ酸リチウムから構成され、特定物質は、Liであるため、ニオブ酸リチウム基板を利用した際に発生するDCドリフトを、基板を加熱した際に生ずるLiの拡散によって、効果的に抑制することが可能となる
【0028】
請求項7に係る発明により、バッファ層内での基板表面の法線方向におけるLiの濃度分布は、1×1016(atoms/cm3)〜3×1021(atoms/cm3)の濃度が、1μm以下の範囲で分布しているため、製造工程中の界面拡散層熱調整工程によりDCドリフトを効果的に抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】界面拡散層熱調整工程400℃を実施した場合のSIMSを用いた基板界面近傍の分析例である。
【図2】界面拡散層熱調整工程の温度(200℃〜700℃)を変化させた場合の基板界面近傍のLiの濃度分布を示すグラフである。
【図3】界面拡散層熱調整工程を実施していない場合のDCドリフトの様子を示すグラフである。
【図4】界面拡散層熱調整工程300℃を実施した場合のDCドリフトの様子を示すグラフである。
【図5】界面拡散層熱調整工程600℃を実施した場合のDCドリフトの様子を示すグラフである。
【図6】本発明を適応可能なマッハツェンダ型光変調器の平面図を示す図である。
【図7】図6のA−A’における断面図を示す図である。
【図8】従来の製造方法(プロセスフロー)の一例を示す図である。
【図9】本発明の製造方法(プロセスフロー)の例(その1)を示す図である。
【図10】本発明の製造方法(プロセスフロー)の例(その2)を示す図である。
【図11】本発明の製造方法(プロセスフロー)の例(その3)を示す図である。
【図12】形成方法(プロセスA:スパッタリング法,プロセスB:真空蒸着法)が異なるバッファ層に対して、界面拡散層熱調整工程を実施した際の温度とDCドリフトとの関連を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の光導波路素子の製造方法について、以下に詳細に説明する。
本発明者らは光導波路素子の製造工程における各プロセスで決定される、LN基板やバッファ層、Si膜などの断面方向と表面方向の抵抗や電気容量に関して、プロセス終了後にそれらプロセスで得られる構造や特性に大きく影響せずに、基板内部の断面や表面方向の抵抗や容量を調整し、DCドリフトを抑圧、調整することが出来ないかを検討した。その結果、基板、バッファ層、Si半導体膜及び電極などの各界面に着目、特にLN基板とバッファ層界面に存在するLi原子の量や範囲とDCドリフトとの関連性に着目した。
【0031】
図1は、LN基板とバッファ層界面近傍をSIMS(Secondary
Ion-microprobe Mass Spectrometry:2次イオン質量分析)で分析した一例である。この分析に用いたLN基板は通常のウエハプロセスに加え、界面拡散層熱調整工程として400℃、5時間の熱調整を実施したものである。グラフの縦軸は元素の量に相当し、横軸は0がバッファ層表面方向、+側に進むに連れLN基板側になり、Liの量が急激に増加している部分がLN基板とバッファ層の境界になる。Li原子は境界から約1μm内程度の範囲に分布しているが、この領域をLi原子の界面拡散層と見ることが出来る。
【0032】
この界面拡散層は、Liの存在量や存在領域の大きさに応じて、バッファ層(SiO2)やLN基板とは異なる抵抗及び電気容量を持つことが想定される。この部分の抵抗値及び電気容量は直接測定することは極めて難しく、変調器の合成抵抗や合成容量から類推若しくは、DCドリフトの挙動から想定することが現実的な方法となっている。
【0033】
もしここで、この界面拡散層におけるLiの量や領域を、各プロセスで決定されるLN基板やバッファ層、Si膜などの断面方向と表面方向の抵抗や電気容量に関して、それらプロセスで得られる構造や特性に大きく影響せずに、調整することが出来れば、この界面拡散層の抵抗値および容量を調整することが出来る事に相当すると考えられる。言い換えればDCドリフトの挙動を調整することができることになる。
【0034】
この界面拡散層に於けるLiの量や領域を調整する手段として、従来のウエハプロセスに対して、界面拡散層熱調整工程を導入しLiの量や存在領域を調整すれば、結晶品質を含むLN基板やバッファ層、Si膜、電極形成などの各ウエハプロセスによって決定されてしまうDCドリフト特性を更に変更調整することが出来ることになる。
【0035】
図2は上記技術思想に基き、バッファ層工程が終了した各ウエハに対して、各種温度の界面拡散層熱調整工程を導入し(時間はいずれも5時間実施した)、上記分析と同様にSIMSを用いてLNとバッファ層の境界領域のLi量を調べたものである。界面拡散層熱調整工程の温度が200℃から700℃になるに従ってLNとバッファ層の界面におけるLiの量がおよそ1×1016(atoms/cm3)から3×1021(atoms/cm3)に変化していることが判る。またその存在領域は1μm以下に渡って調整できていることが判り、この濃度分布においては、DCドリフトが効果的に抑制が可能である。なお、この界面拡散層領域の抵抗値および容量値は、直接分離して測定することは出来ないが、それぞれ異なったLiの分布量と分布領域を持っており、それぞれ異なった値になっていると想定される。
【0036】
これらウエハからこの界面拡散層熱調整工程を実施しなかった(温度0℃に相当)サンプルA(図3)及び界面拡散層熱調整工程をそれぞれ300℃(サンプルB,図4)および600℃(サンプルC,図5)として最終工程まで進め、各光導波路素子のDCドリフトを測定したものが図3乃至5である。界面拡散層熱調整工程の調整温度によって拡散層のLi量及び領域が変化しそれらに応じて、DCドリフト特性が変化していることが実施データから判る。図3乃至5の各グラフについては、後で詳述する。
【0037】
従って、電極設計や各ウエハプロセスの条件が決定され後、これら設計やウエハプロセス条件に最も適した界面拡散層熱調整工程を適応すれば、更にDCドリフトが抑圧された光導波路素子を提供することが出来る。
【0038】
特に注目すべき特徴の一つは、界面拡散層熱調整工程が図2から判るように、200℃程度の温度でも界面拡散層のLi量および領域を調整することが出来ることである。この特徴は、複雑化したウエハプロセスの結果、最終製品に到達する最終歩留まりを、ウエハプロセスが完了した後に更に改善/調整する手段を提供する画期的なものである。
【0039】
即ち、ウエハプロセスが完全に終了しウエハからチップを切り出した後、そのチップのDCドリフト特性を測定し、プロセスのバラツキなど含めた期待されたDCドリフト特性に及ばなかった場合、更に付加的に界面拡散層熱調整工程をウエハプロセス中に実施した調整温度より低い温度で実施し、DCドリフト特性を微調成することが可能であることを意味している。
【0040】
言い換えれば、プロセス設計及びウエハ製造パラメータ、使用材料などで大枠決まってしまうDCドリフト特性の疎調整を、第一の界面拡散層熱調整工程としてウエハプロセスの中で実施し、製造のバラツキや材料のバラツキなどで生じるDCドリフト特性の期待値からのズレを第二の界面拡散層熱調整工程としてウエハ基板上又チップをウエハから切り離した後調整実施することによって、製造歩留まりを改善し、製造コストを低く抑えることが可能となる。
【0041】
さらに、第一の界面拡散層熱調整工程の加熱温度は、第二の界面拡散層熱調整工程の加熱温度より高いため、第一の界面拡散層熱調整工程で大幅にDCドリフトを抑制し、第二の界面拡散層熱調整工程では、所定の特性を得るため、DCドリフトを微調整することも可能となる。さらに、チップ化した後の熱調整工程では、チップの切断面にもLiが拡散してくるため、過剰な加熱は、基板内のLiの欠乏の原因ともなる。このように、各々の工程で最も効果的にDCドリフトを調整することが好ましい。
【0042】
基板の状態や、バッファ層の形成方法など各種の条件によっても処理温度が異なるが、例えば、スパッタリング法でバッファ層を形成した場合には、第一の界面拡散層熱調整工程では300〜600℃、第二の界面拡散層熱調整工程では100〜300℃、より好ましくは、200〜300℃が好適な範囲である。
【0043】
これらDCドリフト量は、界面拡散層の抵抗値および容量値のみで決定されるのではなく、LN基板の抵抗や容量およびSi膜の抵抗や容量などとの相対的な抵抗値、容量値の比率が関与する。このため、全く同じ界面拡散層であってもLN基板やSi膜などのプロセスが異なれば異なったDCドリフト特性となり、また、異なったウエハプロセスに最適な界面拡散層熱調整工程の条件も異なることは言うまでも無い。
【0044】
また、上記Liの量や存在量域は、バッファ層の緻密度など成膜条件や成膜装置などによっても異なるであろうし、LN基板の製造条件によっても異なることが想定されるが、界面拡散層が存在し、この部分のLiの量と範囲を従来のウエハプロセスとは別に、界面拡散層熱調整工程によって付加的に変更、調整できることは言うまでもない。
【0045】
上記界面拡散層と表現している領域は、LNとバッファ層の接触部だけを指し示しているのではなく、Liの存在量が調整されたバッファ層内の領域、またLN基板内の領域を含んだ領域を示していることは、本発明の内容から明らかである。
【0046】
また、特許文献1に示すような、ウエハプロセスやチップ処理のプロセス中にアニールを行うものが開示されているが、従来技術のアニールは、基板や膜体の内部応力の緩和や、金属信号電極の内部応力を低減させることを目的としており、本発明のように、Liなどの拡散によって界面拡散層を形成させること、およびこれらの量及び領域を熱調整工程によって調整し、DCドリフト特性を低減、調整するような、本発明の技術思想とは全く異なるものである。
【0047】
本発明は、電気光学効果を有する基板に、光導波路を形成する工程と、バッファ層を形成する工程と、電極を形成する工程とを有する、光導波路素子の製造方法において、該バッファ層を形成した後に、該バッファ層内の特定物質の濃度分布を加熱によって調整するための界面拡散層熱調整工程を組み込むことを特徴とする。
【0048】
この構成により、例えば、電気光学効果を有する基板であるLNを主とした強誘電体を用いた光導波路素子において、LN基板とバッファ層界面に、比較的多いLi原子が、特定物質として比較的広い範囲に渡って存在しており、これらLi原子の濃度分布(存在量及び存在領域)を界面拡散層熱調整工程によって調整することが出来る。そして、光導波路素子のDCドリフト特性が各基板、バッファ層、Si膜などの断面や表面方向の抵抗と容量の大きさ、比率で変化すると言う原理を組み合わせ、産業上有用なDCドリフトがより抑圧された光導波路素子を提供し、歩留まりを改善しコストを低く抑えた光導波路素子を提供することが可能となる。
【実施例】
【0049】
以下、本発明の実施例を説明する。
図6は本発明を適応することが可能なマッハツエンダ型変調器の一例を示す平面図であり、図7は図6のA−A’における断面図である。本例は、ZcutのLN(ニオブ酸リチウム)基板7にTiを熱拡散させることによって光導波路1を形成し、この光導波路に電界を印加させるための信号電極5、接地電極4を設けて構成されている。ここでは図示されていないが、レーザーなどの光源から光導波路に入射された光は一旦2分岐され、信号電極に印加される電圧によって変調が掛けられる構成になっている。
【0050】
Tiを熱拡散して形成された導波路1上には電極による光吸収を低減させ、変調の帯域を拡大させることを目的としてバッファ層(SiO2層)2を形成する。バッファ層はスパッタリングや真空蒸着、CVDなどの形成方法が良く用いられるが、それぞれの成膜装置の特徴や製造条件によって、膜抵抗などの電気的特性や内部応力など機械的特性が大きく異なるため、ウエハサイズや成膜工程前後のウエハプロセスとの整合性、導波路設計などを考慮して、適切な成膜装置、製造条件が選ばれる。本実施例では「プロセスA」と表現しているものは、スパッタリング法にてSiO2を1.6μmの厚さで形成したものを示している。
【0051】
バッファ層2を形成したウエハ上にはウエハの焦電効果による動作点変動を防止する目的で導電層、例えばSi膜3を形成する。Si膜成膜後導波光を制御するための電極(4,5)を形成する。
【0052】
電極形成が終了したウエハはそれぞれのチップに切り出され、ここでは図示されていない金属筐体などに実装され、光導波路素子として使用可能な状態に組み立て上げられる。光導波路素子の作り込みが完成したウエハが、良好な状態であるか、問題点が無いかなど、ウエハ状態で検査を行うが、個々の光導波路素子に切り出した、チップ状態でも測定を実施して実装可否を事前検証する。特に光との相互作用が関連する損失(光の伝搬損失や結合損失)や駆動電圧、消光比、DCドリフトなどの測定項目はチップ状態で簡易的に検査を実施し、モジュール化に伴う歩留まりの向上を図りまたウエハプロセスの異常検出を行っている。多くの場合これらの検査は全数ではなく抜き取りで良い。それは上記項目の多くが同一ウエハで同一の傾向にあるためである。これら一連のプロセスは図8に表した光導波路素子の製造方法(プロセスフロー)で代表されるものである。
【0053】
図9乃至11は本発明の光導波路素子の製造方法を説明するプロセスフローであり、従来のプロセスフロー(図8)に、界面拡散層熱調整工程を加えたものである。図9の実施例では、従来のウエハプロセスフローに対してバッファ層形成工程終了後に新たに界面拡散層熱調整工程(S1)として、600℃、5時間の熱処理を行った。
【0054】
図2のLiの拡散による濃度分布から分かるとおり、この600℃の熱処理によってバッファ層とLNの界面にはおよそ1×1021(atms/cm3)程度のLiが0.7μm程度の領域に渡って存在するように調整されており、従来の界面拡散層熱調整工程を実施しない場合と比較し、Liの量と分布が大きく異なることが分かる。
【0055】
また、図10は本発明の光導波路素子の製造方法の他の一例であり、チップ切り出しを行い、チップの特性を測定後に界面拡散層熱調整工程(S2)として、200℃、1時間の熱処理を行っている。
【0056】
さらに、図11は本発明の光導波路素子の製造方法の他の一例であり、バッファ層形成工程終了後に界面拡散層熱調整工程(S1)を実施し、かつチップ切り出しを行い、その後チップの特性を測定した後に、界面拡散層熱調整工程(S2)を実施している。
【0057】
本発明の製造方法にて作製されたウエハ、及び従来の製造方法から作製されたウエハから、それぞれチップを切り出し、それぞれモジュールを作製しDCドリフト特性を測定したのが、図3乃至5である。各グラフの縦軸は規格化したDCドリフト量であり、横軸は経過時間を表している。各々のグラフには、S1で示す界面拡散層熱調整工程を行った場合と、S1,S2の両方の界面拡散層熱調整工程を行った場合の2つの測定結果を記載している。
【0058】
規格化DCドリフトの結果(図3乃至5)から明らかなように、本発明を実施したモジュールの規格化DCドリフト(図4及び5)は大幅に改善されており、またチップ化後の界面拡散層熱調整工程(S2)を更に追加した場合には、更に改善していることが分かる。
【0059】
ここで「プロセスA」と表現したバッファ層を形成した後、界面拡散層熱調整工程(S1)として300℃、5時間の熱調整を実施したウエハを作製し、規格化DCドリフト試験を実施したのが図4である。また、同様に「プロセスA」のバッファ層に、600℃、5時間の熱調整を実施したのが図5である。図4及び図5の本発明を実施したモジュールの規格化DCドリフトは、従来例プロセスのモジュール(図3)に比べ改善していることがわかる。なお、上記実施例は、チップをウエハから切り出した後にDCドリフト特性を測定した。しかし、ウエハ状態で測定する為、ウエハの一部を切断しバットジョイント、又は、ルチル等の高屈折率結晶のプリズムで光結合させ、DCドリフト特性を測定し、その後、ウエハ状態で、界面拡散層熱調整工程を実施することも可能であることは言うまでもない。
【0060】
これら界面拡散層の熱調整温度と規格化DCドリフトの関連をグラフ化したのが図12である。このグラフからプロセスAのバッファ層を形成する場合では、界面拡散層熱調整温度として最適な温度は650−700℃程度と想定されるが、界面拡散層熱調整工程(S1)としてはそれらより低めの温度、例えば600℃などを選択することが好ましい。これはプロセスのバラツキやウエハ材料などのバラツキで規格化DCドリフトが最小となる熱調整温度が異なった場合も、追加若しくは微調整としての界面拡散層熱調整工程(S2)によってDCドリフト特性を改善させることが出来るようにするためである。
【0061】
上記の実施例では、「プロセスA」としてスパッタリング法にてSiO2を形成した場合を例示したが、プロセス設計や材料、成膜方法などが異なった場合、同じ界面拡散層熱調整工程を実施しても最適となる調整温度は異なる。例えばSiO2の成膜を真空蒸着法にて1.2μmの厚さに形成した場合を「プロセスB」とし例示したものを図8にプロットした。この場合、規格化DCドリフトが最小になる界面拡散層熱調整温度の最適値は280℃程度であり、このような場合は界面拡散層熱調整工程S1若しくはS2として200℃程度が選ばれる。
【0062】
上述のように、電極設計や各ウエハプロセスの条件が決定され後、これら設計やウエハプロセス条件に最も適した界面拡散層熱調整工程を適応すれば、更にDCドリフトが抑圧されたLN変調器を提供することが出来る。
【0063】
なお、本発明の製造方法に加えて、従来のバッファ層形成工程内に膜の内部応力を緩和させることを目的としたアニールを行う場合もあるが、本発明の界面拡散層熱調整工程の温度は、アニール温度よりも高いため、本発明の界面拡散層熱調整工程を前記アニールの作用も含め同時に行うことも本発明の応用例として実施することができる。
【0064】
また、上記実施例ではチップ測定を実施した後、第二の界面拡散層熱調整工程(S2)を適応した例を上げたが、ウエハプロセスの安定度や生産工程の効率的運用などから、チップ測定前に第二の界面拡散層熱調整工程を実施し、その後、チップ測定を実施しても良いことは、言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0065】
以上説明したように、本発明によれば、DCドリフトが抑制された光導波路素子の製造方法を提供することであり、さらには、製造プロセスの途中で、DCドリフトを調整することを可能とし、製造の歩留まりを改善する、光導波路素子の製造方法を提供することが可能となる。
【符号の説明】
【0066】
1 光導波路
2 バッファ層
3 Si膜
4 接地電極
5 信号電極
6 基板/バッファ層境界面
7 基板
S1 第一の界面拡散層熱調整工程
S2 第二の界面拡散層熱調整工程
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気光学効果を有する基板に、光導波路を形成する工程と、バッファ層を形成する工程と、電極を形成する工程とを有する、光導波路素子の製造方法において、
該バッファ層を形成した後に、該バッファ層内の特定物質の濃度分布を加熱によって調整するための1段階又は複数段階の界面拡散層熱調整工程を組み込むことを特徴とする光導波路素子の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の光導波路素子の製造方法において、該界面拡散層熱調整工程が、光導波路素子をウエハ基板上又ウエハ基板から切り出した後に行われることを特徴とする光導波路素子の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の光導波路素子の製造方法において、該界面拡散層熱調整工程が、光導波路素子をウエハ基板に形成する工程中に行われる第一の界面拡散層熱調整工程と、該光導波路素子をウエハ基板上又ウエハ基板から切り出した後に行われる第二の界面拡散層熱調整工程からなることを特徴とする光導波路素子の製造方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の光導波路素子の製造方法において、該界面拡散層熱調整工程は、光導波路素子の所定の特性値を測定した後、その測定値に応じて調整されることを特徴とする光導波路素子の製造方法。
【請求項5】
請求項3に記載の光導波路素子の製造方法において、前記第一の界面拡散層熱調整工程の加熱温度は、前記第二の界面拡散層熱調整工程の加熱温度より高いことを特徴とする光導波路素子の製造方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の光導波路素子の製造方法において、該基板は、ニオブ酸リチウムから構成され、該特定物質は、Liであることを特徴とする光導波路素子の製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の光導波路素子の製造方法において、該バッファ層内での基板表面の法線方向におけるLiの濃度分布は、1×1016(atoms/cm3)〜3×1021(atoms/cm3)の濃度が、1μm以下の範囲で分布していることを特徴とする光導波路素子の製造方法。
【請求項1】
電気光学効果を有する基板に、光導波路を形成する工程と、バッファ層を形成する工程と、電極を形成する工程とを有する、光導波路素子の製造方法において、
該バッファ層を形成した後に、該バッファ層内の特定物質の濃度分布を加熱によって調整するための1段階又は複数段階の界面拡散層熱調整工程を組み込むことを特徴とする光導波路素子の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の光導波路素子の製造方法において、該界面拡散層熱調整工程が、光導波路素子をウエハ基板上又ウエハ基板から切り出した後に行われることを特徴とする光導波路素子の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の光導波路素子の製造方法において、該界面拡散層熱調整工程が、光導波路素子をウエハ基板に形成する工程中に行われる第一の界面拡散層熱調整工程と、該光導波路素子をウエハ基板上又ウエハ基板から切り出した後に行われる第二の界面拡散層熱調整工程からなることを特徴とする光導波路素子の製造方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の光導波路素子の製造方法において、該界面拡散層熱調整工程は、光導波路素子の所定の特性値を測定した後、その測定値に応じて調整されることを特徴とする光導波路素子の製造方法。
【請求項5】
請求項3に記載の光導波路素子の製造方法において、前記第一の界面拡散層熱調整工程の加熱温度は、前記第二の界面拡散層熱調整工程の加熱温度より高いことを特徴とする光導波路素子の製造方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の光導波路素子の製造方法において、該基板は、ニオブ酸リチウムから構成され、該特定物質は、Liであることを特徴とする光導波路素子の製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の光導波路素子の製造方法において、該バッファ層内での基板表面の法線方向におけるLiの濃度分布は、1×1016(atoms/cm3)〜3×1021(atoms/cm3)の濃度が、1μm以下の範囲で分布していることを特徴とする光導波路素子の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−24949(P2013−24949A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−157355(P2011−157355)
【出願日】平成23年7月19日(2011.7.19)
【特許番号】特許第5083437号(P5083437)
【特許公報発行日】平成24年11月28日(2012.11.28)
【出願人】(000183266)住友大阪セメント株式会社 (1,342)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月19日(2011.7.19)
【特許番号】特許第5083437号(P5083437)
【特許公報発行日】平成24年11月28日(2012.11.28)
【出願人】(000183266)住友大阪セメント株式会社 (1,342)
【Fターム(参考)】
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