説明

光情報記録媒体および光情報記録媒体再生装置

【課題】再生時のタンジェンシャルチルトのマージンの非対称性を軽減することにより、超解像再生の信頼性を向上させる。
【解決手段】光情報記録媒体1の第2領域60に、光情報記録媒体1に固有のタンジェンシャルチルトを補正するためのチルト補正情報が記録されている。光情報記録媒体1を再生装置で再生するとき、再生装置が、上記のチルト補正情報を読み込んで、このチルト補正情報に基づいて光ピックアップのチルトを調整する。これにより、如何なる構成の情報記録膜を有する光情報記録媒体1であっても、光情報記録媒体1に記録されているチルト補正情報に基づいて、適正に再生時のタンジェンシャルチルトを補正することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報が記録される光情報記録媒体および光情報記録媒体再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、画像等の膨大な情報処理のために、光情報記録媒体の記録・再生時における情報密度を高めることが求められている。そこで、再生装置が有する光学系解像限界より短い長さの記録マーク或いは凹および/または凸からなるプリピットによって情報を記録し、記録された情報を再生する超解像技術の開発が進められている。
【0003】
光情報記録媒体では、光ピックアップからの光ビームに対する光情報記録媒体の傾き(チルト)が大きくなると、反射光に損失が生じ、情報の読み出しに影響を及ぼすことが知られている。
【0004】
この現象は、走査方向の記録マーク同士やプリピット同士の間隔を狭くして情報密度を高めた超解像光情報記録媒体においても同じであると認識されていた。
【0005】
例えば、特許文献1には、磁気的超解像技術を用いた光磁気ディスクの記録時のチルトによるクロストーク(光磁気ディスクの半径方向のノイズ)を低減するためにチルトを補正する補正方法が開示されている。この補正方法では、再生時の光磁気信号から検出したクロストークに基づいてチルト値を算出し、このチルト値に基づいてスピスンドルモータのチルトを補正する。
【0006】
また、例えば、特許文献2には、遮光板を配置することにより光ビームのスポットサイズを小さくすることができる超解像光学系を含む光ディスク記録再生装置が開示されている。この光ディスク記録再生装置では、遮光板の追加によりメインスポットの小径化を図ることができる。これは、光ディスクによる超解像技術ではなく、光ディスク記録再生装置による超解像技術である。また、上記技術においては、メインスポットの小型化に伴いメインスポットの両側に生じるサイドローブの強度の偏りが各記録装置で異なる。このため、タンジェンシャルチルトが生じると、一方のサイドローブの強度が高くなりすぎて、再生信号に悪影響を及ぼす場合がある。そこで、上記の光ディスク記録再生装置では、再生時に各装置固有のサイドローブの相関関係を記録しておき、波形等化回路により各装置のサイドローブの偏りの影響を除去している。
【0007】
このように、上記磁気的超解像光情報記録媒体においても、媒体自身については、非超解像情報記録媒体と同様の処理が行われてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−066659号公報(1999年3月9日公開)
【特許文献2】特開平10−283729号公報(1998年10月23日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前述の特許文献1にも記載されているような光磁気ディスクは、カー効果等の磁気的性質を検出することで信号の再生を行う光磁気媒体である。これに対し、現在主流となっている、カー効果等を用いない反射光の強弱を検出することにより信号を再生するBD(Blu-ray Disc)等の所謂光情報記録媒体においても、超解像再生が可能な再生膜を設けることにより、記録容量を増加させることができる超解像技術が検討されている。
【0010】
このような状況の下、本願発明者らは、上記の再生膜により超解像再生を行った場合、通常の光情報記録媒体や磁気的超解像技術を用いた光磁気ディスクと異なる現象が生じることを見出した。この現象は、再生膜の構成(種類)に応じて、超解像再生時、すなわち高いレーザパワーでの再生時にのみ生じるタンジェンシャルチルトにおけるマージンの中心角度と最大の光量が得られる光量最大角度との間に差異が生じることである。
【0011】
以降、この現象をタンジェンシャルチルトマージン非対称化現象と称する。このタンジェンシャルチルトマージン非対称化現象については「発明を実施するための形態」において詳しく説明する。
【0012】
上記のように、再生膜の構成に応じて、再生時の光ピックアップにタンジェンシャルチルトマージン非対称化現象が生じる場合であっても、反射光の損失がない、すなわち光量が最大になるように光ピックアップのタンジェンシャルチルトを制御する従来の方法を用いることが考えられる。しかしながら、この場合は、タンジェンシャルチルトマージン非対称化現象が生じているため、正または負のいずれかの方向のマージンが小さくなり、実質的にタンジェンシャルチルトのマージンが小さくなるという問題がある。
【0013】
また、上記のように、再生膜の構成に応じて、再生時における光ピックアップにタンジェンシャルチルトマージン非対称化現象が生じるということは、超解像ディスクの膜構成によって、最適な光ピックアップの制御角度が異なることを意味する。それゆえ、様々な膜構成を有する光情報記録媒体を、タンジェンシャルチルトマージン非対称化現象の影響を排除して、同じ再生装置において再生することが困難となるという問題もある。
【0014】
このように、タンジェンシャルチルトマージン非対称化現象は、膜構成に応じて個別に生じることから、光情報記録媒体の超解像再生における信頼性を向上させる上で障害となる。勿論、媒体毎に対応することを意図しない前述の特許文献1,2は、上記のような問題の解決手段を与えるものではない。
【0015】
本発明は、前記の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、超解像再生の信頼性を向上することができる光情報記録媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明に係る光情報記録媒体は、前記の課題を解決するために、再生光学系の光学系解像限界の長さより短い記録マークを含む記録マークによりコンテンツが記録される第1領域と、上記光学系解像限界の長さ以上の長さの凹および/または凸により情報が記録された第2領域とを備え、上記第2領域には、再生光の走査方向の入射角度を補正するための入射角度補正用情報が記録されていることを特徴としている。また、上記記録マークは、再生光学系の光学系解像限界の長さより短い凹および/または凸を含む凹および/または凸であってもよい。
【0017】
上記の構成では、第2領域に、入射角度補正用情報が記録されることにより、光情報記録媒体の膜構成に応じて、入射角度補正用情報を光情報記録媒体に設定することができる。これにより、如何なる膜構成を有する光情報記録媒体であっても、再生装置が上記の入射角度補正用情報を読み込んで、当該入射角度補正用情報に基づいて再生光の走査方向の入射角度を補正することができる。従って、超解像再生の信頼性を向上することができる。
【0018】
上記入射角補正情報は、上記第1領域のコンテンツ再生時における最適な再生光の走査方向の入射角度を示す入射角度情報、または上記再生光学系が照射する再生光の走査方向の入射角度を最適角度に制御するための入射角度制御情報であることが好ましい。これにより、再生装置は、制御機能に応じて入射角度情報または入射角度制御情報を用いることにより、適正に再生光の走査方向の入射角度を補正することができる。
【0019】
本発明に係る光情報記録媒体再生装置は、上記のいずれかの光情報記録媒体を再生する光情報記録媒体再生装置であって、上記第1領域のコンテンツ再生時に、上記光情報記録媒体の上記第2領域から読み出した上記入射角度補正用情報に基づいて、再生光を上記光情報記録媒体に照射する角度を制御する入射角度制御手段を備えていることを特徴としている。
【0020】
上記の構成では、入射角度制御手段により、光情報記録媒体の再生時に第2領域から読み出された補正情報に基づいて、再生光を光情報記録媒体に照射する入射角度が制御される。これにより、再生する光情報記録媒体が変わっても、当該光情報記録媒体から読み出した入射角度補正用情報を用いて上記の入射角度を制御することにより、光情報記録媒体によらず、タンジェンシャルチルトマージン非対称化現象の影響を排除することができる。
【0021】
上記光情報記録媒体再生装置は、再生初期に上記第2領域の情報を超解像が生じない低いレーザパワーの光で再生するように、レーザパワーを制御するレーザパワー制御手段を備えていることが好ましい。
【0022】
前述のように、超解像が生じない低い再生レーザパワーでは、タンジェンシャルチルトマージン非対称化現象は発生しない。従って、レーザパワー制御手段により、第2領域を低いレーザパワーで超解像が生じないように再生することにより、入射角度補正用情報を適正に再生することができる。これにより、その入射角度補正用情報に基づいて再生光を光情報記録媒体に照射する角度が制御された後に、タンジェンシャルチルトマージン非対称化現象の影響を受けることなく、第1領域の情報を再生することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る光情報記録媒体は、上記のように構成されることにより、光情報記録媒体に固有の入射角度補正用情報を設定することができる。それゆえ、光情報記録媒体再生装置は、光情報記録媒体によらず、高密度に記録されたデータ領域を適切に超解像再生することが可能になる。従って、超解像再生の信頼性を向上することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態に係る光情報記録媒体の構造を示す断面図である。
【図2】上記光情報記録媒体における基板の構造を示す斜視図である。
【図3】上記光情報記録媒体の外観構成を示す斜視図である。
【図4】上記光情報記録媒体のタンジェンシャルチルトに対する光量を示す電圧を示す特性を示すグラフおよび当該特性を微分した特性を示すグラフである。
【図5】上記光情報記録媒体を再生する光情報記録媒体再生装置の構成を示すブロック図である。
【図6】上記光情報記録媒体再生装置における光ピックアップの構成を示す図である。
【図7】タンジェンシャルチルトマージン非対称化現象の評価に用いる光情報記録媒体の概略構成を示す断面図である。
【図8】図8に示す光情報記録媒体のbERのタンジェンシャルチルト依存性を示すグラフである。
【図9】図8に示す光情報記録媒体のCNRのタンジェンシャルチルト依存性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明に係る一実施形態について、図1〜図9を参照して以下に説明する。
【0026】
〔タンジェンシャルチルトマージン非対称化現象〕
まず、本実施形態で解消しようとするタンジェンシャルチルトマージン非対称化現象について説明する。
【0027】
図7は、タンジェンシャルチルトマージン非対称化現象の評価に用いる光情報記録媒体1001の概略構成を示している。
【0028】
図7に示すように、光情報記録媒体1001は、カバー層1010と、情報記録層1020と、基板1030とを有している。情報記録層1020は、基板1030上に形成されており、再生光によって情報を読み出すことのみ可能な再生専用の情報記録層である。カバー層1010は、情報記録層1020を保護するために、基板1030から最も遠い位置に設けられている。この光情報記録媒体1001においては、カバー層1010が配置される側から、再生光が入射される。
【0029】
カバー層1010は、厚さ100μmの紫外線硬化樹脂からなる。この紫外線硬化樹脂は、405nmの再生光波長における屈折率1.50を有する。
【0030】
情報記録層1020は、スパッタ法等により形成された、再生膜1021と反射膜1022とを有している。再生膜1021は、酸化亜鉛により厚さ60nmに形成されており、反射膜1022は、タンタルにより厚さ7nmに形成されている。情報記録層1020においては、再生膜1021と反射膜1022とが、再生光の入射側から、この順に積層されている。
【0031】
基板1030は、120mmの直径と、1.1mmの厚さとを有する。また、基板1030は、情報が記録されたプリピット群を有するポリカーボネートの円盤状基板からなる。また、プリピット群が形成する領域としては、bER(ビットエラーレート)測定領域と、CNR(信号対ノイズ比)測定領域とが設けられている。
【0032】
bER測定領域は、1−7RLL変調方式に従って、記録情報が、複数の異なる長さを有するマークおよびスペースとして形成されている。これらのマークおよびスペースのうちの、最小マークおよび最小スペースの平均長さが、94nmになるように設定されている。上記の記録情報は、120mmの直径を有するディスクに換算すると40GBに相当する。
【0033】
CNR測定領域は、376nmのマーク長を有するマークがモノトーン形式で記録されている。
【0034】
上記のように構成される光情報記録媒体1001の再生誤り率を示すbERのタンジェンシャルチルト依存性を測定した結果を図8に示す。
【0035】
この測定においては、BD用標準評価機(パルステック製ODU−1000/再生光学系:再生光波長(λ)405nm、開口数(N.A.)0.85)と、BD評価用シグナルディティクター(パルステック製)とを用いる。ただし、BD評価用シグナルディティクターは、高密度対応のためゲインのみ10dB増加するように改造されている。また、上記の測定においては、高密度信号処理として一般的な信号処理PRML(12221)を用いて、再生レーザパワー1.0mWのレーザ光で測定した。
【0036】
上記の測定においては、タンジェンシャルチルトを変化さながらレーザ光を照射することにより光情報記録媒体1001から得られた反射光をBD評価用シグナルディティクターによって検出した受光量を基に、タンジェンシャルチルトに対するbERを測定する。なお、以降、レーザ光が光情報記録媒体1001に対して垂直に照射されたとき、すなわち、反射光の受光量が最大になるときのタンジェンシャルチルトを0°とする。
【0037】
通常の光ディスク(非超解像ディスク)は、図示はしないが、上記のように反射光の受光量が最大になるときに0°となる光量最大角度が、bERの最も良好な最適再生角度と一致する。従って、通常の光ディスクは、光量最大角度を中心としてbERが対称になるタンジェンシャルチルトの依存性を示す。
【0038】
これに対し、図8に示すように、上記の光情報記録媒体1001は、光量最大角度(マージンの中心角度)が、以下に示す実用的な再生範囲の中心となる最適再生角度と一致しない。従って、光情報記録媒体1001は、光量最大角度を中心として対称になるタンジェンシャルチルトの依存性を示さないことが分かる。
【0039】
ところで、記録マークまたはプリピットに対する光ピックアップのタンジェンシャル方向の走査は時間的に若干ずれる。このため、再生信号を読み取ってデジタル化するときに、デジタル化された信号の出力がずれてしまう。この不都合を防止するために、光ディスクに記録された情報に基づいてクロックを生成し、このクロックに同期して再生信号のデジタル化を行うことにより、上記のずれを補間している。一方、クロックが生成できないと、再生ができなくなる。例えば、クロックが生成できないとbER自体が測定できなくなる。
【0040】
超解像ディスクである光情報記録媒体1001の場合、最低限必要な再生クロックを抽出可能な範囲は、図8における一点鎖線で示すタンジェンシャルチルトの範囲(−0.5°〜+0.6°)であった。従って、クロックが生成できる範囲外では実質的な再生ができない。また、再生系のシステムが成立するために必要なbERの閾値を1E−4とすると、その閾値を与えるタンジェンシャルチルト(−0.4°)が再生可能な限界となる。従って、実用的な再生が可能となるタンジェンシャルチルトの範囲は、−0.4°〜+0.6°ということになる。
【0041】
通常、再生装置は、固有の誤差を有しているので、その誤差を補償するためにタンジェンシャルチルトのマージンを求めておき、そのマージンを加味して再生光の照射を制御する。従って、再生装置において、通常の光ディスクと同様に、反射光の受光量が最大になる角度(図8では0°に当たる)で常に再生光が照射されるように制御が行われた場合、+方向と−方向とでタンジェンシャルチルトのマージン量が異なってしまう。このため、再生の信頼性が低下することになる。
【0042】
そこで、図8に示す特性を有する光情報記録媒体1001は、再生時に、0°よりもずれた最適再生角度(+0.1°)で再生光が照射されるように制御すれば、+方向と−方向とでほぼ均等にマージンを確保することができる。
【0043】
タンジェンシャルチルトマージン非対称化現象は、以下のような原因によって生じると考えられる。
【0044】
再生時には、光情報記録媒体1001において再生膜1021を透過して反射膜1022で反射した反射光を受光器で受光することにより信号が再生される。また、再生膜1021は、反射膜1022からの熱によってマスク層として機能するので、再生膜1021の膜厚方向にも温度分布が生じることになる。これにより、マスク層の大きさにも膜厚方向の依存性が生じることになるので、タンジェンシャルチルトマージン非対称化現象が発生したものと推測できる。
【0045】
なお、特許文献1に記載されているような従来の所謂磁気的超解像技術を用いた超解像光磁気情報記録媒体においては、上記のような現象は見られなかった。その理由は、磁気的超解像技術では、照射されたビームスポットの温度の高い領域のみ、記録層に記録された磁気情報が再生光の入射側に設けられた再生層へ転写され、その再生層表面での反射光を受光することで信号を再生していたためと考えられる。
【0046】
また、ピット形状が原因となって、タンジェンシャルチルトマージン非対称化現象が生じることも推測される。このため、光情報記録媒体1001のCNR測定領域において、CNRのタンジェンシャルチルト依存性を、上記のBD用標準評価機を用いて、再生レーザパワー0.4mWと2.0mWとで測定した。
【0047】
図9は、光情報記録媒体1001のCNRのタンジェンシャルチルト依存性を測定した結果を示している。
【0048】
図9に示すように、超解像再生ができない低い再生レーザパワー(0.4mW)の場合、反射光の受光量が最大になるときに0°(光量最大角度)とCNRが最大になる角度(マージンの中心角度,最適再生角度)とが一致する。従って、この場合は、光量最大角度を中心としてCNRが対称になるタンジェンシャルチルトの依存性を示す。
【0049】
これに対し、図9に示すように、超解像再生可能な高い再生レーザパワー(2.0mW)の場合、上記の光情報記録媒体1001は、光量最大角度とCNRが最大になる角度とがずれている。従って、この場合は、光量最大角度を中心としてCNRが対称になるタンジェンシャルチルトの依存性を示さない。
【0050】
このように、同じピットを再生しても、0.4mWと2.0mWとで、CNR側測定領域のタンジェンシャルチルト依存性が異なることが分かる。つまり、タンジェンシャルチルトマージン非対称化現象は、超解像再生ができない低い再生レーザパワーの場合には発生せず、超解像再生可能な高い再生レーザパワーの場合に発生する。
【0051】
上記の測定結果から、タンジェンシャルチルトマージン非対称化現象は、ピット形状によって生じたものではなく、あくまで再生膜によって生じたものと考えられる。
【0052】
なお、タンジェンシャルチルト方向の最適再生角度のずれる方向が、CNR測定時とbER測定時とで逆になっているが、その理由は現時点では不明である。
【0053】
ところで、光情報記録媒体は、通常統一された規格の基に量産されて、市場に出回る。光情報記録媒体の規格においては、規格の性質上、様々な膜構成に対応できるように、自由度が大きい方が好ましい。従って、上記のような超解像の光情報記録媒体1001においても、様々な膜構成を有する光情報記録媒体が、同じ再生装置において、再生されることが望ましい。
【0054】
しかしながら、上記のように、タンジェンシャルチルトマージン非対称化現象は、膜構成に応じて個別に生じる。このため、再生装置のみによって様々な光情報記録媒体に固有のタンジェンシャルチルトマージン非対称化現象の影響を排除することは通常困難である。これは、再生装置が、様々な膜構成を有する光情報記録媒体についてのタンジェンシャルチルトマージン非対称化現象に関する情報を個々に保持しておき、この情報に基づいてタンジェンシャルチルト補正を行う必要があるからである。
【0055】
以降に詳細に説明する本実施の形態に係る光情報記録媒体は、このような不都合を解消するためになされたものである。
【0056】
〔光情報記録媒体の構成〕
本実施の形態では、情報記録層において、再生装置が有する光学系解像限界の長さより短い長さを含むプリピットによる凹凸形状にて情報が記録されている構成を例示する。しかしながら、情報記録層において情報を記録する構成は、これに限らず、情報記録層において、再生装置が有する光学系解像限界の長さより短い長さを含む記録マークにて情報が記録されている構成であってもよい。例えば、記録光の照射により結晶状態と非結晶状態とに相変化を起こす相変化材料よりなる記録膜を有することによって実現されてもよい。
【0057】
図1は、本実施の形態に係る光情報記録媒体1の断面構造を示す図である。
【0058】
図1に示すように、光情報記録媒体1は、カバー層10と、情報記録層20と、基板30とを備えており、光(再生光)の入射側から、カバー層10、情報記録層20、基板30の順に積層されている。
【0059】
〈光情報記録媒体の各層の構成〉
カバー層10は、透明な樹脂材料によって形成されている。再生光の波長に対して透過率が十分高いものであればよく、紫外線硬化樹脂などによって形成されていてもよい。カバー層10に用いることのできる樹脂材料としては、例えば、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、フッ素化アクリル樹脂、およびエポキシ樹脂等がある。また、カバー層10は、例えば、ポリカーボネートフィルムと透明粘着剤とで形成されていてもよい。
【0060】
カバー層10の表面は、再生に悪影響を及ぼさない防汚特性(指紋等が付着した場合においても情報記録層20層からの再生信号等が劣化しない特性)や耐擦傷特性を有していてもよい。
【0061】
なお、上記の防汚特性および耐擦傷特性は、カバー層10の表面にハードコートが設けられることによって満たされていてもよい。
【0062】
さらに、カバー層10は、カバー層10が入射する再生光の光軸に対して傾くことによって発生するコマ収差に対して、充分にチルトマージンを確保できるほどの厚さが必要となるとともに、情報記録層20を充分に保護できるだけの厚さが必要となる。ここでのカバー層10の厚さとは、光情報記録媒体1の情報記録領域におけるカバー層10の厚さの平均値であり、光情報記録媒体1の個々について固有の値である。また、光情報記録媒体1が1層の情報記録層20を有するものである場合には、厚さが100μm程度であることが好ましい。
【0063】
実際には、カバー層10の望ましい厚さは、カバー層10の屈折率の値に影響を受ける。カバー層10に用いる前記の樹脂材料の一般的な屈折率は1.45〜1.70の範囲内であり、カバー層10の屈折率が前記範囲内であれば、カバー層10の望ましい厚さは、93〜108μm程度である。
【0064】
あるいは、カバー層10の厚さは、光情報記録媒体1を再生する再生装置(後述する光情報記録媒体再生装置100,図5参照)が有する光学系に応じて変更されてもよい。この場合、例えば、カバー層10は、0.6mmのポリカーボネ−ト基板であることが好ましい。
【0065】
情報記録層20は、再生膜21と反射膜22とを含んでいる。再生膜21および反射膜22は、光(再生光)の入射する側から、再生膜21、反射膜22の順に積層されている。すなわち、光(再生光)の入射する側からカバー層10、再生膜21、反射膜22、基板30の順に積層されている。再生膜21および反射膜22は、スパッタ法等により形成されている。
【0066】
反射膜22は、再生光の一部を吸収することにより、再生膜21を加熱する熱に変換する。また、反射膜22は、残りの再生光を反射することにより、反射光による信号再生に利用できるようにする。
【0067】
再生膜21は、反射膜22で生じる熱によって加熱されることにより、自身の光学定数が変化することによって、再生光学系の解像限界(再生光の回折限界で決まる光学的分解能)よりも短いマーク(ピット)長の信号の再生を可能にするために設けられている。具体的には、再生膜21は、温度が上昇することによって、再生光の波長における光学定数である、屈折率および/または消衰係数を変化させることに伴って、光学多重干渉の状態を変化させる。再生膜21の作用については、例えば以下のように説明することができる。
【0068】
再生光が集光されて形成された再生ビームスポットでは、光強度分布によってスポット中心と外周部とで温度分布の偏りが生じる。実際には、再生ビームスポットが光情報記録媒体1を走査しているため、高温中心は再生ビームスポットの進行方向に対して後方側にずれ、再生ビームスポット内で温度勾配が発生する。つまり、再生ビームスポットの進行方向に向かって後方側に高温部が発生し、前方側に低温部が発生する。
【0069】
再生膜21が温度に応じて屈折率が変化するものとすると、再生ビームの入射によって温度が上昇した高温部では、再生膜21の屈折率が変化した状態となる。よって、情報記録層20の光干渉構造を予め設計しておくことによって、情報記録層20として、例えば高反射率の状態に変化することができる。一方、低温部では、再生膜21の屈折率が初期状態を維持しているため、高温部に比べると情報記録層20が低反射率の状態となる。
【0070】
このような、再生ビームスポット内における情報記録層20の反射率分布を積極的に利用することによって、再生領域のサイズを再生ビームスポットより実質的に小さくすることができる。この結果、再生分解能が向上するので、超解像再生が可能となる。
【0071】
以上のことから、再生膜21は、熱によるバンドギャップ変化によって光学特性が変化する特性を有する金属酸化膜からなることが好ましい。これにより、通常の組成変化または相変化などの構造変化によって光学特性が変化する色素または相変化材料を用いる形式の超解像再生光情報記録媒体における再生膜と比較して、再生膜21の再生耐久性を向上させることができる。また、金属酸化膜は透明のものが多く、反射膜22への透過性がよく、反射膜22がより効率的に作用するという利点もある。
【0072】
例えば、金属酸化膜の中でも、特に比較的安価で豊富な酸化亜鉛が好ましい。従って、再生膜21が、酸化亜鉛からなること、または酸化亜鉛を含むことが好ましい。これにより、光情報記録媒体1のコストを低減することが可能になる。また、他の金属酸化膜を用いるよりも高い超解像特性を得ることができる。このため、光情報記録媒体1の記録容量を向上させることが可能になる。さらに、光情報記録媒体1の作製が容易になるために大量生産が可能であるとともに、経時変化が生じにくいために再生耐久性を向上させることも可能となる。
【0073】
しかしながら、情報記録層20は、次の条件を満たしさえすれば、上記の構成に限定される必要はなく、形成される材料、厚さおよび層数が特に限定されることはない。この条件とは、情報記録層20が、超解像再生を可能にする層として機能することと、基板30上に形成可能であることである。その他の条件としては、情報記録層20が、再生装置の有する光学系の解像限界以下の長さが含まれる後述のプリピット31(図2参照)や、記録装置によって記録され、再生装置の有する光学系の解像限界以下の長さを含む記録マークを再生可能であることである。
【0074】
図2は、光情報記録媒体1における基板30の構造を示している。
【0075】
基板30は、ポリカーボネートの円盤状基板からなる。また、図2に示するように、基板30は、記録情報に対応した凸形状のプリピット(ピット)31が、同心円状、またはスパイラル状に形成されている。また、プリピット31は、凹形状のみや、凸形状および凹形状が混在しているものであってもよい。プリピット31が形成されている面に情報記録層20が形成されることにより、情報記録層20にプリピット31が凹凸形状として転写された状態となる。従って、光情報記録媒体1は、情報記録層20が、凹凸形状としての情報を記録している状態になっており、いわゆる再生専用の光情報記録媒体として形成されている。
【0076】
なお、基板30は、上記のプリピット31の代わりに、表面にグルーブが設けられていてもよい。
【0077】
基板30を構成する材料の光学的特性は、特に限定されるものではなく、透明でも不透明であってもよい。また、基板30を構成する材料としては、例えば、ガラス、ポリカーボネート樹脂、圧縮型可能な他の樹脂、金属等、およびそれらの組合せが挙げられる。また、さらに、基板30の厚さは、特に限定はされないが、支持体として使用できる程度の所定の強度があればよいし、単層構造または多層構造であってもよい。
【0078】
〈光情報記録媒体の記録領域の構成〉
図3は、光情報記録媒体1の外観構成を示す斜視図である。
【0079】
図3に示すように、光情報記録媒体1は、外観が円盤形状をなすように形成されており、後述するスピンドルモータ101(図5参照)にクランプされるための孔40を中心部に有している。また、光情報記録媒体1は、孔40の周囲に第1領域50および第2領域60が形成されている。第1領域50および第2領域60には、前述のプリピット31により情報が記録されている。
【0080】
第1領域50は、情報としてコンテンツ等が記録されている。また、第2領域60は、第1領域50の内周側と外周側とに形成されており、光情報記録媒体1の制御情報等を含む各種の情報が記録されている。第2領域60は、光情報記録媒体1を超解像再生する場合のタンジェンシャル方向の最適角度(入射角度情報)が記録されている。あるいは、第2領域60は、後述するように、超解像ディスクを超解像再生する場合のタンジェンシャルチルトに対する光量の電圧値をオフセットするための電圧値(オフセット電圧)が記録されていてもよい。または、第2領域60は、実質的に膜構成が限定される製造社の認識が可能な情報を含むBCA(Burst Cutting Area)等であってもよい。第2領域60に記録されるこれらの情報は、タンジェンシャルチルト(再生光の走査方向の入射角度)を補正するための光情報記録媒体1に固有のチルト補正情報(入射角度補正用情報)として用意されている。
【0081】
第1領域50および第2領域60は、いずれも1−7RLL変調方式に従って、記録情報が、複数の異なる長さを有するマークおよびスペースとして形成される。特に、第1領域50には、これらのマークおよびスペースのうちの、最小マークおよび最小スペースの平均長さが94nmになるように、マークおよびスペースが設けられている。このようにして記録される情報の記憶量は、120mmの直径を有するディスクに換算すると40GBに相当する。一方、第2領域60には、上記のマークおよびスペースのうちの、最小マークおよび最小スペースの平均長さが149nmになるように、マークおよびスペースが設けられている。このようにして記録される情報の記憶量は、120mmの直径を有するディスクに換算すると25GBに相当する。
【0082】
なお、記録の形式(ピットまたはウォブル)や、変調方式や、記録密度や、第1領域50および第2領域60の位置関係や数等は上記の構成に限定されない。例えば、第2領域60において形成された凹凸の長さは、対応する再生装置の光学系における解像限界より長ければよい。また、第1領域50に形成された凹凸の長さ、または形成される記録マークの長さを有するマークおよびスペースのうちの、最小マークおよび最小スペースの平均長さが、対応する再生装置の光学系における解像限界より短ければ良い。
【0083】
図4は、光情報記録媒体1における反射光量のタンジェンシャルチルト依存性を示している。図4における上下のグラフにおいて、縦軸は受光器によって得られる光量に相当する電圧を表している。
【0084】
このタンジェンシャルチルト依存性は、光情報記録媒体1の情報記録層20に光ビームをフォーカスした状態で、光ピックアップのタンジェンシャルチルトを揺動させることで得られる。図4に示す上側の特性では、光情報記録媒体1からの反射光の光量が、光量最大角度で最大となり、最大値からはずれていくと急激に低下した後、ほとんど変化しない状態となる。
【0085】
従来の光ピックアップのチルト制御では、図4の上側の曲線に当る信号を微分することによって得られる図4の下側の曲線において電圧が0となるように制御している。これにより、光情報記録媒体1に垂直に再生光が照射されるときの光量が最大となる角度に光ピックアップの傾きを調整することができる。
【0086】
これに対し、図4の下側の特性において、電圧にオフセット電圧Voffを付加することにより、曲線が0となる角度が光量最大角度からシフトし、これが超解像再生時の制御目標角度となる。従って、この制御目標角度となるようにタンジェンシャルチルトの補正値を設定し、この補正値に基づいて光ピックアップを制御することにより、光量が最大となる角度以外の角度で制御することが可能になる。
【0087】
よって、前述のように、オフセット電圧Voffをチルト補正情報として第2領域60に記録しておくことに意義がある。
【0088】
〔光情報記録媒体再生装置の構成〕
図5は、光情報記録媒体1を再生する光情報記録媒体再生装置100の構成を示している。また、図6は、光情報記録媒体再生装置100における光ピックアップ102の構成を示している。
【0089】
〈光情報記録媒体再生装置の概略構成〉
図5に示すように、光情報記録媒体再生装置100(再生装置)は、前述の光情報記録媒体1に対して光ビームを照射し、その反射光を検出することによって光情報記録媒体1に記録された情報を再生するための装置である。
【0090】
なお、本実施の形態では、光情報記録媒体1が円盤状の光ディスクである場合について説明するが、光情報記録媒体1は必ずしも円盤状の光ディスクでなくてもよい。
【0091】
光情報記録媒体再生装置100は、光情報記録媒体1をスピンドルモータ101にて回転駆動し、光ピックアップ102によって、光情報記録媒体1からの情報の読み出しを行う。また、光ピックアップ102は、チルトアクチュエータ103によってチルトが調整される。また、スピンドルモータ101、光ピックアップ102およびチルトアクチュエータ103は、制御部104によって制御される。
【0092】
スピンドルモータ101は、光情報記録媒体1を回転することにより、光スポットを光情報記録媒体1上で走査させる。チルトアクチュエータ103は、後述するチルト制御部108bの制御によって、光ピックアップ102の傾きを調整するように、光ピックアップ102を所定の範囲で回動させる駆動を行う機構を含んでいる。
【0093】
制御部104は、信号処理部105と、駆動制御部106とを含んでいる。
【0094】
信号処理部105は、光情報記録媒体1上の記録マークからの反射光より得られた光ピックアップ102からの電気信号に基づいて記録情報を検出することにより、光情報記録媒体1上に記録された情報を読み取る。また、信号処理部105は、光情報記録媒体1上の記録マークからの反射光より得られた光ピックアップ102からの電気信号に基づいて、後述のフォーカスエラー信号およびトラッキングエラー信号を生成する。また、信号処理部105は、光情報記録媒体1から読み出されたクロック情報に基づいて図示しないクロック再生回路によって生成されたクロックに同期して、読み取った情報をデジタル化する。
【0095】
駆動制御部106は、サーボ回路によって構成されるスピンドルモータ制御部107および光ピックアップ制御部108と、レーザ制御部109とを含んでいる。
【0096】
スピンドルモータ制御部107は、光ピックアップ102から読み出されて信号処理部105で生成された電気信号や外部からの指示に基づいて、スピンドルモータ101の動作を制御する。
【0097】
光ピックアップ制御部108は、レンズ制御部108aと、チルト制御部108bとを有している。レンズ制御部108aは、上記の電気信号や外部からの指示に基づいて、光ピックアップ102のフォーカス制御およびトラッキング制御のために後述するレンズアクチュエータ102f(図6参照)の動作を制御する。具体的には、レンズ制御部108aは、信号処理部105からのフォーカスエラー信号およびトラッキングエラー信号に基づいて後述する対物レンズ102e(図6参照)の位置を補正するようにレンズアクチュエータ102fに制御信号を与える。
【0098】
また、光情報記録媒体1の第1領域50を再生する場合、チルト制御部108b(入射角度制御手段)は、上記の電気信号や外部からの指示に基づいて、光ピックアップ102のチルト制御のためにチルトアクチュエータ103の駆動を制御する。電気信号としては、前述のように光情報記録媒体1の第2領域60から読み出されたチルト補正情報が利用される。これにより、チルト制御部108bは、チルト補正情報に基づいてチルトアクチュエータ103による光ピックアップ102の傾きを制御する。
【0099】
レーザ制御部109(レーザパワー制御手段)は、光ピックアップ102の後述する半導体レーザ102a(図6参照)のレーザ出力(レーザパワー)を制御する。具体的には、レーザ制御部109は、超解像特性を発現させるために従来のレーザパワーより高く設定可能であり、従来のレーザパワーとの切り替えも可能である。また、レーザパワーは、前述のように、低い値(例えば0.4mW)に設定可能であり、高い値(例えば2.0mW)に設定可能である。
【0100】
〈光ピックアップの構成〉
図6に示すように、光ピックアップ102(再生光学系)は、半導体レーザ102a、コリメートレンズ102b、ビーム整形プリズム102c、ビームスプリッタ102d、対物レンズ102e、レンズアクチュエータ102f、および検出光学系102gを備えている。
【0101】
また、光ピックアップ102は、光源である半導体レーザ102aから照射されたレーザ光をビーム状(円形)に整形して光情報記録媒体1上に集光する装置である。この光ピックアップ102では、レーザ光源として半導体レーザ102aを用いている。ただし、これに限らず、他の光源を用いてもよい。
【0102】
半導体レーザ102aからのレーザ光は、コリメートレンズ102bによってほぼ平行光に変換され、ビーム整形プリズム102cによって光強度の分布がほぼ円形となるように整形される。このほぼ円形の平行光は、ビームスプリッタ102dを透過した後、対物レンズ102eによって光ビーム(入射光)として光情報記録媒体1に集光される。
【0103】
また、光情報記録媒体1からの反射光は、ビームスプリッタ102dで分岐され、検出光学系102gに導かれる。検出光学系102gでは、光検出器(受光器)によって、光情報記録媒体1からの反射光の偏光方向の変化や反射光強度の変化(反射光レベルの高低)等から記録情報、焦点ずれ情報およびトラック位置ずれ情報が識別され、これらの情報が電気信号に変換される。変換された電気信号は、信号処理部103aに送られる。
【0104】
上記の反射光には、光情報記録媒体1上に設けられたプリピット31の一部によって構成されるアドレス情報マークからの反射光も含まれている。検出光学系102gは、その反射光から得られた電気信号から、光情報記録媒体1における光ビーム照射面に形成される光スポットの光情報記録媒体1に対するフォーカスエラー信号とトラッキングエラー信号とを検出する。
【0105】
レンズアクチュエータ102fは、上記のフォーカスエラー信号がフィードバックされることにより、光スポットの光軸方向の位置ずれを補正する。これにより、光ピックアップ102は、光情報記録媒体1における所望の情報記録層20に光スポットを形成できる。また、レンズアクチュエータ102fは、トラッキングエラー信号がフィードバックされることにより、光スポットのトラック幅方向の位置ずれを補正する。これにより、光ピックアップ102は、光情報記録媒体1における目標のトラックに光スポットを追従させることができる。
【0106】
〈光情報記録媒体再生装置の実現形態〉
前述の光情報記録媒体再生装置100における制御部104の各ブロックは、ハードウェアロジックによって構成されてもよいし、次のようにCPUを用いてソフトウェア(視差画像生成プログラム)によって実現されてもよい。
【0107】
すなわち、上記の各ブロックは、それぞれの機能を実現するプログラムの命令を実行するCPU(Central Processing Unit)、プログラムを格納したROM(Read Only Memory)、プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)、プログラムおよび各種データを格納するメモリ等の記憶装置(記録媒体)などを備えている。そして、本発明の目的は、上述した機能を実現するソフトウェアのプログラムコード(実行形式プログラム、中間コードプログラム、ソースプログラム)をコンピュータで読み取り可能に記録した記録媒体を、光情報記録媒体再生装置100に供給し、CPUが記録媒体に記録されているプログラムコードを読み出して実行することによっても、達成可能である。
【0108】
上記の記録媒体としては、例えば、磁気テープやカセットテープ等のテープ系、フロッピー(登録商標)ディスク/ハードディスク等の磁気ディスクやCD−ROM/MO/MD/BD/DVD/CD−R等の光ディスクを含むディスク系、ICカード(メモリカードを含む)/光カード等のカード系、あるいはマスクROM/EPROM/EEPROM/フラッシュROM等の半導体メモリ系などを用いることができる。
【0109】
また、光情報記録媒体再生装置100を通信ネットワークと接続可能に構成し、上記のプログラムコードを通信ネットワークを介して供給してもよい。この通信ネットワークとしては、特に限定されず、例えば、インターネット、イントラネット、エキストラネット、LAN、ISDN、VAN、CATV通信網、仮想専用網(virtual private network)、電話回線網、移動体通信網、衛星通信網等が利用可能である。また、通信ネットワークを構成する伝送媒体としては、特に限定されず、例えば、IEEE1394、USB、電力線搬送、ケーブルTV回線、電話線、ADSL回線等の有線でも、IrDAやリモコンのような赤外線、Bluetooth(登録商標)、802.11無線、HDR、携帯電話網、衛星回線、地上波デジタル網等の無線でも利用可能である。なお、本発明は、上記プログラムコードが電子的な伝送で具現化された、搬送波に埋め込まれたコンピュータデータ信号の形態でも実現され得る。
【0110】
〔光情報記録媒体再生装置のチルト制御動作〕
上記のように構成される光情報記録媒体再生装置100のチルト制御動作について説明する。
【0111】
まず、光情報記録媒体再生装置100で再生される光情報記録媒体1は、下記のように構成されている。カバー層10は、厚さ100μmの紫外線硬化樹脂(再生光波長405nmにおける屈折率1.50)からなる。情報記録層20における再生膜21は酸化亜鉛(厚さ60nm)によって形成され、反射膜22がタンタル(厚さ7nm)によって形成されている。基板30は、直径120mm、厚さ1.1mmであり、ポリカーボネートによって形成されている。
【0112】
光ピックアップ102が光情報記録媒体1に照射する再生光としては、具体的には青紫色に該当する波長(375〜491nm)の光を用いるものとし、好ましくは400nm以上かつ410nm以下の光を用いるものとする。また、対物レンズ102eの開口数は0.84以上かつ0.86以下のものを用いるものとする。
【0113】
ここで、前述のように、低い再生レーザパワーでは、タンジェンシャルチルトマージン非対称化現象は発生しない(図9参照)。従って、第2領域60において、光ピックアップ102の光学系における解像限界より長いピットを、光量が最大となるように光ピックアップ102のタンジェンシャル方向の角度を制御する従来の制御手法で、超解像が生じない低いレーザパワー(例えば0.4mW)で再生できる。
【0114】
従って、再生初期に第2領域60の情報を低い再生レーザパワーで再生することにより、チルト補正情報を適正に再生することができる。このチルト補正情報は、第1領域50を再生するときの光ピックアップ102のタンジェンシャル方向の最適角度、またはタンジェンシャル方向の最適角度で再生できるように光ピックアップ102を制御するためのオフセット電圧Voffである。そして、再生されたチルト補正情報を用いて光ピックアップ102のタンジェンシャルチルトを補正することにより、図8に示すタンジェンシャル方向の最適再生角度となるように、チルトアクチュエータ103を制御する。
【0115】
これにより、光ピックアップ102がチルト補正情報に応じた角度に姿勢が調整されるので、第1領域50に記録されたコンテンツ再生時にタンジェンシャルチルトが補正された状態となる。この結果、如何なる構成の再生膜21を有する光情報記録媒体1であっても、第2領域60に記録されているチルト補正情報に基づいて、再生時のタンジェンシャルチルトを補正するので、適正に超解像再生することができる。従って、再生の信頼性を向上させることができる。
【0116】
〔実施形態の総括〕
本実施形態に係る光情報記録媒体1は、前述のように、第2領域60に光情報記録媒体1に固有のチルト補正情報が記録されている。このチルト補正情報は、第1領域50を再生するときの光ピックアップ102のタンジェンシャル方向の最適角度(入射角度情報)である。または、上記のチルト補正情報は、タンジェンシャル方向の最適角度で再生できるように光ピックアップ102を制御するためのオフセット電圧Voff(入射角度制御情報)である。これにより、情報記録層20の再生膜21に応じたチルト補正情報を光情報記録媒体1に設定することができる。
【0117】
また、本実施形態に係る光情報記録媒体再生装置100は、前述のように、チルトアクチュエータ103およびチルト制御部108bを備えている。これにより、光情報記録媒体1の再生時に第2領域から読み出されたチルト補正情報に基づいてチルトアクチュエータ103を制御することにより、光ピックアップ102の傾きを適正に補正することができる。それゆえ、再生する光情報記録媒体1が変わっても、当該光情報記録媒体1から読み出したチルト補正情報を用いてチルト補正をすることにより、光情報記録媒体1によらず、タンジェンシャルチルトマージン非対称化現象の影響を排除することができる。従って、超解像再生の信頼性を向上させることができる。
【0118】
〔付記事項〕
なお、本発明に係る光情報記録媒体は、上記の実施形態における構成に限定されるものではなく、情報記録層を複数有していてもよいし、記録型の光情報記録媒体であってもよいし、再生専用と記録型との混合型の光情報記録媒体であってもよい。
【0119】
例えば、光情報記録媒体は、CD−ROM(Compact Disk Read Only Memory)、CD−R(Compact Disk Recordable)、CD−RW(Compact Disk Rewritable)などのCD系のディスクであってもよい。また、光情報記録媒体は、DVD−ROM(Digital Versatile Disk Read Only Memory)、DVD−RW(Digital Versatile Disk Rewritable)、BD(Blu-ray Disc),BD(Blu-ray Disc)−ROM等のDVD系のディスクであってもよい。また、その他、光情報記録媒体は、光磁気ディスク、相変化型ディスク等、種々の光ディスクであってもよい。さらに、本発明において記録の方式や光情報記録媒体の大きさを問うものではない。
【0120】
光情報記録媒体再生装置は、再生または記録専用の装置の他、再生および記録の両方が可能な装置が含まれ、その使用形態において据え置き用、携帯用の如何を問うものではない。
【0121】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0122】
本発明に係る光情報記録媒体は、再生時のタンジェンシャルチルトのマージンの非対称性を軽減するので、超解像再生の信頼性を向上させることに好適に利用できる。
【符号の説明】
【0123】
1 光情報記録媒体
20 情報記録層
21 再生膜
30 基板
31 プリピット(凹,凸,記録マーク)
50 第1領域
60 第2領域
100 光情報記録媒体再生装置(再生装置)
102 光ピックアップ
103 チルトアクチュエータ
108b チルト制御部(入射角度制御手段)
109 レーザ制御部(レーザパワー制御手段)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
再生光学系の光学系解像限界の長さより短い記録マークを含む記録マークによりコンテンツが記録される第1領域と、
上記光学系解像限界の長さ以上の長さの凹および/または凸により情報が記録された第2領域とを備え、
上記第2領域には、再生光の走査方向の入射角度を補正するための入射角度補正用情報が記録されていることを特徴とする光情報記録媒体。
【請求項2】
上記記録マークは、上記再生光学系の光学系解像限界の長さより短い凹および/または凸を含む凹および/または凸であることを特徴とする請求項1に記載の光情報記録媒体。
【請求項3】
上記入射角度補正用情報は、上記第1領域のコンテンツ再生時における最適な再生光の走査方向の入射角度を示す入射角度情報、または上記再生光学系が照射する再生光の走査方向の入射角度を最適角度に制御するための入射角度制御情報であることを特徴とする請求項1または2に記載の光情報記録媒体。
【請求項4】
請求項1、2または3に記載の光情報記録媒体を再生する光情報記録媒体再生装置であって、
上記第1領域のコンテンツ再生時に、上記光情報記録媒体の上記第2領域から読み出した上記入射角度補正用情報に基づいて、再生光を上記光情報記録媒体に照射する角度を制御する入射角度制御手段を備えていることを特徴とする光情報記録媒体再生装置。
【請求項5】
再生初期に上記第2領域の情報を超解像が生じない低いレーザパワーの光で再生するように、レーザパワーを制御するレーザパワー制御手段を備えていることを特徴とする請求項4記載の光情報記録媒体再生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−243352(P2012−243352A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−112793(P2011−112793)
【出願日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】