光情報記録媒体の記録再生方法
【課題】記録層の膜厚に関して高い精度が要求されず、かつ、良好な再生出力を得ることができる光情報記録媒体の記録再生方法を提供する。
【解決手段】記録光RBの波長をλ、記録層14の屈折率をnとして2λ/n以上の厚さがあり、記録光RBの照射により屈折率が変化する記録層14と、記録層14に記録光RBの入射側と反対側において隣接する隣接層(中間層13)とを備える光情報記録媒体の記録再生方法であって、記録層14に記録される記録スポットの半径をω0として、情報の記録時に、記録層14と隣接層の界面から記録光の入射側にω0<d<3ω0を満たすオフセット量dだけ焦点位置をずらして記録光RBを照射することで記録層14の記録位置の屈折率を変化させて記録スポットMを記録し、情報の再生時に、界面18に焦点位置を合わせて読出光を照射する。
【解決手段】記録光RBの波長をλ、記録層14の屈折率をnとして2λ/n以上の厚さがあり、記録光RBの照射により屈折率が変化する記録層14と、記録層14に記録光RBの入射側と反対側において隣接する隣接層(中間層13)とを備える光情報記録媒体の記録再生方法であって、記録層14に記録される記録スポットの半径をω0として、情報の記録時に、記録層14と隣接層の界面から記録光の入射側にω0<d<3ω0を満たすオフセット量dだけ焦点位置をずらして記録光RBを照射することで記録層14の記録位置の屈折率を変化させて記録スポットMを記録し、情報の再生時に、界面18に焦点位置を合わせて読出光を照射する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光情報記録媒体の記録再生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光情報記録媒体に多層に情報を記録するため、2光子吸収などの多光子吸収反応を用いて光情報記録媒体中の記録材料に光学的変化を起こさせる方法が研究されている(例えば、特許文献1)。多光子吸収反応を用いた光情報記録媒体は、従来から広く用いられている単層の光情報記録媒体と同様に、情報の再生時に記録層の上下の両界面で反射した反射光同士が干渉すること(干渉効果という)を考慮し、記録部分と未記録部分の反射率(記録層の上下の両界面での反射光同士が干渉後、光ピックアップへ戻ってくる光の割合)の差が大きくなるように、記録部分の記録材料の屈折率変化と記録層の厚さが設定されている。特許文献1の情報記録媒体においても、同文献の図2に示すように膜厚と反射率の関係が考慮され、再生光波長をλ、記録層の屈折率をnとして、記録層厚さをλ/4n程度や、より薄い5〜50nm程度にするとよいとされている(段落0062)。
【0003】
また、このように干渉効果を利用しない場合として、特許文献2に開示されたように、記録層の下に蛍光発光層を設け、この蛍光発光層で発した光を、記録層を通して検出することで、情報を読み取る構成とするものも知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4290650号公報
【特許文献2】特開2001−325745号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1のように、再生時に記録層の両界面での反射光の干渉効果を利用する場合、記録層が設計値通りの膜厚に製造されないと良好な変調度が得られないので、膜厚の精度が要求され、光情報記録媒体の製造コストが嵩むという問題がある。
【0006】
また、特許文献2のように、蛍光発光をベース光として、このベース光がどれだけ光検出器に戻ってくるかの強弱で変調を得ようとすると、蛍光発光自体が非常に微弱であるため、良好な再生出力が得にくいという問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、記録層の膜厚に関して高い精度が要求されず、かつ、良好な再生出力を得ることができる光情報記録媒体の記録再生方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記した課題を解決するため、本発明は、記録光の波長をλ、記録層の屈折率をnとして2λ/n以上の厚さがあり、記録光の照射により屈折率が変化する記録層と、当該記録層に記録光の入射側と反対側において隣接する隣接層とを備える光情報記録媒体の記録再生方法であって、前記記録層に記録される記録スポットの半径をω0として、情報の記録時に、前記記録層と前記隣接層の界面から記録光の入射側にω0<d<3ω0を満たすオフセット量dだけ焦点位置をずらして記録光を照射することで前記記録層の記録位置の屈折率を変化させて記録スポットを記録し、情報の再生時に、前記界面に焦点位置を合わせて読出光を照射することを特徴とする。
【0009】
このような光情報記録媒体の記録再生方法によれば、従来の干渉効果を利用していた光情報記録媒体よりも厚い記録層に、記録光の進行方向(以下、単に「深さ方向」とする。)における幅広い範囲で屈折率の変化を起こさせ、記録スポットが記録される。このとき、記録光の強度分布に応じて屈折率の変化が生じるので、再生時に記録スポットに読出光を照射すると、記録スポットがレンズとして働き、このレンズとしての働きが、読出光を記録スポットから逸らせたり、記録スポット内に収束させたりする。このため、情報の再生時に界面に合わせて読出光を照射すると、記録スポットから返ってくる光が弱くなったり(屈折率が小さくなった場合)強くなったり(屈折率が大きくなった場合)するので、非記録部分における界面から返ってきた光と強度の差が生じ、この強度の差の変調で情報を再生することができる。すなわち、従来の干渉効果を利用した光情報記録媒体の記録再生方法においては、記録層が薄かったため、記録スポットがレンズとして働くことがなかったが、本発明においては、厚い記録層を用い、その厚い記録層に、レンズ効果が十分発揮できるように、記録光の焦点位置を記録層と隣接層の界面からオフセット量dだけずらしているので、上記のような変調で情報を記録・再生することができる。
【0010】
このような記録再生方法によれば、干渉効果を利用しないので、記録層の膜厚の精度が要求されず光情報記録媒体の製造が容易である。また、再生光(本明細書において、読出光を照射して返ってくる変調された光をいう)の光の発生源として蛍光を利用せず、界面で反射した読出光を利用するので再生光の強度を大きくでき、良好な再生出力を得ることができる。
【0011】
そして、前記した記録層に含まれる記録材料が多光子吸収化合物である場合には、深さ方向における限られた範囲内で選択的に記録材料の屈折率を変えることができるので、記録層の多層化を容易にして記録媒体の容量を大きくすることができる。
【0012】
前記した記録再生方法においては、読出光のスペクトルの半値全幅が8nm以上であることが望ましい。
【0013】
従来の記録再生方法においては、干渉効果を利用していたため、読出光の半値全幅が小さく、コヒーレンス長が大きいのが一般的であったが、本発明の記録再生方法においては、干渉効果を用いていないため、従来とは逆にコヒーレンス長を小さくして再生を行う記録層以外の界面からの複数の反射光と再生光との干渉(多重干渉効果という)を抑制し、高いS/N比を得ることができる。
【0014】
前記した光情報記録媒体の記録再生方法においては、情報の再生時に共焦点光学系を用いることが望ましい。
【0015】
情報の再生時に共焦点光学系を用いることで、記録層と隣接層の界面での反射光以外の光をカットしてノイズを減らし、良好なS/N比で情報の再生が可能である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、記録層の膜厚に関して高い精度が要求されず、光情報記録媒体の製造が容易である。また、良好な再生出力を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】多層光情報記録媒体の断面図である。
【図2】記録層の厚さと変調度の関係を示すグラフである。
【図3】第1実施形態に係る記録再生装置の構成図である。
【図4】記録スポットの平面的な図である。
【図5】d/ω0と変調度の関係を示すグラフである。
【図6】記録時の焦点位置と記録スポットの形成を説明する図である。
【図7】再生時の焦点位置と記録スポットにおけるレンズ効果を説明する図である。
【図8】再生時の焦点位置と非記録位置における読出光の反射を説明する図である。
【図9】変形例における再生時のレンズ効果を説明する図である。
【図10】光情報記録媒体の他の例を示す断面図である。
【図11】記録再生装置の他の例を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
本発明の光情報記録媒体の記録再生方法は、一例として、図1に示すような多層の光情報記録媒体10を媒体として用いる。
光情報記録媒体10は、基板11と、サーボ信号層12と、複数の中間層13、記録層14および粘着層15と、カバー層16とを備えてなる。
【0019】
基板11は、記録層14などを支持するための支持体であり、一例としてポリカーボネートの円板などからなる。基板11の材質や厚さは特に限定されない。
【0020】
サーボ信号層12は、中間層13、記録層14および粘着層15を基板11に保持させるための粘着性または接着性の樹脂材料からなり、基板11側の面に予め凹凸または屈折率の変化によりサーボ信号が記録された層である。ここでのサーボ信号は、記録時および再生時のフォーカスの基準面であることを記録再生装置1が認識できるように予め設定された信号である。所定の記録層14に焦点を合わせる場合には、この基準面からの距離や、界面の数を考慮して焦点を制御する。また、記録時および再生時に円周方向に並んだ記録スポットのトラックに正確にレーザ光を照射できるようにトラッキング用のサーボ信号または溝を設けておくとよい。
【0021】
記録層14は、情報が光学的に記録される感光材料からなる層であり、記録光(記録用の照射光)の照射により屈折率が変化するものを用いる。屈折率の変化は、記録光の照射により、屈折率が小さい状態から大きい状態になるのでもよいし、逆に大きい状態から小さい状態になるのでもよい。ここでは、記録層14は、一例として、記録光の照射により屈折率が小さくなる記録材料を用いることとする。記録層14の材料としては、例えば、記録光を吸収する色素を高分子バインダーに分散させて形成したものを用いることができる。高分子バインダーとしては、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン(PS)、ポリビニルアルコール(PVA)などを用いることができる。
【0022】
上記記録光を吸収する色素としては、例えば、ヒートモード型記録材料として従来用いられていた色素を用いることができる。例えば、フタロシアニン系化合物、アゾ化合物、アゾ金属錯体化合物、メチン色素(シアニン系化合物、オキソノール系化合物、スチリル色素、メロシアニン色素)を用いることができる。また、多層の記録層を有する記録媒体において記録再生時における隣接記録層への影響を最小限にするためには、前記記録光を吸収する色素として、多光子吸収色素を用いることが望ましく、多光子吸収記録材料は、例えば、読出光の波長に線形吸収帯を持たない2光子吸収化合物であることが好ましい。
【0023】
2光子吸収化合物としては、読出光の波長に線形吸収帯を持たないものであれば、特に限定されないが、例えば、下記一般式(1)で表される構造を有する化合物が挙げられる。
【0024】
【化1】
【0025】
(一般式(1)中、XおよびYはハメットのシグマパラ値(σp値)が共にゼロ以上の値を有する置換基を表し、同一でもそれぞれ異なってもよく、nは1〜4の整数を表し、Rは置換基を表し、同一でもそれぞれ異なってもよく、mは0〜4の整数を表す。)
【0026】
一般式(1)中、XおよびYはハメット式におけるσp値が正の値を取るもの、所謂電子吸引性の基を指し、好ましくは例えばトリフルオロメチル基、ヘテロ環基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルファモイル基、カルバモイル基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、などが挙げられ、より好ましくはトリフルオロメチル基、シアノ基、アシル基、アシルオキシ基、またはアルコキシカルボニル基であり、最も好ましくはシアノ基、ベンゾイル基である。これらの置換基のうち、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルファモイル基、カルバモイル基、アシル基、アシルオキシ基、およびアルコキシカルボニル基は、溶媒への溶解性の付与等の他、様々な目的で、更に置換基を有してもよく、置換基としては、好ましくは、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシアルキル基、アリールオキシ基、などが挙げられる。
【0027】
nは1以上4以下の整数を表し、より好ましくは2または3であり、最も好ましくは2である。nが5以上になるほど、線形吸収が長波長側に出てくるようになり、700nmよりも短波長の領域の記録光を用いての非共鳴2光子吸収記録ができなくなる。
Rは置換基を表し、置換基としては、特に限定されず、具体的には、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシアルキル基、アリールオキシ基、などが挙げられる。mは0以上4以下の整数を表す。
【0028】
一般式(1)で表される構造を有する化合物の具体例としては、特に限定されないが、下記の化学構造式D−1〜D−21の化合物を使用することができる。
【化2】
【0029】
記録層14は、記録光の波長をλ、記録層14の屈折率をnとして2λ/n以上の厚さを有している。図2に示すように、nD/λ(Dは記録層の厚さ)と変調度(検出光強度の(最大値−最小値)/最大値 で求まる値)の関係を計算すると、nD/λが2以上で変調度が0.1以上となり、良好な変調度が得られることが分かる。このことから、厚さDは2λ/n以上であるのがよい。
【0030】
一例として、記録光の波長を522nm、記録層14の屈折率を1.47とすれば、記録層14の厚さは710nm以上である。この厚さは、従来の干渉効果を利用した光情報記録媒体に比較して数倍の厚さであり、これにより、記録層14に記録スポットが形成されると、記録スポットにレンズ効果を持たせることができる。
【0031】
記録層14の厚さの上限は特に限定されないが、記録層14の層数をなるべく多くするため、5μm以下であるのが望ましい。一例として、本実施形態では、記録層14の厚さは1μmである。記録層14は、例えば1〜100層程度設けられる。光情報記録媒体10の記憶容量を大きくするため、記録層14は多い方が望ましく、例えば10層以上であるのが望ましい。
【0032】
中間層13は、隣接層の一例であり、図1に示すように各記録層14の基板11側に隣接して配置されている。換言すれば、中間層13は、記録層14に記録光の入射側と反対側において隣接している。中間層13は、記録時および再生時のレーザ光の照射により変化しない材料が用いられる。一例として、中間層13としては、ポリエチレンテレフタレートを用いることができる。中間層13は、複数の記録層14の間で層間クロストーク(隣接する記録層14間の信号の混じり合い)が生じないように、記録層14同士の間隔を所定量空けるために設けられている。このため、中間層13の厚さは、3μm以上であり、一例として、本実施形態では5μmである。
【0033】
中間層13は、記録層14との界面18の間で読出光の反射を可能にするため、記録層14と屈折率の差が適度に設けられているのがよい。一方、記録層14と中間層13の界面18における光の反射は、記録時および再生時において記録再生光(本明細書において、記録光、読出光および再生光を指す。)が深い層に到達するのを阻害して深い記録層14での記録・再生を困難にするため、反射率が高すぎるのも好ましくない。この観点から、中間層13と記録層14における記録再生光の反射率は、0.2〜2%程度であるのが望ましい。
【0034】
粘着層15は、記録層14と上層(カバー層16側)の中間層13とを密着させるために設けられる層である。本実施形態においては、記録層14が1μmであるため、粘着層15と記録層14の界面19での読出光の反射が記録層14と中間層13の界面18での読出光の反射と干渉して再生光としての品質に影響を与えることを抑制するため、粘着層15と記録層14の屈折率の差ができるだけ小さいのが望ましく、界面19における反射率をR1、界面18における反射率をR2とすれば、R2>R1となるように粘着層15の屈折率を調整するのが望ましい。さらには、粘着層15と記録層14の屈折率を実質的に同一にして、界面19における反射率を実質的に0にするのがより望ましい。粘着層15は記録再生光を十分に透過できるものであれば特に限定されず、例えば、アクリル化合物、メタクリル化合物、ポリ塩化ビニル化合物、ポリビニルアルコール化合物、ポリ酢酸ビニル化合物、ポリスチレン化合物、セルロース等高分子化合物を溶媒に溶解した接着剤、アクリレート化合物やエポキシ化合物、オキセタン化合物等を主成分とする光硬化型接着剤、エチレン酢酸ビニル化合物、オレフィン化合物、ウレタン化合物等を主成分とするホットメルト接着剤、アクリル化合物、ウレタン化合物、シリコーン化合物等からなる粘着剤を用いることができる。また、粘着層15の厚さは、特に限定されず、一例として、本実施形態では5μmである。
【0035】
カバー層16は、中間層13、記録層14および粘着層15を保護するために設けられる層であり、記録時および再生時のレーザ光が透過可能な材料からなる。カバー層16は、数十μm〜数mmの適宜な厚さで設けられる。
【0036】
次に、記録再生装置の構成について説明する。図3に示すように、記録再生装置1は、光情報記録媒体10に対し情報の記録・再生を行う装置である。
記録再生装置1は、光情報記録媒体10に対面して対物レンズ21を有し、対物レンズ21の光軸上に、対物レンズ21から順に、収差補正のためのビームエキスパンダ22、λ/4板23、PBS(偏光ビームスプリッタ)24、DBS(ダイクロイックビームスプリッタ)25、λ/2板26、コリメートレンズ27および再生用レーザ51を備えている。
【0037】
そして、PBS24の、対物レンズ21の光軸方向に直交する方向には、BS(ビームスプリッタ)47が配置され、PBS24で当該方向に分岐された光が2方向に分岐されるようになっている。BS47を直進する光の進行方向には、集光レンズ45、シリンドリカルレンズ44およびフォーカス用受光素子55が順に配置されており、BS47で反射される光の進行方向には、集光レンズ46、ピンホール板43、再生光受光素子56が配置されている。また、DBS25の、対物レンズ21の光軸方向に直交する方向には、ビームエキスパンダ48、変調器42、コリメートレンズ41および記録用レーザ52が順に配置されている。
【0038】
対物レンズ21は、記録光および読出光を複数の記録層14のうちの一つに収束するレンズである。対物レンズ21は、制御装置60により駆動されるフォーカスアクチュエータ21aにより光軸方向に移動され、任意の記録層14に焦点を合わせることができるようになっている。
【0039】
ビームエキスパンダ22は、制御装置60によって対物レンズ21に入射する光の収束、発散状態を変化させる光学素子であり、光情報記録媒体10の表面からの記録再生する記録層14の深さの変化により発生する球面収差を補正する機能を果たす。
【0040】
λ/4板23は、直線偏光を円偏光に変換し、円偏光を回転方向に応じた向きの直線偏光に変換する光学素子であり、再生時の読出光の直線偏光の向きと再生光の直線偏光の向きを90°異ならせる役割を果たす。
【0041】
PBS24は、特定の偏光の光を反射して分離する光学素子であり、記録用レーザ52から出射された記録光および再生用レーザ51から出射された読出光を通過させて光情報記録媒体10へ向けて進めるとともに、光情報記録媒体10から返ってきた再生光を反射してBS47に向けて進める機能を果たす。
【0042】
BS47は、光の偏光状態によらず所定の分岐比で光を分割する光学素子であり、PBS24によって導かれた再生光をフォーカス用受光素子55および再生光受光素子56に配分する機能を果たす。
【0043】
DBS25は、特定の波長域の光を反射し、その他の波長域の光を透過させる光学素子であり、記録光を反射し、読出光を透過するものが用いられている。本実施形態では、側方から入射される記録光を光情報記録媒体10へ向けるために配置されている。
【0044】
再生用レーザ51は、405nmのCW(Continuous Wave)レーザである。再生用レーザ51は、記録スポットと同等以下の小さなビームに絞れるのが望ましいため、記録用レーザ52と同じ波長または短い波長で発光するものを用いるとよい。再生用レーザ51の出力は、制御装置60により制御される。
【0045】
ここで、本実施形態の記録再生方法による信号の変調は、記録層14の上下の界面で反射した光の干渉効果を用いないため、光の可干渉性の指標であるコヒーレンス長が短いレーザを読出光の光源に用いても高い変調度を得ることが可能である。そして、このコヒーレンス長を十分に短くしておくことで、多層記録媒体の各層の界面で発生する多重反射光の干渉によるS/N比の低下を抑制し、良好な信号再生特性およびサーボ特性を得ることが可能となる。一般的に、コヒーレンス長は光源のスペクトル半値全幅Δλとの相関が知られており、その関係は光の中心波長をλとしてλ2/Δλで表わされる。読出光の波長としては、十分な解像度を得るためには400nm程度が好ましく、このときΔλが8nm以上ある光を用いるとコヒーレンス長は20μm以下となり、各記録層14の界面からの多重反射光の干渉を十分低減することが可能となる。
【0046】
記録用レーザ52は522nmのパルスレーザである。記録層14において多光子吸収反応を効率的に起こさせるため、記録用レーザ52としては、CWレーザよりもピークパワーが大きいパルスレーザを用いるのが望ましい。記録用レーザ52の出力は、制御装置60により制御される。
【0047】
変調器42は、記録用レーザ52から発されたパルスレーザ光の内の一部のパルス光を間引いてパルスレーザ光に時間的な変調を与えて情報をエンコードする装置である。変調器42としては、音響光学素子(AOM)、マッハツェンダ(MZ)型光変調素子その他の電気光学変調素子(EOM)を用いることができる。変調器42として、これらの音響光学素子、電気光学素子を用いることで、メカニカルシャッタを用いる場合に比較して極めて高速に光のON・OFFを行うことができる。変調器42の動作は、制御装置60が、記録すべき情報に応じてエンコードした信号を変調器42に出力することで制御される。
【0048】
フォーカス用受光素子55は、4分割フォトディテクタ等を用い、非点収差法などによってフォーカス制御用の信号を得るための素子である。具体的には、集光レンズ45およびシリンドリカルレンズ44を通過することにより与えられた非点収差を最小化するよう制御装置60によってフォーカスアクチュエータ21aを制御することによってフォーカシングを行うことができる。
【0049】
再生光受光素子56は、再生された情報を含む再生光を受光する素子であり、再生光受光素子56で検出した信号は、制御装置60へ出力され、制御装置60において情報へと復調される。フォーカス用受光素子55が受光した光は、シリンドリカルレンズ44を通過しているので、光量分布を制御装置60に出力することで、制御装置60において、非点収差法により、記録光および再生光のフォーカシングサーボのための制御量を得ることができる。
【0050】
ピンホール板43は、集光レンズ46で収束された光の焦点付近に配置され、共焦点光学系を構成することで光情報記録媒体10の所定の深さ位置からの反射光のみを通過させ、不要な光をカットすることができる。
【0051】
制御装置60は、記録光を光情報記録媒体10の所定の記録層14に照射する場合には、記録層14と中間層13の界面18から記録光の入射側にω0<d<3ω0を満たすオフセット量dだけ焦点位置をずらしてフォーカシングを行う。オフセット量dを変化させるためには、例えば、制御装置60によって記録光の光路中に配置されるビームエキスパンダ48を制御し、集光または発散状態を調整することによって行う。ここでのω0は、図4に示した記録スポットMの半径である。この半径ω0は、図4の左の記録スポットMのように記録光と光情報記録媒体を相対的に移動させていないときの円形状のスポットの半径であり、図4の中央および右の2つの記録スポットMのように、記録光と光情報記録媒体10を互いに相対的に移動させた結果細長い形状となった場合には、記録スポットMの幅の半分として測定することができる。
【0052】
ここで、オフセット量dの範囲について説明する。まず、レーザ光で形成しうる微細なスポット径はω0=0.1〜0.3μmの範囲を想定している。記録するスポットの半径ω0は、使用する記録光の波長と対物レンズ21の開口数NAとで決まる回折限界によって決定される。半径ω0は、記録層14の1層あたりの面記録密度および使用する記録用レーザの波長から、0.1〜0.3μm程度であることが望ましいといえる。ここで、図5に示すように、オフセット量dと半径ω0の比d/ω0と変調度の関係を計算すると、ω0=0.15〜0.3μmの範囲では、d/ω0の値が1〜3の間で変調度が良好となるので、オフセット量dとしては、ω0<d<3ω0の範囲が良好であるといえる。なお、この計算においては、記録層14の厚さは1μmとしている。
【0053】
また、制御装置60は、読出光を光情報記録媒体10の所定の記録層14に照射する場合には、記録層14と中間層13の界面18を目標としてフォーカシングを行う。
【0054】
記録再生装置1は、上記した構成の他に、従来公知の光記録再生装置と同様の構成を有する。例えば、光情報記録媒体10の記録層14の平面内で記録スポットMを多数記録するため、記録光および読出光と光情報記録媒体10を互いに記録層14の平面方向に相対的に移動させるアクチュエータなどを備えている。
【0055】
以上のように構成された記録再生装置1による記録再生方法について説明する。
情報の記録時において、記録再生装置1は、記録用レーザ52からパルスレーザ光を発し、変調器42によりパルスレーザ光の一部を間引いてパルスレーザ光に情報をエンコードする。情報をエンコードされた光は、所定のオフセット量dが得られるよう、ビームエキスパンダ48によって収束、発散状態が制御された後、DBS25で反射されてPBS24、λ/4板23、ビームエキスパンダ22を通過し、対物レンズ21で収束される。パルスレーザ光の照射と同時に、再生用レーザ51からCWレーザ光を発し、CWレーザ光を、DBS25とPBS24を通過させて対物レンズ21で収束する。光情報記録媒体10から返ってきたCWレーザ光は、対物レンズ21、ビームエキスパンダ22、λ/4板23を通過してPBS24およびBS47で反射され、集光レンズ46およびピンホール板43を通って再生光受光素子56に入射する。
【0056】
制御装置60は、フォーカス用受光素子55から受けた信号に基づき、記録光およびCWレーザ光の焦点位置を計算し、フォーカスアクチュエータ21aおよびビームエキスパンダ22,48を駆動することで、図6に示すように中間層13と記録層14の界面18からオフセット量dだけ入射側にずれた位置に記録光RBの焦点位置を調整する。
【0057】
これにより、図6に模式的に示したように、光の強度に応じて(2光子吸収反応であれば光の強度の2乗に比例して)、光の強度が高い焦点付近ほど光の吸収反応が多く起こり、この反応に応じて屈折率が小さくなる。このため、1μmの厚みがある記録層14には、屈折率の分布ができる。この屈折率の分布を有する記録スポットMが読出光にとってレンズとして作用する。
【0058】
情報の再生時には、記録用レーザ52を停止し、再生用レーザ51を駆動して、CWレーザ光を光情報記録媒体10に照射する。このとき、記録時と同様に、光情報記録媒体10から返ってきたCWレーザ光(再生光)は、PBS24で反射されて再生光受光素子56およびフォーカス用受光素子55に入射する。
【0059】
制御装置60は、フォーカス用受光素子55の信号出力に基づき、フォーカスアクチュエータ21aおよびビームエキスパンダ22を制御し、図7に示すように中間層13と記録層14の界面18を目標にして焦点位置を調整する。すると、読出光OBは、記録スポットMに入った後、記録スポットMのレンズ効果により記録スポットMから逸れるように進行する。このため、記録スポットMの位置においては、界面18で反射する光がほとんど無く、再生光受光素子55で検出される光の強度が小さくなる。一方、図8に示すように、記録層14における未記録部分、つまり、記録スポットM以外の位置においては、読出光OBは界面18で反射するため、再生光受光素子56で検出される光の強度が大きくなる。
【0060】
このようにして、制御装置60は、記録部分における界面18での反射光強度と未記録部分における界面18での反射光強度との違いにより得られる変調から情報を復調することができる。すなわち、情報を再生することができる。
【0061】
以上のような、本実施形態の記録再生方法によれば、干渉効果を用いずに、記録層14に形成された記録スポットMのレンズ効果を利用して、記録部分と未記録部分の再生出力の変調を得ることができるので、記録層14の膜厚の精度をそれほど高く要求されず、製造コストを抑えることができる。また、再生時には界面18における読出光の反射を利用しているので、蛍光を利用する場合に比較して、高い再生出力を得ることができる。
【0062】
以上に本発明の実施形態について説明したが、本発明は、前記した実施形態に限定されることなく適宜変形して実施することが可能である。
例えば、前記実施形態においては、記録層14は、記録光の照射により屈折率が小さくなるものを例示したが、記録光の照射により屈折率が大きくなるような記録材料を用いてもよい。この場合には、図9に示すように、記録スポットMが読出光OBを集めるように作用するので、記録部分において未記録部分よりも高い反射率で読出光OBを反射し、記録部分と未記録部分の反射光強度の変調が発生する。もっとも、変調度を高くして再生出力において高いS/N比を得るためには、記録層14においては、前記した実施形態のように、記録光の照射により屈折率が小さくなる記録材料を用いるのが望ましい。
【0063】
また、前記した実施形態においては、光情報記録媒体10において、屈折率が記録層14とほとんど同じ粘着層15を用いていたが、記録層14に粘着性を持たせれば、図10に示すように、例えば、厚さ7μmの中間層13と厚さ3μmの記録層14とを交互に配置してもよい。さらに、この実施形態においては、中間層13と、中間層13の下側(基板11側)に隣接する記録層14との界面19′において反射が起こりにくくするため、中間層13の下側の面における屈折率を記録層14に近づけ、中間層13の上側の面における屈折率を記録層14と異ならせるように、中間層13の内部で厚み方向に屈折率分布を持たせるのが望ましい。
【0064】
また、前記した実施形態においては、再生用レーザ51のCWレーザ光の波長と、記録用レーザ52のパルスレーザ光の波長とを異ならせていたが、同じ波長としてもよい。例えば、記録用レーザ52として405nmのパルスレーザ光を発する記録用レーザ52′を用いる場合、図11に示すように、DBS25に代えてPBS25′を配置し、コリメートレンズ41と変調器42の間にλ/2板49を配置することで、再生用レーザ51からの再生光と記録用レーザ52′からの記録光をPBS25′を利用して、対物レンズ21の光軸上の光路に導く。そして、PBS24とPBS25′の間にλ/2板28を配置し、このλ/2板28を90°回転させるアクチュエータ28aを設ける。このようにして、制御装置60により、アクチュエータ28aを駆動して、記録時と再生時でλ/2板28を90°異なる向きとし、記録光と読出光のうち必要な光を通すことで、記録時に記録光を光情報記録媒体10に照射し、再生時に読出光を光情報記録媒体10に照射することができる。
【符号の説明】
【0065】
1 記録再生装置
10 光情報記録媒体
11 基板
13 中間層
14 記録層
15 粘着層
16 カバー層
18 界面
19 界面
21 対物レンズ
21a フォーカスアクチュエータ
43 ピンホール板
51 再生用レーザ
52 記録用レーザ
60 制御装置
M 記録スポット
OB 読出光
RB 記録光
【技術分野】
【0001】
本発明は、光情報記録媒体の記録再生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光情報記録媒体に多層に情報を記録するため、2光子吸収などの多光子吸収反応を用いて光情報記録媒体中の記録材料に光学的変化を起こさせる方法が研究されている(例えば、特許文献1)。多光子吸収反応を用いた光情報記録媒体は、従来から広く用いられている単層の光情報記録媒体と同様に、情報の再生時に記録層の上下の両界面で反射した反射光同士が干渉すること(干渉効果という)を考慮し、記録部分と未記録部分の反射率(記録層の上下の両界面での反射光同士が干渉後、光ピックアップへ戻ってくる光の割合)の差が大きくなるように、記録部分の記録材料の屈折率変化と記録層の厚さが設定されている。特許文献1の情報記録媒体においても、同文献の図2に示すように膜厚と反射率の関係が考慮され、再生光波長をλ、記録層の屈折率をnとして、記録層厚さをλ/4n程度や、より薄い5〜50nm程度にするとよいとされている(段落0062)。
【0003】
また、このように干渉効果を利用しない場合として、特許文献2に開示されたように、記録層の下に蛍光発光層を設け、この蛍光発光層で発した光を、記録層を通して検出することで、情報を読み取る構成とするものも知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4290650号公報
【特許文献2】特開2001−325745号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1のように、再生時に記録層の両界面での反射光の干渉効果を利用する場合、記録層が設計値通りの膜厚に製造されないと良好な変調度が得られないので、膜厚の精度が要求され、光情報記録媒体の製造コストが嵩むという問題がある。
【0006】
また、特許文献2のように、蛍光発光をベース光として、このベース光がどれだけ光検出器に戻ってくるかの強弱で変調を得ようとすると、蛍光発光自体が非常に微弱であるため、良好な再生出力が得にくいという問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、記録層の膜厚に関して高い精度が要求されず、かつ、良好な再生出力を得ることができる光情報記録媒体の記録再生方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記した課題を解決するため、本発明は、記録光の波長をλ、記録層の屈折率をnとして2λ/n以上の厚さがあり、記録光の照射により屈折率が変化する記録層と、当該記録層に記録光の入射側と反対側において隣接する隣接層とを備える光情報記録媒体の記録再生方法であって、前記記録層に記録される記録スポットの半径をω0として、情報の記録時に、前記記録層と前記隣接層の界面から記録光の入射側にω0<d<3ω0を満たすオフセット量dだけ焦点位置をずらして記録光を照射することで前記記録層の記録位置の屈折率を変化させて記録スポットを記録し、情報の再生時に、前記界面に焦点位置を合わせて読出光を照射することを特徴とする。
【0009】
このような光情報記録媒体の記録再生方法によれば、従来の干渉効果を利用していた光情報記録媒体よりも厚い記録層に、記録光の進行方向(以下、単に「深さ方向」とする。)における幅広い範囲で屈折率の変化を起こさせ、記録スポットが記録される。このとき、記録光の強度分布に応じて屈折率の変化が生じるので、再生時に記録スポットに読出光を照射すると、記録スポットがレンズとして働き、このレンズとしての働きが、読出光を記録スポットから逸らせたり、記録スポット内に収束させたりする。このため、情報の再生時に界面に合わせて読出光を照射すると、記録スポットから返ってくる光が弱くなったり(屈折率が小さくなった場合)強くなったり(屈折率が大きくなった場合)するので、非記録部分における界面から返ってきた光と強度の差が生じ、この強度の差の変調で情報を再生することができる。すなわち、従来の干渉効果を利用した光情報記録媒体の記録再生方法においては、記録層が薄かったため、記録スポットがレンズとして働くことがなかったが、本発明においては、厚い記録層を用い、その厚い記録層に、レンズ効果が十分発揮できるように、記録光の焦点位置を記録層と隣接層の界面からオフセット量dだけずらしているので、上記のような変調で情報を記録・再生することができる。
【0010】
このような記録再生方法によれば、干渉効果を利用しないので、記録層の膜厚の精度が要求されず光情報記録媒体の製造が容易である。また、再生光(本明細書において、読出光を照射して返ってくる変調された光をいう)の光の発生源として蛍光を利用せず、界面で反射した読出光を利用するので再生光の強度を大きくでき、良好な再生出力を得ることができる。
【0011】
そして、前記した記録層に含まれる記録材料が多光子吸収化合物である場合には、深さ方向における限られた範囲内で選択的に記録材料の屈折率を変えることができるので、記録層の多層化を容易にして記録媒体の容量を大きくすることができる。
【0012】
前記した記録再生方法においては、読出光のスペクトルの半値全幅が8nm以上であることが望ましい。
【0013】
従来の記録再生方法においては、干渉効果を利用していたため、読出光の半値全幅が小さく、コヒーレンス長が大きいのが一般的であったが、本発明の記録再生方法においては、干渉効果を用いていないため、従来とは逆にコヒーレンス長を小さくして再生を行う記録層以外の界面からの複数の反射光と再生光との干渉(多重干渉効果という)を抑制し、高いS/N比を得ることができる。
【0014】
前記した光情報記録媒体の記録再生方法においては、情報の再生時に共焦点光学系を用いることが望ましい。
【0015】
情報の再生時に共焦点光学系を用いることで、記録層と隣接層の界面での反射光以外の光をカットしてノイズを減らし、良好なS/N比で情報の再生が可能である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、記録層の膜厚に関して高い精度が要求されず、光情報記録媒体の製造が容易である。また、良好な再生出力を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】多層光情報記録媒体の断面図である。
【図2】記録層の厚さと変調度の関係を示すグラフである。
【図3】第1実施形態に係る記録再生装置の構成図である。
【図4】記録スポットの平面的な図である。
【図5】d/ω0と変調度の関係を示すグラフである。
【図6】記録時の焦点位置と記録スポットの形成を説明する図である。
【図7】再生時の焦点位置と記録スポットにおけるレンズ効果を説明する図である。
【図8】再生時の焦点位置と非記録位置における読出光の反射を説明する図である。
【図9】変形例における再生時のレンズ効果を説明する図である。
【図10】光情報記録媒体の他の例を示す断面図である。
【図11】記録再生装置の他の例を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
本発明の光情報記録媒体の記録再生方法は、一例として、図1に示すような多層の光情報記録媒体10を媒体として用いる。
光情報記録媒体10は、基板11と、サーボ信号層12と、複数の中間層13、記録層14および粘着層15と、カバー層16とを備えてなる。
【0019】
基板11は、記録層14などを支持するための支持体であり、一例としてポリカーボネートの円板などからなる。基板11の材質や厚さは特に限定されない。
【0020】
サーボ信号層12は、中間層13、記録層14および粘着層15を基板11に保持させるための粘着性または接着性の樹脂材料からなり、基板11側の面に予め凹凸または屈折率の変化によりサーボ信号が記録された層である。ここでのサーボ信号は、記録時および再生時のフォーカスの基準面であることを記録再生装置1が認識できるように予め設定された信号である。所定の記録層14に焦点を合わせる場合には、この基準面からの距離や、界面の数を考慮して焦点を制御する。また、記録時および再生時に円周方向に並んだ記録スポットのトラックに正確にレーザ光を照射できるようにトラッキング用のサーボ信号または溝を設けておくとよい。
【0021】
記録層14は、情報が光学的に記録される感光材料からなる層であり、記録光(記録用の照射光)の照射により屈折率が変化するものを用いる。屈折率の変化は、記録光の照射により、屈折率が小さい状態から大きい状態になるのでもよいし、逆に大きい状態から小さい状態になるのでもよい。ここでは、記録層14は、一例として、記録光の照射により屈折率が小さくなる記録材料を用いることとする。記録層14の材料としては、例えば、記録光を吸収する色素を高分子バインダーに分散させて形成したものを用いることができる。高分子バインダーとしては、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン(PS)、ポリビニルアルコール(PVA)などを用いることができる。
【0022】
上記記録光を吸収する色素としては、例えば、ヒートモード型記録材料として従来用いられていた色素を用いることができる。例えば、フタロシアニン系化合物、アゾ化合物、アゾ金属錯体化合物、メチン色素(シアニン系化合物、オキソノール系化合物、スチリル色素、メロシアニン色素)を用いることができる。また、多層の記録層を有する記録媒体において記録再生時における隣接記録層への影響を最小限にするためには、前記記録光を吸収する色素として、多光子吸収色素を用いることが望ましく、多光子吸収記録材料は、例えば、読出光の波長に線形吸収帯を持たない2光子吸収化合物であることが好ましい。
【0023】
2光子吸収化合物としては、読出光の波長に線形吸収帯を持たないものであれば、特に限定されないが、例えば、下記一般式(1)で表される構造を有する化合物が挙げられる。
【0024】
【化1】
【0025】
(一般式(1)中、XおよびYはハメットのシグマパラ値(σp値)が共にゼロ以上の値を有する置換基を表し、同一でもそれぞれ異なってもよく、nは1〜4の整数を表し、Rは置換基を表し、同一でもそれぞれ異なってもよく、mは0〜4の整数を表す。)
【0026】
一般式(1)中、XおよびYはハメット式におけるσp値が正の値を取るもの、所謂電子吸引性の基を指し、好ましくは例えばトリフルオロメチル基、ヘテロ環基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルファモイル基、カルバモイル基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、などが挙げられ、より好ましくはトリフルオロメチル基、シアノ基、アシル基、アシルオキシ基、またはアルコキシカルボニル基であり、最も好ましくはシアノ基、ベンゾイル基である。これらの置換基のうち、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルファモイル基、カルバモイル基、アシル基、アシルオキシ基、およびアルコキシカルボニル基は、溶媒への溶解性の付与等の他、様々な目的で、更に置換基を有してもよく、置換基としては、好ましくは、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシアルキル基、アリールオキシ基、などが挙げられる。
【0027】
nは1以上4以下の整数を表し、より好ましくは2または3であり、最も好ましくは2である。nが5以上になるほど、線形吸収が長波長側に出てくるようになり、700nmよりも短波長の領域の記録光を用いての非共鳴2光子吸収記録ができなくなる。
Rは置換基を表し、置換基としては、特に限定されず、具体的には、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシアルキル基、アリールオキシ基、などが挙げられる。mは0以上4以下の整数を表す。
【0028】
一般式(1)で表される構造を有する化合物の具体例としては、特に限定されないが、下記の化学構造式D−1〜D−21の化合物を使用することができる。
【化2】
【0029】
記録層14は、記録光の波長をλ、記録層14の屈折率をnとして2λ/n以上の厚さを有している。図2に示すように、nD/λ(Dは記録層の厚さ)と変調度(検出光強度の(最大値−最小値)/最大値 で求まる値)の関係を計算すると、nD/λが2以上で変調度が0.1以上となり、良好な変調度が得られることが分かる。このことから、厚さDは2λ/n以上であるのがよい。
【0030】
一例として、記録光の波長を522nm、記録層14の屈折率を1.47とすれば、記録層14の厚さは710nm以上である。この厚さは、従来の干渉効果を利用した光情報記録媒体に比較して数倍の厚さであり、これにより、記録層14に記録スポットが形成されると、記録スポットにレンズ効果を持たせることができる。
【0031】
記録層14の厚さの上限は特に限定されないが、記録層14の層数をなるべく多くするため、5μm以下であるのが望ましい。一例として、本実施形態では、記録層14の厚さは1μmである。記録層14は、例えば1〜100層程度設けられる。光情報記録媒体10の記憶容量を大きくするため、記録層14は多い方が望ましく、例えば10層以上であるのが望ましい。
【0032】
中間層13は、隣接層の一例であり、図1に示すように各記録層14の基板11側に隣接して配置されている。換言すれば、中間層13は、記録層14に記録光の入射側と反対側において隣接している。中間層13は、記録時および再生時のレーザ光の照射により変化しない材料が用いられる。一例として、中間層13としては、ポリエチレンテレフタレートを用いることができる。中間層13は、複数の記録層14の間で層間クロストーク(隣接する記録層14間の信号の混じり合い)が生じないように、記録層14同士の間隔を所定量空けるために設けられている。このため、中間層13の厚さは、3μm以上であり、一例として、本実施形態では5μmである。
【0033】
中間層13は、記録層14との界面18の間で読出光の反射を可能にするため、記録層14と屈折率の差が適度に設けられているのがよい。一方、記録層14と中間層13の界面18における光の反射は、記録時および再生時において記録再生光(本明細書において、記録光、読出光および再生光を指す。)が深い層に到達するのを阻害して深い記録層14での記録・再生を困難にするため、反射率が高すぎるのも好ましくない。この観点から、中間層13と記録層14における記録再生光の反射率は、0.2〜2%程度であるのが望ましい。
【0034】
粘着層15は、記録層14と上層(カバー層16側)の中間層13とを密着させるために設けられる層である。本実施形態においては、記録層14が1μmであるため、粘着層15と記録層14の界面19での読出光の反射が記録層14と中間層13の界面18での読出光の反射と干渉して再生光としての品質に影響を与えることを抑制するため、粘着層15と記録層14の屈折率の差ができるだけ小さいのが望ましく、界面19における反射率をR1、界面18における反射率をR2とすれば、R2>R1となるように粘着層15の屈折率を調整するのが望ましい。さらには、粘着層15と記録層14の屈折率を実質的に同一にして、界面19における反射率を実質的に0にするのがより望ましい。粘着層15は記録再生光を十分に透過できるものであれば特に限定されず、例えば、アクリル化合物、メタクリル化合物、ポリ塩化ビニル化合物、ポリビニルアルコール化合物、ポリ酢酸ビニル化合物、ポリスチレン化合物、セルロース等高分子化合物を溶媒に溶解した接着剤、アクリレート化合物やエポキシ化合物、オキセタン化合物等を主成分とする光硬化型接着剤、エチレン酢酸ビニル化合物、オレフィン化合物、ウレタン化合物等を主成分とするホットメルト接着剤、アクリル化合物、ウレタン化合物、シリコーン化合物等からなる粘着剤を用いることができる。また、粘着層15の厚さは、特に限定されず、一例として、本実施形態では5μmである。
【0035】
カバー層16は、中間層13、記録層14および粘着層15を保護するために設けられる層であり、記録時および再生時のレーザ光が透過可能な材料からなる。カバー層16は、数十μm〜数mmの適宜な厚さで設けられる。
【0036】
次に、記録再生装置の構成について説明する。図3に示すように、記録再生装置1は、光情報記録媒体10に対し情報の記録・再生を行う装置である。
記録再生装置1は、光情報記録媒体10に対面して対物レンズ21を有し、対物レンズ21の光軸上に、対物レンズ21から順に、収差補正のためのビームエキスパンダ22、λ/4板23、PBS(偏光ビームスプリッタ)24、DBS(ダイクロイックビームスプリッタ)25、λ/2板26、コリメートレンズ27および再生用レーザ51を備えている。
【0037】
そして、PBS24の、対物レンズ21の光軸方向に直交する方向には、BS(ビームスプリッタ)47が配置され、PBS24で当該方向に分岐された光が2方向に分岐されるようになっている。BS47を直進する光の進行方向には、集光レンズ45、シリンドリカルレンズ44およびフォーカス用受光素子55が順に配置されており、BS47で反射される光の進行方向には、集光レンズ46、ピンホール板43、再生光受光素子56が配置されている。また、DBS25の、対物レンズ21の光軸方向に直交する方向には、ビームエキスパンダ48、変調器42、コリメートレンズ41および記録用レーザ52が順に配置されている。
【0038】
対物レンズ21は、記録光および読出光を複数の記録層14のうちの一つに収束するレンズである。対物レンズ21は、制御装置60により駆動されるフォーカスアクチュエータ21aにより光軸方向に移動され、任意の記録層14に焦点を合わせることができるようになっている。
【0039】
ビームエキスパンダ22は、制御装置60によって対物レンズ21に入射する光の収束、発散状態を変化させる光学素子であり、光情報記録媒体10の表面からの記録再生する記録層14の深さの変化により発生する球面収差を補正する機能を果たす。
【0040】
λ/4板23は、直線偏光を円偏光に変換し、円偏光を回転方向に応じた向きの直線偏光に変換する光学素子であり、再生時の読出光の直線偏光の向きと再生光の直線偏光の向きを90°異ならせる役割を果たす。
【0041】
PBS24は、特定の偏光の光を反射して分離する光学素子であり、記録用レーザ52から出射された記録光および再生用レーザ51から出射された読出光を通過させて光情報記録媒体10へ向けて進めるとともに、光情報記録媒体10から返ってきた再生光を反射してBS47に向けて進める機能を果たす。
【0042】
BS47は、光の偏光状態によらず所定の分岐比で光を分割する光学素子であり、PBS24によって導かれた再生光をフォーカス用受光素子55および再生光受光素子56に配分する機能を果たす。
【0043】
DBS25は、特定の波長域の光を反射し、その他の波長域の光を透過させる光学素子であり、記録光を反射し、読出光を透過するものが用いられている。本実施形態では、側方から入射される記録光を光情報記録媒体10へ向けるために配置されている。
【0044】
再生用レーザ51は、405nmのCW(Continuous Wave)レーザである。再生用レーザ51は、記録スポットと同等以下の小さなビームに絞れるのが望ましいため、記録用レーザ52と同じ波長または短い波長で発光するものを用いるとよい。再生用レーザ51の出力は、制御装置60により制御される。
【0045】
ここで、本実施形態の記録再生方法による信号の変調は、記録層14の上下の界面で反射した光の干渉効果を用いないため、光の可干渉性の指標であるコヒーレンス長が短いレーザを読出光の光源に用いても高い変調度を得ることが可能である。そして、このコヒーレンス長を十分に短くしておくことで、多層記録媒体の各層の界面で発生する多重反射光の干渉によるS/N比の低下を抑制し、良好な信号再生特性およびサーボ特性を得ることが可能となる。一般的に、コヒーレンス長は光源のスペクトル半値全幅Δλとの相関が知られており、その関係は光の中心波長をλとしてλ2/Δλで表わされる。読出光の波長としては、十分な解像度を得るためには400nm程度が好ましく、このときΔλが8nm以上ある光を用いるとコヒーレンス長は20μm以下となり、各記録層14の界面からの多重反射光の干渉を十分低減することが可能となる。
【0046】
記録用レーザ52は522nmのパルスレーザである。記録層14において多光子吸収反応を効率的に起こさせるため、記録用レーザ52としては、CWレーザよりもピークパワーが大きいパルスレーザを用いるのが望ましい。記録用レーザ52の出力は、制御装置60により制御される。
【0047】
変調器42は、記録用レーザ52から発されたパルスレーザ光の内の一部のパルス光を間引いてパルスレーザ光に時間的な変調を与えて情報をエンコードする装置である。変調器42としては、音響光学素子(AOM)、マッハツェンダ(MZ)型光変調素子その他の電気光学変調素子(EOM)を用いることができる。変調器42として、これらの音響光学素子、電気光学素子を用いることで、メカニカルシャッタを用いる場合に比較して極めて高速に光のON・OFFを行うことができる。変調器42の動作は、制御装置60が、記録すべき情報に応じてエンコードした信号を変調器42に出力することで制御される。
【0048】
フォーカス用受光素子55は、4分割フォトディテクタ等を用い、非点収差法などによってフォーカス制御用の信号を得るための素子である。具体的には、集光レンズ45およびシリンドリカルレンズ44を通過することにより与えられた非点収差を最小化するよう制御装置60によってフォーカスアクチュエータ21aを制御することによってフォーカシングを行うことができる。
【0049】
再生光受光素子56は、再生された情報を含む再生光を受光する素子であり、再生光受光素子56で検出した信号は、制御装置60へ出力され、制御装置60において情報へと復調される。フォーカス用受光素子55が受光した光は、シリンドリカルレンズ44を通過しているので、光量分布を制御装置60に出力することで、制御装置60において、非点収差法により、記録光および再生光のフォーカシングサーボのための制御量を得ることができる。
【0050】
ピンホール板43は、集光レンズ46で収束された光の焦点付近に配置され、共焦点光学系を構成することで光情報記録媒体10の所定の深さ位置からの反射光のみを通過させ、不要な光をカットすることができる。
【0051】
制御装置60は、記録光を光情報記録媒体10の所定の記録層14に照射する場合には、記録層14と中間層13の界面18から記録光の入射側にω0<d<3ω0を満たすオフセット量dだけ焦点位置をずらしてフォーカシングを行う。オフセット量dを変化させるためには、例えば、制御装置60によって記録光の光路中に配置されるビームエキスパンダ48を制御し、集光または発散状態を調整することによって行う。ここでのω0は、図4に示した記録スポットMの半径である。この半径ω0は、図4の左の記録スポットMのように記録光と光情報記録媒体を相対的に移動させていないときの円形状のスポットの半径であり、図4の中央および右の2つの記録スポットMのように、記録光と光情報記録媒体10を互いに相対的に移動させた結果細長い形状となった場合には、記録スポットMの幅の半分として測定することができる。
【0052】
ここで、オフセット量dの範囲について説明する。まず、レーザ光で形成しうる微細なスポット径はω0=0.1〜0.3μmの範囲を想定している。記録するスポットの半径ω0は、使用する記録光の波長と対物レンズ21の開口数NAとで決まる回折限界によって決定される。半径ω0は、記録層14の1層あたりの面記録密度および使用する記録用レーザの波長から、0.1〜0.3μm程度であることが望ましいといえる。ここで、図5に示すように、オフセット量dと半径ω0の比d/ω0と変調度の関係を計算すると、ω0=0.15〜0.3μmの範囲では、d/ω0の値が1〜3の間で変調度が良好となるので、オフセット量dとしては、ω0<d<3ω0の範囲が良好であるといえる。なお、この計算においては、記録層14の厚さは1μmとしている。
【0053】
また、制御装置60は、読出光を光情報記録媒体10の所定の記録層14に照射する場合には、記録層14と中間層13の界面18を目標としてフォーカシングを行う。
【0054】
記録再生装置1は、上記した構成の他に、従来公知の光記録再生装置と同様の構成を有する。例えば、光情報記録媒体10の記録層14の平面内で記録スポットMを多数記録するため、記録光および読出光と光情報記録媒体10を互いに記録層14の平面方向に相対的に移動させるアクチュエータなどを備えている。
【0055】
以上のように構成された記録再生装置1による記録再生方法について説明する。
情報の記録時において、記録再生装置1は、記録用レーザ52からパルスレーザ光を発し、変調器42によりパルスレーザ光の一部を間引いてパルスレーザ光に情報をエンコードする。情報をエンコードされた光は、所定のオフセット量dが得られるよう、ビームエキスパンダ48によって収束、発散状態が制御された後、DBS25で反射されてPBS24、λ/4板23、ビームエキスパンダ22を通過し、対物レンズ21で収束される。パルスレーザ光の照射と同時に、再生用レーザ51からCWレーザ光を発し、CWレーザ光を、DBS25とPBS24を通過させて対物レンズ21で収束する。光情報記録媒体10から返ってきたCWレーザ光は、対物レンズ21、ビームエキスパンダ22、λ/4板23を通過してPBS24およびBS47で反射され、集光レンズ46およびピンホール板43を通って再生光受光素子56に入射する。
【0056】
制御装置60は、フォーカス用受光素子55から受けた信号に基づき、記録光およびCWレーザ光の焦点位置を計算し、フォーカスアクチュエータ21aおよびビームエキスパンダ22,48を駆動することで、図6に示すように中間層13と記録層14の界面18からオフセット量dだけ入射側にずれた位置に記録光RBの焦点位置を調整する。
【0057】
これにより、図6に模式的に示したように、光の強度に応じて(2光子吸収反応であれば光の強度の2乗に比例して)、光の強度が高い焦点付近ほど光の吸収反応が多く起こり、この反応に応じて屈折率が小さくなる。このため、1μmの厚みがある記録層14には、屈折率の分布ができる。この屈折率の分布を有する記録スポットMが読出光にとってレンズとして作用する。
【0058】
情報の再生時には、記録用レーザ52を停止し、再生用レーザ51を駆動して、CWレーザ光を光情報記録媒体10に照射する。このとき、記録時と同様に、光情報記録媒体10から返ってきたCWレーザ光(再生光)は、PBS24で反射されて再生光受光素子56およびフォーカス用受光素子55に入射する。
【0059】
制御装置60は、フォーカス用受光素子55の信号出力に基づき、フォーカスアクチュエータ21aおよびビームエキスパンダ22を制御し、図7に示すように中間層13と記録層14の界面18を目標にして焦点位置を調整する。すると、読出光OBは、記録スポットMに入った後、記録スポットMのレンズ効果により記録スポットMから逸れるように進行する。このため、記録スポットMの位置においては、界面18で反射する光がほとんど無く、再生光受光素子55で検出される光の強度が小さくなる。一方、図8に示すように、記録層14における未記録部分、つまり、記録スポットM以外の位置においては、読出光OBは界面18で反射するため、再生光受光素子56で検出される光の強度が大きくなる。
【0060】
このようにして、制御装置60は、記録部分における界面18での反射光強度と未記録部分における界面18での反射光強度との違いにより得られる変調から情報を復調することができる。すなわち、情報を再生することができる。
【0061】
以上のような、本実施形態の記録再生方法によれば、干渉効果を用いずに、記録層14に形成された記録スポットMのレンズ効果を利用して、記録部分と未記録部分の再生出力の変調を得ることができるので、記録層14の膜厚の精度をそれほど高く要求されず、製造コストを抑えることができる。また、再生時には界面18における読出光の反射を利用しているので、蛍光を利用する場合に比較して、高い再生出力を得ることができる。
【0062】
以上に本発明の実施形態について説明したが、本発明は、前記した実施形態に限定されることなく適宜変形して実施することが可能である。
例えば、前記実施形態においては、記録層14は、記録光の照射により屈折率が小さくなるものを例示したが、記録光の照射により屈折率が大きくなるような記録材料を用いてもよい。この場合には、図9に示すように、記録スポットMが読出光OBを集めるように作用するので、記録部分において未記録部分よりも高い反射率で読出光OBを反射し、記録部分と未記録部分の反射光強度の変調が発生する。もっとも、変調度を高くして再生出力において高いS/N比を得るためには、記録層14においては、前記した実施形態のように、記録光の照射により屈折率が小さくなる記録材料を用いるのが望ましい。
【0063】
また、前記した実施形態においては、光情報記録媒体10において、屈折率が記録層14とほとんど同じ粘着層15を用いていたが、記録層14に粘着性を持たせれば、図10に示すように、例えば、厚さ7μmの中間層13と厚さ3μmの記録層14とを交互に配置してもよい。さらに、この実施形態においては、中間層13と、中間層13の下側(基板11側)に隣接する記録層14との界面19′において反射が起こりにくくするため、中間層13の下側の面における屈折率を記録層14に近づけ、中間層13の上側の面における屈折率を記録層14と異ならせるように、中間層13の内部で厚み方向に屈折率分布を持たせるのが望ましい。
【0064】
また、前記した実施形態においては、再生用レーザ51のCWレーザ光の波長と、記録用レーザ52のパルスレーザ光の波長とを異ならせていたが、同じ波長としてもよい。例えば、記録用レーザ52として405nmのパルスレーザ光を発する記録用レーザ52′を用いる場合、図11に示すように、DBS25に代えてPBS25′を配置し、コリメートレンズ41と変調器42の間にλ/2板49を配置することで、再生用レーザ51からの再生光と記録用レーザ52′からの記録光をPBS25′を利用して、対物レンズ21の光軸上の光路に導く。そして、PBS24とPBS25′の間にλ/2板28を配置し、このλ/2板28を90°回転させるアクチュエータ28aを設ける。このようにして、制御装置60により、アクチュエータ28aを駆動して、記録時と再生時でλ/2板28を90°異なる向きとし、記録光と読出光のうち必要な光を通すことで、記録時に記録光を光情報記録媒体10に照射し、再生時に読出光を光情報記録媒体10に照射することができる。
【符号の説明】
【0065】
1 記録再生装置
10 光情報記録媒体
11 基板
13 中間層
14 記録層
15 粘着層
16 カバー層
18 界面
19 界面
21 対物レンズ
21a フォーカスアクチュエータ
43 ピンホール板
51 再生用レーザ
52 記録用レーザ
60 制御装置
M 記録スポット
OB 読出光
RB 記録光
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録光の波長をλ、記録層の屈折率をnとして2λ/n以上の厚さがあり、記録光の照射により屈折率が変化する記録層と、当該記録層に記録光の入射側と反対側において隣接する隣接層とを備える光情報記録媒体の記録再生方法であって、
前記記録層に記録される記録スポットの半径をω0として、情報の記録時に、前記記録層と前記隣接層の界面から記録光の入射側に
ω0<d<3ω0
を満たすオフセット量dだけ焦点位置をずらして記録光を照射することで前記記録層の記録位置の屈折率を変化させて記録スポットを記録し、
情報の再生時に、前記界面に焦点位置を合わせて読出光を照射することを特徴とする光情報記録媒体の記録再生方法。
【請求項2】
前記記録層に含まれる記録材料が多光子吸収化合物であることを特徴とする請求項1に記載の光情報記録媒体の記録再生方法。
【請求項3】
前記読出光のスペクトルの半値全幅が8nm以上であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光情報記録媒体の記録再生方法。
【請求項4】
情報の再生時に共焦点光学系を用いることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の光情報記録媒体の記録再生方法。
【請求項1】
記録光の波長をλ、記録層の屈折率をnとして2λ/n以上の厚さがあり、記録光の照射により屈折率が変化する記録層と、当該記録層に記録光の入射側と反対側において隣接する隣接層とを備える光情報記録媒体の記録再生方法であって、
前記記録層に記録される記録スポットの半径をω0として、情報の記録時に、前記記録層と前記隣接層の界面から記録光の入射側に
ω0<d<3ω0
を満たすオフセット量dだけ焦点位置をずらして記録光を照射することで前記記録層の記録位置の屈折率を変化させて記録スポットを記録し、
情報の再生時に、前記界面に焦点位置を合わせて読出光を照射することを特徴とする光情報記録媒体の記録再生方法。
【請求項2】
前記記録層に含まれる記録材料が多光子吸収化合物であることを特徴とする請求項1に記載の光情報記録媒体の記録再生方法。
【請求項3】
前記読出光のスペクトルの半値全幅が8nm以上であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光情報記録媒体の記録再生方法。
【請求項4】
情報の再生時に共焦点光学系を用いることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の光情報記録媒体の記録再生方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−22735(P2012−22735A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−158582(P2010−158582)
【出願日】平成22年7月13日(2010.7.13)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月13日(2010.7.13)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
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