説明

光拡散シート材料の製造方法

【課題】 光拡散材料からなるシートを前記材料の平面における少なくとも一つの軸に沿って変形させることにより、例えば、映写スクリーン用の光拡散シート材料を製造する。
【解決手段】 例えば、光拡散シート材料の製造方法であって、第二の異なる屈折率のポリマー系透明架橋性プラスチック材料のマトリックスに埋め込まれた複数の第一屈折率のポリマー粒子からなる複合プラスチックシートを準備し、そして、前記複合プラスチックシート材料を直ぐに変形可能な温度で平面において延伸し、その後、前記シート材料を延伸した状態で冷却することを含み、前記延伸の後に前記マトリックスを架橋することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、前面又は後面映写スクリーンに使用できるような光拡散シート材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の後面映写スクリーン又は前面映写スクリーンは、完全に対称的な拡散特性を有する。即ち、拡散シート材料からなる要素の後面に平行光線があたることによる前記要素の照度が均一であるとすると、前記要素から、前記要素の平面に対して垂直な平面において測定した、前記要素に対する垂直線に対して角度αで傾斜した軸に沿って、スクリーンにより導かれる光の強度は、どのようにこのような垂直平面を選択しても、同じである。したがって、完全に対称な拡散特性を有する拡散スクリーンを、実質的に垂直な平面に置かれる後面映写スクリーンとして使用し、光を通常のように拡散スクリーンに照射すると、スクリーンからの光は、垂直とまったく同じに水平に広がる。しかしながら、このようなスクリーンが、例えば、光をスクリーンから実質的に水平に放散するが、このような光を垂直に放散するのがずっと少ないような非対称拡散特性を有することが望ましい場合がある。このような装置を使用して、部屋の中の種々の位置に座った、したがって、実質的に一般的に水平面に分布した複数の観察者の各々が、スクリーンが適当に照らされて見え、同時に、確実に、光が部屋の天井又は床の方向にそれぞれ上向き又は下向きに散乱することにより不必要に損失しないようにすることができるであろう。
【0003】
以下において、「視角」について触れる。本明細書において、用語「視角」とは、スクリーンの中央部の見掛け明度がスクリーンを直角に見ている観察者に対する見掛け明度の50%以上であるこのような前面又は後面映写スクリーンに対する観察者の視角範囲を意味する。
特許文献1は、屈折率を変えて並べたレンズであって、各々シートの表面間に延びているシートの各領域に形成され、各前記領域において屈折率が各レンズの光軸からの半径方向の距離とともに除々に異なるレンズを含んでなる透明感光性ポリマーからなる一体シートを含んでなる映写スクリーンを含む表示システムを開示している。
【0004】
使用される感光性ポリマーは、DuPont社により登録商標OMNIDEXで市販され、型表示がHRF150又はHRF600であるものでよい。HRFシリーズ感光性ポリマーは、N−ビニルカルバゾール(NVC)を高分子バインダーとしての可塑化ポリビニルアセテート(PVAC)、セルロースアセテートブチレート(CAB)又はポリビニルブチレート(PVB)に分散させたものである。この材料は、光重合開始剤によるか、光増感色素/開始剤の組み合わせによって重合開始できる。
【0005】
OMNIDEX材料は、ポリエステルフィルム基材(MYLAR)の上にモノマーの層を設けて含んでなり、この層全体がポリエステル(MYLAR)フィルムで覆われている、シートの形態で入手できる。
使用可能なさらなる光重合性材料が、特許文献2に記載されている。
通常、特許文献1に開示されている方法により製造される拡散スクリーンは、完全に対称な拡散特性を有している。
【0006】
別の形態の公知の光拡散シート材料は、特許文献3に開示され、第一プラスチック材料、例えば、ポリメチルメタクリレートからなるマトリックスに、第二光透過性プラスチック材料、例えば、異なる屈折率を有しゴム状コンシステンシーを有するるアルキルアクリレート樹脂又はブチルアクリレート樹脂の複数の小さい実質的に球状の粒子を埋め込んで含んでなるものである。
特許文献4は、相非相溶性樹脂の液状配合物をダイを通して押出すことにより一つの樹脂に他の樹脂からなる光拡散島を埋め込んでなるフィルムを形成する、異方性光拡散性を有する反射スクリーンを製造する方法を記載している。一軸延伸処理は、これらの島を長軸が延伸方向に配向している楕円形に変換すると言われている。
【0007】
【特許文献1】欧州特許第294122号明細書
【特許文献2】米国特許第3658526号明細書
【特許文献3】米国特許第5307205号明細書
【特許文献4】特開平5−113606号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、一態様において、光拡散材料の光学特性を変化させる方法を提供することである。
また、本発明の目的は、別の態様又はその態様において、非対称光拡散性を有する光拡散材料の向上した製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のこの態様によれば、光拡散シート材料の光学的特性を変化させる方法であって、少なくともある温度で変形できる前記材料からなるシートを準備する工程と、前記シート材料の平面における少なくとも一つの軸に沿って前記材料を変形する工程と、を含んでなる方法が提供される。
本発明のこの態様によれば、非対称光拡散特性を有する光拡散シート材料の製造方法であって、少なくともある温度で変形できる光拡散シート材料を準備する工程と、前記シート材料の平面における軸に沿って選択的に前記材料を延伸する工程と、を含んでなる製造方法が提供される。
【0010】
本発明の方法は、ヨーロッパ特許第294122号に記載の屈折率を変えたレンズスクリーン材料等の光拡散シート材料、又は例えば、各屈折率を変えたレンズを整列し、その光学効果を各屈折率を変えたレンズに加えた、各屈折率を変えたレンズごとに各凸ドーム又は凹くぼみを含んでなるシート材料の少なくとも一方の表面が屈折率の漸次変化に相当する輪郭又はレリーフを有している屈折率を変えたスクリーン材料を含んでなるWO91/18304に開示されているような光拡散シート材料に適用できる。この方法は、各表面のレリーフレンズが直径が屈折率を変えたレンズよりも実質的に大きく且つこれらの複数にスパンするすぐ上に述べた材料の変更態様にも適用できる。
【0011】
また、本発明の方法は、米国特許第5307205号に開示されている種類の光拡散シート材料にも適用できる。したがって、最初に対称な拡散特性を有するこのようなシート材料の試料を、この材料をわずかに軟化する温度まで加熱し、材料を材料の平面内の軸に沿って延伸した後、その延伸した状態で材料を冷却することにより、非対称拡散特性を有する材料に変換できる。この場合、非対称性は、個々の(最初は球状である)粒子の変形、及び/又は延伸中に表面を変形している材料の表面に隣接する微小球から生じ、非対称表面レリーフ効果を提供し、例えば、前記表面に隣接するこのような各粒子上に各非対称ドームを形成するものと思われる。
【0012】
また、拡散効果の一部又は全てが、例えば、微細な部分的に球状のドーム領域を材料の表面に並べた形態をとるか、規則性の小さい構造体を含んでなることができる、表面輪郭又は凹凸に起因する拡散シート材料も公知である。ここでも、非対称拡散特性が、このようなシート材料において、軟化温度まで加熱し、材料の平面において軸に沿って選択的に延伸することにより、生じさせることができる。この材料が、部分的に球状のドーム型領域を並べて含んでなる表面形状をしている場合には、このような延伸によって変形されて卵形又は楕円領域となる。
一軸延伸を利用した本発明の種々の実施態様において、延伸の効果により、延伸方向に沿って及びしたがってその光学軸に垂直にミクロレンズの各々が伸長し、各レンズが乱視的となると思われる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
非対称拡散特性を有する光拡散材料を製造する本発明を包含する方法の使用例を、以下に記載する。
〔実施例1〕
ヨーロッパ特許明細書第294122号に記載のようにして、光拡散光重合シート材料を製造し、したがって屈折率を変えたミクロレンズを並べて含有させた。この光拡散材料は、対称光拡散特性を有し、視角が46°であった。この光拡散材料の原料光重合性材料は、厚さが93μmである上記したDuPont MRF600であった。幅45mmである(及びそのMylar基材から剥離した)この光拡散材料の試料ストリップを、130℃に加熱し(この温度で材料がわずかに軟化した)、その後、長さ方向に2:1の比に延伸(即ち、その最初の長さの二倍に延伸)した後、その延伸状態で冷却して、延伸が保持されるようにした。延伸後、ストリップの幅が25mmに減少した。延伸ストリップの拡散特性が、非対称であり、ストリップの長さ方向に平行な平面における視角が37°であり、ストリップのこの方向に垂直な平面における視角が47°であった。
上記方法を米国特許第5307205号に開示されている種類の光拡散材料に適用した一例を、以下に示す。
【0014】
〔実施例2〕
視角が20°(ピーク明度の50%)である3M社製の光拡散フィルムDFA12を、80℃で延伸して厚さを約20%減少(0.0065インチから0.0055インチに減少)させ、室温に冷却し、視角を再び測定した。配向後の視角は、配向方向において26°であり、垂直方向において22°であり、非対称性が生じ、視角が変化したことが分かった。
【0015】
〔実施例3〕
下表に、実施例2に記載した方法を、商品名MW11、MW13、MW2、MW3及びMW6としてMarshall&Williams社から入手したさらなる光拡散シートプラスチック材料に適用することにより得られた結果を示す。延伸温度、延伸比及び最終シート厚さは、それぞれ「S温度」、「S比」及び「F厚さ」とヘッド記載した欄に示したとおりである。各々の場合のシート材料の初期厚さは、1インチの20000分の1(500μM)であった。ヘッド「VのA(vert)」及び「VのA(hor)」は、それぞれ延伸方向と平行の長さ方向の平面及び延伸方向と垂直の平面における視角(上記で定義した)を意味する。ヘッド「ゲイン」は、通常のように照らされたスクリーンを通常のように見たときの見掛け明度の、平均見掛け明度(全立体角180°について平均)に対する比を意味する。表における温度の単位は°Fであり、厚さの単位は1インチの1000分の1である。視角の単位は、「°」である。
【0016】
【表1】

【0017】
米国特許第5307205号による拡散材料の場合、延伸によりディフューザが光を「放散する」程度が実質的に増加、即ち、延伸により「視角」が増加することが判明した。したがって、この材料を高温で、その平面において2つの相互に垂直な方向に同時に延伸し、この材料を再びその延伸状態に維持しながら冷却して、材料における延伸を永久的なものとして保持することにより、光拡散の対称から逸脱することなく、この「放散」効果を増加させることができる。この効果は、言及されている他の形態の拡散材料においても再現できる。
【0018】
上記した実施例において、光拡散材料は加熱して材料を軟化させた後に延伸することにより配向しているが、本発明は、加熱、軟化又は延伸に限定されない。当業者に公知であるシートポリマー材料を配向する多数の方法があり、個々の拡散材料に適用できる適当な方法を難なく選択できる。ポリマー材料の配向は、常にではないが、典型的に、通常の使用温度よりも高い温度であって且つ材料が流体となる温度よりも低い温度で生じる。配向プロセスは、基本的な加工プロセスの一部分として生じることがあり、例えば、押出し又はその後の例えば予め加工したシートからの物品の真空成形によりポリマー繊維が配向する。プラスチックを配向する方法は、一軸(例えば、繊維の場合)でも、二軸(例えば、シート又はフィルムの場合)でもよく、利用できる方法は、当業者に周知である。
【0019】
上記において、材料を「延伸」することについて言及したが、このような「延伸」は、材料を引っ張ることにより生じさせる必要がなく、例えば、押出しによるか、材料をローラー間のニップを通過させることにより生じさせてもよい。
上記実施例において、配向に関連して加熱を使用して特定(所望)の視角変化を達成している。しかしながら、配向は室温で生じる場合があり、室温よりも低い温度を場合によっては使用することも考えられないことはない。
したがって、例えば、プラスチックフィルムを配向するのに自体公知の方法により、光拡散プラスチック材料を室温で延伸して十分に非弾性変形及び配向させることができる。
一つの屈折率を有するマトリックスが異なる屈折率の粒子をそこに埋め込んで有するある実施態様においては、マトリックスに埋め込まれた前記粒子は、室温で硬質であるが、マトリックス材料を延伸又は配向するために加熱する温度で変形可能又は延伸できるように軟化するものでよい。
【0020】
本発明に関連して、光拡散シート材料を変形させる最も適当な方法は、出発材料に基づいて選択される。例えば、出発材料が架橋されており、したがって感光性ポリマー系材料の場合にしばしばみられるように非溶融性であるかどうか、あるいは、米国特許第5307205号に記載のように熱可塑性であって特性の変化が必要とするかどうか、即ち、非対称光学特性を生じさせることが望ましいか、視角を変化させることが望ましいかどうか、又はこれらの二つの組み合わせが望ましいかかどうかによって選択される。例えば、単一方向における配向により、非対称性となる。二方向における配向では、配向度に応じて非対称となったり非対称とはならなかったりするが、視角の変化が生じる。二種以上の材料を混合することにより光学特性が達成される、米国特許第5307205号に記載されているような不均一材料では、配向の効果は、ある程度までは、これらの材料の別々の特性によって決定される。これは、最初は平滑な表面であったシートに比較的硬質な粒子が含有されていることを考えることにより、最もよく理解される。延伸が起こると、これらの粒子によって、シート表面がだんだん変えられていく。もし粒子が最初球状であるならば、凸状「隆起」がシートの表面に生じ、表面レリーフレンズを形成することが理解されるであろう。材料とプロセス温度を適切に選択することにより、混合系における成分材料の相対的な物性を選択して特定の表面レリーフ及び/又は非対称特性とすることができることが理解されるであろう。
【0021】
本発明のさらなる実施態様では、架橋熱可塑性樹脂を利用する。熱可塑性材料の架橋は、1950年代にCharlesbyにより開発され、1950年代後半及び1960年代にRaychem及びW.R.Graceにより工業化された、現在では比較的周知の技術である。熱可塑性樹脂を架橋すると、加熱してももはや溶融しないが、対応する非架橋プラスチックの融点より高い温度で弾性又はゴム弾性を示す。もし対応の非架橋プラスチックの融点よりも高い温度まで加熱し、延伸し、次に冷却すると、架橋熱可塑性樹脂は、再加熱されるまで延伸された形状を保持し、再加熱すると、一般的に最初の寸法まで完全に戻る。
第1図〜第3図は、熱可塑性樹脂材料(上記実施例におけるポリエチレン)の架橋による物性の変化を示す。これらの図において、非架橋材料に関するグラフは、実線で示されており、架橋材料に関するグラフは点線で示されている。
【0022】
第1図は、実質的に同じ材料(この場合には、一定種類のポリエチレン)について架橋した場合と非架橋状態の両方について、弾性率と温度との関係を示したグラフの一例を示したものである。熱可塑性樹脂が異なると、総合的な特性が顕著に異なることがあるが、架橋の効果は一般的に同様である。
第2図は、第1図に示した両方の材料について、室温での応力と歪みとの関係を示したグラフであり、第3図は、架橋材料と非架橋材料の、非架橋材料の融点に近い温度での、応力と歪みとの関係を示したグラフであり、第4図は、異なる架橋密度を有する他のグラフの非架橋材料に対する2つの架橋対応品の、対応の非架橋材料の融点よりも高い温度での、第3図に対応するグラフである。このように、架橋により、ポリマー材料の配向においてかなりの柔軟性が得られ、また、上記した材料の場合には、所定の非対称度を得るのが容易となる。
【0023】
非架橋材料は、上記で開示した方法のいずれかにより高温で配向したときには、延伸中に簡単に冷却して、薄部(より迅速に冷却する部分)が確実に機械的強度を増大するようにすることにより、より厚い(熱い)部分が適当に延伸状態となるようにしなければならない。この原理は、プラスチック袋を製造するのに最も一般的に使用される「インフレート」法に利用される。一定の熱可塑性材料は、最適(最大)配向度を示す。最適配向度より低いレベルは、具体的にもし「均一な」製品が必要とするならば、加熱と延伸では得ることが極めて困難である。ある場合には、唯一の効果的な方法として、材料を圧縮して厚みの減少及びしたがって配向を生じさせる「ニップロール」法を使用することがある。
【0024】
架橋した熱可塑性樹脂の場合は同様な制限はなく、高温で簡単に延伸することにより、材料の伸長性の範囲内で一連の配向レベルを得ることができる。
架橋はいくつかの方法により達成でき、より一般的には、例えば、電子線又はX線、紫外線による高エネルギー照射、例えば、過酸化物を用いた化学的処理によるものである。
架橋度は容易に制御でき、一つの屈折率を有する粒子を異なる屈折率を有するマトリックスに埋め込んで含んでなる実施態様では、このことは、ホストポリマーと埋め込まれた粒子の材料の両方に当てはまる。
温度と架橋密度の両方が顕微鏡レベルでポリマー構造体の弾性率に影響するので、架橋熱可塑性樹脂材料により、上記で概略説明した非対称ディフューザの形成における柔軟性が大きくなることは明白である。
【0025】
上記したように、熱可塑性樹脂マトリックスの架橋は材料を延伸する前に行ってよいが、材料を延伸しながら行ってもよいし(部分的な延伸か、最終延伸)、材料を非延伸状態で部分架橋し、材料を延伸した状態でさらに架橋を実施してもよい。
架橋熱可塑性樹脂は、向上した熱的特性を有する。しかしながら、もし架橋が配向前に生じるならば、例えば、対応の非架橋プラスチックの融点に近づくにつれて、高温で配向損失が生じることがある。配向後の架橋は、配向「固定」や他の効果を生じやすい。
基材の架橋を制御することにより、延伸前に材料を溶融した状態又はほぼ溶融した状態とする必要がなくなり、延伸温度の選択の柔軟性がはるかに大きくなる。また、架橋を制御することにより、延伸中に冷却を行う必要がなくなる。
【0026】
架橋に関する上記の説明は、一つのプラスチック材料からなるマトリックスに異なる屈折率の別の材料からなる粒子を含有させて含んでなる材料についてであるが、同様の架橋法を、上記実施例1で言及した感光性ポリマー系の屈折率を変えたスクリーン材料に適用できる。上記実施例1で言及した感光性ポリマー系の屈折率を変えた材料は、屈折率を変えたレンズや、他の屈折率を変えたフィーチャーを形成するために利用される紫外線照射によりある程度すでに架橋されているかもしれない。しかしながら、配向プロセスを最適化する手段として、さらなる架橋を意図的におこなってもよい。好ましい光重合性材料の場合のように、材料がPVA等の架橋性成分を含有するときには、感光性ポリマーのこのような成分及び未反応モノマーを、例えば、電子線照射を用いてさらに重合することができ、これにより、視角等の基本的な拡散特性に顕著に影響することなく材料の配向及び非対称性を変化することができる。
【0027】
熱可塑性樹脂材料が表面レリーフ特性又は特徴により光拡散性を有する上記した実施態様に関して、このような実施態様の変形態様が可能であり、前記材料を延伸又は他の配向前、中又は後に架橋してよい。
用途に応じて、上記した方法を使用して、非対称性を生じさせるか、視角を変化させるか、それらの両方を行ってもよい。この方法を用いて、単一材料シートの光学特性を変化できること、及び実際に、このシート内の特性を変化できることは明らかである。例えば、この材料のフラットシートを真空成形して単純(半球形)又はより複雑な形状とすることにより、種々の配向が生じ、したがって単一ピース内で視角差を生じる。
拡散材料によっては、材料を延伸すると視角が増加するのではなく減少すると思われるものがある。この効果も、本発明の範囲と考えられる。
【0028】
上記で言及した拡散材料のいずれも、後面映写スクリーンとして(即ち、拡散透過スクリーンとして)使用したり、反射層を積層して反射又は前面映写スクリーンを形成してもよいことが理解される。反射層は、反射層が非延伸性であるならば延伸後に適用してもよいし、もし反射層がその反射性に悪影響を及ぼすことなく延伸できるのであるならば、延伸前に適用してもよい。
反射層をスクリーン材料に適用する方法は、周知であり、本発明の一部分を形成しない。一般的に、本発明の反射スクリーンは、反射材料層をスクリーン表面に堆積するか、積層することにより製造できる。例えば、反射スクリーンは、スクリーン材料に反射性MYLARか金属化フィルムを積層することにより製造できる。また、反射スクリーンは、周知の確立された方法を用いてスクリーン材料を直接金属化することにより製造することもできる。
また、自体公知の手段により、本発明による光拡散スクリーンにさらなる特性を組み込むことができる。例えば、このようなスクリーンは、反射減少塗膜(単一又は複数)を含んでもよいし、添加剤を含有したり処理を施してスクリーンを複屈折性や偏光性としたりしてもよい。
【0029】
上記したように、本発明の数多くの実施態様において、プラスチック材料を延伸するために加熱して軟化しているが、加熱は、必ずしも必須ではない。材料を加熱する場合、材料の最適加熱温度は、関与する材料や、材料を延伸したり配向したりするのに使用される方法にも依存する。一般的に、材料を加熱する場合、加熱温度は、70〜150℃の範囲である。アクリル樹脂又はアクリル系材料の場合には、使用温度は、典型的には100〜120℃の範囲である。
また、上記したように、本発明の実施におけるプラスチックシート材料の「延伸」又は配向は、種々の方法のいずれにより実施してもよい。
基本的には、2種類の配向法があり、第一の方法は材料を圧縮する方法であり、二番目の方法は材料を一方向又は複数の方向に機械的又は空気圧を用いて(又はそれが不十分な状態として)延伸する方法である。
【0030】
典型的には、圧縮法の場合には、材料シートを二ロール又は多ロールスタックのニップを通過させる。ニップ分離は、材料の初期厚さよりも小さい。この方法では、厚さが減少し、長さが増加する。幅の増加は小さいが、温度の増加とともに増加する。最良の結果を得るには、材料がロールスタックに入るときの、ロールスタックと材料との間の温度差を確立する。もし複数組のコオペレイティブロールを使用するならば、典型的に一組のロールから次の組のロールまでの間に材料の温度が変化する(及び連続するロール組を異なる温度に維持してもよい)。
延伸は、一軸でも二軸でもよい。延伸は、公知のブロー成形法及び真空成形法に相当する方法によるか、例えばプロエチレンフィルムを製造するのに使用されるインフレート法に相当する方法によって達成できる。これらの全ての方法では、プロセスの延伸部分の最中に冷却することが含まれる。
【0031】
しかしながら、現在の時点で好ましい方法(特に、原料がシート又はロールストックの場合)では、3つの加熱帯域、即ち、材料を顕著な変形が生じる前に加熱する予備加熱帯域と、続いての延伸帯域(材料を加熱してもよい)と、必要に応じて続いて設けられるアニーリング帯域と、を有する装置を使用する。延伸が延伸帯域で完了することを前提とすると、アニーリングは実際には性能を損なう。この方法では、材料は、長さ方向に延伸してもよいし、横方向に延伸してもよいし、両方の方向に延伸してもよい。長さ方向の延伸は、機械内のロール速度差を使用することにより行うことができる。横方向の延伸は、材料の側の離れた点をつかんだ後、グリッパーを離れるように移動することにより行うことができる。グリッパーは、例えば、分岐レールを走行し、これらのレールに沿ってチェーンにより引くことにより、材料が長さ方向に運ばれるにつれて横方向に延伸するようにしてもよい。この装置において、延伸は、完全に横方向である。レールの分離及び分離速度は、変化できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】典型的な架橋プラスチック材料と対応の非架橋プラスチック材料についての、弾性率と温度との関係を示した典型的なグラフである。
【図2】同じ架橋プラスチック材料と対応の非架橋プラスチック材料の室温での、応力と歪みとの関係を示したグラフである。
【図3】同じ架橋プラスチック材料と非架橋プラスチック材料の、非架橋材料の融点に近い温度での、応力と歪みとの関係を示したグラフである。
【図4】異なる架橋密度を有する同じ非架橋材料に対する2つの架橋対応品の、対応の非架橋材料の融点よりも高い温度での、応力と歪みとの関係を示したグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光拡散シート材料の製造方法であって、第二の異なる屈折率のポリマー系透明架橋性プラスチック材料のマトリックスに埋め込まれた複数の第一屈折率のポリマー粒子からなる複合プラスチックシートを準備し、そして、前記複合プラスチックシート材料を直ぐに変形可能な温度で平面において延伸し、その後、前記シート材料を延伸した状態で冷却することを含み、前記延伸の後に前記マトリックスを架橋することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記延伸時に、前記シート材料を平面において予め定められた方向に選択的に延伸することを特徴とする、非対称光拡散特性を有する光拡散シート材料を製造する請求項1記載の方法。
【請求項3】
光拡散シート材料の製造方法であって、屈折率を変えて並べたマイクロレンズを組み込んだ光重合性シート材料を準備し、前記シート材料を直ぐに弾性的に変形可能になる温度まで加熱し、該材料を平面において延伸し、該材料を架橋することを特徴とする光拡散シート材料の製造方法。
【請求項4】
前記シート材料を一軸方向に延伸することで、延伸されたシート材料が非対称光拡散特性を有することを特徴とする請求項3に記載の光拡散シート材料の製造方法。
【請求項5】
さらに前記シート材料を延伸した状態で冷却することを特徴とする請求項3に記載の光拡散シート材料の製造方法。
【請求項6】
前記シート材料を一軸方向に延伸することで、延伸され、冷却されたシート材料が非対称光拡散特性を有することを特徴とする請求項5に記載の光拡散シート材料の製造方法。
【請求項7】
前記シート材料を二軸方向に延伸することを特徴とする請求項1又は3に記載の光拡散シート材料の製造方法。
【請求項8】
前記二軸延伸が、その配向の程度によって、拡散特性の非対称性が得られるように行われることを特徴とする請求項7に記載の光拡散シート材料の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−227573(P2006−227573A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−242754(P2005−242754)
【出願日】平成17年8月24日(2005.8.24)
【分割の表示】特願平8−520313の分割
【原出願日】平成7年12月28日(1995.12.28)
【出願人】(596092355)ナーシュア コーポレーション (1)
【出願人】(505279868)ナシュア・フォト・リミテッド (1)
【Fターム(参考)】