説明

光拡散シート複製用金型の製造方法、光拡散シート及びその製造方法、並びにスクリーン

【課題】光透過時あるいは反射時に、縦方向と横方向とで異なる拡散角を持つ、あるいは縦横方向で拡散特性に異方性を持つ光拡散シートを安価に製造可能ならしめる光拡散シート複製用金型の製造方法、光拡散シートの製造方法を提供するものであり、その方法により製造された不連続線、すなわちシームレスな長尺の光拡散シート、並びにその光拡散シートを用いたスクリーンを提供する。
【解決手段】円筒形状の金型母材ロール1表面にブラストガン2から研削材3を吹き付けて金型母材ロール1表面に凹凸を形成するサンドブラスト加工を行うことよりなり、金型母材ロール1表面に対する研削材3の吹き付け角度が、金型母材ロール1の回転軸Aに対してすべて90°未満となるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光拡散シート複製用金型の製造方法、光拡散シート及びその製造方法、並びにスクリーンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、会議等において発言者が資料を提示する方法としてオーバヘッドプロジェクタやスライドプロジェクタが広く用いられている。また、一般家庭においても液晶を用いたビデオプロジェクタや動画フィルムプロジェクタが普及しつつある。これらのプロジェクタの映写方法は光源から出力された光を、例えば透過形の液晶パネル等によって光変調して画像光を形成し、この画像光をレンズ等の光学系を通して出射してスクリーン上に映写するものである。
【0003】
例えば、スクリーン上にカラー画像を形成することができるプロジェクタ装置は、光源から出射された光線を赤(R)、緑(G)、青(B)の各色に分離して所定の光路に収束させる照明光学系と、この照明光学系によって分離されたRGB各色の光束をそれぞれ光変調する液晶パネル(ライトバルブ)と、液晶パネルにより光変調されたRGB各色の光束を合成する光合成部とを備え、光合成部により合成したカラー画像を投射レンズによりスクリーンに拡大投影するようになっている。
【0004】
また、最近では光源として狭帯域三原色光源を使用し、液晶パネルの代わりにグレーティング・ライト・バルブ(GLV:Grating Light Valve)を用いてRGB各色の光束を空間変調するタイプのプロジェクタ装置も開発されている。
【0005】
上述したプロジェクタ装置においては、投影像を見るためにプロジェクタ用スクリーンが用いられる。このプロジェクタ用スクリーンには大別して、スクリーンの表側から投影光を照射して当該投影光のスクリーンでの反射光を見るフロントプロジェクタ用スクリーンと、スクリーンの裏側から投影光を照射してスクリーンを透過した光をスクリーンの表側から見るリアプロジェクタ用スクリーンとがある。いずれの方式のスクリーンにおいても視認性の良好な広視野角のスクリーンであることが要求される。
【0006】
そのため、いずれの方式においても一般にスクリーン表面に光を散乱させる光拡散シートが設けられており、この光拡散シートにより画像光が均一にしかも画面の有効領域全体へ拡散射出されるようになる。
【0007】
この光拡散シートの製法としては、従来からコヒーレント光束を粗面に照射した際に生成されるスペックルパターンを感光性樹脂に形成する方法(例えば、特許文献1,2参照。)、マスクを作成し感光性樹脂に焼き付ける方法、あるいは金属、樹脂などの金型母材表面を直接機械加工により切削して微小な凹凸を形成した金型とし、この金型から紫外線硬化樹脂などを用いて形状転写する方法などがあった。
【0008】
また、樹脂粒子を樹脂バインダーに分散させたものを透明基板に塗布することにより製造する方法、あるいはサンドブラスト加工により金型母材表面に凹凸を形成した金型を作製し、この金型から紫外線硬化樹脂などを用いて形状転写する方法などがあった(例えば、特許文献3参照。)。
【0009】
ところで、光拡散シートには、光の出射光が目的の範囲内に収まるようにする特性、すなわち拡散角が縦方向と横方向で異なることが求められる場合がある。この光拡散シートを製造するために、これまでスペックル干渉光やマスク形状を感光性樹脂に転写する方法がとられていた。
【0010】
【特許文献1】特開昭53−51755号公報
【特許文献2】特開2001−100621号公報
【特許文献3】特開2000−284106号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、スペックル干渉光やマスク形状を感光性樹脂に焼き付ける方法においては、複数の光拡散シートを作成したい場合、その感光性樹脂を元にした複製用の金型を作成することとなるが、感光性樹脂の露光が1m当たり数時間〜数日と多大な露光時間を要していた。また、露光後の工程として感光性樹脂の樹脂による複製作成、導電化処理、電鋳等の工程が必要となり、光拡散シート用金型製造の時間とコストが多大にかかっていた。
【0012】
また、金型母材の表面を機械的に切削して製造する方法においては、その切削精度がまだ確立されておらず、切削途中での工具の破損、多大な切削時間、加工設備が大きくなってしまう等が問題であった。
【0013】
一方、サンドブラスト加工により作製した金型から光拡散シートを製造する方法によれば金型製造の時間やコストはかからないが、この方法により製造された金型は平面形状であるため、この金型を使用して連続的に透明基板等に塗布することはできなかった。
【0014】
また、スペックル干渉光やマスク形状を感光性樹脂に焼き付ける方法、機械的な切削による方法によりロール形状の金型母材に加工する場合、円周方向で不連続な部分が出てしまうという問題があった。
【0015】
本発明は、以上の従来技術における問題に鑑みてなされたものであり、光透過時あるいは反射時に、縦方向と横方向とで異なる拡散角を持つ、あるいは縦横方向で拡散特性に異方性を持つ光拡散シートを安価に製造可能ならしめる光拡散シート複製用金型の製造方法、光拡散シートの製造方法を提供するものであり、その方法により製造された不連続線、すなわちシームレスな長尺の光拡散シート、並びにその光拡散シートを用いたスクリーンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
発明者らは、これまでのサンドブラスト加工を用いた光拡散シート複製用金型の作成手法では、平面形状の金型母材に対して研削材をブラストしていた点に問題があることに着目した。すなわち、これによりロール形状のシームレスな光拡散シート用複製金型、それを使用したシームレスな長尺の光拡散シートは作製できなかった。そこで、サンドブラスト加工において円筒形状の金型母材ロール表面への研削材を吹き付ける方法について鋭意検討を行い、本発明を成すに至った。
【0017】
すなわち、前記課題を解決するために提供する本発明は、光拡散シートを複製するのに用いられる金型の製造方法において、円筒形状の金型母材ロール表面にブラストガンから研削材を吹き付けて前記金型母材ロール表面に凹凸を形成するサンドブラスト加工を行うことよりなり、前記金型母材ロール表面における研削材の吹き付け角度が、該金型母材ロールの回転軸に対してすべて90°未満となるようにしたことを特徴とする光拡散シート複製用金型の製造方法である(請求項1)。
【0018】
ここで、前記ブラストガンを、該ブラストガンからの研削材射出軸と前記金型母材ロールの回転軸とが同一平面内となるように配置し、前記両軸のなす角を0〜60°としてサンドブラスト加工を行うことが好ましい。
【0019】
また、前記課題を解決するために提供する本発明は、光拡散シートを複製するのに用いられる金型の製造方法において、円筒形状の金型母材ロール表面にブラストガンから研削材を吹き付けて前記金型母材ロール表面に凹凸を形成するサンドブラスト加工を行うことよりなり、前記金型母材ロール表面における対する研削材の吹き付け角度が、該金型母材ロールの回転軸と直交する外周接線に対してすべて90°未満となるようにしたことを特徴とする光拡散シート複製用金型の製造方法である(請求項3)。
【0020】
ここで、前記ブラストガンを、該ブラストガンからの研削材射出軸と前記金型母材ロールの回転軸と直交する外周接線とが同一平面内となるように配置し、前記研削材射出軸と前記接線とのなす角を0〜60°としてサンドブラスト加工を行うことが好ましい。
【0021】
また、前記課題を解決するために提供する本発明は、請求項1〜4のいずれか一に記載の光拡散シート複製用金型の製造方法により製造された金型を直接または間接に用いて光拡散シートを複製することを特徴とする光拡散シートの製造方法である(請求項5)。
【0022】
また、前記課題を解決するために提供する本発明は、請求項1〜4のいずれか一に記載の光拡散シート複製用金型の製造方法により製造された金型のサンドブラスト処理表面の凹凸形状が転写されたシームレスの光拡散面を備えることを特徴とする光拡散シートである(請求項6)。
【0023】
また、前記課題を解決するために提供する本発明は、請求項1〜4のいずれか一に記載の光拡散シート複製用金型の製造方法により製造された金型のサンドブラスト処理表面の凹凸形状が転写されたシームレスの光拡散面を備える光拡散シートと、該光拡散シートの光拡散面とは反対面側に設けられた反射層とを備えたことを特徴とするスクリーンである(請求項7)。
【0024】
また、前記課題を解決するために提供する本発明は、請求項1〜4のいずれか一に記載の光拡散シート複製用金型の製造方法により製造された金型のサンドブラスト処理表面の凹凸形状が転写されたシームレスの光拡散面を有する光拡散シートを備え、該光拡散シートは、前記光拡散面とは反対面側からの投射光を透過して該光拡散面から拡散して放射するものであることを特徴とするスクリーンである(請求項8)。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、円筒形状の金型母材ロール表面にサンドブラスト加工により縦横方向に形状の異なる凹凸を簡便に、精度良く形成することが可能となり、1回のサンドブラスト加工での光拡散シートを複製することのできる金型を作製することができる。
また、本発明によれば、その光拡散シート複製用金型を用いて、光透過時あるいは反射時に、縦方向と横方向とで拡散角の異なる、あるいは縦横方向に拡散特性に異方性のある光拡散シートを簡便に精度良くシームレスの長尺形状で製造できる。
さらに、その光拡散シートを用いることにより、スクリーンのどの場所においても放出される光が目的の視野内に指向せしめるように制御されるため、高く均一な輝度やゲインを得ることができ、視認性のよいスクリーンを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下に、本発明に係る光拡散シートの製造方法について説明する。
光拡散シートの製造方法は、光拡散シート複製用金型の製造工程と該金型による光拡散シートの複製工程とからなる。
【0027】
(1)光拡散シート複製用金型の製造工程
図1は、光拡散シートを複製するのに用いられる金型を製造する実施形態を示しており、サンドブラスト加工により円筒形状の金型母材ロール1の表面を加工し、光拡散シート複製用金型を製造している。
【0028】
サンドブラスト加工は、サンドブラスト装置(図示せず)のブラストガン2から研削材3を射出させて、金型母材ロール1の表面に吹き付け、研削材3が金型母材ロール1の表面に衝突することにより、該金型母材ロール1の表面に凹凸が形成される加工である。
【0029】
サンドブラスト装置は、ブラストガン2から研削材3を空気、窒素などの加圧ガスで射出させて、ステージに置かれた被加工材の表面に吹き付けて、その表面加工を行う装置である。本発明では、ステージ上に金型母材ロール1を配置し、以下に示す所定の条件でサンドブラスト加工を行う。
【0030】
研削材3は、樹脂、ガラス、金属、セラミックなどからなる球形あるいは多角形などの角のある粒子が好ましく、とくに角のある粒子が好ましい。例えば、ガラスビーズ、ジルコニア粒子、スチールグリッド、アルミナ粒子、シリカ粒子などが挙げられる。
また、研削材3の平均粒径は、1〜1000μmが好ましく、5〜600μmがより好ましい。さらに5〜50μmとするとなお好ましい。
【0031】
研削材3の粒子1個の重さは、0.002〜8mgが好ましい。
【0032】
金型母材ロール1は、サンドブラスト加工を行うのに適した材料からなるロールである。この材料は樹脂あるいは金属、例えば、アルミニウム、銅、スチールなどがよい。金型母材ロール1の長さは光拡散シートの幅に対応できる長さであれば良い。
【0033】
研削材3の吹き付け条件としては、図1において、金型母材ロール1表面における研削材3の吹き付け角度(角度β〜β)が金型母材ロールの回転軸Aに対してすべて90°未満とする。詳しくは、ブラストガン2を、ブラストガン2からの研削材射出軸Lと金型母材ロール1の回転軸Aとが同一平面内となるように配置し、前記両軸(研削材射出軸Lと回転軸A)のなす角を0〜60°とするとよく、0〜20°とするとなおよい。さらに、0〜10°とすることがより好ましい。
【0034】
金型母材ロール1に衝突した研削材3は、そのエネルギーを失いながら金型母材ロール1の表面を切削、あるいは変形させた後に金型母材ロール1の上方へある角度をもって飛散するが、上記吹き付け条件とすることにより、研削材3は金型母材ロール1にある角度をもって衝突するため、その衝突によって生じた変形形状はロール長手方向(X軸方向)とロール円周方向(R軸方向)とで異なる。例えば、図1の条件では、X軸方向の変形形状(くぼみ)の方がR軸方向のそれよりも長くなる。言いかえれば、X軸方向の表面粗さの方がR軸方向の表面粗さよりもピッチが長くなる。このピッチなどの表面粗さのパラメータは金型母材ロール1、研削材3、サンドブラスト加工条件(研削材3の吹き付け条件など)の各パラメータにより調整することが可能である。例えば、粒径の大きい研削材を用いた場合はX,R軸方向共に大きなピッチの粗さが実現でき、より密度の大きい研削材を使用すれば溝の深い形状を実現することができる。
【0035】
また、上記吹き付け条件により製造した光拡散シート複製用金型を使用することにより、光拡散シートを縦方向と横方向とで拡散角の異なる、あるいは縦横方向に拡散特性に異方性のあるものとすることができる。例えば、図1の研削材3の吹き付け条件では、反射光または透過光の拡散角はX方向に狭く、R方向に広くなり、拡散特性としてX方向のX側に輝度ピークが軸ずれしたものとなる。
【0036】
あるいは、反射光または透過光の拡散角はX方向に狭く、R方向に広くなり、更に入射角0°で拡散面に照射した光の前記拡散面からの拡散光輝度の角度依存性を測定した時に最大輝度軸が光拡散シート主面の法線方向に対してX側に傾いており、該最大輝度軸に対して前記輝度分布が非対称なものとなる。
【0037】
また、ブラストガン2を金型母材ロール1に対して寝かせるほど、すなわち角度θを小さくするほど、後述する光拡散シートの拡散角の縦横比率を大きくすることができ、拡散特性の異方性の効果も大きい。
【0038】
なお、研削材3は金型母材ロール1に対して角度θを中心として角度幅αをもってブラストガン2から射出される。言いかえると研削材3は金型母材に角度β〜βの範囲内で入射し衝突する。角度幅αは通常、10°程度である。
金型母材ロール1のより小さい領域を加工する場合には角度幅αをより小さくするか、あるいはブラストガン2と金型母材ロール1との距離Lを小さくすればよい。より広い領域を加工するためには、ブラストガン2を移動、または金型母材ロール1をなめらかに回転させながらサンドブラスト加工を行えばよい。
【0039】
本発明では、ブラストガン2から研削材3を出射しながら、ブラストガン2を金型母材ロール1上でスキャンさせて、なおかつ金型母材ロール1を回転させながらサンドブラスト加工を行う。
図2に、ブラストガン2のスキャンと金型母材ロール1の動作例を示す。ブラストガン2から研削材3を出射しながら、ブラストガン2を金型母材ロール1上をX軸方向に一定速度、あるいは一定ピッチで移動させ、同時に金型母材ロール1を一定速度で回転させるとよい。このとき、研削材3の衝突領域が金型母材ロール1の端面に到達すると、ブラストガン2のスキャン方向(X軸方向)を反転させサンドブラスト加工を連続して行い、金型母材ロール1の表面全面に所望の凹凸を形成することができる。
【0040】
X軸方向の移動ピッチは、隣接する研削材3の衝突領域がある程度重なり、金型母材ロール1表面全体として一様な凹凸形状を有するように調整すれことが好ましい。また、研削材3の衝突領域にマスクをかけ、その衝突領域の中心領域だけ金型母材ロール1に衝突するようにしてもよい。
【0041】
なお、研削材3の吹き付け条件として、図1のように金型母材ロール1表面とブラストガン2とのなす角度θを一定でスキャンしてもよいが、金型母材ロール1の位置により該角度θを変化させてもよい。
【0042】
また、研削材3の吹き付け条件のその他の例としては、図3において、金型母材ロール1表面における研削材3の吹き付け角度(角度β〜β)が金型母材ロール1の回転軸Aと直交する外周接線Tに対してすべて90°未満とする。詳しくは、ブラストガン2を、ブラストガン2からの研削材射出軸Lと金型母材ロール1の外周接線Tとが同一平面内となるように配置し、研削材射出軸Lと外周接線Tのなす角を0〜60°とするとよく、0〜20°とするとなおよい。さらに、0〜10°とすることがより好ましい。
【0043】
この条件による金型母材ロール1の変形形状は、図1の条件の場合のものとはロール長手方向(X軸方向)とロール円周方向(R軸方向)とで逆の関係となる。例えば、R軸方向の変形形状(くぼみ)の方がX軸方向のそれよりも長くなる。言いかえれば、R軸方向の表面粗さの方がX軸方向の表面粗さよりもピッチが長くなる。
【0044】
また、図3の条件により製造した光拡散シート複製用金型を使用することにより、光拡散シートを縦方向と横方向とで拡散角の異なるものとすることができ、例えば、反射光または透過光の拡散角はX方向に広く、R方向に狭くなる。
【0045】
(2)光拡散シートの複製工程
上記光拡散シート複製用金型の製造工程で作製された光拡散シート複製用金型の表面には所定の凹凸形状を有する微細彫刻面が形成されている。この微細彫刻面を利用して光拡散シートを製造すればよい。なお、該光拡散シート複製用金型を直接または間接に用いて、この微細彫刻面から光拡散シートを製造する方法であれば、どのような製造方法にも本発明の適用が可能である。
【0046】
例えば、光拡散シート複製用金型を直接に用いる方法としては、この金型をロール回転させながらプレス加工することにより熱成形のプラスチックフィルムに型押しするなどして光拡散シートを製造する方法が挙げられる。あるいは、金型上に紫外線硬化型樹脂を塗布、透明支持体を被せ紫外線照射して硬化し、金型から離型することで所望の光拡散シートを得ることができる。また、このような金型上への樹脂の塗布・硬化の処理を該金型をロール回転させながら透明支持体上で繰り返し行い、樹脂硬化層を積層させた光拡散シートを作製してもよい。なお、前記金型からの成形材離型性を向上させるために、金型表面に予めニッケル蒸着やフッ素系材料、シリコーン系材料コーティングなどの離型処理を施しておくことが望ましい。
【0047】
光拡散シート複製用金型を間接に用いる方法としては、上記光拡散シート複製用金型の製造工程で作製された光拡散シート複製用金型をマスターとし、電鋳型を取ることで同一金型を複製し、この複製した金型を用いて上記光拡散シート複製用金型を直接に用いる方法と同様に光拡散シートを製造する方法が挙げられる。また、反転形状電鋳型を一度取った後に無アルカリガラスなどの紫外線領域に吸収の少ない透明材質で転写複製した型を作成してもよい。この透明な型を用いることにより、光拡散シートを紫外線硬化樹脂で複製する際に型側から紫外線を照射して樹脂硬化させることが可能になる。
【0048】
ここで使用する紫外線硬化型樹脂は、光学的透明性を有するものが好ましい。例えば、アクリル系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、シリコーン樹脂等各種の樹脂が用いればよいが、特に限定されるものではない。また、紫外線による硬化樹脂の劣化を抑制するために紫外線吸収剤を微量添加したり、着色が必要となる用途においては、光吸収剤を添加する事も可能である。
【0049】
また、光拡散シートを構成する材料として、この他に屈折率を調整するために微粒子を含んだ熱成型性プラスチックや放射線硬化型樹脂を用いることもでき、添加される微粒子は、Ti、Zr、Al、Ce、Sn、La、In、Y、Sb、等の酸化物、または、In- Sn等の合金酸化物が挙げられる。なお、光触媒を抑える目的でTi酸化物にAl、Zr等の酸化物が適当量含有されたとしても、本発明の効果を妨げるものではない。
【0050】
また、微粒子の比表面積は55〜85 m2/gが好ましく、75〜85
m2/gであることがより好ましい。比表面積がこの範囲にあると、微粒子の分散処理により、光学膜用材料中における微粒子の粒度で100nm以下に抑えることが可能となり、ヘイズの非常に小さな光学膜を得ることが可能である。
【0051】
上記微粒子を分散させる分散剤は、その含有量が微粒子に対し3.2〜9.6×1011mol/m2であるが、これより含有量が少ないと光拡散シートに十分な分散性を得ることができない。逆に、含有量が多いと、塗膜中における分散剤体積比率が上昇するために、膜屈折率が低下して屈折率の調整範囲が狭くなることから設計が困難となる。
【0052】
上記の分散剤に含まれる親水基の極性官能基の量は、10-3〜10-1mol/gである。官能基がこれより少ない、あるいは多い場合には、微粒子の分散に対する効果が発現せず、分散性低下などにつながる。
【0053】
極性官能基として、以下に示すような官能基でも凝集状態にならないため、有用である。
・-SO3M、-OSO3M、-COOM、P=O(OM)2(ここで、式中Mは、水素原子あるいは、リチウム、カリウム、ナトリウム等のアルカリ金属である。)、3級アミン、4級アンモニウム塩
・R1(R2)(R3)NHX(ここで、式中R1、R2、R3は、水素原子あるいは炭化水素基であり、X-は塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン元素イオンあるいは無機・有機イオンである。)
・-OH、-SH、-CN、エポキシ基等
極性官能基の導入部位は特に規定はない。これら分散剤は、1種単独で用いられることが可能であるが、2種以上を併用することも可能である。
【0054】
また、塗膜における本発明の分散剤は、総量で上記強磁性粉末100重量部に対して、20〜60重量部が好ましく、38〜55重量部がより好ましい。極性官能基の導入部位は特に規定はない。
【0055】
また、分散剤親油基の重量平均分子量は110〜3000が好ましい。分子量がこの範囲よりも低いと、有機溶媒に対して十分に溶解しないなどの弊害が生じる。逆に高すぎる場合には光学膜に十分な分散性を得ることができない。なお、分散剤の分子量の測定はゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)法により行えばよい。
上記分散剤には、結合剤と硬化反応を起こすための官能基を有していてもよい。また、本発明の分散剤以外の結合剤を含む場合には結合基を多く有する多官能ポリマー、またはモノマーが好ましい。
【0056】
また、光拡散シートの膜厚を調整するために有機溶媒で希釈する事も可能であり、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソブチルアルコール等のアルコール系溶媒、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、乳酸エチル、エチレングリコールアセテート等のエステル系溶媒等が用いられる。これら有機溶媒は必ずしも100%純粋である必要はなく、異性体、未反応物、分解物、酸化物、水分等の不純成分が20%以下であれば含まれていてもかまわない。また、低い表面エネルギーをもつ支持体上に塗布するためには、より低い表面張力をもつ溶媒を選択することが望ましく、例えばメチルイソブチルケトン、メタノール、エタノール等が挙げられる。
【0057】
分散剤と硬化反応する結合剤は、熱硬化性樹脂、紫外線(UV)硬化型樹脂、電子線(EB)硬化型樹脂等があげられる。熱硬化性樹脂、UV硬化型樹脂、EB硬化型樹脂の例としてはポリスチレン樹脂、スチレン共重合体、ポリカーボネート、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、ポリアミン樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂等が挙げられる。その他の環状(芳香族、複素環式、脂環式等)基を有するポリマーでもよい。また、炭素鎖中にフッ素、シラノール基の入った樹脂でも構わない。
【0058】
上記樹脂を硬化反応させる方法は放射線または熱いずれでもよいが、紫外線照射により樹脂の硬化反応を行う場合には、重合開始剤の存在下で行うことが好ましい。ラジカル重合開始剤としては、例えば、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系開始剤;ベンゾイルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド、t−ブチルパーオクトエート等のパーオキシド系開始剤が挙げられる。これらの開始剤の使用量は、重合性単量体合計100重量部あたり0.2〜10重量部、より好ましくは0.5〜5重量部とする。
【0059】
透明支持体は、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリオレフィン(PO)等のポリマーにより構成された透明フィルム、ガラス板、アクリル板、メタクリルスチレン板、ポリカーボネート板、およびフッ素樹脂等所望の光学特性を満足するものであればよい。光学特性として、上記透明支持体を構成する材料の屈折率は1.3〜1.6、ヘイズは8%以下、透過率は80%以上が好ましい。また、透明支持体にアンチグレア機能をもたせてもよい。
【0060】
本発明の光拡散シートは、上記方法で作製された金型のサンドブラスト処理表面の凹凸形状が転写されたシームレスの光拡散面を備えるものであり、縦方向と横方向とで異なる拡散特性を有する。
【0061】
本発明に係るスクリーンの実施の形態として、反射型スクリーンについて説明する。
図4は、本発明に係る反射型スクリーンの構成を示す断面図である。
反射型スクリーン100は、前述した本発明の光拡散シート10と、反射シート20とが粘着剤を介して貼り合わされてなる構成である。
【0062】
反射シート20は、画像光であるプロジェクタ光に対応する複数の特定波長領域の光に対して反射特性を有し、この複数の特定波長領域を除く可視波長領域の光に対して吸収特性を有する。ここで、特定波長領域として、プロジェクタ光源で画像光として使用されるRGB三原色の各色の光の波長領域を含むことが好ましい。
【0063】
図5に、反射シート20の構成として、金属酸化物膜22Dと透過性を有する光吸収薄膜22Mからなる光学多層膜22と、反射層21とを備えた例を示す。
【0064】
ここで、反射層21は基板21Bに金属膜21Mが形成され、光学多層膜22の透過光を反射するものである。
【0065】
基板21Bは、反射シート20の支持体となるものであり、例えばポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリオレフィン(PO)等の可撓性を有するポリマーが挙げられる。
【0066】
金属膜21Mは、可視光を高い反射率で反射する金属材料であればよい。例えば、Al,Au又はAgからなり、膜厚50nm以上が好ましい。基板21B上への金属膜21Mの形成方法としては、蒸着、めっき、塗布などいずれの方法によってもよい。
また、反射層21として、図5の基板21Bに金属膜21Mが形成されたものに代えて、金属膜21Mと同じ材料からなる金属基板を使用してもよい。
【0067】
光学多層膜22は、金属酸化物膜22Dと透過性を有する光吸収薄膜22Mからなる少なくとも2層以上の選択反射特性をもつ膜である。この場合、金属酸化物膜22Dと透過性を有する光吸収薄膜22Mとが交互に積層された構造でもよく、複数種類の金属酸化物膜22Dが連続して積層された構造であってもよい。
【0068】
金属酸化物膜22Dは、少なくとも可視波長領域で透明な材料からなり、例えばNb(五酸化ニオブ)、TiO(二酸化チタン)、Ta(五酸化タンタル)、Al(酸化アルミニウム)又はSiO(二酸化シリコン)などの透明な誘電体膜、あるいはIn(酸化インジウム)、SnO(酸化錫)、ZnO(酸化亜鉛)、In−SnO化合物(ITO)、またはこれらのいずれかに金属がドープされた材料(例えば、ZnO:Al、ZnO:Gaなど)からなる透明な導電膜が用いられる。なお、金属酸化物膜22Dの屈折率が大きいほど三原色波長領域の各色光の波長領域における反射ピークの半値幅が大きくなり、屈折率が小さいほど当該半値幅が小さくなる傾向を有することから、必要とされる選択反射特性に応じて金属酸化物材料を適宜選択すればよい。
【0069】
透過性を有する光吸収薄膜22Mは、屈折率1以上、吸収係数0.5以上の材料により、好ましくは5〜20nmの膜厚に形成された薄膜である。このような材料としては、例えば、Nb,Nb系合金,C,Cr,Fe,Ge,Ni,Pd,Pt,Rh,Ti,TiN,TiN,Mn,Ru又はPbTe等が挙げられる。このような光学多層膜22の各膜は、例えばスパッタリング法などのドライプロセスにより成膜すればよい。
【0070】
光学多層膜22の各膜厚は、例えば赤色、緑色及び青色の各色の波長領域の光からなる三原色波長域光に対して、例えば反射率が50%以上の高反射特性を有するとともに、この三原色波長域光以外の波長域の光に対しては、例えば吸収率が80%以上の高吸収特性を有するように設計されている。ここで、光学多層膜22の各膜厚は、その各膜の厚さをd、その各膜の屈折率をn、この光学多層膜に入射する光の波長をλとすると、各膜の光学的厚さndが入射光の波長λに対して次式(1)を満足するように設計されるとよい。
nd=λ(α±1/4) ・・・(1)
(ただし、αは自然数である。)
【0071】
例えば、金属膜21MをAl膜(膜厚50nm)とし、光学多層膜22をNb/Nb/Nb(各膜厚:560nm/19nm/550nm(Al膜側))の3層構造とすることで、プロジェクタ光(上記レーザー発振器を用いたプロジェクタ光源からの光)について、三原色波長域光に対しては50%以上の高い反射率を有し、三原色波長域の前後の波長域光(迷光)に対しては80%以上の高い吸収率を有する反射シート20とすることができる。
【0072】
あるいは、外光がハロゲンランプの光のような場合には、吸収特性を有する波長領域を、予定光源の赤色成分の輝線ピークの波長と緑色成分の輝線ピークの波長との間、及び緑色成分の輝線ピークの波長と青色成分の輝線ピークの波長との間に配置するように光学多層膜22を設計することが好ましい。
【0073】
例えば、金属膜21MをAl膜(膜厚100nm)とし、光学多層膜22をNb/Nb/Nb(各膜厚:330nm/3nm/450nm(Al膜側))の3層構造とすることで、光源(例えばUHPランプ)の輝線スペクトルのうち、波長440nmの輝線ピークと550nmの輝線ピークとの間、及び550nmの輝線ピークと610nmの輝線ピークとの間に、より詳しくは波長570nmと600nmとの間、500nmと530nmとの間に、反射シート20の吸収特性を有する波長領域(吸収ピーク)がくるようにすることができる。
【0074】
図6に、反射シート20のその他の構成として、基板21B上にプロジェクタ光の波長領域のうち、RGB三原色の各色の光の波長領域の光に対して反射特性を有し、前記波長領域以外の光に対しては透過特性を有する光学多層膜23と、基板21Bの裏面に光吸収層24とを備えた例を示す。ここで、基板21Bは図5で示した基板と同じものでよい。
【0075】
光学多層膜23は、屈折率の異なる複数種類の光学膜が積層されたものであり、例えば高屈折率膜23Hと該高屈折率膜23Hより低い屈折率を有する低屈折率膜23Lとを交互に積層した選択反射特性を有する膜である。
【0076】
高屈折率膜23H、低屈折率膜23Lは、それぞれスパッタリング法などのドライプロセス、あるいはスピンコート、ディップコートなどのウェットプロセスのいずれの方法によっても形成することができる。
【0077】
ドライプロセスにより形成する場合には、高屈折率膜23Hの構成材料は、屈折率が2.0〜2.6程度のものであれば種々のものを用いることができる。同様に、低屈折率膜23Lの構成材料は、屈折率が1.3〜1.5程度のもので種々のものを用いることができる。例えば、高屈折率膜23Hは、TiO,Nb5又はTaからなり、低屈折率膜23Lは、SiO又はMgFからなるとすればよい。
【0078】
ドライプロセスにより形成する場合、光学多層膜23の各膜厚は、マトリクス法に基づいたシミュレーションにより光学薄膜が特定波長帯の光に対して高反射特性を有し、少なくとも該波長域光以外の可視波長域光に対しては高透過特性を有するように膜厚設計するとよい。ここでいうマトリクス法に基づいたシミュレーションとは、特開2003−270725号公報に示されている手法であり、複数の異なる材料で構成され各層の境界で多重反射が生じる多層光学薄膜系に角度θで光が入射した場合、用いる光源の種類及び波長と、各層の光学膜厚(屈折率と幾何学的膜厚との積)に依存して位相が揃い、反射光速は可干渉性を示す場合が生じ、互いに干渉しあうようになる原理に基づいた方程式を利用してシミュレーションを行い、所望の特性を有する光学膜の膜厚設計を行うものである。
【0079】
本発明においては、特定の波長領域として、プロジェクタ光源で画像光として使用されるRGB三原色の各色の光の波長領域を選択して、マトリクス法に基づいたシミュレーションによりこれらの波長領域の光のみを反射させるとともにこれらの波長領域以外の波長領域の光を透過させるように膜厚設計すればよい。このような厚みの高屈折率膜23H及び低屈折率膜23Lを重ね合わせることにより三原色波長帯域フィルターとして良好に機能する光学多層膜23を確実に実現することができる。
【0080】
また、ドライプロセスにより形成される光学多層膜23を構成する光学膜の層数は、特に限定されるものではなく、所望の層数とすることができるが、光入射側及びその反対側の最外層が高屈折率膜23Hとされる奇数層により構成されることが好ましい。
【0081】
ウェットプロセスにより光学多層膜23を形成する場合には、高屈折率膜用溶剤系塗料を塗布・硬化して得られる高屈折率膜23Hと、該高屈折率膜23Hよりも低屈折率の光学膜となる低屈折率膜用溶剤系塗料を塗布・硬化して得られる低屈折率膜23Lとを交互に積層した奇数層とするとよい。また、それぞれの光学膜は、加熱や紫外線照射などにより付与されるエネルギーを吸収して硬化反応を起こす樹脂を含む塗料を塗布して形成するとよい。例えば、高屈折率膜23Hは、熱硬化型樹脂JSR製オプスター(JN7102、屈折率1.68)により形成され、低屈折率膜23Lは熱硬化型樹脂JSR製オプスター(JN7215、屈折率1.41)により形成されるとよい。これにより光学多層膜23は可撓性を有する。
ここで、高屈折率膜23Hは、上記熱硬化型樹脂に限定されるものではなく、1.6〜2.1程度の屈折率が確保できる溶剤系塗料であればよい。また、低屈折率用膜13Lは、上記熱硬化型樹脂に限定されるものではなく、1.3〜1.59程度の屈折率が確保できる溶剤系塗料であればよい。なお、高屈折率膜23Hと低屈折率膜23Lとの屈折率の差が大きいほど、積層数が少なくすることができる。
【0082】
ウェットプロセスにより形成する場合、光学多層膜23の各膜厚は、例えば赤色、緑色及び青色の各色の波長領域の光からなる三原色波長域光に対して、例えば反射率が50%以上の高反射特性を有するとともに、この三原色波長域光以外の波長域の光に対しては、例えば透過率が80%以上の高透過特性を有するように設計されている。ここで、光学多層膜23の各膜厚は、上式(1)を満足するように設計されるとよい。
【0083】
例えば、高屈折率膜23H(屈折率1.68)の膜厚を1023nm、低屈折率膜23L(屈折率1.41)の膜厚を780nmとし、高屈折率膜23H、低屈折率膜23Lが交互に9層ずつ積層され、その積層されたものの上に高屈折率膜23Hが積層された19層構造の光学多層膜23とすることで、プロジェクタ光(上記レーザー発振器を用いたプロジェクタ光源からの光)について、三原色波長域光に対しては80%以上の高い反射率を有し、三原色波長域の前後の波長域光(迷光)に対しては反射率が20%以下の高い透過特性を有する膜とすることができる。
【0084】
光吸収層24は、基板21Bの裏面に黒色の塗料を塗布して形成された黒色塗装膜、あるいは黒色フィルムが貼りつけられたものであり、光を吸収する機能を有する。これにより、光学多層膜23を透過した光を光吸収層24が吸収し、透過光の反射を防ぐことができ、反射シート20は、より確実に三原色波長域光のみを反射光として得ることが可能となる。また、基板21Bに黒色塗料等を含有させて基板21Bの色を黒色とすることにより、基板21B自体が吸収層として機能させてもよい。
【0085】
なお、反射シート20のその他の構成として、基板21Bの両面それぞれに上記と同じ構成の光学多層膜23が形成され、そのうち一方の光学多層膜23の最外層表面に吸収層14が形成された構成としてもよい。
【0086】
以上のいずれの構成の反射シート20においても、プロジェクタ光源から投射される光に対応した、特定の波長領域(三原色波長領域)の光を光反射率で反射し、その特定波長領域以外の光(外光)を吸収することが可能である。
【0087】
なお、ここでは反射層として波長選択型の反射層である光学多層膜22及び光学多層膜23の例を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、反射層は映像光を反射できるものであればよい。例えばアルミニウムや銀などの可視光の広い波長範囲に渡って反射率の高い材料を使用した反射層が挙げられる。
【0088】
上記反射型スクリーン100によって、スクリーンのどの場所においても放出される光が目的の視野内に指向せしめるように制御されるため、高く均一な輝度やゲインを得ることができ、視認性のよいスクリーンを提供することができる。
また、該スクリーンへの入射光の表面散乱を抑制し、プロジェクタからの特定波長の光を反射し、外光などのそれ以外の波長領域の入射光を透過・吸収する選択反射が可能となり、反射型スクリーン100上の映像の黒レベルを下げて高コントラストを達成するものであり、部屋が明るい状態でもコントラストの高い映像を表示することが可能となる。例えば、グレーティング・ライト・バルブ(GLV)を用いた回折格子型プロジェクタのようなRGB光源からの光を投射した場合にスクリーン100上で広視野角で、かつコントラストが高く、外光の映り込みのない良好な映像が鑑賞できるようになる。
【0089】
すなわち、反射型スクリーン100に入射する光は、光拡散シート10を透過し、反射シート20に到達し、当該反射シート20にて入射光に含まれる外光成分は吸収され、映像に関わる特定波長領域の光のみ選択的に反射され、その反射光は光拡散シート10の表面にて拡散され視野角の広い画像光として視聴者に供される。したがって、上記反射光である画像光への外光の影響を高いレベルで排除することができ、従来にない高コントラスト化が可能となる。
【0090】
次に、本発明のスクリーンの他の実施の形態として、透過型スクリーンについて説明する。
図7は、本発明に係る透過型スクリーンの構成を示す断面図である。本発明の透過型スクリーンは、前述の本発明の光拡散シートを備え、該光拡散シートは、前記光拡散面とは反対面側からの投射光を透過して該光拡散面から拡散して放射するものである。例えば図7に示すように、支持体60上に光拡散シート50を備えた構成からなる。
【0091】
支持体60は、透過型スクリーンの支持体となるものであり、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリオレフィン(PO)等のポリマーにより構成することができる。なお、透過型スクリーンとして用いる場合には、表示装置に設置した場合に自立する必要があるため、支持体60としては0.2mm以上の厚さで剛性のある透明基材であることが望ましい。
【0092】
光拡散シート50は、上記光拡散シートの製造方法により得られるものであり、支持体50を透過した光を散乱して散乱光を得るものである。視聴者はこの散乱反射光を観察することで自然な画像を視認することができるようになる。
【0093】
例えば、本発明に係る透過型スクリーンと、最大輝度方向が面直方向で拡散特性が最大輝度軸に対して対称な従来の光拡散シートを用いた透過型スクリーンとを左右に並べて配置し、画像光を背面から投影してスクリーン正面付近から観察すると、従来の透過型スクリーンを用いた表示装置では画面の上側が明るく下側が暗いのに対し、本発明の透過型スクリーンを用いた表示装置は画面全面の輝度が高く明るい映像を得ることができる。
【0094】
この光拡散シート50における表面形状をスクリーンの位置ごとに調整することにより拡散特性を調整し、視聴者から見たスクリーン全体の輝度分布を均一にするとよい。そのためには、例えば、輝度ピークの軸ずれが、当該スクリーンの中央部方向とするとよい。すなわち、スクリーン全体の拡散特性について見た場合、スクリーンの上下左右すべての周辺部における拡散特性として透過光の輝度のピークがスクリーン中央部の方向に傾くような特徴を有しており、スクリーン中央部から周辺部にずれるほどその傾きが連続的に変化して大きくなる傾向とすればよい。
【0095】
上記本発明に係る透過型スクリーン200は、例えば、PETフィルムからなる支持体60の一方の表面に上記光拡散シート50を貼り付けることによって作製される。
【0096】
また、本発明の光拡散シートの適用範囲としては投射型表示装置に限られるものではなく、視野角を制御する必要のある表示装置、照明装置など多様な分野に応用される事が可能である。例えば、光源の配置位置に制限があり背正面に光源を配置出来ない場合、本発明により作成した光拡散シートを用いることで望みの方向に集光することが可能となる。その他、照明装置に適用した場合、部屋の隅に本発明により作成した光拡散シートを備え付けた照明を設置することで、部屋の中央を明るくする事ができ、照明効果を得ることができる。
【実施例】
【0097】
本発明の実施例を以下に説明する。なお、以下に示すものは例示であり、本発明はこれに限定されるものではない。
【0098】
(実施例1)
以下の条件で光拡散シート複製用金型を作製した。
(1)金型母材ロール:アルミロール(X2000mm×φ80mm)
(2)サンドブラスト条件
・サンドブラスト装置(不二製作所製、型名:SGF−4(A))
・研削材:アルミナ(番手#180、平均粒径:76μm)
・ブラストガンと金型母材との距離:100mm
・ブラストガンと金型母材との角度:12°
・圧縮空気圧:0.5MPa
・金型母材表面への研削材吹き付け状態:図1の状態
・ブラストガンスキャン条件:図2の状態でX方向に1.5m/secでスキャンした。
・金型母材ロール回転速度:図2の状態で60r.p.m.で回転させた。
【0099】
得られた金型表面状態を図8に示す。X軸方向とR軸方向とでその表面の凹凸形状が異なっており、X軸方向の変形形状(くぼみ)の方がR軸方向のそれよりも長くなっている状態が観察された。また、金型表面は、ロール円周方向において継ぎ目などが見えることなく加工されていた。
つぎに、この金型の表面粗さを測定した結果を図9に示す。X軸方向の表面粗さのピッチPxの方がR軸方向の表面粗さのピッチPよりも長くなっていた。また、平均凹凸間隔Smとして、X軸方向ではS=0.14、R軸方向でS=0.08となっていた。
【0100】
(実施例2)
つぎに、透明樹脂(東亞合成(株)製 紫外線硬化樹脂 UVX−4108)を使用して、実施例1の金型で紫外線硬化し、光拡散シートを作製した。
得られた光拡散シートに対して、裏面から平行光を入射し透過させ、おもて面からの出射光の拡散角を測定した。その結果を図10に示す。
光拡散シートは横方向(X軸方向)と縦方向(R軸方向)とで異なった拡散角を示し、輝度半値幅としてX軸方向では18°、Y軸方向では45°となっていた。
【0101】
(実施例3)
つぎに、以下の光学膜用塗料H,光学膜用塗料Lを使用して反射型スクリーンを製造した。
(1)光学膜用塗料H
・微粒子:TiO2微粒子
(石原産業社製、平均粒径約20nm、屈折率2.48) 100重量部(2.02 wt%)
・分散剤:SO3Na基含有分子
(重量平均分子量:1000、SONa基濃度:2×10−3 mol/g)
20重量部(0.40 wt%)
・結合剤:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとジペンタエリスリトールペンタアクリレートとの混合物
(日本化薬社製UV硬化性樹脂、商品名DPHA) 30重量部(0.61 wt%)
・有機溶媒:メチルイソブチルケトン(MIBK) 4800重量部(96.97 wt%)
まず微粒子、分散剤、有機溶媒を所定量混合し、ペイントシェーカーで分散処理を行いTiO微粒子分散液を得た。ついで、該分散液に結合剤を添加し、攪拌機にて攪拌処理を行い、塗料Hとした。
(2)光学膜用塗料L
・末端カルボキシル基をもつパーフルオロブテニルビニルエーテルの重合体
(旭硝子社製、商品名サイトップ)
【0102】
(3)反射型スクリーンの製造方法
(s11)透明支持体の両面に塗料Hをディッピング方式で塗布する。
(s12)塗料Hの塗膜を80℃で乾燥後、紫外線(UV)硬化(1000mJ/cm2)させ、片面当たり膜厚780nm、屈折率1.94の光学膜Hを形成する。
(s13)ついで、その高屈折率の光学膜H上に塗料Lをディッピング方式で塗布する。
(s14)塗料Lの塗膜を90℃で乾燥させ、膜厚1240nm、屈折率1.34の光学膜Lを形成する。
(s15)光学膜L上にステップs11と同一条件で塗料Hを塗布する。
(s16)塗料Hの塗膜をステップs12と同一条件で膜形成し、片面当たり膜厚780nm、屈折率1.94の光学膜Hを形成する。これにより透明支持体上に片面当り光学膜H/光学膜L/光学膜Hの3層、計6層の光学多層膜を得た。
(s17)上記光学多層膜の一方の表面に粘着層を介して実施例2の光拡散シートを貼り合わせる。
(s18)上記光学多層膜の他方の表面に黒色塗料をスプレー法により塗布し、黒色光吸収層とし、反射型スクリーンとした。
【0103】
得られた反射型スクリーンに対して、画像光を投影して、スクリーン正面付近から観察したところ、特定の場所で均一で高い輝度の画像を見ることができ、反射画像光が特定の視野内に指向せしめるように制御されていることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】本発明に係る光拡散シート複製用金型の製造方法における金型母材ロールに対するサンドブラスト加工の状態を示す概略図(1)である。
【図2】本発明の光拡散シート複製用金型の製造方法におけるブラストガンのスキャン状態を示す概略図である。
【図3】本発明に係る光拡散シート複製用金型の製造方法における金型母材ロールに対するサンドブラスト加工の状態を示す概略図(2)である。
【図4】発明に係る反射型スクリーンの構成を示す断面図である。
【図5】反射シート1の光学膜構成(1)を示す断面図である。
【図6】反射シート1の光学膜構成(2)を示す断面図である。
【図7】本発明に係る透過型スクリーンの構成を示す断面図である。
【図8】実施例1の光拡散シート複製用金型の表面状態を示す図である。
【図9】実施例1の光拡散シート複製用金型の表面粗さを示す図である。
【図10】実施例2の光拡散シートの拡散角を示す図である。
【符号の説明】
【0105】
1…金型母材、2…ブラストガン、3…研削材、10,50…光拡散シート、20…反射シート、21B…基板、21M…金属膜、22,23…光学多層膜、22D…誘電体膜、22M…光吸収薄膜、23H…高屈折率膜、23L…低屈折率膜、24…光吸収層、100…反射型スクリーン、200…透過型スクリーン、A…回転軸、L…研削材射出軸、T…外周接線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光拡散シートを複製するのに用いられる金型の製造方法において、
円筒形状の金型母材ロール表面にブラストガンから研削材を吹き付けて前記金型母材ロール表面に凹凸を形成するサンドブラスト加工を行うことよりなり、
前記金型母材ロール表面における研削材の吹き付け角度が、該金型母材ロールの回転軸に対してすべて90°未満となるようにしたことを特徴とする光拡散シート複製用金型の製造方法。
【請求項2】
前記ブラストガンを、該ブラストガンからの研削材射出軸と前記金型母材ロールの回転軸とが同一平面内となるように配置し、前記両軸のなす角を0〜60°としてサンドブラスト加工を行うことを特徴とする請求項1に記載の光拡散シート複製用金型の製造方法。
【請求項3】
光拡散シートを複製するのに用いられる金型の製造方法において、
円筒形状の金型母材ロール表面にブラストガンから研削材を吹き付けて前記金型母材ロール表面に凹凸を形成するサンドブラスト加工を行うことよりなり、
前記金型母材ロール表面における研削材の吹き付け角度が、該金型母材ロールの回転軸と直交する外周接線に対してすべて90°未満となるようにしたことを特徴とする光拡散シート複製用金型の製造方法。
【請求項4】
前記ブラストガンを、該ブラストガンからの研削材射出軸と前記金型母材ロールの回転軸と直交する外周接線とが同一平面内となるように配置し、前記研削材射出軸と前記接線とのなす角を0〜60°としてサンドブラスト加工を行うことを特徴とする請求項3に記載の光拡散シート複製用金型の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一に記載の光拡散シート複製用金型の製造方法により製造された金型を直接または間接に用いて光拡散シートを複製することを特徴とする光拡散シートの製造方法。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか一に記載の光拡散シート複製用金型の製造方法により製造された金型のサンドブラスト処理表面の凹凸形状が転写されたシームレスの光拡散面を備えることを特徴とする光拡散シート。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれか一に記載の光拡散シート複製用金型の製造方法により製造された金型のサンドブラスト処理表面の凹凸形状が転写されたシームレスの光拡散面を備える光拡散シートと、該光拡散シートの光拡散面とは反対面側に設けられた反射層とを備えたことを特徴とするスクリーン。
【請求項8】
請求項1〜4のいずれか一に記載の光拡散シート複製用金型の製造方法により製造された金型のサンドブラスト処理表面の凹凸形状が転写されたシームレスの光拡散面を有する光拡散シートを備え、該光拡散シートは、前記光拡散面とは反対面側からの投射光を透過して該光拡散面から拡散して放射するものであることを特徴とするスクリーン。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2006−335028(P2006−335028A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−165405(P2005−165405)
【出願日】平成17年6月6日(2005.6.6)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】