説明

光拡散板の製造方法

【課題】押出成形時におけるメヤニの発生を抑制し、表面不良の発生を低減することが可能な光拡散板の製造方法、この方法により得ることのできる光拡散板、これを備えた面光源装置及び、透過型画像表示装置を提供する。
【解決手段】光拡散板の製造方法は、粒子成分と熱可塑性樹脂とを溶融混練する溶融工程と、溶融工程において溶融混練された溶融樹脂を、ダイリップ64における先端のリップエッジ64bから連続的に押し出して樹脂シートを成形する押出工程とを備えている。押出工程では、溶融樹脂の押出方向に沿った断面形状が半径50μm以下の円弧状に形成されたリップエッジ64bから当該溶融樹脂を押し出す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光拡散板の製造方法、光拡散板、これを備えた面光源装置及び透過型画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
透過型画像表示装置の一例である直下型画像表示装置として、透過型画像表示部の背面側に光源が配置されたものが広く用いられている。かかる直下型画像表示装置としては、光源からの光を均一に分散させて透過型画像表示部を均一に照明できることが望ましい。このため光源と透過型画像表示部との間には、光源側から入射する光を、その向きを変えて反対側の透過型画像表示部側から出射させる機能を有する光拡散板が配置されていることが一般的である(例えば特許文献1:特開平7−198913号公報参照)。
【0003】
このような光拡散板は、押出成形法により製造され得る。具体的には、溶融樹脂をシート状に押し出すことによって製造される樹脂シートを、所定の長さに切り出すことで光拡散板を製造し得る(例えば特許文献2:国際公開07/057960号パンフレット参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−198913号公報
【特許文献2】国際公開07/057960号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記に示した押出成形法では、溶融樹脂の押出口であるダイリップにおいて、溶融樹脂の一部が熱劣化した黒色の物体が形成され、メヤニが付着したような状態となることがある。このような、いわゆる「メヤニ」がダイリップに付着する現象は、粒子成分が含まれた溶融樹脂を押出す際に特に顕著に現れる。そして、このメヤニは、ダイリップから押出される樹脂シートに接触したり付着したりすることにより、樹脂シートの表面に不良を発生させるという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、押出成形時におけるメヤニの発生を抑制し、表面不良の発生を低減することが可能な光拡散板の製造方法、この方法により得ることのできる光拡散板、これを備えた面光源装置及び、透過型画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、いわゆる「メヤニ」の発生が、溶融樹脂に含まれる粒子成分とダイリップにおけるエッジ形状とに起因することを見出した。すなわち、粒子成分を含む溶融樹脂をエッジから押し出すと、樹脂シートの表面から粒子成分が浮き上がり、当該粒子成分とエッジ表面と上記表面との間に微小な空間が形成される。この空間に溶融樹脂が滞留するとメヤニが発生する。
【0008】
そこで、本発明に係る光拡散板の製造方法では、拡散性能を備えるための粒子成分を含む光拡散板の製造方法であって、粒子成分と熱可塑性樹脂とを溶融混練する溶融工程と、溶融工程において溶融混練された溶融樹脂を、ダイリップにおける先端のエッジから連続的に押し出して光拡散板となる樹脂シートを成形する押出工程と、を備え、押出工程では、溶融樹脂の押出方向に沿った断面形状が半径50μm以下の円弧状に形成されたエッジから当該溶融樹脂を押し出す。
【0009】
この光拡散板の製造方法では、エッジの溶融樹脂の押出方向に沿った断面形状を半径50μm以下の円弧状に形成することにより、上述した粒子成分とエッジ表面と表面との間の微小な空間をなくすことができるので、この空間に溶融樹脂が滞留することを抑制することができる。この結果、押出成形時において、エッジ部分にメヤニが発生することが抑制され、表面不良の発生を低減させることが可能となる。
【0010】
本発明に係る光拡散板の製造方法では、エッジにおける断面形状の半径を、粒子成分の粒径に基づいて形成することができる。
【0011】
この光拡散板の製造方法は、当該粒子成分とエッジ表面と上記表面との間に形成される微小な空間の有無は、粒子成分の粒径の大きさとエッジの形状との関係によることに着目して、粒子成分の粒径の大きさに合わせてエッジの形状が形成される。これにより、当該粒子成分とエッジ表面と上記表面との間に微小な空間が形成されることを防止できるので、より効果的にメヤニの発生を抑制することができる。
【0012】
本発明に係る光拡散板の製造方法では、押出工程において、溶融樹脂がISO4287:1997で規定される算術平均粗さが50μm以下の面によって形成される流路を経てエッジから押し出されるようにしてもよい。
【0013】
この光拡散板の製造方法では、エッジに至るまでの流路において溶融樹脂が滞留することを抑制できる。これにより、より効果的にメヤニが発生することを抑制することができる。
【0014】
本発明に係る光拡散板の製造方法では、溶融工程において、粒径が10μm以上の粒子成分と熱可塑性樹脂とを溶融混練することができる。
【0015】
本発明に係る光拡散板の製造方法では、溶融樹脂に添加されることが多い粒径が10μm以上の粒子成分を含む場合であっても、メヤニの発生を抑制することができる。
【0016】
本発明はまた、上記本発明に係る製造方法により得ることのできる光拡散板に関する。本発明に係る光拡散板は、表面不良の発生が低減されるので高品質に製造される。
【0017】
本発明はまた、上記光拡散板と、互いに離間して配置されており、光拡散板に光を供給する複数の光源を有する光源部と、を備えている、面光源装置とすることができる。この構成では、上記光拡散板を備えているので、光源の光を均一に分散して出射することが可能となる。
【0018】
本発明はまた、上記面光源装置と、複数の光源から出力され光拡散板を通過した光によって照明される透過型画像表示部と、を備えている、透過型画像表示装置とすることができる。この構成では、上記の光拡散板を備えているので、光源の光を均一に分散して出射し、透過型画像表示部を照明することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、押出成形時において、メヤニの発生を抑制し、表面不良の発生を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る光拡散板の製造方法により製造される光拡散板を含む透過型画像表示装置の一実施形態の構成を模式的に示す断面図である。
【図2】本発明に係る光拡散板の一実施形態を示す断面図である。
【図3】本発明に係る光拡散板の製造方法の一工程を示すための説明図である。
【図4】本発明に係る光拡散板の製造方法で使用する製造装置の一部を拡大した側面断面図である。
【図5】本発明に係る光拡散板の製造方法の一工程を示すフローチャートである。
【図6】メヤニが発生するメカニズムを説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。また、図面の寸法比率は、説明のものと必ずしも一致していない。また、説明中「上」、「下」等の方向を示す語は、図面に示された状態に基づいた便宜的な語である。
【0022】
〔透過型画像表示装置〕
図1は、本発明に係る光拡散板の製造方法により製造される光拡散板を含む透過型画像表示装置の一実施形態の構成を模式的に示す断面図であり、透過型画像表示装置を分解して示している。最初に、本実施形態に係る製造方法によって製造される光拡散板40を含む透過型画像表示装置1の構成について、図1を参照しながら説明する。透過型画像表示装置1は、図1に示すように、透過型画像表示部10と、透過型画像表示部10の背面側に対向して配置された面光源装置20とを備えている。以下の説明では、図1に示すように、面光源装置20と透過型画像表示部10の配列方向をz軸方向(板厚方向)と称し、z軸方向に直交する2方向であって互いに直交する2方向をx軸方向及びy軸方向と称す。
【0023】
透過型画像表示部10は、面光源装置20から出力された光によって照明されることにより画像を表示する。透過型画像表示部10としては、例えば液晶セル11の両面に直線偏光板12,13が配置されたカラー液晶表示パネルが挙げられる。この場合、透過型画像表示装置1は、液晶表示装置(又は液晶テレビ)である。液晶セル11及び偏光板12,13は、従来の液晶表示装置等の透過型画像表示装置で用いられているものを用いることができる。液晶セル11としてはTFT(Thin Film Transistor)型、STN(Super TwistedNematic)型等の公知の液晶セルが例示される。
【0024】
面光源装置20は、いわゆる直下型の面光源装置であり、並列配置された複数の光源31を含む光源部30を有する。各光源31は、複数の光源31の配列方向に直交する方向に延在している線状光源であり、蛍光ランプ(冷陰極線ランプ)のような直管状のものが例示される。複数の光源31は各光源31の中心軸線が同一の平面内に位置するように間隔をあけて配置されており、隣接する2つの光源31,31の中心軸線間の距離をL1とした場合、距離L1は、例えば15mm〜150mmである。ここでは、光源31は線状としたが、LEDのような点光源などを用いることも可能である。なお、図1中に示した平面(一点鎖線)は説明の便宜のためであり、仮想的な平面である。
【0025】
複数の光源31は、図1に示すように、ランプボックス32内に配置されていることが好ましく、ランプボックス32の内面32aは、光散乱反射面として形成されていることが好ましい。これにより、各光源31から出力された光が透過型画像表示部10側に確実に出力されるため、各光源31からの光を効率的に利用することが可能となるからである。本実施形態では、光源部30は、上記好ましい構成のランプボックス32を有するものとして説明する。
【0026】
面光源装置20は、光源部30の前面側(図1では上側)、すなわち、透過型画像表示部10側に光源31に対して離間して配置された光拡散板40を有している。上記光拡散板40と複数の光源31との間の離間距離をDとした場合、離間距離Dは、例えば5mm〜50mmである。面光源装置20では、薄型化を図るため、L1/Dが1.5以上であり、好ましくは、L1/Dは2.5以上となるように、隣接する2光源31,31間の距離L1及び離間距離Dが選択されている。
【0027】
光拡散板40は、光源部30からの光、すなわち、各光源31からの直接光及びランプボックス32の内面32aで反射した反射光を透過型画像表示部10に向けて拡散照射するためのものである。光拡散板40の厚さd1は、1.0mm〜4.0mm程度である。
【0028】
次に、光拡散板40の構成について、図2を用いて説明する。光拡散板40は、中間層41及び表層42が、光源部30の前面側(図1では上側)から表層42、中間層41、表層42の順に積層されてなる積層体(多層体)である。すなわち、光拡散板40は、中間層41が表層42によって挟まれた2種3層の構造を有する。
【0029】
光拡散板40を構成する中間層41は、熱可塑性樹脂からなる。光拡散板40を構成する表層42は、拡散性能を備えるための粒子成分が含まれる熱可塑性樹脂からなる。熱可塑性樹脂としては、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリカーボネイト樹脂、ABS樹脂(アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン共重合体樹脂)、MS樹脂(メタクリル酸メチル−スチレン共重合体樹脂)、AS樹脂(アクリロニトリル−スチレン共重合体樹脂)、環状ポリオレフィン樹脂、環状ポリオレフィン共重合体などが例示される。
【0030】
拡散性能を備えるための粒子成分としては、光を拡散させるための凹凸面を形成する機能を有するマット化剤や、粒子自体が光を拡散させる効果を有する拡散剤等の添加剤が例示される。上記マット化剤としては、架橋アクリル樹脂などが例示され、その粒径は通常10μm〜50μmである。また、上記拡散剤としては、光拡散板40を主に構成する上述したような熱可塑性樹脂とは屈折率が異なる粉末が用いられる。例えば、スチレン樹脂粒子、メタクリル樹脂粒子などの有機粒子、炭酸カリウム粒子、シリカ粒子、シリコーン樹脂粒子などの無機粒子が用いられ、その粒径は、通常5μm〜50μmである。本実施形態においては、粒径が30μmのマット化剤が熱可塑性樹脂に添加されるものとして以下の説明を行う。
【0031】
上記マット化剤の粒径は、例えば、粒度分布測定装置(コールター社製:コールターカウンターマルチマイザーII)を使用し、アパーチャ径200μmの条件で測定した粒度分布の測定値から算出することができる。この方法により算出されたマット化剤の粒径は、29.3μmであった。
【0032】
また、熱可塑性樹脂には、本発明の趣旨を逸脱しなければ、帯電防止剤、酸化防止剤、加工安定剤、難燃剤、滑剤などの添加剤を添加することもできる。これらの添加剤はそれぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0033】
〔光拡散板の製造方法〕
次に、本実施形態に係る光拡散板の製造方法について、図3〜図5を用いて説明する。まず、光拡散板40を製造するための装置について説明する。図3(a)は、光拡散板となるべき樹脂シートを製造する製造装置の一例の概略構成図である。光拡散板40は、図3(a)に示すような樹脂シート製造装置60によって製造された樹脂シート70を所定の長さに切り出すことで製造される。
【0034】
樹脂シート製造装置60は、中間層71(図3(b)参照)となる熱可塑性樹脂を加熱溶融するためのスクリュー径が40mmの第1押出機61と、表層72(図3(b)参照)となる熱可塑性樹脂を加熱溶融するためのスクリュー径が20mmの第2押出機62と、第1及び第2押出機61,62から供給される溶融樹脂をシート状に押し出すためのマルチマニホールドダイといったダイ63と、ダイ63から押し出されたシート状の樹脂シート70を成形するための第1押圧ロール67、第2押圧ロール68及び第3押圧ロール69を備えている。第1押圧ロール67、第2押圧ロール68及び第3押圧ロール69は、各ロールの軸が略平行に配置されている。第1押圧ロール67及び第2押圧ロール68の表面は鏡面であり、第3押圧ロール69の表面は凹凸面である。
【0035】
図4(a)は、溶融樹脂の押出方向に沿った側面から見たダイリップの拡大断面図である。図4(b)は、ダイリップのエッジ部分P1を拡大して示した側面断面図である。ダイ63は、図3(a)に示すように、溶融樹脂の押出方向における先端部Pに、図4(a)に示すような、上記溶融樹脂を樹脂流路65から押し出す部分としてのダイリップ64を有している。ダイリップ64は、図4(b)に示すように、溶融樹脂の樹脂流路65の中心線(図4(b)における一点鎖線)に対して対称に形成される流路面64aと、大気に接するリップ面64cと、流路面64aとリップ面64cとをつなぐコーナー部分であるリップエッジ(エッジ)64bとを有している。
【0036】
樹脂流路65は、押出方向に直交する断面が矩形形状に形成されており、上面及び下面と上面及び下面に直交する左側面及び右側面とを、流路面64aとして有している。樹脂流路65を形成する流路面64aのうち少なくとも上面は、ISO4287:1997で規定される算術平均粗さRaが10μmの表面粗さの面に形成されている。上記の算術平均粗さRaに形成される流路面64aの押出方向におけるリップエッジ64bからの長さL2は、100mm以上であることが好ましい。
【0037】
リップエッジ64bの曲率半径Rは、50μm以下に形成され、本実施形態においては10μmに形成されている。ここでいう曲率半径Rは、リップエッジ64bを面取りしたコーナー部分の半径を示している。すなわち、リップエッジ64bは、溶融樹脂の押出方向に沿った断面形状が半径10μmの円弧状に形成されている。リップエッジ64bは、面取り加工を施すことにより、上記曲率半径Rを有するリップエッジ64bとしてもよいし、ISO4287:1997で規定される算術平均粗さRaが10μmの面に表面仕上げをすることにより、上記曲率半径Rを有するリップエッジ64bとしてもよい。
【0038】
次に、光拡散板40の製造工程について説明する。本実施形態における光拡散板40の製造工程は、図5に示すように、準備工程S1と、溶融工程S2と、押出工程S3と、切出工程S4とを有している。以下、S1〜S4の工程について順に説明する。
【0039】
まず、準備工程S1では、熱可塑性樹脂としてのスチレン系樹脂と、添加剤としてのマット化剤、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤、及び熱安定剤を準備する。次いで、スチレン系樹脂、マット化剤、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤、及び熱安定剤をハンドブレンドする。そして、その混合物をスクリュー径30mmの造粒機にて190℃〜230℃で溶融混練し、マット化剤等の粒子成分を含むマスターバッチペレットを作製する。
【0040】
次に、溶融工程S2では、スチレン系樹脂をシリンダ内の温度が200℃〜245℃の第1押出機61で溶融混練して、ダイ63に供給する。同様に、上記マスターバッチペレットをシリンダ内の温度が200℃〜245℃の第2押出機62で溶融混練して、ダイ63に供給する。
【0041】
次に、押出工程S3では、上記第1押出機61から供給される溶融樹脂が中間層71となり、上記第2押出機62から供給される溶融樹脂が表層72となるように、ダイ63によりダイ温度245℃で共押出成形を行う。共押出された溶融樹脂は、曲率半径Rが10μmに形成されたリップエッジ64bを有するダイリップ64から押し出される。そして、共押出成形された樹脂を第1押圧ロール67、第2押圧ロール68、及び第3押圧ロール69で挟圧と冷却とを行うことによって、図2に示す中間層41となる中間層71及び図2に示す表層42となる表層72によって構成される2種3層の光拡散板40となる樹脂シート70を得る。
【0042】
次に、切出工程S4では、押出工程S3で得ることのできる樹脂シート70を、所定の長さに切り出すことによって光拡散板40を製造する。
【0043】
次に、上記光拡散板の製造方法の作用効果について、図6を用いて説明する。ここで、ダイリップにメヤニが発生するメカニズムについて説明する。本願発明者らは、メヤニがダイリップに付着する現象は、粒子成分が含まれた溶融樹脂を押出す際に特に顕著に現れることに着目し、鋭意検討を重ねた結果、メヤニの発生メカニズムを見出した。見出したメヤニの発生メカニズムは以下のとおりである。
【0044】
図6(a)に示すように、溶融樹脂45及び溶融樹脂45に含まれる、例えばマット化剤といった粒径φが30μmの粒子成分46は、樹脂通路165を経てダイ163の押出口であるダイリップ164から押し出される。このとき、樹脂シート70の表面70aから粒子成分46が浮き上がり、当該粒子成分46とリップエッジ164bと上記表面70aとの間に微小な空間Sが形成される。そして、この空間Sに溶融樹脂45の一部45aが滞留し、熱劣化して硬化することによりメヤニが発生する。
【0045】
上記に記載したメヤニの発生メカニズムを踏まえ、本実施形態の光拡散板の製造方法では、図6(b)に示すように、曲率半径Rが50μm以下の10μmに形成されたリップエッジ64bから粒径φが30μmの粒子成分46を含む溶融樹脂45を押し出す方法とした。これにより、図6(b)に示すように、樹脂シート70の表面70aから浮き上がった粒子成分46とリップエッジ64bと上記表面70aとの間に微小な空間が形成されることを防止して、溶融樹脂45の一部45aが滞留することを抑制することができる。この結果、押出成形時において、リップエッジ64bにメヤニが発生することが抑制され、表面の外観を損なうといった表面不良の発生を低減させることが可能となる。
【0046】
また、上記光拡散板の製造方法では、少なくとも上面がISO4287:1997で規定される算術平均粗さRaが50μm以下の10μmの表面粗さの面に形成された流路面64aからなる樹脂流路65を経て、リップエッジ64bから押し出す方法とした。これにより、リップエッジ64bに至るまでの樹脂流路65において溶融樹脂が滞留することを抑制でき、より効果的に、粒子成分を含む側の表面にメヤニが発生することを抑制することができる。
【実施例】
【0047】
次に、光拡散板40の製造方法について、上記作用効果が具体的に得られる点について、実施例を基に説明する。以下、実施例1及び比較例1について説明する。
【0048】
本実施例では、以下に示すものを最初に準備した。
<光拡散板の原材料>
光拡散板の材料として以下の(1)〜(6)のものを用意した。
(1)熱可塑性樹脂A
スチレン樹脂(東洋スチレン株式会社製:HRM40)
(2)マット化剤B
マット化剤(積水化成品工業株式会社製:XX−335K、粒径:30μm)
(3)紫外線吸収剤C
紫外線吸収剤(ADEKA社製:LA−31)
(4)光安定剤D
ヒンダードアミン系光安定剤(BASFジャパン社製:TINUVIN770)
(5)熱安定剤E
熱安定剤(住友化学株式会社製:スミライザーGP)
(6)マスターバッチペレットF
90.4重量部の熱可塑性樹脂A、8.0重量部のマット化剤B、1.0重量部の紫外線吸収剤C、0.5重量部のヒンダードアミン系光安定剤D、0.1重量部の熱安定剤Eをハンドブレンドした後、スクリュー径30mmφの造粒機にて190℃〜230℃で溶融混練し、マスターバッチペレットFを作製した。
【0049】
次に、マット化剤Bの粒径について、測定試料1gをアイソトン溶液200cc中に入れ、超音波洗浄装置で10分間の分散処理を行った後、粒度分布測定装置(コールター社製:コールターカウンターマルチマイザーII)を使用して、アパーチャ径200μmの条件で測定を行った。測定された粒度分布の中心粒径(D50%)を算出すると、その粒径は、29.3μmであった。
【0050】
<実施例1>
図3(a)に示した樹脂シート製造装置60を用いて、光拡散板40としての樹脂シート70を製造した。まず、100重量部の熱可塑性樹脂Aをスクリュー径40mmの単軸押出機61にて200℃〜245℃で溶融混練した。次に、マスターバッチペレットFをスクリュー径が20mmの単軸押出機61にて200℃〜245℃で溶融混練した。そして、溶融混練した上記熱可塑性樹脂A及び上記マスターバッチペレットFをダイ63に供給し、ダイ温度245℃で2種3層の構造の樹脂シート70を連続的に共押出した。
【0051】
このとき、樹脂シート製造装置60が備えるダイ63におけるダイリップ64のリップ長(幅)及びリップエッジ64bの曲率半径Rを、それぞれ250mm、10μmに形成した。そして、上記形状に形成されたダイリップ64から樹脂シート70を共押出したときのリップエッジ64bにおけるメヤニの発生状況を目視観察した。この目視による観察結果を下記の表1に示す。表1は、観察スタート時(0分)、60分後、120分後、240分後におけるメヤニの発生状況を示したものである。
【0052】
<比較例1>
上記実施例1と同様の方法で、2種3層の構造の樹脂シート70を連続的に共押出した。比較例1では、樹脂シート製造装置60が備えるダイ63におけるダイリップ64のリップ長(幅)及びリップエッジ64bの曲率半径Rを、それぞれ250mm、100μmに形成した。そして、上記実施例1と同様に、上記形状に形成されたダイリップ64から樹脂シート70を共押出したときの、リップエッジ64bにおけるメヤニの発生状況を目視観察した。この目視による観察結果を下記の表1に示す。
【表1】

【0053】
(評価結果)
上記表1に示すとおり、リップエッジ64bの曲率半径Rが50μm以下の10μmに形成されたダイリップ64から樹脂シート70を押し出す実施例1の製造方法では、樹脂シート70を長時間押し出しても、リップエッジ64bにメヤニの発生は観察されなかった。これに対し、リップエッジの曲率半径Rが50μmよりも大きな100μmに形成されたダイリップ164から樹脂シート70を押し出す比較例1の製造方法では、60分を経過したあたりからリップエッジ164bにメヤニが発生し始め、時間経過と共にメヤニの量が増加していくことが確認できた。
【0054】
本発明に係る実施例1の製造方法では、リップエッジ64bの曲率半径Rが50μm以下に形成されたダイリップ64から樹脂シート70を押し出すことによって、メヤニの発生を抑制できることが明らかとなった。
【0055】
以上、本発明の一実施形態及び一実施例について説明したが、本発明は、上記実施形態及び実施例に限られるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0056】
例えば、上記実施形態においては、粒径φが30μmのマット剤が添加された熱可塑性樹脂を、リップエッジ64bの曲率半径Rが10μmに形成されたダイリップ64から押し出す例を挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。上述したように、樹脂シート70の表面70aから浮き上がる粒子成分46とリップエッジ64bと上記表面70aとの間に形成される微小な空間Sの有無は、粒子成分46の粒径φの大きさに対するリップエッジ64bの曲率半径Rの大きさによる。すなわち、粒子成分46の粒径φが大きいほど、リップエッジ64bの曲率半径Rは小さく形成されることが要求される。したがって、溶融樹脂45に添加される粒子成分46の粒径φに基づいて、上記空間が形成されないようなリップエッジ64bの曲率半径Rを40μmや30μm等に形成することができる。
【0057】
また、上記実施形態では、図2に示すような中間層41の両側に表層42が設けられた2種3層の構造を有する積層板である光拡散板40を製造する例を挙げて説明したがこれに限定されるものではなく、例えば、2種2層や2種5層等、他の層構成を有する光拡散板であってもよい。
【0058】
また、上記実施形態では、本発明に係る拡散板が直下型の面光源装置(バックライト)用の光拡散板として好適に用いられる例を挙げて説明したが、特にこのような用途に限定されるものでない。また、上記実施形態では、本発明に係る面光源装置(ランプボックス)は、透過型画像表示装置(液晶表示装置)用の面光源装置として好適に用いられる例を挙げて説明したが、特にこのような用途に限定されるものではない。例えば、拡散板は、照明カバー、看板、パーテーションなどに適用されてもよい。また、面光源装置は、インストルメントパネル、計器盤などに適用することもできる。
【符号の説明】
【0059】
1…透過型画像表示装置、10…透過型画像表示部、11…液晶セル、12,13…偏光板、20…面光源装置、30…光源部、31…光源、32…ランプボックス、32a…内面、40…光拡散板、41…中間層、42…表層、45…溶融樹脂、46…粒子成分、60…樹脂シート製造装置、61…第1押出機、62…第2押出機、63…ダイ、64,164…ダイリップ、64a…流路面、64b,164b…リップエッジ、64c…リップ面、65…樹脂通路、67…第1押圧ロール、68…第2押圧ロール、69…第3押圧ロール、70…樹脂シート、70a…表面、71…中間層、72…表層、S1…準備工程、S2…溶融工程、S3…押出工程、S4…切出工程。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
拡散性能を備えるための粒子成分を含む光拡散板の製造方法であって、
前記粒子成分と熱可塑性樹脂とを溶融混練する溶融工程と、
前記溶融工程において溶融混練された溶融樹脂を、ダイリップにおける先端のエッジから連続的に押し出して前記光拡散板となる樹脂シートを成形する押出工程と、
を備え、
前記押出工程では、前記溶融樹脂の押出方向に沿った断面形状が半径50μm以下の円弧状に形成された前記エッジから当該溶融樹脂を押し出す、光拡散板の製造方法。
【請求項2】
前記エッジにおける前記断面形状の半径は、前記粒子成分の粒径に基づいて形成されている、請求項1記載の光拡散板の製造方法。
【請求項3】
前記押出工程では、前記溶融樹脂は、ISO4287:1997で規定される算術平均粗さが50μm以下の面によって形成される流路を経て前記エッジから押し出される、請求項1または2に記載の光拡散板の製造方法。
【請求項4】
前記溶融工程では、粒径が10μm以上の前記粒子成分と前記熱可塑性樹脂とを溶融混練する、請求項1〜3の何れか1項に記載の光拡散板の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項に記載の光拡散板の製造方法により得ることのできる光拡散板。
【請求項6】
請求項5に記載の光拡散板と、
互いに離間して配置されており、前記光拡散板に光を供給する複数の光源を有する光源部と、
を備えている、面光源装置。
【請求項7】
請求項6に記載の面光源装置と、
前記複数の光源から出力され前記光拡散板を通過した光によって照明される透過型画像表示部と、
を備えている、透過型画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−67061(P2013−67061A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−206478(P2011−206478)
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】