説明

光断層計測装置

【課題】簡単な構成で計測対象とする生体から発せられる蛍光に基づいて、蛍光の濃度分布の再構成を高精度で行う光断層計測装置。
【解決手段】計測ヘッド部22には、励起光を発する発光ヘッド68及び蛍光の波長の光を発する発光ヘッド96を備えた光源ユニット40及び、励起光が照射されることによりマウス12から発せられる蛍光を受光する受光ヘッド72を備えた複数の受光ユニット42が放射状に配置されている。光断層計測システムでは、この発光ヘッド96から発せられてマウスに照射された後、マウスを透過した光を、マウスを挟んで光源ユニットと対向している受光ユニット42Fで受光することにより光透過量を計測し、この光透過量に基づいて計測ヘッド部が対向しているマウスの体長方向に沿った部位を特定し、特定した部位に対して設定されている光学特性値を用いて、マウス内の蛍光の濃度分布の再構成を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、励起光を照射することにより計測対象となる生体から発せられる蛍光を計測して、光断層画像の再構成を行う光断層計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
生体組織は、近赤外線などの所定波長の光に対して透過性を有することが知られている。ここから、特許文献1、特許文献2などでは、光を用いた生体内の観察が提案されている(光トモグラフィー:光CT)。
【0003】
光CTでは、生体内の光の吸収係数の分布を得るものであり、ファントムモデルを用いてえられる検出光量と測定対象物から得られる検出光量から、測定対象である散乱吸収体内部の吸収係数分布を求めている。
【0004】
特許文献3、特許文献4では、測定対象の一点に対して相対的に同じ位置関係にある光入射位置と光検出位置との複数の組み合わせによって、それぞれの光入射位置から入射されて測定対象を透過することにより光検出位置で検出される複数の測定値の平均値を、吸収係数分布や等価散乱係数の分布などの内部特性分布を求めるための基準値とすることにより、ファントムモデル等の基準とする計測対象を用いることなく、吸収係数分布の再構成を行うように提案している。
【0005】
また、生体組織の光透過性を用いた断層像測定装置としては、試料に対して励起レーザ光を照射し、この励起光が計測対象内の蛍光源で散乱されることにより発せられる蛍光のうち、散乱光を除去して得られる平面波のフランフォーファ回折像の0次光を取り込むことにより、光断層像を得る蛍光断層像測定装置が提案されている(例えば、特許文献5参照。)。
【0006】
一方、腫瘍部分などの病変部位に特異的に付着する抗体に蛍光物質を付与した蛍光標識剤を用い、この蛍光標識剤を生体に投与することにより、生体から発せられる蛍光の濃度分布から、生体中での蛍光標識剤の移動、特定部位への集積/離散過程を観察することができる。
【0007】
生体中での蛍光標識剤の濃度分布(以下、蛍光の濃度分布とする)を得る場合、生体の表面の一点へ励起光を照射し、これにより生体から放出される蛍光の強度を生体の周囲の多点で検出する。これを、励起光の照射位置を変えながら繰返し行うことにより得られる計測データの間には、蛍光標識剤の分布、生体内での光の散乱特性、及び生体内での光の吸収特性に応じた関係が成り立つ。この関係を用いて、計測データから蛍光の濃度分布を示す断層画像の再構成を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−173976号公報
【特許文献2】特開平11−337476号公報
【特許文献3】特開平10−026585号公報
【特許文献4】特開平11−311569号公報
【特許文献5】特開平05−223738号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
蛍光CTにおいて、断層画像の再構成を行う場合、励起光の強度分布及び蛍光の強度分布を、光の拡散方程式に基づいた逆問題演算で得ることができる。この逆問題演算では、生体内の光の吸収係数μa及び散乱係数(等価散乱係数μs’)を未知数として、この吸収係数μa及び等価散乱係数μs’の演算を行い、この演算結果に基づいて蛍光の濃度分布を得るようにしている。
【0010】
蛍光の濃度分布を得るときに励起光の強度及び蛍光の強度のそれぞれを多数箇所で計測し、それぞれの計測結果を用いて2系統での逆問題演算を行うことは、計測作業に時間が掛かると共に、演算時間も長くなる。
【0011】
ここで、予め吸収係数μa及び等価散乱係数μs’を特定できれば、励起光の強度を計測せずに、蛍光の強度のみを計測することにより、蛍光の濃度分布の再構成が可能となる。このときに、蛍光の計測結果に基づいた1系統の逆問題演算によって行うことができ、計測のための装置の簡略化が可能となると共に、演算負荷が軽減されて演算時間の短縮が可能となる。
【0012】
しかしながら、生体では臓器によって光の吸収係数μa及び等価散乱係数μs’が異なる。このために、吸収係数μa及び等価散乱係数μs’を適正に設定できなければ、精度の良い断層画像の再構成が困難となってしまう。
【0013】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、簡単な構成で計測対象とする生体から発せられる蛍光を計測して、精度の良い光断層画像を再構成しうる光断層計測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために本発明は、蛍光標識剤が投与された計測対象の生体の体長方向と交差する計測面上となるように光軸が配置され、前記計測対象へ励起光を照射する励起光光源と、それぞれの光軸が前記計測面上となるように配置され、前記励起光光源から照射された前記励起光により前記蛍光標識剤から発せられて前記計測対象から周囲に放出される蛍光を受光する複数の蛍光受光手段と、前記蛍光受光手段のそれぞれで受光された前記蛍光の強度及び前記計測対象の光学特性値に基づいて前記計測面上の蛍光の濃度分布を再構成する再構成手段と、前記計測対象を挟んで前記蛍光受光手段の何れかに対向され光軸が前記計測面上となるように設けられ、該蛍光受光手段へ向けて前記蛍光の波長の光を照射する計測用光源と、前記計測用光源から前記計測対象へ照射されて、該計測用光源に対向する前記蛍光受光手段により計測された光透過量から、前記計測対象の体長方向に沿った部位を特定し、特定した部位に対して設定されている前記計測対象の光学特性値を、前記再構成手段により前記濃度分布の再構成に用いる前記光学特性値に設定する設定手段と、を含む。
【0015】
この発明によれば、蛍光受光手段の何れかに対向する位置に、計測用の光として蛍光の波長の光を発する計測用光源を設け、この計測用光源に対向する蛍光受光手段により、計測用光源から照射されて計測対象を透過した光を受光する。
【0016】
計測対象とする生体では、体長方向に沿った部位により内部の臓器等が異なり、これにより光透過量も異なる。ここから、設定手段は、計測用光源に対向する蛍光受光手段により受光される光透過量から計測面上の部位を特定し、特定した部位に応じた光学特性値を、再構成手段で用いる光学特性値に設定する。
【0017】
また、本発明は、蛍光標識剤が投与された計測対象の生体の体長方向と交差する計測面上となるように光軸が配置され、前記計測対象へ励起光を照射する励起光光源と、それぞれの光軸が前記計測面上となるように配置され、前記励起光光源から照射された前記励起光により前記蛍光標識剤から発せられて前記計測対象から周囲に放出される蛍光を受光する複数の蛍光受光手段と、前記蛍光受光手段のそれぞれで受光された前記蛍光の強度及び前記計測対象の光学特性値に基づいて前記計測面上の蛍光の濃度分布を再構成する再構成手段と、前記計測対象を挟んで前記励起光光源に対向し、光軸が前記計測面上となるように設けられ、前記励起光光源から発せられた光を受光する励起光受光手段と、前記励起光光源から前記計測対象に照射されて前記励起光受光手段により受光される前記計測対象の光透過量から、前記計測面の前記計測対象の体長方向に沿った部位を特定し、該特定された部位に対して設定されている前記計測対象の光学特性値を、前記再構成手段により前記濃度分布の取得に用いる前記光学特性値に設定する設定手段と、を含む。
【0018】
この発明によれば、励起光光源に対向する位置に、励起光受光手段を設け、励起光光源から発せられて計測対象を透過した励起光を受光する。設定手段は、励起光受光手段での受光量とされる光透過量光透過量から計測面上の部位を特定して、光学特性値を設定する。
【0019】
これにより、本発明では、計測用光源又は、励起光受光手段を設ける簡単な構成で、計測対象の体長方向に沿った部位にかかわらず同じ光学特性値を適用する場合に比べて、高精度の濃度分布を再構成することができる。
【0020】
このような本発明では、前記励起光光源、前記蛍光受光手段及び前記計測用光源を一体で前記計測対象の体長方向に沿って相対移動することにより、前記計測対象に対する前記計測面を移動する移動手段を含み、前記設定手段が、前記移動手段により移動された位置のそれぞれで前記計測面が対応する部位の前記光学特性値を設定しても良く、前記励起光光源、前記蛍光受光手段及び前記励起光受光手段を一体で前記計測対象の体長方向に沿って相対移動することにより、前記濃度分布を再構成する前記計測面を移動する移動手段を含み、前記設定手段が、前記移動手段により移動された位置のそれぞれで前記計測面が対応する部位の前記光学特性値を設定しても良い。
【0021】
この発明によれば、計測対象に対して、計測面を体長方向に沿って相対移動する。これにより、計測対象の体長方向に沿った任意の位置での濃度分布の再構成を行うことができる。このとき、設定手段は、それぞれの移動位置で、計測対象の部位を特定して、光学特性値を設定するので、蛍光の濃度分布を高精度で再構成することができる。
【0022】
また、本発明は、前記設定手段が、予め設定された光透過量のしきい値及び前記光透過量に基づいて、前記しきい値により区分される部位を特定する特定手段と、特定手段により特定された部位に対して予め設定されている前記光学特性値を、前記再構成手段により前記濃度分布の取得に用いる前記光学特性値として選択する選択手段と、を含むものであれば良い。
【0023】
さらに、本発明は、前記光学特性値として、光の吸収係数μa及び等価散乱係数μs’を適用することができる。
【発明の効果】
【0024】
以上説明したように本発明によれば、蛍光受光手段に対向して計測用光源を設けるか、励起光光源に対向して励起光受光手段を設ける簡単な構成で、蛍光の濃度分布を、高精度で再構成することができるという効果が得られる。
【0025】
また、本発明では、予めしきい値及びしきい値により区分される部位ごとに光学特性値を設定することにより、光透過量から適正な光学特性値を設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】第1の実施の形態に係る計測ヘッド部の概略構成図である。
【図2】第1の実施の形態に係る光断層計測システムの腰部の概略構成図である。
【図3】第1の実施の形態に係る光断層計測システムの制御部の概略構成図である。
【図4】光計測装置の要部を示す斜視図である。
【図5】マウスの保定に用いる検体ホルダの一例を示す概略斜視図である。
【図6】蛍光の計測位置を示す概略構成図である。
【図7】(A)はマウス内の臓器の配置を示す概略図、(B)はマウスの体長方向に沿った区分ごとの光透過量の概略を示す線図である。
【図8】第1の実施の形態における光計測装置における計測処理の概略を示す流れ図である。
【図9】計測データを用いた濃度分布の演算の概略を示す流れ図である。
【図10】光透過量に基づいた光学特性値の設定の一例を示す流れ図である。
【図11】第2の実施の形態に係る計測ヘッド部の概略構成図である。
【図12】第2の実施の形態に係る光断層計測システムの制御部の概略構成図である。
【図13】第2の実施の形態における光計測装置における計測処理の概略を示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
〔第1の実施の形態〕
図2及び図3には、本実施の形態に係る光断層計測システム10の概略構成が示されている。光断層計測システム10は、光計測装置14及び、光計測装置14で得られる計測データに対して所定のデータ処理を行うデータ処理装置16を備えている。なお、光断層計測システム10は、光計測装置14の機能とデータ処理装置16の機能を一体化した構成であっても良い。
【0028】
この光断層計測システム10では、例えば、ヌードマウスなどの生体を計測対象とする。なお、以下では、計測対象をマウス12(図1、5参照)として説明するが、これに限らない。
【0029】
計測されるマウス12には、例えば、予め腫瘍細胞などの病変細胞などを注入するなどして所定の病変部位を生じさせる(発現させる)。また、マウス12には、例えば、病変部位などの特定部位に特異的に付着する抗体に蛍光物質を含ませた蛍光標識剤が投与される。
【0030】
光断層計測システム10では、発現させたマウス12に投与した蛍光標識剤が血液循環によりマウス12の体内に分散されたのち、抗原抗体反応により蛍光標識剤が病変部位に集積して付着するタイミングで、該マウス12を光計測装置14へ装填する。光計測装置14は、蛍光標識剤に対する励起光をマウス12へ照射し、マウス12の体内の蛍光標識剤から発せられる蛍光強度を計測する。データ処理装置16では、光計測装置14から出力される蛍光強度に応じた計測データに基づいてマウス12内の蛍光(蛍光標識剤)の濃度分布を演算し、蛍光標識剤(蛍光物質)の体内における濃度分布を示す断層画像を生成する(光断層画像の再構成)。再構成された光断層画像は、例えば、モニタ18等に表示される。
【0031】
図1及び図4に示されるように、光断層計測システム10では、マウス12を光計測装置14に装填するときに、検体ホルダ30が用いられる。図5に示されるように、検体ホルダ30は、上型ブロック32と下型ブロック34とによって構成され、上型ブロック32と下型ブロック34とが重ね合わせられることにより、所定の外径の略円柱形状となる。
【0032】
上型ブロック32には、マウス12の背側の体型(外形形状や大きさ)に合わせた凹部32Aが形成され、下型ブロック34には、マウス12の腹側の体型に合わせた凹部34Aが形成されている。マウス12は、腹側が下型ブロック34の凹部34A内に収容された状態で上型ブロック32が被せされることにより、体長方向が検体ホルダ30の軸方向に沿うように配置され、表皮が内面に密接されて検体ホルダ30に保定される。
【0033】
なお、検体ホルダ30では、例えば、下型ブロック34に形成された一対の係合突部36Aが、上型ブロック32に形成された係合凹部36Bに嵌め込まれることにより、上型ブロック32と下型ブロック34との間の位置決めがなされる。また、本実施の形態では、主としてマウス12の胴部(胸部から腰部)を計測部位としており、検体ホルダ30は、内面に少なくともマウス12の胴部の表皮が緊密に接した状態で保定する。検体ホルダ30では、例えば、マウス12の頭部側の端面が基準面38とされており、これにより、マウス12は、検体ホルダ30に収容されたときに体型(大きさ)に応じて計測部位の凡その位置が定まる。
【0034】
図4に示されるように、光計測装置14には、図示しないケーシングにより遮光された内部に基台20が配置され、この基台20にベース板24が立設されている。ベース板24には、一方の面に計測ヘッド部22が設けられている。計測ヘッド部22は、リング状に形成された枠体26を備え、この枠体26がベース板24に形成されている図示しない円孔と同軸となるように配置されている。
【0035】
ベース板24には、一方の面にロータリーアクチュエータ28が取り付けられ、このロータリーアクチュエータ28に枠体26が取り付けられている。ロータリーアクチュエータ28には、ベース板24の円孔に対応した図示しない空洞部が形成され、この空洞部が円孔に同軸となるようにベース板24に取り付けられ、枠体26は、このロータリーアクチュエータ28の空洞部と同軸となるように取り付けられている。
【0036】
ロータリーアクチュエータ28は、例えば、ステッピングモータ、パルスモータなどを用いた図示しない駆動源が作動されることにより、枠体26を、その軸心部を軸にベース体24に対して回動する。
【0037】
光計測装置14には、ベース板24を挟んでアーム44、46が対で設けられている。アーム44は、支柱48の先端部にブラケット50が取り付けられ、このブラケット50の先端が枠体26の開口を通してアーム46側へ向けられている。また、アーム46は、支柱52の先端部にブラケット54が取り付けられ、このブラケット54の先端が枠体26の開口を通してアーム44側へ向けられている。
【0038】
基台20上には、長尺のスライダ56及びスライドベース58が配置されている。スライダ56は、長手方向が枠体26の軸線方向に沿って配置され、ベース板24の下端部に形成された開口部24Aに挿通されて基台20上に取り付けられている。スライドベース58は、長手方向がスライダ56の長手方向に沿うように配置され、スライダ56に設けられている図示しないブロックを介してスライダ56に取り付けられている。このスライドベース58には、長手方向の一端側にアーム44の支柱48が立設され、他端側にアーム46の支柱52が立設されている。
【0039】
スライダ56は、その内部に、例えば、ステッピングモータなどを駆動源とする送りねじ機構(図示省略)が設けられ、ステッピングモータが駆動されることにより、スライドベース58が取り付けられているブロックを長手方向(図4の紙面左右方向)に沿って移動する。これにより、光計測装置14では、一対のアーム44、46が一体で、枠体26の軸線方向に移動される。なお、ここでは、アーム44、46を移動するが、これに限らず、枠体26(計測ヘッド部22)が移動する構成であっても良い。
【0040】
光計測装置14では、アーム44のブラケット50とアーム46のブラケット54との間に、検体ホルダ30が掛け渡されて装着される。このとき、検体ホルダ30は、その軸線が枠体26の軸心に重なるように配置される。また、検体ホルダ30は、基準面38が、ブラケット50に設定している基準面50Aに突き当てられることにより、光計測装置14に位置決めされる。
【0041】
光計測装置14では、一対のアーム44のブラケット50が、ベース板の図示しない貫通孔に挿通され、ベース板24を挟んで枠体26と反対側(図4の紙面奥側)となる位置へ突出された状態で、ブラケット44、46の間に検体ホルダ30が装着される。光計測装置14では、スライダ56の駆動により、検体ホルダ30が枠体26の軸心部を通過するように矢印A方向へ移動する。また、光計測装置14では、検体ホルダ30が矢印A方向と反対方向へ移動されて、装着された位置に戻されることにより、アーム44、46からの検体ホルダ30の取り出しが行われる。
【0042】
一方、計測ヘッド部22には、所定波長の光を発する光源ユニット40及び、所定波長の光を受光する複数の受光ユニット42が取り付けられている。光源ユニット40及び受光ユニット42は、それぞれの光軸が枠体26の軸心へ向けられ、枠体26の軸線方向と交差する平面(図6参照。以下、計測面92とする)上となるように配置されている。また、図1、図2に示されるように、光源ユニット40及び受光ユニット42は、互いの光軸の間の角度が所定の角度θとなるように枠体26の軸心から放射状となるように配置されている。なお、本実施の形態では、一例として1基の光源ユニット40と、11基の受光ユニット42A、42B、42C、42D、42E、42F、42G、42H、42I、42J、42Kとを、互いの間の角度θが30°となるように配置している。
【0043】
図3に示されるように、光源ユニット40は、LED、半導体レーザなどの発光素子により蛍光標識剤に対する励起光となる波長λsの光を発する発光ヘッド68を備えている。また、受光ユニット42は、受光素子により蛍光標識剤の発する蛍光の波長λfの光を受光する受光ヘッド72が設けられている。
【0044】
図4に示されるように、光計測装置14は、アーム44、46に装着された検体ホルダ30が、軸方向に移動されて枠体26の軸心部に配置された状態で、光源ユニット40から発する励起光(波長λsの光)を、検体ホルダ30の周面に照射する。また、光計測装置14では、検体ホルダ30の外周面から放出される蛍光(波長λfの光)を、受光ユニット42のそれぞれで受光する。
【0045】
また、光計測装置14では、スライダ56によって検体ホルダ30を枠体26の軸線方向に沿って移動し、検体ホルダ30内のマウス12の所定部位に計測ヘッド部22を対向させて計測を行う。このときに、光計測装置14では、ロータリーアクチュエータ28の駆動により計測ヘッド部22(光源ユニット40及び受光ユニット42)を、検体ホルダ30の周方向に回転し、励起光の照射位置及び蛍光の受光位置を変え、それぞれの位置で蛍光の計測を行う。
【0046】
これにより、光計測装置14では、マウス12の体長方向に沿った任意の位置で、マウス12の体内の蛍光標識剤から発せられ蛍光を計測し、計測された蛍光の強度に応じた計測データが得られる。
【0047】
一方、図3に示されるように、光計測装置14には、制御部60が設けられている。制御部60は、図示しないマイクロコンピュータを備えたコントローラ62を備えている。また、制御部60には、ロータリーアクチュエータ28を駆動する駆動回路64及び、スライダ56を駆動する駆動回路66が設けられ、これらがコントローラ62に接続されている。これにより、光計測装置14では、検体ホルダ30の移動及び、計測ヘッド部22の回動が、コントローラ62により制御される。
【0048】
また、制御部60には、光源ユニット40に設けられている発光ヘッド68を駆動する発光駆動回路70、受光ユニット42のそれぞれに設けられている受光ヘッド72から出力される電気信号を増幅する増幅器(amp)74、増幅器74から出力される電気信号(アナログ信号)に対してA/D変換を行うA/D変換器76を備えている。
【0049】
これにより、制御部60では、光源ユニット40の発光ヘッド68による発光を制御しながら、各受光ユニット42の受光ヘッド72によって検出された計測データがデジタル信号として出力される。なお、光計測装置14には、図示しない表示パネルが設けられ、コントローラ62によって装置の作動状態等が表示される。
【0050】
データ処理装置16は、CPU78、ROM80、RAM82、記憶手段とされるHDD84、キーボードやマウス(ポインティングデバイス)などの入力デバイス86、モニタ18等がバス88に接続された一般的構成のコンピュータが形成されている。
【0051】
また、データ処理装置16には、入出力インターフェイス(I/O IF)90Aが設けられており、この入出力インターフェイス90Aが、光計測装置14の制御部60に設けている入出力インターフェイス90Bに接続されている。なお、光計測装置14とデータ処理装置16との接続は、USBインターフェイスなどの公知の任意の規格を適用することができる。
【0052】
データ処理装置16は、CPU78が、RAM82をワークメモリとして用い、ROM80又はHDD84に記憶されたプログラムを実行することにより、光計測装置14の作動を制御し、マウス12から発せられる蛍光の強度を計測し、光計測装置14で計測された計測データを読み込む。また、データ処理装置16は、この計測データに基づいて蛍光の強度分布を示す断層画像の再構築を行う。なお、光断層計測システム10では、データ処理装置16が、光計測装置14の作動を制御する構成に限らず、光計測装置14が単独で動作して、計測データを出力する構成であっても良い。
【0053】
ところで、図6に示されるように、光断層計測システム10では、検体ホルダ30の基準面38が、ブラケット50の基準面50Aに突き当てられて光計測装置14に装填される。これにより、光計測装置14では、ブラケット50の基準面50Aを原点xsとして、検体ホルダ30の所定位置が、計測ヘッド部22に対向するように検体ホルダ30を矢印X方向へ相対移動する。
【0054】
このときに、例えば、光計測装置14では、所定の位置を計測する初期位置(計測位置x)として、計測位置xから所定間隔Δx(例えば、Δx=3mm)毎に検体ホルダ30を相対移動した計測位置xnのそれぞれで、計測を行う。
【0055】
光計測装置14では、検体ホルダ30に対する計測位置xnで、光源ユニット40を予め設定された原位置から所定の角度θずつ回転し(例えば、原位置θから回転位置θ、θ、・・・、θ12)、それぞれの回転位置θp(ここでは、p=1〜12)で、光源ユニット40から検体ホルダ30へ励起光を照射して、受光ユニット42A〜42Kの出力信号である計測データM(m)を読み込む。なお、mは、m=1〜11として、受光ユニット42A〜42Kを特定する変数としている。
【0056】
これにより、光計測装置14では、計測データM(x、θ、m)が得られる。このときに、計測位置xが同じであれば、その計測データM(x、θ、m)は、検体ホルダ30の移動方向に対して交差する同一平面(計測面92)上のデータとなる。なお、計測位置xnは、計測面92の移動位置でもあることから、移動位置xnとも表記する。
【0057】
一方、マウス12等の生体では、光に対して異方性散乱媒質となっている。異方性散乱媒質は、入射された光が光浸達長(等価散乱長)に達するまでは、前方散乱が支配的な領域となっているが、光浸達長を超えた領域では、光の偏向がランダムな多重散乱(等方散乱)が生じ、光の散乱が等方的となる(等方散乱領域)。この前方散乱が支配的な領域は数mm程度と狭いため、異方性散乱媒質同士が接している場合、一方の異方性散乱媒質と他方の異方性散乱媒質とを一体の異方性散乱媒質と見なすことができる。
【0058】
本実施の形態では、マウス12を収容した検体ホルダ30(上型ブロック32と下型ブロック34)内が実質的に等方散乱領域と見なされるように、検体ホルダ30を異方性散乱媒質となる材質を用いて形成している。このような検体ホルダ30の材質としては、ポリエチレン(PE)や、光の等価散乱係数μs’が1.05mm−1のポリアセタール樹脂(POM)などを用いることができる。なお、検体ホルダ30を形成する材質は、これに限らず、異方性散乱媒質であれば任意の材質を適用することができる。
【0059】
マウス12が収容された検体ホルダ30内を実質的に等方散乱領域とみなすことができれば、マウス12の体内での光の散乱を等方散乱に近似することができる。
【0060】
高密度媒質内で光が散乱を受けながら伝播するときに、光強度の分布は、光子のエネルギーの流れを記述する基本的な方程式である光(光子)の輸送方程式で表されるが、光の散乱が等方散乱に近似されることにより、光の拡散方程式を用いて光強度の分布を表すことができる。
【0061】
この光の拡散方程式は、(1)式で表される。なお、Φ(r、t)はマウス12内の光密度、D(r)は拡散係数、μa(r)は吸収係数、q(r、t)は光源の光密度を表し、rは計測対象であるマウス12(検体ホルダ30)内の座標位置、tは時間を表す。
【0062】
【数1】

【0063】
ここで、拡散係数D(r)は、一般的な三次元モデルにおいては、D(r)=(3・μs’(r))−1と表される関係を有している。μs’(r)は等価散乱係数であり、本実施の形態では、再構成する断層画像が二次元であり、二次元モデルである場合、拡散計数D(r)と等価散乱係数μs’の間では、D(r)=(2・μs’(r))−1と表される関係を有する。
【0064】
等価散乱係数μs’は、異方性散乱領域と等方性散乱領域を含む物質(異方性散乱媒質)における等方散乱領域における散乱係数を指す。光の拡散方程式では、等方性散乱領域のみを対象としており、ここでは、等価散乱係数μs’を用いる。
【0065】
光断層の計測に連続光を用いる場合、光強度の分布が時間によらず一定となるので、(1)式の光の拡散方程式は、(2)式で示すことができる。
【0066】
【数2】

【0067】
光学特性値である拡散係数D(r)、吸収係数μa(r)が既知であるときに、(2)式で示される光の拡散方程式を用いてマウス12(検体ホルダ30)から放出される光の強度分布を求める場合、順問題として計算することができる。しかし、光強度分布が既知であり、ここから、光の拡散方程式を用いてマウス12の光学特性値を求める場合、逆問題計算となる。
【0068】
ここで、マウス18の拡散係数D(r)、吸収係数μa(r)は、光の波長によって異なり、励起光の波長λsに対する拡散係数をDs(r)、吸収係数をμas(r)とし、光源の光密度をqs(r)とすると、励起光に対する拡散方程式は(3)式で表される。また、蛍光の波長λfに対する拡散係数をDm(r)、吸収係数をμam(r)とし、蛍光を光源とする光密度をqm(r)とすると、蛍光に対する光の拡散方程式は、(4)式で表される。
【0069】
【数3】

【0070】
また、蛍光の光密度qm(r)は、マウス12内の光密度Φs(r)及び、蛍光標識剤の量子効率γ、モル吸収係数εを用いて、qm(r)=γ・ε・N(r)・Φs(r)と表すことができる。したがって、(4)式は(5)式に置き換えられる。
【0071】
【数4】

【0072】
ここで、マウス12の光学特性である吸収係数μa(r)、等価散乱係数μs’(r)(拡散計数D(r))が既知であれば、(3)式及び(5)式では、Ds(r)=Dm(r)=D(r)、μas(r)=μa(r)+ε・N(r)、μam(r)=μa(r)と置き換えられる。ここから、(3)式及び(5)式は、(6)式及び(7)式に置き換えられる。なお、ε・N(r)は蛍光標識剤による吸収を表す。
【0073】
【数5】

【0074】
また、蛍光標識剤が光源となる蛍光の強度は、励起光の強度Φs(r)に基づくものである。これは、励起光の光源の強度qs(r)が既知となり、等価散乱係数μs’(r)(拡散係数D(r))及び吸収係数μa(r)を既知とすることにより、有限要素法などの数値解析手法によりマウス12内の光強度Φs(r)を順問題として求めることができる。
【0075】
これに基づき、データ処理装置16では、計測データM(x、θ、m)を用いて、順問題計算と1系統の逆問題計算を行い、検体ホルダ30の内部のマウス12の蛍光標識剤から発せられる蛍光の濃度分布N(r)を得るようにしている。
【0076】
図1に示されるように、受光ユニット42のそれぞれには、光学フィルタ94が設けられており、この光学フィルタ94により、蛍光の波長λfの光のみが透過されて受光ヘッド72に受光される。光学フィルタ94としては、例えば、長い波長帯の光を透過して短い波長帯の光の透過を阻止する特性で励起光の除去に用いるハイパス干渉フィルタ、ハイパス干渉フィルタで除去しきれなかった励起光の透過を阻止する色ガラスフィルタ、及び、蛍光よりも短い波長帯の光を透過して蛍光よりも長い波長の光の透過を阻止するローパス干渉フィルタを組み合わせて形成することができる。これにより、受光ユニット42では、励起光のみでなく、検体ホルダ30で発生するラマン散乱光が、受光ヘッド72で受光されてしまうのを防止することができる。
【0077】
一方、図1及び図2に示されるように、光源ユニット40には、発光ヘッド68に加えて発光ヘッド96が設けられている。発光ヘッド96は、マウス12に投与する蛍光標識剤から発せられる蛍光と同等の波長λfの光を発する。
【0078】
図2に示されるように、光計測装置14の制御部60には、発光駆動回路98が設けられており、この発光駆動回路98が作動されることにより、発光ヘッド96から波長λfの光が発せられる。
【0079】
また、図1に示されるように、光源ユニット40には、ダイクロイックミラー100が設けられている。ダイクロイックミラー100は、波長が所定波長より長い光(長波長の光)を反射し、所定波長より短い波長の光(短波長の光)を透過する。
【0080】
例えば、波長λsが730nmの励起光により、波長λfが約770nmの蛍光を発する蛍光標識剤を用いるときに、光計測装置14には、波長が730nm(波長λs)の光を発する発光ヘッド68と、波長が770nm(波長λf)の光を発する発光ヘッド96とが設けられる。また、光源ユニット40には、例えば、750nm程度の波長を境界として、この境界波長より長波長の光を反射し、短波長の光を透過するダイクロイックミラー100が設けられる。
【0081】
これにより、計測ヘッド部22では、発光ヘッド68から発せられた波長λsの光が、ダイクロイックミラー100を透過して検体ホルダ30に照射される。また、計測ヘッド部22では、発光ヘッド96から発せられた波長λfの光が、ダイクロイックミラー100により検体ホルダ30へ向けて反射されて、発光ヘッド68から発せられた波長λsの光と光軸が一致されて、検体ホルダ30へ照射される。
【0082】
ここで、計測ヘッド部22では、角度θ=30°の間隔で受光ユニット42(42A〜42K)が配置されることにより、光源ユニット40に、受光ユニット42Fが対向する。
【0083】
検体ホルダ30へ波長λfの光を照射した場合、蛍光標識剤が励起されず、受光ヘッド42Fを除く受光ヘッド42A〜42E、42G〜42Kでは、波長λfの光の散乱光のみが受光される。これに対して、受光ヘッド42Fでは、散乱光のみでなく、波長λfの光の透過光成分を含めた光が受光される。
【0084】
一方、図7(A)に示されるように、マウス12では、体長方向に沿った位置に応じて主要な臓器が異なる。例えば、マウス12の胸部102では、肺104の占める割合が多く、マウス12の腰部106では、腸などの下部消化器108の占める割合が多くなる。また、マウス12では、胸部102と腰部106との間の腹部110に、胃112Aや肝臓112Bなどの臓器が位置している。また、マウス12などの生体では、臓器によって光の吸収係数μa、等価散乱係数μs’等の光学的特性が異なる。
【0085】
したがって、光源ユニット40の発光ヘッド96から発する波長λfの光を、マウス12が収容されている検体ホルダ30へ照射したときに、光源ユニット40に対向する受光ユニット42Fで受光される光量は、マウス12の体長方向に沿った位置によって変化する。
【0086】
図7(B)には、光源ユニット40の発光ヘッド96から光(例えば、波長λfの光)を照射したときに、受光ユニット42Fで受光される光量に基づく光透過量T(mV)を示している。なお、図7(B)では、図7(A)に示される胸部102の所定の位置を計測位置xとして、この計測位置xから腰部106の計測位置x11までの11箇所の光透過量Tを示している。
【0087】
図7(B)に示されるように、光源ユニット40の発光ヘッド96から発する波長λfの光を、マウス12が収容されている検体ホルダ30へ照射したときに、光源ユニット40に対向する受光ユニット42Fで受光される光透過量Tは、マウス12の体長方向に沿った位置によって変化する。
【0088】
すなわち、腹部110では、胃112Aや肝臓112Bなどの臓器があるために光透過量Tが低くなる。これに対して、腰部106では、腸などの下部消化器108があるために、腹部110と比較して光透過量Tが多くなる。また、胸部102では、肺104があるために比較的空洞部分が多く、腰部106に比べてさらに光透過量Tが多くなる。
【0089】
したがって、受光ユニット42Fで検出される光透過量Tから、マウス12の体長方向に沿った凡その部位を特定することができる。光断層計測システム10では、基準とするマウスの各部位の光透過量Tを予め計測して、光透過量Tに対するしきい値Thが予め設定されている。
【0090】
例えば、図7(A)及び図7(B)に示されるように、マウス12の胸部102に相当する計測位置x〜xの範囲では、光透過量Tが所定値Thよりも多く、マウス12の腰部106に相当する計測位置x11では、光透過量Tが所定値Thよりも少ないが、所定値Thよりも多い(Th<Th)。また、マウス12の腹部110に相当する計測位置x〜x10の範囲では、光透過量Tが所定値Thより少なくなっている。このような所定値Th、Thを用いることにより、光源ユニット40の発光ヘッド96と受光ユニット42Fとにより計測される光透過量Tから、計測面92に対応するマウス12の部位が、胸部102、腰部106又は腹部110の何れであるかを判断することができる。
【0091】
ここから、光断層計測システム10では、所定値Th、Thがしきい値(しきい値Th、Th)として設定され、このしきい値Th、Thがデータ処理装置16のROM80又はHDD84等に記憶されている。データ処理装置16では、光計測装置14によりマウス12の蛍光の計測を行うときに、発光ヘッド96により光源ユニット40から発せられた光を、受光ユニット42Fで受光し、これにより得られる光透過量Tから、蛍光の計測位置xとなる凡その計測部位を特定するようにしている。なお、発光ヘッド96が発する光の強度は、例えば、検体ホルダ30の非装着状態などで、受光ユニット42Fの受光ヘッド72で受光される光量に基づいて調整されるなどしたものであれば良い。
【0092】
図7(A)に示されるように、マウス12では、胸部102、腰部106及び腹部110で、主要な臓器が異なる。また、表1に示されるように、マウス12では、臓器ごとに光の吸収係数μa及び等価散乱係数μs’等の光学特性値が異なる。
【0093】
【表1】

【0094】
ここから、光断層計測システム10では、区分されたそれぞれの部位における吸収係数μa及び等価散乱係数μs’が設定され、データ処理装置16のROM80又はHDD84に記憶されている。なお、マウス12の部位(胸部102、腰部106及び腹部110)ごとの光の吸収係数μa、等価散乱係数μs’は、該当部位の主要臓器の吸収係数μa及び等価散乱係数μs’を適用してもよく、また、臓器の吸収係数μa及び等価散乱係数μs’と該当臓器の面積比率から吸収係数μa及び等価散乱係数μs’を設定したものなどを適用することができる。
【0095】
データ処理装置16では、光透過量Tから特定した部位に対して設定されている吸収係数μa及び等価散乱係数μs’を、吸収係数μa(r)及び等価散乱係数μs’(r)に設定し、計測データM(xn、θp、m)に基づいた光断層画像の再構成を行うようになっている。
【0096】
以下に、第1の実施の形態に係る光断層計測システム10における光断層画像の再構成を説明する。
【0097】
図8には、光断層計測システム10に設けている光計測装置14での計測処理の概略が示されている。このフローチャートは、マウス12を収容した検体ホルダ30が光計測装置14に装填されて、計測処理の開始が指示されると実行される。なお、ここでは、計測位置xを計測位置xnとして、間隔Δx(例えば、Δx=3mm)でn=1〜15までの計測を行う。計測位置xnのそれぞれで、光源ユニット40の回転位置θを回転位置θpとして、30°間隔でp=1〜12まで順に回転し、m=1〜11の各受光ユニット42で蛍光の計測を行う。また、光計測装置14の作動はデータ処理装置16により制御される。
【0098】
最初のステップ200では、初期設定を行い、m=0、n=0、p=0に設定し、ステップ202では、nをインクリメント(n=n+1)する。次に、ステップ204では、スライダ56を作動させることにより、マウス12の計測位置xnの初期位置(計測位置x)が計測ヘッド部22に対応するように移動する。
【0099】
マウス12を、蛍光の計測を行う計測位置xnへ移動すると、ステップ206では、光源ユニット40に設けている発光ヘッド96を作動させて、検体ホルダ30へ波長λfの光を照射する。また、ステップ208では、光源ユニット40に対向する受光ユニット42Fで、検体ホルダ30を透過した光を受光する。
【0100】
この後、ステップ210では、受光ユニット42Fで受光された光に応じた計測データを、光透過量Tnとしてデータ処理装置16へ出力し、ステップ212では、発光ヘッド96の発光を停止する。
【0101】
光透過量Tの計測が終了すると、ステップ214では、pをインクリメント(p=p+1)し、ステップ216でロータリーアクチュエータ28を作動することにより、計測ヘッド部22を回転する。これにより、光源ユニット40は、先ず、原位置θへ移動される。なお、ここでは、光透過量Tnを計測した後に、光源ユニット40を原位置θへ移動するようにしたが、これに限らず、光源ユニット40を原位置θへ移動した状態で、光透過量Tnの計測を行うようにしても良い。
【0102】
この後、ステップ218では、光源ユニット40の発光ヘッド68を作動させて検体ホルダ30へ励起光を照射する。これと共に、ステップ220では、mをインクリメント(m=m+1)して、ステップ222では、mに対応する受光ユニット42で受光している蛍光の光量を計測位置xn、回転位置θpにおける計測データD(m)として読み込む。また、ステップ224では、全ての受光ユニット42から計測データを読み込んだか否か(m≧11)を確認し、m≧11となっていなければ、ステップ224で否定判定して、ステップ220へ移行、次の計測データM(m)を読み込む。
【0103】
このようにして、計測位置xn、計測角度θpにおいて、受光ユニット42の全ての計測データを読み込むと、ステップ224で肯定判定してステップ226へ移行し、光源ユニット40の発光を停止すると共に、読み込んだ計測データM(xn、θp、m)をデータ処理装置16へ出力する(ステップ228)。
【0104】
次のステップ230では、計測位置xnで光源ユニット40を全周に移動した(p≧12)か否かを確認し、否定判定された場合は、mをリセット(m=0)して(ステップ232)、ステップ220へ移行する。
【0105】
このようにして、計測位置xnにおいて、光源ユニット40を計測位置θ〜θ12まで回転して、計測データM(xn、θp、m)の計測を終了すると、ステップ230で肯定判定され、ステップ234へ移行する。このステップ234では、全ての計測位置xnでの計測が終了したか否か(n≧15)を確認し、否定判定された場合は、ステップ236で、m=0及びp=0に設定して、ステップ202へ移行し、次の計測位置xnにおける計測を開始する。また、全ての計測位置xn(x〜x15)での計測が終了すると、ステップ234で肯定判定され、計測処理を終了する。なお、計測処理が終了したときには、スライダ56が作動されて検体ホルダ30が着脱位置に戻される。
【0106】
一方、図9には、光計測装置14の計測データM(xn、θp、m)に基づいたデータ処理装置16での処理の概略を示している。このフローチャートは、光計測装置14での計測処理が開始されることにより実行される。
【0107】
このフローチャートでは、ステップ250及びステップ252で、先ず計測位置xnの設定を行う。なお、ここでは、nを初期化(n=0)した後にインクリメント(n=n+1)することにより、最初の計測位置xn(計測位置x)に設定する。
【0108】
この後、ステップ254では、計測位置xnにおける光透過量Tnが計測されたか否かを確認し、光計測装置14で計測位置xnにおける光透過量Tnが計測されて出力されることにより、ステップ254で肯定判定してステップ256へ移行し、光計測装置14から出力された光透過量Tnを読み込む。
【0109】
次のステップ258では、光透過量Tnに基づいて計測位置xnにおけるマウス12の光学特性である吸収係数μa(r)及び等価散乱係数μs’(r)を設定する。
【0110】
ここで、光透過量Tnの計測を行うときに、光源ユニット40から発する光の波長を励起光の波長λsではなく蛍光の波長λfを用いる。これにより、マウス12に照射されても、マウス12内の蛍光標識剤が励起されて蛍光を発することがないようにしている。
【0111】
また、波長λfの光を、検体ホルダ30を挟んで光源ユニット40に対向している受光ユニット42Fを用い計測する。これにより、光計測装置14では、マウス12を透過した光を検出することができる。すなわち、受光ユニット42A〜42E及び受光ユニット42G〜42Kは、マウス12の体内及び検体ホルダ30内で散乱した光のみを受光してしまうが、受光ユニット42Fでは、マウス12を透過した光を受光することができる。
【0112】
マウス12では、体長方向に沿った部位によって光の透過量が異なり、データ処理装置16には、光透過量に対するしきい値Thが設定されている。データ処理装置16では、読み込んだ光透過量Tnとしきい値Thを比較することにより、計測位置xnとなっている部位を推定する。
【0113】
図10には、このときの処理の一例を示している。このフローチャートは、図9でステップ258へ移行することにより実行され、最初のステップ300では、対象としている計測位置xnの光透過量Tnを読み込み、ステップ302及びステップ304では、光透過量Tnと予め設定されているしきい値(しきい値Th、Th)とを比較する。すなわち、ステップ302では、光透過量Tnがしきい値Thを越えているか否かを確認し、ステップ304では、光透過量Tnがしきい値Th以下か否かを確認する。
【0114】
ここで、光透過量Tnがしきい値Thを越えている場合(Tn>Th)、ステップ302で肯定判定されてステップ306へ移行する。このステップ306では、計測位置xnがマウス12の胸部102であるとして、マウス12の胸部102に対して設定されている吸収係数μa及び等価散乱係数μs’を読み出し、読み出した吸収係数μa及び等価散乱係数μs’を、吸収係数μa(r)及び等価散乱係数μs’(r)(等価散乱係数μs’(r)に対向する拡散計数D(r))に設定する(ステップ308)。
【0115】
また、光透過量Tnがしきい値Th以下である場合(Th≧Tn)、ステップ302で否定判定されると共にステップ304で肯定判定されてステップ310へ移行する。このステップ310では、計測位置xnがマウス12の腹部110であるとして、マウス12の腹部110に対して設定されている吸収係数μa及び等価散乱係数μs’を読み出し、読み出した吸収係数μa及び等価散乱係数μs’を、吸収係数μa(r)及び等価散乱係数μs’(r)に設定する(ステップ308)。
【0116】
さらに、光透過量Tnがしきい値Thを越えているがしきい値Th以下である場合(Th<Tn≦Th)、ステップ302及びステップ304で否定判定されてステップ312へ移行する。このステップ312では、計測位置xnがマウス12の腰部106であるとして、マウス12の腰部106に対して設定されている吸収係数μa及び等価散乱係数μs’を読み出し、読み出した吸収係数μa及び等価散乱係数μs’を、吸収係数μa(r)及び等価散乱係数μs’(r)に設定する(ステップ308)。
【0117】
なお、本実施の形態では、一例として、計測位置xnに沿う二次元平面(計測面92)内で、光学特性値が一様であると見なして、演算の簡略化が図られるようにしており、ここでは、吸収係数μa(r)及び等価散乱係数μs’(r)は、計測面92内での座標(r)にかかわらず一定値としている。
【0118】
このようにして計測位置xnに対応する吸収係数μa(r)及び等価散乱係数μs’(r)を設定すると、図9のステップ260では、光計測装置14から出力される計測データを順に読み込み、ステップ262では、計測位置xnにおいて、光源ユニット40の1周分の計測データM(xn、θp、m)(p=1〜12までのデータ)の読み込みを終了したか否かを確認する。
【0119】
ここで、1周分の計測データM(xn、θp、m)を読み込むと、ステップ262で肯定判定してステップ264へ移行する。このステップ264では、読み込んだ計測データM(xn、θp、m)から、蛍光強度分布(蛍光強度分布Φm(r)measure)を算出する。すなわち、計測データM(xn、θp、m)に基づいた蛍光強度分布Φm(r)measureを取得する。
【0120】
この後、ステップ266では、マウス12を含めた検体ホルダ30内の蛍光(蛍光標識剤)の濃度分布N(r)の初期値を設定し、ステップ268では、設定された濃度分布N(r)と、先に設定した吸収係数μa(r)及び透過散乱係数μs’(r)(拡散係数D(r))に基づいて、マウス12から放出された蛍光強度分布Φm(r)calcを計算する。すなわち、仮想的な蛍光強度分布Φm(r)calcを取得する。この蛍光強度分布Φm(r)calcは、数学的モデルである光拡散方程式を有限要素法などの数値解析手法を用いた公知の順問題計算として容易に演算することができる。
【0121】
すなわち、励起光強度分布Φs(r)calcは、(6)式又は(8)式から得られ、励起光と蛍光をあわせた光強度分布Φt(r)calcは、(9)式から得られる。また、蛍光強度分布Φm(r)calcは、励起光強度分布Φs(r)calcと光強度分布Φt(r)calcとから得られる((10)式参照)。
【0122】
【数6】

【0123】
次のステップ270では、計測データに基づいた蛍光強度分布Φm(r)measureと、演算結果に基づいた蛍光強度分布Φm(r)calcを比較し、ステップ272では、一致しているか否かを確認する。この判定は、例えば、蛍光強度分布Φm(r)measureと、蛍光強度分布Φm(r)calcとの二乗誤差yを用い、二乗誤差yが、予め設定した規定値内か否かから判断するものであっても良い。
【0124】
ここで、二乗誤差yが規定値より大きく、蛍光強度分布Φm(r)measureと蛍光強度分布Φm(r)calcが一致していないと判断されるときには、ステップ272で否定判定されてステップ274へ移行する。
【0125】
このステップ274では、関数行列(Jacobian matrix)を用いた公知の手法で光学特性値の変化に対する光強度分布の変化を演算する。また、次のステップ276では、Levenberg Marqurdt法などの最適化手法による逆問題計算を用いて蛍光強度分布Φm(r)measureと蛍光強度分布Φm(r)calcの誤差(例えば、二乗誤差y)を評価する。すなわち、二乗誤差yは、(11)式から得られ、この二乗誤差yを評価する。なお、γは量子効率、εはモル吸光係数としている。
【0126】
【数7】

【0127】
また、このステップ276では、この二乗誤差yを最小とする蛍光標識剤での蛍光の吸収εN、すなわち、蛍光標識剤の濃度分布N(r)を推定する。これは、光拡散方程式である(7)式又は(12)式を用いた逆問題計算を行うことにより推定することができる。
【0128】
【数8】

【0129】
このようにして濃度分布N(r)を求めると、ステップ278では、この演算結果に基づいて濃度分布N(r)を更新する。
【0130】
データ処理装置16では、蛍光強度分布Φm(r)measureと蛍光強度分布Φm(r)calcとが一致したとみなされるまで、ステップ268からステップ278を繰り返す。
【0131】
これにより、蛍光強度分布Φm(r)measureと蛍光強度分布Φm(r)calcとが一致したとみなされると、ステップ272で肯定判定してステップ280へ移行し、このときの濃度分布N(r)を計測データM(xn、θp、m)から得られた濃度分布N(r)として格納する。この濃度分布N(r)を用いることにより、計測位置xnにおける蛍光分布の断層画像が得られる。
【0132】
このようにして、計測位置xnに対する演算が終了すると、ステップ282では、全ての計測位置xnに対する処理が終了したか否かを確認(n≧15)し、否定判定された場合には、ステップ252へ移行し、次の計測位置xnに対する処理を行う。
【0133】
このように、データ処理装置16では、マウス16の光学的特性である吸収係数μa(r)及び等価散乱係数μs’(r)を予め設定することにより、蛍光強度の計測データがあれば、蛍光の濃度分布(r)を得ることができるので、計測の簡略化及び計測時間の短縮を図ることができる。また、データ処理装置16では、光拡散方程式の逆問題計算が、蛍光に対して行えば良いので、処理負荷の軽減が図られる。
【0134】
さらに、光断層計測システム10では、光源ユニット40に設けている発光ヘッド96から発する波長λfの光を、光源ユニット40に対向する受光ユニット42Fで検出して光透過量Tを取得し、この光透過量Tからマウス12の計測部位を特定するので、簡単な構成で、的確な計測部位の特定が可能となる。
【0135】
また、光断層計測システム10では、特定した計測部位に応じて適切に吸収係数μa(r)及び等価散乱係数μs’(r)を設定できるので、マウス12の全体を同じ吸収係数μa(r)及び等価散乱係数μs’(r)に設定する場合に比べて、高精度の蛍光の濃度分布N(r)を得ることができる。
【0136】
なお、第1の実施の形態では、発光ユニット68が設けられた光源ユニット40に、蛍光の波長λfの光を発する発光ヘッド96を設けたが、マウス12を挟んで受光ユニット42A〜42Kの何れかに発光ヘッド96を設けるようにするなど、蛍光の検出用に設けている受光ユニット42の何れかで波長λfの透過光を検出する構成であれば、任意の構成を適用することができる。
【0137】
〔第2の実施の形態〕
次に第2の実施の形態を説明する。なお、第2の実施の形態の基本的構成は、前記した第1の実施の形態と同じであり、第1の実施の形態と同一の部品又は構成については、同一の符号を付与してその説明を省略する。
【0138】
図12には、第2の実施の形態に係る光断層計測システム10Aの概略構成が示され、図11には、光断層計測システム10Aに用いる光計測装置14Aに形成されている計測ヘッド部22Aの概略構成を示している。光計測装置14Aには、光源ユニット40に換えて光源ユニット40Aが設けられている。また、光計測装置14Aには、受光ユニット42Fに換えて、受光ユニット42Lが設けられている。
【0139】
光源ユニット40Aは発光ヘッド68を備え、光源ユニット40から発光ヘッド96及びダイクロイックミラー100が除かれた構成となっている。また、図11に示されるように、光源ユニット40Aに対向される受光ユニット42Lは、受光ヘッド72及び光学フィルタ94に加えて、受光ヘッド120及びダイクロイックミラー122を備えている。
【0140】
受光ユニット42Lに設けているダイクロイックミラー122は、長波長の光を透過し、短波長の光を反射する。このとき、受光ユニット42Lでは、蛍光の波長λfの光を透過し、励起光の波長λsの光を反射するダイクロイックミラー122が用いられている。また、受光ユニット42Lには、受光ヘッド120とダイクロイックミラー122との間に、光学フィルタ124が設けられている。この光学フィルタ124は、波長λsの光を透過するように形成されている。
【0141】
これにより、受光ユニット42Lでは、検体ホルダ30から放出される蛍光が、ダイクロイックミラー122を透過して受光ヘッド72で受光される。また、受光ユニット42Lでは、波長λsの光が入射されると、ダイクロイックミラー122で反射されて、受光ヘッド120により受光される。
【0142】
図12に示されるように、光計測装置14Aには、受光ヘッド120から出力される電気信号を増幅する増幅器74が設けられており、受光ヘッド120で受光された励起光の波長λsの光量に応じた計測データがA/D変換されてデータ処理装置16へ出力される。
【0143】
光断層計測システム10Aでは、光源ユニット40Aの発光ヘッド68から照射された励起光を、この光源ユニット40Aに対向される受光ユニット42Lの受光ヘッド120により計測し、これにより得られる光透過量Tに基づいて、マウス12の計測部位を特定するようにしている。
【0144】
蛍光標識剤が投与されたマウス12に励起光を照射した場合、励起光によって蛍光標識剤が蛍光を発するが、照射された励起光の一部は、マウス12内を透過する。光計測装置14Aでは、マウス12を透過した励起光を受光ヘッド120で受光するようにしている。
【0145】
図13には、光計測装置14Aでの計測処理の概略が示されている。このフローチャートでは、マウス12の所定部位を計測位置xnとなるように移動すると(ステップ204)、発光ヘッド68を作動させて検体ホルダ30へ波長λsの光(励起光)を照射する(ステップ240)。
【0146】
これと共にステップ242では、検体ホルダ30を透過した波長λsの光を受光ヘッド120で受光し、励起光の受光量が光透過量Tとしてデータ処理装置16へ出力される(ステップ244)。また、光計測装置14Aでは、光透過量Tを出力すると、発光ヘッド68の動作を一旦停止し(ステップ246)、ステップ214へ移行することにより、蛍光の計測を開始する。
【0147】
このように構成された光断層計測システム10Aにおいても、マウス12を透過した光量(光透過量T)に基づいて、マウス12の計測部位の特定が可能となる。このときに、光断層計測システム10Aでは、光源ユニット40Aに対向する受光ユニット42Lに、波長λsの光を受光する受光ヘッド120を設けるのみの簡単な構成とすることができる。
【0148】
また、光透過量に基づいて特定した計測部位に対して設定されている吸収係数μa及び等価散乱係数μs’を、吸収係数μa(r)及び等価散乱係数μs’(r)として設定するので、データ処理装置16で断層画像の再構成を行うときの処理負荷を軽減することができる。また、データ処理装置16では、マウス12の全体を同等の吸収係数μa、等価散乱係数μs’に設定する場合に比べて、高精度での光断層画像の再構成が可能となる。
【0149】
なお、以上説明した本実施の形態では、計測対象としているマウス12を、体長方向に沿って胸部102、腹部110及び腰部106に3分割して、それぞれの部位に対して吸収係数μa(r)及び等価散乱係数μs’(r)を設定したが、これに限らず、体長方向に沿った光透過量Tの相違に基づいて3分割以上に区分けし、区分けしたそれぞれの部位に対して吸収係数μa(r)及び等価散乱係数μs’(r)を設定しても良い。
【0150】
また、マウス12では、衰弱することにより、消化器系器官内にガスが溜まる。これにより、腸などの消化器系器官の占める割合の多い腰部106などでは、光の吸収が低くなり、光透過量Tが増加する。ここから、例えば、スライダ56により移動されたマウス12の移動量から計測ヘッド部22にマウス12の腰部106が対向されていると判断される状態で、光透過量Tが増加している場合(例えば、しきい値Thを越えている場合)には、マウス12が衰弱していると判断することができる。
【0151】
このように、光断層計測システム10では、マウス12の光透過量Tを検出するときに、腰部106の光透過量Tから計測対象としているマウス12の体調を把握することができる。
【0152】
なお、以上説明した本実施の形態は、本発明の一例を示すものであり、本発明の構成を限定するものではない。本発明は、光断層計測システム10、10Aに限らず、励起光を計測対象とする生体に照射し、この励起光により計測対象から放出される蛍光を、計測対象の周囲の複数位置で計測する任意の構成の光断層計測装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0153】
10、10A 光断層計測システム(光断層計測装置)
12 マウス
14、14A 光計測装置
16 データ処理装置(設定手段、特定手段、選択手段、再構成手段)
22、22A 計測ヘッド部
40 光源ユニット(励起光光源、計測用光源)
40A 光源ユニット(励起光光源)
42 受光ユニット(蛍光受光手段)
42F 受光ユニット(蛍光受光手段)
42L 受光ユニット(蛍光受光手段、励起光受光手段)
68 発光ヘッド(励起光光源)
72 受光ヘッド(蛍光受光手段)
96 発光ヘッド(計測用光源)
102 胸部
106 腰部
110 腹部
120 受光ヘッド(励起光受光手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛍光標識剤が投与された計測対象の生体の体長方向と交差する計測面上となるように光軸が配置され、前記計測対象へ励起光を照射する励起光光源と、
それぞれの光軸が前記計測面上となるように配置され、前記励起光光源から照射された前記励起光により前記蛍光標識剤から発せられて前記計測対象から周囲に放出される蛍光を受光する複数の蛍光受光手段と、
前記蛍光受光手段のそれぞれで受光された前記蛍光の強度及び前記計測対象の光学特性値に基づいて前記計測面上の蛍光の濃度分布を再構成する再構成手段と、
前記計測対象を挟んで前記蛍光受光手段の何れかに対向され光軸が前記計測面上となるように設けられ、該蛍光受光手段へ向けて前記蛍光の波長の光を照射する計測用光源と、
前記計測用光源から前記計測対象へ照射されて、該計測用光源に対向する前記蛍光受光手段により計測された光透過量から、前記計測対象の体長方向に沿った部位を特定し、特定した部位に対して設定されている前記計測対象の光学特性値を、前記再構成手段により前記濃度分布の再構成に用いる前記光学特性値に設定する設定手段と、
を含む光断層計測装置。
【請求項2】
前記励起光光源、前記蛍光受光手段及び前記計測用光源を一体で前記計測対象の体長方向に沿って相対移動することにより、前記計測対象に対する前記計測面を移動する移動手段を含み、
前記設定手段が、前記移動手段により移動された位置のそれぞれで前記計測面が対応する部位の前記光学特性値を設定する、
請求項1に記載の光断層計測装置。
【請求項3】
蛍光標識剤が投与された計測対象の生体の体長方向と交差する計測面上となるように光軸が配置され、前記計測対象へ励起光を照射する励起光光源と、
それぞれの光軸が前記計測面上となるように配置され、前記励起光光源から照射された前記励起光により前記蛍光標識剤から発せられて前記計測対象から周囲に放出される蛍光を受光する複数の蛍光受光手段と、
前記蛍光受光手段のそれぞれで受光された前記蛍光の強度及び前記計測対象の光学特性値に基づいて前記計測面上の蛍光の濃度分布を再構成する再構成手段と、
前記計測対象を挟んで前記励起光光源に対向し、光軸が前記計測面上となるように設けられ、前記励起光光源から発せられた光を受光する励起光受光手段と、
前記励起光光源から前記計測対象に照射されて前記励起光受光手段により受光される前記計測対象の光透過量から、前記計測面の前記計測対象の体長方向に沿った部位を特定し、該特定された部位に対して設定されている前記計測対象の光学特性値を、前記再構成手段により前記濃度分布の取得に用いる前記光学特性値に設定する設定手段と、
を含む光断層計測装置。
【請求項4】
前記励起光光源、前記蛍光受光手段及び前記励起光受光手段を一体で前記計測対象の体長方向に沿って相対移動することにより、前記濃度分布を再構成する前記計測面を移動する移動手段を含み、
前記設定手段が、前記移動手段により移動された位置のそれぞれで前記計測面が対応する部位の前記光学特性値を設定する、
請求項3に記載の光断層計測装置。
【請求項5】
前記設定手段が、
予め設定された光透過量のしきい値及び前記光透過量に基づいて、前記しきい値により区分される部位を特定する特定手段と、
特定手段により特定された部位に対して予め設定されている前記光学特性値を、前記再構成手段により前記濃度分布の取得に用いる前記光学特性値として選択する選択手段と、
を含む、請求項1から請求項4の何れか1項に記載の光断層計測装置。
【請求項6】
前記光学特性値が、光の吸収係数μa及び等価散乱係数μs’である請求項1から請求項5の何れか1項に記載の光断層計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−179904(P2011−179904A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−42995(P2010−42995)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】