説明

光束制御部材、発光装置、面光源装置および表示装置

【課題】面光源装置において発光素子または発光素子パッケージと組み合わせて使用される光束制御部材であって、凹形状の入射面の開口径よりも大きい発光面を有する発光素子または発光素子パッケージと組み合わせて使用される場合であっても、裏面から入射した光が光拡散部材の特定の領域に集中することを抑制することができる光束制御部材を提供すること。
【解決手段】光束制御部材140は、発光素子パッケージ130から出射された光の進行方向を制御する光制御出射面141と、光制御出射面141の反対側に位置する凹部142と、凹部142の開口縁部から径方向に延在する裏面144とを有する。裏面144の少なくとも一部の領域(対向面144a)には、一方向に延在する凸条部または凹条部が互いに平行になるように複数形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子から出射された光の進行方向を制御する光束制御部材に関する。また、本発明は、前記光束制御部材を有する発光装置、前記発光装置を有する面光源装置、および前記面光源装置を有する表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置などの透過型画像表示装置では、バックライトとして直下型の面光源装置を使用することがある。近年、光源として複数の発光素子を有する、直下型の面光源装置が使用されるようになってきている。
【0003】
たとえば、直下型の面光源装置は、基板、複数の発光素子、複数の光束制御部材(拡散レンズ)および光拡散部材(拡散板)を有する。複数の発光素子は、基板上にマトリックス状に配置されている。各発光素子の上には、各発光素子から出射された光を基板の面方向に拡げる光束制御部材が配置されている。光束制御部材から出射された光は、光拡散部材により拡散され、被照射部材(例えば液晶パネル)を面状に照らす。
【0004】
特許文献1には、発光素子と組み合わせて使用される光束制御部材が開示されている。図1は、特許文献1に記載の光束制御部材(拡散レンズ)の断面図である。
【0005】
図1に示されるように、特許文献1に記載の拡散レンズ10は、発光素子パッケージから出射された光を入射させる第1のレンズ面12(入射面)と、第1のレンズ面12から入射した光を拡散させる第2のレンズ面14(出射面)と、第1のレンズ面12の外周縁と第2のレンズ面14の外周縁とを接続する屈折部16(裏面)と、拡散レンズ10を発光素子パッケージの上に配置するための支持部18とを有している。第1のレンズ面12は、発光素子パッケージに対して凹形状の面であり、発光素子パッケージの発光面の全面と対向するように形成されている。また、屈折部16には、複数の凸部または凹部が形成されている。これらの凸部または凹部は、発光素子パッケージから出射された光のうち、第1のレンズ面12に入射しなかった一部の光をランダムな方向に屈折させる機能を担っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−290181号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
発光素子または発光素子パッケージと光束制御部材とを組み合わせて使用する場合、特許文献1に記載されているように、光束制御部材の入射面のサイズに合う発光素子または発光素子パッケージを選択して使用するのが一般的である。しかしながら、複数種類の光束制御部材に対して共通の発光素子または発光素子パッケージを使用することができれば、発光素子または発光素子パッケージの在庫の増大を防ぐことができ、結果として製造コストを低減させることができる。
【0008】
図2は、発光素子パッケージおよび光束制御部材を含む発光装置の例を示す平面図および断面図である。図2Aおよび図2Bは、それぞれ、光束制御部材40の凹形状の入射面42が発光素子パッケージ30の発光面の全面と対向している発光装置20aの平面図および断面図である。図2Cおよび図2Dは、それぞれ、光束制御部材40の凹形状の入射面42が発光素子パッケージ30の発光面の一部と対向している発光装置20bの平面図および断面図である。
【0009】
たとえば、発光素子パッケージ30は、1または2以上の発光素子32(青色LED)と、発光素子32から出射された青色光により励起され、黄色の蛍光を発する蛍光体34とを有する。発光素子32から出射された青色光と蛍光体34から発せられた黄色光とが混ざることにより、発光素子パッケージ30から白色光が出射される。
【0010】
複数種類の光束制御部材に対して共通の発光素子パッケージを使用する場合、図2Cおよび図2Dに示されるように、光束制御部材40の入射面42が発光素子パッケージ30の発光面の一部としか対向できないことが起こりうる。このような場合、発光素子パッケージ30から出射された光の一部は、光束制御部材40の裏面からの抜け光となってしまい、光束制御部材40は、抜け光の進行方向を適切に制御することができない。たとえば、図2Dに示される例では、蛍光体34からの黄色光が抜け光となってしまう(矢印参照)。
【0011】
図3は、図2Cおよび図2Dに示される発光装置20bを含む面光源装置50の例を示す平面図である。この図では、面光源装置50を光拡散部材54側から見た図であり、基板52上に配置されている発光装置20bの位置を破線で示している。複数の発光装置20bはマトリックス状に配置されているが、x軸方向の中心間距離P1がy軸方向の中心間距離P2よりも短くなっている。このように、発光装置20の配置が不均一な場合、前述の抜け光は、発光装置20bが密集している領域の上部に集中する。図3に示される例では、光拡散部材54において、x軸に平行な直線L上に黄色の線が現れてしまうことになる。
【0012】
以上のように、光束制御部材の入射面が発光素子または発光素子パッケージの発光面の全面と対向することができない場合、進行方向が適切に制御されていない抜け光が生じてしまうおそれがあった。また、このような発光装置を面光源装置に使用した場合、抜け光が光拡散部材の特定の領域に集中してしまい、面状の被照射部材(例えば液晶パネル)を均一に照らすことができないおそれがあった。
【0013】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、面光源装置において発光素子または発光素子パッケージと組み合わせて使用される光束制御部材であって、凹形状の入射面の開口径よりも大きい発光面を有する発光素子または発光素子パッケージと組み合わせて使用される場合であっても、裏面から入射した光が光拡散部材の特定の領域に集中することを抑制することができる光束制御部材を提供することを目的とする。
【0014】
また、本発明は、この光束制御部材を有する発光装置、この発光装置を有する面光源装置、およびこの面光源装置を有する表示装置を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の光束制御部材は、発光素子または発光素子パッケージから出射された光の進行方向を制御する光束制御部材であって、発光素子または発光素子パッケージから出射された光の進行方向を制御する光制御出射面と、前記光制御出射面の反対側に位置する凹部と、前記凹部の開口縁部から径方向に延在する裏面とを有し、前記裏面の少なくとも一部の前記開口縁部に接する領域には、一方向に延在する凸条部または凹条部が互いに平行になるように複数形成されている構成を採る。
【0016】
本発明の発光装置は、発光素子または発光素子パッケージと、本発明の光束制御部材とを有し、前記光束制御部材は、前記凹部および前記裏面の少なくとも一部が前記発光素子または前記発光素子パッケージの発光面と対向するように配置されており、前記裏面のうち前記発光面と対向する領域には、前記凸条部または前記凹条部が形成されている構成を採る。
【0017】
本発明の面光源装置は、本発明の発光装置と、前記発光装置からの光を拡散させつつ透過させる光拡散部材とを有する構成を採る。
【0018】
本発明の表示装置は、本発明の面光源装置と、前記面光源装置からの光を照射される被照射部材とを有する構成を採る。
【発明の効果】
【0019】
本発明の光束制御部材は、凹形状の入射面の開口径よりも大きい発光面を有する発光素子または発光素子パッケージと組み合わせて使用する場合であっても、裏面から入射した光が光拡散部材の特定の領域に集中することを抑制することができる。したがって、本発明の光束制御部材を適用すれば、複数種類の光束制御部材に対して共通の発光素子または発光素子パッケージを使用することが可能となり、発光装置の製造コストを低減させることができる。
【0020】
本発明の光束制御部材を含む面光源装置は、面状の被照射部材を均一に照らすことができる。また、本発明の面光源装置を含む表示装置は、映像などを均一な照度で表示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】特許文献1に記載の光束制御部材の断面図である。
【図2】図2A〜Dは、発光装置の例を示す平面図および断面図である。
【図3】図2Cおよび図2Dに示される発光装置を含む面光源装置の例を示す平面図である。
【図4】実施の形態1の面光源装置の平面図である。
【図5】図4に示されるA−A線の部分拡大断面図である。
【図6】図6A〜Dは、実施の形態1の光束制御部材の構成を示す図である。
【図7】実施の形態1の光束制御部材の底面図である。
【図8】図8A〜Cは、対向面に形成された凸条部の形状を示す図である。
【図9】図9A〜Cは、非対向面に形成された凸部の形状を示す図である。
【図10】図10A,Bは、シミュレーション条件を示す図である。
【図11】図11A〜Cは、対向面から光束制御部材内に入射した光についての受光面における照度分布を示す図である。
【図12】図12A,Bは、対向面から光束制御部材内に入射した光についての受光面における照度分布を示すグラフである。
【図13】実施の形態2の光束制御部材の底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。以下の説明では、本発明の面光源装置の代表例として、液晶表示装置のバックライトなどに適する面光源装置について説明する。これらの面光源装置は、面光源装置からの光を照射される被照射部材(例えば液晶パネル)と組み合わせることで、表示装置として使用されうる。
【0023】
(実施の形態1)
[面光源装置および発光装置の構成]
図4は、本発明の実施の形態1の面光源装置の構成を示す平面図である。図5は、図4に示されるA−A線の部分拡大断面図である。
【0024】
図4および図5に示されるように、実施の形態1の面光源装置100は、基板110、複数の発光装置120、および光拡散部材150を有する。
【0025】
複数の発光装置120は、それぞれ発光素子パッケージ130および光束制御部材140を有しており、基板110の上にマトリックス状に配置されている。より具体的には、図4に示されるように、複数の発光装置120を中心間距離P1で直線上に配置して発光装置列を形成し、このようにして形成された複数の発光装置列を互いに平行になるように中心間距離P2で配置することで、発光装置120をマトリックス状に配置している。ここで発光装置列間の中心間距離P2は、発光装置列内の中心間距離P1よりも大きいものとする。以下の説明では、発光装置列に平行な方向(第1の方向)の軸をx軸、発光装置列の列間方向(第2の方向)の軸をy軸、発光装置からの出射光の光軸方向(第3の方向)の軸をz軸ということがある(図4および図5参照)。
【0026】
発光素子パッケージ130は、1または2以上の発光素子132、蛍光体134およびホルダ136を有している。発光素子132は、面光源装置100(および発光装置120)の光源であり、ホルダ136の凹部内に配置されている。発光素子132は、例えば青色発光ダイオードなどの発光ダイオード(LED)である。蛍光体134は、ホルダ136の凹部内を充填するように、発光素子132上に配置されている。蛍光体134の上面が、発光素子パッケージ130の発光面となる。蛍光体134は、発光素子132からの出射光により励起され、異なる色の蛍光を発する。蛍光体134は、例えば青色光により励起され、黄色の蛍光を発する。蛍光体134を使用することで、発光素子132の出射光とは異なる色の光を、発光素子パッケージ130から出射させることができる。ホルダ136は、反射材で形成された略四角錐台形状の凹部を有している。この凹部の底面には、1または2以上の発光素子132が配置される。
【0027】
光束制御部材140は、発光素子パッケージ130から出射された光の進行方向を制御する拡散レンズである。光束制御部材140は、凹部142(後述)および裏面144(後述)の少なくとも一部が発光素子パッケージ130の発光面と対向するように、発光素子130の上に配置されている。また、光束制御部材140は、裏面144のうち発光素子パッケージ130の発光面と対向する領域である対向面144aに形成された凸条部または凹条部(後述)の延在方向が、前述の発光装置列に平行な方向(第1の方向)と平行になるように配置されている。
【0028】
光束制御部材140は、一体成形により形成されている。光束制御部材140の材料は、所望の波長の光を通過させ得るものであれば特に限定されない。たとえば、光束制御部材140の材料は、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)やポリカーボネート(PC)、エポキシ樹脂(EP)などの光透過性樹脂、またはガラスである。
【0029】
本発明の面光源装置100は、光束制御部材140の構成に主たる特徴を有する。そこで、光束制御部材140については、別途詳細に説明する。
【0030】
光拡散部材150は、光拡散性を有する板状の部材であり、光束制御部材140からの出射光を拡散させつつ透過させる。通常、光拡散部材150は、液晶パネルなどの被照射部材とほぼ同じ大きさである。たとえば、光拡散部材150は、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン(PS)、スチレン・メチルメタクリレート共重合樹脂(MS)などの光透過性樹脂により形成される。光拡散性を付与するため、光拡散部材150の表面に微細な凹凸が形成されているか、または光拡散部材150の内部にビーズなどの光拡散子が分散している。
【0031】
本発明の面光源装置100では、各発光素子パッケージ130から出射された光は、光束制御部材140により基板110の面方向に拡げられ、さらに光拡散部材150により拡散される。その結果、本発明の面光源装置100は、面状の被照射部材(例えば液晶パネル)を均一に照らすことができる。
【0032】
[光束制御部材の構成]
図6は、実施の形態1の光束制御部材140の構成を示す図である。図6Aは、光束制御部材140の平面図であり、図6Bは、光束制御部材140の正面図であり、図6Cは、光束制御部材140の底面図であり、図6Dは、図6Aに示されるD−D線の断面図である。
【0033】
図6A〜Dに示されるように、光束制御部材140は、光制御出射面141、凹部142、入射面143、裏面144、鍔部145および複数の脚部146を有する。
【0034】
光制御出射面141は、発光素子パッケージ130から出射され、光束制御部材140の内部に入射した光の進行方向を制御する。光制御出射面141は、回転対称面であり、鍔部145よりも上側(光拡散部材150側)に向けて突出している。
【0035】
光制御出射面141は、光制御出射面141の中心軸を中心とする所定範囲に位置する第1の出射面141aと、第1の出射面141aの周囲に連続して形成される第2の出射面141bと、第2の出射面141bと鍔部145とを接続する第3の出射面141cとを有する(図6D参照)。第1の出射面141aは、下側(発光素子パッケージ130側)に凸の滑らかな曲面である。第1の出射面141aの形状は、球面の一部を切り取ったような凹形状である。第2の出射面141bは、第1の出射面141aの周囲に位置する、上側(光拡散部材150側)に凸の滑らかな曲面である。第2の出射面141bの形状は、円環状の凸形状である。第3の出射面141cは、第2の出射面141bの周囲に位置する曲面である。図6Dに示される断面において、第3の出射面141cの断面は、直線状であってもよいし、曲線状であってもよい。
【0036】
凹部142は、光束制御部材140の下側(発光素子パッケージ130側)の中央部に形成されている。凹部142の内面は、入射面143として機能する。入射面143は、発光素子パッケージ130から出射された光の大部分を、その進行方向を制御しつつ光束制御部材140の内部に入射させる。入射面143は凹形状の回転対称面であり、光制御出射面141の中心軸と入射面143の中心軸とは一致している。
【0037】
裏面144は、光制御出射面141の反対側に位置し、凹部142の開口縁部から径方向に延在する面である。裏面144は、発光素子パッケージ130から出射された光のうち、入射面143から入射しなかった光を、光束制御部材140の内部に入射させる。
【0038】
鍔部145は、光制御出射面141の外周部と裏面144の外周部との間に位置し、径方向外側に突出している。鍔部145の形状は、略円環状である。鍔部145は、必須の構成要素ではないが、鍔部145を設けることで、光束制御部材140の取り扱いおよび位置合わせが容易になる。鍔部145の厚みは、特に限定されず、光制御出射面141の必要面積や鍔部145の成形性などを考慮して決定される。
【0039】
複数の脚部146は、裏面144の外周部に、裏面144から下側(発光素子パッケージ130側)に向かって突出している円柱状の部材である。複数の脚部146は、発光素子パッケージ130に対して適切な位置に光束制御部材140を支持する。
【0040】
ここで、本発明の主たる特徴について説明する。本発明の光束制御部材は、裏面の少なくとも一部の領域に、一方向に延在する凸条部または凹条部が互いに平行になるように複数形成されていることを一つの特徴とする。凸条部および凹条部の延在方向は、裏面の延在方向(すなわち、光束制御部材の径方向)と略平行である。ここで「凸条部」とは、一方向に直線状の稜線を有する凸部を意味する。また、「凹条部」とは、一方向に直線状の谷底線を有する凹部(溝)を意味する。凸条部および凹条部の表面は、延在方向には曲率を有していない。
【0041】
複数の凸条部または凹条部は、シリンドリカルレンズのように、一方向(凸条部または凹条部の延在方向に直交する方向)には光の進行方向を制御するが、前記一方向に直交する方向(凸条部または凹条部の延在方向)には光の進行方向を制御しない。このため、複数の凸条部または凹条部は、発光素子または発光素子パッケージから出射された光のうち、裏面から光束制御部材の内部に入射した光(従来の光束制御部材では抜け光となる光)の進行方向を、凸条部または凹条部の延在方向に直交する方向へ振り分けることができる。このように裏面に複数の凸条部または凹条部を形成することで、本発明の光束制御部材は、裏面から光が入射する場合であっても、抜け光が光拡散部材150の特定の箇所に集中するのを抑制することができる。
【0042】
複数の凸条部または凹条部は、少なくとも、本発明の光束制御部材を発光素子または発光素子パッケージと組み合わせて使用する際に、発光素子または発光素子パッケージの発光面と対向する領域に形成されている。この条件を満たすことができれば、複数の凸条部または凹条部は、裏面の一部の領域にのみ形成されていてもよいし(実施の形態1参照)、裏面の全部の領域に形成されていてもよい(実施の形態2参照)。
【0043】
凸条部または凹条部の延在方向に直交する断面形状は、特に限定されない。また、凸条部の稜線部分または凹条部の谷底部分は、R面取りされていてもよい。凸条部または凹条部の延在方向に直交する断面形状の例には、三角形、頂部にR形状を有する三角形、半円形などが含まれる。また、凸条部または凹条部の表面は、滑らかな平面または曲面であってもよいし、粗面化処理がなされた平面または曲面であってもよい。
【0044】
実施の形態1の光束制御部材140の説明に戻る。図7は、図6Cに示される光束制御部材140の底面図をより拡大した図である。図7に示されるように、裏面144は、発光素子パッケージ130と対向する対向面144aと、発光素子パッケージ130と対向しない非対向面144bとに分けられる。
【0045】
図8Aは、対向面144aの部分拡大底面図である。また、図8Bは、図8Aに示されるB−B線の断面図であり、図8Cは、図8Aに示されるC−C線の断面図である。これらの図に示されるように、実施の形態1の光束制御部材140では、裏面144の一部である対向面144aに、x軸方向(第1の方向)に延在する複数の凸条部が互いに平行になるように形成されている。延在方向に直交する方向の凸条部の断面形状は、頂部にR形状を有する三角形である(図8B参照)。一方、凸条部の延在方向の断面形状は、長方形である(図8C参照)。これらの凸条部は、シリンドリカルレンズのように、y軸方向には光を拡散させるが、x軸方向には光を拡散も集光もさせない。
【0046】
一方、図9Aは、非対向面144bの部分拡大底面図である。また、図9Bは、図9Aに示されるB−B線の断面図であり、図9Cは、図9Aに示されるC−C線の断面図である。これらの図に示されるように、実施の形態1の光束制御部材140では、裏面144の対向面144a以外の領域である非対向面144bには、略四角錐形状の凸部がマトリックス状に配置されている。凸部の断面形状は、頂部にR形状を有する三角形である(図9Bおよび図9C参照)。これらの凸部は、x軸方向にもy軸方向にも光を拡散させる。
【0047】
このように、実施の形態1の光束制御部材140では、裏面144の一部である対向面144aに、一方向に延在する複数の凸条部が互いに平行になるように形成されている。また、実施の形態1の光束制御部材140は、これらの凸条部の延在方向が前述の発光装置列に平行な方向(第1の方向;x軸方向)と平行になるように配置されている。このため、実施の形態1の光束制御部材140の裏面144の一部(対向面144a)が発光素子パッケージ130の発光面と対向しても(図5参照)、発光素子パッケージ130から出射され、対向面144aから光束制御部材140内に入射した光は、シリンドリカルレンズと同様の機能を有する凸条部によりy軸方向に振り分けられた光となり、広い範囲を照射する。凸条部により光が振り分けられる方向は、凸条部の延在方向と直交する方向(y軸方向)、すなわち、面光源装置100において発光装置120の中心間距離が広い発光装置列の列間方向(第2の方向)である(図4参照)。このため、光束制御部材140は、発光装置120が密集している領域の上部に抜け光が集中するのを抑制し、面光源装置100の発光面の品位を向上させることができる。
【0048】
[光束制御部材からの出射光を受光する面における照度分布のシミュレーション]
図5に示される実施の形態1の光束制御部材140からの出射光の受光面における照度分布をシミュレーションした。前述の通り、実施の形態1の光束制御部材140では、裏面144の一部である対向面144aに、一方向に延在する複数の凸条部が互いに平行になるように形成されている。また、比較のため、実施の形態1の光束制御部材140(実施例)に加えて、裏面の全面が平面である光束制御部材(比較例1)と、裏面の全面に略四角錐形状の凸部がマトリックス状に形成されている光束制御部材(比較例2)についても、照度分布をシミュレーションした。
【0049】
図10は、シミュレーションに用いた発光素子パッケージ130および光束制御部材140の大きさを示す図である。図10Aは、断面図であり、図10Bは、平面図である。この光束制御部材140では、発光素子パッケージ130の発光面から出射された光が、入射面143または対向面144aのいずれかに入射するように(非対向面144bには入射しないように)対向面144aが形成されている。図10Aに示される各パラメータの値は以下のように設定した。
・光制御出射面の外径d: 15.5mm
・凹部の開口径d: 3.5mm
・基板表面から発光素子パッケージの発光面までの高さh: 0.8mm
・基板表面から裏面までの高さh: 1.1mm
・基板表面から光制御出射面の最高点までの高さh: 5.8mm
・基板表面から受光面までの高さh: 23.0mm
・発光素子パッケージの発光面のうち凹部と対向していない面の長さl: 1mm
【0050】
実施の形態1(実施例)の光束制御部材140において、対向面144aに配置されている凸条部の断面形状は、図8Bに示されるように、頂部にR形状を有する二等辺三角形とした。各パラメータの値は以下のように設定した。
・底辺の長さ(凸条部の中心間距離): 0.5mm
・頂角の角度: 90°
・頂部の曲率半径: 0.2mm
・底辺から頂部までの高さ: 0.17mm
【0051】
実施の形態1(実施例)の光束制御部材140および裏面の全面に凸部がマトリックス状に形成されている比較例2の光束制御部材において、マトリックス状に形成されている略四角錐形状の凸部の断面形状は、図9Bおよび図9Cに示されるように、頂部にR形状を有する二等辺三角形とした。各パラメータの値は以下のように設定した。
・底辺の長さ(凸部の中心間距離): 0.5mm
・頂角の角度: 90°
・頂部の曲率半径: 0.2mm
・底辺から頂部までの高さ: 0.17mm
【0052】
今回のシミュレーションでは、従来の光束制御部材を使用した場合に「抜け光」(図2D参照)となる光の受光面における照度分布について調べた。すなわち、図10Bにおいて黒塗りで示される、発光素子パッケージ130の発光面のうち、光束制御部材140の凹部142と対向していない面からのみ光が出射されたものとしてシミュレーションを行った。
【0053】
図11A〜Cは、受光面における照度分布を示す図である。図11Aは、裏面の全面が平面である比較例1の光束制御部材のシミュレーション結果である。図11Bは、裏面の全面に略四角錐形状の凸部がマトリックス状に形成されている比較例2の光束制御部材のシミュレーション結果である。図11Cは、実施の形態1(実施例)の光束制御部材140のシミュレーション結果である。これらの図において、x軸およびy軸の原点は、凹部142の開口部の中心である。
【0054】
図12は、受光面における照度分布を示すグラフである。図12Aは、x軸方向(y=0mm)の位置と照度との関係を示すグラフである。図12Bは、y軸方向(x=−5mm)の位置と照度との関係を示すグラフである。
【0055】
図11A、図12Aおよび図12Bに示されるように、裏面の全面が平面である比較例1の光束制御部材を使用した場合、裏面から入射した光は、そのまま抜け光となり、光束制御部材の上部に集中してしまった。このような発光装置を図4に示されるように配置して面光源装置を構成した場合、発光装置列の上に輝度の高い線が現れてしまう。
【0056】
また、図11B、図12Aおよび図12Bに示されるように、裏面の全面に凸部がマトリックス状に形成されている比較例2の光束制御部材を使用した場合、裏面から入射した光は、比較例1の光束制御部材を使用した場合に比べて、x軸およびy軸の両方向にある程度拡散した。しかしながら、光束制御部材の上部における照度が依然高いため、このような発光装置を図4に示されるように配置して面光源装置を構成した場合も、発光装置列の上に輝度の高い線が現れてしまう。
【0057】
一方、図11C、図12Aおよび図12Bに示されるように、裏面144の対向面144aに凸条部が形成されている実施の形態1(実施例)の光束制御部材140を使用した場合、対向面144aから入射した光は、比較例1および比較例2の光束制御部材を使用した場合に比べて、y軸方向に顕著に拡散した。このような発光装置を図4に示されるように配置して面光源装置を構成した場合、輝度の高い線の発生を抑制しつつ、発光装置列間の輝度を向上させて、面状の被照射部材(例えば液晶パネル)を均一に照らすことができる。
【0058】
以上のように、本実施の形態の光束制御部材140は、凹形状の入射面143の開口径よりも大きい発光面を有する発光素子または発光素子パッケージ130と組み合わせて使用する場合であっても、裏面から入射した光が光拡散部材の特定の領域(例えば、発光装置列上の領域)に集中することを抑制することができる。したがって、本実施の形態の光束制御部材140を適用すれば、複数種類の光束制御部材140に対して共通の発光素子または発光素子パッケージ130を使用することが可能となり、発光装置120の製造コストを低減させることができる。
【0059】
なお、本実施の形態では、非対向面144bに略四角錐形状の凸部をマトリックス状に形成した例について説明したが、非対向面144bの形状はこれに限定されない。たとえば、非対向面144bは、平面であってもよいし、シボ加工が施された面であってもよい。
【0060】
(実施の形態2)
[面光源装置および発光装置の構成]
本発明の実施の形態2の面光源装置および発光装置は、実施の形態1の光束制御部材140の代わりに実施の形態2の光束制御部材240を有する点において、図4および図5に示される実施の形態1の面光源装置100および発光装置120と異なる。そこで、本実施の形態では、実施の形態2の光束制御部材240についてのみ説明する。
【0061】
[光束制御部材の構成]
図13は、実施の形態2の光束制御部材240の底面図である。実施の形態2の光束制御部材240の平面図および正面図は、それぞれ、図6Aおよび図6Bに示される実施の形態1の光束制御部材140の平面図および正面図と同じである。なお、図6A〜Dに示される実施の形態1の光束制御部材140と同一の構成要素については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0062】
図13に示されるように、実施の形態2の光束制御部材240では、裏面144の全面に複数の凸条部が形成されている。すなわち、実施の形態2の光束制御部材240では、裏面144の対向面144aだけでなく非対向面144bにおいても凸条部が形成されている。
【0063】
[効果]
実施の形態2の光束制御部材240は、実施の形態1の光束制御部材140同様の効果を有する。
【0064】
なお、上記各実施の形態では、発光素子パッケージを使用する例について説明したが、発光素子パッケージの代わりに発光素子を使用してもよい。
【0065】
また、上記各実施の形態では、鍔部を有する光束制御部材について説明したが、本発明の光束制御部材は鍔部を有していなくてもよい。
【0066】
また、上記各実施の形態では、発光面の長軸が第1の方向(x軸方向)と平行になり、短軸が第2の方向(y軸)と平行になるように、発光素子または発光素子パッケージを配置する例について説明したが、発光面の短軸が第1の方向(x軸方向)と平行になり、長軸が第2の方向(y軸)と平行になるように、発光素子または発光素子パッケージを配置してもよい。発光素子の長軸が第2の方向と平行になるように発光素子または発光素子パッケージを配置する場合であっても、対向面における凸条部の延在方向が第1の方向と平行になるように光束制御部材を配置することで、上記各実施の形態と同様の効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明の光束制御部材、発光装置および面光源装置は、例えば、液晶表示装置のバックライトや一般照明などに適用することができる。
【符号の説明】
【0068】
10 拡散レンズ
12 第1のレンズ面
14 第2のレンズ面
16 屈折部
18 支持部
20a,20b 発光装置
30 発光素子パッケージ
32 発光素子
34 蛍光体
40 光束制御部材
42 入射面
50 面光源装置
52 基板
54 光拡散部材
100 面光源装置
110 基板
120 発光装置
130 発光素子パッケージ
132 発光素子
134 蛍光体
136 ホルダ
140,240 光束制御部材
141 光制御出射面
141a 第1の出射面
141b 第2の出射面
141c 第3の出射面
142 凹部
143 入射面
144 裏面
144a 対向面
144b 非対向面
145 鍔部
146 脚部
150 光拡散部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子または発光素子パッケージから出射された光の進行方向を制御する光束制御部材であって、
発光素子または発光素子パッケージから出射された光の進行方向を制御する光制御出射面と、
前記光制御出射面の反対側に位置する凹部と、
前記凹部の開口縁部から径方向に延在する裏面と、を有し、
前記裏面の少なくとも一部の前記開口縁部に接する領域には、一方向に延在する凸条部または凹条部が互いに平行になるように複数形成されている、
光束制御部材。
【請求項2】
前記凸条部または前記凹条部の前記延在方向に直交する断面形状は、三角形、頂部にR形状を有する三角形、または半円形である、請求項1に記載の光束制御部材。
【請求項3】
前記凸条部または前記凹条部の表面は、粗面化処理がなされている、請求項1に記載の光束制御部材。
【請求項4】
発光素子または発光素子パッケージと、請求項1〜3のいずれか一項に記載の光束制御部材とを有し、
前記光束制御部材は、前記凹部および前記裏面の少なくとも一部が前記発光素子または前記発光素子パッケージの発光面と対向するように配置されており、前記裏面のうち前記発光面と対向する領域には、前記凸条部または前記凹条部が形成されている、
発光装置。
【請求項5】
請求項4に記載の複数の発光装置と、前記発光装置からの光を拡散させつつ透過させる光拡散部材とを有する、面光源装置。
【請求項6】
前記複数の発光装置は、第1の方向における中心間距離が前記第1の方向に直交する第2の方向における中心間距離よりも小さくなるように、マトリックス状に配置されており、
前記凸条部または前記凹条部の延在方向は、前記第1の方向と平行である、
請求項5に記載の面光源装置。
【請求項7】
請求項5または請求項6に記載の面光源装置と、前記面光源装置からの光を照射される被照射部材とを有する、表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図12】
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【図13】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−105076(P2013−105076A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−249604(P2011−249604)
【出願日】平成23年11月15日(2011.11.15)
【出願人】(000208765)株式会社エンプラス (403)
【Fターム(参考)】