説明

光毒性抑制剤

【課題】 紫外線に起因して誘発される皮膚への炎症、肌荒れ、皮膚老化、皮膚癌等の抑制あるいはそれらの予防を目的として、優れた光毒性抑制作用を有し、かつ、長期間使用しても安全な光毒性抑制剤を提供する。
【解決手段】 雪霊芝(Arenaria kansuensis Maxim.)の葉、茎、花、根等の植物体の一部又は全草を水、エタノール等の溶媒によって抽出した抽出物を有効成分とすることにより、優れた光毒性抑制作用を有する光毒性抑制剤を得ることができる。本光毒性抑制剤はそのまま利用できる他、化粧料、飲食品への配合が可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は紫外線に起因して誘発される皮膚への炎症、肌荒れ、皮膚老化、皮膚癌等の抑制あるいはそれらの予防を目的として利用できる新規で安全性に優れた光毒性抑制剤を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
皮膚は日常の様々なストレスから生体を防御する重要な役割をもっている。中でも紫外線が皮膚に及ぼすダメージは大きく、紫外線に曝露されることで上記疾病等が誘発されることが知られている。
本質的に上記疾病等を予防・改善するには紫外線によって誘発される光毒性作用を抑制することが有効であると考えられ、そのための光毒性抑制剤が求められている。
本発明に用いる雪霊芝の抽出物には様々な有効性(特許文献1、2:保湿作用、メラニン生成抑制作用)が知られているが、光毒性抑制作用は知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−077079号
【特許文献2】特開2008−280249号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
人は紫外線に日々曝露され、その生体へのダメージも大きいことから、光毒性抑制剤を化粧料や食品に配合し、日常的かつ継続的に使用あるいは摂取する必要がある。本発明は光毒性抑制剤の新規な開発を目的としており、光毒性抑制作用を有し、かつ、長期間使用しても安全な光毒性抑制剤を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題について鋭意研究した結果、種々の植物抽出物の中から、雪霊芝抽出物に優れた光毒性抑制作用を見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
本発明で使用する雪霊芝(Arenaria kansuensis Maxim.)は、チベット、甘粛、青海、四川西部等中国で多く分布する多年生の矮小草本で、石灰岩の高山の石の割れ目か、草原に生える。雪霊芝の植物体としては、葉、茎、花、根等の植物体の一部又は全草が挙げられる。好ましくは、植物体の全草が良い。
【0007】
雪霊芝抽出物の抽出方法としては、例えば、雪霊芝の植物体を細かく切断し、溶媒を加えて抽出する方法が挙げられる。抽出は、室温で行ってもよいし、加熱してもよい。抽出物は、抽出した溶液のまま用いても良く、必要に応じて、濃縮、希釈及び濾過処理、活性炭等による脱色、脱臭処理等をして用いても良い。更には、抽出した溶液を濃縮乾固、噴霧乾燥、凍結乾燥等の処理を行い、乾燥物として用いても良い。
【0008】
抽出する溶媒としては、例えば、水、低級アルコール類(メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール等)、液状多価アルコール(1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン等)、アセトニトリル、エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチル等)、炭化水素類(ヘキサン、ヘプタン、流動パラフィン等)、エーテル類(エチルエーテル、テトラヒドロフラン、プロピルエーテル等)が挙げられる。好ましくは、水、低級アルコール及び液状多価アルコール等の極性溶媒が良く、特に好ましくは、水、エタノール、1,3−ブチレングリコール及びプロピレングリコールが良い。これらの溶媒は一種でも二種以上を混合して用いても良い。
【0009】
本発明の光毒性抑制剤には、抽出物の効果を損なわない範囲内で、通常の化粧品や飲食品に用いられる成分である油脂類、ロウ類、炭化水素類、脂肪酸類、アルコール類、エステル類、界面活性剤、金属石鹸、pH調整剤、防腐剤、香料、保湿剤、粉体、紫外線吸収剤、増粘剤、色素、酸化防止剤、キレート剤等の成分を配合することもできる。
【0010】
本発明の雪霊芝の抽出物はそのまま光毒性抑制剤として利用できる他、化粧料及び飲食品への配合が可能であり、その配合量としては特に規定するものではないが、通常0.001重量%以上、好ましくは0.01〜10重量%が良い。0.001重量%未満では十分な効果が得られず、10重量%を超えると不経済である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の光毒性抑制剤は、雪霊芝の抽出物を有効成分とし、優れた光毒性抑制作用を有するものであり、直接的に光毒性抑制剤として使用することにより、又は同抽出物を添加混合した化粧料あるいは飲食品を常時使用あるいは摂取することにより、特にヒトに対して有害な紫外線による皮膚への炎症、肌荒れ、皮膚老化、皮膚癌等の抑制あるいはそれらの予防に繋がり、健康を保持する効果が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明を詳細に説明するため、本発明の実施例として製造例及び実験例を挙げるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【実施例1】
【0013】
製造例1 雪霊芝の熱水抽出物
雪霊芝の全草75gに精製水1500mLを加え、95〜100℃で2時間抽出した後、濾過し、その濾液を濃縮し、凍結乾燥して雪霊芝の熱水抽出物を0.8g得た。
【0014】
製造例2 雪霊芝の30%エタノール抽出物
雪霊芝の地上部75gに30%エタノール水溶液1500mLを加え、常温で7日間抽出した後、濾過し、その濾液を濃縮乾固して、雪霊芝の30%エタノール抽出物を2.4g得た。
【0015】
製造例3 雪霊芝のエタノール抽出物
雪霊芝の全草75gにエタノール1500mLを加え、常温で7日間抽出した後、濾過し、その濾液を濃縮乾固して、雪霊芝のエタノール抽出物を3.1g得た。
【実施例2】
【0016】
光毒性抑制作用の評価
光毒性抑制作用の評価は、以下の手順にて実施した。マウスBalb/c3T3細胞を1ウェル当たり1.0×10個となるように96穴マイクロプレートに播種した。播種培地にはダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)に10重量%のウシ胎児血清を添加したものを用いた。37℃で24時間培養後、任意の濃度の試料を添加した試験培地に交換し、さらに1時間培養した。
培養後、EBSS緩衝液に交換し、UVA(5J/cm)を照射した後、再びDMEM培地に交換し、37℃で24時間培養した。その後、50μg/mLニュートラルレッド含有DMEM培地に交換し、37℃で2時間培養後、1%酢酸を含む50%エタノール水溶液にて抽出した。抽出液の540nmの吸光度を測定し、光毒性抑制作用を評価した。
尚、試験ではUVA照射部と非照射部を設定し、はじめに試料濃度毎に非照射部の細胞生存率を100とした時のUVA照射部の細胞生存率を算出した(1)。次にUVA照射による光毒性抑制作用を評価するため、ブランクのUVA照射部の細胞生存率を100とした相対値にてUVA照射部における光毒性抑制率を算出した(2)。
【0017】
表1及び表2に示すように雪霊芝の抽出物は添加濃度の上昇にともない、ブランクの細胞生存率を100とした相対値にて算出した細胞生存率も高くなり、明らかに光毒性抑制作用を有することが認められた。

(表1)雪霊芝熱水抽出物(製造例1)による光毒性抑制効果

(表2)雪霊芝エタノール抽出物(製造例3)による光毒性抑制効果

【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明は光毒性抑制剤の新規な開発を目的としており、光毒性抑制作用を有し、かつ、長期間使用しても安全な光毒性抑制剤を提供するものである。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
雪霊芝(Arenaria kansuensis Maxim.)の抽出物を含有することを特徴とする光毒性抑制剤。
【請求項2】
雪霊芝(Arenaria kansuensis Maxim.)の全草から抽出した抽出物を含有することを特徴とする光毒性抑制剤。
【請求項3】
雪霊芝(Arenaria kansuensis Maxim.)の水抽出物を含有することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の光毒性抑制剤。



【公開番号】特開2012−121828(P2012−121828A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−273101(P2010−273101)
【出願日】平成22年12月8日(2010.12.8)
【出願人】(592262543)日本メナード化粧品株式会社 (223)
【Fターム(参考)】