光波距離計
【課題】発光量調節に機械的駆動を用いず、かつ光量調節作業を繰り返すことなく受光光量が最適に調整される光波距離計を提供する。
【解決手段】所定の固定抵抗値を持つ抵抗器を抵抗値大から小にかけて複数設けて、演算処理部において、受光信号振幅を見ながらそのうちの一を光送出手段に選択的に負荷する構成とした。演算処理部において、信号変換手段に入力される受光信号振幅が、最大入力値以上と判定された場合には、最大入力値未満となるまで現段階の発光量より小さい発光量に下げるように信号選択を繰り返し、最大入力値以上と判定された場合には、最大入力値を超えない最大の発光量となるまで現発光量より大きい発光量に上げるように信号選択を繰り返すことで、断続的な複数パターンの発光量の中から最適な発光量が決定され、その信号選択回数は最大でも用意した抵抗器数と同じ回数で済み、光量調節作業が大幅に早くなる。
【解決手段】所定の固定抵抗値を持つ抵抗器を抵抗値大から小にかけて複数設けて、演算処理部において、受光信号振幅を見ながらそのうちの一を光送出手段に選択的に負荷する構成とした。演算処理部において、信号変換手段に入力される受光信号振幅が、最大入力値以上と判定された場合には、最大入力値未満となるまで現段階の発光量より小さい発光量に下げるように信号選択を繰り返し、最大入力値以上と判定された場合には、最大入力値を超えない最大の発光量となるまで現発光量より大きい発光量に上げるように信号選択を繰り返すことで、断続的な複数パターンの発光量の中から最適な発光量が決定され、その信号選択回数は最大でも用意した抵抗器数と同じ回数で済み、光量調節作業が大幅に早くなる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、目標反射物までの直線距離を光電的に測定する位相差方式の光波距離計に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の光波距離計では、強度変調された信号が発光素子から光として送出され、係る光の一方は目標反射物で反射されて得られる測距光として、他方の光は参照光路へ出射されて得られる参照光として、それぞれ受光素子で受光されて電気信号に変換された後、増幅器、周波数変換器等を経たのち、A/D変換器で測定され、アナログ信号からデジタルデータへと信号変換される。係る受光信号のうち、A/D変換器の最大入力値を超えない測定可能域の信号が、演算処理部にて信号振幅、位相情報を解析されて、測距信号と参照信号の位相差が算出されることで、目標反射物までの直線距離(測距値)が得られる。
【0003】
係る光波距離計では、光波距離計から目標反射物までの距離の遠近や、目標反射物がプリズムのような高反射物か否かによって、反射された測距光の受光光量にバラツキが発生し、測距値の算出に影響する。即ち、測距光の受光光量が大きく、測距信号がA/D変換器の最大入力値以上となった場合(測距信号がA/D変換器の飽和領域となった場合)には、測定可能域の信号とならず測距値が算出されない。一方、測距光の受光光量が小さい場合には、A/D変換器で受光信号の振幅が適切に分解されず信号変換の際に誤りが生じ、測距値に誤差が生じる。このため、測距信号がA/D変換器で測定可能となるよう、受光光量を最適受光量に調整する必要がある。
【0004】
そこで、例えば特許文献1に示すように、モータ駆動する可変受光濃度フィルタを目標反射物と受光素子の間に設け、フィルタを除々に絞ることで受光光量を調節し、最適受光量に調整するものがある。或いは、特許文献2に示すように、可変受光濃度フィルタに代えて、光を送出する発光素子に、可変抵抗器をデジタル制御するデジタルポテンショメータを接続し、発光素子に負荷する抵抗値を除々に減少或いは増加させて発光素子の発光量を調節し、受光光量を最適受光量に調整するものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公昭51−8340号公報(図2)
【特許文献2】特開2011−013108号公報(段落番号0030〜0034、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1のように可変受光濃度フィルタをモータによって除々に絞り調節する光量調節作業では、第1に、モータの使用年数により機械的不具合が生じるし、第2に、大気の揺らぎによって目標反射物からの反射光量が大きく変動すると、A/D変換器の飽和領域となる測距信号が増え、それらが測定可能域に収まるまで光量調節が繰り返されるため、光量調節に時間がかかり、所定の測距仕様時間内に終了しないという問題があった。
【0007】
また、特許文献2では、光量調節作業がデジタルポテンショメータによる電気的制御となったことで、機械的制御よりも制御時間は早くなるものの、受光信号がA/D変換器の測定可能域となるまで(抵抗値を除々に変化させて)光量調節作業を繰り返し行うという点は可変受光濃度フィルタと同様であり、やはり光量調節に時間を要していた。
【0008】
本願発明は、係る問題点に鑑みて為されたものであり、その目的は、発光量調節に機械的駆動を用いず、かつ光量調節作業を繰り返すことなく受光光量が最適受光量に調整される、高速で高精度な測距が可能な光波距離計を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の光波距離計においては、複数の変調周波数で変調された光を送出する光送出手段と、前記光送出手段の光を、測定地点に配置した目標反射物までを往復する測距光路または参照光路のうち選択された一方に送出する光分出手段と、前記測距光路を通過した測距光または前記参照光路を通過した参照光を受光し、それぞれの受光信号を出力する受光手段と、前記受光信号を測定し、アナログ信号からデジタルデータへ変換する信号変換手段と、前記光送出手段に負荷されて発光量を調節する抵抗器と、前記抵抗器を前記受光信号の信号振幅に応じて設定し、前記信号変換手段でデジタル化された測距信号と参照信号の位相差によって前記目標反射物までの直線距離である測距値を算出する演算処理部と、を備えた光波距離計であって、前記抵抗器は複数であって、抵抗値大から小にかけてそれぞれが所定の固定抵抗値を持ち、そのうちの一が該抵抗器と一対一対応の選択信号により選択されて、前記光送出手段の発光量が小から大に切り換えられる抵抗器群として設け、前記演算処理部に、前記信号変換手段に入力された前記受光信号の信号振幅が、該信号変換手段の最大入力値以上か否かを判定する受光レベル判定手段と、前記受光レベル判定手段により、前記最大入力値以上と判定された場合には、最大入力値未満となるまで前記光送出手段の発光量を小に切り換える前記選択信号を選択し、前記最大入力値以上と判定された場合には、最大入力値を超えない最大の発光量となるまで前記光送出手段の発光量を大に切り換える前記選択信号を選択する光量選択手段と、を設けた。
【0010】
(作用) 所定の固定抵抗値を持つ抵抗器を抵抗値大から小にかけて複数設けて、そのうちの一を演算処理部で受光信号振幅を見ながら選択し、光送出手段の光の出力を調整することで、断続的な複数パターンの発光量の中から最適な発光量に決定されるように構成した。即ち、演算処理部において、信号変換手段に入力される受光信号の信号振幅が、信号変換手段の最大入力値以上の飽和領域か、最大入力値未満の測定可能域かを見ながら、最大入力値以上と判定された場合には、最大入力値未満となるまで現段階の発光量から降順或いは数段階小さい発光量に下げるように信号選択を繰り返し、最大入力値未満と判定された場合には、最大入力値を超えない最大の発光量となるまで現発光量から昇順或いは数段階大きい発光量に上げるように信号選択を繰り返すことで、受光信号振幅が(受光レベルが)最適(最大入力値を超えない最大の発光量)となる最適な発光量に決定する。
【0011】
請求項2においては、請求項1に記載の光波距離計において、前記光量選択手段において、前記光送出手段の発光量を現段階より大に切り換える前記選択信号を選択する際に、前記選択信号数をn、該選択信号に対応する前記光送出手段の発光量を小から大にかけて発光量1、発光量2・・・発光量n、前記現発光量を発光量k(k<n)としたとき、現発光量kの次に選択する発光量を、発光量kの状態での前記受光信号の信号振幅が、前記最大入力値のr^2倍以上となっていれば発光量k+1となる選択信号を選択、前記最大入力値のr^3倍以上r^2倍未満となっていれば発光量k+2となる選択信号を選択、・・・・・・・前記最大入力値のr^(n−k)倍以上r^(n−(k+1))倍未満となっていれば発光量(n−1)となる選択信号を選択、前記最大入力値のr^(n−k)倍未満となっていれば発光量nとなる選択信号を選択する(但しrは発光量減衰定数(0<r<1))、次発光量判定手段を設けた。
【0012】
(作用) 信号変換手段で測定可能な受光レベルは最大入力値未満の範囲までであるため、現発光量kの状態の受光レベルが飽和領域である場合には、その信号振幅がどれほど最大入力値より大きいか信号変換手段で判断できない。しかし、現発光量kで飽和していない(測距可能域の)場合は、その信号振幅を測定可能であるため、現発光量kの受光レベルが最大入力値に対してどれほど小さいかを測定することができるので、信号振幅が最大入力値の何倍かを算出することで、次発光量を現発光量kから何段階上げれば良いのか判定することができる。
【0013】
請求項3においては、請求項1に記載の光波距離計において、前記光量選択手段において、前記選択信号数をn、該選択信号に対応する前記光送出手段の発光量を小から大にかけて発光量1、発光量2・・・発光量nとしたとき、初回の発光量を、選択信号数nを超えない2^m(但し、mは整数かつ2^(m+1)>n≧2^m)に対応する発光量2^mから始め、前記受光レベル判定手段により、現発光量が前記最大入力値以上と判定された場合には、前記光送出手段の発光量を、現発光量の次数を1減じた発光量分減算し、前記最大入力値未満と判定された場合には、現発光量の次数を1減じた発光量分加算する(但し、加算の結果発光量nを超える場合には、加算前の発光量に戻し、さらに次数を1減じた発光量分を加算する)ことを、次数mが0となるまで繰り返し、前記次数加減操作で探索した発光量のなかから、最大入力値を超えない最大の発光量となる前記選択信号を選択する最適発光量探索手段を設けた。
【0014】
(作用) 例えば、選択信号数n=100で、最適な発光量が発光量47の場合、初回の発光量を、nを越えない最大の2の冪乗2^mに対応する発光量2^m、即ち100>2^6=64(m=6)から始める。受光レベルを判定すると、初回発光量64>47であるので、次数を1下げ(m=5)発光量を半分に減じて32(64−32)とし、m≠0であるので受光レベルを判定すると、32<47であるので、さらに次数を1下げ(m=4)た発光量分を加算して48(64−32+16)とし、48>47であるので、さらに次数を1下げ(m=3)た発光量分を減算して40(64−32+16−8)とし、40<47であるので、さらに次数を1下げ(m=2)た発光量分を加算して44(64−32+16−8+4)とし、44<47であるので、さらに次数を1下げ(m=1)た発光量分を加算して46(64−32+16−8+4+2)とし、46<47であるので、さらに次数を1下げ(m=0)た発光量分を加算して47(64−32+16−8+4+2+1)とし、m=0まで次数が下がったので受光レベルを判定すると、発光量47では最大入力値を超えない。そして、発光量64→32(64−32)→48(64−32+16)→40(64−32+16−8)→44(64−32+16−8+4)→46(64−32+16−8+4+2)→47(64−32+16−8+4+2+1)と操作した発光量の中で、最大入力値を超えない発光量は発光量32、40、44、46、47であり、このうち最大発光量は47と選択できる。なお、最適な発光量47を見つけるための信号選択回数は7回である。
【0015】
また、最適な発光量が96の場合は、初回発光量64<96であるので、次数を1下げ(m=5)た発光量32を現発光量に加算96(64+32)する。発光量96は発光量100を超えず、m≠0であるので、受光レベルを判定すると、96=96で最大入力値を超えないので、さらに次数を1下げ(m=4)た発光量分を加算して112(64+32+16)とすると、発光量100を超えるので、加算前の発光量96に戻し、さらに次数を1下げ(m=3)た発光量分を加算して104(64+32+8)とすると、発光量100を超えるので、加算前の発光量96に戻し、さらに次数を1下げ(m=2)た発光量分を加算して100(64+32+4)とすると、100>96であるので、さらに次数を1下げ(m=1)た発光量分を減算して98(64+32+4−2)とし、98>96であるので、さらに次数を1下げ(m=0)た発光量分を減算して97(64+32+4−2−1)とし、m=0まで次数が下がったので、受光レベルを判定すると発光量97は最大入力値を超えるので、発光量64→96→100→98→97と操作した発光量の中で、最大入力値を超えない最大発光量は96と選択できる。なお、最適な発光量96を見つけるための信号選択回数は5回である。
【0016】
請求項4においては、請求項1〜3のいずれかに記載の光波距離計において、前記目標反射物が高反射物でないノンプリズム測距の場合には、前記光量選択手段により前記光送出手段の発光量が切り換えられ、前記目標反射物が高反射物であるプリズム測距の場合には、予め設定された発光量が前記光送出手段から送出され、前記受光信号が前記信号変換手段の前記最大入力値未満の場合にはそのまま測距が行われ、前記受光信号が前記最大入力値以上である場合には、前記測距光路間に濃度フィルタが挿入されて測距が行われるよう、濃度フィルタ挿入出手段を設けた。
【0017】
(作用) ノンプリズム測距が選択された場合、目標反射物からの反射光量は目標反射物によって異なり最適な発光量の決定が困難であるため、光量調節作業が短縮化できる光量選択手段を用いるのが有用である。一方、プリズム測距が選択された場合は、目標反射物からの反射光量がノンプリズム測距より多いことが経験的に分かっているので、信号変換手段の最大入力値以上とならないであろう小さな発光量、例えば、複数段階用意された発光量のうち最小の発光量を送出するよう予め設定する。係る最小発光量でも信号変換手段の最大入力値以上となるのは、高反射物(反射プリズムやミラー等)を近距離(0m〜10m程度)に設置し、送出した光が全て受光側に入射された場合であり、高反射物との距離が遠距離になるほど、送出した光が拡散されて全て受光側に入射されなくなるため飽和しにくくなる。そこで、固定濃度フィルタを挿入して測距光の受光光量を一定量減衰させ、近距離の高反射物でも飽和しないようにすると、高反射物との距離に依らず、受光信号が確実に信号変換手段の測定可能域に入る。
【0018】
請求項5においては、請求項4に記載の光波距離計において、前記演算処理部に、前記ノンプリズム測距において、発光量が最小となる前記選択信号を選択しても、前記受光信号の信号振幅が前記信号変換手段の最大入力値以上となる場合には、自動的に前記プリズム測距に移行させる測距手段自動変更手段を設けた。
【0019】
(作用) ノンプリズム測距において、最小の発光量を用いても、受光信号が信号変換手段の飽和領域に入る場合には、目標反射物が高反射物を視準していると演算処理部が判断し、自動的にプリズム測距に移行する。
【発明の効果】
【0020】
請求項1の光波距離計によれば、従来のデジタルポテンショメータのように、抵抗値を除々に(連続的に)変化させて最適な発光量を探るように光量調節するのではなく、断続的なパターンの発光量の中から選択するだけなので、その信号選択回数は最大でも用意した抵抗器数と同じ回数で済み、光量調節作業が大幅に早くなる。
【0021】
また、例えば、初回に選択した発光量で最大入力値以上と判定された場合に、2回目の発光量を数段階小さい発光量を選択し以降は昇順で発光量を上げる、或いは、初回発光量で最大入力値未満と判定された場合に、2回目の発光量を数段階大きい発光量を選択し以降は降順に発光量を下げる、といったように信号選択すれば、挟み撃ち的に最適な発光量に決定できるため、信号選択回数が減り、より光量調節作業が早くなる。
【0022】
また、光量調節が機械的動作によらず行われるので、使用年数の経過によって機械的不具合が生じることは無い。
【0023】
また、受光信号が測定可能域に確実に入るように最適な発光量に決定されるため、略全ての受光信号を測距値算出に用いることができるので、高精度な測距値を得ることができる。
【0024】
請求項2の光波距離計によれば、光送出手段の発光量を現段階より大に切り換える選択信号を選択する際に、判定基準を設けることができ、最適な次発光量を予測して一気に発光量をジャンプさせることができるので、最適な発光量を2回の信号選択ですぐに見つけることができる。
【0025】
請求項3の光波距離計によれば、選択信号がn個あり、初回発光量をnを超えない最大の2の冪乗2^mから始めると(但し、mは整数かつ2^(m+1)>n≧2^m)、最適な発光量を見つけられる回数はm+1回以内で終了する。最適な発光量が2進法で探索されるため、少ない信号選択回数で効率良く見つけることができる。
【0026】
請求項4の光波距離計によれば、ノンプリズム測距の場合は光量選択手段により、光量調節作業が短縮化される。プリズム測距の場合は、固定濃度フィルタを用いるか用いないかの2択であるため、もはや光量調節作業はない。結果、どちらの場合であったとしても、従来の可変濃度フィルタによる調節やデジタルポテンショメータによる調節よりも、光量調節が格段に速く終了する。
【0027】
請求項5の光波距離計によれば、ユーザがノンプリズム測距,プリズム測距の別を誤った場合であっても、適切な測距が自動的に成される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本願発明の第1の実施例に係る光波距離計のブロック図
【図2】同光波距離計においてプリズム測距モードが選択された場合の測距の手順を示すフローチャート図
【図3】同光波距離計においてノンプリズム測距モードが選択された場合の測距の手順を示すフローチャート図
【図4】本願発明の第2の実施例に係る光波距離計において、ノンプリズム測距モードが選択された場合の測距の手順を示すフローチャート図
【図5】本願発明の第3の実施例に係る光波距離計において、ノンプリズム測距モードが選択された場合の測距の手順を示すフローチャート図
【図6】本願発明の第4の実施例に係る光波距離計において、ノンプリズム測距モードが選択された場合の測距の手順を示すフローチャート図
【図7】本願発明の第5の実施例に係る光波距離計のブロック図
【図8a】同光波距離計において、ノンプリズム測距モードが選択された場合の測距の手順を示すフローチャート図
【図8b】同光波距離計において、ノンプリズム測距モードが選択された場合の測距の手順を示すフローチャート図
【図9】最適な発光量が47の場合の光量調節作業を説明する概念図
【図10】最適な発光量が1の場合の光量調節作業を説明する概念図
【図11】最適な発光量が96の場合の光量調節作業を説明する概念図
【図12】最適な発光量が64の場合の光量調節作業を説明する概念図
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に図1に基づいて、本願発明の光波距離計の第1の実施例の構成を説明する。図1は、本願発明の第1の実施例に係る光波距離計のブロック図である。実施例の光波距離計は、測距光と参照光との位相差から目標反射物33までの距離を算出する位相差方式の光波距離計であって、以下に示す光送出手段(発光素子29)と、光分出手段(切換シャッター37)と、受光手段(受光素子40)と、信号変換手段(A/D変換器44,47,50)と、演算処理部60と、を構成要素に含む。さらに、従来受光素子40の受光光量を調節するために測距光路31に設けられていた可変濃度フィルタを省き、代わりとして、発光素子29に後述する抵抗器群70が設けられている。
【0030】
発振器1で出力された信号F1は分周器2で複数の信号に分周され、異なる周波数を有する信号F2,F3を発生させる。信号F1,F2,F3は、周波数重畳回路3によって重畳化される。電圧供給を受ける駆動回路4は、重畳化された信号F1,F2,F3に基づく交流信号によって発光素子29を駆動する。周波数F1,F2,F3は、F1から順に周波数が低いものとなっており、それぞれの分解能に応じて測距値の各桁が決定される。また、信号F1はPLL(PhaseLockedLoop)5や、周波数生成回路7にも入力され、ローカル信号発振器6や周波数生成回路7から周波数変換器42,45,48に入力されるF1+△f1信号, F2+△f2信号, F3+△f3信号が出力される。
【0031】
発光素子29は、交流信号F1,F2,F3で駆動され、また、それぞれ所定の固定の抵抗値を有する負荷抵抗(抵抗器)8,9,10,11が4つ並列的に接続されて構成された抵抗器群70を介して、直流電源16からも駆動される。抵抗器群70は、負荷抵抗8,9,10,11とこれら抵抗器と一対のアナログスイッチ12,13,14,15からなる。負荷抵抗8,9,10,11はそれぞれ異なる抵抗値を持ち、負荷抵抗8,9,10,11の順に抵抗値が大きくなっている。即ち、負荷抵抗8,9,10,11の順に発光素子29の光量は減少する。負荷抵抗は一般には電流制限抵抗とも呼ばれ、値が大きいほど発光素子に流れる電流が減り(制限され)、光量が少なくなるからである。
【0032】
負荷抵抗8,アナログスイッチ12は選択信号(4)で動作可能になり、負荷抵抗9,アナログスイッチ13は選択信号(3)で動作可能になり、負荷抵抗10,アナログスイッチ14は選択信号(2)で動作可能になり、負荷抵抗11,アナログスイッチ15は選択信号(1)で動作可能になる。即ち、選択信号により動作可能になれば、負荷抵抗8,9,10,11のいずれかが発光素子29に負荷される。
【0033】
選択信号(1), (2), (3), (4)のいずれを選択するかは、後述する演算処理部60の光量選択手段により決定される。これ以降、用意する抵抗器数に対応した選択信号数をn個としたときに、選択信号(1),選択信号(2),・・・選択信号(n)によって切り換えられる発光素子29の発光量の段階を、以後、発光量小から大にかけて発光量1,発光量2,発光量3,・・・発光量nと表現する。
【0034】
発光素子29から送出された光は、ビームスプリッタ30で2つに分割され、切換シャッター37によって択一的に出射されて、一方の光は、測距光路31を経て目標反射物33で反射され、受光光学34で集光されて受光素子40に入力される。他方の光は、参照光路35を経て光量調節用固定濃度フィルタ36を通過し受光素子40に入力される。なお、測距光路31には、固定濃度フィルタ挿入出手段80が設けられており、後述するプリズム測距モードが選択された場合に、測距光の受光光量を一定量減衰させる濃度フィルタ32が挿入可能となっている。
【0035】
受光素子40で受光された光は、3つの周波数F1,F2,F3をもつ信号に変換変換される。信号F1,F2,F3は受光素子40に接続された増幅器41で信号振幅を増幅されたのち、それぞれ周波数変換器42,45,48で周波数乗算されて、周波数の低い扱いやすい信号△f1, △f2, △f3にされる。そして、低域フィルタ43,46,49で周波数変換器42,45,48で生成されたノイズが除去され、A/D変換器44,47,50によってアナログ信号を多値デジタル信号に変換し、演算処理部60にて信号の振幅情報、位相情報を取得できるようにする。ここでの振幅情報は、後述する演算処理部60の受光レベル判定手段に活用される。
【0036】
A/D変換器44,47,50はそれぞれ演算処理部60に接続されており、演算処理部60では、信号△f1, △f2, △f3の信号振幅や位相情報が解析され、測距光と参照光のそれぞれの測距データを算出する。そして、送出光駆動回路や受光部の温度位相ドリフトや電気回路による遅延は測距光と参照光とで共通に含まれる誤差であることから、測距光と参照光の位相差をとることで、目標反射物33までの直線距離(測距値)が算出される。
【0037】
また、演算処理部60には、受光レベル判定手段及び光量選択手段が設けられており、受光レベル判定手段の判定に応じて、光量選択手段により選択信号(1), (2), (3), (4)のいずれかが選択され、対応する負荷抵抗8,9,10,11と一対のアナログスイッチ12,13,14,15に発信される。
【0038】
受光レベル判定手段では、A/D変換器44,47,50に入力された受光信号の信号振幅が、予め設定された最大入力値以上の飽和領域か、最大入力値未満の測定可能域かを判定する。A/D変換器44,47,50で測定可能な受光レベルは最大入力値の範囲までであるため、受光信号振幅が飽和領域である場合には、その信号振幅は測定されない。そして、測定可能域であれば、演算処理部60で解析されて測距値算出に用いられる。
【0039】
演算処理部60では、光量選択手段により受光レベルを見ながら抵抗器群70から一の抵抗器を選択する。即ち、受光レベル判定手段により、測距光の受光信号振幅が最大入力値以上であると判定された場合には、発光素子29の発光量が現在用いている抵抗器による発光量よりも(現段階よりも)小さい発光量に切り換える選択信号が、最大入力値未満となるまで繰り返し発信される。一方、測距光の受光信号振幅が最大入力値未満と判定された場合には、発光素子29の発光量が現在用いている抵抗器による発光量よりも(現段階よりも)大きい発光量に切り換える選択信号が、最大入力値を超えない最大の発光量(最大の受光レベル)となるまで繰り返し発信される。これにより、負荷抵抗8,9,10,11の一が選択されて、発光素子29の発光量が、その測距光の受光信号がA/D変換器44,47,50の最大入力値を超えない最大の発光量となる最適受光量となる、最適な発光量に決定される。
【0040】
さらに、光量選択手段は以下の次発光量判定手段を備えている。次発光量判定手段では、発光素子29の発光量を現段階より大に切り換える選択信号を選択する際に、選択信号数をn、該選択信号に対応する発光素子29の発光量を小から大にかけて発光量1、発光量2・・・発光量n、現段階の発光量を発光量k(k<n)としたとき、現発光量kの次に選択する発光量を、発光量kの状態での受光信号の信号振幅が、発光量kの状態での受光信号の信号振幅が、最大入力値のr倍以上となっていれば発光量kとなる選択信号を選択、最大入力値のr^2倍以上r倍未満となっていれば発光量k+1となる選択信号を選択、最大入力値のr^3倍以上r^2倍未満となっていれば発光量k+2となる選択信号を選択、・・・・・・・最大入力値のr^(n−k)倍以上r^(n−(k+1))倍未満となっていれば発光量(n−1)となる選択信号を選択、最大入力値のr^(n−k)倍未満となっていれば発光量nとなる選択信号を選択する(但しrは発光量減衰定数(0<r<1))。本実施例では、発光量減衰定数r=0.5として、発光量3は発光量4の0.5倍、発光量2は発光量3の0.5倍、発光量1は発光量2の0.5倍に設定されている。即ち、発光量2は発光量4の0.25倍、発光量1は発光量4の0.125倍となる。この関係から、次発光量判定手段では、「発光量2の状態での受光信号振幅がA/D変換器44の最大入力値の0.5倍以上となっていれば発光量2を選択、A/D変換器44の最大入力値の0.5^2(=0.25)倍以上0.5倍未満となっていれば発光量3を選択、A/D変換器44の最大入力値の0.5^2(=0.25)倍未満となっていれば発光量4を選択する」という判定基準が設けられる。
【0041】
ここで、本実施例の光波距離計は、従来用いられていた可変濃度フィルタに代えて数パターンの負荷抵抗8,9,10,11による光量調節を行うため、増幅器41の増幅率を従来よりも下げ、A/D変換器44,47,50の分解能を従来よりも上げる構成とした。なお、以降、信号F2,F3についてはF1と同じ原理となるため説明を省略する。
【0042】
可変濃度フィルタを用いる従来の光波距離計では、例えば増幅器のゲインが80dB、A/D変換器の分解能は12bitとすると、飽和領域となる場合に可変濃度フィルタで測距可能域に入るよう調整を行う。一方、本実施例では、飽和領域となる場合は発光素子29の出力が段階的であるため、目標反射物33がプリズムやミラーのような高反射物でないノンプリズム測距の場合、飽和領域となったときの調整が困難となる。そこで、増幅器41のゲインを例えば56dBに下げることで、飽和領域となる可能性を低くできる。さらに、増幅率を下げたことで受光信号振幅が小さくなり、A/D変換器44で振幅が適切に分解されず信号変換の際に小さい信号振幅を誤って0にデジタル化する恐れを回避するため、A/D変換器44の分解能を16bitに上げ、A/D変換値を同等まで向上させている。なお、増幅器41のゲインは、例えば5mの近距離においてKODAK
Grayカード白面等の高反射物を基準として設定した。なお、目標反射物33を高反射物とするプリズム測距の場合の増幅器41のゲインはノンプリズム測距と同じ値を使用した。
【0043】
そして、係るプリズム測距の場合には、初回の発光量は最小発光量1となる選択信号(1)を出力するよう設定されている。最小発光量1を選択しても受光信号振幅がA/D変換器44の飽和領域となる場合には、濃度フィルタ挿入出手段80により、測距光路31間に濃度フィルタ32が挿入され、測距光の受光光量を一定量減衰される。濃度フィルタ32は、従来の固定濃度フィルタよりも減衰量の大きいフィルタを用いる。
【0044】
また、演算処理部60は、ノンプリズム測距の場合において、最小発光量1となる選択信号(1)を選択しても受光信号振幅がA/D変換器44の飽和領域となる場合には、自動的にプリズム測距に移行される測距手段自動変更手段が設けられている。
【0045】
次に、図2に示す、同光波距離計においてプリズム測距モードが選択された場合の測距の手順を示すフローチャート図に基づいて、実施例に係る光波距離計のプリズム測距の手順を説明する。プリズム測距モードが選択されると、まず、ステップ1において、演算処理部60から、発光素子29が最小発光量1となるよう選択信号(1)が出力される。次にステップ2では、A/D変換器44で発光量1での測距光の受光信号振幅が測定される。ステップ3では、演算処理部60の受光レベル判定手段により、受光信号振幅が最大入力値を超えるか否かが判定される。受光レベルが最大入力値を超えない(最大入力値未満)の測定可能域の場合には、ステップ5に移行し、発光量1で測距が行われて終了となる。一方、受光信号振幅が最大入力値を超える(最大入力値以上)の飽和領域である場合には、ステップ4に移行し、濃度フィルタ挿入出手段80によって濃度フィルタ32が挿入されたのちステップ5で測距が行われて終了となる。
【0046】
次に、図3に示す、同光波距離計においてノンプリズム測距モードが選択された場合の測距の手順を示すフローチャート図に基づいて実施例に係る光波距離計のノンプリズム測距の手順を説明する。
【0047】
ノンプリズム測距モードが選択されると、まず、ステップ1において、演算処理部60から、発光素子29が発光量2となるよう選択信号(2)が出力される。次にステップ2で、A/D変換器44で発光量2での受光信号振幅が測定され、ステップ3で、演算処理部60の受光レベル判定手段により、受光信号振幅が最大入力値を超えるか否かが判定される。最大入力値を超える場合には、ステップ9に移行し、現発光量2よりも小さい発光量1となるよう選択信号(1)が出力され、ステップ10で、発光量1で再度受光レベル判定手段により受光レベルが判定される。ここで最大入力値を超えない場合には、ステップ11に移行し発光量1を最適として、ステップ13に移行し測距が行われて終了となる。ステップ10で最大入力値を超える場合には、ステップ12に移行し、測距手段自動変更手段によりユーザが測距モードの選択を誤ったと判断して自動的にプリズムモードへ移行してプリズムモードの測距フローを経て終了となる。
【0048】
一方、ステップ3で最大入力値を超えない場合には、ステップ4に移行し、次発光量判定手段により発光量2での受光信号振幅が最大入力値の0.5倍以上であるか否かが判定され、最大入力値の0.5倍以上であれば、ステップ5に移行し発光量2となるよう選択信号(2)が出力され、ステップ13で発光量2で測距が行われて終了となる。ステップ4で0.5倍未満の場合は、ステップ6に移行し、次発光量判定手段により発光量2での受光信号振幅が最大入力値の0.25(=0.5^2)倍以上0.5倍未満であるか否かが判定され、最大入力値の0.25倍以上0.5倍未満であれば、ステップ7に移行し、発光量3となるよう選択信号(3)が出力され、ステップ13で発光量3で測距が行われて終了となる。また、ステップ6で発光量2の受光信号振幅が最大入力値の0.25倍未満と判定されると、ステップ8に移行し、発光量4を最適として、ステップ13に移行し、発光量4で測距が行われて終了となる。
【0049】
本実施例によれば、ユーザの判断でプリズム測距モードが選択された場合には、予め設定された発光量1か、発光量1において濃度フィルタ32が挿入された状態のいずれかで測距が行われる。プリズム測距モードでは、予め設定された発光量1を用いて濃度フィルタ32を挿入するか否かの2択となるため、もはや光量調節作業がなく、光量調節は即終了する。最小発光量1でもA/D変換器44の飽和領域となるのは、目標反射物33に高反射物を用いて近距離(0m〜10m程度)に設置し、送出した光が全て受光側に入射された場合であり、目標反射物33との距離が遠距離になるほど、送出した光が拡散されて全て受光側に入射されなくなるため飽和しにくくなるので、濃度フィルタ32で近距離の高反射物でも飽和しないようにすると、目標反射物33との距離に依らず、受光信号が確実にA/D変換器44の測定可能域に入るようになる。
【0050】
ノンプリズム測距モードが選択された場合には、発光素子29が発光量2から開始され、次発光量判定手段により、次の信号選択で最適な発光量に決定される。即ち、光送出手段の発光量を現段階より大に切り換える選択信号を選択する際に判定基準が設けられている(ステップ4、ステップ6)ので、最適な次発光量を予測して発光量を一気にジャンプさせることができ、最適な発光量を2回の信号選択で見つけることができる。よって、最適な発光量が発光量4である場合には、最適な発光量を予測して初回発光量2→発光量4へ一気にジャンプするので、発光量2→発光量3→発光量4と昇順で選択していく場合よりも光量調節作業が大幅に短縮される。
【0051】
また、最小発光量1を用いても受光レベルが飽和領域となる場合には、演算処理部60が高反射物を視準していると判断し、自動的にプリズム測距モードに移行される(ステップ12)ので、ユーザが測距モードの判断を誤った場合であっても、適切な測距が自動的に成される。
【0052】
結果、ノンプリズム測距モード、プリズム測距モードのいずれが選択された場合であっても、従来の可変濃度フィルタによる調節やデジタルポテンショメータによる調節よりも、光量調節作業が格段に早く終了する。
【0053】
さらに、光量調節がモータ等の機械的動作によらず行われるので、使用年数の経過によって機械的不具合が生じることは無い。また、最適な発光量に決定されて受光信号が測定可能域に確実に入るので、略全ての受光信号を測距値算出に用いることができ、高精度な測距値を得ることができる。
【0054】
さらには、用意した発光段階(1,2,3,4)のうち、発光段階を二分したうちの小さい側の発光量2を初回発光量としたことで、次発光量判定手段(ステップ4、ステップ6)が有効に機能している。即ち、仮に発光量kの状態の受光レベルが飽和領域である場合には、その信号振幅がどれほど最大入力値より大きいかA/D変換器44で判断ができない。しかし、発光量kで飽和していない(測距可能域の)場合は、その信号振幅を測定可能であるため、発光量kの受光レベルが最大入力値に対してどれほど小さいかを測定することができるので、初回の発光量を小さくすれば、次発光量判定手段によって、次発光量を発光量kから何段階上げれば良いのか予測することができる。
【0055】
また、実施例1の変形例として、選択信号数が6(抵抗器が6個)の場合には、光量選択手段における次発光量判定手段において、初回発光量2から発光量3,発光量4,発光量5,発光量6のいずれかを選ぶ判定基準は、「発光量2の状態での受光信号振幅が、A/D変換器44の最大入力値の0.5倍以上となっていれば発光量2を選択、A/D変換器44の最大入力値の0.5^2倍以上0.5倍未満となっていれば発光量3を選択、A/D変換器44の最大入力値の0.5^3倍以上0.5^2倍未満となっていれば発光量4を選択、A/D変換器44の最大入力値の0.5^4倍以上0.5^3倍未満となっていれば発光量5を選択、A/D変換器44の最大入力値の0.5^4倍未満となっていれば発光量6を選択」する。
【0056】
さらに、一般的に選択信号がn(抵抗器がn個)用意された場合には、次発光量判定手段における判定基準は「発光量2の状態での受光信号振幅が、A/D変換器44の最大入力値の0.5倍以上となっていれば発光量2を選択、A/D変換器44の最大入力値の0.5^2倍以上0.5倍未満となっていれば発光量3を選択、A/D変換器44の最大入力値の0.5^3倍以上0.5^2倍未満となっていれば発光量4を選択、・・・・・・・A/D変換器44の最大入力値の0.5^(n−2)倍以上0.5^(n−3)倍未満となっていれば発光量(n−1)を選択、A/D変換器44の最大入力値の0.5^(n−2)倍未満となっていれば発光量nを選択」する。
【0057】
なお、初回発光量を発光量2より大きい発光量k(仮に2<k)から始める)場合の次発光量判定手段の一般式は「発光量kの状態で受光レベルがA/D変換器44の最大入力値の0.5倍以上となっていれば発光量kを選択、A/D変換器44の最大入力値の0.5^2倍以上0.5倍未満となっていれば発光量k+1を選択、A/D変換器44の最大入力値の0.5^3倍以上0.5^2倍未満となっていれば発光量k+2を選択、A/D変換器44の最大入力値の0.5^4倍以上0.5^3倍未満となっていれば発光量k+3を選択、A/D変換器44の最大入力値の0.5^5倍以上0.5^4倍未満となっていれば発光量k+4を選択、・・・・・・・A/D変換器44の最大入力値の0.5^(n-k)倍以上0.5^(n−(k+1))倍未満となっていれば発光量(n−1)を選択、A/D変換器44の最大入力値の0.5^(n−k)倍未満となっていれば発光量nを選択」となる。仮に予測した次発光量が最大入力値を超えた場合には、以降の発光量を降順で小に移行させれば、挟み撃ち的に最適な発光量が選択され、数回の信号選択で受光信号振幅は確実に測距可能域に入るので、光量調節作業は従来よりも格段に早い。なお、選択信号数nは、測距仕様時間との兼ね合いと演算処理部60で処理可能である限り増やすことができる。
【0058】
図4は、本願発明の第2の実施例に係る光波距離計において、ノンプリズム測距モードが選択された場合の測距の手順を示すフローチャート図である。第2の実施例は、初回発光量が発光量1から開始されること以外は実施例1と同様であるため、同一の符号を用いて説明を割愛する。
【0059】
図4に示すように、ノンプリズム測距モードが選択されると、まず、ステップ1において、演算処理部60から、発光素子29が発光量1となるよう選択信号(1)が出力される。次にステップ2で発光量1での受光信号振幅が測定され、ステップ3で、演算処理部60の受光レベル判定手段により、受光信号振幅が最大入力値を超えるか否かが判定される。最大入力値を超える場合には、ステップ11に移行し、実施例1と同様、ユーザのモード選択ミスと判断して自動的にプリズム測距を行う。
【0060】
ステップ3で、最大入力値を超えない場合には、ステップ4に移行し、次発光量判定手段により発光量1での受光信号振幅が最大入力値の0.5倍以上であるか否かが判定され、最大入力値の0.5倍以上であれば、ステップ5に移行し発光量1が最適として、ステップ12で発光量1で測距が行われて終了となる。ステップ4で0.5倍未満の場合は、ステップ6に移行し、次発光量判定手段により発光量1での受光信号振幅が最大入力値の0.25(=0.5^2)倍以上0.5倍未満であるか否かが判定され、最大入力値の0.25倍以上0.5倍未満であれば、ステップ7に移行し、発光量2となるよう選択信号(2)が出力され、ステップ12で発光量2で測距が行われて終了となる。また、ステップ6で発光量2の受光信号振幅が最大入力値の0.25倍未満と判定されると、ステップ8に移行し、次発光量判定手段により発光量1での受光信号振幅が最大入力値の0.125(=0.5^3)倍以上0.25倍未満であるか否かが判定され、最大入力値の0.125倍以上0.25倍未満であれば、ステップ9に移行し、発光量3となるよう選択信号(3)が出力され、ステップ12で発光量3で測距が行われて終了となる。また、ステップ8で発光量1の受光信号振幅が最大入力値の0.125倍未満と判定されると、ステップ10に移行し、発光量4が選択され、ステップ12に移行し、発光量4で測距が行われて終了となる。
【0061】
本実施例においても、初回発光量を、用意した発光段階のうち最小の発光量1としたことで、次発光量判定手段(ステップ4、ステップ6、ステップ8)が有効に機能し、2回の信号選択で最適な発光量を見つけることができる。よって、実施例1と同様、ノンプリズム測距モード、プリズム測距モードのいずれが選択された場合であっても、従来よりも光量調節が格段に早く終了する。
【0062】
図5は、本願発明の第3の実施例に係る光波距離計において、ノンプリズム測距モードが選択された場合の測距の手順を示すフローチャート図である。第3の実施例は、実施例1と同様の構成で、プリズム測距モードの場合のフローも実施例1と同様である。第3の実施例では、ノンプリズム測距モードの場合に、初回発光量が発光量3から開始され、演算処理部60において、受光レベル判定手段と光量選択手段のみを用いている。
【0063】
ノンプリズム測距モードが選択されると、まず、ステップ1において発光量3が選択され、ステップ2で受光信号振幅が測定される。そしてステップ3で受光レベル判定手段により発光量3で受光レベルが判定され、最大入力値を超える場合には、ステップ4で発光量2に切り換えられ、ステップ5で発光量2で受光レベル判定され、最大入力値を超える場合には、ステップ6で発光量1に切り換えられ、ステップ7で発光量1で受光レベル判定され、最大入力値を超える場合には、ステップ8でプリズムモードに自動で移行し、ステップ5で最大入力値を超えない場合には、ステップ12に移行されそのままの発光量2で測距が行われて終了となる。一方、ステップ3で最大入力値を超えないと判定された場合には、ステップ9で発光量4に切り換えられ、ステップ10で発光量4で受光レベル判定され、最大入力値を超えない場合にはステップ12に移行して発光量4で測距され、ステップ10で最大入力値を超える場合には、ステップ11で発光量3に切り換えられてステップ12へ移行して測距されて終了となる。
【0064】
本実施例によれば、受光レベル判定手段により、受光信号振幅がA/D変換器44の最大入力値以上か否か(飽和領域か測定可能域か)を判断し(ステップ3,ステップ5,ステップ7,ステップ10)、飽和領域であれば、発光素子29の発光量を現段階から降順に下げるように測定可能域に入るまで信号選択を行う(ステップ3〜ステップ6、ステップ10〜ステップ11)。一方、測定可能域であれば、発光素子29の発光量を現段階から昇順に上げるように、最大入力値を超えないレベルまで信号選択を行う(ステップ3→ステップ9)。発光量1でも飽和する場合には、実施例1と同様に自動でプリズムモードへ移行する(ステップ8)。
【0065】
これにより、断続的なパターンの発光量の中から最適受光量となる最適な発光量に決定するだけなので、信号選択回数は最大でも用意した抵抗器数と同じ回数で済み、従来よりも光量調節作業が格段に早く終了する。
【0066】
図6は、本願発明の第4の実施例に係る光波距離計において、ノンプリズム測距モードが選択された場合の測距の手順を示すフローチャート図である。第4の実施例では、ノンプリズム測距モードの場合に、モード開始から2回目に選択される発光量が、初回発光量3から数段小さい発光量1を選択する点のみが実施例3と異なる。
【0067】
ノンプリズム測距モードが選択されると、まず、ステップ1において発光量3が選択され、ステップ2の受光信号振幅測定を経て、ステップ3で受光レベル判定される。ステップ3で最大入力値を超える場合には、ステップ4で発光量1に切り換えられ、ステップ5で発光量1で受光レベル判定され、最大入力値を超える場合には、ステップ6でプリズム測距モードに自動的に移行し、ステップ5で最大入力値を超えない場合には、ステップ7で発光量2に切り換えられ、ステップ8で発光量2で受光レベル判定され、最大入力値を超えない場合には、ステップ13に移行され発光量2で測距されて終了し、ステップ8で最大入力値を超える場合には、ステップ9で発光量1に切り換えられてステップ13で測距されて終了する。一方、ステップ3で最大入力値を超えないと判定された場合には、実施例2と同様となる。
【0068】
本実施例によれば、ステップ3の受光レベル判定手段により飽和領域と判定されると、発光素子29の発光量が、発光量3から数段階小さい発光量1に下げられ(ステップ4)、以降、発光量が昇順に選択されて最適な発光量となるまで信号選択を行う(ステップ5〜ステップ9)。
【0069】
本実施例においても、断続的なパターンの中から最適な発光量に決定するだけなので、従来よりも光量調節作業が格段に早く終了する。さらに、初回発光量において飽和領域と判定された場合に、2回目の発光量を数段階小さい発光量を選択し、以降は昇順で発光量を上げるため、挟み撃ち的に最適な発光量に決定できるため、信号選択回数が減り、実施例2よりも光量調節作業が早くなる。
なお、前記実施例1〜4における発光量減衰定数r=0.5は一例であり、0<r<1のものであればこれに限定されない。
【0070】
図7は、本願発明の第5の実施例に係る光波距離計のブロック図である。第5の実施例では、実施例1における抵抗器群70に、抵抗器が複数個用意され、演算処理部60から受光信号振幅を見ながらこれに対応する数の選択信号によって発光素子29の発光量が選択可能な構成とされた他は、実施例1と同様の構成であり、プリズム測距モードのフローも同様である。そして、本実施例における光波距離計は、光量選択手段において、選択信号数をn、該選択信号に対応する光送出手段の発光量を小から大にかけて発光量1、発光量2・・・発光量nとしたとき、初回の発光量は、信号数nを超えない最大の2の冪乗(2^m)に該等する発光量から始められ、後述の最適発光量探索手段によって最適な発光量が決定される。
【0071】
図7に示すように、本実施例の光波距離計では、抵抗器が100個、即ち負荷抵抗101〜負荷抵抗200とこれに一対のアナログスイッチ201〜アナログスイッチ300が用意されており、演算処理部60からは、これに対応する選択信号(1)〜選択信号(100)が発信され、発光素子29の発光段階は100パターンに構成されている。
【0072】
次に、最適発光量探索手段を、図8a及びbに示す、同光波距離計においてノンプリズム測距モードが選択された場合の測距の手順を示すフローチャート図に基づいて説明する。図8aは初回発光量で最大入力値を超えるため、初回発光量よりも小さい発光量の中から探索するフローであり、図8bは初回発光量で最大入力値を超えないため、初回発光量よりも大きい発光量の中から探索するフローである。
【0073】
ノンプリズム測距モードが選択されると、まず、初回の発光量は、選択信号数n=100を越えない最大の2の冪乗2^mから開始する。即ちステップ1で100>2^6=64(m=6)に対応する発光量64が選択される。次に、ステップ2の受光信号振幅測定を経て、ステップ3で受光レベル判定手段にて受光レベルを判定される。発光量64でA/D変換器44に入力される受光信号の信号振幅が最大入力値を超える場合は、ステップ4に移行し、次数を1下げ(m=5)て、64の半分の発光量32(=2^5)に減じたのち、ステップ5でm=0か判定される。ステップ5でm≠0であれば、ステップ6で再度受光レベルを判定される。ステップ6で最大入力値を超える場合には、ステップ9で、32と32の半分の発光量16(=2^4)とで減算する。次にステップ10でm=0か判定し、m=0まで次数が下がったならばステップ11で受光レベル判定手段にて受光レベルを判定される。m=0で無ければステップ6に戻る。ステップ6で最大入力値を超えない場合には、ステップ7で、32と32の半分の発光量16(=2^4)とで加算する。次にステップ8でm=0か判定し、m=0まで次数が下がったならばステップ11で受光レベル判定手段にて受光レベルを判定される。m=0で無ければステップ6に戻る。以降同様の場合はステップ6〜ステップ10を繰り返して次数が下げられ発光量が増減される。ステップ11で最大入力値を超えないと判定されると、これまで操作した発光量のうち最大入力値を超えない最大発光量を最適な発光量とする。また、ステップ5でm=0である場合も、ステップ11に移行する。次にステップ12では、発光量1でも最大入力値を超える場合、ステップ13のプリズム測距に移行する。発光量が1以上で最適な場合、ステップ14に移行して測距されて終了となる。
【0074】
一方、ステップ3で、初回発光量64で受光信号振幅が飽和領域とならない(測定可能域の)場合は、ステップ15に移行し、次数を1下げ(m=5)て、64と64の半分の発光量32(=2^5)とで加算し、ステップ16で発光量が100を超えるか判定する。超えた場合はステップ17で発光量を加算前に戻し次数mは減じたままにステップ15に戻るが、今64+32=96で100を超えないので、ステップ16に移行する。ステップ18ではm=0かを判定し、m=0であれば、ステップ26に移行し受光レベル判定手段にて受光レベルを判定される。m=0で無ければ、ステップ19にて受光レベルを判定される。ステップ19で最大入力値を超えない場合には、ステップ20で、次は96と32の半分の16を加算して、発光量を増加させ、ステップ21で発光量が100を超えるか判定し、超える場合はステップ22で加算前に96に戻し次数mは減じたままにステップ20に戻る。ステップ21で発光量が100を超えなければ、ステップ23でm=0かを判定する。m=0であればステップ26で受光レベル判定手段にて受光レベルを判定される。m=0でなければステップ19に戻る。ステップ19で最大入力値を超えた場合には、ステップ24で、次は96と32の半分の16を減算して、発光量を減少させ、ステップ25でm=0かを判定する。m=0であればステップ26で受光レベル判定手段にて受光レベルを判定される。m=0でなければステップ19に戻る。以降同様の場合はステップ19〜ステップ25を繰り返して発光量が増減され、ステップ26で最大入力値を超えないと判定されると、これまで操作した発光量のうち最大入力値を超えない最大発光量を最適な発光量とする。ステップ27では発光量1での最大入力値を超える場合、ステップ28のプリズム測距に移行する。発光量が1以上で最適な場合、ステップ29に移行して測距されて終了となる。
【0075】
次に、最適発光量探索手段を具体的例を挙げて説明する。図9は、最適な発光量が47の場合の光量選択作業を説明する概念図である。なお、黒丸はその発光量で飽和(最大入力値以上)、白丸はその発光量で測定可能(最大入力値未満)であることを示す。
【0076】
選択信号数n=100で、最適な発光量が発光量47の場合、初回発光量は100>2^6=64(m=6)である(ステップ1)。初回発光量64>47(ステップ3)であるので、次数を1下げ(m=5)、半分の発光量32とし(ステップ4)、m≠0であるので(ステップ5)、再度受光レベルを判定する(ステップ6)と、32<47であるので、さらに次数を1下げ(m=4)た発光量分を加算して48(64−32+16)とし(ステップ7)、48>47(ステップ6)であるので、さらに次数を1下げ(m=3)た発光量分を減算して40(64−32+16−8)とし(ステップ9)、40<47(ステップ6)であるので、さらに次数を1下げ(m=2)た発光量分を加算して44(64−32+16−8+4)とし(ステップ7)、44<47(ステップ6)であるので、さらに次数を1下げ(m=1)た発光量分を加算して46(64−32+16−8+4+2)とし(ステップ7)、46<47(ステップ6)であるので、さらに次数を1下げ(m=0)た発光量分を加算して47(64−32+16−8+4+2+1)とし(ステップ7)、m=0まで次数が下がった(ステップ8)ので受光レベルを判定すると、発光量47では最大入力値を超えない。そして、発光量64→32(64−32)→48(64−32+16)→40(64−32+16−8)→44(64−32+16−8+4)→46(64−32+16−8+4+2)→47(64−32+16−8+4+2+1)と操作した発光量の中で、最大入力値を超えない発光量は発光量32、40、44、46、47であり、このうち最大発光量は47と選択できる(ステップ11)。このように、最適な発光量47を見つけるための信号選択回数は7回である。
【0077】
また、図10は、最適な発光量が1の場合の光量選択作業を説明する概念図である。最適な発光量が1の場合は、初回発光量64>1(ステップ3)であるので、次数を1下げ(m=5)、半分の発光量32とし(ステップ4)、m≠0であるので(ステップ5)、再度受光レベルを判定すると、32>1(ステップ6)であるので、さらに次数を1下げ(m=4)た発光量分を減算し16(64−32−16)(ステップ9)、16>1(ステップ6)であるので、さらに次数を1下げ(m=3)て8(64−32−16−8)(ステップ9)、さらに次数を1下げ(m=2)て4(64−32−16−8−4)(ステップ9)、さらに次数を1下げ(m=1)て2(64−32−16−8−4−2)(ステップ9)、さらに次数を1下げ(m=0)て1(64−32−16−8−4−2−1)(ステップ9)、m=0まで次数が下がった(ステップ10)ので受光レベルを判定すると、発光量1では最大入力値を超えない。そして、発光量64→32→16→8→2→1と操作した発光量の中で、最大入力値を超えない最大発光量は1と選択できる(ステップ11)。このように、最適な発光量が初回発光量64(2^m=6)未満の場合は、最適な発光量を見つけるための信号選択回数は必ず7回以内で決まる。
【0078】
図11は、最適な発光量が96の場合の光量選択作業を説明する概念図である。初回発光量64<96(ステップ3)であるので、次数を1下げ(m=5)た発光量32を現発光量に加算して96(64+32)する(ステップ15)。発光量96は発光量100を超えず(ステップ16)、m≠0であるので(ステップ18)、再度受光レベルを判定すると、96=96で最大入力値を超えないので(ステップ19)、さらに次数を1下げ(m=4)た発光量分を加算して112(64+32+16)とすると(ステップ20)、発光量100を超える(ステップ21)ので、加算前の発光量96に戻し(ステップ22)、さらに次数を1下げ(m=3)た発光量分を加算して104(64+32+8)とすると(ステップ20)、発光量100を超える(ステップ21)ので、加算前の発光量96に戻し(ステップ22)、さらに次数を1下げ(m=2)た発光量分を加算して100(64+32+4)とすると(ステップ20)、100>96(ステップ19)であるので、さらに次数を1下げ(m=1)た発光量分を減算して98(64+32+4−2)とし(ステップ24)、98>96(ステップ19)であるので、さらに次数を1下げ(m=0)た発光量分を減算して97(64+32+4−2−1)とし(ステップ24)、m=0まで次数が下がった(ステップ25)ので、受光レベルを判定する(ステップ26)と発光量97では最大入力値を超えてしまう。そして、発光量64→96→100→98→97と操作した発光量の中で、最大入力値を超えない最大発光量は96と選択できる(ステップ26)。このように、最適な発光量96を見つけるための信号選択回数は5回である。
【0079】
また、最適な発光量は発光量95の場合、発光量64→96(64+32)→80(64+32−16)→88(64+32−16+8)→92(64+32−16+8+4)→94(64+32−16+8+4+2)→95(64+32−16+8+4+2+1)の選択で、最大入力値を超えない最大発光量は95と選択でき、最適な発光量を見つけるための信号選択回数は7回である。このように最適な発光量が64超の場合でも必ず7回以内で決まる。
【0080】
また、図12は、最適な発光量が64の場合の光量選択作業を説明する概念図である。最適な発光量が2^m=64(m=6)の場合、発光量64→96(64+32)→80(64+32−16)→72(64+32−16−8)→68(64+32−16−8−4)→66(64+32−16−8−4−2)→65(64+32−16−8−4−2−1)の選択で、最大入力値を超えない最適な発光量は64であることを見つけるための信号選択回数は7回である。このように最適な発光量が64(2^m)の場合でも必ず7回以内で決まる。
【0081】
即ち、選択信号がn個あり、初回発光量をnを超えない最大の2の冪乗2^mから始めると(但し、mは整数かつ2^(m+1)>n≧2^m)、最適な発光量を見つけられる回数はm+1回以内で終了する。最適な発光量が2進法で探索されるため、少ない信号選択回数で効率良く見つけることができる。
【0082】
なお、実施例1〜5において、選択信号を数個同時に動作させても発光素子29から出射可能であるが、負荷抵抗が合成され、光量パワーが精密に把握できなくなるため、選択信号は単独で動作させるのが好ましい。
【符号の説明】
【0083】
29 発光素子(光送出手段)
31 測距光路
33 目標反射物
35 参照光路
37 切換シャッター(光分出手段)
40 受光素子(受光手段)
44,47,50 A/D変換器(信号変換手段)
60 演算処理部
70 抵抗器群
80 濃度フィルタ挿入出手段
【技術分野】
【0001】
本願発明は、目標反射物までの直線距離を光電的に測定する位相差方式の光波距離計に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の光波距離計では、強度変調された信号が発光素子から光として送出され、係る光の一方は目標反射物で反射されて得られる測距光として、他方の光は参照光路へ出射されて得られる参照光として、それぞれ受光素子で受光されて電気信号に変換された後、増幅器、周波数変換器等を経たのち、A/D変換器で測定され、アナログ信号からデジタルデータへと信号変換される。係る受光信号のうち、A/D変換器の最大入力値を超えない測定可能域の信号が、演算処理部にて信号振幅、位相情報を解析されて、測距信号と参照信号の位相差が算出されることで、目標反射物までの直線距離(測距値)が得られる。
【0003】
係る光波距離計では、光波距離計から目標反射物までの距離の遠近や、目標反射物がプリズムのような高反射物か否かによって、反射された測距光の受光光量にバラツキが発生し、測距値の算出に影響する。即ち、測距光の受光光量が大きく、測距信号がA/D変換器の最大入力値以上となった場合(測距信号がA/D変換器の飽和領域となった場合)には、測定可能域の信号とならず測距値が算出されない。一方、測距光の受光光量が小さい場合には、A/D変換器で受光信号の振幅が適切に分解されず信号変換の際に誤りが生じ、測距値に誤差が生じる。このため、測距信号がA/D変換器で測定可能となるよう、受光光量を最適受光量に調整する必要がある。
【0004】
そこで、例えば特許文献1に示すように、モータ駆動する可変受光濃度フィルタを目標反射物と受光素子の間に設け、フィルタを除々に絞ることで受光光量を調節し、最適受光量に調整するものがある。或いは、特許文献2に示すように、可変受光濃度フィルタに代えて、光を送出する発光素子に、可変抵抗器をデジタル制御するデジタルポテンショメータを接続し、発光素子に負荷する抵抗値を除々に減少或いは増加させて発光素子の発光量を調節し、受光光量を最適受光量に調整するものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公昭51−8340号公報(図2)
【特許文献2】特開2011−013108号公報(段落番号0030〜0034、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1のように可変受光濃度フィルタをモータによって除々に絞り調節する光量調節作業では、第1に、モータの使用年数により機械的不具合が生じるし、第2に、大気の揺らぎによって目標反射物からの反射光量が大きく変動すると、A/D変換器の飽和領域となる測距信号が増え、それらが測定可能域に収まるまで光量調節が繰り返されるため、光量調節に時間がかかり、所定の測距仕様時間内に終了しないという問題があった。
【0007】
また、特許文献2では、光量調節作業がデジタルポテンショメータによる電気的制御となったことで、機械的制御よりも制御時間は早くなるものの、受光信号がA/D変換器の測定可能域となるまで(抵抗値を除々に変化させて)光量調節作業を繰り返し行うという点は可変受光濃度フィルタと同様であり、やはり光量調節に時間を要していた。
【0008】
本願発明は、係る問題点に鑑みて為されたものであり、その目的は、発光量調節に機械的駆動を用いず、かつ光量調節作業を繰り返すことなく受光光量が最適受光量に調整される、高速で高精度な測距が可能な光波距離計を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の光波距離計においては、複数の変調周波数で変調された光を送出する光送出手段と、前記光送出手段の光を、測定地点に配置した目標反射物までを往復する測距光路または参照光路のうち選択された一方に送出する光分出手段と、前記測距光路を通過した測距光または前記参照光路を通過した参照光を受光し、それぞれの受光信号を出力する受光手段と、前記受光信号を測定し、アナログ信号からデジタルデータへ変換する信号変換手段と、前記光送出手段に負荷されて発光量を調節する抵抗器と、前記抵抗器を前記受光信号の信号振幅に応じて設定し、前記信号変換手段でデジタル化された測距信号と参照信号の位相差によって前記目標反射物までの直線距離である測距値を算出する演算処理部と、を備えた光波距離計であって、前記抵抗器は複数であって、抵抗値大から小にかけてそれぞれが所定の固定抵抗値を持ち、そのうちの一が該抵抗器と一対一対応の選択信号により選択されて、前記光送出手段の発光量が小から大に切り換えられる抵抗器群として設け、前記演算処理部に、前記信号変換手段に入力された前記受光信号の信号振幅が、該信号変換手段の最大入力値以上か否かを判定する受光レベル判定手段と、前記受光レベル判定手段により、前記最大入力値以上と判定された場合には、最大入力値未満となるまで前記光送出手段の発光量を小に切り換える前記選択信号を選択し、前記最大入力値以上と判定された場合には、最大入力値を超えない最大の発光量となるまで前記光送出手段の発光量を大に切り換える前記選択信号を選択する光量選択手段と、を設けた。
【0010】
(作用) 所定の固定抵抗値を持つ抵抗器を抵抗値大から小にかけて複数設けて、そのうちの一を演算処理部で受光信号振幅を見ながら選択し、光送出手段の光の出力を調整することで、断続的な複数パターンの発光量の中から最適な発光量に決定されるように構成した。即ち、演算処理部において、信号変換手段に入力される受光信号の信号振幅が、信号変換手段の最大入力値以上の飽和領域か、最大入力値未満の測定可能域かを見ながら、最大入力値以上と判定された場合には、最大入力値未満となるまで現段階の発光量から降順或いは数段階小さい発光量に下げるように信号選択を繰り返し、最大入力値未満と判定された場合には、最大入力値を超えない最大の発光量となるまで現発光量から昇順或いは数段階大きい発光量に上げるように信号選択を繰り返すことで、受光信号振幅が(受光レベルが)最適(最大入力値を超えない最大の発光量)となる最適な発光量に決定する。
【0011】
請求項2においては、請求項1に記載の光波距離計において、前記光量選択手段において、前記光送出手段の発光量を現段階より大に切り換える前記選択信号を選択する際に、前記選択信号数をn、該選択信号に対応する前記光送出手段の発光量を小から大にかけて発光量1、発光量2・・・発光量n、前記現発光量を発光量k(k<n)としたとき、現発光量kの次に選択する発光量を、発光量kの状態での前記受光信号の信号振幅が、前記最大入力値のr^2倍以上となっていれば発光量k+1となる選択信号を選択、前記最大入力値のr^3倍以上r^2倍未満となっていれば発光量k+2となる選択信号を選択、・・・・・・・前記最大入力値のr^(n−k)倍以上r^(n−(k+1))倍未満となっていれば発光量(n−1)となる選択信号を選択、前記最大入力値のr^(n−k)倍未満となっていれば発光量nとなる選択信号を選択する(但しrは発光量減衰定数(0<r<1))、次発光量判定手段を設けた。
【0012】
(作用) 信号変換手段で測定可能な受光レベルは最大入力値未満の範囲までであるため、現発光量kの状態の受光レベルが飽和領域である場合には、その信号振幅がどれほど最大入力値より大きいか信号変換手段で判断できない。しかし、現発光量kで飽和していない(測距可能域の)場合は、その信号振幅を測定可能であるため、現発光量kの受光レベルが最大入力値に対してどれほど小さいかを測定することができるので、信号振幅が最大入力値の何倍かを算出することで、次発光量を現発光量kから何段階上げれば良いのか判定することができる。
【0013】
請求項3においては、請求項1に記載の光波距離計において、前記光量選択手段において、前記選択信号数をn、該選択信号に対応する前記光送出手段の発光量を小から大にかけて発光量1、発光量2・・・発光量nとしたとき、初回の発光量を、選択信号数nを超えない2^m(但し、mは整数かつ2^(m+1)>n≧2^m)に対応する発光量2^mから始め、前記受光レベル判定手段により、現発光量が前記最大入力値以上と判定された場合には、前記光送出手段の発光量を、現発光量の次数を1減じた発光量分減算し、前記最大入力値未満と判定された場合には、現発光量の次数を1減じた発光量分加算する(但し、加算の結果発光量nを超える場合には、加算前の発光量に戻し、さらに次数を1減じた発光量分を加算する)ことを、次数mが0となるまで繰り返し、前記次数加減操作で探索した発光量のなかから、最大入力値を超えない最大の発光量となる前記選択信号を選択する最適発光量探索手段を設けた。
【0014】
(作用) 例えば、選択信号数n=100で、最適な発光量が発光量47の場合、初回の発光量を、nを越えない最大の2の冪乗2^mに対応する発光量2^m、即ち100>2^6=64(m=6)から始める。受光レベルを判定すると、初回発光量64>47であるので、次数を1下げ(m=5)発光量を半分に減じて32(64−32)とし、m≠0であるので受光レベルを判定すると、32<47であるので、さらに次数を1下げ(m=4)た発光量分を加算して48(64−32+16)とし、48>47であるので、さらに次数を1下げ(m=3)た発光量分を減算して40(64−32+16−8)とし、40<47であるので、さらに次数を1下げ(m=2)た発光量分を加算して44(64−32+16−8+4)とし、44<47であるので、さらに次数を1下げ(m=1)た発光量分を加算して46(64−32+16−8+4+2)とし、46<47であるので、さらに次数を1下げ(m=0)た発光量分を加算して47(64−32+16−8+4+2+1)とし、m=0まで次数が下がったので受光レベルを判定すると、発光量47では最大入力値を超えない。そして、発光量64→32(64−32)→48(64−32+16)→40(64−32+16−8)→44(64−32+16−8+4)→46(64−32+16−8+4+2)→47(64−32+16−8+4+2+1)と操作した発光量の中で、最大入力値を超えない発光量は発光量32、40、44、46、47であり、このうち最大発光量は47と選択できる。なお、最適な発光量47を見つけるための信号選択回数は7回である。
【0015】
また、最適な発光量が96の場合は、初回発光量64<96であるので、次数を1下げ(m=5)た発光量32を現発光量に加算96(64+32)する。発光量96は発光量100を超えず、m≠0であるので、受光レベルを判定すると、96=96で最大入力値を超えないので、さらに次数を1下げ(m=4)た発光量分を加算して112(64+32+16)とすると、発光量100を超えるので、加算前の発光量96に戻し、さらに次数を1下げ(m=3)た発光量分を加算して104(64+32+8)とすると、発光量100を超えるので、加算前の発光量96に戻し、さらに次数を1下げ(m=2)た発光量分を加算して100(64+32+4)とすると、100>96であるので、さらに次数を1下げ(m=1)た発光量分を減算して98(64+32+4−2)とし、98>96であるので、さらに次数を1下げ(m=0)た発光量分を減算して97(64+32+4−2−1)とし、m=0まで次数が下がったので、受光レベルを判定すると発光量97は最大入力値を超えるので、発光量64→96→100→98→97と操作した発光量の中で、最大入力値を超えない最大発光量は96と選択できる。なお、最適な発光量96を見つけるための信号選択回数は5回である。
【0016】
請求項4においては、請求項1〜3のいずれかに記載の光波距離計において、前記目標反射物が高反射物でないノンプリズム測距の場合には、前記光量選択手段により前記光送出手段の発光量が切り換えられ、前記目標反射物が高反射物であるプリズム測距の場合には、予め設定された発光量が前記光送出手段から送出され、前記受光信号が前記信号変換手段の前記最大入力値未満の場合にはそのまま測距が行われ、前記受光信号が前記最大入力値以上である場合には、前記測距光路間に濃度フィルタが挿入されて測距が行われるよう、濃度フィルタ挿入出手段を設けた。
【0017】
(作用) ノンプリズム測距が選択された場合、目標反射物からの反射光量は目標反射物によって異なり最適な発光量の決定が困難であるため、光量調節作業が短縮化できる光量選択手段を用いるのが有用である。一方、プリズム測距が選択された場合は、目標反射物からの反射光量がノンプリズム測距より多いことが経験的に分かっているので、信号変換手段の最大入力値以上とならないであろう小さな発光量、例えば、複数段階用意された発光量のうち最小の発光量を送出するよう予め設定する。係る最小発光量でも信号変換手段の最大入力値以上となるのは、高反射物(反射プリズムやミラー等)を近距離(0m〜10m程度)に設置し、送出した光が全て受光側に入射された場合であり、高反射物との距離が遠距離になるほど、送出した光が拡散されて全て受光側に入射されなくなるため飽和しにくくなる。そこで、固定濃度フィルタを挿入して測距光の受光光量を一定量減衰させ、近距離の高反射物でも飽和しないようにすると、高反射物との距離に依らず、受光信号が確実に信号変換手段の測定可能域に入る。
【0018】
請求項5においては、請求項4に記載の光波距離計において、前記演算処理部に、前記ノンプリズム測距において、発光量が最小となる前記選択信号を選択しても、前記受光信号の信号振幅が前記信号変換手段の最大入力値以上となる場合には、自動的に前記プリズム測距に移行させる測距手段自動変更手段を設けた。
【0019】
(作用) ノンプリズム測距において、最小の発光量を用いても、受光信号が信号変換手段の飽和領域に入る場合には、目標反射物が高反射物を視準していると演算処理部が判断し、自動的にプリズム測距に移行する。
【発明の効果】
【0020】
請求項1の光波距離計によれば、従来のデジタルポテンショメータのように、抵抗値を除々に(連続的に)変化させて最適な発光量を探るように光量調節するのではなく、断続的なパターンの発光量の中から選択するだけなので、その信号選択回数は最大でも用意した抵抗器数と同じ回数で済み、光量調節作業が大幅に早くなる。
【0021】
また、例えば、初回に選択した発光量で最大入力値以上と判定された場合に、2回目の発光量を数段階小さい発光量を選択し以降は昇順で発光量を上げる、或いは、初回発光量で最大入力値未満と判定された場合に、2回目の発光量を数段階大きい発光量を選択し以降は降順に発光量を下げる、といったように信号選択すれば、挟み撃ち的に最適な発光量に決定できるため、信号選択回数が減り、より光量調節作業が早くなる。
【0022】
また、光量調節が機械的動作によらず行われるので、使用年数の経過によって機械的不具合が生じることは無い。
【0023】
また、受光信号が測定可能域に確実に入るように最適な発光量に決定されるため、略全ての受光信号を測距値算出に用いることができるので、高精度な測距値を得ることができる。
【0024】
請求項2の光波距離計によれば、光送出手段の発光量を現段階より大に切り換える選択信号を選択する際に、判定基準を設けることができ、最適な次発光量を予測して一気に発光量をジャンプさせることができるので、最適な発光量を2回の信号選択ですぐに見つけることができる。
【0025】
請求項3の光波距離計によれば、選択信号がn個あり、初回発光量をnを超えない最大の2の冪乗2^mから始めると(但し、mは整数かつ2^(m+1)>n≧2^m)、最適な発光量を見つけられる回数はm+1回以内で終了する。最適な発光量が2進法で探索されるため、少ない信号選択回数で効率良く見つけることができる。
【0026】
請求項4の光波距離計によれば、ノンプリズム測距の場合は光量選択手段により、光量調節作業が短縮化される。プリズム測距の場合は、固定濃度フィルタを用いるか用いないかの2択であるため、もはや光量調節作業はない。結果、どちらの場合であったとしても、従来の可変濃度フィルタによる調節やデジタルポテンショメータによる調節よりも、光量調節が格段に速く終了する。
【0027】
請求項5の光波距離計によれば、ユーザがノンプリズム測距,プリズム測距の別を誤った場合であっても、適切な測距が自動的に成される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本願発明の第1の実施例に係る光波距離計のブロック図
【図2】同光波距離計においてプリズム測距モードが選択された場合の測距の手順を示すフローチャート図
【図3】同光波距離計においてノンプリズム測距モードが選択された場合の測距の手順を示すフローチャート図
【図4】本願発明の第2の実施例に係る光波距離計において、ノンプリズム測距モードが選択された場合の測距の手順を示すフローチャート図
【図5】本願発明の第3の実施例に係る光波距離計において、ノンプリズム測距モードが選択された場合の測距の手順を示すフローチャート図
【図6】本願発明の第4の実施例に係る光波距離計において、ノンプリズム測距モードが選択された場合の測距の手順を示すフローチャート図
【図7】本願発明の第5の実施例に係る光波距離計のブロック図
【図8a】同光波距離計において、ノンプリズム測距モードが選択された場合の測距の手順を示すフローチャート図
【図8b】同光波距離計において、ノンプリズム測距モードが選択された場合の測距の手順を示すフローチャート図
【図9】最適な発光量が47の場合の光量調節作業を説明する概念図
【図10】最適な発光量が1の場合の光量調節作業を説明する概念図
【図11】最適な発光量が96の場合の光量調節作業を説明する概念図
【図12】最適な発光量が64の場合の光量調節作業を説明する概念図
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に図1に基づいて、本願発明の光波距離計の第1の実施例の構成を説明する。図1は、本願発明の第1の実施例に係る光波距離計のブロック図である。実施例の光波距離計は、測距光と参照光との位相差から目標反射物33までの距離を算出する位相差方式の光波距離計であって、以下に示す光送出手段(発光素子29)と、光分出手段(切換シャッター37)と、受光手段(受光素子40)と、信号変換手段(A/D変換器44,47,50)と、演算処理部60と、を構成要素に含む。さらに、従来受光素子40の受光光量を調節するために測距光路31に設けられていた可変濃度フィルタを省き、代わりとして、発光素子29に後述する抵抗器群70が設けられている。
【0030】
発振器1で出力された信号F1は分周器2で複数の信号に分周され、異なる周波数を有する信号F2,F3を発生させる。信号F1,F2,F3は、周波数重畳回路3によって重畳化される。電圧供給を受ける駆動回路4は、重畳化された信号F1,F2,F3に基づく交流信号によって発光素子29を駆動する。周波数F1,F2,F3は、F1から順に周波数が低いものとなっており、それぞれの分解能に応じて測距値の各桁が決定される。また、信号F1はPLL(PhaseLockedLoop)5や、周波数生成回路7にも入力され、ローカル信号発振器6や周波数生成回路7から周波数変換器42,45,48に入力されるF1+△f1信号, F2+△f2信号, F3+△f3信号が出力される。
【0031】
発光素子29は、交流信号F1,F2,F3で駆動され、また、それぞれ所定の固定の抵抗値を有する負荷抵抗(抵抗器)8,9,10,11が4つ並列的に接続されて構成された抵抗器群70を介して、直流電源16からも駆動される。抵抗器群70は、負荷抵抗8,9,10,11とこれら抵抗器と一対のアナログスイッチ12,13,14,15からなる。負荷抵抗8,9,10,11はそれぞれ異なる抵抗値を持ち、負荷抵抗8,9,10,11の順に抵抗値が大きくなっている。即ち、負荷抵抗8,9,10,11の順に発光素子29の光量は減少する。負荷抵抗は一般には電流制限抵抗とも呼ばれ、値が大きいほど発光素子に流れる電流が減り(制限され)、光量が少なくなるからである。
【0032】
負荷抵抗8,アナログスイッチ12は選択信号(4)で動作可能になり、負荷抵抗9,アナログスイッチ13は選択信号(3)で動作可能になり、負荷抵抗10,アナログスイッチ14は選択信号(2)で動作可能になり、負荷抵抗11,アナログスイッチ15は選択信号(1)で動作可能になる。即ち、選択信号により動作可能になれば、負荷抵抗8,9,10,11のいずれかが発光素子29に負荷される。
【0033】
選択信号(1), (2), (3), (4)のいずれを選択するかは、後述する演算処理部60の光量選択手段により決定される。これ以降、用意する抵抗器数に対応した選択信号数をn個としたときに、選択信号(1),選択信号(2),・・・選択信号(n)によって切り換えられる発光素子29の発光量の段階を、以後、発光量小から大にかけて発光量1,発光量2,発光量3,・・・発光量nと表現する。
【0034】
発光素子29から送出された光は、ビームスプリッタ30で2つに分割され、切換シャッター37によって択一的に出射されて、一方の光は、測距光路31を経て目標反射物33で反射され、受光光学34で集光されて受光素子40に入力される。他方の光は、参照光路35を経て光量調節用固定濃度フィルタ36を通過し受光素子40に入力される。なお、測距光路31には、固定濃度フィルタ挿入出手段80が設けられており、後述するプリズム測距モードが選択された場合に、測距光の受光光量を一定量減衰させる濃度フィルタ32が挿入可能となっている。
【0035】
受光素子40で受光された光は、3つの周波数F1,F2,F3をもつ信号に変換変換される。信号F1,F2,F3は受光素子40に接続された増幅器41で信号振幅を増幅されたのち、それぞれ周波数変換器42,45,48で周波数乗算されて、周波数の低い扱いやすい信号△f1, △f2, △f3にされる。そして、低域フィルタ43,46,49で周波数変換器42,45,48で生成されたノイズが除去され、A/D変換器44,47,50によってアナログ信号を多値デジタル信号に変換し、演算処理部60にて信号の振幅情報、位相情報を取得できるようにする。ここでの振幅情報は、後述する演算処理部60の受光レベル判定手段に活用される。
【0036】
A/D変換器44,47,50はそれぞれ演算処理部60に接続されており、演算処理部60では、信号△f1, △f2, △f3の信号振幅や位相情報が解析され、測距光と参照光のそれぞれの測距データを算出する。そして、送出光駆動回路や受光部の温度位相ドリフトや電気回路による遅延は測距光と参照光とで共通に含まれる誤差であることから、測距光と参照光の位相差をとることで、目標反射物33までの直線距離(測距値)が算出される。
【0037】
また、演算処理部60には、受光レベル判定手段及び光量選択手段が設けられており、受光レベル判定手段の判定に応じて、光量選択手段により選択信号(1), (2), (3), (4)のいずれかが選択され、対応する負荷抵抗8,9,10,11と一対のアナログスイッチ12,13,14,15に発信される。
【0038】
受光レベル判定手段では、A/D変換器44,47,50に入力された受光信号の信号振幅が、予め設定された最大入力値以上の飽和領域か、最大入力値未満の測定可能域かを判定する。A/D変換器44,47,50で測定可能な受光レベルは最大入力値の範囲までであるため、受光信号振幅が飽和領域である場合には、その信号振幅は測定されない。そして、測定可能域であれば、演算処理部60で解析されて測距値算出に用いられる。
【0039】
演算処理部60では、光量選択手段により受光レベルを見ながら抵抗器群70から一の抵抗器を選択する。即ち、受光レベル判定手段により、測距光の受光信号振幅が最大入力値以上であると判定された場合には、発光素子29の発光量が現在用いている抵抗器による発光量よりも(現段階よりも)小さい発光量に切り換える選択信号が、最大入力値未満となるまで繰り返し発信される。一方、測距光の受光信号振幅が最大入力値未満と判定された場合には、発光素子29の発光量が現在用いている抵抗器による発光量よりも(現段階よりも)大きい発光量に切り換える選択信号が、最大入力値を超えない最大の発光量(最大の受光レベル)となるまで繰り返し発信される。これにより、負荷抵抗8,9,10,11の一が選択されて、発光素子29の発光量が、その測距光の受光信号がA/D変換器44,47,50の最大入力値を超えない最大の発光量となる最適受光量となる、最適な発光量に決定される。
【0040】
さらに、光量選択手段は以下の次発光量判定手段を備えている。次発光量判定手段では、発光素子29の発光量を現段階より大に切り換える選択信号を選択する際に、選択信号数をn、該選択信号に対応する発光素子29の発光量を小から大にかけて発光量1、発光量2・・・発光量n、現段階の発光量を発光量k(k<n)としたとき、現発光量kの次に選択する発光量を、発光量kの状態での受光信号の信号振幅が、発光量kの状態での受光信号の信号振幅が、最大入力値のr倍以上となっていれば発光量kとなる選択信号を選択、最大入力値のr^2倍以上r倍未満となっていれば発光量k+1となる選択信号を選択、最大入力値のr^3倍以上r^2倍未満となっていれば発光量k+2となる選択信号を選択、・・・・・・・最大入力値のr^(n−k)倍以上r^(n−(k+1))倍未満となっていれば発光量(n−1)となる選択信号を選択、最大入力値のr^(n−k)倍未満となっていれば発光量nとなる選択信号を選択する(但しrは発光量減衰定数(0<r<1))。本実施例では、発光量減衰定数r=0.5として、発光量3は発光量4の0.5倍、発光量2は発光量3の0.5倍、発光量1は発光量2の0.5倍に設定されている。即ち、発光量2は発光量4の0.25倍、発光量1は発光量4の0.125倍となる。この関係から、次発光量判定手段では、「発光量2の状態での受光信号振幅がA/D変換器44の最大入力値の0.5倍以上となっていれば発光量2を選択、A/D変換器44の最大入力値の0.5^2(=0.25)倍以上0.5倍未満となっていれば発光量3を選択、A/D変換器44の最大入力値の0.5^2(=0.25)倍未満となっていれば発光量4を選択する」という判定基準が設けられる。
【0041】
ここで、本実施例の光波距離計は、従来用いられていた可変濃度フィルタに代えて数パターンの負荷抵抗8,9,10,11による光量調節を行うため、増幅器41の増幅率を従来よりも下げ、A/D変換器44,47,50の分解能を従来よりも上げる構成とした。なお、以降、信号F2,F3についてはF1と同じ原理となるため説明を省略する。
【0042】
可変濃度フィルタを用いる従来の光波距離計では、例えば増幅器のゲインが80dB、A/D変換器の分解能は12bitとすると、飽和領域となる場合に可変濃度フィルタで測距可能域に入るよう調整を行う。一方、本実施例では、飽和領域となる場合は発光素子29の出力が段階的であるため、目標反射物33がプリズムやミラーのような高反射物でないノンプリズム測距の場合、飽和領域となったときの調整が困難となる。そこで、増幅器41のゲインを例えば56dBに下げることで、飽和領域となる可能性を低くできる。さらに、増幅率を下げたことで受光信号振幅が小さくなり、A/D変換器44で振幅が適切に分解されず信号変換の際に小さい信号振幅を誤って0にデジタル化する恐れを回避するため、A/D変換器44の分解能を16bitに上げ、A/D変換値を同等まで向上させている。なお、増幅器41のゲインは、例えば5mの近距離においてKODAK
Grayカード白面等の高反射物を基準として設定した。なお、目標反射物33を高反射物とするプリズム測距の場合の増幅器41のゲインはノンプリズム測距と同じ値を使用した。
【0043】
そして、係るプリズム測距の場合には、初回の発光量は最小発光量1となる選択信号(1)を出力するよう設定されている。最小発光量1を選択しても受光信号振幅がA/D変換器44の飽和領域となる場合には、濃度フィルタ挿入出手段80により、測距光路31間に濃度フィルタ32が挿入され、測距光の受光光量を一定量減衰される。濃度フィルタ32は、従来の固定濃度フィルタよりも減衰量の大きいフィルタを用いる。
【0044】
また、演算処理部60は、ノンプリズム測距の場合において、最小発光量1となる選択信号(1)を選択しても受光信号振幅がA/D変換器44の飽和領域となる場合には、自動的にプリズム測距に移行される測距手段自動変更手段が設けられている。
【0045】
次に、図2に示す、同光波距離計においてプリズム測距モードが選択された場合の測距の手順を示すフローチャート図に基づいて、実施例に係る光波距離計のプリズム測距の手順を説明する。プリズム測距モードが選択されると、まず、ステップ1において、演算処理部60から、発光素子29が最小発光量1となるよう選択信号(1)が出力される。次にステップ2では、A/D変換器44で発光量1での測距光の受光信号振幅が測定される。ステップ3では、演算処理部60の受光レベル判定手段により、受光信号振幅が最大入力値を超えるか否かが判定される。受光レベルが最大入力値を超えない(最大入力値未満)の測定可能域の場合には、ステップ5に移行し、発光量1で測距が行われて終了となる。一方、受光信号振幅が最大入力値を超える(最大入力値以上)の飽和領域である場合には、ステップ4に移行し、濃度フィルタ挿入出手段80によって濃度フィルタ32が挿入されたのちステップ5で測距が行われて終了となる。
【0046】
次に、図3に示す、同光波距離計においてノンプリズム測距モードが選択された場合の測距の手順を示すフローチャート図に基づいて実施例に係る光波距離計のノンプリズム測距の手順を説明する。
【0047】
ノンプリズム測距モードが選択されると、まず、ステップ1において、演算処理部60から、発光素子29が発光量2となるよう選択信号(2)が出力される。次にステップ2で、A/D変換器44で発光量2での受光信号振幅が測定され、ステップ3で、演算処理部60の受光レベル判定手段により、受光信号振幅が最大入力値を超えるか否かが判定される。最大入力値を超える場合には、ステップ9に移行し、現発光量2よりも小さい発光量1となるよう選択信号(1)が出力され、ステップ10で、発光量1で再度受光レベル判定手段により受光レベルが判定される。ここで最大入力値を超えない場合には、ステップ11に移行し発光量1を最適として、ステップ13に移行し測距が行われて終了となる。ステップ10で最大入力値を超える場合には、ステップ12に移行し、測距手段自動変更手段によりユーザが測距モードの選択を誤ったと判断して自動的にプリズムモードへ移行してプリズムモードの測距フローを経て終了となる。
【0048】
一方、ステップ3で最大入力値を超えない場合には、ステップ4に移行し、次発光量判定手段により発光量2での受光信号振幅が最大入力値の0.5倍以上であるか否かが判定され、最大入力値の0.5倍以上であれば、ステップ5に移行し発光量2となるよう選択信号(2)が出力され、ステップ13で発光量2で測距が行われて終了となる。ステップ4で0.5倍未満の場合は、ステップ6に移行し、次発光量判定手段により発光量2での受光信号振幅が最大入力値の0.25(=0.5^2)倍以上0.5倍未満であるか否かが判定され、最大入力値の0.25倍以上0.5倍未満であれば、ステップ7に移行し、発光量3となるよう選択信号(3)が出力され、ステップ13で発光量3で測距が行われて終了となる。また、ステップ6で発光量2の受光信号振幅が最大入力値の0.25倍未満と判定されると、ステップ8に移行し、発光量4を最適として、ステップ13に移行し、発光量4で測距が行われて終了となる。
【0049】
本実施例によれば、ユーザの判断でプリズム測距モードが選択された場合には、予め設定された発光量1か、発光量1において濃度フィルタ32が挿入された状態のいずれかで測距が行われる。プリズム測距モードでは、予め設定された発光量1を用いて濃度フィルタ32を挿入するか否かの2択となるため、もはや光量調節作業がなく、光量調節は即終了する。最小発光量1でもA/D変換器44の飽和領域となるのは、目標反射物33に高反射物を用いて近距離(0m〜10m程度)に設置し、送出した光が全て受光側に入射された場合であり、目標反射物33との距離が遠距離になるほど、送出した光が拡散されて全て受光側に入射されなくなるため飽和しにくくなるので、濃度フィルタ32で近距離の高反射物でも飽和しないようにすると、目標反射物33との距離に依らず、受光信号が確実にA/D変換器44の測定可能域に入るようになる。
【0050】
ノンプリズム測距モードが選択された場合には、発光素子29が発光量2から開始され、次発光量判定手段により、次の信号選択で最適な発光量に決定される。即ち、光送出手段の発光量を現段階より大に切り換える選択信号を選択する際に判定基準が設けられている(ステップ4、ステップ6)ので、最適な次発光量を予測して発光量を一気にジャンプさせることができ、最適な発光量を2回の信号選択で見つけることができる。よって、最適な発光量が発光量4である場合には、最適な発光量を予測して初回発光量2→発光量4へ一気にジャンプするので、発光量2→発光量3→発光量4と昇順で選択していく場合よりも光量調節作業が大幅に短縮される。
【0051】
また、最小発光量1を用いても受光レベルが飽和領域となる場合には、演算処理部60が高反射物を視準していると判断し、自動的にプリズム測距モードに移行される(ステップ12)ので、ユーザが測距モードの判断を誤った場合であっても、適切な測距が自動的に成される。
【0052】
結果、ノンプリズム測距モード、プリズム測距モードのいずれが選択された場合であっても、従来の可変濃度フィルタによる調節やデジタルポテンショメータによる調節よりも、光量調節作業が格段に早く終了する。
【0053】
さらに、光量調節がモータ等の機械的動作によらず行われるので、使用年数の経過によって機械的不具合が生じることは無い。また、最適な発光量に決定されて受光信号が測定可能域に確実に入るので、略全ての受光信号を測距値算出に用いることができ、高精度な測距値を得ることができる。
【0054】
さらには、用意した発光段階(1,2,3,4)のうち、発光段階を二分したうちの小さい側の発光量2を初回発光量としたことで、次発光量判定手段(ステップ4、ステップ6)が有効に機能している。即ち、仮に発光量kの状態の受光レベルが飽和領域である場合には、その信号振幅がどれほど最大入力値より大きいかA/D変換器44で判断ができない。しかし、発光量kで飽和していない(測距可能域の)場合は、その信号振幅を測定可能であるため、発光量kの受光レベルが最大入力値に対してどれほど小さいかを測定することができるので、初回の発光量を小さくすれば、次発光量判定手段によって、次発光量を発光量kから何段階上げれば良いのか予測することができる。
【0055】
また、実施例1の変形例として、選択信号数が6(抵抗器が6個)の場合には、光量選択手段における次発光量判定手段において、初回発光量2から発光量3,発光量4,発光量5,発光量6のいずれかを選ぶ判定基準は、「発光量2の状態での受光信号振幅が、A/D変換器44の最大入力値の0.5倍以上となっていれば発光量2を選択、A/D変換器44の最大入力値の0.5^2倍以上0.5倍未満となっていれば発光量3を選択、A/D変換器44の最大入力値の0.5^3倍以上0.5^2倍未満となっていれば発光量4を選択、A/D変換器44の最大入力値の0.5^4倍以上0.5^3倍未満となっていれば発光量5を選択、A/D変換器44の最大入力値の0.5^4倍未満となっていれば発光量6を選択」する。
【0056】
さらに、一般的に選択信号がn(抵抗器がn個)用意された場合には、次発光量判定手段における判定基準は「発光量2の状態での受光信号振幅が、A/D変換器44の最大入力値の0.5倍以上となっていれば発光量2を選択、A/D変換器44の最大入力値の0.5^2倍以上0.5倍未満となっていれば発光量3を選択、A/D変換器44の最大入力値の0.5^3倍以上0.5^2倍未満となっていれば発光量4を選択、・・・・・・・A/D変換器44の最大入力値の0.5^(n−2)倍以上0.5^(n−3)倍未満となっていれば発光量(n−1)を選択、A/D変換器44の最大入力値の0.5^(n−2)倍未満となっていれば発光量nを選択」する。
【0057】
なお、初回発光量を発光量2より大きい発光量k(仮に2<k)から始める)場合の次発光量判定手段の一般式は「発光量kの状態で受光レベルがA/D変換器44の最大入力値の0.5倍以上となっていれば発光量kを選択、A/D変換器44の最大入力値の0.5^2倍以上0.5倍未満となっていれば発光量k+1を選択、A/D変換器44の最大入力値の0.5^3倍以上0.5^2倍未満となっていれば発光量k+2を選択、A/D変換器44の最大入力値の0.5^4倍以上0.5^3倍未満となっていれば発光量k+3を選択、A/D変換器44の最大入力値の0.5^5倍以上0.5^4倍未満となっていれば発光量k+4を選択、・・・・・・・A/D変換器44の最大入力値の0.5^(n-k)倍以上0.5^(n−(k+1))倍未満となっていれば発光量(n−1)を選択、A/D変換器44の最大入力値の0.5^(n−k)倍未満となっていれば発光量nを選択」となる。仮に予測した次発光量が最大入力値を超えた場合には、以降の発光量を降順で小に移行させれば、挟み撃ち的に最適な発光量が選択され、数回の信号選択で受光信号振幅は確実に測距可能域に入るので、光量調節作業は従来よりも格段に早い。なお、選択信号数nは、測距仕様時間との兼ね合いと演算処理部60で処理可能である限り増やすことができる。
【0058】
図4は、本願発明の第2の実施例に係る光波距離計において、ノンプリズム測距モードが選択された場合の測距の手順を示すフローチャート図である。第2の実施例は、初回発光量が発光量1から開始されること以外は実施例1と同様であるため、同一の符号を用いて説明を割愛する。
【0059】
図4に示すように、ノンプリズム測距モードが選択されると、まず、ステップ1において、演算処理部60から、発光素子29が発光量1となるよう選択信号(1)が出力される。次にステップ2で発光量1での受光信号振幅が測定され、ステップ3で、演算処理部60の受光レベル判定手段により、受光信号振幅が最大入力値を超えるか否かが判定される。最大入力値を超える場合には、ステップ11に移行し、実施例1と同様、ユーザのモード選択ミスと判断して自動的にプリズム測距を行う。
【0060】
ステップ3で、最大入力値を超えない場合には、ステップ4に移行し、次発光量判定手段により発光量1での受光信号振幅が最大入力値の0.5倍以上であるか否かが判定され、最大入力値の0.5倍以上であれば、ステップ5に移行し発光量1が最適として、ステップ12で発光量1で測距が行われて終了となる。ステップ4で0.5倍未満の場合は、ステップ6に移行し、次発光量判定手段により発光量1での受光信号振幅が最大入力値の0.25(=0.5^2)倍以上0.5倍未満であるか否かが判定され、最大入力値の0.25倍以上0.5倍未満であれば、ステップ7に移行し、発光量2となるよう選択信号(2)が出力され、ステップ12で発光量2で測距が行われて終了となる。また、ステップ6で発光量2の受光信号振幅が最大入力値の0.25倍未満と判定されると、ステップ8に移行し、次発光量判定手段により発光量1での受光信号振幅が最大入力値の0.125(=0.5^3)倍以上0.25倍未満であるか否かが判定され、最大入力値の0.125倍以上0.25倍未満であれば、ステップ9に移行し、発光量3となるよう選択信号(3)が出力され、ステップ12で発光量3で測距が行われて終了となる。また、ステップ8で発光量1の受光信号振幅が最大入力値の0.125倍未満と判定されると、ステップ10に移行し、発光量4が選択され、ステップ12に移行し、発光量4で測距が行われて終了となる。
【0061】
本実施例においても、初回発光量を、用意した発光段階のうち最小の発光量1としたことで、次発光量判定手段(ステップ4、ステップ6、ステップ8)が有効に機能し、2回の信号選択で最適な発光量を見つけることができる。よって、実施例1と同様、ノンプリズム測距モード、プリズム測距モードのいずれが選択された場合であっても、従来よりも光量調節が格段に早く終了する。
【0062】
図5は、本願発明の第3の実施例に係る光波距離計において、ノンプリズム測距モードが選択された場合の測距の手順を示すフローチャート図である。第3の実施例は、実施例1と同様の構成で、プリズム測距モードの場合のフローも実施例1と同様である。第3の実施例では、ノンプリズム測距モードの場合に、初回発光量が発光量3から開始され、演算処理部60において、受光レベル判定手段と光量選択手段のみを用いている。
【0063】
ノンプリズム測距モードが選択されると、まず、ステップ1において発光量3が選択され、ステップ2で受光信号振幅が測定される。そしてステップ3で受光レベル判定手段により発光量3で受光レベルが判定され、最大入力値を超える場合には、ステップ4で発光量2に切り換えられ、ステップ5で発光量2で受光レベル判定され、最大入力値を超える場合には、ステップ6で発光量1に切り換えられ、ステップ7で発光量1で受光レベル判定され、最大入力値を超える場合には、ステップ8でプリズムモードに自動で移行し、ステップ5で最大入力値を超えない場合には、ステップ12に移行されそのままの発光量2で測距が行われて終了となる。一方、ステップ3で最大入力値を超えないと判定された場合には、ステップ9で発光量4に切り換えられ、ステップ10で発光量4で受光レベル判定され、最大入力値を超えない場合にはステップ12に移行して発光量4で測距され、ステップ10で最大入力値を超える場合には、ステップ11で発光量3に切り換えられてステップ12へ移行して測距されて終了となる。
【0064】
本実施例によれば、受光レベル判定手段により、受光信号振幅がA/D変換器44の最大入力値以上か否か(飽和領域か測定可能域か)を判断し(ステップ3,ステップ5,ステップ7,ステップ10)、飽和領域であれば、発光素子29の発光量を現段階から降順に下げるように測定可能域に入るまで信号選択を行う(ステップ3〜ステップ6、ステップ10〜ステップ11)。一方、測定可能域であれば、発光素子29の発光量を現段階から昇順に上げるように、最大入力値を超えないレベルまで信号選択を行う(ステップ3→ステップ9)。発光量1でも飽和する場合には、実施例1と同様に自動でプリズムモードへ移行する(ステップ8)。
【0065】
これにより、断続的なパターンの発光量の中から最適受光量となる最適な発光量に決定するだけなので、信号選択回数は最大でも用意した抵抗器数と同じ回数で済み、従来よりも光量調節作業が格段に早く終了する。
【0066】
図6は、本願発明の第4の実施例に係る光波距離計において、ノンプリズム測距モードが選択された場合の測距の手順を示すフローチャート図である。第4の実施例では、ノンプリズム測距モードの場合に、モード開始から2回目に選択される発光量が、初回発光量3から数段小さい発光量1を選択する点のみが実施例3と異なる。
【0067】
ノンプリズム測距モードが選択されると、まず、ステップ1において発光量3が選択され、ステップ2の受光信号振幅測定を経て、ステップ3で受光レベル判定される。ステップ3で最大入力値を超える場合には、ステップ4で発光量1に切り換えられ、ステップ5で発光量1で受光レベル判定され、最大入力値を超える場合には、ステップ6でプリズム測距モードに自動的に移行し、ステップ5で最大入力値を超えない場合には、ステップ7で発光量2に切り換えられ、ステップ8で発光量2で受光レベル判定され、最大入力値を超えない場合には、ステップ13に移行され発光量2で測距されて終了し、ステップ8で最大入力値を超える場合には、ステップ9で発光量1に切り換えられてステップ13で測距されて終了する。一方、ステップ3で最大入力値を超えないと判定された場合には、実施例2と同様となる。
【0068】
本実施例によれば、ステップ3の受光レベル判定手段により飽和領域と判定されると、発光素子29の発光量が、発光量3から数段階小さい発光量1に下げられ(ステップ4)、以降、発光量が昇順に選択されて最適な発光量となるまで信号選択を行う(ステップ5〜ステップ9)。
【0069】
本実施例においても、断続的なパターンの中から最適な発光量に決定するだけなので、従来よりも光量調節作業が格段に早く終了する。さらに、初回発光量において飽和領域と判定された場合に、2回目の発光量を数段階小さい発光量を選択し、以降は昇順で発光量を上げるため、挟み撃ち的に最適な発光量に決定できるため、信号選択回数が減り、実施例2よりも光量調節作業が早くなる。
なお、前記実施例1〜4における発光量減衰定数r=0.5は一例であり、0<r<1のものであればこれに限定されない。
【0070】
図7は、本願発明の第5の実施例に係る光波距離計のブロック図である。第5の実施例では、実施例1における抵抗器群70に、抵抗器が複数個用意され、演算処理部60から受光信号振幅を見ながらこれに対応する数の選択信号によって発光素子29の発光量が選択可能な構成とされた他は、実施例1と同様の構成であり、プリズム測距モードのフローも同様である。そして、本実施例における光波距離計は、光量選択手段において、選択信号数をn、該選択信号に対応する光送出手段の発光量を小から大にかけて発光量1、発光量2・・・発光量nとしたとき、初回の発光量は、信号数nを超えない最大の2の冪乗(2^m)に該等する発光量から始められ、後述の最適発光量探索手段によって最適な発光量が決定される。
【0071】
図7に示すように、本実施例の光波距離計では、抵抗器が100個、即ち負荷抵抗101〜負荷抵抗200とこれに一対のアナログスイッチ201〜アナログスイッチ300が用意されており、演算処理部60からは、これに対応する選択信号(1)〜選択信号(100)が発信され、発光素子29の発光段階は100パターンに構成されている。
【0072】
次に、最適発光量探索手段を、図8a及びbに示す、同光波距離計においてノンプリズム測距モードが選択された場合の測距の手順を示すフローチャート図に基づいて説明する。図8aは初回発光量で最大入力値を超えるため、初回発光量よりも小さい発光量の中から探索するフローであり、図8bは初回発光量で最大入力値を超えないため、初回発光量よりも大きい発光量の中から探索するフローである。
【0073】
ノンプリズム測距モードが選択されると、まず、初回の発光量は、選択信号数n=100を越えない最大の2の冪乗2^mから開始する。即ちステップ1で100>2^6=64(m=6)に対応する発光量64が選択される。次に、ステップ2の受光信号振幅測定を経て、ステップ3で受光レベル判定手段にて受光レベルを判定される。発光量64でA/D変換器44に入力される受光信号の信号振幅が最大入力値を超える場合は、ステップ4に移行し、次数を1下げ(m=5)て、64の半分の発光量32(=2^5)に減じたのち、ステップ5でm=0か判定される。ステップ5でm≠0であれば、ステップ6で再度受光レベルを判定される。ステップ6で最大入力値を超える場合には、ステップ9で、32と32の半分の発光量16(=2^4)とで減算する。次にステップ10でm=0か判定し、m=0まで次数が下がったならばステップ11で受光レベル判定手段にて受光レベルを判定される。m=0で無ければステップ6に戻る。ステップ6で最大入力値を超えない場合には、ステップ7で、32と32の半分の発光量16(=2^4)とで加算する。次にステップ8でm=0か判定し、m=0まで次数が下がったならばステップ11で受光レベル判定手段にて受光レベルを判定される。m=0で無ければステップ6に戻る。以降同様の場合はステップ6〜ステップ10を繰り返して次数が下げられ発光量が増減される。ステップ11で最大入力値を超えないと判定されると、これまで操作した発光量のうち最大入力値を超えない最大発光量を最適な発光量とする。また、ステップ5でm=0である場合も、ステップ11に移行する。次にステップ12では、発光量1でも最大入力値を超える場合、ステップ13のプリズム測距に移行する。発光量が1以上で最適な場合、ステップ14に移行して測距されて終了となる。
【0074】
一方、ステップ3で、初回発光量64で受光信号振幅が飽和領域とならない(測定可能域の)場合は、ステップ15に移行し、次数を1下げ(m=5)て、64と64の半分の発光量32(=2^5)とで加算し、ステップ16で発光量が100を超えるか判定する。超えた場合はステップ17で発光量を加算前に戻し次数mは減じたままにステップ15に戻るが、今64+32=96で100を超えないので、ステップ16に移行する。ステップ18ではm=0かを判定し、m=0であれば、ステップ26に移行し受光レベル判定手段にて受光レベルを判定される。m=0で無ければ、ステップ19にて受光レベルを判定される。ステップ19で最大入力値を超えない場合には、ステップ20で、次は96と32の半分の16を加算して、発光量を増加させ、ステップ21で発光量が100を超えるか判定し、超える場合はステップ22で加算前に96に戻し次数mは減じたままにステップ20に戻る。ステップ21で発光量が100を超えなければ、ステップ23でm=0かを判定する。m=0であればステップ26で受光レベル判定手段にて受光レベルを判定される。m=0でなければステップ19に戻る。ステップ19で最大入力値を超えた場合には、ステップ24で、次は96と32の半分の16を減算して、発光量を減少させ、ステップ25でm=0かを判定する。m=0であればステップ26で受光レベル判定手段にて受光レベルを判定される。m=0でなければステップ19に戻る。以降同様の場合はステップ19〜ステップ25を繰り返して発光量が増減され、ステップ26で最大入力値を超えないと判定されると、これまで操作した発光量のうち最大入力値を超えない最大発光量を最適な発光量とする。ステップ27では発光量1での最大入力値を超える場合、ステップ28のプリズム測距に移行する。発光量が1以上で最適な場合、ステップ29に移行して測距されて終了となる。
【0075】
次に、最適発光量探索手段を具体的例を挙げて説明する。図9は、最適な発光量が47の場合の光量選択作業を説明する概念図である。なお、黒丸はその発光量で飽和(最大入力値以上)、白丸はその発光量で測定可能(最大入力値未満)であることを示す。
【0076】
選択信号数n=100で、最適な発光量が発光量47の場合、初回発光量は100>2^6=64(m=6)である(ステップ1)。初回発光量64>47(ステップ3)であるので、次数を1下げ(m=5)、半分の発光量32とし(ステップ4)、m≠0であるので(ステップ5)、再度受光レベルを判定する(ステップ6)と、32<47であるので、さらに次数を1下げ(m=4)た発光量分を加算して48(64−32+16)とし(ステップ7)、48>47(ステップ6)であるので、さらに次数を1下げ(m=3)た発光量分を減算して40(64−32+16−8)とし(ステップ9)、40<47(ステップ6)であるので、さらに次数を1下げ(m=2)た発光量分を加算して44(64−32+16−8+4)とし(ステップ7)、44<47(ステップ6)であるので、さらに次数を1下げ(m=1)た発光量分を加算して46(64−32+16−8+4+2)とし(ステップ7)、46<47(ステップ6)であるので、さらに次数を1下げ(m=0)た発光量分を加算して47(64−32+16−8+4+2+1)とし(ステップ7)、m=0まで次数が下がった(ステップ8)ので受光レベルを判定すると、発光量47では最大入力値を超えない。そして、発光量64→32(64−32)→48(64−32+16)→40(64−32+16−8)→44(64−32+16−8+4)→46(64−32+16−8+4+2)→47(64−32+16−8+4+2+1)と操作した発光量の中で、最大入力値を超えない発光量は発光量32、40、44、46、47であり、このうち最大発光量は47と選択できる(ステップ11)。このように、最適な発光量47を見つけるための信号選択回数は7回である。
【0077】
また、図10は、最適な発光量が1の場合の光量選択作業を説明する概念図である。最適な発光量が1の場合は、初回発光量64>1(ステップ3)であるので、次数を1下げ(m=5)、半分の発光量32とし(ステップ4)、m≠0であるので(ステップ5)、再度受光レベルを判定すると、32>1(ステップ6)であるので、さらに次数を1下げ(m=4)た発光量分を減算し16(64−32−16)(ステップ9)、16>1(ステップ6)であるので、さらに次数を1下げ(m=3)て8(64−32−16−8)(ステップ9)、さらに次数を1下げ(m=2)て4(64−32−16−8−4)(ステップ9)、さらに次数を1下げ(m=1)て2(64−32−16−8−4−2)(ステップ9)、さらに次数を1下げ(m=0)て1(64−32−16−8−4−2−1)(ステップ9)、m=0まで次数が下がった(ステップ10)ので受光レベルを判定すると、発光量1では最大入力値を超えない。そして、発光量64→32→16→8→2→1と操作した発光量の中で、最大入力値を超えない最大発光量は1と選択できる(ステップ11)。このように、最適な発光量が初回発光量64(2^m=6)未満の場合は、最適な発光量を見つけるための信号選択回数は必ず7回以内で決まる。
【0078】
図11は、最適な発光量が96の場合の光量選択作業を説明する概念図である。初回発光量64<96(ステップ3)であるので、次数を1下げ(m=5)た発光量32を現発光量に加算して96(64+32)する(ステップ15)。発光量96は発光量100を超えず(ステップ16)、m≠0であるので(ステップ18)、再度受光レベルを判定すると、96=96で最大入力値を超えないので(ステップ19)、さらに次数を1下げ(m=4)た発光量分を加算して112(64+32+16)とすると(ステップ20)、発光量100を超える(ステップ21)ので、加算前の発光量96に戻し(ステップ22)、さらに次数を1下げ(m=3)た発光量分を加算して104(64+32+8)とすると(ステップ20)、発光量100を超える(ステップ21)ので、加算前の発光量96に戻し(ステップ22)、さらに次数を1下げ(m=2)た発光量分を加算して100(64+32+4)とすると(ステップ20)、100>96(ステップ19)であるので、さらに次数を1下げ(m=1)た発光量分を減算して98(64+32+4−2)とし(ステップ24)、98>96(ステップ19)であるので、さらに次数を1下げ(m=0)た発光量分を減算して97(64+32+4−2−1)とし(ステップ24)、m=0まで次数が下がった(ステップ25)ので、受光レベルを判定する(ステップ26)と発光量97では最大入力値を超えてしまう。そして、発光量64→96→100→98→97と操作した発光量の中で、最大入力値を超えない最大発光量は96と選択できる(ステップ26)。このように、最適な発光量96を見つけるための信号選択回数は5回である。
【0079】
また、最適な発光量は発光量95の場合、発光量64→96(64+32)→80(64+32−16)→88(64+32−16+8)→92(64+32−16+8+4)→94(64+32−16+8+4+2)→95(64+32−16+8+4+2+1)の選択で、最大入力値を超えない最大発光量は95と選択でき、最適な発光量を見つけるための信号選択回数は7回である。このように最適な発光量が64超の場合でも必ず7回以内で決まる。
【0080】
また、図12は、最適な発光量が64の場合の光量選択作業を説明する概念図である。最適な発光量が2^m=64(m=6)の場合、発光量64→96(64+32)→80(64+32−16)→72(64+32−16−8)→68(64+32−16−8−4)→66(64+32−16−8−4−2)→65(64+32−16−8−4−2−1)の選択で、最大入力値を超えない最適な発光量は64であることを見つけるための信号選択回数は7回である。このように最適な発光量が64(2^m)の場合でも必ず7回以内で決まる。
【0081】
即ち、選択信号がn個あり、初回発光量をnを超えない最大の2の冪乗2^mから始めると(但し、mは整数かつ2^(m+1)>n≧2^m)、最適な発光量を見つけられる回数はm+1回以内で終了する。最適な発光量が2進法で探索されるため、少ない信号選択回数で効率良く見つけることができる。
【0082】
なお、実施例1〜5において、選択信号を数個同時に動作させても発光素子29から出射可能であるが、負荷抵抗が合成され、光量パワーが精密に把握できなくなるため、選択信号は単独で動作させるのが好ましい。
【符号の説明】
【0083】
29 発光素子(光送出手段)
31 測距光路
33 目標反射物
35 参照光路
37 切換シャッター(光分出手段)
40 受光素子(受光手段)
44,47,50 A/D変換器(信号変換手段)
60 演算処理部
70 抵抗器群
80 濃度フィルタ挿入出手段
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の変調周波数で変調された光を送出する光送出手段と、
前記光送出手段の光を、測定地点に配置した目標反射物までを往復する測距光路または参照光路のうち選択された一方に送出する光分出手段と、
前記測距光路を通過した測距光または前記参照光路を通過した参照光を受光し、それぞれの受光信号を出力する受光手段と、
前記受光信号を測定し、アナログ信号からデジタルデータへ変換する信号変換手段と、
前記光送出手段に負荷されて発光量を調節する抵抗器と、
前記抵抗器を前記受光信号の信号振幅に応じて設定し、前記信号変換手段でデジタル化された測距信号と参照信号の位相差によって前記目標反射物までの直線距離である測距値を算出する演算処理部と、
を備えた光波距離計であって、
前記抵抗器は複数であって、抵抗値大から小にかけてそれぞれが所定の固定抵抗値を持ち、そのうちの一が該抵抗器と一対一対応の選択信号により選択されて、前記光送出手段の発光量が小から大に切り換えられる抵抗器群として設けられ、
前記演算処理部には、
前記信号変換手段に入力された前記受光信号の信号振幅が、該信号変換手段の最大入力値以上か否かを判定する受光レベル判定手段と、
前記受光レベル判定手段により、前記最大入力値以上と判定された場合には、最大入力値未満となるまで前記光送出手段の発光量を小に切り換える前記選択信号を選択し、前記最大入力値以上と判定された場合には、最大入力値を超えない最大の発光量となるまで前記光送出手段の発光量を大に切り換える前記選択信号を選択する光量選択手段と、が設けられたことを特徴とする光波距離計。
【請求項2】
前記光量選択手段において、前記光送出手段の発光量を現段階より大に切り換える前記選択信号を選択する際に、
前記選択信号数をn、該選択信号に対応する前記光送出手段の発光量を小から大にかけて発光量1、発光量2・・・発光量n、前記現発光量を発光量k(k<n)としたとき、現発光量kの次に選択する発光量を、
発光量kの状態での前記受光信号の信号振幅が、
前記最大入力値のr^2倍以上となっていれば発光量k+1となる選択信号を選択、
前記最大入力値のr^3倍以上r^2倍未満となっていれば発光量k+2となる選択信号を選択、・・・・・・・
前記最大入力値のr^(n−k)倍以上r^(n−(k+1))倍未満となっていれば発光量(n−1)となる選択信号を選択、
前記最大入力値のr^(n−k)倍未満となっていれば発光量nとなる選択信号を選択する(但しrは発光量減衰定数(0<r<1))、次発光量判定手段が設けられたことを特徴とする請求項1に記載の光波距離計。
【請求項3】
前記光量選択手段において、前記選択信号数をn、該選択信号に対応する前記光送出手段の発光量を小から大にかけて発光量1、発光量2・・・発光量nとしたとき、初回の発光量を、選択信号数nを超えない2^m(但し、mは整数かつ2^(m+1)>n≧2^m)に対応する発光量2^mから始め、前記受光レベル判定手段により、現発光量が前記最大入力値以上と判定された場合には、前記光送出手段の発光量を、現発光量の次数を1減じた発光量分減算し、前記最大入力値未満と判定された場合には、現発光量の次数を1減じた発光量分加算する(但し、加算の結果発光量nを超える場合には、加算前の発光量に戻し、さらに次数を1減じた発光量分を加算する)ことを、次数mが0となるまで繰り返し、前記次数加減操作で探索した発光量のなかから、最大入力値を超えない最大の発光量となる前記選択信号を選択する最適発光量探索手段が設けられたことを特徴とする請求項1に記載の光波距離計。
【請求項4】
前記目標反射物が高反射物でないノンプリズム測距の場合には、前記光量選択手段により前記光送出手段の発光量が切り換えられ、
前記目標反射物が高反射物であるプリズム測距の場合には、予め設定された発光量が前記光送出手段から送出され、前記受光信号が前記信号変換手段の前記最大入力値未満の場合にはそのまま測距が行われ、前記受光信号が前記最大入力値以上である場合には、前記測距光路間に濃度フィルタが挿入されて測距が行われるよう、濃度フィルタ挿入出手段が設けられたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の光波距離計。
【請求項5】
前記演算処理部に、前記ノンプリズム測距において、発光量が最小となる前記選択信号を選択しても、前記受光信号の信号振幅が前記信号変換手段の最大入力値以上となる場合には、自動的に前記プリズム測距に移行させる測距手段自動変更手段が設けられたことを特徴とする請求項4に記載の光波距離計。
【請求項1】
複数の変調周波数で変調された光を送出する光送出手段と、
前記光送出手段の光を、測定地点に配置した目標反射物までを往復する測距光路または参照光路のうち選択された一方に送出する光分出手段と、
前記測距光路を通過した測距光または前記参照光路を通過した参照光を受光し、それぞれの受光信号を出力する受光手段と、
前記受光信号を測定し、アナログ信号からデジタルデータへ変換する信号変換手段と、
前記光送出手段に負荷されて発光量を調節する抵抗器と、
前記抵抗器を前記受光信号の信号振幅に応じて設定し、前記信号変換手段でデジタル化された測距信号と参照信号の位相差によって前記目標反射物までの直線距離である測距値を算出する演算処理部と、
を備えた光波距離計であって、
前記抵抗器は複数であって、抵抗値大から小にかけてそれぞれが所定の固定抵抗値を持ち、そのうちの一が該抵抗器と一対一対応の選択信号により選択されて、前記光送出手段の発光量が小から大に切り換えられる抵抗器群として設けられ、
前記演算処理部には、
前記信号変換手段に入力された前記受光信号の信号振幅が、該信号変換手段の最大入力値以上か否かを判定する受光レベル判定手段と、
前記受光レベル判定手段により、前記最大入力値以上と判定された場合には、最大入力値未満となるまで前記光送出手段の発光量を小に切り換える前記選択信号を選択し、前記最大入力値以上と判定された場合には、最大入力値を超えない最大の発光量となるまで前記光送出手段の発光量を大に切り換える前記選択信号を選択する光量選択手段と、が設けられたことを特徴とする光波距離計。
【請求項2】
前記光量選択手段において、前記光送出手段の発光量を現段階より大に切り換える前記選択信号を選択する際に、
前記選択信号数をn、該選択信号に対応する前記光送出手段の発光量を小から大にかけて発光量1、発光量2・・・発光量n、前記現発光量を発光量k(k<n)としたとき、現発光量kの次に選択する発光量を、
発光量kの状態での前記受光信号の信号振幅が、
前記最大入力値のr^2倍以上となっていれば発光量k+1となる選択信号を選択、
前記最大入力値のr^3倍以上r^2倍未満となっていれば発光量k+2となる選択信号を選択、・・・・・・・
前記最大入力値のr^(n−k)倍以上r^(n−(k+1))倍未満となっていれば発光量(n−1)となる選択信号を選択、
前記最大入力値のr^(n−k)倍未満となっていれば発光量nとなる選択信号を選択する(但しrは発光量減衰定数(0<r<1))、次発光量判定手段が設けられたことを特徴とする請求項1に記載の光波距離計。
【請求項3】
前記光量選択手段において、前記選択信号数をn、該選択信号に対応する前記光送出手段の発光量を小から大にかけて発光量1、発光量2・・・発光量nとしたとき、初回の発光量を、選択信号数nを超えない2^m(但し、mは整数かつ2^(m+1)>n≧2^m)に対応する発光量2^mから始め、前記受光レベル判定手段により、現発光量が前記最大入力値以上と判定された場合には、前記光送出手段の発光量を、現発光量の次数を1減じた発光量分減算し、前記最大入力値未満と判定された場合には、現発光量の次数を1減じた発光量分加算する(但し、加算の結果発光量nを超える場合には、加算前の発光量に戻し、さらに次数を1減じた発光量分を加算する)ことを、次数mが0となるまで繰り返し、前記次数加減操作で探索した発光量のなかから、最大入力値を超えない最大の発光量となる前記選択信号を選択する最適発光量探索手段が設けられたことを特徴とする請求項1に記載の光波距離計。
【請求項4】
前記目標反射物が高反射物でないノンプリズム測距の場合には、前記光量選択手段により前記光送出手段の発光量が切り換えられ、
前記目標反射物が高反射物であるプリズム測距の場合には、予め設定された発光量が前記光送出手段から送出され、前記受光信号が前記信号変換手段の前記最大入力値未満の場合にはそのまま測距が行われ、前記受光信号が前記最大入力値以上である場合には、前記測距光路間に濃度フィルタが挿入されて測距が行われるよう、濃度フィルタ挿入出手段が設けられたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の光波距離計。
【請求項5】
前記演算処理部に、前記ノンプリズム測距において、発光量が最小となる前記選択信号を選択しても、前記受光信号の信号振幅が前記信号変換手段の最大入力値以上となる場合には、自動的に前記プリズム測距に移行させる測距手段自動変更手段が設けられたことを特徴とする請求項4に記載の光波距離計。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8a】
【図8b】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8a】
【図8b】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−237720(P2012−237720A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−108484(P2011−108484)
【出願日】平成23年5月13日(2011.5.13)
【出願人】(000148623)株式会社 ソキア・トプコン (114)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月13日(2011.5.13)
【出願人】(000148623)株式会社 ソキア・トプコン (114)
【Fターム(参考)】
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