説明

光源装置、記録装置

【課題】外部共振器を含むモードロックレーザ部と当該モードロックレーザ部から出射されるレーザ光を増幅変調する半導体光増幅器とを有して構成されるMOPA(Master Oscillator Power Amplifier)を記録用光源として用いる光記録システムにおいて、光源の大型化・高コスト化の防止を図りつつ、記録性能劣化の防止を図る。
【解決手段】上記モードロックレーザ部と上記半導体光増幅器との間に配されるアイソレータ部として、偏光ビームスプリッタと1/4波長板との組み合わせによるものを備える。これにより、光記録システムで最も影響が大となるSOA自己入射成分を少なくとも除去することができ、記録性能劣化の防止が図られる。また、従来用いられていたファラデーアイソレータとの比較でアイソレータ部の小型化、低コスト化が図られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、モードロックレーザと半導体光増幅器(光アンプ)とを組み合わせたMOPA(Master Oscillator Power Amplifier)としての構成を有する光源装置に関する。またMOPAを光記録媒体に対する記録用光源として備える記録装置に関する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0002】
【非特許文献1】Rintaro Koda,Tomoyuki Oki,Takao Miyajima,Hideki Watanabe,Masaru Kuramoto,Masao Ikeda and Hiroyuki Yokoyama "100W peak-power 1GHz repetition picoseconds optical pulse generation using blue-violet GaInN diode laser mode-locked oscillator and optical amplifier" APPLIED PHYSICS LETTERS 97,021101(2010)
【背景技術】
【0003】
例えば数MHzや数GHzといった比較的高い繰り返し周波数を実現するパルスレーザ光源として、MLLD(Mode Locked Laser Diode:モードロックレーザとも称する)とSOA(Semiconductor Optical Amp:半導体光増幅器又は単に光変調部とも称する)とを組み合わせたMOPA(Master Oscillator Power Amplifier)と呼ばれる構成が知られている。
【0004】
このようなMOPAにおいても、通常のレーザダイオード等の光源の場合と同様に、半導体レーザ部に戻り光が入射してしまうことを防止するためのアイソレータが設けられる。
【0005】
ここで、MOPAの場合、不要な戻り光としては、次の図7に示す3種が生じ得る。
先ずはこの図7により、MOPAの具体的な構成について簡単に説明しておくと、図のようにMOPAには、MLLD部100と、SOA107とが設けられる。MLLD部100は、光源としてのレーザ部101と外部共振器(集光レンズ102・バンドパスフィルタ103・共振用ミラー104)とを備え、所定の繰り返し周波数によるパルスレーザ光を発光する。図示するようにMLLD部100からの出射光はコリメーションレンズ105によりコリメートされ、当該コリメートされた光を集光レンズ106がSOA107の入射端(入射口)に集光する。SOA107は、集光レンズ106を介して入射したレーザ光を増幅・変調して出力する。
なお、この図では説明の便宜上不図示としたが、アイソレータ部は、コリメーションレンズ105と集光レンズ106との間に設けられるべきものである。
【0006】
上記構成によるMOPAにおいて、不要光としては、大別して図7Aに示すMLLDパスと、図7Bに示すSOAパスとに分けることができる。
MLLDパスは、MLLD部100から出射されてSOA107の入射端面で反射し、レーザ部101に戻る成分を指す。
また、SOAパスとは、SOA107の入射端からSOA107自身により出射される成分を指す。このSOAパスとしては、MLLD部100に入射する成分(MLLD入射成分とする)と、MLLD部100の出力端(共振用ミラー104)で反射されたものがSOA107の入射端に入射する成分(自己入射成分とする)との2種に分けることができる。
【0007】
ここで、従来、MOPAとしての光源は、主として光通信の分野で用いられていた。光通信の分野では、MOPAのアイソレータ部として、図8に示すようにファラデー回転子111や偏光板112、及び磁石113を有して成るファラデーアイソレータ110を用いるようにされている。
【0008】
このようなファラデーアイソレータ110によれば、MLLD部100側から入射する光は透過し、これとは逆方向側から入射する光(つまりSOA107側から入射する光)は消光するという作用が得られるので、上記3種の不要光の全ての除去が図られる。
【0009】
また、近年では、光ディスクの分野において、MOPAを記録用光源として用いることが考えられている(例えば上記非特許文献1を参照)。
この際、上記のように光通信の分野ではファラデーアイソレータ110を用いていたことから、光ディスクの記録システムへの適用時にも、MOPAのアイソレータ部としてはファラデーアイソレータ110を用いることとされていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、ファラデーアイソレータ110は、十分な消光比を得るためには、そのサイズが大型化する傾向となる。例えば、ファラデー回転子111における結晶の旋光度と磁石113による外部印加磁界が一定と仮定すると、消光比の向上のため旋光度を高めるためにはファラデー回転子111の長さを大きくする必要があり、結果として小型化が困難となる。
【0011】
また、ファラデーアイソレータ110は比較的高価な部品であり、これを用いた場合には製品コストの削減が非常に困難となる。
【0012】
本技術はかかる問題点に鑑み為されたものであり、光記録媒体の記録システムにおいて、MOPAのアイソレータ部としてファラデーアイソレータを用いることによる大型化及び高コスト化の防止を図りつつ、記録に特に悪影響を与える不要光を除去して記録性能の劣化を防ぐことをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題の解決のため、本技術では光源装置として以下のように構成することとした。
つまり、本技術の光源装置は、外部共振器を含むモードロックレーザ部と当該モードロックレーザ部から出射されるレーザ光を増幅変調する半導体光増幅器とを有して構成されるMOPA(Master Oscillator Power Amplifier)による光源装置であって、上記モードロックレーザ部と上記半導体光増幅器との間に配されるアイソレータ部として、偏光ビームスプリッタと1/4波長板との組み合わせによるアイソレータ部を備えるものである。
【0014】
また、本技術では記録装置として以下のように構成することとした。
すなわち、本技術の記録装置は、光記録媒体に対して情報記録を行うための記録光を発光する光源部と、上記光源部を駆動して上記光記録媒体に対する情報記録を実行させる記録制御部とを備える。
そして、上記光源部が、外部共振器を含むモードロックレーザ部と当該モードロックレーザ部から出射されるレーザ光を増幅変調する半導体光増幅器とを有して構成されるMOPA(Master Oscillator Power Amplifier)による光源部であって、上記モードロックレーザ部と上記半導体光増幅器との間に配されるアイソレータ部として、偏光ビームスプリッタと1/4波長板との組み合わせによるアイソレータ部を備えているものである。
【0015】
ここで、前述した3種の不要光(MLLDパス,SOAパス=MLLD入射成分,自己入射成分)のうち、光記録媒体の記録システムで最も影響が大となるのが、SOAパスの自己入射成分である。
他の成分、特にMLLDパスについては、通常、SOA入射端面がAR(Anti Reflective)コートされていることでその発生量は元々微弱なものである。
また、SOAパスのうちのMLLD入射成分は、主にMLLD光量のバイアス発生要因となり得るが、光記録媒体の記録システムの場合、バイアスの発生自体は直接的な問題とはならない。すなわち、光記録媒体の記録の場合、バイアス光量よりもはるかに大きい発振パルスをSOAで増幅変調して所望の長さのマークを形成するため、バイアスの発生が直ちに記録性能の劣化に結び付くものではない。
さらに、当該MLLD入射成分については、MLLD部内にバンドパスフィルタ(BPF)が設けられる場合は、SOAからの出射光の波長がブロードであることから当該BPFにより大きく減衰され、この点でもその影響は小となる。
これらの点を考慮して分かるように、光記録媒体の記録システムにおいて、記録性能劣化の抑制を図る上では、上記の不要光のうちSOAパスの自己入射成分のみを少なくとも除去できればよい。
【0016】
上記のように本技術では、偏光ビームスプリッタと1/4波長板との組み合わせによるアイソレータ部が設けられる。このようなアイソレータ部によれば、SOAパスのうち少なくとも一方を除去するように構成できる。すなわち、SOAパスのうち自己入射成分を少なくとも除去するように構成することができるものである。
この際、偏光ビームスプリッタと1/4波長板との組み合わせによるアイソレータ部は、ファラデーアイソレータと比較すればそのサイズは格段に小型化できる。またファラデーアイソレータと比較すれば、部品コストは非常に安価であり、これにより製品コストの削減も図ることができる。
【発明の効果】
【0017】
上記のように本技術によれば、ファラデーアイソレータを用いることによるアイソレータ部の大型化及び高コスト化の防止を図りつつ、光記録媒体の記録システムにおいて、記録に特に悪影響を与える不要光を除去して、記録性能の劣化を効果的に防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施の形態の記録装置の内部構成を示した図である。
【図2】実施の形態の記録装置が備えるMOPAの内部構成を示した図である。
【図3】変調データに応じたMOPAの具体的駆動手法について説明するための図である。
【図4】SOAの自己入射成分が光ディスク記録システムに与える影響について説明するための図である。
【図5】MLLDパスの光の振る舞いについて説明するための図である。
【図6】SOAパスの光の振る舞いについて説明するための図である。
【図7】MOPAにおいて生じる不要な戻り光について説明するための図である。
【図8】ファラデーアイソレータについての説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本技術に係る実施の形態について説明する。
なお、説明は以下の順序で行う。

<1.記録装置の全体構成>
<2.MOPAの構成>
<3.不要光とその除去について>
<4.実施の形態のアイソレータ部の具体的構成及び作用について>
<5.変形例>
【0020】
<1.記録装置の全体構成>

図1は、本技術に係る実施の形態としての記録装置(以下、記録装置1とする)の内部構成を示している。
図1において、実施の形態の記録装置1は、スピンドルモータ(SPM)2、対物レンズ3、コリメーションレンズ4、MOPA(Master Oscillator Power Amplifier)5、駆動部6、記録処理部7、及びコントローラ8を少なくとも備える。
【0021】
記録装置1は、図中の光ディスクDについて少なくとも記録を行うことが可能に構成される。ここで、光ディスクDは、円盤状の光記録媒体である。光記録媒体とは、光の照射に応じて情報記録、及び記録情報の再生が行われる記録媒体を指す。
【0022】
光ディスクDは、記録装置1に装填されると、スピンドルモータ2により例えば線速度一定制御等の所定の回転制御方式に従って回転駆動される。
【0023】
このように回転駆動される光ディスクDに対して記録を行うための光学系及び光源として、対物レンズ3、コリメーションレンズ4、及びMOPA5が少なくとも備えられる。
MOPA5は、駆動部6からの駆動信号に基づきレーザ光を発光する。MOPA5より出射されたレーザ光は、コリメーションレンズ4によってコリメートされ、対物レンズ3に導かれる。対物レンズ3は、このように導かれたレーザ光を光ディスクDの記録面に集光する。
【0024】
記録処理部7に対しては、記録データが入力される。
記録処理部7は、記録データに対して所定の記録変調符号化処理を施して、変調データを得る。
駆動部6は、記録処理部7が生成した変調データを入力し、当該変調データに従って生成した駆動信号により、MOPA5を駆動する。
なお、変調データに応じたMOPA5の具体的な駆動手法(レーザ変調手法)については後述する。
【0025】
コントローラ8は、例えばCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を備えたマイクロコンピュータで構成され、記録装置1の全体制御を行う。
例えば記録処理部7に対する記録開始の指示を行ったり、スピンドルモータ2の回転開始/停止/加速/減速等の指示を行う。また、駆動部6に対する制御も可能とされる。
【0026】
<2.MOPAの構成>

図2は、実施の形態の記録装置1が備えるMOPA5の内部構成について説明するための図である。
なお、この図2においては上視図によりMOPA5の内部構成を表している。
また図2では、図1に示したコリメーションレンズ4も併せて示している。
【0027】
図示するようにMOPA5には、MLLD部10、コリメーションレンズ11、アイソレータ12、集光レンズ13、及びSOA(Semiconductor Optical Amp)14が設けられる。
【0028】
MLLD部10は、半導体レーザとしてのレーザ部15と、集光レンズ16、バンドパスフィルタ(BPF)17、及び共振用ミラー18を具備した外部共振器とを有して成る。
図示するように集光レンズ16によっては、MLLD10からの出射光が、共振用ミラー18の反射面に集光するようにされている。
本例の場合、MLLD10の出射光は波長=405nm程度とされる。
【0029】
MLLD部10からの出射光は、共振用ミラー18を透過して得られ、当該出射光は、発散光の状態でコリメーションレンズ11に入射してコリメートされる。
【0030】
コリメーションレンズ11によりコリメートされたMLLD部10からの出射光は、アイソレータ12を介した後、集光レンズ13によりSOA14の入射端(入射口)に集光される。
なお、本例のアイソレータ12の具体的な構成及びその作用については後述する。
【0031】
SOA14は、図1に示した駆動部6からの駆動信号に基づき、集光レンズ13を介して入射したレーザ光を増幅・変調して出力する。
図示するようにSOA14からの出射光がMOPA5の出射光としてコリメーションレンズ4に入力される。
【0032】
ここで、SOA14の入射端面はARコート(AR:Anti Reflective)されている。具体的に本例の場合、SOA14の入射端面の反射率は0.4%程度とされている。
また本例の場合、SOA14は、その入射端面がMLLD部10側からの入射光の光軸に対して垂直ではなく所定の角度だけ傾けられて配置されている。
【0033】
ここで、図3を参照して、変調データに応じたMOPA5の具体的駆動手法について説明しておく。
図3Aは、MLLD部10の発振パルスを示している。
MLLD部10は、駆動部6からレーザ部15に対して与えられる駆動信号(駆動電圧)のレベルと、外部共振器の光路長とで定まる所定の発振周波数によりパルス発振を行う。
【0034】
図3Bは、SOA14の駆動信号(駆動電流)とSOA14の増幅変調後の光出力との関係を示している。
図3Aと図3Bを対比して分かるように、SOA14においては、MLLD部10からの入射光に対し、駆動部6からの駆動信号(駆動電流)に応じた増幅・変調を施すことになる。具体的に、駆動信号のHigh区間(例えば変調データ=”1”)に対応してMLLD部10からの入射光を増幅出力し、駆動信号のLow区間(変調データ=”0”)では光出力を0(OFF)とするようにして、レーザ部15からの入射光を増幅及び変調する。
この結果、光ディスクDには、駆動信号のHigh/Low(つまりデータ=”1”/”0”)に応じたマーク記録が行われることになる。例えば、”111”の変調データに対しては、これに応じた上記駆動信号の供給により3Tマークの記録を行うことができ、”11”の変調データに対しては2Tマークの記録が行われる。
【0035】
<3.不要光とその除去について>

ここで、先の図7を参照して説明したように、MOPAにおいては、不要な戻り光として大きくはMLLDパス(図7A)とSOAパス(図7B)とが存在する。
また、上記SOAパスには、さらにMLLD入射成分と自己入射成分との2種が存在することになる。
【0036】
これら3種の光のうち、光ディスクの記録システムにとって最も影響が大となるのが、SOAパスの自己入射成分である。
ここで、図7Aに示したMLLDパスについては、通常は、SOA入射端面がARコートされているので、その発生量は元々微弱なものである。前述のように本例においてもSOA14の入射端面にはARコート(反射率=0.4%程度)が施されており、従ってMLLDパスについてはその発生は無視することができる。
また本例の場合、SOA14は、その入射端面がMLLD部10側からの入射光の光軸に対して垂直ではなく所定の角度だけ傾けられて配置されている。このような傾きの付与によっても、MLLDパスの低減が図られている。
【0037】
また、SOAパスのうち、MLLD入射成分については、主にバイアス光の発生要因となり得るものであるが、光ディスクシステムの場合、バイアス光の発生自体は記録性能上直接的な問題とはならない。光ディスクシステムの場合、バイアス光が生じていたとしても、その光量がMLLD部10で発生する高出力のパルスに比して十分に小さければ、所望の長さのマークの形成にはSOA14の増幅変調が支配的となるため、バイアス光の発生自体は記録性能の劣化に直接結び付くものではない。
また、当該MLLD入射成分については、本例のようにMLLD部10にバンドパスフィルタ17が設けられる場合には、SOA14からの出射光の波長がブロードであることから当該バンドパスフィルタ17により相当程度減衰されるので、この点でもその影響は小とできる。
【0038】
これらの点を考慮して分かるように、光ディスク記録システムにおいて、記録性能の劣化防止にあたり除去されるべきであるのは、SOAパスのうち自己入射成分であることが分かる。
【0039】
図4は、SOAの自己入射成分が光ディスクの記録システムに与える影響について説明するための図である。
SOA自己入射成分は、SOA14の入射端から発光された光が、MLLD部10の出射端(共振用ミラー18)で反射されてSOA14の入射口に入射する成分である。
このような自己入射成分は、SOA14において自己増幅を生じさせるものとなる。そして、当該自己増幅により、図のようにSOA14の出力光には自己入射成分に応じたDC成分が重畳することになる。
【0040】
このとき、半導体光増幅器としてのSOA14の出力光(MOPA出力光)のピークパワー=100W、レーザ部15の発振パルス間隔=1ns(1000ps)、パルス幅=3psと仮定すると、出力光の平均パワーP_aveは、

P_ave=100W(ピークパワー)×0.003(パルスデューティ)

より0.3Wとなる。
【0041】
このとき、SOA自己入射成分に伴う自己増幅分=0.3Wであったとすると、平均パワーP_ave=0.3W+0.3W=0.6Wとなる。
この場合において、例えばSOA14の熱飽和特性限界が電力0.5Wであったと仮定すると、上記のような自己入射成分によるSOA自己増幅の発生により、熱飽和特性限界を超えてしまうこととなり、この結果、熱的に破綻劣化する虞がある。
【0042】
或いは、SOA14の光劣化の限界(図中COD上限)が仮に100Wであるとすれば、上記の自己増幅の発生により当該限界を超えたピークパワーが発生することとなる。この面でも、劣化が生じる虞がある。
【0043】
さらに、上記のような自己増幅の発生によっては、記録スポットの特性(特に光強度分布)に悪影響が与えられ、このことに起因しても記録性能の劣化が生じる虞がある。なお確認のため述べておくと、このような記録スポットの特性悪化の問題については、パルスの有無(符号”0””1”の識別)を重視すべき光通信の分野では考慮され難いものである。
【0044】
<4.実施の形態のアイソレータ部の具体的構成及び作用について>

本実施の形態では、上記のようなSOAの自己入射成分が少なくとも除去されるように、MOPA1におけるアイソレータ部として、図2に示すような1/4波長板19と偏光ビームスプリッタ20との組み合わせによるアイソレータ12を設けるものとしている。
【0045】
当該アイソレータ12において、1/4波長板19は、MLLD部10寄りとなる位置に配置され、偏光ビームスプリッタ20はSOA14寄りとなる位置に配置される。具体的に、この場合の1/4波長板19はコリメーションレンズ11と偏光ビームスプリッタ20との間に配置され、偏光ビームスプリッタ20は、1/4波長板19と集光レンズ13との間に配置されている。
【0046】
本例の場合、SOA14入射端からSOA14自らにより出射されるレーザ光(SOAパス)は、直線偏光とされる。
また、MLLD部10からSOA14側へ出射されるレーザ光も直線偏光とされる。具体的に、本例の場合はP偏光とされる。
【0047】
この前提の下で、偏光ビームスプリッタ20としては、P偏光を透過、S偏光を反射するものを用いる。
なお、偏光ビームスプリッタ20の透過/反射の選択面は、誘電体多層膜のコーティングにより形成される。
本例の場合、偏光ビームスプリッタ20におけるP偏光成分(波長=405nm)に対する透過率と反射率はそれぞれ98%程度、2%程度であり、またS偏光成分(波長=405nm)に対する透過率と反射率はそれぞれ1%程度、99%程度とされる。
【0048】
1/4波長板19は、MLLD部10からの出射光(この場合はP偏光)を円偏光に変換することができるようにその取り付け角度(光軸に対し垂直な面内における角度)が調整されているとする。
【0049】
図5及び図6を参照して、上記構成によるアイソレータ12が設けられた際のMLLDパス、SOAパスとしてのそれぞれの不要光の振る舞いについて説明する。
図5はMLLDパスについての光の振る舞いを示し、図6はSOAパスについての光の振る舞いを示している。
【0050】
図5において、前述のようにMLLD部10からの出射光はP偏光とされる。このP偏光による出射光は、1/4波長板19を通過することで所定の回転方向による円偏光に変換される(図中では右円偏光と示している)。
【0051】
このように1/4波長板19を通過して得られた円偏光が偏光ビームスプリッタ20に入射すると、その選択面においてP偏光成分のみが透過するようにされる。当該P偏光が、集光レンズ13を介してSOA14の入射端に照射される。
このようにSOA14の入射端に照射された成分の大部分は、SOA14内の導波路に入射することになるが、一部がSOA14の入射端面にて反射される(MLLDパス)。
【0052】
但し、前述のようにSOA14の入射端面はARコートされ、MLLDパスの発生量は微小である。また本例の場合、SOA14は光軸に対して傾けて配置しているので、この点でもMLLDパスの影響の緩和が図られる。
【0053】
SOA14の入射端面で反射された成分(P偏光)は、偏光ビームスプリッタ20を透過し、1/4波長板19を通過することで前述の所定回転方向とは逆回転方向の円偏光(左円偏光と図示)に変換される。このように円偏光に変換されたレーザ光は、その一部が共振用ミラー18を透過してMLLD部10内に入射する。
但し、前述のようにMLLDパス自体は、共振用ミラー18の入射時点で既に微弱なものとされているため、このように共振用ミラー18を透過してMLLD部10に入射するMLLDパスについては、実質的に無視できる程度のものとなる。
【0054】
続いて、SOAパスについて説明する。
図6において、SOA14がその入射端から自ら発光したレーザ光(前述のように直線偏光である)は、偏光ビームスプリッタ20に入射するとそのP偏光成分のみが抽出される。
このように得られたP偏光によるレーザ光は、1/4波長板19を通過することで所定回転方向による円偏光(右円偏光)に変換され、共振用ミラー18に入射する。
【0055】
このとき、共振用ミラー18を通過した成分(MLLD入射成分)は、共振用ミラー18の透過率(反射率)に応じた分だけ減衰される。例えば本例の場合、上記円偏光に対する共振用ミラー18の透過率:反射率=7:3程度であり、3割程度減衰されるものとなる。
さらに、共振用ミラー18を通過したMLLD入射成分はバンドパスフィルタ17に入射するが、当該バンドパスフィルタ17を介することで、MLLD入射成分はさらに減衰される。本例の場合、バンドパスフィルタ17通過後は、共振用ミラー18の入射時点における光量の10%程度にまで減衰されることになる。
さらに本例の場合、1/4波長板19を有するアイソレータ12としていることで、MLLD入射成分は上記のように円偏光とされる。このため、バンドパスフィルタ17通過後のMLLD入射成分の、レーザ部15に対する入射光率は1/2となり、この点でも、MLLD入射成分の影響がさらに小となるようにされている。
これらより、この場合の最終的なMLLD入射成分、すなわちレーザ部15の導波路内に入射する成分は、共振用ミラー18の入射時点での光量の5%程度にまで抑えられるものであり、その影響は極めて小となる。
【0056】
一方、共振用ミラー18で反射された成分、すなわちSOAの自己入射成分については、共振用ミラー18における反射時の作用により上記所定回転方向とは逆回転方向の円偏光(左円偏光)とされて1/4波長板19に入射する。
このことで、当該1/4波長板19を介した自己入射成分は、S偏光により偏光ビームスプリッタ20に入射することとなり、結果、自己入射成分は、図のように偏光ビームスプリッタ20にて反射されることになる。
前述のように偏光ビームスプリッタ20のS偏光に対する反射率はほぼ100%であり、従ってこの場合、自己入射成分はほぼ100%除去されることになる。
【0057】
以上のように本実施の形態によれば、偏光ビームスプリッタ20と1/4波長板19との組み合わせによるアイソレータ12を設けたことで、光ディスク記録システムにおいて、記録性能劣化防止にあたり除去されるべきSOA自己入射成分を少なくとも除去できる。
偏光ビームスプリッタ20と1/4波長板19との組み合わせによるアイソレータ12は、従来用いられていたファラデーアイソレータ110と比較して、そのサイズは格段に小型化でき、また部品コストも非常に安価となる。つまりこの結果、本実施の形態によれば、MOPAにおけるアイソレータ部の大型化及び高コスト化の防止を図りつつ、記録に特に悪影響を与える不要光の除去により記録性能の劣化の防止を図ることができる。
【0058】
なお、確認のために述べておくと、光通信の場合においては、本実施の形態のように高出力なパルス光ではないため、通信データの変調による光量変化量とMLLDへのバイアス光の持つノイズ分の影響も無視することはできない。このため、SOA入射端側からMLLD方向に出射される光の全てを、ファラデーアイソレータ110を用いて消光するものとされている。つまり、この意味で光通信の場合には、SOA入射端側からの光の全てを消光できるファラデーアイソレータの設置が必要とされていたものであって、本技術のように、SOA自己入射成分のみを消光対象とするような割り切った構成を採ることは実質的に考えられ難いものである。
【0059】
<5.変形例>

以上、本技術に係る実施の形態について説明したが、本技術はこれまでで説明した具体例に限定されるべきものではない。
例えば、MOPA5の内部構成(光学系)については例示したものに限定されるべきものではなく、例えば偏光方向の調整のため1/2波長板を追加する等、実際の実施形態に応じて適宜最適とされる構成が採られればよい。
また、例示したパルスレーザの波長についても一例を示したものに過ぎず、これに限定されるべきものではない。
【0060】
また、図5や図6で例示した各レーザ光の偏光方向についてもあくまで一例を示したもので、例えばMLLD部10からの出射光はP偏光でなくS偏光とすることもできる。なおこの場合、偏光ビームスプリッタ20としてS偏光を透過、P偏光を反射するタイプのものを用いればよい。
【0061】
また、本技術において、偏光ビームスプリッタ20と上記1/4波長板19は、少なくともSOAの自己入射成分を除去するように配置されていればよく、先に例示したようにそれらを隣接して配置する必要性は必ずしもなく、例えばこれらの間に他の光学素子やレンズ等を挿入するなどといったことも可能である。
【0062】
またこれまでの説明では、ディスク状の光記録媒体についての記録システムに本技術が適用される場合を例示したが、本技術は、例えば矩形状等の他の形状による光記録媒体に記録を行うシステムに対しても好適に適用できる。
【0063】
また、本技術は、以下の(1)〜(6)に示す構成とすることも可能である。
(1)
外部共振器を含むモードロックレーザ部と当該モードロックレーザ部から出射されるレーザ光を増幅変調する半導体光増幅器とを有して構成されるMOPA(Master Oscillator Power Amplifier)による光源装置であって、
上記モードロックレーザ部と上記半導体光増幅器との間に配されるアイソレータ部として、偏光ビームスプリッタと1/4波長板との組み合わせによるアイソレータ部を備える
光源装置。
(2)
上記アイソレータ部において、
上記偏光ビームスプリッタと上記1/4波長板は、上記半導体光増幅器の入射端から出射され上記モードロックレーザ部の出力端面にて上記半導体光増幅器の上記入射端側に戻される自己入射成分を除去するように配置されている
上記(1)に記載の光源装置。
(3)
上記アイソレータ部において、
上記偏光ビームスプリッタは上記半導体光増幅器寄りに、上記1/4波長板は上記モードロックレーザ部寄りに配置されている
上記(2)に記載の光源装置。
(4)
上記半導体光増幅器の上記入射端面がAR(Anti Reflective)コートされている
上記(1)〜(3)に記載の光源装置。
(5)
上記モードロックレーザ部にバンドパスフィルタが挿入されている
上記(1)〜(4)に記載の光源装置。
(6)
上記半導体光増幅器は、その入射端面が光軸に対し傾きを有するように配置されている
上記(1)〜(5)に記載の光源装置。
【符号の説明】
【0064】
1 記録装置、2 スピンドルモータ(SPM)、3 対物レンズ、4,11 コリメーションレンズ、5 MOPA、6 駆動部、7 記録処理部、8 コントローラ、10 MLLD部、12 アイソレータ、13,16 集光レンズ、14 SOA(半導体光増幅器)、15 レーザ部、17 バンドパスフィルタ(BPF)、18 共振用ミラー、19 1/4波長板、20 偏光ビームスプリッタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部共振器を含むモードロックレーザ部と当該モードロックレーザ部から出射されるレーザ光を増幅変調する半導体光増幅器とを有して構成されるMOPA(Master Oscillator Power Amplifier)による光源装置であって、
上記モードロックレーザ部と上記半導体光増幅器との間に配されるアイソレータ部として、偏光ビームスプリッタと1/4波長板との組み合わせによるアイソレータ部を備える
光源装置。
【請求項2】
上記アイソレータ部において、
上記偏光ビームスプリッタと上記1/4波長板は、上記半導体光増幅器の入射端から出射され上記モードロックレーザ部の出力端面にて上記半導体光増幅器の上記入射端側に戻される自己入射成分を除去するように配置されている
請求項1に記載の光源装置。
【請求項3】
上記アイソレータ部において、
上記偏光ビームスプリッタは上記半導体光増幅器寄りに、上記1/4波長板は上記モードロックレーザ部寄りに配置されている
請求項2に記載の光源装置。
【請求項4】
上記半導体光増幅器の上記入射端面がAR(Anti Reflective)コートされている請求項1に記載の光源装置。
【請求項5】
上記モードロックレーザ部にバンドパスフィルタが挿入されている請求項1に記載の光源装置。
【請求項6】
上記半導体光増幅器は、その入射端面が光軸に対し傾きを有するように配置されている請求項1に記載の光源装置。
【請求項7】
光記録媒体に対して情報記録を行うための記録光を発光する光源部と、
上記光源部を駆動して上記光記録媒体に対する情報記録を実行させる記録制御部とを備え、
上記光源部が、
外部共振器を含むモードロックレーザ部と当該モードロックレーザ部から出射されるレーザ光を増幅変調する半導体光増幅器とを有して構成されるMOPA(Master Oscillator Power Amplifier)による光源部であって、上記モードロックレーザ部と上記半導体光増幅器との間に配されるアイソレータ部として、偏光ビームスプリッタと1/4波長板との組み合わせによるアイソレータ部を備えている
記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−243336(P2012−243336A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−110268(P2011−110268)
【出願日】平成23年5月17日(2011.5.17)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】