説明

光照射モジュールおよび印刷装置

【課題】
紫外線発光素子の搭載密度を比較的高くしたとしても、紫外線発光素子自身の発する熱の影響を受けがたく、比較的高い紫外線照射エネルギーを実現する光照射デバイスを提供する。
【解決手段】
発光素子を基板の一方主面に配置した光照射デバイスと、該光照射デバイスを冷却するための冷媒が流動可能な流路を内部に有する平板状の放熱用部材とを有しており、該放熱用部材は、前記光照射デバイス側に位置する主面に前記流路の開口を有し、前記光照射デバイスの前記基板は、前記放熱用部材の前記開口を他方主面で覆うように配置され、前記放熱用部材の前記主面と前記基板の他方主面との距離は、前記基板の外縁部よりも中央部で長くなっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線硬化型樹脂や塗料の硬化に使用される光照射モジュールおよび印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、紫外線照射装置は、医療やバイオ分野での蛍光反応観察、殺菌用途、電子部品の接着や紫外線硬化型樹脂およびインクの硬化などを目的に広く利用されている。特に電子部品の分野などで小型部品の接着等に使われる紫外線硬化型樹脂の硬化や、印刷の分野で使われる紫外線硬化型インクの硬化などに用いられる紫外線照射装置のランプ光源には高圧水銀ランプやメタルハライドランプなどが使用されている。
【0003】
近年、世界規模で地球環境負荷の軽減が切望されていることから、比較的長寿命、省エネルギーおよびオゾン発生を抑制することができる紫外線発光素子をランプ光源に採用する動きが活発になってきている。
【0004】
ところが、紫外線発光素子の照度は比較的低いため、例えば特許文献1に記載されているように、複数の発光素子を一つの基板に搭載したデバイスを用意し、複数のデバイスを支持体に搭載した構成のモジュールが一般的に使用され、紫外線硬化型インクの効果に必要な紫外線照射エネルギーを確保している。
【0005】
しかしながら、紫外線照射エネルギーの改善要求は次第に高くなっており、紫外線発光素子の搭載密度を高くすることが試みられているが、紫外線発光素子からの発熱は比較的少ないとはいえ、紫外線発光素子の搭載密度を高くしたデバイスでは放熱が十分に行なえず、紫外線照射エネルギーの改善の妨げになっているという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−244165号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本願発明は、上記問題に鑑みなされたものであり、紫外線発光素子の搭載密度を比較的高くしても、紫外線発光素子から発する熱を効率よく放熱することにより、比較的高い紫外線照射エネルギーを実現する光照射デバイス、モジュールおよび印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る光照射モジュールは、発光素子を基板の一方主面に配置した光照射デバイスと、該光照射デバイスを冷却するための冷媒が流動可能な流路を内部に有する平板状の放熱用部材とを有しており、該放熱用部材は、前記光照射デバイス側に位置する主面に前記流路の開口を有し、前記光照射デバイスの前記基板は、前記放熱用部材の前記開口を他方主面で覆うように配置され、前記放熱用部材の前記主面と前記基板の他方主面との距離は、前記基板の外縁部よりも中央部で長くなっていることを特徴とする。
【0009】
また、前記開口は、前記流路の供給側に位置する第1開口と、前記流路の排出側に位置する第2開口とを有することを特徴とする。
【0010】
さらに、前記第2開口は、前記第1開口よりも前記基板の中心に対応する位置からの距離が短い位置に配置されていることを特徴とする。
【0011】
また、前記第2開口を囲むように前記第1開口が配置されていることを特徴とする。
【0012】
さらに、記録媒体に対して印刷を行なう印刷手段と、印刷された前記記録媒体に対して光を照射する上述の光照射モジュールとを有することを特徴とする印刷装置を併せて提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の光照射モジュールによれば、発光素子を基板の一方主面に配置した光照射デバイスと、該光照射デバイスを冷却するための冷媒が流動可能な流路を内部に有する平板状の放熱用部材とを有しており、該放熱用部材は、前記光照射デバイス側に位置する主面に前記流路の開口を有し、前記光照射デバイスの前記基板は、前記放熱用部材の前記開口を他方主面で覆うように配置され、前記放熱用部材の前記主面と前記基板の他方主面との距離は、前記基板の外縁部よりも中央部で長くなっている。このため、前記発光素子の発する熱により比較的温度の高くなる前記基板の中央部に、比較的多くの前記冷媒を直接的に供給することが可能となり、前記基板の放熱性が高く維持されるとともに、前記基板の温度分布のばらつきが比較的小さく維持される。
【0014】
よって、本実施形態の光照射デバイスによれば、紫外線発光素子の搭載密度を比較的高くしたとしても、紫外線発光素子自身の発する熱の影響を受けがたく、比較的高い紫外線照射エネルギーを実現する光照射デバイスが実現される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る光照射モジュールの底面図である。
【図2】図2は、図1に示した光照射モジュールの1I−1I線に沿った断面図である。
【図3】図3は、図1に示した光照射モジュールの1II−1II線に沿った断面図である。
【図4】図4は、図2に示した光照射モジュールを用いた印刷装置の上面図である。
【図5】図5は、図4に示した印刷装置の側面図である。
【図6】図6は、図1に示す光照射デバイスの第1変形例を示す断面図である。
【図7】図7は、図1に示す光照射デバイスの第2変形例を示す断面図である。
【図8】図8は、図1に示す光照射デバイスの第3変形例を示す断面図である。
【図9】図9(a)は、図8に示す光照射デバイスを構成する放熱用部材の一例を示す平面図である。図9(b)は、図8に示す光照射デバイスを構成する放熱用部材のその他の例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の光照射モジュールおよび印刷装置について、図面を参照しつつ説明する。
【0017】
図1や図2に示す光照射モジュール1は、紫外線硬化型インクを使用するオフセット印刷装置やインクジェット印刷装置等の印刷装置に組み込まれ、対象物(記録媒体)に紫外線硬化型インクを被着した後に紫外線を照射することで紫外線硬化型インクを硬化させる紫外線照射モジュールの紫外線発生光源として機能する。
【0018】
光照射モジュール1は、光照射デバイス2と、該光照射デバイス2を冷却するための冷媒が流動可能な流路110を内部に有する平板状の放熱用部材100とを有している。
【0019】
まず、光照射デバイス2について説明する。
【0020】
(光照射デバイス)
図2や図3に示すように、光照射デバイス2は、一方主面11aに複数の開口部12を有する基板10と、各開口部12内に設けられた複数の接続パッド13と、基板10の各開口部12内に配置され、接続パッド13に電気的に接続された複数の発光素子20と、各開口部12内に充填され、発光素子20を被覆する複数の封止材30とを備えている。
【0021】
基板10は、第1の絶縁層41および第2の絶縁層42が積層されてなる積層体40と、発光素子20同士を接続する電気配線60と、を備え、一方主面11a側から平面視して略矩形状を成しており、該一方主面11aに設けられた開口部12内で発光素子20を支持している。
【0022】
第1の絶縁層41は、例えば、酸化アルミニウム質焼結体、窒化アルミニウム質焼結体、ムライト質焼結体、およびガラスセラミックスなどのセラミックス、ならびにエポキシ樹脂、および液晶ポリマー(LCP)などの樹脂、などによって形成される。
【0023】
そして、基板10の他方主面11bは、基板10の外縁部よりも中央部が基板10の一方主面11a側に位置するように凹部11cを有している。
【0024】
次に、電気配線60は、例えば、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、マンガン(Mn)、銅(Cu)等の導電性材料により所定のパターンに形成されており、発光素子20への電流または発光素子20からの電流を供給するための給電配線として機能する。
【0025】
次に、第1の絶縁層41上に積層された第2の絶縁層42には、該第2の絶縁層42を貫通する開口部12が形成されている。
【0026】
開口部12は、各々の形状が発光素子20の載置面よりも基板10の一方主面11a側で開口面積が広くなるように、その内周面14が傾斜しており、平面視すると、例えば、略円形の形状を成している。なお、開口形状は円形に限られるものではなく、略矩形の形状でもよい。
【0027】
このような開口部12は、その内周面14で発光素子20の発する光を上方に反射し、光の取り出し効率を向上させる機能を有する。
【0028】
光の取り出し効率を向上させるため、第2の絶縁層42の材料として、紫外線領域の光に対して、比較的良好な反射性を有する多孔質のセラミック材料、例えば酸化アルミニウム質焼結体、酸化ジルコニウム質焼結体、および窒化アルミニウム質焼結体により形成することが好ましい。また、光の取り出し効率を向上させるという観点では、開口部12の内周面14に金属製の反射膜を設けてもよい。
【0029】
このような開口部12は、基板10の一方主面11aの全体に渡って縦横の並びに配列されている。例えば、本実施形態では千鳥格子状に配列されている。千鳥格子状に配列することによって発光素子20をより高密度に配置することが可能となり、単位面積当たりの照度を比較的高くすることが可能となる。ここで、千鳥格子状に配列するとは、斜め格子の格子点に配置することと同義である。
【0030】
本実施形態の光照射デバイス2では、開口部12の配列形状を千鳥格子状としたが、正格子状としてもよく、要求される照度を満足すればどのように配列しても良い。
【0031】
なお、当然のことながら本実施形態の複数の発光素子20の光出力は略同じ値のものである。例えば、本実施形態の複数の発光素子20の全体としての光出力のばらつきは10%以内である。
【0032】
以上のような、第1の絶縁層41および第2の絶縁層42からなる積層体40を備えた基板10は、第1の絶縁層41や第2の絶縁層42がセラミックスなどから成る場合、次のような工程を経て製造される。まず、従来周知の方法により製作された複数のセラミックグリーンシートを準備する。開口部12に相当するセラミックグリーンシートには開口部に対応する穴をパンチング等の方法により形成する。次に、電気配線60となる金属ペーストをグリーンシート上に印刷(不図示)した上で、該印刷された金属ペーストがグリーンシートの間に位置するようにグリーンシートを積層する。この電気配線60となる金属ペーストとしては、例えばタングステン(W)、モリブデン(Mo)、マンガン(Mn)、および銅(Cu)などの金属を含有させたものが挙げられる。次に、上記積層体を焼成することにより、グリーンシートおよび金属ペーストを併せて焼成することによって、電気配線60および開口部12を有する基板10を形成することができる。凹部11cは、焼成前にグリーンシートの第1の絶縁層41の他方主面11bとなる面にプレス機などにより形成しても良いし、焼成時に他方主面11bに凸状の重しを載せることにより形成しても良いし、焼成後に他方主面11bを研削することにより形成しても良い。
【0033】
また、第1の絶縁層41や第2の絶縁層42が樹脂から成る場合、基板10の製造方法は、例えば、次のような方法が考えられる。まず、熱硬化型樹脂の前駆体シートを準備する。次に、電気配線60となる金属材料からなるリード端子を前駆体シート間に配置させ、かつリード端子を前駆体シートに埋設させるように複数の前駆体シートを積層する。このリード端子の形成材料としては、例えばCu、Ag、Al、鉄(Fe)−ニッケル(Ni)−コバルト(Co)合金、およびFe−Ni合金などの金属材料が挙げられる。そして、前駆体シートに開口部12に対応する穴や凹部11cに対応する凹みをレーザー加工やエッチング等の方法により形成した後、これを熱硬化させることにより、基板10が完成する。なお、レーザー加工により穴や凹みを形成する場合には、前駆体シートを熱硬化させた後でも良い。
【0034】
一方、基板10の開口部12内には、発光素子20に電気的に接続された接続パッド13と、該接続パッド13に半田、金(Au)線、アルミ(Al)線等の接合材15により接続された発光素子20と、発光素子20を封止する封止材30とが設けられている。
【0035】
接続パッド13は、例えば、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、マンガン(Mn)、および銅(Cu)などの金属材料から成る金属層により形成されている。なお、必要に応じて、金属層上に、ニッケル(Ni)層、パラジウム(Pd)層、および金(Au)層などを更に積層しても良い。かかる接続パッド13は、半田、金(Au)線、アルミ(Al)線等の接合材15により発光素子20に接続される。
【0036】
また、発光素子20は、例えば、GaAsやGaN等の半導体材料からなるp型半導体層およびn型半導体層等をサファイア基板等の素子基板21上に積層してなる発光ダイオードや、半導体層が有機材料からなる有機EL素子等により構成されている。
【0037】
この発光素子20は、発光層を有する半導体層22と、基板10上に配置された接続パッド13に半田、金(Au)線、アルミ(Al)線等の接合材15を介して接続されたAg等の金属材料から成る第1素子電極23、24とを備えており、基板10に対してワイヤボンディング接続されている。そして、発光素子20は、素子電極23、24間に流れる電流に応じて所定の波長をもった光を所定の輝度で発し、その光を素子基板21を介し
て、または直接外部へ出射する。なお、素子基板21は、省略することが可能なのは周知の通りである。また、発光素子20の素子電極23、24と接続パッド13との接続は、接合材15に半田等を使用して、従来周知のフリップリップ接続技術により行なってもよい。
【0038】
本実施形態では、発光素子20が発する光の波長のスペクトルのピークが、例えば250〜395〔nm〕以下のUV光を発するLEDを採用している。つまり、本実施形態では、発光素子20としてUV−LED素子を採用している。なお、発光素子20は、従来周知の薄膜形成技術により形成される。
【0039】
そして、かかる発光素子20は、上述した封止材30によって封止されている。
【0040】
封止材30は、光透過性の樹脂材料等の絶縁材料より形成されており、発光素子20を良好に封止することにより、外部からの水分の浸入を防止したり、あるいは、外部からの衝撃を吸収し、発光素子20を保護する。
【0041】
また、封止材30は、発光素子20を構成する第1素子基板31aの屈折率(サファイアの場合:1.7)と空気の屈折率(約1.0)の間の屈折率を有する材料、例えばシリコーン樹脂(屈折率:約1.4)等より形成されることで、発光素子20の光の取り出し効率を向上させることができる。
【0042】
かかる封止材30は、発光素子20を基板10上に実装した後、シリコーン樹脂等の前駆体を開口部12に充填し、これを硬化させることで形成される。
【0043】
(光照射モジュールの実施形態)
図2に示す光照射モジュール1は、放熱用部材100と、該放熱用部材100に配置された光照射デバイス2とを備えており、光照射デバイス2はシリコーン樹脂やエポキシ樹脂などの接着材120を介して放熱用部材100の主面に配置されている。
【0044】
放熱用部材100は、光照射デバイス2の支持体として、また光照射デバイス2が発する熱を外部へ放熱する放熱体として機能する。この放熱用部材100の形成材料としては、熱伝導率の大きい材料が好ましく、例えば種々の金属材料、セラミックス、樹脂材料が挙げられる。本実施形態の放熱用部材100は、銅によって形成されている。
【0045】
放熱用部材100の内部には、光照射デバイス2を冷却するための冷媒が流動可能な流路110が形成されており、光照射デバイス2側に位置する主面100aに流路110の開口110aを有している。そして、開口110aを光照射デバイス2の基板10の他方主面11bで覆うように配置されている。
【0046】
このように、開口110aを光照射デバイス2の基板10の他方主面11bで覆うように配置することで、放熱用部材100の内部に形成した流路110を流れる冷媒は、直接的に光照射デバイス2に接触することになり比較的光照射デバイス2の熱を効率よく放熱することができる。また、基板10の他方主面11bに凹部11cを有していることから、複数の発光素子20の発する熱により比較的温度の高くなる光照射デバイス2の中央部分に供給する冷媒量を比較的多くできることから、光照射デバイス2の面内の温度ばらつきを比較的小さくすることができる。
【0047】
さらに、光照射モジュール1を光照射デバイス2における発光素子20が配置される基板10の一方主面11aを重力場の向かう方向に向けて設置すれば、光照射デバイス2の比較的温度の高くなる中央部分では、冷媒が光照射デバイス2の他方主面11b側から放
熱用部材100の主面100a側に向かう方向に流動し、光照射デバイス2の外縁部では、冷媒が放熱用部材100の主面100a側から光照射デバイス2の他方主面11b側に向かう方向に流動するといった熱対流が発生し、比較的効率のよい冷媒の入れ替えが行なわれることにより、さらに放熱性を高く維持することが可能となり、光照射デバイス2の面内の温度ばらつきを比較的小さくすることができる。
【0048】
よって、本実施形態の光照射デバイス2によれば、紫外線発光素子の搭載密度を比較的高くしたとしても、紫外線発光素子自身の発する熱の影響を受けがたく、比較的高い紫外線照射エネルギーを実現する光照射デバイスが実現される。
【0049】
(印刷装置の実施形態)
本発明の印刷装置の実施形態として、図4および図5に示した印刷装置200を例に挙げて説明する。この印刷装置200は、記録媒体250を搬送するための搬送機構210と、搬送された記録媒体250に印刷を行なうための印刷機構としてのインクジェットヘッド220と、印刷後の記録媒体250に対して紫外光を照射する、上述した光照射モジュール1と、該光照射モジュール1の発光を制御する制御機構230と、を備えている。ここで、記録媒体250は、上述の対象物に相当する。
【0050】
搬送機構210は、記録媒体250をインクジェットヘッド220、光照射モジュール1の順に通過するように搬送するためのものであり、載置台211と、互いに対向配置され、回転可能に支持された一対の搬送ローラ212とを含んで構成されている。この載置台211によって支持された記録媒体250を一対の搬送ローラ212の間に送り込み、該搬送ローラ212を回転させることにより、記録媒体250を搬送方向へ送り出すためのものである。
【0051】
インクジェットヘッド220は、搬送機構210を介して搬送される記録媒体250に対して、感光性材料を付着させる機能を有している。このインクジェットヘッド220は、この感光性材料を含む液滴を記録媒体250に向けて吐出し、記録媒体250に被着させるように構成されている。本実施形態では、感光性材料として紫外線硬化型インクを採用している。この感光性材料としては、紫外線硬化型インクの他に、例えば感光性レジスト、光硬化型樹脂などが挙げられる。
【0052】
本実施形態では、インクジェットヘッド220としてライン型のインクジェットヘッドを採用している。このインクジェットヘッド220は、ライン状に配列された複数の吐出孔220aを有しており、この吐出孔220aから紫外線硬化型インクを吐出するように構成されている。インクジェットヘッド220は、吐出孔220aの配列に対して直交する方向に搬送される記録媒体250に対して、吐出孔220aよりインクを吐出させ、記録媒体にインクを被着させることにより、記録媒体に対して印刷を行なう。
【0053】
なお、本実施形態では、印刷機構として、ライン型のインクジェットヘッドを例に挙げたが、これに限られるものではなく、例えば、シリアル型のインクジェットヘッドを採用していてもよいし、ライン型又はシリアル型の噴霧ヘッドを採用してもよい。さらに、印刷機構として、記録媒体250の静電気を蓄え、かかる静電気で感光性材料を付着させる静電式ヘッドを採用してもよいし、記録媒体250を液状の感光性材料に浸して、かかる感光性材料を付着させる浸液装置を採用してもよい。さらに、印刷機構として刷毛、ブラシ、およびローラを採用してもよい。
【0054】
印刷装置200において光照射モジュール1は、搬送機構210を介して搬送される記録媒体250に付着した感光性材料を感光させる機能を担っている。この光照射モジュール1は、インクジェットヘッド220に対して搬送方向の下流側に設けられている。また
、印刷装置200において発光素子20および第2発光素子30bは、記録媒体250に付着した感光性材料を露光する機能を担っている。
【0055】
制御機構230は、光照射モジュール1の発光を制御する機能を担っている。この制御機構230のメモリには、インクジェットヘッド220から吐出されるインク滴を硬化するのが比較的良好になるような光の特徴を示す情報が格納されている。この格納情報の具体例を挙げると、吐出するインク滴を硬化するのに適した波長分布特性、および発光強度(各波長域の発光強度)を表す数値が挙げられる。本実施形態の印刷装置200では、この制御機構230を有することによって、制御機構230の格納情報に基づいて、複数の発光素子20に入力する駆動電流の大きさを調整することもできる。このことから、印刷装置200によれば、使用するインクの特性に応じた適正な紫外線照射エネルギーで光を照射することができ、比較的低エネルギーの光で、インク滴を硬化させることができる。
【0056】
この印刷装置200では、搬送機構210が記録媒体250を搬送方向に搬送している。インクジェットヘッド220は、搬送されている記録媒体250に対して紫外線硬化型インクを吐出して、記録媒体250の表面に紫外線硬化型インクを付着させる。このとき、記録媒体250に付着させる紫外線硬化型インクは、全面付着であっても、部分付着であっても、所望パターンでの付着であってもよい。この印刷装置200では、記録媒体250に付着した紫外線硬化型インクに光照射モジュール1の発する紫外線を照射して、紫外線硬化型インクを硬化させている。
【0057】
本実施形態の印刷装置200では、光照射モジュール1の有する上述の効果を享受することができる。
【0058】
以上、本発明の具体的な実施形態を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、発明の要旨から逸脱しない範囲内で種々の変更が可能である。
【0059】
例えば、図6に示す第1変形例のように、流路110の供給側に位置する第1開口110bと、排出側に位置する第2開口110cとを備えていてもよい。このように構成することで、供給側に位置する第1開口110bから排出側に位置する第2開口110cへ冷媒が流れることで、より凹部11c内での冷媒の入れ替えが良好に行なわれるので好ましい。
【0060】
また、図7に示す第2変形例のように、流路110の供給側に位置する第1開口110bと、排出側に位置する第2開口110cとを備えており、第2開口110cは第1開口110bよりも基板10の中心に対応する位置からの距離が短い位置に配置されているのが好ましい。第2変形例では第2開口110cは基板10の中心に対応する位置に配置されている。このような構成とすることで、複数の発光素子20の発する熱により、比較的温度の高くなる光照射デバイス2の中央付近で、冷媒が光照射デバイス2の他方主面11b側から放熱用部材100の主面100a側に向かう方向に対流するため、凹部11c内の冷媒の排出効率を高めることができ、凹部11c内での冷媒の入れ替えが良好に行なわれるので好ましい。
【0061】
さらに、図8に示す第3変形例のように、流路110の供給側に位置する第1開口110bと、排出側に位置する第2開口110cとを備えており、第2開口110cを囲むように第1開口110bを配置するのが好ましい。第2開口110cを囲むように第1開口110bを配置するとは、例えば、図9(a)に示すように第2開口110cの外周を取り囲むように一体化された第1開口110bであっても良いし、図9(c)に示すように第2開口100cの外周を複数の第1開口110bで取り囲んでも良い。このような構成とすることで、供給側に位置する第1開口110bから凹部11cに流入した冷媒は、基
板10の外縁部から中央部に向かう流れとなり、基板10の中央部は光照射デバイス2の比較的温度が高くなる位置に対応するため、冷媒が光照射デバイス2の他方主面11b側から放熱用部材100の主面100a側に向かう方向に対流することにより、凹部11c内での冷媒の入れ替えが良好に行なわれるので好ましい。
【0062】
また、本実施形態の光照射モジュール1は、放熱用部材100に一つの光照射デバイス2が配置されていたが、複数の光照射デバイス2を放熱用部材100上に縦横に配列しても良い。
【0063】
光照射モジュール1の照度分布を均一にするためには、隣接する光照射デバイス2同士が密接していることが好ましい。
【0064】
このように放熱用部材100に複数の光照射デバイス2が配列された光照射モジュール1は、比較的幅広の紫外線を記録媒体に照射することができる。
【0065】
また、印刷装置200の実施形態は、以上の実施形態に限定されない。例えば、軸支されたローラを回転させ、このローラ表面に沿って記録媒体を搬送する、いわゆるオフセット印刷型のプリンタであってもよく、同様の効果を奏する。
【0066】
本実施形態では、インクジェットヘッド220を用いた印刷装置200に光照射モジュール1を適用した例を示しているが、この光照射モジュール1は、例えば対象体表面にスピンコートした光硬化樹脂を硬化させる専用装置など、各種類の光硬化樹脂の硬化にも適用することができる。また、光照射モジュール1を、例えば、露光装置における照射光源などに用いてもよい。
【符号の説明】
【0067】
1 光照射モジュール
2 光照射デバイス
10 基板
11a 一方主面
11b 他方主面
11c 凹部
12 開口部
13 接続パッド
14 内周面
15 接合材
20 発光素子
21 素子基板
22 半導体層
23、24 素子電極
30 封止材
40 積層体
41 第1の絶縁層
42 第2の絶縁層
60 電気配線
100 放熱用部材
100a 主面
110 流路
110a 開口
110b 第1開口
110c 第2開口
120 接着剤
200 印刷装置
210 搬送機構
211 載置台
212 搬送ローラ
220 インクジェットヘッド
220a 吐出孔
230 制御機構
250 記録媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子を基板の一方主面に配置した光照射デバイスと、該光照射デバイスを冷却するための冷媒が流動可能な流路を内部に有する平板状の放熱用部材とを有しており、
該放熱用部材は、前記光照射デバイス側に位置する主面に前記流路の開口を有し、
前記光照射デバイスの前記基板は、前記放熱用部材の前記開口を他方主面で覆うように配置され、
前記放熱用部材の前記主面と前記基板の他方主面との距離は、前記基板の外縁部よりも中央部で長くなっていることを特徴とする光照射モジュール。
【請求項2】
前記開口は、前記流路の供給側に位置する第1開口と、前記流路の排出側に位置する第2開口とを有することを特徴とする請求項1に記載の光照射モジュール。
【請求項3】
前記第2開口は、前記第1開口よりも前記基板の中心に対応する位置からの距離が短い位置に配置されていることを特徴とする請求項2に記載の光照射モジュール。
【請求項4】
前記第2開口を囲むように前記第1開口が配置されていることを特徴とする請求項2または3に記載の光照射モジュール。
【請求項5】
記録媒体に対して印刷を行なう印刷手段と、
印刷された前記記録媒体に対して光を照射する請求項1乃至4のいずれか1項に記載の光照射モジュールとを有することを特徴とする印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−74226(P2013−74226A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−213804(P2011−213804)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】